説明

3次元形状測定装置

【課題】出射光学系の部品の取り付け角度がずれたとき、出射光学系から出射されるレーザ光の光軸方向のずれを相殺するように出射光学系に入射するレーザ光の光軸の方向を調整することができる3次元形状測定装置を提供する。
【解決手段】レーザ光を出射するレーザ光源10とレーザ光を走査する第1ミラー16との間に、直交する2つの回転軸回りに回転可能に支持されたミラー14aを設ける。測定対象物OBからの反射光を受光して受光位置に応じた信号を出力する第1受光センサ24と、第1受光センサ24にて反射した反射光を受光して受光位置に応じた信号を出力する第2受光センサ26を設ける。3次元カメラCAと測定対象物OBが所定の位置関係になるようにセットし、反射光が第2受光センサ26の所定の範囲内にて受光されるように、ミラー14aを回転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物にレーザ光を走査しながら照射し、その反射光である散乱光を受光センサで受光して、レーザ光の照射位置又は照射方向と、反射光の受光位置との関係から、3角測量の原理により、測定対象物の3次元形状を測定する3次元形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されているように、測定対象物にレーザ光を走査しながら照射し、照射したレーザ光の照射位置又は照射方向と、測定対象物からの反射光(散乱光)の受光位置との関係から、3角測量の原理により、測定対象物の3次元形状を測定する3次元形状測定装置は知られている。上記のような3次元形状測定装置において測定精度を高く保つためには、測定対象物に照射されるレーザ光の光軸の方向が一定に保たれている必要があるが、3次元形状測定装置を使用しているうちに、レーザ光の出射光学系を構成する部品の取り付け位置がずれ、測定対象物に照射されるレーザ光の光軸の方向がずれることがある。この問題に対応するために、例えば下記特許文献2に示されているように、レーザ光の光軸の位置を自動調整する機能を備えた3次元形状測定装置も知られている。この3次元形状測定装置においては、レーザ光源から出射されたレーザ光を、回転可能に設けられたガラス板に入射させ、ガラス板の回転角度を調整して、レーザ光の光軸の位置を変更可能にしている。これにより、出射光学系を構成する部品の取り付け位置がずれてレーザ光の光軸の位置がずれたとしても、測定対象物からの反射光を、ラインセンサの中心線位置(すなわち、受光光量が最大になる位置)で受光するように、レーザ光の光軸の位置を調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3554264号公報
【特許文献2】特開2009−98046号公報
【発明の概要】
【0004】
しかし、上記特許文献2に記載されたレーザ光の光軸の位置調整機能は、3次元形状測定装置の製造段階におけるレーザ光の光軸の位置調整のために設けられているものであり、レーザ光の光軸の位置を1方向に平行移動させることしかできない。したがって、例えば、出射光学系を構成する部品の取り付け角度がずれることにより、測定対象物に照射されるレーザ光の光軸の方向(角度)がずれたときには、上記特許文献2に記載されたレーザ光の光軸の位置調整機能によっては対処することができない。
【0005】
本発明は上記問題に対処するためになされたもので、その目的は、出射光学系の部品の取り付け角度がずれたとき、出射光学系から出射されるレーザ光の光軸方向のずれを相殺するように出射光学系に入射するレーザ光の光軸の方向を調整することができる3次元形状測定装置を提供することにある。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、後述する実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の各構成要件は、実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、測定対象物(OB)に照射されるレーザ光を出射するレーザ光源(10)と、レーザ光源から出射されたレーザ光を入射し、前記入射したレーザ光の光軸方向を変更して出射する光学部品(16)と、光学部品を駆動して、レーザ光が、測定対象物の表面を走査しながら照射されるようにする走査手段(20,32)と、測定対象物の表面にて反射したレーザ光の散乱光を受光して、受光位置に応じた第1の位置信号を出力する第1の受光センサ(24)と、走査手段による光学部品の駆動量及び第1の位置信号が表す受光位置を用いて、3角測量の原理に基づいて測定対象物の表面の形状を表す3次元座標データを算出する座標データ算出手段(68)とを備えた3次元形状測定装置において、レーザ光源と光学部品の間に設けられ、光学部品に入射するレーザ光の光軸方向を変更可能な光軸方向変更手段(14)と、第1の受光センサにて反射した散乱光を受光して、受光位置に応じた第2の位置信号を出力する第2の受光センサ(26)と、光学部品から測定対象物までの距離を所定の距離に設定したとき、第1の受光センサにて反射した散乱光を第2の受光センサの所定の位置にて受光するように、光軸方向変更手段によって光軸方向を調整する光軸方向調整手段(S100〜S162)を備えたことにある。
【0007】
上記のように構成した3次元形状測定装置によれば、第2の受光センサにおける測定対象物で発生した散乱光の受光位置に基づいて、光学部品に入射するレーザ光の光軸方向を調整することができる。したがって、光学部品の取り付け角度がずれて、測定対象物に照射されるレーザ光の光軸方向がずれたとしても、このずれを相殺するように光学部品に入射するレーザ光の光軸方向を調整することができる。これにより、3次元形状測定の精度を保つことができる。
【0008】
また、本発明の他の特徴は、第2の位置信号の強度に応じて、レーザ光源から出射するレーザ光の強度を制御するレーザ光強度制御手段(62)を備えたことにある。これによれば、第2の位置信号の強度が一定になるよう、レーザ光源から出射されるレーザ光の強度を制御することができる。これにより、第1の受光センサで受光する測定対象物からの反射光(散乱光)の強度を一定にでき、3次元形状測定の精度をより高くすることができる。
