説明

防霜ファンシステム

【課題】防霜ファンをより有効に活用し、また、電力の利用効率を向上することのできる技術を提供する。
【解決手段】防霜ファンシステムは、複数の防霜ファン2000と、複数の防霜ファンの動作を管理するための制御管理装置3000と、を備える。制御管理装置3000は、防霜ファン2000を防霜用として使用する防霜モードと、防霜ファン2000を発電機として使用する発電モードと、を含む複数の動作制御モードを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、畑の霜を防ぐための防霜ファンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
果樹園や茶畑等の畑では、冬季に畑に降りる霜が農作物に対して大きな被害を与える可能性がある。そこで、従来から、防霜ファンをほぼ10m四方の間隔で畑全体に設置して霜を防ぐ努力がなされていた。
【0003】
【特許文献1】特開2002−315451号公報
【0004】
しかし、防霜ファンの利用期間は年間で1〜2週間の稼動期間であり、この稼動期間を除けば全くの利用目的はなく、放置状態であった。また、畑などは風の通り道でもあり稼動していない際は、何時も風による空回転状態として放置されていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、防霜ファンをより有効に活用し、また、電力の利用効率を向上することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明による防霜ファンシステムは、
複数の防霜ファンと、
前記複数の防霜ファンの動作を管理するための制御管理装置と、
を備え、
前記制御管理装置は、前記防霜ファンを防霜用として使用する防霜モードと、前記防霜ファンを発電機として使用する発電モードと、を含む複数の動作制御モードを有する。
【0007】
このシステムによれば、防霜ファンを防霜用として使用しないときに、防霜ファンを発電機として使用できるので、防霜ファンをより有効に活用し、また、電力の利用効率を向上することができる。
【0008】
上記防霜ファンシステムにおいて、
各防霜ファンは、ブラシレスモータを有しており、
前記ブラシレスモータは、
m相(mは3以上の整数)の電磁コイル群を有するコイル列と、
複数の永久磁石を有する磁石列と、
前記m相の電磁コイル群のうちのn相(nは2以上m未満の整数)の電磁コイル群に対応付けられたn個の磁気センサであって、前記磁石列と前記コイル列の相対位置を検出するためのn個の磁気センサと、
前記n個の磁気センサのセンサ出力を利用して、前記コイル列への電力の供給を制御する駆動制御回路と、
前記n個の磁気センサのセンサ出力を利用して、前記コイル列からの電力の回生を制御する回生制御回路と、
を備え、
前記駆動制御回路は、
前記n個の磁気センサに対応付けられている前記n相の電磁コイル群のためのn組の駆動信号を、前記n個の磁気センサのそれぞれのセンサ出力を用いて生成するとともに、
前記n個の磁気センサに対応付けられていない(m−n)相の電磁コイル群のための(m−n)組の駆動信号を、前記n個の磁気センサのセンサ出力のうちの1つ以上をそれぞれ用いて生成し、
前記回生制御回路は、
前記n個の磁気センサに対応付けられている前記n相の電磁コイル群のためのn組の回生制御信号を、前記n個の磁気センサのそれぞれのセンサ出力を用いて生成するとともに、
前記n個の磁気センサに対応付けられていない(m−n)相の電磁コイル群のための(m−n)組の回生制御信号を、前記n個の磁気センサのセンサ出力のうちの1つ以上をそれぞれ用いて生成するようにしてもよい。
【0009】
この構成によれば、電磁コイル群の相数mよりも少ないn個の磁気センサを用いてm組の駆動信号及び回生制御信号を生成するので、各センサのセンサ出力に誤差やバラツキがある場合にも、各相の駆動信号の位相及び各相の回生制御信号の位相をより整合させることが可能である。この結果、より効率良く防霜と発電とを行うことが可能である。
【0010】
上記防霜ファンシステムは、さらに、
前記n個の磁気センサに対応付けられていない(m−n)相の電磁コイル群のための((m−n)個の模擬的なセンサ出力を、前記n個の磁気センサのセンサ出力のうちの1つ以上を変数として用いた演算に基づいて生成する模擬センサ出力生成部を備え、
前記駆動制御回路は、前記n個の磁気センサのセンサ出力と前記(m−n)個の模擬的なセンサ出力とを含むm個のセンサ出力に応じて、前記m相の電磁コイル群のためのm組の駆動信号を生成し、
前記回生制御回路は、前記n個の磁気センサのセンサ出力と前記(m−n)個の模擬的なセンサ出力とを含むm個のセンサ出力に応じて、前記m相の電磁コイル群のためのm組の回生制御信号を生成するようにしてもよい。
【0011】
この構成によれば、磁気センサが設けられていない電磁コイル群に対応した模擬的なセンサ出力が得られるので、これを用いてその電磁コイル群のための駆動信号を容易に生成することが可能である。
【0012】
前記模擬センサ出力生成部は、
前記n個の磁気センサに対応付けられていない(m−n)相の電磁コイル群のための(m−n)個の模擬的なセンサ出力を、前記n個の磁気センサのセンサ出力のうちの2つ以上を変数として用いた演算に基づいて生成するようにしてもよい。
【0013】
この構成では、1個のセンサ出力では模擬的なセンサ出力がきまらない場合でも、模擬的なセンサ出力を正しく生成することが可能である。
【0014】
前記模擬センサ出力生成部は、前記n個の磁気センサのセンサ出力を用いたリアルタイム演算によって前記模擬的なセンサ出力を生成するようにしてもよい。
【0015】
m相の電磁コイル群に対応するm個の磁気センサのセンサ出力の相互の関係が三角関数などの比較的簡単な関数で与えられる場合には、リアルタイム演算を用いて模擬的なセンサ出力を容易に生成することが可能である。
【0016】
あるいは、前記模擬センサ出力生成部は、前記n個の磁気センサのセンサ出力を入力値とし前記模擬的なセンサ出力を出力値とするルックアップテーブルを用いて前記模擬的なセンサ出力を生成するようにしてもよい。
