説明

運転支援装置

【課題】交差点での右折という緊張が高まる場面にて運転者の視線移動状態に応じて精度の高い緊張度の推定が行える運転支援装置を提供すること。
【解決手段】車両が交差点で右折待ち状態である場合に後続車に対する車両の運転者の視線移動状態に基づいて車両の運転者の緊張度を推定し(S20)、その推定された緊張度に応じて緊張を緩和させる運転支援を行う(S22)。これにより、交差点での右折という緊張が高まる場面にて運転者の視線移動状態に応じて精度の高い緊張度の推定が行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転支援を行う運転支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の運転支援を行う装置として、特開平9−301054号公報に記載されるように、運転者の視線の移動速度に基づいて運転者の緊張度を検出し、その緊張度に応じて車両の前照灯の照射領域の変更範囲などを調整して運転支援を行うものが知られている。この装置は、ハンドルの操舵方向に応じて前照灯の照射領域を変更する際に、運転者の緊張度に応じて照射領域の変更量を調整することにより、違和感のない自然な照射領域の変更を行おうというものである。
【特許文献1】特開平9−301054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような装置にあっては、後続車の存在により運転者の緊張度がどの程度であるかを精度よく検出することが困難である。例えば、車両が交差点で右折待ち状態である場合、交差点に向かってくる対向車と対向車の間をすり抜けて右折する必要があり、右折待ちの後続車がいることにより運転者は早く行かなければならないというプレッシャを受ける。このような場合、運転者の視線の移動速度だけでは運転者の緊張度を精度よく推定すること困難である。
【0004】
そこで本発明は、交差点での右折という緊張が高まる場面において運転者の視線移動状態に応じて精度の高い緊張度の推定が行える運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明に係る運転支援装置は、車両が交差点で右折待ち状態である場合に、後続車に対する前記車両の運転者の視線移動状態に基づいて前記車両の運転者の緊張度を推定する推定手段と、前記推定手段により推定された緊張度に応じて運転支援を行う運転支援手段とを備えて構成されている。
【0006】
この発明によれば、車両が交差点で右折待ち状態である場合に右折判断にとって視認優先度の低い後続車に対する視線移動状態に基づいて運転者の緊張度を推定することにより、交差点での右折という緊張が高まる場面にて運転者の視線移動状態に応じて精度の高い緊張度の推定が行える。
【0007】
また本発明に係る運転支援装置において、前記運転支援手段は、前記推定手段により推定された緊張度が所定値以上となった場合に、運転者の緊張度が低下するように前記車両の後方視認用ミラーの反射率を制御することが好ましい。
【0008】
この発明によれば、推定手段により推定された緊張度が所定値以上となった場合に、運転者の緊張度が低下するように後方視認用ミラーの反射率を制御することにより、運転者の緊張度が高まる場面において運転者の緊張度の高まりを抑制することができる。
【0009】
また本発明に係る運転支援装置において、前記運転支援手段は、前記推定手段により推定された緊張度が所定値以上となった場合に、運転者の緊張度が低下するように前記車両のリアウインドウのカーテン装置を閉制御することが好ましい。
【0010】
この発明によれば、推定手段により推定された緊張度が所定値以上となった場合に、運転者の緊張度が低下するように車両のリアウインドウのカーテン装置を閉制御することにより、運転者の緊張度が高まる場面において運転者の緊張度の高まりを抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車両が交差点で右折待ち状態である場合に後続車に対する視線移動状態に基づいて運転者の緊張度を推定することにより、交差点での右折という緊張が高まる場面にて運転者の視線移動状態に応じて精度の高い緊張度の推定が行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1は本発明の実施形態に係る運転支援装置の構成概要図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係る運転支援装置1は、車両(図示なし)に設置され、車両が交差点で右折待ち状態であるときに車両の運転者の緊張度に応じた運転支援動作を行って運転支援する装置であって、例えば運転者の緊張度を推定するECU(Electronic Control Unit)2、その緊張度に応じて運転支援動作を行う運転支援部3を備えて構成される。
