説明

カラーフィルタ製造装置、カラーフィルタ製造方法、乾燥装置、乾燥方法、表示装置の製造装置、表示装置の製造方法

【課題】溶剤の結露に起因する欠陥の発生を防止して歩留まりを向上させることを可能とするカラーフィルタ製造装置及び製造方法を提供する。
【解決手段】減圧加熱装置8は、減圧部9によりチャンバ41内の空気を吸引して減圧し、加熱部10により基板3の着色層45を加熱する。着色層45から水分や溶剤が気化して気化成分51が生じる。気化成分51は、分離膜42を透過するので、下室44から上室43へ流入する(図5(a))。上室43に流入した気化成分51は、放熱等による温度低下により、結露52となって上室43の内面に付着する(図5(b))。複数の基板3の減圧加熱処理を継続すると、結露52の付着量が大きくなり、液滴53となって落下する。液滴53は、分離膜42を透過しないので、分離膜42の上に滞留する(図5(c))。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルタ製造装置及び製造方法に関する。詳細には、着色層の加熱乾燥を行うカラーフィルタ製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータや携帯電話の普及に伴い、高精細かつ軽薄な表示装置が必要とされる。表示装置は、例えば、LCD(液晶ディスプレイパネル)、PDP(プラズマディスプレイパネル)、有機EL(ElectroLuminescent Display)である。これらの表示装置の構成部材として、カラーフィルタが用いられる。
【0003】
カラーフィルタにおける着色層の形成方法として、インクジェット法、染色法、顔料分散法、電着法、印刷法等の各種方法がある。
インクジェット法では、基板上にパターン形成されたインク受容層にインクを付与することにより、着色層が形成される。あるいは、基板上に遮光部により画設された開口部にインクを塗布することにより、着色層が形成される。インク受容層あるいはインクを乾燥及び硬化させるためには、加熱工程が必要となる。例えば、ホットプレートを用いて加熱することにより、プリベイク(乾燥工程)及びポストベイク(硬化工程)が行われる。一般に、吐出安定性を確保するために遅乾性溶媒(例えば、沸点250℃)がインクの主溶剤として用いられる。加熱により溶剤を気化(揮発)させることによりプリベイクが行われる。
【0004】
また、減圧環境下において加熱乾燥を行うことにより、乾燥時間の短縮化を図るカラーフィルタの製造方法が提案されている(例えば、[特許文献1]参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−182028号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、減圧環境下で加熱乾燥を行う場合、溶剤の気化成分が減圧室(減圧チャンバ)の上蓋等の内面に付着して結露が生じ、結露した溶剤が落下して基板上に再付着し、混色や色ムラ等の欠陥が生じるという問題点がある。
【0007】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、溶剤の結露に起因する欠陥の発生を防止して歩留まりを向上させることを可能とするカラーフィルタ製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために第1の発明は、基板にインクを付与して着色層を形成するカラーフィルタ製造装置であって、前記基板を収容する容器と、気体が透過可能であり液体が透過不能であり、前記容器を第1室と第2室とに隔てる分離膜と、を具備することを特徴とするカラーフィルタ製造装置である。
【0009】
カラーフィルタ製造装置は、第1室に載置された基板を加熱して基板の着色層に含まれる溶媒成分(水分や溶剤成分やバインダなど)を気化させる。着色層からの気化成分は、分離膜を介して、第1室から第2室に流入する。分離膜は、気体が透過可能であり液体が透過不能な素材である。容器(チャンバ)は、分離膜により第1室(例えば、下室)と第2室(例えば、上室)とに隔てられる。第2室において着色層からの気化成分が液化して落下した場合、液化成分は分離膜上に滞留して第1室に流入しない。
【0010】
これにより、気化成分が結露となり液滴となって落下しても、分離膜の上に滞留するので、液滴が基板の着色層に再付着することがない。従って、混色や色ムラ等の欠陥を防止することができる。
【0011】
また、着色層の加熱乾燥は、減圧環境下で行うようにしてもよい。このように、減圧環境下で加熱乾燥を行うことにより、乾燥時間の短縮及び着色層の表面形状の改善を図ることができる。
