運転支援装置
【課題】車両が検出した路面標示に対して制御対象物が複数関連付けられた場合であっても、不要な案内や誤制御が行われることなく、正確な制御対象物に対する運転の補助を行うことを可能とした運転支援装置を提供する。
【解決手段】車両2から所定範囲内に路面標示が存在すると判定された場合に、後方カメラ3によって撮像された画像から路面標示を検出し、検出された路面標示に関連付けられた制御対象物が単数である場合、又は前記関連付けられた制御対象物が複数であって且つそれぞれの物間距離の差が制御実施可否距離以上である場合に、車両から案内及び車両制御の対象となる制御対象物までの対象距離を算出し、算出された対象距離に基づいて、制御対象物に応じた案内及び車両制御を行うように構成する。
【解決手段】車両2から所定範囲内に路面標示が存在すると判定された場合に、後方カメラ3によって撮像された画像から路面標示を検出し、検出された路面標示に関連付けられた制御対象物が単数である場合、又は前記関連付けられた制御対象物が複数であって且つそれぞれの物間距離の差が制御実施可否距離以上である場合に、車両から案内及び車両制御の対象となる制御対象物までの対象距離を算出し、算出された対象距離に基づいて、制御対象物に応じた案内及び車両制御を行うように構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面上に形成された路面標示を検出することによって、制御対象物に対する適切な運転の補助を行う運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ナビゲーション装置の地図データから得られる道路情報や、GPS等によって特定される現在地等の車両の走行に係る各種情報を取得し、運転手に対する報知や、運転の補助、さらには運転への介入を行うことで車両事故を防止する運転支援装置について提案されている。
そして、そのような運転支援装置の中には、より正確なタイミングで必要な報知や車両の制御を行う為に、車両の全面にカメラ等の撮像手段を設け、撮像された画像に基づいて報知や車両の制御を行うものがあった。例えば、特開2004−86363号公報には、自車両が走行する道路上に形成された一時停止線を、車両の前方に向けて設置されたCCDカメラにより撮像した画像データから検出し、検出結果に基づいて交差点での運転補助を実行する車両用運転補助装置について記載されている。
【特許文献1】特開2004−86363号公報(第8頁〜第10頁、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記した特許文献1に記載された車両用運転補助装置では、制御対象物となる一時停止線を直接CCDカメラ等の検出手段によって検出し、検出した制御対象物に対する案内や車両の制御を行っていたが、これらの装置では実用化する場合、以下に示すような課題があった。
【0004】
先ず、制御対象物に対する案内や車両の制御を行う為には、制御対象物から車両まで、ある程度の距離が離れた状態で制御対象物を検出する必要があるので、遠方にある制御対象物を明確に撮像する高性能カメラ等の高価なシステムが必要となっていた。また、たとえ高性能カメラを用いたとしても、制御対象物を検出可能な距離には限界があり、必要な案内や車両の制御を行うのに間に合わない結果も生じていた。更に、制御対象物を何らかの原因によって検出できなかった場合には、その制御対象物に対する必要な案内や車両の制御を行うことはできなかった。
また、車両の走行方向に対して垂直方向に線分を有する制御対象物(例えば、一時停止線)を走行中の車両に備え付けられたカメラで撮像しようとすると、撮像した画像中の制御対象物にブレが生じ、正しく認識できない虞があった。
【0005】
そこで、上記問題を解決する手段として、車両の後方環境を撮像する後方カメラと路面上に形成された最高速度や矢印等の路面標示を用いて、より正確に制御対象物までの距離を算出することが考えられる。具体的には、路面標示の形成された位置を特定する位置情報と、その路面標示の付近にある制御対象物までの道なり距離(以下、物間距離という)を予め記憶しておく。そして、後方カメラを用いて車両が走行する路面に形成された路面標示を検出し、検出された路面標示から制御対象物までの物間距離に基づいて、車両から制御対象物までの道なり距離(以下、対象距離という)を正確に算出する。そして、算出された対象距離に基づく的確なタイミング及び制御内容で制御対象物に対する注意喚起や減速等の車両制御を行うことが可能となる。
【0006】
しかし、上記のように路面標示と制御対象物を関連付けることにより、車両から制御対象物までの距離を算出する手段においては、特に路面標示に関連付けられた制御対象物が複数ある場合が問題となっていた。この問題点について、図16に示すように分岐を有する道路101を車両102が走行する場合であって、道路101の路面に形成された最高速度が40km/hであることを示す路面標示103に対して、一方の第1分岐道路104の路面に形成された第1停止線105と他方の第2分岐道路106の路面に形成された第2停止線107の2つの制御対象物が関連付けられている場合を具体例にして以下に説明する。
【0007】
ここで、車両102に搭載されたデータベースには予め路面標示103から第1停止線105までの物間距離である第1物間距離M1と路面標示103から第2停止線107までの物間距離である第2物間距離M2とが路面標示103に対応付けて記憶されている。
そして、車両102が後方カメラによって走行中に路面標示103を検出すると、車両102から第1停止線105までの距離である第1対象距離T1と第2停止線107までの距離である第2対象距離T2がそれぞれ算出可能となる。
しかし、分岐点を通過する前には車両102がその後の道路分岐においていずれの道路に進入するか特定できない。従って、分岐点を通過する前においては、第1停止線105を対象とした注意喚起や車両制御と、第2停止線107を対象とした注意喚起や車両制御のどちらを行うのが良いのかが問題となる。その際、仮に分岐点を通過するまでは、車両による走行距離が長い方の制御対象物を対象とした注意喚起や車両制御を行うこととすると、その後に分岐点で車両による走行距離が短い方の制御対象物が形成された道路へと車両が進入した場合には、注意喚起や車両制御が間に合わなくなる虞がある。従って、分岐点を通過するまでは車両による走行距離が短い方の制御対象物を対象とした注意喚起や車両制御を行うことが好ましい。従って、データベースに記憶された各制御対象物までの物間距離を比較して、分岐点を通過するまでは物間距離が短い方の制御対象物を対象とした注意喚起や車両制御を行うことが考えられる。
【0008】
しかしながら、各制御対象物までの物間距離(図16では第1物間距離M1と第2物間距離M2)の距離の差がほとんどない場合には、更に以下の問題点が生じる。即ち、データベースに記憶された物間距離は路面標示と制御対象物を結ぶ道路の中央に沿って計測した距離であるので、車両が蛇行や車線変更を行うとすると実際に車両が走行する走行距離とは多少の誤差が生じる。更に、制御対象物が形成された道路が細街路である場合も多く、そのような場合には、実際の物間距離とデータベースに記憶された物間距離との間にもある程度の誤差が生じる場合が多い。
従って、第1物間距離M1と第2物間距離M2との距離の差がほとんどない場合には、データベースに記憶された物間距離が短い方の制御対象物であっても、実際に車両が制御対象物まで走行する走行距離が短い方の制御対象物とは限らない。即ち、走行距離が短い方の制御対象物を正確に特定することができず、分岐点を通過するまでにおいては、どちらの制御対象物を対象とした注意喚起や車両制御を行うのかを判定することは非常に困難である。また、仮に分岐点を通過するまでにおいて任意に選択した何れか一方の制御対象物を対象とした注意喚起や車両制御を行うこととすると、不要な案内や誤制御を実行してしまうこととなっていた。
【0009】
本発明は前記従来における問題点を解消するためになされたものであり、車両が検出した路面標示に対して制御対象物が複数関連付けられた場合であっても、不要な案内や誤制御が行われることなく、正確な制御対象物に対する運転の補助を行うことを可能とした運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため本願の請求項1に運転支援装置は、路面に形成された路面標示の位置情報を一又は複数の制御対象物までの道なり距離である物間距離に関連付けて記憶した標示情報記憶手段(42)と、車両(2)に配置され、車両の周辺を撮像する撮像手段(3)と、前記撮像手段により撮像した画像に基づいて、前記車両が走行する路面に形成された路面標示を検出する路面標示検出手段(6)と、前記路面標示検出手段によって検出された路面標示に関連付けられた一又は複数の制御対象物までの物間距離を前記標示情報記憶手段より取得する物間距離取得手段(6)と、前記関連付けられた制御対象物が単数である場合、又は前記関連付けられた制御対象物が複数であって且つ前記物間距離取得手段で取得されたそれぞれの物間距離の差が所定距離以上である場合に、車両から前記関連付けられた制御対象物までの道なり距離である対象距離を算出する対象距離算出手段(6)と、前記対象距離算出手段の算出結果に基づいて利用者の運転を補助する運転補助手段(6)と、を有することを特徴とする。
尚、ここで「路面標示」とは、道路交通に対し、必要な案内、誘導、警戒、規制、指示等についてペイント類又は道路鋲又はこれに類するもの等を用い、一定の様式化された線及び文字、記号を路面に設置したものをいい、例えば、停止線や横断歩道等がある。
また、「制御対象物」とは、利用者に対して運転の支援(例えば、制御対象物に関する案内を行うこと、車両の制御を行うこと等)を行うべき道路上の対象をいい、例えば、一時停止線、交差点、カーブの進入口、合流帯等がある。
【0011】
また、請求項2に係る運転支援装置は、請求項1に記載の運転支援装置において、道路に関する情報を記憶した道路情報記憶手段(41)と、前記道路情報に基づいて車両の進行方向に道路の分岐があるか否かを判定する分岐判定手段(6)と、を有し、前記対象距離算出手段(6)は、前記分岐判定手段によって道路の分岐があると判定された場合に前記路面標示検出手段で検出された路面標示に関連付けられた制御対象物が複数あるか否か判定する対象物数判定手段(6)を備え、前記対象物数判定手段で路面標示に関連付けられた制御対象物が複数あると判定された場合であって且つ前記物間距離取得手段で取得されたそれぞれの物間距離の差が所定距離以上である場合に、車両から前記関連付けられた制御対象物までの対象距離を算出することを特徴とする。
【0012】
また、請求項3に係る運転支援装置は、請求項2に記載の運転支援装置において、前記運転補助手段(6)は、車両(2)が分岐を通過するまでは路面標示から制御対象物までの物間距離が最も短い制御対象物を対象とした前記対象物距離算出手段(6)の算出結果に基づいて運転の補助を行い、車両が分岐を通過した後は車両が進入した道路の路面に形成された制御対象物を対象とした前記対象物距離算出手段の算出結果に基づいて運転の補助を行うことを特徴とする。
【0013】
また、請求項4に係る運転支援装置は、請求項2又は請求項3に記載の運転支援装置において、前記分岐判定手段(6)によって道路の分岐があると判定された場合に車両が現在走行する道路と分岐後の何れか一の道路が道なりの関係にあるか否かを判定する道なり判定手段(6)を有し、前記運転補助手段(6)は、前記道なり判定手段によって車両が現在走行する道路と分岐後の何れか一の道路が道なりの関係にあると判定された場合に、道なりの関係にあると判定された道路にある制御対象物を対象とした前記対象物距離算出手段(6)の算出結果に基づいて運転の補助を行うことを特徴とする。
【0014】
また、請求項5に係る運転支援装置は、請求項2乃至請求項4のいずれかに記載の運転支援装置において、走行に関する案内を行う誘導経路を設定する誘導経路設定手段(6)と、前記分岐判定手段(6)によって道路の分岐があると判定された場合に分岐後の何れか一の道路が誘導経路に設定されているか否かを判定する誘導経路判定手段(6)と、を有し、前記運転補助手段(6)は、前記誘導経路判定手段によって何れか一の道路が誘導経路に設定されていると判定された場合に、誘導経路に設定されていると判定された道路にある制御対象物を対象とした前記対象物距離算出手段の算出結果に基づいて運転の補助を行うことを特徴とする。
【0015】
また、請求項6に係る運転支援装置は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の運転支援装置において、車両(2)を制御する車両制御手段(5)を有し、前記運転補助手段(6)は、車両から前記制御対象物までの対象距離に基づいて前記車両制御手段による車両の制御を行うことを特徴とする。
【0016】
更に、請求項7に係る運転支援装置は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の運転支援装置において、利用者に対して走行に関する案内を行う走行案内手段(7、8)を備え、前記運転補助手段(6)は、車両(2)から前記制御対象物までの対象距離に基づいて前記走行案内手段による案内を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
前記構成を有する請求項1に記載の運転支援装置によれば、車両が検出した路面標示に対して制御対象物が複数関連付けられた場合であっても、不要な案内や誤制御が行われる虞の有る状況での案内や車両制御を予め行わないことにより、運転者に関連する制御対象物を対象とした注意喚起や車両制御を行うことが可能となる。また、演算処理を行う回数を減らすことにより、制御部の処理負担についても軽減することが可能となる。
【0018】
また、請求項2に記載の運転支援装置によれば、分岐の有る道路を車両が走行する場合であって、車両が検出した路面標示に対して分岐後の各道路に形成された複数の制御対象物が関連付けられた場合であっても、不要な案内や誤制御が行われる虞の有る状況での案内や車両制御を予め行わないことにより、分岐で車両が走行する方の道路に形成された制御対象物を対象とした注意喚起や車両制御を行うことが可能となる。また、演算処理を行う回数を減らすことにより、制御部の処理負担についても軽減することが可能となる。
【0019】
また、請求項3に記載の運転支援装置によれば、分岐の有る道路を車両が走行する場合であって、車両が検出した路面標示に対して分岐後の各道路に形成された複数の制御対象物が関連付けられた場合であっても、車両が分岐に到達する前の不要な案内や誤制御が行われる虞の有る状況では制御対象物に対する案内や車両制御を予め行わないので、運転者を困惑わせる虞が無い。また、車両が分岐を通過後では、分岐で車両が走行する方の道路に形成された制御対象物を対象とした注意喚起や車両制御を行うことが可能となる。
【0020】
また、請求項4に記載の運転支援装置によれば、分岐前の道路と道なりの関係にある分岐後の道路を車両が走行する道路と予測し、車両が走行すると予測される道路に形成された制御対象物を対象とした注意喚起や車両制御を行うので、不要な案内や誤制御が行われることを防止することができる。
【0021】
また、請求項5に記載の運転支援装置によれば、誘導経路に設定された分岐後の道路を車両が走行する道路と予測し、車両が走行すると予測される道路に形成された制御対象物を対象とした注意喚起や車両制御を行うので、不要な案内や誤制御が行われることを防止することができる。
【0022】
また、請求項6に記載の運転支援装置によれば、車両から制御対象物までの対象距離に基づいて車両の制御を行うので、遠方を撮像する為にフロントカメラによる撮像装置等の高額な装置を必要とすることなく、確実に制御対象物の種類の応じた車両の制御を行うことが可能となる。
【0023】
更に、請求項7に記載の運転支援装置によれば、車両から制御対象物までの対象距離に基づいて走行に関する案内を行うので、遠方を撮像する為にフロントカメラによる撮像装置等の高額な装置を必要とすることなく、確実に制御対象物の種類の応じた走行の案内を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係る運転支援装置について具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。
先ず、本実施形態に係る運転支援装置1の概略構成について図1を用いて説明する。図1は本実施形態に係る運転支援装置1の概略構成図である。
