説明

アダマンタン含有エポキシ化合物、その製造方法及びエポキシ組成物

【課題】エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などのカチオン重合性化合物に対して速やかに硬化させることができ、得られた硬化物が、透明性、耐光性などの光学特性、硬さ、長期耐熱性、誘電率など電気特性に優れ、光半導体用封止剤、光学電子部材及びこれらの接着剤として好適に使用できるエポキシ組成物を提供する。
【解決手段】(A)ケトン基含有アダマンタン誘導体とトリメチルスルホニウムヨージドとを塩基性触媒存在下で反応させて得られたアダマンタン含有エポキシ化合物と、(B)カチオン重合開始剤および/又は硬化剤を含有するエポキシ組成物、又は更に(C)カチオン重合性化合物を含有するエポキシ組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学電子部材などに有用なアダマンタン含有エポキシ化合物と、その製造方法及びエポキシ組成物に関し、さらに詳しくは、カチオン重合性化合物の硬化促進剤として用いられ、光半導体用封止剤、光学電子部材(光導波路、光通信用レンズ及び光学フィルムなど)及びこれらの接着剤として好適な、透明性、耐光性などの光学特性、長期耐熱性、誘電率など電気特性に優れた硬化物を与えるアダマンタン含有エポキシ化合物、その製造方法及びエポキシ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)チップを発光素子として備えた光半導体装置が各種ディスプレイ装置、表示用機器などに広く利用されている。この半導体装置の例としては、例えばGaN、GaAlN、InGaN及びInAlGaN等の窒化ガリウム系化合物半導体を用いた可視光発光デバイスや高温動作電子デバイスがあり、最近では青色発光ダイオード、紫外発光ダイオードの分野で開発が進んでいる。LEDチップを発光素子として備える光半導体装置は、リードフレームの発光面側にLEDチップを搭載して、LEDチップとリードフレームとをワイヤボンディングにより電気的に接続して、さらに、発光素子の保護及びレンズ機能を兼ねた樹脂により封止されている。
【0003】
近年、新たな光源として白色LEDが注目されており、今後、照明用途を中心に大きく市場が広がると言われている。白色LEDはGaNのベアチップにYAG蛍光体を塗布し、GaNの青色発光と蛍光体の黄色発光を混色して白色を発光させるタイプと赤・緑・青の3チップを1パッケージ化して白色発光させるタイプが実用化されている。また、近年、色合いの改良から紫外LEDチップを光源にして、複数の蛍光体材料を組み合わせる方法も開発されている。さらに、照明用途等にLEDを用いるためには、その耐久性を改良することが求められている。
【0004】
一方、アダマンタンは、シクロヘキサン環が4個、カゴ形に縮合した構造を有し、対称性が高く、安定な化合物であり、その誘導体は、特異な機能を示すことから、医薬品原料や高機能性工業材料の原料などとして有用であることが知られている。例えば光学特性や耐熱性などを有することから、光ディスク基板、光ファイバーあるいはレンズなどに用いることが試みられている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0005】
また、アダマンタンエステル類を、その酸感応性、ドライエッチング耐性、紫外線透過性などを利用して、フォトレジスト用樹脂原料として、使用することが試みられている(例えば、特許文献3参照)。アダマンタンジオール類から誘導されるエポキシ化合物を発光ダイオード用封止剤に用いる提案がされており、耐熱、耐光性を有することが報告されている(例えば、特許文献4参照)。
【0006】
近年、液晶や有機ELなどを用いたフラットパネルディスプレイの高精細化、高視野角化、高画質化、LEDなどの発光ダイオード(光半導体)を用いた光源の高輝度・短波長化、白色化、さらに電子回路の高周波数化や光を用いた回路・通信など、光学・電子部品の高性能化・改良検討が進められている。
その改良手法として、液晶材料や有機EL用の発光材料などの基本材料の研究開発がされているが、それらの材料と共に使用されるコーティング材、封止材あるいは接着剤などの樹脂の高性能化も検討されている。光学・電子部品のコーティング材料や封止材料用、接着剤用の樹脂として、種々の熱硬化樹脂や光硬化樹脂、あるいは熱可塑性樹脂が適用されている。それらは樹脂単独での耐熱性や透明性、溶解性、密着性などの特性に応じて適用されている。
【0007】
エポキシ樹脂硬化物は、一般的に機械的性質、耐水性、耐食性、密着性、耐化学薬品性、耐熱性、電気特性などの点で優れた性能を有することから、接着剤、塗料、積層板、IC封止材、成形材料など幅広い分野において使用されている。中でも、例えばビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂等に代表されるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂である汎用型芳香族エポキシ樹脂は、硬化剤と、場合によっては硬化促進剤を添加して、更に必要により、タルク、チタン、シリカなどの充填剤をも添加して、種々の硬化条件で硬化させて硬化物として用いられている。
【0008】
しかしながら、上記のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂である汎用型芳香族エポキシ樹脂からなる硬化物は、芳香核構造を有するために屋外における耐候性に劣るため、芳香環を持たない脂環式骨格を有するエポキシ化合物が開発されている。例えば、分子内に脂環骨格を持つ単官能エポキシ化合物としてモノエポキシ化4−ビニルシクロヘキセン、二官能エポキシ化合物として4−ビニルシクロヘキセンジエポキシドやリモネンジエポキシド、セロキサイド等が挙げられる(例えば、特許文献5参照)。
【0009】
これらの分子内に脂環骨格を持つ単官能エポキシ化合物は、使用にあたって十分な性能を有するが若干反応性が低く、硬化物の物性や反応性の低下が起こることがある。そこで、反応性の高い脂環エポキシ化合物が望まれている。しかしながら、先に挙げたモノエポキシ化4−ビニルシクロヘキセンやリモネンジエポキシドは室温で揮発するため作業環境上に問題がある。これを克服するため、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(セロキサイド2021P)が提案されているが(例えば、特許文献6参照)、この化合物は構造内にエステル結合を有するため、耐水試験などで劣化し、耐加水分解性、耐熱性、耐光性、硬さが充分でない。
また、オキセタン化合物のようなカチオン重合性化合物は、光・熱で硬化が可能なモノマーとして、近年注目されている化合物であり、多くのオキセタンモノマーが開発され、それに伴い多くの樹脂組成物が検討され提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0010】
【特許文献1】特開平6−305044号公報
【特許文献2】特開平9−302077号公報
【特許文献3】特開平4−39665号公報
【特許文献4】特開2005−146253号公報
【特許文献5】特開2004−204228号公報
【特許文献6】特開2003−82062号公報
【非特許文献1】有機合成化学学会誌29巻29〜33頁(2004年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような状況下でなされたもので、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などのカチオン重合性化合物に対して速やかに硬化させることができ、得られた硬化物が、透明性、耐光性などの光学特性、硬さ、長期耐熱性、誘電率など電気特性に優れ、光半導体用封止剤、光学電子部材(光導波路、光通信用レンズ及び光学フィルムなど)及びこれらの接着剤として好適に使用できるエポキシ組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を有するケトン基含有アダマンタン誘導体とトリメチルスルホニウムヨージドとを塩基性触媒存在下で反応させることによりアダマンタン含有エポキシ化合物が得られ、これにカチオン重合開始剤などを含有させたエポキシ組成物が、その目的に適合し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基いて完成したものである。
すなわち、本発明は、以下のアダマンタン含有エポキシ化合物、その製造方法及びエポキシ組成物を提供する。
1.下記一般式(I)で表されることを特徴とするアダマンタン含有エポキシ化合物。
【0013】
【化1】

(式中、Xは単結合又は酸素原子、Rは炭素数1〜6のアルキル基、mは0〜6の整数、nは1〜4の整数を示す。)
【0014】
2.一般式(II)
【化2】

(式中、X、R、mおよびnは一般式(I)と同様である。)
【0015】
で表されるケトン基含有アダマンタン誘導体と、式(III)
(CH3)3SI (III)
