説明

駆動力制御装置

【課題】加速要求中の運転者の違和感を抑制することができる駆動力制御装置を提供する。
【解決手段】動力発生手段の回転速度と当該動力発生手段が発生させるトルクとに応じた当該動力発生手段の最適燃費線を基準として設定される燃費良領域内の動作点で動力発生手段の運転を制御可能な動力制御手段16と、動力発生手段の出力が伝達される変速機の変速比を制御可能な変速比制御手段15とを備え、動力発生手段の動作点が燃費良領域内の最適燃費線からずれた位置にある運転状態で、かつ、当該運転状態が定常的である際に、変速比制御手段15は、変速速度を低下させて変速機の変速比を制御し、動力制御手段16は、動作点が最適燃費線上になるように動力発生手段の運転を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動力制御装置に関し、特に、変速機と動力発生手段とを組み合わせて駆動力を制御する駆動力制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、無段変速機、いわゆるCVT(CVT:Continuously Variable Transmission)として、いわゆるベルト式無段変速機やトロイダル式無段変速機などがある。例えば、ベルト式無段変速機は、入力軸に設けられるプライマリプーリと、出力軸に設けられるセカンダリプーリと、前記プライマリプーリと前記セカンダリプーリに巻き掛けられるベルトとを備える。ベルト式無段変速機は、前記プライマリプーリと前記ベルトとの接触半径と、前記セカンダリプーリと前記ベルトとの接触半径とを無段階に変化させる。これにより、ベルト式無段変速機は、変速比を無段階に調整できる。
【0003】
そして、このような無段変速機と、動力発生手段、例えば、内燃機関とを組み合わせて、駆動力を制御する駆動力制御装置が知られており、例えば、特許文献1の車両の駆動力制御装置は、エンジン回転速度とエンジントルクの組合せによって決定される多数のエンジン動作点の中から予め設定した目標動作点範囲内で目標駆動力を実現するように目標エンジントルクと目標エンジン回転速度を演算する演算手段と、目標エンジントルクと目標エンジン回転速度に応じてエンジンまたは変速機を制御する制御手段とを有している。そして、演算手段は、目標動作点範囲のうちエンジントルクが高い側の第1の境界線と、目標駆動力に相当する等駆動力線との交点に於けるエンジン回転速度を最低目標エンジン回転速度とし、目標動作点範囲のうちエンジントルクが低い側の第2の境界線と、目標駆動力に相当する等駆動力線との交点に於けるエンジン回転速度を最高目標エンジン回転速度として、これら最低目標エンジン回転速度と最高目標エンジン回転速度の間の内分点を目標エンジン回転速度として演算する際に、車両の加速状態に応じてその内分比率を変化させている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−354051号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に記載されている車両の駆動力制御装置は、急加速が求められたときに加速中のイナーシャトルク損失を抑制しながら実駆動力を目標駆動力に近づけているものの、例えば、運転者の違和感を抑制しながら単位燃料量で走行できる距離のさらなる向上が望まれていた。
【0006】
そこで本発明は、運転者の違和感を抑制しながら単位燃料量で走行できる距離を向上することができる駆動力制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明による駆動力制御装置は、動力発生手段の回転速度と当該動力発生手段が発生させるトルクとに応じた当該動力発生手段の最適燃費線を基準として設定される燃費良領域内の動作点で前記動力発生手段の運転を制御可能な動力制御手段と、前記動力発生手段の出力が伝達される変速機の変速比を制御可能な変速比制御手段とを備え、前記動力発生手段の前記動作点が前記燃費良領域内の前記最適燃費線からずれた位置にある運転状態で、かつ、当該運転状態が定常的である際に、前記変速比制御手段は、変速速度を低下させて前記変速機の変速比を制御し、前記動力制御手段は、前記動作点が前記最適燃費線上になるように前記動力発生手段の運転を制御することを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明による駆動力制御装置では、前記動力発生手段に対して運転者が要求する出力に対応した操作量の変化量が予め設定された第1所定範囲内で予め設定される所定期間継続した際に、前記運転状態が定常的であると判定する判定手段を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明による駆動力制御装置では、前記動力発生手段に対して運転者が要求する出力に対応した操作量が変化し前記要求する出力が変化した際に、当該変化後の前記要求する出力を現在の前記変速比にて実現可能な前記動作点が前記燃費良領域内にある場合には、前記変速比制御手段は、前記変速機の変速比を保持し、前記動力制御手段は、前記動力発生手段が発生させるトルクが前記要求する出力を実現可能なトルクとなるように前記動力発生手段の運転を制御することを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明による駆動力制御装置では、前記動力発生手段に対して運転者が要求する出力に対応した操作量が変化し前記要求する出力が変化した際に、当該変化後の前記要求する出力を実現可能な前記動作点が前記燃費良領域内にあり、かつ、当該要求する出力を実現可能な変速比の変化幅が予め設定される第2所定範囲以内である際には、前記変速比制御手段は、前記変速機の変速比を制御し、前記動力制御手段は、前記動作点が前記最適燃費線上になるように前記動力発生手段の運転を制御することを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明による駆動力制御装置では、前記動力制御手段は、前記動力発生手段を搭載した車両の加速時に、前記動作点が前記燃費良領域の上限上になるように前記動力発生手段の運転を制御することを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る発明による駆動力制御装置では、前記動力発生手段に対して運転者が要求する出力に対応した操作量が低下し当該要求する出力が前記燃費良領域の下限に応じた出力より低下した際に、前記変速比制御手段は、前記動力発生手段の回転速度が前記燃費良領域の上限にて前記要求する出力を実現可能な回転速度となるように前記変速機の変速比を制御し、前記動力制御手段は、前記動力発生手段が発生させるトルクが前記燃費良領域の上限に応じたトルクとなるように前記動力発生手段の運転を制御することを特徴とする。
【0013】
請求項7に係る発明による駆動力制御装置では、前記燃費良領域は、前記動力発生手段を搭載した車両が単位燃料量で走行できる距離を優先して前記動力発生手段を運転できる当該動力発生手段の回転速度と当該動力発生手段が発生させるトルクとに基づいて設定される前記最適燃費線に対して、前記走行できる距離の低下が予め設定される第3所定範囲内の領域として設定されることを特徴とする。
【0014】
請求項8に係る発明による駆動力制御装置では、前記動力発生手段に対して運転者が要求する出力に対応した操作量を検出する操作量検出手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る駆動力制御装置によれば、動力発生手段の動作点が燃費良領域内の最適燃費線からずれた位置にある運転状態で、かつ、当該運転状態が定常的である際に、変速比制御手段は、変速速度を低下させて変速機の変速比を制御し、動力制御手段は、動作点が最適燃費線上になるように動力発生手段の運転を制御するので、運転者の違和感を抑制しながら単位燃料量で走行できる距離を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明に係る駆動力制御装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0017】
(実施形態1)
図1は、本実施形態に係る駆動力制御装置を備えた車両の動力伝達部分における全体の構成を示す概念図、図2は、本実施形態に係る駆動力制御装置が適用されたベルト式無段変速機のプライマリプーリ側の構成を示す断面図、図3は、本実施形態に係る駆動力制御装置が適用されたベルト式無段変速機の油圧モータを図2に示すX−X線から見た断面図、図4は、本実施形態に係る駆動力制御装置が適用されたベルト式無段変速機における油圧回路構成を説明する模式図、図5−1は、本実施形態に係る駆動力制御装置が適用されたベルト式無段変速機の変速比制御用切替バルブの動作を説明する模式図であって第1油室に油圧を供給する場合のバルブ位置を示す図、図5−2は、本実施形態に係る駆動力制御装置が適用されたベルト式無段変速機の変速比制御用切替バルブの動作を説明する模式図であって第1及び第2油室に油圧を供給する場合のバルブ位置を示す図、図5−3は、本実施形態に係る駆動力制御装置が適用されたベルト式無段変速機の変速比制御用切替バルブの動作を説明する模式図であって第2油室に油圧を供給する場合のバルブ位置を示す図、図6は、本実施形態に係る駆動力制御装置の構成を示す概念図である。
【0018】
また、図7は、本実施形態に係る駆動力制御装置における通常目標駆動力を求めるための通常目標駆動力マップ、図8は、本実施形態に係る駆動力制御装置における通常目標回転数を求めるための通常目標回転数マップ、図9は、本実施形態に係る駆動力制御装置における燃費良領域出力を求めるための燃費良領域出力マップ、図10は、本実施形態に係る駆動力制御装置における変速速度低下分回転数を求めるための変速速度低下分回転数マップである。
【0019】
さらに、図11は、本実施形態に係る駆動力制御装置の動作を説明するタイムチャート、図12は、本実施形態に係る駆動力制御装置の動作を説明する線図、図13は、本実施形態に係る駆動力制御装置における変速制御を説明するフローチャートである。
【0020】
図1、図6に示すように、本実施形態に係る駆動力制御装置11が適用された無段変速機、いわゆるCVT(CVT:Continuously Variable Transmission)としてのベルト式無段変速機110が搭載される車両100の動力伝達機構は、この駆動力制御装置11を備えたベルト式無段変速機110と、動力発生手段としての内燃機関120と、トルクコンバータ130と、前後進切換機構140と、減速装置150と、差動装置160とを備える。
【0021】
なお、以下で説明する実施形態では、本実施形態に係る駆動力制御装置11が適用される車両100が備える動力発生手段として、エンジントルク(出力トルク)を発生する内燃機関(ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジンなど)を用いるが、これに限定されるものではなく、モータトルクを発生するモータなどの電動機を動力発生手段として用いてもよい。また、動力発生手段として内燃機関及び電動機を併用してもよい。
【0022】
内燃機関120は、円筒形状に形成されるシリンダの中心軸方向にピストンが往復運動し、前記ピストンの往復運動を回転運動に変換するクランクシャフト121から回転を出力する。
【0023】
トルクコンバータ130は、流体クラッチの一種であり、内燃機関120から取り出された回転を作動油を介して前後進切換機構140に伝える。また、トルクコンバータ130は内燃機関120から取り出されたトルクを増幅する。
【0024】
前後進切換機構140は、トルクコンバータ130からの回転の回転方向を切り替え可能なものであり、ベルト式無段変速機110へ前記回転を伝える。
【0025】
ベルト式無段変速機110は、前後進切換機構140から入力される回転の回転速度を所望の回転速度に変更して出力する。なお、ベルト式無段変速機110の詳細な説明は後述する。
【0026】
なおここで、ベルト式無段変速機110に入力される回転速度は、言い換えれば、ベルト式無段変速機110に入力される回転数に対応し、この回転速度が高くなれば、これに伴って回転数も高くなる。以下、特に断りの無い限り、回転速度は、回転数として説明する。
【0027】
減速装置150は、ベルト式無段変速機110からの回転の回転数(回転速度)を減速して差動装置160に前記回転を伝える。
【0028】
差動装置160は、車両100が旋回する際に生じる旋回の中心側、つまり内側の車輪180と、外側の車輪180との速度差を吸収する。
【0029】
上記構成要素によって車両100の動力伝達機構は形成される。内燃機関120から取り出された回転は、クランクシャフト121を介してトルクコンバータ130に伝えられる。トルクコンバータ130によってトルクが増幅された回転は、インプットシャフト131を介して前後進切換機構140に伝えられる。
【0030】
前後進切換機構140によって回転方向が切り替えられた回転は、ベルト式無段変速機110の入力軸としてのプライマリシャフト51を介してベルト式無段変速機110に伝えられる。ベルト式無段変速機110によって、回転数(回転速度)を変更された回転は、ベルト式無段変速機110の出力軸としてのセカンダリシャフト61を介して減速装置150に伝えられる。減速装置150によって減速された回転は、減速装置150のファイナルドライブピニオン151と、ファイナルドライブピニオン151と噛み合う差動装置160のリングギア161とを介して差動装置160に伝えられる。
【0031】
差動装置160に伝達された回転は、ドライブシャフト170に伝達される。ドライブシャフト170の差動装置160側とは反対側には、車輪180が取り付けられる。ドライブシャフト170に伝達された回転は、車輪180に伝達される。これにより、車輪180は回転し、車輪180が路面に前記回転を伝達することにより車両100は走行する。
【0032】
なお、本実施形態では内燃機関120をピストンとシリンダとを備えるいわゆるレシプロ式の内燃機関として説明したが、本実施形態はこれに限定されない。動力発生手段から回転力を得られれば良く、例えば、動力発生手段はロータリー式の内燃機関でもよいし、モータでもよい。
【0033】
次に、ベルト式無段変速機110の概略構成について図1乃至図5−3を用いて説明する。なお、プライマリプーリ50とセカンダリプーリ60とはほぼ同様の構成であるため、プライマリプーリ50側を詳細に説明し、セカンダリプーリ60側の説明はできる限り省略する。
【0034】
ベルト式無段変速機110は、図1に示すように、プライマリプーリ50と、プライマリシャフト51と、セカンダリプーリ60と、セカンダリシャフト61と、プライマリプーリ50とセカンダリプーリ60とに巻き掛けられるベルト80とを備える。
【0035】
プライマリシャフト51は、軸受81、軸受82によってインプットシャフト131の回転軸と同軸上に回転可能に支持される。セカンダリシャフト61は、軸受83、軸受84によってプライマリシャフト51に対して平行に回転可能に支持される。
【0036】
プライマリシャフト51には、プライマリプーリ50が設けられる。プライマリプーリ50は、プライマリ固定シーブ52と、プライマリ可動シーブ53と、図2に示すスプライン54とを備える。プライマリ固定シーブ52は、プライマリシャフト51の外周にプライマリシャフト51と一体に、もしくはプライマリシャフト51に固定して設けられる。
【0037】
プライマリ可動シーブ53は、プライマリシャフト51上のプライマリ固定シーブ52と対向する位置にスプライン54を介して設けられる。スプライン54は、プライマリ可動シーブ53がプライマリシャフト51上をプライマリシャフト51の軸線に沿って摺動できるようにプライマリ可動シーブ53を支持する。加えて、スプライン54は、前記軸線を回転軸とする回転をプライマリシャフト51からプライマリ可動シーブ53へ伝える。よって、プライマリ可動シーブ53は、スプライン54により、プライマリシャフト51上をスライドして移動できると共に、プライマリシャフト51と一体に回転できる。
【0038】
上記構成により、プライマリ固定シーブ52及びプライマリ可動シーブ53の対向面間には、V字形状のプライマリ溝80aが形成される。また、プライマリ可動シーブ53がプライマリシャフト51上を摺動することにより、プライマリ固定シーブ52とプライマリ可動シーブ53との距離が変化する。
【0039】
さらに、プライマリプーリ50は、プライマリ可動シーブ摺動機構55を備える。プライマリ可動シーブ摺動機構55は、プライマリシャフト51に設けられる。プライマリ可動シーブ摺動機構55は、プライマリ可動シーブ53にプライマリシャフト51の軸線方向の力を与える。これにより、プライマリ可動シーブ摺動機構55は、プライマリ可動シーブ53を前記軸線方向に摺動させ、プライマリ固定シーブ52に接近またはプライマリ固定シーブ52から離隔させる。
【0040】
プライマリ可動シーブ摺動機構55は、例えば、図2に示すように、油圧モータ550と、運動方向変換機構551とを備える。油圧モータ550は、プライマリ可動シーブ53をプライマリシャフト51の軸線方向に摺動させるための駆動力を発生させる。油圧モータ550は、例えば、羽根式油圧モータである。なお、プライマリ可動シーブ摺動機構55は、油圧モータ550に代えて電動モータを備えてもよい。
【0041】
運動方向変換機構551は、油圧モータ550の回転方向の力をプライマリシャフト51の軸線方向の力に変換する。運動方向変換機構551は、例えば、回転力をその軸線方向の力に変換する多条ネジや滑りネジなどの運動ネジである。
【0042】
油圧モータ550の回転力は、運動方向変換機構551に入力される。運動方向変換機構551に入力された回転力は、前記軸線方向の力に変換される。そして、前記軸線方向の力は、運動方向変換機構551からプライマリ可動シーブ53へ伝えられる。上記構成により、プライマリ可動シーブ53はプライマリ固定シーブ52に対して相対的に移動する。
【0043】
ここで、プライマリシャフト51には、図3に示すように、油路51bと、油路51cとが形成される。油路51bは、油圧モータ550の各第1油室550aに開口し、第1油室550aに作動油を供給、または各第1油室550aから作動油を排出する通路である。油路51cは、油圧モータ550の各第2油室550bに開口し、各第2油室550bに作動油を供給、または各第2油室550bから作動油を排出する通路である。
【0044】
そして、油路51b及び油路51cは、図4に示すように、変速比制御用切替バルブ56に接続される。また、変速比制御用切替バルブ56には、オイルタンクOT側から順に、オイルポンプOP、レギュレータバルブ59、挟圧力調整バルブ58を介して作動油が供給される。
【0045】
オイルポンプOPとレギュレータバルブ59とは油路59aによって接続される。レギュレータバルブ59と挟圧力調整バルブ58とは油路58aによって接続される。挟圧力調整バルブ58と変速比制御用切替バルブ56とは油路56aによって接続される。
【0046】
