説明

電動リニアアクチュエータ

【課題】
モータの起動が困難になった場合であってもねじ軸を手動で軸方向へ容易に進退させることが可能であり、しかも部品点数が少なく、小型化および軽量化が可能な電動リニアアクチュエータを提供する。
【解決手段】
ハウジングと、このハウジングに保持されたモータと、前記ハウジングに対して回転自在に保持されたナット部材と、このナット部材に螺合するねじ軸と、前記モータに直結された駆動軸と、前記駆動軸の周囲に回転自在に支承された回転伝達部材と、前記ナット部材に固定されると共に前記回転伝達部材に連れ回される回転従動部材と、前記駆動軸の回転が伝達されると共に当該駆動軸上を軸方向に進退自在に設けられ、係合位置において前記回転伝達部材と噛み合う一方、退避位置において前記回転伝達部材との噛み合いが解消されるクラッチ部材と、このクラッチ部材を進出位置又は退避位置のいずれか一方に設定可能な設定レバーとから構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力信号に応じたモータの回転運動を送りねじ機構によってねじ軸の並進運動に変換して出力する電動リニアアクチュエータに係り、特に、モータと送りねじ機構との間にクラッチ機構を備えた電動リニアアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電動リニアアクチュエータとしては、特開2007−46637に開示されるものが知られている。この電動リニアアクチュエータは、モータの回転運動を送りねじ機構のナット部材に伝達し、ナット部材に螺合するねじ軸を当該ナット部材の回転に伴って軸方向へ進退させるように構成されている。
【0003】
前記モータはアクチュエータハウジングに固定される一方、ナット部材は回転軸受を介して前記アクチュエータハウジングに保持されており、モータの出力軸とナット部材の回転軸は互いに平行に設けられている。モータの出力軸の回転は複数の減速ギヤを介して前記ナット部材に伝達されており、モータを駆動すると、その回転方向及び回転量に応じてナット部材が回転し、かかるナット部材に螺合するねじ軸が軸方向へ進退するようになっている。
【0004】
また、減速ギヤを用いたモータの回転動力の伝達経路の途中には、モータとナット部材との間における回転トルクの受け渡しを制御するクラッチが設けられている。このクラッチは、モータの回転トルクをナット部材側へ伝達する一方、ねじ軸に外部から作用した軸力によってナット部材が回転させられた際に、ナット部材から伝達された回転トルクを受け止めてアクチュエータハウジングとの間で負荷し、かかる回転トルクがモータ側に伝達されるのを防止している。
【特許文献1】特開2007−46637
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の電動リニアアクチュエータは、例えば航空機用座席の電動リクライニング機構に利用されるが、航空機用座席の場合はその利用の態様からして、何らかの理由でモータの起動が不可能になったとしても、手動で座席位置を調整できなくてはならない。この点に関し、前述した従来の電動リニアアクチュエータでは、強制的にねじ軸を軸方向へ進退させようとしても、前記クラッチがナット部材の発生する回転トルクをアクチュエータハウジングとの間で負荷してしまうため、ねじ軸を手動で軸方向へ移動させることができなかった。
【0006】
また、モータからナット部材へ回転動力を伝達する複数の減速ギヤは夫々が回転軸受によってアクチュエータハウジングに保持されており、構成部品の数が多い他、アクチュエータハウジングが大型化し、結果的に重量が増加してしまう傾向にあった。特に、前述した航空機用座席に用いられる電動リニアアクチュエータには軽量化の要請が強く、部品点数の削減、小型化が強く求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はこのような問題点に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、何らかの理由でモータの起動が困難になった場合であってもねじ軸を手動で軸方向へ容易に進退させることが可能であり、しかも部品点数が少なく、小型化および軽量化の要請に応えることが可能な電動リニアアクチュエータを提供することにある。
【0008】
すなわち、本発明の電動リニアアクチュエータは、ハウジングと、このハウジングに保持されたモータと、このモータと軸方向を合致させると共に前記ハウジングに対して回転自在に保持されたナット部材と、このナット部材に螺合すると共に当該ナット部材の回転に応じて軸方向へ進退するねじ軸と、前記モータに直結された駆動軸と、前記駆動軸の周囲に回転自在に支承された回転伝達部材と、前記ナット部材に固定されると共に前記回転伝達部材に連れ回される回転従動部材と、前記駆動軸の回転が伝達されると共に当該駆動軸上を軸方向に進退自在に設けられ、一端の係合位置において前記回転伝達部材と噛み合う一方、他端の退避位置において前記回転伝達部材との噛み合いが解消されるクラッチ部材と、このクラッチ部材と係合して当該クラッチ部材を前記進出位置又は退避位置のいずれか一方に設定可能な設定レバーとから構成されている。
