説明

3次元形状測定装置

【課題】光切断線の湾曲成分を除去し、太陽電池ウエハの断面形状データを精度良く算出する。
【解決手段】ウエハ形状データ取得部221は、ウエハ画像から光切断線の形状を示すウエハ形状データを取得する。標準平面形状データ取得部222は、所定の標準平面の高さを数段階変化させ、標準平面画像から各高さにおける光切断線の形状を示す標準平面形状データを取得する。形状補正部341は、ウエハ形状データと形状が最も近い標準平面形状データを、標準平面形状データ記憶部80から特定し、特定した標準平面形状データ及びウエハ形状データの差分を補正ウエハ形状データとして算出する。断面形状算出部342は、形状補正部341で算出された補正ウエハ形状データからウエハ断面形状データを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池ウエハの3次元形状を算出する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光切断法を用いて被測定物の表面の3次元形状の微細形状を測定する技術が広く知られている。これらの技術の多くは、被測定物の厚さ変動、並びにカメラ及び被測定物間の距離変動に伴うカメラの視野範囲の変動を考慮することなく、3次元形状が算出されている。
【0003】
3次元形状は光切断線を示す画素データとカメラの画素分解能とに基づいて算出されるが、カメラ及び被測定物間の距離が変動して視野範囲が変動すると、それに応じて画素分解能も変動するため、画素分解能を一定として3次元形状を算出すると、3次元形状を正確に算出することはできない。特に、カメラ及び被測定物間の距離が大きく変動した場合、実際の画素分解と計算に用いる画素分解能との乖離が増大し、3次元形状を精度良く求めることができなくなってしまう。
【0004】
また、光切断線は、直線状になることが好ましいが、実際には光学系の歪みにより湾曲する。この湾曲の度合いもカメラ及び被測定物間の距離に応じて変動する。そのため、3次元形状を正確に算出するためには、光切断線の湾曲成分を考慮に入れる必要がある。
【0005】
この湾曲成分を考慮に入れた技術として特許文献1が開示されている。特許文献1では、平面基準板(30)の位置及び姿勢を変化させる毎にスリット断面線(22)が撮影され、得られたスリット断面線(22)が近似的に適合する共通の曲面(40)が算出される。
【0006】
そして、光断面線(22)が照射されたワーク(10)が撮影され、スリット画像(20)が取得され、スリット画像の各点に対応する曲面(40)上の点が求められ、この点の3次元形状が算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−192483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1は、太陽電池ウエハに関するものではないため、太陽電池ウエハに現れるソーマークの方向に沿って太陽電池ウエハを搬送させて、太陽電池ウエハの全面の3次元形状を精度良く求めることができないという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、光切断線の湾曲成分を除去し、太陽電池ウエハの断面形状データを精度良く算出することができる3次元形状測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明の一局面による3次元形状測定装置は、太陽電池ウエハの3次元形状を測定する3次元形状測定装置であって、撮像手段と、前記太陽電池ウエハのソーマークと交差する方向に光切断線を照射する照射手段と、所定の標準平面の高さを数段階変化させ、前記光切断線が照射された標準平面を前記撮像手段に撮像させ、得られた標準平面画像から各高さにおける前記光切断線の形状を示す標準平面形状データを取得する標準平面形状データ取得手段と、前記光切断線が照射された太陽電池ウエハを前記撮像手段に撮像させ、得られたウエハ画像から前記光切断線の形状を示すウエハ形状データを取得するウエハ形状データ取得手段と、前記ウエハ形状データと形状が最も近い標準平面形状データを、前記標準平面形状データ取得手段により取得された標準平面形状データの中から特定し、特定した標準平面形状データ及び前記ウエハ形状データの差分を補正ウエハ形状データとして算出する形状補正手段と、前記補正ウエハ形状データを基に、前記太陽電池ウエハの断面形状データを算出する断面形状算出手段とを備える。
【0011】
この構成によれば、太陽電池ウエハの3次元形状の測定に先だって、標準平面に光切断線が照射され、標準平面の高さが変更され、標準平面の高さが変更される毎に、標準平面画像が取得され、この標準平面画像に含まれる光切断線の形状を示す標準平面形状データが取得される。この標準平面形状データは、光切断線の湾曲成分を表している。
【0012】
また、太陽電池ウエハに光切断線が照射され、太陽電池ウエハを撮像することで得られるウエハ画像が取得され、取得されたウエハ画像に含まれる光切断線の形状を示すウエハ形状データが取得される。
【0013】
そして、ウエハ形状データに形状に最も近い形状を有する標準平面形状データが特定される。これにより、ウエハ形状データの高さに対応する湾曲成分を表す標準平面形状データが特定される。
【0014】
そして、ウエハ形状データと特定された標準平面形状データとの差分が補正ウエハ形状データとして算出される。これにより、ウエハ形状データから湾曲成分が除去された光切断線の形状を示す補正ウエハ形状データが得られる。そして、補正ウエハ形状データから太陽電池ウエハの断面形状データが算出される。
【0015】
つまり、太陽電池ウエハの3次元形状の測定に先だって予め算出された数個の標準平面形状データのうち、ウエハ形状データの平均的な高さに対応する湾曲成分を示す標準平面形状データが特定され、この標準平面形状データを用いてウエハ形状データから湾曲成分が除去されている。
【0016】
そのため、光切断線の湾曲成分を除去し、太陽電池ウエハの断面形状データを精度良く算出することができる。
【0017】
(2)各標準平面形状データの高さ及び前記撮像手段の視野範囲を基に、各標準平面形状データの画素分解能を特定し、特定した画素分解能を基に、各標準平面形状データに対応する断面形状データである離散断面形状データを算出する離散断面形状データ算出手段と、前記離散断面形状データを補間することで、ある高さにおける前記標準平面の断面形状データである補間断面形状データを算出する補間断面形状データ算出手段と、前記補間断面形状データの高さ及び前記撮像手段の視野範囲を基に、前記補間断面形状データの画素分解能を特定し、特定した画素分解能を基に、前記補間断面形状データに対応する標準平面形状データである補間標準平面形状データを算出する補間平面形状データ算出手段とを更に備えることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、任意の高さに対応する湾曲成分を示す標準平面形状データを簡便な処理により求めることができる。
【0019】
(3)前記断面形状算出手段は、前記標準平面形状データの高さ及び前記撮像手段の視野範囲を基に、前記補正形状データを構成する各画素データの画素分解能を特定し、特定した画素分解能を用いて前記太陽電池ウエハの断面形状データを算出することが好ましい。