オイルポンプOPは、オイルタンクOTから作動油を吸引し、油路59aを介してレギュレータバルブ59へ作動油を送る。レギュレータバルブ59は、油圧調整手段として機能し、油路58aに送り出す油圧を適正な範囲に調整する。ここで、前記適正な範囲とは、ベルト式無段変速機110のプライマリ可動シーブ53を摺動させるのに必要な油圧の範囲である。
【0047】
レギュレータバルブ59から送り出された作動油は、油路58aを介して挟圧力調整バルブ58へ導入される。挟圧力調整バルブ58は、油圧調整手段として機能し、油路56aに送り出す油圧を、このベルト式無段変速機110が備える後述のECU10が要求した圧力に調整する。
【0048】
挟圧力調整バルブ58から送り出された作動油は、油路56aを介して変速比制御用切替バルブ56へ導入される。変速比制御用切替バルブ56は、複数の油路が形成され、バルブの位置を切り替えることにより、作動油の供給対象として第1油室550aと第2油室550bとの切り替えを行う。この切り替えは、図5−1から図5−3に示すシリンダの内部に配置されたバネ56bの反発力とその内部に供給する空気や作動油等の流体の圧力との差分を調節することで行われる。前記流体の圧力の制御は、ECU10によって行われる。
【0049】
なお、図5−1は、第1油室550aに油圧を供給する場合のバルブ位置を示す図、図5−2は、第1油室550a及び第2油室550bに油圧を供給する場合のバルブ位置を示す図、図5−3は、第2油室550bに油圧を供給する場合のバルブ位置を示す図である。変速比制御用切替バルブ56は、例えば、バルブの位置を制御する圧力であるバルブ位置制御圧がバネ56bの反発力よりも小さく設定されると、図5−1に示すように、第1油室550aに作動油を供給する。これにより、油圧モータ550は正回転する。また、変速比制御用切替バルブ56は、例えば、バルブ位置制御圧がバネ56bの反発力よりも大きく設定されると、図5−3に示すように、第2油室550bに作動油が供給される。これにより、油圧モータ550は逆回転する。
【0050】
上記構成により、油圧モータ550は、プライマリ可動シーブ53をプライマリシャフト51の軸線方向に摺動させる。つまり、プライマリ可動シーブ53を、プライマリ固定シーブ52に対して接近、または遠離させる。これにより、図1に示すプライマリ溝80aとベルト80との接触半径と、セカンダリ溝80bとベルト80との接触半径とが変化する。これにともなって変速比も変化する。
【0051】
具体的には、プライマリ可動シーブ53がプライマリ固定シーブ52に対して接近すると、変速比は小さくなり、アップシフトする。つまり、ベルト式無段変速機110から取り出される回転数は上昇し、ベルト式無段変速機110から取り出されるトルクは減少する。一方、プライマリ可動シーブ53がプライマリ固定シーブ52に対して遠離すると、変速比は大きくなり、ダウンシフトする。つまり、ベルト式無段変速機110から取り出される回転数は減少し、ベルト式無段変速機110から取り出されるトルクは上昇する。
【0052】
また、変速比制御用切替バルブ56は、例えば、バルブ位置制御圧をバネ56bの反発力とつり合うように設定し、切替弁を所定の位置に留めておくことにより、図5−2に示すように、第1油室550a及び第2油室550bに同圧の作動油を供給する。これにより油圧モータ550の回転が停止する。油圧モータ550の回転を停止させることにより、ベルト式無段変速機110の変速比を固定できる。
【0053】
なお、図1に示すように、セカンダリプーリ60は、セカンダリ固定シーブ62と、セカンダリ可動シーブ63と、セカンダリ可動シーブ摺動機構65と、セカンダリ溝80bとを備える。上述したように、セカンダリプーリ60はプライマリプーリ50とほぼ同様の構成であり、セカンダリ固定シーブ62はプライマリ固定シーブ52と、セカンダリ可動シーブ63はプライマリ可動シーブ53と、セカンダリ可動シーブ摺動機構65はプライマリ可動シーブ摺動機構55と、セカンダリ溝80bはプライマリ溝80aとそれぞれ対応する。
【0054】
次に、図6を参照して駆動力制御装置11について説明する。この駆動力制御装置11は、図6に示すように、ECU10の中央演算部(Central Processing Unit)Epに組み込まれて構成されている。
【0055】
駆動力制御装置11は、アクセル開度や車速などに応じて運転者が車両100に要求する要求駆動力に対応した車両100の目標駆動力(車両100が目標とする駆動力)を求めるとともに、その要求駆動力を得るために運転者が内燃機関120に要求する出力、すなわち、要求出力に対応した内燃機関120の目標出力(内燃機関120が目標とする出力)を求める。そして、駆動力制御装置11は、基本的には、その目標出力を少ない燃費で発生させる目標のエンジン回転数、言い換えれば、ベルト式無段変速機110への入力回転数の目標回転数を求め、この目標回転数を実現するようにベルト式無段変速機110の変速比を制御する一方、目標出力と目標回転数(目標エンジン回転数)とからその目標出力を得るための目標エンジントルクを求めて内燃機関120の運転を制御し車両100の駆動力を制御する。
【0056】
ECU10は、図1に示す内燃機関120、図4に示すベルト式無段変速機110の変速比制御用切替バルブ56、挟圧力調整バルブ58、レギュレータバルブ59などに電気的に接続され、これら内燃機関120、変速比制御用切替バルブ56、挟圧力調整バルブ58、レギュレータバルブ59などの制御対象の動作を制御する。さらに言えば、ECU10は、ベルト式無段変速機110の変速比制御用切替バルブ56、挟圧力調整バルブ58、レギュレータバルブ59などの制御対象の動作を制御することで、プライマリ可動シーブ摺動機構55、セカンダリ可動シーブ摺動機構65の動作を制御し、変速比を制御する。なお、駆動力制御装置11は、この本実施形態に係るベルト式無段変速機110の変速比を制御する手順を、後述の機関制御部16があらかじめ備えている内燃機関120の運転制御ルーチンに割り込ませてもよい。
【0057】
具体的には、ECU10は、図1に示すプライマリシャフト回転数センサD01、セカンダリシャフト回転数センサD02、車速センサD03、図4に示すアクセル開度センサD04、その他にも内燃機関120の各検出手段類に電気的に接続され、これらの検出手段から各種の情報を取得する。
【0058】
プライマリシャフト回転数センサD01は、プライマリシャフト51の実際の回転数、すなわち、ベルト式無段変速機110への実際の入力回転数である実入力回転数を検出するものである。セカンダリシャフト回転数センサD02は、セカンダリシャフト61の実際の回転数、すなわち、ベルト式無段変速機110からの実際の出力回転数である実出力回転数を検出するものである。車速センサD03は、車両100の速度、すなわち車速を検出するものである。
【0059】
アクセル開度センサD04は、運転者の車両100に対する加速の要求の有無及び運転者の車両100に対する加速の要求量を判定するためのパラメータとして、内燃機関120が搭載された車両100のアクセルの踏み込みに応じたアクセル開度を検出するものである。すなわち、アクセル開度センサD04が検出するアクセル開度は、運転者による車両100に対する加速要求量に相当する。ここで、運転者による車両100に対する加速要求量とは、アクセル開度の大きさ及びアクセル開度の変化の速さに比例する。つまり、アクセル開度が大きいほど運転者の車両100に対する加速要求量は大きい。また、アクセル開度の変化の早さ、いわゆるアクセル開速度が大きいほど運転者の車両100に対する加速の要求量は大きい。
【0060】
また、言い換えれば、アクセル開度センサD04が検出するアクセル開度は、運転者が内燃機関120に対して要求する出力、すなわち、要求出力に対応した操作量に相当し、このアクセル開度センサD04は、本発明の操作量検出手段に相当する。運転者による要求出力は、アクセル開度や車速などに応じて運転者が車両100に要求する駆動力である要求駆動力を得るために要求される出力である。
【0061】
ECU10は、例えば、内燃機関120のインジェクタ、点火プラグ、電子スロットル弁などにも電気的に接続される。これにより、ECU10は、インジェクタの燃料噴射量及び燃料噴射時期、点火プラグの点火時期、電子スロットル弁の開度などを制御する。つまり、ECU10は、インジェクタ、点火プラグ、電子スロットル弁などを制御することにより、内燃機関120から取り出せるトルクを制御する。また、ECU10は、その他にも内燃機関120の各制御対象に電気的に接続され、前記各制御対象を制御する。
【0062】
駆動力制御装置11は、上述したように、ECU10の中央演算部(Central Processing Unit)Epに組み込まれて構成されている。ECU10は、この中央演算部Epと、記憶部Emと、入力ポートINp及び出力ポートOUTpと、入力インターフェースIFin及び出力インターフェースIFoutとから構成される。なお、ECU10とは別個に、駆動力制御装置11を用意し、これをECU10に接続してもよい。
【0063】
中央演算部Epと記憶部Emとは、バスBcとにより接続される。中央演算部Epと入力ポートINpとは、バスBaとにより接続される。中央演算部Epと出力ポートOUTpとは、バスBbとにより接続される。
【0064】
入力ポートINpには、入力インターフェースIFinが接続されている。入力インターフェースIFinには、図1に示すプライマリシャフト回転数センサD01、セカンダリシャフト回転数センサD02、車速センサD03、図4に示すアクセル開度センサD04、その他各種検出手段が接続されている。これらの各種検出手段から出力される信号は、入力インターフェースIFin内のアナログ/デジタルコンバータADCやディジタル入力バッファDIBにより、中央演算部Epが利用できる信号に変換されて入力ポートINpへ送られる。これにより、中央演算部Epは、ベルト式無段変速機110の変速比の制御や、内燃機関120の制御に必要な情報を取得できる。
【0065】
出力ポートOUTpには、出力インターフェースIFoutが接続されている。出力インターフェースIFoutには、プライマリ可動シーブ摺動機構55、セカンダリ可動シーブ摺動機構65(さらに言えば、変速比制御用切替バルブ56、挟圧力調整バルブ58、レギュレータバルブ59)、インジェクタ、点火プラグ、電子スロットル弁、その他内燃機関120における制御対象が接続されている。出力インターフェースIFoutは、制御回路IFouta、制御回路IFoutbなどを備えており、中央演算部Epで演算された制御信号に基づき、前記制御対象を動作させる。このような構成により、前記検出手段からの出力信号に基づき、ECU10の中央演算部Epは、プライマリ可動シーブ摺動機構55、セカンダリ可動シーブ摺動機構65、インジェクタ、点火プラグ、電子スロットル弁を制御する、つまり、ベルト式無段変速機110の変速比及び内燃機関120の出力を制御する。換言すると、ECU10は、プライマリシャフト51へ入力する回転数、言い換えれば、エンジン回転数と、セカンダリシャフト61から出力される回転数と、内燃機関120が出力するトルクとを制御する。
【0066】
記憶部Emには、ベルト式無段変速機110の変速比を制御する手順を含むコンピュータプログラムや制御データマップが格納されている。記憶部Emは、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成できる。
【0067】
上記コンピュータプログラムは、中央演算部Epへ既に記録されているコンピュータプログラムとの組み合わせによって、ベルト式無段変速機110の変速比を制御する手順を実現できるものであってもよい。また、この駆動力制御装置11は、前記コンピュータプログラムの代わりに専用のハードウェアを用いて、同等の機能を実現するものであってもよい。
【0068】
そして、ECU10の中央演算部Epに組み込まれて構成された駆動力制御装置11は、情報取得部12と、比較判定部13と、目標回転数エンジントルク演算部14と、変速比制御手段としての変速比制御部15と、動力制御手段としての機関制御部16と、動作点判定部17と、判定手段としての定常運転判定部18と、変速速度設定部19とを含んで構成される。
【0069】
情報取得部12は、図1に示すプライマリシャフト回転数センサD01、セカンダリシャフト回転数センサD02、車速センサD03、アクセル開度センサD04などの検出手段が検出した結果、記憶部Emに格納された情報、機関制御部16が有する情報などを取得し、これを利用する。比較判定部13は、各検出手段から得た数値や記憶部Emに格納された数値を比較する。
【0070】
変速比制御部15は、内燃機関120の出力が伝達されるベルト式無段変速機110の変速比を制御するものである。
【0071】
機関制御部16は、内燃機関120の回転数、すなわち、エンジン回転数と内燃機関120が発生させるトルク、すなわち、エンジントルクとに応じた動作点に基づいて、内燃機関120の運転を制御する。
【0072】
目標回転数エンジントルク演算部14は、内燃機関120の目標エンジン回転数、言い換えれば、プライマリシャフト51の回転数の目標である最終目標回転数NINT(目標エンジン回転数に対応)を演算するものであり、ここではさらに、内燃機関120のエンジントルクの目標である目標エンジントルクTETを演算するものでもある。目標回転数エンジントルク演算部14は、内燃機関120の運転状態や車両100の運転状態に応じて、内燃機関120の動作点、すなわち、最終目標回転数NINTと目標エンジントルクTETとを求める。
【0073】
そして、変速比制御部15は、プライマリシャフト51の回転数が、目標回転数エンジントルク演算部14により求められる最終目標回転数NINTとなるようにベルト式無段変速機110の変速比を制御する。すなわち、変速比制御部15は、ベルト式無段変速機110のプライマリ可動シーブ摺動機構55及びセカンダリ可動シーブ摺動機構65を制御し、プライマリシャフト51の回転数が最終目標回転数NINTとなるようにベルト式無段変速機110の変速比を変更する。
【0074】
また、機関制御部16は、エンジン回転数が目標エンジン回転数、言い換えれば、最終目標回転数NINTとなり、内燃機関120のエンジントルクが目標回転数エンジントルク演算部14により求められる目標エンジントルクTETとなるよう内燃機関120の運転制御を行う。すなわち、機関制御部16は、インジェクタ、点火プラグ、電子スロットル弁を制御して内燃機関120から取り出される出力を制御し、内燃機関120のエンジントルクが目標エンジントルクTETとなるように内燃機関120を制御する。
【0075】
上記のように構成される駆動力制御装置11は、変速比制御部15と機関制御部16とにより、プライマリシャフト51の回転数が目標回転数エンジントルク演算部14により求められた最終目標回転数NINTとなり、内燃機関120のエンジントルクが目標回転数エンジントルク演算部14により求められる目標エンジントルクTETとなるように、ベルト式無段変速機110の変速比及び内燃機関120の運転が制御される。この間、内燃機関120の出力軸であるクランクシャフト121の回転数(エンジン回転数)もベルト式無段変速機110の入力軸であるプライマリシャフト51の回転数の変動に伴って変動する。
【0076】
ところで、本実施形態の駆動力制御装置11は、機関制御部16が内燃機関120の最適燃費線を基準として設定される燃費良領域内の動作点で内燃機関120の運転を制御可能である。すなわち、目標回転数エンジントルク演算部14は、内燃機関120の運転状態や車両100の運転状態に応じて、内燃機関120の最適燃費線L(図12参照)を基準として設定される上限Lmaxから下限Lminまでの燃費良領域X(図12参照)内で、適正な動作点として、最終目標回転数NINTと目標エンジントルクTETとを設定し、機関制御部16は、この燃費良領域X内の動作点に応じた最終目標回転数NINTと目標エンジントルクTETとに基づいて内燃機関120の運転を制御することで、運転時における運転者の違和感を抑制しながら単位燃料量で走行できる距離の向上、すなわち燃費の向上を図っている。
【0077】
なおここで、この最適燃費線L(図12参照)は、最も燃費良く内燃機関120を運転できるエンジントルクと、エンジン回転数との関係を表すものである。ここで燃費とは、単位仕事量あたりの燃料消費量をいう。つまり、最適燃費線Lは、内燃機関120を搭載した車両100が単位燃料量で走行できる距離を優先して内燃機関120を運転できるエンジン回転数とエンジントルクとに基づいて設定され、内燃機関120の出力特性に応じて定まる。そして、最適燃費線Lを基準として設定される上限Lmaxから下限Lminまでの燃費良領域X(図12参照)は、最適燃費線Lに対して、走行できる距離の低下、すなわち、燃費の低下が予め設定される所定範囲(第3所定範囲)内の領域として設定される。この所定範囲(第3所定範囲)は、運転時における運転者の違和感の抑制と、燃費低下の抑制とを勘案して、これらを両立できる範囲に応じて適宜設定されればよい。ここでは、燃費良領域Xは、所定範囲(第3所定範囲)として、最適燃費線Lに対する燃費低下が、例えば1%以内の領域に設定される。この程度であれば、燃費低下が問題となることはないが、これに限らない。
【0078】
そして、本実施形態の駆動力制御装置11は、内燃機関120に対して運転者が要求する要求出力に対応した操作量としてのアクセル開度PAPが変化しこの要求出力が変化した際に、動作点判定部17により変化後の要求出力を現在の変速比にて実現可能な内燃機関120の動作点が燃費良領域X(図12参照)内にあると判定された場合には、変速比制御部15により現在のベルト式無段変速機110の変速比を保持し、機関制御部16により内燃機関120が発生させるエンジントルクが要求出力を実現可能なエンジントルクとなるように内燃機関120の運転を制御する。
【0079】
言い換えれば、目標回転数エンジントルク演算部14は、現在のベルト式無段変速機110の変速比、すなわち、最終目標回転数NINTを保持し、かつ、この最終目標回転数NINTで要求出力を実現可能なような目標エンジントルクTETを求め、機関制御部16は、目標エンジントルクTETに基づいて内燃機関120の運転を制御する。
【0080】
これにより、例えば、運転者がアクセルを踏み込んで車両100を加速させる際に、加速度をコントロールするために運転者がアクセルを微調整し、これによりアクセル開度が変化して要求出力が変化した場合であっても、現在のベルト式無段変速機110の変速比、言い換えれば、最終目標回転数NINTを保持して機関制御部16により内燃機関120が発生させるエンジントルクを変化させて要求出力を実現することで、必要以上の変速を抑制することができ、この結果、内燃機関120の出力軸であるクランクシャフト121の回転数、すなわち、エンジン回転数の変動を抑制することができる。ここで、実験等により、内燃機関120のエンジン回転数は、車両100から運転者に与える加速感に関係があるという知見が得られている。このため、上記のように、加速度をコントロールするために運転者がアクセルを微調整し、これによりアクセル開度が変化して要求出力が変化した際に必要以上の変速を抑制しエンジン回転数の変動を抑制することで、運転時の運転者の違和感を抑制することができる。そして、この間、内燃機関120の動作点は、最適燃費線Lからずれるものの燃費良領域X内におさまっていることから、燃費低下を抑制することができる。この結果、運転者の違和感を抑制しながら単位燃料量で走行できる距離を向上することができる。