【0012】
また、第1室から第2室の方向へ気流を生じさせることにより、着色層からの気化成分を分離膜を介して第1室から第2室に流入させるようにしてもよい。これにより、気化成分が第2室から第1室に逆流することがない。
【0013】
また、第1室内の温度を第2室内の温度より高くするようにしてもよい。これにより、第1室内での着色層からの気化成分の液化を防止することができる。
【0014】
第1の発明は、基板にインクを付与して着色層を形成するカラーフィルタ製造装置に関する発明である。
【0015】
第2の発明は、基板にインクを付与して着色層を形成するカラーフィルタ製造方法であって、前記基板を容器に収容する基板収容ステップと、気体が透過可能であり液体が透過不能であり、前記容器を第1室と第2室とに隔てる分離膜を介して、前記第1室に収容される基板の着色層からの気化成分を前記第1室から前記第2室に流入させる流入ステップと、を具備することを特徴とするカラーフィルタの製造方法である。
【0016】
第2の発明は、基板にインクを付与して着色層を形成するカラーフィルタ製造方法に関する発明である。
【0017】
第3の発明は、基板にインクを付与して形成される着色層を乾燥する乾燥装置であって、前記基板を収容する容器と、気体が透過可能であり液体が透過不能であり、前記容器を第1室と第2室とに隔てる分離膜と、を具備することを特徴とする乾燥装置である。
【0018】
第3の発明は、基板にインクを付与して形成される着色層を乾燥する乾燥装置に関する発明である。
【0019】
第4の発明は、基板にインクを付与して形成される着色層を乾燥する乾燥方法であって、前記基板を容器に収容する基板収容ステップと、気体が透過可能であり液体が透過不能であり、前記容器を第1室と第2室とに隔てる分離膜を介して、前記第1室に収容される基板の着色層からの気化成分を前記第1室から前記第2室に流入させる流入ステップと、を具備することを特徴とする乾燥方法である。
【0020】
第4の発明は、基板にインクを付与して形成される着色層を乾燥する乾燥方法に関する発明である。
【0021】
第5の発明は、基板にインクを付与して着色層が形成されたカラーフィルタを備える表示装置の製造装置であって、前記基板を収容する容器と、気体が透過可能であり液体が透過不能であり、前記容器を第1室と第2室とに隔てる分離膜と、を具備することを特徴とする表示装置の製造装置である。
【0022】
第5の発明は、基板にインクを付与して着色層が形成されたカラーフィルタを備える表示装置の製造装置に関する発明である。
【0023】
第6の発明は、基板にインクを付与して着色層が形成されたカラーフィルタを備える表示装置の製造方法であって、前記基板を容器に収容する基板収容ステップと、気体が透過可能であり液体が透過不能であり、前記容器を第1室と第2室とに隔てる分離膜を介して、前記第1室に収容される基板の着色層からの気化成分を前記第1室から前記第2室に流入させる流入ステップと、を具備することを特徴とする表示装置の製造方法である。
【0024】
第6の発明は、基板にインクを付与して着色層が形成されたカラーフィルタを備える表示装置の製造方法に関する発明である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、溶剤の結露に起因する欠陥の発生を防止して歩留まりを向上させることを可能とするカラーフィルタ製造装置及び製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係るカラーフィルタ製造装置及び製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明及び添付図面において、略同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略することにする。
【0027】
(1.カラーフィルタ製造装置1の構成)
最初に、図1を参照しながら、カラーフィルタ製造装置1の構成について説明する。
図1は、カラーフィルタ製造装置1の構成図である。
【0028】
カラーフィルタ製造装置1は、制御部2、基板3が載置される吸着テーブル4、インクジェットヘッド5、移動部6、アライメントカメラ7、減圧加熱装置8から構成される。
カラーフィルタ製造装置1は、基板3に対してインクジェットヘッド5からインクを吐出してパターニングを行い、カラーフィルタを製造する装置である。
【0029】
基板3は、ガラス基板やフィルム基板である。
