説明

配線基板の製造方法

【課題】配線基板の製造方法において、リード配線層間の短絡を防止することである。
【解決手段】回路基板本体12と、回路基板本体12に連結されるコネクタ端子14と、を備える配線基板10を製造する配線基板10の製造方法であって、コネクタ端子部に置かれる絶縁樹脂基板16に、銀ペーストで複数のリード配線層21〜27を形成するリード配線層形成工程と、複数のリード配線層に、絶縁樹脂基板16の溶融温度または熱分解温度より低い融点を有する錫系合金はんだを含有する錫系合金はんだペーストを塗布する錫系合金はんだペースト塗布工程と、錫系合金はんだペーストが塗布された複数のリード配線層を、絶縁樹脂基板16の溶融温度または熱分解温度より低く、錫系合金はんだの融点より高い温度で加熱して錫系合金はんだを溶融し、複数のリード配線層21〜27に錫系合金層40を被覆する錫系合金はんだ溶融工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配線基板の製造方法に係り、特に、回路基板本体と、回路基板本体に連結されるコネクタ端子と、を備える配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やデジタルカメラなどの各種電子機器に組み込まれるプリント配線基板は、小型化、薄型化、軽量化及び多機能化並びに部品コストの低減などが益々要求されている。そして、部品コストの低減に有利な配線基板として、例えば、メンブレン配線基板が広く利用されている。このようなメンブレン配線基板に要求される配線回路密度は高くなっており、例えば、0.3mmピッチ対応等の狭ピッチ化に対応したメンブレン配線基板の開発が行われている。
【0003】
特許文献1には、絶縁樹脂基板に銀ペーストで銀回路を形成し、銀回路のコネクタ端部にカーボンを印刷し、コネクタ端部以外の部位にレジスト層を印刷して配線基板を製造する方法が記載されている。
【0004】
特許文献2には、絶縁樹脂基板に銀ペーストで銀回路を形成し、銀回路におけるコネクタ端部以外の部位にレジスト層を形成し、コネクタ端部に導電層を形成し、銀回路における銀パターンの各間に存在する導電層をレーザ光照射で除去して配線基板を製造する方法が記載されている。
【特許文献1】特開平8−236241号公報
【特許文献2】特開2003−209338号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したメンブレン配線基板等では、一般的に、銀回路等の導体回路を絶縁レジスト等で被覆して導体回路と水等とを接触させない構造が採用されている。しかし、外部コネクタと嵌合されるコネクタ端子では、電気的接続を確保する必要があるため、端子部を絶縁レジストで被覆する方法を適用することは難しい。
【0006】
特許文献1に記載された配線基板の製造方法によれば、コネクタ端部のように銀回路における銀パターン間隔が狭小化する部位では、カーボンを印刷する際にインクの滲み等で銀回路パターン間が短絡する可能性がある。また、カーボンの印刷位置合わせの際に、カーボンの位置がずれて銀回路が露出し、耐マイグレーション能力が劣化する場合がある。
【0007】
特許文献2に記載された配線基板の製造方法では、銀回路が露出しないように導電層をレジスト層と部分的にオーバーラップさせて形成することにより段差が生じるので、レーザ光照射で導電層を除去する際に段差部位でレーザ光の焦点がずれてスポット径が広がり、導電層を十分除去しきれずに銀回路が短絡する場合等がある。また、段差部位に導電性ペーストをスクリーン印刷する場合にはカスレが生じる場合があり、銀回路が露出して耐マイグレーション性が低下する可能性がある。カスレを抑制する場合には、導電性ペーストの印刷速度を下げる必要があり、配線基板の生産性が低下する。
【0008】
