電源装置および電源装置の制御方法
【課題】モータが力行状態・回生状態を頻繁に繰り返す場合であっても、電力変換装置が備えるコンデンサの充放電電流による損失の増大を抑制する。
【解決手段】回生状態から力行状態への移行時、車両の走行環境と走行履歴とに基づいて、第1および第2の電源の電気的接続状態を直列接続のままで固定とする直列固定処理を行う。
【解決手段】回生状態から力行状態への移行時、車両の走行環境と走行履歴とに基づいて、第1および第2の電源の電気的接続状態を直列接続のままで固定とする直列固定処理を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、それぞれが独立した複数の電源を備える電源装置が知られており、例えば、この電源装置は、インバータ(電力変換装置)を介してモータに電力を供給する。例えば、特許文献1には、電気自動車の低出力運転時にインバータの入力電圧を下げ、スイッチング損失を低減させることにより、システム効率の向上を図る手法が開示されている。具体的には、アクセルペダル踏込量、モータの出力、あるいは、ブレーキペダル踏込量が大の時は、複数の電源を直列接続し、これらの値が小の時は、複数の電源を並列接続する。
【0003】
なお、この類の電源装置では、個々の電源電圧間に差があるときには電源同士を並列接続することができないため、モータの回生時には、複数の電源間を直列接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−236608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば、渋滞時といったようにアクセルペダル踏込量が小さく、モータ速度が低いシーンでは、力行状態時に複数の電源を並列接続し、回生状態時に複数の電源を直列接続するといった状態が頻繁に繰り返されることとなる。そのため、インバータ(電力変換装置)が備える平滑コンデンサの電圧変化に伴い充放電電流による損失が増大してしまうといった問題がある。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、モータが力行状態・回生状態を頻繁に繰り返す場合であっても、電力変換装置が備えるコンデンサの充放電電流による損失の増大を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するために、本発明は、回生状態から力行状態への移行時、車両の走行環境と走行履歴とに基づいて、第1および第2の電源の電気的接続状態を直列接続のままで固定とする直列固定処理を行う。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、回生状態から力行状態へ移行後、直列固定処理を行うことにより、回生状態における電気的接続状態と同じ直列接続がそのまま維持される。これにより、直列接続と並列接続との切り替え回数を低減することができる。そのため、インバータのコンデンサの電圧変化が抑制され、平滑コンデンサの充放電電流による発熱を抑制することができるとともに、充放電電流による損失の増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態にかかる電源装置30および当該電源装置30を用いたモータ10の制御システムを模式的に示す構成図
【図2】第1の実施形態にかかるコントロールユニット40の構成を模式的に示すブロック図
【図3】第1の実施形態にかかる電源装置30に関する第1の電源および第2の電源の電気的接続状態の説明図
【図4】第1の実施形態にかかる電源装置30の制御方法を示すフローチャート
【図5】第2の実施形態にかかる電源装置30の制御方法を示すフローチャート
【図6】第3の実施形態にかかる電源装置30の制御方法を示すフローチャート
【図7】第4の実施形態にかかる電源装置30の制御方法を示すフローチャート
【図8】第5の実施形態にかかる電源装置30の制御方法を示すフローチャート
【図9】第6の実施形態にかかる電源装置30aおよび当該電源装置30aを用いたモータ10の制御システムを模式的に示す構成図
【図10】第6の実施形態にかかるコントロールユニット40aの構成を模式的に示すブロック図
【図11】第6の実施形態にかかる電源装置30aにおける第1の電源および第2の電源の電気的接続状態の説明図
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる電源装置30および当該電源装置30を用いたモータ10の制御システムを模式的に示す構成図である。本実施形態では、電気自動車の駆動用モータとして適用されたモータ10を制御する制御システムについて説明を行う。この電気自動車は、モータ10、インバータ20、電源装置30およびコントロールユニット40を備えている。
【0011】
モータ10は、例えば、中性点を中心に星形結線された複数の相巻線(本実施形態では、U相巻線、V相巻線、W相巻線からなる3つの相巻線)を有する3相交流同期モータである。このモータ10は、インバータ20内で変換された3相の交流電力が各相巻線に供給されることにより生じる磁界と、回転子の永久磁石が作る磁界との相互作用により駆動する。モータ10のロータは、自動変速機の入力軸に連結されている。
【0012】
モータ10は、電源装置30から電力の供給を受けて回転駆動することにより、電動機として動作することができる(以下、この運転状態を「力行状態」と呼ぶ)。一方、モータ10は、ロータが外力により回転している場合、ステータ巻線の両端に起電力を生じさせることにより、発電機として機能する(以下、この運転状態を「回生状態」と呼ぶ)。モータ10により発電された電力は、電源装置30を充電することができる。本明細書では、電動機および発電機の双方の機能を併せもつ意味でモータという用語を用いる。
【0013】
インバータ20は、モータ10の力行状態時、コントロールユニット40から出力されるインバータ駆動信号に応じてPWM制御されることにより、電源装置30から供給される直流電力を、多相交流電力(本実施形態では、U相交流電力、V相交流電力およびW相交流電力で構成される3相交流電力)に変換し、当該3相の交流電力をモータ10の各相巻線に供給する。また、インバータ20は、モータ10の回生状態時、モータ10によって発電された3相交流電力を直流電力に変換する。この直流電力は、電源装置30または後述する平滑コンデンサCに蓄電される。
【0014】
インバータ20は、モータ10の各相に対応する3つのスイッチ回路を主体に構成されている。具体的には、インバータ20は、電源装置30の正極側の正極母線と、電源装置30の負極側の負極母線との間に、U相用のスイッチ回路と、V相用のスイッチ回路と、W相用のスイッチ回路とを備える。また、正極母線と負極母線との間には、各相用のスイッチ回路よりも電源装置30側に、平滑コンデンサCが接続されている。
【0015】
U相用のスイッチ回路は、互いに直列接続された一対のスイッチ(アーム)を主体に構成されており、V相用のスイッチ回路は、互いに直列接続された一対のスイッチ(アーム)を主体に構成されている。また、W相用のスイッチ回路は、互いに直列接続された一対のスイッチ(アーム)を主体に構成されている。個々のスイッチは、NPN型のトランジスタ等のスイッチング素子を主体に構成されており、個々のトランジスタには、コレクタ・エミッタ間に還流用ダイオードがそれぞれ逆並列接続されている。これらのスイッチのオンオフ状態は、コントロールユニット40から出力されるインバータ駆動信号に応じて切り替えられる。
【0016】
U相用の一対のスイッチの相互接続点、V相用の一対のスイッチの相互接続点、および、W相用の一対のスイッチの相互接続点は、それぞれが各相電流の出力点として機能している。各出力点には、モータ10の対応する相巻線がそれぞれ接続される。インバータ20により生成される3相交流電流をそれぞれU相交流電流Iu、V相交流電流IvおよびW相交流電流Iwとする。例えば、各交流電流Iu,Iv,Iwは、モータ10側へ電流が流れる方向を正とする。
【0017】
電源装置30は、インバータ20を介してモータ10に接続されており、モータ10に電力を供給するとともに、モータ10において発電された電力を充電する電源装置である。電源装置30は、それぞれが独立して直流電源として機能する複数の電源(本実施形態では、2つの電源(第1および第2の電源))を有している。個々の電源としては、例えば、ニッケル水素電池あるいはリチウムイオン電池といったバッテリを用いることができる。
【0018】
また、電源装置30は、第1および第2の電源間の電気的接続状態を直列接続と並列接続とで切り替えるスイッチ回路を備えており、このスイッチ回路は、単スイッチSW0(スイッチング手段)を主体に構成されている。単スイッチSW0は、NPN型のトランジスタ等のスイッチング素子を主体に構成されており、トランジスタは、コレクタ・エミッタ間に、還流用ダイオードが逆並列接続されている。また、スイッチ回路において、単スイッチSW0のコレクタ端子側およびエミッタ端子側には、単スイッチSW0の還流用ダイオードの順方向と対応させたダイオードがそれぞれ直列接続されている。単スイッチSW0のオンオフ状態は、コントロールユニット40から出力されるスイッチ駆動信号に応じて切り替えられる。
【0019】
ここで、単スイッチSW0と、コレクタ端子側のダイオードとの接続点は、第1の電源(電源電圧Ea)の正極が接続され、単スイッチSW0と、エミッタ端子側のダイオードとの接続点は、第2の電源(電源電圧Eb)の負極が接続されている。コレクタ端子側のダイオードの他方の端子と、第2の電源の正極とは相互に接続されており、この接続端は電源装置30の正極側の出力端として機能する。この正極側の出力端は、インバータ20の正極母線が接続される。また、エミッタ端子側のダイオードの他方の端子と、第1の電源の負極とは相互に接続されており、この接続端は電源装置30の負極側の出力端として機能する。この負極側の出力端は、インバータ20の負極母線が接続される。なお、第1および第2の電源を並列接続から直列接続へ切り替えるときの突入電流を抑制するため、インバータ20と、電源装置30との間には、フィルタ用リアクトルLが設けられている。
【0020】
コントロールユニット40は、インバータ20を介してモータ10を制御する制御手段であるとともに、電源装置30を制御する制御手段でもある。コントロールユニット40としては、CPU、ROM、RAM、I/Oインターフェースを主体に構成されたマイクロコンピュータを用いることができる。コントロールユニット40は、ROMに記憶された制御プログラムに従い、インバータ20および電源装置30を制御するための演算を行う。そして、コントロールユニット40は、この演算によって算出された制御信号をインバータ20または電源装置30に対して出力する。
【0021】
図2は、コントロールユニット40の構成を模式的に示すブロック図である。コントロールユニット40は、インバータ20を構成する各スイッチを制御することにより、モータ10の出力トルクを制御する。また、コントロールユニット40は、電源装置30を構成する単スイッチSW0を制御することにより、電源装置30における第1および第2の電源の電気的接続状態の設定を行う。
【0022】
コントロールユニット40には、各種センサからセンサ信号などの必要な情報が入力されている。電流センサ50は、モータ10の各相の交流電流、すなわち、U相交流電流Iuと、V相交流電流Ivと、W相交流電流Iwとをそれぞれ検出する。電気角検出部51は、モータ10のロータ位置を表す電気的な位相(電気角)θを検出する。また、モータ速度検出部52は、モータ10のロータの回転角速度(モータ速度)ωを検出する。例えば、電気角検出部51およびモータ速度検出部52は、モータ10のロータ位置を検出するエンコーダやレゾルバなどの回転位置センサからの検出結果に基づいて、電気角θおよびモータ速度ωを検出する。さらに、コントロールユニット40には、上位装置において演算されるトルク指令値T*が入力される。
【0023】
また、車速センサ53は、車両の速度Vcaを検出するセンサである。障害物センサ54は、車両の走行の妨げとなる障害物の情報(以下「障害物情報」という)Lobを検出する障害物検出手段であり、例えば、対象物までの距離を検出するレーザレーダやミリ波レーダなどを用いることができる。気温センサ55は、気温を検出する気温検出手段である。
【0024】
