説明

エポキシ樹脂組成物及びそれを使用した半導体装置

【課題】Bステージにおいてタックフリーを実現することができ、ボンディング時に溶融粘度を低下させることができるとともに、適度な速度で硬化反応を進行させて、ポストキュア時の剥離や流れ出しを抑制し、優れた接着強度を有し、優れた接着性を維持することができるエポキシ樹脂組成物及びそれを使用した半導体素子を備える半導体装置を提供する。
【解決手段】(A)特定構造のジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、及び式(2)


で示されるナフタレン型エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種の結晶性エポキシ樹脂15〜57.5質量%、(B)硬化剤として酸無水物及びフェノール樹脂の合計量3〜50質量%、(C)硬化促進剤0.1〜2質量%を含むエポキシ樹脂組成物及びそれを使用する半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂組成物、及びそれを使用した半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気技術の進歩に伴い、半導体集積回路、太陽電池等の分野においても、小型化、軽量化、高機能化が求められている。このような太陽電池や半導体装置に用いる接着剤として、接着性、耐熱性、耐湿性に優れるエポキシ樹脂組成物が用いられている。近年の高機能化の要求に伴い、複雑かつ微細な半導体素子を正確に実装するために、半硬化状態(いわゆるBステージ)で半導体素子を搭載した後に、完全硬化させることが可能なエポキシ樹脂組成物の要求が高まっている。
【0003】
半導体素子等を実装する方法としては、基板上に予めエポキシ樹脂組成物を塗布し、その後、比較的低温で加熱してエポキシ樹脂組成物の流動性を失わせた状態とし(いわゆるBステージ化)、この上に半導体素子を搭載してから(ボンディング)、完全に硬化させる(ポストキュア)方法が行われている。
【0004】
Bステージ化が可能なエポキシ樹脂組成物として、固形エポキシ樹脂及び/又は液状エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤等を含む、種々のエポキシ樹脂組成物が提案されている(特許文献1〜3)。
【0005】
剥離等を生じることなく、接着の信頼性を確保するために、半導体素子等の実装時に、エポキシ樹脂組成物の溶融粘度を低下させることが好ましい。溶融粘度を低下させることができるエポキシ樹脂として、(A)熱可塑性樹脂と、(B)融点が70〜150℃の結晶性エポキシ樹脂と、(C)無機粒子とを含む電子材料用接着剤シートを形成するためのエポキシ樹脂組成物が提案されている(特許文献4)。その他、(A)融点が70〜150℃の結晶性エポキシ樹脂と、(B)フェノール樹脂と、(C)溶融シリカ粉末と、(D)硬化促進剤を必須成分とする半導体封止用の樹脂組成物が提案されている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−224242号公報
【特許文献2】特開2007−238942号公報
【特許文献3】特開2008−201998号公報
【特許文献4】特開2007−251138号公報
【特許文献5】特開2001−151988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1〜3のエポキシ樹脂組成物は、Bステージにおいてタックフリーが実現されているか否か明らかにはされていない。ここでタックフリーとは、エポキシ樹脂組成物が流動性を失った状態でありながら、人の指で触ってもベトつかず、触った指に材料が付着しない状態のことをいう。従来、Bステージにおけるタックフリーは、硬化反応の一部を進行させて、エポキシ樹脂組成物を半硬化状態にすることによって実現させていた。しかし、エポキシ樹脂組成物を半硬化させることによってタックフリーを実現すると、その後のボンディング時にエポキシ樹脂組成物の溶融粘度が高くなりすぎて、すなわち、硬化反応が進行しすぎて、半導体素子の接続が確保されない場合がある。
【0008】
特許文献4及び5のエポキシ樹脂組成物は、加熱(ポストキュア)時に適度な溶融粘度を有しているが、Bステージにおけるタックフリーが実現されているか否かは明らかにされていない。また、特許文献4のエポキシ樹脂組成物は、接着膜強度を向上させるために、無機粒子を必須成分としており、特許文献5のエポキシ樹脂組成物は、モールド剤としてトラスファー成形するために、溶融シリカ粉末の含有量が75〜93質量%と高いものである。
【0009】
上述のように、従来、Bステージにおけるタックフリーは、硬化反応を進行させて半硬化状態にすることによって実現していたため、Bステージにおけるタックフリーと、その後のボンディング時における溶融粘度の低下とはトレードオフの状態にあり、タックフリーを実現させると、溶融粘度が高くなり、接着強度が低下するという問題があった。一方、ボンディング時に溶融粘度を低下させると、Bステージにおけるタックフリーの実現が困難となる問題があった。
【0010】
