説明

III/V族半導体材料を形成する方法及びそのような方法を用いて形成された半導体構造体

【課題】内部の欠陥数がより少なく且つ/又は減少したIII/V族半導体材料を形成する方法、並びに欠陥数がより少なく且つ/又は減少したそのようなIII/V族半導体材料を含む半導体構造体及び素子が必要である。
【解決手段】三元III族窒化物材料を形成する方法は、チャンバー内で基板上に三元III族窒化物材料をエピタキシャル成長させるステップを含む。エピタキシャル成長は、チャンバー中の窒素前駆体の分圧と1つ又は複数のIII族前駆体の分圧との比較的に高い比を含む前駆体ガス混合物をチャンバー内に準備するステップを含む。少なくとも一部は比較的に高い比のため、三元III族窒化物材料の層は、小さいVピット欠陥をその中に含む高い最終厚さに成長させることができる。そのような三元III族窒化物材料の層を含む半導体構造体をそのような方法を用いて作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、一般的にIII/V族半導体材料を形成する方法に関し、またそのような方法を用いて作製された半導体構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、III族窒化物(例えば、窒化インジウムガリウム(InGaN))、III族ヒ化物(例えば、ヒ化インジウムガリウム(InGaAs))及びIII族リン化物(例えば、リン化インジウムガリウム(InGaP))などのIII/V族半導体材料は、様々な電子素子、光学素子及び光電子素子に用いることができる。そのような素子の例は、スイッチング構造体(例えば、トランジスタ等)、発光構造体(例えば、発光ダイオード、レーザーダイオード等)及び受光構造体(例えば、導波管、スプリッタ、ミキサー、光ダイオード、太陽電池、太陽電池サブセル等)などである。III/V族半導体材料を含むそのような素子は、様々な応用分野に用いることができる。例えば、そのような素子は、1つ又は複数の波長の電磁放射線(例えば、可視光線)を発生させるのにしばしば用いられる。そのような素子により放射される電磁放射線は、例えば、媒体保存及び検索応用例、通信応用例、印刷応用例、分光法応用例、生物学的薬剤検出応用例及び画像投影応用例に利用することができる。
【0003】
III/V族半導体材料は、下地基板上にIII/V族半導体材料の層を沈着させる又は「成長させる」ことにより製作することができる。結晶性であるIII/V族半導体材料の層は、III/V族半導体材料の単結晶から実質的に構成されていてよい。基板は、その上に成長させるIII/V族半導体材料の結晶構造と同様な結晶構造を有するように選択される。基板は、III/V族半導体材料を成長させる基板の成長表面が基板材料の結晶構造における公知の結晶面を含むように、公知の選択された結晶方位を有していてよい。基板材料の結晶構造と同様な結晶構造を有する結晶性III/V族半導体材料は、下地基板上にエピタキシャル成長させることができる。言い換えれば、III/V族半導体材料の結晶構造は、下地基板の類似結晶構造により整列させ、配向させることができる。III/V族半導体材料の結晶構造は下地基板の結晶構造と類似であってよいが、III/V族半導体材料の結晶構造内の所定の結晶面における原子間の間隔は、下地基板の結晶構造内の対応する結晶面における原子間の間隔と異なってよい(緩和した平衡状態にある)。言い換えれば、III/V族半導体材料の緩和格子パラメーターは、下地基板材料の緩和格子パラメーターと異なっていてよい。
【0004】
より詳細には、III/V族半導体材料層は、III/V族半導体材料の実際の格子パラメーターが成長する下地基板の実際の格子パラメーターと実質的に一致させられる(例えば、原子間力により)ように、下地基板上に最初に「仮像的に」成長しうる。III/V族半導体材料と下地基板との格子不整合がIII/V族半導体材料の結晶格子におけるひずみを誘発する可能性があり、ひずみがIII/V族半導体材料内の対応する応力を生じさせる。III/V族半導体材料内に蓄えられた応力エネルギーは、基板上に成長したIII/V族半導体材料の層の厚さが増加するにつれて増加しうる。III/V族半導体材料の層が「臨界厚さ」と一般的に呼ばれている厚さと同等又はそれを超える合計厚さまで成長した場合、III/V族半導体材料は、ひずみ緩和を受ける可能性がある。III/V族半導体材料におけるひずみ緩和は、III/V族半導体材料の結晶の質を劣化させる可能性がある。例えば、転位などの欠陥がIII/V族半導体材料の結晶構造に生ずる可能性があり、III/V族半導体材料の層の露出した主表面が粗面化する可能性があり、且つ/又は、不均一性の領域がIII/V族半導体材料の層内に認められるような、さもなければ均一な材料内で相が分離する可能性がある。
【0005】
場合によって、III/V族半導体材料におけるこれらの欠陥によって、III/V族半導体材料が、III/V族半導体材料を用いて形成される最終動作素子への使用に適さないものとなりうる。例えば、そのような欠陥は、P−N接合及びダイオードが所望の電磁放射線を発生しないような、発光ダイオード(LED)又はレーザーダイオードの一部としてのそのようなIII/V族半導体材料において形成されるP−N接合にわたる短絡をもたらしうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0223442A1号明細書
【特許文献2】米国特許仮出願第61/157,112号明細書
【特許文献3】米国特許仮出願第61/416,525号明細書
【特許文献4】米国特許仮出願第61/416,525号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】J. E. Northrup、L. T. Romano, J. Neugebauer、Appl. Phys. Lett., 74(6), 2319(1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
内部の欠陥数がより少なく且つ/又は減少したIII/V族半導体材料を形成する方法、並びに欠陥数がより少なく且つ/又は減少したそのようなIII/V族半導体材料を含む半導体構造体及び素子の必要が当技術分野にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この概要は、本発明のいくつかの実例実施形態の下文での詳細な説明においてさらに記述する概念の選択を簡略化された形で紹介するために記載する。この概要は、クレームに記載された対象の重要な特徴又は本質的特徴を明らかにするものでなく、またクレームに記載された対象の範囲を限定するために用いるものでもない。
【0010】
いくつかの実施形態において、本発明は、窒化インジウムガリウム(InGaN)を形成する方法を含む。そのような方法によれば、窒化ガリウム(GaN)の層をチャンバー内に準備する。InGaNの層をGaNの層の表面上にエピタキシャル成長させる。InGaNの層のエピタキシャル成長は、前駆体ガス混合物をチャンバー内に準備するステップ、1つ又は複数のIII族前駆体及び窒素前駆体を含むように前駆体ガス混合物を選択するステップ、並びにチャンバー内の窒素前駆体の分圧と1つ又は複数のIII族前駆体の分圧との比が少なくとも約5600となるように前駆体ガス混合物を調合するステップを含む。1つ又は複数のIII族前駆体の少なくとも一部と窒素前駆体の少なくとも一部をGaNの層の表面に近接して分解させて、InGaNの層を成長させる。InGaNの層は、約100ナノメートル(100nm)より大きい平均最終厚さに成長させる。
【0011】
さらなる実施形態において、本発明は、窒素、ガリウム並びにインジウム及びアルミニウムの少なくとも1つを含む三元III族窒化物材料を形成する方法を含む。そのような方法によれば、二元III族窒化物材料をチャンバー内に準備し、三元III族窒化物材料の層を二元III族窒化物材料上にエピタキシャル成長させる。三元III族窒化物材料のエピタキシャル成長は、窒素前駆体及び2つ又はそれ以上のIII族前駆体を含む前駆体ガス混合物をチャンバー内に準備し、チャンバー内の窒素前駆体の分圧と1つ又は複数のIII族前駆体の分圧との比が少なくとも約5600となるように前駆体ガス混合物を調合するステップを含む。窒素前駆体及び2つ又はそれ以上のIII族前駆体をチャンバー内で分解して、三元III族窒化物材料の層を形成する。三元III族窒化物材料の層は、約100ナノメートル(100nm)より大きい平均最終厚さまで成長させる。三元III族窒化物材料の層は、三元III族窒化物材料の層と二元III族窒化物材料との間の緩和格子パラメーターの不一致が二元III族窒化物材料の緩和平均格子パラメーターの少なくとも約0.5%であるように構築される。複数のVピットが三元III族窒化物材料の層に形成され、Vピットは、三元III族窒化物材料の十分に成長した層において約200ナノメートル(200nm)又はそれ以下の平均ピット幅を有するように形成される。
