説明

車載用ナビゲーション装置

【課題】勾配毎に推奨される最高燃費走行速度を適切なタイミングでユーザに提示してエコドライブを実現させる。
【解決手段】車載用ナビゲーション装置は、経路探索により出力される経路上の区間を設定し、設定された区間毎の平均勾配を算出する演算処理手段11と、車両走行中、区間が切り替わる毎に算出された平均勾配に基づき、勾配毎の最高燃費走行速度が定義されたモデルを検索して対応する最高燃費走行速度を抽出するとともに、外部から取得される自車両の勾配と瞬間燃費とを含む車両情報を所定数蓄積して学習を行い、学習の結果により抽出されたモデルにおける最高燃費走行速度を更新する学習処理手段13と、更新された最高燃費走行速度を所定の形式で画面表示する表示処理手段14と、により構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車載用ナビゲーション装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料費の高騰や排気ガスの排出削減要求等により、従来にも増して高燃費の車両の出現が望まれるようになった。
車両の燃費を決定する要素は、車両の性能にもよるが、ユーザの運転操作特性も大きく関係する。その運転操作特性による燃費消費を抑えるため、従来、リアルタイムに瞬間燃費の情報を画面表示することが行なわれている。ユーザは、運転中、リアルタイムに表示された瞬間燃費の情報を基に現在走行速度による燃費の良し悪しを知ることができ、道路状態や道路勾配等の走行環境に合わせて高燃費を得るための走行速度に近付けることで、燃料消費を節約したエコドライブが可能になる。
【0003】
上記した燃料消費を節約したエコドライブを実現する技術については従来から多数の特許が出願されており、例えば、探索された経路においてとりうる少なくとも1つの走行車線パターンについて、各走行車線パターンをとった際のエネルギー消費率を予測し、当該予測に基づいて車線誘導を行う車両用ナビゲーション装置(例えば、特許文献1参照)、
燃料消費が一定量になった場合に自動的に最寄りの燃料供給が可能な施設の位置を検索し、現在位置からその施設までの経路を経路探索により探索して自動的に設定し、モニタに表示するナビゲーションシステム(例えば、特許文献2参照)、道路勾配と走行速度に対応した燃費情報を記憶し、現況の交通情報から推定された走行速度と燃費情報とを用いて燃料消費量の少ない経路を探索する経路探索装置(例えば、特許文献3参照)、等がある。
【0004】
【特許文献1】特開2005−98749号公報
【特許文献2】特開2000−46573号公報
【特許文献3】特開2006−98174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記した瞬間燃費は、現在の燃費状態のみ考慮しているため、道路の状況毎に最も高燃費で走行可能な速度を発見することが困難であると考えられる。また、瞬間燃費はユーザにリアルタイムに提示されるが、勾配等の道路状況が急激に変化する場所では提示情報も頻繁に変化し、このため、急加速や急減速により無駄な燃料噴射を招いて燃費に悪影響を及ぼし、更には安全運転に支障をきたす恐れがある。
【0006】
一方、特許文献1に開示された技術によれば、燃費の予測に道路勾配が反映されないため高燃費で走行可能な速度を的確に予測することはできない。また、特許文献3に開示された技術によれば、経路上の道路勾配は燃費の予測に反映されるが、推定された走行速度や燃費がリアルタイムにユーザに提示されないため、ユーザは、走行中、走行地点毎に適切なタイミングで高燃費運転に必要な走行速度を知ることができない。
【0007】
この発明は上記した課題を解決するためになされたものであり、道路の勾配毎に推奨される最高燃費走行速度を適切なタイミングでユーザに提示してエコドライブを可能にするとともに、勾配の微小な変化での情報提示を極力回避して運転操作の安定性を維持させることのできる、車載用ナビゲーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するためにこの発明の車載用ナビゲーション装置は、経路探索により出力される経路上の区間を設定し、前記設定された区間毎の平均勾配を算出する演算処理手段と、車両走行中、前記区間が切り替わる毎に前記算出された平均勾配に基づき、勾配毎の最高燃費走行速度が定義されたモデルを検索して対応する最高燃費走行速度を抽出するとともに、外部から取得される自車両の勾配と瞬間燃費とを含む車両情報を所定数蓄積して学習を行い、前記学習の結果により前記抽出されたモデルにおける最高燃費走行速度を更新する学習処理手段と、前記更新された最高燃費走行速度を所定の形式で画面表示する表示処理手段と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明の車載用ナビゲーション装置によれば、勾配毎に推奨される最高燃費走行速度を適切なタイミングでユーザに提示してエコドライブを可能にするとともに、勾配の微小な変化での情報提示を極力回避して運転操作の安定性を維持させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る車載用ナビゲーション装置の内部構成を示すブロック図である。
