説明

エンジンの制御装置

【課題】車載主機として回転機12のみを備えて且つ、この回転機12の電力供給源となるバッテリ14と、バッテリ14を充電する車載補機としての回転機16と、この回転機16の動力供給源となるエンジン18とを備えるレンジエクステンダ電動車両10において、車載機器の数を低減することのできるエンジン18の制御装置を提供する。
【解決手段】車両10には、燃焼室26に供給される吸気量を変更すべく、吸気バルブ36のバルブタイミングを「進角位置」又は「遅角位置」に切り替えるVCT装置42が備えられている。ここで、上記回転機16の発電電力が大きい大発電モード処理が行われる場合に「進角位置」に切り替え、上記発電電力が小さい小発電モード処理が行われる場合に「遅角位置」に切り替えるべく、VCT装置42を操作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載主機として主機回転機のみを備えて且つ、該主機回転機の電力供給源となるバッテリと、該バッテリを充電する補機回転機と、該補機回転機の動力供給源となるエンジンと、該エンジンの吸気バルブ特性を可変とするバルブ特性可変装置とを備える電動車両に適用されるエンジンの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車載主機としてエンジンを備える車両において、エンジンの燃焼制御処理として、エンジンの燃焼室に供給される吸気量を調節する処理が行われている。具体的には、例えば下記特許文献1に見られるように、エンジンの吸気通路上に設けられるスロットルバルブの開度を調節したり、バルブ特性可変装置の操作によって吸気バルブ特性(開閉タイミング、最大リフト量)を変更したりすることで、燃焼室に供給される吸気量を調節する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−291712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車載主機として、車載バッテリを電力供給源として駆動される回転機のみを備えて且つ、バッテリを充電する発電機と、この発電機の動力供給源となるエンジンとを備える電動車両であるいわゆるレンジエクステンダ車両(シリーズハイブリッド車両ともいう)の開発が進められている。
【0005】
詳しくは、この車両では、回転機を含む車載機器の駆動に起因してバッテリの蓄電量が不足する場合等に、エンジンを駆動させて発電機に発電させることで、バッテリを充電している。これにより、バッテリの蓄電量の不足を補ったり、車両の走行可能距離を拡大したりすることが可能となる。
【0006】
ここで、レンジエクステンダ電動車両において、発電機を駆動させない等、エンジンの燃焼制御処理が行われない状態においては、燃焼室に供給される吸気量を調節するために必要な車載機器は、必須のものではなくなる。このため、上記電動車両において、コスト低減を図る上では、吸気量の調節に用いる車載機器の数を低減しつつ、エンジンの燃焼制御処理を実行可能な構成とすることが望まれる。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、レンジエクステンダ電動車両において、燃焼室に供給される吸気量を調節するための車載機器の数を低減しつつ、エンジンの燃焼制御処理を行うことのできるエンジンの制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0009】
請求項1記載の発明は、車載主機として主機回転機のみを備えて且つ、該主機回転機の電力供給源となるバッテリと、該バッテリを充電する補機回転機と、該補機回転機の動力供給源となるエンジンと、該エンジンの吸気バルブ特性を可変とするバルブ特性可変装置とを備える電動車両に適用され、前記エンジンの吸気通路上には、該エンジンの燃焼室に供給される吸気量を調節する手段が備えられず、前記エンジンに要求される負荷と関連付けられて設定されて且つ互いに相違する複数の吸気バルブ特性の候補を有し、該エンジンに要求される負荷に基づき前記複数の吸気バルブ特性の候補から選択した1つの特性を該吸気バルブ特性として設定する処理を含む前記エンジンの燃焼制御処理を行う燃焼制御手段を備えることを特徴とする。
【0010】
上記発明では、車載機器の数の低減を目的として、吸気通路上に吸気量を調節する手段(スロットルバルブ)を備えない構成としている。このため、吸気バルブ特性の切り替えによって燃焼室に供給される吸気量を変更しつつ、エンジンの燃焼制御処理を行う。ここでは、エンジンに要求される負荷(動力、トルク)と関連付けられて設定されて且つ互いに相違する複数の吸気バルブ特性の候補から選択した1つの特性を吸気バルブ特性として設定する。すなわち、エンジンに要求される負荷に応じた吸気量の設定が可能となる。
【0011】
こうした上記発明によれば、車載機器の数の低減を図りつつ、吸気バルブ特性の切り替えによってエンジンの燃焼制御処理を適切に行うことができる。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記エンジンを駆動させて前記補機回転機に発電させる発電モード処理、及び前記エンジンの排気熱を利用すべく前記燃焼制御処理を行う熱源モード処理のうち、いずれかの実行を指示する指示手段を更に備え、前記複数の吸気バルブ特性の候補は、前記発電モード処理が行われる場合の前記補機回転機の発電電力及び前記熱源モード処理が行われる場合に要求される前記エンジンの動力と関連付けられて設定され、前記燃焼制御手段は、前記指示手段によって前記発電モード処理及び前記熱源モード処理のうちいずれが指示されたかに基づき、前記複数の吸気バルブ特性の候補から1つの特性を選択して前記吸気バルブ特性を設定する処理を行うことを特徴とする。
【0013】
上記発明では、バッテリの蓄電量の不足を補償したり、排気熱を利用したりすべく、上記発電モード処理及び熱源モード処理のうちいずれかを選択して実行することとしている。ここで、発電モード処理が行われる場合における補機発電機の発電電力や、熱源モード処理が行われる場合にエンジンに要求される動力が異なる状況においては通常、燃焼室に供給すべき吸気量が異なる。
【0014】
この点に鑑み、上記発明では、上記複数の吸気バルブ特性の候補を、発電モード処理が行われる場合の補機回転機の発電電力及び熱源モード処理が行われる場合に要求されるエンジンの動力と関連付けて設定する。このため、発電モード処理や熱源モード処理に応じた適切な吸気量を燃焼室に供給することができる。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記複数の吸気バルブ特性の候補は、前記発電モード処理が行われる場合の前記補機回転機の発電電力が大きいほど、前記燃焼室に供給される吸気量が多くなるように設定されており、前記発電モード処理は、前記車両の走行速度が高いほど、前記補機回転機の発電電力を大きく設定する処理であることを特徴とする。
【0016】
補機回転機の発電電力が大きいほど、補機回転機の動力供給源となるエンジンの動力を大きくする必要がある。ここで、エンジンの動力を大きくするためには通常、燃焼室に供給する吸気量を多くすることが要求される。このため、上記発明では、複数の吸気バルブ特性の候補を、発電モード処理が行われる場合の補機回転機の発電電力が大きいほど燃焼室に供給される吸気量が多くなるように設定している。
【0017】
ところで、補機回転機の発電電力を大きくすべく、エンジンの生成動力を大きくすると通常、エンジンの駆動に伴い発生する騒音が大きくなるため、ユーザに違和感を与えることが懸念される。一方、車両の走行速度が高いほど、車両の走行に伴い発生する風切り音やロードノイズ等、車室内に伝わる騒音が大きくなる傾向にあるため、エンジンの駆動に伴う騒音に起因する違和感が小さくなると考えられる。
【0018】
