説明

電子部品、デュープレクサ、通信モジュール、通信装置、および電子部品の製造方法

【課題】送信フィルタ及び受信フィルタのアイソレーション特性を改善することができる電子部品を実現する。
【解決手段】送信フィルタチップ3が、接地された金属部5aで被覆されていることにより、送信フィルタチップ3付近に生じる電磁波はグランドに落ちる。したがって、電磁波は送信フィルタチップ3の周辺に滞留しないため、Rx帯域のアイソレーションを低減することができる。また、受信フィルタチップ2及び整合回路チップ4が樹脂部5bで被覆されていることにより、送信フィルタチップ3付近に生じる電磁波が受信フィルタチップ2側へ広がらないため、Tx帯域のアイソレーションを低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の開示は、電子部品、デュープレクサ、通信モジュール、通信装置、および電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の一つとして、弾性表面波デバイス(以下、SAWデバイスと称する)が知られている。弾性表面波デバイスは、例えばテレビジョン受像機、ビデオテープレコーダ、DVD(Digital Versatile Disk)レコーダ、携帯電話機等のフィルタ素子や発振子に広く用いられている。
【0003】
現在、SAWデバイスは、例えば45MHz〜2GHzの周波数帯域における無線信号を処理する各種回路に採用されている。SAWデバイスが採用されている回路は、例えば送信用バンドパスフィルタ、受信用バンドパスフィルタ、局部発信フィルタ、アンテナ共用器、中間周波フィルタ、FM変調器等がある。また、先に述べた受信用フィルタと送信用フィルタを備えた回路として、デュープレクサがある。
【0004】
図1は、デュープレクサの概略構成を示すブロック図である。図1に示すように、デュープレクサ102は、位相整合回路103、受信フィルタ104、および送信フィルタ105を備えている。デュープレクサ102は、アンテナ101を介して入力される受信信号を受信フィルタ104において所定の周波数帯域のみの信号を抽出し、端子106から出力する。また、端子107を介して入力される送信信号は、送信フィルタ105を介してアンテナ101から出力される。
【0005】
近年、これらの信号処理機器は小型化が進み、使用されるSAWデバイスなどの電子部品も小型化の要求が強くなってきている。特に、携帯電話機等の携帯用電子機器には、表面実装で且つ薄型のSAWデバイスが要求されるようになってきた。
【0006】
特許文献1には、パッケージ基板とSAWデバイスチップと周辺部を半田などの金属材料によりロウ付け封止するSAWデバイスが開示されている。
【0007】
図2は、特許文献1に開示されているSAWデバイスの断面図である。図2において、SAWデバイスチップは、圧電基板210上の一主面にSAWを励起及び受信するための電極211が形成されている。圧電基板210の同一主面には、電気信号を入出力するための電極パッド212が配されている。更に、SAWデバイスチップの外周表面には、封止部203が配されている。
【0008】
パッケージ基板220は、外部端子222と、その反対側の面に形成されSAWデバイスチップ210と電気的に接続するためのパッド部233と、SAWデバイスチップ210の封止部203と対向する封止部232とを備えている。
【0009】
外部端子222とパッド部233とは、パッケージ基板220内を貫通する貫通配線221で電気的に接続されている。SAWデバイスチップ210とパッケージ基板220は、金属バンプ240を介して、いわゆるフリップチップ接合されている。
【0010】
更に、SAWデバイスチップ210とパッケージ基板220との対向領域において、SAWデバイスチップ210の外周縁近傍は、封止はんだ241により気密封止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
特開2004−129193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献に開示されているデバイスチップでは、デバイスチップが外装樹脂層250で覆われているため、電磁界が受信フィルタ側には広がりにくく、送信帯域のアイソレーションは悪化しない。しかし、送信フィルタ付近の電磁界は広がったままのため、送信フィルタはノイズの影響を受けることになり、受信帯域のアイソレーションを悪化させることになる。
【0013】
