説明

金属部品取出装置並びに金属部品取出方法

【課題】 容器内での部品間のブリッジ現象の発生を防止するとともに容器内の部品数が少なくなっても適量の部品を取り出すことが可能であり、且つ作業性に優れる金属部品取出装置並びに金属部品取出方法を提供すること。
【解決手段】 上端に開口部を備える一端有底円筒状の容器を回転させるとともに支持する回転基台と、前記開口部を介して前記容器内外へ上下に電磁石を移動させる上下移動機構と、前記電磁石を水平に移動させる水平移動機構からなる金属部品取出装置であって、前記水平移動機構の第1位置において、前記上下移動機構は、前記容器内部に収容された金属部品を取り出すために前記電磁石を上下に移動させ、該電磁石の上下移動が、前記回転基台の回転中心から離れた前記容器の内壁近傍で行われることを特徴とする金属部品取出装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内に収容された金属部品を取り出すための金属部品取出装置に関し、より詳しくは、容器内に収容される金属部品の数が少なくなっても安定して適量の金属部品を取り出すことが可能な金属部品取出装置並びに金属部品取出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボルト、ナット或いはビスといった小さな組立用部品は所定量ずつ容器内に収容され、該容器内から適量ずつ取り出されて、組立工程へ運搬される。この容器内部からの部品取出工程において、容器内部一定箇所から部品を取り出そうとすると容器内部で部品同士が引っかかり或いは絡み合ってブリッジ現象が生ずる。このようなブリッジ現象が生ずると、特に部品を容器から上方に取り出すような場合、部品の堆積部分に凹部が生じ、部品を取り出すことが困難となる。
【0003】
従来、このような問題を解決する方法として、部品を収容する容器に振動を与える方法や容器自体を揺動させる方法が多く採用されている。しかしながら、このような方法によれば、容器内部に収容される部品が球状或いは円筒状である場合には有効であるが、直径が長さと比較して小さな棒状部品等にはさほど有効な手段とはならない。
【0004】
特許文献1は、このような問題を解決する1つの装置を開示している。
特許文献1に開示される装置は、部品を吸着する電磁石の降下位置を自由に変更可能とすることにより、部品の堆積部分に凹部が生ずることを防ぐことが可能である。
【0005】
【特許文献1】特開平6−64753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示される装置は、電磁石の降下位置を変更することにより容器内での部品間のブリッジ現象の発生を防止するものである。したがって、電磁石の降下位置を制御するための制御機構を必要とする。このため装置の動作を制御する制御回路を組み込む必要があり、装置構成の複雑さを招来することとなる。
【0007】
また、特許文献1の装置は、容器内に多量の部品が収容されているときは安定して適量数の部品を取り出すことが可能であるが、容器内の部品数が少なくなったときには、取り出される部品数が安定しないという問題を有する。
即ち、容器内において、部品があまり堆積していない部分に電磁石が下ろされると、吸着される部品数が少なくなるという問題を有する。このような問題を解決するためには、例えば、容器内の部品堆積量を測定する手段を設ける必要があり、このことは更なる装置の複雑さを招来することとなる。
【0008】
更に、特許文献1の装置は、容器内の部品数が少なくなり、部品が容器底面上に散在する状態となったときに、適切な量の部品を取り出すことができないという問題を有する。したがって、特許文献1の装置は、容器底面を傾斜させる形態を採用し、容器内の部品が少なくなったときに一定箇所に部品が集まるようにしている。
このような方法によれば、容器内の部品数が少なくなったときでも、適量の部品を取り出すことは可能となるが、部品を収容する容器の安定性を損なうこととなるとともに、容器の容積を必然的に低減させることとなる。容器の安定性を損なうことは、容器の運搬性・収容性を損なうことにつながる。したがって、部品を容器内に収容するために、このような容器を所定場所へ運搬し、容器内に多量の部品を収容するという作業が困難となる。
【0009】