この点に鑑み、上記発明では、車両の走行速度が高いほど、補機回転機の発電電力を大きく設定する。具体的には、例えば、車両の走行速度が高いほど、補機回転機の発電電力を段階的に大きく設定する。これにより、補機回転機の発電電力に応じて燃焼室に供給すべき吸気量を適切に設定しつつ、エンジンの駆動に伴い発生する騒音に起因する違和感を抑制することができる。
【0019】
請求項4記載の発明は、請求項2又は3記載の発明において、前記エンジンの排気通路上には、排気浄化用触媒が備えられ、前記熱源モード処理は、前記補機回転機に伝達される前記エンジンの出力軸の回転動力を前記発電モード処理が行われる場合よりも小さくした状態で、前記燃焼制御処理によって前記触媒を暖機させる処理であり、前記燃焼制御手段は、前記発電モード処理を行うに先立ち、前記熱源モード処理を行うことを特徴とする。
【0020】
発電モード処理を行う場合、触媒の温度が低いと、触媒の排気浄化能力が低くなるため、エンジンの駆動に伴って排気特性が悪化することが懸念される。この点、上記発明では、発電モード処理を行うに先立ち、上記態様の熱源モード処理を行う。
【0021】
熱源モード処理によれば、補機回転機を駆動させるための燃料量を低減可能なことから、エンジンの駆動に要する燃料量を低減させることができる。このため、触媒の暖機中のエンジンの駆動による排気特性の悪化を抑制することができる。そしてその後、発電モード処理の実行時において排気浄化能力が低くなる事態の発生を抑制することもできる。したがって、上記発明によれば、排気特性の悪化を抑制することができる。
【0022】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記燃焼制御手段は、前記触媒の温度が該触媒の活性温度以上になるまで前記熱源モード処理の実行を継続し、その後前記発電モード処理に移行させることを特徴とする。
【0023】
上記発明では、上記態様にて熱源モード処理から発電モード処理へと移行させる。このため、発電モード処理の実行時において、触媒の温度を活性温度以上とし、触媒の排気浄化能力を高くすることができる。これにより、発電モード処理の実行に伴う排気特性の悪化を好適に抑制することができる。
【0024】
請求項6記載の発明は、請求項2〜5のいずれか1項に記載の発明において、前記エンジンは、前記燃焼室に放電火花を発生させる点火プラグを備える火花点火式のものであり、前記熱源モード処理は、前記発電モード処理が行われる場合よりも前記点火プラグによる点火タイミングを遅らせる処理であることを特徴とする。
【0025】
点火タイミングを遅らせる(遅角させる)と、燃焼によって発生するエネルギのうちエンジンの出力軸を回転させるために奪われるエネルギが減少すること、及び燃料の燃焼が開始されてからエンジンの排気バルブが開弁するまでの時間が短くなり、燃焼によって発生する熱エネルギのうちエンジンのボディに奪われる熱エネルギが減少すること等によって、排気温度が上昇する。
【0026】
この点に鑑み、上記発明では、点火タイミングを遅角させることで排気温度を適切に上昇させることができる。これにより、排気熱を適切に生成することができる。
【0027】
なお、請求項6記載の発明が請求項4記載の発明の発明特定事項を有する場合、触媒の温度を速やかに上昇させることができることから、熱源モード処理及び発電モード処理を行う場合における排気特性の悪化をより好適に抑制することができる。
【0028】
請求項7記載の発明は、請求項2〜6のいずれか1項に記載の発明において、前記車両には、前記エンジンの出力軸と前記補機回転機との間の動力を伝達又は遮断するクラッチ手段が備えられ、前記熱源モード処理は、前記クラッチ手段によって前記出力軸と前記補機回転機との間の動力を遮断した状態で行われる処理であることを特徴とする。
【0029】
上記発明では、クラッチ手段によってエンジンの出力軸と補機回転機との間の動力を遮断状態(無負荷状態)とすることで、補機回転機の駆動に要する燃料量をいっそう低減し(例えば0とし)、エンジンを自立駆動(燃焼室での混合気の燃焼で発生するエネルギによってエンジンの出力軸の回転を維持)させつつ、エンジンの駆動に要する燃料量をいっそう低減することができる。このため、排気熱を利用すべくエンジンの燃焼制御処理が行われる場合における排気特性の悪化を好適に抑制することができる。
【0030】
請求項8記載の発明は、請求項7記載の発明において、前記エンジンは、前記燃焼室に放電火花を発生させる点火プラグを備える火花点火式のものであり、前記熱源モード処理は、前記点火プラグによる点火タイミングを前記エンジンの圧縮上死点以降のタイミングとする処理であることを特徴とする。
【0031】
点火タイミングを圧縮上死点以降に遅角させると、排気温度が上昇するものの、エンジンの生成トルクが低下する傾向にある。ここで、無負荷状態とされる場合、エンジンの出力軸を回転させるために要するトルクが小さくなることから、点火タイミングの遅角によってエンジンの生成トルクが低下しても、エンジンの自立駆動を維持することができる。
【0032】
この点に鑑み、上記発明では、無負荷状態とされる状況下において、点火タイミングを圧縮上死点以降のタイミングとする。具体的には、例えば、点火タイミングを、圧縮上死点以降であって且つその直後の膨張行程(前半)内の所定のタイミングとする。これにより、排気温度の上昇度合いを大きくすることができ、排気熱をより適切に生成することができる。
【0033】
請求項9記載の発明は、請求項7又は8記載の発明において、前記燃焼制御手段は、前記熱源モード処理が行われる場合、前記複数の吸気バルブ特性の候補から前記燃焼室に供給される吸気量を最小とする特性を選択して前記吸気バルブ特性として設定することを特徴とする。
【0034】
無負荷状態とされる場合、エンジンの出力軸を回転させるために要するトルクが小さくなる。このような状況下において、燃焼室に供給される吸気量を多くすると通常、火花点火式エンジンへの燃料供給量が多くされることで、エンジンの生成トルクが大きくなる。この場合、出力軸の回転速度が大きく上昇し(吹き上がりが発生し)、エンジンの駆動に伴う騒音が大きくなってユーザに違和感を与える懸念がある。
【0035】
この点、上記発明では、上記態様にて吸気バルブ特性を設定することで、吹き上がりの発生を回避する。これにより、ユーザに違和感を与える事態の発生を適切に回避することができる。
【0036】
さらに、吸気量を最小とする吸気バルブ特性を採用するため、エンジンへの燃料供給量を少なくできることから、熱源モード処理の実行に伴う排気特性の悪化をいっそう好適に抑制することも期待できる。
【0037】
請求項10記載の発明は、請求項2〜9のいずれか1項に記載の発明において、前記エンジンの排気通路上には、該エンジンから排出される排気熱を回収する回収手段が備えられ、前記熱源モード処理は、車室内の暖房要求があると判断された場合、前記回収手段によって回収された排気熱を用いて暖房する処理であることを特徴とする。
【0038】
上記発明では、排気熱を用いて車室内を適切に暖房することができる。
【0039】
請求項11記載の発明は、請求項10記載の発明において、前記エンジンの排気通路上には、排気浄化用触媒が備えられ、前記回収手段は、前記排気通路のうち前記触媒の下流側に備えられ、前記補機回転機の駆動動力を前記エンジンの出力軸に付与する処理を行いつつ、前記触媒の温度が活性温度以上になることを条件として、前記燃焼制御処理中に前記エンジンの点火プラグによる点火を停止させる点火カット処理と、前記付与する処理を行いつつ、前記熱源モード処理が行われる場合よりも前記点火プラグによる点火タイミングを遅らせる過遅角処理とのうち、少なくとも1つを含む急速熱源モード処理を行う手段を更に備え、前記指示手段は、車室内の暖房要求度合いに応じて、前記回収手段によって回収された排気熱を用いて暖房すべく、前記熱源モード処理及び前記急速熱源モード処理のうちいずれかの実行を指示することを特徴とする。
【0040】