本発明は,送信フィルタおよび受信フィルタの帯域の両方のアイソレーション特性を良好にする電子部品、デュープレクサ、通信モジュール、通信装置、および電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願に開示する電子部品は、基板と、前記基板上に搭載された複数のデバイスチップと、前記デバイスチップの少なくとも上部を被覆するように配されている蓋体とを備えた電子部品であって、前記蓋体は、導電部と、電気的に絶縁されている絶縁部とを備え、前記導電部は、前記複数のデバイスチップのうち一方のデバイスチップの少なくとも一部を被覆し、前記絶縁部は、前記複数のデバイスチップのうち他方のデバイスチップの少なくとも一部を被覆している。
【0015】
本願に開示するデュープレクサは、基板と、前記基板上に搭載され、受信フィルタ回路を備えた受信フィルタチップと、前記基板上に搭載され、送信フィルタ回路を備えた送信フィルタチップと、前記受信フィルタチップ及び前記送信フィルタチップの少なくとも上部を被覆するように配されている蓋体とを備えた、デュープレクサであって、前記蓋体は、導電部と、電気的に絶縁されている絶縁部とを備え、前記導電部は、前記送信フィルタチップの少なくとも一部を被覆し、前記絶縁部は、前記受信フィルタチップの少なくとも一部を被覆している。
【0016】
本願に開示する電子部品の製造方法は、基板に複数のデバイスチップを実装する工程と、前記複数のデバイスチップに感光性樹脂シートを積層する工程と、前記感光性樹脂シートに紫外光を照射し、前記複数のデバイスチップのうち一方のデバイスチップ上の感光性樹脂シートを除去する工程と、前記一方のデバイスチップ上にシート状の半田を配置する工程と、前記半田を加熱溶融し、前記一方のデバイスチップを半田で被覆する工程とを有する。
【発明の効果】
【0017】
本願の開示によれば、送信帯域と受信帯域の両方におけるアイソレーション特性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】デュープレクサのブロック図
【図2】特許文献1に開示されている電子部品の断面図
【図3】本実施の形態にかかる電子部品の斜視図
【図4】本実施の形態にかかる電子部品におけるアイソレーション特性を示す特性図
【図5】シミュレーションで用いたデュープレクサの平面図
【図6A】シミュレーションで用いたデュープレクサの断面図
【図6B】シミュレーションで用いたデュープレクサの断面図
【図6C】シミュレーションで用いたデュープレクサの断面図
【図7】境界位置と原点位置との距離と、境界原点に対するアイソレーションの差分との関係を示す特性図
【図8】従来のデュープレクサの斜視図
【図9】デュープレクサのアイソレーション特性を示す特性図
【図10A】本実施の形態にかかる電子部品の製造工程を示す図
【図10B】本実施の形態にかかる電子部品の製造工程を示す図
【図10C】本実施の形態にかかる電子部品の製造工程を示す図
【図10D】本実施の形態にかかる電子部品の製造工程を示す図
【図10E】本実施の形態にかかる電子部品の製造工程を示す図
【図10F】本実施の形態にかかる電子部品の製造工程を示す図
【図10G】本実施の形態にかかる電子部品の製造工程を示す図
【図11】通信モジュールのブロック図
【図12】通信装置のブロック図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態における電子部品は、以下のような態様をとることができる。
【0020】
すなわち、電子部品において、前記デバイスチップは、送信フィルタチップと受信フィルタチップとを含み、前記導電部と前記絶縁部との境界部は、前記送信フィルタチップにおける前記受信フィルタチップに対向する面の面方向に重なる位置、またはその近傍に配されている構成とすることができる。
【0021】
電子部品において、前記導電部は、半田で形成されている構成とすることができる。このような構成とすることにより、製造性が優れた電子部品を実現することができる。
【0022】
電子部品において、前記絶縁部は、樹脂で形成されている構成とすることができる。このような構成とすることにより、製造性が優れた電子部品を実現することができる。
【0023】
(実施の形態)
〔1.電子部品の構成〕
図3は、本実施の形態の電子部品の一例であるデュープレクサの斜視図である。本実施の形態では、電子部品の一例としてデュープレクサを挙げたが、少なくとも複数のフィルタを備えた電子部品であればよく、例えば受信フィルタを複数備えたデュアルフィルタであってもよい。
【0024】
図3に示すように、デュープレクサは、パッケージ基板1上に、受信フィルタチップ2、送信フィルタチップ3、および整合回路チップ4が、フリップチップボンディングで実装されている。受信フィルタチップ2、送信フィルタチップ3、および整合回路チップ4は、蓋体5によって被覆されている。
