説明

電気自動車の搭載構造

【課題】充電ポートを上方に配置することなく、充電ポートとコンバータとを、ほぼ直線状に配索したハーネスで接続することを可能とする電気自動車の搭載構造を提供すること。
【解決手段】インバータ50を、モータユニット10に対して車両上下方向上側に、空間250をもって配置すると共に、コンバータ40に対して車両前後方向外側に配置し、コンバータ40を、一部が、モータユニット10とインバータ50間の空間250と車両上下方向で重なるよう配置し、空間250に配索した高圧直流充電ハーネス103によりコンバータ40と電気的に接続され、インバータ50に対して車両前後方向外側に配置した充電ポート60を設けたことを特徴とする電気自動車の搭載構造とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車の搭載構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車として、モータ、インバータ、コンバータをモータルームに搭載したものが、例えば、特許文献1などにより知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−310252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電気自動車では、モータ、インバータ、コンバータの電気的な接続を考慮すると、車両の上下方向に、下からモータ、インバータ、コンバータの順で配置する必要があった。
【0005】
一方、コンバータは、車外から充電する充電ポートとハーネスを介して接続される。前記ハーネスを、出来る限り屈曲させず、ほぼ直線状に配置しようとしたときに、上述したとおり、コンバータが、最も上方に配置されているために、充電ポートも上方に配置することになる。
【0006】
しかしながら、充電ポートを車両上方に配置すると、充電ポートへの抜き差しの作業に支障をきたす。
【0007】
本発明は、上述の問題点に着目してなされたもので、充電ポートを上方に配置することなく、充電ポートとコンバータとを、ほぼ直線状に配索したハーネスで接続することを可能とする電気自動車の搭載構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の電気自動車の搭載構造は、インバータを、モータに対して車両上下方向上側に、空間をもって配置すると共に、コンバータに対して車両前後方向外側に配置し、コンバータを、一部が、前記モータと前記インバータ間の空間と車両上下方向で重なるよう配置し、前記空間に配索したハーネスにより前記コンバータと電気的に接続され、前記インバータに対して車両前後方向外側に配置した充電ポートを設けたことを特徴とする電気自動車の搭載構造とした。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電気自動車の搭載構造にあっては、上記構成により、充電ポートを上方に配置することなく、充電ポートとコンバータとを、ほぼ直線状に配索したハーネスで接続することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1の電気自動車の搭載構造の主要部を示す車両側方から見た全体側面図である。
【図2】実施例1の電気自動車の搭載構造の主要部を示す車両上方から見た全体平面図である。
【図3】実施例1の電気自動車の搭載構造のモータルームER内の主要な構成を示す車両斜め前上方から見下ろした状態の斜視図である。
【図4】実施例1の電気自動車の搭載構造のモータルームER内の主要な構成を示す車両正面斜め前上方から見下ろした状態の斜視図である。
【図5】実施例1の電気自動車の搭載構造のモータルームER内の主要な構成を示す車両左斜め前上方から見下ろした状態の斜視図である。
【図6】実施例1の電気自動車の搭載構造のモータルームER内の主要な構成を示す縦断面図である。
【図7】実施例1の電気自動車の搭載構造に用いた部品搭載フレーム部材240を示す斜視図である。
【図8】実施例1の電気自動車の搭載構造のモータルームER内の主要な構成を示す平面図である。
【図9】実施例1の電気自動車の搭載構造におけるコンバータ40、インバータ50およびその結線構造を示す斜視図であって、車両右斜め後上方から見た状態を示す。
【図10】実施例1の電気自動車の搭載構造のモータルームER内の主要な構成を示す車両前方から見た正面図である。
【図11】実施例1の電気自動車の搭載構造のモータルームER内の主要な構成を示す側面図である。
【図12】実施例1の電気自動車の搭載構造のコンバータ40における結線状態を示す斜視図であって、車両左斜め前上方から見た状態を示す。
【図13】実施例1の電気自動車の搭載構造のモータルームER内の主要な構成の配置を示す車両左上方から見下ろした状態の斜視図である。
【図14】実施例1の電気自動車の搭載構造におけるモータユニットハウジング11に対するコンプレッサ80の取付構造を示す斜視図である。
【図15】実施例1の電気自動車の搭載構造のモータルームER内の主要な構成の配置を示す斜視図であって、車両左斜め前方から見た状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明の実施の形態の電気自動車の搭載構造は、駆動源としてのモータ(M)と、該モータ(M)に駆動電流を供給するインバータ(50)と、コンバータ(40)とを、モータルーム(ER)内に配置する電気自動車の搭載構造において、前記インバータ(50)は、前記モータ(M)に対して車両上下方向上側に、空間(250)をもって配置すると共に、前記コンバータ(40)に対して車両前後方向外側に配置し、前記コンバータ(40)は、一部が、前記モータ(M)と前記インバータ(50)間の空間(250)と車両上下方向で重なるよう配置し、前記空間(250)に配索したハーネス(103)により前記コンバータ(40)と電気的に接続され、前記インバータ(50)に対して車両前後方向外側に配置した充電ポート(60)を設けたことを特徴とする電気自動車の搭載構造である。
【実施例1】
【0012】
図1〜図15に基づき、この発明の実施の形態である実施例1の電気自動車の搭載構造について説明する。
【0013】
(全体の概略)