図1に示されるようにこの発明の実施の形態1に係る車載用ナビゲーション装置は、CPU(Central Processing Unit)で構成される制御装置1を核に、主記憶装置2と、タッチパネル3と、センサ装置4と、通信装置5と、外部記憶装置6と、により構成される。
【0011】
主記憶装置2は、例えば、半導体メモリにより構成され、経路探索、現在地表示、目的地誘導の他に、区間設定や、高燃費運転のための車両走行速度を求めてタッチパネル3へ画面表示するためのナビゲーション用のプログラムが常駐している。また、車両メーカが車種毎に提供する、勾配毎の最高燃費走行速度が定義された燃費モデルが格納されている。制御装置1は、タッチパネル3を介して取得されるユーザ指示に基づき主記憶装置2の中から選択されたプログラムを実行することにより、以下に説明する各種ナビゲーション処理を実行する。
【0012】
タッチパネル3は、例えば、表面に透明タブレットが敷設させたLCD(Liquid Crystal Display Device)パネルに表示された情報をユーザが指でタッチすることにより、その座標位置および内容が読取られて制御装置1に転送する他に、制御装置1により生成されるナビゲーション情報を表示する入出力装置である。なお、タッチパネル3の代替として、リモコンと表示モニタとが独立に接続されてもよい。
【0013】
センサ装置4は、車両の各部所に実装された、例えば、GPS(Global Positioning System)センサ、車速センサ、角速度センサ、ジャイロ等をいい、これらセンサ類により検出され出力される、現在位置情報、車速情報、回転角情報、あるいは道路勾配等を示す信号を制御装置1に供給することで上記した制御装置1による所望のナビゲーション処理が実現される。
【0014】
通信装置5は、VICS(Vehicle Information and Communications)等、外部の交通情報センタから渋滞情報等を受信して制御装置1へ供給することにより、制御装置1は、渋滞路を回避したナビゲーションが可能になる。
外部記憶装置6は、例えば、ハードディスクやDVD(Digital Versatile Disc)等により構成され、地図DB(Data Base)等が格納されている。制御装置1は、上記したプログラムの実行により参照される地図DBから該当の地図情報を読み出してタッチパネル3に車両の現在地とともに表示する。
【0015】
図2は、図1に示す制御装置1が実行するプログラムの構造を機能展開して示したブロック図である。
図2に示されるように、制御装置1は、演算処理手段11と、車両情報取得手段12と、学習処理手段13と、表示処理手段14と、により構成される。
【0016】
演算処理手段11は、経路探索により出力される経路上の区間を設定し、当該設定された区間毎の平均勾配を算出する機能を有し、内部的には、経路情報判別部111と、道路区間設定部112とにより構成される。
経路情報判別部111は、ユーザがタッチパネル3を操作することにより設定される目的地に応じて生成される経路に関する情報を道路区間設定部112に供給する。道路区間設定部112は、経路毎、予め定義された勾配角度変化の誤差範囲内で所定の勾配が継続する区間を設定し、この設定された区間について平均勾配を算出して学習処理手段13(構築ルール管理部134)、および表示処理手段14(表示情報判別部141)に出力する。
【0017】
車両情報取得手段12は、センサ装置3を介して取得される情報に基づき生成される、例えば、自車両の勾配と瞬間燃費とを含む車両情報を取得して学習処理手段13(取得情報保存部132)へ出力する。