【0015】
ECU2は、運転支援装置1の装置全体の制御を行う電子制御ユニットであり、例えばCPU、ROM、RAMを含むコンピュータを主体として構成されている。このECU2は、車両が交差点で右折待ち状態である場合に後続車に対する車両の運転者の視線移動状態に基づいて車両の運転者の緊張度を推定する推定手段として機能する。また、ECU2は、運転支援部3を制御する運転支援制御手段として機能するものであり、例えば運転者の緊張度が所定値以上となった場合に、運転者の緊張度が低下するように運転支援部3に制御信号を出力する。
【0016】
運転支援部3は、運転者の緊張度を低下させて運転支援動作を行う運転支援手段として機能するものであり、例えば後方視認用ミラーの反射率を調整する反射率調整装置や車両のリアウインドウのカーテン装置を閉制御するカーテン開閉装置が用いられる。また、運動支援部3としては、運転者の緊張度を低下させるものであれば、反射率調整装置やリアウインドウのカーテン装置以外のものであってもよい。
【0017】
ECU2には、視線検出部4が接続されている。視線検出部4は、車両に設置され、車両の運転者の視線を検出する視線検出手段として機能するものであり、例えば運転者を撮像するカメラを備えたが用いられる。視線検出部4は、例えば運転者を正面側から撮像し、その撮像画像に基づいて運転者の視線の方向を検出する。視線検出部4により検出された信号は、ECU2に入力される。
【0018】
ECU2には、車速検出部5が接続されている。車速検出部5は、車両に設置され、車両の車速を検出する車速検出手段として機能するものであり、例えば車輪速センサが用いられる。車速検出部5により検出された信号は、ECU2に入力される。
【0019】
ECU2には、ナビゲーションシステム6が接続されている。ナビゲーションシステム6は、地図情報を記録する記録手段及び車両の位置検出を行う車両位置検出手段として機能するものであり、例えばGPS(Global Positioning System)を用いたものが用いられる。
【0020】
ECU2には、後続車検出部7が接続されている。後続車検出部7は、自車両の後続車を検出する後続車検出手段として機能するものである。この後続車検出部7としては、自車両の後続車の存在を検出できるものであればいずれのものを用いてもよいが、例えば自車両の後方を検出するレーダ装置や後続車の位置情報を取得する通信装置などが用いられる。
【0021】
ECU2には、右折検出部8が接続されている。右折検出部8は、車両が右折するか否かを検出する右折検出手段として機能するものである。この右折検出部8としては、自車両が右折するか否かを検出できるものであればいずれのものを用いてもよいが、例えばウインカスイッチなどが用いられる。
【0022】
ECU2には、データベース9が接続されている。データベース9は、車両の運転者の緊張レベルを記録する記録手段として機能するものである。例えば、ECU2にて判定した右折待ち中における運転者の緊張レベルはデータベース9に記録される。
【0023】
次に、本実施形態に係る運転支援装置の動作について説明する。
【0024】
図2は、本実施形態に係る運転支援装置の動作を示すフローチャートである。この図2の一連の制御処理は、例えば、ECU2により所定の周期で繰り返し実行される。
【0025】
まず、図2のS10に示すように、センサ出力値の読み込み処理が行われる。例えば、視線検出部4、車速検出部5、ナビゲーションシステム6、後続車検出部7、右折検出部8の出力値又は出力信号がそれぞれ読み込まれる。
【0026】
そして、S12に移行し、自車両が交差点で右折するか否かが判断される。この判断は、ナビゲーションシステム6及び右折検出部8の出力値に基づいて行われる。例えば、ナビゲーションシステム6の出力信号に基づいて自車両が交差点又は交差点付近に位置しているか否かが判断される。また、右折検出部8と機能する右折用ウインカスイッチがオンとなった場合に自車両が右折すると判断される。S12にて自車両が交差点又は交差点付近に位置しておらず又は自車両が右折しないと判断された場合には、右折時の緊張緩和を図る必要がないため、一連の制御処理を終了する。
【0027】