さらに、コントロールユニット40は、必要に応じてナビゲーションシステム56の保有する情報Iinfoを取得することができる。ナビゲーションシステム56は、自己位置周辺の地図情報および経路情報を提示する装置であり、地図データベース、現在位置を検出する位置検出手段、外部システムから情報を受信する情報受信手段、および各種の演算処理を行う処理手段を主体に構成されている。地図データベースは、ナビゲーション用の道路情報を保持するデータベースである。この地図データベースにおける道路情報は、必要に応じて、処理手段によって参照される。道路情報は、自車両が走行する道路に位置情報などが関連付けられた情報であり、この道路情報を通じて、道路の曲率、道路の勾配、道路の幅員などを把握することができる。また、この道路情報には、道路の周囲に存在する施設などの情報も含まれている。位置検出手段は、例えば、GPS受信器、方位センサおよび車速センサから出力される情報に基づいて、車両の現在位置を検出する。情報受信手段は、外部インフラからVICS情報などの交通情報(例えば、渋滞情報)を受信する。処理手段は、現在位置表示および経路誘導に必要な各種の処理を行うとともに、コントロールユニット40からの要求に応じて各種の処理を行い、これにより、自己の保有する情報を走行環境に関する情報(以下「環境情報」という)Iinfoとしてコントロールユニット40に出力することができる。換言すれば、ナビゲーションシステム56は、コントロールユニット40にとって車両の走行環境を検出する走行環境検出手段として機能する。
【0025】
コントロールユニット40は、これを機能的に捉えた場合、トルク制御部41と、電流制御部42と、電源制御部43と、メモリ44とを有している。これらの機能的な要素のうち、トルク制御部41と電流制御部42とは、主としてモータ10の制御手段としての機能を担い、また、電源制御部43と、メモリ44とは、主として電源装置30の制御手段としての機能を担っている。
【0026】
トルク制御部41は、トルク指令値T*とモータ速度ωとに基づいて、ベクトル制御用の電流指令値であるd軸電流指令値Id*およびq軸電流指令値Iq*を演算する。具体的には、トルク制御部41は、トルク指令値T*とモータ速度ωとに基づいて、トルク指令値T*に一致するトルクをモータ10が出力するためのd軸およびq軸電流指令値Id*,Iq*とをそれぞれ演算する。演算されたd軸およびq軸電流指令値Id*,Iq*は、電流制御部42に出力される。トルク制御部41は、トルク指令値T*およびモータ速度ωの各パラメータと、d軸およびq軸電流指令値Id*,Iq*との対応関係を記述したマップを保持しており、当該マップを参照することにより、d軸およびq軸電流指令値Id*,Iq*を演算する。この対応関係を記述したマップは、実験やシミュレーションを通じて予め取得されている。
【0027】
ここで、dq軸座標系は、モータ10の機械的な回転速度の整数倍の電気的な回転速度で回転するd軸とq軸とから成る直交座標系である。3相同期モータであるモータ10において、dq軸座標系はモータ回転に同期して回転する。dq軸座標系により、モータ10の固定子巻線に供給される電流は、界磁分電流(d軸電流)とトルク分電流(q軸電流)とに分けてベクトル表示される。
【0028】
電流制御部42は、トルク制御部41から出力されるd軸およびq軸電流指令値Id*,Iq*と、電気角θと、各相の交流電流Iu,Iv,Iwとに基づいて、インバータ駆動信号Sdinvを出力する。具体的には、電流制御部42は、電気角θに基づいて、3相交流電流Iu,Iv,Iwを、d軸およびq軸の実電流であるd軸およびq軸電流に座標変換を行う。電流制御部42は、d軸およびq軸電流と、d軸およびq軸電流指令値Id*,Iq*との偏差が小さくなるように、PI制御或いはPID制御等の制御則を用いて、d軸およびq軸電圧指令値をそれぞれ演算する。
【0029】
電流制御部42は、電気角θに基づいて、d軸およびq軸電圧指令値を、各相の電圧指令値に座標変換を行う。そして、電流制御部42は、キャリアの電圧レベルと、各相の電圧指令値との比較に基づいて、インバータ20を駆動するインバータ駆動信号Sdinvを生成する。生成されたインバータ駆動信号Sdinvはインバータ20に対して出力され、このインバータ駆動信号Sdinvに応じて各スイッチ(具体的には、スイッチング素子)のオンオフ状態が制御される。
【0030】
電源制御部43は、モータ速度ωと、車速Vcaと、障害物情報Lobと、気温Temと、環境情報Iinfoと、後述するメモリ44に記憶される走行履歴とに基づいて、電源装置30における単スイッチSW0を駆動するためのスイッチ駆動信号Sdsw0を生成する。電源制御部43は、スイッチ駆動信号Sdsw0を通じて制御される単スイッチSW0のオンオフ状態の切り替えに応じて、第1の電源および第2の電源の電気的接続状態を直列接続または並列接続とで切り替える。また、電源制御部43は、モータ速度ωに基づいて、回生状態と力行状態との切り替わりを判定する。なお、電源制御部43は、モータ速度ω以外にも、モータ10のトルクまたはモータ10における各相の交流電流Iu,Iv,Iwのいずれか一つ、またはこれらの組み合わせに基づいて、回生状態と力行状態との切り替わりを判定してもよい。
【0031】
メモリ(記憶手段)44は、モータ10による走行状態を走行履歴として記憶する。本実施形態において、メモリ44には、走行履歴として、車両を駆動するモータ10の回生状態と力行状態との状態履歴が記憶されている。
【0032】
図3は、本実施形態にかかる電源装置30における第1の電源および第2の電源の電気的接続状態の説明図である。モータ10の力行状態時、第1の電源および第2の電源を直列接続して電力を供給する場合、電源制御部43は、単スイッチSW0をオン状態に制御する(同図(a)参照)。また、モータ10の力行状態時、第1の電源および第2の電源を並列接続して電力を供給する場合、電源制御部43は、単スイッチSW0をオフ状態に制御する。この場合、第1の電源または第2の電源からモータ10への電流は、単スイッチSW0の両側に接続されたダイオードをそれぞれ流れる。これに対して、モータ10が回生状態の場合、電源制御部43は、第1の電源および第2の電源を直列接続して電力を充電すべく、単スイッチSW0をオフ状態に制御する。この場合、モータ10からの電力は、単スイッチSW0における還流用ダイオードを流れて、第1および第2の電源に電流が流れる。
【0033】
図4は、本発明の第1の実施形態にかかる電源装置30の制御方法を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、電源装置30の第1の電源および第2の電源の電気的接続状態の設定手順を示しており、車両が走行を開始すると、すなわち、車速Vcaがゼロよりも大きくなると、コントロールユニット40(具体的には、電源制御部43)によって実行される。
【0034】
まず、ステップ10(S10)において、電源制御部43は、環境情報Iinfoとしてナビゲーションシステム56から渋滞情報と現在位置とを取得し、現在渋滞区間を走行しているか否かを判定する。ステップ10において肯定判定された場合、すなわち、渋滞区間を走行している場合には、ステップ11(S11)に進む。一方、ステップ10において否定判定された場合、すなわち、渋滞区間を走行していない場合には、ステップ14(S14)に進む。
【0035】
ステップ11において、電源制御部43は、気温Temに基づいて、判定回数Jvthを設定する。判定回数Jvthは、力行状態と回生状態との切り替えが頻繁に行われたか否かを判定するための判定値であり、この判定回数Jvthにより、後述する直列固定処理を行うシーンに該当するか否かを判定する。この判定回数Jvthは、平滑コンデンサCの上限温度までの余裕しろを考慮すべく、気温Temに応じて可変的に設定される値であり、具体的には、気温Temが高いほどその回数が小さな値となるように設定されている。電源制御部43は、気温Temと、判定回数Jvthとの対応関係を規定したマップまたは演算式を保持しており、このマップまたは演算式を用いて、気温Temに応じて判定回数Jvthを設定する。
【0036】
ステップ12において、電源制御部43は、メモリ44を参照し、現在から所定時間前(例えば、10分前)までの走行履歴を抽出し、当該抽出された区間における回生状態と力行状態との切り替えが繰り返された回数を切替回数Jvconとして演算する。そして、電源制御部43は、演算された切替回数Jvconが判定回数Jvth(例えば、30回)以上であるか否かを判定する。このステップ12において肯定判定された場合、すなわち、切替回数Jvconが判定回数Jvth以上の場合には(Jvcon≧Jvth)、ステップ13(S13)に進む。一方、ステップ12において否定判定された場合、すなわち、切替回数Jvconが判定回数Jvthよりも小さい場合には(Jvcon<Jvth)、ステップ14に進む。
【0037】
ステップ13において、電源制御部43は、第1の電源および第2の電源の電気的接続状態を直列接続に設定する。具体的には、電源制御部43は、モータ10が力行状態の場合、単スイッチSW0をオン状態に制御し(図3(a)参照)、一方、モータ10が回生状態の場合、単スイッチSW0をオフ状態に制御する(図3(b)参照)。
【0038】
ステップ14において、電源制御部43は、車速Vcaが速度判定値Vcath以下であるか否かを判断する。モータ10の力行状態において、高速シーンでは、第1の電源および第2の電源を並列接続よりも直列接続とした方が、モータ10への供給電圧が高くなり、モータトルク・出力増加に対応することができるため好ましい。そこで、このステップ14では、車速Vcaに基づいて、低速シーンであるか否か、すなわち、第1の電源および第2の電源を直列接続にしない方がよいシーンであるか否かが判断される。速度判定値Vcathは、力行状態時に直列接続を選択した方がよいか、あるいは、並列接続を選択した方がよいかを切り分けるための車速Vcaが、実験やシミュレーションを通じて予め設定されている。
【0039】
このステップ14において肯定判定された場合、すなわち、車速Vcaが速度判定値Vcath以下の場合には(Vca≦Vcath)、ステップ15(S15)に進む。一方、ステップ14において否定判定された場合、すなわち、車速Vcaが速度判定値Vcathよりも大きい場合には(Vca>Vcath)、ステップ13に進む。
【0040】
ステップ15において、電源制御部43は、現在力行状態であるか否かを判定する。このステップ15において否定判定された場合、すなわち、回生状態である場合には、ステップ13に進む。一方、ステップ15において肯定判定された場合、すなわち、力行状態である場合には、ステップ16(S16)に進む。そして、ステップ16において、電源制御部43は、第1の電源および第2の電源の電気的接続状態を並列接続に設定すべく、単スイッチSW0をオフ状態に制御する(図3(b)参照)。
【0041】
ステップ17(S17)において、電源制御部43は、車速Vcaがゼロであるか否かを判定する。このステップ17において肯定判定された場合、すなわち、車速Vcaがゼロの場合には(Vca=0)、本ルーチンを抜ける。一方、ステップ17において否定判定された場合、すなわち、車速Vcaがゼロでない場合には(Vca≠0)、再びステップ10に戻る。
【0042】
以下、上述した一連の制御処理によって具体化される電源制御部43の制御概念について説明する。例えば、渋滞区間を走行中といった場合には、車両が加減速を頻繁に繰り返すことがあり、この場合、低速シーンにおいて力行状態と回生状態とが交互に繰り返される。力行状態時には、基本的に、モータ10の状態、具体的には、車速Vcaに応じて電気的接続状態が直列接続および並列接続のうちの一方に設定される。そのため、低速シーンにおいて回生状態から力行状態へ移行した際には、回生状態の直列接続から力行状態の並設接続へと電気的接続状態が切り替えられることとなる。同様に、低速シーンにおいて力行状態から回生状態へ移行した際には、力行状態の並列接続から回生状態の直列接続へ電気的接続状態が切り替えられることとなる。
【0043】
力行状態と回生状態との繰り返しに対応して、直列接続と並列接続とが繰り返されると、回生状態時にインバータ20の平滑コンデンサCが充電され、力行状態時に平滑コンデンサCから放電が行われる。このように、直列接続と並列接続との接続が切り換わる際には、インバータ20の平滑コンデンサCを直列電圧・並列電圧に変化させるための充放電電流がコンデンサCと電源装置30との間に流れる。そのため、その内部抵抗により損失が発生するとともに、内部抵抗で熱を生じさせることとなる。
【0044】
この点、本実施形態によれば、上述したステップ11における判断処理に示すように、回生状態から力行状態への移行時、車両の走行環境と走行履歴とに基づいて、第1および第2の電源の電気的接続状態を直列接続のままで固定とする直列固定処理が行われる。具体的には、渋滞区間の走行が検出され、かつ、力行状態と回生状態との切り替えが繰り返し行われたことを判定したことを条件に、直列固定処理が行われる。本来ならば、モータ10の状態、具体的には、車速Vcaに基づいて電気的接続状態を判断するため、低速シーン(車速Vca≦Vcath)では、回生状態から力行状態へ移行した後は並列接続が設定されるものであるが、直列固定処理により、直接接続が維持されることとなる。これにより、直列固定処理の間に力行状態と回生状態との切り替えが繰り返し行われた場合であっても、直列接続と並列接続との切り替えが行われず、電圧変化を伴う平滑コンデンサCの充放電は行われず、平滑コンデンサCの温度上昇や損失を抑制することができる。
【0045】
