説明

エポキシ系樹脂組成物、プリプレグ、硬化体、シート状成形体、積層板及び多層積層板

【課題】シリカ成分の分散性に優れており、硬化物の表面が粗化処理された硬化体の表面粗さを小さくすることができるエポキシ系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】エポキシ系樹脂と、硬化剤と、シリカ粒子がシランカップリング剤により表面処理されているシリカ成分とを含有し、上記エポキシ系樹脂及び上記硬化剤の合計100重量部に対して、上記シリカ成分を25〜400重量部の範囲内で含有し、上記シリカ粒子の平均粒子径が1μm以下であり、上記シランカップリング剤が、アミノ基を有するシラン化合物、メルカプト基を有するシラン化合物、イソシアネート基を有するシラン化合物、酸無水物基を有するシラン化合物及びイソシアヌル酸基を有するシラン化合物からなる群から選択された少なくとも1種であるエポキシ系樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、銅めっき層等が表面に形成される硬化体を得るのに用いられるエポキシ系樹脂組成物に関し、より詳細には、エポキシ系樹脂、硬化剤及びシリカ成分を含むエポキシ系樹脂組成物、並びに該エポキシ系樹脂組成物を用いたプリプレグ、硬化体、シート状成形体、積層板及び多層積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多層基板又は半導体装置等を形成するために、様々な熱硬化性樹脂組成物が用いられている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、熱硬化性樹脂と、硬化剤と、イミダゾールシランにより表面処理されたフィラーとを含む熱硬化性樹脂組成物が開示されている。フィラーの表面には、イミダゾール基が存在する。イミダゾール基は、硬化触媒及び反応起点として作用する。このため、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の強度を高めることができる。また、特許文献1には、熱硬化性樹脂組成物が、接着剤、封止材、塗料、積層材及び成形材等の密着性が必要な用途に有用であることが記載されている。
【0004】
下記の特許文献2には、エポキシ樹脂と、フェノール樹脂と、硬化剤と、無機充填材と、Si原子及びN原子が直接結合していないイミダゾールシランとを含むエポキシ樹脂組成物が開示されている。ここでは、エポキシ樹脂組成物の硬化物の半導体チップに対する接着性が高いこと、並びに硬化物の耐湿性が高いため、IRリフロー後でも、硬化物が半導体チップ等から剥離し難いことが記載されている。
【0005】
また、下記の特許文献3には、エポキシ系樹脂と、硬化剤と、イミダゾールシランにより処理されており、かつ平均粒子径が5μm以下であるシリカとを含むエポキシ樹脂組成物が開示されている。このエポキシ樹脂組成物を硬化させた硬化物の表面を、粗化処理することにより、多くの樹脂をエッチングしなくても、シリカを容易に脱離させることができる。このため、硬化物の表面の表面粗さを小さくすることができる。さらに、硬化物と銅めっきとの密着性を高くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−169871号公報
【特許文献2】特開2002−128872号公報
【特許文献3】国際公開第2007/032424号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような熱硬化性樹脂組成物の硬化体の表面には、銅等の金属からなる配線が形成されることがある。近年、このような硬化体の表面に形成される配線の微細化が進行している。すなわち、配線の幅方向の寸法(L)と、配線が形成されていない部分の幅方向の寸法(S)とを示すL/Sが、より一層小さくされてきている。このため、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の線膨張率をより一層小さくすることが検討されている。従来、硬化物の線膨張率を小さくするために、一般的には、熱硬化性樹脂組成物にシリカ等の充填材が多く配合されていた。
【0008】
しかしながら、特許文献1〜3では、フィラー又はシリカ等の無機充填材はイミダゾールシランにより表面処理されている。このようなイミダゾールシランにより表面処理されたシリカ等を多く配合した場合には、シリカ等が凝集しやすかった。従って、硬化体の表面を粗化処理した場合に、凝集したシリカ等がまとまって脱離し、表面粗さが大きくなることがあった。
【0009】
本発明の目的は、シリカ成分の分散性に優れており、硬化物の表面が粗化処理された硬化体の表面粗さを小さくすることができ、さらに、粗化処理された硬化体の表面に金属層が形成された場合に、硬化体と金属層との接着強度を高めることができるエポキシ系樹脂組成物、並びに該エポキシ系樹脂組成物を用いたプリプレグ、硬化体、シート状成形体、積層板及び多層積層板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、エポキシ系樹脂と、硬化剤と、シリカ粒子がシランカップリング剤により表面処理されているシリカ成分とを含有し、前記エポキシ系樹脂及び前記硬化剤の合計100重量部に対して、前記シリカ成分を25〜400重量部の範囲内で含有し、前記シリカ粒子の平均粒子径が1μm以下であり、前記シランカップリング剤が、アミノ基を有するシラン化合物、メルカプト基を有するシラン化合物、イソシアネート基を有するシラン化合物、酸無水物基を有するシラン化合物及びイソシアヌル酸基を有するシラン化合物からなる群から選択された少なくとも1種である、エポキシ系樹脂組成物が提供される。
【0011】
本発明に係るエポキシ系樹脂組成物のある特定の局面では、前記エポキシ系樹脂、前記硬化剤及び前記シリカ成分の合計100重量%の内の15重量%〜80重量%が、23℃で液状である。
【0012】
本発明に係るエポキシ系樹脂組成物の他の特定の局面では、前記エポキシ系樹脂100重量%中に、アントラセン骨格を有するエポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂、トリアジン骨格を有するエポキシ樹脂及びビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂からなる群から選択された少なくとも1種のエポキシ系樹脂を合計で2〜20重量%の範囲内で含む。
【0013】
本発明に係るエポキシ系樹脂組成物のさらに他の特定の局面では、前記硬化剤100重量%中に、ビフェニル構造を有するフェノール化合物、ナフタレン構造を有するフェノール化合物、ジシクロペンタジエン構造を有するフェノール化合物、アミノトリアジン構造を有するフェノール化合物及び活性エステル化合物からなる群から選択された少なくとも1種の硬化剤を合計で5〜100重量%の範囲内で含む。
【0014】
本発明に係るエポキシ系樹脂組成物の他の特定の局面では、マレイミド化合物がさらに含有されており、前記マレイミド化合物の含有量が2〜45重量%の範囲内である。
【0015】
本発明に係るエポキシ系樹脂組成物のさらに他の特定の局面では、前記シリカ粒子の最大粒子径は5μm以下である。
【0016】
本発明に係るエポキシ系樹脂組成物の別の特定の局面では、前記エポキシ系樹脂及び前記硬化剤の合計100重量部に対して、有機化層状珪酸塩が0.01〜2重量部の範囲内でさらに含有される。
【0017】
本発明に係るプリプレグでは、本発明に従って構成されたエポキシ系樹脂組成物が、多孔質基材に含浸されている。
【0018】
また、本発明によれば、本発明に従って構成されたエポキシ系樹脂組成物又は該エポキシ系樹脂組成物が多孔質基材に含浸されているプリプレグを加熱し、予備硬化させることにより得られた硬化物が粗化処理されている硬化体であって、粗化処理された表面の算術平均粗さRaが0.3μm以下であり、かつ十点平均粗さRzが3.0μm以下である、硬化体が提供される。
【0019】
本発明に係る硬化体のある特定の局面では、前記予備硬化の後、前記粗化処理される前に、前記硬化物が膨潤処理されている。
【0020】
本発明に係るシート状成形体は、本発明に従って構成されたエポキシ系樹脂組成物、該エポキシ系樹脂組成物が多孔質基材に含浸されているプリプレグ、又は前記エポキシ系樹脂組成物もしくは前記プリプレグを硬化させることにより得られた硬化物が粗化処理されている硬化体が、シート状に成形されている。
【0021】
本発明に係る積層板は、本発明に従って構成されたシート状成形体と、該シート状成形体の少なくとも片面に積層されている金属層とを備える。
【0022】
本発明に係る積層板のある特定の局面では、前記金属層は、回路として形成されている。
【0023】
本発明に係る多層積層板は、積層された複数の上記シート状成形体と、該シート状成形体の間に配置された金属層とを備える。
【0024】
本発明に係る多層積層板のある特定の局面では、最表層の前記シート状成形体の外側の表面に積層された金属層がさらに備えられる。
【0025】
本発明に係る多層積層板の他の特定の局面では、前記金属層は、回路として形成されている。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係るエポキシ系樹脂組成物は、平均粒子径1μm以下のシリカ粒子の表面が上記特定のシランカップリング剤により表面処理されているシリカ成分を含むため、シリカ成分の分散性を高めることができる。従って、シリカ成分が凝集するのを抑制しつつ、シリカ成分を比較的多く配合することができる。
【0027】
さらに、本発明に係るエポキシ系樹脂組成物では、シリカ成分が凝集し難いため、硬化物の表面が粗化処理された硬化体の表面粗さを小さくすることができる。さらに、粗化処理された硬化体の表面に金属層が形成された場合に、硬化物と金属層との接着強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るエポキシ系樹脂組成物の硬化物が粗化処理された硬化体の表面を模式的に示す部分切欠正面断面図である。
【図2】図2は、図1に示す硬化体の表面に金属層が形成された状態を示す部分切欠正面断面である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に係るエポキシ系樹脂組成物を用いた多層積層板を模式的に示す部分切欠正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本願発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、エポキシ系樹脂と、硬化剤と、平均粒子径が1μm以下であるシリカ粒子の表面が上記特定のシランカップリング剤により表面処理されているシリカ成分とを上記特定の割合で含む組成を採用することにより、シリカ成分の分散性を高めることができ、かつ硬化物の表面が粗化処理された硬化体の表面粗さを小さくすることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0030】
本発明に係るエポキシ系樹脂組成物は、エポキシ系樹脂と、硬化剤と、シリカ粒子がシランカップリング剤により表面処理されているシリカ成分とを含有する。エポキシ系樹脂組成物に含まれる成分を以下説明する。
【0031】
(エポキシ系樹脂)
本発明に係るエポキシ系樹脂組成物に含まれている「エポキシ系樹脂」とは、少なくとも1個のエポキシ基(オキシラン環)を有する有機化合物をいう。
【0032】
上記エポキシ系樹脂の1分子当たりのエポキシ基の数は、1以上である。エポキシ基の数は、2以上であることがより好ましい。
【0033】
上記エポキシ系樹脂として、従来公知のエポキシ系樹脂を用いることができる。エポキシ系樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。また、「エポキシ系樹脂」には、エポキシ系樹脂の誘導体又はエポキシ系樹脂の水添物も含まれる。
【0034】
上記エポキシ系樹脂としては、例えば、芳香族エポキシ系樹脂(1)、脂環族エポキシ系樹脂(2)、脂肪族エポキシ系樹脂(3)、グリシジルエステル型エポキシ系樹脂(4)、グリシジルアミン型エポキシ系樹脂(5)、グリシジルアクリル型エポキシ系樹脂(6)又はポリエステル型エポキシ系樹脂(7)等が挙げられる。
【0035】
上記芳香族エポキシ系樹脂(1)としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂又はノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0036】
上記ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂又はビスフェノールS型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0037】
上記ノボラック型エポキシ系樹脂としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂又はクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0038】
さらに、上記芳香族エポキシ系樹脂(1)として、ナフタレン、ナフチレンエーテル、ビフェニル、アントラセン、ピレン、キサンテン又はインドールなどの芳香族環を主鎖中に有するエポキシ系樹脂等を用いることができる。また、インドール−フェノール共縮合エポキシ樹脂又はフェノールアラルキル型エポキシ樹脂等を用いることができる。さらに、トリスフェノールメタントリグリシジルエーテル等の芳香族化合物からなるエポキシ系樹脂等を用いることができる。
【0039】
上記脂環族エポキシ系樹脂(2)としては、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサノン−メタ−ジオキサン、又はビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル等が挙げられる。
【0040】
上記脂環族エポキシ系樹脂(2)の市販品としては、例えば、ダイセル化学工業社製の商品名「EHPE−3150」(軟化温度71℃)等が挙げられる。
【0041】
上記脂肪族エポキシ系樹脂(3)としては、例えば、ネオペンチルグリコールのジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、又は長鎖ポリオールのポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0042】
上記長鎖ポリオールは、ポリオキシアルキレングリコール又はポリテトラメチレンエーテルグリコールを含むことが好ましい。また、上記ポリオキシアルキレングリコールのアルキレン基の炭素数は2〜9の範囲内にあることが好ましく、2〜4の範囲内にあることがより好ましい。
【0043】
上記グリシジルエステル型エポキシ系樹脂(4)としては、例えば、フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ジグリシジル−p−オキシ安息香酸、サリチル酸のグリシジルエーテル−グリシジルエステル又はダイマー酸グリシジルエステル等が挙げられる。
【0044】
上記グリシジルアミン型エポキシ系樹脂(5)としては、例えば、トリグリシジルイソシアヌレート、環状アルキレン尿素のN,N’−ジグリシジル誘導体、p−アミノフェノールのN,N,O−トリグリシジル誘導体、又はm−アミノフェノールのN,N,O−トリグリシジル誘導体等が挙げられる。
【0045】
上記グリシジルアクリル型エポキシ系樹脂(6)としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートと、ラジカル重合性モノマーとの共重合体等が挙げられる。上記ラジカル重合性モノマーとしては、エチレン、酢酸ビニル又は(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0046】
上記ポリエステル型エポキシ系樹脂(7)としては、例えば、エポキシ基を有するポリエステル樹脂等が挙げられる。ポリエステル樹脂は、1分子当たり2個以上のエポキシ基を有することが好ましい。
【0047】
上記エポキシ系樹脂として、上記(1)〜(7)のエポキシ系樹脂の他に、以下に示すエポキシ樹脂(8)〜(11)を用いてもよい。
【0048】
上記エポキシ系樹脂(8)としては、例えば、共役ジエン化合物を主体とする(共)重合体の炭素−炭素二重結合をエポキシ化した化合物、又は共役ジエン化合物を主体とする(共)重合体の部分水添物の炭素−炭素二重結合をエポキシ化した化合物等が挙げられる。上記エポキシ系樹脂(8)の具体例としては、エポキシ化ポリブタジエン又はエポキシ化ジシクロペンタジエン等が挙げられる。
【0049】
上記エポキシ系樹脂(9)としては、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック又はその部分水添物の重合体ブロックとを同一分子内に有するブロック共重合体であって、炭素−炭素二重結合がエポキシ化された化合物等が挙げられる。このような化合物としては、例えば、エポキシ化SBS等が挙げられる。
【0050】
上記エポキシ系樹脂(10)としては、例えば、上記(1)〜(9)のエポキシ系樹脂の構造中に、ウレタン結合が導入されたウレタン変性エポキシ樹脂、又はポリカプロラクトン結合が導入されたポリカプロラクトン変性エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0051】
上記エポキシ系樹脂(11)としては、ビスアリールフルオレン骨格を有するエポキシ系樹脂等が挙げられる。
【0052】
上記エポキシ樹脂(11)の市販品としては、例えば、大阪ガスケミカル社製の商品名「オンコートEXシリーズ」等が挙げられる。
【0053】
また、上記エポキシ系樹脂として、可撓性エポキシ系樹脂が好適に用いられる。可撓性エポキシ系樹脂の使用により、硬化物の柔軟性を高めることができる。
【0054】
上記可撓性エポキシ樹脂としては、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、長鎖ポリオールのポリグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレートとラジカル重合性モノマーとの共重合体、エポキシ基を有するポリエステル樹脂、共役ジエン化合物を主体とする(共)重合体の炭素−炭素二重結合をエポキシ化した化合物、共役ジエン化合物を主体とする(共)重合体の部分水添物の炭素−炭素二重結合をエポキシ化した化合物、ウレタン変性エポキシ樹脂、又はポリカプロラクトン変性エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0055】
さらに、上記可撓性エポキシ樹脂としては、ダイマー酸もしくはダイマー酸の誘導体の分子内にエポキシ基が導入されたダイマー酸変性エポキシ樹脂、又はゴム成分の分子内にエポキシ基が導入されたゴム変性エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0056】
上記ゴム成分としては、NBR、CTBN、ポリブタジエン又はアクリルゴム等が挙げられる。
【0057】
上記可撓性エポキシ系樹脂は、ブタジエン骨格を有することが好ましい。ブタジエン骨格を有する可撓性エポキシ樹脂の使用により、硬化物の柔軟性をより一層高めることができる。また、低温域から高温域までの広い温度範囲にわたり、硬化物の伸度を高めることができる。
【0058】
上記エポキシ系樹脂として、ビフェニル型エポキシ系樹脂を用いてもよい。該ビフェニル型エポキシ系樹脂としては、フェノール化合物の水酸基の一部をエポキシ基含有基で置換し、残りの水酸基を水酸基以外の水素などの置換基で置換した化合物等が挙げられる。
【0059】
上記ビフェニル型エポキシ系樹脂は、下記式(8)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂であることが好ましい。この好ましいビフェニル型エポキシ系樹脂の使用により、硬化物の線膨張率をより一層低くすることができる。
【0060】
【化1】