一方、S12にて自車両が交差点で右折すると判断された場合には、自車両が所定速度以下の低速状態であるか又は停止状態であるか否かが判断される(S14)。この判断は、車速検出部5の出力値に基づいて行えばよい。例えば、車速検出部5の出力値に基づく車速値が予めECU2に設定される設定値よりも低い場合には、自車両が低速状態又は停止状態であると判断される。これに対し、車速検出部5の出力値に基づく車速値がECU2に設定される設定値よりも低くない場合には、自車両が低速状態又は停止状態でないと判断される。S14にて自車両が所定速度以下の低速状態でなく停止状態でもないと判断された場合には、右折時の緊張緩和を図る必要がないため、一連の制御処理を終了する。
【0028】
一方、S14にて自車両が所定速度以下の低速状態であり又は停止状態であると判断された場合には、交差点右折判定処理が行われる(S16)。交差点右折判定処理は、自車両が交差点右折状態であることについてフラグをセットするなどして判定する処理である。
【0029】
そして、S18に移行し、後続車があるか否かが判断される。この判断処理は、自車両の後続車が存在するか否かを判断する処理であり、自車両の後続車として交差点で右折待ちをしている他車がある場合に後続車があると判断され、自車両の後続車として交差点で右折待ちをしている他車がない場合に後続車がないと判断される。自車両の後方に存在する他車の位置情報は、後続車検出部7の出力信号に基づいて取得すればよい。S18にて後続車がないと判断された場合には、後続車による緊張の緩和を図る必要がないため、一連の制御処理を終了する。
【0030】
一方、S18にて後続車があると判断された場合には、緊張レベル判定処理が行われる(S20)。緊張レベル判定処理は、自車両の運転者において後続車がいることによる緊張レベルを判定する処理である。この緊張レベル判定処理においては、後続車に対する車両の運転者の視線移動状態に基づいて運転者の緊張レベル(緊張度)が推定される。例えば、運転者の後続車を視認するための視認時間又は視認回数が長いほど緊張レベルが高いと推定される。
【0031】
具体的には、図3に示すように、インナーミラー視認時間比率Ti、右ドアミラー視認時間比率Tdと緊張レベルK0〜K4の関係を関連付けたマップを用いて運転者の緊張レベルK0〜K4が推定される。インナーミラー視認時間比率Tiは交差点右折待ち中におけるインナーミラー視認時間の比率であり、右ドアミラー視認時間比率Tdは交差点右折待ち中における右ドアミラー視認時間の比率である。これらのインナーミラー視認時間比率Ti、右ドアミラー視認時間比率Tdは、視線検出部4により検出される視線状態に基づいて算出される。
【0032】
なお、この緊張レベル推定処理は、後続車に対する車両の運転者の視線移動状態に基づいて運転者の緊張レベル(緊張度)が推定するものであれば、上述した推定処理に限られるものではなく、インナーミラー又は右ドアミラーの一方の視認時間比率に基づいて緊張レベルを推定するもの、交差点右折待ち中におけるミラーに対する視認回数に基づいて運転者の緊張レベルを推定するものなどであってもよい。
【0033】
S20にて判定した緊張レベルは、データベース9に記録しておくことが好ましい。この交差点の右折待ちにおける緊張レベルに基づいて運転者の運転不慣れ度を算出することができる。
【0034】
例えば、交差点での右折待ち状態で判定される緊張レベルの判定の母数をNBとし、緊張レベルK0〜K1において、K0の回数をN0、K1の回数をN1、K2の回数をN2、K3の回数をN3、K4の回数をN4とすると、運転不慣れ度Pは、次の式(1)にて算出される。
【0035】
P=(Pb・A+(N0・a0+N1・a1+N2・a2+N3・a3+N4・a4)・(1−A)/NB)/2 …(1)
【0036】
この式(1)において、Pbは、データベース9に記録保存されている前回までの運転不慣れ度の値であり、Aは重み付け係数である。A<0.5の場合、過去の遠い運転不慣れ度の値ほど今回の判定での重みが小さくなる。a0〜a4は緊張レベルK0〜K4の運転不慣れや未熟判定に対する重み付け係数である。この係数としては、例えば、a0=0、a1=1、a2=4、a3=9、a4=16として設定される。
【0037】
このように緊張レベルを判定するごとにそのデータを記録することにより、その緊張レベルの傾向によって運転者の運転不慣れ度や運転未熟度を判定することができる。
【0038】
そして、図2のS22に移行し、緊張緩和処理が行われる。緊張緩和処理は、交差点右折待ち状態における運転者の緊張レベルに応じて緊張緩和させる運転支援を行う処理である。この場合、例えば緊張緩和させる運転支援動作は、運転者の緊張レベルが所定値以上となったときに行うことが好ましい。
【0039】