本発明は、Bステージにおいてタックフリーを実現することができ、ボンディング時にエポキシ樹脂組成物の溶融粘度を低下させることができ、しかもポストキュア時に剥離や流れ出しを抑制して優れた接着強度を得ることができるエポキシ樹脂組成物及びそれを使用した半導体素子を備える半導体装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、(A)特定の結晶性エポキシ樹脂、(B)硬化剤として酸無水物及びフェノール樹脂、(C)硬化促進剤を含むエポキシ樹脂組成物を用いることによって、Bステージにおいて硬化反応を進行させることなく、タックフリーを実現することができ、ボンディング時に薄膜状となっているエポキシ樹脂組成物の溶融粘度を低下させることができ、比較的短いボンディング時間で適度な速度で硬化反応を進行させて、ポストキュア時の剥離や流れ出しを抑制し、優れた接着強度を有し、優れた接着性を維持することができることを見出した。
【0012】
本発明は、(A)式(1)
【0013】
【化1】


(式中、nは繰り返し数の平均値で0.2〜1.5である。)で示されるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂及び式(2)
【0014】
【化2】


で示されるナフタレン型エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種の結晶性エポキシ樹脂15〜57.5質量%、
(B)硬化剤として酸無水物及びフェノール樹脂の合計量3〜50質量%、
(C)硬化促進剤0.1〜2質量%
を含むエポキシ樹脂組成物に関する。
本発明は、(D)固形エポキシ樹脂10〜50質量%をさらに含む、上記エポキシ樹脂組成物に関する。
本発明は、(C)硬化促進剤がアミン系硬化促進剤及び/又はイミダゾール系硬化促進剤である、上記エポキシ樹脂組成物に関する。
本発明は、酸無水物の酸無水物基のモル数及びフェノール樹脂のフェノール性水酸基のモル数の和)/(結晶性エポキシ樹脂のエポキシ基のモル数)の比が0.6〜1.2であり、酸無水物のフェノール樹脂に対する質量比が10:90〜70:30である、上記エポキシ樹脂組成物に関する。
本発明は、(G)フラックス剤1〜15質量%をさらに含み、(G)フラックス剤が安息香酸及び/又は2−メチル安息香酸である、上記エポキシ樹脂組成物に関する。
本発明は、150℃における溶融粘度が1Pa・s以下であり、150℃におけるゲルタイムが120〜300秒である、上記エポキシ樹脂組成物に関する。
【0015】
本発明は、上記エポキシ樹脂組成物を使用して接着された半導体素子を備える、半導体装置に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、Bステージ(液状のAステージと硬化状態のCステージの間の状態、即ち、流動性を失わせた状態)においてタックフリーを実現することができ、ボンディング時にBステージにおいて薄膜状となっているエポキシ樹脂組成物の溶融粘度を低下させて、対向する2つの半導体素子等の電極同士の間に存在するエポキシ樹脂組成物を除去して電子部品同士の接続を確保することができ、比較的短いボンディング時間で適度な速度で硬化反応を進行させて、ポストキュア時の剥離や流れ出しを抑制し、優れた接着強度を有し、優れた接着性を維持することができるエポキシ樹脂組成物及びそれを使用した半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のエポキシ樹脂組成物を使用して接着された半導体素子を備える半導体装置の製造工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、(A)式(1)
【0019】
【化3】


(式中、nは平均値で0.2〜1.5である)で示されるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂及び式(2)
【0020】
【化4】


で示されるナフタレン型エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種の結晶性エポキシ樹脂15〜57.5質量%、(B)硬化剤として酸無水物及びフェノール樹脂3〜50質量%、(C)硬化促進剤0.1〜2質量%を含む、エポキシ樹脂組成物である。なお、本発明において、エポキシ樹脂組成物中の各成分の含有量は、溶剤を含有していないエポキシ樹脂組成物100質量%に対する含有量をいう。
【0021】
結晶性エポキシ樹脂として、上記式(1)で示されるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂及び上記式(2)で示されるナフタレン型エポキシ樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。上記式(1)で示されるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂及び上記式(2)で示されるナフタレン型エポキシ樹脂の両方を含むことが好ましい。2種以上を併用する場合は、結晶性エポキシ樹脂中の式(2)で示されるナフタレン型エポキシ樹脂の割合が10質量%以上であることが好ましい。結晶性エポキシ樹脂中のナフタレン型エポキシ樹脂の割合が10質量%以上であると、Bステージにおけるタックフリーの実現が容易となる。なお、本明細書において、Bステージは、エポキシ樹脂組成物を、100℃程度の温度下で20分間おいて乾燥し(ドライアップ)、エポキシ樹脂組成物が流動性を失った状態をいう。
