説明

エンジン排気エネルギー回収装置、これを備える船舶およびこれを備える発電プラント

【課題】エンジンの様々な負荷や回転数に対してエンジンの燃料消費率を所定値以下にすることができ、エンジンから排出される排気ガスの有効利用が可能とされるエンジン排気エネルギー回収装置を提供することを目的とする。
【解決手段】エンジン2から排出される排気ガスが供給されるタービン部3aとエンジン2に掃気圧力を圧送するコンプレッサ部3bとタービン3aが駆動されることによって発電する発電・電動機部3dとを有するハイブリッド過給機3と、ハイブリッド過給機3に供給される排気ガスを迂回させるバイパス流路L2と、エンジン負荷検出手段と、エンジン回転数検出手段と、掃気圧力検出手段と、夫々の検出手段の検出値からエンジン2の燃料消費率が所定値以下になる掃気圧力を算出するデータベースを有する制御装置と、を有し、制御装置は、排気ガスバイパス制御弁V1を制御してエンジン2の掃気圧力を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンから排出される排気ガスの排気エネルギーを動力として回収するエンジン排気エネルギー回収装置、これを備える船舶およびこれを備える発電プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンから排出される排気ガスに含まれる排気エネルギーを動力として回収する排気エネルギー回収装置としては、過給機およびパワータービンが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−186916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の発明は、エンジンの高負荷運転時にパワータービンの出力を減少させた場合には、パワータービンを駆動させるために利用されていた排気ガスが過給機の排気タービンに供給される。そのため、過給機の排気タービンの駆動力および回転数が上昇し、排気タービンによって駆動される圧縮機の回転数が上昇する。その結果、過給機からエンジンに供給される圧縮空気の圧力、すなわち掃気圧力が許容圧力を超えてしまう。一方、エンジンには、エンジンの運転を安全に行うために掃気圧力が許容圧力以上にならないように制限が課せられている。そのため、高圧の掃気をエンジンに供給しても熱効率の改善にはつながらないという問題があった。
【0005】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、エンジンの様々な負荷や回転数に対してエンジンの燃料消費率を所定値以下にすることが可能とされ、エンジンから排出される排気ガスの有効利用が可能とされるエンジン排気エネルギー回収装置、これを備える船舶およびこれを備える発電プラントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るエンジン排気エネルギー回収装置、これを備える船舶およびこれを備える発電プラントは、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係るエンジン排気エネルギー回収装置によれば、エンジンから排出される排気ガスによって駆動されるタービン部と、該タービン部が駆動されることによって外気をエンジンに圧送するコンプレッサ部と、前記タービン部が駆動されることによって発電する一方で供給された電力によって前記タービン部を駆動する発電・電動機部と、を有するハイブリッド過給機と、該ハイブリッド過給機に供給される排気ガスを迂回させるバイパス流路と、該バイパス流路に設けられて、前記ハイブリッド過給機へ導かれる排気ガスの流量を制御する排気ガスバイパス制御弁と、前記エンジンの負荷を検出するエンジン負荷検出手段と、前記エンジンの回転数を検出するエンジン回転数検出手段と、前記エンジンの掃気圧力を検出する掃気圧力検出手段と、前記エンジン負荷検出手段および前記エンジン回転数検出手段によって検出される負荷および回転数から前記エンジンの燃料消費率が所定値以下となる目標掃気圧力を算出するデータベースを有する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記目標掃気圧力になるように前記排気ガスバイパス制御弁を制御することを特徴とする。
【0007】
ハイブリッド過給機に導かれる排気ガスを迂回するバイパス流路には、排気ガスバイパス制御弁が設けられている。この排気ガスバイパス制御弁の開度を絞った場合には、ハイブリッド過給機に導かれる排気ガスの流量が増加する。そのため、ハイブリッド過給機のタービン部に導かれる排気ガスの流量が増加する。タービン部に導かれる排気ガスの流量が増加するので、タービン部の回転駆動力が増加する。タービン部の回転駆動力が増加すると、コンプレッサ部の回転数が上昇し、圧縮される空気の圧力が上昇する。このようにコンプレッサ部によって圧縮された空気である掃気は、エンジンに導かれる。エンジンの掃気圧力は、ハイブリッド過給機のコンプレッサ部からエンジンに供給される掃気の圧力によって決定される。また、エンジンの燃料消費率は、掃気圧力、排気弁閉タイミング、シリンダ内圧力、エンジン回転数、エンジン負荷、燃料噴射タイミング等に影響される。
【0008】
そこで、本発明では、制御装置によって排気ガスバイパス制御弁を制御することとした。これにより、ハイブリッド過給機に導かれる排気ガスの流量を制御することができる。また、制御装置は、エンジン負荷検出手段によって検出される負荷と、エンジン回転数検出手段によって検出される回転数とから、データベースを用いて目標掃気圧力を算出することとした。これらにより、ハイブリッド過給機のコンプレッサ部からエンジンに導かれる掃気の圧力、すなわち、掃気圧力を目標掃気圧力に制御することができる。したがって、排気ガスバイパス制御弁を制御してエンジンの燃料消費率を所定値以下に抑えることができ、エンジンの運転コストを低減することができる。
【0009】
また、エンジンの燃料消費率は、燃料の燃焼状態に影響される。燃料の燃焼状態は、エンジンの回転数、掃気圧力、燃料の性状、燃料の着火時期、燃料の噴射状態等によって変化する。本発明では、排気ガスバイパス制御弁を制御して掃気圧力を制御することとした。そのため、エンジンにおける燃料の燃焼状態を改善することができる。
【0010】
また、排気ガスによって発電するハイブリッド過給機を設けることとした。そのため、エンジン運転開始時には、発電・電動機部に供給される電力によってハイブリッド過給機を駆動して空気をエンジンに供給することができる。
また、エンジン運転中には、排気ガスバイパス制御弁を制御することによってハイブリッド過給機に導かれる排気ガスの流量を変えることができる。したがって、排気ガスバイパス制御弁を制御することによって必要な電力量に応じてハイブリッド過給機における発電量を制御することができる。
【0011】
本発明に係るエンジン排気エネルギー回収装置によれば、前記ハイブリッド過給機から導出される排気ガスと、前記バイパス流路から導出される排気ガスとが導かれて熱交換する熱交換器を備えることを特徴とする。
【0012】
ハイブリッド過給機には、排気ガスバイパス制御弁によって流量が制御された排気ガスが導かれる。また、バイパス流路およびハイブリッド過給機を通過した排気ガスを熱交換器へと導くこととした。そのため、ハイブリッド過給機における発電量を減少させるように排気ガスバイパス制御弁を開状態にした場合には、バイパス流路から導かれた温度の高い排気ガスが多量に熱交換器に供給されることになる。したがって、排気ガスバイパス制御弁を制御することによって、ハイブリッド過給機における発電量を制御しつつ、排気ガスの熱エネルギーを有効に回収することができる。
【0013】
本発明に係るエンジン排気エネルギー回収装置によれば、前記制御装置は、前記エンジン負荷検出手段および前記エンジン回転数検出手段によって検出される負荷および回転数から前記エンジンの燃料消費率が所定値以下となる目標燃料噴射タイミングを算出するマップまたは演算式を備え、前記マップまたは前記演算式を用いて前記燃料噴射タイミングを制御することを特徴とする。
