説明

カーボンブラック分散液、成膜液、及びこれを用いた画像形成装置

【課題】均一で安定な電気特性を有するローラ、無端ベルトを提供するとともに、これらを画像形成装置に搭載して、濃度ムラの低減化、及び高画質化を図る。
【解決手段】少なくともシリコーン変成ポリイミドによる表面処理を施したカーボンブラック、及び分散媒を含有しているカーボンブラック分散液、及びこれを用いたポリイミド成膜液を作製し、画像形成装置を構成するローラや無端ベルト3、4等の表面処理に適用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒度分布がシャープで、粒径が小さく分散性に優れたカーボンブラック分散液とその製造方法及びカーボンブラック分散液を用いたポリアミック酸成膜液に関するものであり、これを所定の表面に成膜したローラ、無端ベルト、及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在広く利用されている画像形成装置において、構成材であるローラや無端ベルトが、均一かつ安定な電気特性を有するようにするため、従来においては、カーボンブラックを分散媒中に分散してカーボンブラック分散液を作製し、更に樹脂ワニスを添加して成膜液を得、これを表面に塗布形成するようになされていた。
【0003】
特に、樹脂ワニスとしてポリイミドを用いて遠心成型等により無端ベルトを得る技術は有用なものとして良く知られている。
その重要な特性の一つとしては電気特性が挙げられ、膜を半導電性に制御することにより電気特性の向上を図るものであるが、具体的には、比表面積、給油量、揮発分等のカーボンブラックの重要特性を最適化したもの(例えば、下記特許文献1参照。)、吸油量と揮発分で規定される指数を規定したもの(例えば、下記特許文献2参照。)がある。
【0004】
しかしながら、従来提案されていた技術においては、いずれも、成膜液の分散性については未だ充分ではなく、これを改善するために、カーボンブラックの表面を界面活性剤や樹脂で表面処理して分散性の向上を図ったが、充分な効果が得られなかった。
また、カーボンブラックの表面に、反応性基を有するポリマーを用いて処理を施し、分散性の向上を図る技術についての提案もなされたが(例えば、下記特許文献3参照。)、分散性の向上効果は得られたが、処理工程が煩雑であり、コスト高を招来した。
【0005】
【特許文献1】特開2001−131410号公報
【特許文献2】特開2001−152013号公報
【特許文献3】特許第3435371号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明においては、処理工程が簡易で、優れた分散性を有するカーボンブラック分散液、これを用いたポリアミド樹脂成膜液、及びこれを塗布したローラや無端ベルト等の各種部材、及び画像形成装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては、少なくとも、シリコーン変成ポリイミドによる表面処理を施したカーボンブラック、及び分散媒を含有しているカーボンブラック分散液を提供する。
【0008】
請求項2の発明においては、前記シリコーン変成ポリイミドの添加量が、前記カーボンブラック100重量部に対して0.5重量部以上10重量部以下であることとした請求項1に記載のカーボンブラック分散液を提供する。
【0009】
請求項3の発明においては、前記カーボンブラックが、シリコーン変成ポリイミド及びポリイミドワニスによって表面処理を施されたものであることとした請求項1又は2に記載のカーボンブラック分散液を提供する。
【0010】
請求項4の発明においては、カーボンブラックを分散させた分散媒にシリコーン変成ポリイミドを添加し攪拌する工程を有し、この攪拌時間が10時間以上80時間以下であることとしたカーボンブラック分散液の製造方法を提供する。
【0011】
請求項5の発明においては、請求項1に記載のカーボンブラックがシリコーン変成ポリイミド及びポリイミドワニスによる表面処理を施したものであり、かつ少なくともポリイミドワニスが、別途添加されており、前記表面処理に用いたポリイミドワニスと、前記別途添加されるポリイミドワニスとが同一材料であることとしたポリイミド樹脂成膜液を提供する。
【0012】
請求項6の発明においては、請求項5に記載されたポリイミド樹脂成膜液に対し、イミド化処理を施すことにより得られるポリイミド樹脂よりなる樹脂層が、少なくとも表面に成膜されているローラを提供する。
【0013】
請求項7の発明においては、請求項5に記載されたポリイミド樹脂成膜液に対し、イミド化処理を施すことにより得られるポリイミド樹脂よりなる樹脂層が、少なくとも表面に成膜されている無端ベルトを提供する。
【0014】
請求項8の発明においては、少なくとも、像担持体に静電潜像を形成する帯電装置と、前記像担持体上に、所望の色に応じた現像剤を用いてトナー像を形成する現像装置と、前記トナー像を無端状に走行する中間転写体上に順次重ね合わせて一時転写し、当該中間転写体上の一時転写画像を転写材に一括して二次転写する中間転写装置と、前記転写材上のトナー像を加熱または加圧してトナー像を前記転写材上に定着する定着装置とを有する画像形成装置であって、前記帯電装置、前記現像装置、前記中間転写装置、及び前記定着装置のそれぞれを構成するローラ、無端ベルトの少なくとも一つが、請求項5に記載されたポリイミド樹脂成膜液に対しイミド化処理を施すことにより得られたポリイミド樹脂よりなる樹脂層を少なくとも表面に成膜されているものである画像形成装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、粒度分布がシャープで、粗大粒子が少ない粒径の小さい、分散性が良好なカーボンブラック分散液が得られた(請求項1)。