【0022】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記式(1)で示されるシクロペンタジエン型エポキシ樹脂及び上記式(2)で示されるナフタレン型エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種の結晶性エポキシ樹脂(A)を含むことによって、Bステージにおいて硬化反応を進行させることなく、タックフリーを実現することができ、次のボンディング時にBステージにおいて薄膜化したエポキシ樹脂組成物の溶融粘度を低下させて、電極の間に存在する余分なエポキシ樹脂を除去して電子部品同士の接続を確保することができ、さらに比較的短いボンディング時間で適度な速度で硬化反応を進行させて、その後のポストキュア時における剥離や流れ出しを抑制して、優れた接着強度を有し、優れた接着性を維持することができる。
【0023】
エポキシ樹脂組成物中の(A)結晶性エポキシ樹脂の含有量は、15〜57.5質量%、好ましくは20〜57.2質量%、より好ましくは25〜57質量%、さらに好ましくは30〜57質量%である。結晶性エポキシ樹脂の含有量が15質量%未満であると、Bステージにおいて硬化反応を進行させることなく、タックフリーを実現することが困難となる。上記含有量が57.5質量%を超えると、硬化剤との当量が合わなくなり、硬化不良になるおそれがある。硬化不良とは、具体的には接着力や耐信頼性の低下がおこることをいう。
【0024】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(B)硬化剤として酸無水物及びフェノール樹脂を併用する。硬化剤として酸無水物とフェノール樹脂を併用することによって、Bステージにおけるタックフリーを実現することができる。そして、次工程のボンディング時にエポキシ樹脂組成物の溶融粘度を低下させることができる。このように、ボンディング時にエポキシ樹脂組成物の溶融粘度を低下させることができると、例えば基板上に配置された複数の電極を有する半導体素子等の電子部品の電極同士を対向させて、2つの電子部品を押し付けて接続させる際に、一方の電極表面に薄く塗布されているエポキシ樹脂組成物を電極表面から除去して、対向する2つ電極の電気的な接続を確保しつつ、電極表面から除去したエポキシ樹脂組成物を同一の基板に上に配置した複数の電極間に回り込ませて、優れた接着強度を得ることができる。さらに、硬化剤として酸無水物とフェノール樹脂を併用することによって、比較的短いボンディング時間で適度な速度でエポキシ樹脂組成物の硬化反応を進行させて、その後のポストキュア時に、エポキシ樹脂組成物の剥離や流れ出しを抑制して、優れた接着強度を得ることができ、優れた接着性を維持することができる。
【0025】
(B)硬化剤としての酸無水物としては、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、アルキル化テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルハイミック酸無水物、ビニル基、アリル基等のアルケニル基で置換されたコハク酸無水物、メチルナジック酸無水物、グルタル酸無水物等が挙げられる。具体的には、3,4−ジメチル−6−(2−メチル−1−プロペニル)−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、1−イソプロピル−4−メチル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、ビニル基、アリル基等のアルケニル基で置換されたコハク酸無水物、ジエチルグルタル酸無水物等が挙げられる。中でもBステージにおいて容易にタックフリーとすることができ、ボンディング時に適度な速度でエポキシ樹脂組成物の硬化反応を進行させることができる、3,4−ジメチル−6−(2−メチル−1−プロペニル)−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、1−イソプロピル−4−メチル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸が好ましい。
【0026】
(B)硬化剤としてのフェノール樹脂としては、ノボラック型フェノール樹脂、ノボラック型ビスフェノールA樹脂が挙げられる。具体的には、トリフェニルメタンノボラック型フェノール樹脂、キシリレンノボラックフェノール樹脂、ビフェニルノボラックフェノール樹脂、ジシクロペンタジエンノボラックフェノール樹脂、テルペンノボラックフェノール樹脂等が挙げられる。中でも、ボンディング時に低い溶融粘度が得られるノボラック型フェノール樹脂、ノボラック型ビスフェノールA樹脂が好ましい。
【0027】
エポキシ樹脂組成物中の酸無水物及びフェノール樹脂の両方を含む硬化剤の含有量は、3〜50質量%、好ましくは5〜48質量%、より好ましくは10〜47質量%、さらに好ましくは20〜45質量%である。酸無水物及びフェノール樹脂の含有量が3質量%未満であると、Bステージにおいて、タックフリーを実現することが困難となる。上記含有量が50質量%を超えると、硬化反応が進行しすぎて、ボンディング時に溶融粘度を低下させることが困難となる。
【0028】
酸無水物のフェノール樹脂に対する質量比は、好ましくは10:90〜70:30、より好ましくは20:80〜50:50、さらに好ましくは25:75〜35:65である。酸無水物とフェノール樹脂の質量比(酸無水物:フェノール樹脂)が、10:90〜70:30であると、Bステージにおいて十分なタックフリーを得ることができ、次工程のボンディング時に薄膜化したエポキシ樹脂組成物の溶融粘度を低下させて、例えば半導体素子等の2つの対向する電極間に存在するエポキシ樹脂組成物を除去して対向する電子部品の接続を確保することができる。さらに、酸無水物とフェノール樹脂の質量比が上記範囲内であると、比較的短いボンディング時間でエポキシ樹脂組成物を適度な速度で硬化反応を進行させて、次工程のポストキュア時にエポキシ樹脂組成物の剥離や流れ出し等を生じることなく、優れた接着強度を有し、優れた接着性を維持することができる。