【0020】
この構成によれば、標準平面形状データの高さ及び撮像手段の視野範囲を基に、補正形状データを構成する各画素データの画素分解能が特定され、この画素分解能を用いて断面形状データが算出されている。そのため、太陽電池ウエハの凹凸による高さの違いが考慮された画素分解能を用いて断面形状データが算出される結果、断面形状データをより精度良く算出することができる。
【0021】
(4)前記標準平面形状データ取得手段により取得された数段階の標準平面形状データをその高さと対応付けて記憶すると共に、前記補間平面形状データ算出手段により算出された補間標準平面形状データを標準平面形状データとしてその高さと対応付けて記憶する標準平面形状データ記憶手段を更に備え、前記形状補正手段は、前記標準平面形状データ記憶手段に記憶された標準平面形状データの中から、前記ウエハ形状データに形状が最も近い標準平面形状データを特定することが好ましい。
【0022】
この構成によれば、標準平面形状データ記憶手段に予め記憶された標準平面形状データの中から、ウエハ形状データに最も形状が近い標準平面形状データが特定されるため、標準平面形状データを特定する処理を速やかに行うことができる。
【0023】
(5)前記撮像手段は、前記光切断線が照射された前記太陽電池ウエハを一定周期で連続的に撮像し、前記ウエハ形状算出手段は、前記撮像手段による撮像処理と並行して前記ウエハ形状データを算出することが好ましい。
【0024】
この構成によれば、太陽電池ウエハが一定周期で連続的に撮像されているため、3次元ウエハの全面の3次元形状データを算出することができる。更に、ウエハ形状データが撮像処理と並行して実行されているため、ウエハ形状データの算出結果をリアルタイムで得ることができる。
【0025】
(6)前記撮像手段は、前記太陽電池ウエハを上方から撮像し、前記照射部は、前記太陽電池ウエハを斜め方向から照射することが好ましい。
【0026】
この構成によれば、高さデータの分解能を高めると同時に、太陽電池ウエハの全面の3次元形状データを取得することができる。また、撮像手段は太陽電池ウエハを上方から撮像しているため、撮像手段の設置を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、光切断線の湾曲成分を除去し、太陽電池ウエハの断面形状データを精度良く算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態による3次元形状測定装置の全体構成図を示している。
【図2】図1に示す3次元形状測定装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【図3】ウエハの高さと視野範囲との関係を説明する図である。
【図4】図3(A)に示す3次元形状測定装置をX方向から見たときの構成を概念的に示した図である。
【図5】高さを6段階に変えながら、標準平面形状データを取得するときの光切断線の位置を示した図である。
【図6】形状補正部の処理の説明図である。
【図7】本発明の実施の形態による3次元形状測定装置がウエハの3次元形状を測定する際のメインルーチンを示すフローチャートである。
【図8】ウエハ画像の一例を示した図である。
【図9】探索処理の詳細を示すフローチャートである。
【図10】重心算出処理の詳細を示すフローチャートである。
【図11】iライン目における最大輝度画素を中心としたときの輝度値の分布を示したグラフである。
【図12】図7のフローチャートの処理を時系列で示したタイミングチャートである。
【図13】探索処理と重心算出処理との処理の流れを概念的に示した図である。
【図14】断面形状データを算出する処理の説明図である。
【図15】光源とカメラとの設置状態を模式的に示した図である。
【図16】断面形状データを算出する処理の詳細を示すフローチャートである。
【図17】補間標準平面形状データの取得処理を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の一実施の形態における3次元形状測定装置について説明する。図1は、本発明の実施の形態による3次元形状測定装置の全体構成図を示している。図1に示すように、3次元形状測定装置は、照射部10、撮像部20、制御部30、及び搬送部40を備えている。図1において、Y方向は搬送部40による太陽電池ウエハ50の搬送方向を示している。また、X方向はY方向と直交し、かつ水平面と平行な方向を示している。Z方向は、X方向とY方向とのそれぞれに直交する高さ方向を示している。以下、太陽電池ウエハ50をウエハ50と記述する。
【0030】
照射部10は、例えば1つの光源11により構成されている。光源11は、例えばカメラ21の撮像領域に向けて、扇状に拡がるように光を照射する。そして、光源11が照射する光と、搬送部40により搬送されるウエハ50との交線が、光切断線CLとなる。本実施の形態では、光切断線CLは、長手方向がX方向とほぼ平行になるように照射され、ウエハ50の幅方向(X方向)のほぼ全域に照射されるため、ウエハ50の全面の3次元形状データを得ることができる。このような光切断線CLの設定は、光源11の設置位置や射出する光の方向を調節することで容易に実現することができる。
【0031】
光源11は、円筒状の筐体を備え、筐体の内部には、例えば半導体レーザと、光学系とが設けられている。光学系は、半導体レーザの射出側に設けられ、半導体レーザから射出されるレーザ光を扇状に広げて射出させる。また、光源11は、ウエハ50を斜め方向から照射するように、ほぼL字状の支持部材15を介して台14の下面に取り付けられている。
【0032】
撮像部20は、例えば1つのカメラ21を備えている。カメラ21は、ウエハ50を上側から一定の視野範囲で撮像するように配置されている。ここで、カメラ21は、受光面及びウエハ50間の距離が所定距離になるように台23の下面に取り付けられている。カメラ21が、ウエハ50を撮像した画像をウエハ画像と記述し、後述する標準平面を撮像した画像を標準平面画像と記述する。カメラ21の受光面は矩形状であり、受光面の一方の辺はY方向と平行であり、他方の辺はX方向と平行である。
【0033】
カメラ21は、所定のフレームレート(例えば250fps)で、画像を撮像することができるCMOSカメラにより構成され、撮像した画像のアナログの画像データをデジタルの画像データに変換し、所定のフレームレートで制御部30に出力する。
【0034】
制御部30は、例えば通常のコンピュータにより構成され、光源11及びカメラ21とケーブルを介して接続され、3次元形状測定装置の全体制御を司る。
【0035】
搬送部40は、例えばウエハ50を搬送する搬送ベルトと、搬送ベルトをX方向に向けて駆動させるモータとを備えている。ここで、搬送ベルトとしては、例えば2個のローラによって張架された無端ベルトが採用されている。2個ローラのうち一方のローラは駆動ローラであり、他方のローラは従動ローラである。そして、モータは駆動ローラを回動させることで、搬送ベルトを図1に示す時計回りの方向に回転させ、ウエハ50をY方向に一定の搬送速度で搬送させる。
【0036】
