説明

電気自動車

【課題】路面の凸部等がバッテリユニットを直撃することを回避でき、バッテリを保護することができる電気自動車を提供する。
【解決手段】車体の床下にバッテリユニット14が取付けられている。バッテリユニット14の下方にアンダーカバー400が配置されている。アンダーカバー400は、バッテリケース50の全長を覆う長さを有している。サイドメンバ31,32の下面にプロテクタ部材410,411が固定されている。プロテクタ部材410,411はサイドメンバ31,32の下方に突出している。プロテクタ部材410,411はバッテリケース50の前端50aよりも前側に位置している。プロテクタ部材410,411の下面がバッテリケース50の前端50aの下面よりも下側に位置している。プロテクタ部材410,411の後方でアンダーカバー400の上に、バッテリユニット14の桁部材101,102,103,104が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリを電源とするモータによって走行する電気自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車は、走行距離をいかに長くするかが大きな課題である。そのために、可能な限り大形のバッテリを搭載することが望まれている。また電気自動車用のバッテリは、大形でかつ重いため、車室空間の確保及び重心位置を下げるなどの観点から、車体の床下に配置されるのが通例である。車体の床下にバッテリが配置された電気自動車では、バッテリの下面が路面と対向するため、走行中にバッテリが路面の凸部に触れる可能性がある。
【0003】
そこで、例えば下記の特許文献1に記載されている電気自動車では、バッテリを保護するために、フロント側のスタビライザの中央部に下方に突き出る部分を形成し、この突き出た部分をバッテリの下面よりも低い位置に設けている。あるいは下記の特許文献2に記載されている電気自動車では、バッテリの前方に、車体の幅方向に延びるガードバーを配置している。
【特許文献1】特許第3440867号公報
【特許文献2】特開2005−271878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、スタビライザの中央部を下方に突出させる構造では、スタビライザが路面の凸部に衝突することによって、スタビライザが大きく変形したり懸架機構が破壊されたりする可能性がある。このため路面の凸部によってスタビライザが変形すると、変形の程度によっては路面の凸部がバッテリを直撃する可能性がある。
【0005】
特許文献2のように車体の幅方向に延びるガードバーを設けた場合、路面の凸部がガードバーに衝突したときにガードバーの変形の程度によっては、バッテリが直撃される可能性がある。またガードバーが路面の凸部を乗り越えたのち、該凸部がバッテリに衝突するおそれもある。このため従来技術は、床下に配置されたバッテリを確実に保護することができなかった。しかも車体の幅方向に延びる長尺なガードバーは、重量が大きい割には曲げ剛性が小さいという問題もある。
【0006】
従って本発明の目的は、路面の凸部等がバッテリユニットを直撃することを回避でき、バッテリを保護することができる電気自動車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車体の下部に配置される左右一対のサイドメンバを含むフレーム構体と、バッテリケースを有し前記フレーム構体に取付けられるバッテリユニットと、前記フレーム構体に設けられたバッテリユニット保護手段とを具備している。バッテリユニット保護手段は、前記バッテリユニットの下方に配置され、前記バッテリケースの下面を覆う広さを有するアンダーカバーと、前記一対のサイドメンバの下面に取付けられて下方に突出する左右一対のプロテクタ部材とを有し、前記プロテクタ部材が前記バッテリケースの前端よりも前側に位置し、かつ、前記プロテクタ部材の下面が前記バッテリケースの前端の下面よりも下側に位置している。
【0008】
本発明の好ましい形態では、前記バッテリケースは、トレイ部材と、前記トレイ部材の上側に配置されるカバー部材と、前記トレイ部材に固定され前記車体の幅方向に延びる桁部材とを具備し、前記桁部材の両端部に設けられた締結部が前記各サイドメンバのバッテリユニット取付部に下側からボルトによって固定され、前記ボルトの下方が前記アンダーカバーによって覆われている。
【0009】
前記アンダーカバーが前記桁部材の下面と対向して配置されているとよい。また前記桁部材が前記プロテクタ部材の後方に配置されているとよい。また前記アンダーカバーの周縁部に、上方に突出する部品落下防止壁が形成されていてもよい。前記締結部のボルト挿入孔の下縁から前記アンダーカバーの上面までの距離が、前記ボルトの全長よりも短くてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、走行中に路面の凸部や障害物等が車体の床下に配置されたバッテリユニットを直撃することを回避でき、必要最小限の範囲に配置されたプロテクタ部材によって、重量増加を最小限に抑えながら効率良くバッテリユニットを保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明の一実施形態について、図1から図8を参照して説明する。
