説明

電動車両の充電装置

【課題】電動車両に搭載された蓄電装置を外部電源からの電力によって高効率に充電することが可能な蓄電装置を提供する。
【解決手段】AC−DC変換器250は、外部電源500からの交流電圧vacを、該交流電圧のピーク電圧よりも高い直流電圧に変換して第1の電源ラインPL1に出力する。DC−DC変換器210は、通常制御モードでは、スイッチング素子Q1のオンオフ制御によって、電源ラインPL1の電圧を降圧して、メインバッテリ10を充電する。一方、DC−DC変換器210は、上アームオン制御モードでは、スイッチング素子Q1をオンに固定してメインバッテリ10を充電する。制御装置300は、外部充電の状態に基づいて、上アームオン制御を適用できる条件が成立しているときには上アームオン制御を適用する一方で、当該条件の非成立時には通常制御モードを適用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動車両の充電装置に関し、より特定的には、電動車両に搭載された蓄電装置を車両外部の電源によって充電するための充電制御に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池に代表される車載蓄電装置からの電力を用いて車両駆動力を発生可能に構成された電動車両として、電気自動車やハイブリッド自動車、あるいは燃料電池自動車等が知られている。電動車両では、車両外部の電源(以下、単に「外部電源」とも称する)によって、車載蓄電装置を充電する構成が提案されている。以下では、外部電源による蓄電装置の充電を、単に「外部充電」とも称する。
【0003】
特開2007−318970号公報(特許文献1)には、ハイブリッド車両に搭載される2つの交流モータ、ならびに、これらの交流モータを駆動制御するためのインバータおよび昇圧コンバータを用いて、外部電源からの供給電力を蓄電装置の充電電力に変換する充電装置を構成することが記載されている。特許文献1の充電装置は、2つの交流モータの中性点を介して外部電源からの電力を受けるように構成されている。
【0004】
また、特開2009−33785号公報(特許文献2)では、複数の蓄電装置およびコンバータの組が並列に配置された電動車両の電源システムにおける充電制御が記載されている。具体的には、昇圧チョッパ型のDC−DC変換回路(コンバータ)の上アーム素子をオンに固定することにより、蓄電装置を充電する制御が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−318970号公報
【特許文献2】特開2009−33785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の充電装置では、外部電源からの供給電力を蓄電装置の充電電力に変換する際に、DC−DC変換動作に伴うスイッチング素子での電力損失や、平滑インダクタの鉄損および銅損の発生により、充電効率を高めることに限界がある。
【0007】
特許文献2は、チョッパ型のDC−DC変換回路において上アーム素子をオン固定して、DC−DC変換回路での効率を高めて蓄電装置を充電することを記載するが、このような充電制御がどのような条件下で適用されるべきかについては詳しく言及していない。しかしながら、外部充電の状態によっては、DC−DC変換回路の上アーム素子をオン固定することで、DC−DC変換回路以外での効率が低下するケースや、過大な電流が生じてしまうケースが発生する可能性がある。
【0008】
この発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、この発明の目的は、電動車両に搭載された蓄電装置を外部電源からの電力によって高効率に充電することが可能な蓄電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明によれば、蓄電装置を搭載した電動車両の充電装置であって、第1の電力変換器と、第2の電力変換器と、第1および、第2の電力変換器を制御するための制御装置とを備える。第1の電力変換器は、外部電源からの交流電圧を、該交流電圧のピーク電圧よりも高い直流電圧に変換して第1の電源ラインに出力するための電力変換器である。第2の電力変換器は、外部電源によって、蓄電装置を充電する外部充電のときに、第1の電源ラインと、蓄電装置の正極と電気的に接続された第2の電源ラインとの間で直流電力変換を行うため電力変換器である。第2の電力変換器は、第1のノードと、第1の電源ラインとの間に電気的に接続される第1のスイッチング素子と、第1のノードと、第2の電源ラインとの間に電気的に接続された第1のインダクタとを含む。制御装置は、外部充電のときに、第1のスイッチング素子のオンオフ制御を伴って、蓄電装置を充電する第1の制御モードと、第1のスイッチング素子をオン固定して、蓄電装置を充電する第2の制御モードとを、外部充電の状態に応じて選択する。
【0010】
好ましくは、制御装置は、交流電圧のピーク電圧よりも、蓄電装置の電圧が高いときに、第2の制御モードを選択する。
【0011】
また好ましくは、制御装置は、蓄電装置の充電電力が所定レベルよりも低いときに、第2の制御モードを選択する。
【0012】
さらに好ましくは、第1の電力変換器は、整流器と、第2のインダクタと、第1のダイオードと、第2のスイッチング素子とを含む。整流器は、外部電源からの交流電圧を整流して第3の電源ラインに出力するように構成される。第2のインダクタは、第3の電源ラインおよび第2のノードの間に電気的に接続される。第1のダイオードは、第2のノードから、第1の電源ラインへ向かう方向を順方向として、第2のノードおよび、第1の電源ラインの間に電気的に接続される。第2のスイッチング素子は、第2のノードおよび、蓄電装置の負極と電気的に接続された第4の電源ラインの間に電気的に接続される。制御装置は、第2のインダクタを通過する電流が、目標電流と一致するように、第2のスイッチング素子のオンオフを制御する。目標電流は、交流電圧と位相が一致した交流電流の絶対値である。さらに、制御装置は、第1の制御モードでは、第1の電源ラインの電圧に応じて、目標電流の振幅を制御する一方で、第2の制御モードでは、第1の電源ラインの電圧によらず、目標電流の振幅を固定する。
【0013】