そこで本発明の目的は、配線回路の短絡を防止することができる配線基板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る配線基板の製造方法は、回路基板本体と、前記回路基板本体に連結されるコネクタ端子と、を備える配線基板を製造する配線基板の製造方法であって、コネクタ端子部に置かれる絶縁樹脂基板に、銀ペーストで複数のリード配線層を形成するリード配線層形成工程と、前記複数のリード配線層に、前記絶縁樹脂基板の溶融温度または熱分解温度より低い融点を有する錫系合金はんだを含有する錫系合金はんだペーストを塗布する錫系合金はんだペースト塗布工程と、前記錫系合金はんだペーストが塗布された複数のリード配線層を、前記絶縁樹脂基板の溶融温度または熱分解温度より低く、前記錫系合金はんだの融点より高い温度で加熱して前記錫系合金はんだを溶融し、前記複数のリード配線層に錫系合金層を被覆する錫系合金はんだ溶融工程と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る配線基板の製造方法において、前記錫系合金はんだは、ビスマスを含有することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る配線基板の製造方法において、前記リード配線層形成工程は、更に、前記複数のリード配線層に銅層を被覆することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る配線基板の製造方法において、前記錫系合金はんだペースト塗布工程は、前記錫系合金はんだペーストをスクリーン印刷により塗布することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る配線基板の製造方法は、前記錫系合金層が被覆されたリード配線層の前記回路基板本体側に、絶縁性材料で保護層を形成する保護層形成工程を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る配線基板の製造方法において、前記複数のリード配線層は、前記絶縁樹脂基板に千鳥状に配列されて形成されることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る配線基板の製造方法において、前記錫系合金層で被覆された複数のリード配線層は、コネクタに接続されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
上記構成による配線基板の製造方法によれば、リード配線層に錫系合金層をより均一に被覆することができるので、配線回路の短絡を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は、配線基板10の構成を示す図である。配線基板10は、回路基板本体12と、回路基板本体12に連結されるコネクタ端子14と、を備えている。なお、回路基板本体12に設けられる配線回路等は省略する。
【0018】
コネクタ端子14は、絶縁樹脂基板16と、絶縁樹脂基板16に設けられる複数のリード配線層21〜27と、回路基板本体12側に設けられる保護層30と、を含んで構成される。
【0019】
絶縁樹脂基板16は、例えば、矩形のリボン状を有しており、柔軟性を有するフレキシブルな絶縁性合成樹脂フィルム等で構成される。絶縁性合成樹脂フィルムには、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂等で成形された合成樹脂フィルムが使用される。ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム等には、一般に市販されているポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム等が用いられる。
【0020】
絶縁樹脂基板16を成形する合成樹脂には、ポリエチレンテレフタレート樹脂に限定されることなく、ビスマレイミドトリアジン(BT)樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂等の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を用いることができる。また、絶縁樹脂基板16を成形する合成樹脂には、液晶ポリマー(LCP)等を用いてもよい。
【0021】
複数のリード配線層21〜27は、絶縁樹脂基板16に銀含有材料で形成され、銀配線回路32としての機能を有している。リード配線層21〜27の先端は、外部コネクタ端子と電気的に接続されるため略円形状または略楕円状に形成される。なお、図1では、7本のリード配線層21〜27が示されているが、リード配線層の本数は、特に、7本に限定されることはない。
【0022】