まず、実施例1の電気自動車の搭載構造の概略を図1および図2に基づいて説明する。なお、図1は実施例1の電気自動車の搭載構造の主要部を示す側面図であり、図2は実施例1の電気自動車の搭載構造の主要部を示す平面図である。
【0014】
実施例1の電気自動車の搭載構造を適用した車両は、図1,図2示す、モータユニット10、走行用バッテリ20、充電器30、コンバータ40、インバータ50、充電ポート60を搭載している。
【0015】
モータユニット10、コンバータ40、インバータ50は、車両前部に設けられたモータルームER(図5,6参照)に設けられている。なお、各図において矢印FRは車両前方を、矢印UPは車両上方を、矢印Lは車両左方向を示す。
【0016】
モータユニット10は、図3に示すモータユニットハウジング11の内部に、駆動源であるモータM(図6参照)と、モータMの回転を減速し左右のアクスル軸12(図5参照)へ伝達するギヤ機構と、を収容している。なお、モータMは、走行用の駆動源として用いるほか、発電機としても用いる。
【0017】
走行用バッテリ20は、二次電池からなるバッテリモジュールや、このバッテリモジュールの充放電などの制御回路や、冷却装置を備えており、車室RM(図5,6参照)の床下に設けられている。なお、二次電池としては、リチウムイオン電池を用いているものとするが、ほかにも、充放電可能なニッカド電池、ニッケル水素電池などの他の電池を用いることができる。
【0018】
充電器30は、家庭用の外部交流電源から供給される交流電流を直流電流に変換して走行用バッテリ20に充電するもので、車室RM(図5,6参照)の後方に設けられた図示を省略したトランクルーム内に設けられ、走行用バッテリ20と充電ポート60とに接続されている。
【0019】
コンバータ40は、モータMの力行時に走行用バッテリ20側の電流を昇圧してインバータ50に供給し、一方、モータMの回生時にインバータ50側の電流を降圧させて走行用バッテリ20へ供給する。
【0020】
インバータ50は、PWM制御によるスイッチング動作で、モータMの力行時にコンバータ40から供給される直流電流を三相交流に変換してモータMへ供給し、モータMの回生時にモータMから供給される三相交流電流を直流に変換してコンバータ40へ供給する。
【0021】
充電ポート60は、図4に示すように、車両前部においてフロントバンパ201の上方であって、車幅方向の略中央に配置されており、急速充電ポート61と、家庭用充電ポート62とを備えており、これらは図示を省略した蓋で開閉される。なお、急速充電ポート61は、図外の外部高圧直流電源である急速充電器に接続して充電するものであり、後述する高圧直流充電ハーネス103を介してコンバータ40に接続されている。家庭用充電ポート62は、家庭用の100ボルト〜200ボルト程度の外部交流電源に接続して充電するもので、後述する交流充電ハーネス101を介して充電器30に接続されている。
【0022】
(車体構造)
次に、車体前部の車体構造の概略を説明する。
図5は車体200の前部の構造を示しており、車室RMの車両前方にモータルームERが形成されている。このモータルームERと車室RMとは、図6に示すダッシュロアパネル210で区画されており、ダッシュロアパネル210の上部には、カウルトップパネル211が溶接により接合されているとともに、エクステンションカウルトップパネル212が締結されている。なお、モータルームERの上面は、フードパネル220で覆われている。
【0023】
図5に戻り、モータルームERの左右には、サイドメンバ231,232が車両前後方向に延在されており、サイドメンバ231,232の車外側面には、フェンダパネル233,234が一体に設けられている。
【0024】
(支持構造)
モータユニット10、コンバータ40、インバータ50の支持構造を説明する。
モータユニット10は、車体200に対して、サスペンションメンバ70を介して車体に弾性支持されており、コンバータ40およびインバータ50は、部品搭載フレーム部材240を介して車体200に固定されている。
【0025】
・モータユニット10の弾性支持構造
モータユニット10は、二重弾性支持構造で車体200に支持されており、以下に詳細に説明する。
モータユニット10と車体200との間に介在されたサスペンションメンバ70は、図外のサスペンションをマウントするための部材であり、図3に示すように、箱断面形状の金属製フレームを略四角形の枠状に結合して形成されている。そして、このサスペンションメンバ70の四隅部分が、車体200の下面に、インシュレータ71を介在させて弾性支持されている。なお、このインシュレータ71は、車両上下方向に延在された軸と外筒との間に、弾性材を介在させたものを用いている。また、このサスペンションメンバ70は、図外のサスペンション装置を支持する機能を兼用している。なお、弾性材としては、ゴムを用いているが、ばね、シリコーン、ナイロンなどの他の弾性材を用いてもよい。
【0026】
モータユニット10は、サスペンションメンバ70に対して3箇所が側部マウント部材72および後部マウント部材73を介して弾性支持されている。これらのマウント部材72,73は、エンジンマウントにも使用されるものと同様のもので、モータMの駆動により生じる振動が車体200に伝達されるのを防止するとともに、路面からの入力やモータM自体が発生するトルク反力によりモータユニット10の姿勢変化を抑制する。
側部マウント部材72は、モータユニット10の車両前方左右の2箇所を弾性支持しており、車両上下方向を向いた軸と外筒に前述の弾性材を介在させた構造となっている。
後部マウント部材73は、モータユニット10の車両後方端部の車幅方向略中央部分を支持するもので、車両水平方向を向いた軸と外筒の間に前述の弾性材を介在させた構造となっている。
【0027】
なお、モータユニットハウジング11は、アルミニウム製であり、車体200にアースされている。
【0028】
・コンバータ40およびインバータ50の支持構造
部品搭載フレーム部材240によるコンバータ40とインバータ50との支持構造について図5,7,8に基づいて説明する。
【0029】
部品搭載フレーム部材240は、図7に示すように、略逆U字断面形状の前側クロスメンバ241、後側フレーム242、下側クロスメンバ243を備えている。
