説明

電気光学装置及び電子機器

【課題】段差部において配線の幅が狭くなることや断線をより確実に抑制した電気光学装置及びこれを備える電子機器を提供すること。
【解決手段】斜面部25d、25eと上段部25aとの境界部26b、26dのうちデータ線13と平面視で重なる部分と、斜面部25d、25eと下段部25b、25cとの境界部26a、26cのうちデータ線13と平面視で重なる部分とが、それぞれ直線状であり、データ線13の幅方向の縁部が、段差部25において直線状であると共に、段差部25の境界部26a〜26dと非垂直で交差する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶表示装置などの電気光学装置及びこれを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば液晶表示装置などの電気光学装置では、平面状に配置された複数の画素領域を有しており、各画素領域に液晶層などの電気光学層に電界を発生させるための画素電極が設けられている。そして、画素電極をスイッチング制御するためのスイッチング素子が画素電極に接続されており、スイッチング素子に電圧を供給するためのデータ線や走査線などの配線が格子状に設けられている。ここで、各配線は、立体的に交差させているため、絶縁膜を介して上層側と下層側とに分けて形成されている。したがって、絶縁膜のうち下層側に配線が形成されている領域では、配線の厚さに応じた段差が形成されることとなる。
【0003】
絶縁膜の上層側に平面視で下層側の配線と絶縁膜を介して交差するように形成された配線は、下層側の配線の厚さに応じて形成された段差部を乗り越えることとなる。そのため、上層側の配線の形成時に、段差部における配線の幅が狭くなって断線が発生することがある。そこで、このような段差部における断線を防止することを目的とした配線構造が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特開平5−36849号公報
【特許文献2】特開2004−304084号公報
【特許文献3】特開平7−273315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の配線構造においても、配線の幅が狭くなることや断線をより確実に防止することが望まれている。
【0005】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたもので、段差部において配線の幅が狭くなることや断線をより確実に抑制した電気光学装置及びこれを備える電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、本発明にかかる電気光学装置は、上段部、斜面部及び下段部を有する段差部の上面に形成されて前記上段部の上面と前記下段部の上面との間に引廻された配線を有する電気光学装置であって、前記斜面部と前記上段部との境界部のうち前記配線と平面視で重なる部分と、前記斜面部と前記下段部との境界部のうち前記配線と平面視で重なる部分とが、それぞれ直線状であり、該配線の幅方向の縁部が、前記段差部において直線状であると共に、前記段差部の前記境界部と非垂直で交差することを特徴とする。
【0007】
この発明では、段差部の実効的な段差が低減されることで、実効的にはより平坦な状態で配線を形成できるので、配線の断線の発生をさらに低減できる。
すなわち、配線の幅方向の縁部を斜面部の境界部と非垂直に交差させることで、配線の幅方向の縁部のうち斜面部を横断する領域の長さが、境界部と垂直に交差させることと比較して長くなる。このため、実効的には、配線が本来の斜面部よりも平坦な斜面に形成されることになる。このように配線を実際より平坦な面に形成できるため、境界部において配線の幅が狭くなるなどの線幅異常の発生を抑制して段差部における配線の抵抗上昇を防止できると共に、断線の発生を抑制できる。
また、配線をフォトリソグラフィ技術やウェットエッチング処理によって形成する場合において、配線に断線が発生することを効果的に抑制できる。すなわち、ウェットエッチング処理を用いて配線を形成する場合には、段差部上にパターニングすることによって配線を構成する配線材料層を形成し、この上面に形成される配線と同様の開口形状を有するレジスト層を形成する。このとき、レジスト層の幅方向の縁部が境界部と非垂直に交差することとなる。このため、段差部の下段部と斜面部との間の境界部や段差部の上段部と斜面部との間の境界部において、レジスト層が実際の段差部よりも平坦な面に形成されることとなる。そして、レジスト層と配線材料層との接触強度が増大し、レジスト層と配線材料層との間に空隙が発生することが抑制される。これにより、ウェットエッチング処理において、レジスト層と配線材料層との間にエッチャントが染み込むことを抑制し、レジスト層下の配線材料層がエッチングされることを防止できる。したがって、配線の断線が発生しにくくなる。