ここで、搬送速度としては、光切断線CLのY方向の幅をαとすると、カメラ21の周期が1/250=0.004sであり、α/0.004に設定すると、ウエハ50を隙間無く走査することができるため、例えばα/0.004に設定すればよい。なお、ウエハ50は、ソーマークの方向が搬送方向となるように搬送部40に載置されるものとする。したがって、ウエハ50は、ソーマークの方向に沿って搬送され、ソーマークの方向とほぼ直交する方向に光切断線が照射されることになる。
【0037】
ソーマークは、太陽電池ウエハの原材料となるシリコンインゴットをワイヤーソーでスライスする際に形成される筋状の溝である。そして、ソーマークは、太陽電池ウエハの表面において、長手方向がおおよそ一定の方向を向くように多数形成される。
【0038】
図2は、図1に示す3次元形状測定装置の電気的な構成を示すブロック図である。撮像部20は、カメラ21及び第1演算部22を備えている。第1演算部22は、ウエハ形状データ取得部221及び標準平面形状データ取得部222を備えている。
【0039】
ウエハ形状データ取得部221は、照射部10により光切断線が照射されたウエハ50をカメラ21に撮像させ、得られたウエハ画像から光切断線の形状を示すウエハ形状データを取得する。ここで、ウエハ形状データ取得部221は後述する探索処理及び重心算出処理を実行し、ウエハ形状データを取得する。ウエハ形状データは、例えば、カメラ21の画像座標空間において、光切断線の位置を示す2次元の画素データの集合からなるデータである。
【0040】
探索処理は、カメラ21により撮像された各ウエハ画像において、搬送方向と平行に複数のラインを設定し、各ラインの最大輝度画素を探索する処理である。重心算出処理は、探索処理により探索された各ラインの最大輝度画素を基に、各ラインの最大輝度の重心座標をサブピクセル単位で算出する処理である。
【0041】
ここで、ウエハ形状データ取得部221は、撮像部20によるウエハ画像の連続撮像処理と並行して、ウエハ形状データの算出処理を実行する。詳細には、ウエハ形状データ取得部221は、カメラ21による現フレームのウエハ画像の撮像期間において、現フレームより1つ前のフレームのウエハ画像に対する探索処理を実行すると同時に、現フレームより2つ前のフレームのウエハ画像に対する重心算出処理を実行する。
【0042】
つまり、ウエハ形状データ取得部221は、パイプライン処理を実行するため、1フレーム周期が経過する毎に、1つのウエハ形状データを取得することができる。なお、重心算出処理によって1フレームのウエハ画像から得られる最大輝度の重心座標の集合がウエハ形状データである。
【0043】
標準平面形状データ取得部222は、所定の標準平面の高さを数段階変化させ、光切断線が照射された標準平面をカメラ21に撮像させ、得られた標準平面画像から各高さにおける光切断線の形状を示す標準平面形状データを取得する。ここで、標準平面形状データ取得部222は、ウエハ形状データ取得部221と同様、探索処理及び重心算出処理を実行し、標準平面形状データを取得する。取得された標準平面形状データは、その高さと対応付けて標準平面形状データ記憶部80に記憶される。標準平面形状データは、例えば、カメラ21の画像座標空間において、光切断線の位置を示す2次元の画素データの集合からなるデータである。
【0044】
標準平面は、主面の表面粗さが被測定対象物であるウエハ50よりも遙かに小さな平板状の面体により構成されている。本実施の形態では、標準平面は図1のカメラ21の真下に配置される。ここで、標準平面は、まず、z方向の高さが所定の基準高さとなる位置に配置される。基準高さとしては、例えば、ウエハ50の測定時において、カメラ21及びウエハ50間の距離が想定し得る最大距離となるZ方向の位置が採用される。
【0045】
そして、光源11により標準平面に光切断線CLが照射され、カメラ21により標準平面が撮像され、1枚の標準平面画像が取得される。1枚の標準平面画像が取得されると、基準高さよりも所定距離高い位置に標準平面が配置され、再度、1枚の標準平面画像が取得される。この処理が数段階繰り返され、数枚の標準平面画像が取得される。
【0046】
なお、標準平面の高さ調整は、例えば所定の治具を用いてもよいし、複数の標準平面が階段状に配置された階段状の標準平面体を用い、カメラ21の真下に所望の高さの標準平面が位置するように階段状の標準平面体を配置して、標準平面の高さを調整してもよい。
【0047】
制御部30は、搬送制御部31、照射制御部32、撮像制御部33、及び第2演算部34を備えている。なお、搬送制御部31〜第2演算部34は、例えばCPUがコンピュータを制御部30として機能させるための制御プログラムを実行することで実現される。
【0048】
搬送制御部31は、例えば、操作部60によりオペレータから検査開始の指示が受け付けられると、搬送部40を構成するモータに駆動信号を出力し、搬送部40にウエハ50を一定の搬送速度で搬送させる。
【0049】
照射制御部32は、例えば、操作部60によりオペレータから検査開始の指示が受け付けられると、光源11を点灯させる。
【0050】
撮像制御部33は、操作部60によりオペレータから検査開始の指示が受け付けられると、撮像部20に撮像開始のコマンドを出力し、撮像部20にウエハ画像又は標準平面画像の撮像を開始させる。
【0051】
第2演算部34は、第1演算部22の後処理を行うブロックであり、形状補正部341、断面形状算出部342、離散断面形状データ算出部343、補間断面形状データ算出部344、及び補間平面形状データ算出部345を備えている。
【0052】
形状補正部341は、ウエハ形状データと形状が最も近い標準平面形状データを、標準平面形状データ記憶部80に記憶された標準平面形状データの中から特定し、特定した標準平面形状データ及びウエハ形状データの差分を補正ウエハ形状データとして算出する。
【0053】
断面形状算出部342は、形状補正部341で算出された補正ウエハ形状データからウエハ断面形状データを算出する。ここで、断面形状算出部342は、標準平面形状データ記憶部80に記憶された各標準平面形状データの高さ及びカメラ21の視野範囲を基に、補正形状データを構成する各画素データの画素分解能を特定し、特定した画素分解能を用いてウエハ50の断面形状データを算出する。そして、断面形状算出部342は、断面形状データの算出処理を繰り返し実行することで、ウエハ50の全面の3次元形状データを算出する。
【0054】
離散断面形状データ算出部343は、標準平面形状データ記憶部80に記憶された各標準平面形状データの高さ及びカメラ21の視野範囲を基に、各標準平面形状データの画素分解能を特定し、特定した画素分解能を基に、各標準平面形状データに対応する断面形状データである離散断面形状データを算出する。
【0055】
補間断面形状データ算出部344は、離散断面形状データを補間することで、ある高さにおける標準平面の断面形状データである補間断面形状データを算出する。
【0056】
補間平面形状データ算出部345は、補間断面形状データの高さ及びカメラ21の視野範囲を基に、補間断面形状データの画素分解能を特定し、特定した画素分解能を基に、補間断面形状データに対応する標準平面形状データである補間標準平面形状データを算出する。算出された補間標準平面形状データは、標準平面形状データとしてその高さと対応付けて標準平面形状データ記憶部80に記憶される。