特に、電気自動車では、渋滞区間の走行において、低い速度でトルク指令値が力行状態と回生状態とを頻繁に繰り返すことになる。本実施形態の構成および制御方法によれば、そのような力行状態と回生状態を繰り返す場合であっても、第1および第2の電源を直列接続のまま固定することで、直列接続と並列接続との切り替え回数を低減することができる。これにより、平滑コンデンサCの充放電電流による発熱を抑制することができるとともに、充放電電流による損失の増大を抑制することができる。その結果、電気自動車の1充電あたりの走行距離を延ばすことができるとともに、コンデンサCの寿命を延ばすことができる。
【0046】
なお、本実施形態では、直列固定処理が実行された場合、カーブ区間を抜けること、あるいは、切替回数Jvconが判定回数Jvthより小さくなった場合に、直列接続の維持状態が解除される。しかしながら、直列固定処理は、これを開始したタイミングから、気温Temに応じて可変に設定される基準時間の経過を条件として、これを終了してもよい。この場合、基準時間は、気温Temが低い程、短い時間となるように設定することが好ましい。この場合、第1および第2の電源について直列固定処理を行う時間を短縮することが可能となり、これにより、並列接続の選択が可能となる。低速シーンで並列接続を設定した場合には、低い電圧でインバータ20を駆動することができるので、効率のよい駆動が可能となるとともに、平滑コンデンサCの小型化を図ることができる。なお、かかる手法は、後述する実施形態についても同様に適用可能である。
【0047】
(第2の実施形態)
図5は、本発明の第2の実施形態にかかる電源装置30の制御方法を示すフローチャートである。本実施形態の電源装置30が、上述した第1の実施形態と相違する点は電源装置30の制御方法である。なお、電源装置30を含む全体的なシステム構成は、第1の実施形態と同様であり、以下、制御手法の相違点を中心に説明を行う。
【0048】
同図のフローチャートに示す処理は、電源装置30の第1の電源および第2の電源の電気的接続状態の設定手順を示しており、車両が走行を開始すると、すなわち、車速Vcaがゼロよりも大きくなると、コントロールユニット40(具体的には、電源制御部43)によって実行される。
【0049】
まず、ステップ20(S20)において、電源制御部43は、環境情報Iinfoとしてナビゲーションシステム56から車両周辺の道路情報および位置情報を取得する。そして、電源制御部43は、現在車両がカーブ区間、具体的には、規定値以上の曲率を有する複数のカーブ(例えば、10個のカーブ)が存在する区間を走行しているか否かを判定する。カーブ区間と判定するための曲率規定値は、当該カーブ区間を走行した際に車両が加減速を頻繁に繰り返すような小さなカーブを想定して設定されている。
【0050】
このステップ20において肯定判定された場合、すなわち、現在カーブ区間を走行している場合には、ステップ21(S21)に進む。一方、ステップ20において否定判定された場合、すなわち、現在カーブ区間を走行していない場合には、ステップ24(S24)に進む。
【0051】
なお、ステップ21からステップ27(S27)までの処理は、第1の実施形態に示すステップ11からステップ17のまでの処理とそれぞれ対応しており、その詳細な説明は省略する。ただし、ステップ22(S22)の判定処理において、走行履歴を抽出するための抽出区間、および、判定回数Jvthは、カーブ区間の走行の特性を考慮して、渋滞区間走行時のそれと相違させることができる。
【0052】
このように本実施形態によれば、小さなカーブが複数存在するカーブ区間では、車両が加減速を頻繁に繰り返すことがあり、この場合、低速シーンにおいて力行状態と回生状態とが交互に繰り返される。本実施形態の構成および制御方法によれば、そのような力行状態と回生状態を繰り返す場合であっても、第1および第2の電源を直列接続のまま固定することで、直列接続と並列接続との切り替え回数を低減することができる。これにより、平滑コンデンサCの充放電電流による発熱を抑制することができるとともに、充放電電流による損失の増大を抑制することができる。その結果、電気自動車の1充電あたりの走行距離を延ばすことができるとともに、コンデンサCの寿命を延ばすことができる。
【0053】
(第3の実施形態)
図6は、本発明の第3の実施形態にかかる電源装置30の制御方法を示すフローチャートである。本実施形態の電源装置30が、上述した第1の実施形態と相違する点は電源装置30の制御方法である。なお、電源装置30を含む全体的なシステム構成は、第1の実施形態と同様であり、以下、制御手法の相違点を中心に説明を行う。
【0054】
同図のフローチャートに示す処理は、電源装置30の第1の電源および第2の電源の電気的接続状態の設定手順を示しており、車両が走行を開始すると、すなわち、車速Vcaがゼロよりも大きくなると、コントロールユニット40(具体的には、電源制御部43)によって実行される。
【0055】
まず、ステップ30(S30)において、電源制御部43は、環境情報Iinfoとしてナビゲーションシステム56から車両周辺の道路情報および位置情報を取得する。そして、電源制御部43は、現在車両が、坂道区間、具体的には、規定値以上の勾配を有する複数の坂道(例えば、10個の坂道)が存在する区間を走行しているか否かを判定する。坂道区間と判定するための勾配規定値は、当該坂道区間を走行した際に車両が加減速を頻繁に繰り返すような大きな勾配を想定して設定されている。
【0056】
このステップ30において肯定判定された場合、すなわち、現在坂道区間を走行している場合には、ステップ31(S31)に進む。一方、ステップ30において否定判定された場合、すなわち、現在坂道区間を走行していない場合には、ステップ34(S34)に進む。
【0057】
なお、ステップ31からステップ37(S37)までの処理は、第1の実施形態に示すステップ11からステップ17のまでの処理とそれぞれ対応しており、その詳細な説明は省略する。ただし、ステップ32(S32)の判定処理において、走行履歴を抽出するための抽出区間、および、判定回数Jvthは、坂道区間の走行の特性を考慮して、渋滞区間走行時のそれと相違させることができる。
【0058】
このように本実施形態によれば、大きな勾配の坂道が複数存在する坂道区間では、車両が加減速を頻繁に繰り返すことがあり、この場合、低速シーンにおいて力行状態と回生状態とが交互に繰り返される。本実施形態の構成および制御方法によれば、そのような力行状態と回生状態を繰り返す場合であっても、第1および第2の電源を直列接続のまま固定することで、直列接続と並列接続との切り替え回数を低減することができる。これにより、平滑コンデンサCの充放電電流による発熱を抑制することができるとともに、充放電電流による損失の増大を抑制することができる。その結果、電気自動車の1充電あたりの走行距離を延ばすことができるとともに、コンデンサCの寿命を延ばすことができる。
【0059】
(第4の実施形態)
図7は、本発明の第4の実施形態にかかる電源装置30の制御方法を示すフローチャートである。本実施形態の電源装置30が、上述した第1の実施形態と相違する点は電源装置30の制御方法である。なお、電源装置30を含む全体的なシステム構成は、第1の実施形態と同様であり、以下、制御手法の相違点を中心に説明を行う。
【0060】
同図のフローチャートに示す処理は、電源装置30の第1の電源および第2の電源の電気的接続状態の設定手順を示しており、車両が走行を開始すると、すなわち、車速Vcaがゼロよりも大きくなると、コントロールユニット40(具体的には、電源制御部43)によって実行される。なお、本実施形態では、コントロールユニット40のメモリ44には、回生状態と力行状態との状態履歴に代えて、障害物センサ54によって検出される障害物情報Lobから、障害物の検出履歴が記憶される。
【0061】
まず、ステップ40(S40)において、電源制御部43は、環境情報Iinfoとしてナビゲーションシステム56から車両周辺の道路情報および位置情報を取得する。そして、電源制御部43は、現在車両が、規定の施設領域内を走行しているか否かを判定する。規定の施設は、例えば駐車場のように、当該施設内を走行した際に障害物などの影響により車両が加減速を頻繁に繰り返すことが想定される施設として設定されている。
【0062】
このステップ40において肯定判定された場合、すなわち、現在施設領域内を走行している場合には、ステップ41(S41)に進む。一方、ステップ40において否定判定された場合、すなわち、現在施設領域内を走行していない場合には、ステップ44(S44)に進む。
【0063】
ステップ41において、電源制御部43は、第1の実施形態においてステップ11の処理で示すように、気温Temに基づいて、判定回数Jothを設定する。
【0064】
ステップ42において、電源制御部43は、メモリ44において現在から所定時間前(例えば、5分前)までの走行履歴を抽出し、当該抽出された区間における障害物の検出回数を演算する。そして、電源制御部43は、演算された検出回数Joconが判定回数Joth(例えば、5回)以上であるか否かを判定する。このステップ42において肯定判定された場合、すなわち、検出回数Joconが判定回数Joth以上の場合には(Jocon≧Joth)、ステップ43(S43)に進む。一方、ステップ42において否定判定された場合、すなわち、検出回数Joconが判定回数Jothよりも小さい場合には(Jocon<Joth)、ステップ44に進む。
【0065】
なお、ステップ43からステップ47(S47)までの処理は、第1の実施形態に示すステップ13からステップ17のまでの処理とそれぞれ対応しており、その詳細な説明は省略する。
【0066】
このように本実施形態によれば、駐車場のような規定の施設領域内における走行環境では障害物(駐車車両や施設構造物など)により、車両が加減速を頻繁に繰り返すことがあり、この場合、低速シーンにおいて力行状態と回生状態とが交互に繰り返される。本実施形態の構成および制御方法によれば、そのような力行状態と回生状態を繰り返す場合であっても、第1および第2の電源を直列接続のまま固定することで、直列接続と並列接続との切り替え回数を低減することができる。これにより、平滑コンデンサCの充放電電流による発熱を抑制することができるとともに、充放電電流による損失の増大を抑制することができる。その結果、電気自動車の1充電あたりの走行距離を延ばすことができるとともに、コンデンサCの寿命を延ばすことができる。
【0067】
(第5の実施形態)
図8は、本発明の第5の実施形態にかかる電源装置30の制御方法を示すフローチャートである。本実施形態の電源装置30が、上述した第4の実施形態と相違する点は電源装置30の制御方法である。なお、電源装置30を含む全体的なシステム構成は、第4の実施形態と同様であり、以下、制御手法の相違点を中心に説明を行う。
【0068】
同図のフローチャートに示す処理は、電源装置30の第1の電源および第2の電源の電気的接続状態の設定手順を示しており、車両が走行を開始すると、すなわち、車速Vcaがゼロよりも大きくなると、コントロールユニット40(具体的には、電源制御部43)によって実行される。
【0069】
まず、ステップ50(S50)において、電源制御部43は、環境情報Iinfoとしてナビゲーションシステム56から車両周辺の道路情報および位置情報を取得する。そして、電源制御部43は、現在車両が、挟道路、具体的には、例えば山間部の道路のように規定値以下の幅員の道路を走行しているか否かを判定する。挟道路と判定するための幅員規定値は、当該道路を走行した際に障害物やその幅員の影響により車両が加減速を頻繁に繰り返すことが想定される道路幅員を想定して設定されている。
【0070】
このステップ50において肯定判定された場合、すなわち、挟道路を走行している場合には、ステップ51(S51)に進む。一方、ステップ50において否定判定された場合、すなわち、現在挟道路を走行していない場合には、ステップ54(S54)に進む。
【0071】
なお、ステップ51からステップ57(S57)までの処理は、第4の実施形態に示すステップ41からステップ47のまでの処理とそれぞれ対応しており、その詳細な説明は省略する。ただし、ステップ52(S52)の判定処理において、走行履歴を抽出するための抽出区間、および、判定回数Jothは、挟道路の走行の特性を考慮して、施設領域内の走行時のそれと相違させることができる。
【0072】
このように本実施形態によれば、挟道路のような走行環境では障害物および道路自体の狭さにより、車両が加減速を頻繁に繰り返すことがあり、この場合、低速シーンにおいて力行状態と回生状態とが交互に繰り返される。本実施形態の構成および制御方法によれば、そのような力行状態と回生状態を繰り返す場合であっても、第1および第2の電源を直列接続のまま固定することで、直列接続と並列接続との切り替え回数を低減することができる。これにより、平滑コンデンサCの充放電電流による発熱を抑制することができるとともに、充放電電流による損失の増大を抑制することができる。その結果、電気自動車の1充電あたりの走行距離を延ばすことができるとともに、コンデンサCの寿命を延ばすことができる。
【0073】
(第6の実施形態)