銀配線回路32は、第1群のリード配線層21、23、25、27と、第2群のリード配線層22、24、26とから構成される。第1群のリード配線層21、23、25、27と、第2群のリード配線層22、24、26とは、いわゆる千鳥状に略並行に配列されており、第2群のリード配線層22、24、26の先端が第1群のリード配線層21、23、25、27の先端より突出して交互配置される。このように、リード配線層21〜27を千鳥状に配列させることより、コネクタ端子14をより小さく形成することができる。勿論、他の条件次第では、リード配線層21〜27の配列は、千鳥状に限定されることはない。
【0023】
複数のリード配線層21〜27は、銅層34で被覆されることが好ましい。リード配線層21〜27に銅層34を被覆するのは、後述するように、リード配線層21〜27の外側には、錫(Sn)系合金はんだで錫(Sn)系合金層40を形成するので、錫(Sn)系合金はんだの濡れ性をより向上させてセルフアライメント機能を十分に引き出すためである。また、リード配線層21〜27に銅層34を被覆するのは、リード配線層21〜27は銀含有材料で形成されるため、錫(Sn)系合金はんだの溶融中に銀がはんだに溶け込んで拡散するいわゆる銀喰われを抑制するためである。
【0024】
リード配線層21〜27の表面には、絶縁樹脂基板16の溶融温度または熱分解温度より低い融点を有する錫(Sn)系合金はんだで形成された錫(Sn)系合金層40が設けられる。錫(Sn)系合金層40は、イオンマイグレーション等のマイグレーションを抑える機能を有している。リード配線層21〜27を形成する銀は、マイグレーションを発生させやすいので、リード配線層21〜27を銀や銅よりも耐マイグレーション性に優れた錫(Sn)系合金層40で覆うことによりマイグレーションの発生を防止することができる。
【0025】
錫(Sn)系合金層40は、絶縁樹脂基板16の溶融温度または熱分解温度より低い融点を有する錫(Sn)系合金はんだで形成される。錫(Sn)系合金はんだを加熱溶融させてリード配線層21〜27に被覆させるため、絶縁樹脂基板16を溶融または熱分解させないようにするためである。
【0026】
錫(Sn)系合金層40は、ビスマス(Bi)を含有する錫―ビスマス(Sn−Bi)系合金はんだで形成されることが好ましい。錫―ビスマス(Sn−Bi)系合金はんだは、ビスマス(Bi)の添加量を調整することにより他の錫(Sn)系合金はんだより更に低い温度で溶融させることができる。例えば、錫―ビスマス(Sn−Bi)系合金はんだに、58wt%のビスマス(Bi)を含有するSn−58Bi共晶合金を用いることにより、融点を139℃の低融点とすることができる。また、錫―ビスマス(Sn−Bi)系合金はんだを用いることにより、耐マイグレーション性を更に向上させることができる。勿論、錫(Sn)系合金層40は、錫―ビスマス(Sn−Bi)系合金はんだ以外の錫(Sn)系合金はんだで形成してもよい。
【0027】
保護層30は、コネクタ端子14の回路基板本体12側に形成され、絶縁保護等の機能を有している。保護層30は、絶縁保護等のため絶縁性材料により形成される。保護層30は、コネクタの接点となる接点部以外の部位に設けられる。保護層30は、例えば、ソルダーレジスト等により形成される。
【0028】
次に、配線基板10の製造方法について説明する。
【0029】
図2は、配線基板10の製造方法を示すフローチャートである。配線基板10の製造方法は、絶縁樹脂基板16に複数のリード配線層21〜27を形成するリード配線層形成工程(S10)と、錫(Sn)系合金はんだを含有する錫(Sn)系合金はんだペースト46を塗布する錫(Sn)系合金はんだペースト塗布工程(S12)と、錫(Sn)系合金はんだペースト46を加熱溶融して錫(Sn)系合金層40を被覆する錫(Sn)系合金はんだ溶融工程と(S14)と、保護層30を形成する保護層形成工程(S16)と、を備えている。
【0030】
リード配線層形成工程(S10)は、コネクタ端子部14aに置かれる絶縁樹脂基板16に、銀ペーストで複数のリード配線層21〜27を形成する工程である。図3は、絶縁樹脂基板16に複数のリード配線層21〜27を形成した状態を示す図であり、図3(a)は平面図、図3(b)はA−A線に沿った断面図である。
【0031】
絶縁樹脂基板16には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂やポリイミド樹脂(PI)等の合成樹脂で成形した絶縁性合成樹脂フィルムが用いられる。銀ペーストには、プリント配線基板10の製造で一般的に使用されている銀ペースト材料を用いることができる。また、銀ペーストには、銀インク等も含まれる。
【0032】