【0061】
上記式(8)中、tは1〜11の整数を示す。
【0062】
本発明に係るエポキシ系樹脂組成物では、上記エポキシ系樹脂、上記硬化剤及び上記シリカ成分の合計100重量%の内の15重量%〜80重量%が、23℃で液状であることが好ましい。上記エポキシ系樹脂、上記硬化剤及び上記シリカ成分の合計100重量%の内の25重量%以上が23℃で液状であることがより好ましい。23℃で液状である成分の量が15重量%未満であると、Bステージ状態でのエポキシ系樹脂組成物が脆くなり、エポキシ系樹脂組成物が折り曲げられたときに、割れたりする。さらに、23℃で液状である成分の含有量が少なすぎると、硬化剤がビフェニル構造を有するフェノール化合物又はナフタレン構造を有するフェノール化合物である場合に、エポキシ系樹脂組成物がカッター等で切断されたときに切り屑が生じるおそれがある。23℃で液状の成分として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂又はビスフェノールF型エポキシ樹脂を好適に使用できる。
【0063】
上記エポキシ系樹脂は、アントラセン骨格を有するエポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂、トリアジン骨格を有するエポキシ樹脂及びビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種のエポキシ系樹脂(以下、エポキシ系樹脂Aと略記する)を含むことが好ましい。また、エポキシ系樹脂組成物に含まれている全てのエポキシ系樹脂の合計100重量%中、上記エポキシ系樹脂Aの含有量は2〜20重量%の範囲内であることが好ましい。
【0064】
上記エポキシ樹脂Aが含まれる場合、また上記エポキシ樹脂Aの含有量が上記好ましい範囲内にある場合には、硬化物のガラス転移温度を高め、かつ線膨張率を低くすることができるとともに、エポキシ系樹脂組成物又はシート状成形体のハンドリング性を良好にすることができる。さらに、上記エポキシ系樹脂Aの含有量が上記好ましい範囲内にある場合には、粗化処理された硬化体の表面粗さをより一層小さくできることができる。このため、エポキシ系樹脂組成物は、ビルドアップ用絶縁フィルムに好適に使用できる。
【0065】
(硬化剤)
本発明に係るエポキシ系樹脂組成物に含まれている硬化剤は、エポキシ系樹脂を硬化させることができるものであれば特に限定されない。硬化剤として、従来公知の硬化剤を用いることができる。
【0066】
上記硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド、アミン化合物、アミン化合物から合成される化合物、イミダゾール化合物、ヒドラジド化合物、メラミン化合物、酸無水物、フェノール化合物、活性エステル化合物、ベンゾオキサジン化合物、熱潜在性カチオン重合触媒、光潜在性カチオン重合開始剤又はシアネートエステル樹脂等が挙げられる。これらの硬化剤の誘導体を用いてもよい。硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。また、硬化剤とともに、アセチルアセトン鉄等の硬化触媒を用いてもよい。
【0067】
上記アミン化合物としては、例えば、鎖状脂肪族アミン化合物、環状脂肪族アミン化合物又は芳香族アミン化合物等が挙げられる。
【0068】
上記鎖状脂肪族アミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリオキシプロピレンジアミン又はポリオキシプロピレントリアミン等が挙げられる。
【0069】
上記環状脂肪族アミン化合物としては、例えば、メンセンジアミン、イソフォロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N−アミノエチルピペラジン、又は3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等が挙げられる。
【0070】
上記芳香族アミン化合物としては、例えば、m−キシレンジアミン、α−(m/p−アミノフェニル)エチルアミン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、又はα,α−ビス(4−アミノフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン等が挙げられる。
【0071】
上記アミン化合物として、3級アミン化合物を用いてもよい。3級アミン化合物としては、例えば、N,N−ジメチルピペラジン、ピリジン、ピコリン、ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール又は1,8−ジアザビスシクロ(5,4,0)ウンデセン−1等が挙げられる。
【0072】
上記アミン化合物から合成される化合物の具体例としては、ポリアミノアミド化合物、ポリアミノイミド化合物又はケチミン化合物等が挙げられる。
【0073】
上記ポリアミノアミド化合物としては、例えば、上記アミン化合物とカルボン酸とから合成される化合物等が挙げられる。上記カルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカ二酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ジヒドロイソフタル酸、テトラヒドロイソフタル酸又はヘキサヒドロイソフタル酸等が挙げられる。
【0074】
上記ポリアミノイミド化合物としては、例えば、上記アミン化合物とマレイミド化合物とから合成される化合物等が挙げられる。上記マレイミド化合物としては、例えば、ジアミノジフェニルメタンビスマレイミド等が挙げられる。
【0075】
また、上記ケチミン化合物としては、例えば、上記アミン化合物とケトン化合物とから合成される化合物等が挙げられる。
【0076】
上記アミン化合物から合成される化合物の他の具体例としては、上記アミン化合物と、エポキシ化合物、尿素化合物、チオ尿素化合物、アルデヒド化合物、フェノール化合物又はアクリル系化合物とから合成される化合物等が挙げられる。
【0077】
上記イミダゾール化合物としては、例えば、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾリン、又は2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール等が挙げられる。
【0078】
上記ヒドラジド化合物としては、例えば、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン、7,11−オクタデカジエン−1,18−ジカルボヒドラジド、エイコサン二酸ジヒドラジド又はアジピン酸ジヒドラジド等が挙げられる。
【0079】
上記メラミン化合物としては、例えば、2,4−ジアミノ−6−ビニル−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0080】
上記酸無水物としては、例えば、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、グリセロールトリスアンヒドロトリメリテート、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ナジック酸無水物、メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸−無水マレイン酸付加物、ドデセニル無水コハク酸、ポリアゼライン酸無水物、ポリドデカン二酸無水物又はクロレンド酸無水物等が挙げられる。
【0081】
上記熱潜在性カチオン重合触媒としては、例えば、イオン性熱潜在性カチオン重合触媒又は非イオン性熱潜在性カチオン重合触媒が挙げられる。
【0082】
上記イオン性熱潜在性カチオン重合触媒としては、6フッ化アンチモン、6フッ化リン又は4フッ化ホウ素等を対アニオンとする、ベンジルスルホニウム塩、ベンジルアンモニウム塩、ベンジルピリジニウム塩又はベンジルスルホニウム塩等が挙げられる。
【0083】
上記非イオン性熱潜在性カチオン重合触媒としては、N−ベンジルフタルイミド又は芳香族スルホン酸エステル等が挙げられる。
【0084】
上記光潜在性カチオン重合触媒としては、例えば、イオン性光潜在性カチオン重合開始剤又は非イオン性光潜在性カチオン重合開始剤が挙げられる。
【0085】
上記イオン性光潜在性カチオン重合開始剤の具体例としては、オニウム塩類又は有機金属錯体類等が挙げられる。上記オニウム塩類としては、例えば、6フッ化アンチモン、6フッ化リン又は4フッ化ホウ素等を対アニオンとする、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ハロニウム塩又は芳香族スルホニウム塩等が挙げられる。上記有機金属錯体類としては、例えば、鉄−アレン錯体、チタノセン錯体又はアリールシラノール−アルミニウム錯体等が挙げられる。
【0086】
上記非イオン性光潜在性カチオン重合開始剤の具体例としては、ニトロベンジルエステル、スルホン酸誘導体、リン酸エステル、フェノールスルホン酸エステル、ジアゾナフトキノン又はN−ヒドロキシイミドスルホナート等が挙げられる。
【0087】
上記フェノール化合物としては、例えば、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック、p−クレゾールノボラック、t−ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジエンクレゾール、フェノールアラルキル樹脂、α−ナフトールアラルキル樹脂、β−ナフトールアラルキル樹脂又はアミノトリアジンノボラック樹脂等が挙げられる。フェノール化合物として、これらの誘導体を用いてもよい。フェノール化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0088】
上記硬化剤として上記フェノール化合物が好適に用いられる。上記フェノール化合物の使用により、硬化物の耐熱性及び寸法安定性を高めることができ、さらに硬化物の吸水性を低くすることができる。さらに、粗化処理された硬化体の表面粗さをより一層小さくすることができる。具体的には、粗化処理された硬化体の表面の算術平均粗さRa及び十点平均粗さRzをより一層小さくすることができる。
【0089】
上記硬化剤として、下記式(1)、下記式(2)及び下記式(3)の内のいずれかで表されるフェノール化合物がより好適に用いられる。この場合には、硬化体の表面粗さをさらに一層小さくすることができる。
【0090】
【化2】