【0057】
操作部60は、例えばキーボート、及びマウスにより構成され、オペレータから入力される種々の指令を受け付ける。表示部70は、例えば、液晶パネルから構成され、種々の操作画像や、3次元形状データを示す画像等を表示する。
【0058】
標準平面形状データ記憶部80は、例えば、書き換え可能な不揮発性の記憶装置により構成され、標準平面形状データ取得部222により取得された標準平面形状データをその高さと対応付けて記憶すると共に、補間平面形状データ算出部345により算出された補間標準平面形状データを標準平面形状データとしてその高さと対応付けて記憶する。
【0059】
図3は、ウエハ50の高さと視野範囲との関係を説明する図であり、(A)は3次元形状測定装置の概略図、(B)はウエハ50の高さが低い場合の視野範囲を示し、(C)はウエハ50の位置が高い場合の視野範囲を示している。
【0060】
図3(B)に示すように、ウエハ50のZ方向の位置が低くなると、すなわち、カメラ21及びウエハ50間の距離が長くなると、カメラ21の視野範囲SD1は広くなるが、光切断線CLの湾曲WDが小さくなるため、高さが変わる前と同じウエハ画像を撮像しても光切断線CLは大きくなってしまい、高さが変わる前には見えていた光切断線CLの端の部分が視野範囲SD1からはみ出てしまう。
【0061】
一方、図3(C)に示すように、ウエハ50のZ方向の位置が高くなると、すなわち、カメラ21及びウエハ50間の距離が短くなると、カメラ21の視野範囲SD2は狭くなるが、光切断線CLの湾曲WDが大きくなるため、高さが変わる前と同じウエハ画像を撮像しても光切断線CLは小さくなる。
【0062】
図4は、図3(A)に示す3次元形状測定装置をX方向から見たときの構成を概念的に示した図である。ウエハ50の高さが変動する前の高さ0のときの、Y方向の視野範囲をw0(mm)、ウエハ50及びレンズLN間の距離をd(mm)、レンズLNの焦点距離をf(mm)、カメラ21の受光面SEのY方向のサイズをy(mm)とすると、w0=d×y/f・・・(1)が成り立つ。
【0063】
ウエハ50が元の高さからh(mm)高くなったときのY方向の視野範囲をwh(mm)とすると、wh=(d−h)×y/f=(d−h)/d×w0・・・(2)が成り立つ。
【0064】
基準高さである高さh0の位置で標準平面を測定したときの標準平面形状データXp_h0をXp_h0=g(p)・・・(3)とおく。但し、pは画素データを特定するためのインデックスである。
【0065】
標準平面を測定した場合、Xp_h0が曲線となっていても、各画素データの画素分解能k_h0は一定と考えてよい。よって、標準平面形状データXp_h0は、Xp_h0=g(p)×k_h0(mm)と表される。この演算結果に対して、カメラ21及び光源11の仰角を用いて後述の式(7)の演算を行えば、標準平面形状データXp_h0が示す断面形状データZp_h0を求めることができる。
【0066】
また、高さhの位置で標準平面を測定したときの標準平面形状データXp_hをXp_h=h(p)・・・(4)とおく。
【0067】
高さhにおける画素分解能をk_hとすると、画素分解能k_hは、k_h=k_h0×(d−h)/d(mm/pixel)・・・(5)と表される。
【0068】
したがって、高さhにおける標準平面形状データXp_hは、h(p)×k_h0×(d−h)/d(mm)と表される。この演算結果に対して、カメラ21及び光源11の仰角を用いて後述の式(7)の演算を行えば、標準平面形状データXp_hが示す断面形状データZp_hを求めることができる。
【0069】
図5は、高さhを6段階(h1〜h6)に変えながら、標準平面形状データXp_hを取得するときの光切断線CLの位置を示した図であり、(A)はカメラ21とウエハ50との高さの関係を示し、(B)は標準平面STに照射された光切断線を示し、(C)はカメラ21の画像座標空間で現れる光切断線CLを示している。
【0070】
標準平面STの高さhを等間隔にh1〜h6と変化させると、標準平面STに照射される光切断線CLは、CL1〜CL6へと変化する。それに伴って、画像座標空間に現れる光切断線CLもCL1〜CL6と変化する。
【0071】
ここで、画像座標空間に現れる光切断線CL1〜CL6を示す標準平面形状データXp_h1〜Xp_h6のうち、例えば、Xp_h1,Xp_h3が既知であり、Xp_h2が既知でないとして、Xp_h1,Xp_h3を補間して、Xp_h2を求めることを考える。つまり、Xp_h1,Xp_h3を既知の標準平面形状データとし、Xp_h1,Xp_h3を用いて、補間標準平面形状データXp_h2を算出することを考える。
【0072】
図5(C)に示すように、高さhを等間隔に変化させてもカメラ21の画像座標空間では、光切断線CLは等間隔に現れない。したがって、Xp_h1〜Xp_h3とのY方向の中間に位置する画素データの集合を求めてもXp_h2とはならない。
【0073】
そこで、離散断面形状データ算出部343は、標準平面形状データXp_h1,Xp_h3のそれぞれに対応する断面形状データである離散断面形状データZp_h1,Zp_h3を求める。図5(D)は、離散断面形状データZp_h1,Zp_h3の模式図を示している。標準平面STは非常に滑らかであるため、Zp_h1,Zp_h3がほぼ平らであることが分かる。
【0074】
そして、離散断面形状データ算出部343は、高さh2が高さh1と高さh3とを1:1に内分する高さを有しているため、Zp_h1,Zp_h3の間を、1:1に内分する断面形状データを補間断面形状データZp_h2として算出すればよい。
【0075】
高さh2が高さh1と高さh3とを1:1に内分する高さを有していない場合、例えば、|h3−h2|:|h2−h1|=a:bとすると、Zp_h1,Zp_h3の間を、Zp_h1を始点としてa:bに内分する断面形状データを補間断面形状データZp_h2として求めればよい。
【0076】
そして、補間平面形状データ算出部345は、高さh2の画素分解能k_h2を求め、画素分解能k_h2とカメラ21及び光源11の仰角とを後述の式(7)に代入し、補間断面形状データZp_h2から補間標準平面形状データXp_h2を求める。
【0077】
図6は、形状補正部341の処理の説明図であり、(A)はカメラ21とウエハ50との関係を示した模式図であり、(B)は補正前のウエハ形状データを示し、(C)は補正ウエハ形状データを示している。図6の例では、ウエハ50がX方向の中央部がZ方向に突出した形状を有している。そのため、図6(B)に示すように、ウエハ形状データXp_wはx座標の中央部がy座標側に突出した形状を有している。なお、カメラ21の画像座標空間は、左下の頂点を原点とし、X方向に対応するx軸と、Y方向に対応するy軸とによって規定される2次元の座標空間である。
【0078】
形状補正部341は、まず、ウエハ形状データXp_wを構成する各画素データのy座標の平均値を求める。そして、求めたy座標の平均値に最も近いy座標の平均値を有する標準平面形状データXp_hを標準平面形状データ記憶部80から特定する。
【0079】