【0025】
蓋体5は、金属部5aと樹脂部5bとを有する。金属部5aは、少なくとも導電性を有する材料で形成されていればよく、本実施の形態のように錫(Sn)、銀(Ag)、銅(Cu)などを主成分とする半田で形成することが好ましい。樹脂部5bは、少なくとも不導体で形成されていればよく、ポリイミド樹脂やエポキシ樹脂で形成することが好ましい。金属部5aは、送信フィルタチップ3の少なくとも上部を被覆している。金属部5aは、パッケージ基板1上に形成されたグランドパターン(不図示)に接合され、電気的に接地されている。樹脂部5bは、受信フィルタチップ2及び整合回路チップ4の少なくとも上部を被覆している。
【0026】
送信フィルタチップ3が、接地された金属部5aで被覆されていることにより、送信フィルタチップ3付近に生じる電磁波はグランドに落ちる。したがって、電磁波は送信フィルタチップ3の周辺に滞留しないため、受信帯域(以下Rx帯域と称する)のアイソレーションを低減することができる。
【0027】
また、受信フィルタチップ2及び整合回路チップ4が樹脂部5bで被覆されていることにより、送信フィルタチップ3付近に生じる電磁波が受信フィルタチップ2側へ広がらないため、送信帯域(以下、Tx帯域と称する)のアイソレーションを低減することができる。
【0028】
図4は、図3に示すデュープレクサを電磁界シミュレーションで解析した結果を示す。図4において、実線の特性は、図3に示すデュープレクサにおける解析結果である。一点鎖線の特性は、金属のみで形成されている蓋体を備えたデュープレクサ(例えば図3参照)における解析結果である。破線の特性は、樹脂のみで形成されている蓋体を備えたデュープレクサにおける解析結果である。
【0029】
図4に示すように、蓋体が金属のみで形成されている場合は、Tx帯域のアイソレーションが悪化する。また、蓋体が樹脂のみで形成されている場合は、Rx帯域のアイソレーションが悪化する。一方、送信フィルタチップ3を蓋体5の金属部5aで被覆し、受信フィルタチップ2側を蓋体5の樹脂部5bで被覆する構成とすることにより、Rx帯域及びTx帯域の両方のアイソレーションを低減することができる。
【0030】
以下、蓋体5における金属部5aと樹脂部5bとの境界7(図3参照)の位置と、アイソレーションとの関係について説明する。本実施の形態では図3に示すように、境界7を、送信フィルタチップ3の端部3aと一致する位置を原点として、矢印AまたはBに示す方向へ変位させた任意の位置におけるアイソレーション特性の変化を、電磁界シミュレーションを用いて測定した。
【0031】
図5は、電磁界シミュレーションに用いたデュープレクサのモデルの平面図である。図5において、蓋体5の図示は省略した。図5に示すように、電磁界シミュレーションに用いたモデルは、パッケージ基板1の外寸が縦2.0mm×横2.5mm、受信フィルタチップ2の外寸が縦0.78mm×横1.2mm、送信フィルタチップ3の外寸が縦1.6mm×横0.8mm、整合回路チップ4の外寸が縦0.8mm×横1.2mmである。受信フィルタチップ2及び送信フィルタチップ3の厚さは、それぞれ0.25mmである。整合回路チップ4の厚さは、0.25mmである。受信フィルタチップ2と送信フィルタチップ3との間隔は、0.1mmである。
【0032】
図6A〜図6Cは、電磁界シミュレーションに用いたデュープレクサのモデルの断面図であり、図5におけるZ−Z部の断面を示す。図6Aは、境界7の位置を、送信フィルタチップ3側の端部近傍に配置しているデュープレクサである。図6Bは、境界7の位置を、送信フィルタチップ3の端部3aと一致する位置に配置しているデュープレクサである。図6Cは、境界7の位置を、受信フィルタチップ2側の端部近傍に配置しているデュープレクサである。本実施の形態では、図6Bに示す境界7の位置を原点位置と定義する。
【0033】
図7は、図5及び図6A〜図6Cに示すモデルを用いて電磁界シミュレーションを行った結果を示す。図7において、プロットされた黒点は、境界7の任意位置における、Rx帯域のアイソレーションと境界7が原点位置にある時のRx帯域のアイソレーションとの差分値である。プロットされた白点は、境界7の任意位置における、Tx帯域のアイソレーションと境界7が原点位置にある時のTx帯域のアイソレーションとの差分値である。図7において、正値の距離Dは、境界7の位置を図6Bに示す原点位置から矢印Aに示す側に配置した時の、境界7の位置と原点位置との距離である。負値の距離Dは、境界7の位置を図6Bに示す原点位置から矢印Bに示す側に配置した時の、境界7の位置と原点位置との距離である。