図1は電気自動車10の一例を示している。この電気自動車10は、車体11の後部に配置された走行用のモータ12および充電装置13と、車体11の床下に配置されるバッテリユニット14などを備えている。車体11の前部に冷暖房用の熱交換ユニット15が配置されている。
【0012】
この自動車10の前輪20は、図示しないフロントサスペンションによって車体11に支持されている。後輪21は、図示しないリヤサスペンションによって車体11に支持されている。リヤサスペンションの一例は、トレーリングアーム式リヤサスペンションである。
【0013】
図2は、前記車体11の下部の骨格をなすフレーム構体30と、このフレーム構体30に取付けられる前記バッテリユニット14とを示している。
フレーム構体30は、車体11の前後方向に延びる左右一対のサイドメンバ31,32と、車体11の幅方向に延びるクロスメンバ33,34,35とを含んでいる。クロスメンバ33,34,35は、サイドメンバ31,32の所定位置に溶接によって固定されている。
【0014】
サイドメンバ31,32の後部にサスペンションアームサポートブラケット40,41が設けられている。サスペンションアームサポートブラケット40,41は、それぞれサイドメンバ31,32の所定位置に溶接によって固定されている。サスペンションアームサポートブラケット40,41に枢軸部42が設けられている。これら枢軸部42に、前記トレーリングアームの前端部が取付けられている。
【0015】
図3に示すようにバッテリユニット14はバッテリケース50を備えている。バッテリケース50は、下側に位置するトレイ部材51と、上側に位置するカバー部材52とを備えている。バッテリケース50の前半部に、前側バッテリ収納部55が形成されている。バッテリケース50の後半部に、後側バッテリ収納部56が形成されている。前側バッテリ収納部55と後側バッテリ収納部56との間に、中央バッテリ収納部57と、電気回路収納部58などが形成されている。
【0016】
前記バッテリ収納部55,56,57に、それぞれバッテリモジュール60(図3に一部のみ2点鎖線で示す)が収納されている。バッテリモジュール60の一例は、リチウムイオン電池からなる複数個のセルを直列に接続したものである。電気回路収納部58には、バッテリモジュール60の状態を検出するモニタや制御等をつかさどる電気部品(図示せず)等が収納される。
【0017】
図4に示すように、バッテリユニット14はフロアパネル70の下面側に配置されている。フロアパネル70は、サイドメンバ31,32を含むフレーム構体30の所定位置に溶接によって固定されている。フロアパネル70の上方にフロントシート71(図1に示す)とリヤシート72が配置されている。フロントシート71の下方に、バッテリユニット14の前側バッテリ収納部55が配置されている。リヤシート72の下方に、バッテリユニット14の後側バッテリ収納部56が配置されている。前側バッテリ収納部55と後側バッテリ収納部56との間に形成されたフロアパネル70の凹部70aは、リヤシート72に着座した乗員の足元スペース付近に位置する。
【0018】
トレイ部材51は、一体成形された合成樹脂の内部に、補強用の金属プレートをインサートしてなるモールド成形品であり、上面側が開放した箱形に成形されている。トレイ部材51の材料である合成樹脂は、例えば繊維によって強化されている。トレイ部材51の上面の周縁部にカバー取付面80(図3に示す)が形成されている。カバー取付面80は、トレイ部材51の全周にわたって連続している。カバー取付面80の上に防水用のシール材81が設けられている。
【0019】
カバー部材52は、繊維によって強化された合成樹脂の一体成形品からなる。カバー部材52の前部に、サービスプラグ用の開口部85と冷却風導入口86が形成されている。サービスプラグ用の開口部85に蛇腹状のゴム製ブーツ87が取付けられている。冷却風導入口86にも蛇腹状のゴム製ブーツ88が取付けられている。カバー部材52の上面に、冷却風の一部を流すためのバイパス流路部90と、冷却ファン収納部91などが設けられている。
【0020】
カバー部材52の周縁部にフランジ部95が形成されている。フランジ部95はカバー部材52の全周にわたって連続している。カバー部材52のフランジ部95をトレイ部材51のカバー取付面80の上に乗せ、図3に示すボルト96あるいはナット97によって、トレイ部材51とカバー部材52とが互いにシール材81を介して水密に固定される。
【0021】
