説明

金属基板表面の検査方法及び検査装置

【課題】めっきの製造条件の微少な変動によらず、めっきの検査を行なうことが可能な検査方法および検査装置を提供する。
【解決手段】表面にめっき部と非めっき部の金属パターンを有する基板を所定速度で搬送する搬送段階と、基板の法線方向から0°〜10°傾いた方向から、搬送と同期を取るかまたは所定時間間隔で、基板の表面を撮像する撮像段階と、基板の非めっき部の金属材料とめっき部のめっき材料との反射強度の差が最大となる波長域の光を照明手段により照射するか、又はその波長域の光のみを選択的に透過可能な波長選択手段により不要な波長域の光を遮断して撮像させる波長選択段階と、基板に、第1の照明手段による間接光、又は第2の照明手段による直接光、のうちいずれか一方を照射させる照明選択段階と、撮像段階にて得られた基板の表面の画像データを用いて、非めっき部とめっき部に存在する欠陥を判定する画像処理・欠陥判定段階とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属基板表面の検査方法及び検査装置に関するものであり、特にリードフレームのめっき部の欠陥検査方法及びその検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属パターンを有する基板で、該金属パターンがめっき部と非めっき部で構成されたものとして、例えば、半導体パッケージの基材であるリードフレームがある。以下、このリードフレームを例に挙げて説明することとする。近年の半導体技術分野におけるパッケージング技術は、半導体装置の高集積、高機能化に伴い狭ピッチ化が進んでおり、これらのパッケージに用いられるリードフレームも多ピン化、狭ピッチ化が進んでいて、厳しい品質保証が要求されている。
【0003】
またリードフレームの製造方法としては、それらの金属製の薄板状基材を、超精密金型を用いて機械的に金属を打ち抜くスタンピング方法と、化学的に金属を腐食してパターン形成を行なうエッチング方法がある。
【0004】
一般的なリードフレームのインナーリードは、ダイパッドの中心を基準として放射状に広がるようにして延びていくように設計されている。リードフレームを用いた半導体装置は、ICチップがダイパッドに固定され、ICチップの電極パッドとインナーリード先端部のボンディング部とがワイヤボンディング等により電気的に接続される。ICチップが多機能化するにつれ電極パッドの数が増え、また、ICチップの小型化によって、電極パッド間の間隔も狭いものになってきている。それに伴い、電極パッドとの接続が行われるリードフレームのインナーリードも多ピン化し、インナーリード間ピッチ、インナーリード幅も多種多様なものとなっている。
【0005】
インナーリード間のピッチやインナーリード幅が狭くなると、インナーリードは強度が弱くなり、僅かな外力によってもインナーリードの変形を生じる。このことから、インナーリード同士及びダイパッドを支える吊りリードとインナーリードとの接触、電気的短絡やインナーリード等の変形を防止するために、インナーリードや吊りリードの部分に保護テープを貼ったリードフレームが製造されるようになった。
【0006】
リードフレームの製造工程では、まず金属製の薄板状基材をエッチングまたはスタンピングにより、所定の形状を形成する。次にインナーリードの先端部分に銀などの金属めっきを形成し、インナーリード部などに保護テープを貼り、場合によってはインナーリード部の先端をカットし、その後、ダウンセットプレスを行なう。
【0007】
図1に一般的なリードフレームの概略平面図を示す。図1は金属基板としてのリードフレーム10を表面側から観察した場合を模式的に示したものである。エッチング方法などにより製造されたリードフレーム10はダイパッド11、インナーリード12、アウターリード13、ダムバー14、フレーム部15を有し、配線パターンが形成されていない部分を空間部19と呼ぶ。
【0008】
その後、インナーリード12に、半導体素子とボンディング部の接続抵抗を低下させるためのめっきをめっき部16に施す。次に、インナーリード同士及びダイパッドを支える吊りリードとインナーリードとの接触および電気的短絡、インナーリード等の変形を防止するために保護テープ17を貼り付ける。保護テープ17としては、絶縁性などを考慮しポリイミドテープを使用している。さらに、ダウンセットプレスにより吊りリード18に
段差を形成しダイパッド11への半導体素子積載を考慮し、インナーリード12先端の導通を取り除くためのインナーリード先端カットが行なわれ、リードフレームが完成する。