【0017】
この構成では、m相の電磁コイル群に対応するm個の磁気センサのセンサ出力の相互の関係が簡単な関数で与えられるか否かに拘わらず、模擬的なセンサ出力を容易に生成することが可能である。
【0018】
また、前記整数mは3であり、前記整数nは2であるものとしてもよい。
【0019】
この構成では、3相ブラシレスモータに2個の磁気センサのみを設ければ良いので、従来に比べて磁気センサの個数を2/3に減らすことができる。
【0020】
さらに、前記磁気センサは、前記磁石列と前記コイル列の相対位置に応じてアナログ的変化を示す出力信号を出力するセンサであるものとしてもよい。
【0021】
この場合には、このセンサ出力のアナログ的変化を利用して回生制御信号を生成することが可能である。
【0022】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、防霜ファンシステム、ブラシレス発電機、ブラシレスモータ、それらの制御方法(又は駆動方法)、それらを用いたアクチュエータ等の形態で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、本発明の実施の形態を以下の順序で説明する。
A.防霜システムの構成と動作:
B.モータの構成と動作の概要:
C.駆動制御回路の構成:
D.回生制御回路の構成:
E.他の実施例:
F.変形例:
【0024】
A.防霜システムの構成と動作:
図1は、本発明の一実施例としての防霜ファンと防霜ファンシステムの構成を示す説明図である。図1(A)に示すように、防霜ファン2000は、ブラシレスモータ2100と、ファン羽根2200と、ブラシレスモータ2100を支える支柱2300とで構成されている。図1(B)に示すように、防霜ファンシステムは、複数の防霜ファン20000が電力線PLと、通信線CLとで接続されたものである。通信線CLには、複数の防霜ファン2000の動作を管理するための制御管理装置3000が接続されている。
【0025】
制御管理装置3000は、コンピュータで実現することが可能である。制御管理装置3000は、各防霜ファン2000に動作指令値(「設定指令値」とも呼ぶ)を送信することによって、各防霜ファン2000を送風機として動作させたり、又は、各防霜ファン2000を発電機として動作させたりすることが可能である。各防霜ファン2000を送風機として動作させるモードを「送風機設定モード」又は「防霜モード」と呼び、各防霜ファン2000を発電機として動作させるモードを「発電機設定モード」又は「発電モード」と呼ぶ。防霜ファンシステムの動作モードとしては、この他に、防霜ファン2000を停止させる停止設定モード(「停止モード」とも呼ぶ)も存在する。なお、停止設定モードでは、防霜ファン2000は空転状態にある。
【0026】
図2は、防霜ファンシステムの制御動作を示すフローチャートである。ステップS100では、制御管理装置3000の操作者が、防霜ファンシステムのモードを設定する。設定されたモードが前回設定したモードから変更されていないときには、ステップS110からステップS100に戻り、次のモード設定を待つ。一方、モードが変更されている場合には、ステップS120,S130において、制御管理装置3000は、設定されたモードが、送風機設定モードと、発電機設定モードと、停止設定モードのいずれであるかが判定される。設定されたモードが稼働モード(送風機設定モード又は発電機設定モード)である場合には、ステップS170において、制御管理装置3000から各防霜ファン2000にそのモードの動作指令値が通信線CLを介して送信され、各防霜ファン2000内のメモリ又はレジスタに設定される。この結果、各防霜ファン2000は、設定されたモードでの動作を開始する。なお、送風機設定モードの動作指令値は、送風機の回転数や駆動電圧値を指定する指令値を含むことが好ましい。また、発電機設定モードの動作指令値は、回生量を指定する指令値を含むことが好ましい。このような動作指令値を使用すれば、動作モードの区別のみでなく、動作の程度も指定することが可能である。ステップS170の実行後は、ステップS100に戻り、次のモード設定の入力を待機する。
【0027】
一方、設定されたモードが停止設定モードである場合には、ステップS180において、制御管理装置3000から各防霜ファン2000に動作停止の指令値が通信線CLを介して送信される。ステップS180が終了すると、全体の制御も終了する。
【0028】
このように、本実施例の防霜ファンシステムでは、防霜ファン2000を送風用(防霜用)としても使用でき、また、送風の必要が無い場合には防霜ファン2000を発電機として使用することができる。従って、防霜ファンをより有効に活用することができる。
【0029】
なお、上記の説明では複数の防霜ファンにすべて同一の動作モードを設定するものとしたが、この代わりに、個々の防霜ファン毎に個別に動作モードを設定するようにしてもよい。この場合には、個々の防霜ファンに識別子(ID)を予め割り当てて制御管理装置3000に登録するとともに、この識別子を各防霜ファンの内部(例えば不揮発性メモリ)に予め登録しておくことが好ましい。この構成では、個々の防霜ファン毎に動作モードを指定できるので、より効率的に個々の防霜ファンを利用することが可能である。
【0030】
B.モータの構成と動作の概要:
図3(A)〜(C)は、本発明の一実施例の防霜ファンで利用されるブラシレスモータのモータ本体の構成を示す断面図である。このブラシレスモータは、電動機としての機能と、発電機としての機能の両方を有している。
【0031】
このモータ本体100は、外形がそれぞれ略円盤状のステータ部10及びロータ部30を有している。ステータ部10(図3(C))には、回路基板120上に3相を構成する3組の電磁コイル11〜13と、2つの磁気センサ40A,40Bとが設けられている。第1の磁気センサ40Aは1組目のコイル11用のセンサであり、第2の磁気センサ40Bは2組目のコイル12用のセンサである。なお、3組目のコイル13用の磁気センサは実装されていない。以下では、3組の電磁コイル11〜13を「A相コイル11」、「B相コイル12」、「C相コイル13」と呼ぶ。また、磁気センサ40A,40Bを「A相センサ40A」、「B相センサ40B」と呼ぶ。