図1に示すように、本実施形態に係る運転支援装置1は、車両2に対して設置された後方カメラ(撮像手段)3、ナビゲーション装置4、車両ECU(車両制御手段)5等で構成されている。
【0025】
後方カメラ3は、例えばCCD等の固体撮像素子を用いたものであり、車両2の後方に装着されたナンバープレートの上中央付近に取り付けられ、視線方向を水平より45度下方に向けて設置される。そして、駐車時に車両2の進行方向となる車両後方を撮像し、その撮像した画像(以下、BGM(バック・ガイド・モニタ)画像とする)はナビゲーション装置の液晶ディスプレイ7に表示される。一方、通常走行中においては、後述のように車両2の周囲の路面上に形成された停止線、横断歩道、文字列、車両の最高速度等の路面標示を撮像する。そして、撮像された路面標示の画像に基づいて車両2から停止線や交差点、合流帯、カーブ進入口等の車両の制御を行う対象となる制御対象物までの距離が間接的に算出される。
【0026】
また、ナビゲーション装置4は、ナビゲーションECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)6と、車両2の室内のセンターコンソール又はパネル面に備え付けられ、地図や目的地までの探索経路を表示する液晶ディスプレイ(走行案内手段)7と、経路案内に関する音声ガイダンスを出力するスピーカ(走行案内手段)8と、車両2の現在地と進行方向を地図上で特定する現在地検出部9と、地図を表示するための地図データや路面上に形成された路面標示の種類及び位置に関する情報が記憶されたデータ記録部10と、情報センタ等と通信を行う為の通信装置14とから構成されている。
【0027】
ナビゲーションECU(路面標示検出手段、物間距離取得手段、対象距離算出手段、運転補助手段、対象物数判定手段、道なり判定手段、誘導経路設定手段、誘導経路判定手段)6は、通常の経路探索及び経路案内の処理の他に、後方カメラ3で撮像した撮像画像から車両2が走行する路面に形成された路面標識を検出する検出処理、一定条件を満たした場合に車両2から停止線や交差点、合流帯、カーブ進入口等の制御対象物までの道なり距離を、検出した路面標示から間接的に算出する算出処理、算出された距離に基づいて制御対象物に対する注意喚起や車両制御処理等を行う電子制御ユニットである。尚、ナビゲーションECU6の詳細な構成については後述する。
【0028】
そして、車両ECU5は、エンジン、変速機、アクセル、ブレーキ等の作動を制御する車両2の電子制御ユニットであり、ブレーキアクチュエータ11、アクセルアクチュエータ12、AT(Automatic Transmission)13が接続されている。そして、ナビゲーションECU6は、所定の条件を満たした場合に車両ECU5を介してブレーキアクチュエータ11、アクセルアクチュエータ12、AT13に制御信号を送信し、ブレーキ圧やエンジンに吸入する空気量や変速比を変化させ、制動力を自動で付与させる。
【0029】
次に、本実施形態に係る運転支援装置1の制御系に係る構成について特にナビゲーション装置4を中心にして図2に基づき説明する。図2は本実施形態に係る運転支援装置1の制御系を模式的に示すブロック図である。
図2において、運転支援装置1の制御系は、ナビゲーション装置4と、車両ECU5を基本にして構成され、各制御手段に対して所定の周辺機器が接続されている。
【0030】
以下に、ナビゲーション装置4を構成する各構成要素について説明すると、現在地検出部9は、GPS31、地磁気センサ32、ジャイロセンサ33、ステアリングセンサ34、速度センサ35、高度計(図示せず)等からなり、自車の現在地、方位、自車速度、所定地点からの走行距離等を検出することが可能となっている。
【0031】
具体的には、GPS31は、人工衛星によって発生させられた電波を受信することにより、地球上における自車の現在地及び現在時刻を検出する。
また、地磁気センサ32は、地磁気を測定することによって自車方位を検出する。
そして、ジャイロセンサ33は自車の旋回角を検出する。また、ジャイロセンサ33によって検出された旋回角を積分することにより、自車方位を検出することができる。
また、ステアリングセンサ34は、ステアリング装置の内部に取り付けられており、ステアリングの回動角を検出する。
更に、速度センサ35はエンジンから一定走行距離毎に発生される車速パルスに基づいて、自車速度や移動速度(積算移動距離)を検出する。
【0032】
また、データ記録部10は、外部記憶装置及び記録媒体としてのハードディスク(図示せず)と、ハードディスクに記録された所定のプログラム、ナビゲーション装置4の経路案内及び地図表示に必要な情報が格納された地図DB41、路面標示に関する情報が格納された路面標示DB(標示情報記憶手段)42等を読み出すとともにハードディスクに所定のデータを書き込む為のドライバである記録ヘッド(図示せず)とを備えている。
【0033】
ここで、地図DB41は、ナビゲーション装置4の経路案内及び地図表示に必要な地図情報が記録されたDBである。そして、地図情報としては、例えば、地図を表示するための地図データ、各交差点に関する交差点データ、ノード点に関するノードデータ、道路に関する道路データ、経路を探索するための探索データ、施設に関する施設データ、地点を検索するための検索データ等がある。
【0034】
一方、路面標示DB42は、路面上に形成された路面標示に関する路面表示情報が記憶されたDBである。そして、路面表示情報としては、路面上に形成された路面標示の種類(例えば、停止線、横断歩道、文字列、最高速度)に関する種類情報、検出された路面標示の種類を特定する為の特定情報、路面標示の位置を地図上で特定する座標データ等がある。尚、路面標示DB42については後に図3を用いて詳細に説明する。
【0035】
また、ナビゲーションECU6は、ナビゲーション装置4の全体の制御を行う演算装置及び制御装置としてのCPUの他に、CPUが各種の演算処理を行うに当たってワーキングメモリとして使用されるとともに、経路が探索されたときの経路データ等が記憶されるRAMや、制御用のプログラムのほか、目的地までの経路の探索、探索した誘導経路の案内を行う経路案内処理プログラム、後方カメラ3で撮像した画像に基づいて所定条件下で車両2から制御対象物(停止線、交差点、合流帯、カーブ進入口等)までの道なり距離(対象距離)を算出し、運転補助を行う後述の運転支援処理プログラム(図12〜図14参照)が記録されたROM等の内部記憶装置を備えている。尚、前記RAM、ROM等としては半導体メモリ、磁気コア等が使用される。そして、演算装置及び制御装置としては、CPUに代えてMPU等を使用することも可能である。
【0036】
また、ナビゲーションECU6には、GUI制御部51、ロケーション部52、経路探索・案内処理部53を備え、後方カメラ3、現在地検出部9、データ記録部10及び各周辺機器から取得した情報に基づいて、各種制御を行う。
【0037】
ここで、GUI制御部51は、地図DB41から読み出した地図データとロケーション部52によって検出された自車の現在地とに基づいて自車周囲の適当な地図画像を液晶ディスプレイ7に表示させるとともに、経路の案内が必要な場合には地図画像に対してアイコンや案内画面、探索経路等を合成して液晶ディスプレイ7に表示させる。
また、ロケーション部52は、現在地検出部9から供給される各情報に基づいて、車両2の現在の絶対位置(緯度・経度)を検出する。更に、検出した現在地と路面標示DB42に格納された情報から車両2の所定範囲(前方30m〜後方20m)内に路面標示が存在するか否かを判定し、存在する場合には、後方カメラ3によって撮像した画像を取り込んで解析処理を行い、路面上の路面標示を検出する。そして、検出された路面標示に対して一の制御対象物のみが対応付けられている場合、又は複数の制御対象物が対応付けられている場合であって路面標示と制御対象物までの物間距離の差が所定距離(例えば5m)以上である場合には、撮像した画像から検出した路面標示と車両2との距離を算出し、更にその距離から路面標示に関連付けられた制御対象物までの距離を算出し、算出した距離に応じてブレーキアクチュエータ11、スロットルアクチュエータ12、AT13を制御して車両2の車両制御の実行、或いは液晶ディスプレイ7及びスピーカ8により制御対象物に対する注意喚起等を行う。
更に、経路探索・案内処理部53は、目的地が設定された場合においてデータ記録部10に記憶されたノード点データや探索データに基づいて現在地から目的地までの経路探索及び誘導経路の設定を行うとともに、設定された誘導経路に従って液晶ディスプレイ7やスピーカ8を用いて経路の案内を行う。
【0038】
また、前記ナビゲーションECU6には、液晶ディスプレイ7、スピーカ8、通信装置14等の各周辺装置が電気的に接続されている。
【0039】
液晶ディスプレイ7には、操作案内、操作メニュー、キーの案内、現在地から目的地までの誘導経路、誘導経路に沿った案内情報、交通情報、ニュース、天気予報、時刻、メール、テレビ番組、後方カメラ3で撮像したBGM画像等が表示される。
【0040】
また、スピーカ8は、ナビゲーションECU6からの指示に基づいて誘導経路に沿った走行を案内する音声ガイダンスを出力する。更に、本実施形態に係るナビゲーション装置4では、車両2から制御対象物までの対象距離が所定距離となった場合に、液晶ディスプレイ7及びスピーカ8により制御対象物に関する情報提供や注意喚起(例えば、停止線が接近していることの警告等)を行う。
【0041】
そして、通信装置14は、情報センタ、例えば、VICS(登録商標:Vehicle Information and Communication System)センタ等から送信された渋滞情報、規制情報、駐車場情報、交通事故情報、サービスエリアの混雑状況等の各情報から成る交通情報を、道路に沿って配設された電波ビーコン装置、光ビーコン装置等を介して電波ビーコン、光ビーコン等として受信するビーコンレシーバである。また、本実施形態に係るナビゲーション装置4は通信装置14を介して情報センタ(図示せず)に接続し、地図DB41及び路面標示DB42に格納された情報を更新する。
【0042】
次に、図3に基づいてデータ記録部10において路面標示に関する情報が記憶される路面標示DB42について説明する。図3は本実施形態に係る路面標示DB42の記憶領域を示した図である。
【0043】
図3に示すように路面標示DB42の記憶領域は、路面標示の地図データ上における座標(位置)と、路面標示の種類と、路面標示に関連付けられた制御対象物と、路面標示の測定開始点(複数ある場合には制御対象物に最も近い測定開始点)から制御対象物までの道なり距離(物間距離)とから構成されている。
【0044】
例えば、図3では座標(x1,y1)には「横断歩道有り」の路面標示が形成されており、且つその路面標示には60m前方に制御対象物として「停止線」の路面標示が対応付けられていることを示す。
また、座標(x2,y2)には「矢印」の路面標示が形成されており、且つその路面標示には54m前方に制御対象物として「コーナ(コーナ開始点のノード)」が対応付けられていることを示す。
また、座標(x3,y3)には「最高速度(40km/h)」の路面標示が形成されており、且つその路面標示には112m前方に第1の制御対象物として「停止線」が対応付けられ、72m前方に第2の制御対象物として「停止線」が対応付けられていることを示す。
また、座標(x4,y4)には「文字列(「この先カーブ」、「とまれ」、「○○方面」等)」の路面標示が形成されており、且つその路面標示には82m前方に第1の制御対象物として「停止線」が対応付けられ、85m前方に第2の制御対象物として「停止線」が対応付けられていることを示す。
また、座標(x5,y5)には「横断歩道」の路面標示が形成されており、且つその路面標示には108m前方に制御対象物として「交差点(交差点のノード)」が対応付けられていることを示す。尚、路面標示の座標は、路面標示を囲む四角形状の角部に位置する4点の座標から構成される。また、対応付けられる制御対象物の数は3つ以上であっても良い。また、制御対象物までの物間距離に関して、道路が複数車線からなる場合においては、車線毎の制御対象物までの物間距離が記録される。
【0045】
ここで、制御対象物は案内や車両の制御を行う対象となるものであり、路面標示が形成された道路の進行方向であって、所定区間(例えば、10m〜200m)にあるノード点や他の路面標示が相当する。そして、ナビゲーションECU6は後方カメラ3が路面標示DB42に記録されたいずれかの路面標示を撮像した際に、撮像した画像から関連付けられた制御対象物に対しての道なり距離である対象距離を間接的に算出し、その対象距離が所定距離となった場合に車両2の車両制御や制御対象物に対する案内を行う。
【0046】
また、車両2の車両制御や案内の内容は関連付けられた制御対象物の種類や制御レベルによって異なる。
ここで、制御レベルとは車両状況や運転者状況によって制御対象物に対する車両制御及び案内の必要度合いを複数段階に分けて判定したものである。具体的には、制御対象物に接近した状態で十分な減速制御が行われていない場合には制御レベルが高いと判定され、既に十分な減速制御が行われている場合には制御レベルが低いと判定される。本実施形態では、特に制御対象物との対象距離が所定距離(例えば、制御対象物が停止線やカーブの場合は50m)となった時点で、制御対象物に対する必要減速度(車両にかかる減速G)G1を自車の現在速度や加速度から算出する。そして、算出された必要減速度の値から制御レベルを判定し、車両制御や案内の内容を選択する。尚、図4は各制御レベルで実施される制御対象物に対する車両制御と案内の内容の一覧を示した図である。
【0047】
図4に示すように、(1)算出された必要減速度G1<0.05Gである場合には制御レベル「無し」と判定し、制御及び案内は実施しない。
また、(2)0.05G≦G1<0.1Gである場合には制御レベル「低」と判定し、情報提供レベルの案内のみを実施する。例えば、制御対象物として「停止線」又は「コーナ」が対応付けられていた場合には、停止線又はコーナが接近していることを報知する停止線又はコーナのマークを液晶ディスプレイ7に表示させる。
また、(3)0.1G≦G1<0.3Gである場合には制御レベル「中」と判定し、注意喚起レベルの案内のみを実施する。例えば、制御対象物として「停止線」又は「コーナ」が対応付けられていた場合には、制御対象物が接近していることを警告する「停止線(コーナ)が接近しています。」との文字列を液晶ディスプレイ7に表示させ、またスピーカ8から同内容の警告音声を出力する。
更に、(4)0.3G<G1である場合には制御レベル「高」と判定し、サポート、介入レベルの車両制御及び案内を実施する。例えば、制御対象物として「停止線」又は「コーナ」が対応付けられていた場合には、停止線が接近していることを警告する「停止線(コーナ)が接近しています。」との文字列を液晶ディスプレイ7に表示させ、またスピーカ8から同内容の警告音声を出力する。更に、制御対象物が「停止線」である場合にはブレーキアクチュエータ11やAT13を制御して停止線の手前で車両2が停止するように減速制御を行う。一方、制御対象物が「コーナ」である場合、コーナ進入前に地図DB41に記録されたコーナのRに対する最適な速度(例えば、R30で40km/h)となるようにブレーキアクチュエータ11やAT13を制御して減速制御を行う。
【0048】
尚、制御対象物として「交差点」が対応付けられていた場合には、車両制御を行わずに制御対象物との対象距離が所定距離(例えば10m)となった時点で、設定された誘導経路に従った経路案内のみを行う。例えば、左折を示す案内表示を液晶ディスプレイ7に表示させ、「次の交差点を左折して下さい。」の案内音声をスピーカ8から出力する。
【0049】
次に、図5乃至図9を用いて車両2の後方カメラ3によって路面標示を撮像した際の車両2と路面標示との距離、及び車両2と路面標示に関連付けられた制御対象物との距離の算出方法について具体例をあげて説明する。
以下の具体例では、車両2が走行する路面60に形成された路面標示の内、特に制御対象物として停止線の路面標示69が関連付けられた「横断歩道有り」の路面標示61を撮像した場合を示すこととする。図5は路面標示61を撮像する車両2を示した上面図、図6は路面標示61を撮像する車両2を示した側面図、図7は図5及び図6の状態における車両2の後方カメラ3によって撮像された撮像画像62を示した模式図である。
【0050】
後方カメラ3は、図6に示すように車両2の後バンパー63付近から後方を撮像できるように光軸Lを水平から45度下方向に向けるように取り付けられており、撮像範囲が固定されている。従って、後方カメラ3によって撮像された図7に示す撮像画像中の画像データの位置(具体的には下縁からの画素数)から、被写体までの距離を計算することができる。