ここで、標準平面形状データXp_hは、y座標の平均値がウエハ形状データXp_wのy座標の平均値に近くなるにつれて、ウエハ形状データXp_wの撮像時の高さに近づくため、その形状がウエハ形状データXp_wの湾曲成分に近づくことになる。よって、y座標の平均値が、ウエハ形状データXp_wのy座標の平均値に近い標準平面形状データXp_hほど、その形状がウエハ形状データXp_wに近い。
【0080】
形状補正部341は、ウエハ形状データXp_wと標準平面形状データXp_hとの差分をとる。これにより、ウエハ形状データXp_wに含まれる湾曲成分が除去され、図6(C)に示すような補正ウエハ形状データHXp_wが得られる。図6(C)に示すように、補正ウエハ形状データHXp_wは、x方向に向けてほぼ直線状となっており、湾曲成分が除去されていることが分かる。
【0081】
なお、図6(C)においては、図6(B)に示す標準平面形状データXp_hのy座標の平均値を通るx方向に平行な直線y_MGを画像座標空間にプロットし、直線y_MGを中心線とし、ウエハ形状データXp_w及び標準平面形状データXp_hの各画素データのy座標の差分値を画像座標空間にプロットすることで、補正ウエハ形状データHXp_wが求められている。
【0082】
次に、断面形状算出部342は、補正ウエハ形状データHXp_wの各画素データGpについて、y座標の値が最も近いy座標の平均値を有する標準平面形状データXp_hを標準平面形状データ記憶部80の中から特定する。そして、断面形状算出部342は、特定した標準平面形状データXp_hの高さを画素データGpの高さh_pとして特定し、特定した高さh_pから画素分解能k_h_pを画素データGpの画素分解能として求める。そして、断面形状算出部342は、求めた画素分解能k_h_pと、カメラ21及び光源11の仰角とを後述する式(7)に代入して画素データGpに対応する高さデータZhを算出する。そして、算出した高さデータZhを配列することでウエハ断面形状データZp_hを求める。
【0083】
次に、3次元形状測定装置がウエハ50の3次元形状を測定する際の処理について、フローチャートを用いて説明する。図7は、本発明の実施の形態による3次元形状測定装置がウエハ50の3次元形状を測定する際のメインルーチンを示すフローチャートである。なお、図7において、カメラ21は、X枚のウエハ画像を撮像するものとする。まず、搬送制御部31により搬送部40が駆動され、ウエハ50の搬送が開始される(ステップS1)。
【0084】
次に、カメラ21は、ウエハ50を撮像し、1フレーム目のウエハ画像の画像データを取得する(ステップS2(1))。
【0085】
図8は、ウエハ画像の一例を示した図である。なお、図8に示すウエハ画像は、x座標(垂直方向)の画素数がM個、y座標(搬送方向)の画素数がN個、つまり、M行×N列の画像データであるものとする。また、各画素の画素値は、例えば0〜255の256階調で表される。以下、画素値のことを輝度値と記述する。
【0086】
図8に示すようにx座標に沿って線状の光切断線CLが現れていることが分かる。図7に戻り、ステップS2(2)において、カメラ21は、ウエハ50を撮像し、2フレーム目のウエハ画像の画像データを取得する。これと同時に、ウエハ形状データ取得部221は、1フレーム目のウエハ画像の画像データに対して探索処理を実行する。
【0087】
ステップS2(3)において、カメラ21は、ウエハ50を撮像し、3フレーム目のウエハ画像の画像データを取得する。これと同時に、ウエハ形状データ取得部221は、2フレーム目のウエハ画像の画像データに対して、探索処理を実行し、ウエハ画像の各ラインの最大輝度画素を探索する。これと同時に、ウエハ形状データ取得部221は、1フレーム目のウエハ画像に対して、重心算出処理を実行し、各ラインの最大輝度の重心座標をサブピクセル単位で算出する。
【0088】
ステップS2(3)が終了した時点で、1フレーム目に現れた光切断線に対応する1列目の重心座標が得られる。
【0089】
以後、ステップS2(4)〜S2(X)まで、ステップS2(3)と同様の処理が繰り返し実行される。ステップS2(X)が終了した時点で、1列目〜X−2列目の重心座標が得られる。
【0090】
ステップS2(X+1)においては、カメラ21による撮像が終了されているため、探索処理及び重心処理のみが実行され、X−1列目の重心座標が得られる。
【0091】
ステップS2(X+2)においては、探索処理も終了されているため、重心算出処理のみが実行され、X列目の重心座標が得られる。
【0092】
以上のパイプライン処理より、カメラ21が1フレーム周期が経過する度に、1列分の重心座標が得られる。
【0093】
図9は、探索処理の詳細を示すフローチャートである。まず、ウエハ形状データ取得部221は、カメラ21が現在撮像している現フレームの1つ前のフレームのウエハ画像を処理対象のウエハ画像として設定する(ステップS211)。
【0094】
次に、ウエハ形状データ取得部221は、ウエハ画像上に設定する各ラインのライン番号を示すための変数iに0を代入し、iを初期化する(ステップS212)。この場合、図8に示すように、ウエハ画像上に、y方向に沿って1本のラインが設定されていることが分かる。なお、i=0が図8に示すウエハ画像の第1行目を表し、i=1が図8に示すウエハ画像の第2行目を表すというように、1本のラインはウエハ画像の1行に対応し、変数iは、ウエハ画像の各行と対応付けられている。
【0095】
次に、ウエハ形状データ取得部221は、iライン目において、輝度が最大となる画素である輝度最大画素を探索する(ステップS213)。この場合、ウエハ形状データ取得部221は、図8に示すiライン目において、例えば左端の画素から右端の画素を順次に注目画素として設定していくことで輝度最大画素を探索していく。具体的には、まず、左端の画素を注目画素として設定し、その輝度値及び座標を図略のバッファに格納する。ここで、座標としては、左端の画素から何番目の画素であるかを示す整数値を採用することができる。
【0096】
次に、右隣の画素を注目画素として設定し、注目画素の輝度値がバッファに格納した輝度値以上の場合は、バッファを注目画素の輝度値及び座標で更新する。一方、注目画素の輝度値がバッファに格納した輝度値未満の場合は、バッファに格納した輝度値及び座標を更新しない。このような処理を繰り返し行い、最終的にバッファに格納されている座標を最大輝度画素の座標x_maxとして決定し、iライン目の最大輝度画素が探索される。
【0097】
なお、求められたiライン目の最大輝度画素の座標x_maxは変数iと対応付けられて図略のバッファに格納される。
【0098】
次に、ウエハ形状データ取得部221は、全ラインについて、最大輝度画素の座標x_maxを求める処理が終了した場合(ステップS214でYES)、処理をリターンさせ、全ラインについて、最大輝度画素の座標x_maxを求める処理が終了していない場合(ステップS214でNO)、iを1インクリメントさせ(ステップS215)、処理をステップS213に戻す。
【0099】
つまり、ウエハ形状データ取得部221は、ステップS213〜S215の処理を繰り返すことで、図8に示すウエハ画像の全ラインの最大輝度画素の座標x_maxを求めるのである。
【0100】
図10は、重心算出処理の詳細を示すフローチャートである。まず、ウエハ形状データ取得部221は、カメラ21が現在撮像している現フレームの2つ前のフレームのウエハ画像を処理対象のウエハ画像として設定する(ステップS221)。