【0081】
さらに言えば、例えば、運転者によるアクセルの微調整によりアクセル開度が減少側に変化した際には、変速が抑制されエンジン回転数の変動が抑制されることで、全般的には運転者が加速を要求しているにもかかわらず、エンジン回転数が低下することを抑制することができ、この結果、運転時の運転者の違和感を抑制することができる。一方、例えば、運転者によるアクセルの微調整によりアクセル開度が増加側に変化した際には、変速が抑制されエンジン回転数の変動が抑制されることで、イナーシャトルクを抑制することができ、この結果、駆動力増加の応答性を向上することができる。
【0082】
なお、駆動力制御装置11は、アクセル開度が変化しこの要求出力が変化した際に、動作点判定部17により変化後の要求出力を現在の変速比にて実現可能な内燃機関120の動作点が燃費良領域X(図12参照)の外にあると判定された場合には、通常どおり変速比制御部15によりベルト式無段変速機110の変速比を制御し、機関制御部16により内燃機関120の動作点が最適燃費線L上になるように内燃機関120の運転を制御すればよい。
【0083】
またここでは、本実施形態の駆動力制御装置11は、内燃機関120に対して運転者が要求する要求出力に対応したアクセル開度が変化しこの要求出力が変化した際に、動作点判定部17によりこの変化後の要求出力を実現可能な内燃機関120の動作点が燃費良領域X(図12参照)内にあると判定され、かつ、この要求出力を実現可能な変速比の変化幅、言い換えれば、最終目標回転数NINTの変化量が予め設定される所定範囲(第2所定範囲)以内であると判定された場合には、変速比制御部15によりベルト式無段変速機110の変速比を制御し、機関制御部16により内燃機関120の動作点が最適燃費線L上になるように内燃機関120の運転を制御する。
【0084】
言い換えれば、目標回転数エンジントルク演算部14は、内燃機関120の動作点が最適燃費線L上になるような最終目標回転数NINTと目標エンジントルクTETとを求め、変速比制御部15と機関制御部16とは、この最終目標回転数NINTと目標エンジントルクTETとに基づいてベルト式無段変速機110の変速比及び内燃機関120の運転を制御する。
【0085】
これにより、要求出力を実現可能な変速比の変化幅、言い換えれば、最終目標回転数NINTの変化量が小さい場合には、エンジン回転数の変動による運転者の違和感はほとんど発生せず無視できるので、変速比制御部15によりベルト式無段変速機110の変速比を制御し、機関制御部16により内燃機関120の動作点が最適燃費線L上になるように内燃機関120の運転を制御することで、運転者の違和感を抑制しながら単位燃料量で走行できる距離を向上することができる。なお、要求出力を実現可能な変速比の変化幅、言い換えれば、最終目標回転数NINTの変化量に対して設定される所定範囲(第2所定範囲)は、運転者が変速を感じない範囲に応じて適宜設定されればよい。
【0086】
一方、本実施形態の駆動力制御装置11は、動作点判定部17により内燃機関120の動作点が燃費良領域X内の最適燃費線Lからずれた位置にあると判定される運転状態で、かつ、定常運転判定部18によりこの運転状態が定常的であると判定された際に、変速比制御部15により変速速度設定部19が設定する変速速度を通常よりも低下させてベルト式無段変速機110の変速比を制御し、機関制御部16により内燃機関120の動作点が最適燃費線L上になるように内燃機関120の運転を制御する。
【0087】
言い換えれば、目標回転数エンジントルク演算部14は、変速速度を通常よりも低下させてベルト式無段変速機110の変速比を制御可能で、かつ、内燃機関120の動作点が最適燃費線L上になるような最終目標回転数NINTと目標エンジントルクTETとを求め、変速比制御部15と機関制御部16とは、この最終目標回転数NINTと目標エンジントルクTETとに基づいてベルト式無段変速機110の変速比及び内燃機関120の運転を制御する。
【0088】
これにより、例えば、上記のように、アクセル開度が変化することにより要求出力が変化した場合に運転時における運転者の違和感の抑制を優先させて、内燃機関120の動作点が燃費良領域X内の最適燃費線Lからずれた位置にある運転状態が定常的になった際に、駆動力制御装置11は、機関制御部16により最終目標回転数NINTと目標エンジントルクTETとに基づいて内燃機関120の動作点が最適燃費線L上になるように内燃機関120の運転を制御することで、燃費低下を抑制することができ、結果的に、単位燃料量で走行できる距離を向上することができる。そして、この間、駆動力制御装置11は、変速比制御部15により最終目標回転数NINTに基づいて、運転者が変速を感じない程度まで変速速度を低下させ、例えば通常の5分の1程度の変速速度でベルト式無段変速機110の変速比を制御することで、エンジン回転数の変動による運転者の違和感を抑制することができる。この結果、運転者の違和感を抑制しながら単位燃料量で走行できる距離を向上することができる。
【0089】
具体的には、目標回転数エンジントルク演算部14は、例えば、アクセル開度センサD04により検出される現在のアクセル開度、すなわち、実アクセル開度PAPと、車速センサD03により検出される車速SPDとに基づいて通常目標駆動力FORCE_Nを算出する。目標回転数エンジントルク演算部14は、例えば、図7に示す通常目標駆動力マップm01に基づいてFORCE_Nを求める。この通常目標駆動力マップm01は、縦軸がFORCE_N、横軸が車速SPDを示す。通常目標駆動力マップm01は、各アクセル開度PAPにおける車速SPDとFORCE_Nとの関係を記述したものである。この通常目標駆動力マップm01では、FORCE_Nは、車速SPDの増加にともなって減少し、アクセル開度PAPの増加にともなって増加する。通常目標駆動力マップm01は、記憶部Emに格納されている。目標回転数エンジントルク演算部14は、この通常目標駆動力マップm01に基づいて、実アクセル開度PAPと車速SPDとからFORCE_Nを求める。
【0090】
なお、本実施形態では、目標回転数エンジントルク演算部14は、通常目標駆動力マップm01を用いてFORCE_Nを求めたが、本実施形態はこれに限定されない。目標回転数エンジントルク演算部14は、例えば、通常目標駆動力マップm01に相当する数式に基づいてFORCE_Nを求めてもよい。
【0091】
そして、目標回転数エンジントルク演算部14は、FORCE_Nに基づいて通常目標出力POWER_Nを求める。さらに言えば、目標回転数エンジントルク演算部14は、上述のFORCE_Nと車速センサD03により検出される車速SPDとに基づいて通常目標出力POWER_Nを求める。目標回転数エンジントルク演算部14は、例えば、FORCE_Nと車速SPDと1000/3600とを乗算して通常目標出力POWER_Nを求める。
【0092】
そして、目標回転数エンジントルク演算部14は、通常目標出力POWER_Nに基づいて通常目標回転数NIN_Nを求める。目標回転数エンジントルク演算部14は、例えば、図8に示す通常目標回転数マップm02に基づいて通常目標回転数NIN_Nを求める。この通常目標回転数マップm02は、縦軸が通常目標回転数NIN_N、横軸が通常目標出力POWER_Nを示す。ここでは、通常目標回転数マップm02は、例えば、内燃機関120から取り出されるエンジントルクと、内燃機関120のエンジン回転数とに基づく最適燃費線によって導き出される。通常目標回転数マップm02は、各通常目標出力POWER_Nと通常目標回転数NIN_Nとの関係を記述したものである。この通常目標回転数マップm02では、通常目標回転数NIN_Nは、通常目標出力POWER_Nの増加にともなって増加する。通常目標回転数マップm02は、記憶部Emに格納されている。目標回転数エンジントルク演算部14は、この通常目標回転数マップm02に基づいて、通常目標出力POWER_Nから通常目標回転数NIN_Nを求める。
【0093】
なお、本実施形態では、目標回転数エンジントルク演算部14は、通常目標回転数マップm02を用いて通常目標回転数NIN_Nを求めたが、本実施形態はこれに限定されない。目標回転数エンジントルク演算部14は、例えば、通常目標回転数マップm02に相当する数式に基づいて通常目標回転数NIN_Nを求めてもよい。
【0094】
上記のようにして目標回転数エンジントルク演算部14は、実アクセル開度PAPと車速SPDとに基づいて通常目標回転数NIN_Nを求めることができる。
【0095】
動作点判定部17は、目標回転数エンジントルク演算部14により設定される内燃機関120の動作点が燃費良領域X内にあるか否かを判定する。動作点判定部17は、例えば、プライマリシャフト回転数センサD01から取得されるプライマリシャフト51の実際の回転数(実際のにエンジン回転数に相当)である実入力回転数NINに基づいて、燃費良領域Xの上限Lmax(図12参照)に応じた出力である燃費良領域上限出力Pmaxと、燃費良領域Xの下限Lmin(図12参照)に応じた出力である燃費良領域下限出力Pminとを求める。動作点判定部17は、例えば、図9に示す燃費良領域出力マップm03に基づいて燃費良領域上限出力Pmax、燃費良領域下限出力Pminを求める。この燃費良領域出力マップm03は、縦軸が燃費良領域出力、横軸がプライマリシャフト51の回転数、言い換えれば、エンジン回転数を示す。燃費良領域出力マップm03は、各プライマリシャフト51の回転数NIN(エンジン回転数)と燃費良領域上限出力Pmax及び燃費良領域下限出力Pminとの関係を記述したものである。つまり、この燃費良領域出力マップm03は、所定のプライマリシャフト51の回転数NIN(エンジン回転数)に対して燃費良領域X内でエンジントルクを変動させることで実現できる出力の範囲を示している。この燃費良領域出力マップm03では、燃費良領域上限出力Pmax及び燃費良領域下限出力Pminは、プライマリシャフト51の回転数NIN(エンジン回転数)の増加にともなって増加する。燃費良領域出力マップm03は、記憶部Emに格納されている。動作点判定部17は、この燃費良領域出力マップm03に基づいて、実入力回転数NINから燃費良領域上限出力Pmax及び燃費良領域下限出力Pminを求める。つまり、ここで求められる燃費良領域上限出力Pmax及び燃費良領域下限出力Pminは、現在の実入力回転数NINを変えずに、すなわち、変速せずに、エンジントルクを変動させることで実現可能な出力の範囲を示している。
【0096】
なお、本実施形態では、動作点判定部17は、燃費良領域出力マップm03を用いて燃費良領域上限出力Pmax及び燃費良領域下限出力Pminを求めたが、本実施形態はこれに限定されない。動作点判定部17は、例えば、燃費良領域出力マップm03に相当する数式に基づいて燃費良領域上限出力Pmax及び燃費良領域下限出力Pminを求めてもよい。
【0097】
そして、動作点判定部17は、目標回転数エンジントルク演算部14が求めた通常目標出力POWER_Nが燃費良領域下限出力Pmin以上燃費良領域上限出力Pmax以下であるか否かを判定することで、目標回転数エンジントルク演算部14により設定される内燃機関120の動作点が燃費良領域X内にあるか否かを判定することができる。つまり、動作点判定部17は、現在のベルト式無段変速機110の変速比、言い換えれば、最終目標回転数NINTを保持して現在の実入力回転数NINを変えずに、機関制御部16により内燃機関120が発生させるエンジントルクを変化させることで、目標回転数エンジントルク演算部14が求めた通常目標出力POWER_Nを実現可能であるか否かを判定する。
【0098】
そして、目標回転数エンジントルク演算部14は、動作点判定部17により通常目標出力POWER_Nが燃費良領域下限出力Pmin以上燃費良領域上限出力Pmax以下の範囲にないと判定された場合、つまり、前回の最終目標回転数NINTを保持して現在の実入力回転数NINを変えずに通常目標出力POWER_Nを実現可能なエンジントルクが燃費良領域Xから外れてしまうと判定された場合(動作点が燃費良領域Xから外れてしまうと判定された場合)、通常目標回転数NIN_Nを最終目標回転数NINTに設定する。この結果、変速比制御部15によりベルト式無段変速機110の変速比が制御され、変速が実行される。
【0099】
一方、目標回転数エンジントルク演算部14は、動作点判定部17により通常目標出力POWER_Nが燃費良領域下限出力Pmin以上燃費良領域上限出力Pmax以下の範囲にあると判定された場合、つまり、前回の最終目標回転数NINTを保持して現在の実入力回転数NINを変えずに通常目標出力POWER_Nを実現可能なエンジントルクが燃費良領域X内に収まると判定された場合(動作点が燃費良領域X内に収まると判定された場合)、基本的には、前回の最終目標回転数NINTをそのまま今回の最終目標回転数NINTに設定する。この結果、変速比制御部15によりベルト式無段変速機110の変速比が保持され、変速は実行されない。
【0100】
そして、目標回転数エンジントルク演算部14は、通常目標出力POWER_Nと、最終目標回転数NINTに基づいて目標エンジントルクTETを求める。目標回転数エンジントルク演算部14は、例えば、通常目標出力POWER_Nを最終目標回転数NINTで除算したものに単位換算定数K(例えば、K=60000/(2π))を乗算することにより、最終目標回転数NINTで通常目標出力POWER_Nを実現できる目標エンジントルクTETを求めることができる。
【0101】
そして、変速比制御部15と機関制御部16は、プライマリシャフト51の回転数が目標回転数エンジントルク演算部14により求められた最終目標回転数NINTとなり、内燃機関120のエンジントルクが目標回転数エンジントルク演算部14により求められる目標エンジントルクTETとなるように、ベルト式無段変速機110の変速比及び内燃機関120の運転を制御する。
【0102】
ここで、定常運転判定部18は、動作点判定部17により通常目標出力POWER_Nが燃費良領域下限出力Pmin以上燃費良領域上限出力Pmax以下の範囲にあると判定された場合に、内燃機関120の運転状態が定常的であるか否かを判定する。定常運転判定部18は、内燃機関120に対して運転者が要求する要求出力に対応した操作量としてのアクセル開度PAPの変化量DPAPが予め設定された所定範囲(第1所定範囲)内で予め設定される所定期間継続した際に、内燃機関120の運転状態が定常的であると判定すればよい。これにより、定常運転判定部18は、適正に内燃機関120の定常的な運転状態を判定することができる。
【0103】
なお、アクセル開度PAPの変化量に対して設定される所定範囲(第1所定範囲)は、内燃機関120の定常的な運転を判定できる範囲であればよく、一般的なアクセル操作の傾向などから予め実験等より適宜導き出し予め設定しておけばよい。また、アクセル開度PAPの変化量が所定範囲内で継続する期間に対して設定される所定期間も、同様に、内燃機関120の定常的な運転を判定できる期間であればよく、一般的なアクセル操作の傾向などから予め実験等より適宜導き出し予め設定しておけばよい。ここでは、アクセル開度PAPの変化量に対して設定される所定範囲(第1所定範囲)は、例えば、±3%以内、アクセル開度PAPの変化量が所定範囲内で継続する期間に対して設定される所定期間は、例えば、1秒間に設定される。
【0104】
そして、定常運転判定部18により内燃機関120の運転状態が定常的でないと判定された場合には、目標回転数エンジントルク演算部14は、上述のように前回の最終目標回転数NINTをそのまま今回の最終目標回転数NINTに設定する。
【0105】
一方、アクセル開度PAPの変化量DPAPが予め設定された所定範囲(第1所定範囲)内で予め設定される所定期間継続し、定常運転判定部18により内燃機関120の運転状態が定常的であると判定された場合には、変速速度設定部19は、通常よりも低下させた変速速度を設定する。
【0106】
変速速度設定部19は、低下させる分の変速速度に応じた変速速度低下分回転数DNINを求める。変速速度設定部19は、例えば、目標回転数エンジントルク演算部14が求めた今回の通常目標回転数NIN_N(i)と前回の最終目標回転数NINT(i−1)との目標回転数偏差に基づいて変速速度低下分回転数DNINを求める。変速速度設定部19は、例えば、図10に示す変速速度低下分回転数マップm04に基づいて変速速度低下分回転数DNINを求める。この変速速度低下分回転数マップm04は、縦軸が変速速度低下分回転数DNIN、横軸が通常目標回転数NIN_N(i)と前回の最終目標回転数NINT(i−1)との目標回転数偏差を示す。変速速度低下分回転数マップm04は、各目標回転数偏差と変速速度低下分回転数DNINとの関係を記述したものである。この変速速度低下分回転数マップm04では、変速速度低下分回転数DNINは、目標回転数偏差が正の値であれば負の値となり、目標回転数偏差が負の値であれば正の値となる。変速速度低下分回転数マップm04は、記憶部Emに格納されている。変速速度設定部19は、この変速速度低下分回転数マップm04に基づいて、目標回転数偏差から変速速度低下分回転数DNINを求める。
【0107】
なお、本実施形態では、変速速度設定部19は、変速速度低下分回転数マップm04を用いて変速速度低下分回転数DNINを求めたが、本実施形態はこれに限定されない。変速速度設定部19は、例えば、変速速度低下分回転数マップm04に相当する数式に基づいて変速速度低下分回転数DNINを求めてもよい。
【0108】
そして、目標回転数エンジントルク演算部14は、前回の最終目標回転数NINT(i−1)に変速速度低下分回転数DNINを加算することで、変速速度を通常よりも低下させた場合の最終目標回転数NINT(i)を求めることができる。そして、目標回転数エンジントルク演算部14は、ここで求めた最終目標回転数NINT(i)と通常目標回転数NIN_Nとの偏差が所定値以下になった場合に、通常目標回転数NIN_Nを最終目標回転数NINTに設定することで、変速速度を通常よりも低下させつつ最終的に最適燃費線に応じた通常目標回転数NIN_Nを最終目標回転数NINTに設定することができ、また、内燃機関120の動作点が最適燃費線L上になるような目標エンジントルクTETを求めることができる。
【0109】
ここで、図11のタイムチャート及び図12の線図を参照して、本実施形態に係る駆動力制御装置11における動作を説明する。なお、図11では、縦軸をアクセル開度、要求出力、目標回転数及びエンジントルクとし、横軸を時間軸としている。図12は、本実施形態に係る駆動力制御装置11が制御する内燃機関120の動作特性を示す図であり、縦軸をエンジントルクとし、横軸をエンジン回転数としている。また、内燃機関120の動作特性を太い実線、最適燃費線L、燃費良領域上限Lmax、燃費良領域下限Lmin及び等出力線P1、P2、P3を細い実線、WOT(Wide Open Throttle)のときのトルクを点線で示している。なお、WOTは、内燃機関120の電子スロットル弁を境に、吸気流れの上流側の空気圧と、吸気流れの下流側の空気圧との比が1に近い状態を示す。 そして、図12における点A、B、C、D、Eは、それぞれ図11における点A、B、C、D、Eに対応している。
【0110】