【0009】
以上のように構成された本発明の電動リニアアクチュエータでは、前記モータを回転させると、このモータに直結された駆動軸は回転するが、前記回転伝達部材は駆動軸の周囲に回転自在に支承されているので、かかる駆動軸は回転伝達部材に対して空回りすることになり、モータにより発生した回転トルクは駆動軸から回転伝達部材には伝達されない。しかし、前記クラッチ部材には駆動軸の回転が伝達されているので、このクラッチ部材を係合位置に設定して前記回転伝達部材と噛み合わせると、モータの回転が駆動軸からクラッチ部材を介して回転伝達部材に伝達される。これにより、前記回転伝達部材から回転従動部材にモータの回転が伝達され、ナット部材が回転駆動されることになる。
【0010】
また、前記クラッチ部材を退避位置に設定すると、かかるクラッチ部材と回転伝達部材の噛み合い状態が解消されるので、前記回転伝達部材は駆動軸に対して自由に回転することが可能となり、モータとナット部材との連動を解消することができる。
【0011】
すなわち、本発明の電動リニアアクチュエータでは、前記設定レバーを操作して前記クラッチ部材を係合位置から退避位置に設定することにより、モータをナット部材から切り離して、かかるナット部材を自由に回転させることができるので、ねじ軸に外力を作用させてこれを自由に進退させることが可能となる。
【0012】
また、前記回転伝達部材はクラッチ部材が配設された駆動軸の周囲に回転自在に支承されているので、かかる回転伝達部材をハウジングに対して回転自在に支承する必要はなく、従来のリニアアクチュエータと比較して部品点数を削減し、モータからナット部材への動力伝達経路を小型化、軽量化することが可能となる。また、回転伝達部材ヤクラッチ部材を収容するハウジングも小型化することができ、この点においても本発明の電動リニアアクチュエータは小型化、軽量化が促進されたものになっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を用いながら本発明の電動リニアアクチュエータを詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明を適用した電動リニアアクチュエータ(以下、「アクチュエータ」という)の実施形態の一つを示すものである。このアクチュエータ1は、モータ2の回転をボールねじ装置のナット部材に伝達し、かかるナット部材を回転させることで当該ナット部材に螺合するねじ軸3を軸方向へ進退させるように構成されている。
【0015】
前記モータ2は遊星ギヤを内蔵した減速機ユニット及び電磁ブレーキと共にユニット化されており、出力軸をハウジング4の内部に挿入するようにして当該ハウジング4に固定されている。また、モータ2とハウジング4との間にはクラッチケース43が設けられており、このクラッチケース43にはモータ2の回転とナット部材の回転とを任意に絶縁するクラッチ部材が内蔵されている。
【0016】
一方、前記ハウジング4には前記モータ2に隣接して略円筒状のナット収容部40が設けられており、ボールねじ装置のナット部材はこのナット収容部40に格納され、前記ハウジング4に対して回転自在に保持されている。前記ナット部材と相まってボールねじ装置を構成するねじ軸3は前記ナット収容部40を貫通すると共に前記ナット部材に螺合しており、モータ2を駆動すると、その回転方向に応じて軸方向へ進退し、前記ナット収容部40からの突出長さが変化するようになっている。
【0017】
前記ハウジング4内にはモータ2の回転をナット部材に伝達するためのプーリ及びタイミングベルトが格納されており、かかるハウジング4に固定されるカバー41によって密閉されるようになっている。また、前記カバー41にはポテンショメータを格納したセンサーケース42が固定されている。
【0018】
前記ねじ軸3はモータ2の回転軸と平行に設けられて前記ハウジング4を貫通しており、その一端にはリンク機構を構成する機器類を結合するためのブラケット30が取付けられている。また、ハウジング4にも取付け孔44を利用して図示外のブラケットが固定され、このブラケットを介してリンク機構を構成する機器類がハウジング4に結合されるようになっている。
【0019】