【0012】
本発明はまた、III族窒化物材料の層の積層体を形成する方法を含む。そのような方法において、基板をチャンバー内に準備し、GaNの少なくとも1つの層及びInGaNの複数の層をチャンバー内の基板上にエピタキシャル成長させる。III族窒化物材料の層の積層体を約100ナノメートル(100nm)より大きい最終平均合計厚さを有するように形成させる。さらに、InGaNの複数の層のうちのInGaNの少なくとも1つの層のエピタキシャル成長は、前駆体ガス混合物をチャンバー内に準備するステップ、前駆体ガス混合物を1つ又は複数のIII族前駆体及び窒素前駆体を含むように選択するステップ、チャンバー内の窒素前駆体の分圧と1つ又は複数のIII族前駆体の分圧との比が少なくとも約5600となるように前駆体ガス混合物を調合するステップ、並びに1つ又は複数のIII族前駆体の少なくとも一部及び窒素前駆体の少なくとも一部を分解させて、InGaNの少なくとも1つの層を形成するステップを含む。
【0013】
さらなる実施形態において、本発明は、本明細書で開示した方法を用いて作製される半導体構造体を含む。例えば、いくつかの実施形態において、半導体構造体は、InGaNを含む。InGaNは、GaNの層をチャンバー内に準備し、GaNの層の表面上にInGaNの層をエピタキシャル成長させることによって形成される。InGaNの層のエピタキシャル成長は、前駆体ガス混合物をチャンバー内に準備するステップ、前駆体ガス混合物を1つ又は複数のIII族前駆体及び窒素前駆体を含むように選択するステップ、並びにチャンバー内の窒素前駆体の分圧と1つ又は複数のIII族前駆体の分圧との比が少なくとも約5600となるように前駆体ガス混合物を調合するステップを含む。1つ又は複数のIII族前駆体の少なくとも一部と窒素前駆体の少なくとも一部をGaNの層の表面に近接して分解させて、InGaNの層を形成する。InGaNの十分に成長した層は、約100ナノメートル(100nm)より大きい平均最終厚さを有し、約200ナノメートル(200nm)若しくはそれ以下の平均ピット幅を有する複数のVピットをその中に含む。さらに、InGaNの十分に成長した層とGaNの層との間の緩和格子パラメーターの不一致は、GaNの層の緩和平均格子パラメーターの少なくとも約0.5%である。
【0014】
さらなる実施形態において、半導体構造体は、窒素、ガリウム並びにインジウム及びアルミニウムの少なくとも1つを含む三元III族窒化物材料を含む。三元III族窒化物材料は、二元III族窒化物材料を含む基板をチャンバー内に準備し、三元III族窒化物材料の層を二元III族窒化物材料上にエピタキシャル成長させることによって形成される。三元III族窒化物材料の層のエピタキシャル成長は、窒素前駆体及び2つ又はそれ以上のIII族前駆体を含む、前駆体ガス混合物をチャンバー内に準備するステップ、及びチャンバー内の窒素前駆体の分圧と1つ又は複数のIII族前駆体の分圧との比が少なくとも約5600となるように前駆体ガス混合物を調合するステップを含む。窒素前駆体及び2つ又はそれ以上のIII族前駆体をチャンバー内で分解させて、三元III族窒化物材料を形成する。三元III族窒化物材料の十分に成長した層は、約100ナノメートル(100nm)より大きい平均最終厚さを有し、約200ナノメートル(200nm)以下の平均ピット幅を有する複数のVピットをその中に含む。さらに、三元III族窒化物材料の十分に成長した層と二元III族窒化物材料との間の緩和格子パラメーターの不一致は、二元III族窒化物材料の緩和平均格子パラメーターの少なくとも約0.5%である。
【0015】
本発明の実施形態のさらなる態様、詳細及び要素の代替組合せは、以下の詳細な説明から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明の実施形態は、添付図面において説明する、実例実施形態の以下の詳細な説明を参照することによってより十分に理解することができる。
【0017】
【図1】インジウム含量の関数としてのInGaNの緩和格子パラメーターの近似値を求めるのに用い得るグラフである。
【図2】III/V族半導体材料を基板上または基板を覆うように沈着させることができる基板の概略の断面側面図である。
【図3】図2の基板の表面上に沈着させた第1のIII/V族半導体材料を含む半導体構造体の概略の断面側面図である。
【図4】図2の基板と反対側の図3の第1のIII/V族半導体材料上に沈着させた第2のIII/V族半導体材料を含む半導体構造体の概略の断面側面図である。
【図5】図4の半導体構造体の一部の概略の透視図であり、第2のIII/V族半導体材料におけるVピットを示す図である。
【図6】V族前駆体とIII族前駆体との比の異なる範囲における三元III/V族半導体材料内の弾性エネルギーの変化の関数としての三元III/V族半導体材料に形成されたVピットの平均幅の観測された変化を示す図である。
【図7】基板上の二元及び三元III/V族半導体材料の複数の交互層を含む半導体構造体の他の実施形態を示す図4のそれと同様の概略の断面側面図であり、二元及び三元III/V族半導体材料の交互層内に形成されたVピットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書に示す説明図は、特定の材料、素子又は方法の実際の図であることを意味するものではなく、本発明の実施形態を記述するために用いる単に理想化された表現である。
【0019】
以下の説明は、本発明の実施形態及びそれらの実施の十分な説明を行うために材料の種類及び処理条件などの具体的詳細を示すものである。しかし、当業者は、本発明の実施形態はこれらの具体的詳細を用いることなく、従来の製造技術と併せて実施することができることを理解するであろう。さらに、本明細書に示す説明は、半導体構造体又は素子を製造するための完全な方法の流れを構成するものではない。本発明の実施形態を理解するために必要な方法行為(process acts)及び構造のみを本明細書に詳細に記述する。
【0020】
本明細書で用いているように、「半導体構造体」という用語は、半導体素子の形成に用いられる構造体を意味し、含む。半導体構造体は、例えば、ダイ及びウエハ(例えば、キャリア基板及び素子基板)並びに互いに3次元的に統合された2つ若しくはそれ以上のダイ及び/又はウエハを含むアセンブリ又は複合構造体を含む。半導体構造体はまた、完全に作製済みの半導体素子並びに半導体素子の作製中に形成される中間構造体を含む。半導体構造体は、導電材料、半導体材料、非導電性材料(例えば、電気絶縁体)及びそれらの組合せを含みうる。
【0021】
本明細書で用いているように、「III/V族半導体材料」という用語は、周期表のIIIA族(B、Al、Ga、In及びTl)の1つ又は複数の元素並びに周期表のVA族(N、P、As、Sb及びBi)の1つ又は複数の元素から少なくとも主として構成されている半導体材料を意味し、含む。例えば、III/V半導体材料は、GaN、GaP、GaAs、InN、InP、InAs、AlN、AlP、AlAs、InGaN、InGaP、InGaNP等を含むが、これらに限定されない。
【0022】
本明細書で用いているように、「III族窒化物半導体材料」という用語は、周期表のIIIA族(B、Al、Ga、In及びTl)の1つ又は複数の元素並びに窒素から少なくとも構成されているIII/V族半導体材料を意味し、含む。例えば、III族窒化物半導体材料は、GaN、InN、AlN、InGaN、GaAlN、InAlN等を含む。
【0023】
本明細書で用いているように、「窒化インジウムガリウム」及び「InGaN」という用語は、0<x<1である、InxGa1-xNの組成を有する窒化インジウム(InN)と窒化ガリウム(GaN)の合金を意味する。
【0024】
本明細書で用いているように、「臨界厚さ」という用語は、仮像的成長が中断し、層がひずみ緩和を受ける状態及びそれを超える状態にある半導体材料の層の平均合計厚さを意味する。
【0025】
本明細書で用いているように、「成長表面」という用語は、半導体基板又は層の追加の成長を行わせることができる半導体基板又は層の表面を意味する。
【0026】
本明細書で用いているように、「化学蒸着」及び「CVD」という用語は、基板の表面上への固体材料(単数又は複数)の沈着をもたらす形で反応し、分解し、又は反応し且つ分解する、1つ又は複数の試薬ガスに基板を曝露する、反応チャンバー中で基板上に固体材料(単数又は複数)を沈着させるために用いられる方法を意味し、含む。