例えば、緊張緩和処理としては、図4に示すように、運転者の緊張レベルK0〜K4とミラー透過率の関係を設定したマップを用いて行われる。マップは、運転者の緊張レベルが高くなるほどその緊張が緩和されるように設定されており、運転者の緊張レベルが高くなるほどミラーの透過率が低くなるように設定されている。
【0040】
ECU2にて図4のマップを用いてミラーの透過率が選定され、そのミラー透過率となるように運転支援部3に制御信号が出力される。これにより、運転者の緊張レベルが高いほどミラーの透過率が低くなり、運転者が後続車の存在によりプレッシャを受けることを抑制することができる。
【0041】
また、緊張緩和処理として、ミラーの透過率を調整することに代えて又は追加して、リアウインドウのカーテン装置を閉制御してもよい。例えば運転者の緊張度が所定値以上となった場合に、運転者の緊張度が低下するように車両のリアウインドウのカーテン装置を閉制御する。これにより、運転者の緊張度が高まる場面において運転者の緊張度の高まりを抑制することができる。
【0042】
そして、S24に移行し、車両の右折が完了したか否かが判断される。この判断は、右折検出部8の検出信号やナビゲーションシステム6による自車両の位置情報などに基づいて行えばよい。S24にて車両の右折が完了していないと判断された場合には、S18に戻る。一方、S24にて車両の右折が完了していると判断された場合には、一連の制御処理を終了する。
【0043】
以上のように、本実施形態に係る運転支援装置1によれば、車両が交差点で右折待ち状態である場合に後続車に対する視線移動状態に基づいて運転者の緊張度を推定することにより、交差点での右折という緊張が高まる場面にて運転者の視線移動状態に応じて精度の高い緊張度の推定が行える。
【0044】
また、本実施形態に係る運転支援装置1において、運転者の緊張度に応じてその緊張度が低下するように後方視認用ミラーの反射率を制御することにより、運転者の緊張度が高まる場面において運転者の緊張度の高まりを抑制することができる。
【0045】
また、本実施形態に係る運転支援装置1において、運転者の緊張度に応じてその緊張度が低下するように車両のリアウインドウのカーテン装置を閉制御することにより、運転者の緊張度が高まる場面において運転者の緊張度の高まりを抑制することができる。
【0046】
なお、上述した実施形態は本発明に係る運転支援装置の一例を示すものである。本発明に係る運転支援装置は、このようなものに限られるものではなく、例えば請求項に記載された要旨を変更しないように実施形態に係る運転支援装置を変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態に係る運転支援装置の構成概要図である。
【図2】図1の運転支援装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】図2のフローチャートにおける緊張レベル判定処理の説明図である。
【図4】図2のフローチャートにおける緊張緩和処理の説明図である。
【符号の説明】
【0048】
1…運転支援装置、2…ECU、3…運転支援部、4、視線検出部、5…車速検出部、6…ナビゲーションシステム、7…後続車検出部、8…右折検出部、9…データベース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が交差点で右折待ち状態である場合に、後続車に対する前記車両の運転者の視線移動状態に基づいて前記車両の運転者の緊張度を推定する推定手段と、
前記推定手段により推定された緊張度に応じて運転支援を行う運転支援手段と、
を備えた運転支援装置。
【請求項2】
前記運転支援手段は、前記推定手段により推定された緊張度が所定値以上となった場合に、運転者の緊張度が低下するように前記車両の後方視認用ミラーの反射率を制御する、
請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記運転支援手段は、前記推定手段により推定された緊張度が所定値以上となった場合に、運転者の緊張度が低下するように前記車両のリアウインドウのカーテン装置を閉制御する、
請求項1に記載の運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−129044(P2010−129044A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−306447(P2008−306447)
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】