【0029】
(酸無水物の酸無水物基のモル数及びフェノール樹脂のフェノール性水酸基のモル数の和)/(結晶性エポキシ樹脂のエポキシ基のモル数)の比は、好ましくは0.6〜1.2、より好ましくは0.8〜1.0、さらに好ましくは0.9〜1.0である。(酸無水物基のモル数及びフェノール性水酸基のモル数の和)/(エポキシ基のモル数)の比が上記範囲であれば、ポストキュア後に反応率の高い硬化物が得られ、優れた接着強度や信頼性を得ることができる。
【0030】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、適切な硬化性を得るために(C)硬化促進剤を0.1〜2質量%含む。エポキシ樹脂組成物中の(C)硬化促進剤の含有量は、好ましくは0.3〜1.5質量%、より好ましくは0.3〜1.0質量%である。(C)硬化促進剤の含有量が0.1質量%未満であると、硬化が不十分となり、必要な接着強度が得られないため、剥離が起こる場合がある。上記含有量が2質量%を超えると、ボンディング時に急激な粘度上昇が生じて、例えば対向する2つの電子部品の接続が困難になる場合がある。
【0031】
(C)硬化促進剤としては、結晶性エポキシ樹脂の硬化反応を適度な速度で進行させるものであれば、公知のものを使用することができ、特に限定されないが、アミン系硬化促進剤及び/又は変性イミダゾール系硬化促進剤を使用することが好ましい。硬化促進剤は、アミン系硬化促進剤及び変性イミダゾール系硬化促進剤から選ばれる1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
アミン系硬化促進剤としては、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルジメチルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデンセン−7等の3級アミン等が挙げられる。具体的には、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、ベンジルジメチルアミン等が好ましい。
【0033】
変性イミダゾール系促進剤としては、エポキシ−イミダゾールアダクト系化合物やアクリレート−イミダゾールアダクト化合物が使用できる。エポキシ−イミダゾールアダクト系化合物として市販されているものとしては、例えば、味の素ファインテクノ社製・「アミキュアPN−23」、同「アミキュアPN−40」、旭化成社製・「ノバキュア HX−3721」等が挙げられる。
【0034】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、さらにエポキシ樹脂組成物中に(D)固形エポキシ樹脂10〜50質量%を含むことができる。ここで、固形エポキシ樹脂とは、常温(25℃)で非結晶性の固形エポキシ樹脂をいう。(D)固形エポキシ樹脂を10〜50質量%含むことによって、Bステージにおいてエポキシ樹脂組成物のタックフリーを容易に実現することができる。エポキシ樹脂組成物中の(D)固形エポキシ樹脂の含有量は、好ましくは20〜49質量%であり、より好ましくは30〜48質量%である。
【0035】
(D)固形エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等が挙げられる。具体的には、下記式(3)
【0036】
【化5】

【0037】
(式中、nは2〜15である。)で示されるビスフェノールA型エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましい。
【0038】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記成分の他に、基材に対する濡れ性や接着性を改善させるための(E)シランカップリング剤を添加することができる。シランカップリング剤としては、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。エポキシ樹脂組成物中の(E)シランカップリング剤の含有量は、特に限定されないが、好ましくは1〜10質量%、より好ましくは3〜7質量%である。
【0039】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(E)シランカップリング剤の他に、巻き込んだ気泡を除去するための消泡剤、着色のための染料や顔料等、被着体への濡れ性を向上させるレべリング剤等を添加することができる。消泡剤としては、シリコーン系消泡剤等が挙げられる。
【0040】
さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物は、(F)溶剤を含有することができる。(F)溶剤の含有量は、エポキシ樹脂組成物が塗工装置等によって均一に塗工できる範囲であれば、特に限定されないが、エポキシ樹脂組成物中の不揮発性の成分(結晶性エポキシ樹脂、固形エポキシ樹脂、硬化剤、シランカップリング剤、硬化促進剤等の固形分)100質量部に対して、5〜50質量部を含有することができる。
【0041】