また、上記カーボンブラック分散液を用いてポリイミド成膜液を得、これにより膜を形成することにより、均一で安定な電気特性を有する各種部材、例えばローラ、無端ベルトが得られ、更には、これらを搭載した画像形成装置においては、濃度ムラの低減化、及び高画質化を図ることができた(ローラは請求項6、無端ベルトは請求項7、画像形成装置は請求項8)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の例に限定されるものではない。
本発明は、少なくともシリコーン変成ポリイミドによる表面処理を施したカーボンブラックと分散媒とを含有するカーボンブラック分散液を提供するものであり、更にはこれを用いてポリイミド成膜液を得、これによる膜を形成したローラ、無端ベルト、及び画像形成装置を提供するものである。
各構成材料について詳細に説明する。
【0017】
(1)カーボンブラック
カーボンブラックは、各種の炭化水素又は炭素を含む化合物を不完全燃焼して得られる微細な球状粒子の集合体と定義されるが、これは、化学組成が炭素98%以上の、略純水な炭素材料である。
種類は、製法により分類でき、原料炭化水素の熱分解か、不完全燃焼か何れかに大別される(下記〔表1〕)。更には、原料の種類により細分化される。
コンタクト法は、炎を鉄や石等に接触させる製造方法であり、チャンネル法やその改良法であるガスブラック法(ローラー法)等が含まれる。
チャンネルブラックは、コンタクト法により得られるもので、チャンネル鋼の底面に炎を接触させて採取できる。
ファーネス法は、燃料の空気による燃焼熱によって、原料炭化水素を連続的に熱分解させてカーボンブラックを得る方法であるが、ガスファーネス法とオイルファーネス法に分類される。
サーマル法は、原料の炭素源として天然ガスを利用し、燃焼と熱分解を周期的に繰り返す特殊な製造方法であり、大粒子径のカーボンブラックが得られる点に特徴を有している。
アセチレンブラックもアセチレンを原料とする一種のサーマル法により得られるが、アセチレンの熱分解は他の原料が吸熱反応であるのに対し発熱反応であるため、サーマル法における燃焼サイクルを省略することが可能となり、連続運転が出来るという利点を有している。
アセチレンブラック、通常のカーボンブラックに比較して結晶性が発達し、かつストラクチャーが高い点に特徴を有しているため、導電性にすぐれ、乾電池、各種ゴム、プラスチックの導電性付与剤として適用される。
【0018】
【表1】

【0019】
カーボンブラックの基本的特性について説明する。
カーボンブラックをゴムや樹脂、塗料やインキのビヒクルに配合、分散させ、補強性や黒色度、導電性等の機能を付与する際の重要な因子は、粒子径とストラクチャー、それに粒子表面の物理化学的性質であり、これを通常カーボンブラックの三大特性と呼んでおり、これらの組み合わせで種々のカーボンブラックが製造されている。
カーボンブラックの3大基本特性
粒子径:粒子径と表面積
ストラクチャー:DBP給油量(ml/100g)とストラクチャー指数
表面の化学的特性:揮発分(%)とpH
【0020】
次に、カーボンブラックの物理的特性について説明する。
(粒子の構造)
カーボンブラックの最小単位は、炭素六員環が30〜40個結合したものであり、この網平面が3〜5層、Van der Waals力でほぼ等間隔(3.5〜3.9Å)に積み重なった結晶子は粒子表面付近で同心円状にしかも緻密に配列しているが、その配列は内部に行く程不規則となっている。
このような特徴は、微細な粒子ほど顕著であり、粒子の大きいサーマルブラックはほとんど中心部まで規則的な配向状態にある。この結晶子が1000〜2000個集合して1個の1次粒子を形成しており、更にこの粒子が化学的、物理的に結合したものをストラクチャーと呼んでいる。
(粒子径とその分布)
カーボンブラックの粒子は、串に刺した団子状に粒子同士が融着した状態となっており、個々の球状粒子は団子と団子の山と谷を特徴付けているにすぎないが、これを単一粒子と見なした粒子径は各種用途における性能、例えば補強性や黒色度等と密接な関係を有している。
(凝集体とその分布)
カーボンブラック粒子は、串に刺した団子あるいはぶどう状の凝集体を形成しており、これはストラクチャーと呼ばれるものである。この凝集の発達度合いにより、ハイ(高)、ノーマル(中)、ロー(低)ストラクチャーに分類され、ゴムに配合した場合の引っ張り応力や押し出し特性、インキや塗料のビヒクル並びに樹脂に配合した場合の分散性や黒色度、粘度、導電性等に多大な影響を与える重要な因子である。
ストラクチャーは、1400℃以上の製造炉内で、複雑な化学反応を経て生成した縮合多環芳香族炭化水素が微細液滴に凝縮し、核となる前駆体を形成すると共に、相互の衝突を経て融着固化し生成する。ストラクチャーの制御は、炉の形状や炉内の動熱力学条件を選択することにより行うことができ、例えば、アルカリ金属塩を微量添加する手法が挙げられる。
ストラクチャーは、給油量、圧縮空隙率、かさ密度、電子顕微鏡画像の形態解析等により測定できるが、最も一般的に採用されている給油量は、粒子相互の絡み合いの大きい、すなわちハイストラクチャーカーボンブラックほど多量の油を吸収するという現象を応用したものである。例えば、DBP(Dibutyl Phtalate)アブソープトメータによって測定することができる。
(比表面積と非多孔比表面積)
カーボンブラックの比表面積は、単一粒子の大きさによってほぼ定まるが、他の固体と同様に、その表面において他の物質との相互作用をもつため、極めて重要な特性であると言える。