【0009】
以上のような工程で製造されるリードフレームの最終検査における不良項目は、パターン不良、リード変形、保護テープ不良、めっき不良、ダウンセットプレス有無等多岐に亘り、自動検査機を活用した製品弁別が欠かせない。
【0010】
しかし、全ての不良を1台の検査機で検査することは難しく、特に最近ではテープやめっきに関する検査要求がさらに高まっている。ICチップとの接続を行なうボンディング部に施されている、部分めっきの品質は特に重要で、CCDカメラ等でめっき部を撮像し、画像処理を用いてそのめっき状態を検査する方法として、例えば特許文献1が提案されている。
【0011】
特許文献1に記載の技術よって、確かに金属パターン表面の非めっき部とめっき部とのコントラスト差を得ることはできるが、厳密には三次元的な形状を有した配線パターンの側面テーパー部も含めためっき状態の良し悪しを判断する検査方法が望ましい。さらに金属表面とめっき部とを明瞭にコントラスト分離できると共に、めっき部のみならず金属表面状態の良し悪しも同時に行なえる撮像、検査方法が望まれていた。
【0012】
一方、板状金属表面やめっき面をミクロ的に観察すると金属材料製法起因の圧延キズや凹凸が存在し、この凹凸による微小な明暗が画像上に生じてしまい画像処理における閾値設定によっては過検出要素となり、安定した自動判定が難しい。
【0013】
そこで撮像角度が0°〜10°で基板の表面を撮像する手段と、非めっき部の金属材料とめっき部のめっき材料との反射強度の差が最大となる波長域の照明手段と、立体角2πの間接光を照射する照射手段による金属基板表面の検査方法及び検査装置が提案されている。
【0014】
この検査方法によって、三次元的な形状を有した配線パターンの側面テーパー部も含めためっき状態の画像化や、金属表面とめっき部とを明瞭にコントラスト分離できると共に、金属材料製法起因の圧延キズや凹凸による微小な画像明暗による過検出要素を安定化させることが可能となった。
【0015】
しかし、めっき部は製造条件の微少な変動などによって、表面状態や組成が変化し、金属表面とのコントラスト分離による検査が安定化しないことが、ごく稀に発生することが問題となっていた。
【特許文献1】特開2000−171402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたもので、めっきの製造条件の微少な変動によらず、めっきを施した金属パターン表面のめっき不良を高精度に検査するのに好適な撮像方法を提供すると共に、リアルタイムに高い信頼性の下で検査を行なうことが可能な検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の請求項1に係る発明は、(1)表面にめっきがされためっき部とめっきがされていない非めっき部からなる金属パターンを有する基板を所定速度で搬送する搬送段階と、(2)前記基板の法線方向から0°〜10°傾いた方向から、前記搬送段階での搬送と同期を取るかまたは所定時間間隔で、前記基板の表面を撮像する撮像段階と、(3)前記基板の前記非めっき部の金属材料と前記めっき部のめっき材料との反射強度の差が最大となる波長域の光を照明手段により照射するか、又はその波長域の光のみを選択的に透過可能な波長選択手段により不要な波長域の光を遮断して撮像させる波長選択段階と、(4)前記基板に、第1の照明手段による間接光、又は第2の照明手段による直接光、のうちいずれか一方を照射させる照明選択段階と、(5)前記撮像段階にて得られた前記基板の表面の画像データを用いて、前記非めっき部と前記めっき部に存在する欠陥を判定する画像処理・欠陥判定段階と、を有することを特徴とする金属パターンを有する基板の検査方法である。
【0018】
また、本発明の請求項2に係る発明は、(1)表面にめっきがされためっき部とめっきがされていない非めっき部からなる金属パターンを有する基板を所定速度で搬送する搬送手段と、(2)前記基板の法線方向から0°〜10°傾いた方向から、前記搬送手段での搬送と同期を取るかまたは所定時間間隔で、前記基板の表面を撮像する撮像手段と、(3)前記基板の前記非めっき部の金属材料と前記めっき部のめっき材料との反射強度の差が最大となる波長域の光を照明手段により照射するか、又はその波長域の光のみを選択的に透過可能な波長選択手段により不要な波長域の光を遮断して撮像させる波長選択手段と、(4)前記基板に、第1の照明手段による間接光、又は第2の照明手段による直接光、のうちいずれか一方を照射させる照明選択手段と、(5)前記撮像手段にて得られた前記基板の表面の画像データを用いて、前記非めっき部と前記めっき部に存在する欠陥を判定する画像処理・欠陥判定手段と、を有することを特徴とする金属パターンを有する基板の検査装置である。