各フレーム部材241〜243は、それぞれ、モータルームERにおいて車幅方向に延在されるもので、前側クロスメンバ241と下側クロスメンバ243との車幅方向両端部には、サイドメンバ231,232にボルトで締結されるウエルドナット(図示省略)を備えた締結部241a,241b,243a,243bを備えている。
【0030】
前側クロスメンバ241は、車両中央部から車両右側に配置される部分においてインバータ50を支持する高さに延在されたインバータ支持部241cと、このインバータ支持部241cから車両左側の締結部241aに向けて車両右側に向けて車両下方に湾曲された湾曲部241dと、を備えている。
【0031】
下側クロスメンバ243は、前側クロスメンバ241の車両左側の締結部241aと略同じ高さに略直線状に配置され、電送品用バッテリ支持ブラケット244を介して、前側クロスメンバ241の湾曲部241dに結合されている。なお、電送品用バッテリ支持ブラケット244は、電送品を駆動させる電源となる弱電の電送品用バッテリ(図示省略)を支持するものである。
【0032】
後側フレーム242は、下側クロスメンバ243の車両上方位置であって、インバータ支持部241cと略同じ高さに配置され、左右両端部が、脚ブラケット245を介して下側クロスメンバ243に結合され、かつ、車両前後方向に延在された連結ブラケット246を介して前側クロスメンバ241に結合されている。
【0033】
以上の構成の部品搭載フレーム部材240が、各締結部241a,241b,243a,243bで車体200に締結されている。この締結において、下側クロスメンバ243の左右端部の締結部243a,243bおよび前側クロスメンバ241の車両左側の締結部241aは、左右のサイドメンバ231,232と同じ高さに配置されており、各サイドメンバ231,232に締結されている。
【0034】
一方、前側クロスメンバ241の車両右側の締結部241bは、サイドメンバ231よりも車両上方に配置されており、サイドメンバ231とフェンダパネル233とに一体に溶着された支持ブラケット235に締結されている。
【0035】
なお、連結ブラケット246および電送品用バッテリ支持ブラケット244は、前側クロスメンバ241と、後側フレーム242および下側クロスメンバ243と、の車両前後方向の間隔を、インバータ50の車両前後方向寸法に略一致させる長さに形成されている。
【0036】
すなわち、インバータ50は、図3に示すように、略直方体の箱状に形成されており、車幅方向寸法W1、車両前後方向寸法L1、車両上下方向寸法H1が、W1>L1>H1の大小関係となるように配置されている。この車両前後方向寸法L1が、図8に示すように、両フレーム部材241,242の車両前後方向の間隔と略等しく形成されており、インバータ50の前側の左右2カ所と、後側の左右2カ所が、それぞれ、前側クロスメンバ241と後側フレーム242とにボルトにより締結されている。なお、インバータ50は、車幅方向で車両中央部の車両右側寄りに配置されている。
【0037】
インバータ50は、上述のように部品搭載フレーム部材240に支持されており、図6に示すように、モータユニット10の車両上下方向で上側に空間250をもって配置されている。また、インバータ50は、車両前後方向では、モータユニット10を車両上方に投影させた範囲内に収まり、その前端位置がモータユニット10の前端位置よりも車両後方に配置されており(図13参照)、車幅方向でも、その大部分がモータユニット10を車両上方に投影させた範囲内に収まり、左右のフェンダパネル233,234から離れた車幅方向中央位置に配置されている(図8参照)。
【0038】
コンバータ40は、図6に示すように、インバータ50とダッシュロアパネル210との間に配置され、コンバータ支持ブラケット247,247に図示を省略したボルトにより締結して固定されている(図5参照)。
【0039】
さらに、コンバータ40は、図3示すように薄型直方体形状に形成されており、その車幅方向寸法W2、車両前後方向寸法L2、車両上下方向寸法H2が、W2>H2>L2の関係となるように、縦置き配置されている。
この縦置き配置により、コンバータ40は、その上端がインバータ50の上端よりもわずかに低く、一方、その下端は、インバータ50の下端よりも低く、モータユニット10よりもわずかに高く配置されている。さらに、このコンバータ40の車両後方のダッシュロアパネル210には、後述するフロアトンネル部217が形成されてその下端位置が高くなっており、コンバータ40の下端は、ダッシュロアパネル210の下端よりも僅かに低い位置に配置されている。なお、フロアトンネル部217は、動力源として内燃機関を搭載した車両において、排気系を導くために形成されており、本実施例1の車両の車体200は、動力源として内燃機関を搭載する車両と共用されている。
【0040】
そして、コンバータ40において車両前方を向いた前面40fのうち、後側フレーム242よりも車両下方に配置されている部分は、車両前後方向で空間250に対向しており、この部分を空間対向部40aとする。
【0041】
なお、空間対向部40aと充電ポート60とは、図4に示すように車幅方向に重なっている。
【0042】
また、コンバータ40は、図8に示すように、車幅方向の略中央に配置されており、コンバータ40は、車両上方から見て、フロアトンネル部217ならびに走行用バッテリ20(図2参照)と、車幅方向に重なって配置されている。
【0043】
コンバータ40とダッシュロアパネル210との間には、後部空間260が設けられている。さらに、コンバータ40の後面40bには、ダッシュロアパネル210と略平行な面で形成された面当り部41が形成されている。この面当り部41は、図9に示すように、車幅方向の全幅の略3/4ほどに亘って形成されている。
【0044】
一方、図6に示すように、ダッシュロアパネル210において面当り部41に車両前後方向で対向する位置には、面当り部41と略平行な受け面214が形成されている。この受け面214の位置で、ダッシュロアパネル210にレインフォース215を接合して箱断面状に補強されている。
【0045】
以上説明したコンバータ40およびインバータ50は、前述のように車体200の左右のフェンダパネル233,234から車幅方向に離間されて配置されており、各フェンダパネル233,234との間のスペースに、左ハンドル仕様と右ハンドル仕様のいずれでも、ステアリングコラムおよびブレーキマスタシリンダの設置を可能としている。