時刻t11(点Aに対応)にて、運転者によりアクセルが踏み込まれアクセル開度PAPが増加し要求出力が増加すると、内燃機関120の動作点が最適燃費線L上になるまでエンジン回転数(実入力回転数NIN)は変動せずエンジントルクTEが上昇する。エンジントルクTEが上昇し、時刻t12(点Bに対応)にて、内燃機関120の動作点が最適燃費線L上に至ると最終目標回転数NINTも増加を始め、時刻t13を過ぎて時刻t14(点Cに対応)までアクセル開度PAPが増加しつづけ要求出力が増加しつづけると、これに伴って内燃機関120の動作点が最適燃費線L上を推移するようにエンジントルクと、エンジン回転数が上昇し、時刻t14にて、アクセルが一定に保持されるとアクセル開度PAP、要求出力も一定に維持され、エンジントルクTE、エンジン回転数も一定に維持される。この間、内燃機関120の動作点は、最適燃費線L上を推移する。
【0111】
そして、時刻t15(点Cに対応)から時刻t16(点Dに対応)まで、例えば、加速度をコントロールするために運転者がアクセルを減少側に微調整し、これによりアクセル開度も減少側に変化して要求出力が低下したとする。このとき、図中一点鎖線で示すように従来の場合は、例えば、従来の最終目標回転数NINT’が低下され、すなわち、変速されることでエンジン回転数を低下させ内燃機関120の動作点を最適燃費線L上で推移させる。このときエンジントルクTE’は一定で維持される。
【0112】
しかしながら、本実施形態の駆動力制御装置11は、低下した要求出力を実現可能な内燃機関120の動作点が燃費良領域X内にある場合には、最終目標回転数NINTがそのまま維持され、すなわち、変速比が保持され、かつ、この最終目標回転数NINTで低下した要求出力を実現可能なような目標エンジントルクTETが設定される。そして、これに伴って時刻t16(点Dに対応)までエンジントルクTEが低下する一方、エンジン回転数(実入力回転数NIN)は変動せず一定に維持される。これにより、必要以上の変速を抑制することができ、この結果、内燃機関120の出力軸であるクランクシャフト121の回転数、すなわち、エンジン回転数の変動を抑制することができる。この間、内燃機関120の動作点は、最適燃費線Lからずれるものの燃費良領域X内におさまっていることから、燃費低下を抑制することができる。この結果、運転者の違和感を抑制しながら単位燃料量で走行できる距離を向上することができる。
【0113】
一方、時刻t16にて、再びアクセルが一定に保持されアクセル開度PAP、要求出力も一定に維持され、エンジントルクTE、エンジン回転数も一定に維持され、この運転状態、すなわち、内燃機関120の動作点が燃費良領域X内にて最適燃費線Lからずれた位置にある運転状態で所定期間が経過し、時刻t17にて、この運転状態が定常的であると判定されると、時刻t18(点Eに対応)まで最終目標回転数NINTが通常よりも小さな勾配で低下し、この結果、通常よりも低下した変速速度で変速が実行される。これに伴って、内燃機関120の動作点が最適燃費線L上に移動するようにエンジン回転数(実入力回転数NIN)が低下する一方、エンジントルクTEが上昇する。この結果、内燃機関120の動作点は、再び最適燃費線L上を推移するようになる。これにより、運転者が変速を感じない程度まで変速速度を低下させて変速比を制御すると共に内燃機関120の動作点が最適燃費線L上に移動するように制御することで、運転者の違和感を抑制しながら単位燃料量で走行できる距離を向上することができる。また、このとき、時刻t17における点Dから時刻t18における点Eまでの変速は、燃費良領域X内での変速に過ぎず、この間のエンジン回転数の変化量Δは、相対的に少なくてすむことから変速速度を低下させていても得に問題は無い。
【0114】
なお、以上の説明では、時刻t15(点Cに対応)から時刻t16(点Dに対応)にて、加速度をコントロールするために運転者がアクセルを減少側に微調整し、これによりアクセル開度も減少側に変化して要求出力が低下した場合で説明したが、加速度をコントロールするために運転者がアクセルを増加側に微調整し、これによりアクセル開度も増加側に変化して要求出力が増加した場合でもほぼ同様の動作となるので、その説明は省略する。
【0115】
次に、図13のフローチャートを参照して、本実施形態に係る駆動力制御装置11における変速制御を説明する。なお、この制御ルーチンは、数msないし数十ms毎の制御周期で繰り返し実行される。
【0116】
まず、ECU10の情報取得部12は、車速センサD03から車速SPDを取得し、アクセル開度センサD04からアクセル開度PAPを取得する。なお、情報取得部12は、先に車速SPDを取得し、次にアクセル開度PAPを取得してもよいし、先にアクセル開度PAPを取得し、次に車速SPDを取得してもよい。そして、ECU10の目標回転数エンジントルク演算部14は、アクセル開度PAPと車速SPDとに基づいてFORCE_Nを求める(S100)。目標回転数エンジントルク演算部14は、例えば、図7に示す通常目標駆動力マップm01に基づいて、実アクセル開度PAPと車速SPDとからFORCE_Nを求める。
【0117】
次に、目標回転数エンジントルク演算部14は、FORCE_Nに基づいて通常目標出力POWER_Nを求める(S102)。目標回転数エンジントルク演算部14は、例えば、FORCE_Nと車速SPDと1000/3600とを乗算して通常目標出力POWER_Nを求める。
【0118】
次に、目標回転数エンジントルク演算部14は、通常目標出力POWER_Nに基づいて通常目標回転数NIN_Nを求める(S104)。目標回転数エンジントルク演算部14は、例えば、図8に示す通常目標回転数マップm02に基づいて、通常目標出力POWER_Nから通常目標回転数NIN_Nを求める。
【0119】
次に、ECU10の動作点判定部17は、プライマリシャフト回転数センサD01から取得されるプライマリシャフト51の実際の回転数(実際のエンジン回転数に相当)である実入力回転数NINに基づいて、燃費良領域上限出力Pmaxを求める(S106)。動作点判定部17は、例えば、図9に示す燃費良領域出力マップm03に基づいて、実入力回転数NINから燃費良領域上限出力Pmaxを求める。
【0120】
次に、ECU10の動作点判定部17は、実入力回転数NINに基づいて、燃費良領域下限出力Pminを求める(S108)。動作点判定部17は、例えば、図9に示す燃費良領域出力マップm03に基づいて、実入力回転数NINから燃費良領域下限出力Pminを求める。
【0121】
次に、ECU10の動作点判定部17は、S102にて目標回転数エンジントルク演算部14が求めた通常目標出力POWER_Nが、S106、S108にて求めた燃費良領域下限出力Pmin以上燃費良領域上限出力Pmax以下であるか否かを判定する(S110)。
【0122】
通常目標出力POWER_Nが燃費良領域下限出力Pmin以上燃費良領域上限出力Pmax以下の範囲にないと判定された場合(S110:No)、目標回転数エンジントルク演算部14は、S104で求めた通常目標回転数NIN_Nを今回の最終目標回転数NINT(i)に代入(設定)する(S136)。そして、目標回転数エンジントルク演算部14は、S136で求められた最終目標回転数NINT(i)に基づいて、目標エンジントルクTETを求める(S128)。目標回転数エンジントルク演算部14は、例えば、S102で求められた通常目標出力POWER_Nを最終目標回転数NINTで除算したものに単位換算定数K(例えば、K=60000/(2π))を乗算することにより、目標エンジントルクTETを求める。
【0123】
通常目標出力POWER_Nが燃費良領域下限出力Pmin以上燃費良領域上限出力Pmax以下の範囲にあると判定された場合(S110:Yes)、比較判定部13は、S104で求めた今回の通常目標回転数NIN_N(i)と前回の最終目標回転数NINT(i−1)との偏差の絶対値が所定値A以下であるかを判定する(S112)。なお、この所定値Aは、本発明の第2所定範囲に相当し、運転者が変速を感じない範囲に応じて適宜設定されればよい。
【0124】
通常目標回転数NIN_N(i)と前回の最終目標回転数NINT(i−1)との偏差の絶対値が所定値A以下であると判定された場合(S112:Yes)、目標回転数エンジントルク演算部14は、通常目標回転数NIN_Nを今回の最終目標回転数NINT(i)に代入(設定)する(S136)。
【0125】
通常目標回転数NIN_N(i)と前回の最終目標回転数NINT(i−1)との偏差の絶対値が所定値Aより大きいと判定された場合(S112:No)、定常運転判定部18は、今回のアクセル開度PAP(i)と前回のアクセル開度PAP(i−1)に基づいてのアクセル開度変化量DPAPを求め、アクセル開度変化量DPAPが所定値B以下であるかを判定する(S114)。なお、この所定値Bは、本発明の第1所定範囲に相当し、内燃機関120の定常的な運転を判定できる範囲であればよく、一般的なアクセル操作の傾向などから予め実験等より導き出し適宜設定されればよい。
【0126】
定常運転判定部18は、アクセル開度変化量DPAPが所定値Bより大きいと判定された場合(S114:No)、アクセル開度変化量DPAPが所定値B以下で継続する期間を計測するカウンタT0に0を代入しこのカウンタT0をクリアし(S116)、アクセル開度変化量DPAPが所定値B以下であると判定された場合(S114:Yes)、カウンタT0をインクリメントし、すなわち、カウンタT0に1を加算しカウンタT0+1をカウンタT0に代入する(S118)。そして、定常運転判定部18は、カウンタT0の値が所定値C以上であるか否かを判定する(S120)。なお、この所定値Cは、本発明の所定期間に相当し、内燃機関120の定常的な運転を判定できる範囲であればよく、一般的なアクセル操作の傾向などから予め実験等より導き出し適宜設定されればよい。
【0127】
そして、カウンタT0の値が所定値C以上であると判定された場合(S120:Yes)、すなわち、現在の内燃機関120の運転状態が定常的であると判定された場合には、変速速度設定部19は、今回の通常目標回転数NIN_N(i)と前回の最終目標回転数NINT(i−1)との目標回転数偏差に基づいて変速速度低下分回転数DNINを求める(S122)。変速速度設定部19は、例えば、図10に示す変速速度低下分回転数マップm04に基づいて、今回の通常目標回転数NIN_N(i)と前回の最終目標回転数NINT(i−1)との目標回転数偏差から変速速度低下分回転数DNINを求める。
【0128】
次に、目標回転数エンジントルク演算部14は、前回の最終目標回転数NINT(i−1)と変速速度低下分回転数DNINとを加算し、前回の最終目標回転数NINT(i−1)と変速速度低下分回転数DNINとの合計を今回の最終目標回転数NINT(i)に代入(設定)する(S124)。
【0129】
次に、比較判定部13は、S124で求めた最終目標回転数NINT(i)とS104で求めた通常目標回転数NIN_Nとの偏差が所定値D以下であるか否かを判定する(S126)。なお、この所定値Dは、S124で求めた最終目標回転数NINT(i)がS104で求めた通常目標回転数NIN_Nに収束したか否かを判定できるように適宜設定されればよい。
【0130】
S124で求めた最終目標回転数NINT(i)とS104で求めた通常目標回転数NIN_Nとの偏差が所定値D以下であると判定された場合(S126:Yes)、目標回転数エンジントルク演算部14は、通常目標回転数NIN_Nを今回の最終目標回転数NINT(i)に代入(設定)する(S136)。
【0131】
S124で求めた最終目標回転数NINT(i)とS104で求めた通常目標回転数NIN_Nとの偏差が所定値Dより大きいと判定された場合(S126:No)、目標回転数エンジントルク演算部14は、S124で求められた最終目標回転数NINT(i)に基づいて、目標エンジントルクTETを求める(S128)。
【0132】
S120にて、カウンタT0の値が所定値Cより大きいと判定された場合(S120:No)、すなわち、現在の内燃機関120の運転状態が定常的でないと判定された場合には、目標回転数エンジントルク演算部14は、前回の最終目標回転数NINT(i−1)を今回の最終目標回転数NINT(i)に代入(設定)する(S134)。そして、目標回転数エンジントルク演算部14は、S134で求められた最終目標回転数NINT(i)に基づいて、目標エンジントルクTETを求める(S128)。
【0133】
S128にて、目標エンジントルクTETが求められると、変速比制御部15は、プライマリ可動シーブ摺動機構55及びセカンダリ可動シーブ摺動機構65を制御し、プライマリシャフト51の回転数がS124、S134、S136のいずれかで設定された最終目標回転数NINTとなるようにベルト式無段変速機110の変速比を変更する(S130)。
【0134】
次に、ECU10の機関制御部16は、内燃機関120のインジェクタ、点火プラグ、電子スロットル弁を制御し、内燃機関120のエンジントルクがS128で設定された目標エンジントルクTETとなるように内燃機関120の運転制御を行い(S132)、この変速制御を終了する。
【0135】
以上で説明した本発明の実施形態に係る駆動力制御装置11によれば、内燃機関120のエンジン回転数とこの内燃機関120が発生させるエンジントルクとに応じた内燃機関120の最適燃費線Lを基準として設定される燃費良領域X内の動作点で内燃機関120の運転を制御可能な機関制御部16と、内燃機関120の出力が伝達されるベルト式無段変速機110の変速比を制御可能な変速比制御部15とを備え、内燃機関120の動作点が燃費良領域X内の最適燃費線Lからずれた位置にある運転状態で、かつ、この運転状態が定常的である際に、変速比制御部15は、変速速度を低下させてベルト式無段変速機110の変速比を制御し、機関制御部16は、動作点が最適燃費線L上になるように内燃機関120の運転を制御する。
【0136】
したがって、例えば、内燃機関120の動作点が燃費良領域X内の最適燃費線Lからずれた位置にある運転状態が定常的になった際に、機関制御部16により内燃機関120の動作点が最適燃費線L上になるように内燃機関120の運転を制御することで、燃費低下を抑制することができ、結果的に、単位燃料量で走行できる距離を向上することができる。そして、この間、変速比制御部15により運転者が変速を感じない程度まで変速速度を低下させてベルト式無段変速機110の変速比を制御することで、エンジン回転数の変動による運転者の違和感を抑制することができる。この結果、運転者の違和感を抑制しながら単位燃料量で走行できる距離を向上することができる。
【0137】
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係る駆動力制御装置11によれば、内燃機関120に対して運転者が要求する出力に対応した操作量としてのアクセル開度PAPの変化量DPAPが予め設定された第1所定範囲内で予め設定される所定期間継続した際に、内燃機関120の動作点が燃費良領域X内の最適燃費線Lからずれた位置にある運転状態が定常的であると判定する定常運転判定部18を備える。したがって、定常運転判定部18により適正に内燃機関120の定常的な運転状態を判定することができる。
【0138】
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係る駆動力制御装置11によれば、内燃機関120に対して運転者が要求する出力に対応した操作量としてのアクセル開度PAPが変化し要求出力が変化した際に、この変化後の要求出力を現在の変速比にて実現可能な動作点が燃費良領域X内にある場合には、変速比制御部15は、ベルト式無段変速機110の変速比を保持し、機関制御部16は、内燃機関120が発生させるエンジントルクが要求出力を実現可能なエンジントルクとなるように内燃機関120の運転を制御する。したがって、例えば、運転者がアクセルを踏み込んで車両100を加速させる際に、加速度をコントロールするために運転者がアクセルを微調整し、これによりアクセル開度が変化して要求出力が変化した場合であっても、現在のベルト式無段変速機110の変速比を保持して、機関制御部16により内燃機関120が発生させるエンジントルクを変化させて要求出力を実現することで、必要以上の変速を抑制しエンジン回転数の変動を抑制することができ、運転時の運転者の違和感を抑制することができる。そして、この間、内燃機関120の動作点は、最適燃費線Lからずれるものの燃費良領域X内におさまっていることから、燃費低下を抑制することができる。この結果、運転者の違和感を抑制しながら単位燃料量で走行できる距離を向上することができる。
【0139】
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係る駆動力制御装置11によれば、内燃機関120に対して運転者が要求出力に対応した操作量としてのアクセル開度PAPが変化し要求出力が変化した際に、この変化後の要求出力を実現可能な動作点が燃費良領域X内にあり、かつ、この要求出力を実現可能な変速比の変化幅が予め設定される第2所定範囲以内である際には、変速比制御部15は、ベルト式無段変速機110の変速比を制御し、機関制御部16は、動作点が最適燃費線L上になるように内燃機関120の運転を制御する。したがって、要求出力を実現可能な変速比の変化幅が小さい場合には、エンジン回転数の変動による運転者の違和感はほとんど発生せず無視できるので、変速比制御部15によりベルト式無段変速機110の変速比を制御し、機関制御部16により内燃機関120の動作点が最適燃費線L上になるように内燃機関120の運転を制御することで、運転者の違和感を抑制しながら単位燃料量で走行できる距離を向上することができる。
【0140】
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係る駆動力制御装置11によれば、燃費良領域Xは、内燃機関120を搭載した車両100が単位燃料量で走行できる距離を優先して内燃機関120を運転できるエンジン回転数とエンジントルクとに基づいて設定される最適燃費線Lに対して、走行できる距離の低下が予め設定される第3所定範囲内の領域として設定される。したがって、機関制御部16によりこの燃費良領域X内の動作点で内燃機関120を制御することで、運転時における運転者の違和感の抑制と、燃費低下の抑制とを両立することができる。
【0141】
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係る駆動力制御装置11によれば、内燃機関120に対して運転者が要求する出力に対応したアクセル開度PAPを検出するアクセル開度センサD04を備える。したがって、アクセル開度センサD04によりアクセル開度PAPを検出することで、運転者が要求する出力に対応した操作量を適正に検出することができる。
【0142】
(実施形態2)
図14は、実施形態2に係る駆動力制御装置における初期目標回転数を求めるための初期目標回転数マップ、図15は、実施形態2に係る駆動力制御装置におけるアクセル開度補正量を求めるためのアクセル開度補正量マップ、図16は、実施形態2に係る駆動力制御装置における車速係数を求めるための車速係数マップ、図17は、実施形態2に係る駆動力制御装置における加速用目標駆動力を求めるための加速用目標駆動力マップである。