【0091】
上記式(1)中、R1はメチル基又はエチル基を示し、R2は水素又は炭化水素基を示し、nは2〜4の整数を示す。
【0092】
【化3】

【0093】
上記式(2)中、mは0〜5の整数を示す。
【0094】
【化4】

【0095】
上記式(3)中、R3は下記式(4a)又は下記式(4b)で表される基を示し、R4は下記式(5a)、下記式(5b)又は下記式(5c)で表される基を示し、R5は下記式(6a)又は下記式(6b)で表される基を示し、R6は水素又は炭素数1〜20の有機基を示し、pは1〜6の整数を示し、qは1〜6の整数を示し、rは1〜11の整数を示す。
【0096】
【化5】

【0097】
【化6】

【0098】
【化7】

【0099】
なかでも、上記式(3)で表されるフェノール化合物であって、上記式(3)中のR4が上記式(5c)で表される基である、ビフェニル構造を有するフェノール化合物が好ましい。この好ましい硬化剤の使用により、硬化物の電気特性及び耐熱性をより一層高くすることができ、かつ、線膨張率及び吸水性をより一層低くすることができる。さらに、熱履歴が与えられた場合の硬化物の寸法安定性をより一層高めることができる。
【0100】
上記硬化剤は、下記式(7)で示される構造を有するフェノール化合物であることが特に好ましい。この場合、硬化物の電気特性及び耐熱性をより一層高くすることができ、かつ線膨張率及び吸水性をより一層低くすることができる。さらに、熱履歴が与えられた場合の硬化物の寸法安定性をさらに一層高めることができる。
【0101】
【化8】