【0008】
また、本発明にかかる電気光学装置は、前記配線の幅方向の中心が、前記段差部において前記境界部と非垂直で交差することが好ましい。
この発明では、配線の幅方向の中心線を境界部と非垂直で交差させることで、配線の断線をより確実に発生しにくくすることができる。
【0009】
また、本発明にかかる電気光学装置は、前記配線の幅方向の縁部と前記境界部との交差角度が、80°以下であることが好ましい。
この発明では、交差角度を80°以下とすることで、段差部における実効的な段差を本来の段差よりも十分に小さくすることができ、配線に断線が発生することをより確実に抑制できる。
【0010】
また、本発明にかかる電気光学装置は、前記段差部が、下地層と、該下地層上に形成された下層配線と、該下層配線を被覆する被覆層によって構成され、前記配線が、平面視で前記被覆層を介して前記下層配線と交差していることとしてもよい。
この発明では、下層配線を被覆層で被覆することにより、被覆層には下層配線の厚さに応じた段差部が形成される。そして、被覆層のうち下層配線と重なる領域に上段部が形成され、被覆層のうち下層配線から離間した領域に下段部が形成され、上段部及び下段部を接続するように斜面部が形成される。
【0011】
また、本発明にかかる電気光学装置は、平面状に配置された複数の画素領域のそれぞれに設けられた電極をスイッチング制御するスイッチング素子を有し、前記配線及び前記下層配線が、それぞれ前記スイッチング素子に接続されていることとしてもよい。
この発明では、配線及び下層配線がそれぞれ電極を駆動するスイッチング素子に入力される信号電圧を伝達する信号線として機能する。
【0012】
また、本発明にかかる電気光学装置は、前記段差部が、下段層と、該下段層上に形成されて端部を有する上段層とによって構成され、前記下段層上に、平面状に配置された複数の画素領域のそれぞれに信号電圧を供給する信号線に接続される接続配線が形成され、前記配線が、前記接続配線を被覆することとしてもよい。
この発明では、端部を有する上段層によって上段層の厚さに応じた段差部が形成される。そして、上段層の上面に上段部が形成され、下段層上に下段部が形成され、上段部及び下段部を接続するように斜面部が形成される。そして、下地層上に形成された接続配線を配線により被覆する。
【0013】
また、本発明にかかる電子機器は、上述した電気光学装置を備えることを特徴とする。
この発明では、上述と同様に、配線を実際よりも平坦な面に形成できるので、配線の線幅異常や断線が発生することを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明における液晶表示装置の一実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。ここで、図1は本発明の液晶表示装置を示す斜視図、図2は図1の等価回路図、図3(a)はデータ線と走査線との交差部近傍を示す斜視図、図3(b)は図3(a)の平面図、図4(a)は第2層間絶縁膜の端部近傍を示す斜視図、図4(b)は図4(a)の平面図である。
【0015】
〔液晶表示装置〕
本実施形態における液晶表示装置(電気光学装置)1は、TFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)を画素スイッチング素子として用いたアクティブマトリックス型の液晶表示装置である。ここで、表示を構成する最小単位となる表示領域を「画素領域」と称する。
液晶表示装置1は、図1に示すように、素子基板2と、素子基板2と対向配置された対向基板3と、素子基板2及び対向基板3の間に挟持された液晶層4と、素子基板2に設けられた半導体チップであるデータ線駆動回路5及び走査線駆動回路6とを備えている。また、液晶表示装置1は、素子基板2と対向基板3とが対向する対向領域の外周部に設けられた平面視でほぼ矩形の枠状のシール材(図示略)を備えており、このシール材によって素子基板2と対向基板3とを接着固定している。そして、液晶表示装置1のうちシール材の内側に、画像表示領域が形成されている。また、液晶表示装置1は、素子基板2と対向基板3との外面側(液晶層4と反対側)にそれぞれ設けられた偏光板(図示略)を備えている。そして、液晶表示装置1は、素子基板2の外側(液晶層4と反対側)から照明光が照射される構成となっている。