トレイ部材51の下面側に複数本(例えば4本)の桁部材101,102,103,104が設けられている。図3と図5に示されるように、桁部材101,102,103,104は、それぞれ車体11の幅方向に延びる桁本体111,112,113,114を有している。
【0022】
前から1番目の桁本体111の両端に締結部121,122が設けられている。前から2番目の桁本体112の両端に締結部123,124が設けられている。前から3番目の桁本体113の両端に締結部125,126が設けられている。前から4番目(最後部)の桁本体112の両端に締結部127,128が設けられている。バッテリユニット14の前端部には左右一対の前側支持部材130,131が設けられている。
【0023】
桁部材101,102,103,104は、バッテリユニット14の荷重を支えるに足る強度を有する金属材料(例えば鋼板)によって構成されている。前から1番目の桁部材101の両端に設けられた締結部121,122のそれぞれに、上下方向に貫通するボルト挿入孔143(図2と図3に示す)が形成されている。
【0024】
サイドメンバ31,32には、締結部121,122と対向する位置に、ナット部材を備えたバッテリユニット取付部145,146が設けられている。締結部121,122の下側から、ボルト147(図2と図4に示す)をボルト挿入孔143に挿入し、このボルト147をバッテリユニット取付部145,146のナット部材に螺合させ締付けることにより、1番目の桁部材101の締結部121,122がサイドメンバ31,32に固定される。
【0025】
前から2番目の桁部材102の両端に設けられた締結部123,124のそれぞれに、上下方向に貫通するボルト挿入孔153(図2と図3に示す)が形成されている。サイドメンバ31,32には、前記締結部123,124と対向する位置に、ナット部材を備えたバッテリユニット取付部155,156が設けられている。締結部123,124の下側から、ボルト157(図2と図4に示す)をボルト挿入孔153に挿入し、このボルト157をバッテリユニット取付部155,156のナット部材に螺合させ締付けることにより、2番目の桁部材102の締結部123,124がサイドメンバ31,32に固定される。
【0026】
前から3番目の桁部材103の両端に設けられた締結部125,126のそれぞれに、上下方向に貫通するボルト挿入孔163(図2と図3に示す)が形成されている。図4と図5に示されるように、サイドメンバ31,32に荷重伝達部材170,171がボルト172によって固定されている。これら荷重伝達部材170,171は、前から3番目の桁部材103の締結部125,126の上方に設けられている。一方の荷重伝達部材170は、一方のサスペンションアームサポートブラケット40に溶接されている。他方の荷重伝達部材171は、他方のサスペンションアームサポートブラケット41に溶接されている。
【0027】
すなわち荷重伝達部材170,171は、サイドメンバ31,32と、サスペンションアームサポートブラケット40,41とに結合されている。これら荷重伝達部材170,171は、フレーム構体30の一部をなしている。荷重伝達部材170,171に、ナット部材を備えたバッテリユニット取付部175,176が設けられている。
【0028】
締結部125,126の下側から、ボルト177をボルト挿入孔163に挿入し、このボルト177をバッテリユニット取付部175,176のナット部材に螺合させ締付けることにより、3番目の桁部材103の締結部125,126が、荷重伝達部材170,171を介してサイドメンバ31,32に固定される。
【0029】
前から4番目の桁部材104の締結部127,128のそれぞれに、上下方向に貫通するボルト挿入孔193(図2と図3に示す)が形成されている。サイドメンバ31,32には、締結部127,128と対向する位置に、延長ブラケット194,195が設けられている。延長ブラケット194,195はサイドメンバ31,32のキックアップ部31b,32bの下方に延びている。延長ブラケット194,195は、フレーム構体30の一部をなしている。これら延長ブラケット194,195に、ナット部材を備えたバッテリユニット取付部196,197が設けられている。
【0030】
締結部127,128の下側から、ボルト198(図2と図4に示す)をボルト挿入孔193に挿入し、このボルト198を延長ブラケット194,195のバッテリユニット取付部196,197のナット部材に螺合させ締付けることにより、4番目の桁部材104の締結部127,128が延長ブラケット194,195を介してサイドメンバ31,32に固定される。
【0031】
図4に示すように、桁部材101,102,103,104の下面は、トレイ部材51の平坦な下面に沿って、水平方向に延びる同一平面L上に位置している。1番目と2番目の桁部材101,102は、サイドメンバ31,32の水平部分31a,32aに設けられたバッテリユニット取付部145,146,155,156に直接固定される。