【0009】
また、本発明の他の特徴は、光軸方向変更手段は、レーザ光源から出射されたレーザ光の光軸に垂直な第1の回転軸(X)及び第1の回転軸に垂直な第2の回転軸(Y)回りに回転可能に支持されたレーザ光を反射するミラー部(14a)と、供給された駆動信号に応じてミラー部を第1の回転軸及び第2の回転軸回りに回転させて変位させる駆動装置(14b)とが一体的に形成されていることにある。これによれば、レーザ光の光軸方向調整のためのモータ、減速装置などの大きな部品が不要なので、3次元形状測定装置を小型化できる。
【0010】
また、本発明の他の特徴は、第2の位置信号を所定の時間間隔で取得し、前記取得した第2の位置信号を演算して、光軸方向変更手段による光軸方向の調整が必要か否かを表す情報を出力する演算手段(S248)を備えたことにある。これによれば、ユーザは、出力された演算結果によって、光軸方向の調整が必要か否かを判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る3次元形状測定装置の全体概略図である。
【図2A】図1の3次元カメラの正面図である。
【図2B】図1の3次元カメラの平面図である。
【図3】図1の第1ミラーの正面図である。
【図4】第2受光センサの正面図である。
【図5】図1の第1増幅回路、第2増幅回路、第1受光位置検出回路、第2受光位置検出回路及びレーザ光量補正回路の具体的構成を示すブロック図である。
【図6】コントローラが実行する光軸方向調整処理のフローチャートである。
【図7】コントローラが実行する3次元形状測定処理のフローチャートである。
【図8A】光軸方向がずれた状態の一例を示す説明図である。
【図8B】図8Aの光軸方向のずれを調整した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態に係る3次元形状測定装置の全体構成について図1を用いて説明する。この3次元形状測定装置は、レーザ光を走査しながら測定対象物OBに照射するとともに、同照射による測定対象物OBからの反射光(散乱光)を受光する3次元カメラCAを備えている。
【0013】
3次元カメラCAは、レーザ光源10、コリメートレンズ12、光軸方向調整ミラー14、第1ミラー16、第2ミラー18、モータ20、結像レンズ22及び第1受光センサ24を備えた筐体30を有する。レーザ光源10から出射されたレーザ光は、コリメートレンズ12、光軸方向調整ミラー14及び第1ミラー16を介して測定対象物OBに照射される。そして、測定対象物OBからの反射光(散乱光)は、第2ミラー18及び結像レンズ22を介して、第1受光センサ24に導かれて受光される。また、筐体30は、第2受光センサ26も備えている。第2受光センサは、第1受光センサ24にて反射した測定対象物からの反射光(散乱光)を受光する。また、3次元カメラCAは、筐体30を回転させるモータ32及び減速装置34も有する。この3次元形状測定装置は、第1ミラー16の取り付け角度がずれて、測定対象物OBに照射されるレーザ光の光軸方向がずれたときに、後述する光軸方向調整処理により、光軸方向調整ミラー14の回転角度を調整して、光軸方向を調整する。
【0014】
つぎに、3次元カメラCAを構成する各部品の機能及び配置について、図2A及び図2Bを用いて説明する。図2Aは、3次元カメラCAの正面図であり、図2Bは、3次元カメラCAの平面図である。以下の説明においては、3次元カメラCAの上下方向及び左右方向を、図2Aの上下方向及び左右方向とする。また、3次元カメラCAの奥行き方向を、図2Bの上下方向とする。すなわち、図2Bの上側が3次元カメラCAの背面側であり、図2Bの下側が3次元カメラCAの正面側である。図2Aにおいては、測定対象物OBは、紙面の表面側に位置していて、図示されていない。また、図2A及び図2Bにおいては、奥行き方向及び上下方向に重なって配置される部品の図示を適宜省略している。
【0015】
レーザ光源10は、筐体30の上部の中央に固定されていて、3次元カメラCAから測定対象物OBまでの距離を測定するためのレーザ光を筐体30の背面側(図2Bにおいて上側)へ出射する。コリメートレンズ12は、レーザ光源10のレーザ出射口側にて筐体30に固定されていて、レーザ光源10からのレーザ光を平行光に変換する。光軸方向調整ミラー14は、図3に示すように、回転軸14a1及び回転軸14a2回りに回転可能に支持されたミラー14aと、ミラー14aを供給される電気信号の強度に応じた回転角度に変位させる駆動装置14bとが一体的に形成されたMEMSミラー(Micro Electro Mechanical Systems Mirror(微小電気機械システムミラー))である。以下の説明においては、回転軸14a1をX軸と呼び、回転軸14a2をY軸と呼ぶ。X軸とY軸は、直交している。駆動装置14bは、ミラー14aをX軸回りに正転逆転駆動する第1駆動装置14b1とミラー14aをY軸回りに正転逆転駆動する第2駆動装置14b2からなる。光軸方向調整ミラー14は、ミラー14aのX軸回り及びY軸回りの回転角度が0°のとき、X軸とコリメートレンズ12からのレーザ光の光軸が直交し、かつY軸とコリメートレンズ12からのレーザ光の光軸が45°の角度をなすようにして筐体30に固定されている。コリメートレンズ12によって平行光とされたレーザ光は、ミラー14aによって反射され、第1ミラー16に入射する。
【0016】
第1ミラー16は、モータ20の駆動軸に組み付けられていて、モータ20によって駆動軸周りに正転逆転駆動される。モータ20内には、モータ20の回転軸の回転を検出して、同回転を表す回転検出信号を出力するエンコーダ20aが組み込まれている。この回転検出信号は、モータ20の回転軸の回転位置が基準回転位置に来るごとに発生されるz相信号φと、所定の微小な回転角度ずつハイレベルとローレベルを繰り返す互いにπ/2だけ位相のずれたA相信号φ及びB相信号φからなるパルス列信号とからなる。第1ミラー16に入射した測定対象物OBからの反射光は、第1ミラー16によって反射されて、筐体30の正面部に設けられた開口部30a及びフレームFRの正面部に設けられた開口部FRaから外側へ向けて出射され、測定対象物OBに照射される。以下の説明においては、モータ20の駆動軸をX軸と呼ぶ。また、ミラー14aのX軸回り及びY軸回りの回転角度が0°のときに、第1ミラー16に入射するレーザ光の光軸をY軸と呼ぶ。