また、さらに好ましくは、制御装置は、第1の制御モードでは、蓄電装置の充電電流と目標充電電流との偏差に応じて、第1のスイッチング素子のオンオフのデューティ比を制御する。
【0014】
あるいは、さらに好ましくは、制御装置は、第1の制御モードの選択中に、外部充電の状態が、第2の制御モードを適用可能な所定条件を満たした場合には、第1の電源ラインの電圧が、蓄電装置の電圧まで低下した後に、第1の制御モードから、第2の制御モードへの切換を実行する。
【0015】
このような構成においては、制御装置は、外部充電の状態が、所定条件を満たした場合には、第1および、第2の電力変換器を停止させて、放電抵抗による放電によって、第1の電源ラインの電圧を低下させる。あるいは、制御装置は、外部充電の状態が、所定条件を満たした場合には、第2の電力変換器に対する、第1の電源ラインの電圧の目標電圧を、蓄電装置の電圧まで低下させる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、外部充電の状態に応じて、DC−DC変換用のスイッチング素子のオンオフを固定する充電制御を適切に適用することによって、電動車両に搭載された蓄電装置を外部電源からの電力によって高効率に充電できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施の形態の電動車両の充電装置の構成例を説明するための回路図である。
【図2】本実施の形態の電動車両の充電装置による外部充電制御を説明するフローチャートである。
【図3】通常制御モードにおける外部充電動作を説明するための第1の波形図である。
【図4】通常制御モードにおける外部充電動作を説明するための第2の波形図である。
【図5】上アームオン制御モードにおける外部充電動作を説明するための第1の波形図である。
【図6】上アームオン制御モードにおける外部充電動作を説明するための第2の波形図である。
【図7】本実施の形態の電動車両の充電装置による外部充電制御の制御構成を説明するための機能ブロック図である。
【図8】通常制御モードから上アームオン制御への移行例を説明するための第1の波形図である。
【図9】通常制御モードから上アームオン制御への移行例を説明するための第2の波形図である。
【図10】通常制御モードから上アームオン制御モードに移行するときの制御動作の第1の例を説明するための波形図である。
【図11】通常制御モードから上アームオン制御モードに移行するときの制御動作の第2の例を説明するための波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則的に繰返さないものとする。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態による電動車両の充電装置の構成例を説明するための回路図である。
【0020】
図1を参照して、電動車両100は、メインバッテリ10と、電流センサ12と、電池センサ15と、電池監視ユニット20と、システムメインリレー30と、DC−DCコンバータ40と、補機バッテリ45と、駆動機器50とを備える。上述のように、電動車両100は、メインバッテリ10からの電力を用いて車両駆動力を発生可能に構成されており、電気自動車やハイブリッド自動車、あるいは燃料電池自動車を包括する。
【0021】
メインバッテリ10は、「蓄電装置」の代表例として示される。メインバッテリ10は、代表的には、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の二次電池により構成される。たとえば、メインバッテリ10の出力電圧は200V程度である。あるいは、電気二重層キャパシタによって、あるいは二次電池とキャパシタとの組合せ等によって「蓄電装置」を構成してもよい。
【0022】
電流センサ12は、メインバッテリ10の出力電流(以下バッテリ電流とも称する)IBを検出して、電池監視ユニット20へ送出する。以下では、充電時のバッテリ電流IBを正値で示すこととする。電池センサ15は、メインバッテリ10に取り付けられて、バッテリ電圧VBおよびバッテリ温度TBを検出する。電池センサの検出値は、電池監視ユニット20へ送出される。
【0023】
電池監視ユニット20は、バッテリ電流IB、バッテリ電圧VBおよびバッテリ温度TBに基づいて、メインバッテリ10の状態を監視する。代表的には、電池監視ユニット20は、メインバッテリ10における満充電容量に対する現在の充電量の比率(0〜100%)で表わされる、SOC(State of Charge)を算出する。また、電池監視ユニット20は、メインバッテリ10の状態に基づいて、メインバッテリ10の充電電力上限値および放電電力上限値を設定する。
【0024】
駆動機器50は、メインバッテリ10からの電力を用いて車両駆動力を発生するための図示しないモータジェネレータ(MG)と、当該モータジェネレータを駆動制御するための図示しない電力変換器(インバータ・コンバータ)とを含む。また、モータジェネレータ(MG)は、電動車両100の回生制動時には、減速エネルギを電気エネルギに変換する発電機として動作する。回生発電された電力は、電力変換器(インバータ・コンバータ)によってメインバッテリ10の充電電力に変換される。
【0025】
システムメインリレー30は、メインバッテリ10および駆動機器50との間の通電経路に接続される。システムメインリレー30は、基本的には、車両走行時にオンされる一方で、外部充電時にはオフされる。但し、外部充電時に、補機系を動作させる必要がある場合には、ユーザ操作等によってシステムメインリレー30がオンされてもよい。
【0026】
DC−DCコンバータ40は、システムメインリレー30に対して、駆動機器50と並列に接続される。DC−DCコンバータ40は、メインバッテリ10の出力電圧を、補機系の電源電圧(たとえば12V程度)に降圧する。DCDCコンバータ40は、代表的には、半導体スイッチング素子(図示せず)を含むスイッチングレギュレータであり、公知の任意の回路構成を適用することができる。
【0027】
補機バッテリ45は、DC−DCコンバータ40の出力電圧によって充電される。補機バッテリ45には、図示しない補機負荷が接続されている。この補機負荷は、補機バッテリ45からの供給電力によって動作する、オーディオ機器、小型モータ類、あるいは制御装置(ECU:Electronic Control Unit)等を含む。