カーボンブラックの表面には一般に細孔(pore)が存在し、また粒子間の融着部には微細空隙が存在する。比表面積を測定する場合、その測定原理によって、得られる値が細孔中の表面積を含むものか否かを明確に区別する必要がある。細孔中の表面積を含むものを全比表面積といい、細孔中の表面積を除外したものを非多孔比表面積という。一般に、比表面積は、BETの式を用いた低温窒素吸着法やヨウ素吸着法等で測定でき、非多孔比表面積はCTAB吸着法や電子顕微鏡を用いた“t”法等により測定できる。
【0021】
次に、カーボンブラックの化学的特性について説明する。
(元素組成と不純物)
通常、カーボンブラックにも酸素や水素、硫黄、灰分等が含まれている。
水素は、原料炭化水素の炭化過程における脱水素反応残留物として、硫黄は原料油や燃料油から、灰分は原料油や冷却用の水等に起因したものである。
一方、酸素は、カーボンブラック粒子形成後空気の接触により結合する塩基性酸化物と、二酸化窒素やオゾン、硝酸等との反応により、二次的に生成する酸性酸化物とがあるが、いずれも粒子表面に存在するものと考えられる。
硫黄は、化学的に結合しているものと遊離しているもの両方の形態で存在し、遊離硫黄は溶剤や硫化アルカリ水溶液によって抽出可能であるが、結合硫黄は1000℃の高温下でも完全には脱離しにくい。
灰分の組成はナトリウム、マグネシウムの塩化物と硫酸塩、カルシウム炭酸塩、鉄の酸化物、シリカ等であり、その化合物はチャンネルブラックよりファーネスブラックの方が多い傾向にある。
(表面官能基)
カーボンブラックの化学反応性の大部分は、表面の酸化物や活性水素等として知られている化学的官能基に由来している。
酸性酸化物の官能基としては、一般にカルボキシル基、水酸基、キノン基、ラクトン基であるといわれ、これらは揮発分組成や揮発分量、pH等で規定できる。
【0022】
本発明のカーボンブラック分散液に用いるカーボンブラックは、上述した各種カーボンブラックのいずれも適用できる。
【0023】
(2)シリコーン変成ポリイミド
本発明の、表面処理用のシリコーン変成ポリイミドを下記一般式(1)に示す。
【0024】
【化1】

【0025】
但し、一般式(1)中、Xは4価の芳香族環若しくは脂肪族環基、R1、R6は2価の有機基、R2〜R5はアルケニル基、アルキル基、フェニル基、又は置換フェニル基を示し、nは5以上の整数を表すものとする。
このポリイミド変性シリコーン樹脂は、シロキサンジアミン、芳香族ジアミン、テトラカルボン酸二無水物とからなる混合物を原料として作製できる。
【0026】
シロキサンジアミン化合物は、下記一般式(2)に表されるものである。
2N−R1−(−SiR23−O−)n−SiR45−R6−NH2・・・(2)
但し、R1、R6は、2価の有機基、R2〜R5はアルキル基、フェニル基、又は置換フェニル基を示し、nは5〜50の整数を示すものとする。
具体的には、ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、ビス(10−アミノデカメチレン)テトラメチルジシロキサン、アミノプロピル末端基を有するジメチルシロキサン4量体、8量体、ビス(3−アミノフェノキシメチル)テトラメチルジシロキサン等が挙げられる。
【0027】
芳香族ジアミンは例えば、(1)ビフェニル系ジアミン化合物、ジフェニルエーテル系ジアミン化合物、ベンゾフェノン系ジアミン化合物、ジフェニルスルホン系ジアミン化合物、ジフェニルメタン系ジアミン化合物、2,2−ビス(フェニル)プロパン等のジフェニルアルカン系ジアミン化合物、2,2−ビス(フェニル)ヘキサフルオロプロパン系ジアミン系化合物、ジフェニレンスルホン系ジアミン化合物、(2)ジ(フェノキシ)ベンゼン系ジアミン化合物、ジ(フェニル)ベンゼン系ジアミン化合物、(3)ジ(フェノキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン系ジアミン系化合物、ビス(フェノキシフェニル)プロパン系ジアミン系化合物物等の「芳香族環(ベンゼン環等)を2個以上、特に2〜5個有する芳香族ジアミン化合物」を主として含有する芳香族ジアミンが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
【0028】
前記芳香族ジアミンとしては、特に、1,4−ジアミノジフェニルエーテル、1,3−ジアミノジフェニルエーテル等のジフェニルエーテル系ジアミン化合物、1,3−ジ(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン等のジ(フェノキシ)ベンゼン系ジアミン化合物、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン等のビス(フェノキシフェニル)プロパン系ジアミン系化合物が好適なものとして挙げられる。
【0029】
テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、テトラカルボン酸二無水物としてピロメリト酸二無水物、3,3’、4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’、4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3’、3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、エチレングリコールビストリメリテート二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物等、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3’、3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0030】