【0101】
次に、ウエハ形状データ取得部221は、探索処理と同様にして変数iに0を代入し、iを初期化する(ステップS222)。次に、ウエハ形状データ取得部221は、iライン目において探索した最大輝度画素を中心として、x座標上にn個の周辺画素を抽出し、最大輝度画素と2n個の周辺画素とを用いて、iライン目の最大輝度画素の重心座標x_subを求める(ステップS223)。
【0102】
図11は、iライン目における最大輝度画素を中心としたときの輝度値の分布を示したグラフである。図11では、座標pが最大輝度画素の座標x_maxであり、右に8個、左に8個の合計17個の画素の輝度値の分布が示されている。
【0103】
そして、ウエハ形状データ取得部221は、例えば下記の式(6)を用いて、最大輝度の重心座標を求める。
【0104】
【数1】

【0105】
但し、x_subは最大輝度の重心座標を示し、xjはiライン目における第j番目の画素の座標を示し、kjはxjの輝度値を示し、pは最大輝度画素の座標を示し、nは周辺画素を特定するためのインデックスである。
【0106】
これにより、iライン目において、最大輝度の重心座標x_subが1画素以下の小数点つき値、つまりサブピクセル単位で求まることになる。なお、ウエハ形状データ取得部221は、最大輝度の重心座標x_subを小数点の何桁目までを求めるかを予め定めておき、最大輝度の重心座標x_subがその桁数を超えると、四捨五入、切り捨て、又は切り上げる等の処理を行えばよい。
【0107】
図11の例では、実線で示すグラフのピークのxの値が最大位輝度の重心座標x_subとなる。なお、図11の例では、周辺画素の個数をn=8としたが、これは一例であり、1以上であれば計算量が膨大とならない範囲で適宜、別の値を採用してもよい。
【0108】
図10に戻り、ウエハ形状データ取得部221は、全ラインについて、最大輝度の重心座標x_subを求める処理が終了した場合(ステップS224でYES)、処理をリターンさせ、全ラインについて、重心座標x_subを求める処理が終了していない場合(ステップS224でNO)、iを1インクリメントさせ(ステップS225)、処理をステップS223に戻す。
【0109】
つまり、ウエハ形状データ取得部221は、ステップS223〜S225の処理を繰り返すことで、図8に示すウエハ画像の全ラインの最大輝度の重心座標x_subを求めるのである。ここで、ウエハ形状データ取得部221が1枚のウエハ画像において求めた最大輝度の重心座標x_subの集合がウエハ形状データである。
【0110】
なお、全ラインの最大輝度の重心座標x_subは、ウエハ画像のフレーム番号と、変数iと対応付けられて図略のバッファに格納される。
【0111】
図12は、図7のフローチャートの処理を時系列で示したタイミングチャートである。図12に示す期間T1〜T(X+1)は、それぞれ、カメラ21が1フレームのウエハ画像を撮像するために要する時間、すなわち、フレーム周期を表している。
【0112】
期間T1においては、図7に示すステップS2(1)が実行され、1フレーム目のウエハ画像が撮像されている。期間T2においては、図7に示すステップS2(2)が実行され、2枚目のフレームのウエハ画像の撮像と、1フレーム目のウエハ画像の探索処理とが同時に行われている。
【0113】
期間T3においては、図7に示すステップS2(3)が実行され、3フレーム目のウエハ画像の撮像と、2フレーム目のウエハ画像の探索処理と、1フレーム目のウエハ画像の重心算出処理とが同時に行われている。
【0114】
以後、期間T(X)まで、現フレームのウエハ画像の撮像と、1つ前のフレームのウエハ画像の探索処理と、2つ前のフレームのウエハ画像の重心算出処理とが同時に行われ、1期間が経過する毎に、1列分の最大輝度の重心座標x_subが算出される。
【0115】
図13は、探索処理と重心算出処理との処理の流れを概念的に示した図である。図13に示す縦軸は時間軸を示し、カメラ21のフレーム周期毎に目盛りが刻まれている。なお、上述したように、カメラ21のフレームレートは250fpsであるため、フレーム周期は4msecとなる。また、図13では、1フレームのウエハ画像に設定されるライン数はi=0〜479の480本とされている。
【0116】
期間T(n)において、ウエハ50が撮像され、nフレーム目のウエハ画像が取得されている。次に、期間T(n+1)において、左側に向けて停止することなく一定速度で搬送されているウエハ50が撮像され、n+1フレーム目のウエハ画像が取得されている。次に、期間T(n+2)において、左側に向けて停止することなく一定速度で搬送されているウエハ50が撮像され、n+2フレーム目のウエハ画像が取得されている。
【0117】
そして、期間T(n)において、n−1フレーム目のウエハ画像に対し、i=0〜479本のラインが設定され、各ラインの最大輝度画素が探索されると同時に、n−2フレーム目のウエハ画像に対し、i=0〜479本のラインが設定され、各ラインの最大輝度の重心座標x_subが算出されている。
【0118】
また、期間T(n+1)、T(n+2)においても、期間T(n)と同様の処理が実行される。よって、期間T(n)が経過する毎に、i=0〜479の最大輝度の重心座標x_subが得られる。
【0119】
図7に戻り、ステップS3において、形状補正部341及び断面形状算出部342は、ウエハ形状データ取得部221により算出されたウエハ形状データから断面形状データを算出する。図16は、断面形状データを算出する処理の詳細を示すフローチャートである。
【0120】
まず、形状補正部341は、1フレームのウエハ画像から算出されたi個の最大輝度の重心座標x_subをウエハ形状データXp_wとして取得する(ステップS51)。
【0121】
次に、形状補正部341は、図6(B)に示すように、ウエハ形状データXp_wと形状の近い標準平面形状データXp_hを、標準平面形状データ記憶部80の中から特定する(ステップS52)。
【0122】
例えば、標準平面形状データ記憶部80に高さh0〜h6の標準平面形状データXp_h0〜Xp_h6が記憶されているとして、ステップS51で取得されたウエハ形状データXp_wのy座標の平均値が、高さh1の標準平面形状データXp_h1のy座標の平均値に最も近い場合、標準平面形状データXp_h1が形状の近いデータとして特定される。
【0123】
次に、形状補正部341は、ウエハ形状データXp_wとステップS52で特定した標準平面形状データXp_hとの差分をとり、補正ウエハ形状データHXp_wを算出する(ステップS53)。これにより、図6(C)に示すようにウエハ形状データXp_wから湾曲成分が除去される。
【0124】
次に、断面形状算出部342は、補正ウエハ形状データHXp_wを構成する各画素データGpに対応する高さを特定する(ステップS54)。ここでは、ある画素データGpについて、そのy座標の値が、標準平面形状データXp_h0〜Xp_h6のうちy座標の平均値が最も近い標準平面形状データの高さが、画素データGpの高さとして特定される。
【0125】