【0028】
システムメインリレー30がオンされると、メインバッテリ10の電力が、駆動機器50およびDC−DCコンバータ40へ供給される。一方、システムメインリレー30がオフされると、DC−DCコンバータ40を含む補機系と、駆動機器50とは、メインバッテリ10から電気的に切離される。
【0029】
次に、外部充電のための構成を詳細に説明する。電動車両100は、さらに、外部充電リレー60、充電装置200を備える。充電装置200には、外部充電用のインレット205が設けられる。
【0030】
外部充電リレー60は、電動車両100の走行時にはオフされる一方で、外部充電時にオンされる。インレット205は、充電ケーブル400を介して、外部電源500と電気的に接続される。外部電源500は、代表的には商用の系統電源である。
【0031】
充電装置200は、外部電源500から供給される交流電力を、メインバッテリ10を充電するための直流電力に変換する。
【0032】
充電装置200は、DC−DC変換器210と、平滑コンデンサ220と、AC−DC変換器250と、制御装置300と、電圧センサ302,307と、電流センサ305とを含む。
【0033】
制御装置300は、図示しないCPU(Central Processing Unit)およびメモリを内蔵した電子制御ユニット(ECU)によって構成され、当該メモリに記憶されたマップおよびプログラムに基づいて、各センサによる検出値を用いた演算処理を行なうように構成される。あるいは、ECUの少なくとも一部は、電子回路等のハードウェアにより所定の数値・論理演算処理を実行するように構成されてもよい。
【0034】
電圧センサ302は、インレット205に入力された、外部電源500からの交流電圧vacを検出する。
【0035】
AC−DC変換器250は、非絶縁型の電力変換器で構成されて、外部電源500からの交流電圧vac(以下、電源電圧vacとも称する)を直流電圧に変換して電源ラインPL1に出力する。平滑コンデンサ220は、電源ラインPL1および接地ラインGLの間に電気的に接続される。電圧センサ307は、電源ラインPL1の電圧、すなわち平滑コンデンサ220の直流電圧vdcを検出する。
【0036】
DC−DC変換器210は、非絶縁型の電力変換器で構成されて、電源ラインPL1および電源ラインPL2の間で直流電力変換を実行する。電源ラインPL2は、外部充電リレー60がオンすると、メインバッテリ10の正極と電気的に接続される。同様に、接地ラインGLは、外部充電リレー60がオンすると、メインバッテリ10の負極と電気的に接続される。
【0037】
DC−DC変換器210は、いわゆる昇圧チョッパの構成を有している。具体的には、DC−DC変換器210は、電力用半導体スイッチング素子Q1およびQ2と、インダクタL1およびキャパシタC1とを有する。電力用半導体スイッチング素子(以下、単に「スイッチング素子」とも称する)としては、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、電力用MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタあるいは、電力用バイポーラトランジスタ等を用いることができる。スイッチング素子Q1,Q2に対しては、逆並列ダイオードD1,D2が配置されている。
【0038】
スイッチング素子Q1は、電源ラインPL1およびノードN1の間に電気的に接続される。スイッチング素子Q2は、ノードN1および接地ラインGLの間に電気的に接続される。スイッチング素子Q1およびQ2のオンオフは、制御装置300からの制御信号により制御される。
【0039】
インダクタL1は、ノードN1および電源ラインPL2の間に電気的に接続される。以下では、インダクタL1の通過電流を、電流ILと表記する。キャパシタC1は、電源ラインPL2および接地ラインGLの間に接続される。キャパシタC1は、電流ILに含まれる高周波成分を除去する役割を果たす。
【0040】
DC−DC変換器210は「第2の電力変換器」に対応し、スイッチング素子Q1は「第1のスイッチング素子」に対応し、インダクタL1は「第1のインダクタ」に対応する。
【0041】
AC−DC変換器250は、キャパシタC0と、インダクタL2と、スイッチング素子Q3および逆並列ダイオードD3と、ダイオードD4と、ダイオードブリッジを構成するダイオードD5〜D8とを有する。
【0042】
キャパシタC0は、外部電源500からの電源電流iacの高周波成分を除去する。ダイオードD5〜D8は、ダイオードブリッジを構成して、外部電源500からの電源電圧vacを整流して電源ラインPL3へ出力する。インダクタL2は、電源ラインPL3およびノードN2の間に電気的に接続される。電流センサ305は、インダクタL2の通過電流iLを検出する。
【0043】
スイッチング素子Q3は、ノードN2および接地ラインGLの間に電気的に接続される。スイッチング素子Q3には逆並列ダイオードD3が設けられている。ダイオードD4は、ノードN2および電源ラインPL1の間に、ノードN2から電源ラインPL1へ向かう方向を順方向として接続される。
【0044】
AC−DC変換器250は、「第1の電力変換器」に対応する。スイッチング素子Q3は「第2のスイッチング素子」に対応し、ダイオードD4は「第1のダイオード」に対応する。また、ダイオードD5〜D8によって構成されるダイオードブリッジが「整流器」に対応する。
【0045】
制御装置300は、電池監視ユニット20からのバッテリ電流IBおよびバッテリ電圧VB(あるいは、さらにSOC)、電圧センサ302からの電源電圧vac、電流センサ305からの電流iL,ならびに、電圧センサ307からの直流電圧vdcに基づいて、AC−DC変換器250およびDC−DC変換器210による外部充電を制御する。具体的には、制御装置300は、上述の電圧および電流によって外部充電の状態を把握するとともに、メインバッテリ10の外部充電を適切に制御するように、スイッチング素子Q1〜Q3の制御信号を発生する。
【0046】
図2は、本実施の形態の電動車両の充電装置による外部充電制御を説明するフローチャートである。
【0047】