本発明は上記実情を鑑みてなされたものであって、容器内での部品間のブリッジ現象の発生を防止するとともに容器内の部品数が少なくなっても適量の部品を取り出すことが可能であり、且つ作業性に優れる金属部品取出装置並びに金属部品取出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明は、上端に開口部を備える一端有底円筒状の容器を回転させるとともに支持する回転基台と、前記開口部を介して前記容器内外へ上下に電磁石を移動させる上下移動機構と、前記電磁石を水平に移動させる水平移動機構からなる金属部品取出装置であって、前記水平移動機構の第1位置において、前記上下移動機構は、前記容器内部に収容された金属部品を取り出すために前記電磁石を上下に移動させ、該電磁石の上下移動が、前記回転基台の回転中心から離れた前記容器の内壁近傍で行われることを特徴とする金属部品取出装置である。
請求項2記載の発明は、傾斜機構を更に備え、該傾斜機構が、前記容器を傾斜させ、前記第1位置における前記電磁石の下方への移動が、前記傾斜した容器の底部の最下点に向けて行われることを特徴とする請求項1記載の金属部品取出装置である。
請求項3記載の発明は、金属部品を収容する一端有底円筒状の容器を回転させる段階と、該容器の上端開口部から電磁石を降下させ、前記容器に収容された前記金属部品を吸着する段階と、前記電磁石を上方に移動させる段階と、該電磁石を水平方向に移動させる段階と、該電磁石が所定位置に達したときに、電磁石への電力供給を停止する段階からなり、前記電磁石の前記容器内部への降下が、水平方向の位置において一定位置で行われ、前記電磁石による金属部品の吸着が、前記容器の内壁近傍で行われることを特徴とする金属部品取出方法である。
請求項4記載の発明は、前記容器を回転させる段階の前に、前記容器を傾斜させる段階を備え、前記電磁石の前記容器内部への降下が、前記傾斜した容器底部の最下点に向けて行われることを特徴とする請求項3記載の金属部品取出方法である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、電磁石の降下位置を一定箇所としても、容器内の部品間で生ずるブリッジ現象を防止可能となる。また、電磁石の降下位置を一定箇所とすることができるので、装置構造を単純化することが可能となる。
請求項2記載の発明によれば、電磁石により容器から取り出された部品を一定箇所で回収することが可能となる。
請求項3記載の発明によれば、電磁石の降下位置を一定箇所としても、容器内の部品間で生ずるブリッジ現象を防止可能となる。
請求項4記載の発明によれば、容器内の部品数が少なくなったときに、容器底面一定箇所に部品を集積することができ、適量の部品を取り出すことが容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る金属部品取出装置の実施形態について、図を参照しつつ説明する。図1は、金属部品取出装置の概略構成を示す正面図である。
金属部品取出装置(1)は、回転基台(2)と、回転基台(2)上に載置されるとともに上部が開口した一端有底円筒形状の容器(3)と、電磁石(4)を上下に移動させる上下移動機構(5)と、電磁石(4)を水平移動させる水平移動機構(6)を備える。
以下に、それぞれの構成について詳細に説明する。
【0013】
図2は、図1に示す回転基台(2)の詳細図であり、図2(a)は回転基台(2)の平面図であり、図2(b)は回転基台(2)の正面図である。
回転基台(2)は、円板状の台座部(21)と、台座部(21)上に配される環状の回転環体(22)と、回転環体(22)上面から上方へ延出する支持環体(23)を備える。
台座部(21)の下面には複数個のローラ(24)が取付けられ、ビスやねじ等の金属部品が収容された容器(3)を回転基台(2)に載置した状態での移動を容易に行うことを可能とする。
【0014】
回転環体(22)の内周面には、歯車が形成されており、回転環体(22)の内周面に形成された歯車には、駆動ギア(25)が噛合う。駆動ギア(25)はモータ(図示せず)により駆動され、回転環体(22)を台座部(21)上で回転させ、回転環体(22)はその中心を軸として回転する。
回転環体(22)の内径は、容器(3)の外径よりも小さく形成される。したがって、容器(3)は、回転環体(22)の開口領域内に嵌り込むことなく、回転環体(22)の上面に載置可能である。