学習処理手段13は、車両走行中、区間が切り替わる毎に演算処理手段11により算出された平均勾配に基づき、勾配毎の最高燃費走行速度が定義されたモデル(後述するモデルDB131)を検索して対応する最高燃費走行速度を抽出するとともに、車両情報取得手段12から取得される自車両の勾配と走行速度と瞬間燃費とを含む車両情報を所定数蓄積してデータマイニング(ここでは、データ項目毎に相関関係を判定する)による学習を行い、この学習結果により、抽出されたモデルにおける最高燃費走行速度を更新する機能を有し、内部的には、モデルDB131と、取得情報保存部132と、取得情報学習部133と、構築ルール管理部134と、により構成される。
【0018】
モデルDB131は、図3にそのデータ構造の一部が示されるように、勾配毎の最高燃費走行速度が定義され記憶されるものであり、勾配(傾斜角度[%])毎に燃費[km/l]が最高となる自車走行速度[km/h]が出力されるテーブルにより構成される。なお、ここに示されるモデルは、例えば、図4にモデルケースとして示されるように、メーカが車種毎に提供する情報(燃費[km/l]と自車両走行速度[km/h]と勾配[%]との関係を3次元表記したグラフ)に基づいて構築されるものである。
取得情報保存部132には、車両情報取得手段12により取得された実走行時における自車両の勾配と走行速度、および瞬間燃費に関する情報が時系列に保存される。
【0019】
なお、モデルDB131および取得情報保存部132は、ここでは便宜上、学習処理手段13が内部的に有するものとして説明するが、実際(ハードウェア上)は、図1に示す主記憶装置2の所定の領域に割当てられ記憶されるものである。
【0020】
取得情報学習部133は、取得情報保存部132から読み出される車両情報が所定レコード数保存された時点で生成される学習用テーブルに対してデータマイニングによる学習処理を行うことにより適切なルールを抽出する。ここで抽出されるルールとしては、例えば、勾配が−1[%]の場合、勾配:−1[%]、推奨速度:50[km/h]、最高燃費:21[km/l]である。
構築ルール管理部134は、タッチパネル3操作によるユーザからの学習開始の意思表示をうけて取得情報学習部133による学習処理を起動する他に、学習処理の結果、取得情報学習部133により抽出されたルールにしたがいモデルDB131における勾配毎の最高燃費走行速度を更新管理する機能を有する。
【0021】
表示処理手段14は、学習処理手段13(構築ルール管理部134)により更新された最高燃費走行速度を所定の形式で画面表示する機能を有し、内部的には、表示情報判別部141と、情報出力部142と、により構成される。
表示情報判別部141は、演算処理手段11(道路区間設定部112)により設定された区間が所定長に満たない、もしくは外部から通信により取得した交通情報により渋滞が発生している区間を除き、次の区間に所定の距離だけ接近した場合に、当該次の区間における最高燃費走行速度と自車の現在走行速度とをタッチパネル3へ画面表示するための表示情報を生成して情報出力部142へ供給する。情報出力部142は、表示情報判別部141により生成された表示情報を後述する表示仕様に合わせて所定の形式に変換してタッチパネル3へ出力する。
【0022】
図5は、この発明の実施の形態1に係る車載ナビゲーション装置の基本動作を示すフローチャートである。
以下、図5のフローチャートを参照しながらこの発明の実施の形態1に係る車載ナビゲーション装置の基本動作について説明する。
【0023】
まず、演算処理手段11は、経路情報判定部111が経路探索機能により生成される経路の有無を抽出し(ステップST51)、道路区間設定部112が、経路の有無に応じて道路の区間設定、および区間毎の平均勾配の算出を行ない、学習処理手段13、および表示処理手段14へ供給する。
なお、区間設定は、後述するように、道路区間設定部112が、現在の自車位置を起点とし、区間の終点を抽出して平均勾配を算出することにより行なわれる。経路情報判別部111で経路が存在すると判定された場合(ステップST52“YES”)、道路区間設定部112は、経路の終点まで上記の抽出作業を続行して区間毎の平均勾配を算出し(ステップST53)、経路が存在しないと判定された場合(ステップST52“NO”)、現在区間を設定して平均勾配を算出する(ステップST54)。
【0024】
学習処理手段12は、構築ルール管理部134が、演算処理手段11(道路区間設定部112)にて個々に設定された区間で自車両が次の区間に進入する前、すなわち、区間切替えが発生する毎に(ステップST55“YES”)、進入予定の区間における法定速度を外部記憶装置6の地図DBから取得し(ステップST56)、その区間の平均勾配を基に、主記憶装置2に記憶されている勾配毎の最高燃費走行速度が定義されたモデルDB131から該当区間の法定速度内における適切なルールを抽出する(ステップST57)。