【0032】
3番目の桁部材103と4番目の桁部材104は、サイドメンバ31,32のキックアップ部31b,32bの下方に設けられたバッテリユニット取付部175,176,196,197に固定されている。すなわち3番目と4番目の桁部材103,104は、キックアップ部31b,32bの下方にオフセットした位置にある。このため3番目の桁部材103は、上下方向に厚みを有する荷重伝達部材170,171を介して、バッテリユニット取付部175,176に固定される。4番目の桁部材104は、キックアップ部31b,32bの下方に延びる延長ブラケット194,195によって、バッテリユニット取付部196,197に固定される。
【0033】
バッテリユニット14の前端に位置する前側支持部材130,131は、前から1番目の桁部材101の前方に突出している。前側支持部材130,131は、この桁部材101に結合されている。図2に示すように、前側支持部材130,131に設けられた締結部210,211は、ボルト212によって、クロスメンバ33のバッテリユニット取付部213,214に固定される。
【0034】
以上説明したように本実施形態の電気自動車10は、桁部材101,102,103,104が左右のサイドメンバ31,32間にわたって設けられ、これら桁部材101,102,103,104によってサイドメンバ31,32どうしが結合されている。このためバッテリユニット14の桁部材101,102,103,104がクロスメンバに相当する剛性部材として機能することができる。
【0035】
また、荷重伝達部材170,171がスペンションアームサポートブラケット40,41に固定されており、サスペンションアームサポートブラケット40,41に入力する横方向の荷重が荷重伝達部材170,171を介して桁部材103に入力される。
【0036】
このため,サスペンションアームサポートブラケット40,41付近にクロスメンバが配置されていなくても、サスペンションアームサポートブラケット40,41付近の剛性を桁部材103によって高めることができ、操縦安定性と乗り心地が向上する。言い換えると、大形のバッテリユニット14の一部を左右一対のサスペンションアームサポートブラケット40,41間のスペースに配置することが可能である。このため、大形のバッテリユニット14を搭載することが可能となり、電気自動車の走行距離を長くすることができる。
【0037】
図1と図4〜図8に示されるように、バッテリユニット14の下方にアンダーカバー400が配置されている。アンダーカバー400の上面は桁部材101,102,103,104の下面と対向している。アンダーカバー400の材料の一例は、ガラス繊維によって強化された合成樹脂である。このアンダーカバー400は、例えば前半部400aと後半部400bとに分割され、これら前半部400aと後半部400bとを接続することにより、1つのアンダーカバー400を構成している。なお、全長にわたって一体のアンダーカバーであってもよい。
【0038】
このアンダーカバー400は、バッテリユニット14が前記ボルト147,157,177,198,212によってフレーム構体30に固定されたのち、車体11の下側から、ボルト401(図6に示す)によって、フレーム構体30と桁部材101,102,103,104の少なくとも一部に固定される。
【0039】
アンダーカバー400の全長は、バッテリユニット14の全長よりも大きい。すなわちこのアンダーカバー400は、バッテリケース50の前端50aから後端50bを覆うに足る長さを有している。アンダーカバー400の幅は、バッテリユニット14の幅よりも大きい。
【0040】
図5と図6に示されるように、アンダーカバー400は、左右一対のサイドメンバ31,32間にわたって配置されている。アンダーカバー400の前部は、前側のクロスメンバ33aに前記ボルト401によって固定されている。アンダーカバー400の後部は、後側のクロスメンバ35a(図6に示す)に設けられたブラケット(図示せず)に、ボルト401によって固定されている。このアンダーカバー400は、車体11の下方から見て、バッテリユニット14の底面全体を覆うに足る面積を有している。
【0041】
前記アンダーカバー400によって、前記ボルト147,157,177,198,212の下方が覆われている。このため、万一、ボルト147,157,177,198,212が外れても、これらのボルトがアンダーカバー400の上に落ちるため、ボルトがアンダーカバー400に当たる音や、走行中にボルトが転がる音などにより、ボルトが外れたことを知ることが可能である。
【0042】
アンダーカバー400の周縁部には、上に凸の形状の部品落下防止壁402(図1と図4に示す)が形成されている。部品落下防止壁402は、アンダーカバー400の全周のうち、少なくとも前記ボルト147,157,177,198,212がアンダーカバー400の上から転がり落ちることを防止できる位置に設けられているとよい。アンダーカバー400の上に落ちたボルト等の部品は、部品落下防止壁402によってアンダーカバー400の内側に留まるため、ボルト等の部品が道路上に落ちることが防止される。