【0034】
図6Aに示す位置に境界7を配置した場合(原点位置からの距離Dが925μm)、パッケージ基板1上に実装されたチップは樹脂部5bで被覆されているため、送信フィルタチップ3の周辺に生じる電磁波が受信フィルタチップ2に影響を及ぼす。したがって、図7に示すようにRx帯域のアイソレーションが、原点位置におけるRx帯域のアイソレーションに比べて大きく変化する(原点位置のアイソレーションに対して+16.5dB)。Tx帯域のアイソレーションは、原点位置におけるTx帯域のアイソレーションとほぼ同等である。
【0035】
図6Cに示す位置に境界7を配置した場合(原点位置からの距離Dが−1575μm)、パッケージ基板1上に実装されたチップは、パッケージ基板1を介して接地された金属部5aで被覆されているため。送信フィルタチップ3周辺に生じる電磁波は大きく広がらない。したがって、図7に示すようにRx帯域のアイソレーションは、図6Aに示す位置に境界7を配置した場合のアイソレーションに比べて低減することができる(原点位置のアイソレーションに対して+8dB)。Tx帯域のアイソレーションは、図6Aに示す位置に境界7を配置した場合のアイソレーションに比べて高くなる(原点位置のアイソレーションに対して+4.5dB)。
【0036】
図7に示すように、Rx帯域のアイソレーションは、図6Cに示す位置に境界7を配置した場合のアイソレーションの差分値(8dB)よりも低いことが好ましい。また、Tx帯域のアイソレーションは、図6Cに示す位置に境界7を配置した場合のアイソレーションの差分値(+4.5dB)より低いことが好ましい。したがって、図7における破線枠に示すように、境界7の位置と原点位置との距離Dを−500〜300μmの範囲とすることにより、Rx帯域のアイソレーションの差分値を8dB未満に抑え、Tx帯域のアイソレーションの差分値を+4.5dBより低く抑えることができるので好ましい。
【0037】
以上のように、樹脂部5bで受信フィルタチップ2及び整合回路チップ4を被覆し、金属部5aで送信フィルタチップ3を被覆することで、Rx帯域及びTx帯域の両方におけるアイソレーションを低減することができる。
【0038】
また、金属部5aで送信フィルタチップ3の一部を被覆する(本実施の形態では、0<D≦300μm)ことにより、Rx帯域及びTx帯域の両方におけるアイソレーションを低減することができる。
【0039】
また、金属部5aで、送信フィルタチップ3の全体と、受信フィルタチップ2及び整合回路チップ4の一部とを被覆する(本実施の形態では、−500μm≦D<0)ことにより、Rx帯域及びTx帯域の両方におけるアイソレーションを低減することができる。
【0040】
(比較例)
図8は、従来のパッケージ構造を利用した弾性波デバイスを備えたデュープレクサの斜視図である。図8に示すように、デュープレクサは、セラミック基板301上に、受信フィルタチップ302、送信フィルタチップ303、および、整合回路チップ304を実装している。また、デュープレクサは、受信フィルタチップ302、送信フィルタチップ303、および、整合回路チップ304を覆うように蓋体305(図8における一点鎖線)が配され、封止されている。蓋体305は、樹脂または金属で形成されている。蓋体305は、金属で形成する場合はパッケージ基板220を介して電気的に接地される。
【0041】
図8に示すデュープレクサでは、デバイスチップの背面を覆っている蓋体305の材質によって、デュープレクサの送信端子107と受信端子106との間のアイソレーション特性が変化する場合がある。
【0042】
図9は、樹脂で形成された蓋体と、金属で形成された蓋体のアイソレーション特性を示す。図9において、実線は蓋体を樹脂で形成した場合のアイソレーション特性を示し、破線は蓋体を金属で形成した場合のアイソレーション特性を示す。また、低周波側が送信フィルタの通過帯域(以下、Tx帯域と称する)で、高周波側が受信フィルタの通過帯域(以下、Rx帯域と称する)のアイソレーション特性を示す。
【0043】
図9に示すように、蓋体を金属で形成した場合、Tx帯域のアイソレーションが悪化する。また、蓋体を樹脂で形成した場合、Rx帯域のアイソレーションが悪化する。このようなアイソレーション悪化の原因は、送信フィルタが発する電磁界を起因とするノイズの影響によるものである。
【0044】
すなわち、蓋体が金属で形成されている場合は、送信フィルタ付近の電磁界が広がりにくく、ノイズの影響は低減し、Rx帯域のアイソレーションは低減する。しかし、蓋体が金属で形成されているため各チップの背面側が同一電界となり、電磁界が受信フィルタ側にも広がる。したがって、電磁界を起因とするノイズが受信フィルタ側へ影響を及ぼすことになり、Tx帯域のアイソレーションを悪化させることになる。