図2を参照して、制御装置300は、ステップS100により、外部充電の開始条件が成立しているかどうかを判定する。たとえば、充電ケーブル400がインレット205に正常に接続されており、かつ、ユーザ指示等により外部充電が指示されていることで、ステップS100がYES判定とされる。
【0048】
制御装置300は、外部充電の開始条件が成立すると(S100のYES判定時)、ステップS200により、外部充電を開始する。ステップS200では、たとえば、外部充電リレー60がオンされる。
【0049】
制御装置300は、外部充電時には、ステップS300により、外部充電の状態に応じて、後程詳細に説明する上アームオン制御を適用できる条件が成立しているか否かを判定する。そして、制御装置300は、当該条件の非成立時(S300のNO判定時)には、ステップS400に処理を進めて、通常制御モードにより充電装置200を制御する。一方、制御装置300は、当該条件の成立時(S300のYES判定時)には、ステップS450に処理を進めて、上アームオン制御モードにより充電装置200を制御する
制御装置300は、ステップS500により、通常制御モード(S400)または上アームオン制御モード(S450)が適用された外部充電よるメインバッテリ10の充電が完了したかどうかを判定する。たとえば、メインバッテリ10のSOCが所定レベルに達すると、あるいは、ユーザによって指定された充電終了時刻が到来すると、ステップS500はYES判定とされる。
【0050】
制御装置300は、充電完了となるまでは(S500のNO判定時)、ステップS300〜S500の処理を繰返すことによって、メインバッテリ10の外部充電を継続する。一方、制御装置300は、充電が完了すると(S500のYES判定時)、ステップS510に処理を進めて外部充電を終了する。ステップS510では、たとえば、外部充電リレー60がオフされる。
【0051】
このように、本実施の形態による電動車両の充電装置では、外部充電の状態に応じて、通常制御および上アームオン制御が選択的に適用される。次に、通常制御および上アームオン制御の詳細について説明する。
【0052】
図3は、通常制御モードにおける充電装置200の動作を説明するための波形図である。
【0053】
図3を参照して、外部電源500からの電源電圧vacは、所定周波数(以下、「電源周波数」と称する)の交流電圧である。AC−DC変換器250では、スイッチング素子Q3のオン期間にはインダクタL2の電流iLが増加する一方で、スイッチング素子Q3のオフ期間にはインダクタL2の電流iLが減少する。スイッチング素子Q3のオンオフ制御により、インダクタL2の電流iLを目標電流iL*に合致させることができる。さらに、目標電流iL*の大きさに応じて、ダイオードD4を経由して電源ラインPL1へ供給される直流電流を制御できる。すなわち、AC−DC変換器250は、外部電源500からの電源電圧vacから電源ラインPL1の直流電圧vdcへのAC−DC変換を制御する。
【0054】
ここで、目標電流iL*を、電源電圧vacと同位相の交流電流の絶対値に設定すると、電源電流iacおよび電源電圧vacが同位相となり、外部電源500から供給される電力の力率を1に近付けることができる。これにより、電源電流iacおよび電源電圧vacの積で示される瞬時電力VAが常に正値となるので、瞬時電力VAの平均値である有効電力Peが大きくなる。すなわち、AC−DC変換器250は、AC−DC変換に加えて、PFC(Power Factor Correction)回路としても動作できる。
【0055】
平滑コンデンサ220は、AC−DC変換器250からダイオードD4を経由して供給される電流により充電される。また、平滑コンデンサ220から放電される電流は、DC−DC変換器210を介してメインバッテリ10を充電する。
【0056】
これらの充放電により、平滑コンデンサ220の電圧、すなわち直流電圧vdcは、電源周波数の2倍の周波数で変動することになる。平滑コンデンサ220によって充放電される電力Pcは、直流電圧vdcと同様に、電源周波数の2倍の周波数で変動する。
【0057】
なお、後ほど詳細に説明するように、AC−DC変換器250での目標電流iL*の大きさ(振幅)は、直流電圧vdcを目標電圧vdc*と合致させるように制御される。外部充電時における目標電圧vdc*は、少なくとも、電源電圧vacのピーク値よりも高く設定される(たとえば、300〜400V程度)。
【0058】
図4を参照して、DC−DC変換器210は、スイッチング素子Q1のオンオフ制御により、電流ILひいてはバッテリ電流IBを制御する。なお、DC−DC変換器210では、スイッチング素子Q1およびQ2は相補にオンオフされる。すなわち、スイッチング素子Q1のオン期間においてはスイッチング素子Q2がオフされ、スイッチング素子Q1のオフ期間にはスイッチング素子Q2がオンされる。
【0059】
図4に示されるように、スイッチング素子Q1のオン期間には電流ILは上昇し、スイッチング素子Q1のオン期間には電流ILは低下する。したがって、電流ILの平均値は、スイッチング素子Q1のデューティ比により制御できる。
【0060】
再び図3を参照して、DC−DC変換器210によって制御された電流ILから、キャパシタC1によってリップル成分が除去されたバッテリ電流IBにより、メインバッテリ10が充電される。バッテリ電流IBは、電流ILの平均値に相当する。DC−DC変換器210は、電流ILが目標充電電流IB*と一致するように、スイッチング素子Q1のデューティ比を制御する。
【0061】
再び図1を参照して、DC−DC変換器210は、外部電源500からメインバッテリ10を充電する一方向のみの電流制御に対応するためには、必ずしもスイッチング素子Q2を有する必要はない。すなわち、下アームには、ダイオードD2のみが存在していればよい。ただし、スイッチング素子Q2を設けることにより、メインバッテリ10の出力電圧を昇圧して、平滑コンデンサ220を充電することが可能となる。すなわち、外部充電(特に、充電開始時)の制御の柔軟性が向上する。
【0062】