【0102】
上記式(7)中、sは1〜11の整数を示す。
【0103】
上記活性エステル化合物としては、例えば、芳香族多価エステル化合物等が挙げられる。活性エステル化合物を用いた場合には、活性エステル基とエポキシ系樹脂との反応時にOH基が生成されないため、誘電率及び誘電正接に優れた硬化物を得ることができる。上記活性エステル化合物の具体例は、例えば、特開2002−12650号公報に開示されている。
【0104】
上記活性エステル化合物の市販品としては、例えば、大日本インキ化学工業社製の商品名「EPICLON EXB9451−65T」等が挙げられる。
【0105】
上記ベンゾオキサジン化合物としては、脂肪族系ベンゾオキサジン樹脂又は芳香族系ベンゾオキサジン樹脂が挙げられる。
【0106】
上記ベンゾオキサジン化合物の市販品としては、例えば、四国化成学工業社製の商品名「P−d型ベンゾオキサジン」及び「F−a型ベンゾオキサジン」等が挙げられる。
【0107】
上記シアネートエステル樹脂としては、例えばノボラック型シアネートエステル樹脂、ビスフェノール型シアネートエステル樹脂及び一部をトリアジン化したプレポリマーなどを用いることができる。シアネートエステル樹脂の使用により、硬化物の線膨張率をより一層低くすることができる。
【0108】
上記イミダゾール化合物を用いる場合に、該イミダゾール化合物とともに、硬化促進剤を用いてもよい。
【0109】
上記硬化促進剤としては、トリフェノルホスフィンなどのホスフィン化合物、DBU、DBN、DBUのフェノール塩、DBNのフェノール塩、オクチル酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ギ酸塩、オルソフタル酸塩又はフェノールノボラック樹脂塩等が挙げられる。
【0110】
上記硬化剤は、ビフェニル構造を有するフェノール化合物、ナフタレン構造を有するフェノール化合物、ジシクロペンタジエン構造を有するフェノール化合物、アミノトリアジン構造を有するフェノール化合物及び活性エステル化合物からなる群から選択される少なくとも1種の硬化剤(以下、硬化剤Bと略記する)を含むことが好ましい。エポキシ系樹脂組成物に含まれている全ての硬化剤100重量%中、上記硬化剤Bの含有量は1〜100重量%の範囲内であることが好ましい。上記硬化剤Bが含まれる場合、また上記硬化剤Bの含有量が上記好ましい範囲内にある場合には、硬化物を粗化処理する際に、粗化処理により樹脂成分が悪影響を受け難い。
【0111】
上記硬化剤は、フェノール化合物、活性エステル化合物及びベンゾオキサジン化合物からなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。これらの好ましい硬化剤を用いた場合には、硬化物を粗化処理する際に、粗化処理により樹脂成分が悪影響を受け難い。
【0112】
活性エステル化合物又はベンゾオキサジン化合物の使用により、誘電率及び誘電正接により一層優れた硬化物を得ることができる。活性エステル化合物は、芳香族多価エステル化合物であることが好ましい。芳香族多価エステル化合物の使用により、誘電率及び誘電正接にさらに一層優れた硬化物を得ることができる。
【0113】
上記硬化剤は、フェノール化合物は、ビフェニル構造を有するフェノール化合物、ナフタレン構造を有するフェノール化合物、ジシクロペンタジエン構造を有するフェノール化合物及びアミノトリアジン構造を有するフェノール化合物からなる群から選択された少なくとも1種であることが特に好ましい。これらの好ましい硬化剤を用いた場合、硬化物を粗化処理する際に、粗化処理により樹脂成分が悪影響をより一層受け難い。具体的には、硬化物を粗化処理する際に、硬化物の表面が粗くなりすぎることなく、シリカ成分を選択的に脱離させて、微細な孔を形成することができる。このため、硬化物の表面に、表面粗さが非常に小さい、微細な凹凸を形成することができる。なかでも、ビフェニル構造を有するフェノール化合物が好ましい。
【0114】
ビフェニル構造を有するフェノール化合物又はナフタレン構造を有するフェノール化合物の使用により、電気特性、特に誘電正接に優れており、かつ強度及び線膨張率にも優れており、しかも吸水率が低い硬化物を得ることができる。
【0115】
エポキシ系樹脂及び硬化剤の分子量が大きいと、硬化物の表面に、微細な粗面を形成しやすい。エポキシ系樹脂の重量平均分子量は、微細な粗面を形成するのに影響する。ただし、硬化剤の重量平均分子量の方が、エポキシ系樹脂の重量平均分子量よりも、微細な粗面を形成するのに大きく影響する。硬化剤の重量平均分子量は、500以上であることが好ましく、1800以上であることがより好ましい。硬化剤の重量平均分子量の好ましい上限は、15000である。硬化剤の重量平均分子量が大きすぎると、膨潤及び粗化工程で樹脂がエッチングされ難くなったり、レーザー穴あけ加工の際に樹脂を除去できなかったりする可能性がある。
【0116】
また、エポキシ系樹脂のエポキシ当量及び硬化剤の当量が大きいと、硬化物の表面に微細な粗面を形成しやすい。さらに、硬化剤が固体であり、かつ硬化剤の軟化温度が60℃以上であると、硬化物の表面に微細な粗面を形成しやすい。
【0117】
上記エポキシ系樹脂100重量部に対して、上記硬化剤は1〜200重量部の範囲内で含有されることが好ましい。硬化剤の含有量が少なすぎると、エポキシ系樹脂が充分に硬化しないことがある。硬化剤の含有量が多すぎると、エポキシ系樹脂を硬化させる効果が飽和することがある。上記硬化剤の含有量のより好ましい下限は30重量部であり、より好ましい上限は140重量部である。
【0118】
(シリカ成分)
本発明のエポキシ系樹脂組成物には、シリカ粒子がシランカップリング剤により表面よりされているシリカ成分が含まれている。シリカ成分は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0119】
上記シリカ粒子の平均粒子径は、1μm以下である。平均粒子径が1μm以下であることにより、硬化物が粗化処理された硬化体に、微細な粗面を形成できる。また、硬化物の表面に平均径1μm以下程度の大きさの微細な孔を形成できる。上記シリカ粒子の平均粒子径は、50nm以上であることが好ましい。
【0120】
上記シリカ粒子の平均粒子径が1μmより大きいと、硬化物を粗化処理する際に、シリカ成分が脱離し難くなる。また、粗化処理された硬化体の表面に金属層を形成するために、めっき処理した場合に、脱離しなかったシリカ成分と樹脂成分との空隙に、めっきが潜り込むことがある。このため、硬化物の表面に金属層が回路として形成されている場合に、回路に不具合が生じるおそれがある。
【0121】
特に、ビフェニル構造を有するフェノール化合物、ナフタレン構造を有するフェノール化合物、ジシクロペンタジエン構造を有するフェノール化合物、アミノトリアジン構造を有するフェノール化合物、芳香族多価エステル化合物又はベンゾオキサジン化合物を硬化剤として用いた場合には、粗化処理によりシリカ成分の周辺の樹脂成分は削れにくい。この場合には、シリカ粒子の平均粒子径が1μmよりも大きいと、シリカ成分がより一層脱離し難くなる。
【0122】
平均粒子径が1μm以下のシリカ粒子であって、シランカップリング剤により表面処理されていないシリカ粒子を用いた場合には、シリカ粒子が凝集しやすい。また、平均粒子径が1μm以下のシリカ粒子がイミダゾールシランにより表面処理されているイミダゾールシラン処理シリカを用いた場合にも、イミダゾールシラン処理シリカが凝集しやすい。このため、エポキシ系樹脂組成物中にシリカ粒子又はイミダゾールシラン処理シリカを充分に分散できないことがあった。
【0123】
これに対し、本発明では、イミダゾールシランではなく、アミノ基を有するシラン化合物、メルカプト基を有するシラン化合物、イソシアネート基を有するシラン化合物、酸無水物基を有するシラン化合物及びイソシアヌル酸基を有するシラン化合物からなる群から選択された少なくとも1種のシランカップリング剤により、上記シリカ粒子が表面処理されているシリカ成分が用いられるため、シリカ成分が凝集し難い。このため、エポキシ系樹脂組成物中でのシリカ成分の分散性を高めることができる。このため、シリカ成分の添加量を比較的多くすることができる。シリカ成分の添加量が多くても、硬化物が粗化処理された硬化体に、微細な粗面を形成できる。
【0124】
シリカ粒子は粒子径が小さくなるほど凝集しやすくなる傾向がある。アミノ基を有するシラン化合物、メルカプト基を有するシラン化合物、イソシアネート基を有するシラン化合物、酸無水物基を有するシラン化合物及びイソシアヌル酸基を有するシラン化合物からなる群から選択された少なくとも1種のシランカップリング剤により、上記シリカ粒子が表面処理されているシリカ成分は、イミダゾールシランに比較して凝集しにくいので、使用するシリカの粒子径を小さくすることも可能になる。中でも特に、アミノ基を有するシラン化合物によりシリカ粒子が表面処理されているシリカ成分を用いた場合には、粗化処理された硬化体の表面粗さを極めて小さくすることができる。
【0125】
本発明に係るエポキシ系樹脂組成物では、例えば10個程度以上のシリカ成分が凝集した凝集物が極めて生じ難い。
【0126】
上記シリカ粒子の平均粒子径として、50%となるメディアン径(d50)の値を採用できる。上記平均粒子径は、レーザー回折散乱方式の粒度分布測定装置を用いて測定できる。
【0127】
平均粒子径の異なる複数種類のシリカ粒子を用いてもよい。細密充填を考慮して、粒度分布の異なる複数種類のシリカ粒子を用いることが好ましい。この場合には、例えば部品内蔵基板のような流動性の要求される用途に、エポキシ系樹脂組成物を好適に使用できる。また、上記シリカ成分とは別に、平均粒子径が数10nmのシリカ粒子を用いることにより、エポキシ系樹脂組成物の粘度を高くしたり、エポキシ系樹脂組成物のチクソトロピー性を制御したりすることができる。
【0128】
シリカ粒子の最大粒子径は、5μm以下であることが好ましい。最大粒子径が5μm以下であると、硬化物を粗化処理する際に、シリカ成分がより一層脱離しやすくなる。さらに、硬化物の表面に比較的大きな孔が生じ難く、均一かつ微細な凹凸を形成できる。
【0129】
特に、ビフェニル構造を有するフェノール化合物、芳香族多価エステル化合物又はベンゾオキサジン化合物を硬化剤として用いた場合には、硬化物の表面から硬化物内に粗化液が浸透し難く、シリカ成分が比較的脱離し難い。しかし、最大粒子径が5μm以下のシリカ成分をの使用により、シリカ成分を無理なく脱離させることができる。硬化物の表面にL/Sが15μm/15μm以下の微細配線を形成する場合に、絶縁信頼性を高めることができるので、シリカの最大粒子径は2μm以下であることが好ましい。なお、「L/S」とは、配線の幅方向の寸法(L)/配線が形成されていない部分の幅方向の寸法(S)を示す。
【0130】
シリカ粒子の形状は特に限定されない。シリカ粒子の形状としては、例えば球状又は不定形状等が挙げられる。硬化物を粗化処理する際に、シリカ成分がより一層脱離しやすいため、シリカ粒子は球状であることが好ましく、真球状であることがより好ましい。
【0131】
シリカ粒子の比表面積は、3m/g以上であることが好ましい。比表面積が3m/g未満であると、硬化物の機械的特性が低下するおそれがある。さらに、例えば粗化処理された硬化体の表面に金属層が形成された場合に、硬化物と金属層との密着性が低下することがある。上記比表面積は、BET法により求めることができる。
【0132】
上記シリカ粒子としては、天然シリカ原料を粉砕して得られる結晶性シリカ、天然シリカ原料を火炎溶融し、粉砕して得られる破砕溶融シリカ、天然シリカ原料を火炎溶融、粉砕及び火炎溶融して得られる球状溶融シリカ、フュームドシリカ(アエロジル)、又はゾルゲル法シリカなどの合成シリカ等が挙げられる。
【0133】
上記合成シリカは、イオン性不純物を含んでいる場合が多い。純度が高いことから、溶融シリカが好適に用いられる。シリカ粒子は、溶剤に分散された状態でシリカスラリーとして用いられてよい。シリカスラリーの使用により、エポキシ系樹脂組成物の製造の際に、作業性及び生産性を高めることができる。
【0134】
上記シランカップリング剤として、アミノ基を有するシラン化合物、メルカプト基を有するシラン化合物、イソシアネート基を有するシラン化合物、酸無水物基を有するシラン化合物及びイソシアヌル酸基を有するシラン化合物からなる群から選択された少なくとも1種が用いられる。シランカップリング剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0135】
上記アミノ基を有するシラン化合物の具体例としては、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン又は3−(4−メチルピペラジノ)プロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0136】
上記メルカプト基を有するシラン化合物の具体例としては、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン又は3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0137】
上記イソシアネートシランの具体例としては、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0138】
上記酸無水物基を有するシラン化合物として、従来公知の酸無水物基を有するシラン化合物を用いることができる。
【0139】
上記イソシアヌル酸基を有するシラン化合物として、従来公知のイソシアヌル酸基を有するシラン化合物を用いることができる。
【0140】
上記シリカ粒子を上記シランカップリング剤により表面処理し、シリカ成分を得た後、該シリカ成分を樹脂組成物に添加することが好ましい。この場合には、シリカ成分の分散性をより一層高めることができる。
【0141】
上記シリカ粒子をシランカップリング剤により表面処理する方法としては、例えば、以下の第1〜第3の方法が挙げられる。
【0142】
第1の方法として、乾式法が挙げられる。乾式法としては、例えば、シリカ粒子にシランカップリング剤を直接付着させる方法等が挙げられる。乾式法では、ミキサーにシリカ粒子を仕込んで、攪拌しながらシランカップリング剤のアルコール溶液又は水溶液を滴下又は噴霧した後、さらに攪拌し、ふるいにより分級する。その後、加熱によりシランカップリング剤とシリカ粒子とを脱水縮合させることにより、上記シリカ成分を得ることができる。得られたシリカ成分は、溶剤に分散された状態でシリカスラリーとして使用されてもよい。
【0143】
第2の方法として、湿式法が挙げられる。湿式法では、シリカ粒子を含むシリカスラリーを攪拌しながらシランカップリング剤を添加し、攪拌した後、濾過、乾燥及びふるいによる分級を行う。次に、加熱によりシラン化合物とシリカとを脱水縮合させることにより、上記シリカ成分を得ることができる。
【0144】
第3の方法として、シリカ粒子を含むシリカスラリーを攪拌しながら、シランカップリング剤を添加した後、加熱還流処理により脱水縮合を進行させる方法が挙げられる。得られたシリカ成分は、溶剤に分散された状態でシリカスラリーとして使用されてもよい。
【0145】