【0015】
回転環体(22)の上面から立設する環状の支持環体(23)の内径は、容器(3)の外径よりも若干大きく形成される。支持環体(23)は、回転環体(22)に対して同軸に形成される。
容器(3)は、支持環体(23)の開口領域として定義される位置に載置される。したがって、容器(3)の中心は、回転中心と略一致することとなる。また、支持環体(23)が容器(3)の下部外周面を囲むため、回転環体(22)の回転に伴う容器(3)の回転によって、容器(3)が回転環体(22)上面で摺動動作をしようとしても、支持環体(23)がその動きを妨げるため、容器(3)の安定した回転動作を保証することができる。
【0016】
更に、回転基台(2)には、傾斜機構(7)が設けられる。
図2に示す例においては、傾斜機構(7)として回転環体(22)の開口領域内に配されたシリンダが配されている。シリンダは、回転環体(22)の内縁付近に配される。
シリンダのロッドが上方に伸長したとき、容器(3)底面縁部付近を持ち上げることとなる。これにより、容器(3)の底面縁部の一端を軸として、容器(3)を回転動作させることができ、容器(3)は傾斜することとなる。
尚、傾斜機構(7)はこれに限られるものではなく、例えば、ローラ(24)と台座部(21)とを接続するシャフトを伸縮可能として、台座部(21)ごと傾斜させるような形態も採用可能である。その他、容器(3)を傾斜可能な構成・機構を適宜採用可能である。
【0017】
このような容器(3)の傾斜動作を行ったとき、支持環体(23)内壁は容器(3)下部外周面を支持することとなるので、支持環体(23)は、容器(3)の回転環体(22)上面での摺動動作を防ぐ。更には、支持環体(23)は、容器(3)の転倒を防止する。
【0018】
図1に示す如く、上下移動機構(5)は、支持部材(51)と、上下レール部材(52)と、上下移動用モータ(53)から構成される。
図3は、支持部材(51)周辺を側方から見た拡大図である。尚、図3においては、上下移動機構(5)の構造を示すために、水平移動機構(6)の構成は省略して示されている。
【0019】
支持部材(51)は、左右一対に配される側面壁(511)、上面壁(512)及び奥面壁(513)からなる外壁部(510)を備え、正面並びに下面が空いた箱形状に形成されている。
支持部材(51)内部において、奥面壁(513)には水平レール部材(61)が取付けられている。水平レール部材(61)にスライダ(41)が噛合い、スライダ(41)には平板(42)が取付けられている。平板(42)下方にブロック(43)が取付けられ、ブロック(43)下面から剛性棒状のアーム部材(44)が下方に向かって延出する。電磁石(4)はアーム部材(44)の下端に固定される。このようにして、支持部材(51)は電磁石(4)を支持するものとなる。
【0020】
支持部材(51)の背面側において、上下レール部材(52)が垂直に立設している。上下レール部材(52)の上端は、金属部品取出装置(1)の外枠をなすフレーム(8)の天板(81)に接続し、上下レール(52)の下端は地面に固定されている。
支持部材(51)と上下レール(52)は、スライダ(54)を介して接続する。スライダ(54)は、上下レール(52)と噛合い、上下レール(52)に沿って移動する。これにより支持部材(51)は上下レール(52)にその移動を案内されることとなる。
【0021】
スライダ(54)の上面には、チェーン(55)が接続され、チェーン(55)は上下移動用モータ(53)に接続する。モータ(53)が一方向に回転すると、チェーン(55)は巻き取られ、スライダ(54)とともに支持部材(51)は上昇する。モータ(53)が他方向に回転すると、チェーン(55)は巻き出され、スライダ(54)とともに支持部材(51)は下降する。
尚、モータ(53)を上下動の駆動源とせずに、シリンダを用いて支持部材(51)の上下動作を行ってもよい。
【0022】
図4は、図3に現れない上下移動機構(5)の構成要素を示す。図4(a)は、金属部品取出装置(1)の平面図であり、図4(b)は、金属部品取出装置(1)を背面側から見た図である。