(F)溶剤としては、例えばジエチルジグリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ターピネオール、テキサノール、ジヒドロターピネオール、ベンジルアルコール等が挙げられる。中でも、ジエチルジグリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。
【0042】
さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物は、(G)フラックス剤を含有することができる。エポキシ樹脂組成物中の(G)フラックス剤の含有量は、好ましくは1〜15質量%、より好ましくは2〜12質量%である。エポキシ樹脂組成物中に、(G)フラックス剤1〜15質量%含有することにより、対向する2つの電極間を接続するボンディングを行う前に、卑金属電極側にフラックス剤(酸化膜除去剤)を塗布しておく必要がなく、フラックス剤の塗布工程を省略することができる。(G)フラックス剤は、安息香酸及び/又は2−メチル安息香酸であることが好ましい。
【0043】
本発明のエポキシ樹脂組成物の製造方法は、特に限定されず、各成分を所定の配合で、流星型攪拌機、ディソルバー、ビーズミル、ライカイ機、三本ロールミル、回転式混合機、二軸ミキサー等の混合機に投入し、混合して製造することができる。
【0044】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、100℃、20分ドライアップしてBステージ化した後、150℃まで昇温したボンディング時において、粘弾性の測定を行うレオメーター(例えばREOLOGICA社製、VISCOANALYSER VAR100、周波数1.0Hz)で測定した溶融粘度が、1Pa・s以下であることが好ましい。本明細書において、ボンディング時において、エポキシ樹脂組成物の溶融粘度の低下とは、レオメーター(例えばREOLOGICA社製、VISCOANALYSER VAR100、周波数1.0Hz)で測定した溶融粘度が、1Pa・s以下であることをいう。上記条件で測定したエポキシ樹脂組成物の溶融粘度は、より好ましくは0.01〜0.9Pa・s、さらに好ましくは0.01〜0.8Pa・sである。Bステージ化後のボンディング時の上記条件で測定したエポキシ樹脂組成物の溶融粘度が、1Pa・s以下であると、例えば2つの電子部品を押し付けて、2つの電子部品を接続させる際に、一方の電子部品の表面に薄く塗布されているエポキシ樹脂組成物を電子部品表面の電極や配線から容易に除去して、対向する電子部品の接続を確保しつつ、除去したエポキシ樹脂組成物によって、周辺凹部が充填され優れた接着強度を有し、優れた接着性を維持することができる。
【0045】
ボンディング時に2つの電子部品を押し付ける際の荷重は、0.5〜5kg/cmであることが好ましい。ボンディング時に150℃まで昇温した場合に、2つの電子部品を押し付ける際の荷重が、例えば2〜5kg/cmであると、溶融粘度が1Pa・s程度のエポキシ樹脂組成物を対向する2つの電極表面から容易に除去して、電極同士の電気的な接続を確保しつつ、エポキシ樹脂組成物を電極の周囲に回り込ませて、優れた接着強度を得ることができる。また、ボンディング時に2つの電子部品を押し付ける際の荷重が、例えば0.5kg/cmであると、溶融粘度が0.03Pa・s程度のエポキシ樹脂組成物を対向する2つの電極表面から容易に除去して、電極同士の電気的な接続を確保しつつ、エポキシ樹脂組成物を電極の周囲に回り込ませて、優れた接着強度を得ることができる。
【0046】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、100℃、20分ドライアップしてBステージ化した後、150℃まで昇温したボンディング時において、JIS C2105に準じた方法で測定した150℃におけるゲルタイムが、120〜300秒であることが好ましい。本明細書において、比較的短いボンディング時間で適度な速度でエポキシ樹脂組成物の硬化反応を進行させるとは、Bステージ化後のボンディング時における、上記条件で測定した150℃におけるゲルタイムが、120〜300秒であることをいう。上記条件で測定したエポキシ樹脂組成物のゲルタイムは、より好ましくは130〜280秒であり、さらに好ましくは140〜270秒である。上記条件で測定したエポキシ樹脂組成物のゲルタイムが上記範囲内であると、適度な硬化速度であり、例えば2つの電子部品を押し付けて、対向する電極同士を接続する際に、溶融粘度が低下しているエポキシ樹脂組成物を一方の電極の表面から容易に除去して、2つの電子部品間の電気的な接続を確保しつつ、その後のポストキュア時に、エポキシ樹脂組成物の剥離や流れ出しを抑制して、優れた接着強度を得ることができ、優れた接着性を維持することができる。
【0047】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、Bステージにおけるタックフリーを実現することができるとともに、ボンディング時にエポキシ樹脂組成物の溶融粘度を低下させることができ、比較的短いボンディング時間で適度な速度でエポキシ樹脂組成物の硬化反応を進行させて、ポストキュア時におけるエポキシ樹脂組成物の剥離や流れ出しを抑制して、優れた接着強度を得ることができ、優れた接着性を維持することができる。本発明のエポキシ樹脂組成物は、例えば、基板に半導体素子を封止する半導体封止剤、ダイアタッチ剤等として好適に用いることができる。
【0048】
さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物は、ベアチップの封止、モジュールの接着等に好適に用いることができる。