図2は前記アクチュエータ1の要部を示す断面図である。前記ボールねじ装置は、ねじ軸3と、多数のボールを介して前記ねじ軸3に螺合するナット部材5とから構成されており、ナット部材5の回転方向及び回転量に応じてねじ軸3が軸方向へ進退するようになっている。尚、図2ではねじ軸3とナット部材5との間に存在するボールの記載は省略されている。
【0020】
前記ナット部材5はクロスローラ軸受50を介して前記ハウジング4に保持されている。クロスローラ軸受50は、外周面にローラの転走軌道となるV字溝を有する内輪と、内周面にローラの転走軌道となるV字溝を有する外輪と、これら内輪と外輪との間に形成された転走軌道に配列される多数のローラとから構成されており、ローラは自転軸を90度ずつ交互に異ならせた状態で前記転走軌道に配列されている。これにより、ナット部材5の回転軸方向に対して作用するアキシャル荷重に対しても十分な負荷能力を発揮することができるようになっている。また、図2に示されたボールねじ装置では、クロスローラ軸受50の内輪がナット部材5のフランジ部として形成されており、十分な荷重負荷能力を与えつつも、ボールねじ装置の小型化、軽量化を実現している。そして、前記ナット部材5は、その円筒部を前記ハウジング4のナット収容部40に遊嵌させつつ、前記クロスローラ軸受50の外輪をハウジング4に固定することにより、前記ナット収容部40の内部で回転自在に保持されている。
【0021】
尚、この実施形態ではモータによって発生した回転運動を軸の並進運動に変換する手段として前記ボールねじ装置を用いたが、ボールを用いないすべり接触タイプの送りねじ装置であっても適用することが可能である。
【0022】
前記ナット部材5には回転従動部材としての従動側プーリ51が固定されており、タイミングベルト52によって前記モータ2の回転が従動側プーリ51に伝達され、前記ナット部材5がモータ2の動作に呼応して回転するようになっている。
【0023】
また、前記センサーケース42に格納されたポテンショメータ6には、2枚の減速ギヤ53,54を介してナット部材5の回転が伝達されている。前記ポテンショメータ6は入力される回転量に応じて抵抗値が変化するので、前記ナット部材5の回転をポテンショメータ6に入力することにより、ナット部材5の回転量、すなわちねじ軸3の軸方向移動量をポテンショメータ6の抵抗値として保持することができ、かかる抵抗値を検出することにより、ハウジング4に対するねじ軸3の絶対位置を把握し、モータ2の回転制御に利用することが可能となる。
【0024】
一方、前記モータ2の出力軸20は前記クラッチケース43の内部に挿入され、かかるクラッチケース43の内部において駆動軸21と結合されている。図3はモータ2の出力軸20に装着される部品を示した分解斜視図である。前記駆動軸21は大径部21aと小径部21bとからなる段付き軸であり、前記大径部21aに設けられた中空部に対して前記モータ2の出力軸20が嵌合している。この駆動軸21は出力軸20に被さることによってその回転が支承されており、前記ハウジング4との間には何ら軸受が設けられていない。また、駆動軸21はキー22によって出力軸20と結合されており、モータ2の回転がそのまま駆動軸21に伝達されるようになっている。
【0025】
前記駆動軸21の小径部21bには一対の玉軸受23を介して回転駆動部材としての駆動側プーリ24が装着されている。従って、この駆動側プーリ24は前記駆動軸21を支軸として、かかる駆動軸21に対しては自由回転が可能であり、後述するクラッチ部材7が駆動側プーリ24に噛み合わない限り、モータ2の出力軸20と駆動側プーリ24は切り離された状態にある。この駆動側プーリ24と前記従動側プーリ51との間にはタイミングベルト52が掛け回されており、前記クラッチ部材7によって駆動側プーリ24とモータ2の出力軸20とが結合されると、モータ2の回転が駆動側プーリ24からタイミングベルト52を経て従動側プーリ51へ伝達されるようになっている。
【0026】
尚、このアクチュエータ1ではモータ2の出力軸20の回転を一対のプーリ24,51とタイミングベルト52によってナット部材5に伝達したが、これ以外にもギヤやチェーン等を用いてナット部材5への回転の伝達を行っても良い。
【0027】
前記クラッチ部材7は、略円筒状に形成されると共に前記駆動軸21の小径部21bの外側に嵌合する第1クラッチブロック70と、この第1クラッチブロック70の外側に嵌合する軸受ブッシュ71と、この軸受ブッシュ71の外側に嵌合する第2クラッチブロック72とから構成されている。
【0028】