上記発明では、例えば車室内の暖房負荷が大きくなる場合において、暖房用の熱が不足する事態を回避すべく、上記点火カット処理及び過遅角処理のうち少なくとも1つを含む急速熱源モード処理を行う。これらの処理は、専ら暖房用の熱を生成させるためのエンジンの燃焼制御処理を行い、補機回転機の駆動によってエンジンの駆動を維持する処理である。
【0041】
詳しくは、点火カット処理について説明すると、火花点火式エンジンの燃焼制御処理中に点火プラグによる点火を停止させる。具体的には、点火の停止態様としては、例えば、点火プラグによる点火を常時停止させたり、点火プラグによる点火頻度を低下させたりする態様が挙げられる。
【0042】
点火プラグによる点火を停止させると、エンジンの燃焼室で燃料と吸気との混合気が燃焼に供されず、混合気が排気通路に放出される。ここで、触媒の温度が活性温度以上の高温となる状況下、放出された混合気が触媒にて燃焼に供されることで熱が生成される。こうした熱の生成手法によれば、例えば、混合気を燃焼室で燃焼させることによって熱を生成する手法と比較して、燃焼室から触媒まで排気が流れる間に排気から奪われる熱エネルギを低減可能なため、暖房用の熱を効率よく生成することができる。
【0043】
一方、過遅角処理について説明すると、熱源モード処理を行う場合よりも点火タイミングを遅角させることで、排気温度を上昇させる。
【0044】
ここで、点火カット処理や過遅角処理を行うと、エンジンの生成トルクが低下する傾向にあることから、エンジンを自立駆動させることができなくなることが懸念される。このため、補機回転機の駆動動力をエンジンの出力軸に付与する処理を行うことで、エンジンの出力軸の回転を維持し、エンジンが停止することを回避する。
【0045】
そして、こうして生成された熱を用いて、暖房要求度合いに応じて熱源モード処理及び急速熱源モード処理のうちいずれかの実行を指示する。
【0046】
このように、上記発明によれば、暖房要求度合いに応じて暖房用の熱を適切に確保することができる。
【0047】
請求項12記載の発明は、請求項2〜11のいずれか1項に記載の発明において、前記発電モード処理は、前記バッテリの蓄電量が高いほど、前記補機回転機の発電電力を小さく設定する処理であることを特徴とする。
【0048】
上記発明では、バッテリの蓄電量に応じて、補機回転機の発電電力を適切に定めることができる。
【0049】
なお、補機回転機の発電電力を小さくすることには、補機回転機の発電を停止させることが含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】一実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】一実施形態にかかる吸気バルブタイミングの進角及び遅角態様を示す図。
【図3】一実施形態にかかるモード判定処理の手順を示すフローチャート。
【図4】一実施形態にかかるSOC及び触媒温度と各運転モードとの関係を示す図。
【図5】一実施形態にかかる熱源モード処理の手順を示すフローチャート。
【図6】一実施形態にかかる触媒温度の急速熱源モード許可範囲を示す図。
【図7】一実施形態にかかる発電モード処理の手順を示すフローチャート。
【図8】一実施形態にかかる熱源モード処理及び発電モード処理の一例を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明にかかる制御装置を具体化した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0052】
図1に本実施形態にかかるシステム構成図を示す。
【0053】
図示される車両10は、車載主機として回転機12(以下、主機モータジェネレータMG1)のみを備えるレンジエクステンダ電動車両である。この車両10には、他に、主機モータジェネレータMG1の電力供給源となるバッテリ14、車載補機としての回転機16(以下、補機モータジェネレータMG2)、4ストロークエンジン18、及び空気調節装置(エアコン装置20)が備えられている。
【0054】
バッテリ14は、図示しないインバータを介して主機モータジェネレータMG1及び補機モータジェネレータMG2に接続されており、これらモータジェネレータを駆動するための蓄電エネルギを蓄えるものである。また、バッテリ14は、補機モータジェネレータMG2の発電や、バッテリ14等に備えられるプラグPGを介した外部の充電設備(例えば急速充電器や家庭用電源)によって充電される。なお、バッテリ14は、図示しないDC−DCコンバータを介して図示しない低圧バッテリ(例えば12Vの補機バッテリ)に電力を供給する。
【0055】
主機モータジェネレータMG1は、バッテリ14の蓄電エネルギが供給されることで駆動される。主機モータジェネレータMG1によって生成された駆動エネルギは、減速機構22等を介して駆動輪24へと伝達される。なお、主機モータジェネレータMG1は、バッテリ14に充電すべく車両10の減速時に回生発電する機能を有している。
【0056】
エンジン18は、火花点火式内燃機関である。詳しくは、エンジン18のシリンダヘッドには、図示しない車載燃料タンクから供給された燃料(ガソリン)を燃焼室26に直接噴射供給する電磁駆動式の燃料噴射弁28(筒内噴射弁)が設けられている。また、上記シリンダヘッドには、点火プラグ30が設けられており、点火プラグ30先端に備えられた中心電極及び接地電極は、燃焼室26に突出している。
【0057】
なお、燃料噴射弁28としては、筒内噴射弁に限らず、例えば、エンジン18の吸気通路32に燃料を噴射供給するポート噴射弁であってもよい。
【0058】
また、本実施形態では、エンジン18として単気筒のものを想定している。これは、エンジン18の構造を簡素化してコストを低減させること、エンジン18を軽量化して車両の走行距離を拡大すること、及び排気量を小さくしてエンジン18で発生する騒音を小さくすること等を目的とするものである。
【0059】
上記吸気通路32には、この通路を流れる吸気の圧力を検出する吸気圧センサ34が設けられている。また、吸気通路32の下流側は、エンジン18の燃焼室26と接続されている。そしてエンジン18の吸気ポート及び排気ポートのそれぞれは、吸気バルブ36及び排気バルブ38のそれぞれによって開閉される。
【0060】
吸気バルブ36及び排気バルブ38のそれぞれは、エンジン18の出力軸(クランク軸40)と連動して回転する図示しない吸気側カム軸及び排気側カム軸のそれぞれに取り付けられた図示しない吸気側カム及び排気側カムのそれぞれによって駆動される。より具体的には、吸気側又は排気側カム軸は、クランク軸40に図示しないベルトを介して機械的に連結されるものである。
【0061】
また、吸気バルブ36の開閉タイミング(バルブタイミング)は、可変バルブタイミング装置(以下、VCT装置42)により可変とされている。詳しくは、VCT装置42は、クランク軸40に対する吸気側カム軸の相対的な回転角度を調節するための可変バルブタイミング機構と、可変バルブタイミング機構の駆動力として油圧ポンプから可変バルブタイミング機構に供給される作動油の油圧を調節するための電磁駆動式の油圧制御弁とを備えて構成される油圧駆動式のものである。油圧制御弁が操作されることで上記油圧が調節され、吸気バルブ36のバルブタイミングを調節することが可能となる。
【0062】
詳しくは、VCT装置42の操作によって、吸気バルブ36の開弁タイミング及び閉弁タイミングの双方が、同じ期間だけ進む(進角する)又は遅れる(遅角する)ように調節される。
【0063】
より具体的には、図2(a)に示すように、吸気バルブ36の開弁タイミングIVOを排気行程の後半として且つ吸気バルブ36の閉弁タイミングIVCを圧縮行程前半(吸気下死点直後)とする「進角位置」と、同図(b)に示すように、吸気バルブ36の開弁タイミングIVO及び閉弁タイミングIVCのそれぞれを、「進角位置」の場合よりも所定期間遅角させた吸気行程の前半(排気上死点直後)及び圧縮行程の中間付近のそれぞれとする「遅角位置」とを切り替える。すなわち、吸気バルブ36のバルブタイミングを2値的に切り替える。
【0064】
