説明

軽量自動車内装部品

【課題】有機長繊維を添加したプロピレン系樹脂からなり、自動車部品に要求される低温衝撃特性と高温剛性が重視されるインストルメントパネル・コンソールボックス・ピラー・トリム類等に成形された、高外観な軽量自動車内装部品を提供する。
【解決手段】プロピレン系樹脂(A)100重量部に対して、有機長繊維(B)5〜60重量部を含有してなる繊維強化プロピレン系樹脂材料により射出成形された自動車用内装部品であって、繊維強化プロピレン系樹脂材料により形成される平面部の平均面密度(材料密度と部品意匠平面部平均肉厚の積)が2kg/m未満であることを特徴とする軽量自動車内装部品などによって提供。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量自動車内装部品に関するものであり、より詳しくは、有機長繊維を添加したポリオレフィン系樹脂からなり、自動車部品に要求される低温衝撃特性と高温剛性が重視されるインストルメントパネル・コンソールボックス・ピラー・トリム類等に成形された、高外観な軽量自動車内装部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車のインストルメントパネル及び安全対応内装材の構造材料として、プロピレン系樹脂にゴム成分とタルクを配合し、前者で耐衝撃性を、後者で剛性を付与することが行われている(特許文献1〜6参照)。この方法によれば、原料が比較的安価なため製造される製品も安価であること、常温使用条件において延性破壊し得ること、良好な成形品外観が得られること等の利点があり、これらの成形材料による内装部品が多く使用されている。
【0003】
昨今、地球温暖化対策として自動車の軽量化による二酸化炭素の排出量削減が重要課題となる中で、前記に代表される自動車内装用樹脂部品の軽量化が要求されつつある。軽量化の目標は、部品単体の重量を低減することであり、一般には部品厚みを薄くする方法と、使用する樹脂材料の比重を軽くする方法により達成されうるが、従来のプロピレン系樹脂とゴム成分とタルク成分からなる樹脂材料では、軽量化により部品の剛性低下、衝撃性低下、部品表面の虎縞状流れ模様(フローマークという)発生によるフローマーク外観悪化などの問題が発生し、これらの問題を解決する事は非常に困難であった。
【0004】
例えば、部品厚みを薄くすると剛性が低下するので、剛性補強用のタルクを増量することになるが、衝撃性とフローマーク外観性能が低下し、更には材料比重が大きくなって充分な軽量化が達成できないといった問題がある。また剛性低下の要因となるゴム成分を低下すると当然のことながら、衝撃性が低下し、低温での部品試験で脆性破壊による破片の飛散が発生してしまう問題がある。
【0005】
また、比較的容易に剛性を上げる為に、ガラス繊維やマイカなどの高アスペクト比を有したフィラーを添加する検討もなされているが(例えば、特許文献7参照)、ガラス繊維の場合は、部品表面にガラス繊維の浮きが発生し、鏡面仕上げの部品では平滑な外観性能が得られず、またシボ加工仕上げの部品ではシボ転写性が損なわれ、シボ外観の風合いが劣るし、剛直なガラス繊維が成形品の流れ方向に配向するので、異方性による著しい反り形が発生する。また部品の延伸性が抑制されるので、衝撃強度の低下(脆性破壊現象)が発生する。マイカの場合は、異方性は少ないものの、部品表面に存在するマイカの光反射によってキラキラ感が発生してしまい意匠部品としての外観性能が低下するし、ガラスの場合と同様に衝撃性能の低下が発生する。
そのため、本出願人は、プロピレン系樹脂に有機長繊維を配合した自動車内装部品用組成物を提案した(特許文献8参照)。これにより、外観性能(フローマーク外観やキラキラする異物感)や衝撃性能の低下を抑制することができた。しかしながら、有機長繊維をプロピレン系樹脂よりも多量に配合すると、薄肉の軽量部品の成形が困難になるし、部品表面に有機長繊維の浮きが発生して平滑な外観性能が得られず、またシボ加工仕上げの部品ではシボ転写性も悪くなるという問題があった。
【0006】
こうした状況下に、軽量自動車に対する需要の向上に伴って、剛性・衝撃などの機械的性質と外観性能を兼ね備えた軽量な自動車内装部品の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭51−136735号
【特許文献2】特開昭58−111846号
【特許文献3】特開昭58−129037号
【特許文献4】特開昭61−187859号
【特許文献5】特公昭60−3420号
【特許文献6】特開平3−250040号
【特許文献7】特開昭62−36428号
【特許文献8】特開2009−132772号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、かかる従来技術の問題点に鑑み、有機長繊維を添加したポリオレフィン系樹脂からなり、自動車部品に要求される低温衝撃特性と高温剛性が重視されるインストルメントパネル・コンソールボックス・ピラー・トリム類等に成形された、高外観な軽量自動車内装部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記従来技術の問題点を解決するために鋭意研究した結果、プロピレン系樹脂に対して、有機長繊維を特定量配合した繊維強化ポリオレフィン系樹脂材料を用い、射出成形時の部品肉厚を適正化することにより、剛性・衝撃などの機械的性質と様々な外観性能(フローマーク、繊維の浮き、キラキラ感などが目立たない性能)を兼ね備えた軽量な自動車内装部品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、プロピレン系樹脂(A)100重量部に対して、有機長繊維(B)5〜60重量部を含有してなる繊維強化プロピレン系樹脂材料により射出成形された自動車用内装部品であって、繊維強化プロピレン系樹脂材料により形成される平面部の平均面密度(材料密度と部品意匠平面部平均肉厚の積)が2kg/m未満であることを特徴とする軽量自動車内装部品が提供される。