【0014】
制御装置は、負荷および回転数からマップまたは演算式を用いて、目標燃料噴射タイミングを算出して、燃料噴射タイミングを制御することとした。そのため、掃気圧力を制御すると共に、シリンダ内の燃料の燃焼状態を改善して熱効率を向上させることができる。したがって、排気ガスバイパス制御弁および燃料噴射タイミングを制御することによって、エンジンの燃料消費率を更に所定値以下に近づけることができる。
【0015】
本発明に係るエンジン排気エネルギー回収装置によれば、前記制御装置は、前記エンジン負荷検出手段および前記エンジン回転数検出手段によって検出される負荷および回転数から前記エンジンの燃料消費率が所定値以下となる目標排気弁閉タイミングを算出するマップまたは演算式を備え、前記マップまたは前記演算式を用いて前記排気弁閉タイミングを制御することを特徴とする。
【0016】
シリンダ内圧力は、掃気圧力と排気弁閉タイミングとによって決まる。そこで、本発明の制御装置は、負荷および回転数からマップまたは演算式を用いて、目標排気弁閉タイミングを算出して排気弁閉タイミングを制御することとした。そのため、シリンダ内圧力を制御することができ、シリンダ内の燃料の燃焼状態を改善して熱効率を向上させることができる。したがって、排気ガスバイパス制御弁と排気弁閉タイミングとを制御することによって、エンジンの燃料消費率を更に所定値以下に近づけることができる。
【0017】
また、排気弁閉タイミングを遅らせた場合には、ピストン上昇時の圧縮仕事が低減される。そのため、圧縮上死点におけるシリンダ内の燃焼ガスの温度が低下する。したがって、排気弁閉タイミングを制御することによって、NOxの生成を抑制することができ、環境負荷の低減が可能となる。
【0018】
本発明に係るエンジン排気エネルギー回収装置によれば、前記エンジンは、燃料ポンプを駆動する作動油が蓄えられる作動油蓄圧器またはコモンレール式燃料噴射弁に供給される燃料油が蓄えられる燃料蓄圧器を備え、前記制御装置には、前記エンジン負荷検出手段および前記エンジン回転数検出手段によって検出される負荷および回転数から前記エンジンの燃料消費率が所定値以下となる目標作動油蓄圧圧力または目標燃料蓄圧圧力を算出するマップまたは演算式を備え、前記マップまたは前記演算式を用いて前記作動油蓄圧圧力または前記燃料蓄圧圧力を制御することを特徴とする。
【0019】
燃料ポンプを駆動する作動油蓄圧圧力またはコモンレール式燃料噴射弁内に供給される燃料蓄圧圧力は、燃料噴射タイミングや燃料噴射圧に影響する。そこで、本発明の制御装置は、負荷および回転数からマップまたは演算式を用いて目標作動油蓄圧圧力または目標燃料蓄圧圧力を算出することとした。また、制御装置は、作動油蓄圧圧力または燃料蓄圧圧力を制御することとした。これにより、作動油蓄圧圧力または燃料蓄圧圧力を制御することによって燃料噴射タイミングや燃料噴射圧を制御することができる。そのため、排気ガスバイパス制御弁の制御とともにシリンダ内の燃料の燃焼状態を改善して熱効率を向上させることができる。したがって、エンジンの燃料消費率を更に所定値以下に近づけることができる。
【0020】
本発明に係るエンジン排気エネルギー回収装置によれば、前記制御装置は、前記排気ガスバイパス制御弁の開度を検出する排気ガスバイパス制御弁開度検出手段からの信号に基づいて、前記エンジンの燃料消費率が所定値以下となる前記排気ガスバイパス制御弁の目標開度を算出し、前記排気ガスバイパス制御弁を前記目標開度になるようにフィードバック制御することを特徴とする。
【0021】
排気ガスバイパス制御弁開度検出手段によって排気ガスバイパス制御弁の開度を逐次検出して、フィードバック制御することとした。そのため、経年劣化などによって排気ガスバイパス制御弁開度検出手段が検出する実開度と目標開度との間に生じるずれを補正することができる。したがって、エンジンの燃料消費率を所定値以下に維持することが可能となる。
【0022】
本発明に係るエンジンの排気エネルギー回収装置によれば、前記制御装置は、シリンダ内圧力検出手段によって検出されるシリンダ内圧力からシリンダ内圧縮圧力Pcompおよびシリンダ内最高圧力Pmaxを算出し、検出される負荷および回転数に対して前記エンジンの燃料消費率が所定値以下となる目標シリンダ内圧縮圧力PcompOおよび目標シリンダ内最高圧力PmaxOをマップまたは演算式から算出し、前記シリンダ内最高圧力Pmaxが前記目標シリンダ内最高圧力PmaxOになるようにし、かつ、前記シリンダ内圧縮圧力Pcompが前記目標シリンダ内圧縮圧力PcompOになるように前記燃料噴射タイミングおよび前記排気弁閉タイミングを制御することを特徴とする。
【0023】
エンジンの燃料消費率を所定値以下にする条件の一つには、燃料の燃焼状況が影響する。燃料の燃焼状況は、エンジンの回転数、掃気圧力、燃料性状(セタン価、粘度、不純物の混合等)等により燃料の着火時期や燃料の微細化状況等が変わる。燃料の燃焼状況は、検知されるシリンダ内圧力から求められるシリンダ内圧縮圧力Pcompおよびシリンダ内最高圧力Pmaxから知ることができる。
そこで、本発明の制御装置は、シリンダ内圧力検出手段によって検出されるシリンダ内圧力を用いて目標シリンダ内圧縮圧力PcompOおよび目標シリンダ内最高圧力PmaxOをマップまたは演算式から求めることとした。また、制御装置は、排気ガスバイパス制御弁、燃料噴射タイミングおよび排気弁閉タイミングを制御することとした。そのため、排気ガスバイパス制御弁、燃料噴射タイミングおよび排気弁閉タイミングを制御することによってシリンダ内圧縮圧力Pcompおよびシリンダ内最高圧力Pmaxを目標シリンダ内圧縮圧力PcompOおよび目標シリンダ内最高圧力PmaxOにすることができ、かつ、シリンダ内の燃料の燃焼状態を改善して熱効率を向上させることができる。したがって、燃料の性状が変化してもエンジンの燃料消費率を所定値以下にすることができる。
【0024】
本発明に係るエンジンの排気エネルギー回収装置によれば、エンジンから排出される排気ガスによって駆動されるタービン部と、該タービン部が駆動されることによって外気を前記エンジンに圧送するコンプレッサ部と、前記タービン部が駆動されることによって発電する一方で供給された電力によって前記タービン部を駆動する発電・電動機と、を有するハイブリッド過給機と、該ハイブリッド過給機に供給される排気ガスを迂回させるバイパス流路と、該バイパス流路に設けられて、該ハイブリッド過給機に導かれる排気ガスの流量を制御する排気ガスバイパス制御弁と、前記エンジンの負荷を検出するエンジン負荷検出手段と、前記エンジンの回転数を検出するエンジン回転数検出手段と、前記エンジンの掃気圧力を検出する掃気圧力検出手段と、前記エンジンのシリンダ内圧力を検出するシリンダ内圧力検出手段と、前記エンジン負荷検出手段および前記エンジン回転数検出手段から検出された負荷と回転数とから前記エンジンの燃料消費率が所定値以下となる目標シリンダ内圧縮圧力PcompOおよび目標シリンダ内最高圧力PmaxOを算出するデータベースを有する制御装置と、を備え、該制御装置は、前記目標シリンダ内圧縮圧力PcompOになるように前記排気弁閉タイミング制御を制御し、前記目標シリンダ内最高圧力PmaxOになるように前記燃料噴射タイミングを制御することを特徴とする。
【0025】
経年劣化などにより排気ガスバイパス制御弁の目標開度と実開度との間にずれが生じてエンジンの掃気圧力が低下することがある。また、エンジンの排気弁シート部が摩耗した場合には、シリンダ内圧縮圧力Pcompが低下するためエンジンの性能が低下する。そこで、本発明では、負荷および回転数から目標シリンダ内圧縮圧力PcompOと目標シリンダ内最高圧力PmaxOとを算出することとした。また、シリンダ内圧力を検出して排気弁閉タイミング制御と燃料噴射タイミングとを制御することとした。そのため、排気弁閉タイミングと燃料噴射タイミングを制御してシリンダ内圧縮圧力Pcompおよびシリンダ内最高圧力Pmaxを目標シリンダ内圧縮圧力PcompOおよび目標シリンダ内最高圧力PmaxOにすることができ、かつ、シリンダ内の燃料の燃焼状態を改善して熱効率を向上させることができる。したがって、燃料の性状が変化してもエンジンの燃料消費率を所定値以下にすることができる。