【0143】
また、図18は、実施形態2に係る駆動力制御装置の動作を説明するタイムチャート、図19は、実施形態2に係る駆動力制御装置の動作を説明する線図、図20は、実施形態2に係る駆動力制御装置における変速制御を説明するフローチャート、図21は、実施形態2に係る駆動力制御装置における通常制御用処理を説明するフローチャート、図22は、実施形態2に係る駆動力制御装置における加速制御用処理を説明するフローチャート、図23は、実施形態2に係る駆動力制御装置におけるアクセル開度補正量算出処理を説明するフローチャート、図24は、本実施形態に係る駆動力制御装置における車速変化補正量算出処理を説明するフローチャート、図25は、本実施形態に係る駆動力制御装置における最終目標回転数目標エンジントルク算出用出力算出処理を説明するフローチャートである。
【0144】
実施形態2に係る駆動力制御装置は、実施形態1に係る無段変速機及び駆動力制御装置と略同様の構成であるが、実施形態1で説明した通常制御用処理に加えて加速制御用処理を行う点で実施形態1に係る駆動力制御装置とは異なる。その他、上述した実施形態と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、同一の符号を付す。また、主要部分の構成については図1乃至図10を参照する。
【0145】
目標回転数エンジントルク演算部14は、上述した実施形態1と同様に、内燃機関120の運転状態や車両100の運転状態に応じて、内燃機関120の動作点、すなわち、最終目標回転数NINTと目標エンジントルクTETとを求める。ここでは、目標回転数エンジントルク演算部14は、上述のように通常目標回転数NIN_Nを求めると共に、さらに、加速用目標回転数NIN_Aを求める。そして、目標回転数エンジントルク演算部14は、基本的には、運転者により車両100の加速が要求されていない場合の通常運転時には通常目標回転数NIN_Nに基づいて最終目標回転数NINTを設定する一方、運転者により車両100の加速要求がなされている場合の加速要求時には加速用目標回転数NIN_Aに基づいて最終目標回転数NINTを設定する。
【0146】
なお、運転者が車両100の加速を要求したことの判定、すなわち、加速要求の判定は、例えば、比較判定部13がアクセル開度センサD04により検出された現在のアクセル開度、すなわち、実アクセル開度PAP、車速センサD03により検出される車速SPD、単位時間あたりのアクセル開度PAPの変化量、つまりアクセル開速度PAPVなどに基づいて行えばよい。比較判定部13は、例えば、車速SPDと予め設定され加速判定閾値aを比較し、実アクセル開度PAPと予め設定された加速判定閾値bとを比較し、アクセル開速度PAPVと予め設定された加速判定閾値cとを比較して、車速SPDが加速判定閾値a以上、実アクセル開度PAPが加速判定閾値b以上、アクセル開速度PAPVが加速判定閾値c以上と判定した場合に加速要求ありと判定すればよい。また、比較判定部13は、例えば、車速SPDが予め設定された値aよりも低いか、あるいは、アクセル開度PAPが予め設定された値(b−d)よりも低いと判定した場合に加速要求が終了したと判定すればよい。上記加速判定閾値a、b、cおよび所定値dは、平坦路における定常的、あるいは、定常的走行に比較して積極的に加速要求操作が行われたかを判定するために予め実験的に求められたものである。なお、上記加速判定閾値bは、たとえば車速SPDの増加に伴って増加する関数値であって、予め記憶されたマップから実際の車速SPDに基づいて決定される。
【0147】
なお、比較判定部13による加速要求の有無の判定は、上述の方法に限定されない。比較判定部13は、アクセル開度センサD04により検出された実アクセル開度PAPと運転者の加速要求の有無を判断するための加速判定閾値とを比較し、実アクセル開度PAPが加速判定閾値よりも大きいと判定された場合に、運転者による車両100の加速要求ありと判定してもよい。この場合、加速判定閾値は、例えば、アクセル開度PAPが全開である場合を100%とするときの20%程度とすればよい。また、比較判定部13は、例えば、アクセル開速度PAPVに基づいて加速要求の有無を判定してもよい。
【0148】
具体的には、目標回転数エンジントルク演算部14は、実施形態1と同様に、通常目標回転数NIN_Nを算出する。すなわち、目標回転数エンジントルク演算部14は、アクセル開度PAPと、車速SPDとに基づいて通常目標駆動力FORCE_Nを算出し、このFORCE_Nに基づいて通常目標出力POWER_Nを算出し、さらにこの通常目標出力POWER_Nに基づいて通常目標回転数NIN_Nを算出する。なお、目標回転数エンジントルク演算部14、車両100に対する運転者の加速の要求の有無に関わらず通常目標回転数NIN_Nを求める。つまり、目標回転数エンジントルク演算部14は、車両100に対する運転者の加速の要求がない場合、及び車両100に対する運転者の加速の要求がある場合のいずれであっても、通常目標回転数NIN_Nを求める。
【0149】
さらに、目標回転数エンジントルク演算部14は、上述のように運転者により車両100の加速要求がなされている場合の加速要求時のプライマリシャフト51の回転数の目標である加速用目標回転数NIN_Aを求める。目標回転数エンジントルク演算部14は、車両100の加速が要求された場合に、加速用目標回転数NIN_Aを求める。
【0150】
目標回転数エンジントルク演算部14は、運転者による車両100に対する加速要求量としてのアクセル開度PAPと、車両100の速度である車速SPDとに基づいて、加速用目標回転数NIN_Aを求める。さらに言えば、目標回転数エンジントルク演算部14は、運転者により車両100の加速要求が判定された時点での初期目標回転数NINLINE0と、アクセル開度PAPに応じた加速要求補正量としてのアクセル開度補正量NINPAPと、車速SPDに基づいた車速補正量、ここでは、車速SPDの変化量である車速変化量DSPDに応じた車速変化補正量NINSPDとに基づいて、これらの合計を算出することで、加速用目標回転数NIN_Aを求める。ここで、アクセル開度補正量NINPAPと車速変化補正量NINSPDとは、ともに加速用目標回転数NIN_Aを補正するためのパラメータである。
【0151】
目標回転数エンジントルク演算部14は、加速用目標回転数NIN_Aの基準となる初期目標回転数NINLINE0を求める。初期目標回転数NINLINE0は、加速要求ありと判定されたときの基本目標回転数であり、目標回転数エンジントルク演算部14は、車速SPDに基づいて、この初期目標回転数NINLINE0を求める。目標回転数エンジントルク演算部14は、例えば、図14に示す初期目標回転数マップm05に基づいて初期目標回転数NINLINE0を求める。この初期目標回転数マップm05は、縦軸が初期目標回転数NINLINE0、横軸が車速SPDを示す。初期目標回転数マップm05は、各車速SPDと初期目標回転数NINLINE0との関係を記述したものである。この初期目標回転数マップm05では、初期目標回転数NINLINE0は、車速SPDの増加にともなって増加する。初期目標回転数マップm05は、記憶部Emに格納されている。目標回転数エンジントルク演算部14は、この初期目標回転数マップm05に基づいて、車速SPDから初期目標回転数NINLINE0を求める。
【0152】
なお、本実施形態では、目標回転数エンジントルク演算部14は、初期目標回転数マップm05を用いて初期目標回転数NINLINE0を求めたが、本実施形態はこれに限定されない。目標回転数エンジントルク演算部14は、例えば、初期目標回転数マップm05に相当する数式に基づいて初期目標回転数NINLINE0を求めてもよい。
【0153】
そして、目標回転数エンジントルク演算部14は、車両100の加速要求が判定された後のアクセル開度PAPに基づいて加速要求補正量としてのアクセル開度補正量NINPAPを求める。目標回転数エンジントルク演算部14は、例えば、図15に示すアクセル開度補正量マップm06に基づいてアクセル開度補正量NINPAPを求める。このアクセル開度補正量マップm06は、縦軸がアクセル開度補正量NINPAP、横軸がアクセル開度PAPを示す。アクセル開度補正量マップm06は、各車速SPDにおけるアクセル開度PAPとアクセル開度補正量NINPAPとの関係を記述したものである。このアクセル開度補正量マップm06では、アクセル開度補正量NINPAPは、アクセル開度PAPの増加にともなって増加し、車速SPDの増加にともなって増加する。アクセル開度補正量マップm06は、記憶部Emに格納されている。目標回転数エンジントルク演算部14は、このアクセル開度補正量マップm06に基づいて、アクセル開度PAPと車速SPDとからアクセル開度補正量NINPAPを求める。
【0154】
なお、本実施形態では、目標回転数エンジントルク演算部14は、アクセル開度補正量マップm06を用いてアクセル開度補正量NINPAPを求めたが、本実施形態はこれに限定されない。目標回転数エンジントルク演算部14は、例えば、アクセル開度補正量マップm06に相当する数式に基づいてアクセル開度補正量NINPAPを求めてもよい。
【0155】
目標回転数エンジントルク演算部14は、車速SPD、ここでは、車速SPDの変化量である車速変化量DSPDに基づいて車速補正量としての車速変化補正量NINSPDを求める。目標回転数エンジントルク演算部14は、車速センサD03により検出される現在の車速SPD(i)から前回検出された車速SPD(i−1)を減算することで、車速変化量DSPDを求める。ここでは、目標回転数エンジントルク演算部14は、車速センサD03により検出された前回の車速SPD(i−1)を用いて車速変化量DSPDを求めるものとして説明するが、例えば、検出値のノイズ等を排除するために、車速センサD03により検出された前々回の車速SPDを用いるようにしてもよい。
【0156】
また、目標回転数エンジントルク演算部14は、現在の車速SPDに基づいて車速係数αを求める。目標回転数エンジントルク演算部14は、例えば、図16に示す車速係数マップm07に基づいて車速係数αを求める。この車速係数マップm07は、縦軸が車速係数α、横軸が車速SPDを示す。車速係数マップm07は、各アクセル開度PAPにおける車速SPDと車速係数αとの関係を記述したものである。この車速係数マップm07では、車速係数αは、車速SPDの増加にともなって増加し、アクセル開度PAPの増加にともなって増加する。車速係数マップm07は、記憶部Emに格納されている。目標回転数エンジントルク演算部14は、この車速係数マップm07に基づいて、車速SPDとアクセル開度PAPとから車速係数αを求める。
【0157】
なお、本実施形態では、目標回転数エンジントルク演算部14は、車速係数マップm07を用いて車速係数αを求めたが、本実施形態はこれに限定されない。目標回転数エンジントルク演算部14は、例えば、車速係数マップm07に相当する数式に基づいて車速係数αを求めてもよい。
【0158】
そして、目標回転数エンジントルク演算部14は、車速変化量DSPDに車速係数αを乗算したものに前回の車速変化補正量NINSPD(i−1)を加算することで車速変化補正量NINSPD(i)を求め、これを今回の車速変化補正量NINSPDとする。なお、この車速変化補正量NINSPDの初期値は、0である。
【0159】
したがって、目標回転数エンジントルク演算部14は、初期目標回転数NINLINE0と、アクセル開度補正量NINPAPと、車速変化補正量NINSPDとに基づいて、初期目標回転数NINLINE0とアクセル開度補正量NINPAPと車速変化補正量NINSPDとを加算しこれらの合計を算出することで、加速用目標回転数NIN_Aを求めることができる。
【0160】
そして、目標回転数エンジントルク演算部14は、運転者により車両100の加速要求がなされ、その加速要求量が相対的に高い高加速時には、加速用目標回転数NIN_Aを最終目標回転数NINTに設定する。この結果、変速比制御部15により加速用目標回転数NIN_Aに基づいてベルト式無段変速機110の変速比が制御され、変速が実行される。
【0161】
なお、運転者による車両100の加速要求量が相対的に高い高加速時であるか否かの判定は、例えば、比較判定部13によりアクセル開度センサD04から取得したアクセル開度PAPが所定開度以上か否かに基づいて判定すればよい。すなわち、比較判定部13は、加速要求量としてのアクセル開度PAPが所定開度より低いと判定した場合には、運転者による車両100の加速要求量が相対的に低い低加速時であると判定し、アクセル開度PAPが所定開度以上であると判定した場合には、運転者による車両100の加速要求量が相対的に高い高加速時であると判定すればよい。ここで、アクセル開度PAPに対して予め設定される所定開度は、運転者による車両100の加速要求量が相対的に高い高加速時と、運転者による車両100の加速要求量が相対的に低い低加速時とを区別できる値を適宜設定すればよく、例えば、アクセル開度PAPが全開である場合を100%とするときの50%程度に設定すればよい。
【0162】
また、目標回転数エンジントルク演算部14は、運転者により車両100の加速要求がなされ、その加速要求量が相対的に高い高加速時には、例えば、アクセル開度センサD04により検出される現在のアクセル開度、すなわち、実アクセル開度PAPと、車速センサD03により検出される車速SPDとに基づいて加速用目標駆動力FORCE_Aを算出する。目標回転数エンジントルク演算部14、例えば、図17に示す加速用目標駆動力マップm08に基づいて加速用目標駆動力FORCE_Aを求める。この加速用目標駆動力マップm08は、縦軸が加速用目標駆動力FORCE_A、横軸が車速SPDを示す。加速用目標駆動力マップm08は、各アクセル開度PAPにおける車速SPDと加速用目標駆動力FORCE_Aとの関係を記述したものである。この加速用目標駆動力マップm08では、加速用目標駆動力FORCE_Aは、車速SPDの増加にともなって減少し、アクセル開度PAPの増加にともなって増加する。なお、本図では、破線が通常目標駆動力FORCE_Nを示し、実線が加速用目標駆動力FORCE_Aを示す。すなわち、加速用目標駆動力マップm08では、加速用目標駆動力FORCE_Aが通常目標駆動力FORCE_Nよりも高く設定されている。加速用目標駆動力マップm08は、記憶部Emに格納されている。目標回転数エンジントルク演算部14は、この加速用目標駆動力マップm08に基づいて、実アクセル開度PAPと車速SPDとから加速用目標駆動力FORCE_Aを求める。
【0163】
なお、本実施形態では、目標回転数エンジントルク演算部14は、加速用目標駆動力マップm08を用いて加速用目標駆動力FORCE_Aを求めたが、本実施形態はこれに限定されない。目標回転数エンジントルク演算部14は、例えば、加速用目標駆動力マップm08に相当する数式に基づいて加速用目標駆動力FORCE_Aを求めてもよい。
【0164】
そして、目標回転数エンジントルク演算部14は、加速用目標駆動力FORCE_Aに基づいて加速用目標出力POWER_Aを求める。さらに言えば、目標回転数エンジントルク演算部14は、上述の加速用目標駆動力FORCE_Aと車速センサD03により検出される車速SPDとに基づいて加速用目標出力POWER_Aを求める。目標回転数エンジントルク演算部14は、例えば、加速用目標駆動力FORCE_Aと車速SPDと1000/3600とを乗算して加速用目標出力POWER_Aを求める。
【0165】
そして、目標回転数エンジントルク演算部14は、この加速用目標出力POWER_Aを目標エンジントルク算出用出力POWER_Tに設定し、この目標エンジントルク算出用出力POWER_Tと、最終目標回転数NINT、すなわち、加速用目標回転数NIN_Aに基づいて目標エンジントルクTETを求める。目標回転数エンジントルク演算部14は、例えば、目標エンジントルク算出用出力POWER_Tを最終目標回転数NINTで除算したものに単位換算定数K(例えば、K=60000/(2π))を乗算することにより、最終目標回転数NINTで加速用目標出力POWER_Aを実現できる目標エンジントルクTETを求めることができる。
【0166】
そして、変速比制御部15と機関制御部16は、プライマリシャフト51の回転数が目標回転数エンジントルク演算部14により求められた最終目標回転数NINTとなり、内燃機関120のエンジントルクが目標回転数エンジントルク演算部14により求められる目標エンジントルクTETとなるように、ベルト式無段変速機110の変速比及び内燃機関120の運転を制御する。
【0167】
上記のように構成される駆動力制御装置11は、運転者により車両100の加速が要求されていない場合の通常運転時には、目標回転数エンジントルク演算部14により求められた通常目標回転数NIN_Nが最終目標回転数NINTに設定され、この最終目標回転数NINT、すなわち、通常目標回転数NIN_Nに基づいて目標エンジントルクTETが設定される。そして、駆動力制御装置11は、変速比制御部15と機関制御部16とにより、プライマリシャフト51の回転数が最終目標回転数NINTとなり、内燃機関120のエンジントルクが目標エンジントルクTETとなるように、ベルト式無段変速機110の変速比及び内燃機関120の運転が制御される。この間、内燃機関120の出力軸であるクランクシャフト121の回転数(エンジン回転数)もベルト式無段変速機110の入力軸であるプライマリシャフト51の回転数の変動に伴って変動する。
【0168】
そして、駆動力制御装置11は、運転者により車両100の加速要求がなされ、その加速要求量が相対的に高い高加速時には、目標回転数エンジントルク演算部14により求められた加速用目標回転数NIN_Aが最終目標回転数NINTに設定され、この最終目標回転数NINT、すなわち、加速用目標回転数NIN_Aに基づいて目標エンジントルクTETが設定される。そして、駆動力制御装置11は、変速比制御部15と機関制御部16とにより、プライマリシャフト51の回転数が加速用目標回転数NIN_Aに応じた最終目標回転数NINTとなり、内燃機関120のエンジントルクが目標エンジントルクTETとなるように、ベルト式無段変速機110の変速比及び内燃機関120の運転が制御される。この間、内燃機関120の出力軸であるクランクシャフト121の回転数(エンジン回転数)もベルト式無段変速機110の入力軸であるプライマリシャフト51の回転数の変動に伴って変動する。
【0169】
このとき、運転者により車両100の加速要求がなされ、その加速要求量が相対的に高い高加速時には、最終目標回転数NINTは、加速要求量としてのアクセル開度PAPに応じたアクセル開度補正量NINPAPと車速SPDに応じた車速変化補正量NINSPDとに基づいた加速用目標回転数NIN_Aが設定されていることから、運転者による加速要求に伴ってアクセル開度補正量NINPAP、車速変化補正量NINSPDが増加することで、この最終目標回転数NINT(加速用目標回転数NIN_A)も所定勾配で増加する。そして、この最終目標回転数NINT(加速用目標回転数NIN_A)の増加に伴って実際のプライマリシャフト51の回転数も最終目標回転数NINT(加速用目標回転数NIN_A)に追従して上昇し、内燃機関120の出力軸であるクランクシャフト121の回転数(エンジン回転数)も上昇する。この結果、運転者が車両100のアクセルを踏み込んだ際、すなわち、加速要求をした際に、内燃機関120のエンジン回転数が上昇する。このため、駆動力制御装置11では、運転者により車両100の加速要求がなされ、その加速要求量が相対的に高い高加速時には、運転者による加速要求に伴ってアクセル開度補正量NINPAP、車速SPDが増加することで、アクセル開度補正量NINPAPと車速SPDとに基づいた加速用目標回転数NIN_Aが所定勾配で増加し最終目標回転数NINTが所定勾配で増加することから、目標エンジントルクTETを達成した上で、運転者は、車両100から十分な加速感を得ることができる。