【発明の効果】
【0019】
上記のように、本発明によって金属基板の表面の配線パターンとめっき部の撮像において、めっきの製造条件の微少な変動に係らず、十分なコントラストを有した画像データを得て画像処理を実行することができるので、金属パターンを有する基板の配線パターン不良及びめっき外観不良を高精度かつ同時に検査することができる、不良検出感度が優れた検査装置の提供を可能としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明に係る金属基板表面の検査方法及び金属基板表面の検査装置の実施形態を説明する。図2は、本発明の金属基板表面の検査装置の一実施形態を示す構成概略図である。
【0021】
本発明の金属基板表面の検査装置は、金属基板(以下リードフレームと同義として称する)10を所定速度で移動する搬送手段50と、搬送手段50と同期を取り、かつ金属基板10の表面に存在する圧延キズの影響を軽減させるため撮像角度θを持たせ金属基板10の表面を撮影する撮像手段30と、金属基板10に対して金属基板の金属材料とめっき材料との反射強度差が最も大なる波長域を活用して金属材料とめっき材料との光学的分離を図り、かつ間接光又は直接光を照射する照明手段20と、撮像手段30により金属基板10の表面を撮影して得られた画像データを用いて、金属基板10の表面に存在する欠陥部を抽出、自動判定する制御・画像処理手段40とから構成されている。
【0022】
金属基板10を載せて固定した図示しない検査ステージを、搬送手段50によって所定速度で被撮像領域まで移動させ、この際搬送手段50に取り付けた検査ステージの移動量、即ち金属基板の移動量を高精度に計測するユニットから単位距離毎の信号を得て、その信号を分周分配して制御・画像処理手段40にこの信号を送ることによって、検査ステージの速度変動の影響を受けないように走査撮像を行なう。撮像手段の分解能の範囲内で検査ステージの搬送速度を一定と見なすことができる場合は、トリガー信号による撮像開始および一定時間間隔の撮像のみで画像を得る方法も考えられるが、上述のように常にステージの移動量と同期を取った撮像の方が確実である。
【0023】
図3は、本発明の照明手段20について、実施形態を示す模式図である。(a)は第1の照明手段として間接光を照射するドーム照明21を、(b)は第2の照明手段として直接光を照射するリング照明23を示している。ドーム照明21の半球ドームの頂上付近には、撮像用のスリット22が設けられていて、撮像手段30は、このスリットを通して基板10を撮像する。スリット22の形や大きさは、撮像手段30の視野の形やサイズに合わせて設定されるものである。つまりスリット22は、撮像手段30がラインカメラの場合は細長い長方形状で、エリアカメラの場合は正方形に近い長方形状とするのがよい。またいずれの場合も、撮像手段30の視野を遮らないサイズであることが必要であるが、必要以上に大きくすると、ドーム照明21からの均一な照射のバランスを崩すことになるので、注意が必要である。
【0024】
エッチング法等により形成される配線パターンは、エッチングが両側の表面から厚さ方向の中央に向かって進行することによって、断面形状が六角形に近い形状になり、特にエッチング進行方向の性質上、その側面テーパー部は曲線的に形成される。照明手段が同軸落射のみの場合、配線パターン表面で光が反射されてしまい、配線パターン間並びに側面テーパー部に生じている欠陥の顕在化精度が落ちてしまう。
【0025】
一方、ドーム照明21は、被検査対象に対して立体角2πの照射によって、同軸方向を含む多くの角度成分の照射が可能であるため、側面テーパー部に生じた欠陥の顕在化に効果的である。ドーム照明21にはドーム内面に光の出射口を形成し被検査対象に対して立体角2πの方向から光を照射するタイプと、ドーム内側面に光の出射口を形成しドーム内面で反射させた光を被検査対象に照射するタイプがあるが、同様の効果を生むことをできればどちらのタイプを使用しても構わない。
【0026】
またシェーディングの影響を少しでも軽減するために、金属パターンを有する基板10の幅Wに対して、ドーム照明21の内径を2W以上としておき、1回の撮像にて金属パターンを有する基板10の全面を撮像できるようにするのが好ましい。光源は撮像に必要な光量を考慮してメタルハライド光源やハロゲン光源、LED光源等を選択使用する。
【0027】