【0026】
また、シリンダ内圧力を検出して排気弁閉タイミングを制御することとした。そのため、排気ガスバイパス制御弁が全閉状態の場合であっても、排気弁閉タイミングを制御して目標シリンダ内圧縮圧力PcompOに制御することができる。したがって、排気ガスバイパス制御弁が制御不具合等になった場合であっても、エンジンの燃料消費率を所定値以下にすることができる。
【0027】
本発明に係る船舶によれば、上記のいずれかに記載のエンジン排気エネルギー回収装置を備えることを特徴とする。
【0028】
船舶に搭載されるエンジン排気エネルギー回収装置は、エンジンの運転コストを抑えることができる。そのため、船舶の運航コストの削減を図ることができる。また、環境に考慮した船舶にすることができる。
【0029】
本発明に係る発電プラントによれば、上記のいずれかに記載のンジン排気エネルギー回収装置を備えることを特徴とする。
【0030】
発電プラントに設けられるンジン排気エネルギー回収装置は、エンジンの運転コストを抑えることができる。そのため、発電プラントの運用コストの削減を図ることができる。また、環境に考慮した発電プラントにすることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る排気エネルギー回収装置によれば、制御装置によって排気ガスバイパス制御弁を制御することとした。これにより、ハイブリッド過給機に導かれる排気ガスの流量を制御することができる。また、制御装置は、エンジン負荷検出手段によって検出される負荷と、エンジン回転数検出手段によって検出される回転数とから、データベースを用いて目標掃気圧力を算出することとした。これらにより、ハイブリッド過給機のコンプレッサ部からエンジンに導かれる掃気の圧力、すなわち、掃気圧力を目標掃気圧力に制御することができる。したがって、排気ガスバイパス制御弁を制御してエンジンの燃料消費率を所定値以下に抑えることができ、エンジンの運転コストを低減することができる。
【0032】
また、エンジンの燃料消費率は、燃料の燃焼状態に影響される。燃料の燃焼状態は、回転数、掃気圧力、燃料の性状、燃料の着火時期、燃料の噴射状態等によって変化する。本発明では、排気ガスバイパス制御弁を制御して掃気圧力を制御することとした。そのため、エンジンにおける燃料の燃焼状態を改善することができる。したがって、排気ガスバイパス制御弁を制御することによってエンジンの燃料消費率が改善される。
【0033】
また、排気ガスによって発電するハイブリッド過給機を設けることとした。そのため、エンジン運転開始時には、発電・電動機部に供給される電力によってハイブリッド過給機を駆動して空気をエンジンに供給することができる。
また、エンジン運転中には、排気ガスバイパス制御弁を制御することによってハイブリッド過給機に導かれる排気ガスの流量を変えることができる。したがって、排気ガスバイパス制御弁を制御することによって必要な電力量に応じてハイブリッド過給機における発電量を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態に係るエンジン排気エネルギー回収装置を具備した船舶の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るエンジンの燃料消費率を所定値以下にするために用いられるデータベースである。
【図3】本発明の第1実施形態に係る制御構成図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る制御フローチャートである。
【図5】本発明の第2実施形態に係る制御構成図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る制御フローチャートである。
【図7】本発明の第3実施形態に係る制御構成図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る制御フローチャートである。
【図9】本発明の第4実施形態に係る制御フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明に係るエンジン排気エネルギー回収装置を備えた船舶の実施形態について説明する。
但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0036】
図1には、本発明のエンジン排気エネルギー回収装置を具備した船舶の概略構成図が示されている。
船舶(図示せず)の機関室(図示せず)内には、エンジン排気エネルギー回収装置1と、推進用ディーゼル機関(エンジン)2が設けられている。
エンジン排気エネルギー回収装置1は、ハイブリッド過給機3と、排気ガスエコノマイザ(熱交換器)9と、空気冷却器18とを有している。
【0037】
推進用ディーゼル機関(以下「エンジン」という。)2は、ディーゼル機関本体(以下「エンジン本体」という。)4と、排気ガスが蓄積される排気マニホールド7と、掃気が蓄積される給気マニホールド8とを備えている。推進用ディーゼル機関2は、低速大型の舶用2サイクルディーゼル機関である。
【0038】
エンジン2は、エンジン本体4内に設けられているシリンダ6と、シリンダ6内に燃料を噴射する燃料噴射装置(図示せず)と、シリンダ6内で燃料が燃焼することによって発生する燃焼ガス(以下「排気ガス」という。)をシリンダ6内から排気する排気弁(図示せず)とを備えている。
なお、本実施形態では、エンジン2は、シリンダ6の数が6本配置された6気筒ディーゼル機関として説明するが、これに限定されるものではない。また、推進用ディーゼル機関ではなく、発電用ディーゼル機関としても良い。
【0039】
ハイブリッド過給機3は、エンジン本体4に設けられている排気マニホールド7から排出された排気ガスによって駆動されるタービン部3aと、タービン部3aとタービン軸3c上に結合して回転駆動され外気を圧縮してエンジン本体4に掃気を供給するコンプレッサ部3bと、タービン軸3cが回転駆動することによって発電する発電・電動機3dとを備えている。
なお、本実施形態では、コンプレッサ部3bによって圧縮されてエンジン本体4に供給される圧縮空気を掃気と称しているが、給気と称しても同じ意味である。
【0040】
発電・電動機3dは、タービン軸3cが回転駆動することによって発電する。発電・電動機3dによって発生した電力は、コンバータ11を介して直流に変換された後、インバータ12によって交流に変換される。インバータ12によって交流にされた電力は、制御用抵抗器13を介して機関室内に設置されている配電盤14に電気的に接続される。配電盤14に電気的に接続されることによって、発電・電動機3dが発電した電力は、船内電源として利用される。
【0041】
また、発電・電動機3dは、電力が供給されることによって電動機として駆動する。発電・電動機3dは、電動機として駆動することによってタービン軸3cを回転駆動する。タービン軸3cが回転駆動するため、タービン軸3c上に設けられているコンプレッサ部3bも回転駆動する。これにより、コンプレッサ部3bが外気を圧縮してエンジン本体4に掃気を供給することができる。
【0042】
排ガスエコノマイザ9は、後述する排気管L3から導かれた排気ガスの熱と、後述する給水管L5から供給された水とが熱交換するものである。排ガスエコノマイザ9は、供給された水を排ガスエコノマイザ9内に設けられている水管内(図示省略)に通水して排気ガスの熱によって蒸気に熱変換する。
【0043】
空気冷却器18は、ハイブリッド過給機3のコンプレッサ部3bによって圧縮された掃気を冷却して空気密度を上げるためのものである。空気冷却器18によって冷却された掃気は、後述する給気管K2によってエンジン本体4に供給される。
【0044】
排気管L1は、エンジン2の排気マニホールド7と、ハイブリッド過給機3のタービン部3aとを連結している。