【0027】
本明細書で用いているように、「気相エピタキシー」及び「VPE」という用語は、同義語であり、基板の表面上への固体材料(単数又は複数)のエピタキシャル成長をもたらす形で反応し、分解し、又は反応し且つ分解する、1つ又は複数の試薬蒸気に基板を曝露する、CVD法を意味し、含む。
【0028】
本明細書で用いているように、「ハロゲン化物気相エピタキシー」及び「HVPE」という用語は、同義語であり、VPE法に用いられる少なくとも1つの試薬蒸気がハロゲン化物蒸気を含む、VPE法を意味し、含む。
【0029】
本明細書で用いているように、「実質的に」という用語は、当技術分野で通常予想される欠損を除いて完全である結果を意味する。
【0030】
本発明の実施形態は、III/V半導体材料の広範な範囲への応用を有し得る。例えば、本発明の実施形態の方法及び構造体は、III族窒化物、III族ヒ化物、III族リン化物及びIII族アンチモン化物に適用することができる。特定の応用例は、窒化インジウムガリウム(InGaN)などのインジウムを含む三元III族窒化物半導体材料の成長に関する。したがって、InGaNは非限定的な実例実施形態であり、追加の実施形態は他の三元III−V族半導体材料の形成を含みうるが、以下の記述及び図は、InGaNに特に焦点を合わせたものである。
【0031】
臨界厚さを超える厚さまでヘテロエピタキシャル成長した三元III族窒化物層は、ひずみ緩和を受けて、格子の不整合に起因する結晶格子におけるひずみを緩和し得る。三元III族窒化物材料におけるひずみ緩和の開始時に、インジウム又はアルミニウムなどのIII族元素の量の増加が成長中に三元III族窒化物材料の層に組み込まれることができ、これが、三元III族窒化物材料の層の厚さにわたるIII族元素の不均一な濃度プロファイルをもたらしうる。例えば、InGaN層は、下地基板又は他の材料に近接した場所と比較して該層の成長表面に近接した場所におけるインジウム百分率の増加を含みうる。InGaN層におけるそのような不均一なインジウム組成は、少なくとも一部の応用例について望ましくないことがありうる。
【0032】
さらに、三元III族窒化物層のひずみ緩和は、三元III族窒化物層の成長表面の粗面化ももたらしうる。そのような表面粗面化は、三元III族窒化物層を用いる半導体素子の生産に悪影響を及ぼしうる。さらに、三元III族窒化物層におけるひずみ緩和は、三元III族窒化物材料の結晶構造における欠陥の密度の増加をもたらしうる。そのような欠陥は、例えば、転位及び不均質組成の領域(すなわち、相分離領域)などを含み得る。
【0033】
非限定的な例として、InGaN(III族窒化物材料)の場合について、InGaN層は、上にあるInGaN層と整合性のない結晶格子を有する可能性がある下地基板上にヘテロエピタキシャルに沈着させることができる。例えば、InGaN層は、窒化ガリウム(GaN)を含む半導体基板上に沈着させることができる。GaNは、約3.189Åの緩和(すなわち、実質的にひずみがない)面内格子パラメーターを有することができ、InGaN層は、対応するインジウム含量の百分率によって、約3.21Å(インジウム7%、すなわち、In0.07Ga0.93Nについて)、約3.24Å(インジウム15%、すなわち、In0.15Ga0.85Nについて)及び約3.26Å(インジウム25%、すなわち、In0.25Ga0.75Nについて)の緩和面内格子パラメーターを有することができる。図1は、これらのデータポイントを示すグラフであり、これらのデータポイントに適合する直線を示す。直線の式は、y=0.0027x+3.1936により与えられ、この線型式は、約5%から約25%にまで及ぶ範囲にわたるインジウム含量の関数としてのInGaNの格子パラメーターを近似値を求めるのに用いることができ、ここで、xは、InGaNにおけるインジウムの百分率であり、yは、InGaNの面内緩和格子パラメーターである。
【0034】
図2から4は、本発明の実施形態による三元III−V族半導体材料の層、及び、特に、図4に示すInGaN20の層の製作を示すために用いる。図2について述べると、基板10を準備することができる。基板10は、酸化物(例えば、二酸化ケイ素(SiO2)若しくは酸化アルミニウム(Al23)(例えば、α−Al23であるサファイア))又は窒化物(例えば、窒化ケイ素(Si34)若しくは窒化ホウ素(BN))などのセラミックから少なくとも実質的になっていてよい。さらなる例として、基板10は、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、III−V半導体材料等などの半導体材料から少なくとも実質的になっていてよい。基板10は、結晶構造を有していてよく、基板10の結晶構造は、InGaN20の層(図4)を上に成長させるべき基板10の露出主表面12が基板10の結晶構造の公知の選択される結晶面を含むような、公知の選択される配向を有していてよい。例えば、基板10は、「c面サファイア」としばしば呼ばれる(0001)結晶方位を有するサファイアを含んでいてよい。
【0035】
図3について述べると、場合によって、GaN16の層などの二元III−V族半導体材料の層を基板10の主表面12上に形成することができる。GaN16の層は、当技術分野で「緩衝」層又は「遷移」層と呼ばれているものを含んでいてよい。GaN16は、実質的に結晶性であってよく、GaNの単結晶で少なくとも実質的に構成されていてよい。GaN16の層は、約2ナノメートル(2nm)から約100ミクロン(100μm)にまで及ぶ範囲の平均合計厚さを有しうる。本明細書における図は、正確な縮尺率で描かれておらず、実際には、GaN16の層は、基板10と比較して比較的薄いことがありうる。
【0036】
場合によって、半導体材料の他の層のような材料の1つ又は複数の中間層(図示せず)をGaN16の層と基板10との間に配置することができる。そのような材料の中間層は、例えば、その上にGaN16の層を形成するためのシード層として、又は基板10にGaN16の層を結合させるための結合層として用いることができる。そのような結合法は、基板10上にGaN16の層を直接的に形成することが困難又は不可能である場合に用いることができる。さらに、基板10へのGaN16の層の結合は、GaN16の層が極性結晶配向を有する場合に望ましいことがありうる。そのような実施形態において、結合法を用いて、極性GaNの極性を変化させ、又は望ましい極性を有するGaNの成長表面を与えることができる。
【0037】
GaN16の層は、有機金属化学蒸着(MOCVD)法などの化学蒸着(CVD)法、分子線エピタキシー(MBE)法又は金属ハロゲン化物気相エピタキシー(HVPE)法を用いて基板10の主表面12上に形成することができる。GaN16の層を形成するために用いることができるHVPEシステム及び方法は、開示されている(例えば、Arenaらの名で2009年9月10日に公開された特許文献1(米国特許出願公開第2009/0223442A1号明細書)、Arenaらの名で2009年3月3日に出願された特許文献2(米国特許仮出願第61/157,112号明細書)、Bertramの名で2010年9月30日に出願された特許文献3(米国特許出願第12/894,724号明細書)及びArenaらの名で2010年11月23日に出願された特許文献4(米国特許仮出願第61/416,525号明細書)参照)。簡単に言うと、そのようなHVPE法において、基板10の表面12上のGaN16の層のエピタキシャル成長は、約500℃から約1000℃の高温において反応チャンバー内で行わせる一塩化ガリウム(GaCl)とアンモニア(NH3)との気相反応に起因しうる。NH3は、NH3ガスの標準的源から供給することができる。いくつかの方法において、GaCl蒸気は、塩化水素(HCl)ガス(HClガスの標準的源から供給することができる)を反応チャンバー内で加熱液体ガリウム(Ga)上に通してin situでGaClを形成することにより供給し得る。液体ガリウムは、約750℃から約850℃の温度に加熱することができる。GaCl及びNH3は、加熱することができる基板10の主表面12(例えば、上に)に導くことができる。
【0038】