【0016】
そして、液晶表示装置1は、図2に示すように、画像表示領域に複数の画素領域がマトリックス状に配置されている。この複数の画素領域には、それぞれ画素電極(電極)11と、画素電極11をスイッチング制御するためのTFT素子(スイッチング素子)12とが形成されている。このTFT素子12は、ソースがデータ線駆動回路5から延在するデータ線(配線、信号線)13に接続され、ゲートが走査線駆動回路6から延在する走査線(下層配線)14に接続され、ドレインが画素電極11に接続されている。
【0017】
データ線駆動回路5は、データ線13を介して画像信号S1、S2、…、Snを各画素領域に供給する構成となっている。ここで、データ線駆動回路5は、画像信号S1〜Snをこの順で線順次で供給してもよく、互いに隣接する複数のデータ線13同士に対してグループごとに供給してもよい。
走査線駆動回路6は、走査線14を介して走査信号G1、G2、…、Gmを各画素領域に供給する構成となっている。ここで、走査線駆動回路6は、走査信号G1〜Gmを所定のタイミングでパルス的に線順次で供給する。
【0018】
また、液晶表示装置1は、スイッチング素子であるTFT素子12が走査信号G1〜Gmの入力により一定期間だけオン状態とされることで、データ線13から供給される画像信号S1〜Snが所定のタイミングで画素電極11に書き込まれる構成となっている。そして、画素電極11を介して液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1〜Snは、画素電極11と対向基板3に設けられた共通電極(図示略)との間で一定期間保持される。ここで、保持された画像信号S1〜Snがリークすることを防止するため、画素電極11と共通電極との間に形成される液晶容量と並列接続されるように蓄積容量15が付与されている。この蓄積容量15は、TFT素子12のドレインと容量線16との間に設けられている。
【0019】
素子基板2は、図1に示すように、平面視でほぼ矩形状を有しており、例えばガラス、プラスチックなどの透光性材料を基体として構成されている。
そして、素子基板2のうち画像表示領域と重なる領域には、画素電極11やTFT素子12(図2に示す)、複数のデータ線13、走査線14及び容量線16(図2に示す)などが設けられている。
【0020】
画素電極11は、複数の画素領域のそれぞれに配置されており、平面視でほぼ矩形状であって、例えばITO(酸化インジウムスズ)などの透光性導電材料で構成されている。
走査線14は、図3(a)、(b)に示すように、平面視でほぼ画素領域の一辺方向(X軸方向)に沿って直線状に配置されている。そして、走査線14は、TFT素子12の主体である半導体層(図示略)上に形成されたゲート絶縁膜(下地層)21上に形成されており、第1層間絶縁膜(被覆層、下段層)22によって被覆されている。
データ線13は、平面視で画素領域の上記一辺と直交する他辺方向(Y軸方向)に沿ってほぼ直線状に配置されている。そして、データ線13は、走査線14を被覆する第1層間絶縁膜22上に形成されており、第2層間絶縁膜23によって被覆されている。なお、画素電極11はこの第2層間絶縁膜(上段層)23上に形成されており、容量線16は走査線14と共にゲート絶縁膜21上に形成されている。
【0021】
ここで、走査線14とデータ線13とは、第1層間絶縁膜22を介して平面視で交差している。そのため、走査線14を被覆する第1層間絶縁膜22のうち走査線14と重なる領域には、走査線14の厚さに応じた段差部25が形成されている。この段差部25により形成される段差は、例えば30nm以上となっている。
この段差部25は、第1層間絶縁膜22のうち走査線14と重なる領域に形成された突状であって、走査線14と重なる領域に形成された上段部25aと、走査線14から離間した領域に形成された下段部25b、25cと、上段部25a及び下段部25bを接続する領域に形成された斜面部25dと、上段部25a及び下段部25cを接続する斜面部25eとを備えている。そして、下段部25bと斜面部25dとの境界部26aと、上段部25aと斜面部25dとの境界部26bと、下段部25cと斜面部25eとの境界部26cと、上段部25aと斜面部25eとの境界部26dとは、走査線14が直線状に配置されているため、それぞれ走査線14と重なる部分においてほぼ直線状となっている。