図3および図4に示したように、通常制御モードでは、AC−DC変換器250は、外部電源500からの電源電圧vacを、電源電圧vacのピーク値よりも高い直流電圧(vdc)に変換して、電源ラインPL1に出力する。そして、DC−DC変換器210は、スイッチング素子Q1のオンオフ制御による、電源ラインPL1およびPL2の間の直流電力変換によって、メインバッテリ10のバッテリ電流IBを、目標充電電流IB*に制御する。
【0063】
次に、図5および図6を用いて、上アームオン制御時における充電装置200の動作を説明する。
【0064】
図5を参照して、上アームオン制御モードでは、DC−DC変換器210は、スイッチング素子Q1をオンに固定する。一方で、スイッチング素子Q2はオフに固定される。したがって、電源ラインPL1およびPL2は、常時電気的に接続されることになる。
【0065】
この結果、DC−DC変換器210では電流および電圧が制御されなくなり、スイッチング素子Q1を通過する電流I(Q1)およびインダクタL1の電流ILには、AC−DC変換器250でのAC−DC変換の際に発生した、電源周波数の2倍の周波数の変動成分が含まれることになる。
【0066】
図6を参照して、AC−DC変換器250は、通常制御モードと同様に動作して、外部電源500からの電源電圧vacを、電源電圧vacのピーク値よりも高い直流電圧(vdc)に変換する。
【0067】
上アームオン制御モードでは、オンに固定されるスイッチング素子Q1を介して、メインバッテリ10と平滑コンデンサ220とが接続されるため、直流電圧vdcは、バッテリ電圧VBと同等となる。そして、平滑コンデンサ220が電力バッファとして機能することはなく、AC−DC変換器250から供給される電流が、そのままメインバッテリ10を充電するバッテリ電流IBとなる。したがって、AC−DC変換器250では、目標電流iL*(図3)の大きさ(振幅)が、直流電圧vdcに応じて制御されることはなく、目標充電電流IB*に対応した定数として設定される。
【0068】
AC−DC変換器250から電源ラインPL1へ供給される電流には、通常制御モードと同様に、電源周波数の2倍の周波数のリップル成分が含まれる。このリップル成分は、DC−DC変換器210での電流IL、図5に示したスイッチング素子Q1の電流I(Q1)、およびメインバッテリ10のバッテリ電流IBの各々にもそのまま重畳される。
【0069】
図7は、外部充電制御の制御構成を説明するためのブロック図である。なお、図7に示された各機能ブロックについては、当該ブロックに相当する機能を有する回路(ハードウェア)で構成してもよいし、予め設定されたプログラムに従ってECUがソフトウェア処理を実行することにより実現してもよい。
【0070】
図7を参照して、制御装置300は、AC−DC変換器250を制御するための制御部320と、制御モード選択部340と、DC−DC変換器210を制御するための制御部350とを含む。
【0071】
制御部320は、減算部322,328,334と、PI演算部324,332と、制御スイッチ330と、乗算部326と、PWM制御部336とを含む。
【0072】
減算部322は、直流電圧vdcの目標電圧vdc*から、電圧センサ307により検出された直流電圧vdcを減算する。PI演算部324は、減算部322によって演算された電圧偏差Δvdcに基づく比例積分演算を実行する。PI演算部324による制御演算値は、直流電圧vdcを目標電圧vdc*に一致させるためのフィードバック演算値に相当する。
【0073】
制御スイッチ330は、制御モード選択部340からの制御信号Smに従って制御される。制御信号Smによって通常制御モードが指示されるときには、制御スイッチ330は、“a”側に制御されて、PI演算部324による制御演算値を、目標電流振幅iLAに設定する。一方、制御信号Smによって上アームオン制御モードが指示されるときには、制御スイッチ330は、“b”側に制御されて、目標充電電流IB*に対応して定められた、フィードバック演算によらない定数Iconstを、目標電流振幅iLA*に設定する。
【0074】
乗算部326は、制御スイッチ330が選択した目標電流振幅iLA*と、正弦波関数|sinωt|とを乗算することによって、目標電流iL*を算出する。このωは、外部電源500の電源周波数に対応する。
【0075】
減算部328は、乗算部326が算出した目標電流iL*と、電流センサ305によって検出された電流iLとの電流偏差ΔiLを演算する。PI演算部332は、減算部328によって演算された電流偏差ΔiLに基づく比例積分演算を実行する。減算部334は、電源電圧の絶対値|vac|からPI演算部332による制御演算値を減算することによって、制御指令値を設定する。
【0076】
PWM制御部336は、所定周波数のキャリア信号337と、減算部334からの制御指令値338との比較に基づいて、スイッチング素子Q3のオンオフ制御信号を生成する。具体的には、一般的なパルス幅変調(PWM)制御に従って、制御指令値338がキャリア信号337の電圧よりも高いときにはスイッチング素子Q3がオンされ、反対に、制御指令値338がキャリア信号337の電圧よりも低いときには、スイッチング素子Q3はオフされる。
【0077】
制御部350は、減算部352と、PI演算部354と、PWM制御部356と、制御スイッチ360と、反転器362とを含む。
【0078】
減算部352は、メインバッテリ10の目標充電電流IB*からバッテリ電流IBを減算する。PI演算部354は、減算部352によって演算された電流偏差ΔIBに基づく比例積分演算によって、制御指令値を生成する。PI演算部354による制御指令値は、バッテリ電流IBを目標充電電流IB*に一致させるためのフィードバック演算値に相当する。
【0079】
PWM制御部356は、所定周波数のキャリア信号357と、PI演算部354からの制御指令値358との比較に基づいて、制御パルスCPを生成する。制御パルスCPは、デューティ比DTが0〜1.0のパルス状の信号となる。
【0080】
制御スイッチ360は、制御モード選択部340からの制御信号Smに従って制御される。制御信号Smによって通常制御モードが指示されるときには、制御スイッチ360は、“a”側に制御されて、PI演算部354からの制御パルスCPを、スイッチング素子Q1のオンオフ制御信号として出力する。
【0081】