吸着テーブル4は、基板3を吸着して固定するテーブルである。基板の吸着は、例えば、吸着テーブル4と基板3との間の空気を減圧あるいは真空にすることにより行われる。この場合、吸着テーブルには、空気を吸引するための小孔(図示しない)が設けられ、吸着の際には当該孔を通じて真空ポンプ(図示しない)等により空気の吸引が行われる。
【0030】
インクジェットヘッド5は、着色剤等を含むインクを吐出する装置である。インクジェットヘッド5は、基板3上に形成されたインク受容層にインクを付与したり、遮光部により画設された開口部にインクを塗布する。
移動部6は、吸着テーブル4及びインクジェットヘッド5の移動及び位置決めを行う装置である。尚、移動機構としては、汎用のガイド機構や移動用アクチュエータを用いることができる。例えば、移動用アクチュエータとして、ステップモータ、サーボモータ、リニアモータを用い、ガイド機構として、直線移動機構、エアースライドを用いることができる。
アライメントカメラ7は、基板3の位置座標を検出するために、基板3の所定箇所(基板上に形成されるアライメントマーク等)を撮像するカメラである。
【0031】
減圧加熱装置8は、減圧環境下で加熱を行う装置である。減圧加熱装置8は、減圧部9及び加熱部10を備える。減圧加熱装置8は、基板3に対して減圧環境下で加熱を行い、インクが付与されたインク受容層あるいは塗布されたインクを乾燥及び硬化させる。減圧加熱装置8の詳細については後述する。
【0032】
制御部2は、演算処理や各装置の動作制御を行う装置である。制御部2は、CPU(中央演算処理装置)やメモリを備える。制御部2は、アライメントカメラ7による撮像画像に基づいて基板3の位置座標を算出し、移動部6を介してインクジェットヘッド5及び基板3の移動及び位置決めを行う。また、制御部2は、インクジェットヘッド5におけるインク吐出タイミングを制御する。
【0033】
(2.カラーフィルタ製造方法)
次に、図2及び図3を参照しながら、カラーフィルタ製造方法について説明する。
【0034】
(2−1.インク受容層にインクを付与するカラーフィルタ製造方法)
図2は、インク受容層にインクを付与して着色層を形成するカラーフィルタ製造方法を示す図である。
【0035】
図2(a)に示すように、基板3に遮光層21及びインク受容層22が形成される。遮光層21は、光を透過させない層である。遮光層21は、着色層を画設するブラックマトリクスあるいはブラックストライプである。遮光層21に関しては、インク受容層22の上に形成するようにしてもよい。インク受容層22は、インク付与により着色される着色媒体である。
図2(b)に示すように、フォトマスク24を用いて光23を照射してパターン露光が行われる。インク受容層22にネガ型の樹脂組成物が用いられる場合、露光部分のインク受容層22は、インク受容能を失って非着色域25となる。露光部分以外のインク受容層22は、着色域26となる。
【0036】
図2(c)に示すように、インクジェットヘッド5からインク27が吐出される。インク27は、染料あるいは顔料等の着色剤を含有する。インク受容層22の着色域26にインク27が付与されて着色される。インク27は、インク受容層22の着色域26に吸収されて拡散する。着色された着色域26と着色されない非着色域25とからなる着色層28が形成される。この段階では、着色層28は、水分や溶剤成分を含み、湿潤状態(ウェット状態)である。
図2(d)に示すように、着色層28が形成された基板3は、減圧加熱装置8に搬送される。減圧加熱装置8は、基板3を減圧環境下で加熱し、着色層28に含まれる水分や溶剤成分を除去して乾燥させる。その後、減圧加熱装置8は、基板3をさらに高温で加熱して着色層28全体を硬化させる。
図2(e)に示すように、必要に応じて着色層28上に保護層29を形成してもよい。
【0037】
以上の過程を経て、基板3に形成されるインク受容層22にインク27を付与することにより、カラーフィルタが製造される。
【0038】
(2−2.開口部にインクを塗布するカラーフィルタ製造方法)
図3は、開口部にインクを付与して着色層を形成するカラーフィルタ製造方法を示す図である。
【0039】
図3(a)に示すように、基板3に遮光層31が形成される。遮光層31は、隔壁部である。遮光層31により、各画素に対応する開口部が形成される。
図3(b)に示すように、インクジェットヘッド5からインク32が吐出される。インク32は、染料あるいは顔料等の着色剤を含有する。開口部にインク32が塗布され、着色層33が形成される。この段階では、着色層33は、水分や溶剤成分を含み、湿潤状態(ウェット状態)である。
図3(c)に示すように、着色層33が形成された基板3は、減圧加熱装置8に搬送される。減圧加熱装置8は、基板3を減圧環境下で加熱し、着色層33に含まれる水分や溶剤成分を除去して乾燥させる。その後、減圧加熱装置8は、基板3をさらに高温で加熱して着色層33全体を硬化させる。