【0017】
第2ミラー18は、第1ミラー16の下方にてモータ20の駆動軸に組み付けられていて、モータ20の駆動軸回りに正転逆転駆動される。第1ミラー16と第2ミラー18の向き(回転角度)は同一である。第2ミラー18は、モータ20の駆動軸方向に延設された長尺状に形成されている。第2ミラー18は、測定対象物OBからの反射光(散乱光)を図2Aにおいて右斜め下方へ反射する。結像レンズ22は、第2ミラー18の右斜め下方にて筐体30に固定されていて、第2ミラー18からの反射光を受光センサ24上に結像させる。受光センサ24は、筐体30の下部の右奥に固定されていて、測定対象物OBからの反射光を第2ミラー18及び結像レンズ22を介して受光する。第1受光センサ24は、受光量に応じた電気信号を出力する複数の受光素子を1列に配置したラインセンサである。第1受光センサ24は、複数の受光素子が配置された面が左斜め下方を向くようにして筐体30に固定されている。
【0018】
第2受光センサ26は、第1受光センサ24の左斜め下方にて筐体30に固定されていて、第1受光センサ24にて反射した反射光を受光する。第2受光センサ26は、図4に示すように、レーザ光を受光する正方形状の受光面を備え、受光面の各辺に1つずつ設けられた電極26a1,26a2,26b1,26b2から受光面における受光位置を表す受光信号を出力するPSD(Position Sensitive Detector(半導体位置検出素子))である。電極26a1と電極26a2は、対向しており、電極26b1と電極26b2も対向している。各電極からは、各電極から受光位置までの距離に反比例した強度の受光信号が出力される。ここで、第2受光センサ26における受光位置の座標を表すために、第2受光センサ26の受光面における座標軸としてY軸及びZ軸を定義する。Y軸の方向は、電極26a1及び電極26a2が設けられた辺に直交する方向(すなわち、電極26b1及び電極26b2が設けられた辺に平行な方向)であり、Z軸の方向は、電極26b1及び電極26b2が設けられた辺に直交する方向(すなわち、電極26a1及び電極26a2が設けられた辺に平行な方向)である。第2受光センサ26は、Z軸方向が筐体30の奥行き方向に一致し、かつ電極26a1側が電極26a2側よりも上方に位置して受光面が右斜め上方を向くようにして筐体30に固定されている。
【0019】
この3次元形状測定装置の製造時においては、第1受光センサ24で反射した反射光の第2受光センサ26における受光位置が、Y軸上であって3次元カメラCAと測定対象物OBの距離に応じた位置になるように、第1ミラー16の取り付け角度が調整されている。しかし、第1ミラー16の取り付け角度がずれて、測定対象物OBに照射されるレーザ光の光軸の方向がずれると、測定対象物OBからの反射光の光軸の方向もずれるので、第1受光センサ24で反射した反射光の第2受光センサ26における受光位置もずれる。このとき、第2受光センサ26の受光位置が本来の受光位置(すなわち、第1ミラー16の取り付け位置及び取り付け角度がずれていないときの受光位置)になるように、光軸方向調整ミラー14のX軸回りの回転角度θx及びY軸回りの回転角度θyを調整することにより、第1ミラー16のずれによる光軸方向のずれを相殺することができる。
【0020】
筐体30は、軸30bによってY軸周りに回転可能に3次元カメラCAのフレームFRに支持されている。軸30bは、減速装置34を介してモータ32の回転軸に組み付けられている。モータ32内には、エンコーダ20aと同様のエンコーダ32aが組み込まれている。
【0021】
また、この3次元カメラCAは、ミラー駆動回路40、ミラー角度検出回路42、筐体駆動回路44、筐体角度検出回路46、レーザ駆動回路48、センサ信号取り込み回路50、第1増幅回路54、第1受光位置検出回路56、第2増幅回路58、第2受光位置検出回路60、レーザ光量調整回路62、光軸方向調整ミラー駆動回路64及びコントローラ68も備えている。
【0022】
ミラー駆動回路40は、コントローラ68によって制御されて、エンコーダ20aから入力する回転検出信号のうちのパルス列信号の所定時間あたりのパルス数が設定された値になるよう、モータ20を駆動する信号を出力する。ミラー角度検出回路42は、エンコーダ20aから回転検出信号を入力し、入力した回転検出信号のうちのパルス列信号を用いて、第1ミラー16及び第2ミラー18のX軸回りの回転角度θxを算出する。ミラー角度検出回路42は、コントローラ68から、第1ミラー16及び第2ミラー18の回転角度θxを出力するよう指示されると、前記算出した回転角度θxを表すデジタルデータをコントローラ68に出力する。また、前記算出した回転角度θxは、ミラー駆動回路40にも出力され、ミラー駆動回路40によるモータ20の回転駆動の制御にも利用される。
【0023】
筐体駆動回路44は、モータ32を駆動するための駆動信号を出力する。筐体駆動回路44は、エンコーダ32aから入力する回転検出信号のうちのパルス列信号の所定時間あたりのパルス数が設定された値になるよう、駆動信号を制御する。すなわち、モータ32の回転速度が一定になるよう、駆動信号を制御する。モータ32は、筐体駆動回路44から駆動信号を供給されて一定の速度で回転し、減速装置34を介して筐体30を回転させる。筐体30は、3次元形状測定の開始から終了まで一定の回転速度で一定の方向へ回転する。筐体30の回転速度は、第1ミラー16の回転速度よりも遅い。筐体角度検出回路46は、エンコーダ32aから回転検出信号を入力し、入力した回転検出信号のうちのパルス列信号を用いて、筐体30のY軸回りの回転角度θyを算出する。筐体角度検出回路46は、コントローラ68から、筐体30の回転角度θyを出力するよう指示されると、前記算出した回転角度θyを表すデジタルデータをコントローラ68に出力する。また、前記算出した回転角度θyは、筐体駆動回路44にも出力され、筐体駆動回路44によるモータ32の回転駆動の制御にも利用される。