【0022】
データ線13は、この段差部25を乗り越えるようにして形成されている。そして、データ線13は、ほぼ直線状に配線されているが、段差部25を含むその近傍において屈曲している。すなわち、データ線13は、段差部25の下段部25bのうち斜面部25dの近傍において屈曲し、この状態で斜面部25dに沿って上段部25aに至る。そして、データ線13は、上段部25aにおいて再度屈曲し、この状態で斜面部25eに沿って下段部25cに至る。さらに、データ線13は、下段部25cのうち斜面部25eの近傍においてもう一度屈曲している。
ここで、データ線13は、その幅方向の両縁部及び幅方向の中心線L1が境界部26a〜26dと80°以下で交差するように形成されている。
以上より、データ線13により、第1層間絶縁膜22に形成された段差部25を乗り越えるように立体的な配線構造が形成される。
【0023】
また、素子基板2のうち対向基板3と対向配置したときに対向基板から張り出す張出領域2Aには、図1に示すように、引廻配線(接続配線)31、32と、外部接続配線33とが形成されている。
引廻配線31は、データ線13とデータ線駆動回路5とを接続しており、データ線13と一体的に形成されている。そして、引廻配線31は、図4(a)、(b)に示すように、第1層間絶縁膜22上に形成されており、張出領域2Aにおいて第2層間絶縁膜23の端部から露出している。また、引廻配線31のうち第2層間絶縁膜23の端部から露出する部分は、保護膜である被覆配線(配線)31aによって覆われている。
【0024】
ここで、被覆配線31aは、画素電極11と同一材料であって画素電極11と同一工程において形成されている。そのため、被覆配線31aは、一部が第2層間絶縁膜23の端部に形成された段差部35に沿うように形成されている。この段差部35により形成される段差は、例えば1μm以上となっている。
この段差部35は、第2層間絶縁膜23の上面である上段部35aと、第1層間絶縁膜22の上面である下段部35bと、上段部35a及び下段部35bを接続する斜面部35cとを備えている。そして、下段部35b及び斜面部35cの境界部36aと、上段部35a及び斜面部35cの境界部36bとは、ほぼ直線状となっている。
【0025】
引廻配線31は、段差部35を含むその近傍において屈曲するように形成されている。すなわち、引廻配線31は、段差部35の下段部35bのうち斜面部35cの近傍において屈曲し、この状態で斜面部35cと交差する。そして、引廻配線31は、上段部35aと重なる領域において再度屈曲している。
ここで、引廻配線31は、その幅方向の両縁部及び幅方向の中心線が境界部36a、36bと80°以下の交差角度で交差するように形成されている。
【0026】
また、被覆配線31aは、平面視で引廻配線31と重なるため、引廻配線31と同様に段差部35を含むその近傍において屈曲するように形成されている。すなわち、被覆配線31aは、段差部35の下段部35bのうち斜面部35cの近傍において屈曲し、この状態で斜面部35cに沿って上段部35aに至る。そして、被覆配線31aは、上段部35aにおいて再度屈曲している。
ここで、被覆配線31aは、その幅方向の両縁部及び幅方向の中心線L2が境界部36a、36bと80°以下の交差角度で交差するように形成されている。
以上より、被覆配線31aにより、第2層間絶縁膜23に形成された段差部35に沿うように立体的な配線構造が形成される。
【0027】
引廻配線32は、走査線14と走査線駆動回路6とを接続しており、走査線14と一体的に形成されている。そして、引廻配線32は、ゲート絶縁膜21上に形成されており、張出領域2Aにおいて第1層間絶縁膜22の端部から露出している。また、引廻配線32のうち第1層間絶縁膜22の端部から露出する部分は、引廻配線31と同様に保護膜である被覆配線(図示略)によって覆われている。ここで、第1層間絶縁膜22の端部は、第2層間絶縁膜23の端部よりも素子基板2の面内における外側に形成されている。
【0028】
外部接続配線33は、データ線駆動回路5及び走査線駆動回路6と配線基板34とを接続している。この配線基板34は、FPC(フレキシブルプリント基板)であり、容量素子やICパッケージなどの電子部品(図示略)が接続されており、これら電子部品を介して画像表示領域における画像表示に関わる各種の信号がデータ線駆動回路5及び走査線駆動回路6に供給される。
【0029】