本発明に用いるポリイミド変性シリコーン樹脂は、上記で挙げた各種化合物を用いて、公知の方法により製造できる。
例えば、これらを有機溶媒中、必要に応じてトリブチルアミン、トリエチルアミン、亜リン酸トリフェニル等の触媒存在下で加熱し、直接ポリイミドを得る方法、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを有機溶媒中反応させポリイミドの前駆体であるポリアミド酸を得た後、必要に応じて p−トルエンスルホン酸等の脱水触媒を加え、加熱によりイミド化を行いポリイミドを作製する方法、あるいはポリアミド酸を、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水安息香酸等の酸無水物、ジシクロヘキシルカルボジイミド等のカルボジイミド化合物等の脱水閉環剤と、必要に応じてピリジン、イソキノリン、イミダゾール、トリエチルアミン等の閉環触媒を添加して化学閉環させる方法等が挙げられる。
【0031】
(3)分散媒
本発明に用いる分散媒としては、ポリアミック酸の溶媒として、従来公知のものを適用できる。
例えば、NMP(N−メチルピロリドン)、DMF(N、N−ジメチルホルムアミド)、DMAc(N、N−ジメチルアセトアミド)等のアミド系溶媒、γ−ブチロラクトン等のポリアミック酸やポリイミド樹脂に対して用いられる双極子溶媒、乳酸エチル、メトキシメチルプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が使用でき、必要な固形分、粘度を有するよう使用量を制御する。特に、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)が最も好適である。
【0032】
次に、カーボンブラックの表面処理方法について説明する。
カーボンブラックの粒子表面は、縮合芳香族環があり、下記に示す各種表面処理が可能である。
(A 表面酸化処理)
カーボンブラックを酸化剤で処理すると、粒子表面の縮合芳香族環(Φ)へカルボキシル基やフェノール性水酸基が導入される。
更に、カーボンブラック表面の縮合芳香族環は、次の様々な試薬と反応し、粒子表面への多彩な官能基の導入が可能となっている。
Φ−H+HNO3 → Φ−COOH and Φ−OH
Φ−H+H22 → Φ−OH
Φ−H+HNO3/H3SO4 → Φ−NO2(reduction) → Φ−NH2
Φ−H+CH2O/OH- → Φ−CH2OH
Φ−H+R−Cl/AlCl3 → Φ−R
Φ−H+HOOC−R−N=N−R−COOH → Φ−R−COOH
Φ−H+X−Φ−COOCOO−Φ−X → Φ−OCO−Φ−X
Φ−H+BuLi/TMEDA → Φ−Li
Φ−H+NaNH2 → Φ−Na
【0033】
(B 界面活性剤による分散)
カーボンブラックは、公知のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等により分散させて表面処理を行ってもよい。
好適な界面活性剤としては、界面ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ジアルキルスルホ琥珀酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体、アセチレングリコール系界面活性剤が挙げられる。
【0034】
(C 高分子(樹脂)分散)
カーボンブラックは、高分子分散剤の立体障害反発によって分散させ、表面処理を行ってもよい。
この高分子分散剤としては、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)、ポリ(N,N’−ジエチルアクリルアジド)、ポリ(N−ビニルホルムアミド)、ポリ(N−ビニルアセトアミド)、ポリ(N−ビニルフタルアミド)、ポリ(N−ビニルコハク酸アミド)、ポリ(N−ビニル尿素)、ポリ(N−ビニルピペリドン)、ポリ(N−ビニルカプロラクタム)、ポリ(N−ビニルオキサゾリン)等が挙げられる。
これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせてもよい。
また、この他に本発明の目的の範囲内で、高分子材料、界面活性剤、無機塩害の分散安定化剤を用いてもよい。
【0035】
(D カプセル化処理)
カーボンブラックは、樹脂による表面処理を施し、被覆された状態で溶剤中に分散されているか、または、樹脂にカーボンブラックが含浸されたもの、即ち表層もしくは内部、あるいは全体にカーボンブラックが存在するようにしてもよい。
これらの状態とすることにより、分散安定性、表面濡れ性、レオロジー特性、電気特性等の特性を改良することができる。
特に、分散安定性については、グラフト鎖の良溶媒中への分散性(分散媒中への易分散性と分散後の安定性)が著しく向上し、また、電気特性については、カーボンブラック粒子がポリマーマトリックス中へ容易かつ均一に分散するので、広い面積にわたって一定の抵抗値が得られるという特徴がある。
【0036】
(E グラフト化処理)
カーボンブラックはグラフト化処理を施してもよい。
グラフト機構に基づいて次の様に分類できる。
(a)カーボンブラック表面へのグラフト重合
カーボンブラックの存在下で、重合開始剤を用いてビニルモノマーの重合を行い、系内で生成する生長ポリマー鎖を粒子表面で補足する方法。
(b)カーボンブラック表面からのグラフト重合
カーボンブラック表面へ導入した重合開始基からグラフト鎖を生長させる方法。
(c)カーボンブラック表面とポリマーとのグラフト反応
カーボンブラック表面の官能基と反応性ポリマーとの反応による方法。