リード配線層21〜27は、例えば、絶縁樹脂基板16に銀ペーストをスクリーン印刷等することにより形成される。リード配線層21〜27の先端部44の外径は、例えば、0.16mmであり、リード配線層21〜27の幅(W)は、例えば、0.1mmから0.2mmである。リード配線層21〜27は千鳥状に配列され、配線ピッチ(P)は、例えば、0.3mmである。また、リード配線層21〜27の間隔(D)は、例えば、0.1mmである。
【0033】
複数のリード配線層21〜27は、例えは、銅ペースト等で銅層34が被覆される。図4は、複数のリード配線層21〜27に銅層34を被覆した状態を示す図であり、図4(a)は平面図、図4(b)はA−A線に沿った断面図である。銅ペーストには、プリント配線基板10の製造で一般的に使用されている銅ペースト材料を用いることができる。また、銅ペーストには、銅インク等も含まれる。銅層34は、例えば、複数のリード配線層21〜27に銅ペーストをスクリーン印刷、乾燥等することにより形成される。
【0034】
錫系合金はんだペースト塗布工程(S12)は、銅層34で被覆されたリード配線層21〜27に、前記絶縁樹脂基板16の溶融温度または熱分解温度より低い融点を有する錫(Sn)系合金はんだを含有する錫(Sn)系合金はんだペースト46を塗布する工程である。図5は、錫(Sn)系合金はんだを含有する錫(Sn)系合金はんだペースト46を塗布した状態を示す図であり、図5(a)は平面図、図5(b)はA−A線に沿った断面図である。錫(Sn)系合金はんだペースト46には、上述したように、錫―ビスマス(Sn―Bi)系合金はんだペーストを用いることが好ましい。
【0035】
また、絶縁樹脂基板16を熱可塑性樹脂で成形した場合には、錫(Sn)系合金はんだには熱可塑性樹脂の溶融温度より低い融点を有する合金はんだが使用され、絶縁樹脂基板16を熱硬化性樹脂で成形した場合には、錫(Sn)系合金はんだには熱硬化性樹脂の熱分解温度より低い融点を有する合金はんだが使用される。
【0036】
錫(Sn)系合金はんだペースト46には、錫(Sn)系合金はんだ粉末と、バインダとを含む合金はんだペーストが用いられる。例えば、錫―ビスマス(Sn―Bi)系合金はんだペーストには、錫―ビスマス(Sn―Bi)系合金はんだ粉末と、バインダとを含む合金はんだペーストが用いられる。また、錫(Sn)系合金はんだペースト46には、例えば、鉛フリーはんだ等を用いてもよい。
【0037】
錫(Sn)系合金はんだペースト46は、銅層34で被覆されたリード配線層21〜27の所定部位に塗布される。錫(Sn)系合金はんだペースト46は、例えば、銅層34で被覆されたリード配線層21〜27の先端部44から回路基板本体12側まで所定幅で細長く塗布される。錫(Sn)系合金はんだペースト46は、例えば、プリント配線基板の製造で一般的に使用されているディスペンス装置等を用いて塗布される。
【0038】
錫系合金はんだ溶融工程(S14)は、錫(Sn)系合金はんだペースト46が塗布された複数のリード配線層21〜27を、絶縁樹脂基板16の溶融温度または熱分解温度より低く、錫(Sn)系合金はんだの融点より高い温度で加熱して錫(Sn)系合金はんだを溶融し、複数のリード配線層21〜27に錫(Sn)系合金層40を被覆する工程である。図6は、錫(Sn)系合金層40を被覆した状態を示す図であり、図6(a)は平面図、図6(b)はA−A線に沿った断面図である。
【0039】
錫(Sn)系合金はんだペースト46が塗布されたリード配線層21〜27を、絶縁樹脂基板16の溶融温度または熱分解温度より低く、錫(Sn)系合金はんだの融点より高い温度で加熱して錫(Sn)系合金はんだを溶融させることにより、はんだのセルフアライメント機能でリード配線層21〜27に錫(Sn)系合金層40を被覆することができる。絶縁樹脂基板16の溶融温度または熱分解温度より低い温度で加熱するのは、絶縁樹脂基板16を溶融、熱分解等させないためである。錫(Sn)系合金を溶融させるための加熱方法には、例えば、リフローソルダリング技術で用いられる方法を適用することができる。加熱方法は、例えば、電気抵抗加熱法、赤外線加熱法、レーザ加熱法、熱風式加熱法等が用いられる。
【0040】
保護層形成工程(S16)は、錫(Sn)系合金層40で被覆されたリード配線層21〜27の回路基板本体12側に、絶縁性材料で保護層30を形成する工程である。図7は、保護層30を形成した状態を示す図であり、図7(a)は平面図、図7(b)はA−A線に沿った断面図である。絶縁性ペーストには、ソルダーレジスト等が用いられる。
【0041】