【0043】
図2,図5,図6に示されるように、フレーム構体30にバッテリユニット保護手段として機能するプロテクタ部材410,411が設けられている。本実施形態では、プロテクタ部材410,411と前記アンダーカバー400とによって、バッテリユニット保護手段が構成されている。
【0044】
プロテクタ部材410,411は、サイドメンバ31,32の下面にボルト412によって取付けられている。プロテクタ部材410,411は、サイドメンバ31,32の前部、すなわち前輪20に向かってサイドメンバ31,32間の幅が狭くなっている部分に取付けられている。このためプロテクタ部材410,411は、車体11の正面から見て、左右一対の前輪の内側に位置している。しかもプロテクタ部材410,411の後方に前記アンダーカバー400が連なっている。
【0045】
プロテクタ部材410,411の前部に傾斜面410a,411aが形成されている。これら傾斜面410a,411aは、サイドメンバ31,32の後側から前側に向かって高くなってゆくように傾斜した「そり」のような形状である。走行中に車体11の前側からプロテクタ部材410,411に衝突した路面の凸部は、この傾斜面410a,411aに沿ってプロテクタ部材410,411の後方に案内される。
【0046】
前記傾斜面410a,411aは、バッテリケース50の前端50aよりも前側に位置している。プロテクタ部材410,411の下面はサイドメンバ31,32の下方に突出している。プロテクタ部材410,411の下面はバッテリケース50の前端50aの下面よりも下側に位置している。またプロテクタ部材410,411の下面はアンダーカバー400の下面から下に突出している。
【0047】
このように、左右一対のプロテクタ部材410,411が、剛性の高いサイドメンバ31,32に固定されている。またプロテクタ部材410,411の後方でアンダーカバー400の上に、剛性の高い桁部材101,102,103,104が配置されている。
【0048】
自動車10が段差等の大きな凸部を通過しようとしたとき、状況によっては、例えばアンダーカバー400の先端400c付近に路面の凸部が当たることが想定される。その場合、アンダーカバー400の先端400c付近に配置されているクロスメンバ33aによって衝突の荷重を受けるとともに、路面の凸部がアンダーカバー400に沿って車体11の後側に案内される。このため路面の凸部がバッテリユニット14に当たることを回避できる。
【0049】
走行中の状況によっては、路面の凸部がプロテクタ部材410,411の少なくとも一方に衝突することも想定される。その場合、プロテクタ部材410,411の傾斜面410a,411aが路面の凸部に乗り上げて車体11の後方に向かう。この場合、プロテクタ部材410,411の傾斜面410a,411aが「そり」に相当する機能を果たすことにより、傾斜面410a,411aに当たった路面の凸部がアンダーカバー400に向かって案内される。このため路面の凸部がバッテリユニット14を直撃することを防止できる。
【0050】
本発明者達が行なった実験によれば、路面の凸部にアンダーカバー400が接触する場合、常識的な走行では、路面の凸部が車体の幅方向中央を通過する可能性は極めて低く、少なくとも一方のサイドメンバ31(または32)の下を通過する場合がほとんどであることが判っている。すなわち、バッテリユニット14の中央部のみを直撃するような路面の凸部は、走行中に、まずフロントバンパに衝突する。またバッテリユニット14と干渉するような路面の凸部は、進行方向に対しておおむね直角な方向に延びる波形の凸部となる。
【0051】
こうした理由から、路面の凸部はサイドメンバ31(または32)の下を通過する場合がほとんどである。本実施形態では、サイドメンバ31,32に、必要な剛性を有する鋼板製のプロテクタ部材410.411を取付けることにより、必要最小限の重量増加のもとで、路面の凸部がバッテリユニット14を直撃することを効果的に防止することができた。
【0052】
アンダーカバー400の上には、剛性の高い桁部材101,102,103,104が車体11の前方から後方に向かって並んでいる。これらの桁部材101,102,103,104は、プロテクタ部材410,411の後側に配置されている。このためアンダーカバー400は、下側から入力する外力に対して大きな強度を発揮できる。このためアンダーカバー400に接した路面の凸部を、アンダーカバー400に沿って車体11の後方に案内することができる。こうしてバッテリユニット14の破損を防止できる。
【0053】
図7に、前から2番目の桁部材102の締結部123の一例が示されている。この締結部123においては、ボルト挿入孔153の下縁からアンダーカバー400の上面までの距離Hが、ボルト157の全長よりも短くなるように、アンダーカバー400がフレーム構体30に固定されている。