未処理のシリカ粒子を用いた場合、エポキシ系樹脂組成物を硬化させても、シリカ粒子がエポキシ系樹脂と複合化されない。上記シリカ粒子が上記特定のシランカップリング剤により表面処理されているシリカ成分を用いた場合には、エポキシ系樹脂組成物を硬化させると、シリカ成分がエポキシ系樹脂と複合化される。このため、硬化物のガラス転移温度Tgが高くなる。すなわち、未処理のシリカ粒子ではなく、上記シリカ粒子が上記シランカップリング剤により表面処理されているシリカ成分がエポキシ系樹脂組成物に含まれていることにより、硬化物のガラス転移温度Tgを高くすることができる。
【0146】
特にイソシアヌル酸基を有するシラン化合物によりシリカ粒子が表面処理されているシリカ成分の使用により、硬化物のガラス転移温度Tgをより一層高くすることができる。
【0147】
また、上記シリカ粒子が上記特定のシランカップリング剤により表面処理されているシリカ成分の使用により、硬化物のリフロー耐性を高めることができる。
【0148】
イミダゾールシランによりシリカ粒子が表面処理されているシリカ成分を用いた場合には、シリカ成分の親水性が比較的高いため、硬化物の吸水性が高くなる。
【0149】
これに対し、アミノ基を有するシラン化合物、メルカプト基を有するシラン化合物、イソシアネート基を有するシラン化合物、酸無水物基を有するシラン化合物及びイソシアヌル酸基を有するシラン化合物からなる群から選択された少なくとも1種によりシリカ粒子が表面処理されているシリカを用いた場合には、硬化物の吸水性を低くすることができ、かつ硬化物の絶縁信頼性を高くすることができる。具体的には例えば、HAST(高度加速ストレス試験)環境下やPCT(プレッシャークッカーテスト)環境下等のような高温及び高湿条件下でも、硬化物の体積抵抗率を高く維持できる。
【0150】
上記エポキシ系樹脂及び上記硬化剤の合計100重量部に対して、上記シリカ成分は25〜400重量部の範囲内で含有される。上記エポキシ系樹脂及び上記硬化剤の合計100重量部対する上記シリカ成分の含有量の好ましい下限は43重量部であり、好ましい上限は250重量部であり、より好ましい上限は150重量部である。シリカ成分の含有量が少なすぎると、硬化物を粗化処理した際に、シリカ成分の脱離により形成される孔の総表面積が小さくなる。このため、粗化処理された硬化体の表面に金属層が形成された場合に、硬化物と金属層との接着強度を充分に高めることができないことがある。上記シリカ成分の含有量が多すぎると、粗化処理された硬化体が脆くなりやすく、かつ硬化体と金属層との接着強度が低下することがある。
【0151】
本発明では、シリカ成分の含有量が多くても、例えば上記エポキシ系樹脂及び上記硬化剤の合計100重量部対する上記シリカ成分の含有量が100重量部以上であっても、シリカ成分をエポキシ系樹脂組成物に充分に分散させることができる。従って、硬化物の表面が粗化処理された硬化体の表面粗さを小さくすることができ、かつ硬化体の線膨張率を低くすることができる。また、本発明では、シリカ成分の分散性に優れているため、従来の分散し難いシリカ成分を用いた場合と比較して、シリカ成分の配合量が同じであっても、線膨張率を低くすることができる。
【0152】
上記シリカ成分は、シリカ粒子100重量部がシランカップリング剤0.6〜5重量部により表面処理されているシリカ成分であることが好ましい。シランカップリング剤の量の好ましい下限は2重量部であり、好ましい上限は4重量部である。シランカップリング剤の量が少なすぎると、粗化処理された硬化体の表面粗さが大きくなりやすい。シランカップリング剤の量が多すぎると、エポキシ系樹脂組成物の保存安定性が低下し、エポキシ系樹脂組成物がゲル化しやすくなる。
【0153】
(有機化層状珪酸塩)
本発明に係るエポキシ系樹脂組成物は、有機化層状珪酸塩を含有することが好ましい。
【0154】
有機化層状珪酸塩を含むエポキシ系樹脂組成物では、シリカ成分の周囲に、有機化層状珪酸塩が存在する。このため、硬化物を膨潤処理及び粗化処理する際に、硬化物の表面に存在するシリカ成分がより一層脱離しやすくなる。これは、有機化層状珪酸塩の層間又は有機化層状珪酸塩と樹脂成分との間のナノオーダーの無数の界面に、膨潤液又は粗化液が浸透するとともに、エポキシ系樹脂とシリカ成分との界面にも、膨潤液又は粗化液が浸透するためと推定される。ただし、シリカ成分が脱離しやすくなするメカニズムは、明らかではない。
【0155】
上記有機化層状珪酸塩とは、例えば、スメクタイト系粘土鉱物、膨潤性マイカ、バーミキュライト又はハロイサイト等の層状珪酸塩が有機化処理された有機化層状珪酸塩が挙げられる。有機化層状珪酸塩は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0156】
上記スメクタイト系粘土鉱物としては、モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト、バイデライト、スティブンサイト又はノントロナイト等が挙げられる。
【0157】
上記有機化層状珪酸塩として、モンモリロナイト、ヘクトライト及び膨潤性マイカからなる群より選択される少なくとも1種の層状珪酸塩が有機化処理された有機化層状珪酸塩が好適に用いられる。
【0158】
エポキシ系樹脂及び硬化剤の合計100重量部に対して、上記有機化層状珪酸塩は0.01〜2重量部の範囲内で含有されることが好ましい。上記有機化層状珪酸塩の含有量が少なすぎると、シリカ成分を脱離しやすくする効果が不足することがある。上記有機化層状珪酸塩の含有量が多すぎると、膨潤液又は粗化液の浸透する界面が多くなりすぎて、粗化処理された硬化体の表面粗さが比較的大きくなる。特に、エポキシ系樹脂組成物が封止剤用途に用いられる場合には、有機化層状珪酸塩の含有量が多すぎると、膨潤液又は粗化液の浸透速度が早くなるため、粗化処理により硬化体の表面粗さが変化する速度が速すぎて、膨潤処理又は粗化処理の処理時間を充分に確保できないことがある。
【0159】
なお、エポキシ系樹脂及び硬化剤の合計100重量部に対する有機化層状珪酸塩の含有量が2重量部を超えると、粗化処理された硬化体の表面粗さが比較的大きくなりやすい。
【0160】
なお、有機化層状珪酸塩を用いなかった場合には、粗化処理された硬化体の表面粗さはより一層小さくなる。シリカ成分と有機化層状珪酸塩の配合比率の調整により、粗化処理された硬化物の表面粗さを制御できる。
【0161】
エポキシ系樹脂及び硬化剤の合計100重量部に対して、上記シリカ成分が25〜400重量部の範囲内、かつ上記有機化層状珪酸塩が0.1〜2重量部の範囲内で含有されていることが好ましい。この場合には、エポキシ系樹脂組成物の硬化物により形成された基板を、炭酸ガスレーザーなどのレーザーにより穿孔加工した際に、エポキシ系樹脂、硬化剤及び有機化層状珪酸塩が同時に分解し、蒸発しやすい。このため、部分的に残存する樹脂由来成分の量や有機化層状珪酸塩の残渣を極めて少なくすることができる。従って、例えば、デスミア処理する場合、デスミア処理を複数回又は複数種を組み合わせて行わなくても、残存している有機化層状珪酸塩の残渣を容易に除去できる。よって、穿孔加工により残渣が生じ難く、従って、めっき不良等を抑制できる。
【0162】
なお、上記デスミア処理は、公知の方法を用いることができる。上記デスミア処理は、例えばプラズマ処理法又は薬液処理法等を用いることができる。
【0163】
(マレイミド化合物)
本発明のエポキシ系樹脂組成物は、マレイミド化合物を含有することが好ましい。
【0164】
上記マレイミド化合物は、1分子中に1個以上のマレイミド基を有する化合物であれば特に限定されない。上記マレイミド化合物としては、例えば、N−フェニルマレイミド、N−ヒドロキシフェニルマレイミド、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)−フェニル]プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5−ジエチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ポリフェニルメタンマレイミド、これらマレイミド化合物のプレポリマー、もしくはマレイミド化合物とアミン化合物のプレポリマーなどが挙げられる。上記マレイミド化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0165】
上記マレイミド化合物として、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン又はポリフェニルメタンマレイミドが好適に用いられる。
【0166】
上記マレイミド化合物の市販品としては、商品名「BMI−1000」のビス(4−マレイミドフェニル)メタン(4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド)、商品名「BMI−2000」のポリフェニルメタンマレイミド(フェニルメタンマレイミドのオリゴマー)、及び商品名「BMI−5100」のビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン(以上いずれも大和化成工業社製)、並びに商品名「BMI」のビス(4−マレイミドフェニル)メタン(4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド)、商品名「BMI−70」のビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、及び商品名「BMI−80」の2,2’−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン(以上いずれもケイ・アイ化成社製)等が挙げられる。
【0167】
上記マレイミド化合物の使用により、硬化物の熱膨張特性、吸湿時の耐熱性及び難燃性、並びに硬化体に対する金属箔の引き剥がし強さをより一層高めることができる。
【0168】
エポキシ系樹脂組成物100重量%中、上記マレイミド化合物の含有量は2〜45重量%の範囲内であることが好ましい。エポキシ系樹脂組成物100重量%中の上記マレイミド化合物の含有量のより好ましい下限は5重量%であり、より好ましい上限は25重量%である。マレイミド化合物の含有量が少なすぎると、マレイミド化合物の添加効果が充分に得られないことがある。マレイミド化合物の含有量が多すぎると、粗化処理された硬化体の表面粗さが大きくなったり、硬化物の引張強度又は伸びが低下したり、エポキシ系樹脂組成物又はシート状成形体のハンドリング性が低下したりすることがある。
【0169】
(添加され得る他の成分)
本発明に係るエポキシ系樹脂組成物は、上記エポキシ系樹脂に加えて、必要に応じて、該エポキシ系樹脂と共重合可能な樹脂を含有していてもよい。
【0170】
上記共重合可能な樹脂は特に限定されない。上記共重合可能な樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル樹脂又はベンゾオキサジン樹脂等が挙げられる。上記共重合可能な樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0171】
上記熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル樹脂の具体例としては、エポキシ基、イソシアネート基又はアミノ基などの官能基により、ポリフェニレンエーテル樹脂を変性させた樹脂等が挙げられる。上記熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0172】
エポキシ基によりポリフェニレンエーテル樹脂を変性させた硬化型変性ポリフェニレンエーテル樹脂の市販品としては、例えば、三菱ガス化学社製の商品名「OPE−2Gly」等が挙げられる。
【0173】
上記ベンゾオキサジン樹脂は特に限定されない。上記ベンゾオキサジン樹脂の具体例としては、メチル基、エチル基、フェニル基、ビフェニル基もしくはシクロヘキシル基などのアリール基骨格を有する置換基がオキサジン環の窒素に結合された樹脂、又はメチレン基、エチレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフタレン基もしくはシクロヘキシレン基などのアリーレン基骨格を有する置換基が2つのオキサジン環の窒素間に結合された樹脂等が挙げられる。上記ベンゾオキサジン樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。ベンゾオキサジン樹脂とエポキシ系樹脂との反応により、硬化物の耐熱性を高くしたり、吸水性及び線膨張率を低くしたりすることができる。
【0174】
なお、ベンゾオキサジンモノマーもしくはオリゴマー、又はベンゾオキサジンモノマーもしくはオリゴマーがオキサジン環の開環重合によって高分子量化された樹脂は、上記ベンゾオキサジン樹脂に含まれる。
【0175】
本発明に係るエポキシ系樹脂組成物には、必要に応じて、熱可塑性樹脂類、エポキシ系樹脂以外の熱硬化性樹脂類、熱可塑性エラストマー類、架橋ゴム、オリゴマー類、無機化合物、造核剤、酸化防止剤、老化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、難燃助剤、シランカップリング剤、帯電防止剤、防曇剤、充填剤、軟化剤、可塑剤又は着色剤等の添加剤が添加されてもよい。これらの添加剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0176】
上記熱可塑性樹脂類の具体例としては、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂又はフェノキシ樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂類は、1種のみが用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0177】
上記熱硬化性樹脂類としては、ポリビニルベンジルエーテル樹脂、又は二官能ポリフェニレンエーテルオリゴマーとクロロメチルスチレンとの反応による得られる反応生成物等が挙げられる。上記二官能ポリフェニレンエーテルオリゴマーとクロロメチルスチレンとの反応による得られる反応生成物の市販品としては、三菱ガス化学社製の商品名「OPE−2St」等が挙げられる。上記熱硬化性樹脂類は、1種のみが用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0178】
上記熱可塑性樹脂類又は上記熱硬化性樹脂類を用いる場合、上記エポキシ系樹脂組成物100重量部に対して、上記熱可塑性樹脂類又は上記熱硬化性樹脂類は0.5〜50重量部の範囲内で含有されることが好ましく、1〜20重量部の範囲内で含有されることがより好ましい。熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂の含有量が少なすぎると、硬化物の伸びや靭性が充分に高められないことがあり、多すぎると、硬化物の強度が低下することがある。
【0179】
銅箔などの他の部材との接着性を高める目的で、上記シランカップリング剤をエポキシ系樹脂組成物に添加してもよい。
【0180】
(エポキシ系樹脂組成物)
本発明に係るエポキシ系樹脂組成物の製造方法は、特に限定されない。エポキシ系樹脂組成物の製造方法としては、例えば、上記エポキシ系樹脂と、上記硬化剤と、上記シリカ成分と、必要に応じて配合される有機化層状珪酸塩等とを、溶剤に添加した後、乾燥し、溶剤を除去する方法等が挙げられる。