図9は、本発明の第6の実施形態にかかる電源装置30aおよび当該電源装置30aを用いたモータ10の制御システムを模式的に示す構成図である。本実施形態のシステム構成は、第1の実施形態に示す電源装置30、コントロールユニット40に代えて、電源装置30a、コントロールユニット40aを有する点において第1の実施形態と相違する。そこで、本実施形態では、第1の実施形態との相違点である電源装置30a、コントロールユニット40aを中心に説明を行う。また、第1の実施形態と共通する構成については、符号を引用することにより重複する説明を省略する。
【0074】
電源装置30aは、第1の実施形態の電源装置30と同様に、インバータ20を介してモータ10に接続されており、モータ10に電力を供給するとともに、モータ10において発電された電力を充電する電源装置である。電源装置30aは、それぞれが独立して直流電源として機能する複数の電源(本実施形態では、2つの電源(第1および第2の電源))を有している。
【0075】
電源装置30aは、第1および第2の電源間の電気的接続状態を、直列接続と並列接続とで切り替えるスイッチ回路を備えており、このスイッチ回路は、第1から第3のスイッチSW1〜SW3(スイッチング手段)を主体に構成されている。第1から第3のスイッチSW1〜SW3は、第1のスイッチSW1、第2のスイッチSW1、第3のスイッチSW3の順番に従って直列接続されている。個々のスイッチSW1〜SW3は、NPN型のトランジスタ等のスイッチング素子を主体に構成されており、個々のトランジスタは、コレクタ・エミッタ間に還流用ダイオードがそれぞれ逆並列接続されている。スイッチSW1〜SW3のオンオフ状態は、コントロールユニット40aから出力されるスイッチ駆動信号に応じて切り替えられる。
【0076】
ここで、スイッチ回路において、第1のスイッチSW1と第2のスイッチSW2との接続点は、第1の電源(電源電圧Ea)の正極が接続され、第2のスイッチSW2と第3のスイッチSW3との接続点は、第2の電源(電源電圧Eb)の負極が接続されている。第1のスイッチSW1のコレクタ端子と、第2の電源の正極とは相互に接続されており、この接続端は電源装置30aの正極側の出力端として機能する。この正極側の出力端は、インバータ20の正極母線が接続される。また、第3のスイッチSW3のエミッタ端子と、第1の電源の負極とは相互に接続されており、この接続端は電源装置30aの負極側の出力端として機能する。この負極側の出力端は、インバータ20の負極母線が接続される。
【0077】
図10は、本発明の第3の実施形態にかかるコントロールユニット40aの構成を模式的に示すブロック図である。コントロールユニット40aは、トルク制御部41と、電流制御部42と、電源制御部43aと、メモリ44とで構成されている。トルク制御部41と、電流制御部42と、メモリ44とは第1の実施形態と同様の機能を担っている。
【0078】
電源制御部43aは、モータ速度ωと、車速Vcaと、障害物情報Lobと、気温Temと、環境情報Iinfoと、メモリ44に記憶される走行履歴とに基づいて、電源装置30aにおける第1から第3のスイッチSW1〜SW3を駆動するためのスイッチ駆動信号Sdsw1〜Sdsw3を生成する。電源制御部43bは、スイッチ駆動信号Sdsw1〜Sdsw3を通じて制御される各スイッチSW1〜SW3のオンオフ状態の切り替えに応じて、第1の電源および第2の電源の電気的接続状態を直列接続または並列接続とで切り替える。
【0079】
図11は、電源装置30aにおける第1の電源および第2の電源の電気的接続状態の説明図である。モータ10の力行状態時、第1の電源および第2の電源を直列接続して電力を供給する場合、電源制御部43aは、第1および第3のスイッチSW1,SW3をオフ状態に、第2のスイッチSW2をオン状態に制御する(同図(a)参照)。また、モータ10の力行状態時、第1の電源および第2の電源を並列接続して電力を供給する場合、電源制御部43aは、第2のスイッチSW2をオフ状態に制御する。ここで、第1および第3のスイッチSW1,SW3は、第1の電源電圧Eaと第2の電源電圧Ebとがほぼ等しい場合、オン状態にそれぞれ制御され、第1の電源電圧Eaと第2の電源電圧Ebとが等しくない場合、高電位側から低電位側へと電流が流れることを抑制するために、オフ状態にそれぞれ制御される(同図(b)参照)。この場合、第1の電源または第2の電源からモータ10への電流は、第1および第3のスイッチSW1,SW3における還流用ダイオードをそれぞれ流れる。一方、モータ10が回生状態の場合、電源制御部43aは、第1の電源および第2の電源を直列接続して電力を充電すべく、第1から第3のスイッチSW1〜SW3をオフ状態に制御する(同図(c)参照)。この場合、モータ10からの電力は、第2のスイッチSW2における還流用ダイオードを流れて、第1および第2の電源に電流が流れる。
【0080】
このような構成において、コントロールユニット40a(具体的には、電源制御部43a)は、上述した各実施形態に示す電源装置30の制御方法と同様に、電源装置30aの第1の電源および第2の電源の電気的接続状態の設定することができる。この場合、各実施形態に示されるステップ13,23,33,43,53の処理において、電源制御部43aは、電源制御部43は、第1の電源および第2の電源の電気的接続状態を直列接続に設定する。具体的には、電源制御部43aは、モータ10が力行状態の場合、第2のスイッチSW2をオン状態に制御するとともに、第1および第3のスイッチSW1,SW3をオフ状態に制御する(図11(a)参照)。一方、電源制御部43aは、モータ10が回生状態の場合、第1から第3のスイッチSW1〜SW3をオフ状態に制御する(図11(c)参照)。
【0081】
また、各実施形態に示されるステップ16,26,36,46,56の処理において、電源制御部43aは、第1の電源および第2の電源の電気的接続状態を並列接続に設定する。具体的には、電源制御部43aは、第1の電源の電圧Eaと第2の電源の電圧Ebとを図示しない電圧センサでモニタリングした上で、第1の電源の電圧Eaと第2の電源の電圧Ebとが対応している場合には、第2のスイッチSW2をオフ状態に制御するとともに、第1および第3のスイッチSW1,SW3をオン状態に制御する(図11(b)参照)。一方、電源制御部43aは、第1の電源の電圧Eaと第2の電源の電圧Ebとが対応していない場合には、第1から第3のスイッチSW1〜SW3をオフ状態に制御する(図11(b)参照)。
【0082】
このように本実施形態によれば、第1の電源と第2の電源との電気的接続状態を3つのスイッチSW1〜SW3によって切り替えることができる。これにより、低い速度でトルク指令値が力行状態と回生状態とを頻繁に繰り返すことになる。本実施形態の構成および制御方法によれば、そのような力行状態と回生状態を繰り返す場合であっても、第1および第2の電源を直列接続のまま固定することで、直列接続と並列接続との切り替え回数を低減することができる。これにより、平滑コンデンサCの充放電電流による発熱を抑制することができるとともに、充放電電流による損失の増大を抑制することができる。その結果、電気自動車の1充電あたりの走行距離を延ばすことができるとともに、コンデンサCの寿命を延ばすことができる。
【0083】
以上、本発明の実施形態にかかる電源装置およびその制御方法について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その発明の範囲内において種々の変形が可能である。例えば、電源装置を構成する電源の数は3つ以上であってもよい。また、上述した各実施形態に示す直列固定処理の判定手法は、互いに組み合わせて判定することも可能である。
【符号の説明】
【0084】
10…モータ
20…インバータ
30…電源装置
40…コントロールユニット
41…トルク制御部
42…電流制御部
43…電源制御部
44…メモリ
50…電流センサ
51…電気角検出部
52…モータ速度検出部
53…車速センサ
54…障害物センサ
55…気温センサ
56…ナビゲーションシステム
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、それぞれが独立した複数の電源を備える電源装置が知られており、例えば、この電源装置は、インバータ(電力変換装置)を介してモータに電力を供給する。例えば、特許文献1には、電気自動車の低出力運転時にインバータの入力電圧を下げ、スイッチング損失を低減させることにより、システム効率の向上を図る手法が開示されている。具体的には、アクセルペダル踏込量、モータの出力、あるいは、ブレーキペダル踏込量が大の時は、複数の電源を直列接続し、これらの値が小の時は、複数の電源を並列接続する。
【0003】
なお、この類の電源装置では、個々の電源電圧間に差があるときには電源同士を並列接続することができないため、モータの回生時には、複数の電源間を直列接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−236608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば、渋滞時といったようにアクセルペダル踏込量が小さく、モータ速度が低いシーンでは、力行状態時に複数の電源を並列接続し、回生状態時に複数の電源を直列接続するといった状態が頻繁に繰り返されることとなる。そのため、インバータ(電力変換装置)が備える平滑コンデンサの電圧変化に伴い充放電電流による損失が増大してしまうといった問題がある。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、モータが力行状態・回生状態を頻繁に繰り返す場合であっても、電力変換装置が備えるコンデンサの充放電電流による損失の増大を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するために、本発明は、回生状態から力行状態への移行時、車両の走行環境と走行履歴とに基づいて、第1および第2の電源の電気的接続状態を直列接続のままで固定とする直列固定処理を行う。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、回生状態から力行状態へ移行後、直列固定処理を行うことにより、回生状態における電気的接続状態と同じ直列接続がそのまま維持される。これにより、直列接続と並列接続との切り替え回数を低減することができる。そのため、インバータのコンデンサの電圧変化が抑制され、平滑コンデンサの充放電電流による発熱を抑制することができるとともに、充放電電流による損失の増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態にかかる電源装置30および当該電源装置30を用いたモータ10の制御システムを模式的に示す構成図
【図2】第1の実施形態にかかるコントロールユニット40の構成を模式的に示すブロック図
【図3】第1の実施形態にかかる電源装置30に関する第1の電源および第2の電源の電気的接続状態の説明図
【図4】第1の実施形態にかかる電源装置30の制御方法を示すフローチャート
【図5】第2の実施形態にかかる電源装置30の制御方法を示すフローチャート
【図6】第3の実施形態にかかる電源装置30の制御方法を示すフローチャート
【図7】第4の実施形態にかかる電源装置30の制御方法を示すフローチャート
【図8】第5の実施形態にかかる電源装置30の制御方法を示すフローチャート
【図9】第6の実施形態にかかる電源装置30aおよび当該電源装置30aを用いたモータ10の制御システムを模式的に示す構成図
【図10】第6の実施形態にかかるコントロールユニット40aの構成を模式的に示すブロック図
【図11】第6の実施形態にかかる電源装置30aにおける第1の電源および第2の電源の電気的接続状態の説明図
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる電源装置30および当該電源装置30を用いたモータ10の制御システムを模式的に示す構成図である。本実施形態では、電気自動車の駆動用モータとして適用されたモータ10を制御する制御システムについて説明を行う。この電気自動車は、モータ10、インバータ20、電源装置30およびコントロールユニット40を備えている。
【0011】
モータ10は、例えば、中性点を中心に星形結線された複数の相巻線(本実施形態では、U相巻線、V相巻線、W相巻線からなる3つの相巻線)を有する3相交流同期モータである。このモータ10は、インバータ20内で変換された3相の交流電力が各相巻線に供給されることにより生じる磁界と、回転子の永久磁石が作る磁界との相互作用により駆動する。モータ10のロータは、自動変速機の入力軸に連結されている。
【0012】
モータ10は、電源装置30から電力の供給を受けて回転駆動することにより、電動機として動作することができる(以下、この運転状態を「力行状態」と呼ぶ)。一方、モータ10は、ロータが外力により回転している場合、ステータ巻線の両端に起電力を生じさせることにより、発電機として機能する(以下、この運転状態を「回生状態」と呼ぶ)。モータ10により発電された電力は、電源装置30を充電することができる。本明細書では、電動機および発電機の双方の機能を併せもつ意味でモータという用語を用いる。
【0013】