一方、車両情報取得手段12では、常時、車両の各所に実装されてあるセンサ装置4から車速度や勾配、あるいは瞬間燃費を示す車両情報を取得しており、学習処理手段13(取得情報保存部132)へ供給している(ステップST58)。
【0025】
学習処理手段13は、取得情報学習部133が取得情報保存部132に蓄積された所定数の車両情報に関してデータマイニングによる学習を行なっており、その学習結果によっては構築ルール管理部134が先にモデルDBから抽出したルール(最高燃費走行速度)を更新して表示処理手段14(表示情報判別部141)に引き渡す(ステップST59)。
これをうけて表示処理手段14は、更新された最高燃費走行速度を所定の形式で画面表示するために表示すべき内容を判別してタッチパネル3へ出力して表示する(ステップST60)。このとき、表示情報判別部141は、道路区間設定部112により設定された区間が所定長に満たない、もしくは外部から通信により取得された交通情報により渋滞が発生している区間を除いて、区間毎の最高燃費走行速度を画面表示する情報を生成して情報出力部142へ供給する。そして、情報出力部142は、供給された情報を基に、表示形式に合わせてタッチパネル3へその情報を表示のために提供する(ステップST61)。
【0026】
図6は、図5における基本動作のステップST53の区間設定および平均勾配の算出処理についての詳細な流れを示すフローチャートである。
以下、図6のフローチャートを参照しながら演算処理手段11による基本動作のステップST53の区間設定および平均勾配の算出処理の詳細について説明する。
【0027】
図6のフローチャートにおいて、演算処理手段11(道路区間設定部112)は、経路のスタート地点または自車両位置を区間の起点に設定し(ステップST531)、外部記憶装置6に記憶された地図DBから自車両位置の勾配情報Aを取得する(ステップST532)。そして、車両情報取得手段12により出力されるセンサ情報に基づき進行方向Bを取得し(ステップST533)、取得した勾配は、勾配Aの±誤差範囲内か(ステップST534)、進行方向Bの±誤差範囲内か(ステップST535)を判定条件とし、±誤差範囲外までのAの勾配を合算する(ステップST536)。そして、経路上で所定の距離進んだところでステップST532の処理に戻り(ステップST537)、±誤差範囲外と判定されるまで(ステップST534“NO”、ST535“NO”)上記の処理を繰り返す。
【0028】
続いて道路区間設定部112は、±誤差範囲外(ステップST534“NO”、ステップST535“NO”)となる地点を終点と設定して区間名を割当て(ステップST538)、合算した勾配の和を合算の回数で割ってその区間の平均勾配を算出する(ステップST539)。そして、区間の割当てが終了後、その区間の後に更に経路が続いている場合(ステップST540“NO”)、上記した一連の処理と同様の処理が繰り返される。
【0029】
図7は、図5における基本動作のステップST59のデータマイニングによる学習処理についての詳細な流れを示すフローチャートである。
以下、図7のフローチャートを参照しながら学習処理手段13による基本動作のステップST59のデータマイニングによる学習処理の詳細について説明する。
【0030】
ところで、勾配毎の最高燃費走行速度が定義され、主記憶装置2に記憶されたモデルDBにおけるルールの形式は、図3で説明したように、横軸に自車速度[hm/h]、縦軸に勾配(傾斜角度[%])を有するテーブルに示されている。このため、学習処理手段13(構築ルール管理部134)は、演算処理手段11(道路区間設定部112)により各区間で算出された平均勾配を基に、モデルDB131から該当する勾配を検索し、その勾配における最高燃費走行速度を抽出する。例えば、図3に示すデータ構造によれば、平均勾配が−1[%]の場合、抽出されるルールは、勾配:−1[%]、走行速度:50[km/h]、最高燃費:21[km/l]になる。
【0031】
一方、取得情報学習部133が実行するデータマイニングは、取得情報保存部132に保存された自車両の実走行環境における、勾配、走行速度、燃費が所定レコード数保存されたことを契機に学習を行うものであり、ここで適切なルールを抽出して構築ルール管理部134へ転送することで勾配毎の最高燃費走行速度が定義されたモデルDB131に反映することが可能である。このことにより、個々の実走行環境に適した最高燃費走行速度のルールの精度を向上させることが可能になる。
【0032】