【0170】
なお、本実施形態の駆動力制御装置11では、運転者により車両100の加速要求がなされ、その加速要求量が相対的に高い高加速時には、目標回転数エンジントルク演算部14が算出用加速要求量としての算出用アクセル開度であるアクセル開度最大値PAPmaxに基づいてアクセル開度補正量NINPAPを求め、このアクセル開度最大値PAPmaxに応じたアクセル開度補正量NINPAPに基づいて加速用目標回転数NIN_Aを求め最終目標回転数NINTに設定することで、加速要求中の運転者の違和感を抑制している。
【0171】
すなわち、例えば、運転者が車両100の車速SPDを微調整するためにアクセルの踏み込みをわずかに緩めると、実際のアクセル開度PAPも徐々に減少する一方、アクセル開度最大値PAPmaxは一定に維持される。このとき、目標回転数エンジントルク演算部14は、アクセル開度最大値PAPmaxに基づいてアクセル開度補正量NINPAPを求めており、実際のアクセル開度PAPが徐々に減少してもこのアクセル開度最大値PAPmaxが一定に維持されていることから、目標回転数エンジントルク演算部14により求められるアクセル開度最大値PAPmaxに基づいたアクセル開度補正量NINPAPも一定に維持される。したがって、加速用目標回転数NIN_A、最終目標回転数NINTもアクセル開度補正量NINPAPが一定に維持されることから実アクセル開度PAPの減少に伴って低下することが抑制される。この結果、加速要求中に微調整するためにアクセルの踏み込みがわずかに緩められ実アクセル開度PAPが徐々に低下した場合であっても、加速用目標回転数NIN_A、最終目標回転数NINTが低下することを抑制することができることから、実際のプライマリシャフト51の回転数が低下することを抑制することができ、内燃機関120のクランクシャフト121の回転数(エンジン回転数)が低下することを抑制することができるので、加速要求中の運転者の違和感を抑制することができる。
【0172】
ここで、目標回転数エンジントルク演算部14は、車両100の加速要求が判定された後、予め設定される所定期間以内にアクセル開度PAPが低下し、この低下したアクセル開度PAPが予め設定される所定範囲内で予め設定される所定期間以上継続した際に、車両100の加速要求が判定された後のアクセル開度PAPの最大値であるアクセル開度最大値PAPmaxを現在のアクセル開度PAPに変更するようにするとよい。これにより、アクセル開度最大値PAPmaxが運転者の意図よりも大きな値に設定されることを防止することができる。この結果、アクセル開度最大値PAPmaxに基づいたアクセル開度補正量NINPAPが過大となることを防止でき、加速用目標回転数NIN_Aが意図せず高い値に設定されることを防止することができるので、加速要求中の運転者の違和感を防止することができる。なお、上記2つの所定期間及び低下したアクセル開度PAPに対して設定される所定範囲は、加速ショックが収束するまでの期間や一般的なアクセル操作の傾向などから予め実験等より適宜導き出し予め設定しておけばよい。
【0173】
一方、本実施形態の駆動力制御装置11は、内燃機関120を搭載した車両100の加速時、さらに言えば、運転者により車両100の加速要求がなされ、その加速要求量が相対的に低い低加速時には、機関制御部16により内燃機関120の動作点が燃費良領域X(図19参照)の上限Lmax上になるように内燃機関120の運転を制御する。
【0174】
言い換えれば、目標回転数エンジントルク演算部14は、内燃機関120の動作点が燃費良領域Xの上限Lmax上になるような最終目標回転数NINTと目標エンジントルクTETとを求め、変速比制御部15と機関制御部16とは、この最終目標回転数NINTと目標エンジントルクTETとに基づいてベルト式無段変速機110の変速比及び内燃機関120の運転を制御する。
【0175】
これにより、運転者により車両100の加速要求がなされ、その加速要求量が相対的に低い低加速時に、内燃機関120の動作点と燃費良領域Xの下限Lminとの間に出力余裕を確保することができる。ここで、運転者により車両100の加速要求がなされた後その加速要求量が相対的に低い低加速時になった場合、一般的には加速度を調節するために、アクセルが戻される傾向がある。このため、運転者により車両100の加速要求がなされその加速要求量が相対的に低い低加速時に、内燃機関120の動作点と燃費良領域Xの下限Lminとの間に出力余裕を確保することで、アクセル開度PAPが徐々に低下し要求出力が低下した際に、現在のベルト式無段変速機110の変速比を保持し、内燃機関120が発生させるエンジントルクを低下させることで、低下した要求出力を実現可能な領域を広く確保することができる。すなわち、アクセル開度PAPが低下しこの要求出力が低下した際に、動作点判定部17により低下後の要求出力を現在の変速比にて実現可能な内燃機関120の動作点が燃費良領域X(図19参照)内にあると判定される領域が広くなる。
【0176】
そして、この駆動力制御装置11は、変速比制御部15により現在のベルト式無段変速機110の変速比を保持し、機関制御部16により内燃機関120が発生させるエンジントルクが要求出力を実現可能なエンジントルクとなるように内燃機関120の運転を制御し、低下した要求出力を実現可能な動作点までエンジントルクを低下させる。この結果、例えば、運転者がアクセルを踏み込んで車両100を加速させる際に、加速度をコントロールするために運転者がアクセルを微調整し、これによりアクセル開度が低下して要求出力が低下した場合であっても、必要以上の変速が抑制されエンジン回転数の低下が抑制されることで、全般的には運転者が加速を要求しているにもかかわらず、エンジン回転数が低下することを抑制することができ、この結果、運転時の運転者の違和感を抑制することができる。
【0177】
具体的には、目標回転数エンジントルク演算部14は、運転者により車両100の加速要求がなされ、その加速要求量が相対的に低い低加速時に、現在のアクセル開度PAPに基づいて現在の実アクセル開度補正量NINPAP_Rを求める。目標回転数エンジントルク演算部14は、例えば、図15と同様のアクセル開度補正量マップm06に基づいて、実アクセル開度PAPと車速SPDとから実アクセル開度補正量NINPAP_Rを求める。
【0178】
そして、目標回転数エンジントルク演算部14は、この実アクセル開度補正量NINPAP_Rに基づいて仮目標回転数NIN_Cを求める。目標回転数エンジントルク演算部14は、初期目標回転数NINLINE0と、車速変化補正量NINSPDと、この実アクセル開度補正量NINPAP_Rに基づいて、初期目標回転数NINLINE0と車速変化補正量NINSPDと実アクセル開度補正量NINPAP_Rとを加算しこれらの合計を算出することで、仮目標回転数NIN_Cを求めることができる。
【0179】
そして、目標回転数エンジントルク演算部14は、この仮目標回転数NIN_Cに基づいて低加速用目標出力POWER_ALを求める。目標回転数エンジントルク演算部14は、例えば、図9と同様の燃費良領域出力マップm03に基づいて、仮目標回転数NIN_Cから燃費良領域上限出力Pmaxに相当する低加速用目標出力POWER_ALを求める。そして、動作点判定部17は、この低加速用目標出力POWER_ALが燃費良領域出力マップm03と現在の実入力回転数NINとに基づいた燃費良領域下限出力Pminよりも小さいか否かを判定する。
【0180】
低加速用目標出力POWER_ALが燃費良領域出力マップm03と現在の実入力回転数NINとに基づいた燃費良領域下限出力Pmin以上であると判定された場合、目標回転数エンジントルク演算部14は、加速用目標回転数NIN_Aを最終目標回転数NINTに設定する。この結果、変速比制御部15により加速用目標回転数NIN_Aに基づいてベルト式無段変速機110の変速比が制御され、変速が実行される。
【0181】
そして、目標回転数エンジントルク演算部14は、現在のアクセル開度PAPにおける燃費良領域上限出力Pmaxに相当する低加速用目標出力POWER_ALを目標エンジントルク算出用出力POWER_Tに設定し、この目標エンジントルク算出用出力POWER_Tと、最終目標回転数NINT、すなわち、加速用目標回転数NIN_Aに基づいて目標エンジントルクTETを求める。目標回転数エンジントルク演算部14は、例えば、目標エンジントルク算出用出力POWER_Tを最終目標回転数NINTで除算したものに単位換算定数K(例えば、K=60000/(2π))を乗算することにより、最終目標回転数NINTで低加速用目標出力POWER_ALを実現できる目標エンジントルクTETを求めることができる。
【0182】
この結果、変速比制御部15と機関制御部16とによりこの最終目標回転数NINTと目標エンジントルクTETとに基づいてベルト式無段変速機110の変速比及び内燃機関120の運転を制御することで、内燃機関120の動作点が燃費良領域X(図19参照)の上限Lmax上になるように内燃機関120の運転を制御することができる。
【0183】
一方、低加速用目標出力POWER_ALが燃費良領域出力マップm03と現在の実入力回転数NINとに基づいた燃費良領域下限出力Pminより小さいと判定された場合、つまり、運転者が加速度をコントロールするために運転者がアクセルを微調整し、これによりアクセル開度PAPが低下して要求出力が燃費良領域Xの下限Lminに応じた出力Pminより低下すると判定される場合、変速比制御部15は、内燃機関120のエンジン回転数が燃費良領域Xの上限Lmaxにて運転者が要求する要求出力を実現可能なエンジン回転数となるようにベルト式無段変速機110の変速比を制御し、機関制御部16は、内燃機関120が発生させるエンジントルクが燃費良領域Xの上限Lmaxに応じたエンジントルクとなるように内燃機関120の運転を制御する。
【0184】
言い換えれば、目標回転数エンジントルク演算部14は、内燃機関120の動作点が燃費良領域Xの上限Lmax上になるような最終目標回転数NINTと目標エンジントルクTETとを求め、変速比制御部15と機関制御部16とは、この最終目標回転数NINTと目標エンジントルクTETとに基づいてベルト式無段変速機110の変速比及び内燃機関120の運転を制御する。すなわち、目標回転数エンジントルク演算部14は、最終目標回転数NINTと目標エンジントルクTETとを低下した要求出力と燃費良領域Xの上限Lmaxとの交点上の動作点(図19に示す点G)に応じた回転数及びトルクに設定する。
【0185】
これにより、運転者が加速度をコントロールするために運転者がアクセルを微調整し、アクセル開度PAPが低下して要求出力が燃費良領域Xの下限Lminに応じた出力Pminより低下する場合、変速、ここではアップシフトが実行されることで、エンジン回転数が低下し、内燃機関120の動作点が燃費良領域Xから外れることを抑制できるので、燃費低下を抑制することができる。このとき、変速比制御部15と機関制御部16とにより内燃機関120の動作点が、低下した要求出力を実現可能な燃費良領域Xの上限Lmaxとなるようにベルト式無段変速機110の変速比及び内燃機関120の運転が制御されることで、一般的な傾向としてその後に想定されるさらなるアクセル開度の低下に伴う要求出力の低下に対して、内燃機関120の動作点と燃費良領域Xの下限Lminとの間に出力余裕を確保することができる。よって、現在のベルト式無段変速機110の変速比を保持し、内燃機関120が発生させるエンジントルクを低下させることで、低下した要求出力を実現可能な領域を広く確保することができる。この結果、上記と同様に運転時の運転者の違和感を抑制することができる。
【0186】
具体的には、低加速用目標出力POWER_ALが燃費良領域出力マップm03と現在の実入力回転数NINとに基づいた燃費良領域下限出力Pminより小さいと判定された場合、目標回転数エンジントルク演算部14は、アクセル開度最大値PAPmaxを現在の実際のアクセル開度PAPに更新し、仮目標回転数NIN_Cを最終目標回転数NINTに設定する。この結果、変速比制御部15により仮目標回転数NIN_Cに基づいてベルト式無段変速機110の変速比が制御され、変速が実行される。そして、アクセル開度最大値PAPmaxが現在のアクセル開度PAPに更新されることで、更新された後のアクセル開度最大値PAPmaxに基づいたアクセル開度補正量NINPAPが更新される前のアクセル開度最大値PAPmaxに基づいたアクセル開度補正量NINPAPより減少し、その後に算出される加速用目標回転数NIN_Aも低下し、したがって、アップシフトされ、エンジン回転数が低下する。
【0187】
そして、目標回転数エンジントルク演算部14は、現在のアクセル開度PAPにおける燃費良領域上限出力Pmaxに相当する低加速用目標出力POWER_ALを目標エンジントルク算出用出力POWER_Tに設定し、この目標エンジントルク算出用出力POWER_Tと、最終目標回転数NINT、すなわち、仮目標回転数NIN_Cに基づいて目標エンジントルクTETを求める。目標回転数エンジントルク演算部14は、例えば、目標エンジントルク算出用出力POWER_Tを最終目標回転数NINTで除算したものに単位換算定数K(例えば、K=60000/(2π))を乗算することにより、最終目標回転数NINTで低加速用目標出力POWER_ALを実現できる目標エンジントルクTETを求めることができる。
【0188】
この結果、変速比制御部15と機関制御部16とによりこの最終目標回転数NINTと目標エンジントルクTETとに基づいてベルト式無段変速機110の変速比及び内燃機関120の運転を制御することで、内燃機関120の動作点が燃費良領域X(図19参照)の上限Lmax上になるように内燃機関120の運転を制御することができる。
【0189】
ここで、図18のタイムチャート及び図19の線図を参照して、本実施形態に係る駆動力制御装置11における動作を説明する。なお、図18では、縦軸をアクセル開度、要求出力、目標回転数及びエンジントルクとし、横軸を時間軸としている。図19は、本実施形態に係る駆動力制御装置11が制御する内燃機関120の動作特性を示す図であり、縦軸をエンジントルクとし、横軸をエンジン回転数としている。また、内燃機関120の動作特性を太い実線、最適燃費線L、燃費良領域上限Lmax、燃費良領域下限Lmin及び等出力線P1、P2、P3を細い実線、WOT(Wide Open Throttle)のときのトルクを点線で示している。そして、図19における点A、B、C、D、E、F、G、Hは、それぞれ図18における点A、B、C、D、E、F、G、Hに対応している。
【0190】
時刻t21(点Aに対応)にて、運転者によりアクセルが急激に踏み込まれアクセル開度PAPが急増加し要求出力が急増加すると、運転者による加速要求があると判定され、内燃機関120の動作点が一旦WOTに応じた動作線上になるまでエンジン回転数(実入力回転数NIN)は変動せずエンジントルクTEが急上昇する。エンジントルクTEがWOTまで上昇すると(点Bに対応)、燃費良領域Xの上限Lmaxにて要求出力を実現可能となる時刻t22(点Cに対応)まで、内燃機関120の動作点がWOTに応じた動作線上を推移するように目標エンジントルクTET、最終目標回転数NINTが上昇し、エンジントルクTE、エンジン回転数(実入力回転数NIN)も上昇する。
【0191】
そして、時刻t22(点Cに対応)にて、燃費良領域Xの上限Lmax上で要求出力を実現可能となると、内燃機関120の動作点が等出力線P3上を推移するように最終目標回転数NINTが徐々に上昇する一方、目標エンジントルクTETが低下し、エンジン回転数(実入力回転数NIN)が徐々に上昇し、エンジントルクTEが低下する。
【0192】
時刻t23(点Dに対応)にて、内燃機関120の動作点が燃費良領域Xの上限Lmax上まで移動すると、燃費良領域Xの上限Lmax上を推移するように最終目標回転数NINT、目標エンジントルクTETが徐々に上昇し、エンジントルクTE、エンジン回転数(実入力回転数NIN)が徐々に上昇する。これにより、燃費低下を抑制しながら内燃機関120の動作点と燃費良領域Xの下限Lminとの間に出力余裕を確保することができる。
【0193】
そして、時刻t24(点Eに対応)にて、例えば、加速度をコントロールするために運転者がアクセルを減少側に微調整し、これによりアクセル開度も減少側に変化して要求出力が低下したとする。このとき、図中一点鎖線で示すように従来の場合は、例えば、最終目標回転数NINT’が低下され、すなわち、変速されることで、エンジン回転数を低下させ、エンジントルクTE’がWOTで維持される。
【0194】
しかしながら、本実施形態の駆動力制御装置11は、低下した要求出力を実現可能な内燃機関120の動作点が燃費良領域X内にある場合には、最終目標回転数NINTがそのままの一定の上昇勾配で維持され、かつ、この最終目標回転数NINTで低下した要求出力を実現可能なような目標エンジントルクTETが設定される。そして、これに伴ってエンジントルクTEが低下する一方、エンジン回転数(実入力回転数NIN)は一定の上昇勾配に維持される。これにより、必要以上の変速を抑制することができ、この結果、内燃機関120の出力軸であるクランクシャフト121の回転数、すなわち、運転者に違和感を与えるようなエンジン回転数の低下側への変動を抑制することができる。この間、内燃機関120の動作点は、最適燃費線Lからずれるものの燃費良領域X内におさまっていることから、燃費低下を抑制することができる。この結果、運転者の違和感を抑制しながら単位燃料量で走行できる距離を向上することができる。
【0195】
一方、アクセル開度PAPが低下しつづけ要求出力が低下しつづけて、時刻t25(点Fに相当)にて、このままのエンジン回転数では燃費良領域X内で要求出力を実現できなくなると、内燃機関120の動作点が燃費良領域Xの上限Lmax上になるような最終目標回転数NINTと目標エンジントルクTETとが設定される。すなわち、最終目標回転数NINTと目標エンジントルクTETとが、低下した要求出力の等出力線P2と燃費良領域Xの上限Lmaxとの交点上の動作点(点Gに相当)に応じた回転数及びトルクに設定される。すなわち、アップシフトされ、最終目標回転数NINTが低下する一方、目標エンジントルクTETが上昇し、エンジン回転数(実入力回転数NIN)が低下し、エンジントルクTEが上昇する。これにより、内燃機関120の動作点が燃費良領域Xから外れることを抑制できるので、燃費低下を抑制することができ、さらに、一般的な傾向としてその後に想定されるさらなるアクセル開度の低下に伴う要求出力の低下に対して、内燃機関120の動作点と燃費良領域Xの下限Lminとの間に出力余裕を確保することができる。この結果、例えば、アップシフトされた後、時刻t25(アップシフト後の点Gに相当)から時刻t26(点Hに相当)までアクセル開度がさらに減少側に変化して要求出力がさらに低下した場合でも、最終目標回転数NINTがそのままの一定の上昇勾配で維持され、かつ、この最終目標回転数NINTで低下した要求出力を実現可能なような目標エンジントルクTETが設定され、これに伴ってエンジントルクTEが低下する一方、エンジン回転数(実入力回転数NIN)は一定の上昇勾配に維持される。これにより、必要以上の変速を抑制することができ、この結果、内燃機関120の出力軸であるクランクシャフト121の回転数、すなわち、運転者に違和感を与えるようなエンジン回転数の変動を抑制することができる。