【0032】
ロータ部30(図3(B))には、4つの磁石32が設けられており、ロータ部30の中心軸が回転軸112を構成している。これらの磁石32の磁化方向は図3(B)において紙面と垂直な方向であり、これは図3(A)における上下方向に相当する。
【0033】
図4(A)〜(D)は、モータの動作時における磁石列とコイル列の位置関係を示す説明図である。図4(A)に示すように、磁石32は一定の磁極ピッチPmで配置されており、隣接する磁石同士が逆方向に磁化されている。また、1つの相のコイル群を構成する2つコイルは、一定のピッチPcで配置されており、常に同じ方向に励磁される。隣接する相のコイル同士は、同相コイル間のピッチPcの1/3だけ離れている。同相コイル間のピッチPcは、磁極ピッチPmの2倍に等しい。磁極ピッチPmは、電気角でπに相当する。なお、電気角の2πは、駆動信号の位相が2πだけ変化したときに移動する機械的な角度又は距離に対応づけられる。本実施例では、駆動信号の位相が2πだけ変化すると、ロータ部30が磁極ピッチPmの2倍だけ移動する。
【0034】
図4(A)は、位相が0又は2πにおける状態を示している。また、図4(B)〜(D)は、位相がπ/2,π,3π/2の時点の状態をそれぞれ示している。なお、図4(A),(C)でA相コイル11のハッチングが省略されているのは、これらのタイミングでA相コイル11の駆動信号の極性が反転する(すなわち励磁方向が反転する)からである。
【0035】
図5は、モータの正転時のセンサ出力と駆動信号の例を示す説明図である。図5(A)は、A相センサ40Aのセンサ出力SSAと、B相センサ40Bのセンサ出力SSBとを示している。なお、センサ40A,40Bとしては、アナログ出力を有するホールICセンサを利用することができる。図5(B)は、2つのセンサ出力SSA,SSBから合成される模擬的なC相センサ出力SSC(「C相センサ模擬信号SSC」とも呼ぶ)を示している。C相センサ模擬信号SSCの生成方法については後述する。3つのセンサ出力SSA,SSB,SSCは、位相が順次2π/3ずつずれたきれいな3相信号を構成していることが理解できる。
【0036】
図5(C)は、これらの3相のセンサ出力SSA,SSB,SSCを利用したPWM制御でそれぞれ生成される3相の駆動信号の例を示している。A相の駆動信号DRVA1,DRVA2は、A相センサ出力SSAと相似形状の実効電圧を有する。なお、A相の第1の駆動信号DRVA1は、センサ出力SSAが正のときにのみパルスを発生する信号であり、第2の駆動信号DRVA2はセンサ出力SSAが正のときにのみパルスを発生する信号であるが、図5(C)ではこれらを合わせて記載している。また、便宜上、第2の駆動信号DRVA2を負側のパルスとして描いている。他の相も同様である。
【0037】
図6は、モータの逆転時のセンサ出力と駆動信号の例を示す説明図である。図5と同様に、逆転時にも、C相センサ出力SSCが他の2相のセンサ出力SSA,SSBから合成され、これらの3つのセンサ出力SSA,SSB,SSCを利用して3相の駆動信号が生成される。
【0038】
コイル11〜13から電力を回生する際にも、同様に、C相センサ出力SSCが他の2相のセンサ出力SSA,SSBから合成され、これらの3つのセンサ出力SSA,SSB,SSCを利用して3相の回生制御信号が生成される。
【0039】
図7は、本実施例のブラシレスモータのモータ制御回路の構成を示すブロック図である。モータ制御回路1000は、駆動制御回路200と、回生制御回路300と、CPU400とを備えている。CPU400は、制御管理装置3000から受けた動作指令値に応じて、各制御回路200,300内の各種のレジスタに値を設定したり、各制御回路200,300内に指令値を指示したりする機能を有している。以下では、駆動制御回路200と回生制御回路300のそれぞれの構成と動作について順次説明する。
【0040】
C.駆動制御回路の構成:
図8(A)は、本実施例のブラシレスモータの駆動制御回路の構成を示すブロック図である。駆動制御回路200は、C相センサ信号生成部230と、駆動信号生成部240と、3相のドライバ回路250A〜250Cと、AD変換部260を備えている。2つのセンサ出力SSA,SSBは、AD変換部260でデジタル多値信号に変換されて、C相センサ信号生成部230に供給される。C相センサ信号生成部230は、図5(B)に示したC相センサ模擬信号SSCを生成する。C相センサ信号生成部230の内部構成については後述する。駆動信号生成部240は、3相のセンサ出力SSA,SSB,SSCに基づいて、3相の駆動信号(図5(C))を生成する。ドライバ回路250A〜250Cは、これらの3相の駆動信号に従ってモータ本体100内の3相の電磁コイル群11〜13を駆動する。
【0041】
図8(B)は、磁気センサ40Aの内部構成の一例を示している。B相用の磁気センサ40Bもこれと同じ構成を有している。この磁気センサ40Aは、ホール素子42と、バイアス調整部44と、ゲイン調整部46とを有している。ホール素子42は、磁束密度Xを測定する。バイアス調整部44はホール素子42の出力Xにバイアス値bを加算し、ゲイン調整部46はゲイン値aを乗ずる。磁気センサ40Aの出力SSA(=Y)は、例えば以下の式(1)又は式(2)で与えられる。
【0042】
Y=a・X+b …(1)
Y=a(X+b) …(2)
【0043】
磁気センサ40Aのゲイン値aとバイアス値bは、CPU400によって磁気センサ40A内に設定される。ゲイン値aとバイアス値bを適切な値に設定することによって、センサ出力SSAを好ましい波形形状に較正することが可能である。B相センサ40Bについても同様である。
【0044】