【0046】
ここで、他の搭載部品の配置について説明を加える。
図1に示すように、モータルームERの前端部の前部空間270には、車両用空調装置(図示省略)の放熱を行うコンデンサや、コンバータ40やインバータ50を含む発熱部の冷却を行なう冷却装置(図示省略)のラジエータを含む放熱器91と、この放熱器91に送風するファン装置92とが、車両前後方向に並設されている。なお、図において201は、フロントバンパである。
【0047】
(配線構造)
次に、モータユニット10、走行用バッテリ20、充電器30、コンバータ40、インバータ50、充電ポート60を結ぶ配線について説明する。
【0048】
この配線としては、図2に示すように、家庭用充電ポート62と充電器30とを接続する交流充電ハーネス101、充電器30と走行用バッテリ20とを接続する低圧直流充電ハーネス102、急速充電ポート61とコンバータ40とを接続する高圧直流充電ハーネス103、走行用バッテリ20とコンバータ40とを接続する低圧直流ハーネス104を備え、さらに、図9に示すように、コンバータ40とインバータ50とを接続する高圧直流ハーネス105、図11に示すように、インバータ50とモータユニット10とを接続する三相交流ハーネス106を備えている。なお、各ハーネス101〜106は、弾性を有したカバーにより覆われて、外部に対して絶縁および保護されている。このカバーとしては、絶縁物質を含む発泡体を用いている。
【0049】
以下に、各ハーネス101〜106の配索構造について説明する。
交流充電ハーネス101は、車両前端の家庭用充電ポート62と、車両後部の充電器30とを接続するもので、図1に示すように、モータルームERを、車両前後方向に横切り、フロアトンネル部217(図11参照)を通り、走行用バッテリ20の車両上方を通過して、充電器30に接続されている。
【0050】
この配索において、交流充電ハーネス101は、モータルームERにおいて、図11に示すように、モータユニット10とインバータ50との間の空間250を通り、ダッシュロアパネル210の下部に開口されたフロアトンネル部217に向けて車両斜め下後方へ直線状に配索されている。また、図2、図4に示すように、車幅方向では、車両左方向に変位してコンバータ40の左脇を通り、フロアトンネル部217に沿って配索されている。なお、家庭用充電ポート62は、空間対向部40aの左側縁部に対向しているため、交流充電ハーネス101がコンバータ40を迂回するために車幅方向に変位する量は、最小範囲に抑えられている。
【0051】
高圧直流充電ハーネス103は、急速充電ポート61から、コンバータ40の空間対向部40aに設けられた充電コネクタ40cに向けて、空間250を車両前後方向に横切って配索されている。
【0052】
充電コネクタ40cは、図11に示すように、充電ポート60と同一高さであり、かつ、図4に示すように、車幅方向でも一部が重なる位置に配置している。よって、高圧直流充電ハーネス103は、車両上下方向の変位が少なく、かつ、図4に示すように車幅方向にも変位が少ない直線状に配索されている。
【0053】
低圧直流ハーネス104は、図6に示すように、コンバータ40の下側に設けられたコンバータ側第1コネクタ42に接続されている。そして、低圧直流ハーネス104は、図9に示すように、このコンバータ40との接続位置から、車両斜め下後方へ配索されて、フロアトンネル部217に沿って車両後方へ配索されている。コンバータ40のコンバータ側第1コネクタ42は、フロアトンネル部217が形成されている位置のダッシュロアパネル210の下端よりも低く配置されており、コンバータ側第1コネクタ42および低圧直流ハーネス104は、ダッシュロアパネル210よりも車両上下方向下側に配置されている。
【0054】
高圧直流ハーネス105は、一端が、図9に示すように、コンバータ40の車両右側の側面に設けられたコンバータ側第2コネクタ43に接続され、かつ、このコンバータ側第2コネクタ43から、後側フレーム242の車両右側端を通るように車両前斜め上方配索され、他端が、インバータ50の車両右側の側面に設けられたインバータ側第1コネクタ53に接続されている(図8参照)。
【0055】
三相交流ハーネス106は、図13に示すように、インバータ50の車両左方向端部の下部に設けられたインバータ側第2コネクタ54にと、モータユニットハウジング11の車両右方向端部の上部において車両後方側位置に設けられたモータユニット側コネクタ14とに接続されている。
【0056】
すなわち、インバータ側第2コネクタ54は、前側クロスメンバ241の車両後方に配置され、モータユニット側コネクタ14は、後述するモータユニットハウジング11に固定されたコンプレッサ80の車両後方に配置されている。
そして、両コネクタ54,14に接続する三相交流ハーネス106は、モータユニット10とインバータ50との間の空間250の上部右前側端部から下部左後側端部に向けて、車両上下方向、車両左右方向、車両前後方向の3方向に斜めに延在されている。
【0057】
(コンプレッサ80の配置)
空間250内において、モータユニットハウジング11のモータユニット側コネクタ14の車両前方側の位置にコンプレッサ80が取り付けられている。このコンプレッサ80は、図示を省略した空調装置において冷媒を圧縮するのに用いられるもので、図14に示すように、モータユニットハウジング11の上部であって車両前左側の端部に締結された支持ブラケット81に締結されることでモータユニットハウジング11に取り付けられている。なお、コンプレッサ80のハウジングおよび支持ブラケット81は、アルミニウム製であり、モータユニットハウジング11に金属製の締結部材で締結されることにより、モータユニットハウジング11を介して車体200にアースされている。
【0058】
さらに、コンプレッサ80には、電流供給用に、図4および図15に示すようにコンバータ40から延びるコンプレッサハーネス107が接続されている。このコンプレッサハーネス107において、コンプレッサ80の車両前方に配置されている箇所ならびに車両中央側に回り込んで折り曲げられている部分は、図14に示す、断面略L字状のプロテクタ82により車両前方および車両中央側が覆われている。
【0059】