【0051】
ここで、路面標示には車両2との距離を計測する為の測定開始点が予め複数箇所に定義されており、車両2から最も進行方向側にある測定開始点までの距離を車両2から路面標示までの距離として扱う。例えば、図8(A)は「横断歩道有り」の路面標示61の測定開始点61A〜61Dを示した模式図、図8(B)は「最高速度(20km/h)」の路面標示65の測定開始点65A〜65Dを示した模式図である。
図8(A)及び図8(B)に示すように、路面標示の測定開始点は路面標示を形成するライン(境界線)の角部や先端部に複数個設けられており、路面標識毎に特有の配置を有する。そして、ナビゲーションECU6は路面標示を撮像した際に、その撮像した路面標示の画像から路面標示の境界線や測定開始点を特定することにより、路面標示の種類を判定することが可能となる。
【0052】
また、図7に示す路面標示を撮像した撮像画像中において、測定開始点の位置(具体的には下縁から測定開始点までの画素数)から車両2と測定開始点の間の距離D1を算出することが可能となる。ここで、複数ある測定開始点の内、いずれの測定開始点との間の距離を算出するかは、路面標示ごとに決まっており、例えば、図8(A)に示す「横断歩道有り」の路面標示61では測定開始点61Aとの距離が算出される。但し、測定開始点61Aが何らかの原因(例えば、砂や水溜り等の障害物によって白線の一部が隠れた状態や、長年の使用による劣化によって白線の一部で塗装が剥がれている場合)によって特定できなかった場合には、先ず測定開始点61Bまでの距離を算出し、その後に測定開始点61Aと測定開始点61Bとの距離を用いることによって測定開始点61Aとの距離が間接的に算出される。更に、測定開始点61Bについても特定できなかった場合には測定開始点61Cが用いられ、測定開始点61Cについても特定できなかった場合には測定開始点61Dが用いられる。
【0053】
また、図8(B)に示す「最高速度(20km/h)」の路面標示65では測定開始点65A及び測定開始点65Bとの距離が算出される。但し、測定開始点65A及び測定開始点65Bが何らかの原因(例えば、砂や水溜り等の障害物によって白線の一部が隠れた状態や、長年の使用による劣化によって白線の一部で塗装が剥がれている場合)によって特定できなかった場合には、測定開始点65C及び測定開始点65Dを用いることによって測定開始点65A及び測定開始点65Bとの距離が間接的に算出される。
【0054】
一方、前記した方法によって車両2と路面標示の測定開始点までの距離D1が算出されると、それに基づいて車両2から検出された路面標示に関連付けられた制御対象物(図3参照)までの道なり距離(対象距離)を算出することが可能である。図9は、車両2の後方カメラ3によって路面標示を撮像した際の車両2から制御対象物までの対象距離の算出方法について示した模式図である。
【0055】
図9では、「横断歩道有り」の路面標示61を車両2が後方カメラ3で検出した場合を示すものであり、更に、路面標示61には制御対象物として前方の物間距離Mにある「停止線」の路面標示69が関連付けられている。
その場合には、物間距離Mから距離D1及び車両長さD2を減算することによって、路面標示61の検出時点での車両2から制御対象物までの対象距離T(=M−D1−D2)を算出することが可能となる。また、ナビゲーションECU6はエンジンから一定走行距離毎に発生される車速パルスに基づいて速度センサ35により車両2の走行距離Sを算出する。そして、路面標示61の検出時点での車両2から制御対象物までの対象距離Tから走行距離Sを減算することによって、走行中の車両2から制御対象物までの対象距離T(=M−D1−D2−S)を算出することが可能となる。その結果、算出された「停止線」の路面標示69までの対象距離Tに基づいて車両の制御及び案内を行う。
【0056】
次に、特に車両2が後方カメラ3で検出した路面標示に関連付けられた制御対象物が複数ある場合において、制御対象物に対する案内及び車両制御の実施の態様について図10及び図11について説明する。
図10及び図11では、分岐を有する道路71を車両2が走行する場合であって、道路71の路面に形成された最高速度が40km/hであることを示す路面標示72に対して、一方の第1分岐道路73の路面に形成された第1停止線74と他方の第2分岐道路75の路面に形成された第2停止線76の2つの制御対象物が関連付けられている。この場合には、分岐点を通過する前には車両2がその後の道路分岐においていずれの道路に進入するか特定できない。従って、分岐点を通過する前においては、第1停止線74を対象とした案内や車両制御と、第2停止線76を対象とした案内や車両制御のどちらを行うべきかが問題となる。
【0057】
ここで、本実施形態に係る運転支援装置1では、分岐点を通過するまでは車両2による走行距離が短い方の制御対象物を対象とした注意喚起や車両制御を行うこととする。従って、路面標示DB42(図3参照)に記憶された各制御対象物までの物間距離を比較して、分岐点を通過するまでは物間距離が短い方の制御対象物を対象とした案内や車両制御を行う。しかしながら、両者の物間距離の差がほとんど無い場合には、車両2が各制御対象物まで走行するのに必要な走行距離が短い方の制御対象物を特定することができないので、その場合には分岐点を通過するまでは、制御対象物を対象とした案内や車両制御を行わないようにする。
【0058】
具体的には、図10及び図11に示すように、車両2が後方カメラによって走行中に路面標示72を検出すると、路面標示DB42から路面標示72から第1停止線74までの物間距離である第1物間距離M1と路面標示72から第2停止線76までの物間距離である第2物間距離M2を取得し、距離差を算出する。
【0059】
その結果、図10に示すように第1物間距離M1と第2物間距離M2との差が制御実施可否距離(例えば5m)以上である場合には、車両2が各制御対象物まで走行するのに必要な走行距離が短い方の制御対象物(図10では第2停止線76)を正確に特定することができる。従って、分岐点を通過するまでは第2停止線76を対象とし、車両2から第2停止線76までの距離である第2対象距離T2に基づいて案内や車両制御を行う。また、分岐点を通過した後は、車両が走行する道路にある制御対象物を対象とした案内や車両制御を行う。即ち、車両2が分岐点で第1分岐道路73に進入した場合には、その後は第1停止線74を対象とし、車両2から第1停止線74までの距離である第1対象距離T1に基づいて案内や車両制御を行う。一方、車両2が分岐点で第2分岐道路75に進入した場合には、継続して第2停止線76を対象とした案内や車両制御を行う。
【0060】
それに対して、図11に示すように第1物間距離M1と第2物間距離M2との差が制御実施可否距離(例えば5m)未満である場合には、車両2が各制御対象物まで走行するのに必要な走行距離が短い方の制御対象物を正確に特定することができない。従って、分岐点を通過するまでは第1停止線74及び第2停止線76のいずれに対しても、制御対象物を対象とした案内や車両制御は行わない。但し、分岐点を通過した後は、図10と同様にして車両が走行する道路にある制御対象物を対象とした案内や車両制御を行う。即ち、車両2が分岐点で第1分岐道路73に進入した場合には、その後は第1停止線74を対象とし、車両2から第1停止線74までの距離である第1対象距離T1に基づいて案内や車両制御を行う。一方、車両2が分岐点で第2分岐道路75に進入した場合には、継続して第2停止線76を対象とした案内や車両制御を行う。
【0061】
尚、路面標示や制御対象物の形成された道路がカーブ形状を有している場合には、カーブ形状に沿って対象距離が算出される。また、路面標示や制御対象物の形成された道路が登り坂や下り坂である場合には、坂の勾配に沿って対象距離が算出される。
【0062】
以上のように、直接制御対象物を認識することなく、後方カメラ3によって検出された路面標示から前方にある制御対象物までの対象距離を間接的に算出することにより、より早い段階で正確な制御対象物までの対象距離(T=M−D1−D2−S)を算出することが可能となる。そして、算出された正確な制御対象物までの対象距離に基づいて適切な車両の制御や、より的確なタイミングでの走行案内が可能となる。
【0063】
続いて、前記構成を有する本実施形態に係る運転支援装置1のナビゲーションECU6が実行する運転支援処理プログラムについて図12及び図13に基づき説明する。図12及び図13は本実施形態に係る運転支援装置1における運転支援処理プログラムのフローチャートである。ここで、運転支援処理プログラムは車両のイグニションがONされた後に所定間隔(例えば200ms毎)で実行され、車両2が路面を走行する際において後方カメラ3により撮像した撮像画像から路面標示を検出するとともに、所定条件を満たした場合に検出した路面標示から車両と制御対象物までの対象距離を算出し、算出された対象距離に基づいて利用者の運転を補助する制御を行うプログラムである。尚、以下の図12乃至図14にフローチャートで示されるプログラムはナビゲーションECU6が備えているROMやRAMに記憶されており、CPUにより実行される。
【0064】
運転支援処理プログラムでは、先ずステップ(以下、Sと略記する)1において、ナビゲーションECU6は現在地検出部9によって検出した車両2の現在地情報と路面標示DB42(図3参照)に記録された路面標示の位置情報に基づいて、車両2の周辺(本実施形態では車両2の前方2000m〜後方500m)に位置する路面標示の情報(路面標示の位置座標、種類、関連付けられた制御対象物、制御対象物までの物間距離)を路面標示DB42から読み出す。尚、上記S1が物間距離取得手段の処理に相当する。
【0065】
次に、S2でナビゲーションECU6は、前記S1で読み出された路面標示の内、特に車両2の所定範囲(車両2の前方30m〜後方20m)に位置する路面標示があるか否かを判定する。そして、車両2の所定範囲に位置する路面標示があると判定された場合(S2:YES)には、S3へと移行し、路面標示の画像認識処理を行う。一方、車両2の所定範囲に位置する路面標示がないと判定された場合(S2:NO)には、当該運転支援処理プログラムを終了し、所定時間経過後に再度、現在地点に基づく路面標示の情報の読み出しを行う。
【0066】
S3の路面標示の画像認識処理では、後方カメラ3によって撮像される車両2の後方環境の画像を取り込んで解析処理を行い、車両が走行する路面上に形成された路面標示の境界線や測定開始点を特定するとともに、検出された路面標示の種類を判定する。
具体的には、先ず、NTSCのようなアナログ通信手段や、i−linkのようなデジタル通信手段を用いて後方カメラ3で撮像した映像を入力し、jpeg、mpeg等のデジタル画像フォーマットに変換する。次に、路面標示が一般に白線又は黄線であることを用いて、撮像画像中の路面標示が描かれた路面と他の路面を輝度差に基づいて輝度補正を行う。その後、対象となる路面標示を画像から分離する2値化処理、歪みを補正する幾何学処理、画像の雑音を除去する平滑化処理等を行い、路面標示と他の路面との境界線及び測定開始点を検出する。
その後、検出された境界線及び測定開始点の配置から撮像画像中の路面標示の種類を特定し、更には特定された路面標示の種類が前記S2で自車の所定範囲に存在すると判定された路面標示の種類と一致するか否かを判定する。尚、上記S3が路面標示検出手段の処理に相当する。
【0067】
そして、S4では前記S3の処理で路面標示が検出されたか否かが判定され、路面標示が検出されたと判定された場合(S4:YES)、即ち、撮像された撮像画像中に路面標示を認識し、且つ、認識された路面標示が前記S2で自車の周囲に位置すると判定された路面標示の種類と一致すると判定された場合には、S5へと移行する。一方、路面標示が検出されなかったと判定された場合(S4:NO)、即ち、撮像された撮像画像中に路面標示が認識できなかったか、又は、認識された路面標示が前記S2で自車の周囲に位置すると判定された路面標示の種類と一致しないと判定された場合には、当該運転支援処理プログラムを終了し、所定時間経過後に再度、現在地点に基づく路面標示の情報の読み出しを行う。
【0068】
続いて、S5でナビゲーションECU6は車両2が現在走行する周辺の道路に関する道路情報を地図DB41から取得する。
【0069】
更に、S6においてナビゲーションECU6は前記S5で取得した道路情報から、車両2の進行方向に分岐があるか否か判定する。尚、上記S6が分岐判定手段の処理に相当する。
【0070】
そして、車両2の進行方向に分岐があると判定された場合(S6:YES)には、更に、前記S1で取得した路面標示情報に基づいて前記S3で検出した路面標示に対して複数の制御対象物が対応付けられているか否か、即ち分岐後の複数の道路に対して少なくとも2以上の制御対象物が存在するか否か判定される(S7)。尚、上記S7が対象物数判定手段の処理に相当する。
【0071】
そして、前記S3で検出した路面標示に対して複数の制御対象物が対応付けられていると判定された場合(S7:YES)には、更に、前記S5で取得した道路情報に基づいて車両2が現在走行する道路と分岐後のいずれか一の道路が道なりの関係にある道なり情報があるか否か、及び、分岐後のいずれか一の道路が誘導経路に設定されているか否か判定される(S8)。尚、上記S8が道なり判定手段及び誘導経路判定手段の処理に相当する。
【0072】
その結果、道なり情報も誘導経路の設定も無いと判定された場合(S8:NO)には、S9へと移行する。
一方、前記S6において車両2の進行方向に分岐が無いと判定された場合(S6:NO)及び前記S7において路面標示に対して単一の制御対象物のみが対応付けられていると判定された場合(S7:NO)には、検出された路面標示に関連付けられた制御対象物を対象とした案内や車両制御を行う(S10)。尚、S10での制御対象物に対する案内や車両制御の具体的処理の内容については、後に図14を用いて詳細に説明する。
【0073】
また、前記S8において道なり情報及び誘導経路の設定のいずれかが有ると判定された場合(S8:YES)には、道なりの関係がある分岐後の道路又は誘導経路に設定された分岐後の道路に存在する制御対象物を選択し(S11)、選択された制御対象物を対象とした後述の案内や車両制御を行う(S10)。
【0074】
次に、S9でナビゲーションECU6は前記S3で検出された路面標示に関連付けられた複数の制御対象物について、それぞれの路面標示からの物間距離の差を算出する。尚、3つ以上の制御対象物が対応付けられている場合には、物間距離の差が最も最も短くなる2つの制御対象物を対象とした物間距離の差を算出する。その後、S12へと移行する。
【0075】
S12でナビゲーションECU6は、車両の進行方向にある分岐を越えたか否か判定する。そして、分岐を越えたと判定された場合(S12:YES)には、車両進行方向の分岐後の道路に存在する制御対象物を選択し(S13)、選択された制御対象物を対象とした後述の案内や車両制御を行う(S16)。
【0076】
一方、分岐を越えていないと判定された場合(S12:NO)には、前記S9で算出した物間距離の差が制御実施可否距離(例えば5m)以上であるか否か判定される(S14)。その結果、物間距離の差が制御実施可否距離以上であると判定された場合(S14:YES)には、車両2が各制御対象物まで走行するのに必要な走行距離が短い方の制御対象物を特定することが可能であり、S15へと移行する。
【0077】
S15でナビゲーションECU6は検出された路面標示に関連付けられた複数の制御対象物の内、最も物間距離が短い制御対象物を選択し(S15)、選択された制御対象物を対象とした後述の案内や車両制御を行う(S16)。
【0078】
それに対して、物間距離の差が制御実施可否距離未満であると判定された場合(S14:NO)には、車両2が各制御対象物まで走行するのに必要な走行距離が短い方の制御対象物を特定することができないので、その場合には分岐点を通過するまでは、制御対象物を対象とした案内や車両制御を行わないようにする。
【0079】
次に、前記S10及びS16で実行される案内及び車両制御処理について図14に基づき説明する。図14は本実施形態に係る運転支援装置1における案内及び車両制御処理のフローチャートである。
【0080】
先ず、S21でナビゲーションECU6は前記S3で検出された路面標示と車両2との間の距離を算出する。具体的には、路面標示を撮像した撮像画像(図7参照)中における特定された測定開始点の位置(具体的には下縁から測定開始点までの画素数)から、車両2と測定開始点の間の距離D1を算出する。