なお、排気バルブ38の開弁タイミングEVO及び閉弁タイミングEVCのそれぞれは、吸気バルブ36のバルブタイミングの設定態様と異なり、膨張行程の後半及び排気上死点のそれぞれに固定される。
【0065】
「進角位置」に切り替えられると、吸気バルブ36の開弁タイミングIVO及び閉弁タイミングIVCのそれぞれが、排気行程の後半及び吸気下死点直後のそれぞれとなるため、ポンピングロスが低減され、また燃焼室26に導入された吸気量のうち吸気通路32に戻される量が低減される。このため、吸気量を多く確保することができ、エンジンの生成動力が増大する。
【0066】
一方、「遅角位置」に切り替えられると、吸気バルブ36の閉弁タイミングIVCが圧縮行程の中間付近となるため、燃焼室26に一旦導入された吸気量のうち吸気通路32に戻される量が多くなる。このため、吸気量を低減でき、エンジン18の生成動力が減少する。
【0067】
図1の説明に戻り、吸気バルブ36の開弁によって吸気通路32から燃焼室26に導入される吸気と、燃料噴射弁28により噴射供給される燃料との混合気が、点火プラグ30の放電火花によって着火され燃焼に供される。燃焼によって発生したエネルギは、ピストン44を介して、クランク軸40の回転エネルギとして取り出される。そして、燃焼に供された混合気は、排気バルブ38の開弁によって排気として排気通路46に排出される。
【0068】
なお、本実施形態では、車載機器の数を低減してコスト低減を図る観点から、吸気通路上には、吸気量を調節する手段(吸気通路の流路面積を調節可能な電子制御式の弁体:スロットルバルブ)が設けられておらず、また、クランク軸40付近には、クランク軸40の回転角度位置を直接検出するクランク角度センサ(例えば、電磁ピックアップ式センサ:MPUセンサ、磁気抵抗素子式センサ:MREセンサ)が設けられていない。
【0069】
また、VCT装置42として、油圧駆動式のものを採用するのは、コスト低減を図るためである。つまり、油圧駆動式のものは通常、例えば電動式のVCT装置と比較してコストが低い。
【0070】
排気通路46には、上流側から順に、排気中の酸素濃度や未燃成分(CO,HC及びH2等)に応じてリニアな電気信号を出力するA/Fセンサ47と、排気中の有害成分を浄化する排気浄化用触媒(以下、触媒48)と、排気熱を回収するための熱回収装置50の蒸発部50aとが設けられている。
【0071】
詳しくは、A/Fセンサ47は、混合気の広域の空燃比を検出可能な、いわゆる全領域空燃比センサである。
【0072】
一方、上記触媒48として、本実施形態では、排気中のNOx、HC及びCOを浄化する三元触媒を想定している。触媒48は、その温度が所定の活性温度域内(例えば350℃〜900℃)となって且つ、混合気の空燃比が理論空燃比付近となる状態において排気浄化能力を高く維持可能なものである。なお、触媒48には、触媒温度を検出する触媒温度センサ52が設けられている。
【0073】
熱回収装置50は、図示しないポンプの駆動によって作動流体(例えば、アンモニア、水)が循環する流体通路としての循環通路50bを備えている。循環通路50bの途中位置には、吸熱部としての上記蒸発部50aと、放熱部としての凝縮部50cとが設けられている。詳しくは、循環通路50bを流れる作動流体は、蒸発部50aを通る間に排気との熱交換によって排気から吸熱した後、凝縮部50cにおいてエンジン18の冷却水に対して放熱する。これにより、冷却水の温度を上昇させることができ、後述するヒータコア54によって冷却水の熱を車室内の暖房に用いることが可能となる。
【0074】
上記エアコン装置20は、車室内に温風等を供給する空気通路56と、この通路に空気流を生じさせる送風機58(例えば、ファン、ブロワ)と、空気通路56を流れる空気を暖めるためのヒータコア54とを備えて構成されている。詳しくは、ヒータコア54は、エンジン18の冷却水を熱源として空気を加熱する部材である。なお、上記送風機58は、上記補機バッテリに接続され、同バッテリを電力供給源として駆動される。
【0075】
こうした構成において、送風機58により送風された空気は、ヒータコア54を通過して所望の温度となるよう熱交換される。そして熱交換された空気が空気通路56に形成された図示しない吹出口から車室内へと供給されることで、車室内を暖房する。
【0076】
補機モータジェネレータMG2は、クランク軸40の回転動力によって駆動されることで発電してバッテリ14を充電したり、クランク軸40に初期回転を付与(モータリング)したりする機能を有する。
【0077】
詳しくは、まず、充電機能について説明すると、クランク軸40と補機モータジェネレータMG2との間の動力を伝達状態(ON状態)又は遮断状態(OFF状態)とする電磁駆動式のクラッチ60を備え、このクラッチ60がON状態とされる状況下、補機モータジェネレータMG2の発電エネルギによってバッテリ14が充電される。次に、モータリング機能について説明すると、補機モータジェネレータMG2は、バッテリ14からの蓄電エネルギの供給によって駆動されることで、クラッチ60がON状態とされる状況下においてモータリングを行う。
【0078】
電子制御装置(以下、ECU62)は、主機モータジェネレータMG1、補機モータジェネレータMG2、エンジン18、及びエアコン装置20等のそれぞれを操作対象とし、周知のCPU、ROM、RAM等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成されるものである。ECU62には、エアコン装置20による空調を指示すべくユーザによって操作される空調スイッチ64や、バッテリ14の電圧及び入出力電流を検出するバッテリセンサ66、車両10の走行速度を検出する車速センサ68、吸気圧センサ34、A/Fセンサ47、更には触媒温度センサ52等の出力信号が入力される。
【0079】
ECU62は、上記入力に応じて、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで、主機モータジェネレータMG1の駆動制御処理や、エアコン装置20による空調制御処理、更には燃料噴射制御処理等からなるエンジン18の燃焼制御処理等を行う。
【0080】
上記燃料噴射制御処理は、A/Fセンサ47の出力値から算出される混合気の空燃比を目標空燃比(例えば理論空燃比付近)にフィードバック制御すべく、燃料噴射弁28を通電操作する処理である。
【0081】
詳しくは、まず、吸気圧センサ34によって検出される吸気圧と、クランク軸40の回転速度(エンジン回転速度)とから算出される吸気量に基づき、混合気の空燃比を目標空燃比とするために要求される燃料噴射弁28からの燃料噴射量のベース値を設定する。そして、混合気の実際の空燃比と目標空燃比との偏差に基づき上記ベース値を補正する。これにより、吸気量が多いほど、上記補正されたベース値が多く設定される。そして、補正されたベース値に基づき、燃料噴射弁28を通電操作する。これにより、上記補正されたベース値に応じた燃料が燃料噴射弁28から噴射される。
【0082】
なお、エンジン回転速度は、吸気圧センサ34によって検出された吸気圧が規定圧以下になると判断されたタイミング間の時間に基づき算出すればよい。より具体的には、上記タイミング間の時間で1燃焼周期(720℃A)を除算することで算出すればよい。この算出手法は、吸気圧が規定圧以下となるタイミングが1燃焼周期において1回出現することに鑑みたものである。
【0083】
また、モータジェネレータ、エンジン18及びエアコン装置20等のそれぞれは、実際には各別の電子制御装置のそれぞれによって操作されるが、ここではこれらの電子制御装置をECU62と表記している。
【0084】
次に、本実施形態にかかる発電モード処理及び熱源モード処理について説明する。
【0085】
発電モード処理は、バッテリ14の充電要求があると判断された場合、バッテリ14を充電すべく補機モータジェネレータMG2を駆動させる処理である。詳しくは、エンジン18を駆動させるとともにクラッチ60をON状態とさせることで、クランク軸40の回転動力が補機モータジェネレータMG2に伝達されてこれが駆動される。これにより、補機モータジェネレータMG2の発電によってバッテリ14が充電される。