【0011】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記繊維強化プロピレン系樹脂材料は、さらに、プロピレン系樹脂(A)100重量部に対して、無機フィラー(C)0〜30重量部及び/又は熱可塑性エラストマー(D)0〜30重量部を含有することを特徴とする軽量自動車内装部品が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、前記繊維強化プロピレン系樹脂材料は、低温下での製品衝撃試験において、試験後の飛散片の重量が試験前製品重量の10重量%未満であることを特徴とする軽量自動車内装部品が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、前記繊維強化プロピレン系樹脂材料は、JIS−K7161に準拠した引張弾性率の80℃下における値が1000Mpa以上であり、かつ低温下での部品衝撃試験において破壊片が飛散しないことを特徴とする軽量自動車内装部品が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、プロピレン系樹脂(A)は、メルトフローレート(JIS K7210に準拠し、温度230℃、荷重21.18Nで測定した値)が60g/10分以上であることを特徴とする軽量自動車内装部品が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、有機長繊維(B)は、結晶融点(融点の観測されないものは軟化点)が200℃以上、若しくは熱可塑性でないことを特徴とする軽量自動車内装部品が提供される。
さらに、本発明の第7の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、有機長繊維(B)は、引張強度が5cN/dtex以上であることを特徴とする軽量自動車内装部品が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の軽量自動車内装部品(以下「繊維強化軽量部品」と略記することがある)は、プロピレン系樹脂(A)に特定量の有機長繊維(B)を含有させ、平面部の平均面密度を2kg/m未満としているので、長繊維が網目状に分散して補強効果が向上すると共に、繊維とマトリクスとなるプロピレン系樹脂との界面接着が適度に調整され、従来公知の樹脂組性物では成し得ない軽量性が得られ、耐衝撃性、耐熱剛性などの機械特性とのバランスも容易にとることが出来る。
また、平面の平均面密度が2kg/m未満であることで、部品の肉厚が薄い設計(薄肉化)に出来る。射出成形時の金型内圧を向上させ、有機長繊維(B)が金型表面でマトリクス樹脂内に押さえ込まれて薄肉化されるので、有機長繊維(B)とマトリクス樹脂の界面が密接となり、従来の繊維系樹脂で問題となっていた繊維の表面浮きと呼ばれる外観不良を防ぐことが出来、高外観を達成しうる。また、部品の肉厚を平面の平均面密度が2kg/m未満になる範囲で厚めに設計した場合は、有機長繊維の濃度を低下させることが可能となるので、繊維の浮きが低減されて外観性能は維持向上される。
【0013】
更に、本発明の繊維強化軽量部品は、従来公知の多量のゴム成分、タルク、などを配合して設計された軽量部品よりも耐熱剛性(高温下での剛性)高い特徴がある。また、低温下で部品に衝撃が加わって破壊が起きた際に、破壊点からの破壊伝播が繊維により抑制されるので、部品の飛散が無く、且つ破壊面もシャープエッジになり難いため、部品近傍に人体があっても切傷などの二次被害を引き起こすこともない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明で使用される有機長繊維強化ポリオレフィン樹脂成形材料ペレットの製造工程を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の軽量自動車内装部品について詳細に説明する。
本発明の軽量自動車内装部品は、プロピレン系樹脂(A)100重量部に対して、有機長繊維(B)5〜60重量部を含有してなる繊維強化プロピレン系樹脂材料により射出成形された自動車用内装部品であって、繊維強化プロピレン系樹脂材料により形成される平面部の平均面密度(材料密度と部品意匠平面部平均肉厚の積)が2kg/m未満であることを特徴とする。
【0016】
1.繊維強化ポリオレフィン系樹脂材料
本発明で使用する繊維強化プロピレン系樹脂材料は、プロピレン系樹脂(A)100重量部に対して、有機長繊維(B)5〜60重量部を含有してなる繊維強化樹脂材料である。
【0017】
(1)プロピレン系樹脂(A)