【0081】
その後、S22でナビゲーションECU6は、前記S21で算出された車両2と測定開始点の間の距離D1と、路面標示から案内及び車両制御の対象に選択された制御対象物までの物間距離Mと、車両長さD2とから、路面標示検出時点の車両2から制御対象物までの対象距離T(=M−D1−D2)を算出する(図9参照)。
更に、S22ではエンジンから一定走行距離毎に発生される車速パルスに基づいて速度センサ35により路面標示検出地点からの車両2の走行距離Sを算出し、走行中の車両2の現在位置から制御対象物までの対象距離T(=M−D1−D2−S)を算出する(図9参照)。尚、上記S21及びS22が対象物距離算出手段の処理に相当する。
【0082】
その後、S23では前記S22で算出された制御対象物までの対象距離Tに基づいて、車両2が制御対象物の種類ごとに設定された案内又は制御開始地点に到達したか否かが判定される。例えば、制御対象物が「停止線」や「コーナ」である場合には、対象距離が50m以下である場合に、案内又は制御開始地点に到達したと判定される。また、制御対象物が「交差点」の路面標示である場合には残距離が10m以下である場合に、案内又は制御開始地点に到達したと判定される。
【0083】
そして、車両2が案内又は制御開始地点に到達したと判定された場合(S23:YES)には、制御対象物に対する走行の案内又は車両制御が必要か否かを判定する為に車両状況及び運転者状況の取得が行われる(S24)。具体的には、車両2の車速、アクセル開度、ステアリング角、運転者の顔の向き、視線方向等を取得する。
【0084】
そして、S25でナビゲーションECU6は、前記S24で取得した車両状況及び運転者状況に基づいて、制御対象物に対する車両制御及び案内の必要度合いを複数段階に分けて示した制御レベルの算出、判定を行う。
ここで、本実施形態では既に図4に示したように制御対象物に対する必要減速度(車両にかかる減速G)G1を自車の現在速度や加速度から算出し、算出された必要減速度の値から制御レベルを判定する。
【0085】
続いて、S26においてナビゲーションECU6は、前記S25で判定された制御レベルに応じた案内及び車両制御を行う。
具体的に、図4に示すように(1)算出された必要減速度G1<0.05Gである場合には制御レベル「無し」と判定され、制御及び案内は実施しない。
また、(2)0.05G≦G1<0.1Gである場合には制御レベル「低」と判定され、情報提供レベルの案内のみを実施する。例えば、制御対象物として「停止線」又は「コーナ」が対応付けられていた場合には、停止線又はコーナが接近していることを報知する停止線又はコーナのマークを液晶ディスプレイ7に表示させる。
また、(3)0.1G≦G1<0.3Gである場合には制御レベル「中」と判定され、注意喚起レベルの案内のみを実施する。例えば、制御対象物として「停止線」又は「コーナ」が対応付けられていた場合には、停止線が接近していることを警告する「停止線(コーナ)が接近しています。」との文字列を液晶ディスプレイ7に表示させ、またスピーカ8から同内容の警告音声を出力する。
更に、(4)0.3G<G1である場合には制御レベル「高」と判定され、サポート、介入レベルの車両制御及び案内を実施する。例えば、制御対象物として「停止線」又は「コーナ」が対応付けられていた場合には、停止線が接近していることを警告する「停止線(コーナ)が接近しています。」との文字列を液晶ディスプレイ7に表示させ、またスピーカ8から同内容の警告音声を出力する。更に、制御対象物が「停止線」である場合にはブレーキアクチュエータ11やAT13を制御して停止線の手前で車両2が停止するように減速制御を行う。一方、制御対象物が「コーナ」である場合、コーナ進入前に地図DB41に記録されたコーナのRに対する最適な速度(例えば、R30で40km/h)となるようにブレーキアクチュエータ11やAT13を制御して減速制御を行う。
尚、制御対象物として「交差点」が対応付けられていた場合には、車両制御を行わずに制御対象物との対象距離が所定距離(例えば10m)となった時点で、設定された誘導経路に従った経路案内のみを行う。例えば、左折を示す案内表示を液晶ディスプレイ7に表示させ、「次の交差点を左折して下さい。」の案内音声をスピーカ8から出力する。
【0086】
一方、車両2が案内又は制御開始地点に到達していないと判定された場合(S23:NO)には、制御対象物に対する案内及び車両制御を行うことなく処理を終了する。尚、上記S26が運転補助手段の処理に相当する。
【0087】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係る運転支援装置1では、車両2から所定範囲内に路面標示が存在すると判定された場合(S2:YES)に、後方カメラ3によって撮像された画像から路面標示を検出し(S3)、検出された路面標示に関連付けられた制御対象物が単数である場合、又は前記関連付けられた制御対象物が複数であって且つそれぞれの物間距離の差が制御実施可否距離以上である場合(S14:YES)に、車両から案内及び車両制御の対象となる制御対象物までの対象距離を算出し(S21、S22)、算出された対象距離に基づいて、制御対象物に応じた案内及び車両制御を行う(S26)ので、車両2が検出した路面標示に対して制御対象物が複数関連付けられた場合であっても、不要な案内や誤制御が行われる虞の有る状況での案内や車両制御を予め行わないことにより、運転者に関連する制御対象物を対象とした注意喚起や車両制御を行うことが可能となる。また、演算処理を行う回数を減らすことにより、ナビゲーションECU6の処理負担についても軽減することが可能となる。
また、分岐の有る道路を車両2が走行する場合であって、車両2が検出した路面標示に対して分岐後の各道路に形成された複数の制御対象物が関連付けられた場合であっても、不要な案内や誤制御が行われる虞の有る状況での案内や車両制御を予め行わないことにより、分岐で車両2が走行する方の道路に形成された制御対象物を対象とした案内や車両制御を行うことが可能となる。
また、分岐の有る道路を車両2が走行する場合であって、車両2が検出した路面標示に対して分岐後の各道路に形成された複数の制御対象物が関連付けられた場合であっても、車両2が分岐に到達する前の不要な案内や誤制御が行われる虞の有る状況では制御対象物に対する案内や車両制御を予め行わないので、運転者を困惑わせる虞が無い。
また、分岐前の道路と分岐後の道路に道なりの関係がある場合(S8:YES)には、道なりの関係にある分岐後の道路を車両が走行する道路と予測し、車両が走行すると予測される道路に形成された制御対象物を対象とした注意喚起や車両制御を行うので、不要な案内や誤制御が行われることを防止することができる。
また、分岐後の道路が誘導経路に設定されている場合(S8:YES)には、誘導経路に設定されている分岐後の道路を車両が走行する道路と予測し、車両が走行すると予測される道路に形成された制御対象物を対象とした注意喚起や車両制御を行うので、同じく不要な案内や誤制御が行われることを防止することができる。
更に、車両から制御対象物までの対象距離に基づいて案内や車両の制御を行うので、遠方を撮像する為にフロントカメラによる撮像装置等の高額な装置を必要とすることなく、確実に制御対象物の種類の応じた案内や車両の制御を行うことが可能となる。
【0088】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、本実施形態では、制御対象物が停止線、交差点、コーナ進入口である場合について説明したが、制御対象物は上記のものに限られること無く、例えば、横断歩道等の路面標示の他、インターチェンジ等の施設であっても良い。
【0089】
また、本実施形態では制御対象物に対する必要減速度(車両にかかる減速G)G1を自車の現在速度や加速度から算出し、算出された必要減速度の値から制御レベルを判定することとしているが、運転者の顔の向きや視線方向から制御レベルを判定するようにしても良い。即ち、車両2が案内又は制御開始地点に到達した時点で運転者が前方を見ていない場合に制御レベル「高」と判定し、運転者が前方を見ている場合に制御レベル「無し」と判定するようにしても良い。
【0090】
また、本実施形態に係る運転支援装置1が、撮像手段として後方環境を撮像する後方カメラ3を設け、後方カメラによって撮像した画像に基づいて路面標示の認識を行い、制御対象物に対する制御を行っていたが、撮像手段として後方カメラ3のほかに車両2の前方環境を撮像する前方カメラを設け、後方カメラ3に加えて前方カメラで撮像した画像に基づいて路面標示の認識を行っても良い。
ここで、図15は他の実施形態に係る運転支援装置90の概略構成図である。
図15に示すように、他の実施形態に係る運転支援装置90は、車両2に対して設置された前方カメラ91、後方カメラ3、ナビゲーション装置4、車両ECU5等で構成されている。尚、前方カメラ91以外の後方カメラ3、ナビゲーション装置4、車両ECU5の各構成に関しては前記した本実施形態に係る運転支援装置1と同様であり、その説明は省略する。
【0091】
そして、他の実施形態に係る運転支援装置90では前方カメラ91で撮像した画像に基づいて、以下のように制御対象の拡大及び路面標示の認識率の向上を実現可能となる。
【0092】
例えば、前方カメラ91によって撮像した画像に基づいて前方の交差点に位置する信号機が赤で点灯していると判定された場合には、前記したような「交差点」の制御対象物に従った案内及び車両制御(S26)に加えて、交差点の信号機が赤で点灯していることの警告を行うとともに、交差点の手前で車両2が停止するようにブレーキアクチュエータ11やAT13を制御することが可能となる。
【0093】
また、前方カメラ91によって撮像した画像に基づいて前方の交差点に一時停止の道路標識が設置されていると判定された場合には、前記したような「交差点」の制御対象物に従った案内及び車両制御(S26)に加えて、一時停止に対する警告を行うとともに、交差点の手前で車両2が停止するようにブレーキアクチュエータ11やAT13を制御することが可能となる。
【0094】
また、前方カメラ91によって撮像した画像に基づいて前方の路面に路面標示が形成されていると判定された場合に、車両2が路面標示を通過するタイミングを算出し、算出されたタイミングに合わせて後方カメラ3による画像の認識処理を行うことにより、視野が狭い後方カメラ3を用いた場合であっても路面標示の認識率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本実施形態に係る運転支援装置の概略構成図である。
【図2】本実施形態に係る運転支援装置の制御系を模式的に示すブロック図である。
【図3】本実施形態に係る路面標示DBの記憶領域を示した図である。
【図4】各制御レベルで実施される制御対象物に対する車両制御と案内の内容の一覧を示した図である。
【図5】路面標示を撮像する車両を示した上面図である。
【図6】路面標示を撮像する車両を示した側面図である。
【図7】図5及び図6の状態における車両の後方カメラによって撮像された撮像画像を示した模式図である。
【図8】(A)は「横断歩道有り」の路面標示の測定開始点を示した模式図、(B)は「最高速度(20km/h)」の路面標示の測定開始点を示した模式図である。
【図9】車両の後方カメラによって路面標示を撮像した際の車両から制御対象物までの対象距離の算出方法について示した模式図である。
【図10】車両が検出した路面標示に関連付けられた制御対象物が複数ある場合において、制御対象物に対する案内及び車両制御を行う場合について示した模式図である。
【図11】車両が検出した路面標示に関連付けられた制御対象物が複数ある場合において、制御対象物に対する案内及び車両制御を行わない場合について示した模式図である。
【図12】本実施形態に係る運転支援装置における運転支援処理プログラムのフローチャートである。
【図13】本実施形態に係る運転支援装置における運転支援処理プログラムのフローチャートである。
【図14】本実施形態に係る運転支援装置における案内及び車両制御処理のフローチャートである。
【図15】他の実施形態に係る運転支援装置の概略構成図である。
【図16】従来技術の問題点を説明した説明図である。
【符号の説明】
【0096】
1 運転支援装置
2 車両
3 後方カメラ
5 車両ECU
6 ナビゲーションECU
7 液晶ディスプレイ
8 スピーカ
9 現在地検出部
42 路面標示DB
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面上に形成された路面標示を検出することによって、制御対象物に対する適切な運転の補助を行う運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ナビゲーション装置の地図データから得られる道路情報や、GPS等によって特定される現在地等の車両の走行に係る各種情報を取得し、運転手に対する報知や、運転の補助、さらには運転への介入を行うことで車両事故を防止する運転支援装置について提案されている。
そして、そのような運転支援装置の中には、より正確なタイミングで必要な報知や車両の制御を行う為に、車両の全面にカメラ等の撮像手段を設け、撮像された画像に基づいて報知や車両の制御を行うものがあった。例えば、特開2004−86363号公報には、自車両が走行する道路上に形成された一時停止線を、車両の前方に向けて設置されたCCDカメラにより撮像した画像データから検出し、検出結果に基づいて交差点での運転補助を実行する車両用運転補助装置について記載されている。
【特許文献1】特開2004−86363号公報(第8頁〜第10頁、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記した特許文献1に記載された車両用運転補助装置では、制御対象物となる一時停止線を直接CCDカメラ等の検出手段によって検出し、検出した制御対象物に対する案内や車両の制御を行っていたが、これらの装置では実用化する場合、以下に示すような課題があった。
【0004】
先ず、制御対象物に対する案内や車両の制御を行う為には、制御対象物から車両まで、ある程度の距離が離れた状態で制御対象物を検出する必要があるので、遠方にある制御対象物を明確に撮像する高性能カメラ等の高価なシステムが必要となっていた。また、たとえ高性能カメラを用いたとしても、制御対象物を検出可能な距離には限界があり、必要な案内や車両の制御を行うのに間に合わない結果も生じていた。更に、制御対象物を何らかの原因によって検出できなかった場合には、その制御対象物に対する必要な案内や車両の制御を行うことはできなかった。
また、車両の走行方向に対して垂直方向に線分を有する制御対象物(例えば、一時停止線)を走行中の車両に備え付けられたカメラで撮像しようとすると、撮像した画像中の制御対象物にブレが生じ、正しく認識できない虞があった。
【0005】
そこで、上記問題を解決する手段として、車両の後方環境を撮像する後方カメラと路面上に形成された最高速度や矢印等の路面標示を用いて、より正確に制御対象物までの距離を算出することが考えられる。具体的には、路面標示の形成された位置を特定する位置情報と、その路面標示の付近にある制御対象物までの道なり距離(以下、物間距離という)を予め記憶しておく。そして、後方カメラを用いて車両が走行する路面に形成された路面標示を検出し、検出された路面標示から制御対象物までの物間距離に基づいて、車両から制御対象物までの道なり距離(以下、対象距離という)を正確に算出する。そして、算出された対象距離に基づく的確なタイミング及び制御内容で制御対象物に対する注意喚起や減速等の車両制御を行うことが可能となる。
【0006】
しかし、上記のように路面標示と制御対象物を関連付けることにより、車両から制御対象物までの距離を算出する手段においては、特に路面標示に関連付けられた制御対象物が複数ある場合が問題となっていた。この問題点について、図16に示すように分岐を有する道路101を車両102が走行する場合であって、道路101の路面に形成された最高速度が40km/hであることを示す路面標示103に対して、一方の第1分岐道路104の路面に形成された第1停止線105と他方の第2分岐道路106の路面に形成された第2停止線107の2つの制御対象物が関連付けられている場合を具体例にして以下に説明する。
【0007】
ここで、車両102に搭載されたデータベースには予め路面標示103から第1停止線105までの物間距離である第1物間距離M1と路面標示103から第2停止線107までの物間距離である第2物間距離M2とが路面標示103に対応付けて記憶されている。