バイパス管(バイパス流路)L2は、排気管L1の途中もしくは排気マニホールド7に直接接続されており、排気管L1もしくは排気マニホールド7と後述する排気管L3とを連結している。バイパス管L2は、排気マニホールド7から排出された排気ガスをハイブリッド過給機3から迂回させる。
【0045】
排気管L3は、ハイブリッド過給機3のタービン部3aと、排ガスエコノマイザ9とを連結している。排気管L3は、タービン部3aから排出される排気ガスを排ガスエコノマイザ9に送通する。
排気管L4は、排ガスエコノマイザ9と煙突(図示省略)との間を連結している。排気管L4により、排ガスエコノマイザ9において熱交換した後の排気ガスを船外に放出することができる。
【0046】
給気管K1は、ハイブリッド過給機3のコンプレッサ部3bと、空気冷却器18とを連結している。
給気管K2は、空気冷却器18と、エンジン2の給気マニホールド8とを連結している。給気管K2は、空気冷却器18によって冷却された掃気をエンジン本体4の給気マニホールド8へ送通する。
【0047】
給水管L5は、船内の図示しない主給水管から水を排ガスエコノマイザ9へ供給する。
尚、排ガスエコノマイザ9において排気ガスと熱交換されて発生した蒸気は、船内に設けられている図示しない雑用蒸気管へと導かれる。
【0048】
排気ガスバイパス制御弁V1は、バイパス管L2の途中に介装されている。排気ガスバイパス制御弁V1は、ハイブリッド過給機3へ導かれる排気ガスの流量を制御する。すなわち、排気ガスバイパス制御弁V1が全閉状態の場合には、排気管L1から導かれる排気ガスの全流量は、ハイブリッド過給機3へと供給される。排気ガスバイパス制御弁V1の開度が増加するにつれて、排気管L1もしくは排気マニホールド7からバイパス管L2へと導かれる排気ガスの流量が増加する。そのため、ハイブリッド過給機3へと導かれる排気ガスの流量が制御されることになる。その排気ガスバイパス制御弁V1の開度は、制御装置(図示省略)により制御される。
【0049】
オリフィス19は、排気ガスバイパス制御弁V1の下流側のバイパス管L2上に介装されている。オリフィス19は、エンジン本体4が高負荷運転時であって、かつ、排気ガスバイパス制御弁V1が全開状態の場合に、バイパス管L2に排気ガスが多量に導かれるのを防止して、ハイブリッド過給機3に排気ガスが供給されるようにする。
なお、本実施形態では、オリフィス19を設けることとして説明したが、オリフィス19を設けなくても良い。
【0050】
次に、エンジン本体4から排出される排気ガスの流れについて説明する。
エンジン本体4に設けられているシリンダ6内に供給された燃料が燃焼することによって、排気ガスが発生する。シリンダ内6に発生した排気ガスは、排気弁が開状態の際にエンジン本体4から排出される。エンジン本体4から排出された排気ガスは、排気マニホールド7に溜められる。排気マニホールド7に溜められた排気ガスは、排気管L1へと導出される。排気管L1に導出された排気ガスは、ハイブリッド過給機3へと導かれる。
【0051】
ハイブリッド過給機3に導かれた排気ガスによって、タービン部3aが回転駆動される。タービン部3aが回転駆動されるため、タービン軸3cが回転駆動される。タービン軸3cが回転駆動されることによって、コンプレッサ部3bは外気を圧縮し、発電・電動機3dが発電する。ハイブリッド過給機3においてタービン部3aを回転駆動させた排気ガスは、排気管L3へと導出される。
【0052】
また、排気ガスバイパス制御弁V1の開度が開状態の場合には、排気管L1に導かれた排気ガスの一部もしくは排気マニホールド7の中の排気ガスの一部がバイパス管L2へと導かれる。バイパス管L2に導かれた排気ガスは、ハイブリッド過給機3の下流側に接続されている排気管L3に合流される。
【0053】
ハイブリッド過給機3から導出された排気ガスと、バイパス管L2から導かれた排気ガスとは、排気管L3を経て排ガスエコノマイザ9へと導かれる。排ガスエコノマイザ9に導かれた排気ガスは、排ガスエコノマイザ9内部へと導出される。排ガスエコノマイザ9の内部に供給された排気ガスは、排ガスエコノマイザ9内に設けられている水管内を通過する水と熱交換される。排ガスエコノマイザ9において熱交換された排気ガスは、排気管L4を介して煙突から外部へと放出される。
【0054】
次に、エンジン本体4に供給される掃気の流れについて説明する。
排気ガスによって回転駆動されたハイブリッド過給機3のコンプレッサ部3bが圧縮した掃気は、給気管K1へと導出される。給気管K1に導出された掃気は、空気冷却器18へと導かれる。空気冷却器18に導かれた掃気は、冷却されて密度が高められて給気管K2へと導かれる。給気管K2に導かれた掃気は、給気マニホールド8へと供給される。給気マニホールド8内の掃気は、エンジン本体4内のシリンダ6内へと導かれる。
【0055】
次に、エンジン本体4の燃料消費率を所定値以下に決めるためのマップについて、図2を参照して説明する。
図2のマップは、あるエンジン本体4の回転数および負荷に対する燃料消費率と、燃料噴射タイミングと、シリンダ内圧縮圧力Pcompと、シリンダ内最高圧力Pmaxとの関係を示している。制御装置内のデータベースは、エンジン本体4の回転数、負荷のそれぞれに対して同様の関係のマップを複数持つこととなる。
図2の横軸には、シリンダ内圧縮圧力Pcompを示し、図2の右方向が大となる。縦軸には、燃料噴射タイミングを示し、上方が遅角になる方向、下方が進角になる方向を示している。
【0056】
シリンダ内圧縮圧力Pcompは、掃気圧力が高い場合に大になる関係が知られている。また、シリンダ内圧縮圧力Pcompは、エンジン本体4に設けられている排気弁の排気弁閉タイミングを早閉じすることによって大になる関係であることも知られている。そのため、図2の横軸は、シリンダ内圧縮圧力Pcompに代えて掃気圧力や排気弁閉タイミングとして、制御因子を代えても同様の関係を得ることができる。
【0057】
図中の間隔を有した複数の曲線は、エンジン本体4の燃料消費率を示す等高線である。燃料消費率は、エンジン本体4の回転数、負荷によって曲線の位置および曲線の形状が異なっている。図中の等高線は、曲線の右下(曲線の中心方向)方向に移るに従い燃料消費率が良いことを示している。
図中の太い直線は、シリンダ内最高圧力Pmax上限値を示している。シリンダ内最高圧力Pmax上限値の右側エリアは、エンジン本体4の許容圧力を超えるため使用できない範囲となっている。
【0058】
燃料消費率の所定値Pは、図中の太い直線で示したシリンダ内最高圧力Pmax上限値よりも左側エリアで且つ、燃料消費率の等高線(図中の曲線)のシリンダ内最高圧力Pmax上限値を示す太い直線に近接した部分となる。
エンジン本体4の燃料消費率は、掃気圧力、または、排気弁閉タイミング、または、燃料噴射タイミングを制御してこの所定値P以下になるようにする。
【0059】
エンジン本体4の負荷が低くなるにつれて、掃気圧力が低下する。それに伴いシリンダ内圧縮圧力Pcompが低下する。そのため、燃料噴射タイミングを進角することができるようになる。このため、エンジン本体4の負荷が低いほど燃料消費率の所定値Pは、図2のマップにおいて太い直線のシリンダ内最高圧力Pmax上限値に沿って左下方向に移動する。
その際、燃料消費率の等高線の曲線の中心も太い直線のシリンダ内最高圧力Pmax上限値に沿って左下方向に移動する。
なお、本実施形態では、データベースにマップを備えるものとして説明したが、マップの代わりに演算式を用いても良い。
【0060】
[第1実施形態]
本発明による燃料消費率を所定値以下にする制御方法の第1実施形態を図3および図4に基づいて説明する。図3は、本実施形態に係る制御構成図であり、図4は、本実施形態に係る制御フローチャートである。
図3において、エンジン負荷検出手段20によって検知されたエンジン本体4(図1参照)の負荷信号と、エンジン回転数検出手段21によって検知されたエンジン本体4の回転数信号と、掃気圧力検出手段22によって検知された掃気圧力信号とが、コントローラ(制御装置)23に入力される。入力された各信号によって、コントローラ23は、排気ガスバイパス制御弁V1に排気ガスバイパス制御弁制御指令信号Aを出力する。