上記のうち(a)の方法は、最も簡単に行うことができるが、非グラフトポリマーの生成が優勢に起こるため、グラフト率の大きなものを得ることができない。
これに対して、(b)の系では、カーボンブラック表面からポリマー(グラフト鎖)が外へ向かって生長するので、グラフト率の大きなものが得られるという特徴がある。
更に、(c)の方法によると、グラフト鎖の分子量や数を制御できるという大きな特徴があり、グラフト率も比較的大きなものが得られる。
【0037】
(F 気相酸化法)
カーボンブラックの表面は、オゾン処理やプラズマ処理によって酸化処理を行うようにしてもよい。
カーボンブラックにプラズマ照射することでプラズマの高エネルギーによってカーボンブラック表面に水酸基やカルボキシル基を付けることができる。
【0038】
最も簡便に表面処理が可能という観点からは、(C 高分子(樹脂)分散)の方法が有効である。しかし、理想的な粒度分布や粒径が得られる樹脂分散剤は従来においてなかったため、表面処理方法の改善が求められていた。
かかる観点から、本発明においては、シリコーン変成ポリイミドによって表面を処理したカーボンブラック、及び分散媒により、所望の粒度分布や粒径を実現した。
【0039】
次に、カーボンブラックの分散、及び成膜液製造工程について説明する。
工程A:顔料+ビヒクル+溶剤→前混合(1)→主分散(練合分散)(2)→カーボンブラック分散液
工程B:カーボンブラック分散液+希釈調整(3)→成膜液
上記工程A、Bにより、成膜液を作製する。
【0040】
前混合工程(1)(プレミキシング)について説明する。
これは、次工程である主分散工程の主分散機にかけるための最適混合組成、最適流動状態のペーストを製造する工程である。カーボンブラックの粒子集合体にビヒクルを浸透させ完全に表面を濡らすことと、粗大粒子集合体を破砕することが目的である。
【0041】
主分散工程(2)(グラインディングディスパージョン)について説明する。
これはビヒクルで濡れた粒子集合体を衝撃、又はせん断エネルギーによって成膜液に要求される粒度まで分散させる工程である。
カーボンブラックを凝集体(アグリゲート)に近い状態になるまで分散させて、カーボンブラック表面にビヒクル中の樹脂成分を吸着させることが目的である。
【0042】
希釈調整工程(3)(レットダウン)について説明する。
これは、高顔料濃度のペーストに必要量の樹脂、溶剤、添加剤を加えて目的とする粘度、組成になるまで希釈調整する工程である。
顔料濃度の高いペーストに種々の樹脂溶液、溶剤が添加されるので、添加速度、順序、温度並びに攪拌条件等の調節で顔料が再凝集を起こさないように希釈される。
【0043】
次に、分散装置について説明する。
分散系の粘度、溶剤の蒸発性、生産方式、あるいは最終分散粒子径等の理由から各種の分散機が用いられている。
主なものを下記に挙げる。
(a)ニーディング型:ニーダー、プラネタリーミキサー等。
原料の粘度が大きいほど大きなせん断応力が発生するので硬いペーストの練りに広く利用されている。
(b)圧縮せん断型:3本ロールミル、2本ロールミル等。
ローラーの間隙に圧力をかけながら大きなせん断応力を加える分散機で、高粘度(1000Pa・s位まで可能)で接着力の大きいものに適用されている。
(c)攪拌混合型:コロイドミル、Kady Mill等。
高い周速度(300〜1200m/min)で回転するインペラーが高いせん断速度を与える。
(d)摩砕せん断型:ビーズミル、ボールミル等。
ボールやビーズの衝撃とせん断応力によって分散を行う分散機で、ボールミルで102〜103Pa、ビーズミルで104〜105Pa程度のせん断応力が加えられる。
ビーズミル、ボールミルともに揮発性低粘度体(数Pa・s位まで可能)の分散に使用される。
本発明においては、摩砕せん断型の分散装置が好適に用いられ、分散時間は10時間以上80時間以下とすることが好ましい。
分散時間を10時間未満とすると、粗大粒子集合体が充分に破砕せず残存していたり、80時間を超えると過分散状態に陥り、何れも我々が所望する充分な粒度分布と粒径が得られない。
【0044】
次に、ポリイミド樹脂成膜液をイミド化する方法について説明する。
(1)加熱する方法、又は(2)化学的方法によって、イミド化することができるが、(1)の方法は、200〜350℃に加熱することによってポリイミドに転化する方法であるため、簡便かつ実用的にポリイミド樹脂を得ることができるが、(2)の方法はポリアミック酸をカルボン酸無水物と第3アミンの混合物等の脱水環化試薬と処理反応後、加熱して完全にイミド化する方法であり、(1)の方法に比べると、煩雑でコストがかかる方法であるため、(1)の方法が実用的に多用されている。
【0045】
加熱によりイミド化を完結させるためには、本質的に用いるポリイミドのガラス転移温度以上に加熱しなければ、そのポリイミドの本来的な性能を発揮することが出来ない。
イミド化の程度を評価するには、通常イミド化率を測定すればよい。
イミド化率の測定方法は、従来種々知られており、9〜11ppm付近のアミド基に帰属される1Hと6〜9ppm付近の芳香環に帰属される1Hとの積分比から算出する核磁気共鳴分光法(NMR法)、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR法)、イミド閉環に伴う水分を定量する方法、カルボン酸中和滴定法があるが、最も一般的にはフーリエ変換赤外分光法(FT−IR法)が用いられる。
フーリエ変換赤外分光法(FT−IR法)ではイミド化率を次のように定義することが出来る。
【0046】
イミド化率=(焼成段階でのイミド基のモル数)/(100%理論的にイミド化された場合のイミド基のモル数)×100
これは、IRのイミド基の特性吸収の吸光度比から求められる。
具体的な例を下記に挙げる。