そして、車両102が後方カメラによって走行中に路面標示103を検出すると、車両102から第1停止線105までの距離である第1対象距離T1と第2停止線107までの距離である第2対象距離T2がそれぞれ算出可能となる。
しかし、分岐点を通過する前には車両102がその後の道路分岐においていずれの道路に進入するか特定できない。従って、分岐点を通過する前においては、第1停止線105を対象とした注意喚起や車両制御と、第2停止線107を対象とした注意喚起や車両制御のどちらを行うのが良いのかが問題となる。その際、仮に分岐点を通過するまでは、車両による走行距離が長い方の制御対象物を対象とした注意喚起や車両制御を行うこととすると、その後に分岐点で車両による走行距離が短い方の制御対象物が形成された道路へと車両が進入した場合には、注意喚起や車両制御が間に合わなくなる虞がある。従って、分岐点を通過するまでは車両による走行距離が短い方の制御対象物を対象とした注意喚起や車両制御を行うことが好ましい。従って、データベースに記憶された各制御対象物までの物間距離を比較して、分岐点を通過するまでは物間距離が短い方の制御対象物を対象とした注意喚起や車両制御を行うことが考えられる。
【0008】
しかしながら、各制御対象物までの物間距離(図16では第1物間距離M1と第2物間距離M2)の距離の差がほとんどない場合には、更に以下の問題点が生じる。即ち、データベースに記憶された物間距離は路面標示と制御対象物を結ぶ道路の中央に沿って計測した距離であるので、車両が蛇行や車線変更を行うとすると実際に車両が走行する走行距離とは多少の誤差が生じる。更に、制御対象物が形成された道路が細街路である場合も多く、そのような場合には、実際の物間距離とデータベースに記憶された物間距離との間にもある程度の誤差が生じる場合が多い。
従って、第1物間距離M1と第2物間距離M2との距離の差がほとんどない場合には、データベースに記憶された物間距離が短い方の制御対象物であっても、実際に車両が制御対象物まで走行する走行距離が短い方の制御対象物とは限らない。即ち、走行距離が短い方の制御対象物を正確に特定することができず、分岐点を通過するまでにおいては、どちらの制御対象物を対象とした注意喚起や車両制御を行うのかを判定することは非常に困難である。また、仮に分岐点を通過するまでにおいて任意に選択した何れか一方の制御対象物を対象とした注意喚起や車両制御を行うこととすると、不要な案内や誤制御を実行してしまうこととなっていた。
【0009】
本発明は前記従来における問題点を解消するためになされたものであり、車両が検出した路面標示に対して制御対象物が複数関連付けられた場合であっても、不要な案内や誤制御が行われることなく、正確な制御対象物に対する運転の補助を行うことを可能とした運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため本願の請求項1に運転支援装置は、路面に形成された路面標示の位置情報を一又は複数の制御対象物までの道なり距離である物間距離に関連付けて記憶した標示情報記憶手段(42)と、車両(2)に配置され、車両の周辺を撮像する撮像手段(3)と、前記撮像手段により撮像した画像に基づいて、前記車両が走行する路面に形成された路面標示を検出する路面標示検出手段(6)と、前記路面標示検出手段によって検出された路面標示に関連付けられた一又は複数の制御対象物までの物間距離を前記標示情報記憶手段より取得する物間距離取得手段(6)と、前記関連付けられた制御対象物が単数である場合、又は前記関連付けられた制御対象物が複数であって且つ前記物間距離取得手段で取得されたそれぞれの物間距離の差が所定距離以上である場合に、車両から前記関連付けられた制御対象物までの道なり距離である対象距離を算出する対象距離算出手段(6)と、前記対象距離算出手段の算出結果に基づいて利用者の運転を補助する運転補助手段(6)と、を有することを特徴とする。
尚、ここで「路面標示」とは、道路交通に対し、必要な案内、誘導、警戒、規制、指示等についてペイント類又は道路鋲又はこれに類するもの等を用い、一定の様式化された線及び文字、記号を路面に設置したものをいい、例えば、停止線や横断歩道等がある。
また、「制御対象物」とは、利用者に対して運転の支援(例えば、制御対象物に関する案内を行うこと、車両の制御を行うこと等)を行うべき道路上の対象をいい、例えば、一時停止線、交差点、カーブの進入口、合流帯等がある。
【0011】
また、請求項2に係る運転支援装置は、請求項1に記載の運転支援装置において、道路に関する情報を記憶した道路情報記憶手段(41)と、前記道路情報に基づいて車両の進行方向に道路の分岐があるか否かを判定する分岐判定手段(6)と、を有し、前記対象距離算出手段(6)は、前記分岐判定手段によって道路の分岐があると判定された場合に前記路面標示検出手段で検出された路面標示に関連付けられた制御対象物が複数あるか否か判定する対象物数判定手段(6)を備え、前記対象物数判定手段で路面標示に関連付けられた制御対象物が複数あると判定された場合であって且つ前記物間距離取得手段で取得されたそれぞれの物間距離の差が所定距離以上である場合に、車両から前記関連付けられた制御対象物までの対象距離を算出することを特徴とする。
【0012】
また、請求項3に係る運転支援装置は、請求項2に記載の運転支援装置において、前記運転補助手段(6)は、車両(2)が分岐を通過するまでは路面標示から制御対象物までの物間距離が最も短い制御対象物を対象とした前記対象物距離算出手段(6)の算出結果に基づいて運転の補助を行い、車両が分岐を通過した後は車両が進入した道路の路面に形成された制御対象物を対象とした前記対象物距離算出手段の算出結果に基づいて運転の補助を行うことを特徴とする。
【0013】
また、請求項4に係る運転支援装置は、請求項2又は請求項3に記載の運転支援装置において、前記分岐判定手段(6)によって道路の分岐があると判定された場合に車両が現在走行する道路と分岐後の何れか一の道路が道なりの関係にあるか否かを判定する道なり判定手段(6)を有し、前記運転補助手段(6)は、前記道なり判定手段によって車両が現在走行する道路と分岐後の何れか一の道路が道なりの関係にあると判定された場合に、道なりの関係にあると判定された道路にある制御対象物を対象とした前記対象物距離算出手段(6)の算出結果に基づいて運転の補助を行うことを特徴とする。
【0014】
また、請求項5に係る運転支援装置は、請求項2乃至請求項4のいずれかに記載の運転支援装置において、走行に関する案内を行う誘導経路を設定する誘導経路設定手段(6)と、前記分岐判定手段(6)によって道路の分岐があると判定された場合に分岐後の何れか一の道路が誘導経路に設定されているか否かを判定する誘導経路判定手段(6)と、を有し、前記運転補助手段(6)は、前記誘導経路判定手段によって何れか一の道路が誘導経路に設定されていると判定された場合に、誘導経路に設定されていると判定された道路にある制御対象物を対象とした前記対象物距離算出手段の算出結果に基づいて運転の補助を行うことを特徴とする。
【0015】
また、請求項6に係る運転支援装置は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の運転支援装置において、車両(2)を制御する車両制御手段(5)を有し、前記運転補助手段(6)は、車両から前記制御対象物までの対象距離に基づいて前記車両制御手段による車両の制御を行うことを特徴とする。
【0016】
更に、請求項7に係る運転支援装置は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の運転支援装置において、利用者に対して走行に関する案内を行う走行案内手段(7、8)を備え、前記運転補助手段(6)は、車両(2)から前記制御対象物までの対象距離に基づいて前記走行案内手段による案内を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
前記構成を有する請求項1に記載の運転支援装置によれば、車両が検出した路面標示に対して制御対象物が複数関連付けられた場合であっても、不要な案内や誤制御が行われる虞の有る状況での案内や車両制御を予め行わないことにより、運転者に関連する制御対象物を対象とした注意喚起や車両制御を行うことが可能となる。また、演算処理を行う回数を減らすことにより、制御部の処理負担についても軽減することが可能となる。
【0018】
また、請求項2に記載の運転支援装置によれば、分岐の有る道路を車両が走行する場合であって、車両が検出した路面標示に対して分岐後の各道路に形成された複数の制御対象物が関連付けられた場合であっても、不要な案内や誤制御が行われる虞の有る状況での案内や車両制御を予め行わないことにより、分岐で車両が走行する方の道路に形成された制御対象物を対象とした注意喚起や車両制御を行うことが可能となる。また、演算処理を行う回数を減らすことにより、制御部の処理負担についても軽減することが可能となる。
【0019】
また、請求項3に記載の運転支援装置によれば、分岐の有る道路を車両が走行する場合であって、車両が検出した路面標示に対して分岐後の各道路に形成された複数の制御対象物が関連付けられた場合であっても、車両が分岐に到達する前の不要な案内や誤制御が行われる虞の有る状況では制御対象物に対する案内や車両制御を予め行わないので、運転者を困惑わせる虞が無い。また、車両が分岐を通過後では、分岐で車両が走行する方の道路に形成された制御対象物を対象とした注意喚起や車両制御を行うことが可能となる。
【0020】
また、請求項4に記載の運転支援装置によれば、分岐前の道路と道なりの関係にある分岐後の道路を車両が走行する道路と予測し、車両が走行すると予測される道路に形成された制御対象物を対象とした注意喚起や車両制御を行うので、不要な案内や誤制御が行われることを防止することができる。
【0021】
また、請求項5に記載の運転支援装置によれば、誘導経路に設定された分岐後の道路を車両が走行する道路と予測し、車両が走行すると予測される道路に形成された制御対象物を対象とした注意喚起や車両制御を行うので、不要な案内や誤制御が行われることを防止することができる。
【0022】
また、請求項6に記載の運転支援装置によれば、車両から制御対象物までの対象距離に基づいて車両の制御を行うので、遠方を撮像する為にフロントカメラによる撮像装置等の高額な装置を必要とすることなく、確実に制御対象物の種類の応じた車両の制御を行うことが可能となる。
【0023】
更に、請求項7に記載の運転支援装置によれば、車両から制御対象物までの対象距離に基づいて走行に関する案内を行うので、遠方を撮像する為にフロントカメラによる撮像装置等の高額な装置を必要とすることなく、確実に制御対象物の種類の応じた走行の案内を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係る運転支援装置について具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。
先ず、本実施形態に係る運転支援装置1の概略構成について図1を用いて説明する。図1は本実施形態に係る運転支援装置1の概略構成図である。
図1に示すように、本実施形態に係る運転支援装置1は、車両2に対して設置された後方カメラ(撮像手段)3、ナビゲーション装置4、車両ECU(車両制御手段)5等で構成されている。
【0025】
後方カメラ3は、例えばCCD等の固体撮像素子を用いたものであり、車両2の後方に装着されたナンバープレートの上中央付近に取り付けられ、視線方向を水平より45度下方に向けて設置される。そして、駐車時に車両2の進行方向となる車両後方を撮像し、その撮像した画像(以下、BGM(バック・ガイド・モニタ)画像とする)はナビゲーション装置の液晶ディスプレイ7に表示される。一方、通常走行中においては、後述のように車両2の周囲の路面上に形成された停止線、横断歩道、文字列、車両の最高速度等の路面標示を撮像する。そして、撮像された路面標示の画像に基づいて車両2から停止線や交差点、合流帯、カーブ進入口等の車両の制御を行う対象となる制御対象物までの距離が間接的に算出される。
【0026】
また、ナビゲーション装置4は、ナビゲーションECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)6と、車両2の室内のセンターコンソール又はパネル面に備え付けられ、地図や目的地までの探索経路を表示する液晶ディスプレイ(走行案内手段)7と、経路案内に関する音声ガイダンスを出力するスピーカ(走行案内手段)8と、車両2の現在地と進行方向を地図上で特定する現在地検出部9と、地図を表示するための地図データや路面上に形成された路面標示の種類及び位置に関する情報が記憶されたデータ記録部10と、情報センタ等と通信を行う為の通信装置14とから構成されている。
【0027】
ナビゲーションECU(路面標示検出手段、物間距離取得手段、対象距離算出手段、運転補助手段、対象物数判定手段、道なり判定手段、誘導経路設定手段、誘導経路判定手段)6は、通常の経路探索及び経路案内の処理の他に、後方カメラ3で撮像した撮像画像から車両2が走行する路面に形成された路面標識を検出する検出処理、一定条件を満たした場合に車両2から停止線や交差点、合流帯、カーブ進入口等の制御対象物までの道なり距離を、検出した路面標示から間接的に算出する算出処理、算出された距離に基づいて制御対象物に対する注意喚起や車両制御処理等を行う電子制御ユニットである。尚、ナビゲーションECU6の詳細な構成については後述する。
【0028】
そして、車両ECU5は、エンジン、変速機、アクセル、ブレーキ等の作動を制御する車両2の電子制御ユニットであり、ブレーキアクチュエータ11、アクセルアクチュエータ12、AT(Automatic Transmission)13が接続されている。そして、ナビゲーションECU6は、所定の条件を満たした場合に車両ECU5を介してブレーキアクチュエータ11、アクセルアクチュエータ12、AT13に制御信号を送信し、ブレーキ圧やエンジンに吸入する空気量や変速比を変化させ、制動力を自動で付与させる。
【0029】
次に、本実施形態に係る運転支援装置1の制御系に係る構成について特にナビゲーション装置4を中心にして図2に基づき説明する。図2は本実施形態に係る運転支援装置1の制御系を模式的に示すブロック図である。
図2において、運転支援装置1の制御系は、ナビゲーション装置4と、車両ECU5を基本にして構成され、各制御手段に対して所定の周辺機器が接続されている。
【0030】
以下に、ナビゲーション装置4を構成する各構成要素について説明すると、現在地検出部9は、GPS31、地磁気センサ32、ジャイロセンサ33、ステアリングセンサ34、速度センサ35、高度計(図示せず)等からなり、自車の現在地、方位、自車速度、所定地点からの走行距離等を検出することが可能となっている。
【0031】
具体的には、GPS31は、人工衛星によって発生させられた電波を受信することにより、地球上における自車の現在地及び現在時刻を検出する。
また、地磁気センサ32は、地磁気を測定することによって自車方位を検出する。
そして、ジャイロセンサ33は自車の旋回角を検出する。また、ジャイロセンサ33によって検出された旋回角を積分することにより、自車方位を検出することができる。
また、ステアリングセンサ34は、ステアリング装置の内部に取り付けられており、ステアリングの回動角を検出する。
更に、速度センサ35はエンジンから一定走行距離毎に発生される車速パルスに基づいて、自車速度や移動速度(積算移動距離)を検出する。
【0032】
また、データ記録部10は、外部記憶装置及び記録媒体としてのハードディスク(図示せず)と、ハードディスクに記録された所定のプログラム、ナビゲーション装置4の経路案内及び地図表示に必要な情報が格納された地図DB41、路面標示に関する情報が格納された路面標示DB(標示情報記憶手段)42等を読み出すとともにハードディスクに所定のデータを書き込む為のドライバである記録ヘッド(図示せず)とを備えている。
【0033】
ここで、地図DB41は、ナビゲーション装置4の経路案内及び地図表示に必要な地図情報が記録されたDBである。そして、地図情報としては、例えば、地図を表示するための地図データ、各交差点に関する交差点データ、ノード点に関するノードデータ、道路に関する道路データ、経路を探索するための探索データ、施設に関する施設データ、地点を検索するための検索データ等がある。
【0034】