一方、対向基板3は、素子基板2に設けられた画素電極11と液晶層4を介して対向配置された共通電極を有している。
そして、液晶層4は、正の誘電率異方性を有する液晶を用いたTN(Twisted Nematic)モードで動作する構成となっている。
【0030】
〔液晶表示装置の製造方法〕
次に、以上のような構成の液晶表示装置1の製造方法について説明する。なお、本実施形態では、素子基板2の製造工程のうち上述した立体的な配線構造の形成工程に特徴があるため、この点について説明する。
まず、従来と同様の手法により、透光性材料で構成された基体の上面に下地保護膜を形成し、この下地保護膜上に半導体層を形成する。そして、半導体層を被覆するゲート絶縁膜21を形成し、このゲート絶縁膜21上に走査線14、容量線16及び引廻配線32を形成する。さらに、走査線14、容量線16及び引廻配線32を被覆する第1層間絶縁膜22を形成する。ここで、第1層間絶縁膜22には、走査線14、容量線16及び引廻配線32の厚さに応じた段差が形成される。すなわち、走査線14と重なる領域において段差部25が形成される。
【0031】
次に、第1層間絶縁膜22上に、データ線13及び引廻配線31を形成する。ここでは、上述した走査線14などの他の配線と同様に、第1層間絶縁膜22上にデータ線13及び引廻配線31を構成する導電材料で構成された導電膜(図示略)を形成した後、フォトリソグラフィ技術を用いて所定の開口を有するレジスト層(図示略)を形成する。そして、ウェットエッチング処理により導電膜のうちレジスト層の開口領域を除去することでデータ線13及び引廻配線31が形成される。
【0032】
ここで、レジスト層は、導電膜のうちデータ線13及び引廻配線31の形成予定領域上に形成されている。そして、レジスト層は、その幅方向の両縁部及び幅方向の中心線がそれぞれ境界部26a〜26dと80°以下の交差角度で交差している。
したがって、レジスト層の幅方向の縁部のうち斜面部25dを横断する領域の長さが、境界部26a〜26dと垂直に交差する場合と比較して長くなる。そのため、境界部26a〜26dにおいて、レジスト層が実際の段差部25の段差よりも平坦な段差面に形成されることとなる。これにより、レジスト層と導電膜との間に空隙が発生することを防止して、レジスト層と導電膜との密着強度が向上する。そして、ウェットエッチング処理において、レジスト層と導電膜との間にエッチャントが染み込むことを抑制し、レジスト層下の導電膜がエッチングされることを防止する。したがって、データ線13が段差部25において線幅異常が発生することを防止して、断線の発生が抑制される。
【0033】
この工程により、データ線13は、段差部25の境界部26a〜26dに対してその線幅方向の両縁部及び幅方向の中心線が共に境界部26a〜26dとそれぞれ80°以下で交差するように形成される。
また、引廻配線31を、後述する工程において形成される段差部35の境界部36a、36bに対してその線幅方向の両縁部及び幅方向の中心線が共に境界部36a、36bとそれぞれ80°以下の交差角度で交差するように形成する。
【0034】
次に、データ線13及び引廻配線31上に第2層間絶縁膜23を形成する。ここで、第2層間絶縁膜23の端部には、第2層間絶縁膜23の膜厚に応じた段差が形成される。すなわち、第2層間絶縁膜23の端部において段差部35が形成される。
続いて、第2層間絶縁膜23上に、画素電極11及び被覆配線31aを形成する。ここでは、上述したデータ線13及び引廻配線31と同様にフォトリソグラフィ技術やウェットエッチング処理を施すことにより、画素電極11及び被覆配線31aを形成する。ここで、引廻配線31が段差部35の境界部36a、36bに対してその線幅方向の両縁部が境界部36a、36bとそれぞれ80°以下の非垂直で交差するように形成されているため、引廻配線31を被覆する被覆配線31aも段差部35の境界部36a、36bに対してその線幅方向の両縁部が境界部36a、36bとそれぞれ80°以下の交差角度で交差するように形成される。このとき、上述と同様に、被覆配線31aが段差部35において線幅異常が発生することを防止して、断線の発生が抑制される。
【0035】
その後、従来と同様の手法により、第2層間絶縁膜23上に配向膜を形成することで、素子基板2を形成する。そして、別途形成された対向基板3とシール材を介して貼り合わせることにより、液晶表示装置1を製造する。
【0036】
ここで、段差部上に形成される配線の両縁部と境界部とのなす角度と、実効的な段差部の傾斜角との関係を、図5に示す。図5には、斜面部の傾斜角を80°、60°、40°としたときのそれぞれについて示している。