【0086】
一方、熱源モード処理は、後述する通常熱源モード処理及び急速熱源モード処理からなる処理であり、エアコン装置20による暖房用や触媒48の暖機用の熱を生成するためのエンジン18の燃焼制御処理である。
【0087】
本実施形態では、熱源モード処理として、補機モータジェネレータMG2に伝達されるクランク軸40の回転動力を発電モード処理の実行時よりも小さくした状態(換言すれば、補機モータジェネレータMG2の駆動トルクを低下させることで、補機モータジェネレータMG2の発電電力を発電モード処理の実行時よりも低下させた状態)で、エンジン18を駆動させる処理を行う。この処理は、触媒48の暖機を促進させ、発電モード処理が行われる場合に排気特性が悪化することを抑制するための処理である。
【0088】
更に、本実施形態では、熱源モード処理として、点火プラグ30による点火タイミング(図示しない点火装置への点火指示タイミング)を発電モード処理の実行時よりも遅角させる処理も行う。
【0089】
ここで、点火タイミングを遅角させるとの要件は、排気温度の上昇度合いを大きくし、暖房用の熱を適切に生成したり、触媒温度の上昇を促進させてエミッションの増大を抑制したりするためのものである。つまり、点火タイミングを遅角させると、クランク軸40を回転させるために奪われるエネルギが減少すること、及び燃料の燃焼が開始されてから、排気バルブ38が開弁するまでの時間が短くなり、燃焼によって発生する熱エネルギのうちエンジン18のシリンダブロック等に奪われる熱エネルギが減少すること等に起因して、排気温度が上昇する。これにより、例えば、触媒48の暖機が開始されてから、触媒温度が活性温度以上となるまでの期間を短くすることができ、エミッションの増大を抑制することが可能となる。
【0090】
以下、熱源モード処理及び発電モード処理について、図3〜図7を用いて説明する。
【0091】
図3は、本実施形態にかかる、熱源モード処理及び発電モード処理のうちいずれかの実行を指示したり、エンジン18の燃焼制御処理の停止を指示したりするモード判定処理の手順を示すものである。この処理は、ECU62によって例えば所定周期で実行される。
【0092】
この一連の処理では、まずステップS10において、暖房要求があるとの条件、及びバッテリセンサ66の出力値から算出されるバッテリ14の蓄電量(SOC)が第1の規定量S1を上回るとの条件の論理積が真であるか否かを判断する。ここで、バッテリ14のSOCに関する条件は、バッテリ14の充電要求があるか否かを判断するためのものである。
【0093】
なお、第1の規定量S1は、バッテリ14の劣化を回避できる等、バッテリ14の信頼性を維持可能なSOCの下限値よりも大きい値に設定すればよい。また、上記暖房要求があるか否かは、例えば、空調スイッチ64の出力値に基づきユーザが暖房を指示しているか否かで判断すればよい。
【0094】
ステップS10において肯定判断された場合には、ステップS12に進み、熱源モード処理の実行を指示する。
【0095】
一方、上記ステップS10において否定判断された場合には、ステップS14に進み、モード判定を行う。ここで、モード判定とは、図4に示すように、バッテリ14のSOC及び触媒温度センサ52の出力値から算出される触媒温度Tctに基づき、発電モード処理、熱源モード処理及びエンジン停止のうちいずれかの実行を指示する処理である。
【0096】
上記発電モード処理は、小発電モード処理及び大発電モード処理からなり、触媒温度Tctが活性温度以上の第1の規定温度T1以上になると判断された場合、基本的には、バッテリ14のSOCが低かったり、車速センサ68の出力値から算出される車両の走行速度が高かったりするほど、補機モータジェネレータMG2の発電電力を段階的に大きく設定する処理である。
【0097】
発電モード処理において、車両の走行速度に関する要件は、エンジン18の駆動に伴い発生する騒音に起因してユーザに与える違和感を抑制するためのものである。つまり、補機モータジェネレータMG2の発電電力を大きくすべく、エンジン18の生成動力を大きくすると、エンジン18の駆動に伴い発生する騒音が大きくなるため、ユーザに違和感を与えることが懸念される。ここで、車両の走行速度が高いほど、車両の走行に伴い発生する風切り音やロードノイズ等、車室内に伝わる騒音が大きくなる傾向にあるため、エンジン18の駆動に伴う騒音に起因する違和感が小さくなると考えられる。このため、上記態様の車両の走行速度に関する要件を定めることで、ユーザに与える違和感を抑制する。
【0098】
ここで、バッテリ14のSOC及び車両の走行速度に基づく発電モード処理の実行態様について詳述すると、バッテリ14のSOCが第1の規定量S1未満になると判断された場合、大発電モード処理の実行を指示する。
【0099】
バッテリ14のSOCが、第1の規定量S1以上であって且つ、第1の規定量S1よりも高い第2の規定量S2未満であると判断された場合、大発電モード処理、又はこの処理よりも補機モータジェネレータMG2の発電電力が小さい小発電モード処理のうちいずれかを選択して実行を指示する。詳しくは、車両の走行速度が規定速度Vα(>0)以下である(低速域である)と判断された場合、小発電モード処理の実行を指示し、車両の走行速度が上記規定速度Vαを上回る(高速域である)と判断された場合、大発電モード処理の実行を指示する。なお、小発電モード処理及び大発電モード処理の詳細については後述する。
【0100】
バッテリ14のSOCが、第2の規定量S2以上であって且つ、第2の規定量S2よりも高い第3の規定量S3未満であると判断された場合、小発電モード処理、又はエンジン18が停止された状態で主機モータジェネレータMG1によって車両10を走行させるEVモードのうち、いずれかを選択して実行を指示する。詳しくは、低速域であると判断された場合、EVモードの実行を指示し、高速域であると判断された場合、小発電モード処理の実行を指示する。
【0101】
なお、第3の規定量S3は、バッテリ14の信頼性を維持可能なSOCの上限値未満の値として設定される。また、第2の規定量S2は、バッテリ14のSOCをどの程度の水準で維持するかを定める観点から設定すればよい。
【0102】
また、バッテリ14のSOCが第3の規定量S3を上回ると判断された場合、EVモードの実行を指示する。
【0103】
ここで、本実施形態では、発電モード処理の実行が指示(エンジン18の駆動要求が生じたと判断)された時点において触媒温度Tctが規定温度T1未満になると判断された場合、触媒温度Tctが規定温度T1以上になるまで熱源モード処理の実行を継続し、その後発電モード処理に移行させる処理を実行する。これは、発電モード処理の実行時において、触媒温度Tctを活性温度以上とし、発電モード処理の実行に伴う排気特性の悪化を抑制するためのものである。
【0104】
詳しくは、バッテリ14のSOCが第1の規定量S1以上であって且つ第2の規定量S2未満であると判断された場合や、バッテリ14のSOCが第2の規定量S2以上であって且つ第3の規定量S3未満であると判断されて且つ高速域であると判断された場合、熱源モード処理の実行を指示する。
【0105】
なお、触媒温度Tctが第1の規定温度T1未満であると判断された場合であっても、バッテリ14のSOCが第1の規定量S1未満になると判断されたとき、車両を適切に走行させることができなくなる事態を回避する観点から、大発電モード処理の実行を指示する。また、バッテリ14のSOCが第2の規定量S2以上であって且つ第3の規定量S3未満であると判断される状況下において低速域であると判断されたときや、バッテリ14のSOCが第3の規定量S3を上回ると判断されたとき、発電モード処理の実行が指示されていないことから、EVモードの実行を指示する。
【0106】
なお、ステップS12、S14の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0107】