本実施例では、3相のコイル群のうちの2相(A相とB相)についてのみ磁気センサを実装し、他の1相(C相)については磁気センサを省略している。各磁気センサは、ゲインとバイアス(「オフセット」とも呼ぶ)を適切に設定すれば、好ましい波形形状のセンサ出力を得ることができる。しかしながら、適切な波形形状のセンサ出力をそれぞれ得るためには、それぞれのセンサ出力を実測してゲインとバイアスとを適切な値に設定するための作業(キャリブレーション)が必要になる。本実施例では、3相のうちの2相についてのみ磁気センサを実装しているので、1相分での磁気センサに関するキャリブレーションを省略できるという利点がある。また、実装されている2相の磁気センサの出力SSA,SSBを正しくキャリブレーションすれば、3相の駆動信号の相互の位相を容易に整合させることができるという利点もある。さらに、コストの点からも、センサの数は少ないほど好ましい。
【0045】
図9は、C相センサ信号生成部230の内部構成を示すブロック図である。C相センサ信号生成部230は、5つのラッチ回路231〜235と、演算回路236とを備えている。第1と第2のラッチ回路231,232は、クロック信号CLKの立ち上がりエッジに同期してA相センサ出力SSAとB相センサ出力SSBとをそれぞれラッチする。第3と第4のラッチ回路233,234は、クロック信号CLKの立ち下がりエッジに同期して、第1と第2のラッチ回路231,232の出力をそれぞれラッチする。演算回路236は、第1と第2のラッチ回路231,232の出力の両方を用いた演算をリアルタイムに実行することによって、C相センサ出力SSCを生成する。第5のラッチ回路235は、演算回路236から出力されたセンサ出力SSCを、クロック信号CLKの立ち下がりエッジに同期してラッチする。この結果、3つのラッチ回路223〜235からは、同じタイミングで3相のセンサ出力SSA,SSB,SSCが出力される。
【0046】
図9(B)は、演算回路236で実行される演算の内容を示している。この表には、角度θ(位相)に応じた各相のセンサ出力SSA,SSB,SSCの値が示されている。本実施例では、各センサ出力のレンジは、0〜VDD(VDDは電源電圧)の間であるものと仮定している。このとき、C相センサ出力SSCは、以下の演算式に従って演算することができる。
SSC = - (SSB - (VDD/2)) - (SSA - (VDD/2)) + (VDD/2)
= - SSB - SSA + 3/2・(VDD)
【0047】
なお、演算回路236の代わりに、A相とB相のセンサ出力SSA,SSBを入力値とし、C相センサ出力SSCを出力値とするルックアップテーブルを利用することも可能である。このルックアップテーブルは、上記の演算結果を予め格納しているものであり、演算に基づいてC相センサ出力SSCを得るものである点では演算回路236と同じである。なお、上記の演算を行う回路は、アナログ回路とデジタル回路のいずれでも実現可能である。
【0048】
図10(A)は、ドライバ回路の内部構成を示している。各相のドライバ回路250A〜250Cは、それぞれH型ブリッジ回路を構成している。例えば、A相のドライバ回路250Aは、駆動信号DRVA1,DRVA2に応じてA相コイル11を駆動する。符号IA1,IA2が付された矢印は、駆動信号DRVA1,DRVA2によって流れる電流方向をそれぞれ示している。他の相も同様である。図10(B)は、3相のコイル群11〜13をスター結線して、トランジスタの数を減らしたドライバ回路250の例を示している。
【0049】
図11は、駆動信号生成部240(図8(A))の内部構成と動作を示す説明図である。なお、ここでは図示の便宜上、A相用の回路要素のみを示しているが、B相用とC相用にも同じ回路要素が設けられている。
【0050】
駆動信号生成部240は、基本クロック生成回路510と、1/N分周器520と、PWM部530と、正逆方向指示値レジスタ540と、乗算器550と、符号化部560と、電圧指令値レジスタ580と、励磁区間設定部590とを備えている。
【0051】
基本クロック生成回路510は、所定の周波数を有するクロック信号PCLを発生する回路であり、例えばPLL回路で構成される。分周器520は、このクロック信号PCLの1/Nの周波数を有するクロック信号SDCを発生する。Nの値は所定の一定値に設定される。このNの値は、予めCPU400によって分周器520に設定される。PWM部530は、クロック信号PCL,SDCと、乗算器550から供給される乗算値Maと、正逆方向指示値レジスタ540から供給される正逆方向指示値RIと、符号化部560から供給される正負符号信号Paと、励磁区間設定部590から供給される励磁区間信号Eaとに応じて、A相駆動信号DRVA1,DRVA2(図5(C))を生成する。この動作については後述する。
【0052】
正逆方向指示値レジスタ540内には、モータの回転方向を示す値RIがCPU400によって設定される。本実施例では、正逆方向指示値RIがLレベルのときにモータが正転し、Hレベルのときに逆転する。PWM部530に供給される他の信号Ma,Pa,Eaは以下のように決定される。
【0053】
磁気センサ40Aの出力SSAは、符号化部560に供給される。符号化部560は、センサ出力SSAのレンジを変換するとともに、センサ出力の中位点の値を0に設定する。この結果、符号化部560で生成されるセンサ出力値Xaは、正側の所定の範囲(例えば+127〜0)と負側の所定の範囲(例えば0〜−128)の値を取る。但し、符号化部560から乗算器550に供給されるのは、センサ出力値Xaの絶対値であり、その正負符号は正負符号信号PaとしてPWM部530に供給される。
【0054】
電圧指令値レジスタ580は、CPU400によって設定された電圧指令値Yaを格納する。この電圧指令値Yaは、後述する励磁区間信号Eaとともに、モータの印加電圧を設定する値として機能するものであり、例えば0〜1.0の値を取る。仮に、非励磁区間を設けずに全区間を励磁区間とするように励磁区間信号Eaを設定した場合には、Ya=0は印加電圧をゼロとすることを意味し、Ya=1.0は印加電圧を最大値とすることを意味する。乗算器550は、符号化部560から出力されたセンサ出力値Xaと、電圧指令値Yaとを乗算して整数化し、その乗算値MaをPWM部530に供給する。
【0055】