一方、制御信号Smによって上アームオン制御モードが指示されるときには、制御スイッチ360は、“b”側に制御される。このとき、制御スイッチ360は、スイッチング素子Q1をオンに固定するために、論理ハイレベルに固定された信号(すなわち、DT=1.0)を、スイッチング素子Q1のオンオフ制御信号として出力する。
【0082】
反転器362は、スイッチング素子Q1のオンオフ制御信号の論理レベルを反転させて、スイッチング素子Q2のオンオフ制御信号を発生する。
【0083】
制御モード選択部340は、メインバッテリ10の外部充電の状態に応じて、上アームオン制御の適用可否を判断するとともに、上アームオン制御を適用可能な条件が成立しているときには、上アームオン制御モードを選択するように、制御信号Smを発生する。一方で、上アームオン制御を適用可能な条件が非成立のときには、制御信号Smは、通常制御モードを選択するように設定される。
【0084】
たとえば、制御モード選択部340は、バッテリ電圧VBと、外部電源500からの電源電圧vacのピーク値(振幅値)との比較に基づいて、上アームオン制御の適用可否を判断する。
【0085】
上アームオン制御モードでは、メインバッテリ10および電源ラインPL1がスイッチング素子Q1によって固定的に接続されるため、バッテリ電圧VBと直流電圧vdcとが同等となる。このため、非絶縁型のAC−DC変換器250では、バッテリ電圧VBが電源電圧vacのピーク値(振幅値)よりも低いと、外部電源500からの電源電流iacを正確に制御することができなくなる。この結果、充電装置200を流れる電流および充電電流(バッテリ電流IB)が過大となること、あるいは、AC−DC変換器250による力率改善ができなくなることによる効率低下が懸念される。
【0086】
したがって、制御モード選択部340は、バッテリ電圧VBが電源電圧vacのピーク値よりも高いときに、上アームオン制御を適用可能と判断して、上アームオン制御モードを選択する。一方で、制御モード選択部340は、バッテリ電圧VBが電源電圧vacのピーク値よりも低いときには、上アームオン制御を適用不能と判断して、通常制御モードを選択する。
【0087】
図8には、通常制御モードから上アームオン制御への第1の移行例が示される。
図8を参照して、外部充電が開始される時刻t0において、バッテリ電圧VBは、電源電圧vacのピーク値よりも低い。このため、上アームオフ制御はオフされて、通常制御モードによって、メインバッテリ10は外部充電される。
【0088】
通常制御モードでの外部充電によって、バッテリ電圧VBは徐々に上昇する。そして、時刻t2において、バッテリ電圧VBは、電源電圧vacのピーク値よりも高くなる。この結果、上アームオフ制御はオフされるので、時刻t1以降では、上アームオン制御モードによって、メインバッテリ10は外部充電される。
【0089】
そして、時刻t3において、メインバッテリ10の充電が完了することによって、外部充電が終了される。
【0090】
このようにすると、上アームオン制御を適用すると過大電流の発生や力率低下が懸念される充電状態を回避して、DC−DC変換器210の効率が上昇する上アームオン制御を適用できる。また、通常制御モードおよび上アームオン制御モードを通じて、AC−DC変換器250がPFC回路として動作できるので、外部充電の効率が上昇する。
【0091】
なお、外部充電の開始時(時刻t1)において、バッテリ電圧VBが、既に電源電圧vacのピーク値よりも高い場合には、上アームオン制御モードのみを適用して外部充電を行うことが可能である。
【0092】
あるいは、制御モード選択部340は、外部充電によるメインバッテリ10の充電電力に基づいて、上アームオン制御の適用可否を判断する。
【0093】
図5に示したように、上アームオン制御モードでは、スイッチング素子Q1の通過電流I(Q1)に、電源周波数の2倍の周波数のリップル電流が発生する。この結果、電流I(Q1)のピーク値が増加するため、このようなリップル電流が流れても、スイッチング素子Q1の電流定格を越えない範囲内に収まる状態に限定して、上アームオン制御を適用することが必要である。
【0094】
図9には、通常制御モードから上アームオン制御への第2の移行例が示される。
図9を参照して、外部充電の開始時(時刻t0)において、充電電力Pchの通常値に対応させて、目標充電電流IB*が所定値に設定される。通常の充電電力では、上アームオフ制御はオフされて、通常制御モードが適用される。
【0095】
通常制御モードでの外部充電によって、メインバッテリ10のSOCは徐々に上昇する。そして、SOCが所定値に達することにより充電がある程度まで進行したことが検知されると(時刻t11)、充電電力Pchを絞るように、目標充電電流IB*が低下される。そして、充電電力Pchあるいは目標充電電流IB*が所定の閾値まで低下すると(時刻t2)、上アームオン制御を適用可能な条件が成立したと判断される。これにより、時刻t12以降では、メインバッテリ10は、上アームオン制御モードにて外部充電される。
【0096】
充電電力Pch、すなわち、目標充電電流IB*が低い状態では、上アームオン制御モードを適用して、スイッチング素子Q1の電流I(Q1)にリップル電流が重畳されても、ピーク電流が低く抑えられる。言い換えると、上アームオン制御の適用時における、リップル電流による電流I(Q1)のピーク値と、目標充電電流IB*と、スイッチング素子Q1の定格電流との関係に応じて、上アームオン制御モードの適用可否を判定するための目標充電電流IB*(または、充電電力Pch)の閾値を予め決定することができる。
【0097】
そして、時刻t3において、メインバッテリ10の充電が完了すると、外部充電が終了される。
【0098】
このようにすると、上アームオン制御を適用するとスイッチング素子Q1に過大な電流が流れることが懸念される充電状態を回避して、上アームオン制御を適用した高効率の外部充電を実現できる。
【0099】
なお、200VACの外部電源500に対応可能な充電装置200において、100VACの外部電源500を用いて外部充電を行うとき等、定格よりも低い電力で外部充電を行う際には、外部充電の開始時(時刻t1)から充電完了(時刻t2)までを通じて、上アームオン制御モードのみを適用して外部充電を行うことが可能である。
【0100】