次に、図5に、本実施形態にかかる通常熱源モード処理及び急速熱源モード処理からなる熱源モード処理の手順を示す。この処理は、熱源モード処理の実行が指示されたと判断された場合において、ECU62によって例えば所定周期で実行される。
【0108】
この一連の処理では、まずステップS20において、吸気バルブ36のバルブタイミングを「遅角位置」に切り替える。この処理は、後述する通常熱源モード処理を行う場合に燃焼室26に供給される吸気量が多くなることで、エンジン回転速度が大きく上昇する(吹き上がりが発生する)事態を回避すべく、吸気量を最小とするための処理である。つまり、熱源モード処理が行われる場合、補機モータジェネレータMG2が駆動されないことから、エンジン18に要求される動力が小さくなる。
【0109】
なお、吸気バルブ36及びVCT装置42の機差や、吸気バルブ36へのデポジットの堆積等に起因して、燃焼室26に供給する吸気量が想定したものよりも過度に少なくなることが懸念される。こうした事態を回避すべく、上記機差やデポジットの堆積等が生じることを前提として、燃焼室26に供給される吸気量が十分多くなるように、「遅角位置」で規定されるバルブタイミングを設定することが望ましい。
【0110】
続くステップS22では、触媒温度Tctが、第1の規定温度T1未満であるか否かを判断する。この処理は、上記モード判定において発電モード処理の実行に先立ち熱源モード処理の実行が指示されたか否かや、後述する急速熱源モード処理の実行によって排気特性が悪化するか否かを判断するための処理である。なお、触媒温度Tctが第1の規定温度T1以上となる場合には、混合気が触媒48に供給されたときに、触媒48において供給された混合気が燃焼可能な状態となっている。
【0111】
ステップS22において否定判断された場合には、ステップS24に進み、触媒温度Tctが、第1の規定温度T1よりも高い第2の規定温度T2以下であるか否かを判断する。ここで、第2の規定温度T2は、触媒48の劣化や溶損の発生を回避する観点から、触媒48の排気浄化能力を高く維持可能であって且つ触媒48の信頼性を維持可能な温度の上限値として定められる(図6参照)。この処理は、後述する急速熱源モード処理の実行によって触媒48の信頼性が低下しないか否かを判断するための処理である。
【0112】
ステップS24において肯定判断された場合には、ステップS26に進み、ユーザの要求する暖房負荷が大きいか否かを判断する。この処理は、熱回収装置50によって回収された排気熱を用いて暖房制御を行う場合、空調スイッチ64を介して指示された目標温度まで車室内温度を適切に上昇させることができないか否かを判断するためのものである。ここで、要求暖房負荷が大きいか否かは、例えば、車室内温度を、空調スイッチ64を介して設定された目標温度にするために要求される暖房負荷と、冷却水温に基づき算出される実現可能な暖房負荷との大小に基づき判断すればよい。
【0113】
上記ステップS22において肯定判断された場合や、ステップS26において否定判断された場合には、ステップS28、S30において通常熱源モード処理を行う。
【0114】
詳しくは、まず、ステップS28において、クラッチ60をOFF状態とする。この処理は、暖房用の排気熱の生成中や触媒48の暖機中におけるエンジン18の駆動による排気特性の悪化を抑制するためのものである。つまり、クラッチ60をOFF状態(無負荷状態)とすることで、補機モータジェネレータMG2の駆動に要する燃料噴射弁28からの燃料噴射量を0とし、エンジン18を自立駆動(燃焼室26での混合気の燃焼で発生するエネルギによってクランク軸40の回転を維持)させつつ、エンジン18の駆動に要する燃料噴射量を低減できる。このため、排気特性の悪化を回避できる。
【0115】
続くステップS30では、点火タイミングを、発電モード処理を行う場合よりも遅角させる。具体的には、点火タイミングを、圧縮上死点以降の所定のタイミングに設定する。この処理は、排気温度の上昇度合いを大きくして、暖房用の排気熱の生成や、触媒温度Tctの暖機を促進させるためのものである。
【0116】
ちなみに、点火タイミングを圧縮上死点以降に遅角させることが可能なのは、無負荷状態とされているからである。つまり、点火タイミングを遅角させると、排気温度が上昇するものの、エンジン18の生成トルクが低下する傾向にある。ただし、無負荷状態とされる場合、クランク軸40を回転させるために要するトルクが小さくなることから、点火タイミングの遅角によってエンジン18の生成トルクが低下しても、エンジン18の自立駆動を維持することができる。
【0117】
また、排気温度を上昇させる観点から、点火タイミングは、排気バルブ38の開弁タイミング又はこのタイミングの直前とすることが望ましい。
【0118】
一方、上記ステップS26において肯定判断された場合には、車室内の暖房用の熱が不足していると判断し、ステップS32〜S36において急速熱源モード処理を行う。
【0119】
詳しくは、まず、ステップS32において、クラッチ60をON状態とする。そして、ステップS34では、エンジン回転速度NEが定常状態となるように補機モータジェネレータMG2の駆動動力をクランク軸40に付与する処理を行う。具体的には、エンジン回転速度NEを定常状態として且つ、エンジン回転速度NEを目標回転速度Ntgtにフィードバック制御すべく補機モータジェネレータMG2を駆動制御する。これは、エンジン18の停止を回避するためのものである。
【0120】
つまり、後述する間欠点火カット処理が行われると、エンジン18の生成トルクが低下してエンジン18を自立駆動できなくなる懸念がある。このような事態を回避すべく、補機モータジェネレータMG2の駆動動力をクランク軸40に付与することで、クランク軸40の回転を維持し、エンジン18の停止を回避する。
【0121】
ちなみに、本実施形態において、補機モータジェネレータMG2によってエンジン18の駆動を補助可能なのは、エンジン18が単気筒で小型のため、クランク軸40を回転させるために要するトルクが、例えば車載主機として搭載されるエンジンのクランク軸を回転させるために要するトルクと比較して小さいこと等によるものである。
【0122】
続くステップS36では、間欠点火カット処理を行う。この処理は、通常熱源モード処理や発電モード処理において予め規定されている点火タイミングでの点火を間引く(点火頻度を低下させる)処理である。この処理は、車室内の暖房負荷が大きくなる場合において、暖房用の熱が不足する事態を回避すべく、熱の生成量を増大させるための処理である。
【0123】
つまり、点火プラグ30による点火を停止させると、燃焼室26で混合気が燃焼に供されず、混合気が排気通路46に放出される。ここで、触媒温度Tctが第1の規定温度T1以上の高温となる状況下、放出された混合気が触媒48にて燃焼に供されることで熱が生成される。これにより、例えば混合気を燃焼室26で燃焼させることによって熱を生成する手法と比較して、燃焼室26から触媒48まで排気が流れる間に排気から奪われる熱エネルギを低減可能なため、暖房用の熱を効率よく生成することができる。すなわち、熱の生成量を増大させることができる。
【0124】
ちなみに、間欠点火カット処理態様としては、例えば、N(N:正の整数)燃焼周期毎に点火を停止させる態様が挙げられる。
【0125】
なお、上記ステップS24において否定判断された場合や、ステップS30、S36の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0126】
続いて、図7に、本実施形態にかかる発電モード処理の手順を示す。この処理は、ECU62によって例えば所定周期で実行される。
【0127】
この一連の処理では、ステップS40において大発電モード処理の実行が指示されているか否かを判断する。そして、大発電モード処理の実行が指示されていると判断された場合には、ステップS42に進み、大発電モード処理を行う。詳しくは、クラッチ60をON状態として且つ、吸気バルブ36のバルブタイミングを「進角位置」に切り替える。