図4は、本発明の請求項1に係る照明手段20について、第1の照明手段であるドーム照明21の照射部24と、その照射部24より照射される方向を擬似的に表現した線L1と、第2の照明手段であるリング照明23の照射部25と、その照射部25より照射される方向を擬似的に表現した線L2と、を模式的に表現した断面図である。
【0028】
第1の照明手段であるドーム照明21は、金属基板10の幅Wに均一な光量での照射が可能となるように線L1の照射角度を設計する。具体的にはドーム照明21の内径が2W前後の時、水平方向より上側に40°程度傾いて照射すると、金属基板10の幅Wに均一な光量での照射が可能となる。
【0029】
第2の照明手段であるリング照明23は、水平方向より下側に20〜60°傾いて金属基板10に直接光が照射可能であれば形状について問わないが、ドーム照明21の照射を遮蔽しないことが最低条件である。また金属基板10に対して均一の照射角度にて照射できることが望ましい。第2の照明手段の形状としては、ライン照明なども考えられるが、金属基板10の金属材料製法起因の圧延キズの方向性の関係で、リング照明23の方が圧延キズの影響が少ない。またドーム照明21との同時配置を考慮すると、リング照明23の方が第2の照明手段としては適している。
【0030】
ドーム照明21とリング照明23の位置関係について、図4では2つの照明手段として示しているが、図4と同様の効果が得られ、ドーム照明21とリング照明23の照射を選択可能であれば一体化して設計しても構わない。当然、ドーム照明21の照射部24とリング照明23の照射部25の上下関係が図4と逆転しても構わない。
【0031】
照明選択段階は前記光源にて、第1と第2の照明手段のONとOFFを切り替える方法が簡便であるが、照明手段の照射角度を機械的に変更する手段を用いる方法や、照明手段の照射方向にミラーのようなものを配置させ、且つそのミラーが機械的に切り替え可能で、切り替えによって第1と第2の照明手段の照射方向の両方を満足できれば、同様の効果を得ることができるため、これらの方法を用いても構わない。
【0032】
図5は、インナーリード部12の断面図を示したもので、(a)はめっき部16の平坦性が高い状態を、(b)はめっき部16の平坦性が低い状態を模式的に示した図である。めっき部16の平坦性を決定する要素として、下地となるインナーリード部12の圧延キズや凹凸、めっきの粒径や、めっきの膜厚等が関係し、それらを形成する製造条件によるバラツキも考えられるため、一概に同様の平坦性を得ることは難しい。但しめっきの粒径が大きい製品の場合、(a)のような平坦性が高い状態となることは非常に困難である。逆にめっきの粒径が小さい製品の場合、(a)のような平坦性が高い状態を作り出せる可能性は高くなり、(b)のような平坦性が低い状態の中でも、突出して平坦性が低いものが作られる可能性は非常に低くなる。
【0033】
図6は、めっきの粒径の違いによる、平坦性とその製造頻度の関係を模式的に示したものである。図6中の(a)、(b)は図5の各状態を示している。図6の(a)のように平坦性が高い状態は、めっきの粒径が小さく、且つ非常に低い割合で作られていることが分かる。
【0034】
図7は、めっき部16の平坦性が高い状態と、それ以外の状態における、照明の照射角度と画像の階調値の関係を示したものである。図7のようにめっき部16の平坦性が低い状態、即ち図6の(b)で示されるようなめっき部16の大多数は、照明の照射角度20〜60°の時、めっき部16とインナーリード部12との階調値の差が大きくなっている。まためっき部16の平坦性が高い状態、即ちめっきの粒径が小さく且つその中でも非常に低い割合で製造されるものの場合は、照明の照射角度が70°以上でめっき部16とインナーリード部12との階調値の差が大きくなっていることがわかる。
【0035】
これはめっき部16の平坦性が高くなることによって、めっき部16面が鏡面のような状態となり、本来のめっき部16面が持つ正反射(鏡面反射)と拡散反射の割合のうち、正反射の割合が高くなってしまったことが要因として考えられる。
【0036】
以上より、めっき部16は様々な要因により、照明の照射角度と画像の階調値の関係性が一定ではないことがわかる。よって本発明のように2種類以上の照明の照射角度を備えた形態でなければ、その全ての製品を同様に検査することができない。ドーム照明21は設計上様々な照射角度で照射が可能であるが、ドーム照明21の内径が2W前後で、水平方向より上側に40°程度傾いて照射するとワークに照射される角度成分のうち最も多いのが、同軸即ち水平より90°である。そのため本発明では、図5(a)のように、めっき部16の平坦性が高い状態の場合は、照明の照射角度70°以上が期待できる、ドーム照明21を第1の照明手段として選択し、図5(b)のようにめっき部16の平坦性が低い状態の場合は、照明の照射角度20〜60°の直接光を照射可能なリング照明23を第2の照明手段として選択する。