【0196】
次に、図20のフローチャートを参照して、本実施形態に係る駆動力制御装置11における変速制御を説明する。なお、この制御ルーチンは、数msないし数十ms毎の制御周期で繰り返し実行される。なお、ここでも、上述の実施形態1と重複する説明についてはできるだけ省略する。
【0197】
まず、目標回転数エンジントルク演算部14は、アクセル開度PAPと車速SPDとに基づいてFORCE_Nを求める(S200)。
【0198】
次に、目標回転数エンジントルク演算部14は、FORCE_Nに基づいて通常目標出力POWER_Nを求める(S202)。
【0199】
次に、目標回転数エンジントルク演算部14は、通常目標出力POWER_Nに基づいて通常目標回転数NIN_Nを求める(S204)。
【0200】
次に、動作点判定部17は、実入力回転数NINに基づいて、燃費良領域上限出力Pmaxを求める(S206)。
【0201】
次に、動作点判定部17は、実入力回転数NINに基づいて、燃費良領域下限出力Pminを求める(S208)。
【0202】
次に、ECU10の比較判定部13は、加速制御開始条件が成立しているか否かを判定する(S210)。比較判定部13は、例えば、車速SPDと予め設定され加速判定閾値aを比較し、実アクセル開度PAPと予め設定された加速判定閾値bとを比較し、アクセル開速度PAPVと予め設定された加速判定閾値cとを比較して、車速SPDが加速判定閾値a以上、実アクセル開度PAPが加速判定閾値b以上、アクセル開速度PAPVが加速判定閾値c以上と判定した場合に加速制御開始条件成立と判定すればよい。
【0203】
なお、本実施形態ではS210で用いるアクセル開度PAPは、S200で取得したアクセル開度PAPを用いてもよいし、S210の直前に情報取得部12が再度アクセル開度PAPをアクセル開度センサD04から取得し、情報取得部12により取得されたこのアクセル開度PAPを用いてもよい。比較判定部13は、S200で取得したアクセル開度PAPを用いることで、駆動力制御装置11における工程数、演算量を低減できる。一方、比較判定部13は、S210の直前に情報取得部12が取得したアクセル開度PAPを用いることで、最新の情報に基づいて情報の比較を行うことができる。なお、以下の説明でも特に断りの無い限り同様である。
【0204】
加速制御開始条件が成立していると判定された場合(S210:Yes)、目標回転数エンジントルク演算部14は、車両100の加速要求が判定された後の期間を計測するカウンタT1をインクリメントし、すなわち、カウンタT1に1を加算しカウンタT1+1をカウンタT1に代入する(S212)。
【0205】
次に、比較判定部13は、加速制御開始条件成立フラグF0がONか否かを判定し(S214)、加速制御開始条件成立フラグF0がONではない、すなわち、加速制御開始条件成立フラグF0がOFFであると判定された場合(S214:No)、比較判定部13は、加速制御開始条件成立フラグF0にONを代入し、この加速制御開始条件成立フラグF0をONに設定する(S216)。
【0206】
次に、目標回転数エンジントルク演算部14は、カウンタT1に0を代入しこのカウンタT1をクリアする(S218)。
【0207】
次に、ECU10の目標回転数エンジントルク演算部14は、車速SPDに基づいて、初期目標回転数NINLINE0を求める(S220)。目標回転数エンジントルク演算部14は、例えば、図14に示す初期目標回転数マップm05に基づいて、車速SPDから初期目標回転数NINLINE0を求める。
【0208】
次に、比較判定部13は、再び加速制御開始条件成立フラグF0がONか否かを判定する(S222)。
【0209】
S210にて加速制御開始条件が成立していないと判定された場合(S210:No)、S212からS220までの処理をとばして、比較判定部13は、加速制御開始条件成立フラグF0がONか否かを判定する(S222)。S214にて加速制御開始条件成立フラグF0がONであると判定された場合(S214:Yes)、S216からS220までの処理をとばして、比較判定部13は、再び加速制御開始条件成立フラグF0がONか否かを判定する(S222)。
【0210】
加速制御開始条件成立フラグF0がONであると判定された場合(S222:Yes)、比較判定部13は、加速制御終了条件が成立しているか否かを判定する(S224)。比較判定部13は、例えば、車速SPDが予め設定された値aよりも低いか、あるいは、アクセル開度PAPが予め設定された値(b−d)よりも低いと判定した場合に加速制御終了条件成立と判定すればよい。
【0211】
加速制御終了条件が成立していると判定された(S224:Yes)、比較判定部13は、加速制御開始条件成立フラグF0にOFFを代入し、この加速制御開始条件成立フラグF0をOFFに設定して(S226)、目標回転数エンジントルク演算部14は、通常制御用処理を実行して、最終目標回転数NINT及び目標エンジントルク算出用出力POWER_Tを求める(S228)。この目標回転数エンジントルク演算部14による通常制御用処理については、図21のフローチャートで説明する。
【0212】
S222にて加速制御開始条件成立フラグF0がOFFであると判定された場合(S222:No)、S224、S226の処理をとばして、目標回転数エンジントルク演算部14は、通常制御用処理を実行して、最終目標回転数NINT及び目標エンジントルク算出用出力POWER_Tを求める(S228)。
【0213】
S224にて加速制御終了条件が成立していないと判定された場合(S224:No)、目標回転数エンジントルク演算部14は、加速制御用処理を実行して、最終目標回転数NINT及び目標エンジントルク算出用出力POWER_Tを求める(S230)。この目標回転数エンジントルク演算部14による加速制御用処理については、図22のフローチャートで詳細に説明する。
【0214】
そして、目標回転数エンジントルク演算部14は、S228又はS230で求められた最終目標回転数NINTと目標エンジントルク算出用出力POWER_Tとに基づいて、目標エンジントルクTETを求める(S232)。目標回転数エンジントルク演算部14は、例えば、目標エンジントルク算出用出力POWER_Tを最終目標回転数NINTで除算したものに単位換算定数K(例えば、K=60000/(2π))を乗算することにより、目標エンジントルクTETを求める。
【0215】
次に、変速比制御部15は、プライマリ可動シーブ摺動機構55及びセカンダリ可動シーブ摺動機構65を制御し、プライマリシャフト51の回転数が最終目標回転数NINTとなるようにベルト式無段変速機110の変速比を変更する(S234)。
【0216】
次に、機関制御部16は、内燃機関120のインジェクタ、点火プラグ、電子スロットル弁を制御し、内燃機関120のエンジントルクが目標エンジントルクTETとなるように内燃機関120の運転制御を行い(S236)、この変速制御を終了する。
【0217】
次に、図21のフローチャートを参照して、実施形態2に係る駆動力制御装置11における通常制御用処理を説明する。この通常制御用処理は、図13の実施形態1に係る駆動力制御装置における変速制御とほぼ同様であり、すなわち、それぞれS300がS110、S302がS112、S304がS114、S306がS116、S308がS118、S310がS120、S312がS122、S314がS124、S316がS126、S320がS136、S322がS134に相当することから説明を省略する。
【0218】
本実施形態の駆動力制御装置11における通常制御用処理では、目標回転数エンジントルク演算部14は、S314にて、前回の最終目標回転数NINT(i−1)と変速速度低下分回転数DNINとの合計を最終目標回転数NINT(i)に代入(設定)し、S320にて、図20のS204で求めた通常目標回転数NIN_Nを今回の最終目標回転数NINT(i)に代入(設定)し、S322にて、前回の最終目標回転数NINT(i−1)を今回の最終目標回転数NINT(i)に代入(設定)する。そして、目標回転数エンジントルク演算部14は、S318にて、図20のS202で求めた通常目標出力POWER_Nを目標エンジントルク算出用出力POWER_Tに設定してこの通常制御用処理を終了する。
【0219】
次に、図22のフローチャートを参照して、実施形態2に係る駆動力制御装置11における加速制御用処理を説明する。
【0220】
まず、目標回転数エンジントルク演算部14は、アクセル開度補正量算出処理として、アクセル開度最大値PAPmaxに基づいてアクセル開度補正量NINPAPを求める(S400)。この目標回転数エンジントルク演算部14によるアクセル開度補正量算出処理については、図23のフローチャートで詳細に説明する。
【0221】
次に、目標回転数エンジントルク演算部14は、車速変化補正量算出処理として、車速SPDの変化量である車速変化量DSPDに基づいて車速変化補正量NINSPDを求める(S402)。この目標回転数エンジントルク演算部14による車速変化補正量算出処理については、図24のフローチャートで詳細に説明する。
【0222】
次に、目標回転数エンジントルク演算部14は、図20のS220で求められた初期目標回転数NINLINE0と、S400で求められたアクセル開度補正量NINPAPと、S402で求められた車速変化補正量NINSPDとに基づいて、加速用目標回転数NIN_Aを求める(S404)。目標回転数エンジントルク演算部14は、初期目標回転数NINLINE0とアクセル開度補正量NINPAPと車速変化補正量NINSPDとを加算しこれらの合計を算出することで、加速用目標回転数NIN_Aを求める。
【0223】
次に、目標回転数エンジントルク演算部14は、最終目標回転数目標エンジントルク算出用出力算出処理を実行して、最終目標回転数NINT及び目標エンジントルク算出用出力POWER_Tを求めて(S406)、この加速制御用処理を終了する。この目標回転数エンジントルク演算部14による最終目標回転数目標エンジントルク算出用出力算出処理については、図25のフローチャートで詳細に説明する。
【0224】
次に、図23のフローチャートを参照して、本実施形態に係る駆動力制御装置11におけるアクセル開度補正量算出処理を説明する。
【0225】
まず、目標回転数エンジントルク演算部14は、現在の実際のアクセル開度PAPがこれまでのアクセル開度最大値PAPmaxよりも大きいか否かを判定する(S500)。
【0226】
現在の実際のアクセル開度PAPがこれまでのアクセル開度最大値PAPmax以下であると判定された場合(S500:No)、目標回転数エンジントルク演算部14は、車両100の加速要求が判定された後の期間を計測するカウンタT1の値が所定値E以下であるか否かを判定する(S502)。なお、この所定値Eは、加速ショックが収束するまでの期間や一般的なアクセル操作の傾向などから予め実験等より導き出し適宜設定されればよい。
【0227】
カウンタT1の値が所定値E以下であると判定された場合(S502:Yes)、目標回転数エンジントルク演算部14は、過去n回分のアクセル開度PAPの平均値であるアクセル開度平均PAPAVEを求める(S504)。なお、アクセル開度平均PAPAVEを求める際のアクセル開度PAPの数nは、適宜設定すればよい。
【0228】
次に、目標回転数エンジントルク演算部14は、現在の実際のアクセル開度PAPからアクセル開度平均PAPAVEを減算した値(絶対値)が予め設定される所定値Fよりも小さいか否かを判定する(S506)。なお、この所定値Fも、加速ショックが収束するまでの期間や一般的なアクセル操作の傾向などから予め実験等より導き出し適宜設定されればよい。
【0229】
現在の実際のアクセル開度PAPからアクセル開度平均PAPAVEを減算した値(絶対値)が予め設定される所定値Fよりも小さいと判定された場合(S506:Yes)、目標回転数エンジントルク演算部14は、アクセル開度最大値PAPmaxの変更の要否を判断するための期間を計測するカウンタT2をインクリメントし、すなわち、カウンタT2に1を加算しカウンタT2+1をカウンタT2に代入する(S508)。
【0230】
次に、目標回転数エンジントルク演算部14は、カウンタT2の値が予め設定された所定値G以上であるか否かを判定する(S510)。なお、この所定値Gも、加速ショックが収束するまでの期間や一般的なアクセル操作の傾向などから予め実験等より導き出し適宜設定されればよい。
【0231】
カウンタT2の値が予め設定された所定値G以上であると判定された場合(S510:Yes)、目標回転数エンジントルク演算部14は、アクセル開度最大値PAPmaxに現在のアクセル開度PAPを代入し、車両100の加速要求が判定された後のアクセル開度最大値PAPmaxを現在のアクセル開度PAPに変更する(S512)。つまり、目標回転数エンジントルク演算部14は、S500からS510にて、車両100の加速要求が判定された後、所定期間以内にアクセル開度PAPが低下し、この低下したアクセル開度PAPが所定範囲内で所定期間以上継続したか否かを判定し、継続したと判定された際には、S512にて、アクセル開度最大値PAPmaxを現在のアクセル開度PAP、すなわち加速ショックが収束した後のアクセル開度PAPに変更する。
【0232】
そして、目標回転数エンジントルク演算部14は、車両100の加速要求が判定された後のアクセル開度PAPの最大値であるアクセル開度最大値PAPmaxに基づいてアクセル開度補正量NINPAPを求め(S514)、このアクセル開度補正量算出処理を終了する。目標回転数エンジントルク演算部14は、例えば、図15に示すアクセル開度補正量マップm06に基づいて、アクセル開度最大値PAPmaxと車速SPDとからアクセル開度補正量NINPAPを求める。
【0233】
S506にて、現在の実際のアクセル開度PAPからアクセル開度平均PAPAVEを減算した値(絶対値)が予め設定される所定値以上であると判定された場合(S506:No)、目標回転数エンジントルク演算部14は、カウンタT2に0を代入しこのカウンタT2をクリアし(S516)、S508からS512までの処理をとばして、アクセル開度最大値PAPmaxに基づいてアクセル開度補正量NINPAPを求めて(S514)、このアクセル開度補正量算出処理を終了する。
【0234】
S500にて、現在の実際のアクセル開度PAPがこれまでのアクセル開度最大値PAPmaxよりも大きいと判定された場合(S500:Yes)、目標回転数エンジントルク演算部14は、現在の実際のアクセル開度PAPをアクセル開度最大値PAPmaxに代入しアクセル開度最大値PAPmaxを現在の実際のアクセル開度PAPに設定し(S518)、S502からS512までの処理をとばして、アクセル開度最大値PAPmaxに基づいてアクセル開度補正量NINPAPを求めて(S514)、このアクセル開度補正量算出処理を終了する。
【0235】
S502にて、カウンタT1の値が所定値E以下でないと判定された場合(S502:No)、目標回転数エンジントルク演算部14は、S504からS512までの処理をとばして、アクセル開度最大値PAPmaxに基づいてアクセル開度補正量NINPAPを求めて(S514)、このアクセル開度補正量算出処理を終了する。
【0236】
S510にて、カウンタT2の値が所定値G以上でないと判定された場合(S510:No)、目標回転数エンジントルク演算部14は、S512の処理をとばして、アクセル開度最大値PAPmaxに基づいてアクセル開度補正量NINPAPを求めて(S514)、このアクセル開度補正量算出処理を終了する。
【0237】
次に、図24のフローチャートを参照して、本実施形態に係る駆動力制御装置11における車速変化補正量算出処理を説明する。
【0238】
まず、目標回転数エンジントルク演算部14は、車速センサD03により検出される現在の車速SPD(i)から前回検出された車速SPD(i−1)を減算することで、車速変化量DSPDを求める(S600)。
【0239】
次に、目標回転数エンジントルク演算部14は、現在の車速SPDに基づいて車速係数αを求める(S602)。目標回転数エンジントルク演算部14は、例えば、図16に示す車速係数マップm07に基づいて、車速SPDとアクセル開度PAPとから車速係数αを求める。
【0240】
次に、目標回転数エンジントルク演算部14は、車速変化量DSPDに車速係数αを乗算したものに前回の車速変化補正量NINSPD(i−1)を加算することで車速変化補正量NINSPD(i)を求め(S604)、これを今回の車速変化補正量NINSPDとし、この車速変化補正量算出処理を終了する。
【0241】
次に、図25のフローチャートを参照して、本実施形態に係る駆動力制御装置11における最終目標回転数目標エンジントルク算出用出力算出処理を説明する。
【0242】
まず、比較判定部13は、アクセル開度PAPが所定値Hより小さいか否かを判定する(S700)。なお、この所定値Hは、運転者による車両100の加速要求量が相対的に高い高加速時と、運転者による車両100の加速要求量が相対的に低い低加速時とを区別できる値に応じて適宜設定されればよい。
【0243】
アクセル開度PAPが所定値H以上であると判定された場合(S700:No)、目標回転数エンジントルク演算部14は、実アクセル開度PAPと、車速SPDとに基づいて加速用目標駆動力FORCE_Aを求める(S720)。目標回転数エンジントルク演算部14は、例えば、図17に示すような加速用目標駆動力マップm08に基づいて、実アクセル開度PAPと車速SPDとから加速用目標駆動力FORCE_Aを求める。
【0244】
次に、目標回転数エンジントルク演算部14は、加速用目標駆動力FORCE_Aに基づいて加速用目標出力POWER_Aを求める(S722)。目標回転数エンジントルク演算部14は、例えば、加速用目標駆動力FORCE_Aと車速SPDと1000/3600とを乗算して加速用目標出力POWER_Aを求める。
【0245】
次に、目標回転数エンジントルク演算部14は、図22のS404で求められた加速用目標回転数NIN_Aを最終目標回転数NINTに代入(設定)する(S724)。そして、目標回転数エンジントルク演算部14は、S722で求められた加速用目標出力POWER_Aを目標エンジントルク算出用出力POWER_Tに設定し(S726)、この最終目標回転数目標エンジントルク算出用出力算出処理を終了する。
【0246】
S700にてアクセル開度PAPが所定値Hより小さいと判定された場合(S700:Yes)、目標回転数エンジントルク演算部14は、現在のアクセル開度PAPに基づいて現在の実アクセル開度補正量NINPAP_Rを求める(S702)。目標回転数エンジントルク演算部14は、例えば、図15に示すアクセル開度補正量マップm06に基づいて、実アクセル開度PAPと車速SPDとから実アクセル開度補正量NINPAP_Rを求める。