プロピレン系樹脂(A)は、特に制限されず、例えば、プロピレンの単独重合体、プロピレンを主成分とした、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等の他のα−オレフィン1種または2種以上との共重合体などが挙げられる。共重合体は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよいが、好ましくは剛性と衝撃性のバランスに優れたブロック共重合体である。なお、上記の「主成分」とは、プロピレン系樹脂中に50重量%以上、好ましくは60重量%以上含まれるものを指す。
【0018】
プロピレン系樹脂(A)は、プロピレン重合用触媒の存在下プロピレンと必要に応じてα−オレフィン等とを重合させて得ることができる。重合様式は、樹脂状物が得られる限り、如何なる重合様式を採用しても差し支えないが、気相法、溶液法であるものが特に好ましい。
プロピレン系樹脂のメルトフローレートは、JIS K7210に準拠し、温度230℃、荷重21.18Nで測定した値が、通常10〜200g/10分、好ましくは30〜150g/10分、更に好ましくは、60〜150g/10分である。メルトフローレートがこの範囲にあれば成形加工性が低下せず、得られる成形品の表面のフローマーク外観が良好になり、高外観の軽量部品が得られる。しかも成形品の機械的強度が低下せず、有機長繊維(B)の分散も不良になりにくいので、部品の衝撃試験での破壊性能が向上する。
【0019】
本発明の繊維強化軽量部品において、プロピレン系樹脂(A)は1種でも、2種以上を併用してもよい。更に、本発明において、プロピレン系樹脂(A)として、例えば、無水マレイン酸で変性された酸変性プロピレン系樹脂などを添加することができる。
上記の酸変性オレフィン系樹脂としては、(a)オレフィンの単独重合体または2種以上のオレフィンの共重合体、例えば、ポリオレフィンに不飽和カルボン酸またはその誘導体をグラフト重合したもの、(b)ポリオレフィンの重合原料モノマーである1種または2種以上のオレフィンと1種または2種以上の不飽和カルボン酸またはその誘導体を共重合したもの、(c)上記(b)で得られたものに更に不飽和カルボン酸またはその誘導体をグラフト重合したもの等が挙げられる。
ただし、その添加量は少量にすることが好ましい。また、後述する有機長繊維(B)を表面処理することができるが、酸変性オレフィン系樹脂を用いないのが好ましい。斯かる条件を満足することにより、マトリクス樹脂であるプロピレン系樹脂(A)と有機長繊維(B)との界面強度を弱くすることが出来、引張破断伸びや耐衝撃性を一層高めることが出来るし、衝撃試験時の部品飛散が抑えられるからである。
【0020】
(2)有機長繊維(B)
本発明で使用する有機長繊維(B)は、例えばポリエステル繊維(代表例 ポリエチレンテレフタレート;融点約260℃ 熱可塑性)、ポリアミド繊維(代表例 ナイロン6−6;融点約268℃ 熱可塑性)、ポリウレタン繊維(代表例 スパンデックス ;融点200−230℃ 熱可塑性)、アクリル繊維(代表例 ポリアクリロニトリル ;融点約317℃ 熱可塑性)、ビニロン繊維(代表例 ビニロン;軟化点220−230℃)、ケナフ繊維(代表例 洋麻 ;分解点200℃ 天然繊維 熱可塑性でない)等の天然繊維などから選択することができる。中でも原料コストなどを考慮してポリエステル繊維またはポリアミド繊維が好適である。また複数種を選択し混合して用いてもよい。
該有機長繊維として融点(融点の無いものについては軟化点)は、200℃以上であり、230℃以上が好ましく、より好ましくは240℃以上であるもの、若しくは加熱しても溶融可塑化しないものが好適である。成形加工を行う際に、有機長繊維が溶融可塑化せず繊維状充填材として分散されることが好適なためである。ここで融点は、DSC測定によって求められる値である。DSC測定によって融点が観測されない場合、軟化点(ビカット軟化点)が200℃以上であることが好ましい。
【0021】
有機長繊維の長さは、4〜20mmであり、特には4〜10mmが好適である。有機長繊維の長さが、この範囲にあれば成形品中に分散した繊維が互いに絡まり、その結果該成形品が十分な耐衝撃性を発現する。また、成形原料としてのペレットが肥大化しすぎたりアスペクト比が大きくなりすぎず、成形機へ安定連続供給することができるためである。
【0022】
有機長繊維の引張強度は、特に制限されるわけではないが、JIS L1013に準拠して測定した値が3cN/dtex以上、特には5cN/dtex以上であるものが好適である。引張強度がこの範囲にあれば、成形機シリンダー内でペレットを可塑化させるときに繊維が延伸破断したりせず、得られる成形品が衝撃を受けて破壊したときに繊維の抜けより引張破断が優先して起こることがないので、該成形品に十分な耐衝撃性を発現させることができる。また、有機長繊維の引張強度は、50cN/dtex以下、さらには30cN/dtex以下、特に10cN/dtex以下であるものが好ましい。高強度の有機繊維として、一般にタイヤコード、テント、シート、コンクリート補強繊維等の用途で市販されているものを好適に用いることが出来る。
【0023】
特にタイヤコード向け有機繊維には、ゴムマトリクスとの接着性を向上させる目的で極性樹脂を付着させているものがある。例えば有機繊維にエポキシ基を有する樹脂を付着させたもの、該繊維に更にゴムラテックス乃至イソシアネート化合物を付着させたもの、等が提案されている(特開平7−3566、特開平8−13346、特開2001−19927など参照)。本発明にはこうした極性樹脂が付着した有機繊維も好適に用いることが出来る。
【0024】