で表されるトリメチルスルホニウムヨージドとを、塩基性触媒存在下で反応させることを特徴とする、上記1のアダマンタン含有エポキシ化合物の製造方法。
【0016】
3.(A)上記1のアダマンタン含有エポキシ化合物と、(B)カチオン重合開始剤および/又は硬化剤を含有することを特徴とするエポキシ組成物。
4.さらに、(C)カチオン重合性化合物を含有する上記3のエポキシ組成物。
5.(C)カチオン重合性化合物が、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物及びオキセタン化合物から選ばれた少なくとも一種の化合物である上記4のエポキシ組成物。
6.(C)カチオン重合性化合物が、オキセタン化合物である上記5のエポキシ組成物。
7.上記3〜6のいずれかのエポキシ組成物を用いてなる光半導体用封止剤。
8.上記3〜6のいずれかのエポキシ組成物を用いてなる光学電子部材。
9.上記3〜6のいずれかのエポキシ組成物を用いてなるカラーレジスト。
10.上記3〜6のいずれかのエポキシ組成物を用いてなるディスプレイ保護膜。
【発明の効果】
【0017】
本発明のアダマンタン含有エポキシ化合物は、カチオン重合性化合物に対して高い反応性を示し、従来、エポキシ樹脂組成物の硬化に必要であった硬化温度を低下させたり、硬化時間を短縮する効果がある。また、本発明のアダマンタン含有エポキシ化合物を含むエポキシ組成物から得られた硬化物は、透明性、耐光性などの光学特性、硬さ、長期耐熱性、誘電率など電気特性に優れ、光半導体用封止剤、光学電子部材(光導波路、光通信用レンズ及び光学フィルムなど)及びこれらの接着剤として好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明のアダマンタン含有エポキシ化合物は下記一般式(I)で表されるものであり、一般式(II)で表されるケトン基含有アダマンタン誘導体と、式(III) で表されるトリメチルスルホニウムヨージドとを、塩基性触媒存在下で反応させることにより製造することができる。
【0019】
【化3】

【0020】
【化4】

(式中、Xは単結合又は酸素原子、Rは炭素数1〜6のアルキル基、mは0〜6の整数、nは1〜4の整数を示す。)
(CH3)3SI (III)
【0021】
原料の一般式(II)で表されるケトン基含有アダマンタン誘導体としては、次の化合物を挙げることができ、対応するアダマンタン含有エポキシ化合物が得られる。
(nが1の場合)アダマンチル-1-メチルケトン、アダマンチル-1-エチルケトン、アダマンチル-1-プロピルケトン、アダマンチル-1-ブチルケトン、アダマンチル-1-ペンチルケトン、アダマンチル-1-ヘキシルケトン、アダマンチル-1-アセトン、アダマンタン-1-イルブタン-3-オン、アダマンタン-1-イルペンタン-4-オン、アダマンタン-1-イルヘキサン-5-オン、アダマンタン-1-イルヘプタン-6-オン、アダマンタン-1-イルオクタン-7-オン、アダマンタン-1-イルペンタン-3-オン、アダマンタン-1-イルヘキサン-3-オン、アダマンタン-1-イルヘプタン-3-オン、アダマンタン-1-イルオクタン-3-オン、アダマンタン-1-イルノナン-3-オン、アダマンタン-1-イルヘキサン-4-オン、アダマンタン-1-イルヘプタン-4-オン、アダマンタン-1-イルオクタン-4-オン、アダマンタン-1-イルノナン-4-オン、アダマンタン-1-イルデカン-4-オン、アダマンタン-1-イルヘプタン-5-オン、アダマンタン-1-イルオクタン-5-オン、アダマンタン-1-イルノナン-5-オン、アダマンタン-1-イルデカン-5-オン、アダマンタン-1-イルウンデカン-5-オン、アダマンタン-1-イルオクタン-6-オン、アダマンタン-1-イルノナン-6-オン、アダマンタン-1-イルデカン-6-オン、アダマンタン-1-イルウンデカン-6-オン、アダマンタン-1-イルドデカン-6-オン、アダマンタン-1-イルノナン-7-オン、アダマンタン-1-イルデカン-7-オン、アダマンタン-1-イルウンデカン-7-オン、アダマンタン-1-イルドデカン-7-オン、アダマンタン-1-イルトリデカン-7-オン、アダマンタン-1-イル(オキシ)アセトン、アダマンタン-1-イル(オキシ)ブタン-3-オン、アダマンタン-1-イル(オキシ)ペンタン-4-オン、アダマンタン-1-イル(オキシ)ヘキサン-5-オン、アダマンタン-1-イル(オキシ)ヘプタン-6-オン、アダマンタン-1-イル(オキシ)オクタン-7-オン、アダマンタン-1-イル(オキシ)ペンタン-3-オン、アダマンタン-1-イル(オキシ)ヘキサン-3-オン、アダマンタン-1-イル(オキシ)ヘプタン-3-オン、アダマンタン-1-イル(オキシ)オクタン-3-オン、アダマンタン-1-イル(オキシ)ノナン-3-オン、アダマンタン-1-イル(オキシ)ヘキサン-4-オン、アダマンタン-1-イル(オキシ)ヘプタン-4-オン、アダマンタン-1-イル(オキシ)オクタン-4-オン、アダマンタン-1-イル(オキシ)ノナン-4-オン、アダマンタン-1-イル(オキシ)]デカン-4-オン、アダマンタン-1-イル(オキシ)]ヘプタン-5-オン、アダマンタン-1-イル(オキシ)オクタン-5-オン、アダマンタン-1-イル(オキシ)ノナン-5-オン、アダマンタン-1-イル(オキシ)デカン-5-オン、アダマンタン-1-イル(オキシ)ウンデカン-5-オン、アダマンタン-1-イル(オキシ)オクタン-6-オン、アダマンタン-1-イル(オキシ)ノナン-6-オン、アダマンタン-1-イル(オキシ)デカン-6-オン、アダマンタン-1-イル(オキシ)ウンデカン-6-オン、アダマンタン-1-イル(オキシ)ドデカン-6-オン、アダマンタン-1-イル(オキシ)ノナン-7-オン、アダマンタン-1-イル(オキシ)デカン-7-オン、アダマンタン-1-イル(オキシ)ウンデカン-7-オン、アダマンタン-1-イル(オキシ)ドデカン-7-オン、アダマンタン-1-イル(オキシ)トリデカン-7-オン、
【0022】
(nが2の場合)アダマンタン-1,3-ジイルビス(メチルケトン)、アダマンタン-1,3-ジイルビス(エチルケトン)、アダマンタン-1,3-ジイルビス(プロピルケトン)、アダマンタン-1,3-ジイルビス(ブチルケトン)、アダマンタン-1,3-ジイルビス(ペンチルケトン)、アダマンタン-1,3-ジイルビス(ヘキシルケトン)、アダマンタン-1,3-ジイルビス(ブタン-3-オン)、アダマンタン-1,3-ジイル(ペンタン-4-オン)、アダマンタン-1,3-ジイルビス(ヘキサン-5-オン)、アダマンタン-1,3-ジイルビス(ヘプタン-6-オン)、アダマンタン-1,3-ジイルビス(オクタン-7-オン)、アダマンタン-1,3-ジイルビス(ペンタン-5-オン)、アダマンタン-1,3-ジイルビス(ヘキサン-3-オン)、アダマンタン-1,3-ジイルビス(ヘプタン-3-オン)、アダマンタン-1,3-ジイルビス(オクタン-3-オン)、アダマンタン-1,3-ジイルビス(ノナン-3-オン)、アダマンタン-1,3-ジイルビス(ヘキサン-4-オン)、アダマンタン-1,3-ジイルビス(ヘプタン-4-オン)、アダマンタン-1,3-ジイルビス(オクタン-4-オン)、アダマンタン-1,3-ジイルビス(ノナン-4-オン)、アダマンタン-1,3-ジイルビス(デカン-4-オン)、アダマンタン-1,3-ジイルビス(ヘプタン-5-オン)、アダマンタン-1,3-ジイルビス(オクタン-5-オン)、アダマンタン-1,3-ジイルビス(ノナン-5-オン)、アダマンタン-1,3-ジイルビス(デカン-5-オン)、アダマンタン-1,3-ジイルビス(ウンデカン-5-オン、アダマンタン-1,3-ジイルビス(オクタン-6-オン)、アダマンタン-1,3-ジイルビス(ノナン-6-オン)、アダマンタン-1,3-ジイルビス(デカン-6-オン)、アダマンタン-1,3-ジイルビス(ウンデカン-6-オン)、アダマンタン-1,3-ジイルビス(ドデカン-6-オン)、アダマンタン-1,3-ジイルビス(ノナン-7-オン)、アダマンタン-1,3-ジイルビス(デカン-7-オン)、アダマンタン-1,3-ジイルビス(ウンデカン-7-オン)、アダマンタン-1,3-ジイルビス(ドデカン-7-オン)、アダマンタン-1,3-ジイルビス(トリデカン-7-オン)、アダマンタン-1,3-ジイルビス[(オキシ)アセトン]、アダマンタン-1,3-ジイルビス[(オキシ)ブタン-3-オン]、アダマンタン-1,3-ジイルビス[(オキシ)ペンタン-4-オン]、アダマンタン-1,3-ジイルビス[(オキシ)ヘキサン-5-オン]、アダマンタン-1,3-ジイルビス[(オキシ)ヘプタン-6-オン]、アダマンタン-1,3-ジイルビス[(オキシ)オクタン-7-オン]、アダマンタン-1,3-ジイルビス[(オキシ)ペンタン-3-オン]、アダマンタン-1,3-ジイルビス[(オキシ)ヘキサン-3-オン]、アダマンタン-1,3-ジイルビス[(オキシ)ヘプタン-3-オン]、アダマンタン-1,3-ジイルビス[(オキシ)オクタン-3-オン]、アダマンタン-1,3-ジイルビス[(オキシ)ノナン-3-オン]、アダマンタン-1,3-ジイルビス[(オキシ)ヘキサン-4-オン]、アダマンタン-1,3-ジイルビス