一方、路面標示DB42は、路面上に形成された路面標示に関する路面表示情報が記憶されたDBである。そして、路面表示情報としては、路面上に形成された路面標示の種類(例えば、停止線、横断歩道、文字列、最高速度)に関する種類情報、検出された路面標示の種類を特定する為の特定情報、路面標示の位置を地図上で特定する座標データ等がある。尚、路面標示DB42については後に図3を用いて詳細に説明する。
【0035】
また、ナビゲーションECU6は、ナビゲーション装置4の全体の制御を行う演算装置及び制御装置としてのCPUの他に、CPUが各種の演算処理を行うに当たってワーキングメモリとして使用されるとともに、経路が探索されたときの経路データ等が記憶されるRAMや、制御用のプログラムのほか、目的地までの経路の探索、探索した誘導経路の案内を行う経路案内処理プログラム、後方カメラ3で撮像した画像に基づいて所定条件下で車両2から制御対象物(停止線、交差点、合流帯、カーブ進入口等)までの道なり距離(対象距離)を算出し、運転補助を行う後述の運転支援処理プログラム(図12〜図14参照)が記録されたROM等の内部記憶装置を備えている。尚、前記RAM、ROM等としては半導体メモリ、磁気コア等が使用される。そして、演算装置及び制御装置としては、CPUに代えてMPU等を使用することも可能である。
【0036】
また、ナビゲーションECU6には、GUI制御部51、ロケーション部52、経路探索・案内処理部53を備え、後方カメラ3、現在地検出部9、データ記録部10及び各周辺機器から取得した情報に基づいて、各種制御を行う。
【0037】
ここで、GUI制御部51は、地図DB41から読み出した地図データとロケーション部52によって検出された自車の現在地とに基づいて自車周囲の適当な地図画像を液晶ディスプレイ7に表示させるとともに、経路の案内が必要な場合には地図画像に対してアイコンや案内画面、探索経路等を合成して液晶ディスプレイ7に表示させる。
また、ロケーション部52は、現在地検出部9から供給される各情報に基づいて、車両2の現在の絶対位置(緯度・経度)を検出する。更に、検出した現在地と路面標示DB42に格納された情報から車両2の所定範囲(前方30m〜後方20m)内に路面標示が存在するか否かを判定し、存在する場合には、後方カメラ3によって撮像した画像を取り込んで解析処理を行い、路面上の路面標示を検出する。そして、検出された路面標示に対して一の制御対象物のみが対応付けられている場合、又は複数の制御対象物が対応付けられている場合であって路面標示と制御対象物までの物間距離の差が所定距離(例えば5m)以上である場合には、撮像した画像から検出した路面標示と車両2との距離を算出し、更にその距離から路面標示に関連付けられた制御対象物までの距離を算出し、算出した距離に応じてブレーキアクチュエータ11、スロットルアクチュエータ12、AT13を制御して車両2の車両制御の実行、或いは液晶ディスプレイ7及びスピーカ8により制御対象物に対する注意喚起等を行う。
更に、経路探索・案内処理部53は、目的地が設定された場合においてデータ記録部10に記憶されたノード点データや探索データに基づいて現在地から目的地までの経路探索及び誘導経路の設定を行うとともに、設定された誘導経路に従って液晶ディスプレイ7やスピーカ8を用いて経路の案内を行う。
【0038】
また、前記ナビゲーションECU6には、液晶ディスプレイ7、スピーカ8、通信装置14等の各周辺装置が電気的に接続されている。
【0039】
液晶ディスプレイ7には、操作案内、操作メニュー、キーの案内、現在地から目的地までの誘導経路、誘導経路に沿った案内情報、交通情報、ニュース、天気予報、時刻、メール、テレビ番組、後方カメラ3で撮像したBGM画像等が表示される。
【0040】
また、スピーカ8は、ナビゲーションECU6からの指示に基づいて誘導経路に沿った走行を案内する音声ガイダンスを出力する。更に、本実施形態に係るナビゲーション装置4では、車両2から制御対象物までの対象距離が所定距離となった場合に、液晶ディスプレイ7及びスピーカ8により制御対象物に関する情報提供や注意喚起(例えば、停止線が接近していることの警告等)を行う。
【0041】
そして、通信装置14は、情報センタ、例えば、VICS(登録商標:Vehicle Information and Communication System)センタ等から送信された渋滞情報、規制情報、駐車場情報、交通事故情報、サービスエリアの混雑状況等の各情報から成る交通情報を、道路に沿って配設された電波ビーコン装置、光ビーコン装置等を介して電波ビーコン、光ビーコン等として受信するビーコンレシーバである。また、本実施形態に係るナビゲーション装置4は通信装置14を介して情報センタ(図示せず)に接続し、地図DB41及び路面標示DB42に格納された情報を更新する。
【0042】
次に、図3に基づいてデータ記録部10において路面標示に関する情報が記憶される路面標示DB42について説明する。図3は本実施形態に係る路面標示DB42の記憶領域を示した図である。
【0043】
図3に示すように路面標示DB42の記憶領域は、路面標示の地図データ上における座標(位置)と、路面標示の種類と、路面標示に関連付けられた制御対象物と、路面標示の測定開始点(複数ある場合には制御対象物に最も近い測定開始点)から制御対象物までの道なり距離(物間距離)とから構成されている。
【0044】
例えば、図3では座標(x1,y1)には「横断歩道有り」の路面標示が形成されており、且つその路面標示には60m前方に制御対象物として「停止線」の路面標示が対応付けられていることを示す。
また、座標(x2,y2)には「矢印」の路面標示が形成されており、且つその路面標示には54m前方に制御対象物として「コーナ(コーナ開始点のノード)」が対応付けられていることを示す。
また、座標(x3,y3)には「最高速度(40km/h)」の路面標示が形成されており、且つその路面標示には112m前方に第1の制御対象物として「停止線」が対応付けられ、72m前方に第2の制御対象物として「停止線」が対応付けられていることを示す。
また、座標(x4,y4)には「文字列(「この先カーブ」、「とまれ」、「○○方面」等)」の路面標示が形成されており、且つその路面標示には82m前方に第1の制御対象物として「停止線」が対応付けられ、85m前方に第2の制御対象物として「停止線」が対応付けられていることを示す。
また、座標(x5,y5)には「横断歩道」の路面標示が形成されており、且つその路面標示には108m前方に制御対象物として「交差点(交差点のノード)」が対応付けられていることを示す。尚、路面標示の座標は、路面標示を囲む四角形状の角部に位置する4点の座標から構成される。また、対応付けられる制御対象物の数は3つ以上であっても良い。また、制御対象物までの物間距離に関して、道路が複数車線からなる場合においては、車線毎の制御対象物までの物間距離が記録される。
【0045】
ここで、制御対象物は案内や車両の制御を行う対象となるものであり、路面標示が形成された道路の進行方向であって、所定区間(例えば、10m〜200m)にあるノード点や他の路面標示が相当する。そして、ナビゲーションECU6は後方カメラ3が路面標示DB42に記録されたいずれかの路面標示を撮像した際に、撮像した画像から関連付けられた制御対象物に対しての道なり距離である対象距離を間接的に算出し、その対象距離が所定距離となった場合に車両2の車両制御や制御対象物に対する案内を行う。
【0046】
また、車両2の車両制御や案内の内容は関連付けられた制御対象物の種類や制御レベルによって異なる。
ここで、制御レベルとは車両状況や運転者状況によって制御対象物に対する車両制御及び案内の必要度合いを複数段階に分けて判定したものである。具体的には、制御対象物に接近した状態で十分な減速制御が行われていない場合には制御レベルが高いと判定され、既に十分な減速制御が行われている場合には制御レベルが低いと判定される。本実施形態では、特に制御対象物との対象距離が所定距離(例えば、制御対象物が停止線やカーブの場合は50m)となった時点で、制御対象物に対する必要減速度(車両にかかる減速G)G1を自車の現在速度や加速度から算出する。そして、算出された必要減速度の値から制御レベルを判定し、車両制御や案内の内容を選択する。尚、図4は各制御レベルで実施される制御対象物に対する車両制御と案内の内容の一覧を示した図である。
【0047】
図4に示すように、(1)算出された必要減速度G1<0.05Gである場合には制御レベル「無し」と判定し、制御及び案内は実施しない。
また、(2)0.05G≦G1<0.1Gである場合には制御レベル「低」と判定し、情報提供レベルの案内のみを実施する。例えば、制御対象物として「停止線」又は「コーナ」が対応付けられていた場合には、停止線又はコーナが接近していることを報知する停止線又はコーナのマークを液晶ディスプレイ7に表示させる。
また、(3)0.1G≦G1<0.3Gである場合には制御レベル「中」と判定し、注意喚起レベルの案内のみを実施する。例えば、制御対象物として「停止線」又は「コーナ」が対応付けられていた場合には、制御対象物が接近していることを警告する「停止線(コーナ)が接近しています。」との文字列を液晶ディスプレイ7に表示させ、またスピーカ8から同内容の警告音声を出力する。
更に、(4)0.3G<G1である場合には制御レベル「高」と判定し、サポート、介入レベルの車両制御及び案内を実施する。例えば、制御対象物として「停止線」又は「コーナ」が対応付けられていた場合には、停止線が接近していることを警告する「停止線(コーナ)が接近しています。」との文字列を液晶ディスプレイ7に表示させ、またスピーカ8から同内容の警告音声を出力する。更に、制御対象物が「停止線」である場合にはブレーキアクチュエータ11やAT13を制御して停止線の手前で車両2が停止するように減速制御を行う。一方、制御対象物が「コーナ」である場合、コーナ進入前に地図DB41に記録されたコーナのRに対する最適な速度(例えば、R30で40km/h)となるようにブレーキアクチュエータ11やAT13を制御して減速制御を行う。
【0048】
尚、制御対象物として「交差点」が対応付けられていた場合には、車両制御を行わずに制御対象物との対象距離が所定距離(例えば10m)となった時点で、設定された誘導経路に従った経路案内のみを行う。例えば、左折を示す案内表示を液晶ディスプレイ7に表示させ、「次の交差点を左折して下さい。」の案内音声をスピーカ8から出力する。
【0049】
次に、図5乃至図9を用いて車両2の後方カメラ3によって路面標示を撮像した際の車両2と路面標示との距離、及び車両2と路面標示に関連付けられた制御対象物との距離の算出方法について具体例をあげて説明する。
以下の具体例では、車両2が走行する路面60に形成された路面標示の内、特に制御対象物として停止線の路面標示69が関連付けられた「横断歩道有り」の路面標示61を撮像した場合を示すこととする。図5は路面標示61を撮像する車両2を示した上面図、図6は路面標示61を撮像する車両2を示した側面図、図7は図5及び図6の状態における車両2の後方カメラ3によって撮像された撮像画像62を示した模式図である。
【0050】
後方カメラ3は、図6に示すように車両2の後バンパー63付近から後方を撮像できるように光軸Lを水平から45度下方向に向けるように取り付けられており、撮像範囲が固定されている。従って、後方カメラ3によって撮像された図7に示す撮像画像中の画像データの位置(具体的には下縁からの画素数)から、被写体までの距離を計算することができる。
【0051】
ここで、路面標示には車両2との距離を計測する為の測定開始点が予め複数箇所に定義されており、車両2から最も進行方向側にある測定開始点までの距離を車両2から路面標示までの距離として扱う。例えば、図8(A)は「横断歩道有り」の路面標示61の測定開始点61A〜61Dを示した模式図、図8(B)は「最高速度(20km/h)」の路面標示65の測定開始点65A〜65Dを示した模式図である。
図8(A)及び図8(B)に示すように、路面標示の測定開始点は路面標示を形成するライン(境界線)の角部や先端部に複数個設けられており、路面標識毎に特有の配置を有する。そして、ナビゲーションECU6は路面標示を撮像した際に、その撮像した路面標示の画像から路面標示の境界線や測定開始点を特定することにより、路面標示の種類を判定することが可能となる。
【0052】
また、図7に示す路面標示を撮像した撮像画像中において、測定開始点の位置(具体的には下縁から測定開始点までの画素数)から車両2と測定開始点の間の距離D1を算出することが可能となる。ここで、複数ある測定開始点の内、いずれの測定開始点との間の距離を算出するかは、路面標示ごとに決まっており、例えば、図8(A)に示す「横断歩道有り」の路面標示61では測定開始点61Aとの距離が算出される。但し、測定開始点61Aが何らかの原因(例えば、砂や水溜り等の障害物によって白線の一部が隠れた状態や、長年の使用による劣化によって白線の一部で塗装が剥がれている場合)によって特定できなかった場合には、先ず測定開始点61Bまでの距離を算出し、その後に測定開始点61Aと測定開始点61Bとの距離を用いることによって測定開始点61Aとの距離が間接的に算出される。更に、測定開始点61Bについても特定できなかった場合には測定開始点61Cが用いられ、測定開始点61Cについても特定できなかった場合には測定開始点61Dが用いられる。
【0053】
また、図8(B)に示す「最高速度(20km/h)」の路面標示65では測定開始点65A及び測定開始点65Bとの距離が算出される。但し、測定開始点65A及び測定開始点65Bが何らかの原因(例えば、砂や水溜り等の障害物によって白線の一部が隠れた状態や、長年の使用による劣化によって白線の一部で塗装が剥がれている場合)によって特定できなかった場合には、測定開始点65C及び測定開始点65Dを用いることによって測定開始点65A及び測定開始点65Bとの距離が間接的に算出される。
【0054】
一方、前記した方法によって車両2と路面標示の測定開始点までの距離D1が算出されると、それに基づいて車両2から検出された路面標示に関連付けられた制御対象物(図3参照)までの道なり距離(対象距離)を算出することが可能である。図9は、車両2の後方カメラ3によって路面標示を撮像した際の車両2から制御対象物までの対象距離の算出方法について示した模式図である。
【0055】
図9では、「横断歩道有り」の路面標示61を車両2が後方カメラ3で検出した場合を示すものであり、更に、路面標示61には制御対象物として前方の物間距離Mにある「停止線」の路面標示69が関連付けられている。
その場合には、物間距離Mから距離D1及び車両長さD2を減算することによって、路面標示61の検出時点での車両2から制御対象物までの対象距離T(=M−D1−D2)を算出することが可能となる。また、ナビゲーションECU6はエンジンから一定走行距離毎に発生される車速パルスに基づいて速度センサ35により車両2の走行距離Sを算出する。そして、路面標示61の検出時点での車両2から制御対象物までの対象距離Tから走行距離Sを減算することによって、走行中の車両2から制御対象物までの対象距離T(=M−D1−D2−S)を算出することが可能となる。その結果、算出された「停止線」の路面標示69までの対象距離Tに基づいて車両の制御及び案内を行う。
【0056】
次に、特に車両2が後方カメラ3で検出した路面標示に関連付けられた制御対象物が複数ある場合において、制御対象物に対する案内及び車両制御の実施の態様について図10及び図11について説明する。
図10及び図11では、分岐を有する道路71を車両2が走行する場合であって、道路71の路面に形成された最高速度が40km/hであることを示す路面標示72に対して、一方の第1分岐道路73の路面に形成された第1停止線74と他方の第2分岐道路75の路面に形成された第2停止線76の2つの制御対象物が関連付けられている。この場合には、分岐点を通過する前には車両2がその後の道路分岐においていずれの道路に進入するか特定できない。従って、分岐点を通過する前においては、第1停止線74を対象とした案内や車両制御と、第2停止線76を対象とした案内や車両制御のどちらを行うべきかが問題となる。
【0057】
ここで、本実施形態に係る運転支援装置1では、分岐点を通過するまでは車両2による走行距離が短い方の制御対象物を対象とした注意喚起や車両制御を行うこととする。従って、路面標示DB42(図3参照)に記憶された各制御対象物までの物間距離を比較して、分岐点を通過するまでは物間距離が短い方の制御対象物を対象とした案内や車両制御を行う。しかしながら、両者の物間距離の差がほとんど無い場合には、車両2が各制御対象物まで走行するのに必要な走行距離が短い方の制御対象物を特定することができないので、その場合には分岐点を通過するまでは、制御対象物を対象とした案内や車両制御を行わないようにする。