このように、本実施の形態による電動車両の充電装置によれば、外部充電状態に応じて、適切に上アームオン制御を適用することができる。すなわち、上アームオン制御の適用によって、過大電流や力率低下が発生することを防止した上で、上アームオン制御の適用による高効率の外部充電を実現することができる。
【0101】
次に、通常制御モードから上アームオン制御モードに移行するときの好ましい移行制御についてさらに説明する。
【0102】
図10は、通常制御から上アームオン制御に移行するときの制御動作を説明するための第1の波形図が示される。
【0103】
図10を参照して、時刻taまでは、図8または図9で例示した、上アームオン制御を適用可能な条件が成立しておらず、通常制御モードが適用される。このため、図7の制御スイッチ330,360は“a”側に接続されている。
【0104】
この結果、AC−DC変換器250のスイッチング素子Q3のオンオフ制御によって、直流電圧vdcは目標電圧vdc*に制御されている。上述のように、目標電圧vdc*は、メインバッテリ10の出力電圧より高い領域に設定されている。そして、DC−DC変換器210のスイッチング素子Q1がオンオフ制御されることによって、直流電圧vdcを降圧してメインバッテリ10が充電される。
【0105】
時刻taにおいて、上アームオン制御を適用可能な条件が成立すると、AC−DC変換器250およびDC−DC変換器210が一旦停止する待機期間T0が設けられる。待機期間T0では、平滑コンデンサ220が図示しない放電抵抗によって放電されることによって、直流電圧vdcが徐々に低下する。放電抵抗は、図1の構成において、電源ラインPL1および接地ラインGLの間に、平滑コンデンサ220と並列に接続することができる。
【0106】
待機期間T0の間に、直流電圧vdcはバッテリ電圧VBまで低下する。直流電圧vdcがバッテリ電圧VBに達した後も、ダイオードD1を通じて、メインバッテリ10から平滑コンデンサ220に電流が供給されるため、両者の電圧は同等に維持される。
【0107】
時刻tbにおいて待機期間T0が終了すると、AC−DC変換器250およびDC−DC変換器210が再び起動されるとともに、上アームオン制御モードが適用される。これにより、図7の制御スイッチ330,360は“b”側に接続される。DC−DC変換器210では、スイッチング素子Q1がオンに固定される。
【0108】
一方で、AC−DC変換器250は、スイッチング素子Q3のオンオフ制御による電源電圧vacのAC−DC変換動作によって、メインバッテリ10の充電電流を発生する。
【0109】
図10に示したような通常制御モードから上アームオン制御モードへの移行制御を適用することにより、上アームオン制御の開始時に、スイッチング素子Q1をターンオンした瞬間に生じる突入電流が抑制できる。この結果、上アームオン制御をさらに円滑に適用することができる。
【0110】
図11は、通常制御モードから上アームオン制御モードに移行するときの制御動作の第2の例を説明するための波形図である。
【0111】
図11を参照して、図10と同様に、上アームオン制御を適用可能な条件が成立する時刻taまでは、通常制御モードが適用されている。さらに、時刻taから時刻tbまで、待機期間T0が設けられる。
【0112】
待機期間T0では、AC−DC変換器250およびDC−DC変換器210の起動が維持されるとともに、通常制御モードが適用される。そして、平滑コンデンサ220の目標電圧vdc*が、そのときのバッテリ電圧VBに向かって徐々に低下される。AC−DC変換器250では、直流電圧vdcが目標電圧vdc*に従って低下するように、スイッチング素子Q3のオンオフデューティが制御される。これにより、待機期間T0が終了するまでに、直流電圧vdcは、バッテリ電圧VBまで低下する。
【0113】
時刻tbからは、図10と同様に、上アームオン制御モードが適用される。これにより、図7の制御スイッチ330,360は“b”側に接続される。そして、DC−DC変換器210では、スイッチング素子Q1がオンに固定される。一方、AC−DC変換器250は、スイッチング素子Q3のオンオフ制御による電源電圧vacのAC−DC変換動作によって、メインバッテリ10の充電電流を発生する。
【0114】
図11に示したような通常制御モードから上アームオン制御モードへの移行制御によっても、図10と同様に、上アームオン制御の開始時に、スイッチング素子Q1をターンオンした瞬間に生じる突入電流が抑制できる。さらに、図10による移行制御とは異なり、平滑コンデンサ220に放電抵抗を設ける必要がないので、さらに効率を向上することができる。
【0115】
なお、図10および図11の待機期間T0は、タイマ値等に基づいて一定時間の経過によって終了させてもよく、電圧検出値の比較に基づいて直流電圧vdcがバッテリ電圧VBまで低下したことが検知されることに応じて終了させてもよい。
【0116】
また、充電装置200の構成、特に、AC−DC変換器250やDC−DC変換器210の構成は、本実施の形態での例示に限定されるものではない点を確認的に記載する。すなわち、AC−DC変換器250は、外部電源500からの電源電圧vacを、該電源電圧のピーク電圧よりも高い直流電圧に変換することが可能な非絶縁型の電力変換器であれば、図1の例示とは異なる回路構成を適用することができる。また、DC−DC変換器210は、オン固定されたときに、AC−DC変換器250からの電流をメインバッテリ10へそのまま供給する経路を形成する一方で、オンオフ制御されたときにはメインバッテリ10の充電電流を制御できるように配置されたスイッチング素子を具備する非絶縁型の構成であれば、図1の例示とは異なる回路構成を適用することができる。
【0117】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明は、電動車両に搭載された蓄電装置を、車両外部の電源によって充電する際の充電制御に適用できる。
【符号の説明】
【0119】