具体的には、図7のフローチャートに示されるように、学習処理手段13(構築ルール管理部134)は、学習結果を反映させるユーザ指示、例えば、タッチパネル3のユーザによる所定のホダン押下を契機に(ステップST591“YES”)、自車両走行中(ステップST592“YES”)、車両情報取得手段12を介して取得した勾配情報、走行速度、瞬間燃費を含む車両情報を取得情報保存部32に学習用テーブルとして保存する(ステップST593、ST594)。そして、この学習用テーブルがデータレコード毎の規定件数を超過すると取得情報学習部133が起動され(ステップST595“YES”)、取得情報学習部133によるルール抽出処理が開始される(ステップST596)。
取得情報学習部133は、ルール抽出処理開始にあたり、取得情報保存部132の学習用テーブルに設定された実走行時における車両情報からデータマイニングにより適切なルールを抽出して構築ルール管理部134へ引き渡す(ステップST597)。
【0033】
構築ルール管理部134は、走行中、区間が切り替わる毎に演算処理手段11の道路区間設定部112により算出された平均勾配に基づき、主記憶装置2に記憶されたモデルDB131を検索して対応する最高燃費走行速度を抽出している(ステップST598)。
構築ルール管理部134は、取得情報学習部133により学習されたルール(最高燃費走行速度X)とモデルDB131から抽出されたルール(最高燃費走行速度Y)との相関関係により(ステップST599)、取得情報学習部133により学習されたルール(最高燃費走行速度X)が適切と判定された場合(ステップST599“YES”)、モデルDB131のルール(最高燃費走行速度Y)の入れ替えを行ない、表示処理手段14(表示情報判別部141)へ引き渡す(ステップST600)。
【0034】
すなわち、構築ルール管理部134は、モデルDB131に定義されたルールを取得情報学習部133により学習されたルールにより更新する。なお、例えば、学習により抽出されたルールが法定速度を越える等の理由でモデルDB131に定義されたルールが適切であると判定された場合(ステップST599“NO”)、モデルDB131に定義されたルールを有効として表示処理手段14(表示情報判別部141)へ引き渡す。
【0035】
上記したルール抽出処理は、取得情報学習処理部133により、取得情報保存部132の学習テーブルが有する規定数のレコード分繰り返し実行される(ステップST601)。そして、最後に取得情報学習処理部133が学習用テーブルをリセットすることによりデータマイニングによる学習処理を終了する(ステップST602)。
【0036】
図4に示す初期のモデルケースのテーブルがモデルDB131に保存されている場合、実走行により取得情報保存部132に保存された学習用テーブルから学習を行なうことにより初期のルールより適切なルールを学習することができる。図8は、随時保存した学習用テーブルから学習したルールを図4に示すモデルDB131に反映した一例である。
図4と図8を比較して明確なように、例えば、初期のルールによれば、−2[%]の勾配では、走行速度50[km/h]で最高燃費25[l]を実現するのに対し、更新されたルールによれば、同じ勾配条件で最高燃費25[l]を実現するのに60[km/h]の走行速度を要することがわかる。なお、走行速度が法定速度を越えた場合は走行速度が法定速度内に収まるように修正されることは図5に示す基本動作で説明した通りである。
【0037】
図9は、図5における基本動作のステップST60の表示情報判別処理についての詳細な流れを示すフローチャートである。
以下、図9のフローチャートを参照しながら基本動作のステップST60の表示処理手段14による表示情報判別処理の詳細について説明する。
【0038】
図9のフローチャートにおいて、表示処理手段11は、まず、表示情報判別部141が、演算処理手段11の道路区間設定部112から設定された区間の区間長に関する情報を取得する(ステップST611)。
次に、表示情報判別部141は、取得した区間長と閾値とを比較し(ステップST612)、区間長が所定の距離以下と判定された場合(ステップST612“YES”)、更新されたモデルDB131に基づく走行速度等の表示による案内を行なわず、後述するアイコンの表示更新のみ行なうように情報出力部142に指示する(ステップST613)。
【0039】