図3(d)に示すように、必要に応じて着色層33上に保護層34を形成してもよい。
【0040】
以上の過程を経て、基板3に形成される開口部にインク32を塗布することにより、カラーフィルタが製造される。
【0041】
(3.減圧加熱装置8)
次に、図4を参照しながら、第1の実施の形態に係る減圧加熱装置8について説明する。
図4は、減圧加熱装置8の構成図である。
【0042】
減圧加熱装置8は、基板3を収容するチャンバ41に減圧部9と加熱部10とが設けられて構成される。減圧部9は、チャンバ41内の空気を吸引する減圧装置である。減圧部9は、例えば、真空ポンプなどである。加熱部10は、チャンバ41内の基板3を加熱する装置である。加熱部10は、例えば、ホットプレート、電熱線、ランプ、赤外線放射装置である。尚、図4の着色層45は、図2の着色層28及び図3の着色層33に相当する。
【0043】
チャンバ41には、さらに、分離膜42が設けられる。分離膜42は、チャンバ41を上室43及び下室44に二分する。基板3は、下室44に載置される。加熱部10は、下室44に設けられる。
分離膜42は、気化した物質を透過させ、液化した物質を透過させない膜である。分離膜42としては、例えば、微細な連続多孔質構造の素材を用いることができる。また、シリコン樹脂やフッ素樹脂を用いて、分離膜42に撥水性を持たせるようにしてもよい。
【0044】
(4.減圧加熱装置8による乾燥処理)
次に、図5を参照しながら、減圧加熱装置8による乾燥処理について説明する。
図5は、減圧加熱装置8による乾燥処理の流れを示す図である。
【0045】
減圧加熱装置8は、減圧部9によりチャンバ41内の空気を吸引して減圧する。減圧加熱装置8は、加熱部10により基板3および基板3の着色層45を加熱する。着色層45から水分や溶剤が気化して気化成分51が生じる。気化成分51は、分離膜42を透過するので、下室44から上室43へ流入する(図5(a))。
上室43に流入した気化成分51は、放熱等による温度低下により、結露52となって上室43の内面に付着する(図5(b))。
複数の基板3の減圧加熱処理を継続すると、結露52の付着量が大きくなり、液滴53となって落下する。液滴53は、分離膜42を透過しないので、分離膜42の上に滞留する(図5(c))。
【0046】
このように、第1の実施の形態では、気化成分51が結露52となり液滴53となって落下しても、分離膜42の上に滞留するので、液滴53が基板3の着色層45に再付着することがない。従って、混色や色ムラ等の欠陥を防止することができる。
【0047】
(5.第2の実施の形態)
次に、図6を参照しながら、第2の実施の形態に係る減圧加熱装置8aについて説明する。
図6は、減圧加熱装置8aの構成図である。
減圧加熱装置8aでは、上室43の上方に減圧部9の吸引孔61が設けられる。
【0048】
チャンバ41内の空気は、上方の吸引孔61から吸引されるので、気流62が生じる。着色層45から気化した気化成分51は、気流62に沿って下室44から上室43へ流入する。また、気流42が常時生じているので、気化成分51は、上室43から下室44に逆流しない。
【0049】
このように、第2の実施の形態では、気化成分51は、下室44に逆流して結露することがない。従って、気化成分51が下室44で結露し液滴となって基板3の着色層45に再付着することがない。従って、第1の実施の形態と同様に、混色や色ムラ等の欠陥を防止することができる。
【0050】
尚、気流62を生じさせる方法は、吸引孔61をチャンバ41の上方に設けて吸引を行うことに限定されない。上室43内の圧力を下室44内の圧力より小さくすることにより気流62を生じさせてもよい。
【0051】
(6.第3の実施の形態)
次に、図7及び図8を参照しながら、第3の実施の形態に係る減圧加熱装置8bについて説明する。
図7は、減圧加熱装置8bの構成図である。
図8は、チャンバ41内の温度分布81を示すグラフである。
減圧加熱装置8bでは、上室43側に冷却部71が設けられ、下室44側に加熱部10が設けられる。
【0052】
上室43側に冷却部71が設けられ、下室44側に加熱部10が設けられるので、チャンバ41内の温度分布81は、下室44側が高温で上室43側が低温である。
着色層45から気化した気化成分51は、下室44から上昇して上室43に流入する。下室44は上室43より高温であるので、上室43で結露が生じることがあっても下室44で結露が生じることはない。
【0053】