(1)イミドの特性吸収の1つである725cm-1(イミド環C=O基の変角振動帯)とベンゼン環の特性吸収1015cm-1との吸光度比
(2) イミドの特性吸収の1つである1380cm-1(イミド環C−N基の変角振動帯)とベンゼン環の特性吸収1500cm-1との吸光度比
(3) イミドの特性吸収の1つである1720cm-1(イミド環C=O基の変角振動帯)とベンゼン環の特性吸収1500cm-1との吸光度比
(4) イミドの特性吸収の1つである1720cm-1とアミド基の特性吸収1670cm-1(アミド基N−H変角振動とC−N伸縮振動の間の相互作用)との吸光度比
これらを用いてイミド化率を評価できる。
また、3000〜3300cm-1にかけてのアミド基由来の多重吸収帯が消失していることを確認すれば更にイミド化完結の信頼性は高まる。
【0047】
本発明のカーボンブラック分散液は、カーボンブラックの表面処理の際、シリコーン変成ポリイミドと共に、ポリイミドワニスを同時に添加することが好ましい。
これにより、カーボンブラックの表面がシリコーン変成ポリイミドだけでなくポリイミドにより同時に処理されることで、ポリイミド成膜液を作製する際に、ポリイミドを添加する時、ショック凝集等を発生することなく、粒径が小さく粗大粒子も少ないポリイミド成膜液が得られるようになる。
【0048】
次に、ポリイミドについて説明する。
ポリイミドは、一般的には芳香族多価カルボン酸無水物、あるいはその誘導体と芳香族ジアミンとの縮合反応によって得られる。
しかし、その剛直な主鎖構造により、不溶、不融の性質を持つため、酸無水物と芳香族ジアミンからまず有機溶媒に可溶なポリアミック酸(又はポリアミド酸〜ポリイミド前駆体)を合成し、この段階で様々な方法で成型加工が行われ、その後加熱若しくは化学的な方法で脱水環化(イミド化)することでポリイミドが得られる。
これについて、下記式に示す。
【0049】
【化2】

【0050】
但し、上記式中、Ar1、Ar2は、少なくとも1つの炭素6員環を含む4価の芳香族残基を示す。
【0051】
原料の一例である芳香族多価カルボン酸無水物について具体例を挙げる。
例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシルフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
これらは、単独で用いてもよく、あるいは二種以上を混合して用いてもよい。
【0052】
次に、混合して使用する芳香族ジアミンについて具体例を挙げる。
例えば、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、1,1−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、1,1−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−エタン、1,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、1,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ブタン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホキシド、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホキシド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、1,4−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ベンゼン、1,3−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ベンゼン、4,4’−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ジフェニルエーテル、4,4’−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ジフェニルエーテル、4,4’−ビス〔4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ〕ベンゾフェノン、4,4’−ビス〔4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ〕ジフェニルスルホン、ビス〔4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル〕スルホン、1,4−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン、1,3−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン等が挙げられる。
これらは単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
【0053】
これらの芳香族多価カルボン酸無水物成分と、ジアミン成分とを、略等モル有機極性溶媒中で重合反応させることにより、ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)が得られる。
具体的なポリアミック酸の製造方法について説明する。
【0054】