【0181】
本発明に係るエポキシ系樹脂組成物は、例えば適当な溶媒に溶解された後、用いられてもよい。
【0182】
本発明に係るエポキシ系樹脂組成物の用途は、特に限定されない。エポキシ系樹脂組成物は、例えば、多層基板のコア層やビルドアップ層等を形成する基板用材料、接着シート、積層板、樹脂付き銅箔、銅張積層板、TAB用テープ、プリント基板、プリプレグ又はワニス等に好適に用いられる。
【0183】
また、本発明に係るエポキシ系樹脂組成物を用いることにより、粗化処理された硬化体の表面に微細な孔を形成できる。このため、硬化体の表面に微細な配線を形成することができ、かつ該配線における信号伝送速度を速くすることができる。従って、エポキシ系樹脂組成物は、樹脂付き銅箔、銅張積層板、プリント基板、プリプレグ、接着シート又はTAB用テープなどの絶縁性を要求される用途に好適に用いられる。
【0184】
硬化物の表面に導電性めっき層を形成した後に回路を形成するアディティブ法や、セミアディティブ法などによって硬化物と導電性めっき層とを複数積層するビルドアップ基板等に、本発明のエポキシ系樹脂組成物はより好適に用いられる。この場合には、導電性めっき層と硬化物との接合信頼性を高めることができる。また、粗化処理された硬化体の表面に形成されたシリカ成分の抜けた穴が小さいため、パターン間の絶縁信頼性を高めることができる。さらに、シリカ成分の抜けた穴の深さが浅いため、層間の絶縁信頼性を高めることができる。よって、信頼性の高い微細な配線を形成できる。
【0185】
本発明に係るエポキシ系樹脂組成物は、封止用材料又はソルダーレジスト等にも用いることができる。また、硬化体の表面に形成された配線の高速信号伝送性能を高めることができるため、高い高周波特性が要求される、パッシブ部品又はアクティブ部品が内蔵される部品内蔵基板等にも、本発明のエポキシ系樹脂組成物を用いることができる。
【0186】
(プリプレグ)
本発明に係るプリプレグは、上記エポキシ系樹脂組成物が多孔質基材に含浸されているプリプレグである。
【0187】
上記多孔質基材は、上記エポキシ系樹脂組成物を含浸させることができれば、特に限定されない。上記多孔質基材としては、有機繊維又はガラス繊維等が挙げられる。上記有機繊維としては、カーボン繊維、ポリアミド繊維、ポリアラミド繊維又はポリエステル繊維等が挙げられる。また、多孔質基材の形態としては、平織りもしくは綾織りなどの織物の形態、又は不織布の形態等が挙げられる。上記多孔質基材は、ガラス繊維不織布であることが好ましい。
【0188】
(硬化体)
本発明のエポキシ系樹脂組成物又は該エポキシ系樹脂組成物が多孔質基材に含浸されているプリプレグを予備硬化(半硬化)させることにより、硬化物を得ることができる。得られた硬化物を粗化処理することにより、硬化体を得ることができる。
【0189】
得られた硬化物は、一般に、Bステージと呼ばれる半硬化状態である。本明細書において、「硬化物」には、半硬化物から、完全な硬化状態である硬化物までの範囲を意味する。
【0190】
本発明の硬化体は、具体的には、以下のようにして得られる。
【0191】
金属層が形成される硬化物の表面に微細な凹凸を形成するために、上記エポキシ系樹脂組成物又は上記プリプレグを予備硬化させ、硬化物を得る。適度に予備硬化させるためには、上記エポキシ系樹脂組成物又は上記プリプレグを130〜190℃で30分以上加熱し、硬化させることが好ましい。
【0192】
予備硬化温度が130℃よりも低いと、エポキシ系樹脂組成物が充分に硬化されないため、粗化処理後の硬化体の表面の凹凸が大きくなる。予備硬化温度が190℃よりも高いと、エポキシ系樹脂組成物の硬化反応が急速に進行しやすい。このため、硬化度が部分的に異なりやすく、粗い部分と密な部分とが形成されやすい。その結果、粗化処理後の硬化体の表面の凹凸が大きくなる。予備硬化時間が30分よりも短いと、エポキシ系樹脂組成物が充分に硬化されないため、粗化処理後の硬化体の表面の凹凸が大きくなる。生産性を高めることができるので、予備硬化時間は、1時間以下であることが好ましい。
【0193】
得られた硬化物の表面に微細な凹凸を形成するために、硬化物が粗化処理される。該粗化処理される前に、硬化物が膨潤処理されることが好ましい。ただし、硬化物は、必ずしも膨潤処理されなくてもよい。
【0194】
上記膨潤処理方法としては、例えば、エチレングリコールなどを主成分とする化合物の水溶液又は有機溶媒分散溶液などにより、硬化物を処理する方法が用いられる。具体的には、上記膨潤処理は、40重量%エチレングリコール水溶液等を用いて、処理温度30〜85℃で1〜20分間、硬化物を処理することにより行なわれる。
【0195】
上記粗化処理には、例えば、マンガン化合物、クロム化合物又は過硫酸化合物などの化学酸化剤等が用いられる。これらの化学酸化剤は、水又は有機溶剤が添加された後、水溶液又は有機溶媒分散溶液として用いられる。
【0196】
上記マンガン化合物としては、過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウム等が挙げられる。上記クロム化合物としては、重クロム酸カリウム又は無水クロム酸カリウム等が挙げられる。上記過硫酸化合物としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム又は過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
【0197】
上記粗化処理方法は特に限定されない。上記粗化処理方法として、例えば、30〜90g/L過マンガン酸又は過マンガン酸塩溶液及び30〜90g/L水酸化ナトリウム溶液を用いて、処理温度30〜85℃及び1〜10分間の条件で、1回又は2回、硬化物を処理する方法が好適である。粗化処理の回数が多いと粗化効果も大きい。しかしながら、粗化処理の回数が3回を超えると、粗化効果が飽和することがあり、又は硬化体の表面の樹脂成分が必要以上に削られて、硬化体の表面にシリカ成分が脱離した形状の孔が形成されにくくなる。
【0198】
図1に、本発明の一実施形態に係るエポキシ系樹脂組成物の硬化物が粗化処理された硬化体の表面を模式的に部分切欠正面断面図で示す。
【0199】
図1に示すように、硬化体1の表面1aに、シリカ成分の脱離により形成された孔1bが形成されている。
【0200】
本発明に係るエポキシ系樹脂組成物では、上記シリカ粒子が上記特定のシランカップリング剤により表面処理されているシリカ成分が含有されているため、シリカ成分の分散性に優れている。従って、粗化処理された硬化体1には、シリカ成分の凝集物の脱離による大きな孔が形成され難い。よって、硬化体1の強度が局所的に低下し難く、硬化体と金属層との接着強度を高めることができる。また、硬化体1の線膨張率を低くするために、シリカ成分をエポキシ系樹脂組成物に多く配合することができ、シリカ成分を多く配合しても、硬化体1の表面に微細な複数の孔1bを形成できる。ただし、孔1bは、シリカ成分が数個程度、例えば2〜10個まとまって脱離した孔であってもよい。
【0201】
また、シリカ成分の脱離により形成された孔1bの近傍では、図1に矢印Aを付して示す部分の樹脂成分が必要以上に多く削られていない。特に、ビフェニル構造を有するフェノール化合物、芳香族多価エステル化合物又はベンゾオキサジン構造を有する化合物を硬化剤として用いた場合に、シリカ成分の脱離により形成された孔1bの表面では、樹脂成分が比較的多く削られやすい。しかし、上記シリカ粒子が上記特定のシランカップリング剤により処理されたシリカ成分を用いた場合には、ビフェニル構造を有するフェノール化合物、芳香族多価エステル化合物又はベンゾオキサジン構造を有する化合物を硬化剤として用いても、樹脂成分が必要以上に多く削られない。このため、硬化体1の強度を高めることができる。
【0202】
上記のようにして得られた硬化体の粗化処理された表面の算術平均粗さRaは0.3μm以下であり、かつ十点平均粗さRzは3.0μm以下であることが好ましい。上記粗化処理された表面の算術平均粗さRaは0.2μm以下であることがより好ましい。上記粗化処理された表面の十点平均粗さRzは、2.0μm以下であることがより好ましい。上記算術平均粗さRaが大きすぎると、硬化体の表面に配線が形成された場合に、該配線における電気信号の伝送速度を高速化できないことがある。上記十点平均粗さRzが大きすぎると、硬化体の表面に配線が形成された場合に、該配線における電気信号の伝送速度を高速化できないことがある。算術平均粗さRa及び十点平均粗さRzは、JIS B0601−1994に準拠した測定法により求めることができる。
【0203】
硬化体の表面に形成された複数の孔の平均径は、5μm以下であることが好ましい。
複数の孔の平均径が5μmより大きいと、硬化体の表面にL/Sが小さい配線を形成することが困難なことがあり、かつ形成された配線間が短絡しやすくなる。
【0204】
上記粗化処理された硬化体には、必要に応じて、公知のめっき用触媒を施したり、無電解めっきを施したりした後、電解めっきを施すことができる。これにより、硬化体の表面に金属層としてのめっき層を形成できる。
【0205】
図2に、粗化処理された上記硬化体1の表面に、めっき処理により金属層2が形成された状態を示す。図2に示すように、金属層2は、硬化体1の表面1aに形成された微細な孔1b内に至っている。従って、物理的なアンカー効果により、硬化体1と金属層2との接着強度を高めることができる。また、シリカ成分の脱離により形成された孔1bの近傍では、樹脂成分が必要以上に多く削られていないため、硬化体1と金属層2との接着強度を高めることができる。
【0206】
上記シリカ成分の平均粒子径が小さいほど、硬化体1の表面に微細な凹凸を形成できる。平均粒子径が1μmのシリカ粒子がシランカップリング剤により表面処理されているシリカ成分が用いられているため、孔1bを小さくすることができ、従って、硬化体1の表面に微細な凹凸を形成できる。このため、回路の配線の微細度合いを示すL/Sを小さくすることができる。
【0207】
L/Sが小さい銅等の配線を硬化体1の表面に形成した場合、配線の信号処理速度を高めることができる。例えば、信号が5GHz以上の高周波であっても、硬化体1の表面粗さが小さいので、硬化体1と金属層2との界面での電気信号の損失を小さくすることができる。
【0208】
L/Sが、65μm/65μmよりも小さい場合、特にL/Sが45μm/45μmよりも小さい場合、シリカ粒子の平均粒子径は、5μm以下であることが好ましく、2μm以下であることが好ましい。また、L/Sが13μm/13μmよりも小さい場合、シリカ粒子の平均粒子径は2μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましい。
【0209】
本発明に係るエポキシ系樹脂組成物では、平均粒子径が1μm以下のシリカ粒子が上記シランカップリング剤により表面処理されているシリカ成分が含有されているため、表面粗さのばらつきが小さく、例えば、L/Sが13μm/13μm程度の微細な配線を、硬化体の表面に形成できる。また、配線間の短絡を生じることなく、L/Sが10μm/10μm以下の微細な配線を、硬化体の表面に形成できる。このような配線が形成された硬化体では、安定的に、かつ小さい損失で、電気信号を伝送することができる。
【0210】
上記金属層を形成する材料として、シールド用もしくは回路形成用などに用いられる金属箔もしくは金属めっき、又は回路保護用に用いるめっき用材料を使用できる。
【0211】
上記めっき材料としては、例えば、金、銀、銅、ロジウム、パラジウム、ニッケル又は錫などが挙げられる。これらの2種類以上の合金を用いてもよく、また、2種類以上のめっき材料により複数層の金属層を形成してもよい。さらに、目的に応じて、めっき材料には、上記金属以外の他の金属又は物質が含有されてもよい。
【0212】
(シート状成形体、積層板及び多層積層板)
本発明に係るシート状成形体は、上記エポキシ系樹脂組成物、上記プリプレグ、又は上記エポキシ系樹脂組成物もしくは上記プリプレグを硬化させた硬化体が、シート状に成形されているシート状成形体である。
【0213】
なお、本明細書において、「シート」は、厚さや幅に限定されず、板状の形状を意味するものであり、シートにはフィルムも含まれる。「シート状成形体」には、接着性シートが含まれる。
【0214】
上記エポキシ系樹脂組成物をシート状に成形する方法としては、例えば、押出機を用いて、エポキシ系樹脂組成物を溶融混練し、押出した後、Tダイやサーキュラーダイ等により、フィルム状に成形する押出成形法、エポキシ系樹脂組成物を有機溶剤等の溶媒に溶解又は分散させた後、キャスティングしてフィルム状に成形するキャスティング成形法、又は従来公知のその他のシート成形法等が挙げられる。なかでも、薄型化を進めることができるので、押出成形法又はキャスティング成形法が好ましい。
【0215】
本発明に係る積層板は、上記シート状成形体と、該シート状成形体の少なくとも片面に積層されている金属層とを備える。
【0216】
本発明に係る多層積層板は、積層された複数の上記シート状成形体と、該シート状成形体の間に配置された少なくとも1つの金属層とを備える。多層基板は、最表層のシート状成形体の外側の表面に積層された金属層がさらに備えていてもよい。
【0217】
上記積層板のシート状成形体には、少なくとも一部の領域に接着層が配置されていてもよい。また、多層積層板の積層されたシート状成形体には、少なくとも一部の領域に接着層が配置されていてもよい。
【0218】
上記積層板又は多層積層板の金属層は、回路として形成されていることが好ましい。この場合には、シート状成形体と金属層との接着強度が高いため、回路の信頼性を高めることができる。
【0219】
図3に本発明の一実施形態に係るエポキシ系樹脂組成物を用いた多層積層板を模式的に部分切欠正面断面図で示す。
【0220】
図3に示す多層積層板11では、基板12の上面12aに、複数の硬化体13〜16が積層されている。最上層の硬化体16以外の硬化体13〜15には、上面の一部の領域に金属層17が形成されている。すなわち、積層された硬化体13〜16の各層間に、金属層17がそれぞれ配置されている。下方の金属層17と上方の金属層17とは、図示しないビアホール接続及びスルーホール接続の内の少なくとも一方により互いに接続されている。
【0221】
多層積層板11では、硬化体13〜16が、本発明の一実施形態に係るエポキシ系樹脂組成物をシート状に成形することにより得られたシート状成形体を、硬化させることにより形成されている。このため、硬化体13〜16の表面には、図示しない微細な孔が形成されている。また、微細な孔の内部に金属層17が至っている。従って、硬化体13〜16と金属層17との接着強度を高めることができる。また、多層積層板11では、金属層17の幅方向寸法(L)と、金属層17が形成されていない部分の幅方向寸法(S)とを小さくすることができる。
【0222】
なお、搬送の補助、ごみの付着又は傷の防止等を目的として、上述したシート状成形体又は積層板の表面には、フィルムが積層されてもよい。
【0223】
上記フィルムとしては、樹脂コート紙、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム又はポリプロピレン(PP)フィルム等が挙げられる。これらのフィルムは、必要に応じて、離型性を高めるために離型処理されていてもよい。
【0224】