【0024】
レーザ駆動回路48は、コントローラ68から測定開始の指示を入力すると、予め設定された強度の駆動信号をレーザ光源10に供給する。そして、後述するレーザ光量調整回路62から供給されるレーザ強度調整信号を入力すると、このレーザ強度調整信号に基づいて、第2受光センサ26が受光する反射光の強度が設定された強度になるよう、レーザ光源10に供給される駆動信号を制御する。具体的には、レーザ強度調整信号の強度が「0」になるように、レーザ光源10に供給する電圧及び電流を制御する。これにより、第1受光センサ24が受光する測定対象物OBからの反射光(散乱光)の強度を一定にできる。センサ信号取り込み回路50は、第1受光センサ24に接続されていて、コントローラ68からの指示に応答して、第1受光センサ24の各受光素子が出力する信号を設定された周期で取り込んで、前記取り込んだ信号の強度に相当するデジタルデータをコントローラ68へ出力する。
【0025】
第1増幅回路54は、図5に示すように、第2受光センサ26の電極26a1から出力された受光信号を増幅して受光信号Yaとして出力する増幅回路54aと、第2受光センサ26の電極26a2から出力された受光信号を増幅して受光信号Ybとして出力する増幅回路54bからなる。受光信号Ya及び受光信号Ybは、第1受光位置検出回路56に供給される。第1受光位置検出回路56は、減算回路56a、加算回路56b、除算回路56c及びA/D変換回路56dからなる。減算回路56aは、受光信号Yaの強度から受光信号Ybの強度を減算した減算値Ya−Ybを出力する。加算回路56bは、受光信号Yaの強度と受光信号Ybの強度を加算した加算値Ya+Ybを出力する。除算回路56cは、減算回路56aが出力した減算値Ya−Ybを加算回路56bが出力した加算値Ya+Ybで除した除算値(Ya−Yb)/(Ya+Yb)を出力する。この除算値(Ya−Yb)/(Ya+Yb)は、受光位置の座標のY軸成分に対応している。A/D変換回路56dは、コントローラ68からの指示に応答して、除算回路56cから出力された除算値(Ya−Yb)/(Ya+Yb)をデジタル信号に変換してコントローラ68に出力する。
【0026】
第2増幅回路58の構成は、第1増幅回路54と同様である。すなわち、第2増幅回路58は、電極26b1から出力された受光信号を増幅して受光信号Zaとして出力する増幅回路58aと、電極26b2から出力された受光信号を増幅して受光信号Zbとして出力する増幅回路58bからなる。また、第2受光位置検出回路60の構成は、第1受光位置検出回路56と同様である。すなわち、第2受光位置検出回路60は、第1受光位置検出回路56と同様の減算回路60a、加算回路60b、除算回路60c及びA/D変換回路60dからなり、受光信号Za及び受光信号Zbを用いて受光位置の座標のZ軸成分に対応する除算値(Za−Zb)/(Za+Zb)を算出し、コントローラ68からの指示に応答して、除算値(Za−Zb)/(Za+Zb)をデジタル信号に変換してコントローラ68に出力する。
【0027】
レーザ光量調整回路62は、合算回路62a及び減算回路62bからなる。合算回路62aは、受光信号Ya、受光信号Yb、受光信号Za及び受光信号Zbを入力して、これらの信号の強度を合算した合算値Ya+Yb+Za+Zbを出力する。減算回路62bは、合算回路62aから出力された合算値Ya+Yb+Za+Zbを入力する。また、減算回路62bは、測定開始の前に予め、コントローラ68から第2受光センサ26が受光する反射光の強度に相当する基準信号の強度を入力して記憶している。減算回路62bは、基準信号の強度から合算値の強度を減算した減算値に相当する信号をレーザ強度調整信号としてレーザ駆動回路48に供給する。
【0028】
光軸方向調整ミラー駆動回路64は、コントローラ68によって制御されて、光軸方向調整ミラー14を駆動する信号を出力する。光軸方向調整ミラー駆動回路64は、ミラー14aのX軸回りの回転角度θxを目標の回転角度に設定する駆動信号を第1駆動装置14b1に供給する第1駆動信号出力回路64aと、ミラー14aのY軸回りの回転角度θyを目標の角度に設定する駆動信号を第2駆動装置14b2に供給する第2駆動信号出力回路64bとからなる。第1駆動信号出力回路64a及び第2駆動信号出力回路64bは、前回の光軸方向調整処理において決定した光軸方向調整ミラー14に供給する駆動信号の信号強度を記憶するメモリ64a1及びメモリ64b1をそれぞれ備える。ただし、一度も光学調整処理を実行していない場合、メモリ64a1及びメモリ64b1に記憶されている駆動信号の強度は「0」である。光軸方向調整ミラー駆動回路64は、コントローラ68から測定開始の指示に応答して、メモリ64a1及びメモリ64b1に記憶されている強度の駆動信号を光軸方向調整ミラー14に供給する。
【0029】
コントローラ68は、CPU、ROM、RAM、ハードディスクなどからなるマイクロコンピュータによって構成されており、キーボード、マウスなどからなる入力装置70からの指示に従って図6の光軸方向調整プログラム及び図7の3次元形状測定処理プログラムを実行する。コントローラ68は、光軸方向調整プログラムの実行により、第1ミラー16に入射する光軸の方向を調整する。また、コントローラ68は、3次元形状測定処理プログラムの実行により、測定対象物OBの3次元画像データを作成して、測定対象物OBの3次元画像を表示装置72に表示する。
【0030】