[(オキシ)ヘプタン-4-オン]、アダマンタン-1,3-ジイルビス[(オキシ)オクタン-4-オン]、アダマンタン-1,3-ジイルビス[(オキシ)ノナン-4-オン]、アダマンタン-1,3-ジイルビス[(オキシ)デカン-4-オン]、アダマンタン-1,3-ジイルビス[(オキシ)ヘプタン-5-オン]、アダマンタン-1,3-ジイルビス[(オキシ)オクタン-5-オン]、アダマンタン-1,3-ジイルビス[(オキシ)ノナン-5-オン]、アダマンタン-1,3-ジイルビス[(オキシ)デカン-5-オン]、アダマンタン-1,3-ジイルビス[(オキシ)ウンデカン-5-オン]、アダマンタン-1,3-ジイルビス[(オキシ)オクタン-6-オン]、アダマンタン-1,3-ジイルビス[(オキシ)ノナン-6-オン]、アダマンタン-1,3-ジイルビス[(オキシ)デカン-6-オン]、アダマンタン-1,3-ジイルビス[(オキシ)ウンデカン-6-オン]、アダマンタン-1,3-ジイルビス[(オキシ)ドデカン-6-オン]、アダマンタン-1,3-ジイルビス[(オキシ)ノナン-7-オン]、アダマンタン-1,3-ジイルビス[(オキシ)デカン-7-オン]、アダマンタン-1,3-ジイルビス[(オキシ)ウンデカン-7-オン]、アダマンタン-1,3-ジイルビス[(オキシ)ドデカン-7-オン]、アダマンタン-1,3-ジイルビス[(オキシ)トリデカン-7-オン]、
【0023】
(nが3の場合)アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス(メチルケトン)、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス(エチルケトン)、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス(プロピルケトン)、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス(ブチルケトン)、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス(ペンチルケトン)、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス(ヘキシルケトン)、アダマンタン-1,3、5-トリイルトリス(ブタン-3-オン)、アダマンタン-1,3、5-トリイルトリス(ペンタン-4-オン)、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス(ヘキサン-5-オン)、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス(ヘプタン-6-オン)、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス(オクタン-7-オン)、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス(ペンタン-3-オン)、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス(ヘキサン-3-オン)、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス(ヘプタン-3-オン)、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス(オクタン-3-オン)、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス(ノナン-3-オン)、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス(ヘキサン-4-オン)、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス(ヘプタン-4-オン)、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス(オクタン-4-オン)、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス(ノナン-4-オン)、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス(デカン-4-オン)、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス(ヘプタン-5-オン)、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス(オクタン-5-オン)、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス(ノナン-5-オン)、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス(デカン-5-オン)、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス(ウンデカン-5-オン)、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス(オクタン-6-オン)、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス(ノナン-6-オン)、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス(デカン-6-オン)、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス(ウンデカン-6-オン)、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス(ドデカン-6-オン)、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス(ノナン-7-オン)、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス(デカン-7-オン)、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス(ウンデカン-7-オン)、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス(ドデカン-7-オン、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス(トリデカン-7-オン)、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス[(オキシ)アセトン]、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス[(オキシ)ブタン-3-オン]、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス[(オキシ)ペンタン-4-オン]、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス[(オキシ)ヘキサン-5-オン]、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス[(オキシ)ヘプタン-6-オン]、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス[(オキシ)オクタン-7-オン]、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス[(オキシ)ペンタン-3-オン]、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス[(オキシ)ヘキサン-3-オン]、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス[(オキシ)ヘプタン-3-オン]、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス[(オキシ)オクタン-3-オン]、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス[(オキシ)ノナン-3-オン]、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス[(オキシ)ヘキサン-4-オン]、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス[(オキシ)ヘプタン-4-オン]、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス[(オキシ)オクタン-4-オン]、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス[(オキシ)ノナン-4-オン]、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス[(オキシ)デカン-4-オン]、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス[(オキシ)ヘプタン-5-オン]、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス[(オキシ)オクタン-5-オン]、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス[(オキシ)ノナン-5-オン]、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス[(オキシ)デカン-5-オン]、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス[(オキシ)ウンデカン-5-オン]、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス[(オキシ)オクタン-6-オン]、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス[(オキシ)ノナン-6-オン]、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス[(オキシ)デカン-6-オン]、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス[(オキシ)ウンデカン-6-オン]、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス[(オキシ)ドデカン-6-オン]、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス[(オキシ)ノナン-7-オン]、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス[(オキシ)デカン-7-オン]、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス[(オキシ)ウンデカン-7-オン]、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス[(オキシ)ドデカン-7-オン]、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス[(オキシ)トリデカン-7-オン]、
【0024】
これらの中で好ましいものは、アダマンチル-1-メチルケトン、アダマンチル-1-アセトン、アダマンタン-1-イルブタン-3-オン、アダマンタン-1-イルペンタン-4-オン、アダマンタン-1-イルヘキサン-5-オン、アダマンタン-1-イルヘプタン-6-オン、アダマンタン-1-イルオクタン-7-オン、アダマンタン-1-イル(オキシ)アセトン、アダマンタン-1-イル(オキシ)ブタン-3-オン、アダマンタン-1-イル(オキシ)ペンタン-4-オン、アダマンタン-1-イル(オキシ)ヘキサン-5-オン、アダマンタン-1-イル(オキシ)ヘプタン-6-オン、アダマンタン-1-イル(オキシ)オクタン-7-オン、アダマンタン-1,3-ジイルビス(メチルケトン)、アダマンタン-1,3-ジイルビス(ブタン-3-オン)、アダマンタン-1,3-ジイルビス(ペンタン-4-オン)、アダマンタン-1,3-ジイルビス(ヘキサン-5-オン)、アダマンタン-1,3-ジイルビス(ヘプタン-6-オン)、アダマンタン-1,3-ジイルビス(オクタン-7-オン)、アダマンタン-1,3-ジイルビス[(オキシ)アセトン]、アダマンタン-1,3-ジイルビス[(オキシ)ブタン-3-オン]、アダマンタン-1,3-ジイルビス[(オキシ)ペンタン-4-オン]、アダマンタン-1,3-ジイルビス[(オキシ)ヘキサン-5-オン]、アダマンタン-1,3-ジイルビス[(オキシ)ヘプタン-6-オン]、アダマンタン-1,3-ジイルビス[(オキシ)オクタン-7-オン]、アダマンタン-1,3、5-トリイルトリス(メチルケトン)、アダマンタン-1,3、5-トリイルトリス(ブタン-3-オン)、アダマンタン-1,3、5-トリイルトリス(ペンタン-4-オン)、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス(ヘキサン-5-オン)、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス(ヘプタン-6-オン)、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス(オクタン-7-オン)、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス[(オキシ)アセトン]、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス[(オキシ)ブタン-3-オン]、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス[(オキシ)ペンタン-4-オン]、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス[(オキシ)ヘキサン-5-オン]、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス[(オキシ)ヘプタン-6-オン]、アダマンタン-1,3,5-トリイルトリス[(オキシ)オクタン-7-オン]である。
【0025】
上記のケトン基含有アダマンタン誘導体(以下、単に「アダマンタン誘導体」とも云う)とトリメチルスルホニウムヨージドとを反応させる際に使用される塩基性触媒としては、ナトリウム,トリエチルアミン,トリブチルアミン,トリオクチルアミン,ピリジン,N,N-ジメチルアニリン,1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン-5(DBN),1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7(DBU),テトラメチルアンモニウムクロリド(ブロミド),テトラエチルアンモニウムクロリド(ブロミド),水酸化ナトリウム,セシウム、水酸化カリウム,水素化ナトリウム,燐酸ナトリウム,燐酸カリウム,炭酸ナトリウム,炭酸カリウム,炭酸セシウム、ナトリウムメトキシド,カリウムt-ブトキシド などが挙げられる。これらを単独または組み合わせて使用してもよい。操作性の点から、ナトリウム、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、カリウムt-ブトキシドが好ましい。
【0026】
この反応は無溶媒でも良いが、ケトン基含有アダマンタン誘導体の溶解度が0.5質量%以上、望ましくは5質量%以上の溶媒を用いることが好ましい。この時、該アダマンタン誘導体は懸濁状態でもよいが、溶解していることが望ましい。具体的には、ヘキサン,ヘプタン、トルエン、ジメチルホルムアルデヒド(DMF)、ジメチル酢酸(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、ジエチルエーテル、1,3-ジメトキシエタン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの溶媒が挙げられる。これらの溶媒を単独または組み合わせて使用してもよい。溶解性、反応性から、1,3-ジメトキシエタン、THF、DMF、DMSOが好ましい。
【0027】
反応温度は、通常0〜150 ℃、好ましくは 60〜100℃である。反応温度を0℃以上とすることにより、好適な反応速度が得られ、反応時間が長くなりすぎることがない。また、反応温度を150℃以下とすることにより副反応による着色を抑えることができる。
反応圧力は、絶対圧力で0.01〜10MPa程度であり、好ましくは常圧〜1MPaである。10MPa以下とすることにより、安全上の特別な装置が必要ないので産業上有利となる。反応時間は1分〜24時間程度、望ましくは1〜5時間である。
通常、エポキシ化合物は2量体以上のオリゴマー成分が含まれ、上記の反応においても2量体以上のエポキシ基が含有するアダマンタン化合物オリゴマーが生成する。これらオリゴマーが混在していても何ら問題はないが、必要に応じて、蒸留、晶析、カラム分離などが可能であり、生成物の性状と不純物の種類により精製方法を選択できる。
【0028】
本発明のエポキシ組成物(I)は、(A)一般式(I)で表されるアダマンタン含有エポキシ化合物と、(B)カチオン重合開始剤および/又は硬化剤を含有する。
該エポキシ組成物(I)で使用される(B)カチオン重合開始剤は、光や熱などのエネルギー線照射によりカチオン重合を開始させる物質を発生させることが可能な化合物であり、安定性の観点よりリン系化合物であるカチオン重合開始剤が好ましい。また、特に好ましいカチオン重合開始剤として、エネルギー線照射によりルイス酸を発生させるオニウム塩や、スルフォン酸誘導体が挙げられる。
【0029】