このように、第3の実施の形態では、気化成分51は、下室44において放熱して結露することがない。従って、気化成分51が下室44で結露し液滴となって基板3の着色層45に再付着することがない。従って、第1の実施の形態と同様に、混色や色ムラ等の欠陥を防止することができる。
【0054】
(7.表示装置91の製造)
図9は、表示装置91を示す図である。ここでは、表示装置91として液晶ディスプレイパネルを挙げて説明する。
基板92は、カラーフィルタ製造装置1により製造されたカラーフィルタである。基板92には、液晶封入空間を確保するためのスペーサ96が形成される。基板93は、TFT(Thin Film Transistor)等のアレイ基板である。基板92と基板93とを貼り合わせ、基板の周辺部分にシール材94を設け、基板間に液晶97を封入することにより、表示装置91が製造される。
【0055】
(8.その他)
以上詳細に説明したように、減圧加熱装置に分離膜を設け、着色層からの気化成分が結露となり液滴となって落下しても、分離膜の上に滞留させることにより湿潤状態(ウェット状態)の着色層への再付着を防止することができる。従って、混色や色ムラ等の欠陥を防止することができる。
【0056】
尚、減圧乾燥装置に分離膜を設けるものとして説明したが、減圧部を備えない乾燥装置に分離膜を設けた場合であっても、気化成分の結露による弊害を防止することができる。但し、減圧環境下で加熱した場合には、乾燥時間の短縮や均一膜厚の着色層形成を実現することができる。特に、面付け周縁部では、他の部分より膜厚が大きくなりがちであるが、減圧環境下で加熱乾燥または加熱硬化させることにより、面付け周縁部の着色層の表面形状を改善することができる。
また、インクの吐出は、インクジェットヘッドに限られず、例えば、ディスペンサ等を用いることもできる。
【0057】
以上、添付図面を参照しながら、本発明にかかるカラーフィルタ製造装置及び製造方法の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0058】
(9.実施例)
[実施例1]
[1−1.基材の調製工程]
カラーフィルタ用ガラス材として用いられている厚み0.7mm、横370mm、縦470mmのCorning社製EAGLE2000を用意し、このガラス基材上にフォトリソグラフィ法にて樹脂製のブラックマトリクスを形成した。
ブラックマトリクスは、開口部が100μm×300μm、遮光部分の線幅が20μmとなるように形成し、横方向に120μmピッチ、縦方向に320μmピッチにて縦横ともそれぞれ1000画素ずつ配置されるものとした。この際、遮光部分の膜厚は平均1.5μmとした。
上記ブラックマトリクス付ガラス基材に対して、フッ素化合物を導入ガスとしたプラズマ処理を加えることにより、ブラックマトリクスの表面を撥液性に、それ以外の領域(着色層形成領域)を親液性とした。この際、表面張力40mN/mの液体との接触角は、ブラックマトリクス上で65°、着色層形成領域で10°であった。
【0059】
[1−2.インク塗布工程]
上記親疎液性を有する基板に対し、インクジェットヘッドを用いて着色層形成用インクを塗布した。
着色層形成用インクは、カラーフィルタ用顔料と熱硬化型樹脂等からなるRGB各色の顔料分散型インクを用い、1つの開口部(着色層形成領域)あたり1500plにて所望のカラーフィルタの色が表現できるように濃度を設計したものを用いた。
インクジェットヘッドの印加電圧は、75V、パルス幅は6μsであった。インクジェットヘッドは、1ヘッドにつき100ノズルを有するものを用い、1色につき1ヘッド、すなわちRGB3色にて3ヘッドを用いた。
塗布は、各着色層形成領域(1画素)あたり1ノズルが配置されるように位置決めして行い、ノズルから吐出された着色層形成用インクの各液滴が、上記着色層形成領域内に着弾するように行った。着色層形成用インクは、横方向にRGBの順に繰り返し配置し、縦方向には同色が並ぶように配置した。
【0060】
[1−3.減圧加熱乾燥工程]
上記着色層形成用インクを着弾させた基板を、分離膜として多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルム(厚さ約30μm、平均孔径約0.2μm、空孔率85%)を具備した減圧加熱装置に配置した。この際、減圧圧力30Pa、減圧時間100s、ホットプレート温度70℃であった。
【0061】
[1−4.結果]
上記方法にてカラーフィルタを製造したところ、混色決壊のないカラーフィルタを製造することができた。
【0062】
[実施例2]
[2−1.基材の調製工程〜インク塗布工程〜減圧加熱乾燥工程]
[実施例1]と同様に基材の調製、インク塗布、減圧加熱乾燥を行った。
[2−2.プリベイク及びポストベイク、パネル化]