図3に示すチェーン(55)は上方に延び、天板(81)に形成された開口部(811)を介して、上下移動用モータ(53)に接続する。上下移動用モータ(53)の後、チェーン(55)は、天板(81)上面に固定されたスプロケット(812)により方向を変えられ、金属部品取出装置(1)背面側下方に延びる。そして、チェーン(55)の端部には、錘(56)が取付けられる。
錘(56)は、チェーン(55)の他端部に接続する支持部材(51)並びに支持部材(51)に据付けられる様々な部品(図3参照)の総重量と略等しい重量を有する。これにより、支持部材(51)を上下に移動させる動作が円滑に行われることとなる。
【0023】
図5は、電磁石取付機構(45)の詳細図である。図5(a)は、電磁石取付機構(45)の正面図であり、図5(b)は、電磁石取付機構(45)を上方から見た図であり、図5(c)は、図5(a)のA−A線断面図であり、図5(d)は、図5(a)のB−B線断面図であり、図5(e)は、容器(3)内の金属部品を吸着するときの電磁石取付機構(45)の状態を示す図である。
電磁石(4)は、電磁石取付機構(45)を介してアーム部材(44)下端に取付けられる。
【0024】
電磁石取付機構(45)は、一対のプレート(451)を備える。一対のプレート(451)は上下に平行に配され、上側に配されるプレート(451)はアーム部材(44)下端に接続し、下側に配されるプレート(451)は電磁石(4)に接続する。
プレート(451)は、平面視矩形状であり、四隅にロッド(452)が配され、ロッド(452)は一対のプレート(451)同士を接続する。ロッド(452)は、その上端に他の部分より径大に形成される円板状の頭部(425)を備える。
下側のプレート(451)はロッド(452)の下端を固定する一方で、上側のプレート(451)はロッド(452)が挿通する貫通穴が設けられる。ロッド(452)の頭部(425)下面は、上側のプレート(451)の上面に当接し、電磁石(4)の上側プレート(451)に対する下限位置を定める。
【0025】
上側のプレート(451)の下面中央には、下方に突出する突出部(453)が固定される。突出部(453)の長さは、上側のプレート(451)に対して下限位置に下側プレート(451)があるときの上側のプレート(451)の下面と下側のプレート(452)の上面との距離よりも短く形成される。
下側のプレート(451)の上面には、反射型対物センサ(454)が配される。センサ(454)は下側プレート(451)の中央へその受光面を向けている。
【0026】
図5(a)及び図5(e)に示される点線部分は、容器(3)内に堆積した金属部品の集合体の上面輪郭であり、図5(a)に示す状態において、電磁石(4)の下端は金属部品の集合体上面輪郭に接している。
図5(a)に示す状態から、上下移動機構(5)を作動させて、下方に電磁石(4)を移動させようとすると、電磁石(4)は金属部品の集合体に阻まれ、下方に移動しない。結果として、上側のプレート(451)、アーム部材(43)及びアーム部材(43)に接続する部分のみが下方に移動することとなる。
上側プレート(451)が、下側プレート(451)に近づいていくと、上側プレート(451)に取付けられた突出部(453)がセンサ(454)に検知されることとなる。
突出部(453)がセンサ(454)に検知されると、上下移動機構(5)の下降動作が停止するとともに、電磁石(4)に電力が供給され、電磁石(4)が容器(3)内の金属部品を吸着する。
【0027】
次に、図1及び図6を参照しつつ、水平移動機構(6)について説明する。図6(a)は、支持部材(51)を側方から見た断面図であり、図6(b)は、支持部材(51)を正面から見た図である。尚、水平移動機構(6)を明瞭に示すために、上下移動機構(5)の構成は、一部省略されている。
水平移動機構(6)は、水平レール部材(61)と、水平移動用モータ(62)と、水平移動用モータ(62)の回転軸に取付けられる第1スプロケット(63)と、第1スプロケット(63)にチェーン(64)を介して連結するとともに支持部材(51)背面側に取付けられる第2スプロケット(65)と、第2スプロケット(65)と同軸に取付けられるとともに支持部材(51)内部に配される駆動側プーリ(66)と、駆動側プーリ(66)に対してタイミングベルト(67)を介して接続する被駆動側プーリ(68)から構成される。
【0028】