インバータ20は、モータ10の力行状態時、コントロールユニット40から出力されるインバータ駆動信号に応じてPWM制御されることにより、電源装置30から供給される直流電力を、多相交流電力(本実施形態では、U相交流電力、V相交流電力およびW相交流電力で構成される3相交流電力)に変換し、当該3相の交流電力をモータ10の各相巻線に供給する。また、インバータ20は、モータ10の回生状態時、モータ10によって発電された3相交流電力を直流電力に変換する。この直流電力は、電源装置30または後述する平滑コンデンサCに蓄電される。
【0014】
インバータ20は、モータ10の各相に対応する3つのスイッチ回路を主体に構成されている。具体的には、インバータ20は、電源装置30の正極側の正極母線と、電源装置30の負極側の負極母線との間に、U相用のスイッチ回路と、V相用のスイッチ回路と、W相用のスイッチ回路とを備える。また、正極母線と負極母線との間には、各相用のスイッチ回路よりも電源装置30側に、平滑コンデンサCが接続されている。
【0015】
U相用のスイッチ回路は、互いに直列接続された一対のスイッチ(アーム)を主体に構成されており、V相用のスイッチ回路は、互いに直列接続された一対のスイッチ(アーム)を主体に構成されている。また、W相用のスイッチ回路は、互いに直列接続された一対のスイッチ(アーム)を主体に構成されている。個々のスイッチは、NPN型のトランジスタ等のスイッチング素子を主体に構成されており、個々のトランジスタには、コレクタ・エミッタ間に還流用ダイオードがそれぞれ逆並列接続されている。これらのスイッチのオンオフ状態は、コントロールユニット40から出力されるインバータ駆動信号に応じて切り替えられる。
【0016】
U相用の一対のスイッチの相互接続点、V相用の一対のスイッチの相互接続点、および、W相用の一対のスイッチの相互接続点は、それぞれが各相電流の出力点として機能している。各出力点には、モータ10の対応する相巻線がそれぞれ接続される。インバータ20により生成される3相交流電流をそれぞれU相交流電流Iu、V相交流電流IvおよびW相交流電流Iwとする。例えば、各交流電流Iu,Iv,Iwは、モータ10側へ電流が流れる方向を正とする。
【0017】
電源装置30は、インバータ20を介してモータ10に接続されており、モータ10に電力を供給するとともに、モータ10において発電された電力を充電する電源装置である。電源装置30は、それぞれが独立して直流電源として機能する複数の電源(本実施形態では、2つの電源(第1および第2の電源))を有している。個々の電源としては、例えば、ニッケル水素電池あるいはリチウムイオン電池といったバッテリを用いることができる。
【0018】
また、電源装置30は、第1および第2の電源間の電気的接続状態を直列接続と並列接続とで切り替えるスイッチ回路を備えており、このスイッチ回路は、単スイッチSW0(スイッチング手段)を主体に構成されている。単スイッチSW0は、NPN型のトランジスタ等のスイッチング素子を主体に構成されており、トランジスタは、コレクタ・エミッタ間に、還流用ダイオードが逆並列接続されている。また、スイッチ回路において、単スイッチSW0のコレクタ端子側およびエミッタ端子側には、単スイッチSW0の還流用ダイオードの順方向と対応させたダイオードがそれぞれ直列接続されている。単スイッチSW0のオンオフ状態は、コントロールユニット40から出力されるスイッチ駆動信号に応じて切り替えられる。
【0019】
ここで、単スイッチSW0と、コレクタ端子側のダイオードとの接続点は、第1の電源(電源電圧Ea)の正極が接続され、単スイッチSW0と、エミッタ端子側のダイオードとの接続点は、第2の電源(電源電圧Eb)の負極が接続されている。コレクタ端子側のダイオードの他方の端子と、第2の電源の正極とは相互に接続されており、この接続端は電源装置30の正極側の出力端として機能する。この正極側の出力端は、インバータ20の正極母線が接続される。また、エミッタ端子側のダイオードの他方の端子と、第1の電源の負極とは相互に接続されており、この接続端は電源装置30の負極側の出力端として機能する。この負極側の出力端は、インバータ20の負極母線が接続される。なお、第1および第2の電源を並列接続から直列接続へ切り替えるときの突入電流を抑制するため、インバータ20と、電源装置30との間には、フィルタ用リアクトルLが設けられている。
【0020】
コントロールユニット40は、インバータ20を介してモータ10を制御する制御手段であるとともに、電源装置30を制御する制御手段でもある。コントロールユニット40としては、CPU、ROM、RAM、I/Oインターフェースを主体に構成されたマイクロコンピュータを用いることができる。コントロールユニット40は、ROMに記憶された制御プログラムに従い、インバータ20および電源装置30を制御するための演算を行う。そして、コントロールユニット40は、この演算によって算出された制御信号をインバータ20または電源装置30に対して出力する。
【0021】
図2は、コントロールユニット40の構成を模式的に示すブロック図である。コントロールユニット40は、インバータ20を構成する各スイッチを制御することにより、モータ10の出力トルクを制御する。また、コントロールユニット40は、電源装置30を構成する単スイッチSW0を制御することにより、電源装置30における第1および第2の電源の電気的接続状態の設定を行う。
【0022】
コントロールユニット40には、各種センサからセンサ信号などの必要な情報が入力されている。電流センサ50は、モータ10の各相の交流電流、すなわち、U相交流電流Iuと、V相交流電流Ivと、W相交流電流Iwとをそれぞれ検出する。電気角検出部51は、モータ10のロータ位置を表す電気的な位相(電気角)θを検出する。また、モータ速度検出部52は、モータ10のロータの回転角速度(モータ速度)ωを検出する。例えば、電気角検出部51およびモータ速度検出部52は、モータ10のロータ位置を検出するエンコーダやレゾルバなどの回転位置センサからの検出結果に基づいて、電気角θおよびモータ速度ωを検出する。さらに、コントロールユニット40には、上位装置において演算されるトルク指令値T*が入力される。
【0023】
また、車速センサ53は、車両の速度Vcaを検出するセンサである。障害物センサ54は、車両の走行の妨げとなる障害物の情報(以下「障害物情報」という)Lobを検出する障害物検出手段であり、例えば、対象物までの距離を検出するレーザレーダやミリ波レーダなどを用いることができる。気温センサ55は、気温を検出する気温検出手段である。
【0024】
さらに、コントロールユニット40は、必要に応じてナビゲーションシステム56の保有する情報Iinfoを取得することができる。ナビゲーションシステム56は、自己位置周辺の地図情報および経路情報を提示する装置であり、地図データベース、現在位置を検出する位置検出手段、外部システムから情報を受信する情報受信手段、および各種の演算処理を行う処理手段を主体に構成されている。地図データベースは、ナビゲーション用の道路情報を保持するデータベースである。この地図データベースにおける道路情報は、必要に応じて、処理手段によって参照される。道路情報は、自車両が走行する道路に位置情報などが関連付けられた情報であり、この道路情報を通じて、道路の曲率、道路の勾配、道路の幅員などを把握することができる。また、この道路情報には、道路の周囲に存在する施設などの情報も含まれている。位置検出手段は、例えば、GPS受信器、方位センサおよび車速センサから出力される情報に基づいて、車両の現在位置を検出する。情報受信手段は、外部インフラからVICS情報などの交通情報(例えば、渋滞情報)を受信する。処理手段は、現在位置表示および経路誘導に必要な各種の処理を行うとともに、コントロールユニット40からの要求に応じて各種の処理を行い、これにより、自己の保有する情報を走行環境に関する情報(以下「環境情報」という)Iinfoとしてコントロールユニット40に出力することができる。換言すれば、ナビゲーションシステム56は、コントロールユニット40にとって車両の走行環境を検出する走行環境検出手段として機能する。
【0025】
コントロールユニット40は、これを機能的に捉えた場合、トルク制御部41と、電流制御部42と、電源制御部43と、メモリ44とを有している。これらの機能的な要素のうち、トルク制御部41と電流制御部42とは、主としてモータ10の制御手段としての機能を担い、また、電源制御部43と、メモリ44とは、主として電源装置30の制御手段としての機能を担っている。
【0026】
トルク制御部41は、トルク指令値T*とモータ速度ωとに基づいて、ベクトル制御用の電流指令値であるd軸電流指令値Id*およびq軸電流指令値Iq*を演算する。具体的には、トルク制御部41は、トルク指令値T*とモータ速度ωとに基づいて、トルク指令値T*に一致するトルクをモータ10が出力するためのd軸およびq軸電流指令値Id*,Iq*とをそれぞれ演算する。演算されたd軸およびq軸電流指令値Id*,Iq*は、電流制御部42に出力される。トルク制御部41は、トルク指令値T*およびモータ速度ωの各パラメータと、d軸およびq軸電流指令値Id*,Iq*との対応関係を記述したマップを保持しており、当該マップを参照することにより、d軸およびq軸電流指令値Id*,Iq*を演算する。この対応関係を記述したマップは、実験やシミュレーションを通じて予め取得されている。
【0027】
ここで、dq軸座標系は、モータ10の機械的な回転速度の整数倍の電気的な回転速度で回転するd軸とq軸とから成る直交座標系である。3相同期モータであるモータ10において、dq軸座標系はモータ回転に同期して回転する。dq軸座標系により、モータ10の固定子巻線に供給される電流は、界磁分電流(d軸電流)とトルク分電流(q軸電流)とに分けてベクトル表示される。
【0028】
電流制御部42は、トルク制御部41から出力されるd軸およびq軸電流指令値Id*,Iq*と、電気角θと、各相の交流電流Iu,Iv,Iwとに基づいて、インバータ駆動信号Sdinvを出力する。具体的には、電流制御部42は、電気角θに基づいて、3相交流電流Iu,Iv,Iwを、d軸およびq軸の実電流であるd軸およびq軸電流に座標変換を行う。電流制御部42は、d軸およびq軸電流と、d軸およびq軸電流指令値Id*,Iq*との偏差が小さくなるように、PI制御或いはPID制御等の制御則を用いて、d軸およびq軸電圧指令値をそれぞれ演算する。
【0029】
電流制御部42は、電気角θに基づいて、d軸およびq軸電圧指令値を、各相の電圧指令値に座標変換を行う。そして、電流制御部42は、キャリアの電圧レベルと、各相の電圧指令値との比較に基づいて、インバータ20を駆動するインバータ駆動信号Sdinvを生成する。生成されたインバータ駆動信号Sdinvはインバータ20に対して出力され、このインバータ駆動信号Sdinvに応じて各スイッチ(具体的には、スイッチング素子)のオンオフ状態が制御される。
【0030】
電源制御部43は、モータ速度ωと、車速Vcaと、障害物情報Lobと、気温Temと、環境情報Iinfoと、後述するメモリ44に記憶される走行履歴とに基づいて、電源装置30における単スイッチSW0を駆動するためのスイッチ駆動信号Sdsw0を生成する。電源制御部43は、スイッチ駆動信号Sdsw0を通じて制御される単スイッチSW0のオンオフ状態の切り替えに応じて、第1の電源および第2の電源の電気的接続状態を直列接続または並列接続とで切り替える。また、電源制御部43は、モータ速度ωに基づいて、回生状態と力行状態との切り替わりを判定する。なお、電源制御部43は、モータ速度ω以外にも、モータ10のトルクまたはモータ10における各相の交流電流Iu,Iv,Iwのいずれか一つ、またはこれらの組み合わせに基づいて、回生状態と力行状態との切り替わりを判定してもよい。
【0031】
メモリ(記憶手段)44は、モータ10による走行状態を走行履歴として記憶する。本実施形態において、メモリ44には、走行履歴として、車両を駆動するモータ10の回生状態と力行状態との状態履歴が記憶されている。
【0032】
図3は、本実施形態にかかる電源装置30における第1の電源および第2の電源の電気的接続状態の説明図である。モータ10の力行状態時、第1の電源および第2の電源を直列接続して電力を供給する場合、電源制御部43は、単スイッチSW0をオン状態に制御する(同図(a)参照)。また、モータ10の力行状態時、第1の電源および第2の電源を並列接続して電力を供給する場合、電源制御部43は、単スイッチSW0をオフ状態に制御する。この場合、第1の電源または第2の電源からモータ10への電流は、単スイッチSW0の両側に接続されたダイオードをそれぞれ流れる。これに対して、モータ10が回生状態の場合、電源制御部43は、第1の電源および第2の電源を直列接続して電力を充電すべく、単スイッチSW0をオフ状態に制御する。この場合、モータ10からの電力は、単スイッチSW0における還流用ダイオードを流れて、第1および第2の電源に電流が流れる。
【0033】
図4は、本発明の第1の実施形態にかかる電源装置30の制御方法を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、電源装置30の第1の電源および第2の電源の電気的接続状態の設定手順を示しており、車両が走行を開始すると、すなわち、車速Vcaがゼロよりも大きくなると、コントロールユニット40(具体的には、電源制御部43)によって実行される。