10 メインバッテリ(蓄電装置)、12,305 電流センサ、15 電池センサ、20 電池監視ユニット、30 システムメインリレー、40 コンバータ、45 補機バッテリ、50 駆動機器、60 外部充電リレー、100 電動車両、200 充電装置、205 インレット、210 DC−DC変換器、220 平滑コンデンサ、250 AC−DC変換器、300 制御装置、302,307 電圧センサ、320 制御部(AC−DC変換器)、336,356 PWM制御部、322,328,334,352 減算部、324,332,354 PI演算部、326 乗算部、330,360 制御スイッチ、337,357 キャリア信号、338,358 制御指令値、340 制御モード選択部、350 制御部(DC−DC変換器)、362 反転器、400 充電ケーブル、500 外部電源、C0,C1 キャパシタ、CP 制御パルス、D1,D2,D3 逆並列ダイオード、D4〜D8 ダイオード、DT デューティ比、GL 接地ライン、IB バッテリ電流、IB* 目標充電電流、IL 電流、iLA* 目標電流振幅、Iconst 一定値(上アームオン制御時)、I(Q1) 通過電流(スイッチング素子Q1)、L1,L2 インダクタ、N1,N2 ノード、PL1,PL2,PL3 電源ライン、Pc 電力(平滑コンデンサ)、Pch 充電電力(メインバッテリ)、Pe 有効電力(外部電源)、Q1〜Q3 電力用半導体スイッチング素子、S510 ステップ、Sm 制御信号(制御モード)、T0 待機期間、TB バッテリ温度、VA 瞬時電力(外部電源)、VB バッテリ電圧、iL 通過電流、iL* 目標電流、iac 電源電流、vac 電源電圧、vdc 直流電圧、vdc* 目標電圧。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置を搭載した電動車両の充電装置であって、
外部電源からの交流電圧を、該交流電圧のピーク電圧よりも高い直流電圧に変換して第1の電源ラインに出力するための第1の電力変換器と、
前記外部電源によって前記蓄電装置を充電する外部充電のときに、前記第1の電源ラインと、前記蓄電装置の正極と電気的に接続された第2の電源ラインとの間で直流電力変換を行うための第2の電力変換器とを備え、
前記第2の電力変換器は、
第1のノードと前記第1の電源ラインとの間に電気的に接続される第1のスイッチング素子と、
前記第1のノードと前記第2の電源ラインとの間に電気的に接続された第1のインダクタとを含み、
前記充電装置は、
前記第1および前記第2の電力変換器を制御するための制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記外部充電のときに、前記第1のスイッチング素子のオンオフ制御を伴って前記蓄電装置を充電する第1の制御モードと、前記第1のスイッチング素子をオン固定して前記蓄電装置を充電する第2の制御モードとを、前記外部充電の状態に応じて選択する、電動車両の充電装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記交流電圧のピーク電圧よりも前記蓄電装置の電圧が高いときに、前記第2の制御モードを選択する、請求項1記載の電動車両の充電装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記蓄電装置の充電電力が所定レベルよりも低いときに、前記第2の制御モードを選択する、請求項1または2に記載の電動車両の充電装置。
【請求項4】
前記第1の電力変換器は、
前記外部電源からの前記交流電圧を整流して第3の電源ラインに出力するための整流器と、
前記第3の電源ラインおよび第2のノードの間に電気的に接続された第2のインダクタと、
前記第2のノードから前記第1の電源ラインへ向かう方向を順方向として、前記第2のノードおよび前記第1の電源ラインの間に電気的に接続された第1のダイオードと、
前記第2のノードおよび、前記蓄電装置の負極と電気的に接続された第4の電源ラインの間に電気的に接続された第2のスイッチング素子とを含み、
前記制御装置は、前記第2のインダクタを通過する電流が、前記交流電圧と位相が一致した交流電流の絶対値である目標電流と一致するように前記第2のスイッチング素子のオンオフを制御し、かつ、前記第1の制御モードでは、前記第1の電源ラインの電圧に応じて前記目標電流の振幅を制御する一方で、前記第2の制御モードでは、前記第1の電源ラインの電圧によらず前記目標電流の振幅を固定する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電動車両の充電装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記第1の制御モードでは、前記蓄電装置の充電電流と目標充電電流との偏差に応じて、前記第1のスイッチング素子のオンオフのデューティ比を制御する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電動車両の充電装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記第1の制御モードの選択中に、前記外部充電の状態が前記第2の制御モードを適用可能な所定条件を満たした場合には、前記第1の電源ラインの電圧が前記蓄電装置の電圧まで低下した後に、前記第1の制御モードから前記第2の制御モードへの切換を実行する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電動車両の充電装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記外部充電の状態が前記所定条件を満たした場合には、前記第1および前記第2の電力変換器を停止させて、放電抵抗による放電によって前記第1の電源ラインの電圧を低下させる、請求項6記載の電動車両の充電装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記外部充電の状態が前記所定条件を満たした場合には、前記第2の電力変換器に対する前記第1の電源ラインの電圧の目標電圧を前記蓄電装置の電圧まで低下させる、請求項6記載の電動車両の充電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−16239(P2012−16239A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152945(P2010−152945)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】