【0061】
図4のとおり、ステップS1において、コントローラ23には、夫々の検出手段20,21,22によって検出されたエンジン負荷L、エンジン回転数Neおよび掃気圧力Psの信号が入力される。
ステップS2において、検出されたエンジン負荷Lおよびエンジン回転数Neをコントローラ23内に用意されているデータベースに照合する。図2において横軸に掃気圧力を示したマップに基づいて、コントローラ23は、最適掃気圧力PsO(以下「目標最適圧力」という。)を算出する。
【0062】
ステップS3において、掃気圧力検出手段22によって検出された掃気圧力Psと、ステップS2において算出された目標掃気圧力PsOとの差ΔPsを求める。コントローラ23は、この差ΔPsに基づいて排気ガスバイパス制御弁V1の開度変更量ΔAを決定する。
【0063】
ステップS4において、ステップS3において決定された排気ガスバイパス制御弁V1の開度変更量ΔAと、現状の排気ガスバイパス制御弁V1の開度指令値A’とから排気ガスバイパス制御弁V1の新しい排気ガスバイパス制御弁制御指令信号Aを決定する。
ステップS5において、コントローラ23は、排気ガスバイパス制御弁V1へ新しい排気ガスバイパス制御弁制御指令信号Aによって制御するように指令を出力する。
【0064】
その後、ステップS5からステップS1に戻って繰返す。
この動作を繰返すことにより掃気圧力検出手段22によって検出された掃気圧力Psが目標掃気圧力PsOからずれている場合には、掃気圧力Psを修正することとなる。これにより、エンジン本体4の燃料消費率が所定値P以下となるようにすることができる。
【0065】
以上説明したように、本実施形態にかかるエンジン排気エネルギー回収装置およびこれを備えた船舶によれば、以下の作用効果を奏する。
コントローラ(制御装置)23によって排気ガスバイパス制御弁V1を制御することとした。これにより、ハイブリッド過給機3に導かれる排気ガスの流量を制御することができる。また、コントローラ23は、エンジン負荷検出手段20によって検出されたエンジン負荷Lと、エンジン回転数検出手段21によって検出されたエンジン回転数Neとから、コントローラ23内に設けられているデータベースのマップを用いて目標掃気圧力PsOを算出することとした。これらにより、ハイブリッド過給機3のコンプレッサ部3bからエンジン本体4に導かれる掃気の圧力、すなわち、掃気圧力Psを目標掃気圧力PsOに制御することができる。したがって、排気ガスバイパス制御弁V1を制御してエンジン本体4の燃料消費率を所定値P以下に抑えることができ、エンジン2の運転コストを低減することができる。
【0066】
また、排気ガスバイパス制御弁V1を制御して掃気圧力Psを制御することとした。そのため、エンジン本体4における燃料の燃焼状態を改善することができる。したがって、排気ガスバイパス制御弁V1を制御することによってエンジン本体4の燃料消費率が改善される。
【0067】
また、排気ガスによって発電するハイブリッド過給機3を設けることとした。そのため、エンジン2エンジン2運転開始時には、発電・電動機部3dに供給された電力によってハイブリッド過給機3を駆動して空気をエンジン本体4に供給することができる。
また、エンジン2運転中には、排気ガスバイパス制御弁V1を制御することによってハイブリッド過給機3に導かれる排気ガスの流量を変えることができる。したがって、排気ガスバイパス制御弁V1を制御することによって必要な電力量に応じてハイブリッド過給機3における発電量を制御することができる。
【0068】
ハイブリッド過給機3には、排気ガスバイパス制御弁V1によって流量が制御された排気ガスが導かれる。また、バイパス管(バイパス流路)L2およびハイブリッド過給機3を通過した排気ガスを排ガスエコノマイザ(熱交換器)9へと導くこととした。そのため、ハイブリッド過給機3における発電量を減少させるように排気ガスバイパス制御弁V1を開状態にした場合には、バイパス管L2から導かれた温度の高い排気ガスが多量に排ガスエコノマイザ9に供給されることになる。したがって、排気ガスバイパス制御弁V1を制御することによって、ハイブリッド過給機3における発電量を制御しつつ、排気ガスの熱エネルギーを有効に回収することができる。
【0069】
船舶に搭載されているエンジン排気エネルギー回収装置1は、エンジン2の運転コストを抑えることができる。そのため、船舶の運航コストの削減を図ることができる。
【0070】
[第2実施形態]
次に、本発明による燃料消費率を所定値以下にする制御方法の第2実施形態を図5および図6に基づいて説明する。なお、第1、第2実施形態は、シリンダ内圧力を計測せずに、掃気圧力検出手段により検出された掃気圧力に基づく制御をする場合である。また、後述する実施形態3、4は、シリンダ内圧力を測定して制御する場合である。
図5は、本実施形態に係る制御構成図であり、図6は、本実施形態に係る制御フローチャートである。
【0071】
図5において、第1実施形態と同一構成、排気ガスの流れ、空気の流れ、制御方法については、同一符号を付す。第1実施形態と異なる制御方法は、排気ガスバイパス制御弁開度検出手段26から排気ガスバイパス制御弁開度信号(以下「開度信号」という。)Bがコントローラ24へと入力される点と、コントローラ24からエンジンコントローラ25へ燃料噴射タイミングの信号θinj、排気弁閉タイミングの信号θevc、作動油蓄圧圧力信号または燃料油蓄圧圧力信号が出力される点である。
【0072】
なお、作動油蓄圧圧力信号とは、燃料噴射装置に接続されている燃料ポンプ(図示せず)を作動させる駆動油の制御を電気信号によって行う電子制御ディーゼル機関(図示せず)において、燃料ポンプを作動させるための駆動油の蓄圧圧力を言う。
また、燃料油蓄圧圧力信号とは、燃料噴射装置に接続されているコモンレール式燃料噴射弁(図示せず)を用いる電子制御ディーゼル機関において、コモンレール内に蓄圧される燃料油の蓄圧圧力を言う。
【0073】
図6に示すフローチャートのステップS11において、コントローラ(制御装置)24には、排気ガスバイパス制御弁開度検出手段26から開度信号Bと、夫々の検出手段20,21,22によって検出されたエンジン負荷L、エンジン回転数Neおよび掃気圧力Psの信号とが入力される。
【0074】
ステップS12において、検出されたエンジン負荷L、エンジン回転数Neに対する掃気圧力Ps、燃料噴射タイミング、排気弁閉タイミング、作動油蓄圧圧力または燃料油蓄圧圧力の各々との関係を示すマップへと照合する。コントローラ24は、照合したマップから、目標掃気圧力PsO、目標燃料噴射タイミングθinj、目標排気弁閉タイミングθevc、目標作動油蓄圧圧力または目標燃料油蓄圧圧力(各パラメータ最適値)を算出する。
【0075】
ここで、コントローラ24内に用意されているマップとは、図2に示したようにエンジン負荷L、エンジン回転数Neそれぞれに対して、シリンダ内圧縮圧力Pcompと燃料噴射タイミングとによって形成される座標内に燃料消費率の等高線およびシリンダ内最高圧力Pmax上限値を示して、燃料消費率を所定値P以下とすることができるものをいう。
【0076】
また、図2中の横軸は、シリンダ内圧縮圧力Pcompに代えて、掃気圧力、排気弁閉タイミング、作動油蓄圧圧力、燃料油蓄圧圧力のいずれかであってもよい。この場合であっても、同様にマップに基づいて、目標掃気圧力PsO、目標燃料噴射タイミングθinj、目標排気弁閉タイミングθevc、目標作動油蓄圧圧力または目標燃料油蓄圧圧力を算出することができる。
【0077】
ステップS13において、掃気圧力検出手段22によって検出された掃気圧力Psと、ステップS12において算出された目標掃気圧力PsOとの差ΔPsを求める。コントローラ24は、この差ΔPsに基づいて排気ガスバイパス制御弁V1の開度変更量ΔAを決定する。
【0078】
ステップS14において、ステップS13において決定された排気ガスバイパス制御弁V1の開度変更量ΔAと、現状の排気ガスバイパス制御弁V1の開度指令値A’とから排気ガスバイパス制御弁V1の新しい排気ガスバイパス制御弁制御指令信号Aを決定する。