図11(B)〜11(E)は、乗算値Maが種々の値を取る場合におけるPWM部530の動作を示している。ここでは、全期間が励磁区間であり非励磁区間が無いものと仮定している。PWM部530は、クロック信号SDCの1周期の間に、デューティがMa/Nであるパルスを1つ発生させる回路である。すなわち、図11(B)〜11(E)に示すように、乗算値Maが増加するに従って、A相駆動信号DRVA1,DRVA2のパルスのデューティが増加する。なお、第1の駆動信号DRVA1は、センサ出力SSAが正のときにのみパルスを発生する信号であり、第2の駆動信号DRVA2はセンサ出力SSAが正のときにのみパルスを発生する信号であるが、図11(B)〜11(E)ではこれらを合わせて記載している。また、便宜上、第2の駆動信号DRVA2を負側のパルスとして描いている。
【0056】
図12(A)〜12(C)は、センサ出力の波形とPWM部530で生成される駆動信号の波形の対応関係を示す説明図である。図中、「Hiz」は電磁コイルを未励磁状態としたハイインピーダンス状態を意味している。図11で説明したように、A相駆動信号DRVA1,DRVA2はセンサ出力SSAのアナログ波形を利用したPWM制御によって生成される。従って、これらのA相駆動信号DRVA1,DRVA2を用いて、各コイルに、センサ出力SSAの変化と対応するレベル変化を示す実効電圧を供給することが可能である。
【0057】
PWM部530は、さらに、励磁区間設定部590から供給される励磁区間信号Eaで示される励磁区間のみに駆動信号を出力し、励磁区間以外の区間(非励磁区間)では駆動信号を出力しないように構成されている。図12(C)は、励磁区間信号Eaによって励磁区間EPと非励磁区間NEPを設定した場合の駆動信号波形を示している。励磁区間EPでは図12(B)の駆動信号パルスがそのまま発生し、非励磁区間NEPでは駆動信号パルスが発生しない。このように、励磁区間EPと非励磁区間NEPを設定するようにすれば、センサ出力の中位点近傍(これは逆起電力波形の中位点近傍に相当する)においてコイルを電圧を印加しないので、モータの効率をさらに向上させることが可能である。なお、励磁区間EPは、センサ出力波形(これは逆起電力波形にほぼ等しい)のピークを中心とする対称な区間に設定されることが好ましく、非励磁区間NEPは、センサ出力波形の中位点(中心点)を中心とする対称な区間に設定されることが好ましい。
【0058】
なお、前述したように、電圧指令値Yaを1未満の値に設定すれば、乗算値Maが電圧指令値Yaに比例して小さくなる。従って、電圧指令値Yaによっても、実効的な印加電圧を調整することが可能である。
【0059】
上述の説明から理解できるように、本実施例のモータでは、電圧指令値Yaと、励磁区間信号Eaとの両方を利用して印加電圧を調整することが可能である。望ましい印加電圧と、電圧指令値Ya及び励磁区間信号Eaとの関係は、予め駆動制御回路200(図8(A))内のメモリにテーブルとして格納されていることが望ましい。こうすれば、駆動制御回路200が、外部から望ましい印加電圧の目標値を受信したときに、CPU400がその目標値に応じて、電圧指令値Yaと、励磁区間信号Eaとを駆動信号生成部240に設定することが可能である。なお、印加電圧の調整には、電圧指令値Yaと、励磁区間信号Eaの両方を利用する必要はなく、いずれか一方のみを利用するようにしてもよい。
【0060】
図13は、PWM部530(図11)の内部構成の一例を示すブロック図である。PWM部530は、カウンタ531と、EXOR回路533と、駆動波形形成部535とを備えている。これらは以下のように動作する。
【0061】
図14は、モータ正転時のPWM部530の動作を示すタイミングチャートである。この図には、2つのクロック信号PCL,SDCと、正逆方向指示値RIと、励磁区間信号Eaと、乗算値Maと、正負符号信号Paと、カウンタ531内のカウント値CM1と、カウンタ531の出力S1と、EXOR回路533の出力S2と、駆動波形形成部535の出力信号DRVA1,DRVA2とが示されている。カウンタ531は、クロック信号SDCの1期間毎に、クロック信号PCLに同期してカウント値CM1を0までダウンカウントする動作を繰り返す。カウント値CM1の初期値は乗算値Maに設定される。なお、図14では、図示の便宜上、乗算値Maとして負の値も描かれているが、カウンタ531で使用されるのはその絶対値|Ma|である。カウンタ531の出力S1は、カウント値CM1が0で無い場合にはHレベルに設定され、カウント値CM1が0になるとLレベルに立ち下がる。
【0062】
EXOR回路533は、正負符号信号Paと正逆方向指示値RIとの排他的論理和を示す信号S2を出力する。モータが正転する場合には、正逆方向指示値RIがLレベルである。従って、EXOR回路533の出力S2は、正負符号信号Paと同じ信号となる。駆動波形形成部535は、カウンタ531の出力S1と、EXOR回路533の出力S2から、駆動信号DRVA1,DRVA2を生成する。すなわち、カウンタ531の出力S1のうち、EXOR回路533の出力S2がLレベルの期間の信号を第1の駆動信号DRVA1として出力し、出力S2がHレベルの期間の信号を第2の駆動信号DRVA2として出力する。なお、図14の右端部付近では、励磁区間信号EaがLレベルに立ち下がり、これによって非励磁区間NEPが設定されている。従って、この非励磁区間NEPでは、いずれの駆動信号DRVA1,DRVA2も出力されず、ハイインピーダンス状態に維持される。
【0063】
図15は、モータ逆転時のPWM部530の動作を示すタイミングチャートである。モータ逆転時には、正逆方向指示値RIがHレベルに設定される。この結果、2つの駆動信号DRVA1,DRVA2が図14から入れ替わっており、この結果、モータが逆転することが理解できる。
【0064】
図16は、励磁区間設定部590の内部構成と動作を示す説明図である。励磁区間設定部590は、電子可変抵抗器592と、電圧比較器594,596と、OR回路598とを有している。電子可変抵抗器592の抵抗値Rvは、CPU400によって設定される。電子可変抵抗器592の両端の電圧V1,V2は、電圧比較器594,596の一方の入力端子に与えられている。電圧比較器594,596の他方の入力端子には、センサ出力SSAが供給されている。電圧比較器594,596の出力信号Sp,Snは、OR回路598に入力されている。OR回路598の出力は、励磁区間と非励磁区間とを区別するための励磁区間信号Eaである。