本発明においては、本発明の目的を損なわず、性能バランスを向上させる目的で、熱可塑性エラストマー、タルクなどの無機フィラー、極性基変性剤、添加剤など従来公知の成分を配合させることが出来る。
【0025】
(3)無機フィラー(C)
本発明で使用可能な無機フィラー(C)は、主には部品の剛性を調整する目的として添加しうるものであり、タルク、ワラストナイト、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ウイスカーなどが挙げられる。
タルクであれば、平均粒径が通常15μm以下、好ましくは12mμ以下、更に好ましくは10μm以下であるものが好ましい。平均粒径がこの範囲であれば部品の耐衝撃性を低下させることがない。しかも、タルク自体が高価すぎず、更に、成形材料の流動性を著しく低下させることもない。ここで平均粒径は、液相沈降式光透過法で測定し、粒度累積分布曲線から読み取った累積量50重量%の粒径値である。なお、上記の様な平均粒径のタルクは、一般に乾式粉砕後に乾式分級して製造される。
【0026】
タルクの比表面積は、通常1.5m/g以上、好ましくは2.0m/g以上、更に好ましくは3.0m/g以上である。比表面積がこの範囲であれば、部品の耐衝撃性が不足する傾向がない。また、タルク自体が高価とならず、しかも、成形材料の流動性が大幅に低下することもない。ここでいう比表面積は空気透過法により測定した値である。
【0027】
(4)熱可塑性エラストマー(D)
本発明で使用可能な熱可塑性エラストマー(D)は、部品の衝撃性を調整することを主目的として添加しうる。
具体的には、エチレン−プロピレンエラストマー、エチレン−ブテン−1エラストマー、エチレン−オクテン−1エラストマー、エチレン−プロピレン−ジエンエラストマー、ポリブタジエン、スチレン−ジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン等のジエン系ゴム、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水素化スチレン−ブタジエンブロック共重合体、エチレン系アイオノマー樹脂、水素化スチレン−イソプレンブロック共重合体等が挙げられる。これらの熱可塑性エラストマーは、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0028】
(5)各成分の配合割合
本発明で使用される繊維強化ポリオレフィン系樹脂材料は、必須成分としてプロピレン系樹脂(A)と有機長繊維(B)を含有しており、プロピレン系樹脂100重量部に対して、有機長繊維(B)の割合は5〜60重量部、好ましくは10〜50重量部、より好ましくは15〜45重量部である。
有機長繊維(B)の割合が5重量部以上であれば、補強効果が十分大きくなる傾向にあり、60重量部以内であれば、平面部の平均面密度(材料密度と部品意匠平面部平均肉厚の積)が2kg/m未満である軽量部品の成形が容易になり、部品外観(繊維の浮き)も良くなる傾向にある。
【0029】
本発明において繊維強化ポリオレフィン系樹脂材料にタルク(C)を添加する場合、その割合は、プロピレン系樹脂100重量部に対する割合として、0〜30重量部、好ましくは5〜25重量部、より好ましくは10〜20重量部である。タルクの割合が30重量部以内であれば、部品の面密度が高くならず軽量化が容易である上に、流動性が低下せず成形も容易になる。また、フローマーク外観も良くなる傾向にあり虎縞状の流れ模様が発生しにくい。
本発明において繊維強化ポリオレフィン系樹脂材料に熱可塑性エラストマー(D)を添加する場合、その割合は、プロピレン系樹脂100重量部に対する割合として、0〜30重量部、好ましくは5〜25重量部、より好ましくは10〜20重量部である。熱可塑性エラストマーの割合が30重量部以内であれば、部品の剛性が低下せず高温下での剛性維持が容易である。
【0030】
なお、プロピレン系樹脂(A)には、必要に応じて無機フィラー(C)、熱可塑性エラストマー(D)を添加できる他に、目的に応じ、所望の特性を付与するため、一般に熱可塑性樹脂に添加される公知の物質、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤などの安定剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、着色剤(染料や顔料)、潤滑剤、可塑剤、結晶化促進剤、結晶核剤などを更に配合することも可能である。
本発明で使用される繊維強化ポリオレフィン系樹脂材料は、低温下での製品衝撃試験において、試験後の成形品重量が試験前の成形品重量に対して90%以上、好ましくは95%以上、すなわち飛散片の重量割合が少ないことが望ましい。飛散片の重量割合が増すほど部品破壊時の人的被害の割合が高まるからである。また、この繊維強化ポリオレフィン系樹脂材料は、JIS−K7161に準拠した引張弾性率の80℃下における値が1000Mpa以上であり、かつ低温下での部品衝撃試験において破壊片が飛散しないことが望ましい。この範囲であれば、インパネ周辺部品などの高温にさらされる部品のたわみや変形などの抑制が容易である。そして、このような条件を満たす繊維強化ポリオレフィン系樹脂材料によって、薄肉の繊維強化軽量部品を容易に成形することができる。
【0031】
(6)有機長繊維強化ポリオレフィン樹脂成形材料ペレット