【0079】
ステップS15において、コントローラ24は、排気ガスバイパス制御弁V1へ新しい排気ガスバイパス制御弁制御指令信号Aを出力する。
ステップS16において、新しく検出された排気ガスバイパス制御弁V1の開度信号Bと、新しい排気ガスバイパス制御弁制御指令信号Aとの誤差を算出する。
【0080】
開度信号Bと、新しい排気ガスバイパス制御弁制御指令信号Aとの間に誤差がある場合には、ステップS17において、誤差に基づいて補正量を算出して、ステップS14に戻り排気ガスバイパス制御弁V1の開度の補正を繰返す。
開度信号Bと、新しい排気ガスバイパス制御弁制御指令信号Aとが同じになった場合には、ステップS11に戻り、掃気圧力Psが目標掃気圧力PsOを維持するように制御が繰返される。
【0081】
一方、ステップS18において、マップより得られた目標燃料噴射タイミングθinj、目標排気弁閉タイミングθevc、目標作動油蓄圧圧力または目標燃料油蓄圧圧力の各信号をエンジンコントローラ25へと送信する。これにより、エンジンコントローラ25は、エンジン本体4(図1参照)の制御を実施する。
【0082】
以上説明したように、本実施形態にかかるエンジン排気エネルギー回収装置およびこれを備えた船舶によれば、以下の作用効果を奏する。
コントローラ(制御装置)24は、エンジン負荷Lおよびエンジン回転数Neからマップを用いて、目標燃料噴射タイミングθinjを算出して、燃料噴射タイミングを制御することとした。そのため、掃気圧力Psを目標掃気圧力PsOに制御すると共に、シリンダ6内の燃料の燃焼状態を改善して熱効率を向上させることができる。したがって、排気ガスバイパス制御弁V1および燃料噴射タイミングを制御することによって、エンジン本体4の燃料消費率を更に所定値P以下に近づけることができる。
【0083】
また、コントローラ24は、エンジン負荷Lおよびエンジン回転数Neからマップを用いて、目標排気弁閉タイミングθevcを算出して排気弁閉タイミングを制御することとした。そのため、シリンダ内圧力を制御することができ、シリンダ6内の燃料の燃焼状態を改善して熱効率を向上させることができる。したがって、排気ガスバイパス制御弁V1と排気弁閉タイミングとを制御することによって、エンジン本体4の燃料消費率を更に所定値P以下に近づけることができる。
【0084】
また、排気弁閉タイミングを遅らせた場合には、ピストン上昇時の圧縮仕事が低減される。そのため、圧縮上死点におけるシリンダ6内の燃焼ガスの温度が低下する。したがって、排気弁閉タイミングを制御することによって、NOxの生成を抑制することができ、環境負荷の低減が可能となる。
【0085】
また、コントローラ24は、エンジン負荷Lおよびエンジン回転数Neからマップを用いて目標作動油蓄圧圧力または目標燃料蓄圧圧力を算出することとした。また、コントローラ24は、作動油蓄圧圧力または燃料蓄圧圧力を制御することとした。そのため、作動油蓄圧圧力または燃料蓄圧圧力を制御することによって燃料噴射タイミングや燃料噴射圧を制御して、排気ガスバイパス制御弁V1の制御とともにシリンダ6内の燃料の燃焼状態を改善して熱効率を向上させることができる。したがって、エンジン本体4の燃料消費率を更に所定値P以下に近づけることができる。
【0086】
また、図6のステップS14〜S17に示すように、排気ガスバイパス制御弁開度検出手段26によって排気ガスバイパス制御弁V1の開度を逐次検出して、フィードバック制御することとした。そのため、排気ガスバイパス制御弁開度検出手段26が検出する開度信号(実開度)Bと排気ガスバイパス制御弁制御指令信号(指令開度)Aとの間に生じる経年劣化などによる誤差(ずれ)を補正することができる。したがって、エンジン本体4の燃料消費率を所定値P以下に維持することが可能となる。
【0087】
[第3実施形態]
次に、本発明による燃料消費率を所定値以下にする制御方法の第3実施形態を図7および図8に基づいて説明する。図7は、本実施形態に係る制御構成図であり、図8は、本実施形態に係る制御フローチャートである。
図7および図8において、第2実施形態と同一構成、排気ガスの流れ、空気の流れ、制御方法については、同一符号を付す。第2実施形態と異なる制御方法は、シリンダ内圧力検出手段27によるシリンダ内圧力信号がコントローラ28に入力される点である。
【0088】
図8に示すフローチャートのステップS21において、コントローラ28には、排気ガスバイパス制御弁開度検出手段26によって検出された排気ガスバイパス制御弁開度信号Bと、夫々の検出手段20,21,22,27によって検出されたエンジン負荷L、エンジン回転数Ne、掃気圧力Psに加え、シリンダ内圧力Pcylの信号が入力される。
ステップS22において、検出されたシリンダ内圧力Pcylに対するクランク角度履歴より、燃料が着火する前の圧力であるシリンダ内圧縮圧力Pcomp、シリンダ内最高圧力Pmaxが算出される。
【0089】
ステップS23において、コントローラ28は、検出されたエンジン負荷Lおよびエンジン回転数Neをコントローラ28内に用意されているデータベースに照合する。コントローラ28は、マップに基づいて目標掃気圧力PsO、目標シリンダ内圧縮圧力PcompO、目標シリンダ内最高圧力PmaxOを算出する。
【0090】
ステップS24において、掃気圧力検出手段22によって検出された掃気圧力Psと、ステップS23において算出された目標掃気圧力PsOとの差ΔPsを求める。コントローラ28は、この差ΔPsに基づいて排気ガスバイパス制御弁V1の開度変更量ΔAを決定する。
【0091】
ステップS25において、コントローラ28は、ステップS24おいて決定された排気ガスバイパス制御弁V1の開度変更量ΔAと、現状の開度指令値A’とから排気ガスバイパス制御弁V1の新たな排気ガスバイパス制御弁制御指令Aを決定する。
【0092】
ステップS26において、コントローラ28は、排気ガスバイパス制御弁V1へ新たな排気ガスバイパス制御弁制御指令Aを出力する。
ステップS27において、検出された排気ガスバイパス制御弁V1の排気ガスバイパス制御弁開度信号Bと、新たな排気ガスバイパス制御弁制御指令Aとの誤差を算出する。
【0093】
ステップS28において、検出された排気ガスバイパス制御弁V1の排気ガスバイパス制御弁開度信号Bと、新たな排気ガスバイパス制御弁制御指令Aとの間の誤差の有無を判定する。誤差がある場合には、ステップS30において、誤差に基づいて補正量を算出し、ステップS25に戻り排気ガスバイパス制御弁V1の開度の補正を繰返す。
ステップS28において、検出された排気ガスバイパス制御弁V1の開度信号Bが新たな排気ガスバイパス制御弁制御指令Aと同じになった場合には、ステップS29を経てステップS21に戻り、掃気圧力Psが目標掃気圧力PsOになるように制御を繰返す。
【0094】
一方、ステップS31においては、コントローラ28は、ステップS22において算出されたシリンダ内圧縮圧力Pcompと、ステップS23において算出された目標シリンダ内圧縮圧力PcompOとの差ΔPcompに基づいて排気弁閉タイミングの変更量Δθevcを決定する。
ステップS32では、ステップS31と並行して、ステップS23において算出された目標シリンダ内最高圧力PmaxOと、ステップS22において算出されたシリンダ内最高圧力Pmaxとの差ΔPmaxに基づいて燃料噴射タイミングの変更量Δθinjを決める。
【0095】
ステップS33において、コントローラ28は、ステップS31において決定された排気弁閉タイミングの変更量Δθevcに基づいて排気弁閉タイミングθevcを決定する。
ステップS34において、コントローラ28は、ステップS32において決定された燃料噴射タイミングの変更量Δθinjに基づいて燃料噴射タイミングθinjを決定する。
【0096】
ステップS35において、コントローラ28は、エンジンコントローラ25に対してステップS33において決定された排気弁閉タイミングθevcおよびステップS34において決定された燃料噴射タイミングθinjの指令を出す。