【0034】
まず、ステップ10(S10)において、電源制御部43は、環境情報Iinfoとしてナビゲーションシステム56から渋滞情報と現在位置とを取得し、現在渋滞区間を走行しているか否かを判定する。ステップ10において肯定判定された場合、すなわち、渋滞区間を走行している場合には、ステップ11(S11)に進む。一方、ステップ10において否定判定された場合、すなわち、渋滞区間を走行していない場合には、ステップ14(S14)に進む。
【0035】
ステップ11において、電源制御部43は、気温Temに基づいて、判定回数Jvthを設定する。判定回数Jvthは、力行状態と回生状態との切り替えが頻繁に行われたか否かを判定するための判定値であり、この判定回数Jvthにより、後述する直列固定処理を行うシーンに該当するか否かを判定する。この判定回数Jvthは、平滑コンデンサCの上限温度までの余裕しろを考慮すべく、気温Temに応じて可変的に設定される値であり、具体的には、気温Temが高いほどその回数が小さな値となるように設定されている。電源制御部43は、気温Temと、判定回数Jvthとの対応関係を規定したマップまたは演算式を保持しており、このマップまたは演算式を用いて、気温Temに応じて判定回数Jvthを設定する。
【0036】
ステップ12において、電源制御部43は、メモリ44を参照し、現在から所定時間前(例えば、10分前)までの走行履歴を抽出し、当該抽出された区間における回生状態と力行状態との切り替えが繰り返された回数を切替回数Jvconとして演算する。そして、電源制御部43は、演算された切替回数Jvconが判定回数Jvth(例えば、30回)以上であるか否かを判定する。このステップ12において肯定判定された場合、すなわち、切替回数Jvconが判定回数Jvth以上の場合には(Jvcon≧Jvth)、ステップ13(S13)に進む。一方、ステップ12において否定判定された場合、すなわち、切替回数Jvconが判定回数Jvthよりも小さい場合には(Jvcon<Jvth)、ステップ14に進む。
【0037】
ステップ13において、電源制御部43は、第1の電源および第2の電源の電気的接続状態を直列接続に設定する。具体的には、電源制御部43は、モータ10が力行状態の場合、単スイッチSW0をオン状態に制御し(図3(a)参照)、一方、モータ10が回生状態の場合、単スイッチSW0をオフ状態に制御する(図3(b)参照)。
【0038】
ステップ14において、電源制御部43は、車速Vcaが速度判定値Vcath以下であるか否かを判断する。モータ10の力行状態において、高速シーンでは、第1の電源および第2の電源を並列接続よりも直列接続とした方が、モータ10への供給電圧が高くなり、モータトルク・出力増加に対応することができるため好ましい。そこで、このステップ14では、車速Vcaに基づいて、低速シーンであるか否か、すなわち、第1の電源および第2の電源を直列接続にしない方がよいシーンであるか否かが判断される。速度判定値Vcathは、力行状態時に直列接続を選択した方がよいか、あるいは、並列接続を選択した方がよいかを切り分けるための車速Vcaが、実験やシミュレーションを通じて予め設定されている。
【0039】
このステップ14において肯定判定された場合、すなわち、車速Vcaが速度判定値Vcath以下の場合には(Vca≦Vcath)、ステップ15(S15)に進む。一方、ステップ14において否定判定された場合、すなわち、車速Vcaが速度判定値Vcathよりも大きい場合には(Vca>Vcath)、ステップ13に進む。
【0040】
ステップ15において、電源制御部43は、現在力行状態であるか否かを判定する。このステップ15において否定判定された場合、すなわち、回生状態である場合には、ステップ13に進む。一方、ステップ15において肯定判定された場合、すなわち、力行状態である場合には、ステップ16(S16)に進む。そして、ステップ16において、電源制御部43は、第1の電源および第2の電源の電気的接続状態を並列接続に設定すべく、単スイッチSW0をオフ状態に制御する(図3(b)参照)。
【0041】
ステップ17(S17)において、電源制御部43は、車速Vcaがゼロであるか否かを判定する。このステップ17において肯定判定された場合、すなわち、車速Vcaがゼロの場合には(Vca=0)、本ルーチンを抜ける。一方、ステップ17において否定判定された場合、すなわち、車速Vcaがゼロでない場合には(Vca≠0)、再びステップ10に戻る。
【0042】
以下、上述した一連の制御処理によって具体化される電源制御部43の制御概念について説明する。例えば、渋滞区間を走行中といった場合には、車両が加減速を頻繁に繰り返すことがあり、この場合、低速シーンにおいて力行状態と回生状態とが交互に繰り返される。力行状態時には、基本的に、モータ10の状態、具体的には、車速Vcaに応じて電気的接続状態が直列接続および並列接続のうちの一方に設定される。そのため、低速シーンにおいて回生状態から力行状態へ移行した際には、回生状態の直列接続から力行状態の並設接続へと電気的接続状態が切り替えられることとなる。同様に、低速シーンにおいて力行状態から回生状態へ移行した際には、力行状態の並列接続から回生状態の直列接続へ電気的接続状態が切り替えられることとなる。
【0043】
力行状態と回生状態との繰り返しに対応して、直列接続と並列接続とが繰り返されると、回生状態時にインバータ20の平滑コンデンサCが充電され、力行状態時に平滑コンデンサCから放電が行われる。このように、直列接続と並列接続との接続が切り換わる際には、インバータ20の平滑コンデンサCを直列電圧・並列電圧に変化させるための充放電電流がコンデンサCと電源装置30との間に流れる。そのため、その内部抵抗により損失が発生するとともに、内部抵抗で熱を生じさせることとなる。
【0044】
この点、本実施形態によれば、上述したステップ11における判断処理に示すように、回生状態から力行状態への移行時、車両の走行環境と走行履歴とに基づいて、第1および第2の電源の電気的接続状態を直列接続のままで固定とする直列固定処理が行われる。具体的には、渋滞区間の走行が検出され、かつ、力行状態と回生状態との切り替えが繰り返し行われたことを判定したことを条件に、直列固定処理が行われる。本来ならば、モータ10の状態、具体的には、車速Vcaに基づいて電気的接続状態を判断するため、低速シーン(車速Vca≦Vcath)では、回生状態から力行状態へ移行した後は並列接続が設定されるものであるが、直列固定処理により、直接接続が維持されることとなる。これにより、直列固定処理の間に力行状態と回生状態との切り替えが繰り返し行われた場合であっても、直列接続と並列接続との切り替えが行われず、電圧変化を伴う平滑コンデンサCの充放電は行われず、平滑コンデンサCの温度上昇や損失を抑制することができる。
【0045】
特に、電気自動車では、渋滞区間の走行において、低い速度でトルク指令値が力行状態と回生状態とを頻繁に繰り返すことになる。本実施形態の構成および制御方法によれば、そのような力行状態と回生状態を繰り返す場合であっても、第1および第2の電源を直列接続のまま固定することで、直列接続と並列接続との切り替え回数を低減することができる。これにより、平滑コンデンサCの充放電電流による発熱を抑制することができるとともに、充放電電流による損失の増大を抑制することができる。その結果、電気自動車の1充電あたりの走行距離を延ばすことができるとともに、コンデンサCの寿命を延ばすことができる。
【0046】
なお、本実施形態では、直列固定処理が実行された場合、カーブ区間を抜けること、あるいは、切替回数Jvconが判定回数Jvthより小さくなった場合に、直列接続の維持状態が解除される。しかしながら、直列固定処理は、これを開始したタイミングから、気温Temに応じて可変に設定される基準時間の経過を条件として、これを終了してもよい。この場合、基準時間は、気温Temが低い程、短い時間となるように設定することが好ましい。この場合、第1および第2の電源について直列固定処理を行う時間を短縮することが可能となり、これにより、並列接続の選択が可能となる。低速シーンで並列接続を設定した場合には、低い電圧でインバータ20を駆動することができるので、効率のよい駆動が可能となるとともに、平滑コンデンサCの小型化を図ることができる。なお、かかる手法は、後述する実施形態についても同様に適用可能である。
【0047】
(第2の実施形態)
図5は、本発明の第2の実施形態にかかる電源装置30の制御方法を示すフローチャートである。本実施形態の電源装置30が、上述した第1の実施形態と相違する点は電源装置30の制御方法である。なお、電源装置30を含む全体的なシステム構成は、第1の実施形態と同様であり、以下、制御手法の相違点を中心に説明を行う。
【0048】
同図のフローチャートに示す処理は、電源装置30の第1の電源および第2の電源の電気的接続状態の設定手順を示しており、車両が走行を開始すると、すなわち、車速Vcaがゼロよりも大きくなると、コントロールユニット40(具体的には、電源制御部43)によって実行される。
【0049】
まず、ステップ20(S20)において、電源制御部43は、環境情報Iinfoとしてナビゲーションシステム56から車両周辺の道路情報および位置情報を取得する。そして、電源制御部43は、現在車両がカーブ区間、具体的には、規定値以上の曲率を有する複数のカーブ(例えば、10個のカーブ)が存在する区間を走行しているか否かを判定する。カーブ区間と判定するための曲率規定値は、当該カーブ区間を走行した際に車両が加減速を頻繁に繰り返すような小さなカーブを想定して設定されている。
【0050】
このステップ20において肯定判定された場合、すなわち、現在カーブ区間を走行している場合には、ステップ21(S21)に進む。一方、ステップ20において否定判定された場合、すなわち、現在カーブ区間を走行していない場合には、ステップ24(S24)に進む。
【0051】
なお、ステップ21からステップ27(S27)までの処理は、第1の実施形態に示すステップ11からステップ17のまでの処理とそれぞれ対応しており、その詳細な説明は省略する。ただし、ステップ22(S22)の判定処理において、走行履歴を抽出するための抽出区間、および、判定回数Jvthは、カーブ区間の走行の特性を考慮して、渋滞区間走行時のそれと相違させることができる。
【0052】
このように本実施形態によれば、小さなカーブが複数存在するカーブ区間では、車両が加減速を頻繁に繰り返すことがあり、この場合、低速シーンにおいて力行状態と回生状態とが交互に繰り返される。本実施形態の構成および制御方法によれば、そのような力行状態と回生状態を繰り返す場合であっても、第1および第2の電源を直列接続のまま固定することで、直列接続と並列接続との切り替え回数を低減することができる。これにより、平滑コンデンサCの充放電電流による発熱を抑制することができるとともに、充放電電流による損失の増大を抑制することができる。その結果、電気自動車の1充電あたりの走行距離を延ばすことができるとともに、コンデンサCの寿命を延ばすことができる。
【0053】
(第3の実施形態)
図6は、本発明の第3の実施形態にかかる電源装置30の制御方法を示すフローチャートである。本実施形態の電源装置30が、上述した第1の実施形態と相違する点は電源装置30の制御方法である。なお、電源装置30を含む全体的なシステム構成は、第1の実施形態と同様であり、以下、制御手法の相違点を中心に説明を行う。
【0054】
同図のフローチャートに示す処理は、電源装置30の第1の電源および第2の電源の電気的接続状態の設定手順を示しており、車両が走行を開始すると、すなわち、車速Vcaがゼロよりも大きくなると、コントロールユニット40(具体的には、電源制御部43)によって実行される。
【0055】
まず、ステップ30(S30)において、電源制御部43は、環境情報Iinfoとしてナビゲーションシステム56から車両周辺の道路情報および位置情報を取得する。そして、電源制御部43は、現在車両が、坂道区間、具体的には、規定値以上の勾配を有する複数の坂道(例えば、10個の坂道)が存在する区間を走行しているか否かを判定する。坂道区間と判定するための勾配規定値は、当該坂道区間を走行した際に車両が加減速を頻繁に繰り返すような大きな勾配を想定して設定されている。
【0056】
このステップ30において肯定判定された場合、すなわち、現在坂道区間を走行している場合には、ステップ31(S31)に進む。一方、ステップ30において否定判定された場合、すなわち、現在坂道区間を走行していない場合には、ステップ34(S34)に進む。
【0057】
なお、ステップ31からステップ37(S37)までの処理は、第1の実施形態に示すステップ11からステップ17のまでの処理とそれぞれ対応しており、その詳細な説明は省略する。ただし、ステップ32(S32)の判定処理において、走行履歴を抽出するための抽出区間、および、判定回数Jvthは、坂道区間の走行の特性を考慮して、渋滞区間走行時のそれと相違させることができる。