【0065】
図16(B)は、励磁区間設定部590の動作を示している。電子可変抵抗器592の両端電圧V1,V2は、抵抗値Rvを調整することによって変更される。具体的には、両端電圧V1,V2は、電圧レンジの中央値(=VDD/2)からの差分が等しい値に設定される。センサ出力SSAが第1の電圧V1よりも高い場合には第1の電圧比較器594の出力SpがHレベルとなり、一方、センサ出力SSAが第2の電圧V2よりも低い場合には第2の電圧比較器596の出力SnがHレベルとなる。励磁区間信号Eaは、これらの出力信号Sp,Snの論理和を取った信号である。従って、図16(B)の下部に示すように、励磁区間信号Eaは、励磁区間EPと非励磁区間NEPとを示す信号として使用することができる。励磁区間EPと非励磁区間NEPの設定は、CPU400が可変抵抗値Rvを調整することによって行なわれる。
【0066】
以上のように、第1実施例のブラシレスモータでは、3相のコイル群のうちの2相についてのみ磁気センサを実装し、他の1相については磁気センサを省略しているので、センサのキャリブレーションに関する作業負担を軽減することができ、また、3相の駆動信号の位相を容易に整合させることができる。さらに、低コストで効率の良いモータを提供することができる。
【0067】
D.回生制御回路の構成:
図17(A)は、本実施例のブラシレスモータの回生制御回路の構成を示すブロック図である。回生制御回路300は、C相センサ信号生成部330と、回生制御信号生成部340と、3相の整流回路350A〜350Cと、AD変換部360と、電力出力部380とを備えている。2つのセンサ出力SSA,SSBは、AD変換部360でデジタル多値信号に変換されて、C相センサ信号生成部330に供給される。C相センサ信号生成部330は、図5(B)に示したC相センサ模擬信号SSCを生成する。C相センサ信号生成部330の内部構成は、図9(A)で説明したものと同じである。なお、C相センサ信号生成部を1つだけ設けて、2つの制御回路200,300で共用することも可能である。この場合には、AD変換部260,360も1つ設ければ良い。
【0068】
回生制御信号生成部340は、3相のセンサ出力SSA,SSB,SSCに基づいて、3相の回生制御信号(RECAp,RECAn),(RECBp,RECBn),(RECCp,RECCn)を生成する。整流回路350A〜350Cは、これらの3相の回生制御信号に従ってモータ本体100内の3相の電磁コイル群11〜13から電力を回生する。回生された電力は、電力出力部380を介して外部に供給される。
【0069】
図18(A)は、整流回路の内部構成を示している。各相の整流回路350A〜350Cは、H型ブリッジ回路に整流素子(ダイオード)が付加された全波整流回路としてそれぞれ構成されている。例えば、A相の整流回路350Aは、回生制御信号RECAp,RECAnに応じてA相コイル11から電力を回生する。3相のコイル11〜13から回生された電力は、回生電力信号RECp,RECnとして電力出力部380から外部に出力される。図18(B)は、3相のコイル群11〜13をスター結線して、トランジスタとダイオードの数を減らした整流回路350の例を示している。
【0070】
図19は、回生制御信号生成部340の内部構成と動作を示す説明図である。回生制御信号生成部340は、電子可変抵抗器342と、電圧比較器344,346とを有している。なお、この回生制御信号生成部340は、図16に示した励磁区間設定部590の構成から、OR回路598を省略したものと同じ構成を有している。電子可変抵抗器342の抵抗値Rvは、CPU400によって設定される。電子可変抵抗器342の両端の電圧V1,V2は、電圧比較器344,346の一方の入力端子に与えられている。電圧比較器344,346の他方の入力端子には、センサ出力SSAが供給されている。この結果、電圧比較器344,346の出力信号RECAp,RECAnは、図18に示した整流回路350Aのトランジスタの制御端子に供給される。なお、図19では、A相用の回路のみを示したが、B相とC相についても同一の回路が設けられている。
【0071】
図19(B)は、回生制御信号生成部340の動作を示している。電子可変抵抗器342の両端電圧V1,V2は、抵抗値Rvを調整することによって変更される。具体的には、両端電圧V1,V2は、電圧レンジの中央値(=VDD/2)からの差分が等しい値に設定される。センサ出力SSAが第1の電圧V1よりも高い場合には第1の電圧比較器344の出力RECApがHレベルとなり、一方、センサ出力SSAが第2の電圧V2よりも低い場合には第2の電圧比較器346の出力RECAnがHレベルとなる。これらの回生制御信号RECAp,RECAnがHレベルとなる区間は、CPU400が可変抵抗値Rvを調整することによって調整される。
【0072】
なお、回生制御信号RECAp,RECAnがHレベルとなる区間は、センサ出力波形(これは逆起電力波形にほぼ等しい)のピークを中心とする対称な区間に設定されることが好ましい。このようにすれば、コイルから電力を効率よく回収することが可能である。
【0073】
図20は、回生時のセンサ出力と回生電力の例を示す説明図である。図20(A)は、A相センサ40Aのセンサ出力SSAと、B相センサ40Bのセンサ出力SSBとを示しており、図20(B)は、2つのセンサ出力SSA,SSBから合成されるC相センサ模擬信号SSCを示している。
【0074】
図20(A)には、回生制御信号生成部340に設定された両端電圧V1,V2(図19(B))の値が示されている。図20(C)は、これらの両端電圧V1,V2の設定に応じて回生される回生電力を示している。これらの3相分の回生電力信号を合成したものが、回生電力信号RECp,RECn(図18)として出力される。
【0075】