つぎに、上記のように構成した3次元形状測定装置の光軸方向調整処理について、図6を用いて、説明する。まず、外乱光のない暗室内において、3次元カメラCAと、3次元カメラCAから出射されたレーザ光を反射する反射板とを光軸方向調整用の治具に取り付ける。この治具は、反射板からの反射光が、第2受光センサ26の中心部付近で受光されるような位置に、3次元カメラCA及び反射板を取り付けることができるようになっている。つぎに、作業者が、入力装置70を用いて光軸方向調整処理の開始を指示すると、コントローラ68は、ステップS100にて、光軸方向調整処理を開始する。つぎに、コントローラ68は、ステップS102にて、光軸方向調整ミラー14の第1駆動装置14b1に供給する駆動信号の信号強度Fθx及び光軸方向調整ミラー14の第2駆動装置14b2に供給する駆動信号の信号強度Fθyを「0」に初期化する。後述するように、光軸方向調整処理においては、反射光が第2受光センサ26の所定の範囲内にて受光されるようになるまで、光軸方向調整ミラー14に供給する駆動信号の強度を繰り返し増減させるが、信号強度Fθx及び信号強度Fθyは、1つ前に光軸方向調整ミラー14に供給していた駆動信号の強度を表す。
【0031】
つぎに、ステップS104にて、レーザ駆動回路48を作動開始させ、レーザ光源10からレーザ光を出射させる。つぎに、ステップS106にて、第1受光位置検出回路56の作動を開始させる。また、ステップS108にて、第2受光位置検出回路60の作動を開始させる。そして、コントローラ68は、ステップS110にて、第1受光位置検出回路56から第2受光センサ26にて受光された反射光の受光位置の座標のY軸成分Pyを取り込み、ステップS112にて、第2受光位置検出回路60から前記受光位置の座標のZ軸成分Pzを取り込む。つぎに、ステップS114にて、前記取り込んだ受光位置のY軸成分Pyを、1つ前の受光位置の座標のY軸成分FPyとして記憶する。また、ステップS116にて、前記取り込んだ受光位置のZ軸成分Pzを、1つ前の受光位置の座標のZ軸成分FPzとして記憶する。
【0032】
つぎに、コントローラ68は、ステップS118にて、第1駆動信号出力回路64aのメモリ64a1及び第2駆動信号出力回路64bのメモリ64b1から、前回の光軸方向調整処理において決定した駆動信号の強度を読み出し、現在の駆動信号の強度を表す信号強度Mθx及び信号強度Mθyとして記憶する。そして、コントローラ68は、ステップS120にて、第1駆動信号出力回路64a及び第2駆動信号出力回路64bを作動開始させる。すなわち、第1駆動信号出力回路64a及び第2駆動信号出力回路64bは、前記読み出した強度の駆動信号を第1駆動装置14b1及び第2駆動装置14b2に供給する。つぎに、コントローラ68は、ステップS122にて、第1受光位置検出回路56から第2受光センサ26における反射光の受光位置の座標のY軸成分Pyを取り込む。そして、コントローラ68は、ステップS124にて、前記ステップS122において取り込んだY軸成分Pyと基準位置SPyとの差を算出し、前記算出した差と許容限界値を比較する。基準位置SPyは、この3次元形状測定装置の製造時において、第1ミラー16の取り付け角度が調整された状態で反射光を受光したときの受光位置の座標のY軸成分である。Y軸成分Pyと基準位置SPyとの差が許容限界値以下である場合、「Yes」と判定し、ステップS126にて、調整済みフラグExを「1」にセットして、ステップS138に進む。調整済みフラグExは、光軸方向の調整が終了したか否かを表すフラグであって、「1」のとき調整が終了したことを表し、「0」のとき未だ調整が終了していないことを表す。一方、前記ステップS124において、Y軸成分Pyと基準位置SPyとの差が許容限界値を超える場合、「No」と判定し、ステップS128に進む。
【0033】
コントローラ68は、ステップS128にて、次に第1駆動装置14b1に供給する駆動信号の強度を表す信号強度Nθxを補間演算により算出する。具体的には、Mθx−{(Mθx−Fθx)/(Py−FPy)}×(Py−SPy)の演算を実行する。そして、コントローラ68は、ステップS130にて、信号強度Mθxを信号強度Fθxとして記憶し、ステップS132にて、前記算出した信号強度Nθxを信号強度Mθxとして記憶する。また、ステップS134にて、第2受光センサ26における現在の受光位置の座標のY軸成分Pyを1つ前の受光位置の座標のY軸成分FPyとして記憶する。つぎに、コントローラ68は、ステップS136にて、第1駆動信号出力回路64aから出力する駆動信号の強度を信号強度Mθxに設定する。すなわち、コントローラ68は、第1駆動信号出力回路64aに信号強度Mθxを供給し、第1駆動信号出力回路64aは、コントローラ68から供給された信号強度Mθxをメモリ64a1に記憶するとともに第1駆動装置14b1に供給する駆動信号の強度を信号強度Mθxに設定し、ステップS138に進む。
【0034】
つぎに、コントローラ68は、ステップS138にて、第2受光位置検出回路60から第2受光センサ26における反射光の受光位置の座標のZ軸成分Pzを取り込む。そして、コントローラ68は、ステップS140にて、前記ステップS138において取り込んだZ軸成分Pzと基準位置SPzとの差を算出し、前記算出した差と許容限界値を比較する。基準位置SPzは、この3次元形状測定装置の製造時において、第1ミラー16の取り付け角度が調整された状態で反射光を受光したときの受光位置の座標のZ軸成分である。Z軸成分Pzと基準位置SPzとの差が許容限界値以下である場合、「Yes」と判定し、後述のステップS154に進む。一方、前記ステップS140において、Z軸成分Pzと基準位置SPzとの差が許容限界値を超える場合、「No」と判定し、ステップS142に進む。
【0035】
コントローラ68は、ステップS142にて、次に第2駆動装置14b2に供給する駆動信号の強度Nθyを補間演算により算出する。具体的には、Mθy−{(Mθy−Fθy)/(Pz−FPz)}×(Pz−SPz)の演算を実行する。そして、コントローラ68は、ステップS144にて、信号強度Mθyを信号強度Fθyとして記憶し、ステップS146にて、前記算出した信号強度Nθyを信号強度Mθyとして記憶する。また、ステップS148にて、第2受光センサ26における現在の受光位置の座標のZ軸成分Pzを1つ前の受光位置の座標のZ軸成分FPzとして記憶する。つぎに、コントローラ68は、ステップS150にて、第2駆動信号出力回路64bから出力する駆動信号の強度を信号強度Mθyに設定する。すなわち、コントローラ68は、信号強度Mθyを第2駆動信号出力回路64bに供給し、第2駆動信号出力回路64bは、コントローラ68から供給された信号強度Mθyをメモリ64b1に記憶するとともに、第2駆動装置14b2に供給する駆動信号の強度を信号強度Mθyに設定する。つぎに、コントローラ68は、ステップS152にて、調整済みフラグExを「0」にセットして、ステップS122にもどる。