【0045】
一方、蓋体が樹脂で形成されている場合は、電磁界が受信フィルタ側には広がりにくいため、Tx帯域のアイソレーションは悪化しない。しかし、送信フィルタ付近の電磁界は広がったままのため、送信フィルタはノイズの影響を受けることになり、Rx帯域のアイソレーションを悪化させることになる。
【0046】
〔2.電子部品の製造方法〕
以下、本実施の形態にかかる電子部品の一例であるデュープレクサの製造方法について説明する。
【0047】
図10A〜図10Gは、本実施の形態にかかるデュープレクサの製造プロセスを示す。図10A、図10B、図10D、図10E、図10Gにおける(a)は平面図を示し、(b)は(a)におけるZ−Z部の断面図を示す。
【0048】
まず、図10Aに示すように、多面取りが可能なセラミックで形成されたパッケージ基板1に電子部品をフリップチップボンディング実装する。実装する電子部品は、受信フィルタチップ2、送信フィルタチップ3、および整合回路チップ4である。
【0049】
次に、図10Bに示すように、パッケージ基板1に実装されている電子部品に、感光性樹脂シート16をラミネートする。
【0050】
次に、図10Cに示すように、感光性樹脂シート16の上部に露光マスクシート11を配置する。次に、露光マスクシート11の上部から感光性樹脂シート16に向かって紫外光を照射する。この時、露光マスクシート11は、感光性樹脂シート16における送信フィルタチップ3側に紫外光が照射されるように露光パターンが形成されている。上記露光現像処理を行うことにより、図10Dに示すように、受信フィルタチップ2と、整合回路チップ4と、送信フィルタチップ3の一部とを、樹脂で被覆することができる。
【0051】
次に、図10Eに示すように、感光性樹脂シート16の上部に、半田シート15を積層する。次に、半田シート15の上部に耐熱性ポリイミドシート12を積層する。半田シート15及び耐熱性ポリイミドシート12は、少なくとも感光性樹脂シート16を介して露出した送信フィルタチップ3を被覆するように積層する。半田シート15は、Sn、Ag、Cuなどを含有したシート状の金属板である。
【0052】
次に、図10Fに示すように、耐熱性ポリイミドシート12の上部を矢印に示す方向に加圧しながら、パッケージ全体を加熱する。加熱により、半田シート15が溶解する。半田シート15から溶解した半田は、送信フィルタチップ3において感光性樹脂シート16で被覆されていない箇所に充填される。
【0053】
次に、図10Gに示すように、パッケージ基板1を冷却後、耐熱性ポリイミドシート12を除去する。次に、パッケージ基板1をダイシングし、個片化する。以上のプロセスによって、送信フィルタチップ3が主に金属(半田シート15)で被覆され、受信フィルタチップ2及び整合回路チップ4が樹脂(感光性樹脂シート16)で被覆されたデュープレクサが完成する。
【0054】
なお、上記製造工程では、感光性樹脂で受信フィルタチップ2と整合回路チップ4と送信フィルタチップ3の一部とを被覆したが、受信フィルタチップ2の一部と整合回路チップ4の一部のみを感光性樹脂で被覆し、送信フィルタチップ3を半田シート15で被覆してもよい。
【0055】
〔3.通信モジュールの構成〕
図11は、本実施の形態にかかる電子部品の構造を有するデュープレクサを備えた通信モジュールの一例を示す。図11に示すように、デュープレクサ62は、受信フィルタ62aと送信フィルタ62bとを備えている。また、受信フィルタ62aには、例えばバランス出力に対応した受信端子63a及び63bが接続されている。また、送信フィルタ62bは、パワーアンプ64を介して送信端子65に接続している。ここで、デュープレクサ62には、本実施の形態にかかる電子部品の構造を有するデュープレクサで実現することができる。
【0056】
受信動作を行う際、受信フィルタ62aは、アンテナ端子61を介して入力される受信信号のうち、所定の周波数帯域の信号のみを通過させ、受信端子63a及び63bから外部へ出力する。また、送信動作を行う際、送信フィルタ62bは、送信端子65から入力されてパワーアンプ64で増幅された送信信号のうち、所定の周波数帯域の信号のみを通過させ、アンテナ端子61から外部へ出力する。
【0057】
以上のように本実施の形態にかかる電子部品の構造を有するデュープレクサを、通信モジュールに備えることで、アイソレーション特性を改善した通信モジュールを実現することができる。
【0058】