【0128】
一方、上記ステップS40において否定判断された場合には、ステップS44に進み、小発電モード処理の実行が指示されているか否かを判断する。そして、小発電モード処理の実行が指示されていると判断された場合には、ステップS46に進み、小発電モード処理を実行する。詳しくは、クラッチ60をON状態として且つ、吸気バルブ36のバルブタイミングを「遅角位置」に切り替える。
【0129】
一方、上記ステップS44において否定判断された場合には、小発電モード処理及び大発電モード処理の実行指示がいずれもなされていないと判断し、ステップS48に進み、クラッチ60をOFF状態とする。
【0130】
なお、ステップS42、S46、S48の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0131】
図8に、本実施形態にかかる発電モード処理及び熱源モード処理の一例を示す。詳しくは、図8(a)に、車両の走行速度Vの推移を示し、図8(b)に、バッテリ14のSOCの推移を示し、図8(c)に、エンジン回転速度NEの推移を示し、図8(d)に、吸気バルブ36のバルブタイミングの推移を示し、図8(e)に、点火タイミングの推移を示し、図8(f)に、エンジン18の駆動による補機モータジェネレータMG2の発電電力の推移を示し、図8(g)に、触媒温度Tctの推移を示す。なお、図中、ユーザの暖房要求は生じていないと判断されるものとする。
【0132】
図示される例では、車両が低速域でEVモード走行されるため、バッテリ14のSOCが漸減する。そして、時刻t1において、バッテリ14のSOCが第2の規定量S2未満になると判断されて且つ、触媒温度Tctが第1の規定温度T1未満であると判断されたことで、通常熱源モード処理が開始される。これにより、触媒温度Tctの上昇が開始される。
【0133】
そしてその後、触媒温度Tctが第1の規定温度T1以上になるタイミング(時刻t2)まで通常熱源モード処理の実行が継続された後、続けて小発電モード処理に移行される。その後、車両の走行速度Vが上昇し、高速域と判断される時刻t3において、大発電モード処理が開始され、バッテリ14の充電が促進される。
【0134】
このように、本実施形態では、発電モード処理や熱源モード処理に応じて吸気バルブ36のバルブタイミングを切り替えることで、バッテリ14のSOCが過度に不足したり、触媒48の排気浄化能力が低い状態でエンジン18が駆動されたりする事態を回避することができる。
【0135】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0136】
(1)発電モード処理及び熱源モード処理のうちいずれの実行が指示されたかに応じて、「遅角位置」及び「進角位置」のうちいずれかを選択して吸気バルブ36のバルブタイミングとして設定した。これにより、エンジン18の燃焼制御態様に応じた吸気量を適切に設定することができる。
【0137】
(2)大発電モード処理が行われる場合に「進角位置」を選択し、小発電モード処理が行われる場合に「遅角位置」を選択して吸気バルブ36のバルブタイミングとして設定した。ここでは、車両の走行速度が高いほど、補機モータジェネレータMG2の発電電力が段階的に大きくなるように設定した。これにより、補機モータジェネレータMG2の発電電力に応じて燃焼室26に供給すべき吸気量を適切に設定しつつ、エンジン18の駆動に伴い発生する騒音に起因する違和感を好適に抑制することができる。
【0138】
(3)バッテリ14のSOCが高いほど、補機モータジェネレータMG2の発電電力を小さく設定した。これにより、バッテリ14のSOCに応じて補機モータジェネレータMG2の発電電力を適切に定めることができる。
【0139】
(4)触媒温度Tctが第1の規定温度T1以上になるまで熱源モード処理の実行を継続し、その後発電モード処理に移行させた。このため、発電モード処理の実行時において、触媒温度Tctを活性温度以上とし、触媒48の排気浄化能力を高くすることができる。これにより、発電モード処理の実行に伴う排気特性の悪化を好適に抑制することができる。
【0140】
(5)触媒48の暖機用や、車室内の暖房用の熱の生成のために上記通常熱源モード処理を行った。これにより、排気特性の悪化を抑制しつつ、排気温度の上昇度合いを大きくし、触媒48の暖機を促進させたり、暖房用の熱を生成したりすることができる。
【0141】
(6)暖房負荷が大きいと判断された場合、間欠点火カット処理を含む上記急速熱源モード処理を行った。これにより、暖房用の熱を適切に確保することができ、暖房用の熱が不足する事態の発生を好適に回避することができる。
【0142】
(その他の実施形態)
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0143】
・吸気バルブ36のバルブタイミングの設定手法としては、上記実施形態に例示したものに限らない。例えば、閉弁タイミングIVCのみを進角・遅角させることが可能なVCT装置を備え、閉弁タイミングIVCのみを進角・遅角させる手法を採用してもよい。具体的には、例えば、開弁タイミングIVOを排気上死点近傍の所定のタイミングで固定し、進角位置及び遅角位置のそれぞれにおける閉弁タイミングIVCを、先の図2(a)及び同図(b)のそれぞれに示したタイミングとすればよい。
【0144】
・急速熱源モード処理としては、上記実施形態に例示したものに限らない。例えば、点火プラグ30による点火を常時停止させる点火カット処理を行ってもよい。この場合、急速熱源モード処理の実行中において、燃焼室26で混合気が燃焼に供されないことから、エンジン18の駆動(クランク軸40の回転の維持)は、補機モータジェネレータMG2に委ねられることとなる。
【0145】
また、急速熱源モード処理としては、点火カット処理に限らず、例えば、通常熱源モード処理よりも点火タイミングを遅角させる点火過遅角処理を行ってもよい(先の図5のステップS34参照)。この場合であっても、通常熱源モード処理を行う場合よりも排気温度を上昇させることができることから、熱生成量を増大させることができる。なお、この場合、排気通路46への混合気の放出量が多くなるおそれが少ないなら、触媒温度Tctが第1の規定温度T1以上になるとの条件を満たすことを要しない。
【0146】
・エンジン18としては、単気筒のものに限らず、例えば複数気筒のものであってもよい。また、エンジン18としては、ガソリンエンジン等の火花点火式内燃機関に限らず、例えば圧縮点火式内燃機関であってもよい。ここで圧縮点火式内燃機関としては、例えば、燃料(ガソリン)と吸気とを予め混合したもの(予混合気)を、燃焼室26での圧縮によって自着火(予混合圧縮自着火、Homogeneous Charge Compression Ignition)燃焼させるHCCI燃焼が可能なものが挙げられる。
【0147】
・上記実施形態では、熱回収装置50によって回収された排気熱がエンジン冷却水を介してヒータコア54に供給される構成としたがこれに限らない。例えば、エンジン冷却水を介さず、熱回収装置50によって回収された排気熱をヒータコア54に直接供給する構成を採用してもよい。
【0148】
・エンジン回転速度の算出手法としては、上記実施形態に例示したものに限らない。例えば、上記クランク角度センサを備え、このセンサの出力値に基づきエンジン回転速度を算出してもよい。
【0149】
・上記実施形態では、触媒温度センサ52によって触媒温度Tctを検出したがこれに限らない。例えば、周知技術である触媒温度Tctを推定する処理によって触媒温度Tctを推定してもよい。詳しくは、触媒温度Tctを推定する処理は、例えば、排気通路46において触媒48の上流側の排気温度を検出する排気温センサや、エンジン冷却水の温度を検出する水温センサを備え、排気温センサや水温センサの検出値に基づき触媒温度Tctを推定する処理が考えられる。より具体的には、まず、エンジンが駆動されない状況下において、外気と熱的な平衡状態となる場合におけるエンジン冷却水温に基づき触媒温度の初期値を算出する。そして、その後エンジンが駆動される状況下において、エンジン冷却水温の上昇度合いに基づき上記初期値からの触媒の温度上昇分を算出することで、触媒温度を推定すればよい。