上記の熱カチオン重合開始剤としては、具体的には、アデカオプトンCP−66、CP−77(以上商品名:ADEKA社製)、サンエイドSI− 60L、SI−80L、SI−100L、SI−110L、SI−180L(以上商品名:三新化学社製)、CI−2920、CI−2921、CI−2946、CI−2639、CI−2624、CI−2064(以上商品名:日本曹達社製)、FC−520(商品名:3M社製)等を用いることができる。これらの熱カチオン重合開始剤は単独でも2種以上組み合わせても使用するもでき、以下に記載するような1種以上の光カチオン重合開始剤と組み合わせて使用することもできる。安定性の観点から、リン系化合物が好ましい。
【0030】
光カチオン重合開始剤としては、ルイス酸のジアゾニウム塩、ルイス酸のヨードニウム塩、ルイス酸のスルホニウム塩等が挙げられる。これらはカチオン部分がそれぞれ芳香族ジアゾニウム、芳香族ヨードニウム、芳香族スルホニウムであり、アニオン部分がBF4- 、PF6- 、SbF6- 、[BX4- (但し、X は少なくとも2個以上のフッ素又はトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基である。)等により構成されたオニウム塩であるが、安定性の観点から、リン系化合物が好ましい。具体的には、四フッ化ホウ素のフェニルジアゾニウム塩、六フッ化リンのジフェニルヨードニウム塩、六フッ化アンチモンのジフェニルヨードニウム塩、六フッ化ヒ素のトリ− 4−メチルフェニルスルホニウム塩、四フッ化アンチモンのトリ−4−メチルフェニルスルホニウム塩、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素のジフェニルヨードニウム塩、アセチルアセトンアルミニウム塩とオルトニトロベンジルシリルエーテル混合体、フェニルチオピリジウム塩、六フッ化リンアレン−鉄錯体等を挙げることができる。
このようなオニウム塩からなる光カチオン重合開始剤としては、具体的には、CD−1012(商品名: SARTOMER社製) 、PCI−019 、PCI−021(商品名:日本化薬社製)、オプトマーSP−150、オプトマーSP−170(商品名:ADEKA社製)、UVI−6990(商品名:ダウケミカル社製)、CPI−100P、CPI−100A(商品名:サンアプロ社製)、TEPBI−S(商品名:日本触媒社製)、R HODORSIL PHOTOINITIATOR2074(商品名:Rhodia社製)等を用いることができる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても使用することもでき、1種以上の熱カチオン重合開始剤と組み合わせて使用することもできる。
これらのうちでもアニオン部位がPF6-であるものが好ましく、さらに好ましくはアニオン部位がPF6- であるスルホニウム塩が安定性、硬化性、安全性の面で優れているので使用するのに好適である。
【0031】
スルフォン酸誘導体からなる光カチオン重合開始剤には、ジスルフォン類、ジスルフォニルジアゾメタン類、ジスルフォニルメタン類、イミドスルフォネート類、ベンゾインスルフォネート類、1−オキシ−2−ヒドロキシ−3−プロピルアルコールのスルフォネート類、ピロガロールトリスルフォネート類、ベンジルスルフォネート類などスルフォン酸誘導体が使用される。スルフォン酸誘導体からなる光カチオン重合開始剤として、具体的には、ジフェニルジスルフォン、ジトシルジスルフォン、ビス(フェニルスルフォニル)ジアゾメタン、ビス(クロルフェニルスルフォニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルフォニル)メタン、1,8−ナフタレンジカルボン酸イミドメチルスルフォネート、1,8−ナフタレンジカルボン酸イミドトシルスルフォネート、1,8−ナフタレンジカルボン酸イミドトリフルオロメチルスルフォネート、1,8−ナフタレンジカルボン酸イミドカンファースルフォネート、コハク酸イミドフェニルスルフォネート、コハク酸イミドトシルスルフォネート、コハク酸イミドトリフルオロメチルスルフォネート、フタル酸イミドトリフルオロスルフォネート、ベンゾイントシラート、1,2−ジフェニル−2−ヒドロキシプロピルトシラート、ピロガロールメチルスルフォネート、2,6−ジニトロフェニルメチルトシラートなどを挙げることができる。
【0032】
エポキシ組成物(I)における(B)成分の硬化剤として酸無水物が好適に使用される。酸無水物としては、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4 ,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物などの、好ましくは分子中に脂肪族環又は芳香族環を1個又は2個有すると共に、酸無水物基を1個又は2個有する、炭素原子数4〜25個、好ましくは8〜20個程度の酸無水物が好適である。
この場合、酸無水物としては、カルボキシル基(COOH基)を有する化合物の含有量が0.5質量% 以下、特に0.4質量%以下のものが好適に使用される。カルボキシル基含有量が0.5質量%以下とすることにより、結晶化するおそれがないので好ましい。
カルボキシル基(COOH基)の含有量としては、酸無水物からなる硬化剤に対して0.3質量%以下、特に0.25質量%以下のものが同様の理由により好適に使用される。なお、酸無水物の配合量は、エポキシ組成物中のエポキシ基1モルに対し、硬化剤中の酸無水物基の比を0.3〜0.7モルの範囲とすることが好ましい。0.3モル以上とすることにより硬化性が得られ、0.7モル以下とすることにより、未反応の酸無水物が残存してガラス転移温度が低下するおそれがなくなる。より好ましくは0.4〜0.6モルの範囲である。
【0033】
本発明における(A)一般式(I)で表されるアダマンタン含有エポキシ化合物と(B)カチオン重合開始剤および/又は硬化剤を含有するエポキシ組成物(I)は、(C)カチオン重合性化合物に対して優れた硬化性を有するものであり、従ってエポキシ組成物(I)は封止剤や接着剤等に使用される。
このエポキシ組成物(I)における(B)カチオン重合開始剤および/又は硬化剤の含有量は、(A)一般式(I)で表されるアダマンタン含有エポキシ化合物100質量部あたり0.5〜3質量部とすることが好ましい。(A)成分100質量部に対して(B)成分を3質量部以上とすることに得られた硬化物により着色が顕著となる。また、0.5質量部以下とすることによりモノマーの重合性が低下し、硬化に時間がかかる。
【0034】
また、本発明のエポキシ組成物(I)に、さらに(C)カチオン重合性化合物などを含有させたエポキシ組成物(II)は、光学電子部材などに広く使用される。
本発明で使用される(C)カチオン重合性化合物は、1分子中に少なくとも1個のカチオン重合性基を有する化合物であり、具体的にはエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、プロペニルエーテル、オキセタン化合物、オキソラン化合物、環状アセタール化合物、環状ラクトン化合物、チイラン化合物、チオビニルエーテル化合物、スピロオルソエステル化合物、エチレン性不飽和化合物、環状エーテル化合物、環状チオエーテル化合物等を挙げることができ、これらのカチオン重合性化合物は単独でも二種以上組み合わせて使用しても良い。
【0035】
これらのカチオン重合性化合物のうちビニルエーテル化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物が好ましい。
エポキシ組成物(II)に含有させるビニルエーテル化合物としては、例えばエチレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、グリセロールトリビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、トリプロピレングリコールジビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、シクロヘキサンジオールモノビニルエーテル、9−ヒドロキシノニルビニルエーテル、プロピレングリコールモノビニルエーテル、ネオペンチルグリコールモノビニルエーテル、グリセロールジビニルエーテル、グリセロールモノビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、トリメチロールプロパンモノビニルエーテル、ペンタエリスリトールモノビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、テトラエチレングリコールモノビニルエーテル、トリシクロデカンジオールモノビニルエーテル、トリシクロデカンジメタノールモノビニルエーテル等を挙げることができる。
【0036】
エポキシ組成物(II)に含有させるエポキシ化合物としては、グリシジルエーテル型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物等を挙げることができる。