なお、図11に示す通信モジュールの構成は一例であり、他の形態の通信モジュールに本発明の電子部品を搭載しても、同様の効果が得られる。
【0059】
〔4.通信装置の構成〕
図12は、本実施の形態にかかる電子部品の構造を有するデュープレクサ、または前述の通信モジュールを備えた通信装置の一例として、携帯電話端末のRFブロックを示す。また、図12に示す構成は、GSM(Global System for Mobile Communications)通信方式及びW−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)通信方式に対応した携帯電話端末の構成を示す。また、本実施の形態におけるGSM通信方式は、850MHz帯、950MHz帯、1.8GHz帯、1.9GHz帯に対応している。また、携帯電話端末は、図12に示す構成以外にマイクロホン、スピーカー、液晶ディスプレイなどを備えているが、本実施の形態における説明では不要であるため図示を省略した。ここで、デュープレクサ73は、本実施の形態にかかる電子部品の構造を有するデュープレクサで実現することができる。
【0060】
まず、アンテナ71を介して入力される受信信号は、その通信方式がW−CDMAかGSMかによってアンテナスイッチ回路72で、動作の対象とするLSIを選択する。入力される受信信号がW−CDMA通信方式に対応している場合は、受信信号をデュープレクサ73に出力するように切り換える。デュープレクサ73に入力される受信信号は、受信フィルタ73aで所定の周波数帯域に制限されて、バランス型の受信信号がLNA74に出力される。LNA74は、入力される受信信号を増幅し、LSI76に出力する。LSI76では、入力される受信信号に基づいて音声信号への復調処理を行ったり、携帯電話端末内の各部を動作制御したりする。
【0061】
一方、信号を送信する場合は、LSI76は送信信号を生成する。生成された送信信号は、パワーアンプ75で増幅されて送信フィルタ73bに入力される。送信フィルタ73bは、入力される送信信号のうち所定の周波数帯域の信号のみを通過させる。送信フィルタ73bから出力される送信信号は、アンテナスイッチ回路72を介してアンテナ71から外部に出力される。
【0062】
また、入力される受信信号がGSM通信方式に対応した信号である場合は、アンテナスイッチ回路72は、周波数帯域に応じて受信フィルタ77〜80のうちいずれか一つを選択し、受信信号を出力する。受信フィルタ77〜80のうちいずれか一つで帯域制限された受信信号は、LSI83に入力される。LSI83は、入力される受信信号に基づいて音声信号への復調処理を行ったり、携帯電話端末内の各部を動作制御したりする。一方、信号を送信する場合は、LSI83は送信信号を生成する。生成された送信信号は、パワーアンプ81または82で増幅されて、アンテナスイッチ回路72を介してアンテナ71から外部に出力される。
【0063】
本実施の形態にかかる電子部品の構造を有するデュープレクサ、またはそのようなデュープレクサを備えた通信モジュールを通信装置に備えることで、アイソレーション特性を改善した通信装置を実現することができる。
【0064】
〔5.実施の形態の効果、他〕
本実施の形態にかかる電子部品によれば、送信フィルタチップ3を金属部5aで被覆し、受信フィルタチップ2及び整合回路チップ4を樹脂部5bで被覆する蓋体5を備えたことにより、Rx帯域及びTx帯域の両方のアイソレーションを改善することができる。
【0065】
また、本実施の形態にかかる電子部品によれば、パッケージ基板の配線レイアウトを変更することなく、アイソレーション特性を改善することができる。一般的に、送信フィルタと受信フィルタとの間のアイソレーション特性を改善するためには、送信フィルタチップと受信フィルタチップとの間にグランドパターンを形成すればよい。しかし、パッケージ基板として用いられるセラミック基板は、予め配線パターンが焼成されているため、容易に配線パターンのレイアウトを変更することができず、送信フィルタチップと受信フィルタチップとの間にグランドパターンを新たに追加することが困難である。そこで本実施の形態のように、送信フィルタチップ3側を導電体で被覆した構成とすることにより、パッケージ基板上にグランドパターンを新たに追加する必要がない。よって、パッケージ基板の配線レイアウトを変更することなく、アイソレーション特性を改善することができる。なお、蓋体5における金属部5aは、パッケージ基板1のグランドパターンに電気的に接合されているが、蓋体5を接合するためのグランドパターンは従来より備わるため、本実施の形態にかかる構成を採用したとしても新たにグランドパターンを追加する必要はない、