本発明において、繊維強化ポリオレフィン系樹脂材料は、プロピレン系樹脂(A)100重量部に対して、有機長繊維(B)5〜60重量部を含有してなる繊維強化樹脂材料を有機長繊維強化ポリオレフィン樹脂成形材料ペレット(以下、単に樹脂成形材料ペレットともいう)として、繊維強化軽量部品の成形に使用される。
【0032】
樹脂成形材料ペレットは、連続した有機長繊維(B)を繊維ラックからクロスヘッドダイを通して引きながら、プロピレン系樹脂(A)を含む溶融樹脂で含浸する方法(引き抜き成形法)により得られる。具体的には、図1のように、繊維は繊維ラック1から繊維束として押出機2に供給し、押出機2の先端に取り付けられたクロスヘッド(樹脂含浸ダイス3)の中に通しながら、クロスヘッドに樹脂を供給して含浸する。その後、樹脂が含浸された繊維束は、水槽4で冷却され、引取機5でカッター6に送られ、ペレット7となる。
すなわち、例えば、プロピレン系樹脂(A)に必要に応じて樹脂添加剤を加え、有機長繊維(B)をクロスヘッドダイに通して引き抜きながら、プロピレン系樹脂(A)を押出機から溶融状態でクロスヘッドダイに供給し、有機長繊維(B)にプロピレン系樹脂(A)を含浸被覆させ、溶融含浸物を加熱し、冷却後、引き抜き方向と直角に切断するのである。この方法によれば、有機長繊維(B)の損傷を起こすことなく、得られるペレットの長さ方向に有機長繊維(B)が同一長さで平行配列している有機長繊維強化ポリオレフィン樹脂成形材料ペレットが得られる。
【0033】
上記引き抜き成形法は、基本的には、連続した強化用繊維束を引き抜きながら樹脂を含浸する方法である。そして、その態様には、代表的な引き抜き成形法として、図1のように、クロスヘッドの中に繊維束を通しながら押出機などからクロスヘッドに樹脂を供給して含浸する方法が挙げられる。この他、樹脂のエマルジョン、サスペンジョン又は溶液を入れた含浸浴の中に繊維束を通して含浸する方法、樹脂の粉末を繊維束に吹きつけるか又は粉末を入れた槽の中に繊維束を通して繊維に樹脂粉末を付着させた後に樹脂を溶融して含浸する方法などが知られている。本発明では何れの態様も利用できるが、特に好ましいのはクロスヘッド方法である。また、これらの引き抜き成形法における樹脂の含浸操作は、1段で行うのが一般的であるが、2段以上に分けてもよく、更に、含浸方法を異にして行ってもよい。図1には4本の繊維が繊維束として押出機2に供給する状態を示したが、繊維の本数は特に制限されず、2〜10本程度、好ましくは3〜8本で適宜用途に応じて変更しうる。
【0034】
有機長繊維を含有するペレットを製造するときに、有機長繊維が溶融可塑化しない様な加工温度でオレフィン系樹脂と複合化されることが好ましい。加工温度は、有機長繊維が供される部位において160℃以上が好適である。加工温度の上限は、有機長繊維の融点(融点の無いものについては軟化点)が320℃以下の場合はそれより20℃低い温度以下とし、該融点が320℃以上の場合、及び有機長繊維が加熱しても溶融可塑化しない場合は300℃以下とすることが好適である。いずれの有機長繊維を選択した場合でも、ペレット加工温度が300℃以内であれば、オレフィン系樹脂が著しく熱分解劣化せず、引火または発火する恐れもない。
【0035】
溶融含浸物は、加熱反応後、押出されてストランドとなり、切断可能な温度まで冷却され、カッターで切断されてペレットとされる。ペレットの形状としては、円柱状、角柱状、板状、さいころ状などが挙げられる。このようにして得られたペレットでは、有機長繊維(B)が実質的に同じ長さで且つ各繊維の方向が押し出された方向(すなわちペレットの長さ方向)に揃っている。また、上記のペレットは、種類や濃度の異なる2種類以上の有機長繊維を使用したもの、プロピレン系樹脂の混合物を使用したものでもよい。
【0036】
樹脂成形材料ペレットは、上記引き抜き成形法では、ペレットの長さ方向に有機長繊維(B)が同一長さで平行配列したものとなるが、このほかに、有機長繊維がオレフィン系樹脂中にランダムに絡まりあうように分散しているコンパウンドペレットでもよい。なお、本発明において、「ペレット」は、上記の狭義のペレットの他に、ストランド状、シート状、平板状なども含む広義の意味で使用されるものとする。
【0037】
本発明の繊維強化軽量部品に用いられる有機長繊維強化ポリオレフィン樹脂成形材料ペレットの寸法は、通常4〜50mmであり、好ましくは4〜20mm、更に好ましくは4〜10mmである。ペレット中の有機長繊維(B)の長さがこの範囲であれば、充分な部品性能が得られ、ペレットの射出成形機への供給が容易となる。
【0038】
2.繊維強化軽量部品とその製法
本発明の繊維強化軽量部品は、上記の様にして得られた繊維強化ポリオレフィン系樹脂材料のペレットを用いて、自動車用内装部品の平面部の平均面密度(材料密度と部品意匠平面部平均肉厚の積)が2kg/m未満となるように射出成形されたものである。
【0039】
ここで、平面部の平均面密度とは、材料密度(繊維強化ポリオレフィン系樹脂材料の密度)と部品意匠平面部(エンボス加工等が施される側の平面部分)の平均肉厚の積で求められるものである。
この平均面密度は、2kg/m未満であり、好ましくは1.9kg/m以下、より好ましくは1.8kg/m以下である。平均面密度が、2kg/m未満であれば、部品表面に有機長繊維の浮きが目立ちにくくなる。