【0036】
また、ステップS140において「Yes」と判定した場合、ステップS154にて、調整済みフラグExの値によって、光軸方向の調整が終了したか否かを判定する。すなわち、調整済みフラグExが「0」であれば、未だ光軸方向の調整が終了していないので、「No」と判定し、ステップS122にもどる。一方、ステップS154において、調整済みフラグExが「1」であれば、光軸方向の調整が終了したこと表しているので、「Yes」と判定し、ステップS156に進み、光軸方向調整ミラー駆動回路64の作動を停止させる。そして、ステップS158にて、第1受光位置検出回路56及び第2受光位置検出回路60の作動を停止させる。さらに、ステップS160にて、レーザ駆動回路48の作動を停止させ、ステップS162にて、光軸方向調整処理を終了する。
【0037】
上記のように、光軸方向調整処理においては、第2受光センサ26における受光位置の座標のY軸成分Py及びZ軸成分Pzを取り込み、いずれもが許容限度値以下になるように、ミラー14aの回転角度を調整する。まず、Y軸成分Pyに応じてミラー14aのX軸回りの回転角度を調整しておき、次にZ軸成分Pzに応じてY軸回りの回転角度を調整する。この場合、光軸方向調整ミラー14自体の取り付け角度がずれていると、X軸回りの回転角度を調整しても、Y軸回りの回転角度を調整したときに、Y軸成分Pyが許容限度値を超えてしまうことがある。そこで、調整済みフラグExを用いて、X軸回り及びY軸回りの回転角度を調整するステップを経ることなく、第2受光センサ26における受光位置の座標のY軸成分Py及びZ軸成分Pzを連続して取り込んでいずれもが許容限度内であるとき(すなわち、ステップS122,S124,S126,S138,S140,S154の順に進んだとき)に光軸方向の調整が終了したと判断するようにしている。
【0038】
つぎに、3次元形状測定処理について図7を用いて説明する。作業者が、入力装置70を用いて測定開始を指示すると、コントローラ68は、ステップS200にて、3次元形状測定処理を開始する。つぎに、コントローラ68は、ステップS202にて、各測定ポイントの番号を表す測定ポイント番号nを「0」に初期化する。つぎに、ステップS204にて、第1駆動信号出力回路64aの作動を開始させ、ステップS206にて、第2駆動信号出力回路64bの作動を開始させる。このステップS204及びステップS206により、第1駆動信号出力回路64a及び第2駆動信号出力回路64bは、メモリ64a1及びメモリ64b1に記憶されている強度の駆動信号を光軸方向調整ミラー14に供給する。これにより、光軸方向調整ミラー14が駆動され、光軸方向が調整される。
【0039】
つぎに、コントローラ68は、ステップS208にて、筐体30の回転角度を初期の回転角度にセットする。つぎに、ステップS210にて、レーザ駆動回路48の作動を開始させる。つぎに、ステップS212にて、第2受光位置検出回路60の作動を開始させ、ステップS214にて、ミラー駆動回路40の作動を開始させる。また、ステップS216にて、筐体駆動回路44の作動を開始させる。つぎに、ステップS218にて時間計測を開始する。
【0040】
つぎに、コントローラ68は、ステップS220にて、現在の時刻が測定ポイント番号nと所定の時間間隔Tとを乗算して算出される時刻を経過しているか否かを判定する。最初、測定ポイント番号nは「0」に初期化されているので、ステップS220においては、「Yes」と判定し、ステップS222に進む。つぎに、コントローラ68は、ステップS222にて、ミラー角度検出回路42から、第1ミラー16の回転角度θxを取り込む。つぎに、コントローラ68は、ステップS224にて、筐体角度検出回路46から、筐体30の回転角度θyを取り込む。つぎに、コントローラ68は、ステップS226にて、センサ信号取り込み回路50から、第1受光センサ24における反射光の受光位置を表すデジタルデータを取り込む。
【0041】
つぎに、コントローラ68は、ステップS228にて、第2受光位置検出回路60から、第2受光センサ26における反射光の受光位置の座標のZ軸成分Pzを取り込む。つぎに、コントローラ68は、ステップS230にて、前記ステップS224において取り込んだ回転角度θyが、予め設定された限界角度よりも大きいか否かを判定する。限界角度とは、筐体30が回転可能な最大の角度よりもやや小さい角度である。回転角度θyが限界角度以下である場合は、ステップS232に進んで、測定ポイント番号nをインクリメントし、ステップS220に戻る。ステップS232の処理により、測定ポイント番号nは「1」となっているので、ステップS220において、現在の時刻がT(すなわち、1×T)を経過しているかを判定する。判定結果が「No」のときは、再びステップS220を実行する。すなわち、判定結果が「Yes」となるまでステップS220を繰り返し実行する。そして、ステップS220の判定結果が「Yes」になると、上記のステップS226乃至ステップS230を実行する。このように、コントローラ68は、回転角度θyが限界角度に達するまで、ステップS226乃至ステップS232を繰り返し実行する。上記の通り、筐体30の回転速度は、第1ミラー16の回転速度よりも遅く、第1ミラー16は、モータ20により正転逆転駆動される。すなわち、筐体30の回転角度θyが限界角度に達するまで上記ステップS226乃至ステップS232を繰り返している間に、第1ミラー16の回転方向は何度も反転する。このように、コントローラ68は、レーザ光を走査しながら測定対象物OBに照射して、ステップS226乃至ステップS232からなる処理を繰り返し実行し、一定の時間間隔Tで第1ミラー16の回転角度θx、筐体30の回転角度θy、第1受光センサ24の受光素子が出力する信号の強度及び第2受光センサ26における受光位置の座標のZ軸成分Pzを取り込む。そして、前記取り込んだデータを測定ポイント番号nごとにコントローラ68が備えるメモリに記憶する。