また、金属部5aを半田で形成したことにより、加熱するだけで金属部5aを形成することができるので、製造性を向上させることができる。
【0066】
また、樹脂部5bをポリイミド樹脂やエポキシ樹脂で形成したことにより、露光マスクを用いた露光処理で樹脂部5bを形成することができるので、製造性を向上させることができる。
【0067】
なお、本実施の形態における受信フィルタチップ2、送信フィルタチップ3、整合回路チップ4は、本発明におけるデバイスチップの一例である。本実施の形態におけるパッケージ基板1は、本発明における基板の一例である。本実施の形態における蓋体5は、本発明における蓋体の一例である。本実施の形態における金属部5aは、本発明における導体部の一例である。本実施の形態における樹脂部5bは、本発明における絶縁部の一例である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の電子部品は、各種電子機器のフィルタ素子や発振子などに用いることができる弾性表面波デバイスなどの電子部品に有用である。また、そのような電子部品の製造方法に有用である。また、そのような電子部品を搭載したデュープレクサ、通信モジュール、通信装置に有用である。
【符号の説明】
【0069】
1 パッケージ基板
2 受信フィルタチップ
3 送信フィルタチップ
4 整合回路チップ
5 蓋体
5a 金属部
5b 樹脂部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に搭載された複数のデバイスチップと、
前記デバイスチップの少なくとも上部を被覆するように配されている蓋体とを備えた、電子部品であって、
前記蓋体は、導電部と、不導体で形成されている絶縁部とを備え、
前記導電部は、前記複数のデバイスチップのうち一方のデバイスチップの少なくとも一部を被覆し、前記絶縁部は、前記複数のデバイスチップのうち他方のデバイスチップの少なくとも一部を被覆している、電子部品。
【請求項2】
前記デバイスチップは、送信フィルタチップと受信フィルタチップとを含み、
前記導電部と前記絶縁部との境界部は、前記送信フィルタチップにおける前記受信フィルタチップに対向する面の面方向に重なる位置、またはその近傍に配されている、請求項1記載の電子部品。
【請求項3】
前記導電部は、半田で形成されている、請求項1または2記載の電子部品。
【請求項4】
前記絶縁部は、樹脂で形成されている、請求項1または2記載の電子部品。
【請求項5】
基板と、
前記基板上に搭載され、受信フィルタ回路を備えた受信フィルタチップと、
前記基板上に搭載され、送信フィルタ回路を備えた送信フィルタチップと、
前記受信フィルタチップ及び前記送信フィルタチップの少なくとも上部を被覆するように配されている蓋体とを備えた、デュープレクサであって、
前記蓋体は、導電部と、不導体で形成されている絶縁部とを備え、
前記導電部は、前記送信フィルタチップの少なくとも一部を被覆し、前記絶縁部は、前記受信フィルタチップの少なくとも一部を被覆している、デュープレクサ。
【請求項6】
請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の電子部品、または請求項5に記載のデュープレクサを備えた、通信モジュール。
【請求項7】
請求項6に記載の通信モジュールを備えた、通信装置。
【請求項8】
基板に複数のデバイスチップを実装する工程と、
前記複数のデバイスチップに感光性樹脂シートを積層する工程と、
前記感光性樹脂シートに紫外光を照射し、前記複数のデバイスチップのうち一方のデバイスチップ上の感光性樹脂シートを除去する工程と、
前記一方のデバイスチップ上にシート状の半田を配置する工程と、
前記半田を加熱溶融し、前記一方のデバイスチップを半田で被覆する工程とを有する、電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図10E】
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【図10F】
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【図10G】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−200221(P2010−200221A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45339(P2009−45339)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】