したがって、本発明の自動車内装部品は、材料密度(D:単位g/cm)と部品の肉厚(T:単位mm)との積(D×T)が2kg/mとなるように、材料密度を勘案して部品の肉厚を設定することが好ましい。例えば、プロピレン系樹脂100重量部にポリエチレンテレフタレート繊維25重量部を含有するプロピレン系樹脂材料の密度が0.98g/cmの場合、部品の肉厚を2040μm未満にすると、本発明の自動車内装部品が得られることになる。
【0040】
前記の様にして得られた樹脂成形材料ペレットは、単独で又は他の熱可塑性樹脂、好ましくはプロピレン系樹脂(A)と同じタイプの樹脂で希釈し、射出成形の原料として使用される。希釈する樹脂の種類および比率は、部品に所望される物性値により定められる。
本発明において使用される有機長繊維強化ポリオレフィン樹脂成形材料ペレットは、溶融樹脂温度に加熱して、内面が所定の形状にされた金型内に所定の温度、射出圧力、射出速度で供給する。溶融樹脂温度は、成形材料ペレットのプロピレン系樹脂量などにもよるが、例えば180〜230℃とする。また、金型温度は、成形体の厚さや形状にもよるが、例えば30〜50℃に維持する。射出条件は、装置の種類や成形体の厚さや形状にもよるが、例えば射出圧力40〜100MPa、射出速度50〜200mm/秒とすることができる。これにより成形材料ペレットが金型で射出成形され、金型のシボ転写性が良く、繊維の浮きが目立たない成形体となる。本発明によれば、特定の組成を有する有機長繊維強化ポリオレフィン樹脂成形材料を用いているので、射出成形時の折損が少なく、成形体内部に有機長繊維を均一に分散することができる。
特に射出成形時の金型内圧を30MPa程度に向上させれば、有機長繊維(B)が金型表面でマトリクス樹脂内に押さえ込まれて薄肉化されるので、有機長繊維(B)とマトリクス樹脂の界面が密接となり、従来の繊維系樹脂で問題となっていた繊維の表面浮きと呼ばれる外観不良を防ぐことが出来、高い外観性能を達成することができる。
【0041】
また、部品の肉厚を平面の平均面密度が2kg/m未満になる範囲で厚めにすれば、有機長繊維の濃度を低下させることが可能となるので、繊維の浮きが低減されて外観性能は維持向上する。
更に、本発明の繊維強化軽量部品は、従来公知である多量のゴム成分、タルクなどを配合した軽量部品よりも耐熱剛性(高温下での剛性)が高い。そのため本発明の自動車用内装部品は、上記射出成形体を単体で用いることができる。また、低温下で部品に衝撃が加わって破壊が起きた際に、破壊点からの破壊伝播が繊維により抑制されるので、部品の飛散が無く、且つ破壊面もシャープエッジになり難いため、部品近傍に人体があっても切傷などの二次被害を引き起こすこともない。
更には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、本発明の有機長繊維強化ポリオレフィン樹脂成形材料ペレットに公知の化学発泡剤(無機系や有機系の化学発泡剤)などを添加して射出成形し、繊維強化発泡軽量部品を得ることが出来る。射出発泡成形法としては、樹脂射出容量(計量)を少なめにして射出するショートショット成形法や通常の樹脂量を射出充填した後に金型を後退させるコアバック成形法などを用いることが出来るが、発泡倍率を向上させやすい点では後者のコアバック成形法が好ましい。
【0042】
本発明の繊維強化軽量部品は、表面に皮革状あるいは幾何学状等の凹凸の浮き出し模様を施したシボ付き(エンボス模様加工の施された)の成形体とすることができる。このためには、射出成形用金型の意匠面側に、エッチングなどによる各種シボ加工を施すことが好ましい。また、溶融状態、或いは半溶融状態でシボ付け(エンボス模様加工)用ロールとゴムロール等の圧着ロールの間を通す方法、加熱ドラム、赤外線ヒーターにより再加熱し、シボ付け(エンボス模様加工)用ロールとゴムロール等の圧着ロールの間を通す方法、エンボス模様を付した金型を用いてプレスする方法、更にエンボス模様を付した雌雄金型を用いて真空成形することにより、賦形と同時にシボ付け(エンボス模様加工)する方法も用いる事が出来る。
【0043】
本発明の自動車内層用部品は、プロピレン系樹脂(A)100重量部に対して、有機長繊維(B)5〜60重量部を含有してなる繊維強化プロピレン系樹脂材料からなる平均面密度が2kg/cm未満の射出成形体と基材とを含む多層成形体であってもよい。
基材層を構成するポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、或いはエチレンとプロピレンとの共重合体、エチレン及び/又はプロピレンと他の成分との共重合体が挙げられる。基材層中には、これらのポリオレフィン系樹脂の2種以上が含まれていても良い。基材層におけるポリオレフィン系樹脂の含有量は、高い方が好ましく、通常50重量%以上、好ましくは80重量%以上、更に好ましくは95重量%以上である。
また、積層製品としての軽量化を目的に、基材層を発泡体層として使用することも出来る。
【0044】
本発明の自動車内装部品としては、インストルメントパネル、ドアトリム、コンソールボックス、ピラー、ヘッダートリム等が挙げられる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例により限定されるものではない。以下の諸例で使用した材料および評価方法は以下に示すとおりである。
【0046】
<使用材料>
(1)プロピレン系樹脂(A)
A−1:ポリプロピレン(ブロック共重合体、MFR(JIS K7210に準拠し、温度230℃、荷重21.18Nで測定)100g/10分)
日本ポリプロ社製「ノバテックPP BC10AHA」