【0247】
次に、目標回転数エンジントルク演算部14は、実アクセル開度補正量NINPAP_Rに基づいて仮目標回転数NIN_Cを求める(S704)。目標回転数エンジントルク演算部14は、図20のS220で求められた初期目標回転数NINLINE0と、図24のS604で求められた車速変化補正量NINSPDと、S702で求められた実アクセル開度補正量NINPAP_Rに基づいて、初期目標回転数NINLINE0と車速変化補正量NINSPDと実アクセル開度補正量NINPAP_Rとを加算しこれらの合計を算出することで、仮目標回転数NIN_Cを求める。
【0248】
次に、目標回転数エンジントルク演算部14は、仮目標回転数NIN_Cに基づいて低加速用目標出力POWER_ALを求める(S706)。目標回転数エンジントルク演算部14は、例えば、図9と同様の燃費良領域出力マップm03に基づいて、仮目標回転数NIN_Cから燃費良領域上限出力Pmaxに相当する低加速用目標出力POWER_ALを求める。
【0249】
そして、動作点判定部17は、この低加速用目標出力POWER_ALが燃費良領域出力マップm03と現在の実入力回転数NINとに基づいた燃費良領域下限出力Pminよりも小さいか否かを判定する(S708)。動作点判定部17は、低加速用目標出力POWER_ALと図20のS208で求められた燃費良領域下限出力Pminとを比較する。
【0250】
低加速用目標出力POWER_ALが燃費良領域下限出力Pmin以上であると判定された場合(S708:No)、目標回転数エンジントルク演算部14は、図22のS404で求められた加速用目標回転数NIN_Aを最終目標回転数NINTに代入(設定)する(S710)。そして、目標回転数エンジントルク演算部14は、S706で求められた低加速用目標出力POWER_ALを目標エンジントルク算出用出力POWER_Tに設定し(S712)、この最終目標回転数目標エンジントルク算出用出力算出処理を終了する。
【0251】
S708にて低加速用目標出力POWER_ALが燃費良領域下限出力Pminより小さいと判定された場合(S708:Yes)、目標回転数エンジントルク演算部14は、アクセル開度最大値PAPmaxを現在の実際のアクセル開度PAPに更新し(S714)、S704で求められた仮目標回転数NIN_Cを最終目標回転数NINTに代入(設定)する(S716)。そして、目標回転数エンジントルク演算部14は、S706で求められた低加速用目標出力POWER_ALを目標エンジントルク算出用出力POWER_Tに設定し(S718)、この最終目標回転数目標エンジントルク算出用出力算出処理を終了する。
【0252】
以上で説明した本発明の実施形態に係る駆動力制御装置11によれば、内燃機関120の動作点が燃費良領域X内の最適燃費線Lからずれた位置にある運転状態が定常的になった際に、機関制御部16により内燃機関120の動作点が最適燃費線L上になるように内燃機関120の運転を制御することで、燃費低下を抑制することができ、結果的に、単位燃料量で走行できる距離を向上することができる。そして、この間、変速比制御部15により運転者が変速を感じない程度まで変速速度を低下させてベルト式無段変速機110の変速比を制御することで、エンジン回転数の変動による運転者の違和感を抑制することができる。この結果、運転者の違和感を抑制しながら単位燃料量で走行できる距離を向上することができる。
【0253】
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係る駆動力制御装置11によれば、機関制御部16は、内燃機関120を搭載した車両100の加速時に、動作点が燃費良領域Xの上限Lmax上になるように内燃機関120の運転を制御する。したがって、車両100の加速時に、内燃機関120の動作点と燃費良領域Xの下限Lminとの間に出力余裕を確保することができる。このため、加速後にアクセル開度PAPが徐々に低下し要求出力が低下した際に、現在のベルト式無段変速機110の変速比を保持し、内燃機関120が発生させるエンジントルクを低下させることで、低下した要求出力を実現可能な領域を広く確保することができ、必要以上の変速が抑制されエンジン回転数の低下が抑制されることで、運転時の運転者の違和感を抑制することができる。この間、内燃機関120の動作点は、最適燃費線Lからずれるものの燃費良領域X内におさまっていることから、燃費低下を抑制することができる。この結果、運転者の違和感を抑制しながら単位燃料量で走行できる距離を向上することができる。
【0254】
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係る駆動力制御装置11によれば、内燃機関120に対して運転者が要求する出力に対応した操作量としてのアクセル開度PAPが低下しこの要求出力が燃費良領域Xの下限Lminに応じた出力Pminより低下した際に、変速比制御部15は、内燃機関120のエンジン回転数が燃費良領域Xの上限Lmaxにて運転者が要求する出力を実現可能な回転数となるようにベルト式無段変速機110の変速比を制御し、機関制御部16は、内燃機関120が発生させるエンジントルクが燃費良領域Xの上限Lmaxに応じたトルクとなるように内燃機関120の運転を制御する。したがって、運転者が加速度をコントロールするために運転者がアクセルを微調整し、アクセル開度PAPが低下して要求出力が燃費良領域Xの下限Lminに応じた出力Pminより低下する場合にアップシフトが実行されることで、エンジン回転数が低下し、内燃機関120の動作点が燃費良領域Xから外れることを抑制できるので、燃費低下を抑制することができる。このとき、変速比制御部15と機関制御部16とにより内燃機関120の動作点が、低下した要求出力を実現可能な燃費良領域Xの上限Lmaxとなるようにベルト式無段変速機110の変速比及び内燃機関120の運転が制御されることで、さらなるアクセル開度の低下に伴う要求出力の低下に対して、内燃機関120の動作点と燃費良領域Xの下限Lminとの間に出力余裕を確保することができる。よって、運転時の運転者の違和感を抑制することができる。
【0255】
なお、上述した本発明の実施形態に係る駆動力制御装置は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。
【0256】
また、以上で説明した本発明の実施形態に係る駆動力制御装置が適用される無段変速機としてのベルト式無段変速機110によれば、動力をプライマリプーリ50からセカンダリプーリ60に伝達可能なベルト80を備える。すなわち、ベルト式無段変速機110は、内燃機関120からの動力が伝達されるプライマリシャフト51とこのプライマリシャフト51上を軸線方向に摺動するプライマリ可動シーブ53とこのプライマリ可動シーブ53に軸線方向に対向するとともにプライマリ可動シーブ53との間でプライマリ溝80aを形成するプライマリ固定シーブ52とからなるプライマリプーリ50と、プライマリシャフト51と平行に配置されるセカンダリシャフト61とこのセカンダリシャフト61上を軸線方向に摺動するセカンダリ可動シーブ63とセカンダリ可動シーブ63に軸線方向に対向するとともにセカンダリ可動シーブ63との間でセカンダリ溝80bを形成するセカンダリ固定シーブ62とからなるセカンダリプーリ60と、プライマリ溝80aとセカンダリ溝80bとの間に巻き掛けられるベルト80とを備える。しかしながら、本発明に係る駆動力制御装置は、この形式の無段変速機には限られず、例えば、入力ディスクと出力ディスクとの間に配置されたパワーローラの移動により変速比の変更が行われる、いわゆるトロイダル式の無段変速機に適用されてもよい。
【0257】
また、以上の説明では、車速補正量演算手段は、車速SPDの車速変化量DSPDに基づいて車速補正量としての車速変化補正量NINSPDを求めるものとして説明したが、単純に車速SPDに基づいて車速補正量を求めてもよい。
【0258】
また、以上の説明では、算出用加速要求量としての算出用アクセル開度は、アクセル開度最大値PAPmaxであるものとして説明したがこれに限らない。算出用加速要求量としての算出用アクセル開度は、例えば、車両100の加速要求が判定された後、加速要求量としてのアクセル開度が低下した際に、低下したアクセル開度より大きなアクセル開度であってもよい。すなわち、算出用加速要求量としての算出用アクセル開度は、アクセル開度最大値PAPmaxでなくても、例えば、加速用目標回転数NIN_Aの低下による実際のエンジン回転数の低下が体感できない程度にこのアクセル開度最大値PAPmaxよりも若干小さな値であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0259】
以上のように、本発明に係る駆動力制御装置は、運転者の違和感を抑制しながら単位燃料量で走行できる距離を向上することができるものであり、種々の車両用の駆動力制御装置に用いて好適である。
【図面の簡単な説明】
【0260】
【図1】実施形態1に係る駆動力制御装置を備えた車両の動力伝達部分における全体の構成を示す概念図である。
【図2】実施形態1に係る駆動力制御装置が適用されたベルト式無段変速機のプライマリプーリ側の構成を示す断面図である。
【図3】実施形態1に係る駆動力制御装置が適用されたベルト式無段変速機の油圧モータを図2に示すX−X線から見た断面図である。
【図4】実施形態1に係る駆動力制御装置が適用されたベルト式無段変速機における油圧回路構成を説明する模式図である。
【図5−1】実施形態1に係る駆動力制御装置が適用されたベルト式無段変速機の変速比制御用切替バルブの動作を説明する模式図であって第1油室に油圧を供給する場合のバルブ位置を示す図である。
【図5−2】実施形態1に係る駆動力制御装置が適用されたベルト式無段変速機の変速比制御用切替バルブの動作を説明する模式図であって第1及び第2油室に油圧を供給する場合のバルブ位置を示す図である。
【図5−3】実施形態1に係る駆動力制御装置が適用されたベルト式無段変速機の変速比制御用切替バルブの動作を説明する模式図であって第2油室に油圧を供給する場合のバルブ位置を示す図ある。
【図6】実施形態1に係る駆動力制御装置の構成を示す概念図である。
【図7】実施形態1に係る駆動力制御装置における通常目標駆動力を求めるための通常目標駆動力マップである。
【図8】実施形態1に係る駆動力制御装置における通常目標回転数を求めるための通常目標回転数マップである。
【図9】実施形態1に係る駆動力制御装置における燃費良領域出力を求めるための燃費良領域出力マップである。
【図10】実施形態1に係る駆動力制御装置における変速速度低下分回転数を求めるための変速速度低下分回転数マップである。
【図11】実施形態1に係る駆動力制御装置の動作を説明するタイムチャートである。
【図12】実施形態1に係る駆動力制御装置の動作を説明する線図である。
【図13】実施形態1に係る駆動力制御装置における変速制御を説明するフローチャートである。
【図14】実施形態2に係る駆動力制御装置における初期目標回転数を求めるための初期目標回転数マップである。
【図15】実施形態2に係る駆動力制御装置におけるアクセル開度補正量を求めるためのアクセル開度補正量マップである。
【図16】実施形態2に係る駆動力制御装置における車速係数を求めるための車速係数マップである。
【図17】実施形態2に係る駆動力制御装置における加速用目標駆動力を求めるための加速用目標駆動力マップである。
【図18】実施形態2に係る駆動力制御装置の動作を説明するタイムチャートである。
【図19】実施形態2に係る駆動力制御装置の動作を説明する線図である。
【図20】実施形態2に係る駆動力制御装置における変速制御を説明するフローチャートである。
【図21】実施形態2に係る駆動力制御装置における通常制御用処理を説明するフローチャートである。
【図22】実施形態2に係る駆動力制御装置における加速制御用処理を説明するフローチャートである。
【図23】実施形態2に係る駆動力制御装置におけるアクセル開度補正量算出処理を説明するフローチャートである。
【図24】実施形態2に係る駆動力制御装置における車速変化補正量算出処理を説明するフローチャートである。
【図25】実施形態2に係る駆動力制御装置における最終目標回転数目標エンジントルク算出用出力算出処理を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0261】
10 ECU
11 駆動力制御装置
12 情報取得部
13 比較判定部
14 目標回転数エンジントルク演算部
15 変速比制御部(変速比制御手段)
16 機関制御部(動力制御手段)
17 動作点判定部
18 定常運転判定部(判定手段)
19 変速速度設定部
50 プライマリプーリ
51 プライマリシャフト
52 プライマリ固定シーブ
53 プライマリ可動シーブ
55 プライマリ可動シーブ摺動機構
60 セカンダリプーリ
61 セカンダリシャフト
62 セカンダリ固定シーブ
63 セカンダリ可動シーブ
65 セカンダリ可動シーブ摺動機構
80 ベルト
80a プライマリ溝
80b セカンダリ溝
100 車両
110 ベルト式無段変速機(変速機)
120 内燃機関(動力発生手段)
121 クランクシャフト
D01 プライマリシャフト回転数センサ
D02 セカンダリシャフト回転数センサ
D03 車速センサ
D04 アクセル開度センサ(操作量検出手段)
DNIN 変速速度低下分回転数
DPAP アクセル開度変化量
DSPD 車速変化量
FORCE_A 加速用目標駆動力
FORCE_N 通常目標駆動力
L 最適燃費線
Lmax 燃費良領域上限
Lmin 燃費良領域下限
m01 通常目標駆動力マップ
m02 通常目標回転数マップ
m03 燃費良領域出力マップ
m04 変速速度低下分回転数マップ
m05 初期目標回転数マップ
m06 アクセル開度補正量マップ
m07 車速係数マップ
m08 加速用目標駆動力マップ
NIN 実入力回転数
NIN_A 加速用目標回転数
NIN_C 仮目標回転数
NIN_N 通常目標回転数
NINLINE0 初期目標回転数
NINPAP アクセル開度補正量
NINPAP_R 実アクセル開度補正量
NINSPD 車速変化補正量
NINT 最終目標回転数
P1、P2、P3 等出力線
PAP アクセル開度
PAPAVE アクセル開度平均
PAPmax アクセル開度最大値
PAPV アクセル開速度
Pmax 燃費良領域上限出力
Pmin 燃費良領域下限出力
POWER_A 加速用目標出力
POWER_AL 低加速用目標出力
POWER_N 通常目標出力
POWER_T 目標エンジントルク算出用出力
SPD 車速
TE エンジントルク
TET 目標エンジントルク
X 燃費良領域
α 車速係数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力発生手段の回転速度と当該動力発生手段が発生させるトルクとに応じた当該動力発生手段の最適燃費線を基準として設定される燃費良領域内の動作点で前記動力発生手段の運転を制御可能な動力制御手段と、
前記動力発生手段の出力が伝達される変速機の変速比を制御可能な変速比制御手段とを備え、
前記動力発生手段の前記動作点が前記燃費良領域内の前記最適燃費線からずれた位置にある運転状態で、かつ、当該運転状態が定常的である際に、前記変速比制御手段は、変速速度を低下させて前記変速機の変速比を制御し、前記動力制御手段は、前記動作点が前記最適燃費線上になるように前記動力発生手段の運転を制御することを特徴とする、
駆動力制御装置。
【請求項2】
前記動力発生手段に対して運転者が要求する出力に対応した操作量の変化量が予め設定された第1所定範囲内で予め設定される所定期間継続した際に、前記運転状態が定常的であると判定する判定手段を備えることを特徴とする、
請求項1に記載の駆動力制御装置。
【請求項3】
前記動力発生手段に対して運転者が要求する出力に対応した操作量が変化し前記要求する出力が変化した際に、当該変化後の前記要求する出力を現在の前記変速比にて実現可能な前記動作点が前記燃費良領域内にある場合には、前記変速比制御手段は、前記変速機の変速比を保持し、前記動力制御手段は、前記動力発生手段が発生させるトルクが前記要求する出力を実現可能なトルクとなるように前記動力発生手段の運転を制御することを特徴とする、
請求項1又は請求項2に記載の駆動力制御装置。
【請求項4】
前記動力発生手段に対して運転者が要求する出力に対応した操作量が変化し前記要求する出力が変化した際に、当該変化後の前記要求する出力を実現可能な前記動作点が前記燃費良領域内にあり、かつ、当該要求する出力を実現可能な変速比の変化幅が予め設定される第2所定範囲以内である際には、前記変速比制御手段は、前記変速機の変速比を制御し、前記動力制御手段は、前記動作点が前記最適燃費線上になるように前記動力発生手段の運転を制御することを特徴とする、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の駆動力制御装置。
【請求項5】
前記動力制御手段は、前記動力発生手段を搭載した車両の加速時に、前記動作点が前記燃費良領域の上限上になるように前記動力発生手段の運転を制御することを特徴とする、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の駆動力制御装置。
【請求項6】
前記動力発生手段に対して運転者が要求する出力に対応した操作量が低下し当該要求する出力が前記燃費良領域の下限に応じた出力より低下した際に、前記変速比制御手段は、前記動力発生手段の回転速度が前記燃費良領域の上限にて前記要求する出力を実現可能な回転速度となるように前記変速機の変速比を制御し、前記動力制御手段は、前記動力発生手段が発生させるトルクが前記燃費良領域の上限に応じたトルクとなるように前記動力発生手段の運転を制御することを特徴とする、
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の駆動力制御装置。
【請求項7】
前記燃費良領域は、前記動力発生手段を搭載した車両が単位燃料量で走行できる距離を優先して前記動力発生手段を運転できる当該動力発生手段の回転速度と当該動力発生手段が発生させるトルクとに基づいて設定される前記最適燃費線に対して、前記走行できる距離の低下が予め設定される第3所定範囲内の領域として設定されることを特徴とする、
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の駆動力制御装置。
【請求項8】
前記動力発生手段に対して運転者が要求する出力に対応した操作量を検出する操作量検出手段を備えることを特徴とする、
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の駆動力制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2009−255617(P2009−255617A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−103882(P2008−103882)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】