【0042】
そして、筐体30の回転角度θyが限界角度に達すると、コントローラ68は、ステップS230にて、「Yes」と判定し、ステップS234に進み、レーザ駆動回路48の作動を停止させる。また、ステップS236にて、ミラー駆動回路40の作動を停止させ、ステップS238にて、筐体駆動回路44の作動を停止させる。また、ステップS240にて、第2受光位置検出回路60の作動を停止させる。さらに、ステップS242にて、第1駆動信号出力回路64aの作動を停止させ、ステップS244にて第2駆動信号出力回路64bの作動を停止させる。
【0043】
つぎに、コントローラ68は、ステップS246にて、各測定ポイントごとにメモリに記憶されている第1受光センサ24の受光素子が出力した信号の強度を表すデジタルデータを用いて、3角測量の原理に基づいて、各測定ポイントごとの3次元カメラCAから測定対象物OBまでの距離を表す距離データLを算出する。そして、各測定ポイントごとの距離データL、回転角度θx及び回転角度θyを用いて、測定対象物OBの表面形状を表す座標データ(x,y,z)群を算出する。そして、算出した座標データ群から測定対象物OBの3次元画像を表示装置72に表示するための3次元画像データを作成する。作成された3次元画像データは、表示装置72に供給され、表示装置72に測定対象物OBの3次元画像が表示される。
【0044】
つぎに、コントローラ68は、ステップS248にて、各測定ポイントごとにメモリに記憶されている第2受光センサ26における受光位置の座標のZ軸成分Pzの平均値AvePzを算出し、現在時刻と共にメモリに記憶する。メモリには、3次元形状測定装置の納品時におけるZ軸成分Pzの平均値である初期平均値AvePz0が記憶されていて、コントローラ68は、ステップS250にて、初期平均値AvePz0と前記算出した平均値AvePzの差を算出し、前記算出した差と許容限界値とを比較する。そして、前記算出した差が許容限界値を超えていれば、「No」と判定し、ステップS252に進み、表示装置72に光軸方向の調整が必要な旨を表示して、ステップS254にて、3次元形状測定を終了する。一方、ステップS250における比較の結果、前記算出した差が許容限界値以下であれば、ステップS254に進み、3次元形状測定を終了する。
【0045】
上記のように構成した3次元形状測定装置においては、第1受光センサ24にて反射した反射光を第2受光センサ26の所定の範囲内にて受光するように光軸方向調整ミラー14のミラー14aを駆動することにより、測定対象物OBに照射されるレーザ光の光軸方向を調整できるようにした。すなわち、第1ミラー16の取り付け角度がずれて、測定対象物OBに照射されるレーザ光の光軸方向がずれても、そのずれを相殺するようにミラー14aを駆動して第1ミラー16に入射するレーザ光の光軸方向を調整することができるので、3次元形状測定の測定精度を一定に保つことができる。また、3次元形状測定の各測定ポイントにおいて、第2受光センサ26における反射光の受光位置の座標のZ軸成分Pzを取り込み、取り込んだZ軸成分Pzの平均値AvePzを算出し、前記算出した平均値AvePzを用いて光軸方向の調整が必要か否かを判定し、判定結果を表示するようにした。これは、3次元形状測定を同一の場所で同一の明るさに設定して実施している場合に特に有効である。すなわち、第2受光センサ26は、外乱光の影響を受けるが、同一の場所で同一の明るさに設定されて測定すれば、外乱光の影響がほぼ一定であるので、Z軸成分Pzの平均値AvePzの変化から測定対象物OBに照射されるレーザ光の光軸方向の変化を判断することができる。なお、平均値AvePzの時間的変化を表示装置72に表示するようにしてもよい。このように構成すれば、作業者は、平均値AvePzの変化を見て、光軸方向の調整の必要性を判断することができる。
【0046】
また、確率的には低いが、第2受光センサ26における反射光の受光位置がZ軸方向にはほとんどずれることなく、Y軸方向に大きくずれることが考えられる。すなわち、図8Aの紙面内において光軸方向がずれる場合が考えられる。なお、図8A及び図8Bにおいては、本来の光軸を実線で示し、方向がずれた光軸を破線で示している。また、図8A及び図8Bにおいては、第2ミラー18、モータ20などの部品の図示を省略している。したがって、作業者は、平均値AvePzが変化していなくとも、一定期間を経過する毎に、光軸方向の調整処理を実行して、図8Bに示すように、光軸の方向を本来の方向に補正することが望ましい。
【0047】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0048】
上記実施形態においては、Z軸成分Pzの平均値AvePzを用いて、光軸方向の調整の必要性を判定するようにした。しかし、平均値に代えてメジアン値又は最大度数値を用いて、光軸方向の調整の必要性を判定するようにしてもよい。また、光軸方向の調整の必要性を判定する機能を設けることなく、所定の期間を経過する毎に、光軸方向の調整処理を実行するようにしてもよい。
【0049】
また、上記実施形態においては、3次元形状測定装置を小型化するために、光軸方向調整ミラー14として、MEMSミラーを用いた。しかし、3次元形状測定装置が大型化しても問題なければ、光軸方向調整ミラー14を、それぞれモータで回転する2つのミラーで構成してもよい。
【0050】
また、上記実施形態においては、第2受光センサ26として、PSDを用いた。しかし、第2受光センサ26による受光信号を用いてレーザ光源10から出射されるレーザ光の強度を制御しない場合は、第2受光センサ26として、CCDイメージセンサ(Charge Coupled Device Image Sensor)、CMOSイメージセンサ(Complementary Metal Oxide Sensor)などの画素が2次元に配列されたセンサを用いてもよい。そして、この場合、外乱光がない暗室にて3次元形状測定装置の光軸方向を調整する必要はなく、外乱光の存在する場所においても、光軸方向を調整することができる。
【0051】