A−2:ポリプロピレン(ブロック共重合体、MFR(JIS K7210に準拠し、温度230℃、荷重21.18Nで測定)60g/10分)
日本ポリプロ社製「ノバテックPP BC06C」
【0047】
(2)有機長繊維(B)
B−1:ポリエステル繊維(帝人ファイバー社製PET繊維、結晶融点 265℃、単糸繊度6.68dtex、引張強度7cN/dtex、ロービング品)
【0048】
(3)無機フィラー(C)
C−1:タルク(平均粒径7.4μm、比表面積7.0m/g)、日本タルク社製「K−1」
C−2:ガラス繊維(平均繊維径13μm、長さ3mm)、日本電気硝子社製「T480」
【0049】
(4)熱可塑性エラストマー(D)
D−1:エチレン・オクテン−1エラストマー
ダウ・ケミカル日本社製「ENGAGE8200」、MFR5g/10分(190℃、21.18N)、密度0.87g/cm
【0050】
(5)その他成分
MH−PP:無水マレイン酸変性ポリオレフィン、アルケマ社製「OREVAC CA100」、無水マレイン酸グラフト率0.8重量%
【0051】
<成形材料作製>
<成形材料の特性評価方法>
1.材料密度
JIS−K7152−1に準拠し、ISO金型タイプAを用いて、溶融樹脂温度200℃にて、多目的試験片を作製した。次いで、多目的試験片の中央直線部(長さ8mm)を切断して短冊状の試験片を得、JIS−K7112準拠して水中置換法にて密度を測定した。
2.引張弾性率
JIS−K7152−1に準拠し、ISO金型タイプAを用いて、溶融樹脂温度200℃にて、多目的試験片を作製した。次いで、多目的試験片の中央直線部(長さ8mm)を切断して短冊状の試験片を得、JIS−K7161に準拠して試験温度80℃での引張弾性率を測定した。
3.型内流動性
肉厚2mmのスパイラル状金型(幅10mm)を用いて、溶融樹脂温度210℃、金型温度40℃、射出圧力60MPa、射出速度100mm/秒にて射出成形し、ゲート部からの流動長さを評価した。
【0052】
<成形品性能評価>
1.面密度
前記記載の材料密度(g/cm)と成形品平面部の平均肉厚(mm)を乗じた値から単位面積あたりの重量(面密度kg/m)を算出した。
2.外観性能{(繊維の浮き、フローマーク外観(虎縞状の模様))
平板金型(幅200mm、長さ400mm)を用いて、表1及び表2に示した肉厚になるように、溶融樹脂温度210℃、金型温度40℃、射出圧力60MPa、射出速度100mm/秒にて射出成形し、鏡面仕上げの平板を得、下記評価基準にて判定を行った。(自動車内装部品には皮革状や幾何学状などのシボ加工が成されていることが多いが、性能判断を明確にする為、鏡面で実施した。)
【0053】
繊維浮き
○・・・繊維は殆ど目立たない
△・・・繊維が少し見える
×・・・繊維が明確に見える
【0054】
フローマーク外観(虎縞模様)
○・・・発生していない、若しくは目立たない。
△・・・中程度発生しているが、目立ちは少ない
×・・・発生していて目立つ。
【0055】
3.低温衝撃性(破壊飛散性)
前記2の外観性能に用いた成形品を150mm×150mmの平板状に切削して、下記の条件で試験温度−30℃での高速面衝撃試験(ポンチでの貫通試験)を実施し破壊飛散性を観察した。
サポート直径 2インチφ
ポンチ直径 0.5インチφ(ポンチ先端R 0.25インチ)
打撃速度 2.5m/秒
【0056】
飛散性
○・・・試験後の成形品重量が試験前の成形品重量に対して95%以上
△・・・試験後の成形品重量が試験前の成形品重量に対して90%〜95%未満
×・・・試験後の成形品重量が試験前の成形品重量に対して90%未満
【0057】
4.成形性
成形材料の特性評価である型内流動性の値を半減し、肉厚1mmあたりの流動長(L/T値)を求め、そのL/T値に実施例1〜13及び比較例1〜7の肉厚を乗じた実成形品での流動長より下記判定を行った。
成形性
◎・・・500mm以上
○・・・300〜500mm
×・・・300mm満
【0058】
(実施例1〜13)、(比較例5〜7)
ポリプロピレン(A−1、A−2)とPET長繊維(B−1)とタルク(C−1)と熱可塑性エラストマー(D−1)とマレイン酸変性ポリプロピレンを表1及び表2に示す配合で使用し、引き抜き成形を行い、有機長繊維強化ポリプロピレンペレットを製造した。製造装置としては、クロスヘッドダイを有する二軸押出機(日本製鋼所(株)製「TEX30」、L/D=42、シリンダー径30mm、シリンダー温度:190〜220℃、クロスダイヘッド温度:220℃)を使用した。なお、ペレット長は8mm(有機長繊維の長さも8mm)となるように調節した。
次に、得られた有機長繊維強化ポリプロピレンペレットを溶融樹脂温度210℃に加熱し、金型温度40℃、射出圧力60MPa、射出速度100mm/秒にて射出成形し、鏡面仕上げの平板を得た。この平板を多目的試験片として、前記判定基準にて成形材料の特性(材料密度、引張弾性率、型内流動性)を評価した。また、前記方法で成形品の面密度、外観性能{(繊維浮き、フローマーク外観(虎縞状の模様))を評価した。結果を表1、2に示した。
【0059】
(比較例1〜4)
ポリプロピレン(A−1)とタルク(C−1)とガラス繊維(C−2)と熱可塑性エラストマー(D−1)と無水マレイン酸変性ポリオレフィン(MH−PP)を表2に示す配合で使用し、二軸押出機(日本製鋼所製「TEX30」)にて210℃で溶融混練して調製した。