【0058】
このように本実施形態によれば、大きな勾配の坂道が複数存在する坂道区間では、車両が加減速を頻繁に繰り返すことがあり、この場合、低速シーンにおいて力行状態と回生状態とが交互に繰り返される。本実施形態の構成および制御方法によれば、そのような力行状態と回生状態を繰り返す場合であっても、第1および第2の電源を直列接続のまま固定することで、直列接続と並列接続との切り替え回数を低減することができる。これにより、平滑コンデンサCの充放電電流による発熱を抑制することができるとともに、充放電電流による損失の増大を抑制することができる。その結果、電気自動車の1充電あたりの走行距離を延ばすことができるとともに、コンデンサCの寿命を延ばすことができる。
【0059】
(第4の実施形態)
図7は、本発明の第4の実施形態にかかる電源装置30の制御方法を示すフローチャートである。本実施形態の電源装置30が、上述した第1の実施形態と相違する点は電源装置30の制御方法である。なお、電源装置30を含む全体的なシステム構成は、第1の実施形態と同様であり、以下、制御手法の相違点を中心に説明を行う。
【0060】
同図のフローチャートに示す処理は、電源装置30の第1の電源および第2の電源の電気的接続状態の設定手順を示しており、車両が走行を開始すると、すなわち、車速Vcaがゼロよりも大きくなると、コントロールユニット40(具体的には、電源制御部43)によって実行される。なお、本実施形態では、コントロールユニット40のメモリ44には、回生状態と力行状態との状態履歴に代えて、障害物センサ54によって検出される障害物情報Lobから、障害物の検出履歴が記憶される。
【0061】
まず、ステップ40(S40)において、電源制御部43は、環境情報Iinfoとしてナビゲーションシステム56から車両周辺の道路情報および位置情報を取得する。そして、電源制御部43は、現在車両が、規定の施設領域内を走行しているか否かを判定する。規定の施設は、例えば駐車場のように、当該施設内を走行した際に障害物などの影響により車両が加減速を頻繁に繰り返すことが想定される施設として設定されている。
【0062】
このステップ40において肯定判定された場合、すなわち、現在施設領域内を走行している場合には、ステップ41(S41)に進む。一方、ステップ40において否定判定された場合、すなわち、現在施設領域内を走行していない場合には、ステップ44(S44)に進む。
【0063】
ステップ41において、電源制御部43は、第1の実施形態においてステップ11の処理で示すように、気温Temに基づいて、判定回数Jothを設定する。
【0064】
ステップ42において、電源制御部43は、メモリ44において現在から所定時間前(例えば、5分前)までの走行履歴を抽出し、当該抽出された区間における障害物の検出回数を演算する。そして、電源制御部43は、演算された検出回数Joconが判定回数Joth(例えば、5回)以上であるか否かを判定する。このステップ42において肯定判定された場合、すなわち、検出回数Joconが判定回数Joth以上の場合には(Jocon≧Joth)、ステップ43(S43)に進む。一方、ステップ42において否定判定された場合、すなわち、検出回数Joconが判定回数Jothよりも小さい場合には(Jocon<Joth)、ステップ44に進む。
【0065】
なお、ステップ43からステップ47(S47)までの処理は、第1の実施形態に示すステップ13からステップ17のまでの処理とそれぞれ対応しており、その詳細な説明は省略する。
【0066】
このように本実施形態によれば、駐車場のような規定の施設領域内における走行環境では障害物(駐車車両や施設構造物など)により、車両が加減速を頻繁に繰り返すことがあり、この場合、低速シーンにおいて力行状態と回生状態とが交互に繰り返される。本実施形態の構成および制御方法によれば、そのような力行状態と回生状態を繰り返す場合であっても、第1および第2の電源を直列接続のまま固定することで、直列接続と並列接続との切り替え回数を低減することができる。これにより、平滑コンデンサCの充放電電流による発熱を抑制することができるとともに、充放電電流による損失の増大を抑制することができる。その結果、電気自動車の1充電あたりの走行距離を延ばすことができるとともに、コンデンサCの寿命を延ばすことができる。
【0067】
(第5の実施形態)
図8は、本発明の第5の実施形態にかかる電源装置30の制御方法を示すフローチャートである。本実施形態の電源装置30が、上述した第4の実施形態と相違する点は電源装置30の制御方法である。なお、電源装置30を含む全体的なシステム構成は、第4の実施形態と同様であり、以下、制御手法の相違点を中心に説明を行う。
【0068】
同図のフローチャートに示す処理は、電源装置30の第1の電源および第2の電源の電気的接続状態の設定手順を示しており、車両が走行を開始すると、すなわち、車速Vcaがゼロよりも大きくなると、コントロールユニット40(具体的には、電源制御部43)によって実行される。
【0069】
まず、ステップ50(S50)において、電源制御部43は、環境情報Iinfoとしてナビゲーションシステム56から車両周辺の道路情報および位置情報を取得する。そして、電源制御部43は、現在車両が、挟道路、具体的には、例えば山間部の道路のように規定値以下の幅員の道路を走行しているか否かを判定する。挟道路と判定するための幅員規定値は、当該道路を走行した際に障害物やその幅員の影響により車両が加減速を頻繁に繰り返すことが想定される道路幅員を想定して設定されている。
【0070】
このステップ50において肯定判定された場合、すなわち、挟道路を走行している場合には、ステップ51(S51)に進む。一方、ステップ50において否定判定された場合、すなわち、現在挟道路を走行していない場合には、ステップ54(S54)に進む。
【0071】
なお、ステップ51からステップ57(S57)までの処理は、第4の実施形態に示すステップ41からステップ47のまでの処理とそれぞれ対応しており、その詳細な説明は省略する。ただし、ステップ52(S52)の判定処理において、走行履歴を抽出するための抽出区間、および、判定回数Jothは、挟道路の走行の特性を考慮して、施設領域内の走行時のそれと相違させることができる。
【0072】
このように本実施形態によれば、挟道路のような走行環境では障害物および道路自体の狭さにより、車両が加減速を頻繁に繰り返すことがあり、この場合、低速シーンにおいて力行状態と回生状態とが交互に繰り返される。本実施形態の構成および制御方法によれば、そのような力行状態と回生状態を繰り返す場合であっても、第1および第2の電源を直列接続のまま固定することで、直列接続と並列接続との切り替え回数を低減することができる。これにより、平滑コンデンサCの充放電電流による発熱を抑制することができるとともに、充放電電流による損失の増大を抑制することができる。その結果、電気自動車の1充電あたりの走行距離を延ばすことができるとともに、コンデンサCの寿命を延ばすことができる。
【0073】
(第6の実施形態)
図9は、本発明の第6の実施形態にかかる電源装置30aおよび当該電源装置30aを用いたモータ10の制御システムを模式的に示す構成図である。本実施形態のシステム構成は、第1の実施形態に示す電源装置30、コントロールユニット40に代えて、電源装置30a、コントロールユニット40aを有する点において第1の実施形態と相違する。そこで、本実施形態では、第1の実施形態との相違点である電源装置30a、コントロールユニット40aを中心に説明を行う。また、第1の実施形態と共通する構成については、符号を引用することにより重複する説明を省略する。
【0074】
電源装置30aは、第1の実施形態の電源装置30と同様に、インバータ20を介してモータ10に接続されており、モータ10に電力を供給するとともに、モータ10において発電された電力を充電する電源装置である。電源装置30aは、それぞれが独立して直流電源として機能する複数の電源(本実施形態では、2つの電源(第1および第2の電源))を有している。
【0075】
電源装置30aは、第1および第2の電源間の電気的接続状態を、直列接続と並列接続とで切り替えるスイッチ回路を備えており、このスイッチ回路は、第1から第3のスイッチSW1〜SW3(スイッチング手段)を主体に構成されている。第1から第3のスイッチSW1〜SW3は、第1のスイッチSW1、第2のスイッチSW1、第3のスイッチSW3の順番に従って直列接続されている。個々のスイッチSW1〜SW3は、NPN型のトランジスタ等のスイッチング素子を主体に構成されており、個々のトランジスタは、コレクタ・エミッタ間に還流用ダイオードがそれぞれ逆並列接続されている。スイッチSW1〜SW3のオンオフ状態は、コントロールユニット40aから出力されるスイッチ駆動信号に応じて切り替えられる。
【0076】
ここで、スイッチ回路において、第1のスイッチSW1と第2のスイッチSW2との接続点は、第1の電源(電源電圧Ea)の正極が接続され、第2のスイッチSW2と第3のスイッチSW3との接続点は、第2の電源(電源電圧Eb)の負極が接続されている。第1のスイッチSW1のコレクタ端子と、第2の電源の正極とは相互に接続されており、この接続端は電源装置30aの正極側の出力端として機能する。この正極側の出力端は、インバータ20の正極母線が接続される。また、第3のスイッチSW3のエミッタ端子と、第1の電源の負極とは相互に接続されており、この接続端は電源装置30aの負極側の出力端として機能する。この負極側の出力端は、インバータ20の負極母線が接続される。
【0077】
図10は、本発明の第3の実施形態にかかるコントロールユニット40aの構成を模式的に示すブロック図である。コントロールユニット40aは、トルク制御部41と、電流制御部42と、電源制御部43aと、メモリ44とで構成されている。トルク制御部41と、電流制御部42と、メモリ44とは第1の実施形態と同様の機能を担っている。
【0078】
電源制御部43aは、モータ速度ωと、車速Vcaと、障害物情報Lobと、気温Temと、環境情報Iinfoと、メモリ44に記憶される走行履歴とに基づいて、電源装置30aにおける第1から第3のスイッチSW1〜SW3を駆動するためのスイッチ駆動信号Sdsw1〜Sdsw3を生成する。電源制御部43bは、スイッチ駆動信号Sdsw1〜Sdsw3を通じて制御される各スイッチSW1〜SW3のオンオフ状態の切り替えに応じて、第1の電源および第2の電源の電気的接続状態を直列接続または並列接続とで切り替える。
【0079】
図11は、電源装置30aにおける第1の電源および第2の電源の電気的接続状態の説明図である。モータ10の力行状態時、第1の電源および第2の電源を直列接続して電力を供給する場合、電源制御部43aは、第1および第3のスイッチSW1,SW3をオフ状態に、第2のスイッチSW2をオン状態に制御する(同図(a)参照)。また、モータ10の力行状態時、第1の電源および第2の電源を並列接続して電力を供給する場合、電源制御部43aは、第2のスイッチSW2をオフ状態に制御する。ここで、第1および第3のスイッチSW1,SW3は、第1の電源電圧Eaと第2の電源電圧Ebとがほぼ等しい場合、オン状態にそれぞれ制御され、第1の電源電圧Eaと第2の電源電圧Ebとが等しくない場合、高電位側から低電位側へと電流が流れることを抑制するために、オフ状態にそれぞれ制御される(同図(b)参照)。この場合、第1の電源または第2の電源からモータ10への電流は、第1および第3のスイッチSW1,SW3における還流用ダイオードをそれぞれ流れる。一方、モータ10が回生状態の場合、電源制御部43aは、第1の電源および第2の電源を直列接続して電力を充電すべく、第1から第3のスイッチSW1〜SW3をオフ状態に制御する(同図(c)参照)。この場合、モータ10からの電力は、第2のスイッチSW2における還流用ダイオードを流れて、第1および第2の電源に電流が流れる。
【0080】
このような構成において、コントロールユニット40a(具体的には、電源制御部43a)は、上述した各実施形態に示す電源装置30の制御方法と同様に、電源装置30aの第1の電源および第2の電源の電気的接続状態の設定することができる。この場合、各実施形態に示されるステップ13,23,33,43,53の処理において、電源制御部43aは、電源制御部43は、第1の電源および第2の電源の電気的接続状態を直列接続に設定する。具体的には、電源制御部43aは、モータ10が力行状態の場合、第2のスイッチSW2をオン状態に制御するとともに、第1および第3のスイッチSW1,SW3をオフ状態に制御する(図11(a)参照)。一方、電源制御部43aは、モータ10が回生状態の場合、第1から第3のスイッチSW1〜SW3をオフ状態に制御する(図11(c)参照)。
【0081】
また、各実施形態に示されるステップ16,26,36,46,56の処理において、電源制御部43aは、第1の電源および第2の電源の電気的接続状態を並列接続に設定する。具体的には、電源制御部43aは、第1の電源の電圧Eaと第2の電源の電圧Ebとを図示しない電圧センサでモニタリングした上で、第1の電源の電圧Eaと第2の電源の電圧Ebとが対応している場合には、第2のスイッチSW2をオフ状態に制御するとともに、第1および第3のスイッチSW1,SW3をオン状態に制御する(図11(b)参照)。一方、電源制御部43aは、第1の電源の電圧Eaと第2の電源の電圧Ebとが対応していない場合には、第1から第3のスイッチSW1〜SW3をオフ状態に制御する(図11(b)参照)。