上記離型処理の方法としては、シリコン系化合物、フッ素系化合物もしくは界面活性剤等を上記フィルム中に含有させる方法、上記フィルムの表面に凹凸を付与する方法、又はシリコン系化合物、フッ素系化合物もしくは界面活性剤等の離型性を有する物質を上記フィルムの表面に塗布する方法等が挙げられる。上記フィルムの表面に凹凸を付与する方法としては、上記フィルムの表面にエンボス加工などを施す方法等が挙げられる。
【0225】
上記フィルムを保護するために、樹脂コート紙、ポリエステルフィルム、PETフィルム、PPフィルムなどの保護フィルムが上記フィルムに積層されていてもよい。
【0226】
以下、実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0227】
実施例及び比較例では、以下に示す材料を用いた。
【0228】
(エポキシ系樹脂)
(1)ビフェニル系エポキシ樹脂(日本化薬社製、商品名「NC−3000H」、重量平均分子量2070、エポキシ等量288、上記式(8)で表されるエポキシ系樹脂に相当する)
(2)ビスフェノールA型エポキシ樹脂(東都化成社製、商品名「RE−410S」、重量平均分子量約350)
(3)アントラセン骨格含有エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名「YX8800」、エポキシ当量181)
(4)ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂(DIC社製、商品名「HP-4032」、エポキシ当量152)
(5)アダマンタン骨格含有エポキシ樹脂(出光興産社製、商品名「アダマンテートX−E−202」、エポキシ当量193)
(6)トリアジン骨格含有エポキシ樹脂(日産化学工業社製、商品名「TEPIC−PAS B22」、エポキシ当量180〜200)
【0229】
(硬化剤)
(1)フェノール系硬化剤(明和化成社製、商品名「MEH7851−4H」、重量平均分子量約10200、軟化点120℃以上、上記式(7)で表されるフェノール化合物に相当する)
(2)αナフトール型フェノール硬化剤(東都化成社製、商品名「SN−475」、軟化点75℃)
(3)ジシクロペンタジエン型フェノール硬化剤(DCPD系硬化剤、新日本石油社製、商品名「DPP−6125」、軟化点120℃)
(4)アミノトリアジンノボラックフェノール型硬化剤(DIC社製、商品名「LA−1356」、固形分60重量%MEK(メチルケチルケトン)溶液)
(5)活性エステル化合物型硬化剤:
活性エステル化合物型硬化剤(DIC社製、商品名「EXB−9451−65T」、ポリスチレン換算での重量平均分子量2840、固形分65重量%トルエン溶液)を100℃以上で加熱乾燥し、固形分100重量%としたもの
【0230】
(硬化促進剤)
(1)イミダゾール(四国化成工業社製、商品名「2PN−CN」)
【0231】
(有機化層状珪酸塩)
トリオクチルメチルアンモニウム塩で化学処理された合成ヘクトライト(コープケミカル社製、商品名「ルーセンタイトSTN」)
【0232】
(マレイミド)
ポリフェニルメタンマレイミド(大和化成工業社製、商品名「BMI−2300」)
【0233】
(溶剤)
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF、特級、和光純薬社製)
【0234】
(シリカ粒子)
シリカ粒子(平均粒径0.3μm、最大粒子径5μm、比表面積18m/g)
【0235】
(シランカップリング剤)
シランカップリング剤(1)アミノシラン(信越化学工業社製、商品名「KBE−903」)
シランカップリング剤(2)メルカプトシラン(信越化学工業社製、商品名「KBM−803」)
シランカップリング剤(3)イソシアネートシラン(信越化学工業社製、商品名「KBP−44」)
シランカップリング剤(4)酸無水物基を有するシラン化合物(信越化学工業社製、商品名「X−12−967」)
シランカップリング剤(5)イソシアヌル酸基を有するシラン化合物(信越化学工業社製、商品名「X−12−965」)
シランカップリング剤(6)イミダゾールシラン(日鉱金属社製、商品名「IM-1000」)
シランカップリング剤(7)ビニルシラン(信越化学工業社製、商品名「KBM-1003」)
【0236】
(シリカ粒子のシランカップリング剤による処理方法)
上記シリカ粒子(平均粒子径0.3μm、最大粒子径5μm)100重量部と、シランカップリング剤(1)アミノシラン(信越化学工業社製、商品名「KBE−903」)4重量部と、エタノール100重量部とを混合し、60℃で1時間撹拌した後、揮発成分を留去した。続いて、減圧乾燥機により100℃で6時間乾燥することにより、アミノシラン処理されたシリカ成分(1)を得た。得られたシリカ成分(1)をシリカ成分の濃度が50重量%になるようにDMFに加え、ビーズミルにて分散させ、アミノシランにより表面処理されたシリカ成分(1)を含むシリカスラリー(1)(シリカ成分(1)50重量%とDMF50重量%とを含む)を得た。
【0237】
また、上記シランカップリング剤(1)を、上記シランカップリング剤(2)〜(7)に変更したこと以外は上記シリカ成分(1)の処理方法と同様の処理方法により、メルカプトシランにより表面処理されたシリカ成分(2)、イソシアネートシランにより表面処理されたシリカ成分(3)、酸無水物基を有するシラン化合物により表面処理されたシリカ成分(4)、イソシアヌル酸基を有するシラン化合物により表面処理されたシリカ成分(5)、イミダゾールシランにより表面処理されたシリカ成分(6)及びビニルシランにより表面処理されたシリカ成分(7)を含むシリカスラリー(2)〜(7)(シリカ成分(2)〜(7)50重量%とDMF50重量%とを含む)を得た。
【0238】
(実施例1)
シリカスラリー(1)46.40g及びDMF10.02gを混合し、均一な溶液となるまで常温で6時間攪拌した。その後、イミダゾール「2PZ−CN」0.21gを添加し、常温で1時間攪拌した。
【0239】
次に、エポキシ系樹脂としてのビスフェノールA型エポキシ樹脂「RE−410S」19.52gを加え、常温で1時間攪拌した。次いで、硬化剤としてのαナフトール型フェノール硬化剤「SN−475」23.35gを上記溶液に添加し、常温で2時間攪拌して、エポキシ系樹脂組成物を調製した。
【0240】
(実施例2〜21及び比較例1〜4)
使用した材料の種類及び配合量を下記の表1〜5に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、エポキシ系樹脂組成物を調製した。なお、マレイミド化合物が含まれている場合には、上記硬化剤の添加の際に、マレイミド化合物を添加した。
【0241】
(樹脂シートの未硬化物の作製)
離型処理された透明なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名「PET5011 550」、厚み50μm、リンテック社製)を用意した。このPETフィルム上にアプリケーターを用いて、乾燥後の厚みが50μmとなるように、得られた実施例及び比較例のエポキシ系樹脂組成物を塗工した。次に、100℃のギアオーブン内で12分間乾燥して、200mm×200mmの面積を有する厚み50μmの樹脂シートの未硬化物を作製した。作製した樹脂シートの未硬化物を用いて、以下の硬化体A、樹脂シートの半硬化物及び硬化体Bを作製した。
【0242】
(硬化体Aの作製)
ガラスエポキシ基板上に、銅厚みが25μm、パターン長が3cm、かつL/S=75μm/75μmのパターンが10本形成された回路基板を用意した。この回路基板上に、得られた樹脂シートの未硬化物を、真空ラミネートした。真空ラミネートに際し、真空ラミネータ(名機製作所社製、MVLP−500)を用いて、90℃、0.6MPa、真空40秒及び加圧40秒のラミネート条件によりラミネートした。なお、後述の真空ラミネートの際にも、同様の条件によりラミネートした。その後、樹脂シートの未硬化物を150℃で1時間予備硬化させ、樹脂シートの未硬化物が半硬化した半硬化体A1と回路基板とからなる積層体Aを得た。
【0243】
その後、得られた積層体Aの半硬化体A1の表面を、下記の(a)膨潤処理をした後、下記の(b)過マンガン酸塩処理すなわち粗化処理をし、さらに下記の(c)銅めっき処理をした。
【0244】
(a)膨潤処理:
積層体Aを80℃の膨潤液(スウェリングディップセキュリガントP、アトテックジャパン社製)に入れて、10分間揺動した。その後、純水で洗浄した。
【0245】
(b)過マンガン酸塩処理(粗化処理):
膨潤処理された積層体Aを80℃の過マンガン酸カリウム(コンセントレートコンパクトCP、アトテックジャパン社製)粗化水溶液に入れて、20分間揺動した。その後、25℃の洗浄液(リダクションセキュリガントP、アトテックジャパン社製)により2分間洗浄し、純水でさらに洗浄した。表面が粗化処理された半硬化体A2を得た。
【0246】
(c)銅めっき処理:
次に、粗化処理された半硬化体A2を以下の手順で無電解銅めっき及び電解銅めっき処理を行った。
【0247】
粗化処理された半硬化体A2を60℃のアルカリクリーナ(クリーナーセキュリガント902)で5分間処理し、脱脂洗浄した。次に25℃のプリディップ液(プリディップネオガントB)で2分間処理した。その後、40の℃のアクチベーター液(アクチベーターネオガント834)で5分間処理し、パラジウム触媒を付けた。更に、30℃の還元液(リデューサーネオガントWA)により、5分間処理した。
【0248】
次に、半硬化体A2を化学銅液(ベーシックプリントガントMSK−DK、カッパープリントガントMSK、スタビライザープリントガントMSK)に入れ、無電解めっきをめっき厚さが0.5μm程度になるまで実施した。無電解めっき後に、残留している水素ガスを除去するため、120℃の温度で30分間アニールをかけた。無電解めっきの工程までのすべての工程は、ビーカースケールで処理液を1Lとし、半硬化体A2を揺動しながら実施した。
【0249】
続いて、無電解めっき処理された半硬化体A2に、電解めっきをめっき厚さが25μmとなるように処理した。電気銅めっきとして硫酸銅(リデューサーCu)を用いて、0.6A/cmの電流を流した。銅めっき処理後、170℃で1時間加熱し、硬化させ、銅めっき層が形成された硬化体Aを得た。
【0250】
(樹脂シートの半硬化物の作製)
得られた樹脂シートの未硬化物を170℃のギアオーブン内で1時間加熱して、樹脂シートの半硬化物を作製した。
【0251】
(硬化体Bの作製)
得られた樹脂シートの未硬化物を170℃のギアオーブン内で1時間加熱して、樹脂シートの半硬化物を得た。得られた樹脂シートの半硬化物を170℃で1時間加熱し、硬化させ、硬化体Bを得た。
【0252】
(評価)
(1)誘電率及び誘電正接
得られた上記樹脂シートの半硬化物を8枚重ね合わせて、真空ラミネートした後、厚み400μmの積層体を得た。その後、170℃で1時間硬化し、15mm×15mmの平面形状に裁断し積層体の硬化体である積層体Bを得た。誘電率測定装置(品番「HP4291B」、HEWLETT PACKARD社製)を用いて、周波数1GHzにおける常温(23℃)での積層体Bの誘電率及び誘電正接を測定した。
【0253】
(2)平均線膨張率
得られた上記硬化体Bを、3mm×25mmの平面形状に裁断した。線膨張率計(品番「TMA/SS120C」、セイコーインスツルメンツ社製)を用いて、引っ張り荷重2.94×10−2N、昇温速度5℃/分の条件で、裁断された硬化体Bの23〜100℃における平均線膨張率(α1)、及び150〜260℃における平均線膨張率(α2)を測定した。
【0254】
(3)ガラス転移温度(Tg)
得られた上記硬化体Bを5mm×3mmの平面形状に裁断した。粘弾性スペクトロレオメーター(品番「RSA−II」、レオメトリック・サイエンティフィックエフ・イー社製)を用いて、昇温速度5℃/分の条件で、30から250℃まで裁断された硬化体Bの損失率tanδを測定し、損失率tanδが最大値になる温度(ガラス転移温度Tg)を求めた。
【0255】
(4)破断強度及び破断点伸度
得られた上記樹脂シートの半硬化物を2枚積層し、170℃で1時間加熱し硬化させ、10×80mmの平面形状に裁断し、厚み100μmの試験サンプルを得た。引張試験機(商品名「テンシロン」、オリエンテック社製)を用いて、チャック間距離60mm、クロスヘッド速度5mm/分の条件で引張試験を行い、試験サンプルの破断強度(MPa)および破断伸び率(%)を測定した。
【0256】
(5)粗化接着強度
得られた上記銅めっき層が形成された硬化体Aの銅めっき層の表面に10mm幅に切り欠きを入れた。その後、引張試験機(商品名「オートグラフ」、島津製作所社製)を用いて、クロスヘッド速度5mm/分の条件で、銅めっき層と硬化体との接着強度を測定し、得られた測定値を粗化接着強度とした。
【0257】
(6)算術平均粗さRa及び十点平均粗さRz
非接触式の表面粗さ計(商品名「WYKO」、ビーコ社製)を用いて、粗化処理された上記半硬化体A2の粗化処理された表面の算術平均粗さRa及び十点平均粗さRzを測定した。算術平均粗さRa及び十点平均粗さRzはともにJIS B 0601−1994に従った。
【0258】
(7)銅接着強度
CZ処理銅箔(CZ−8301、メック社製)に、樹脂シートの半硬化物を真空ラミネートし、170℃で1時間加熱し、硬化させ、銅箔付きの硬化体Cを得た。その後、銅箔の表面に10mm幅に切り欠きを入れた。引張試験機(商品名「オートグラフ」、島津製作所社製)を用いて、クロスヘッド速度5mm/分の条件で、銅箔と硬化体との間の接着強度を測定し、測定された接着強度を銅接着強度とした。
【0259】
(8)体積抵抗率
100mm×100mmの平面形状に裁断した硬化体Bを、134℃、相対湿度100%RH、3atm及び2時間の各条件でプレッシャークッカーテスト(PCT)を行い、その後23℃及び相対湿度65%RHの環境下に1時間放置した。その後、高抵抗率計(商品名「ハイレスターUP」、三菱化学社製)にJボックスUタイプを接続して、硬化体Bの体積抵抗率(Ω・cm)を測定した。
【0260】
(9)溶融粘度
直径25mm×1mmの大きさに打ち抜いた樹脂シートの半硬化物の溶融粘度を、レオメータ(商品名「AR−2000ex」、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)にて5℃/分の昇温速度、1Hz、歪み量22%の測定条件にて、23℃から180℃までの測定を行い、90℃における溶融粘度を求めた。
【0261】
(10)パターン埋込み性
積層体Aを切断し、研磨した後に断面観察を行い、パターン部分に樹脂が隙間なく埋め込まれているか否かを評価した。パターン部分に樹脂が隙間なく埋め込まれている場合を「○」、パターン部分に空隙がある場合を「×」とした。
【0262】
(11)ハンドリング性
得られた樹脂シートの半硬化物を幅25mm×長さ50mmの大きさに切り出し、5つの試験片を用意した。23℃及び相対湿度65%RHの環境下で、5つの試験片を180℃に折り曲げて、下記の評価基準でハンドリング性を評価した。
【0263】
〔ハンドリング性の評価基準〕
◎:5つの試験片が全て割れなかった
○:1つ以上の試験片が割れたものの、割れた試験片の中に粉状に割れた試験片はなかった
×:1つ以上の試験片が割れ、かつ割れた試験片の中に粉状に割れた試験片があった
結果を下記の表1〜5に示す。
【0264】
【表1】