次に、得られた有機長繊維強化ポリプロピレンペレットを溶融樹脂温度210℃に加熱し、金型温度40℃、射出圧力60MPa、射出速度100mm/秒にて射出成形し、鏡面仕上げの平板を得た。この平板を多目的試験片として、前記判定基準にて成形材料の特性(材料密度、引張弾性率、型内流動性)を評価した。また、前記方法で成形品の面密度、外観性能{(繊維浮き、フローマーク外観(虎縞状の模様))を評価した。結果を表2に示した。
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
「評価」
実験結果を示した表1及び表2より、次のことが分かる。実施例1〜13に示された本発明の繊維強化軽量部品は、プロピレン系樹脂(A)100重量部に対して、有機長繊維(B)5〜60重量部を含有してなる繊維強化ポリオレフィン系樹脂材料を用いて、平均面密度(材料密度と部品意匠平面部平均肉厚の積)が2kg/m未満となるように成形しているので、軽量性と外観性能に優れ、高温剛性と低温衝撃時の非飛散性が得られている。したがって、自動車内装部品への適用が極めて有用である。なお、実施例11は、MH−PPを多めに配合したために、若干、破壊飛散性が低下している。また、実施例13は、プロピレン系樹脂としてMFRがやや小さいものを用いたために、若干、外観性能が低下している。しかし、この程度であれば、実用上問題がない。
【0063】
これに対して、比較例1は、有機長繊維を含有しない繊維強化ポリオレフィン系樹脂材料を用いたために、肉厚が大きくなり面密度が高くなり、比較例2〜3は、有機長繊維を含有しない繊維強化ポリオレフィン系樹脂材料を用いて、肉厚を小さくしたので、高剛性とフローマ−ク外観性能が低下し、比較例4は、無機フィラーとしてガラス繊維を配合しているために、繊維浮きによる外観性能が劣る。また、比較例1〜4は何れも低温衝撃時の非飛散性が悪化した。
また、比較例5〜6は、有機長繊維を含有した繊維強化ポリオレフィン系樹脂材料を用いたが、肉厚が大きく面密度が高くなったために、外観性能が悪化しており、比較例7は、有機長繊維の含有量を多くしたために、外観性能と成形性が悪化した。したがって、これら比較例の材料では、自動車内装部品への適用は困難である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の軽量自動車内装部品は、成形材料の成形性が良く、しかも軽量性と外観性能に優れ、高温剛性と低温衝撃時の非飛散性を有することから、例えばインストルメントパネル、ドアトリム、コンソールボックス、ピラー等として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン系樹脂(A)100重量部に対して、有機長繊維(B)5〜60重量部を含有してなる繊維強化プロピレン系樹脂材料により射出成形された自動車用内装部品であって、
繊維強化プロピレン系樹脂材料により形成される平面部の平均面密度(材料密度と部品意匠平面部平均肉厚の積)が2kg/m未満であることを特徴とする軽量自動車内装部品。
【請求項2】
前記繊維強化プロピレン系樹脂材料は、さらに、プロピレン系樹脂(A)100重量部に対して、無機フィラー(C)0〜30重量部及び/又は熱可塑性エラストマー(D)0〜30重量部を含有することを特徴とする請求項1に記載の軽量自動車内装部品。
【請求項3】
前記繊維強化プロピレン系樹脂材料は、低温下での製品衝撃試験において、試験後の飛散片の重量が試験前製品重量の10重量%未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載の軽量自動車内装部品。
【請求項4】
前記繊維強化プロピレン系樹脂材料は、JIS−K7161に準拠した引張弾性率の80℃下における値が1000Mpa以上であり、かつ低温下での部品衝撃試験において破壊片が飛散しないことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の軽量自動車内装部品。
【請求項5】
プロピレン系樹脂(A)は、メルトフローレート(JIS K7210に準拠し、温度230℃、荷重21.18Nで測定した値)が60g/10分以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の軽量自動車内装部品。
【請求項6】
有機長繊維(B)は、結晶融点(融点の観測されないものは軟化点)が200℃以上、若しくは熱可塑性でないことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の軽量自動車内装部品。
【請求項7】
有機長繊維(B)は、引張強度が5cN/dtex以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の軽量自動車内装部品。

【図1】
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【公開番号】特開2011−137077(P2011−137077A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297443(P2009−297443)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(596133485)日本ポリプロ株式会社 (577)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】