【0054】
このためボルト157が万一緩んだときに、図8に示すようにボルト157の下端がアンダーカバー400によって支持され、ボルト157が抜け落ちることを防止できる。他の締結部121,122,124〜128,210,211においても、上記締結部123と同様の構成により、ボルト147,177,198,212が抜け落ちることを、アンダーカバー400によって防止することができる。またこのアンダーカバー400は、走行中に車体11の下面側に生じる空気流を整流する効果もあり、走行中の空気抵抗を減少させることができる。
【0055】
なお前記実施形態では車体後部に走行用モータが搭載された電気自動車について説明したが、本発明は走行用モータが車体前部に配置された電気自動車にも適用することができる。また本発明を実施するに当たって、フレーム構体、バッテリユニット、アンダーカバー、プロテクタ部材、モータをはじめとして、本発明の電気自動車の構成要素の構造及び配置等を適宜に変更して実施できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態に係る電気自動車とバッテリユニットとアンダーカバーの斜視図。
【図2】図1に示された電気自動車のフレーム構体とバッテリユニットの斜視図。
【図3】図2に示されたバッテリユニットのバッテリケースと桁部材の斜視図
【図4】図1に示された電気自動車のフレーム構体とバッテリユニットの側面図。
【図5】図1に示された電気自動車のフレーム構体とバッテリユニットを上方から見た平面図。
【図6】図1に示された電気自動車のフレーム構体とアンダーカバーを下方から見た斜視図。
【図7】図5に示されたバッテリユニットの前から2番目に位置する桁部材の締結部の断面図。
【図8】図7に示された締結部のボルトが外れた状態を示す断面図。
【符号の説明】
【0057】
10…電気自動車
11…車体
14…バッテリユニット
30…フレーム構体
31,32…サイドメンバ
50…バッテリケース
51…トレイ部材
52…カバー部材
101,102,103,104…桁部材
147,157,177,198,212…ボルト
400…アンダーカバー
401…部品落下防止壁
410,411…プロテクタ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の下部に配置される左右一対のサイドメンバを含むフレーム構体と、
バッテリケースを有し前記フレーム構体に取付けられるバッテリユニットと、
前記フレーム構体に設けられたバッテリユニット保護手段とを具備し、
前記バッテリユニット保護手段は、
前記バッテリユニットの下方に配置され、前記バッテリケースの下面を覆う広さを有するアンダーカバーと、
前記一対のサイドメンバの下面に取付けられて下方に突出する左右一対のプロテクタ部材とを有し、
前記プロテクタ部材が前記バッテリケースの前端よりも前側に位置し、かつ、前記プロテクタ部材の下面が前記バッテリケースの前端の下面よりも下側に位置していることを特徴とする電気自動車。
【請求項2】
前記バッテリケースは、
トレイ部材と、
前記トレイ部材の上側に配置されるカバー部材と、
前記トレイ部材に固定され前記車体の幅方向に延びる桁部材とを具備し、
前記桁部材の両端部に設けられた締結部が前記各サイドメンバのバッテリユニット取付部に下側からボルトによって固定され、
前記ボルトの下方が前記アンダーカバーによって覆われていることを特徴とする請求項1に記載の電気自動車。
【請求項3】
前記アンダーカバーが前記桁部材の下面と対向して配置されていることを特徴とする請求項2に記載の電気自動車。
【請求項4】
前記桁部材が前記プロテクタ部材の後方に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の電気自動車。
【請求項5】
前記アンダーカバーの周縁部に、上方に突出する部品落下防止壁が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の電気自動車。
【請求項6】
前記ボルトが挿入される前記締結部のボルト挿入孔の下縁から前記アンダーカバーの上面までの距離が、前記ボルトの全長よりも短いことを特徴とする請求項3または5に記載の電気自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−83598(P2009−83598A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−254260(P2007−254260)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【出願人】(000176811)三菱自動車エンジニアリング株式会社 (402)
【Fターム(参考)】