グリシジルエーテル型エポキシ化合物の具体例としては、ビスフェノールA 型エポキシ化合物、ビスフェノールF 型エポキシ化合物、水添ビスフェノールA 型エポキシ化合物、ビスフェノールA のアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ビスフェノールF のアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA のアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジ及び/ 又はトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリ及び/ 又はテトラグリシジルエーテル、ソルビトールヘプタ及び/ 又はヘキサグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエン・フェノール付加型グリシジルエーテル、メチレンビス( 2 ,7−ジヒドロキシナフタレン) テトラグリシジルエーテル、1 ,6−ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテル等を挙げることができる。
【0037】
脂環式エポキシ化合物の具体例としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、プロピレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジ(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)等が挙げられる。
【0038】
エポキシ組成物(II)に含有させるエポキシ化合物としては、2官能以上の脂環式エポキシ化合物が、反応性の面で優れていることから好適に使用される。
2官能以上の脂環式エポキシ化合物の市販品としては、CYACURE UVR6110、CYACURE UVR6105、CYACURE UVR6128(以上、ダウ・ケミカル日本社製)、セロキサイド2021、セロキサイド2021A、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2082、セロキサイド2083、エポリードGT300 シリーズ、エポリードGT400シリーズ(以上、ダイセル化学工業社製)、アデカオプトマーKRM−2110、アデカオプトマーKRM−2199(以上、ADEKA社製)などが挙げられる。
【0039】
エポキシ組成物(II)に含有させるオキセタン化合物は、分子中にオキセタン環を少なくとも1個有する化合物である。本発明のエポキシ組成物(I)は、このオキセタン化合物に対して優れた硬化性を有しており、従って本発明のエポキシ組成物(II)に配合される(C)カチオン重合性化合物としてオキセタン化合物が好適に使用される。
オキセタン環を1個有する化合物の具体例としては、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−(メタ)アリルオキシメチル−3−エチルオキセタン、3−エチル−3−(シクロヘキシロキシ)メチルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、4−フルオロ−〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、4−メトキシ−〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、〔1−(3− エチル−3−オキセタニルメトキシ)エチル〕フェニルエーテル、イソブトキシメチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラヒドロフルフリル(3−エチル−3−オキセタニルメチル) エーテル、テトラブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−テトラブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−トリブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシプロピル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ブトキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタクロロフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等が挙げられる。
【0040】
オキセタン環を2個以上有する化合物の具体例としては、3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサ−ノナン、3,3’−〔1,3−(2−メチレニル)プロパンジイルビス(オキシメチレン)〕ビス−(3−エチルオキセタン)、ビス〔1−エチル(3−オキセタニル)〕メチルエーテル、1,4−ビス〔(3−エチル−3− オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、1,3− ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ベンゼン、1,2− ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕エタン、1,3−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕プロパン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3− オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3− オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサキス(3− エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル) エーテル、EO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性水添ビスフェノールA ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性水添ビスフェノールA ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールFビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、オキセタニルシルセスキオキサン、オキセタニルシリケート、フェノールノボラックオキセタン等が挙げられる。これらのオキセタン化合物は、1種単独あるいは2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0041】
以上のビニルエーテル化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物などの(C)カチオン重合性化合物のエポキシ組成物(II)における含有量は、(A)一般式(I)で表されるアダマンタン含有エポキシ化合物100質量部あたり0.5〜3質量部とすることが好ましい。(A)成分100質量部に対して(C)成分を3質量部以上とすることにより得られた硬化物の着色が顕著となる。また、0.5質量部以下とすることによりモノマーの重合性が低下し硬化に時間がかかる。
【0042】
(A)上記のアダマンタン含有エポキシ化合物と(B)カチオン重合開始剤および/又は硬化剤を含有するエポキシ組成物(I)に更に(C)カチオン重合性化合物を含有させたエポキシ組成物(II)(以下、カチオン硬化性組成物ともいう)には、さらに必要に応じて( メタ)アクリレートモノマー類やオリゴマー類およびビニル(メタ)アクリレート等のラジカル重合性化合物およびラジカル開始剤、消泡剤、レベリング剤、重合禁止剤、ワックス類、酸化防止剤、非反応性ポリマー、微粒子無機フィラー、シランカップリング剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、スリップ剤等を添加することもできる。
【0043】
このカチオン硬化性組成物には、更に、硬化性や硬化時の膜物性に悪影響を及ぼさない程度にカチオン重合性を示す他の化合物を添加することができる。これらの化合物としては、例えば前記以外の低分子量のエポキシ化合物を希釈剤として用いることでき、また環状ラクトン化合物、環状アセタール化合物、環状チオエーテル化合物、スピロオルソエステル化合物等が挙げられる。
このカチオン硬化性組成物に光を照射する手段としては、所定の作業時間内で硬化させることができるものであれば特に制限はなく、例えば超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、パルスドキセノンランプ、無電極放電ランプ等が挙げられる。また、硬化させるために熱エネルギーを使用の際は、所望の硬化状態に応じて適切な温度で加熱され、一般的には、20 〜 200℃ の範囲で行うことが望ましい。