ソルダーレジストには、プリント配線基板の製造で一般的に使用されているレジストインクを用いることができる。ソルダーレジスト等は、例えば、スクリーン印刷等でコネクタの接点となる接点部以外の部位に被覆される。以上により、回路基板本体12に連結されるコネクタ端子14が製造されて、配線基板10の製造が完了する。
【0042】
上記構成によれば、コネクタ端子部に置かれる絶縁樹脂基板に、銀ペーストで複数のリード配線層を形成し、複数のリード配線層に、絶縁樹脂基板の溶融温度または熱分解温度より低い融点を有する錫(Sn)系合金はんだを含有する錫(Sn)系合金はんだペーストを塗布し、錫(Sn)系合金はんだペーストが塗布された複数のリード配線層を、絶縁樹脂基板の溶融温度または熱分解温度より低く、錫(Sn)系合金はんだの融点より高い温度で加熱して錫(Sn)系合金はんだを溶融し、複数のリード配線層に錫(Sn)系合金層を被覆することにより、はんだのセルフアライメント機能によって狭ピッチで形成されたリード配線層に銀、銅等よりも耐マグレーション性を有する錫(Sn)系合金層をより均一に被覆できるので、導電性インクを印刷等した場合に発生するインクの滲みや印刷位置のズレ等で生じていたリード配線層の間の短絡が防止される。
【0043】
上記構成によれば、錫(Sn)系合金はんだペーストの塗布と加熱処理により、リード配線層に錫(Sn)系合金層を形成するので、導電性インクを印刷等する場合に行われる高精度が要求される画像認識の位置合わせ等が不要になる。そのため、安定した精度で0.3mmピッチ等の狭ピッチのコネクタ端子を有する配線基板を製造できるので、配線基板の生産性がより向上する。
【0044】
上記構成によれば、錫(Sn)系合金はんだに錫―ビスマス(Sn−Bi)系合金はんだを用いることにより、耐マイグレーション性を更に向上させることができる。
【0045】
上記構成によれば、リード配線層に銅層を被覆することにより、錫(Sn)系合金はんだのセルフアライメント機能を十分に引き出すとともに、錫(Sn)系合金はんだの加熱溶融中にリード配線層に含まれる銀がはんだに溶け込んで拡散するいわゆる銀喰われを抑制することができる。
【0046】
上記構成によれば、リード配線層を千鳥状に配列させることより、コネクタ端子をより小さく形成することができる。
【0047】
(実施例)
2種類の製造方法で配線基板を製造し、配線基板に設けられるコネクタ端子の端子間絶縁抵抗性と耐マイグレーション性とを評価した。まず、実施例1における配線基板10の製造方法について説明する。実施例1の製造方法で製造された配線基板10の構成は、上記図1に示した構成と同じである。
【0048】
リード配線層形成工程(S10)で、絶縁樹脂基板16であるポリエチレンテレフタレート(PET)基板に銀ペーストをスクリーン印刷して乾燥させ、千鳥状に配列させた複数のリード配線層21〜27を形成した。ポリエチレンテレフタレート(PET)基板には、帝人デュポンフィルム株式会社製のポリエチレンテレフタレートフィルム(型番:HSL、厚さ:100μm)を使用した。銀ペーストには、東洋紡株式会社製の銀を主成分とする導電性インク(型番:DX−351H−30)を使用した。そして、リード配線層21〜27の幅は0.1mmとし、リード配線層21〜27の先端部44は直径0.16mmの略円形状とした。また、コネクタ端子部14aの先端側におけるリード配線層21〜27の間隔を0.3mmとした。また、銅ペーストをリード配線層21〜27に0.1mm幅で印刷乾燥して、リード配線層21〜27に銅層34を被覆した。なお、銅層34の厚みを20μmとした。
【0049】
錫系合金はんだペースト塗布工程(S12)で、銅層34が被覆されたリード配線層21〜27に、錫(Sn)系合金はんだペースト46として錫―ビスマス(Sn−Bi)系合金はんだペーストを塗布した。錫―ビスマス(Sn−Bi)系合金はんだペーストには、低融点はんだである低温プラスタン150(青木メタル株式会社製、溶断温度150℃)を用いた。また、錫―ビスマス(Sn−Bi)系合金はんだペーストの塗布は、ディスペンス装置を用いて行った。
【0050】
錫系合金はんだ溶融工程(S14)で、銅層34が被覆されたリード配線層21〜27に塗布された錫―ビスマス(Sn−Bi)系合金はんだペーストを加熱して溶融し、リード配線層21〜27に、錫(Sn)系合金層40として錫―ビスマス(Sn−Bi)系合金層を被覆した。なお、加熱温度は、低温プラスタン150の溶断温度150℃より高く、ポリエチレンテレフタレートフィルムの溶融温度よりも低い温度とした。なお、錫(Sn)系合金層40の厚みを10μmとした。