また、コンプレッサ80を、モータユニット10に取り付けるのにあたり、図11に示すように、コンプレッサ80の車両前方端部が、モータユニット10の車両前方端部よりも車両後方に配置されている。そして、車幅方向でも、図10に示すように、コンプレッサ80が、モータユニット10の車両右方向端部よりも内側に配置されており、本実施例1では、鋳物製のハウジングは、全体が、モータユニット10の車両右方向端部よりも内側に配置されており、モータユニット10の車両右方向端部よりも突出しているのは、電気回路部分を収容する樹脂で形成されたカバー部分である。
【0060】
(実施例1の作用)
次に、実施例1の作用について説明する。
【0061】
(走行時)
モータユニット10は、サスペンションメンバ70を介して両マウント部材72,73およびインシュレータ71により車体200に二重に弾性支持されている。
【0062】
したがって、コンプレッサ80の駆動時に発生する振動の車体200への伝達は、上記に二重の弾性支持による二重の防振機能により抑制される。
【0063】
(前面衝突時)
車両の前面衝突により車体200の前面が車両後方へ変形した場合、放熱器91およびファン装置92などが後退する。そして、車体200がさらに車両後方へ変形して、モータユニット10、インバータ50およびこれを支持する部品搭載フレーム部材240などが車両後方に移動した場合、この移動に伴ってコンバータ40も部品搭載フレーム部材240と共に車両後方に移動する。
【0064】
このような車体変形が生じたとき、コンプレッサ80は、その前端部がモータユニット10の前端部と略同位置に配置されており、車両前方側からの車体200の変形による入力は、モータユニット10とコンプレッサ80とで、略同時に行われる。したがって、コンプレッサ80がモータユニット10よりも車両前方に突出しているものと比較して、車体200の変形を許し、この変形による入力荷重の吸収を可能とする。
【0065】
また、コンプレッサ80とモータユニット10への入力は、略同時に行われるため、コンプレッサ80のモータユニット10に対する締結は外れにくく、両者80,10は一体的に移動する。したがって、コンプレッサ80の車両後方に配索されてインバータ50とモータユニット10とを接続する三相交流ハーネス106は、コンプレッサ80によりコンプレッサ80よりも車両前方に配置された車体200や車載部品との干渉が抑制され、三相交流ハーネス106の破損が抑制される。
【0066】
さらに、コンバータ40とインバータ50とを接続する高圧直流ハーネス105は、インバータ50の側部で、インバータ50の車両前方端部よりも後方であり、かつ、前側クロスメンバ241の車両後方に配置されているため、高圧直流ハーネス105の車両前方の車体200や車載部品の後方移動が、前側クロスメンバ241およびインバータ50で妨げられ、第5強電ハーネスの105の破損が抑制される。
【0067】
なお、車両右側からの入力により車体200が変形した場合も、高圧直流ハーネス105は、インバータ50および支持フレームの車両右方向端部よりも車両中央側に配置されているため、インバータ50と部品搭載フレーム部材240で変形が受け止められ、高圧直流ハーネス105の破損が抑制される。
【0068】
次に、車両前面衝突時のコンバータ40の作用を説明する。
上述のような車両前面衝突によりコンバータ40が、ダッシュロアパネル210に衝突したときには、コンバータ40の面当り部41が、ダッシュロアパネル210の受け面214に面当たりする。よって、コンバータ40とダッシュロアパネル210とが点や線で当たるような局部当たりした場合と比べて、荷重が分散されてコンバータ40のハウジングの破損を抑制できる。
【0069】
また、コンバータ40の後面40bとダッシュロアパネル210との間の後部空間260には、各コネクタ14,42,43,53,54のいずれも設けていないとともに、各ハーネス101〜107のいずれも配索していないことから、コンバータ40の後面40bがダッシュロアパネル210に接触した際に、各コネクタ14,42,43,53,54や各ハーネス101〜107の破損するのを抑制できる。
【0070】
以上説明した実施例1の電気自動車の搭載構造は、以下に列挙する効果を有する。
【0071】
a)コンバータ40を、インバータ50とダッシュロアパネル210との間に配置させて車両後方に配置された走行用バッテリ20に近付けて配置した。
したがって、コンバータ40とインバータ50とを車両上下方向に積層したものと比較して、走行用バッテリ20とコンバータ40との車両前後方向距離を近付けることができ、両者20,40を接続する低圧直流ハーネス104の長さを短くできる。
これにより、低圧直流ハーネス104を短くできる分だけ、製造コスト、重量を軽減でき、かつ、低圧直流ハーネス104の抵抗値を抑え、通電時のエネルギ損失を抑えることが可能となり、かつ、低圧直流ハーネス104の配索作業が容易となる。加えて、コンバータ40をインバータ50と積層したものと比較して、車両上下方向寸法を抑えて、フードパネル220の高さに対する制約を軽減して設計自由度を向上させことができる。
【0072】
しかも、コンバータ40を、車両上方から見て走行用バッテリ20と車幅方向に重なる位置に配置し、この車幅方向に重なる位置で低圧直流ハーネス104を接続した。このため、低圧直流ハーネス104を、車幅方向の変位量を抑えて、直線状に配索することができる。
これによっても、低圧直流ハーネス104の長さを短くでき、上述のように、製造コスト、重量の軽減、通電時のエネルギ損失軽減、低圧直流ハーネス104の配索作業の容易化が可能となる。
【0073】
b)走行用バッテリ20を車室RMの床下に配置し、かつ、コンバータ40の下側に設けたコンバータ側第1コネクタ42に低圧直流ハーネス104を接続した。
したがって、コンバータ側第1コネクタ42を、コンバータ40の車両上下方向の中間部や上部に設けたものと比較して、低圧直流ハーネス104の車両上下方向への配索代を少なくできる。よって、低圧直流ハーネス104を、いっそう短くでき、その分、製造コスト、重量を軽減できるとともに、低圧直流ハーネス104の取り回しおよび配索作業が容易になる。
【0074】