GaN16の層は、基板10の結晶構造と同様の結晶構造を有していてよく、基板10上にエピタキシャル成長させることができる。言い換えれば、GaN16の層は、下地の基板10の類似結晶構造により整列させ、配向させることができる。GaN16の層の結晶構造は下地の基板10の結晶構造と類似でありうるが、GaN16の層の緩和格子パラメーターは、基板10の緩和格子パラメーターと異なりうる。結果として、特定の欠陥(imperfections又はdefects)がGaN16の層の結晶構造内に形成されうる。例えば、転位18(例えば、刃状転位及び/又はらせん転位)が図3に示すようにGaN16の層の結晶構造に存在しうる。少なくともいくつかのそのような転位18は、GaN16の層と基板10の主表面12との界面に源を発しうる。2つの転移18のみが図3の略図に示されているが、実際には、GaN16の層におけるそのような転移18の密度は、1平方センチメートル当たり10万(105/cm2)と高い、又は1平方センチメートル当たり100万(106/cm2)若しくはそれ以上と高い可能性がある。当技術分野で公知の様々な方法のいずれかを用いて、GaN16の層を形成するときにGaN16の層における転位18の密度を減少させることができる。そのような方法としては、例えば、エピタキシャル横方向成長法(ELO)、ペンデオエピタキシー法、in situマスキング法等が挙げられる。
【0039】
図4について述べると、InGaN20の層のような三元III/V族半導体材料の層は、GaN16の層の主表面17(図3)上にエピタキシャル成長又は別の方法で形成することができる。InGaN20の層は、実質的に結晶性であってよく、InGaNの単結晶で少なくとも実質的に構成されていてよい。InGaN20の層は、約100ナノメートル(100nm)より大きい平均最終合計厚さTを有しうる。いくつかの実施形態において、平均最終合計厚さTは、約150ナノメートル(150nm)より大きい又は約200ナノメートル(200nm)より大きくてよく、InGaN20の層の臨界厚さより小さくてよい。
【0040】
InGaN20の層は、有機金属化学蒸着(MOCVD)法などの化学蒸着(CVD)法、分子線エピタキシー(MBE)法又は金属ハロゲン化物気相エピタキシー(HVPE)法を用いてGaN16の層の主表面17上に沈着させることができる。InGaN20の層を形成するために用いることができるHVPEシステム及び方法は、開示されている(例えば、前述のArenaらの名で2009年9月10日に公開された特許文献1、Arenaらの名で2009年3月3日に出願された米国特許仮出願第61/157,112号明細書、Bertramの名で2010年9月30日に出願された米国特許出願第12/894,724号明細書及びArenaらの名で2010年11月23日に出願された米国特許仮出願第61/416,525号明細書参照)。
【0041】
InGaN20の層は、xが少なくとも約0.05である、InxGa(1-x)Nの組成を有するように構築することができる。いくつかの実施形態において、xは、約0.05から約0.10であってよい。言い換えれば、InGaN20の層におけるインジウム含量は、約5原子パーセント(5at%)から約10原子パーセント(10at%)であってよい。
【0042】
GaN16の層は、約3.189Åの緩和(すなわち、実質的にひずみがない)面内(すなわち、成長表面に平行な面内)格子パラメーターを有し、InGaN20の層は、対応するインジウム含量の百分率に依存する緩和面内格子パラメーターを有しうる。前述のように、InGaN20の層は、7at%インジウム(すなわち、In0.07Ga0.93N)で約3.21Åの緩和面内格子パラメーターを有しうる。さらに、緩和面内格子パラメーターを推定するために図1のグラフで示すようにy=0.0027x+3.1936により与えられる直線の式を用いると、InGaN20の層は、5at%インジウム(すなわち、In0.05Ga0.95N)で約3.207Åの緩和面内格子パラメーターを、10at%インジウム(すなわち、In0.10Ga0.90N)で約3.220Åの緩和面内格子パラメーターを有しうる。
【0043】
いくつかの実施形態において、InGaN20の層とGaN16の層の間の緩和格子パラメーターの不一致は、GaN16の層の緩和平均格子パラメーターの約0.5%から約1.0%でありうる。緩和格子パラメーターの不一致は、式M=100((a2−a1)/a1)を用いて求めることができ、ここで、Mは、緩和格子パラメーターの不一致であり、a1は、GaN16の層の緩和平均格子パラメーターであり、a2は、InGaN20の層の緩和平均格子パラメーターである。例えば、InGaN20の層が5at%のインジウムを含み、約3.207Åの緩和面内格子パラメーターを有する場合、InGaN20の層とGaN16の層の間の緩和格子パラメーターの不一致は、GaN16の層の緩和平均格子パラメーターの約0.56%(すなわち、0.56=100((3.207−3.189)/3.189))でありうる。InGaN20の層が10at%のインジウムを含み、約3.220Åの緩和面内格子パラメーターを有する場合、InGaN20の層とGaN16の層の間の緩和格子パラメーターの不一致は、GaN16の層の緩和平均格子パラメーターの約0.97%でありうる。
【0044】
GaN16の層とInGaN20の層の緩和平均格子パラメーターの間の不一致の結果として、InGaN20の層は、GaN16の層上に不整合の格子を成長させる。一般的に、格子不整合成長(すなわち、GaN20の層とInGaN16の層の間の不整合)は、InGaN20の層の保存されたひずみエネルギーがInGaN20の層内のさらなる転位18'の核形成をもたらすひずみエネルギーより大きい場合にひずみ緩和を伴う。この格子不整合成長は、立方晶系に配置した格子について起こるが、GaN、InGaN及びAlGaNのような六方格子構造を有する材料についてはより複雑である。六方晶層において、転位のための易滑り面が存在しない可能性があり、したがって、その内部における転位の核形成の前に、はるかにより高いひずみエネルギーがInGaN20の層内に保存される可能性がある。塑性緩和に到達したとき、緩和は、その成長表面であるInGaN20の層の露出主表面22の修飾により起こりうる。成長表面が六方結晶構造における(0001)面を含む場合、ピット欠陥30が発生しうる。これらのピット欠陥30は、転位18、18′(例えば、らせん転位)に又は近くに頂点を有する逆ピラミッド形として出現するので、以後、Vピット30と呼ぶ。InGaN20の層が成長するとき、Vピット30のサイズも大きくなる。
【0045】
図5は、InGaN20の層におけるVピット30を示す単純化等角投影図である。Vピット30は、InGaN20の層の成長表面であるInGaN20の層の露出主表面22に及んでいる。成長表面22上の開口部の六角形の形状は、InGaN材料の六方結晶構造に起因している。Vピット30は、Vピット30の頂点26からInGaN20の層の露出主表面22にまで及ぶVピット30内のInGaN20の層の側壁24(切子面)によって定義される。頂点26は、Vピット30がInGaN20の層の成長中に源を発する位置である。
【0046】
図5に示すように、Vピット30は、Vピット30がInGaN20の層内に及ぶ距離(すなわち、頂点26からInGaN20の層の露出主表面22の平面までの最短距離)である、ピット深さDを有する。さらに、Vピット30は、InGaN20の層の露出主表面22の平面におけるその1つの辺(側壁24と露出主表面22との交わる部分によって定義される)からその反対側の辺(反対側の側壁24と露出主表面22との交わる部分によって定義される)までの距離である、ピット幅Wを有する。InGaN20の層において形成されるVピット30のピット幅Wは、例えば、原子間力顕微鏡法(AFM)を用いて測定することができる。Vピット30は、一般的に、結晶構造の性質及び配向に起因するピット幅Wとピット深さDとの固定した比を有する。したがって、Vピット30のピット深さDは、Vピット30の測定ピット幅Wに基づいて推定することができる。言い換えれば、結晶学的考慮(例えば、(00010−00011)面と(0001)面との間の角度)から、ピット深さDを測定ピット幅Wから計算することができる(例えば、非特許文献1参照)。
【0047】
図4について述べると、InGaN20の層は、GaN16の層とInGaN20の層との間の界面に源を発し、InGaN20の層に及び、またInGaN20の層内で源を発し、広がる、GaN16の層内及びInGaN20の層に及ぶ転位18、18'を含みうる。Vピット30は、そのような転位18、18'に起因しうる。InGaN20の層とGaN16の層との間の界面に近接する頂点26を有するVピット30は、InGaN20の層内の中間位置に頂点26を有するVピット30と比較して、比較的により大きい(すなわち、より広いピット幅W及びより深いピット幅を有する)。
【0048】