水平レール部材(61)は、略直方体に形成された支持部材(51)の長手方向軸に対して平行に延び、水平に配されている。上述の如く、水平レール部材(61)にスライダ(41)が噛合い、平板(42)、ブロック(43)、アーム部材(44)及び電磁石取付機構(45)を介して、電磁石(4)を支持する。
【0029】
水平移動用モータ(62)は、支持部材(51)の上面壁(512)上に載置固定される。水平移動用モータ(62)の回転軸は、背面方向に延び、この回転軸の先端部分に第1スプロケット(63)が取付けられる。第1スプロケット(63)の下方には、第2スプロケット(65)が配され、第1スプロケット(63)と第2スプロケット(65)は、チェーン(64)を介して連結される。水平移動用モータ(62)が回転軸を回転させると、これに伴い第1スプロケット(63)が回転し、チェーン(64)で連結された第2スプロケット(65)が駆動される。
【0030】
支持部材(51)の奥面壁(513)には、円筒状のカラー(514)が取付けられる。カラー(514)は奥面壁(513)を貫通し、一端は奥面壁(513)背面側に現れ、他端は支持部材(51)内部に現れる。回転シャフトがカラー(514)内部に挿入され、この回転シャフトは、カラー(514)内部で軸受により回転可能に支持される(図示せず)。そして、回転シャフトの奥面壁(513)背面側に現れる端部に第2スプロケット(65)が取付けられ、他端に駆動側プーリ(66)が取付けられる。
これにより、水平移動用モータ(62)の駆動力は、第2スプロケット(65)から回転シャフトを介して、駆動側プーリ(66)に伝達される。
【0031】
駆動側プーリ(66)は、図6(b)に示すように、支持部材(51)内部左方に現れる。そして、被駆動側プーリ(68)は、支持部材(51)内部右方に配される。被駆動側プーリ(68)は、支持部材(51)の奥面壁(513)にシャフトを介して回転可能に取付けられている。
駆動側プーリ(66)と被駆動側プーリ(68)は、タイミングベルト(67)によって連結される。これにより、水平移動用モータ(62)から駆動側プーリ(66)に伝達された回転力は、被駆動側プーリ(68)に伝達される。
【0032】
駆動側プーリ(66)と被駆動側プーリ(68)との間のタイミングベルト(67)は、水平レール部材(61)に対して平行に張られる。支持部材(51)内部長手方向に延びる上下一対のタイミングベルト(67)の部分のうち、下方のタイミングベルト(67)の部分は、水平レール部材(61)の幅に対して略中間位置を通過する。
水平レール部材(61)に噛合うスライダ(41)に取付けられた平板(42)からは、一対の棒体(45)が正面側に向かって突出する。
棒体(45)は、タイミングベルト(67)の内面の山部間に形成される谷部内に配される。これにより、駆動側プーリ(66)及び被駆動側プーリ(68)の回転により、タイミングベルト(67)が水平方向に移動すると、電磁石(4)も水平方向に移動する。尚、棒体(45)がタイミングベルト(67)に対して、若干量の張力を与えるように配されてもよい。これにより、タイミングベルト(67)の動作が安定するとともに棒体(45)とタイミングベルト(67)との係合が外れることが防止される。
尚、本発明は、上述の如く棒体(45)によりタイミングベルト(67)と平板(42)とを連結させる手段に限られるものではなく、下側に張られるタイミングベルト(67)を、スライダ(41)から延出する一対のプレートにて上下に挟持して電磁石(4)を水平移動可能とする構造を採用してもよい。
【0033】
上記構造の水平移動機構(6)により、水平移動用モータ(62)が一方向に回転すると、電磁石(4)は右方に水平移動し、水平移動用モータ(62)が他方向に回転すると、電磁石(4)は左方に水平移動することとなる。
尚、水平移動機構(6)は、駆動源を水平移動用モータ(62)とする必要はなく、シリンダを駆動源とし、側方からスライダ(41)或いは平板(42)を側方から押して、電磁石(4)を水平移動させる機構を採用してもよい。
【0034】
次に、金属部品取出装置(1)の制御について説明する。
図7は、上下方向の動作に対する制御を示す図であり、図7(a)は、電磁石(4)が下降する前の状態を示し、図7(b)は、電磁石(4)が下降した後の状態を示す。