c)直方体形状のコンバータ40を縦置きし、その下端部位置を、インバータ50よりも低い位置に配置させた。このため、コンバータ40の下側のコンバータ側第1コネクタ42の位置を、より低い位置まで下げることが可能であり、その分、床下に配置された走行用バッテリ20との高さの差を小さくし、低圧直流ハーネス104を短くすることが可能であり、いっそう、コスト、重量、エネルギ損失を軽減でき、かつ、配索作業が容易になる。
加えて、コンバータ40を縦置きしたことで、コンバータ40の重量中心を下げて車両重量配分上有利にすることができ、かつ、車両前後方向寸法を抑えて、コンパクトな配置が可能となる。
【0075】
d)上記c)のようにコンバータ40を縦置き配置して、コンバータ40およびインバータ50が、車両前後方向でモータユニット10に重ねて配置させた。したがって、上記a)のようにコンバータ40をインバータ50の車両後方に配置させながらも、モータユニット10、コンバータ40、インバータ50を、コンパクトに搭載することができる。加えて、車両の前面衝突時に、コンバータ40やインバータ50が、モータユニット10よりも先に受け止めることが無いようにし、車体変形スペースを確保できる。
同様に、車幅方向でも、コンバータ40の全体およびインバータ50の全体近くが、モータユニット10を車両上方に投影させた範囲内に収まっているため、車両側面衝突時の車体変形スペースの確保もできる。
【0076】
e)コンバータ40およびコンバータ側第1コネクタ42を、車両前後方向でフロアトンネル部217を車両前方に投影させた範囲内に配置させたため、低圧直流ハーネス104を、フロアトンネル部217に沿って配置させるのにあたり、車両上下方向および車幅方向への変位量を抑えて、直線状に配置させることが可能となった。これにより、コスト、重量、エネルギ損失を軽減でき、かつ、配索作業が容易になった。
【0077】
f)上記a)のようにコンバータ40をインバータ50の車両後方に配置させたため、コンバータ40とインバータ50との両方を、モータルームERの上面に臨ませることができ、それぞれに対して車両上方からの作業が可能であり、両者40,50を車両上下方向に積層したものと比較して、メンテナンス性に優れる。
【0078】
g)コンバータ40を、車両前後方向でインバータ50とダッシュロアパネル210との間に配置し、コンバータ40と走行用バッテリ20とを接続する低圧直流ハーネス104は、コンバータ40とダッシュロアパネル210との間を通ることなく配索した。したがって、車両の前面衝突時に、車体200の変形に伴ってコンバータ40が車両後方へ移動した際に、低圧直流ハーネス104が、コンバータ40とダッシュロアパネル210との間に挟まれにくく、低圧直流ハーネス104の破損を抑制できる。
【0079】
さらに、実施例1では、コンバータ40における低圧直流ハーネス104の接続位置を、走行用バッテリ20に近いコンバータ40の下側としたため、コンバータ40の前面や左右側面に接続したものと比較して、低圧直流ハーネス104が、コンバータ40と他部品との間に挟まれにくくなり、低圧直流ハーネス104の破損を防止できる。
【0080】
h)コンバータ40に、ダッシュロアパネル210に略平行に対向する面当り部41を形成したため、コンバータ40とダッシュロアパネル210とが接触した際に、両者が面接触し、両者が点や線などの局部的な接触を行なうものと比較して、荷重を分散させて、コンバータ40のハウジングが破損するのを抑制できる。
【0081】
加えて、ダッシュロアパネル210にも受け面214を形成しているため、コンバータ40とダッシュロアパネル210との接触時に、両者がいっそう面接触しやすくなり、上述の荷重分散によるコンバータ40の破損抑制性能が向上する。
【0082】
さらに、コンバータ40を縦置きし、コンバータ側第1コネクタ42の位置を、インバータ50よりも低い位置に配置したため、コンバータ40をインバータ50と同じ高さに配置した場合よりも、コンバータ側第1コネクタ42および低圧直流ハーネス104が、ダッシュロアパネル210と車両上下方向に重なる寸法を抑えることができた。
したがって、車両前面衝突によりコンバータ40とダッシュロアパネル210とが接触した際に、コンバータ側第1コネクタ42およびそれに接続された低圧直流ハーネス104が、ダッシュロアパネル210と車載部品との間に挟まれにくくなり、低圧直流ハーネス104の破損を、いっそう抑制できる。
【0083】
加えて、本実施例1では、コンバータ側第1コネクタ42および低圧直流ハーネス104を、フロアトンネル部217の上端よりも低く配置させて、車両側方から見て、ダッシュロアパネル210と、車両上下方向に重なり代を全く有しないようにしたため、いっそうコンバータ40とダッシュロアパネル210との間に挟まれにくくなり、低圧直流ハーネス104の破損をより確実に抑制できる。
【0084】
j)モータユニット10とインバータ50とを接続する三相交流ハーネス106を、コンバータ40とダッシュロアパネル210との間を通ることなくコンバータ40の車両前方の空間250に配索したため、車両前面衝突時に、三相交流ハーネス106が、コンバータ40とダッシュロアパネル210との間に挟まれて破損されるのを防止できる。
【0085】
なお、本実施例1では、コンバータ40とインバータ50とを接続する高圧直流ハーネス105も、コンバータ40の側面に設けたコンバータ側第2コネクタ43とインバータ50の側面に設けたインバータ側第1コネクタ53とで接続させて、コンバータ40とダッシュロアパネル210との間を通ることなく配索したため、両前面衝突時に、高圧直流ハーネス105が、コンバータ40とダッシュロアパネル210との間に挟まれて破損されるのを防止できる。
【0086】
k)サスペンションメンバ70を介して車体200に二重弾性支持されたモータユニット10にコンプレッサ80を取り付けて、モータユニット10およびサスペンション装置用の防振構造がコンプレッサ80の防振構造を兼用するようにした。
したがって、コンプレッサ80の専用の防振構造が不要であり、コンプレッサ80の専用の防振構造を用いるものと比較して、構成を簡略化し、コストおよび重量を軽減できるとともに、省スペース化を図ることができる。しかも、車体200に対して、モータユニット10用とサスペンション装置用との直列の二重の防振構造となっているため、一重の防振よりも高い防振性能を得ることができる。