前記第1クラッチブロック70は駆動軸21の大径部21aに対して軸方向へ移動自在に嵌合しており、しかも図示外のキーを第1クラッチブロック70と大径部21aとの間に介装することにより、駆動軸21の回転が第1クラッチブロック70に伝達されるようになっている。また、第1クラッチブロック70には前記駆動側プーリ24に面してフランジ部70aが設けられており、このフランジ部70aには複数本のスタッド70bが立設されている。一方、第1クラッチブロック70のフランジ部70aと対向する駆動側プーリ24の側面には、前記スタッド70bが嵌合する規制孔が設けられており、第1クラッチブロック70が駆動軸21に対して軸方向へ移動して駆動側プーリ24に接近すると、前記スタッド70bが駆動側プーリ24の規制孔に嵌合し、駆動側プーリ24と第1クラッチブロック70とが噛み合って一体化するように構成されている。駆動側プーリ24の回転位置にかかわらず、前記第1クラッチブロック70のスタッド70bが駆動側プーリ24の規制孔に嵌合可能とするため、前記駆動側プーリ24には前記スタッド70bの立設ピッチよりも短いピッチで多数の規制孔が設けられている。
【0029】
また、この第1クラッチブロック70の外側には前記軸受ブッシュ71を介して第2クラッチブロック72が嵌合している。すなわち、この第2クラッチブロック72は駆動軸21の大径部21aによって保持されており、第1クラッチブロック70と共に前記大径部21aの軸方向へ自在に移動することが可能となっている。尚、第1クラッチブロック70、軸受ブッシュ71及び第2クラッチブロック72の三者は、第1クラッチブロック70に装着されるスナップリングによって一体化されるようになっている。
【0030】
この第2クラッチブロック72には設定レバー73が係合している。この設定レバー73はハウジング4に固定されたベースプレート45に対しピン46を介して結合されており、かかるピン46を中心として自在に揺動できるようになっている。設定レバー73は前記第2クラッチブロック72を抱え込む一対の伝達アーム74を備えており、各伝達アーム74の先端には第2クラッチブロック72の外周面に突出した係合ピン72aを収容する係合溝が形成されている。このため、設定レバー73をピン46の周囲で揺動させると、第2クラッチブロック72が駆動軸21の軸方向へ押圧され、この第2クラッチブロック72の内側に嵌合する軸受ブッシュ71と第1クラッチブロック70が第2クラッチブロック72と共に駆動軸21の軸方向へ移動することになる。また、第2クラッチブロック72は設定レバー73と係合しているため、駆動軸21と共に回転することはできないが、第2クラッチブロック72と第1クラッチブロック70の間には軸受ブッシュ71が介装されていることから、第1クラッチブロック70は駆動軸21と共に回転することが可能である。尚、前記ベースプレート45はハウジング4とクラッチケース43との間に設けられており、ハウジング4に対してクラッチケース43を保持している。
【0031】
前記設定レバー73とベースプレート45との間には図示外のコイルスプリングが圧縮状態で介装されており、前記設定レバー73はこのコイルスプリングの付勢力によって第2クラッチブロック72を駆動側プーリ24に向けて常に押圧している。これにより、設定レバー73を何ら操作しない状態では、第1クラッチブロック72のフランジ部70aが駆動側プーリ24の側面に押しけられ、前記フランジ部70aに立設されたスタッド70bが駆動側プーリ24の規制孔に嵌合し、第1クラッチブロック70と駆動側プーリ24の噛み合い状態が維持されるようになっている。
【0032】
図4は、モータ2の出力軸20の回転が前記駆動側プーリ24に伝達されている状態、すなわちクラッチ部材7が進出位置に設定されている状態を示す断面図である。この状態では、駆動側プーリ24の側面に形成された規制孔24aに対して第1クラッチブロック70のスタッド70bが嵌合しており、駆動側プーリ24と第1クラッチブロック70の噛み合い状態が維持されている。このとき、前記設定レバー73は何ら操作されておらず、前述したスプリングの付勢力によって前記噛み合い状態が維持されている。この状態でモータ2の出力軸20が回転すると、この出力軸20に被せられた駆動軸21、及びこの駆動軸21の大径部21aに嵌合する第1クラッチブロック70が前記出力軸20に同期して回転し、第1クラッチブロック70と噛み合う駆動側プーリ24も出力軸20に同期して回転することになる。
【0033】
これにより、モータ2の出力軸20の回転がタイミングベルト52及び従動側プーリ51を介してナット部材5に伝達され、かかるナット部材5に螺合するねじ軸3をモータ2の出力軸20の回転に応じて軸方向へ進退させることができる。
【0034】
一方、図5は、モータ2の出力軸20と前記駆動側プーリ24とが切り離された状態、すなわちクラッチ部材7が退避位置に設定された状態を示す断面図である。前記設定レバー73とベースプレート45に指をかけ、スプリングの付勢力に抗して両者を摘まむと、設定レバー73に係合する第2クラッチブロック72が駆動軸21に沿ってモータ2の方向へ移動するので、第2クラッチブロック72と一体をなす第1クラッチブロック70が駆動側プーリ24から引き離される。これにより、第1クラッチブロック70のスタッド70bが駆動側プーリ24の規制孔24aから抜け出し、駆動側プーリ24は第1クラッチブロック70及び駆動軸21に対して自由に回転することが可能となる。