【0049】
次に、本発明のエポキシ樹脂組成物を使用した半導体装置の一例について説明する。本発明のエポキシ樹脂組成物を使用した半導体装置は、電極等を有する基板上にエポキシ樹脂組成物を塗布する工程と、エポキシ樹脂組成物を乾燥(ドライアップ)してBステージ化する工程と、所定の温度まで昇温して、他の半導体素子と接続(ボンディング)する工程と、エポキシ樹脂組成物を熱硬化(ポストキュア)する工程とを含む方法によって製造することができる。図1(a)〜(d)は、半導体装置を製造する各工程を示す図である。
【0050】
基板上に配置された複数の電極を有する2つの半導体素子を用いて半導体装置を製造する方法であって、本発明のエポキシ樹脂組成物を、一方の半導体素子の電極上から塗布する工程と、塗布したエポキシ樹脂組成物を乾燥させてBステージ化する工程と、エポキシ樹脂組成物が塗布された一方の半導体素子の電極と、他方の半導体素子の電極とを対向するように配置し、2つの半導体素子を押し付けて、エポキシ樹脂組成物を対向する2つの電極間から除去するとともに、エポキシ樹脂組成物を基板上に配置された電極の周囲に回り込ませてボンディングする工程と、エポキシ樹脂組成物をポストキュアする工程とを含む。なお、本発明において、エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂組成物に溶剤を添加してワニス状としたものを含む。以下、各工程について説明する。
【0051】
〔塗布工程〕
図1(a)に示すように、単結晶シリコン基板1上に、焼成によって銀(Ag)電極2を配置し、Ag電極2上から、本発明のエポキシ樹脂組成物3を塗布した半導体素子4を形成する。
【0052】
〔Bステージ工程〕
次に、図1(b)に示すように、半導体素子4を100℃程度の温度下で20分間おいて、エポキシ樹脂組成物3を乾燥させ(ドライアップ)、エポキシ樹脂組成物の流動性を失わせてBステージ化する。本発明のエポキシ樹脂組成物は、Bステージにおいて人の指で触ってもベトつかず、触った指に材料が付着しない、タックフリーを実現することができる。Bステージ化する工程において、温度は、好ましくは80〜100℃である。
【0053】
〔ボンディング工程〕
次に、図1(c)に示すように、基板6上に銅(Cu)電極5を配置した半導体素子7のCu電極5と、他の半導体素子4のAg電極2を対向させて、150℃まで昇温し、半導体素子7に、半導体素子4を押し付けて、Cu電極5とAg電極2とを接続させて、ボンディングを行う。ボンディング時において、エポキシ樹脂組成物は、溶融粘度が低下する。具体的には、Bステージ化した後、150℃まで昇温した際に、レオメーター(例えばREOLOGICA社製、VISCOANALYSER VAR100、周波数1.0Hz)で測定したエポキシ樹脂組成物の溶融粘度を1Pa・s以下にすることができる。ボンディング時にエポキシ樹脂組成物の溶融粘度を低下させることができると、半導体素子7の方向に(図1(c)中矢印方向)、半導体素子4を押し付けた際に、Cu電極5とAg電極2の間に存在しているエポキシ樹脂組成物3を容易に除去して、対向するCu電極5とAg電極2の電気的な接続を確保することができ、除去したエポキシ樹脂組成物3を、隣接する2つのCu電極5,5の間に回り込ませて、優れた接着強度を得ることができる。さらに、比較的短いボンディング時間で適度な速度でエポキシ樹脂組成物3の硬化反応を進行させることができる。具体的には、JIS C2105に準じた方法で測定した150℃におけるゲルタイムが、120〜300秒となるように、エポキシ樹脂組成物3の硬化反応を進行させることができる。ボンディングする工程において、温度は、好ましくは120〜150℃であり、2つの半導体素子を押し付ける際の荷重は、好ましくは0.5〜5kg/cmであり、エポキシ樹脂組成物の150℃におけるゲルタイムは、好ましくは120〜300秒である。
【0054】
〔ポストキュア工程〕
次に、図1(d)に示すように、対向するCu電極5とAg電極2との電気的な接続を確保しつつ、隣接する2つのCu電極5,5及び2つのAg電極2,2との間に存在するエポキシ樹脂組成物3を、例えば150℃、60分でポストキュアして、半導体装置8を形成する。ボンディング時に、比較的短いボンディング時間で適度な速度でエポキシ樹脂組成物の硬化反応が進行するので、ポストキュア時には、エポキシ樹脂組成物の剥離や流れ出しが抑制され、優れた接着強度を有し、優れた接着性を維持した半導体装置8を得ることができる。ポストキュアする工程において、ポストキュアする温度は、好ましくは120〜150℃であり、ポストキュアする時間は、好ましくは30〜60分である。
【実施例】
【0055】
以下、実施例及び比較例によって、本発明を更に詳細に説明する。本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0056】
(実施例1〜8、比較例1〜5)
表1に示す配合割合で、各組成を150℃で流星型攪拌機を用いて混練し、実施例1〜7及び比較例1〜4のエポキシ樹脂組成物を調製した。これらのエポキシ樹脂組成物についてタック性、溶融粘度、ゲルタイム、接着強度について測定した。結果を表1に示す。
また、実施例6、8及び比較例1については、さらにフラックス性の評価を行った。なお、(F)溶剤は、流星型攪拌機でエポキシ樹脂組成物を十分に混練することが可能となるような適量を添加した。また、スクリーン印刷適正を調整すべく更に同溶剤を適宜添加した。
【0057】
表1のエポキシ樹脂組成物の成分は、以下のものを用いた。