また、本実施形態では、筐体30を第1ミラー16によるレーザ光の走査方向に対して直角方向に回転させてレーザ光を2次元的に走査する構造にしているが、第1ミラー16によるレーザ光の走査方向とは直角方向にレーザ光を走査できれば、どのような構造を採用してもよい。例えば、Y軸方向を回転軸とする長尺のミラーを第1ミラー16の正面側に設け、第1ミラー16で反射したレーザ光をさらに下方へ反射させる。そして、筐体30及びフレームFRの下面側(図2Aにおいて下側)に開口部を設けておき、この長尺のミラーにて反射したレーザ光を測定対象物OBに照射する。そして、測定対象物OBからの反射光を、この長尺のミラー、第2ミラー18及び結像レンズ22を介して第1受光センサ24及び第2受光センサ26で受光してもよい。また、筐体30をY軸回りに回転させるのではなく、X軸方向に3次元カメラCAを平行移動させてもよい。また、上記実施形態においては、測定対象物OBからの反射光を第2ミラー18及び結像レンズ22を介してラインセンサである第1受光センサ24にて受光するようにした。しかし、第1受光センサ24として、エリアセンサを用いてもよい。この場合、第2ミラー18を省略できる。そして、この場合、エリアセンサで反射した反射光をすべて受光可能な程度の受光面積を備えた第2受光センサ26を用いればよい。また、出射レーザ光の強度を制御せず、第2受光センサ26の出力を光軸方向の調整にのみ用いるのであれば、第2受光センサ26として、CCD、CMOSなどの画素が2次元に配列されたセンサを用いることができる。
【0052】
また、上記実施形態においては、第2受光センサ26における受光位置の座標のY軸成分Py及びZ軸成分Pzを用いて光軸方向を調整するようにしたが、Y軸成分Pyに代えて、第1受光センサ24の受光位置を用いてもよい。
【0053】
また、上記実施形態においては、第2受光センサ26における受光位置をデジタルデータとしてコントローラ68に供給し、コントローラ68は前記供給されたデータを用いて、光軸方向調整ミラー14を駆動する駆動信号の強度を算出するようにした。しかし、第2受光センサ26の出力をアナログ信号のまま入力し、このアナログ信号の強度が所定の値になるように光軸方向調整ミラー14を駆動する制御回路を設けて、光軸方向を調整するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0054】
10…レーザ光源、12…コリメートレンズ、14…光軸方向調整ミラー、16…第1ミラー、18…第2ミラー、20…モータ、24…第1受光センサ、26…第2受光センサ、30…筐体、32…モータ、40…ミラー駆動回路、42…ミラー角度検出回路、44…筐体駆動回路、46…筐体角度検出回路、48…レーザ駆動回路、56・・・第1受光位置検出回路、60・・・第2受光位置検出回路、64・・・光軸方向調整ミラー駆動回路、68…コントローラ、OB…測定対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物に照射されるレーザ光を出射するレーザ光源と、
前記レーザ光源から出射されたレーザ光を入射し、前記入射したレーザ光の光軸方向を変更して出射する光学部品と、
前記光学部品を駆動して、前記レーザ光が、前記測定対象物の表面を走査しながら照射されるようにする走査手段と、
前記測定対象物の表面にて反射した前記レーザ光の散乱光を受光して、受光位置に応じた第1の位置信号を出力する第1の受光センサと、
前記走査手段による前記光学部品の駆動量及び前記第1の位置信号が表す受光位置を用いて、3角測量の原理に基づいて前記測定対象物の表面の形状を表す3次元座標データを算出する座標データ算出手段とを備えた3次元形状測定装置において、
前記レーザ光源と前記光学部品の間に設けられ、前記光学部品に入射するレーザ光の光軸方向を変更可能な光軸方向変更手段と、
前記第1の受光センサにて反射した前記散乱光を受光して、受光位置に応じた第2の位置信号を出力する第2の受光センサと、
前記光学部品から前記測定対象物までの距離を所定の距離に設定したとき、前記第1の受光センサにて反射した前記散乱光を前記第2の受光センサの所定の位置にて受光するように、前記光軸方向変更手段によって光軸方向を調整する光軸方向調整手段を備えたことを特徴とする3次元形状測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の3次元形状測定装置において、
前記第2の位置信号の強度に応じて、前記レーザ光源から出射するレーザ光の強度を制御するレーザ光強度制御手段を備えたことを特徴とする3次元形状測定装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の3次元形状測定装置において、
前記光軸方向変更手段は、前記レーザ光源から出射されたレーザ光の光軸に垂直な第1の回転軸及び前記第1の回転軸に垂直な第2の回転軸回りに回転可能に支持された前記レーザ光を反射するミラー部と、供給された駆動信号に応じて前記ミラー部を前記第1の回転軸及び前記第2の回転軸回りに回転させて変位させる駆動装置とが一体的に形成されていることを特徴とする3次元形状測定装置。
【請求項4】
前記請求項1乃至請求項3のうちのいずれか1つに記載の3次元形状測定装置において、
前記第2の位置信号を所定の時間間隔で取得し、前記取得した第2の位置信号を演算して、前記光軸方向変更手段による光軸方向の調整が必要か否かを表す情報を出力する演算手段を備えたことを特徴とする3次元形状測定装置。


【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【公開番号】特開2012−78098(P2012−78098A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220737(P2010−220737)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000112004)パルステック工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】