いくつかの応用例において、InGaN20の層は、InGaN20の層をGaN16の層上で成長させた後にさらなる加工及び素子の製作のためにGaN16の下地層から分離し、他の基板に移すことができる。InGaN20の層とGaN16の層との間の界面に近接して源を発するものなどの比較的大きいVピット30は、InGaN20の層がそのような方法において移された後にInGaN20の層を少なくとも実質的に貫いて広がる穴をもたらしうる。Vピット30はまた、GaN16の層からInGaN20の層を分離し、InGaN20の層を他の基板に移すのに用いられるプロセスに悪影響を及ぼしうる。InGaN20の層におけるVピット30の存在は、InGaN20の層から形成される発光ダイオード(LEDs)に悪影響を及ぼしうる。例えば、Vピット30がInGaN20の層の厚さ全体に広がる場合、それは、Vピット30が存在するInGaN20の層の部分を含むLED素子のダイオード部分をショートさせ、LED素子を動作不能にし得る。
【0049】
InGaN20の層内に保存されるひずみエネルギーは、InGaN20の層の平均合計厚さT及びInGaN20の層におけるインジウムの濃度に比例する。したがって、InGaN20の層の異なるインジウム含量及び平均合計厚さTのInGaN20の層内に保存されるひずみエネルギーは、EE∝T(CIn)の関係を用いて推定することができ、ここで、EEは、InGaN20の層内の弾性エネルギー(任意単位の)であり、Tは、InGaN20の層の平均合計厚さであり、CInは、原子パーセントとして表されるInGaN20の層中のインジウムの濃度である。例えば、InGaN20の層が150ナノメートル(150nm)の平均合計厚さT及び8.5at%のインジウム濃度を有する場合、InGaN20の層内の弾性エネルギーEEは、約1275(1275=150(8.5))でありうる。しかし、InGaN20の層が200ナノメートル(200nm)の平均合計厚さT及び9.0at%のインジウム濃度を有する場合、InGaN20の層内の弾性エネルギーEEは、約1800(1800=200(9.0))でありうる。
【0050】
したがって、InGaN20の比較的に薄い層は、その内部により低い弾性エネルギーを有し、Vピット30が少数又は全くない状態で成長させることができる。しかし、いくつかの応用例について、InGaN20の比較的により厚い層が望ましい可能性がある。結果として、従来の処理により、Vピット30がInGaN20の比較的により厚い層に存在し、Vピット30がInGaN20の厚さが増加するにつれてより深く、より広くなる。
【0051】
本発明の実施形態は、InGaN20の層などの三元III族窒化物材料の層がGaN16の層などの二元III族窒化物材料の層上に形成される場合に形成されるVピット30のサイズを低減するのに用いることができる。したがって、三元III族窒化物材料の層の所定の平均合計厚さについて、三元III族窒化物材料の層を本明細書で開示した方法の実施形態により形成させる場合、Vピット30は、三元III族窒化物材料のそのような層を形成する以前に公知の方法と比べて比較的により小さいピット幅及び/又はピット深さを有しうる。
【0052】
前述のように、InGaN20の層は、有機金属化学蒸着(MOCVD)法などの化学蒸着(CVD)法、分子線エピタキシー(MBE)法又は金属ハロゲン化物気相エピタキシー(HVPE)法を用いてGaN16の層の主表面17上に沈着させることができる。そのような方法は、密閉チャンバー(例えば、蒸着又は反応チャンバー)内で実施することができる。基板10及びその上のGaN16の層をチャンバー内に準備することができる。チャンバー並びにその中の基板10及びGaN16の層を約500℃から約1000℃の温度又は複数の温度に加熱することができる。前駆体ガス混合物をチャンバー内に導入又は別の方法で供給する。III族窒化物半導体材料を形成するために、1つ又は複数のIII族前駆体及び窒素前駆体を含む前駆体ガス混合物を選択する。1つ又は複数のIII族前駆体の少なくとも一部及び窒素前駆体の少なくとも一部は、III族窒化物半導体材料を形成させる表面に近接した加熱したチャンバー内で分解する。分解時に、元素種が成長表面上に沈着し、規則正しい形で結合して、III族窒化物半導体材料を形成する。
【0053】
前駆体ガス混合物は、不活性ガス(例えば、窒素)及び又はInGaN20の層にドーパントを組み込むために用いる反応物種などの追加のガス又は反応物を場合によって含んでいてよい。非限定的な例として、シラン(SiH4)をN型ドーパントとして導入することができ、マグネシウムをP型ドーパントとして導入することができる。
【0054】
窒素前駆体は、例えば、アンモニア(NH3)を含みうる。1つ又は複数のIII族前駆体は、例えば、1つ又は複数のトリメチルインジウム(TMI)、トリエチルインジウム(TEI)及びトリエチルガリウム(TEG)を含みうる。窒素前駆体及び1つ又は複数のIII族前駆体は、ガス及び/又は蒸気(本明細書で用いている「ガス」という用語は、ガスと蒸気の両方を含む)としてチャンバー内に存在し、該前駆体は、処理中にチャンバー内を流動させられうる。チャンバーは、処理中真空下にあってよい(すなわち、チャンバー内の圧力が大気圧以下であってよい)。
【0055】
本発明の実施形態によれば、前駆体ガス混合物は、チャンバー内の窒素前駆体の分圧と1つ又は複数のIII族前駆体の分圧との比が約5600から約6600までに及ぶ範囲になるような方法で調合することができる。窒素前駆体と1つ又は複数のIII族前駆体の分圧とのそのような高い比は、InGaN20の層に形成されるVピット30が、比較的により低い分圧比で形成されるInGaNの層と比較したときに比較的により小さいという結果をもたらしうることが発見された。例えば、図5について再び述べると、いくつかの実施形態によれば、本明細書で述べたように形成したInGaN20の層におけるVピット30の平均ピット幅Wは、約200ナノメートル(200nm)若しくはそれ以下、又は約150ナノメートル(150nm)若しくはそれ以下でありうる。さらに、そのような実施形態において、InGaN20の層は、約100ナノメートル(100nm)より大きい、約150ナノメートル(150nm)より大きい、又は約200ナノメートル(200nm)より大きい平均合計厚さT(図4)を有しうる。
【0056】
当技術分野で公知のように、チャンバー内の前駆体の分圧は、チャンバー内の前駆体の流速に関連する。したがって、チャンバー内の前駆体の分圧は、チャンバー中の前駆体の流速を選択的に制御し、調節することによって選択的に制御し、調節することができる。
【0057】
図6は、InGaN20の層のそれぞれの沈着中のチャンバー内の窒素前駆体の分圧と1つ又は複数のIII族前駆体の分圧との比の異なる範囲におけるInGaN20の層内の弾性エネルギーの変化の関数としてのInGaN20の層に形成されたVピット30の平均ピット幅Wの観測された変化を示すグラフである。前述のように、InGaN20の層の異なるインジウム含量及びInGaN20の層の平均合計厚さTのInGaN20の層内に保存されたひずみエネルギーの相対的な差は、EE∝T(CIn)の関係を用いて推定することができ、ここで、EEは、InGaN20の層内の弾性エネルギー(任意単位の)であり、Tは、InGaN20の層の平均合計厚さであり、CInは、原子パーセントとして表されるInGaN20の層中のインジウムの濃度である。図6における弾性エネルギーは、ナノメートル単位のInGaN20の層の平均合計厚さTにInGaN20の層中の各インジウムの濃度を掛けることにより求めた。
【0058】
図6のグラフにおける丸印は、沈着中のチャンバー内の窒素前駆体の分圧と1つ又は複数のIII族前駆体の分圧との比が約3071から約5461までに及ぶ範囲内にあった方法を用いて作製したInGaN20の層に対応する。これに対して、図6のグラフにおける三角印は、沈着中のチャンバー内の窒素前駆体の分圧と1つ又は複数のIII族前駆体の分圧との比が約5600から約6600までに及ぶ範囲内にあった本明細書で開示した方法の実施形態による方法を用いて作製したInGaN20の層に対応する。図6における傾向直線50は、上述のように分圧比が約3071から約5461にまで及ぶ範囲内にあった方法を用いて作製した試料におけるInGaN20の層内の弾性エネルギーとその中に形成されたVピット30の測定ピット幅Wとの間の関係を近似している。同様に、図6における傾向直線52は、上述のように分圧比が約5600から約6600にまで及ぶ範囲内にあった方法を用いて作製した試料におけるInGaN20の層内の弾性エネルギーとその中に形成されたVピット30の測定ピット幅Wとの間の関係を近似している。図6のグラフにおける傾向直線50と傾向直線52とを比較することによりわかるように、InGaN20の層内の所定の弾性エネルギーにおいて、Vピット30の測定ピット幅Wは、分圧比が約5600から約6600にまで及ぶ範囲内にあった方法を用いて作製した試料で、分圧比が約3071から約5461にまで及ぶ範囲内にあった方法を用いて作製した試料におけるVピット30の測定ピット幅Wと比べて、比較的により小さい。