ステップS36において、目標シリンダ内最高圧力PmaxOと検出されたシリンダ内最高圧力Pmaxとの誤差、および、目標シリンダ内圧縮圧力PcompOと検出されたシリンダ内圧縮圧力Pcompとの誤差を算出する。
【0097】
ステップS37において、目標シリンダ内最高圧力PmaxOと検出したシリンダ内最高圧力Pmaxとの間、目標シリンダ内圧縮圧力PcompOと検出したシリンダ内圧縮圧力Pcompとの間に誤差がある場合には、誤差に基づいて補正量を算出する。コントローラ28は、算出した補正量をステップS33と、ステップS34とにフィードバックして制御を繰返す。
【0098】
以上説明したように、本実施形態にかかるエンジン排気エネルギー回収装置およびこれを備えた船舶によれば、以下の作用効果を奏する。
コントローラ(制御装置)28は、シリンダ内圧力検出手段27によって検出されたシリンダ内圧力Pcylを用いて目標シリンダ内圧縮圧力PcompOおよび目標シリンダ内最高圧力PmaxOをマップから求めることとした。また、コントローラ28は、排気ガスバイパス制御弁V1、燃料噴射タイミングおよび排気弁閉タイミングを制御することとした。そのため、排気ガスバイパス制御弁と排気弁閉タイミングと燃料噴射タイミングとを制御することによってシリンダ内圧縮圧力Pcompおよびシリンダ内最高圧力Pmaxを目標シリンダ内圧縮圧力PcompOおよび目標シリンダ内最高圧力PmaxOにすることができ、シリンダ6内の燃料の燃焼状態を改善して熱効率を向上させることができる。したがって、燃料の性状が変化してもエンジン本体4の燃料消費率を所定値P以下にすることができる
【0099】
[第4実施形態]
次に、本発明による燃料消費率を所定値以下にする制御方法の第4実施形態を図7および図9に基づいて説明する。図7は、本実施形態の制御構成図であり第3実施形態と同様である。図9は、本実施形態の制御フローチャートを示す。
【0100】
図9に示すフローチャートのステップS41において、コントローラ29には、排気ガスバイパス制御弁開度検出手段26によって検出された排気ガスバイパス制御弁開度信号Bと、夫々の検出手段20,21,22,27によって検出されたエンジン負荷L、エンジン回転数Ne、掃気圧力Ps、シリンダ内圧力Pcylが入力される。
ステップS42において、コントローラ29は、検出されたシリンダ内圧力Pcylのクランク角度履歴より、シリンダ内圧縮圧力Pcomp、シリンダ内最高圧力Pmaxを算出する。
【0101】
ステップS43において、検出されたエンジン負荷Lおよびエンジン回転数Neをコントローラ29内に用意されているデータベースに照合する。コントローラ29は、データベース内のマップに基づいて目標シリンダ内圧縮圧力PcompOおよび目標シリンダ内最高圧力PmaxOを算出する。
【0102】
ステップS44において、コントローラ29は、シリンダ内圧縮圧力Pcompと目標シリンダ内圧縮圧力PcompOとの差ΔPcompを求める。コントローラ29は、この差ΔPcompに基づいて排気ガスバイパス制御弁V1の開度変更量ΔAを決定する。
【0103】
ステップS45において、ステップS44において決定された排気ガスバイパス制御弁V1の開度変更量ΔAと、現状の開度指令値A’とから排気ガスバイパス制御弁V1の新しい排気ガスバイパス制御弁制御指令Aを決定する。
ステップS46において、ステップS45において決定された新しい排気ガスバイパス制御弁制御指令Aを排気ガスバイパス制御弁V1に出力する。
【0104】
ステップS47において、目標シリンダ内圧縮圧力PcompOと、検出されたシリンダ内圧縮圧力Pcompとの誤差を算出する。
ステップS48では、排気ガスバイパス制御弁V1の開度が0であるかを判断する。排気ガスバイパス制御弁V1の開度がA≠0、即ち開いている場合には、ステップS49に進む。
ステップS49では、目標シリンダ内圧縮圧力PcompOと、検出されたシリンダ内圧縮圧力Pcompとの誤差に基づいて排気ガスバイパス制御弁V1の開度補正量が算出される。その後、その結果をステップS45に反映させて排気ガスバイパス制御弁V1の開度制御を実施する。
【0105】
一方、ステップS48において、排気ガスバイパス制御弁V1の開度がA=0、即ち閉じている場合には、ステップS50に進む。
ステップS50では、ステップS47において算出された目標シリンダ内圧縮圧力PcompOと、検出されたシリンダ内圧縮圧力Pcompとの誤差に基づいて排気弁閉タイミングの補正量Δθevcを算出する。その後、ステップS51に進み、排気弁閉タイミングを決定する。
【0106】
ステップS52においては、ステップS42において算出されたシリンダ内最高圧力Pmaxと、ステップS43において算出された目標シリンダ内最高圧力PmaxOとの差ΔPmaxが算出される。さらに、ステップS52では、算出された差ΔPmaxに基づいて燃料噴射タイミングの変更量Δθinjが決定される。
ステップS53において、コントローラ29は、ステップS52において決定された燃料噴射タイミングの変更量Δθinjに基づいて燃料噴射タイミングを決定する。
【0107】
ステップS54において、エンジンコントローラ25へステップS51において決定された排気弁閉タイミングθevcと、ステップS53において決定された燃料噴射タイミングθinjとの各々の制御指令を出す。
【0108】
ステップS55において、目標シリンダ内最高圧力PmaxOとシリンダ内最高圧力Pmaxとの間の誤差と、目標シリンダ内圧縮圧力PcompOとシリンダ内最高圧力Pmaxとの間の誤差とを算出する。シリンダ内最高圧力Pmaxと目標シリンダ内最高圧力PmaxOとの間に誤差がある場合には、ステップS56に進む。
【0109】
ステップS56では、ステップS55において算出された目標シリンダ内圧縮圧力PcompOとシリンダ内最高圧力Pmaxとの間の誤差に基づいて、燃料噴射タイミングの補正量を算出する。
その後、ステップS53に進みステップS56において算出された燃料噴射タイミングの補正量に基づいた新たな燃料噴射タイミングθinjを決定し、エンジンコントローラ25へ新たな燃料噴射タイミングθinjの制御指令を出力する。
【0110】
一方、ステップS55において、シリンダ内圧縮圧力Pcompと目標シリンダ内圧縮圧力PcompOと間に誤差がある場合には、ステップS50に進む。
ステップS50では、シリンダ内圧縮圧力Pcompと目標シリンダ内圧縮圧力PcompOとの間の誤差に基づいて排気弁閉タイミングの補正量Δθevcが算出される。
その後、ステップS51に進みステップS50において算出された排気弁閉タイミングの補正量Δθevcに基づく新たな排気弁閉タイミングθevcを決定し、エンジンコントローラ25へ新たな排気弁閉タイミングθevcの制御指令を出力する
【0111】
以上説明したように、本実施形態にかかるエンジン排気エネルギー回収装置およびこれを備えた船舶によれば、以下の作用効果を奏する。
エンジン負荷Lおよびエンジン回転数Neから目標シリンダ内圧縮圧力PcompOと目標シリンダ内最高圧力PmaxOとを算出することとした。また、シリンダ内圧力Pcylを検出して排気弁閉タイミングと燃料噴射タイミングとを制御することとした。そのため、排気ガスバイパス制御弁V1と排気弁閉タイミングと燃料噴射タイミングとを制御してシリンダ内圧縮圧力Pcompおよびシリンダ内最高圧力Pmaxを目標シリンダ内圧縮圧力PcompOおよび目標シリンダ内最高圧力PmaxOにすることができ、シリンダ6内の燃料の燃焼状態を改善して熱効率を向上させることができる。したがって、燃料の性状が変化してもエンジン本体4の燃料消費率を所定値P以下にすることができる。
【0112】
また、シリンダ内圧力Pcylを検出して排気弁閉タイミングを制御することとした。そのため、排気ガスバイパス制御弁V1が全閉状態の場合であっても、排気弁閉タイミングを制御して目標シリンダ内圧縮圧力PcompOを制御することができる。したがって、排気ガスバイパス制御弁V1が制御不具合等になった場合であっても、エンジン本体4の燃料消費率を所定値P以下にすることができる。