【0058】
具体的には、図10及び図11に示すように、車両2が後方カメラによって走行中に路面標示72を検出すると、路面標示DB42から路面標示72から第1停止線74までの物間距離である第1物間距離M1と路面標示72から第2停止線76までの物間距離である第2物間距離M2を取得し、距離差を算出する。
【0059】
その結果、図10に示すように第1物間距離M1と第2物間距離M2との差が制御実施可否距離(例えば5m)以上である場合には、車両2が各制御対象物まで走行するのに必要な走行距離が短い方の制御対象物(図10では第2停止線76)を正確に特定することができる。従って、分岐点を通過するまでは第2停止線76を対象とし、車両2から第2停止線76までの距離である第2対象距離T2に基づいて案内や車両制御を行う。また、分岐点を通過した後は、車両が走行する道路にある制御対象物を対象とした案内や車両制御を行う。即ち、車両2が分岐点で第1分岐道路73に進入した場合には、その後は第1停止線74を対象とし、車両2から第1停止線74までの距離である第1対象距離T1に基づいて案内や車両制御を行う。一方、車両2が分岐点で第2分岐道路75に進入した場合には、継続して第2停止線76を対象とした案内や車両制御を行う。
【0060】
それに対して、図11に示すように第1物間距離M1と第2物間距離M2との差が制御実施可否距離(例えば5m)未満である場合には、車両2が各制御対象物まで走行するのに必要な走行距離が短い方の制御対象物を正確に特定することができない。従って、分岐点を通過するまでは第1停止線74及び第2停止線76のいずれに対しても、制御対象物を対象とした案内や車両制御は行わない。但し、分岐点を通過した後は、図10と同様にして車両が走行する道路にある制御対象物を対象とした案内や車両制御を行う。即ち、車両2が分岐点で第1分岐道路73に進入した場合には、その後は第1停止線74を対象とし、車両2から第1停止線74までの距離である第1対象距離T1に基づいて案内や車両制御を行う。一方、車両2が分岐点で第2分岐道路75に進入した場合には、継続して第2停止線76を対象とした案内や車両制御を行う。
【0061】
尚、路面標示や制御対象物の形成された道路がカーブ形状を有している場合には、カーブ形状に沿って対象距離が算出される。また、路面標示や制御対象物の形成された道路が登り坂や下り坂である場合には、坂の勾配に沿って対象距離が算出される。
【0062】
以上のように、直接制御対象物を認識することなく、後方カメラ3によって検出された路面標示から前方にある制御対象物までの対象距離を間接的に算出することにより、より早い段階で正確な制御対象物までの対象距離(T=M−D1−D2−S)を算出することが可能となる。そして、算出された正確な制御対象物までの対象距離に基づいて適切な車両の制御や、より的確なタイミングでの走行案内が可能となる。
【0063】
続いて、前記構成を有する本実施形態に係る運転支援装置1のナビゲーションECU6が実行する運転支援処理プログラムについて図12及び図13に基づき説明する。図12及び図13は本実施形態に係る運転支援装置1における運転支援処理プログラムのフローチャートである。ここで、運転支援処理プログラムは車両のイグニションがONされた後に所定間隔(例えば200ms毎)で実行され、車両2が路面を走行する際において後方カメラ3により撮像した撮像画像から路面標示を検出するとともに、所定条件を満たした場合に検出した路面標示から車両と制御対象物までの対象距離を算出し、算出された対象距離に基づいて利用者の運転を補助する制御を行うプログラムである。尚、以下の図12乃至図14にフローチャートで示されるプログラムはナビゲーションECU6が備えているROMやRAMに記憶されており、CPUにより実行される。
【0064】
運転支援処理プログラムでは、先ずステップ(以下、Sと略記する)1において、ナビゲーションECU6は現在地検出部9によって検出した車両2の現在地情報と路面標示DB42(図3参照)に記録された路面標示の位置情報に基づいて、車両2の周辺(本実施形態では車両2の前方2000m〜後方500m)に位置する路面標示の情報(路面標示の位置座標、種類、関連付けられた制御対象物、制御対象物までの物間距離)を路面標示DB42から読み出す。尚、上記S1が物間距離取得手段の処理に相当する。
【0065】
次に、S2でナビゲーションECU6は、前記S1で読み出された路面標示の内、特に車両2の所定範囲(車両2の前方30m〜後方20m)に位置する路面標示があるか否かを判定する。そして、車両2の所定範囲に位置する路面標示があると判定された場合(S2:YES)には、S3へと移行し、路面標示の画像認識処理を行う。一方、車両2の所定範囲に位置する路面標示がないと判定された場合(S2:NO)には、当該運転支援処理プログラムを終了し、所定時間経過後に再度、現在地点に基づく路面標示の情報の読み出しを行う。
【0066】
S3の路面標示の画像認識処理では、後方カメラ3によって撮像される車両2の後方環境の画像を取り込んで解析処理を行い、車両が走行する路面上に形成された路面標示の境界線や測定開始点を特定するとともに、検出された路面標示の種類を判定する。
具体的には、先ず、NTSCのようなアナログ通信手段や、i−linkのようなデジタル通信手段を用いて後方カメラ3で撮像した映像を入力し、jpeg、mpeg等のデジタル画像フォーマットに変換する。次に、路面標示が一般に白線又は黄線であることを用いて、撮像画像中の路面標示が描かれた路面と他の路面を輝度差に基づいて輝度補正を行う。その後、対象となる路面標示を画像から分離する2値化処理、歪みを補正する幾何学処理、画像の雑音を除去する平滑化処理等を行い、路面標示と他の路面との境界線及び測定開始点を検出する。
その後、検出された境界線及び測定開始点の配置から撮像画像中の路面標示の種類を特定し、更には特定された路面標示の種類が前記S2で自車の所定範囲に存在すると判定された路面標示の種類と一致するか否かを判定する。尚、上記S3が路面標示検出手段の処理に相当する。
【0067】
そして、S4では前記S3の処理で路面標示が検出されたか否かが判定され、路面標示が検出されたと判定された場合(S4:YES)、即ち、撮像された撮像画像中に路面標示を認識し、且つ、認識された路面標示が前記S2で自車の周囲に位置すると判定された路面標示の種類と一致すると判定された場合には、S5へと移行する。一方、路面標示が検出されなかったと判定された場合(S4:NO)、即ち、撮像された撮像画像中に路面標示が認識できなかったか、又は、認識された路面標示が前記S2で自車の周囲に位置すると判定された路面標示の種類と一致しないと判定された場合には、当該運転支援処理プログラムを終了し、所定時間経過後に再度、現在地点に基づく路面標示の情報の読み出しを行う。
【0068】
続いて、S5でナビゲーションECU6は車両2が現在走行する周辺の道路に関する道路情報を地図DB41から取得する。
【0069】
更に、S6においてナビゲーションECU6は前記S5で取得した道路情報から、車両2の進行方向に分岐があるか否か判定する。尚、上記S6が分岐判定手段の処理に相当する。
【0070】
そして、車両2の進行方向に分岐があると判定された場合(S6:YES)には、更に、前記S1で取得した路面標示情報に基づいて前記S3で検出した路面標示に対して複数の制御対象物が対応付けられているか否か、即ち分岐後の複数の道路に対して少なくとも2以上の制御対象物が存在するか否か判定される(S7)。尚、上記S7が対象物数判定手段の処理に相当する。
【0071】
そして、前記S3で検出した路面標示に対して複数の制御対象物が対応付けられていると判定された場合(S7:YES)には、更に、前記S5で取得した道路情報に基づいて車両2が現在走行する道路と分岐後のいずれか一の道路が道なりの関係にある道なり情報があるか否か、及び、分岐後のいずれか一の道路が誘導経路に設定されているか否か判定される(S8)。尚、上記S8が道なり判定手段及び誘導経路判定手段の処理に相当する。
【0072】
その結果、道なり情報も誘導経路の設定も無いと判定された場合(S8:NO)には、S9へと移行する。
一方、前記S6において車両2の進行方向に分岐が無いと判定された場合(S6:NO)及び前記S7において路面標示に対して単一の制御対象物のみが対応付けられていると判定された場合(S7:NO)には、検出された路面標示に関連付けられた制御対象物を対象とした案内や車両制御を行う(S10)。尚、S10での制御対象物に対する案内や車両制御の具体的処理の内容については、後に図14を用いて詳細に説明する。
【0073】
また、前記S8において道なり情報及び誘導経路の設定のいずれかが有ると判定された場合(S8:YES)には、道なりの関係がある分岐後の道路又は誘導経路に設定された分岐後の道路に存在する制御対象物を選択し(S11)、選択された制御対象物を対象とした後述の案内や車両制御を行う(S10)。
【0074】
次に、S9でナビゲーションECU6は前記S3で検出された路面標示に関連付けられた複数の制御対象物について、それぞれの路面標示からの物間距離の差を算出する。尚、3つ以上の制御対象物が対応付けられている場合には、物間距離の差が最も最も短くなる2つの制御対象物を対象とした物間距離の差を算出する。その後、S12へと移行する。
【0075】
S12でナビゲーションECU6は、車両の進行方向にある分岐を越えたか否か判定する。そして、分岐を越えたと判定された場合(S12:YES)には、車両進行方向の分岐後の道路に存在する制御対象物を選択し(S13)、選択された制御対象物を対象とした後述の案内や車両制御を行う(S16)。
【0076】
一方、分岐を越えていないと判定された場合(S12:NO)には、前記S9で算出した物間距離の差が制御実施可否距離(例えば5m)以上であるか否か判定される(S14)。その結果、物間距離の差が制御実施可否距離以上であると判定された場合(S14:YES)には、車両2が各制御対象物まで走行するのに必要な走行距離が短い方の制御対象物を特定することが可能であり、S15へと移行する。
【0077】
S15でナビゲーションECU6は検出された路面標示に関連付けられた複数の制御対象物の内、最も物間距離が短い制御対象物を選択し(S15)、選択された制御対象物を対象とした後述の案内や車両制御を行う(S16)。
【0078】
それに対して、物間距離の差が制御実施可否距離未満であると判定された場合(S14:NO)には、車両2が各制御対象物まで走行するのに必要な走行距離が短い方の制御対象物を特定することができないので、その場合には分岐点を通過するまでは、制御対象物を対象とした案内や車両制御を行わないようにする。
【0079】
次に、前記S10及びS16で実行される案内及び車両制御処理について図14に基づき説明する。図14は本実施形態に係る運転支援装置1における案内及び車両制御処理のフローチャートである。
【0080】
先ず、S21でナビゲーションECU6は前記S3で検出された路面標示と車両2との間の距離を算出する。具体的には、路面標示を撮像した撮像画像(図7参照)中における特定された測定開始点の位置(具体的には下縁から測定開始点までの画素数)から、車両2と測定開始点の間の距離D1を算出する。
【0081】
その後、S22でナビゲーションECU6は、前記S21で算出された車両2と測定開始点の間の距離D1と、路面標示から案内及び車両制御の対象に選択された制御対象物までの物間距離Mと、車両長さD2とから、路面標示検出時点の車両2から制御対象物までの対象距離T(=M−D1−D2)を算出する(図9参照)。
更に、S22ではエンジンから一定走行距離毎に発生される車速パルスに基づいて速度センサ35により路面標示検出地点からの車両2の走行距離Sを算出し、走行中の車両2の現在位置から制御対象物までの対象距離T(=M−D1−D2−S)を算出する(図9参照)。尚、上記S21及びS22が対象物距離算出手段の処理に相当する。
【0082】
その後、S23では前記S22で算出された制御対象物までの対象距離Tに基づいて、車両2が制御対象物の種類ごとに設定された案内又は制御開始地点に到達したか否かが判定される。例えば、制御対象物が「停止線」や「コーナ」である場合には、対象距離が50m以下である場合に、案内又は制御開始地点に到達したと判定される。また、制御対象物が「交差点」の路面標示である場合には残距離が10m以下である場合に、案内又は制御開始地点に到達したと判定される。
【0083】
そして、車両2が案内又は制御開始地点に到達したと判定された場合(S23:YES)には、制御対象物に対する走行の案内又は車両制御が必要か否かを判定する為に車両状況及び運転者状況の取得が行われる(S24)。具体的には、車両2の車速、アクセル開度、ステアリング角、運転者の顔の向き、視線方向等を取得する。
【0084】
そして、S25でナビゲーションECU6は、前記S24で取得した車両状況及び運転者状況に基づいて、制御対象物に対する車両制御及び案内の必要度合いを複数段階に分けて示した制御レベルの算出、判定を行う。
ここで、本実施形態では既に図4に示したように制御対象物に対する必要減速度(車両にかかる減速G)G1を自車の現在速度や加速度から算出し、算出された必要減速度の値から制御レベルを判定する。
【0085】
続いて、S26においてナビゲーションECU6は、前記S25で判定された制御レベルに応じた案内及び車両制御を行う。
具体的に、図4に示すように(1)算出された必要減速度G1<0.05Gである場合には制御レベル「無し」と判定され、制御及び案内は実施しない。
また、(2)0.05G≦G1<0.1Gである場合には制御レベル「低」と判定され、情報提供レベルの案内のみを実施する。例えば、制御対象物として「停止線」又は「コーナ」が対応付けられていた場合には、停止線又はコーナが接近していることを報知する停止線又はコーナのマークを液晶ディスプレイ7に表示させる。
また、(3)0.1G≦G1<0.3Gである場合には制御レベル「中」と判定され、注意喚起レベルの案内のみを実施する。例えば、制御対象物として「停止線」又は「コーナ」が対応付けられていた場合には、停止線が接近していることを警告する「停止線(コーナ)が接近しています。」との文字列を液晶ディスプレイ7に表示させ、またスピーカ8から同内容の警告音声を出力する。
更に、(4)0.3G<G1である場合には制御レベル「高」と判定され、サポート、介入レベルの車両制御及び案内を実施する。例えば、制御対象物として「停止線」又は「コーナ」が対応付けられていた場合には、停止線が接近していることを警告する「停止線(コーナ)が接近しています。」との文字列を液晶ディスプレイ7に表示させ、またスピーカ8から同内容の警告音声を出力する。更に、制御対象物が「停止線」である場合にはブレーキアクチュエータ11やAT13を制御して停止線の手前で車両2が停止するように減速制御を行う。一方、制御対象物が「コーナ」である場合、コーナ進入前に地図DB41に記録されたコーナのRに対する最適な速度(例えば、R30で40km/h)となるようにブレーキアクチュエータ11やAT13を制御して減速制御を行う。
尚、制御対象物として「交差点」が対応付けられていた場合には、車両制御を行わずに制御対象物との対象距離が所定距離(例えば10m)となった時点で、設定された誘導経路に従った経路案内のみを行う。例えば、左折を示す案内表示を液晶ディスプレイ7に表示させ、「次の交差点を左折して下さい。」の案内音声をスピーカ8から出力する。
【0086】
一方、車両2が案内又は制御開始地点に到達していないと判定された場合(S23:NO)には、制御対象物に対する案内及び車両制御を行うことなく処理を終了する。尚、上記S26が運転補助手段の処理に相当する。
【0087】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係る運転支援装置1では、車両2から所定範囲内に路面標示が存在すると判定された場合(S2:YES)に、後方カメラ3によって撮像された画像から路面標示を検出し(S3)、検出された路面標示に関連付けられた制御対象物が単数である場合、又は前記関連付けられた制御対象物が複数であって且つそれぞれの物間距離の差が制御実施可否距離以上である場合(S14:YES)に、車両から案内及び車両制御の対象となる制御対象物までの対象距離を算出し(S21、S22)、算出された対象距離に基づいて、制御対象物に応じた案内及び車両制御を行う(S26)ので、車両2が検出した路面標示に対して制御対象物が複数関連付けられた場合であっても、不要な案内や誤制御が行われる虞の有る状況での案内や車両制御を予め行わないことにより、運転者に関連する制御対象物を対象とした注意喚起や車両制御を行うことが可能となる。また、演算処理を行う回数を減らすことにより、ナビゲーションECU6の処理負担についても軽減することが可能となる。