【0059】
一例として、図6における垂直の直線54は、1800の弾性エネルギーに位置し、約200ナノメートル(200nm)の平均合計厚さ及び9原子パーセント(9at%)のインジウム含量を有する(すなわち、1800=200(9))InGaN20の層に対応しうる。図6のグラフに示すように、分圧比が本明細書で述べたように約5600から約6600にまで及ぶ範囲内にあった方法を用いて作製したInGaN20のそのような層は、約160ナノメートル(160nm)のピット幅Wを有するVピット30を含むと予測することができる。これに対して、分圧比が約3071から約5461にまで及ぶ範囲内にあった方法を用いて作製したInGaN20のそのような層は、約260ナノメートル(260nm)のより大きなピット幅Wを有するVピット30を含むと予測することができる。他の例として、図6における垂直の直線56は、1275の弾性エネルギーに位置し、約150ナノメートル(150nm)の平均合計厚さ及び8.5原子パーセント(8.5at%)のインジウム含量を有する(すなわち、1275=150(8.5))InGaN20の層に対応しうる。図6のグラフに示すように、分圧比が本明細書で述べたように約5600から約6600にまで及ぶ範囲内にあった方法を用いて作製したInGaN20のそのような層は、100ナノメートル(100nm)未満のピット幅Wを有するVピット30を含むと予測することができる。これに対して、分圧比が約3071から約5461にまで及ぶ範囲内にあった方法を用いて作製したInGaN20のそのような層は、約170ナノメートル(170nm)のより大きなピット幅Wを有するVピット30を含むと予測することができる。
【0060】
理論に拘束されるものではないが、本明細書で述べたように、InGaN20の層の成長中に比較的に高い前駆体ガス比を用いることにより、さらなるInGaN材料がVピット30内の側壁24上で成長する速度が、さらなるInGaN材料が露出主表面22(成長表面)上で成長する速度と比べて増加して、比較的により小さいサイズのVピット30をもたらしうると現在のところ考えられる。
【0061】
したがって、チャンバー内の窒素前駆体の分圧と1つ又は複数のIII族前駆体の分圧との比が少なくとも約5600(例えば、約5600から約6600まで)となるように前駆体ガス混合物を調合することにより、本明細書で述べた方法の実施形態により作製したInGaN20の層(及び他の三元III族窒化物半導体材料)は、より低い前駆体比をInGaNの層の製作時に用いた以前に公知の方法と比べて、その中に比較的により小さいVピット30を有するように形成させることができる。
【0062】
例えば、InGaN20の層などの三元III族窒化物材料を含む半導体構造体を作製することができる。InGaN20の層は、本明細書で上述した方法を用いて、GaN16の層などの二元III族窒化物材料の層上にInGaN20の層を成長させることにより作製することができる。InGaN20の十分に成長した層は、約100ナノメートル(100nm)より大きい、約150ナノメートル(150nm)より大きい、又は約200ナノメートル(200nm)より大きい最終平均合計厚さT(図4)を有しうる。最終平均合計厚さTは、InGaN20の層の臨界厚さ未満であってよい。InGaN20の層は、少なくとも5原子パーセント(5at%)のインジウムを含んでいてよく、約5原子パーセント(5at%)のインジウムから約10原子パーセント(10at%)のインジウムを含んでいてよい。InGaN20の十分に成長した層とGaN16の層との間の緩和格子パラメーターの不一致は、GaN16の層の緩和平均格子パラメーターの少なくとも約0.5%であってよく、GaN16の層の緩和平均格子パラメーターの約0.5%から約1.0%であってよい。InGaN20の十分に成長した層は、約200ナノメートル(200nm)若しくはそれ以下、又は約150ナノメートル(150nm)若しくはそれ以下の平均ピット幅W(図5)を有する複数のVピット30をその中に含みうる。
【0063】
図2から5に関して上で述べた実施形態において、半導体構造体は、GaN16の単一下地層上のInGaN20の単一層を含む。しかし、本明細書で述べた方法は、III族窒化物材料の複数の層を含む半導体構造体を作製するためにも用いることができる。例えば、図7は基板101及びIII族窒化物材料の複数の層を含む積層体102を含む半導体構造体100を説明する。基板101は、基板10に関して本明細書で前述したような基板を含みうる。積層体102は、GaN104の層などの二元III族窒化物材料の複数の層及びInGaN106の層などの三元III族窒化物材料の複数の層を含みうる。図7に示すように、GaN104の層及びInGaN106の層は、GaN104の各層がInGaN106の層によりGaN104の他の層から分離されるように、交互に重ねて配置することができる。
【0064】
GaN104の各層は、GaN16の前述の層と実質的に類似していてよく、同じ方法で形成することができる。同様に、InGaN106の各層は、InGaN20の前述の層と実質的に類似していてよく、同じ方法で形成することができる。しかし、図7の実施形態において、InGaN106の層は、InGaN20の前述の層より比較的により薄い場合がある。例として、また制限なしに、GaN104の層のそれぞれ及びInGaN106の層のそれぞれは、約2ナノメートル(2nm)から約30ナノメートル(30nm)の層厚を有しうる。しかし、積層体102は、InGaN20の前述の層と同様な最終平均合計厚さTを有しうる。例えば、積層体102は、約100ナノメートル(100nm)より大きい、約150ナノメートル(150nm)より大きい、又は約200ナノメートル(200nm)より大きい最終平均合計厚さTを有しうる。
【0065】
図7に示すように、転位110は、GaN104の1つ又は複数の層及びInGaN106の層中に少なくとも部分的に広がりうる。これらの転位110は、図4の転位18、18′に関して前述したような転位を含みうる。さらに、Vピット112は、前述のVピット30と同様に、積層体102内に存在しうる。Vピット112のそれぞれは、その露出主表面103(成長表面)から積層体102内に広がり、転位110に源を発しうる頂点108に広がりうる。図7に示すように、Vピット112の少なくともいくつかは、GaN104の層及びInGaN106の層の複数の交互層中に広がりうる。
【0066】
GaN104の層及びInGaN106の層は、GaN16の層及びInGaN20の層に関して前述したように形成することができる。特に、InGaN20の各層は、前述のように、チャンバー内の窒素前駆体の分圧と1つ又は複数のIII族前駆体の分圧との比が約5600から約6600にまで及ぶ範囲になるような方法で調合した前駆体ガス混合物を用いて反応チャンバー内で形成することができる。結果として、Vピット112は、図5に関して前述したように、比較的により小さいピット幅W及び/又はピット深さDを有しうる。
【0067】
本発明のさらなる非限定的実施形態を下に述べる。
【0068】
実施形態1:InGaNを形成する方法であって、GaNの層をチャンバー内に準備するステップと、GaNの層の表面上にInGaNの層をエピタキシャル成長させるステップと、及びInGaNの層を約100ナノメートル(100nm)より大きい平均最終厚さに成長させるステップとを含む方法。InGaNの層をエピタキシャル成長させるステップは、前駆体ガス混合物をチャンバー内に準備するステップ、前駆体ガス混合物を1つ又は複数のIII族前駆体及び窒素前駆体を含むように選択するステップ、チャンバー内の窒素前駆体の分圧と1つ又は複数のIII族前駆体の分圧との比が少なくとも約5600となるように前駆体ガス混合物を調合するステップ、並びに1つ又は複数のIII族前駆体の少なくとも一部及び窒素前駆体の少なくとも一部をGaNの層の表面に近接して分解するステップを含む。
【0069】
実施形態2:チャンバー内の窒素前駆体の分圧と1つ又は複数のIII族前駆体の分圧との比が少なくとも約5600となるように前駆体ガス混合物を調合するステップは、比が5600から6600にまで及ぶ範囲にあるように前駆体ガス混合物を調合するステップを含む、実施形態1の方法。
【0070】
実施形態3:平均最終厚さをInGaNの層の臨界厚さより小さくなるように選択するステップをさらに含む、実施形態1の方法。
【0071】
実施形態4:GaNの層の表面上にInGaNの層をエピタキシャル成長させるステップは、ハロゲン化物気相エピタキシー(HVPE)法又は有機金属気相エピタキシー(MOVPE)法を用いてGaNの層の表面上にInGaNの層を沈着させるステップを含む、実施形態1から3までのいずれか1つの方法。
【0072】