【0113】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、適宜必要に応じて変形実施および変更実施することができる。
【0114】
なお、本実施形態にかかるエンジン排気エネルギー回収装置1は、船舶に具備されるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく例えば陸上に設置された発電プラントに設けられるものとしても良い。この場合には、以下の作用効果を奏する。
発電プラントに設けられるエンジン排気エネルギー回収装置1は、エンジン2の運転コストを抑えることができる。そのため、発電プラントの運用コストの削減を図ることができる。また、環境に考慮した発電プラントにすることができる。
【0115】
また上述した各実施形態ではハイブリッド過給機3を1台備えた排気エネルギー回収装置1を一具体例として説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばハイブリッド過給機3を2台等として適用することも可能である。
【0116】
また、本発明の実施形態によると、排気ガスバイパス制御弁V1をきめ細かく調整することにより、ハイブリッド過給機3の運転を無段階に調整して発電・電動機3dの発電量の調整幅を大きくすることができる。そのため、船内での電力消費量が大きく変化しても、制御用抵抗器13の容量を小さく、小型化したものを採用できるのでコスト的にも有利である。
【符号の説明】
【0117】
1 エンジン排気エネルギー回収装置。
2 舶用ディーゼル機関(エンジン)
3 ハイブリッド過給機
3a タービン部
3b コンプレッサ部
3d 発電・電動機部
L2 バイパス管(バイパス流路)
V1 排気ガスバイパス制御弁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンから排出される排気ガスによって駆動されるタービン部と、該タービン部が駆動されることによって外気を前記エンジンに圧送するコンプレッサ部と、前記タービン部が駆動されることによって発電する一方で供給された電力によって前記タービン部を駆動する発電・電動機部と、を有するハイブリッド過給機と、
該ハイブリッド過給機に供給される排気ガスを迂回させるバイパス流路と、
該バイパス流路に設けられて、前記ハイブリッド過給機へ導かれる排気ガスの流量を制御する排気ガスバイパス制御弁と、
前記エンジンの負荷を検出するエンジン負荷検出手段と、
前記エンジンの回転数を検出するエンジン回転数検出手段と、
前記エンジンの掃気圧力を検出する掃気圧力検出手段と、
前記エンジン負荷検出手段および前記エンジン回転数検出手段によって検出される負荷および回転数から前記エンジンの燃料消費率が所定値以下となる目標掃気圧力を算出するデータベースを有する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記目標掃気圧力になるように前記排気ガスバイパス制御弁を制御するエンジン排気エネルギー回収装置。
【請求項2】
前記ハイブリッド過給機から導出される排気ガスと、前記バイパス流路から導出される排気ガスとが導かれて熱交換する熱交換器を備える請求項1に記載のエンジン排気エネルギー回収装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記エンジン負荷検出手段および前記エンジン回転数検出手段によって検出される負荷および回転数から前記エンジンの燃料消費率が所定値以下となる目標燃料噴射タイミングを算出するマップまたは演算式を備え、前記マップまたは前記演算式を用いて前記燃料噴射タイミングを制御する請求項1または請求項2に記載のエンジン排気エネルギー回収装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記エンジン負荷検出手段および前記エンジン回転数検出手段によって検出される負荷および回転数から前記エンジンの燃料消費率が所定値以下となる目標排気弁閉タイミングを算出するマップまたは演算式を備え、前記マップまたは前記演算式を用いて前記排気弁閉タイミングを制御する請求項1から請求項3のいずれかに記載のエンジン排気エネルギー回収装置。
【請求項5】
前記エンジンは、燃料ポンプを駆動する作動油が蓄えられる作動油蓄圧器またはコモンレール式燃料噴射弁に供給される燃料油が蓄えられる燃料蓄圧器を備え、
前記制御装置には、前記エンジン負荷検出手段および前記エンジン回転数検出手段によって検出される負荷および回転数から前記エンジンの燃料消費率が所定値以下となる目標作動油蓄圧圧力または目標燃料蓄圧圧力を算出するマップまたは演算式を備え、前記マップまたは前記演算式を用いて前記作動油蓄圧圧力または前記燃料蓄圧圧力を制御する請求項1から請求項4のいずれかに記載のエンジン排気エネルギー回収装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記排気ガスバイパス制御弁の開度を検出する排気ガスバイパス制御弁開度検出手段からの信号に基づいて、前記エンジンの燃料消費率が所定値以下となる前記排気ガスバイパス制御弁の目標開度を算出し、前記排気ガスバイパス制御弁を前記目標開度になるようにフィードバック制御する請求項1から請求項5のいずれかに記載のエンジン排気エネルギー回収装置。
【請求項7】
前記制御装置は、シリンダ内圧力検出手段によって検出されるシリンダ内圧力からシリンダ内圧縮圧力Pcompおよびシリンダ内最高圧力Pmaxを算出し、検出される負荷および回転数に対して前記エンジンの燃料消費率が所定値以下となる目標シリンダ内圧縮圧力PcompOおよび目標シリンダ内最高圧力PmaxOをマップまたは演算式から算出し、前記シリンダ内最高圧力Pmaxが前記目標シリンダ内最高圧力PmaxOになるようにし、かつ、前記シリンダ内圧縮圧力Pcompが前記目標シリンダ内圧縮圧力PcompOになるように前記燃料噴射タイミングおよび前記排気弁閉タイミングを制御する請求項1から請求項5のいずれかに記載のエンジン排気エネルギー回収装置。
【請求項8】
エンジンから排出される排気ガスによって駆動されるタービン部と、該タービン部が駆動されることによって外気を前記エンジンに圧送するコンプレッサ部と、前記タービン部が駆動されることによって発電する一方で供給された電力によって前記タービン部を駆動する発電・電動機と、を有するハイブリッド過給機と、
該ハイブリッド過給機に供給される排気ガスを迂回させるバイパス流路と、
該バイパス流路に設けられて、該ハイブリッド過給機に導かれる排気ガスの流量を制御する排気ガスバイパス制御弁と、
前記エンジンの負荷を検出するエンジン負荷検出手段と、
前記エンジンの回転数を検出するエンジン回転数検出手段と、
前記エンジンの掃気圧力を検出する掃気圧力検出手段と、
前記エンジンのシリンダ内圧力を検出するシリンダ内圧力検出手段と、
前記エンジン負荷検出手段および前記エンジン回転数検出手段から検出された負荷と回転数とから前記エンジンの燃料消費率が所定値以下となる目標シリンダ内圧縮圧力PcompOおよび目標シリンダ内最高圧力PmaxOを算出するデータベースを有する制御装置と、を備え、
該制御装置は、前記目標シリンダ内圧縮圧力PcompOになるように前記排気弁閉タイミングを制御し、前記目標シリンダ内最高圧力PmaxOになるように前記燃料噴射タイミングを制御するエンジン排気エネルギー回収装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載のエンジン排気エネルギー回収装置を備える船舶。
【請求項10】
請求項1から請求項8のいずれかに記載のエンジン排気エネルギー回収装置を備える発電プラント。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−149327(P2011−149327A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11158(P2010−11158)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】