【0037】
もちろん、第1の照明手段をドーム照明21ではなく、金属基板に70°以上の照射が
可能な直接光を採用しても構わないが、側面テーパー部に生じた欠陥の顕在化や金属材料製法起因の圧延キズや凹凸による微小な画像明暗による過検出要素の影響はドーム照明21採用時よりも増加する。なお、第1の照明手段として直接光を選択する場合は、圧延キズの影響がより少ないリング照明23を採用することが望ましい。
【0038】
ここで、第1と第2の照明手段のどちらを選択するかを決定するために、めっき部16の平坦性の高さを判断する方法としては、以下のような方法がある。一つは、検査前に検査対象の金属基板のロットから1枚〜数枚を無作為に取り出し、そのめっき部16の平坦度を測定して、平坦度が所定値より高い場合は第1の照明手段のみ使用、平坦度が所定値より低い場合は第2の照明手段のみ使用して検査するものである。めっき部16の平坦度の測定には、触針式やレーザー式など適宜の方式の平坦度測定器を用いることが可能である。
【0039】
めっき部16の平坦性の高さを判断する別の方法としては、本検査装置の撮像手段により、第1の照明手段のみで撮像した画像と、第2の照明手段のみで撮像した画像を、表示装置などに表示して、作業者が比較してどちらの照明が適しているか判断するようにしてもよい。その際に、各画像毎にめっき部16と配線パターンの非めっき部の階調値の差も表示するようにし、諧調値の差の大きい画像を撮像したほうの照明手段を選ぶようにすることも可能である。
【0040】
あるいは本検査装置において、まず、第1の照明手段のみ、第2の照明手段のみによる撮像をそれぞれ行い、めっき部16と配線パターンの非めっき部の階調値の差が大きい画像を撮像したほうの照明手段がその検査対象の金属基板に適した照明手段であると判断し、その後に行なう検査ではそちらの照明を使用するようにしてもよい。この方法の場合、検査対象の金属基板のロットの最初の1枚〜数枚に対して上記の処理を行って使用する照明手段を決定し、それ以降の金属基板は決定された照明手段によって検査を行なうようにしてもよいし、すべての金属基板に対して上記の処理を行って適した照明手段を個別に決定してから検査を行なうようにしてもよい。
【0041】
このようにして第1と第2の照明手段のどちらを選択するか決めることにより、精度の高い確実な検査が可能となる。なお、めっき粒径が大きいことがあらかじめわかっていて平坦度が低いことが予測される金属基板の場合、上述のような方法でどちらの照明手段を使用するか決める必要はなく、第2の照明手段を使用するようにすればよい。
【0042】
撮像手段30は、金属パターンを有する金属基板10について、所定位置からの所定領域を撮影することを繰り返して、金属パターンを有する金属基板10全面の画像データを得る。撮像手段30の撮像角度θは、金属パターンを有する金属基板の鉛直方向と光軸とのなす角度を指し、撮像角度θは0〜10°程度が適している。撮像角度θを0°としない理由は、ドーム照明での撮像時に金属パターン表面の圧延キズ等の細かな凹凸の影響を軽減して、誤検出、過検出の防止を行なうためである。
【0043】
撮像手段30としては各種のカメラを使用することができるが、その用途に応じてラインカメラ、エリアカメラ、モノクロ、カラーなどの選択が可能であり、本実施形態ではモノクロのラインカメラを使用した場合を示している。
【0044】
また波長選択の方法としては、照射手段20が400nm以上600nm以下の波長の光で照明するようにするか、又は、400nm以上600nm以下の波長を透過する光学フィルタ35を撮像手段30に装着してこの波長域のみで撮像するようにする、などの方法がある。すなわち、光源又は光学フィルタを用いたコントラスト分離を行う。
【0045】
このように撮像に使用する光の波長を選択することで、非めっき部の金属とめっき部16とを光学的に分離し、欠陥検出のための明瞭なコントラストを得ることとする。従って、撮像対象となる金属パターンを有する金属基板10の非めっき部の金属とめっき部16の材料に応じて、反射強度の差が最も大きくなる波長の範囲を活用して、非めっき部の金属材料とめっき材料との光学的分離を図ることで、不良検出感度を向上させる。
【0046】