【0265】
【表2】

【0266】
【表3】

【0267】
【表4】

【0268】
【表5】

【符号の説明】
【0269】
1…硬化体
1a…上面
1b…孔
2…金属層
11…多層積層板
12…基板
12a…上面
13〜16…硬化体
17…金属層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ系樹脂と、硬化剤と、シリカ粒子がシランカップリング剤により表面処理されているシリカ成分とを含有し、
前記エポキシ系樹脂及び前記硬化剤の合計100重量部に対して、前記シリカ成分を25〜400重量部の範囲内で含有し、
前記シリカ粒子の平均粒子径が1μm以下であり、
前記シランカップリング剤が、アミノ基を有するシラン化合物、メルカプト基を有するシラン化合物、イソシアネート基を有するシラン化合物、酸無水物基を有するシラン化合物及びイソシアヌル酸基を有するシラン化合物からなる群から選択された少なくとも1種である、エポキシ系樹脂組成物。
【請求項2】
前記エポキシ系樹脂、前記硬化剤及び前記シリカ成分の合計100重量%の内の15重量%〜80重量%が、23℃で液状である、請求項1に記載のエポキシ系樹脂組成物。
【請求項3】
前記エポキシ系樹脂100重量%中に、アントラセン骨格を有するエポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂、トリアジン骨格を有するエポキシ樹脂及びビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂からなる群から選択された少なくとも1種のエポキシ系樹脂を合計で2〜20重量%の範囲内で含む、請求項1または2に記載のエポキシ系樹脂組成物。
【請求項4】
前記硬化剤100重量%中に、ビフェニル構造を有するフェノール化合物、ナフタレン構造を有するフェノール化合物、ジシクロペンタジエン構造を有するフェノール化合物、アミノトリアジン構造を有するフェノール化合物及び活性エステル化合物からなる群から選択された少なくとも1種の硬化剤を合計で5〜100重量%の範囲内で含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のエポキシ系樹脂組成物。
【請求項5】
マレイミド化合物をさらに含有し、
前記マレイミド化合物の含有量が2〜45重量%の範囲内である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のエポキシ系樹脂組成物。
【請求項6】
前記シリカ粒子の最大粒子径が5μm以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のエポキシ系樹脂組成物。
【請求項7】
前記エポキシ系樹脂及び前記硬化剤の合計100重量部に対して、有機化層状珪酸塩を0.01〜2重量部の範囲内でさらに含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のエポキシ系樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のエポキシ系樹脂組成物が、多孔質基材に含浸されている、プリプレグ。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のエポキシ系樹脂組成物又は該エポキシ系樹脂組成物が多孔質基材に含浸されているプリプレグを加熱し、予備硬化させることにより得られた硬化物が粗化処理されている硬化体であって、
粗化処理された表面の算術平均粗さRaが0.3μm以下であり、かつ十点平均粗さRzが3.0μm以下である、硬化体。
【請求項10】
前記予備硬化の後、粗化処理される前に、前記硬化物が膨潤処理されている、請求項9に記載の硬化体。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のエポキシ系樹脂組成物、該エポキシ系樹脂組成物が多孔質基材に含浸されているプリプレグ、又は前記エポキシ系樹脂組成物もしくは前記プリプレグを硬化させることにより得られた硬化物が粗化処理されている硬化体が、シート状に成形されている、シート状成形体。
【請求項12】
請求項11に記載のシート状成形体と、該シート状成形体の少なくとも片面に積層されている金属層とを備える、積層板。
【請求項13】
前記金属層が、回路として形成されている、請求項12に記載の積層板。
【請求項14】
積層された複数の請求項11に記載のシート状成形体と、該シート状成形体の間に配置された金属層とを備える、多層積層板。
【請求項15】
最表層の前記シート状成形体の外側の表面に積層された金属層をさらに備える、請求項14に記載の多層積層板。
【請求項16】
前記金属層が、回路として形成されている、請求項14または15に記載の多層積層板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−53334(P2010−53334A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74853(P2009−74853)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】