一方、設定された区間長が所定の距離より長いと判定された場合(ステップST612“NO”)、表示情報判別部141は、通信により取得されるVICS等の渋滞情報から区間渋滞の有無を判定し(ステップST614、ST615)、渋滞があると判定された場合は(ステップST615“NO”)、上記したように区間長が短い場合と同様、更新されたモデルDB131に基づく走行速度等の表示による案内を行なわない。また、渋滞が無いと判定された場合(ステップST615“YES”)、表示情報判別部141は、自車両が次の区間に進入する前に、その区間における最高燃費の走行速度(更新されたモデルDBに基づく走行速度)による案内を行なうとともに後述するアイコンの表示更新を行う(ステップST616)。
情報出力部142は、表示情報判別部141により生成された表示情報を後述する表示仕様に合わせて所定の形式に変換してタッチパネル3へ出力する。
【0040】
上記したように、この発明の実施の形態1に係る車載用ナビゲーション装置によれば、
道路勾配等の実走行状況に適した最高燃費を実現する走行速度をリアルタイムに提示することでユーザは走行中の燃費を随時確認することができ、エコドライブに最適な走行速度による運転が可能になり、無駄な燃費消費を節約することができる。
また、勾配毎の瞬間燃費を随時取得して保存し学習を行うことにより、車両の現時点における走行環境や状態(空気圧やエンジンオイル等の状態)に合わせた高燃費走行速度を更新して提示することができる。
【0041】
また、この発明の実施の形態1に係る車載用ナビゲーション装置によれば、区間設定にあたり、登り下りの勾配を混合させることなく、勾配角度変化の誤差範囲内で一定の勾配が継続し続ける区間を探索し設定することで、必要に応じてユーザに現在の走行状況に適した走行速度を案内することが可能となる。更に、曲がりの区間を案内から除外するとともに、短距離の区間における勾配角度の微小変化で情報提示の多発を防止することで、急加速または急な減速を防ぐことができるため無駄な燃料噴出がなくなり、運転操作の安定性を維持することができる。
【0042】
次に、表示処理手段14により実現される表示仕様に基づき、図10〜図15に示した画面構成の一例を参照しながら説明する。
【0043】
表示処理手段14は、例えば、図10に示されるように、車両が次の区間に接近したとき、現在の自車両の走行速度、ならびにその区間における高燃費運転が可能な走行速度を切替え表示して案内することができる。また、実走行中におけるある区間の自車走行速度もしくは燃費と、その区間における最高燃費走行速度もしくは最高燃費とが異なる場合、速度差もしくは燃費の差に応じて自車走行速度もしくは燃費を画面上に強調表示してもよい。
すなわち、図11にその一例が示されるように、自車両の現在の走行速度における燃費状況を直感で知ることできるように速度差に応じて色が変化するアイコンを表示し、あるいは文字色を速度差に応じて変化させるようにしてもよい。このとき、情報出力部142は、表示情報判別部141による制御の下で表示情報を生成するとともに、例えば、色による表示修飾制御を行いタッチパネル3へ出力する。
【0044】
表示処理手段14はまた、図12にその画面構成の一例が示されるように、タッチパネル3の画面上に表示される経路のうちユーザによりタッチされる区間を検知し、当該検知された区間の最高燃費走行速度もしくは燃費を表示してもよい。このとき、情報出力部142は、表示情報判別部141による制御の下で、タッチパネル3からの座標データを取得し、画面上の該当区間における最高燃費走行速度もしくは燃費を表示するための表示情報を生成してタッチパネル3へ出力する。
なお、上記した高燃費走行速度について、区間長が短い場合は表示されないものとするが、図13に示されるように、燃費を示すアイコンについては区間長が短い場合も更新され表示されるものとする。
【0045】
表示処理手段14はまた、図14にその画面構成の一例が示されるように、経路探索により出力される経路を構成する各区間をタッチパネル3画面に表示し、タッチパネル3画面の任意領域に割当てられ表示される「最高燃費走行速度表示ボタン」の押下が検出された場合に、経路全体の区間の最高燃費走行速度を表示してもよい。但し、区間長等により表示案内が行われない区間に関する情報は表示されない。
また、表示処理手段14は、図15にその画面構成の一例が示されるように、経路探索により出力される経路を構成する各区間をタッチパネル3の画面に表示し、当該タッチパネル3の画面の任意領域に割当てられ表示される「区間予想燃費表示ボタン」の押下が検出された場合に、経路全体の区間の区間予想燃費を表示してもよい。但し、区間長等により表示案内が行われない区間に関する情報は表示されない。
【0046】
上記したように、この発明の実施の形態1に係る車載ナビゲーション装置によれば、次の区間接近時に最高燃費速度をタッチパネル3に画面表示することにより、ユーザは、走行中の燃費を随時確認しながらエコドライブを実践することができ、また、実走行速度との速度差に応じて色の変化等による強調表示を行うことでユーザは現時点におけるドライブの状態を直感で判断することができる。