また、分岐の有る道路を車両2が走行する場合であって、車両2が検出した路面標示に対して分岐後の各道路に形成された複数の制御対象物が関連付けられた場合であっても、不要な案内や誤制御が行われる虞の有る状況での案内や車両制御を予め行わないことにより、分岐で車両2が走行する方の道路に形成された制御対象物を対象とした案内や車両制御を行うことが可能となる。
また、分岐の有る道路を車両2が走行する場合であって、車両2が検出した路面標示に対して分岐後の各道路に形成された複数の制御対象物が関連付けられた場合であっても、車両2が分岐に到達する前の不要な案内や誤制御が行われる虞の有る状況では制御対象物に対する案内や車両制御を予め行わないので、運転者を困惑わせる虞が無い。
また、分岐前の道路と分岐後の道路に道なりの関係がある場合(S8:YES)には、道なりの関係にある分岐後の道路を車両が走行する道路と予測し、車両が走行すると予測される道路に形成された制御対象物を対象とした注意喚起や車両制御を行うので、不要な案内や誤制御が行われることを防止することができる。
また、分岐後の道路が誘導経路に設定されている場合(S8:YES)には、誘導経路に設定されている分岐後の道路を車両が走行する道路と予測し、車両が走行すると予測される道路に形成された制御対象物を対象とした注意喚起や車両制御を行うので、同じく不要な案内や誤制御が行われることを防止することができる。
更に、車両から制御対象物までの対象距離に基づいて案内や車両の制御を行うので、遠方を撮像する為にフロントカメラによる撮像装置等の高額な装置を必要とすることなく、確実に制御対象物の種類の応じた案内や車両の制御を行うことが可能となる。
【0088】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、本実施形態では、制御対象物が停止線、交差点、コーナ進入口である場合について説明したが、制御対象物は上記のものに限られること無く、例えば、横断歩道等の路面標示の他、インターチェンジ等の施設であっても良い。
【0089】
また、本実施形態では制御対象物に対する必要減速度(車両にかかる減速G)G1を自車の現在速度や加速度から算出し、算出された必要減速度の値から制御レベルを判定することとしているが、運転者の顔の向きや視線方向から制御レベルを判定するようにしても良い。即ち、車両2が案内又は制御開始地点に到達した時点で運転者が前方を見ていない場合に制御レベル「高」と判定し、運転者が前方を見ている場合に制御レベル「無し」と判定するようにしても良い。
【0090】
また、本実施形態に係る運転支援装置1が、撮像手段として後方環境を撮像する後方カメラ3を設け、後方カメラによって撮像した画像に基づいて路面標示の認識を行い、制御対象物に対する制御を行っていたが、撮像手段として後方カメラ3のほかに車両2の前方環境を撮像する前方カメラを設け、後方カメラ3に加えて前方カメラで撮像した画像に基づいて路面標示の認識を行っても良い。
ここで、図15は他の実施形態に係る運転支援装置90の概略構成図である。
図15に示すように、他の実施形態に係る運転支援装置90は、車両2に対して設置された前方カメラ91、後方カメラ3、ナビゲーション装置4、車両ECU5等で構成されている。尚、前方カメラ91以外の後方カメラ3、ナビゲーション装置4、車両ECU5の各構成に関しては前記した本実施形態に係る運転支援装置1と同様であり、その説明は省略する。
【0091】
そして、他の実施形態に係る運転支援装置90では前方カメラ91で撮像した画像に基づいて、以下のように制御対象の拡大及び路面標示の認識率の向上を実現可能となる。
【0092】
例えば、前方カメラ91によって撮像した画像に基づいて前方の交差点に位置する信号機が赤で点灯していると判定された場合には、前記したような「交差点」の制御対象物に従った案内及び車両制御(S26)に加えて、交差点の信号機が赤で点灯していることの警告を行うとともに、交差点の手前で車両2が停止するようにブレーキアクチュエータ11やAT13を制御することが可能となる。
【0093】
また、前方カメラ91によって撮像した画像に基づいて前方の交差点に一時停止の道路標識が設置されていると判定された場合には、前記したような「交差点」の制御対象物に従った案内及び車両制御(S26)に加えて、一時停止に対する警告を行うとともに、交差点の手前で車両2が停止するようにブレーキアクチュエータ11やAT13を制御することが可能となる。
【0094】
また、前方カメラ91によって撮像した画像に基づいて前方の路面に路面標示が形成されていると判定された場合に、車両2が路面標示を通過するタイミングを算出し、算出されたタイミングに合わせて後方カメラ3による画像の認識処理を行うことにより、視野が狭い後方カメラ3を用いた場合であっても路面標示の認識率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本実施形態に係る運転支援装置の概略構成図である。
【図2】本実施形態に係る運転支援装置の制御系を模式的に示すブロック図である。
【図3】本実施形態に係る路面標示DBの記憶領域を示した図である。
【図4】各制御レベルで実施される制御対象物に対する車両制御と案内の内容の一覧を示した図である。
【図5】路面標示を撮像する車両を示した上面図である。
【図6】路面標示を撮像する車両を示した側面図である。
【図7】図5及び図6の状態における車両の後方カメラによって撮像された撮像画像を示した模式図である。
【図8】(A)は「横断歩道有り」の路面標示の測定開始点を示した模式図、(B)は「最高速度(20km/h)」の路面標示の測定開始点を示した模式図である。
【図9】車両の後方カメラによって路面標示を撮像した際の車両から制御対象物までの対象距離の算出方法について示した模式図である。
【図10】車両が検出した路面標示に関連付けられた制御対象物が複数ある場合において、制御対象物に対する案内及び車両制御を行う場合について示した模式図である。
【図11】車両が検出した路面標示に関連付けられた制御対象物が複数ある場合において、制御対象物に対する案内及び車両制御を行わない場合について示した模式図である。
【図12】本実施形態に係る運転支援装置における運転支援処理プログラムのフローチャートである。
【図13】本実施形態に係る運転支援装置における運転支援処理プログラムのフローチャートである。
【図14】本実施形態に係る運転支援装置における案内及び車両制御処理のフローチャートである。
【図15】他の実施形態に係る運転支援装置の概略構成図である。
【図16】従来技術の問題点を説明した説明図である。
【符号の説明】
【0096】
1 運転支援装置
2 車両
3 後方カメラ
5 車両ECU
6 ナビゲーションECU
7 液晶ディスプレイ
8 スピーカ
9 現在地検出部
42 路面標示DB
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面に形成された路面標示の位置情報を一又は複数の制御対象物までの道なり距離である物間距離に関連付けて記憶した標示情報記憶手段と、
車両に配置され、車両の周辺を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像した画像に基づいて、前記車両が走行する路面に形成された路面標示を検出する路面標示検出手段と、
前記路面標示検出手段によって検出された路面標示に関連付けられた一又は複数の制御対象物までの物間距離を前記標示情報記憶手段より取得する物間距離取得手段と、
前記関連付けられた制御対象物が単数である場合、又は前記関連付けられた制御対象物が複数であって且つ前記物間距離取得手段で取得されたそれぞれの物間距離の差が所定距離以上である場合に、車両から前記関連付けられた制御対象物までの道なり距離である対象距離を算出する対象距離算出手段と、
前記対象距離算出手段の算出結果に基づいて利用者の運転を補助する運転補助手段と、を有することを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
道路に関する情報を記憶した道路情報記憶手段と、
前記道路情報に基づいて車両の進行方向に道路の分岐があるか否かを判定する分岐判定手段と、を有し、
前記対象距離算出手段は、
前記分岐判定手段によって道路の分岐があると判定された場合に前記路面標示検出手段で検出された路面標示に関連付けられた制御対象物が複数あるか否か判定する対象物数判定手段を備え、
前記対象物数判定手段で路面標示に関連付けられた制御対象物が複数あると判定された場合であって且つ前記物間距離取得手段で取得されたそれぞれの物間距離の差が所定距離以上である場合に、車両から前記関連付けられた制御対象物までの対象距離を算出することを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記運転補助手段は、
車両が分岐を通過するまでは路面標示から制御対象物までの物間距離が最も短い制御対象物を対象とした前記対象物距離算出手段の算出結果に基づいて運転の補助を行い、
車両が分岐を通過した後は車両が進入した道路の路面に形成された制御対象物を対象とした前記対象物距離算出手段の算出結果に基づいて運転の補助を行うことを特徴とする請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記分岐判定手段によって道路の分岐があると判定された場合に車両が現在走行する道路と分岐後の何れか一の道路が道なりの関係にあるか否かを判定する道なり判定手段を有し、
前記運転補助手段は、前記道なり判定手段によって車両が現在走行する道路と分岐後の何れか一の道路が道なりの関係にあると判定された場合に、道なりの関係にあると判定された道路にある制御対象物を対象とした前記対象物距離算出手段の算出結果に基づいて運転の補助を行うことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の運転支援装置。
【請求項5】
走行に関する案内を行う誘導経路を設定する誘導経路設定手段と、
前記分岐判定手段によって道路の分岐があると判定された場合に分岐後の何れか一の道路が誘導経路に設定されているか否かを判定する誘導経路判定手段と、を有し、
前記運転補助手段は、前記誘導経路判定手段によって何れか一の道路が誘導経路に設定されていると判定された場合に、誘導経路に設定されていると判定された道路にある制御対象物を対象とした前記対象物距離算出手段の算出結果に基づいて運転の補助を行うことを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれかに記載の運転支援装置。
【請求項6】
車両を制御する車両制御手段を有し、
前記運転補助手段は、車両から前記制御対象物までの対象距離に基づいて前記車両制御手段による車両の制御を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項5に記載の運転支援装置。
【請求項7】
利用者に対して走行に関する案内を行う走行案内手段を備え、
前記運転補助手段は、車両から前記制御対象物までの対象距離に基づいて前記走行案内手段による案内を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項5に記載の運転支援装置。
【請求項1】
路面に形成された路面標示の位置情報を一又は複数の制御対象物までの道なり距離である物間距離に関連付けて記憶した標示情報記憶手段と、
車両に配置され、車両の周辺を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像した画像に基づいて、前記車両が走行する路面に形成された路面標示を検出する路面標示検出手段と、
前記路面標示検出手段によって検出された路面標示に関連付けられた一又は複数の制御対象物までの物間距離を前記標示情報記憶手段より取得する物間距離取得手段と、
前記関連付けられた制御対象物が単数である場合、又は前記関連付けられた制御対象物が複数であって且つ前記物間距離取得手段で取得されたそれぞれの物間距離の差が所定距離以上である場合に、車両から前記関連付けられた制御対象物までの道なり距離である対象距離を算出する対象距離算出手段と、
前記対象距離算出手段の算出結果に基づいて利用者の運転を補助する運転補助手段と、を有することを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
道路に関する情報を記憶した道路情報記憶手段と、
前記道路情報に基づいて車両の進行方向に道路の分岐があるか否かを判定する分岐判定手段と、を有し、
前記対象距離算出手段は、
前記分岐判定手段によって道路の分岐があると判定された場合に前記路面標示検出手段で検出された路面標示に関連付けられた制御対象物が複数あるか否か判定する対象物数判定手段を備え、
前記対象物数判定手段で路面標示に関連付けられた制御対象物が複数あると判定された場合であって且つ前記物間距離取得手段で取得されたそれぞれの物間距離の差が所定距離以上である場合に、車両から前記関連付けられた制御対象物までの対象距離を算出することを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記運転補助手段は、
車両が分岐を通過するまでは路面標示から制御対象物までの物間距離が最も短い制御対象物を対象とした前記対象物距離算出手段の算出結果に基づいて運転の補助を行い、
車両が分岐を通過した後は車両が進入した道路の路面に形成された制御対象物を対象とした前記対象物距離算出手段の算出結果に基づいて運転の補助を行うことを特徴とする請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記分岐判定手段によって道路の分岐があると判定された場合に車両が現在走行する道路と分岐後の何れか一の道路が道なりの関係にあるか否かを判定する道なり判定手段を有し、
前記運転補助手段は、前記道なり判定手段によって車両が現在走行する道路と分岐後の何れか一の道路が道なりの関係にあると判定された場合に、道なりの関係にあると判定された道路にある制御対象物を対象とした前記対象物距離算出手段の算出結果に基づいて運転の補助を行うことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の運転支援装置。
【請求項5】
走行に関する案内を行う誘導経路を設定する誘導経路設定手段と、
前記分岐判定手段によって道路の分岐があると判定された場合に分岐後の何れか一の道路が誘導経路に設定されているか否かを判定する誘導経路判定手段と、を有し、
前記運転補助手段は、前記誘導経路判定手段によって何れか一の道路が誘導経路に設定されていると判定された場合に、誘導経路に設定されていると判定された道路にある制御対象物を対象とした前記対象物距離算出手段の算出結果に基づいて運転の補助を行うことを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれかに記載の運転支援装置。
【請求項6】
車両を制御する車両制御手段を有し、
前記運転補助手段は、車両から前記制御対象物までの対象距離に基づいて前記車両制御手段による車両の制御を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項5に記載の運転支援装置。
【請求項7】
利用者に対して走行に関する案内を行う走行案内手段を備え、
前記運転補助手段は、車両から前記制御対象物までの対象距離に基づいて前記走行案内手段による案内を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項5に記載の運転支援装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−299570(P2008−299570A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−144708(P2007−144708)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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