減圧加熱乾燥後、100℃ホットプレートで10分間プリベイクを実施した。さらに、200℃オーブンで30分間のポストベイクを実施し、基板をパネル化して点灯試験を行った。
[2−3.結果]
上記方法にてカラーフィルタを備える表示装置を製造したところ、表示不良のない表示装置を製造することができた。
【0063】
(10.比較例)
[比較例1]
[1−1.基材の調製工程〜インク塗布工程]
[実施例1]と同様に基材の調製、インク塗布を行った。
[1−2.減圧加熱乾燥工程]
着色層形成用インクを塗布した基板を、分離膜を具備しない減圧加熱装置に配置し、[実施例1]と同条件にて減圧加熱した。
[1−3.結果]
上記方法にてカラーフィルタを製造したところ、減圧加熱装置上蓋に液滴が付着し、カラーフィルタ基板上に液滴落下に起因する混色箇所が発生していた。
【0064】
[比較例2]
[2−1.基材の調製工程〜インク塗布工程]
[実施例2]と同様に基材の調製、インク塗布を行った。
[2−2.減圧加熱乾燥工程]
着色層形成用インクを塗布した基板を、分離膜を具備しない減圧加熱装置に配置し、[実施例2]と同条件にて減圧加熱した。
[2−3.パネル化]
[実施例2]と同様にプリベイク及びポストベイクをし、パネル化して点灯試験を行った。
[2−4.結果]
上記方法にてカラーフィルタを備える表示装置を製造したところ、混色および混色に起因する膜厚変化により、表示装置に表示不良が発生した。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】カラーフィルタ製造装置1の構成図
【図2】インク受容層にインクを付与して着色層を形成するカラーフィルタ製造方法を示す図
【図3】開口部にインクを付与して着色層を形成するカラーフィルタ製造方法を示す図
【図4】減圧加熱装置8の構成図
【図5】減圧加熱装置8による乾燥処理の流れを示す図
【図6】減圧加熱装置8aの構成図
【図7】減圧加熱装置8bの構成図
【図8】チャンバ41内の温度分布81を示すグラフ
【図9】表示装置91を示す図
【符号の説明】
【0066】
1………カラーフィルタ製造装置
2………制御部
3………基板
4………吸着テーブル
5………インクジェットヘッド
6………移動部
7………アライメントカメラ
8、8a、8b………減圧加熱装置
9………減圧部
10………加熱部
21、31………遮光層
22………インク受容層
27、32………インク
28、33、45………着色層
41………チャンバ
42………分離膜
43………上室
44………下室
51………気化成分
52………結露
53………液滴
61………吸引孔
62………気流
71………冷却部
81………温度分布
91………表示装置
92………カラーフィルタ基板
93………アレイ基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板にインクを付与して着色層を形成するカラーフィルタ製造装置であって、 前記基板を収容する容器と、
気体が透過可能であり液体が透過不能であり、前記容器を第1室と第2室とに隔てる分離膜と、
を具備することを特徴とするカラーフィルタ製造装置。
【請求項2】
加熱処理により前記基板の着色層に含まれる溶媒成分を気化させる加熱部を具備することを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルタ製造装置。
【請求項3】
前記容器内の減圧を行う減圧部を具備することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のカラーフィルタ製造装置。
【請求項4】
前記第1室から前記第2室の方向へ気流を生じさせることにより、前記着色層からの気化成分を前記分離膜を介して前記第1室から前記第2室に流入させることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載のカラーフィルタ製造装置。
【請求項5】
前記第1室内の温度を前記第2室内の温度より高くすることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載のカラーフィルタ製造装置。
【請求項6】
基板にインクを付与して着色層を形成するカラーフィルタ製造方法であって、
前記基板を容器に収容する基板収容ステップと、
気体が透過可能であり液体が透過不能であり、前記容器を第1室と第2室とに隔てる分離膜を介して、前記第1室に収容される基板の着色層からの気化成分を前記第1室から前記第2室に流入させる流入ステップと、
を具備することを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項7】