制御システム(9)は、制御盤(91)と、回転基台(2)に取付けられたロードセル(92)と、上下レール部材(52)に取付けられた上限リミッタスイッチ(93)と下限リミッタスイッチ(94)と、支持部材(51)の奥面壁(513)正面側に取付けられた左限リミッタスイッチ(95)と右限リミッタスイッチ(96)から構成される。
【0035】
制御盤(91)は、電源を備え、この電源から回転基台(2)の回転環体(22)を回転させるためのモータ、上下移動用モータ(53)、水平移動用モータ(62)並びに電磁石(4)へ電力が供給される。
ロードセル(92)は、容器(3)内に収容された部品の重量を計測し、この計測値を制御盤(91)へ送る。制御盤(91)は、この計測値が閾値以上である限り、回転基台(2)の回転環体(22)を回転させるモータに電力を供給し、回転環体(22)を回転させる。これに伴い、容器(3)も回転する。
【0036】
図7(a)に示す状態において、電磁石(4)は左方に向かって移動している。そして、左限リミッタスイッチ(95)が、スライダ(61)或いは平板(42)の位置を検知し、この検知信号を制御盤(91)へ送る。左限リミッタスイッチ(95)から信号を受けた制御盤(91)は、水平移動用モータ(62)に信号を送り、水平移動用モータ(62)の回転を停止させる。
【0037】
水平移動用モータ(62)を停止させた後に、制御盤(91)は、上下移動用モータ(53)を作動させ、支持部材(51)とともに電磁石(4)を下降させる。

左限リミッタスイッチ(95)により定められる電磁石(4)の下降位置は、容器(3)の内壁面の近傍である。そして、アーム部材(44)並びにアーム部材(44)下端に取付けられた電磁石(4)は、容器(3)内部に挿入される。
そして、下限リミッタスイッチ(94)が支持部材(51)の奥面壁(513)の下縁を検知すると、制御盤(91)は、上下移動用モータ(53)の動作を停止させる。上下移動用モータ(53)を停止させた後、制御盤(91)内に組み込まれたタイマが作動し、所定時間、電磁石(4)の位置を保つ。
【0038】
容器(3)は、回転環体(22)の回転とともに回転しているので、容器(3)内部に挿入された電磁石(4)は、容器(3)内部の金属部品に撹拌作用をもたらすこととなり、容器(3)内部の部品間で生ずるブリッジ現象を防止することができる。
図5に示すように、下限リミッタスイッチ(94)が支持部材(51)の奥面壁(513)の下縁を検知する前に、容器(3)内に挿入された電磁石(4)下端が容器(3)内に蓄えられた金属部品の集合に当接すると、電磁石取付機構(45)が圧縮され、電磁石取付機構(45)に据付けられたセンサ(454)が、電磁石取付機構(45)の突出部(453)を検知する。そして、センサ(454)は制御盤(91)へ信号を送る。制御盤(45)は、センサ(454)からの信号を受けて、電磁石(4)に電力を供給する。そして、電磁石(4)は容器(3)内部の金属部品を吸着する。
【0039】
図8は、水平方向の動作に対する制御を示す図であり、図8(a)は、図7(b)に示す状態の後の状態であって、電磁石(4)が上昇した後の状態を示し、図7(b)は、電磁石(4)が右方へ移動した後の状態を示す。
図7(b)に示す状態において、電磁石(4)が帯びた磁気によって、容器(3)内の金属部品が電磁石(4)に吸着される。制御盤(91)に組み込まれたタイマによって、所定時間、電磁石(4)が容器(3)内に保たれた後、制御盤(91)は、上下移動用モータ(53)を上記と反対方向に回転させ、支持部材(51)並びに電磁石(4)を上方に移動させる。
支持部材(51)が上昇し、支持部材(51)の上面壁(512)が上限リミッタスイッチ(93)が配される位置に達すると、上限リミッタスイッチ(93)は支持部材(51)の上面壁(512)を検知し、この検知信号を制御盤(91)へ送る。制御盤(91)は、この検知信号を受けて、上下移動用モータ(53)へ停止信号を送り、上下移動用モータ(53)の回転動作を停止させる。
【0040】
その後、制御盤(91)は、水平移動用モータ(62)へ信号を送り、水平移動用モータ(62)を回転させ、電磁石(4)を右方へ移動させる。水平レール部材(61)に沿って、スライダ(41)が移動し、スライダ(41)が右限リミッタスイッチ(96)の配置位置に達すると、右限リミッタスイッチ(96)が、スライダ(41)或いは平板(42)の位置を検知し、この検知信号を制御盤(91)へ送る。この検知信号を受けて、制御盤(91)は、水平移動用モータ(62)を停止させる。その後、電磁石(4)への電力供給を停止させる。