また、経路中の区画をタッチするだけでその区間における最高燃費走行速度もしくは燃費を表示でき、更には、画面中に割当てられたボタン押下により、区間予想燃費、あるいは区間予想燃費が表示されるため、ドライブの計画立案に役立てることができ、ユーザに利便性を提供する他に使い勝手の向上がはかれる。
【0047】
なお、図2に示す制御装置1が有する機能は、全てをソフトウェアによって実現しても、あるいはその少なくとも一部をハードウェアで実現してもよい。
例えば、経路探索により出力される経路上の区間を設定し、設定された区間毎の平均勾配を算出する演算処理手段11としてのデータ処理、車両走行中、区間が切り替わる毎に算出された平均勾配に基づき、勾配毎の最高燃費走行速度が定義されたモデルを検索して対応する最高燃費走行速度を抽出するとともに、外部から取得される自車両の勾配と瞬間燃費とを含む車両情報を所定数蓄積して学習を行い、当該学習の結果により抽出されたモデルにおける最高燃費走行速度を更新する学習処理手段13としてのデータ処理、更新された最高燃費走行速度を所定の形式で画面表示する表示処理手段14としてのデータ処理は、1または複数のプログラムによりコンピュータ上で実現してもよく、また、その少なくとも一部をハードウェアで実現してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】この発明の実施の形態1に係る車載用ナビゲーション装置の内部構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す制御装置が実行するプログラムの構造を機能展開して示したブロック図である。
【図3】図2に示すモデルDBのデータ構造の一例を示す図である。
【図4】図2に示すモデルDBから抽出されるルールの一例を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係る車載用ナビゲーション装置の基本動作を示すフローチャートである。
【図6】この発明の実施の形態1に係る車載用ナビゲーション装置の道路区間設定処理動作を示すフローチャートである。
【図7】この発明の実施の形態1に係る車載用ナビゲーション装置のデータマイニングによる学習処理動作を示すフローチャートである。
【図8】この発明の実施の形態1に係る車載用ナビゲーション装置のデータマイニング結果が反映されたルールDBのデータ構造の一例を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態1に係る車載用ナビゲーション装置の表示処理動作を示すフローチャートである。
【図10】この発明の実施の形態1に係る車載用ナビゲーション装置の画面構成の一例(1)を示す図である。
【図11】この発明の実施の形態1に係る車載用ナビゲーション装置の画面構成の一例(2)を示す図である。
【図12】この発明の実施の形態1に係る車載用ナビゲーション装置の画面構成の一例(3)を示す図である。
【図13】この発明の実施の形態1に係る車載用ナビゲーション装置の画面構成の一例(4)を示す図である。
【図14】この発明の実施の形態1に係る車載用ナビゲーション装置の画面構成の一例(1)を示す図である。
【図15】この発明の実施の形態1に係る車載用ナビゲーション装置の画面構成の一例(5)を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1 制御装置、2 主記憶装置、3 タッチパネル、4 センサ装置、5 通信装置、6 外部記憶装置、11 演算処理手段(111 経路情報判別部、112 道路区間設定部)、12 両情報取得手段、13 学習処理手段(131 モデルDB、132 取得情報保存部、133 取得情報学習部、134 構築ルール管理部)、14 表示処理手段(141 表示情報判別部、142 情報出力部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経路探索により出力される経路上の区間を設定し、前記設定された区間毎の平均勾配を算出する演算処理手段と、
車両走行中、前記区間が切り替わる毎に前記演算処理手段で算出された平均勾配に基づき、勾配毎の最高燃費走行速度が定義されたモデルを検索して対応する最高燃費走行速度を抽出するとともに、外部から取得される自車両の勾配と瞬間燃費とを含む車両情報を所定数蓄積して学習を行い、前記学習の結果により前記抽出されたモデルにおける最高燃費走行速度を更新する学習処理手段と、