加熱処理により前記容器内の基板の着色層に含まれる溶媒成分を気化させる加熱ステップを具備することを特徴とする請求項6に記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項8】
前記容器内の減圧を行う減圧ステップを具備することを特徴とする請求項6または請求項7に記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項9】
前記第1室から前記第2室の方向へ気流を生じさせることにより、前記着色層からの気化成分を前記分離膜を介して前記第1室から前記第2室に流入させることを特徴とする請求項6から請求項8までのいずれかに記載のカラーフィルタ製造方法。
【請求項10】
前記第1室内の温度を前記第2室内の温度より高くすることを特徴とする請求項6から請求項9までのいずれかに記載のカラーフィルタ製造方法。
【請求項11】
基板にインクを付与して形成される着色層を乾燥する乾燥装置であって、
前記基板を収容する容器と、
気体が透過可能であり液体が透過不能であり、前記容器を第1室と第2室とに隔てる分離膜と、
を具備することを特徴とする乾燥装置。
【請求項12】
加熱処理により前記基板の着色層に含まれる溶媒成分を気化させる加熱部を具備することを特徴とする請求項11に記載の乾燥装置。
【請求項13】
前記容器内の減圧を行う減圧部を具備することを特徴とする請求項11または請求項12に記載の乾燥装置。
【請求項14】
前記第1室から前記第2室の方向へ気流を生じさせることにより、前記着色層からの気化成分を前記分離膜を介して前記第1室から前記第2室に流入させることを特徴とする請求項11から請求項13までのいずれかに記載の乾燥装置。
【請求項15】
前記第1室内の温度を前記第2室内の温度より高くすることを特徴とする請求項11から請求項14までのいずれかに記載の乾燥装置。
【請求項16】
基板にインクを付与して形成される着色層を乾燥する乾燥方法であって、
前記基板を容器に収容する基板収容ステップと、
気体が透過可能であり液体が透過不能であり、前記容器を第1室と第2室とに隔てる分離膜を介して、前記第1室に収容される基板の着色層からの気化成分を前記第1室から前記第2室に流入させる流入ステップと、
を具備することを特徴とする乾燥方法。
【請求項17】
加熱処理により前記容器内の基板の着色層に含まれる溶媒成分を気化させる加熱ステップを具備することを特徴とする請求項16に記載の乾燥方法。
【請求項18】
前記容器内の減圧を行う減圧ステップを具備することを特徴とする請求項16または請求項17に記載の乾燥方法。
【請求項19】
前記第1室から前記第2室の方向へ気流を生じさせることにより、前記着色層からの気化成分を前記分離膜を介して前記第1室から前記第2室に流入させることを特徴とする請求項16から請求項18までのいずれかに記載の乾燥方法。
【請求項20】
前記第1室内の温度を前記第2室内の温度より高くすることを特徴とする請求項16から請求項19までのいずれかに記載の乾燥方法。
【請求項21】
基板にインクを付与して着色層が形成されたカラーフィルタを備える表示装置の製造装置であって、
前記基板を収容する容器と、
気体が透過可能であり液体が透過不能であり、前記容器を第1室と第2室とに隔てる分離膜と、
を具備することを特徴とする表示装置の製造装置。
【請求項22】
加熱処理により前記基板の着色層に含まれる溶媒成分を気化させる加熱部を具備することを特徴とする請求項21に記載の表示装置の製造装置。
【請求項23】
基板にインクを付与して着色層が形成されたカラーフィルタを備える表示装置の製造方法であって、
前記基板を容器に収容する基板収容ステップと、
気体が透過可能であり液体が透過不能であり、前記容器を第1室と第2室とに隔てる分離膜を介して、前記第1室に収容される基板の着色層からの気化成分を前記第1室から前記第2室に流入させる流入ステップと、
を具備することを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項24】
加熱処理により前記容器内の基板の着色層に含まれる溶媒成分を気化させる加熱ステップを具備することを特徴とする請求項23に記載の表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−89760(P2008−89760A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−268316(P2006−268316)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】