以上のように、本実施例の回生制御回路では、実装されている2相の磁気センサの出力から他の1相の磁気センサの出力を生成し、これらの3相のセンサ出力を用いて回生制御信号を生成しているので、3相の回生制御信号の位相を容易に整合させることができる。この結果、回生を効率良く実行することが可能である。
【0076】
E.他の実施例:
図21は、本発明の他の実施例としてのブラシレスモータのモータ本体の構成を示す断面図である。このモータ本体100aのステータ部10及びロータ部30は、外形がそれぞれ略円筒状に形成されており、ステータ部10の外周をロータ部30が周回する。
【0077】
この例からも理解できるように、本発明のブラシレスモータの機械的形状は、種々の形状を採用することが可能である。また、本発明は、3相4極モータに限らず、任意の相数及び極数のブラシレスモータに適用可能である。
【0078】
図22は、本発明の更に他の実施例としての4相ブラシレスモータにおける模擬的センサ出力の演算方法を示している。なお、4相ブラシレスモータの機械的構造は省略する。4相ブラシレスモータでは、C相センサ出力SSCとD相センサ出力SSDとが、以下の演算式に従って演算される。
SSC = - (SSA - (VDD/2)) + (VDD/2)
= - SSA + VDD
SSD = - (SSB - (VDD/2)) + (VDD/2)
= - SSB + VDD
【0079】
なお、通常は、m相(mは3以上の整数)の電磁コイル群のためのm個の磁気センサ出力の相互関係は、何らかの関数(三角関数など)によって表わされる。従って、m相のうちのn個(nは2以上m未満の整数)の相のみに磁気センサを実装するようにしても、磁気センサが実装されていない(m−n)相の模擬センサ出力を、n相の磁気センサの出力を変数とした演算によって求めることが可能である。なお、(m−n)相の模擬センサ出力は、n個のセンサ出力のうちの1つ以上を用いてそれぞれ生成することが好ましく、2つ以上を用いて生成することがさらに好ましい。例えば、上記第1実施例のような3相モータの場合には、2相のセンサ出力のうちの一方だけでは残りの相のセンサ出力が一意に決まらず、2つのセンサ出力の両方を用いて初めて残りの相のセンサ出力を決定することが可能である。
【0080】
このように、本発明は、m相(mは3以上の整数)の電磁コイル群のうちのn相(nは2以上m未満の整数)の電磁コイル群に対応してn個の磁気センサを実装し、これらのn相の磁気センサの出力からm相のコイル群の回生制御信号(又は駆動信号)を生成するものに適用可能である。また、本発明は、実装されていない(m−n)相の電磁コイル群のための(m−n)組の回生制御信号(又は駆動信号)を、実装されているn個の磁気センサのセンサ出力のうちの1つ以上をそれぞれ用いて生成するものに適用可能である。
【0081】
F.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0082】
F1.変形例1:
上記実施例ではアナログ磁気センサを利用していたが、アナログ磁気センサの代わりに、多値のアナログ的出力を有するデジタル磁気センサを使用してもよい。アナログ磁気センサも多値出力を有するデジタル磁気センサも、アナログ的変化を示す出力信号を有する点で共通している。なお、本明細書において、「アナログ的変化を示す出力信号」とは、オン/オフの2値出力ではなく、3値以上の多数レベルを有するデジタル出力信号と、アナログ出力信号との両方を包含する広い意味で使用されている。
【0083】
F2.変形例2:
PWM回路としては、図11に示した回路以外の種々の回路構成を採用することが可能である。例えば、センサ出力と基準三角波とを比較することによってPWM制御を行う回路を利用してもよい。また、PWM制御以外の方法で駆動信号を生成するようにしてもよい。また、PWM制御以外の方法で駆動信号を生成する回路を採用してもよい。例えば、センサ出力を増幅してアナログ駆動信号を生成する回路を採用することも可能である。
【0084】
F3.変形例3:
上記実施例では、磁気センサが実装されていない相に関する模擬センサ出力を生成し、これを用いてその相の回生制御信号(又は駆動信号)を生成していたが、これ以外の方法で磁気センサが実装されていない相の回生制御信号(又は駆動信号)を生成するようにしてもよい。例えば、磁気センサが実装されているn相の回生制御信号(又は駆動信号)を生成し、これらのn相の回生制御信号(又は駆動信号)を用いて、磁気センサが実装されていない(m−n)相の回生制御信号(又は駆動信号)を生成するようにしてもよい。
【0085】
F4.変形例4:
本発明のシステムは、駆動と発電(回生)を一つの電動モータで行なえることにより、電動車輌、水力発電機(上流:駆動/下流:発電)としても利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の一実施例としての防霜ファンと防霜ファンシステムの構成を示す説明図である。
【図2】防霜ファンシステムの制御動作を示すフローチャートである。
【図3】実施例におけるブラシレスモータのモータ本体の構成を示す断面図である。
【図4】モータの動作時における磁石列とコイル列の位置関係を示す説明図である。
【図5】モータの正転時のセンサ出力と駆動信号の例を示す説明図である。
【図6】モータの逆転時のセンサ出力と駆動信号の例を示す説明図である。
【図7】本実施例のブラシレスモータのモータ制御回路の構成を示すブロック図である。
【図8】本実施例のブラシレスモータの駆動制御回路の構成を示すブロック図である。
【図9】C相センサ信号生成部230の内部構成を示すブロック図である。
【図10】ドライバ回路の内部構成を示す図である。
【図11】駆動信号生成部の内部構成と動作を示す説明図である。
【図12】センサ出力波形と駆動信号波形の対応関係を示す説明図である。
【図13】PWM部の内部構成を示すブロック図である。
【図14】モータ正転時のPWM部の動作を示すタイミングチャートである。
【図15】モータ逆転時のPWM部の動作を示すタイミングチャートである。
【図16】励磁区間設定部の内部構成と動作を示す説明図である。
【図17】本実施例のブラシレスモータの回生制御回路の構成を示すブロック図である。