実施形態5:InGaNの層を約100nmより大きい平均最終厚さに成長させるステップは、InGaNの層を約150ナノメートル(150nm)より大きい平均最終厚さに成長させるステップを含む、実施形態1から4までのいずれか1つの方法。
【0073】
実施形態6:InGaNの層を約150nmより大きい平均最終厚さに成長させるステップは、InGaNの層を約200ナノメートル(200nm)より大きい平均最終厚さに成長させるステップを含む、実施形態5の方法。
【0074】
実施形態7:InGaNの層をエピタキシャル成長させるステップは、xが少なくとも約0.05であるInxGa(1-x)Nの組成を有するようにInGaNの層を構築するステップを含む、実施形態1から6までのいずれか1つの方法。
【0075】
実施形態8:xが少なくとも約0.05であるInxGa(1-x)Nの組成を有するようにInGaNの層を構築するステップは、xが約0.05から約0.10であるInxGa(1-x)Nの組成を有するようにInGaNの層を構築するステップを含む、実施形態7の方法。
【0076】
実施形態9:GaNの層の表面上にInGaNの層をエピタキシャル成長させるステップは、InGaNの層とGaNの層との間の緩和格子パラメーターの不一致がGaNの層の緩和平均格子パラメーターの約0.5%から約1.0%であるようにInGaNの層を構築するステップをさらに含む、実施形態1から8までのいずれか1つの方法。
【0077】
実施形態10:InGaNの層を平均最終厚さに成長させるステップは、約200ナノメートル(200nm)又はそれ以下の平均ピット幅を有するInGaNの層における複数のVピットを形成するステップをさらに含む、実施形態1から9までのいずれか1つの方法。
【0078】
実施形態11:約200nm又はそれ以下の平均ピット幅を有する複数のVピットを形成するステップは、約150ナノメートル(150nm)又はそれ以下の平均ピット幅を有する複数のVピットを形成するステップを含む、実施形態10の方法。
【0079】
実施形態12:窒素前駆体をアンモニアを含むように選択するステップをさらに含む、実施形態1から11までのいずれか1つの方法。
【0080】
実施形態13:1つ又は複数のIII族前駆体をトリメチルインジウム及びトリエチルガリウムを含むように選択するステップをさらに含む、実施形態1から12までのいずれか1つの方法。
【0081】
実施形態14:窒素、ガリウム、並びにインジウム及びアルミニウムの少なくとも1つを含む三元III族窒化物材料を形成する方法であって、二元III族窒化物材料をチャンバー内に準備するステップと、二元III族窒化物材料上に三元III族窒化物材料の層をエピタキシャル成長させるステップとを含む方法。三元III族窒化物材料の層のエピタキシャル成長は、窒素前駆体及び2つ又はそれ以上のIII族前駆体を含む、前駆体ガス混合物をチャンバー内に準備するステップ、チャンバー内の窒素前駆体の分圧と1つ又は複数のIII族前駆体の分圧との比が少なくとも約5600となるように前駆体ガス混合物を調合するステップ、並びに窒素前駆体及び2つ又はそれ以上のIII族前駆体をチャンバー内で分解するステップを含む。方法は、三元III族窒化物材料の層を約100ナノメートル(100nm)より大きい平均最終厚さに成長させるステップと、三元III族窒化物材料の層と二元III族窒化物材料の間の緩和格子パラメーターの不一致が二元III族窒化物材料の緩和平均格子パラメーターの少なくとも約0.5%であるように三元III族窒化物材料の層を構築するステップと、三元III族窒化物材料の層における、三元III族窒化物材料の十分に成長した層中の約200ナノメートル(200nm)又はそれ以下の平均ピット幅を有する複数のVピットを形成するステップとをさらに含む。
【0082】
実施形態15:チャンバー内の窒素前駆体の分圧と1つ又は複数のIII族前駆体の分圧との比が少なくとも約5600となるように前駆体ガス混合物を調合するステップは、比が5600から6600にまで及ぶ範囲にあるように前駆体ガス混合物を調合するステップを含む、実施形態14の方法。
【0083】
実施形態16:三元III族窒化物材料を窒化インジウムガリウムを含むように選択するステップをさらに含む、実施形態14の方法。
【0084】
実施形態17:平均最終厚さを三元III族窒化物材料の層の臨界厚さより小さくなるように選択するステップをさらに含む、実施形態14から16までのいずれか1つの方法。
【0085】
実施形態18:三元III族窒化物材料の層を約100nmより大きい平均最終厚さに成長させるステップは、三元III族窒化物材料の層を約150ナノメートル(150nm)より大きい平均最終厚さに成長させるステップを含む、実施形態14から17までのいずれか1つの方法。
【0086】
実施形態19:三元III族窒化物材料の層を約150nmより大きい平均最終厚さに成長させるステップは、三元III族窒化物材料の層を約200ナノメートル(200nm)より大きい平均最終厚さに成長させるステップを含む、実施形態18の方法。
【0087】
実施形態20:三元III族窒化物材料の層と二元III族窒化物材料の間の緩和格子パラメーターの不一致が二元III族窒化物材料の緩和平均格子パラメーターの少なくとも約0.5%であるように三元III族窒化物材料の層を構築するステップは、三元III族窒化物材料の層と二元III族窒化物材料の間の緩和格子パラメーターの不一致が二元III族窒化物材料の緩和平均格子パラメーターの少なくとも約5%であるように三元III族窒化物材料の層を構築するステップを含む、実施形態14から19までのいずれか1つの方法。
【0088】
実施形態21:窒素前駆体をアンモニアを含むように選択するステップをさらに含む、実施形態14から20までのいずれか1つの方法。
【0089】
実施形態22:2つ又はそれ以上のIII族前駆体をトリメチルインジウム及びトリエチルガリウムを含むように選択するステップをさらに含む、実施形態14から21までのいずれか1つの方法。
【0090】
実施形態23:GaNの層をチャンバー内に準備するステップと、GaNの層の表面上にInGaNの層をエピタキシャル成長させるステップとを含む方法により形成されるInGaNを含む半導体構造体。InGaNの層のエピタキシャル成長は、前駆体ガス混合物をチャンバー内に準備するステップ、前駆体ガス混合物を1つ又は複数のIII族前駆体及び窒素前駆体を含むように選択するステップ、チャンバー内の窒素前駆体の分圧と1つ又は複数のIII族前駆体の分圧との比が少なくとも約5600となるように前駆体ガス混合物を調合するステップ、並びに1つ又は複数のIII族前駆体の少なくとも一部及び窒素前駆体の少なくとも一部をGaNの層の表面に近接して分解するステップを含む。実施形態23において、InGaNの十分に成長した層は、約100ノナメートル(100nm)より大きい平均最終厚さを有し、InGaNの十分に成長した層とGaNの層の間の緩和格子パラメーターの不一致は、GaNの層の緩和平均格子パラメーターの少なくとも約0.5%であり、InGaNの十分に成長した層は、約200ナノメートル(200nm)又はそれ以下の平均ピット幅を有する複数のVピットをその中に含む。
【0091】
実施形態24:InGaNの層が実施形態1から13までのいずれか1つにより形成される、実施形態23の半導体構造体。
【0092】
実施形態25:窒素、ガリウム、並びにインジウム及びアルミニウムの少なくとも1つを含む三元III族窒化物材料を含む半導体構造体であって、三元III族窒化物材料が、二元III族窒化物材料を含む基板をチャンバー内に準備するステップと、二元III族窒化物材料上に三元III族窒化物材料の層をエピタキシャル成長させるステップとを含む方法により形成される、半導体構造体。三元III族窒化物材料の層のエピタキシャル成長は、窒素前駆体及び2つ又はそれ以上のIII族前駆体を含む、前駆体ガス混合物をチャンバー内に準備するステップ、チャンバー内の窒素前駆体の分圧と1つ又は複数のIII族前駆体の分圧との比が少なくとも約5600となるように前駆体ガス混合物を調合するステップ、並びに窒素前駆体及び2つ又はそれ以上のIII族前駆体をチャンバー内で分解するステップを含む。実施形態24において、三元III族窒化物材料の十分に成長した層は、約100ノナメートル(100nm)より大きい平均最終厚さを有し、三元III族窒化物材料の十分に成長した層と二元III族窒化物材料の間の緩和格子パラメーターの不一致は、二元III族窒化物材料の緩和平均格子パラメーターの少なくとも約0.5%であり、三元III族窒化物材料の十分に成長した層は、約200ナノメートル(200nm)又はそれ以下の平均ピット幅を有する複数のVピットをその中に含む。
【0093】