【0041】
右限リミッタスイッチ(96)によって定義される電磁石(4)の右限位置において、電磁石(4)と容器(3)上縁との間に部品受部(82)が配される。部品受部(82)は、容器(3)の外方に向けて延び、下方に傾斜した底面を有する。
電磁石(4)への電力供給が停止されると、電磁石(4)に吸着された金属部品は、部品受部(82)上に落下する。そして、部品受部(82)の傾斜した底面に沿って所定の場所まで運搬される。
上述の動作を繰り返して、金属部品取出装置(1)は、容器(3)内に収容された金属部品を適量ずつ取り出し、所定の場所まで適量の金属部品を運搬することができる。
尚、容器(3)に対する回転動作は、上記の金属部品運搬工程一周期に対して所定角度だけ移動するような間欠的動作であってもよく、金属部品取出装置(1)の動作中において連続的に容器(3)を回転させ続けてもよい。
【0042】
図9は、傾斜機構(7)を作動させるときの制御形態を示す図である。図9(a)は、傾斜機構(7)を作動させる前の状態を示し、図9(b)は、傾斜機構(7)を作動させた状態を示す。
ロードセル(92)からの計測信号が閾値より低い部品重量であることを示すということを制御盤(91)が判断すると、制御盤(91)は、回転基台(2)の回転環体(22)の回転動作を停止させる。そして、傾斜機構(7)を作動させる。
図2に示す例においては、傾斜機構(7)はシリンダであるが、この傾斜機構を作動させる場合には、制御盤(91)からコンプレッサ(70)へ信号が送られる。そして、コンプレッサ(70)はシリンダ(7)へ圧縮空気を送り、シリンダ(7)のロッドを伸長させ、容器(3)を傾斜させる。
容器(3)は底面縁の一点を軸として回転動作をし、傾斜する。そして、容器(3)内の少量の金属部品は、傾斜した容器の最下点位置に集まることとなる。シリンダ(7)の配置は、左限リミッタスイッチ(95)によって定められる電磁石(4)の下降位置と傾斜した容器の最下点位置が一致するように定められる。
その後、上述のように、電磁石(4)を下降させて容器(3)内の最下点位置に集められた部品が、電磁石(4)に吸着される。
このようにして、容器(3)内の部品が少量となったときでも、安定して適量の部品を取り出すことができる。
【0043】
図10は、傾斜機構(7)の応用形態を示す。
上記において、回転基台(2)上に載置された容器(3)のみを傾斜させる形態を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、回転基台(2)そのものを傾斜させる手段を採用可能である。
図10に示す例において、傾斜機構(7)は、レール(71)と回転基台(2)下面に配される車輪(72)から構成される。レール(71)は傾斜し、レール(71)と車輪(72)とを噛合わせ、回転基台(2)並びに容器(3)をレール(71)に沿って移動させることで、容器(3)並びに回転基台(2)は傾斜した状態で、金属部品取出装置(1)内に配置される。金属部品取出装置(1)内に配置された回転基台(2)は、楔等の手段(図示せず)でレール(71)上でその位置を固定される。
【0044】
図10に示すような傾斜機構を用いる場合、回転基台(2)上の容器(3)は傾斜した状態のまま回転する。そして、容器(3)内部の部品に対して容器(3)内の最下点位置に常に向かうように重力が働くこととなる。
レール(71)及び回転基台(2)を固定するための楔等の固定手段の配置は、左限リミッタスイッチ(95)によって定められる電磁石(4)の下降位置と傾斜した容器の最下点位置が一致するように定められる。
その後、上述のように、電磁石(4)を下降させて容器(3)内の最下点位置に集められた部品が、電磁石(4)に吸着される。
このようにして、容器(3)内の部品が少量となったときでも、安定して適量の部品を取り出すことができる。
このような操作の場合、ロードセル等を用いて容器(3)内部の部品重量の計測を要することがないので、より簡素・簡便な金属部品取出装置(1)を構築可能となる。
【0045】
尚、上記説明において、水平移動機構(6)を用いて、所定場所へ金属部品を運搬したが、他の方法を採用することも可能である。