制御・画像処理手段40では、搬送手段50の制御を行なうと共に金属パターンの表面を撮影して得られた画像データを用いて、金属パターンの表面に存在する欠陥部を抽出する処理を行なう。
【0047】
図8は、この画像処理・欠陥判定手段40の全体動作を示したフローチャートである。金属パターンを有する金属基板10を所定速度で移動する搬送手段50と、金属パターンに対して非めっき部の金属材料とめっき材料との反射強度差が最も大きくなる波長域を活用して非めっき部の金属材料とめっき材料との光学的分離を図り、搬送手段50と同期を取り、かつ撮像角度θを持って金属パターンの表面を撮影する撮像手段30とにより金属パターン表面を順次撮像する(ステップS1)。
【0048】
この画像データは、制御・画像処理手段40に送出され、この画像データからめっき部の各部情報を抽出する(ステップS2)。更に、抽出された情報を用いて欠陥検出・判定処理が実行される(ステップS3)。この欠陥検出・判定処理は、リードフレーム10に形成されている全ての配線パターンに対して実行され、この後全体動作は完了する(ステップS4,YES)。
【0049】
図9(a)はインナーリード12、めっき部16、空間部19を模式的に示したもので、(b)は(a)図中のL3線上のプロファイルを示したものである。このようにめっき部16において、輝度情報の分離がなされている。よって、前記不良検出・判定処理(ステップS3)では、得られた画像に対して二値化、多値化処理を施して不良部位を抽出するか、予め基準となる画像をマスターデータとして保持しておき、得られた画像データとのパターンマッチングや差分処理などの画像処理を施すことで各種めっき不良を検出することができる。
【実施例】
【0050】
以下に、本発明の具体的実施例について説明する。
【0051】
<実施例1>
図10は、照明手段として第1の照明手段であるドーム照明21、及びメタルハライド光源を使用し、撮像手段30として8bit256階調モノクロラインカメラを使用し、撮像角度θを5°とし、撮像レンズ前面に400nm〜600nmを透過させる光学フィルタ35を装着した時の、めっき部16の平坦性が高い状態のリードフレーム10のインナーリードめっき付近の画像を示したものである。
【0052】
<比較例1>
図11は、照明手段として第2の照明手段であるリング照明23、及びメタルハライド光源を使用し、撮像手段30として8bit256階調モノクロラインカメラを使用し、撮像角度θを5°とし、撮像レンズ前面に400nm〜600nmを透過させる光学フィルタ35を装着した時の、めっき部16の平坦性が高い状態のリードフレームのインナーリードめっき付近の画像を示したものである。
【0053】
図10及び図11に示すように、めっき部16の平坦性が高い状態のリードフレーム10では、第1の照明手段であるドーム照明21を選択した方が、めっき部16とインナー
リード部12の階調値差が大きくなっていることが分かる。
【0054】
<実施例2>
図12は、照明手段として第2の照明手段であるリング照明23、及びメタルハライド光源を使用し、撮像手段30として8bit256階調モノクロラインカメラを使用し、撮像角度θを5°とし、撮像レンズ前面に400nm〜600nmを透過させる光学フィルタ35を装着した時の、めっき部16の平坦性が低い状態のリードフレームのインナーリードめっき付近の画像を示したものである。
【0055】
<比較例2>
図13は、照明手段として第1の照明手段であるドーム照明21、及びメタルハライド光源を使用し、撮像手段30として8bit256階調モノクロラインカメラを使用し、撮像角度θを5°とし、撮像レンズ前面に400nm〜600nmを透過させる光学フィルタ35を装着した時の、めっき部16の平坦性が低い状態のリードフレームのインナーリードめっき付近の画像を示したものである。
【0056】
図12及び図13に示すように、めっき部16の平坦性が低い状態のリードフレームでは、第2の照明手段であるリング照明23を選択した方が、めっき部16とインナーリード部12の階調値差が大きくなっていることが分かる。
【0057】
以上より、本実施形態の照明選択手段を用い、めっき部16の平坦性の違いにより選択する照明手段を使い分ける事で、金属表面とめっき部との安定的なコントラスト分離と、金属材料製法起因の圧延キズや凹凸による微小な画像明暗により過検出要素の安定化の最適な条件の導出を行なうことができるようになる。よって、ごく稀に発生していためっき部の製造条件の微少な変動などによる、検査の不安定化という問題を解決できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】リードフレームの概略形状を示す平面図。