ポリアミック酸の重合反応に使用される有機極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド等のホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等のアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン等のピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−、またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコール等のフェノール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、適宜混合溶媒としてもよい。
溶媒は、ポリアミック酸を溶解するものであれば特に限定されないが、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンが特に好ましい。
【0055】
先ず、アルゴン、窒素等の不活性ガス雰囲気下で、1種あるいは、複数種のジアミンを上記の有機溶媒に溶解、あるいはスラリー状に拡散させる。
この溶液に前記した少なくとも1種以上の芳香族多価カルボン酸無水物、あるいはその誘導体を固体の状態、または有機溶媒溶液の状態、あるいはスラリー状態で添加すると、発熱を伴って開環重付加反応が起こり、急速に重合溶液の粘度の増大が見られ、高分子量のポリアミック酸溶液が得られる。
この時の反応温度は、−20℃〜100℃、望ましくは60℃以下である。反応時間は、30分〜12時間である。
また、この反応において、上記添加手順とは逆に、まず芳香族多価カルボン酸無水物あるいはその誘導体を有機溶媒に溶解、または拡散させ、この溶液中に前記ジアミンの固体もしくは有機溶媒による溶液もしくはスラリーを添加させても良い。
また、同時に反応させても良く、酸二無水物成分、ジアミン成分の混合順序は限定されない。
上記芳香族多価カルボン酸無水物、あるいはその誘導体と、芳香族ジアミン成分をほぼ等モル計量し、前記有機極性溶媒中に溶解する。
本発明において、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンの添加順序は限定されない。同時に添加してもよい。また、それぞれを溶解した有機極性溶媒を混合してもよい。
本発明にかかるポリアミック酸組成物は、上記のようにして芳香族多価カルボン酸無水物あるいはその誘導体と芳香族ジアミン成分とをおよそ等モル、有機極性溶媒中で重合反応により、ポリアミック酸組成物が有機極性溶媒中に均一に溶解しているポリアミック酸溶液が得られる。
【0056】
上述したポリアミック酸組成物は、上記のように容易に合成できるが、簡便には有機溶媒にポリアミック酸組成物が溶解されているポリイミドワニスとして市販されているものを適用できる。
例えば、トレニース(東レ社製)、U−ワニス(宇部興産社製)、リカコート(新日本理化社製)、オプトマー(JSR社製)、SE812(日産化学社製)、CRC8000(住友ベークライト社製)等が挙げられる。
【0057】
本発明のカーボンブラック分散液、成膜液は、特に均一な電気特性が安定に得られ、成膜性にも優れているため、これを用いて表面に塗膜を形成することによって、均一で安定な電気特性を有するローラ及び無端ベルトを作製することが可能である。それらは電子写真複写機やレーザープリンター等に搭載し、均一で高画質な画像が安定して得られる画像形成装置に搭載することができる。
【0058】
次に画像形成装置について説明する。
本発明の画像形成装置は、少なくとも、像担持体に静電潜像を形成する帯電装置と、前記像担持体上に、所望の色に応じた現像剤を用いてトナー像を形成する現像装置と、前記トナー像を無端状に走行する中間転写体上に順次重ね合わせて一時転写し、当該中間転写体上の一時転写画像を転写材に一括して二次転写する中間転写装置と、前記転写材上のトナー像を加熱または加圧してトナー像を前記転写材上に定着する定着装置とを有する画像形成装置であるものとする。
そして、前記帯電装置、前記現像装置、前記中間転写装置、及び前記定着装置のそれぞれを構成するローラ、無端ベルトの少なくとも一つが、本発明のポリイミド樹脂よりなる樹脂層が少なくとも表面に成膜されているものである。
画像形成装置として、例えば、電子写真装置は、カラー複写機やカラープリンタ等、カラー機能を有するものが汎用されている。
従来公知のカラー電子写真装置は、1つの感光体のまわりに複数色の現像装置を備えており、それらの現像装置でトナーを付着させて感光体上に合成トナー画像を形成し、そのトナー画像を転写してシートにカラー画像を記録する、いわゆる1ドラム型のものと、並べて備える複数の感光体にそれぞれ個別に現像装置を備え、各感光体上にそれぞれ単色トナー画像を形成し、それらの単色トナー画像を順次転写してシートに合成カラー画像を記録する、いわゆるタンデム型のものとがある。
【0059】
上記1ドラム型と、上記タンデム型とを比較すると、前者には、感光体が1つであるから、比較的小型化でき、コストも低減できる利点はあるものの、1つの感光体を用いて複数回(通常4回)画像形成を繰り返してフルカラー画像を形成するから、画像形成の高速化には困難である。
後者は、逆に大型化し、コスト高となる欠点はあるものの、画像形成の高速化が容易である利点がある。
フルカラーの場合もモノクロ並みのスピードが要求されていることから、タンデム型が注目されてきている。
【0060】
タンデム型の電子写真装置の一例の概略図を図1、図2に示す。
図1に示すように、各感光体1上の画像を転写装置2により、シート搬送ベルト3で搬送するシートSに順次転写する直接転写方式のものと、図2に示すように、各感光体1上の画像を1次転写装置2によりいったん中間転写体4に順次転写した後、その中間転写体4上の画像を2次転写装置5によりシートSに一括転写する間接転写方式のものとがある。
転写装置5は転写搬送ベルトであるが、ローラ形状の方式のものもある。