前記学習処理手段で更新された最高燃費走行速度を所定の形式で画面表示する表示処理手段と、
を備えたことを特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項2】
前記演算処理手段は、
予め定義された勾配角度変化の誤差範囲内で所定の勾配が継続する区間を設定し、前記設定された区間について前記平均勾配を算出することを特徴とする請求項1記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項3】
前記学習処理手段は、
学習結果を反映させるユーザ指示を契機に、車両走行中における自車勾配と瞬間燃費を含む車両情報を外部から取得して前記モデルとは別に記憶し、所定数の車両情報が記憶された時点でルールを抽出し、前記抽出したルールと前記モデルから抽出されたルールとに基づき相関関係を求め、前記相関関係により前記モデルにおける勾配毎の最高燃費走行速度を更新することを特徴とする請求項1記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項4】
前記学習処理手段は、
車両走行中、前記区間が切り替わる毎に、地図情報から進入予定の区間における法定速度を取得し、前記区間の平均勾配を基に勾配毎の最高燃費走行速度が定義されたモデルから該当区間の法定速度内におけるルールを抽出することを特徴とする請求項3記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項5】
前記表示処理手段は、
前記演算処理手段により設定された区間が所定長に満たないか、もしくは外部から通信により取得された交通情報により渋滞が発生している区間を除き、区間毎の最高燃費走行速度を画面表示することを特徴とする請求項1記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項6】
前記表示処理手段は、
車両走行中、次の区間に所定の距離だけ接近した場合に、前記次の区間における最高燃費走行速度と自車両の現在走行速度とを対で画面表示することを特徴とする請求項5記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項7】
前記表示処理手段は、
自車の現在走行速度における燃費の状況をレベルに応じて変化するアイコンで画面表示することを特徴とする請求項5または請求項6記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項8】
前記表示処理手段は、
前記画面上に表示される経路でユーザによりタッチされる区間を検知し、前記検知された区間の最高燃費走行速度もしくは燃費を表示することを特徴とする請求項5から請求項7のいずれか1項記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項9】
前記表示処理手段は、
現在走行中におけるある区間の自車両の走行速度もしくは燃費と、前記区間の最高燃費走行速度もしくは最高燃費とが異なる場合、速度差もしくは燃費差に応じて自車両走行速度もしくは燃費を前記画面上に強調表示することを特徴とする請求項5から請求項8のいずれか1項記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項10】
前記表示処理手段は、
前記経路探索により出力される経路を構成する各区間を前記画面に表示し、前記画面の任意領域に割当てられ表示される最高燃費走行速度表示ボタンの押下が検出された場合に、前記経路全体の区間の最高燃費走行速度を表示することを特徴とする請求項5記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項11】
前記表示処理手段は、
前記経路探索により出力される経路を構成する各区間を前記画面に表示し、前記画面の任意領域に割当てられ表示される区間予想燃費表示ボタンの押下が検出された場合に、前記経路全体の区間の区間予想燃費を表示することを特徴とする請求項5または請求項10記載の車載用ナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−257966(P2009−257966A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108016(P2008−108016)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】