【0051】
保護層形成工程(S16)で、コネクタ端子部14aの回路基板本体12側を覆うようにソルダーレジストをスクリーン印刷して、保護層30であるレジスト層を形成した。なお、レジスト層は、コネクタ端子の接点以外の部位に形成した。ソルダーレジストには、日立化成工業株式会社製のソルダーレジスト(型番;SN9000)を使用した。
【0052】
次に、比較例1における配線基板10の製造方法について説明する。
【0053】
図8は、比較例1の製造方法で製造した配線基板におけるコネクタ端子の構成を示す図である。コネクタ端子が設けられるポリエチレンテレフタレート(PET)基板50に銀ペーストをスクリーン印刷して乾燥させ、千鳥状に配列させた複数の銀配線層51〜57を形成した。銀配線層51〜57の幅(X1)は、0.05mmとし、銀配線層51〜57のピッチ(X2)は、0.3mmピッチとした。次に、銀配線層51〜57に導電性カーボンペーストをスクリーン印刷して導電性カーボン層58を形成した。導電性カーボンペーストには、モリテックス株式会社製の導電性カーボンペースト(型番581SS)を使用した。導電性カーボン層58の幅(X3)は、0.20mmとした。さらに、コネクタ端子部以外をソルダーレジストでスクリーン印刷してレジスト層59を形成した。なお、ポリエチレンテレフタレート(PET)基板50、銀ペースト及びソルダーレジストは、実施例1の製造方法で使用した材料と同じものを使用した。
【0054】
次に、実施例1及び比較例1の製造方法で製造した配線基板について、コネクタ端子をコネクタに嵌め込み、絶縁抵抗測定器を用いて絶縁抵抗値の測定を実施した。絶縁抵抗値の測定は、実施例1で製造した配線基板10についてはリード配線層21、23、25、27を正極とし、リード配線層22、24、26を負極として測定し、比較例1で製造した配線基板についてはリード配線層51、53、55、57を正極とし、リード配線層52、54、56を負極として測定した。なお、サンプル数(N)は、いずれの配線基板10もN=5とし、1.0×10Ω以上の絶縁抵抗を合格とした。
【0055】
図9は、配線基板の絶縁抵抗測定結果を示す図である。比較例1の製造方法で製造された配線基板では、2体のサンプルで1.0×10Ωより低い絶縁抵抗値が測定された。これは、導電性インクの滲み、印刷の位置ズレによる短絡が発生したことによるものである。これに対して、実施例1の製造方法で製造された配線基板10では、全てのサンプルにおいて1.0×10Ω以上の絶縁抵抗値が得られた。実施例1の製造方法によれば、リード配線層21〜27の間のショートをより確実に防止して、リード配線層21〜27のピッチ(P)が0.3mmである狭ピッチのコネクタ端子14を有する配線基板10を安定して製造できた。
【0056】
次に、実施例1及び比較例1の製造方法で製造した配線基板について、コネクタ端子をコネクタに嵌め込み、耐マイグレーション性を評価した。耐マイグレーションの評価は、実施例1で製造した配線基板10についてはリード配線層21、23、25、27を正極とし、リード配線層22、24、26を負極とし、比較例1で製造した配線基板についてはリード配線層51、53、55、57を正極とし、リード配線層52、54、56を負極とした。いずれも5Vの電圧を印加して各回路間の出力電圧を測定し、出力電圧が0.2Vより小さくなるまでの時間を計測しマイグレーション発生時間とした。なお、サンプル数(N)は、いずれの配線基板もN=5とした。
【0057】
図10は、マイグレーションが発生するまでのマイグレーション発生時間を示す図である。実施例1の製造方法で製造された配線基板10では、比較例1の製造方法で製造された配線基板よりマイグレーション発生までの時間が4倍以上と長く、優れた耐マイグレーション性を示した。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施の形態において、配線基板の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態において、配線基板の製造方法を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態において、絶縁樹脂基板に複数のリード配線層を形成した状態を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態において、複数のリード配線層に銅層を被覆した状態を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態において、錫(Sn)系合金はんだを含有する錫(Sn)系合金はんだペーストを塗布した状態を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態において、錫(Sn)系合金層を被覆した状態を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態において、保護層を形成した状態を示す図である。