【0044】
本発明のエポキシ組成物(I)やエポキシ組成物(II)には、機械強度や溶解性、作業性などの最適化のために(D)エポキシ樹脂と混合したものも適用可能である。
本発明のエポキシ組成物に混合使用できる(D)エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂(ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールADジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールGジグリシジルエーテル、テトラメチルビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールヘキサフルオロアセトンジグリシジルエーテル、ビスフェノールCジグリシジルエーテル等)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレートなどの脂環式エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、ヒダントインエポキシ樹脂等の含窒素環エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、低吸水率硬化体タイプの主流であるビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロ環型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル等の多官能エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂などの含フッ素エポキシ樹脂、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
上記の(D)エポキシ樹脂は、常温で固形でも液状でもよいが、一般に、使用するエポキシ樹脂の平均エポキシ当量は100〜2000のものが好ましい。平均エポキシ当量が100より小さい場合には、エポキシ組成物の硬化体が脆くなる場合がある。また、平均エポキシ当量が2000を超える場合には、その硬化体のガラス転移温度(Tg)が低くなる場合がある。
【0045】
本発明のエポキシ組成物は耐熱性や透明性に優れるが、それらの特性を保持するために劣化防止剤を添加しても良い。劣化防止剤としては、例えば、フェノール系化合物、アミン系化合物、有機硫黄系化合物、リン系化合物などの、従来から公知の劣化防止剤が挙げられる。
劣化防止剤として使用されるフェノール系化合物としては、イルガノクス1010(Irganox1010、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社、商標)、イルガノクス1076(Irganox1076、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社、商標)、イルガノクス1330(Irganox1330、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社、商標)、イルガノクス3114(Irganox3114、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社、商標)、イルガノクス3125(Irganox3125、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社、商標)、イルガノクス3790(Irganox3790、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社、商標)、BHT、シアノクス1790(Cyanox1790、サイアナミド社、商標)、スミライザーGA−80(SumilizerGA−80、住友化学社、商標)などの市販品を挙げることができる。
【0046】
劣化防止剤として使用されるアミン系化合物としては、イルガスタブFS042(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社、商標)、GENOX EP(クロンプトン社、商標、化合物名;ジアルキル−N−メチルアミンオキサイド)など、さらにはヒンダードアミン系であるADEKA社製のADK STAB LA−52、LA−57、LA−62、LA−63、LA−67、LA−68、LA−77、LA−82、LA−87、LA−94、CSC社製のTinuvin123、144、440、662、Chimassorb2020、119、944、Hoechst 社製のHostavin N30、Cytec社製の Cyasorb UV−3346、UV−3526、GLC社製のUval299、Clariant社製の SanduvorPR−31等を挙げることができる。
有機硫黄系化合物としては、DSTP(ヨシトミ)(吉富社、商標)、DLTP(ヨシトミ)(吉富社、商標)、DLTOIB(吉富社、商標)、DMTP(ヨシトミ)(吉富社、商標)、Seenox 412S(シプロ化成社、商標)、Cyanox 1212(サイアナミド社、商標)などの市販品を挙げることができる。
【0047】
また、本発明のエポキシ組成物には、必要に応じて、変性剤、シランカップリング剤、脱泡剤、無機粉末および溶媒を使用することができる。
変性剤としては、例えば、グリコール類、シリコーン類、アルコール類などの、従来から公知の変性剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、例えば、シラン系、チタネート系などの、従来から公知のシランカップリング剤が挙げられる。脱泡剤としては、例えば、シリコーン系などの、従来から公知の脱泡剤が挙げられる。
無機粉末としては、用途に応じて粒径が数nm〜10μmのものが使用でき、例えば、ガラス粉末、シリカ粉末、チタニア、酸化亜鉛、アルミナなどの公知の無機粉末が挙げられる。溶媒としては、エポキシ樹脂が粉末の場合や、コーティングの希釈溶媒として、トルエンやキシレンなどの芳香族系溶媒やメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒などが使用可能である。
【0048】
本発明のエポキシ組成物の硬化物は、上記の(A)アダマンタン含有エポキシ化合物と(B)重合開始剤及び/又は硬化剤に、必要に応じて加えられる(C)カチオン重合性化合物および(D)エポキシ樹脂や各種添加成分を混合し、成型する金型(樹脂金型)への注入、あるいはコーティングにより所望の形状にした後に、熱カチオン重合を行う場合には、加熱硬化することにより得ることができる。
硬化に際しては、硬化促進剤として1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン(DBU)のようなアミジン化合物やトリフェニルフォスフィン、テトラフェニルホスフォニウム、テトラフェニルボレートのような有機リン化合物、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。これらの硬化促進剤は単独でも混合して用いても差し支えない。
硬化促進剤の配合量としては、(A)アダマンタン含有エポキシ化合物と(B)重合開始剤及び/又は硬化剤および、必要に応じて加えられる(D)エポキシ樹脂の合計量100質量部あたり、0.4〜20質量部の範囲とするのが好ましい。配合量が0.4質量部以上とすることにより、加熱成形時に十分な硬化性が得られ、一方、20質量部以下とすることにより硬化が速すぎて成形時に流動性の低下による充填不良を生じることがない。
これらの硬化剤の中では、硬化樹脂の透明性などの物性の点から、酸無水物系硬化剤が好適であり、中でも、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸が最適である。
【0049】
本発明のエポキシ組成物の硬化温度は、通常50〜200℃、好ましくは100〜180℃である。50℃以上とすることにより硬化不良となることがなく、200℃以下とすることにより着色などを生じることが無くなる。硬化時間を使用するエポキシ樹脂、硬化剤、促進剤や開始剤のよって異なるが、0.5〜6時間が好ましい。
一方、光カチオン重合を行う場合には、硬化する際の紫外線の照射強度は、通常500〜5000mJ/cm2程度、好ましくは1000〜4000mJ/cm2である。紫外線照射後に後加熱を行ってもよく、70〜200℃で0.5〜12時間行うことが好ましい。成形方法としては射出成形、ブロー成形、プレス成形等、特に限定されるものではない。
【0050】
本発明のエポキシ組成物を硬化して得られた硬化物は、耐熱性や透明性に優れており、全光線透過率を70%以上とすることができる。また、後の実施例に示すように、溶解温度が低いので加工性に優れ、ガラス転移温度が高く、優れた耐久性(耐熱性および耐光性)を有し、誘電率など電気特性にも優れたものである。