(A)結晶性エポキシ樹脂
(A−1)式(2)で示されるナフタレン型エポキシ樹脂、エポキシ当量160g/eq、軟化点95℃
【0058】
【化6】


(A−2)式(1)で示されるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(式中、nは0.3)、エポキシ当量247g/eq、軟化点65℃
【0059】
【化7】

【0060】
(B)硬化剤
(B−1)酸無水物(トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸)、ジャパンエポキシレジン社製、商品名:YH−307、酸無水物当量234g/eq
(B−2)ノボラック型フェノール樹脂、明和化成社製、商品名:MEH8005、水酸基当量135g/eq
(B−3)ノボラック型ビスフェノールAとホルムアルデヒドの重縮合物、DIC社製、商品名:VH−4170、水酸基当量118g/eq
(B−4)ノボラック型ビスフェノールAとホルムアルデヒドの重縮合物、DIC社製、
商品名:KH−6021、水酸基当量118g/eq
(C)硬化促進剤
(C−1)2−エチル−4−メチルイミダゾール、
(D)固形エポキシ樹脂
(D−1)式(3)で示されるビスフェノールA型エポキシ樹脂(式中、nは9である。)、エポキシ当量2850g/eq、軟化点137℃
【0061】
【化8】

【0062】
(D−2)テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂、エポキシ当量190g/eq、軟化点105℃
(E)シランカップリング剤
(E−1)3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
(F)溶剤
(F−1)ジエチルジグリコール
(G)フラックス剤
(G−1)安息香酸
【0063】
表1に示す配合割合の組成物について、タック性、溶融粘度、ゲルタイム、接着強度を以下のように測定した。
[タック性]
タック性は、各組成物を100℃、20分ドライアップした後、タック試験機(RHESCA社製)を用いて、以下の条件で測定した。
下降スピード:1.0mm/秒
引き上げスピード:600mm/秒
荷重:100gf
プレス時間:1秒
測定距離:5mm
測定温度:25℃
測定回数:5回
上記のようにして測定したタック性の値が、100gf以下の場合を○、100gfを超える場合は×とした。
【0064】
[溶融粘度]
溶融粘度は、各組成物を100℃で20分静置後、150℃まで昇温し、レオメーター(REOLOGICA社製、VISCOANALYSER VAR100、周波数1.0Hz)を用いて最低溶融粘度を測定した。
【0065】
[ゲルタイム]
ゲルタイムは、150℃で JIS C2105に準じて測定した。
【0066】
[接着強度]
ポリイミドテープで50μmのギャップを形成し、実施例1〜7及び比較例1〜5の各組成物をディスペンスし、100℃、20分、ドライアップしてBステージ化(流動性を失わせた状態)とした後、各組成物上に縦5mm、横5mm大きさのシリコン(Si)チップを搭載し、150℃に昇温し(ボンディング)、その後、150℃で60分間、硬化させ(ポストキュア)、試験片を作製した。この試験片に対して、初期とPCT後の強度測定を、ボンドテスター試験機(dage社製)を用いて測定し、単位面積あたりの接着強度を算出した。なお、PCTとは、121℃、2気圧(atm)、相対湿度100%の高温高圧雰囲気に24時間試験片を放置することをいい、PCTは、PCT後の接着強度を測定することによって、接着強度の劣化を確認する、加速試験である。
【0067】
[フラックス性]
Cu板に粒径1mmのハンダボール(SnBi製、融点139℃)を置き、その上から実施例6、8及び比較例1の各組成物を覆い被せるように塗布し、Bステージ化条件(100℃、20分間でドライアップ)にした後、組成物中の溶剤を除去し、さらにボンディング条件(150℃、60秒間)で加熱を行った。その後、塗布した各組成物をアセトンで除去、洗浄し、Cu板とハンダボールの接着力をボンドテスター試験機(dage社製)で測定した。接着強度が0.5kg以上の場合を○とし、接着強度が0.5kg未満の場合を×として評価した。
【0068】
【表1】

【0069】
表1に示すように、実施例1〜7は、100℃、20分でドライアップ、すなわち、Bステージ(流動性を失わせた状態)におけるタック性が100gf以下であり、タックフリーを実現することができた。また、実施例1〜8は、150℃まで昇温したボンディング時に、溶融粘度が1Pa・s以下であり、試験片同士を押し付けた場合に、例えば対向する試験片の電極間に存在するエポキシ樹脂組成物を容易に除去して、対向する2つの試験片の電気的な接続を確保でき、さらに、150℃に昇温したボンディング時におけるゲルタイムが124〜265秒であり、ボンディング時に適度な速度で硬化反応を進行させることができた。さらに、実施例1〜8は、初期の接着強度が5kg/mm以上であり、PCT後の接着強度が3kg/mm以上であり、ポストキュア後に優れた接着強度を有していた。また、初期の接着強度に比べて、PCT後の接着強度の低下が4〜40%程度であり、優れた接着性が維持されていた。
【0070】