図5に示すように、配線の両縁部と境界部とのなす角を小さくするにしたがって、配線の幅方向の縁部のうち斜面部を横断する領域が長くなる。このため、実効的に配線を本来よりも平坦な斜面に形成することができる。
【0037】
〔電子機器〕
以上のような構成の液晶表示装置1は、例えば図6に示すような携帯電話機(電子機器)100の表示部101として用いられる。この携帯電話機100は、表示部101、複数の操作ボタン102、受話口103、送話口104及び上記表示部101を有する本体部105を備えている。
【0038】
以上のように、本実施形態における液晶表示装置1及び携帯電話機100によれば、段差部25、35の実効的な段差が低減されて実効的により平坦な面にデータ線13や被覆配線31aを形成できる。これにより、データ線13や被覆配線31aの線幅が狭くなって段差部25、35におけるデータ線13や被覆配線31aの抵抗が上昇することを抑制できると共に、断線の発生を抑制できる。
ここで、データ線13や被覆配線31aの幅方向の両縁部及び中心線L1、L2を境界部26a〜26dや境界部36a、36bと80°以下の交差角度で交差させているので、データ線13や被覆配線31aに断線が発生することをより確実に防止できる。
【0039】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、データ線が段差部を含むその近傍において幅が一定となるように形成されているが、幅方向の両縁部が境界部に対して非垂直となるように交差していればよい。例えば、図7(a)に示すように、境界部25を含むその近傍において、データ線13の線幅を下段部25bから上段部25aに向かうにしたがって漸次狭くすると共に、上段部25aから下段部25cに向かうにしたがって漸次広くすることにより、データ線13の幅方向の両縁部を境界部26a〜26dに対して非垂直で交差することとしてもよい。また、図7(b)に示すように、境界部25を含むその近傍において、データ線13の線幅を下段部25bから上段部25aに向かうにしたがって漸次広くすると共に、上段部25aから下段部25cに向かうにしたがって漸次狭くしてもよい。ここで、このような構成を第2層間絶縁膜の端部において適用してもよい。
【0040】
また、データ線や被覆配線の縁部と境界部との交差角度を80°以下としているが、段差部における断線を抑制でき、境界部と非垂直で交差していれば、他の角度であってもよい。
また、走査線とデータ線との立体的な交差部分や第2層間絶縁膜の端部に形成された段差部における配線構造について本発明を適用しているが、他の段差部において本発明における立体的な配線構造を適用してもよい。
【0041】
また、液晶表示装置は、画素電極をスイッチング制御する駆動素子としてTFT素子を用いているが、TFT素子に限らず、TFD(Thin Film Diode:薄膜ダイオード)素子など、他の駆動素子を用いてもよい。
そして、液晶表示装置は、素子基板に画素電極を設けると共に対向基板に共通電極を設けた電極構造を有しているが、素子基板に画素電極及び共通電極を形成して液晶層に対して基板面方向の電界を発生させるIPS(In-Plane Switching)方式やFFS(Fringe-Field Switching)方式などの、いわゆる横電界方式を用いた電極構造を採用してもよい。
さらに、液晶層として、TNモードで動作する液晶を用いているが、TNモードに限らず、負の誘電率異方性を有するVAN(Vertical Aligned Nematic)モードやECB(Electrically Controlled Birefringence)モード、OCB(Optical Compensated Bend)モードなど、他の液晶を用いてもよい。
【0042】
また、液晶表示装置を備える電子機器としては、携帯電話機に限らず、PDA(Personal Digital Assistant:携帯情報端末機)やパーソナルコンピュータ、ノート型パーソナルコンピュータ、ワークステーション、デジタルスチルカメラ、車載用モニタ、カーナビゲーション装置、ヘッドアップディスプレイ、デジタルビデオカメラ、テレビジョン受像機、ビューファインダ型あるいはモニタ直視型のビデオテープレコーダ、ページャ、電子手帳、電卓、電子ブックやプロジェクタ、ワードプロセッサ、テレビ電話機、POS端末、タッチパネルを備える機器、照明装置などのような他の電子機器であってもよい。