このように本発明のエポキシ組成物は、優れた特性を有するので、光半導体(LEDなど)、フラットパネルディスプレイ(有機EL素子など)、電子回路、光回路(光導波路)用の樹脂(封止剤、接着剤)、光通信用レンズ及び光学用フィルムなどの光学電子部材に好適に用いることができる。
【0051】
本発明のエポキシ組成物は、半導体素子/集積回路(IC他),個別半導体(ダイオード、トランジスタ、サーミスタなど)として、LED(LEDランプ、チップLED、受光素子、光半導体用レンズ),センサー(温度センサー、光センサー、磁気センサー)、受動部品(高周波デバイス、抵抗器、コンデンサなど)、機構部品(コネクター、スイッチ、リレーなど)、自動車部品(回路系、制御系、センサー類、ランプシールなど)、接着剤(光学部品、光学ディスク、ピックアップレンズ)などに用いられ、表面コーティング用として光学用フィルムなどにも用いられる。
また、本発明のエポキシ組成物に用いる化合物はアダマンタン骨格を有するエポキシ化合物であり、耐熱性、接着性に優れており且つエッチング耐性も備えていることから、半導体用封止剤、半導体用反射防止膜など半導体形成材料としても有用である。
従って、本発明は、前述したエポキシ組成物を用いてなる、光半導体用封止剤、光学電子部材、カラーレジスト及びディスプレイ保護膜をも提供する。
【0052】
光半導体(LEDなど)用封止剤としての構成は、砲弾型あるいはサーフェスマウント(SMT)型などに素子に適用でき、金属やポリアミド上に形成されたGaNなどの半導体と良好に密着し、さらにYAGなどの蛍光色素を分散しても使用できる。さらに、砲弾型LEDの表面コート剤、SMT型LEDのレンズなどにも使用可能である。
また、光学電子部材については、光回路に使用する際の構成として、シングルモードやマルチモード用の熱光学スイッチやアレイ導波路型格子、合分波器、波長可変フィルター、あるいは光ファイバーのコア材料やクラッド材料にも適用できる。また、導波路に光を集光するマイクロレンズアレイやMEMS型光スイッチのミラーにも適用できる。また、光電変換素子の色素バインダーなどにも適用可能である。
光学用フィルムとして用いる際の構成は、液晶用のフィルム基板、有機EL用フィルム基板などのディスプレイ用として、あるいは光拡散フィルム、反射防止フィルム、蛍光色素などを分散することによる色変換フィルムなどに適用可能である。
カラーレジストについては、液晶表示向けのカラーフィルタを構成するRGB及びブラックマトリックスなどのレジストの主成分もしくは添加剤として適応可能である。
さらに、ディスプレイ保護膜については、例えば有機EL用に適用する場合、一般的なガラスや透明樹脂などの透光性基板上に、陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極が順次設けられた構成の有機EL素子に適用可能である。
有機EL素子の封止材として、金属缶や金属シートあるいはSiNなどのコーティングされた樹脂フィルムをEL素子にカバーする際の接着剤に用いることができる。
また、本発明のカチオン硬化性組成物にガスバリアー性を付与するために、無機フィラーなどを分散することで、直接、EL素子を保護することも可能である。表示方式として、現在、主流のボトムエミッション型にも適用可能であるが、今後、光の取出し効率などの点で期待されるトップエミッション型に適用することで、本発明のカチオン硬化性組成物の透明性や耐熱性の効果を活かすことができる。
【実施例】
【0053】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
以下の実施例および比較例において得られた硬化物等の評価を次のように行った。
【0054】
(1)反応熱ピーク温度:
調合した試料をアルミ皿に5mg入れ、DSC装置(Diamond DSC、パーキネルマー社)にて0℃から5℃/分にて昇温して反応熱を測定し、反応熱がピークを持つ温度を求めた。反応熱ピーク温度が低いほど、硬化速度が速いことになる。
(2)ガラス転移温度(Tg):
硬化した試料をアルミ皿に5mg入れ、DSC装置(Diamond DSC、パーキネルマー社)にて0℃から10℃/分にて昇温して、その吸熱曲線からガラス転移温度を求めた。
(3)熱分解温度(Td(5%)):
硬化した試料をアルミ皿に5mg入れ、示差熱熱重量同時測定装置(EXSTAR6000 TG/DTA、SIIナノテクノロジー社)にて、25℃から600℃まで、5℃/分にて昇温して、質量が5%減少する時の温度求めた。
【0055】
(4)イエローインデックス(YI):
硬化した試料を150℃のオーブンに100時間入れた後の試験片の黄色度(YI:イエローインデックス)を色差計(スガ試験機株式会社製、商品名SMカラーコンピューター)を用い、厚さ1mm(5cm径)の試験片を透過法(JIS−K−7105)に準拠して、下記のYIを求めた。
YI=100(1.28X−1.06Z)/Y
YI:黄色度X,Y,Z:標準の光Cにおける試験片の3刺激値
(5)プレッシャークッカー試験(PCT):
硬化した試験片を、PCT試験器に120℃で100時間入れ、処理前後の曲げ強度をJIS−K−7055にて測定し、下記の保持率を求めた。
保持率=曲げ強度(PCT後)/曲げ強度(PCT前)
(6)吸水率試験:
80℃、真空中で48時間乾燥させた試験片を、100℃の水に3時間浸し、処理前後の質量変化から吸水率を測定した。
【0056】
実施例1[2-(1-アダマンチル)-2-メチルオキシランの合成]
文献(Synhesis,10,887−889,(1990))に記載の方法を参考にして合成を行った。
還流冷却管、攪拌機、温度計を備え付けた1000mL丸底フラスコに、窒素雰囲気下でアダマンチル-1-メチルケトン30.08g(0.168mol)、トリメチルスルホニウムシヨージド3.789g(0.185mol)、t-ブトキシカリウム20.78g(0.185mol)、1,3-ジメトキシエタン300gを入れた。
これを80℃のオイルバスに入れ、2時間反応させた。その後、反応液を室温まで冷却し、エーテルを300ml加え、水層が中性になるまで水洗した後、有機層を濃縮し透明液体、30.921gを得た(収率:95.30%、エポキシ当量232)。
【0057】
実施例2
実施例1で得られた2-(1-アダマンチル)-2-メチルオキシラン100質量部に、熱カチオン重合開始剤(三新化学製、SI−100L)1質量部を配合して得られた試料を80℃で4時間加熱した後、150℃で3時間加熱し、硬化物を得た。試料および硬化物の評価結果を第1表に示す。
【0058】
比較例1
実施例1の2-(1-アダマンチル)-2-メチルオキシランに代えてセロキサイド2021P(ダイセル化学工業製)を使用した他は実施例1と同様に行った。試料および硬化物の評価結果を第1表に示す。
【0059】
比較例2
実施例1の2-(1-アダマンチル)-2-メチルオキシランに代えてエピコート828(ジャパンエポキシレジン社製)を使用した他は実施例1と同様に行った。試料および硬化物の評価結果を第1表に示す。
【0060】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されることを特徴とするアダマンタン含有エポキシ化合物。
【化1】

(式中、Xは単結合又は酸素原子、Rは炭素数1〜6のアルキル基、mは0〜6の整数、nは1〜4の整数を示す。)
【請求項2】
一般式(II)
【化2】

(式中、X、R、mおよびnは一般式(I)と同様である。)
で表されるケトン基含有アダマンタン誘導体と、式(III)
(CH3)3SI (III)
で表されるトリメチルスルホニウムヨージドとを、塩基性触媒存在下で反応させることを特徴とする請求項1に記載のアダマンタン含有エポキシ化合物の製造方法。
【請求項3】
(A)請求項1に記載のアダマンタン含有エポキシ化合物と、(B)カチオン重合開始剤および/又は硬化剤を含有することを特徴とするエポキシ組成物。
【請求項4】
さらに、(C)カチオン重合性化合物を含有する請求項3に記載のエポキシ組成物。
【請求項5】
(C)カチオン重合性化合物が、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物及びオキセタン化合物から選ばれた少なくとも一種の化合物である請求項4に記載のエポキシ組成物。
【請求項6】
(C)カチオン重合性化合物が、オキセタン化合物である請求項5に記載のエポキシ組成物。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれかに記載のエポキシ組成物を用いてなる光半導体用封止剤。
【請求項8】
請求項3〜6のいずれかに記載のエポキシ組成物を用いてなる光学電子部材。
【請求項9】
請求項3〜6のいずれかに記載のエポキシ組成物を用いてなるカラーレジスト。
【請求項10】
請求項3〜6のいずれかにに記載のエポキシ組成物を用いてなるディスプレイ保護膜。

【公開番号】特開2009−79015(P2009−79015A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−250922(P2007−250922)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】