一方、比較例1は、Bステージにおいてタックフリーを実現することができず、ポストキュア時にはゲルタイムが長すぎて、ボンディング後の剥離が生じていた。比較例2は、Bステージにおいてタックフリーを実現することができるものの、ボンディング時の溶融粘度が1Pa・sを超えており、かつゲルタイムが短いため、対向する試験片同士の電極間に存在するエポキシ樹脂組成物を容易に除去することができず、試験片同士の電気的な接続が取れなかった。比較例3は、Bステージにおいてタックフリーを実現することができなかった。比較例4は、硬化剤として、硬化反応の進行を速める酸無水物のみを含有するので、Bステージにおいてタックフリーは実現することができるものの、硬化剤としてフェノール樹脂を併用していないのでBステージにおいて半硬化状態となっており、ボンディング時のエポキシ樹脂組成物の溶融粘度が1Pa・sを超えて高く、対向する試験片同士の電極間に存在するエポキシ樹脂組成物を容易に除去することができなかった。また、比較例4は、エポキシ樹脂組成物のゲルタイムが104秒であり、ボンディング時における硬化反応の進行が速いために、細部にまで溶融したエポキシ樹脂が行き渡らずに初期の接着強度と比較して、PCT後の接着強度が1/3程度に低下しており、優れた接着性を維持することができなかった。比較例5は、タックフリーを実現することができず、溶融粘度、ゲルタイム、接着強度の測定をすることができなかった。
【0071】
また、実施例8に示すように、エポキシ樹脂組成物に(G)フラックス剤を含有させると、ボンディング工程前にフラックス剤の塗布工程を経ることなく、濡れ性が改善され、所望の接着強度を有し、優れたフラックス性が得られることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明のエポキシ樹脂組成物及びそれを使用した半導体装置は、Bステージにおいて硬化反応の進行を抑制してタックフリーを実現することができるとともに、ボンディング時に溶融粘度を低下させて、対向する電子部品同士の間に存在するエポキシ樹脂組成物を容易に除去して、対向する電子部品同士の電気的な接続を確保することができ、比較的短いボンディング時間で適度な速度で硬化反応を進行させて、ポストキュア時の剥離や流れ出しを抑制し、優れた接着強度を有し、優れた接着性を維持することができる。そのため、本発明のエポキシ樹脂組成物は、半導体封止剤、ダイアタッチ剤、ベアチップの封止、モジュールの接着等として有用である。また、本発明のエポキシ樹脂組成物を使用した半導体装置は、優れた接着強度を有し、優れた接着性を維持することができるので、産業上好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 単結晶シリコン基板
2 銀(Ag)電極
3 エポキシ樹脂組成物
4 半導体素子
5 銅(Cu)電極
6 基板
7 半導体素子
8 半導体装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)式(1)
【化9】


(式中、nは平均値で0.2〜1.5である。)で示されるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂及び式(2)
【化10】


で示されるナフタレン型エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種の結晶性エポキシ樹脂15〜57.5質量%、
(B)硬化剤として酸無水物及びフェノール樹脂の合計量3〜50質量%、
(C)硬化促進剤0.1〜2質量%
を含むことを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
(D)固形エポキシ樹脂10〜50質量%をさらに含む、請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
(C)硬化促進剤がアミン系硬化促進剤及び/又は変性イミダゾール系硬化促進剤である、請求項1又は2記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
(酸無水物の酸無水物基のモル数及びフェノール樹脂のフェノール性水酸基のモル数の和)/(結晶性エポキシ樹脂のエポキシ基のモル数)の比が0.6〜1.2である、請求項1〜3のいずれか1項記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
酸無水物のフェノール樹脂に対する質量比が10:90〜70:30である、請求項1〜4のいずれか1項記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
(G)フラックス剤1〜15質量%をさらに含み、(G)フラックス剤が安息香酸及び/又は2−メチル安息香酸である、請求項1〜5のいずれか1項記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
150℃における溶融粘度が1Pa・s以下であり、150℃におけるゲルタイムが120〜300秒である、請求項1〜6のいずれか1項記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載のエポキシ樹脂組成物を使用して接着された半導体素子を備える、半導体装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−77214(P2012−77214A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224257(P2010−224257)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(591252862)ナミックス株式会社 (133)
【Fターム(参考)】