そして、電気光学装置としては、液晶層のように一対の電極間に電界を発生させることによって光学特性が変化する電気光学層を備えるものであれば、液晶表示装置に限らず、有機EL(エレクトロルミネッセンス)装置など他の装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】一実施形態における液晶表示装置を示す斜視図である。
【図2】液晶表示装置を示す等価回路図である。
【図3】立体的な配線構造を示し、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
【図4】同じく立体的な配線構造を示し、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
【図5】配線の境界部との交差角と実効的な傾斜角との関係を示すグラフである。
【図6】液晶表示装置を備える携帯電話機を示す外観図である。
【図7】本発明を適用可能な他の立体的な配線構造を示す平面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 液晶表示装置(電気光学装置)、11 画素電極(電極)、12 TFT素子(スイッチング素子)、13 データ線(配線,信号線)、14 走査線(下層配線)、21 ゲート絶縁膜(下地層)、22 第1層間絶縁膜(被覆層,下段層)、23 第2層間絶縁膜(上段層)、25,35 段差部、25a,35a 上段部、25b,25c,35b 下段部、25d,25e,35c 斜面部、26a〜26d,36a,36b 境界部、31 引廻配線(接続配線)、31a 被覆配線(配線)、100 携帯電話機(電子機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上段部、斜面部及び下段部を有する段差部の上面に形成されて前記上段部の上面と前記下段部の上面との間に引廻された配線を有する電気光学装置であって、
前記斜面部と前記上段部との境界部のうち前記配線と平面視で重なる部分と、前記斜面部と前記下段部との境界部のうち前記配線と平面視で重なる部分とが、それぞれ直線状であり、
該配線の幅方向の縁部が、前記段差部において直線状であると共に、前記段差部の前記境界部と非垂直で交差することを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記配線の幅方向の中心が、前記段差部において前記境界部と非垂直で交差することを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記配線の幅方向の縁部と前記境界部との交差角度が、80°以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記段差部が、下地層と、該下地層上に形成された下層配線と、該下層配線を被覆する被覆層によって構成され、
前記配線が、平面視で前記被覆層を介して前記下層配線と交差していることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電気光学装置。
【請求項5】
平面状に配置された複数の画素領域のそれぞれに設けられた電極をスイッチング制御するスイッチング素子を有し、
前記配線及び前記下層配線が、それぞれ前記スイッチング素子に接続されていることを特徴とする請求項4に記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記段差部が、下段層と、該下段層上に形成されて端部を有する上段層とによって構成され、
前記下段層上に、平面状に配置された複数の画素領域のそれぞれに信号電圧を供給する信号線に接続される接続配線が形成され、
前記配線が、前記接続配線を被覆することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電気光学装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の電気光学装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−130967(P2008−130967A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−316946(P2006−316946)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】