【図8】比較例1の製造方法で製造した配線基板におけるコネクタ端子の構成を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態において、配線基板の絶縁抵抗測定結果を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態において、マイグレーションが発生するまでのマイグレーション発生時間を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
10 配線基板
12 回路基板本体
14 コネクタ端子
14a コネクタ端子部
16 絶縁樹脂基板
20〜27 リード配線層
30 保護層
32 配線回路
34 銅層
40 錫(Sn)系合金層
44 リード配線層の先端部
46 錫(Sn)系合金はんだペースト
50 ポリエチレンテレフタレート(PET)基板
51〜57 銀配線層
58 導電性カーボン層
59 レジスト層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板本体と、前記回路基板本体に連結されるコネクタ端子と、を備える配線基板を製造する配線基板の製造方法であって、
コネクタ端子部に置かれる絶縁樹脂基板に、銀ペーストで複数のリード配線層を形成するリード配線層形成工程と、
前記複数のリード配線層に、前記絶縁樹脂基板の溶融温度または熱分解温度より低い融点を有する錫系合金はんだを含有する錫系合金はんだペーストを塗布する錫系合金はんだペースト塗布工程と、
前記錫系合金はんだペーストが塗布された複数のリード配線層を、前記絶縁樹脂基板の溶融温度または熱分解温度より低く、前記錫系合金はんだの融点より高い温度で加熱して前記錫系合金はんだを溶融し、前記複数のリード配線層に錫系合金層を被覆する錫系合金はんだ溶融工程と、
を備えることを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の配線基板の製造方法であって、
前記錫系合金はんだは、ビスマスを含有することを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の配線基板の製造方法であって、
前記リード配線層形成工程は、更に、前記複数のリード配線層に銅層を被覆することを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の配線基板の製造方法であって、
前記錫系合金はんだペースト塗布工程は、前記錫系合金はんだペーストをスクリーン印刷により塗布することを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の配線基板の製造方法であって、
前記錫系合金層が被覆されたリード配線層の前記回路基板本体側に、絶縁性材料で保護層を形成する保護層形成工程を備えることを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の配線基板の製造方法であって、
前記複数のリード配線層は、前記絶縁樹脂基板に千鳥状に配列されて形成されることを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載の配線基板の製造方法であって、
前記錫系合金層で被覆された複数のリード配線層は、コネクタに接続されることを特徴とする配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−259995(P2009−259995A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106420(P2008−106420)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】