【0150】
・VCT装置42としては、電動式のものを採用してもよい。
【0151】
・吸気バルブ特性としては、バルブタイミングに限らない。例えば、吸気バルブ36の最大リフト量を可変とする機構を有するVCT装置を備え、吸気バルブ特性として、バルブタイミングに代えて、又はバルブタイミングと合わせて最大リフト量を採用してもよい。この場合、最大リフト量を大きくすると、燃焼室26に供給される吸気量が増大することとなる。
【0152】
・吸気バルブ特性と関連付けられるパラメータとしては、上記実施形態に例示したものに限らない。例えば、エンジン18を動力供給源として駆動される冷暖房用の熱を生成するための車載圧縮機を備え、上記パラメータとして、圧縮機の単位時間あたりの生成熱量を採用してもよい。この場合、圧縮機の上記生成熱量が大きいほど、燃焼室26に供給される吸気量が多くなるように吸気バルブ特性を設定すればよい。これは、圧縮機の上記生成熱量が大きいほど、圧縮機の駆動トルクが大きくなることから、エンジン18の動力を大きくする必要があるためである。
【0153】
・上記実施形態では、吸気バルブ特性を2段階(「進角位置」又は「遅角位置」)に切り替え可能な構成としたがこれに限らず、3段階以上の多段階に切り替え可能な構成としてもよい。
【0154】
・触媒48としては、上記実施形態に例示したものに限らず、例えば、酸化触媒を採用してもよい。
【符号の説明】
【0155】
12…主機モータジェネレータ、14…バッテリ、16…補機モータジェネレータ、18…エンジン、26…燃焼室、30…点火プラグ、32…吸気通路、36…吸気バルブ、40…クランク軸、42…VCT装置、46…排気通路、48…触媒、50…熱回収装置、60…クラッチ、62…ECU(エンジンの制御装置の一実施形態)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載主機として主機回転機のみを備えて且つ、該主機回転機の電力供給源となるバッテリと、該バッテリを充電する補機回転機と、該補機回転機の動力供給源となるエンジンと、該エンジンの吸気バルブ特性を可変とするバルブ特性可変装置とを備える電動車両に適用され、
前記エンジンの吸気通路上には、該エンジンの燃焼室に供給される吸気量を調節する手段が備えられず、
前記エンジンに要求される負荷と関連付けられて設定されて且つ互いに相違する複数の吸気バルブ特性の候補を有し、該エンジンに要求される負荷に基づき前記複数の吸気バルブ特性の候補から選択した1つの特性を該吸気バルブ特性として設定する処理を含む前記エンジンの燃焼制御処理を行う燃焼制御手段を備えることを特徴とするエンジンの制御装置。
【請求項2】
前記エンジンを駆動させて前記補機回転機に発電させる発電モード処理、及び前記エンジンの排気熱を利用すべく前記燃焼制御処理を行う熱源モード処理のうち、いずれかの実行を指示する指示手段を更に備え、
前記複数の吸気バルブ特性の候補は、前記発電モード処理が行われる場合の前記補機回転機の発電電力及び前記熱源モード処理が行われる場合に要求される前記エンジンの動力と関連付けられて設定され、
前記燃焼制御手段は、前記指示手段によって前記発電モード処理及び前記熱源モード処理のうちいずれが指示されたかに基づき、前記複数の吸気バルブ特性の候補から1つの特性を選択して前記吸気バルブ特性を設定する処理を行うことを特徴とする請求項1記載のエンジンの制御装置。
【請求項3】
前記複数の吸気バルブ特性の候補は、前記発電モード処理が行われる場合の前記補機回転機の発電電力が大きいほど、前記燃焼室に供給される吸気量が多くなるように設定されており、
前記発電モード処理は、前記車両の走行速度が高いほど、前記補機回転機の発電電力を大きく設定する処理であることを特徴とする請求項2記載のエンジンの制御装置。
【請求項4】
前記エンジンの排気通路上には、排気浄化用触媒が備えられ、
前記熱源モード処理は、前記補機回転機に伝達される前記エンジンの出力軸の回転動力を前記発電モード処理が行われる場合よりも小さくした状態で、前記燃焼制御処理によって前記触媒を暖機させる処理であり、
前記燃焼制御手段は、前記発電モード処理を行うに先立ち、前記熱源モード処理を行うことを特徴とする請求項2又は3記載のエンジンの制御装置。
【請求項5】
前記燃焼制御手段は、前記触媒の温度が該触媒の活性温度以上になるまで前記熱源モード処理の実行を継続し、その後前記発電モード処理に移行させることを特徴とする請求項4記載のエンジンの制御装置。
【請求項6】
前記エンジンは、前記燃焼室に放電火花を発生させる点火プラグを備える火花点火式のものであり、
前記熱源モード処理は、前記発電モード処理が行われる場合よりも前記点火プラグによる点火タイミングを遅らせる処理であることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載のエンジンの制御装置。
【請求項7】
前記車両には、前記エンジンの出力軸と前記補機回転機との間の動力を伝達又は遮断するクラッチ手段が備えられ、
前記熱源モード処理は、前記クラッチ手段によって前記出力軸と前記補機回転機との間の動力を遮断した状態で行われる処理であることを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載のエンジンの制御装置。
【請求項8】
前記エンジンは、前記燃焼室に放電火花を発生させる点火プラグを備える火花点火式のものであり、
前記熱源モード処理は、前記点火プラグによる点火タイミングを前記エンジンの圧縮上死点以降のタイミングとする処理であることを特徴とする請求項7記載のエンジンの制御装置。
【請求項9】
前記燃焼制御手段は、前記熱源モード処理が行われる場合、前記複数の吸気バルブ特性の候補から前記燃焼室に供給される吸気量を最小とする特性を選択して前記吸気バルブ特性として設定することを特徴とする請求項7又は8記載のエンジンの制御装置。
【請求項10】
前記エンジンの排気通路上には、該エンジンから排出される排気熱を回収する回収手段が備えられ、
前記熱源モード処理は、車室内の暖房要求があると判断された場合、前記回収手段によって回収された排気熱を用いて暖房する処理であることを特徴とする請求項2〜9のいずれか1項に記載のエンジンの制御装置。
【請求項11】
前記エンジンの排気通路上には、排気浄化用触媒が備えられ、
前記回収手段は、前記排気通路のうち前記触媒の下流側に備えられ、
前記補機回転機の駆動動力を前記エンジンの出力軸に付与する処理を行いつつ、前記触媒の温度が活性温度以上になることを条件として、前記燃焼制御処理中に前記エンジンの点火プラグによる点火を停止させる点火カット処理と、前記付与する処理を行いつつ、前記熱源モード処理が行われる場合よりも前記点火プラグによる点火タイミングを遅らせる過遅角処理とのうち、少なくとも1つを含む急速熱源モード処理を行う手段を更に備え、
前記指示手段は、車室内の暖房要求度合いに応じて、前記回収手段によって回収された排気熱を用いて暖房すべく、前記熱源モード処理及び前記急速熱源モード処理のうちいずれかの実行を指示することを特徴とする請求項10記載のエンジンの制御装置。
【請求項12】
前記発電モード処理は、前記バッテリの蓄電量が高いほど、前記補機回転機の発電電力を小さく設定する処理であることを特徴とする請求項2〜11のいずれか1項に記載のエンジンの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−184695(P2012−184695A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47514(P2011−47514)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】