【0087】
加えて、コンプレッサ80は、車体200にアースしたモータユニット10に固定することで、モータユニット10を介して車体200にアースしたため、コンプレッサ80のアース専用の構成および作業が不要であり、構成および組付作業の簡略化を図ることができる。
【0088】
m)コンプレッサ80は、その主要部を、車両前後方向でモータユニット10の前端よりも後方に配置し、車幅方向で、モータユニット10の車両右方向端部よりも内側に配置した。
したがって、車両の前面衝突時ならびに側面衝突時に、コンプレッサ80がモータユニット10よりも先に車体200と干渉する量を少なく抑え、衝突時の車体200の変形代(衝撃吸収スペース)を確保することができる。
【0089】
特に、本実施例1では、コンプレッサ80の鋳物によるハウジングの全てが、モータユニット10に対し、車両前後方向、車幅方向で内側に収まるようにしたため、上記変形代を最大限確保することができる。
加えて、空間250にコンプレッサ80を設けたことで、空間250の外部にコンプレッサ80を設けたものと比較して、コンパクトに配置できる。
【0090】
n)空間250において、モータユニット10に固定したコンプレッサ80の後方に三相交流ハーネス106を接続するモータユニット側コネクタ14を設け、三相交流ハーネス106を空間250内に配索した。したがって、車両の前面衝突時には、車体200および車載部品がモータユニット側コネクタ14および三相交流ハーネス106に干渉するのを、モータユニットハウジング11およびコンプレッサ80が抑制し、三相交流ハーネス106が破損するのを抑制できる。また、三相交流ハーネス106の他端のインバータ側第2コネクタ54も、前側クロスメンバ241により保護される。
このように、コンプレッサ80や前側クロスメンバ241を利用して、モータユニット側コネクタ14、インバータ側第2コネクタ54および三相交流ハーネス106の保護を行うことができるため、これらを保護するプロテクタが不要となり、その分、構成を簡略化して、コスト、重量、組付手間を省くことができる。
【0091】
0)コンプレッサ80とコンバータ40とを接続するコンプレッサハーネス107は、コンプレッサ80の車両前方に沿って延在されているが、このコンプレッサハーネス107の車両前方をプロテクタ82で覆っているため、車両前面衝突時におけるコンプレッサハーネス107の破損を抑制することができる。なお、コンプレッサハーネス107を、コンプレッサ80の車両後方に配索させ、コンプレッサ80自体でコンプレッサハーネス107を保護するようにして、プロテクタ82を廃止することもできる。
【0092】
p)車体200に弾性支持されたモータユニット10と、車体200に固定されたインバータ50とを、車両上下方向に離して、両者の間に空間250を設けた。
したがって、モータユニット10とインバータ50とを接続する三相交流ハーネス106の長さを確保でき、両者10,50を近接して配置したものと比較して、モータユニット10が車体200に対して変位した際の三相交流ハーネス106の単位長さあたりの変形量を小さく抑えることができ、モータユニット10の変位による三相交流ハーネス106の経時的な劣化による破損を抑制できる。
【0093】
q)三相交流ハーネス106は、インバータ50の車両左方向側面下部に設けられたインバータ側第2コネクタ54と、モータユニット10の車両右方向上部に設けられたモータユニット側コネクタ14とに接続し、車幅方向で車両上下方向に斜めに配索させているため、空間250が同じ上下方向寸法で、三相交流ハーネス106を車両上下方向に沿って配索させたものと比較して、三相交流ハーネス106の全長を長く確保することができる。これにより、モータユニット10が車体200に対して変位した際の、単位長さあたりの剪断方向変形量を小さく抑えることができ、三相交流ハーネス106の経時的な劣化による破損を抑制できる。
【0094】
r)インバータ50は、モータユニット10の車両上下方向上側に、空間250をもって配置するとともに、コンバータ40に対して車両前向に配置し、コンバータ40は、一部(空間対向部40a)が、空間250と車両上下方向で重なるよう配置し、コンバータ40と高圧直流充電ハーネス103で接続する充電ポート60を、インバータ50に対して車両前方に配置した。
したがって、高圧直流充電ハーネス103を直線状に配置することができる。このように高圧直流充電ハーネス103を直線状に配索させた場合、屈曲配索したものと比較して、配索作業性が向上し、また、配索長さが短くなることから、コスト、重量、エネルギ損失を軽減できる。
【0095】
さらに、充電ポート60を、インバータ50の車両前方であって、フロントバンパ201の車両後方かつ車両上方位置に配置した。
したがって、充電時の充電ポート60への外部電源の抜き差し作業が、コンバータ40の上方に設けたものよりも、容易に行なうことができる。
しかも、外部電源の充電ポート60への接続状態を、運転席から目視可能であり、外部電源を接続させたまま車両を発進させる不具合の発生を抑制できる。加えて、フロントバンパ201の変形の範囲で衝撃吸収可能な車両の軽前面衝突時には、充電ポート60の破損を回避できる。
【0096】
s)充電ポート60と空間対向部40aとを車両上下方向で重なるように配置したため、高圧直流充電ハーネス103を、車両上下方向の変位を抑えて直線状に配索できる。
特に、実施例1では、急速充電ポート61と、コンバータ40の空間対向部40aに設けた充電コネクタ40cとを、車両上下方向で同一高さであり、かつ、車幅方向で重なるように配置した。
したがって、急速充電ポート61と充電コネクタ40cとを接続する高圧直流充電ハーネス103を、車両上下方向への変位量、車幅方向でも変位量を抑えた直線状に配索可能である。
よって、高圧直流充電ハーネス103を、いっそう直線状に配索でき、コスト、重量、エネルギ損失を軽減でき、かつ、配索作業性を向上できる。
【0097】
特に、本実施例1では、コンバータ40を縦置きに配置したため、空間対向部40aの車両上下方向寸法および車幅方向寸法を長く確保でき、上述のように、空間対向部40aに充電ポート60が車両上下方向で重なるように配置させること、および車幅方向に重なるように配置させることの自由度が高い。
【0098】