【図18】整流回路の内部構成を示す図である。
【図19】回生制御信号生成部340の内部構成と動作を示す説明図である。
【図20】回生時のセンサ出力と回生電力の例を示す説明図である。
【図21】モータ本体の他の構成を示す断面図である。
【図22】本発明の他の実施例としての4相ブラシレスモータにおける模擬的センサ出力の演算方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0087】
10…ステータ部
11〜13…電磁コイル
30…ロータ部
32…磁石
40A,40B…磁気センサ
42…ホール素子
44…バイアス調整部
46…ゲイン調整部
100…モータ本体
112…回転軸
120…回路基板
200…駆動制御回路
221〜235…ラッチ回路
230…C相センサ信号生成部
236…演算回路
240…駆動信号生成部
250…ドライバ回路
260…AD変換部
330…C相センサ信号生成部
340…回生制御信号生成部
342…電子可変抵抗器
344,346…電圧比較器
350…整流回路
360…AD変換部
380…電力出力部
400…CPU
510…基本クロック生成回路
520…分周器
530…PWM部
531…カウンタ
533…EXOR回路
535…駆動波形形成部
540…正逆方向指示値レジスタ
550…乗算器
560…符号化部
580…指令値レジスタ
590…励磁区間設定部
592…電子可変抵抗器
594,596…電圧比較器
598…OR回路
1000…モータ制御回路
2000…防霜ファン
2100…ブラシレスモータ
2200…ファン羽根
3000…制御管理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防霜ファンシステムであって、
複数の防霜ファンと、
前記複数の防霜ファンの動作を管理するための制御管理装置と、
を備え、
前記制御管理装置は、前記防霜ファンを防霜用として使用する防霜モードと、前記防霜ファンを発電機として使用する発電モードと、を含む複数のモードを有する、防霜ファンシステム。
【請求項2】
請求項1記載の防霜ファンシステムであって、
各防霜ファンは、ブラシレスモータを有しており、
前記ブラシレスモータは、
m相(mは3以上の整数)の電磁コイル群を有するコイル列と、
複数の永久磁石を有する磁石列と、
前記m相の電磁コイル群のうちのn相(nは2以上m未満の整数)の電磁コイル群に対応付けられたn個の磁気センサであって、前記磁石列と前記コイル列の相対位置を検出するためのn個の磁気センサと、
前記n個の磁気センサのセンサ出力を利用して、前記コイル列への電力の供給を制御する駆動制御回路と、
前記n個の磁気センサのセンサ出力を利用して、前記コイル列からの電力の回生を制御する回生制御回路と、
を備え、
前記駆動制御回路は、
前記n個の磁気センサに対応付けられている前記n相の電磁コイル群のためのn組の駆動信号を、前記n個の磁気センサのそれぞれのセンサ出力を用いて生成するとともに、
前記n個の磁気センサに対応付けられていない(m−n)相の電磁コイル群のための(m−n)組の駆動信号を、前記n個の磁気センサのセンサ出力のうちの1つ以上をそれぞれ用いて生成し、
前記回生制御回路は、
前記n個の磁気センサに対応付けられている前記n相の電磁コイル群のためのn組の回生制御信号を、前記n個の磁気センサのそれぞれのセンサ出力を用いて生成するとともに、
前記n個の磁気センサに対応付けられていない(m−n)相の電磁コイル群のための(m−n)組の回生制御信号を、前記n個の磁気センサのセンサ出力のうちの1つ以上をそれぞれ用いて生成する、防霜ファンシステム。
【請求項3】
請求項2記載の防霜ファンシステムであって、さらに、
前記n個の磁気センサに対応付けられていない(m−n)相の電磁コイル群のための((m−n)個の模擬的なセンサ出力を、前記n個の磁気センサのセンサ出力のうちの1つ以上を変数として用いた演算に基づいて生成する模擬センサ出力生成部を備え、
前記駆動制御回路は、前記n個の磁気センサのセンサ出力と前記(m−n)個の模擬的なセンサ出力とを含むm個のセンサ出力に応じて、前記m相の電磁コイル群のためのm組の駆動信号を生成し、
前記回生制御回路は、前記n個の磁気センサのセンサ出力と前記(m−n)個の模擬的なセンサ出力とを含むm個のセンサ出力に応じて、前記m相の電磁コイル群のためのm組の回生制御信号を生成する、防霜ファンシステム。
【請求項4】
請求項3記載の防霜ファンシステムであって、
前記模擬センサ出力生成部は、
前記n個の磁気センサに対応付けられていない(m−n)相の電磁コイル群のための(m−n)個の模擬的なセンサ出力を、前記n個の磁気センサのセンサ出力のうちの2つ以上を変数として用いた演算に基づいて生成する、防霜ファンシステム。
【請求項5】
請求項3又は4記載の防霜ファンシステムであって、
前記模擬センサ出力生成部は、前記n個の磁気センサのセンサ出力を用いたリアルタイム演算によって前記模擬的なセンサ出力を生成する、防霜ファンシステム。
【請求項6】
請求項3又は4記載の防霜ファンシステムであって、
前記模擬センサ出力生成部は、前記n個の磁気センサのセンサ出力を入力値とし前記模擬的なセンサ出力を出力値とするルックアップテーブルを用いて前記模擬的なセンサ出力を生成する、防霜ファンシステム。
【請求項7】
請求項2ないし6のいずれかに記載の防霜ファンシステムであって、
前記整数mは3であり、前記整数nは2である、防霜ファンシステム。
【請求項8】
請求項2ないし7記載の防霜ファンシステムであって、
前記磁気センサは、前記磁石列と前記コイル列の相対位置に応じてアナログ的変化を示す出力信号を出力するセンサである、防霜ファンシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2008−61526(P2008−61526A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−240429(P2006−240429)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】