例えば、上下移動機構(5)を動作させて、金属部品を吸着した電磁石(4)を上方へ移動させる。この後、電磁石(4)の下方へ、移動式の受け皿を配置する。そして、電磁石(4)への電力供給を停止させ、電磁石(4)に吸着された金属部品を受け皿上に落下させる。この後、受け皿を所望の場所へ移動させて、金属部品の運搬を完了することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、ねじやビスなどの小さな金属部品の取り出し並びに運搬に好適に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る金属部品取出装置の概略全体図である。
【図2】本発明に係る金属部品取出装置に用いられる回転基台を示す図である。
【図3】本発明に係る金属部品取出装置に用いられる上下移動機構を示す図である。
【図4】本発明に係る金属部品取出装置に用いられる上下移動機構を示す図である。
【図5】本発明に係る金属部品取出装置の電磁石取付機構を示す図である。
【図6】本発明に係る金属部品取出装置に用いられる水平移動機構を示す図である。
【図7】本発明に係る金属部品取出装置の上下動作の制御を示す図である。
【図8】本発明に係る金属部品取出装置の水平動作の制御を示す図である。
【図9】本発明に係る金属部品取出装置の傾斜動作の制御を示す図である。
【図10】本発明に係る金属部品取出装置の傾斜機構の他の形態を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
1・・・・・金属部品取出装置
2・・・・・回転基台
4・・・・・電磁石
44・・・・アーム部材
3・・・・・容器
5・・・・・上下移動機構
51・・・・支持部材
52・・・・上下レール部材
53・・・・上下移動用モータ
55・・・・チェーン
6・・・・・水平移動機構
61・・・・水平レール部材
62・・・・水平移動用モータ
64・・・・チェーン
65・・・・第2スプロケット
66・・・・駆動側プーリ
67・・・・タイミングベルト
68・・・・被駆動側プーリ
7・・・・・傾斜機構
82・・・・部品受部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端に開口部を備える一端有底円筒状の容器を回転させるとともに支持する回転基台と、
前記開口部を介して前記容器内外へ上下に電磁石を移動させる上下移動機構と、
前記電磁石を水平に移動させる水平移動機構からなる金属部品取出装置であって、
前記水平移動機構の第1位置において、前記上下移動機構は、前記容器内部に収容された金属部品を取り出すために前記電磁石を上下に移動させ、
該電磁石の上下移動が、前記回転基台の回転中心から離れた前記容器の内壁近傍で行われることを特徴とする金属部品取出装置。
【請求項2】
傾斜機構を更に備え、
該傾斜機構が、前記容器を傾斜させ、
前記第1位置における前記電磁石の下方への移動が、前記傾斜した容器の底部の最下点に向けて行われることを特徴とする請求項1記載の金属部品取出装置。
【請求項3】
金属部品を収容する一端有底円筒状の容器を回転させる段階と、
該容器の上端開口部から電磁石を降下させ、前記容器に収容された前記金属部品を吸着する段階と、
前記電磁石を上方に移動させる段階と、
該電磁石を水平方向に移動させる段階と、
該電磁石が所定位置に達したときに、電磁石への電力供給を停止する段階からなり、
前記電磁石の前記容器内部への降下が、水平方向の位置において一定位置で行われ、前記電磁石による金属部品の吸着が、前記容器の内壁近傍で行われることを特徴とする金属部品取出方法。
【請求項4】
前記容器を回転させる段階の前に、前記容器を傾斜させる段階を備え、
前記電磁石の前記容器内部への降下が、前記傾斜した容器底部の最下点に向けて行われることを特徴とする請求項3記載の金属部品取出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−91392(P2007−91392A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−281881(P2005−281881)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000140591)株式会社下西製作所 (21)
【Fターム(参考)】