次に、断面形状算出部342は、各画素データGpの高さから、各画素データGpに対応する画素分解能k_h_pを特定する(ステップS55)。例えば、ある画素データGpの高さがh1と特定されたとすると、高さh1の画素分解能k_h1は、式(5)より、k_h1=k_h0×(d−h)/dにより得られるため、画素データGpの画素分解能k_h_pはk_h1となる。
【0126】
次に、断面形状算出部342は、画素データGpのy座標の値(=y_Gp)と、画素分解能k_h_pとを下記の式(7)に代入し、高さデータZhを算出し、算出した高さデータを変数iの順番で配列することで、断面形状データを算出する(ステップS56)。
【0127】
Zh(μm)=k_h_p×y_Gp×cosθ/sin(θ+φ)・・・(7)
但し、θは光源11の仰角を示し、φはカメラ21の仰角を示す。
【0128】
図14は、断面形状データを算出する処理の説明図である。図15は、光源11とカメラ21との設置状態を模式的に示した図である。図14に示す四角形はウエハ画像を示し、四角形内に示す太線はウエハ形状データが示す光切断線CL’を示している。
【0129】
図15に示すように、光源11の仰角はZ方向を基準としてθに設定され、カメラ21の仰角はZ方向を基準としてφに設定されている。そして、光源11から照射された光がカメラ21に入射する位置は、ウエハ50の凹凸に応じて図14に示すy座標上で前後することになる。よって、最大輝度の重心座標x_subを式(7)に代入することで、ウエハ50の各位置における高さデータを求めることができる。つまり、ウエハ形状データに対応する断面形状データを求めることができる。
【0130】
なお、本実施の形態では、高さh0における画素分解能k_h0を既知とし、この画素分解能k_h0を用いて高さh1〜h6の画素分解能k_h1〜k_h6を求めるとする。なお、画素分解能k_h0は、図14に示すように、ウエハ画像のx座標の長さをML(μm)、y座標の長さをNL(μm)とし、縦方向のピクセル数をM、横方向のピクセル数をNとすると、k_h0=NL/Nで表される。
【0131】
そして、断面形状算出部342は、光切断線CL’上の各画素データについて求めたM個の高さデータZhを1列に配列する。これにより、ウエハ50の断面形状データが得られる。
【0132】
なお、図15において、θ+φは90度となることが好ましい。また、θは例えば45度〜82度、好ましくは60度〜82度である。また、φは例えば45度〜8度、好ましくは、30度〜8度である。これにより、光源11〜13はウエハ50を斜め方向から照射し、カメラ21はウエハ50を上方から撮像することが可能となり、高分解能の高さデータを得ることが可能となる。
【0133】
図7に戻り、ステップS4において、断面形状算出部342は、求めた断面形状データをフレーム番号順に配列することで、ウエハ50の全面の3次元形状データを算出する。図7の例ではウエハ画像はX枚であるため、断面形状データがX列で配列された3次元形状データが得られる。
【0134】
次に、補間標準平面形状データの取得処理について説明する。図17は、補間標準平面形状データの取得処理を示したフローチャートである。以下の説明では、標準平面の高さをh0,h2,h4,h6と変化させて、高さh0,h2,h4,h6の標準平面形状データを実測により求め、高さh1,h3,h5の標準平面形状データを補間により求める場合を例に挙げて説明する。
【0135】
まず、ユーザは、標準平面の高さを設定し、カメラ21の下部に標準平面を載置する(ステップS31)。このフローチャートの例では標準平面の高さがh0,h2,h4,h6に順次に設定される。
【0136】
なお、高さh0,h2,h4,h6は、カメラ21との距離に応じて予め定められた値を有し、それぞれの間隔は2hである。
【0137】
次に、光源11は、標準平面に光切断線を照射する(ステップS32)。次に、カメラ21は、光切断線が照射された標準平面を撮像し、標準平面画像を取得する(ステップS33)。次に、標準平面形状データ取得部222は、光切断線が照射された標準平面に対して、図9に示す探索処理及び図10に示す重心算出処理を実行し、標準平面形状データを取得する(ステップS34)。
【0138】
なお、標準平面画像に対して重心算出処理を実行する場合、1枚の標準平面画像に対してのみ重心算出処理を実行すればよいため、図10に示すステップS221は、「2つ前のフレームのウエハ画像を処理対象として設定する」ではなく、「1枚の標準平面画像を処理対象として設定する」となる。
【0139】
次に、標準平面形状データ取得部222は、ステップS34で得られた標準平面形状データを、その高さデータと対応付けて、標準平面形状データ記憶部80に記憶させる(ステップS35)。
【0140】
次に、標準平面形状データ取得部222は、高さh0,h2,h4,h6のそれぞれについて標準平面形状データを取得し、標準平面形状データの取得回数が所定回数である4回に到達した場合(ステップS36でYES)、処理をステップS37に進める。一方、標準平面形状データ取得部222は、標準平面形状データの取得回数が所定回数に到達していない場合(ステップS36でNO)処理をステップS31に戻し、次の高さに対応する標準平面形状データを取得する処理を実行する。以上のステップS31〜S36のループが4回繰り返され、高さh0,h2,h4,h6の4つの標準平面形状データが得られ、標準平面形状データ記憶部80に記憶される。
【0141】
次に、離散断面形状データ算出部343は、算出対象となる補完平面形状データの高さを設定する(ステップS37)。このフローチャートの例では、まず、高さh1が算出対象となる補間標準平面形状データの高さとして設定され、高さh3,h5が順次に算出対象となる補間標準平面形状データの高さとして設定されるものとする。
【0142】
次に、離散断面形状データ算出部343は、標準平面形状データ記憶部80に記憶された標準平面形状データのうち、ステップS37で設定した高さを跨いで前後する高さを有する2つの標準平面形状データを特定し、この2つの標準平面形状データのそれぞれの離散断面形状データを算出する(ステップS38)。例えば、ステップS37で算出対象の高さがh1と設定された場合、高さh0,h2の標準平面形状データXp_h0,Xp_h2の離散断面形状データZp_h0,Zp_h2が算出される。
【0143】
具体的には、高さh0の画素分解能k_h0が既知であるため、h2の画素分解能k_h2は、式(5)より、k_h2=k0×(d−2h)/2hにより算出される。そして、画素分解能k_h0、光源11及びカメラ21の仰角θ及びφ、並びに標準平面形状データXp_h0の各画素データのy座標y_Gpが式(7)に代入され、離散断面形状データZp_h0が算出される。同様にして、離散断面形状データZp_h2も算出される。
【0144】
次に、補間断面形状データ算出部344は、ステップS38で求めた2つの離散断面形状データから補間断面形状データを算出する(ステップS40)。補間断面形状データZp_h1の例では、補間断面形状データ算出部344は、離散断面形状データZp_h0,Zp_h2の対応する高さデータ同士を1:1に内分する高さデータZhを求め、各高さデータZhを配列することで、補間断面形状データZp_h1を算出する(ステップS39)。
【0145】