しかも、空間250は、上記p)のように三相交流ハーネス106の変位を許容するための長さを確保すること、上記m)のようにコンプレッサ80の搭載スペースを確保すること、両充電ハーネス101,103を配索することに利用しており、モータルームER内スペースの有効利用を図ることができる。
なお、空間250は、上下にインバータ50とモータユニット10とが配置されているため、車両衝突時に、車体200の変形が、空間250に及びにくく、この空間250を通って配索された各ハーネス101,103,106,107は、空間250の外部を配索したものよりも、破損を抑制できる。
【0099】
さらに、空間250は、インバータ50とモータユニット10との間に確保し、コンバータ40は、インバータ50に積層していないため、モータルームERの高さを抑えながら空間250の上下方向寸法を確保することができる。したがって、この空間250の上下方向寸法として、上記の効利用を図るのに十分な寸法を確保しつつ、フードパネル220の高さを抑えることができる。
【0100】
t)充電ポート60の家庭用充電ポート62と充電器30とを接続する交流充電ハーネス101を、車両上下方向で空間250を横切らせて配索させ、車幅方向で、家庭用充電ポート62と車幅方向に重なるフロアトンネル部217に向けて、途中でコンバータ40の側縁部を車幅方向に迂回させて配索した。
したがって、交流充電ハーネス101の車両上下方向および車幅方向の変位量を抑えて直線状に配索できた。よって、車両上下方向や車幅方向に折り曲げて配索するものと比較して、交流充電ハーネス101の長さを短くして、コスト、重量、エネルギ損失を軽減でき、かつ、配索作業性を向上できる。
しかも、家庭用充電ポート62は、コンバータ40の車両左側端縁部に対向させているため、コンバータ40を迂回する交流充電ハーネス101の車幅方向への変位量を抑えることができる。
【0101】
以上、本発明の電気自動車の搭載構造を実施の形態および実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施の形態および実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0102】
例えば、実施例1では、走行用バッテリとしては、蓄電池を示したが、キャパシタなど他の蓄電機能を有するものも用いることができる。
【0103】
また、実施例1では、モータルームERを、車室RMの車両前方に設けた例を示したが、車両後方に設けてもよい。この場合、モータは、車両前後の一方のみならず、両方に設けてもよい。
【0104】
また、実施例1では、コンバータ40を縦置きした例を示したが、コンバータの一部が空間と車両上下方向に重なっていれば、縦置きしたものに限定されない。また、実施例1では、コンバータ40を縦置きするのにあたり、2番目に長い寸法の辺が、車両上下方向に沿うように配置した例を示したが、最も長い辺を車両上下方向に沿わせてもよい。
【0105】
また、実施例1では、充電ポート60と空間対向部40aとが、車両上下方向および車幅方向で重なっている例を示したが、両者は、両方向の少なくとも一方に重なっていれば、ハーネスをモータやインバータを迂回させて配索するものと比べ、ハーネスを直線状に配索できるという効果は達成することが可能である。
【0106】
また、実施例1では、フロアトンネル部として、内燃機関搭載仕様の車両において排気系の配索用に形成したものと共用した例を示したが、これに限定されず、電気自動車専用の車体において交流充電ハーネスの配索専用に形成したものでもよい。
【0107】
また、実施例1では、充電ポート60に、急速充電ポート61と家庭用充電ポートとを備えたものを示したが、そのポート数は、接続対象となる外部電源の種類に応じ任意に設定すればよく、1もしくは3以上の複数であってもよい。
【0108】
また、実施例1では、交流充電ハーネス101が、車両前後方向で空間250を通り、コンバータ40の位置でコンバータ40を避けて車幅方向に変位させた例を示したが、例えば、実施例1においてコンバータ40の位置を車両右方向にずらして配置した場合は、交流充電ハーネス101を車幅方向に変位することなく直線状に配索させることができる。
【0109】
また、実施例1では、コンバータ40とインバータ50とは、別体にして搭載したが、1つのハウジングに組み込んで1つのユニットとして搭載させることも可能である。
【符号の説明】
【0110】
40 コンバータ
50 インバータ
60 充電ポート
103 高圧直流充電ハーネス(ハーネス)
200 車体
250 空間
ER モータルーム
M モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源としてのモータと、該モータに駆動電流を供給するインバータと、コンバータとを、モータルーム内に配置する電気自動車の搭載構造において、
前記インバータは、前記モータに対して車両上下方向上側に、空間をもって配置すると共に、前記コンバータに対して車両前後方向外側に配置し、
前記コンバータは、一部が、前記モータと前記インバータ間の空間と車両上下方向で重なるよう配置し、
前記空間に配策したハーネスにより前記コンバータと電気的に接続され、前記インバータに対して車両前後方向外側に配置した充電ポートを設けたことを特徴とする電気自動車の搭載構造。
【請求項2】
請求項1に記載の電気自動車の搭載構造において、
前記コンバータは、前記一部が、前記充電ポートと車両上下方向で同一高さになるように配置したことを特徴とする電気自動車の搭載構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電気自動車の搭載構造において、
前記コンバータは、直方体形状とし、その短辺を車両前後方向に沿わせ、その長辺を車両上下方向に沿わせた縦置き配置としたことを特徴とする電気自動車の搭載構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−20622(P2011−20622A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168964(P2009−168964)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】