【図2】本発明の検査装置の一実施形態での要部構成を示す概略構成図。
【図3】本発明の照明手段を示す説明図。
【図4】本発明の検査装置の一実施形態での照明手段を示す断面図。
【図5】リードフレームのめっき平坦性を説明する断面図。
【図6】めっきの粒径の違いによる、平坦性とその製造頻度の関係を示す説明図。
【図7】めっきの平坦性の違いによる、照明角度と画像階調値の関係を示す説明図。
【図8】本発明の検査装置の全体概略動作を示すフローチャート。
【図9】(a)リードフレームのインナーリードめっき付近の概略平面図。(b)(a)中のL1線上のラインプロファイルを示す説明図。
【図10】めっき部の平坦性が高い状態のリードフレームを、第1の照明手段であるドーム照明を使用して撮像した時の画像例。
【図11】めっき部の平坦性が高い状態のリードフレームを、第2の照明手段であるリング照明を使用して撮像した時の画像例。
【図12】めっき部の平坦性が低い状態のリードフレームを、第2の照明手段であるリング照明を使用して撮像した時の画像例。
【図13】めっき部の平坦性が低い状態のリードフレームを、第1の照明手段であるドーム照明を使用して撮像した時の画像例。
【符号の説明】
【0059】
10・・・金属基板(リードフレーム) 11・・・ダイパット
12・・・インナーリード部 13・・・アウターリード 14・・・ダムバー15・・・フレーム部 16・・・めっき部 17・・・保護テープ
18・・・吊りリード 19・・・空間部 20・・・照明手段
21・・・ドーム照明 22・・・撮像用のスリット 23・・・リング照明
24・・・ドーム照明の照射部 25・・・リング照明の照射部
30・・・撮像手段 35・・・光学フィルタ 40・・・制御・画像処理装置50・・・搬送手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)表面にめっきがされためっき部とめっきがされていない非めっき部からなる金属パターンを有する基板を所定速度で搬送する搬送段階と、
(2)前記基板の法線方向から0°〜10°傾いた方向から、前記搬送段階での搬送と同期を取るかまたは所定時間間隔で、前記基板の表面を撮像する撮像段階と、
(3)前記基板の前記非めっき部の金属材料と前記めっき部のめっき材料との反射強度の差が最大となる波長域の光を照明手段により照射するか、又はその波長域の光のみを選択的に透過可能な波長選択手段により不要な波長域の光を遮断して撮像させる波長選択段階と、
(4)前記基板に、第1の照明手段による間接光、又は第2の照明手段による直接光、のうちいずれか一方を照射させる照明選択段階と、
(5)前記撮像段階にて得られた前記基板の表面の画像データを用いて、前記非めっき部と前記めっき部に存在する欠陥を判定する画像処理・欠陥判定段階と、
を有することを特徴とする金属パターンを有する基板の検査方法。
【請求項2】
(1)表面にめっきがされためっき部とめっきがされていない非めっき部からなる金属パターンを有する基板を所定速度で搬送する搬送手段と、
(2)前記基板の法線方向から0°〜10°傾いた方向から、前記搬送手段での搬送と同期を取るかまたは所定時間間隔で、前記基板の表面を撮像する撮像手段と、
(3)前記基板の前記非めっき部の金属材料と前記めっき部のめっき材料との反射強度の差が最大となる波長域の光を照明手段により照射するか、又はその波長域の光のみを選択的に透過可能な波長選択手段により不要な波長域の光を遮断して撮像させる波長選択手段と、
(4)前記基板に、第1の照明手段による間接光、又は第2の照明手段による直接光、のうちいずれか一方を照射させる照明選択手段と、
(5)前記撮像手段にて得られた前記基板の表面の画像データを用いて、前記非めっき部と前記めっき部に存在する欠陥を判定する画像処理・欠陥判定手段と、
を有することを特徴とする金属パターンを有する基板の検査装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図1】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−204311(P2009−204311A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−43860(P2008−43860)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】