実施形態26:三元III族窒化物材料の層が実施形態14から22までのいずれか1つにより形成される、実施形態25の半導体構造体。
【0094】
実施形態27:III族窒化物材料の層の積層体を形成する方法であって、基板をチャンバー内に準備するステップと、チャンバー内で基板上にGaNの少なくとも1つの層及びInGaNの複数の層をエピタキシャル成長させるステップと、並びにIII族窒化物材料の層の積層体を約100ナノメートル(100nm)より大きい最終平均合計厚さを有するように形成するステップとを含み、InGaNの複数の層のInGaNの少なくとも1つの層のエピタキシャル成長が、前駆体ガス混合物をチャンバー内に準備するステップ、前駆体ガス混合物を1つ又は複数のIII族前駆体及び窒素前駆体を含むように選択するステップ、チャンバー内の窒素前駆体の分圧と1つ又は複数のIII族前駆体の分圧との比が少なくとも約5600となるように前駆体ガス混合物を調合するステップ、並びに1つ又は複数のIII族前駆体の少なくとも一部及び窒素前駆体の少なくとも一部を分解してInGaNの少なくとも1つの層を形成するステップを含む方法。
【0095】
上述した本発明の実施形態は、これらの実施形態が、添付の特許請求の範囲及びそれらの合法的な同等のものの範囲により定義される本発明の実施形態の単なる例であるので、本発明の範囲を限定するものではない。同等の実施形態は、本発明の範囲内にあるものとする。実際、本明細書で示し、述べたものに加えて、述べた要素の代わりの有用な組合せなどの本発明の様々な変更形態は、記述から当業者に明らかになるであろう。そのような変更形態も添付の特許請求の範囲の範囲内にあるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
InGaNを形成する方法であって、
GaNの層をチャンバー内に準備するステップと、
GaNの層の表面上にInGaNの層をエピタキシャル成長させるステップであって、
前駆体ガス混合物をチャンバー内に準備するステップ、
前駆体ガス混合物を1つ又は複数のIII族前駆体及び窒素前駆体を含むように選択するステップ、
チャンバー内の窒素前駆体の分圧と1つ又は複数のIII族前駆体の分圧との比が少なくとも約5600となるように前駆体ガス混合物を調合するステップ、並びに
1つ又は複数のIII族前駆体の少なくとも一部及び窒素前駆体の少なくとも一部をGaNの層の表面に近接して分解するステップ、
を含むステップと、
InGaNの層を約100ナノメートル(100nm)より大きく、InGaNの層の臨界厚さより小さい平均最終厚さに成長させるステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
チャンバー内の窒素前駆体の分圧と1つ又は複数のIII族前駆体の分圧との比が少なくとも約5600となるように前駆体ガス混合物を調合するステップは、
前記比が5600から6600にまで及ぶ範囲にあるように前駆体ガス混合物を調合するステップを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
GaNの層の表面上にInGaNの層をエピタキシャル成長させるステップは、
ハロゲン化物気相エピタキシー(HVPE)法又は有機金属気相エピタキシー(MOVPE)法を用いてGaNの層の表面にInGaNの層を沈着させるステップを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
InGaNの層を約100nmより大きい平均最終厚さに成長させるステップは、
InGaNの層を約150ナノメートル(150nm)より大きい平均最終厚さに成長させるステップを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
InGaNの層を約150nmより大きい平均最終厚さに成長させるステップは、
InGaNの層を約200ナノメートル(200nm)より大きい平均最終厚さに成長させるステップを含む、ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
InGaNの層のエピタキシャル成長させるステップは、
xが少なくとも約0.05であるInxGa(1-x)Nの組成を有するようにInGaNの層を構築するステップを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
xが少なくとも約0.05であるInxGa(1-x)Nの組成を有するようにInGaNの層を構築するステップは、
xが約0.05から約0.10であるInxGa(1-x)Nの組成を有するようにInGaNの層を構築するステップを含む、ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
GaNの層の表面上にInGaNの層をエピタキシャル成長させるステップは、
InGaNの層とGaNの層との間の緩和格子パラメーターの不一致がGaNの層の緩和平均格子パラメーターの約0.5%から約1.0%であるようにInGaNの層を構築するステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
InGaNの層を約100nmより大きい平均最終厚さに成長させるステップは、
InGaNの層を約150ナノメートル(150nm)より大きい平均最終厚さに成長させるステップを含む、ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
InGaNの層を約150nmより大きい平均最終厚さに成長させるステップは、
InGaNの層を約200ナノメートル(200nm)より大きい平均最終厚さに成長させるステップを含む、ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
InGaNの層を平均最終厚さに成長させるステップは、
約200ナノメートル(200nm)又はそれ以下の平均ピット幅を有するInGaNの層における複数のVピットを形成するステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
約200nm又はそれ以下の平均ピット幅を有する複数のVピットを形成するステップは、
約150ナノメートル(150nm)又はそれ以下の平均ピット幅を有する複数のVピットを形成するステップを含む、ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
窒素前駆体をアンモニアを含むように選択するステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
1つ又は複数のIII族前駆体をトリメチルインジウム及びトリエチルガリウムを含むように選択するステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
窒素、ガリウム、並びにインジウム及びアルミニウムの少なくとも1つを含む三元III族窒化物材料を含む半導体構造体であって、
前記三元III族窒化物材料が、
二元III族窒化物材料を含む基板をチャンバー内に準備するステップと、
二元III族窒化物材料上に三元III族窒化物材料の層をエピタキシャル成長させるステップであって、
窒素前駆体及び2つ又はそれ以上のIII族前駆体を含む、前駆体ガス混合物をチャンバー内に準備するステップ、
チャンバー内の窒素前駆体の分圧と1つ又は複数のIII族前駆体の分圧との比が少なくとも約5600となるように前駆体ガス混合物を調合するステップ、並びに
窒素前駆体及び2つ又はそれ以上のIII族前駆体をチャンバー内で分解するステップ、を含むステップと、
を含む方法により形成され、
三元III族窒化物材料の十分に成長した層が、約100ノナメートル(100nm)より大きい平均最終厚さを有し、
三元III族窒化物材料の十分に成長した層と二元III族窒化物材料の間の緩和格子パラメーターの不一致が、二元III族窒化物材料の緩和平均格子パラメーターの少なくとも約0.5%であり、
三元III族窒化物材料の十分に成長した層が、約200ナノメートル(200nm)又はそれ以下の平均ピット幅を有する複数のVピットをその中に含む、
ことを特徴とする半導体構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−182452(P2012−182452A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−37716(P2012−37716)
【出願日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【出願人】(507088071)ソイテック (93)
【Fターム(参考)】