【0082】
このように本実施形態によれば、第1の電源と第2の電源との電気的接続状態を3つのスイッチSW1〜SW3によって切り替えることができる。これにより、低い速度でトルク指令値が力行状態と回生状態とを頻繁に繰り返すことになる。本実施形態の構成および制御方法によれば、そのような力行状態と回生状態を繰り返す場合であっても、第1および第2の電源を直列接続のまま固定することで、直列接続と並列接続との切り替え回数を低減することができる。これにより、平滑コンデンサCの充放電電流による発熱を抑制することができるとともに、充放電電流による損失の増大を抑制することができる。その結果、電気自動車の1充電あたりの走行距離を延ばすことができるとともに、コンデンサCの寿命を延ばすことができる。
【0083】
以上、本発明の実施形態にかかる電源装置およびその制御方法について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その発明の範囲内において種々の変形が可能である。例えば、電源装置を構成する電源の数は3つ以上であってもよい。また、上述した各実施形態に示す直列固定処理の判定手法は、互いに組み合わせて判定することも可能である。
【符号の説明】
【0084】
10…モータ
20…インバータ
30…電源装置
40…コントロールユニット
41…トルク制御部
42…電流制御部
43…電源制御部
44…メモリ
50…電流センサ
51…電気角検出部
52…モータ速度検出部
53…車速センサ
54…障害物センサ
55…気温センサ
56…ナビゲーションシステム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換装置を介してモータに接続される複数の電源と、
前記複数の電源間の電気的接続状態を直列接続と並列接続とで切り替えるスイッチング手段を有するスイッチ回路と、
前記スイッチング手段を制御することにより、前記モータが回生状態である場合、前記電気的接続状態を直列接続に設定し、前記モータが力行状態である場合、前記モータの状態に基づいて前記電気的接続状態を直列接続および並列接続のうちの一方に設定する制御手段と、
車両の走行環境を検出する走行環境検出手段と、
前記モータによる走行状態を走行履歴として記憶する記憶手段とを有し、
前記制御手段は、回生状態から力行状態への移行時、前記記憶手段に記憶される走行履歴と、前記走行環境検出手段によって検出される前記車両の走行環境とに応じて、前記電気的接続状態を直列接続のままで固定とする直列固定処理を行うことを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記記憶手段は、前記走行履歴として、前記モータの回生状態と力行状態との状態履歴を記憶し、
前記走行環境検出手段は、渋滞区間を走行しているかを検出し、
前記制御手段は、前記走行環境検出手段によって渋滞区間の走行が検出され、かつ、前記記憶手段を参照して力行状態と回生状態との切り替えが繰り返し行われたことを判定したことを条件に、直列固定処理を行う請求項1に記載された電源装置。
【請求項3】
前記記憶手段には、前記走行履歴として、前記モータの回生状態と力行状態との状態履歴を記憶し、
前記走行環境検出手段は、規定値以上の曲率を有する複数のカーブが存在するカーブ区間を走行しているかを検出し、
前記制御手段は、前記走行環境検出手段によってカーブ区間の走行が検出され、かつ、前記記憶手段を参照して力行状態と回生状態との切り替えが繰り返し行われたことを判定したことを条件に、直列固定処理を行う請求項1に記載された電源装置。
【請求項4】
前記記憶手段には、前記走行履歴として、前記モータの回生状態と力行状態との状態履歴を記憶し、
前記走行環境検出手段は、規定値以上の勾配を有する複数の坂道が存在する坂道区間を走行しているかを検出し、
前記制御手段は、前記走行環境検出手段によって坂道区間の走行が検出され、かつ、前記記憶手段を参照して力行状態と回生状態との切り替えが繰り返し行われたことを判定したことを条件に、直列固定処理を行う請求項1に記載された電源装置。
【請求項5】
車両の走行の妨げとなる障害物を検出する障害物検出手段をさらに有し、
前記走行環境検出手段は、規定の施設領域内を走行しているかを検出し、
前記記憶手段は、前記障害物検出手段による障害物の検出履歴を記憶し、
前記制御手段は、前記走行環境検出手段によって規定の施設領域内の走行が検出され、かつ、前記記憶手段を参照して障害物の検出が繰り返されたことを判定したことを条件に、直列固定処理を行う請求項1に記載された電源装置。
【請求項6】
車両の走行の妨げとなる障害物を検出する障害物検出手段をさらに有し、
前記走行環境検出手段は、規定値以下の幅員の道路である挟道路を走行しているかを検出し、
前記記憶手段は、前記障害物検出手段による障害物の検出履歴を記憶し、
前記制御手段は、前記走行環境検出手段によって前記挟道路の走行が検出され、かつ、前記記憶手段を参照して障害物の検出が繰り返されたことを判定したことを条件に、直列固定処理を行う請求項1に記載された電源装置。
【請求項7】
気温を検出する気温検出手段をさらに有し、
前記制御手段は、前記気温検出手段によって検出される気温に基づいて基準時間を設定し、前記直列固定処理を前記基準時間の経過により終了することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載された電源装置。
【請求項8】
前記スイッチ回路は、スイッチング素子と当該スイッチング素子に逆並列接続されたダイオードとを有するスイッチと、当該スイッチを中央に配置して当該スイッチの端子にそれぞれ直列接続される2つのダイオードとで構成されており、
前記スイッチと一方のダイオードとの接続点は、第1の電源の正極が接続され、前記スイッチと他方のダイオードとの接続点は、第2の電源の負極が接続されており、
前記一方のダイオードは、他方の端子が第2の電源の正極と接続されて、前記他方のダイオードは、他方の端子が第1の電源の負極と接続されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載された電源装置。
【請求項9】
電力変換装置を介してモータに接続される複数の電源を有し、当該複数の電源間の電気的接続状態を直列接続と並列接続とで切り替え可能な電源装置の制御方法において、
前記モータの回生状態の場合、前記電気的接続状態を直列接続に設定する第1のステップと、
前記モータの力行状態の場合、前記モータの状態に基づいて前記電気的接続状態を直列接続および並列接続のうちの一方に設定する第2のステップと、
車両の走行環境を検出する第3のステップと、
前記モータによる走行状態を走行履歴として記憶する第4のステップとを有し、
前記第2のステップは、回生状態から力行状態への移行時、前記走行履歴と、前記検出された車両の走行環境とに応じて、前記電気的接続状態を直列接続のままで固定とする直列固定処理を行うステップを含むことを特徴とする電源装置の制御方法。
【請求項1】
電力変換装置を介してモータに接続される複数の電源と、
前記複数の電源間の電気的接続状態を直列接続と並列接続とで切り替えるスイッチング手段を有するスイッチ回路と、
前記スイッチング手段を制御することにより、前記モータが回生状態である場合、前記電気的接続状態を直列接続に設定し、前記モータが力行状態である場合、前記モータの状態に基づいて前記電気的接続状態を直列接続および並列接続のうちの一方に設定する制御手段と、
車両の走行環境を検出する走行環境検出手段と、
前記モータによる走行状態を走行履歴として記憶する記憶手段とを有し、
前記制御手段は、回生状態から力行状態への移行時、前記記憶手段に記憶される走行履歴と、前記走行環境検出手段によって検出される前記車両の走行環境とに応じて、前記電気的接続状態を直列接続のままで固定とする直列固定処理を行うことを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記記憶手段は、前記走行履歴として、前記モータの回生状態と力行状態との状態履歴を記憶し、
前記走行環境検出手段は、渋滞区間を走行しているかを検出し、
前記制御手段は、前記走行環境検出手段によって渋滞区間の走行が検出され、かつ、前記記憶手段を参照して力行状態と回生状態との切り替えが繰り返し行われたことを判定したことを条件に、直列固定処理を行う請求項1に記載された電源装置。
【請求項3】
前記記憶手段には、前記走行履歴として、前記モータの回生状態と力行状態との状態履歴を記憶し、
前記走行環境検出手段は、規定値以上の曲率を有する複数のカーブが存在するカーブ区間を走行しているかを検出し、
前記制御手段は、前記走行環境検出手段によってカーブ区間の走行が検出され、かつ、前記記憶手段を参照して力行状態と回生状態との切り替えが繰り返し行われたことを判定したことを条件に、直列固定処理を行う請求項1に記載された電源装置。
【請求項4】
前記記憶手段には、前記走行履歴として、前記モータの回生状態と力行状態との状態履歴を記憶し、
前記走行環境検出手段は、規定値以上の勾配を有する複数の坂道が存在する坂道区間を走行しているかを検出し、
前記制御手段は、前記走行環境検出手段によって坂道区間の走行が検出され、かつ、前記記憶手段を参照して力行状態と回生状態との切り替えが繰り返し行われたことを判定したことを条件に、直列固定処理を行う請求項1に記載された電源装置。
【請求項5】
車両の走行の妨げとなる障害物を検出する障害物検出手段をさらに有し、
前記走行環境検出手段は、規定の施設領域内を走行しているかを検出し、
前記記憶手段は、前記障害物検出手段による障害物の検出履歴を記憶し、
前記制御手段は、前記走行環境検出手段によって規定の施設領域内の走行が検出され、かつ、前記記憶手段を参照して障害物の検出が繰り返されたことを判定したことを条件に、直列固定処理を行う請求項1に記載された電源装置。
【請求項6】
車両の走行の妨げとなる障害物を検出する障害物検出手段をさらに有し、
前記走行環境検出手段は、規定値以下の幅員の道路である挟道路を走行しているかを検出し、
前記記憶手段は、前記障害物検出手段による障害物の検出履歴を記憶し、
前記制御手段は、前記走行環境検出手段によって前記挟道路の走行が検出され、かつ、前記記憶手段を参照して障害物の検出が繰り返されたことを判定したことを条件に、直列固定処理を行う請求項1に記載された電源装置。
【請求項7】
気温を検出する気温検出手段をさらに有し、
前記制御手段は、前記気温検出手段によって検出される気温に基づいて基準時間を設定し、前記直列固定処理を前記基準時間の経過により終了することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載された電源装置。
【請求項8】
前記スイッチ回路は、スイッチング素子と当該スイッチング素子に逆並列接続されたダイオードとを有するスイッチと、当該スイッチを中央に配置して当該スイッチの端子にそれぞれ直列接続される2つのダイオードとで構成されており、
前記スイッチと一方のダイオードとの接続点は、第1の電源の正極が接続され、前記スイッチと他方のダイオードとの接続点は、第2の電源の負極が接続されており、
前記一方のダイオードは、他方の端子が第2の電源の正極と接続されて、前記他方のダイオードは、他方の端子が第1の電源の負極と接続されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載された電源装置。
【請求項9】
電力変換装置を介してモータに接続される複数の電源を有し、当該複数の電源間の電気的接続状態を直列接続と並列接続とで切り替え可能な電源装置の制御方法において、
前記モータの回生状態の場合、前記電気的接続状態を直列接続に設定する第1のステップと、
前記モータの力行状態の場合、前記モータの状態に基づいて前記電気的接続状態を直列接続および並列接続のうちの一方に設定する第2のステップと、
車両の走行環境を検出する第3のステップと、
前記モータによる走行状態を走行履歴として記憶する第4のステップとを有し、
前記第2のステップは、回生状態から力行状態への移行時、前記走行履歴と、前記検出された車両の走行環境とに応じて、前記電気的接続状態を直列接続のままで固定とする直列固定処理を行うステップを含むことを特徴とする電源装置の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−183767(P2010−183767A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25958(P2009−25958)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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