【0035】
従って、設定レバー73を操作することで駆動側プーリ24をモータ2の出力軸20から切り離して自由に回転させることが可能となり、前記ねじ軸3に対して軸方向の外力を加えた際にナット部材5を容易に回転させることができる。すなちわ、本発明のアクチュエータ1によれば、前記設定レバー73を操作している最中はハウジング4に対するねじ軸3の位置調整を容易に行うことが可能となり、例えばこのアクチュエータ1を用いて構成したリンク機構をモータ2を使用することなく位置調整したい場合であっても、前記設定レバー73の操作によって当該調整を容易に行うことができるものである。
【0036】
また、このアクチュエータ1ではモータ2の出力軸20の回転をクラッチ部材7、駆動側プーリ24を介してナット部材5に伝達しているが、これらクラッチ部材7や駆動側プーリ24はその回転がハウジング4に対しては支承されておらず、モータ2の出力軸20によって保持されている。このため、ハウジング4の構造は簡素であり、回転運動の伝達経路を構成する部品の点数も最小限に抑えられている。従って、このアクチュエータ1は小型化、軽量化が促進されたものとなっており、これらの要求が高い用途、特に航空機に使用される電動リニアアクチュエータとして最適である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明が適用された電動リニアアクチュエータの一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示す電動リニアアクチュエータの要部を示す断面図である。
【図3】モータの出力軸に装着される部品を示した分解斜視図である。
【図4】モータの出力軸の回転が駆動側プーリに伝達されている状態を示す断面図である。
【図5】モータの出力軸と駆動側プーリとが切り離された状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1…アクチュエータ、2…モータ、3…ねじ軸、4…ハウジング、5…ナット部材、7…クラッチ部材、21…駆動軸、24…駆動側プーリ、51…従動側プーリ、73…設定レバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、このハウジングに保持されたモータと、このモータと軸方向を合致させると共に前記ハウジングに対して回転自在に保持されたナット部材と、このナット部材に螺合すると共に当該ナット部材の回転に応じて軸方向へ進退するねじ軸と、前記モータに直結された駆動軸と、前記駆動軸の周囲に回転自在に支承された回転伝達部材と、前記ナット部材に固定されると共に前記回転伝達部材に連れ回される回転従動部材と、前記駆動軸の回転が伝達されると共に当該駆動軸上を軸方向に進退自在に設けられ、一端の係合位置において前記回転伝達部材と噛み合う一方、他端の退避位置において前記回転伝達部材との噛み合いが解消されるクラッチ部材と、このクラッチ部材と係合して当該クラッチ部材を前記進出位置又は退避位置のいずれか一方に設定可能な設定レバーとから構成されることを特徴とする電動リニアアクチュエータ。
【請求項2】
前記クラッチ部材は、前記回転伝達部材と噛み合う係合ピンを備えると共に前記駆動軸の回転が伝達される第1クラッチブロックと、前記設定レバーによって保持されると共に前記駆動軸の軸方向へ移動自在な第2クラッチブロックと、これら第1クラッチブロックと第2クラッチブロックとの間に配置され、第2クラッチブロックに対して第1クラッチブロックを回転自在に支承する軸受ブッシュとから構成されることを特徴とする請求項1記載の電動リニアアクチュエータ。
【請求項3】
前記回転伝達部材と回転従動部材は一対のプーリであり、これらプーリの間にタイミングベルトが掛けまわされていることを特徴とする請求項2記載の電動リニアアクチュエータ。
【請求項4】
前記回転従動部材には減速機を介してポテンショメータが接続されていることを特徴とする請求項2記載の電動リニアアクチュエータ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−284714(P2009−284714A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−136284(P2008−136284)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【出願人】(390029805)THK株式会社 (420)
【Fターム(参考)】