次に、補間平面形状データ算出部345は、ステップS39で算出した補間断面形状データから式(7)を用いて補間標準平面形状データを算出する(ステップS40)。補間標準平面形状データXp_h1の例では、補間平面形状データ算出部345は、補間断面形状データZp_h1を構成する各高さデータZhと、画素分解能k_h1と、光源11の仰角θと、カメラ21の仰角φとを、式(7)に代入する。すなわち、Zh=k_h1×y_Gp×cosθ/sin(θ+φ)から、画素データy_Gpを求める。そして、求めた画素データy_Gpを画像座標空間にプロットすることで、補間標準平面形状データXp_h1を算出する。
【0146】
次に、補間平面形状データ算出部345は、ステップS40で算出した補間標準平面形状データを標準平面形状データ記憶部80に標準平面形状データとして、その高さデータと対応付けて記憶させる(ステップS41)。
【0147】
次に、補間平面形状データ算出部345は、高さh1,h3,h5のそれぞれについて補間標準平面形状データを算出し、補間標準平面形状データの算出回数が所定回数である3回に到達した場合(ステップS42でYES)、処理を終了する。一方、補間平面形状データ算出部345は、補間標準平面形状データの算出回数が所定回数に到達していない場合(ステップS42でNO)処理をステップS37に戻し、次の高さに対応する補間標準平面形状データを取得する処理を実行する。以上のステップS37〜S42のループが3回繰り返され、高さh1,h3,h5の3つの補間標準平面形状データが得られ、標準平面形状データとして標準平面形状データ記憶部80に記憶される。以上により、高さh0〜h6の7つの標準平面形状データが得られる。
【0148】
上記実施の形態では、形状補正部341は、y座標の平均値を用いてウエハ形状データXp_wに形状が近い標準平面形状データXp_hを特定したが、ウエハ形状データXp_wと標準平面形状データ記憶部80に記憶されている標準平面形状データXp_hとの差分を求め、この差分が最小となる標準平面形状データXp_hをウエハ形状データXp_wに形状が近い標準平面形状データXp_hとして特定してもよい。
【0149】
この場合、形状補正部341は、各標準平面形状データXp_hとウエハ形状データXp_wとの対応する画素データ同士のy座標の差分値の合計値を求め、この合計値が最小となる標準平面形状データXp_hをウエハ形状データXp_wに形状が近い標準平面形状データXp_hとして算出すればよい。
【0150】
また、上記実施の形態では、標準平面形状データ記憶部80は、h0〜h6の標準平面形状データを予め記憶したが、これは一例であり、8個以上の標準平面形状データを予め記憶してもよいし、2個以上、5個以下の標準平面形状データを記憶してもよい。
【符号の説明】
【0151】
10 照射部(照射手段)
11 光源
20 撮像部(撮像手段)
21 カメラ
22 第1演算部
30 制御部
31 搬送制御部
32 照射制御部
33 撮像制御部
34 第2演算部
50 ウエハ
60 操作部
80 標準平面形状データ記憶部(標準平面形状データ記憶手段)
221 ウエハ形状データ取得部(ウエハ形状データ取得手段)
222 標準平面形状データ取得部(標準平面形状データ取得手段)
341 形状補正部(形状補正手段)
342 断面形状算出部(断面形状算出手段)
343 離散断面形状データ算出部(離散断面形状データ算出手段)
344 補間断面形状データ算出部(補間断面形状データ算出手段)
345 補間平面形状データ算出部(補間平面形状データ算出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池ウエハの3次元形状を測定する3次元形状測定装置であって、
撮像手段と、
前記太陽電池ウエハのソーマークと交差する方向に光切断線を照射する照射手段と、
所定の標準平面の高さを数段階変化させ、前記光切断線が照射された標準平面を前記撮像手段に撮像させ、得られた標準平面画像から各高さにおける前記光切断線の形状を示す標準平面形状データを取得する標準平面形状データ取得手段と、
前記光切断線が照射された太陽電池ウエハを前記撮像手段に撮像させ、得られたウエハ画像から前記光切断線の形状を示すウエハ形状データを取得するウエハ形状データ取得手段と、
前記ウエハ形状データと形状が最も近い標準平面形状データを、前記標準平面形状データ取得手段により取得された標準平面形状データの中から特定し、特定した標準平面形状データ及び前記ウエハ形状データの差分を補正ウエハ形状データとして算出する形状補正手段と、
前記補正ウエハ形状データを基に、前記太陽電池ウエハの断面形状データを算出する断面形状算出手段とを備える3次元形状測定装置。
【請求項2】
各標準平面形状データの高さ及び前記撮像手段の視野範囲を基に、各標準平面形状データの画素分解能を特定し、特定した画素分解能を基に、各標準平面形状データに対応する断面形状データである離散断面形状データを算出する離散断面形状データ算出手段と、
前記離散断面形状データを補間することで、ある高さにおける前記標準平面の断面形状データである補間断面形状データを算出する補間断面形状データ算出手段と、
前記補間断面形状データの高さ及び前記撮像手段の視野範囲を基に、前記補間断面形状データの画素分解能を特定し、特定した画素分解能を基に、前記補間断面形状データに対応する標準平面形状データである補間標準平面形状データを算出する補間平面形状データ算出手段とを更に備える請求項1記載の3次元形状測定装置。
【請求項3】
前記断面形状算出手段は、前記標準平面形状データの高さ及び前記撮像手段の視野範囲を基に、前記補正形状データを構成する各画素データの画素分解能を特定し、特定した画素分解能を用いて前記太陽電池ウエハの断面形状データを算出する請求項1又は2記載の3次元形状測定装置。
【請求項4】
前記標準平面形状データ取得手段により取得された数段階の標準平面形状データをその高さと対応付けて記憶すると共に、前記補間平面形状データ算出手段により算出された補間標準平面形状データを標準平面形状データとしてその高さと対応付けて記憶する標準平面形状データ記憶手段を更に備え、
前記形状補正手段は、前記標準平面形状データ記憶手段に記憶された標準平面形状データの中から、前記ウエハ形状データに形状が最も近い標準平面形状データを特定する請求項2記載の3次元形状測定装置。
【請求項5】
前記撮像手段は、前記光切断線が照射された前記太陽電池ウエハを一定周期で連続的に撮像し、
前記ウエハ形状算出手段は、前記撮像手段による撮像処理と並行して前記ウエハ形状データを算出する請求項1〜4のいずれかに記載の3次元形状測定装置。
【請求項6】
前記撮像手段は、前記太陽電池ウエハを上方から撮像し、
前記照射部は、前記太陽電池ウエハを斜め方向から照射する請求項1〜5のいずれかに記載の3次元形状測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−2596(P2012−2596A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136315(P2010−136315)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【出願人】(000130259)株式会社コベルコ科研 (174)
【Fターム(参考)】