【0061】
直接転写方式のものと、間接転写方式のものとを比較する。
直接転写方式は、感光体1を並べたタンデム型画像形成装置Tの上流側に給紙装置6を配置し、下流側に定着装置7を配置しなければならず、シート搬送方向に大型化する欠点がある。
これに対し、間接転写方式は、2次転写位置を比較的自由に設置することができる。
給紙装置6、および定着装置7をタンデム型画像形成装置Tと重ねて配置することができ、小型化が可能となる利点がある。
また、直接転写方式においては、シート搬送方向に大型化しないためには、定着装置7をタンデム型画像形成装置Tに接近して配置することとなる。そのためシートSがたわむことができる充分な余裕をもって定着装置7を配置することができず、シートSの先端が定着装置7に進入するときの衝撃(特に厚いシートで顕著となる)や、定着装置7を通過するときのシート搬送速度と、転写搬送ベルトによるシート搬送速度との速度差により、定着装置7が上流側の画像形成に影響を及ぼしやすいという欠点がある。
これに対し、間接転写方式においては、シートSがたわむことができる充分な余裕をもって定着装置7を配置することができるから、定着装置7がほとんど画像形成に影響を及ぼさないようにすることができるという利点を有している。
【0062】
上述したことから、タンデム型電子写真装置においては特に間接転写方式のものが、特に優れていると注目されている。
そして、カラー電子写真装置は、図2に示すように、1次転写後に感光体1上に残留する転写残トナーを感光体クリーニング装置8で除去して感光体1表面をクリーニングし、再度の画像形成に備えるようになされている。
また、2次転写後に中間転写体4上に残留する転写残トナーを、中間転写体クリーニング装置9で除去して中間転写体4表面をクリーニングし、再度の画像形成に備えるようになされている。
【0063】
図3に、本発明の画像形成装置の一例として、タンデム型間接転写方式の電子写真装置の概略構成図を示す。
図3中、100は複写装置本体、200は給紙テーブル、300は複写装置本体100上に取り付けるスキャナ、400は更にその上に取り付ける原稿自動搬送装置(ADF)である。
複写装置本体100には、中央に、無端ベルト状の中間転写体10が設けられており、3つの支持ローラ14、15、16に掛け回して図中時計回りに回転搬送可能になされている。
この例においては、3つの支持ローラの中の、第2の支持ローラ15の左側に、画像転写後に中間転写体10上に残留する残留トナーを除去する中間転写体クリーニング装置17が設けられている。
また、3つの支持ローラの中の、第1の支持ローラ14と第2の支持ローラ15間に張り渡した中間転写体10上には、その搬送方向に沿って、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4つの画像形成手段18が横に並べて配置されており、これにより、タンデム画像形成装置20が構成されている。
【0064】
タンデム画像形成装置20の上には、露光装置21が設けられている。
一方、中間転写体10を挟んでタンデム画像形成装置20と反対の側には、2次転写装置22が備えられている。
2次転写装置22は、2つのローラ23間に無端ベルトである2次転写ベルト24を掛け渡した構成となされており、中間転写体10を介して第3の支持ローラ16に押し当てて配置されており中間転写体10上の画像をシートに転写するようになされている。
【0065】
2次転写装置22の横には、シート上の転写画像を定着する定着装置25が設けられている。
定着装置25は、無端ベルトである定着ベルト26に加圧ローラ27が押し当られた構成となっている。
上述した2次転写装置22は、画像転写後のシートをこの定着装置25へと搬送するシート搬送機能も備えている。
2次転写装置22として、転写ローラや非接触のチャージャを配置してもよい。
なお、図3に示した例においては、2次転写装置22および定着装置25の下に、上述したタンデム画像形成装置20と平行に、シートの両面に画像を記録すべくシートを反転するシート反転装置28が備えられている。
【0066】
図3に示した電子写真装置を用いて、画像の形成(コピー)を行うときの動作について説明する。
原稿自動搬送装置400の原稿台30上に原稿をセットする。または原稿自動搬送装置400を開いてスキャナ300のコンタクトガラス32上に原稿をセットし、原稿自動搬送装置400を閉じて押さえるようにする。
スタートスイッチ(図示せず)を押すと、原稿が搬送されてコンタクトガラス32上へと移動する。他方コンタクトガラス32上に原稿をセットしたときは、直ちにスキャナ300が駆動し、第1走行体33および第2走行体34が稼動する。
そして、第1走行体33で光源から光を発射するとともに原稿面からの反射光をさらに反射して第2走行体34に向け、第2走行体34のミラーで反射して結像レンズ35を通して読み取りセンサ36に入れ、原稿内容を読み取る。
【0067】
また、スタートスイッチ(図示せず)を押すと、駆動モータ(図示せず)で支持ローラ14、15、16の1つを回転駆動して、他の2つの支持ローラを従動回転し、中間転写体10を回転搬送する。
同時に、個々の画像形成手段18で、その感光体40を回転して、各感光体40上にそれぞれ、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの単色画像を形成する。そして、中間転写体10の搬送とともに、それらの単色画像を順次転写して中間転写体10上に合成カラー画像を形成する。
【0068】
一方、スタートスイッチ(図示せず)を押すと、給紙テーブル200の給紙ローラ42の1つを選択回転し、ペーパーバンク43に多段に備える給紙カセット44の1つからシートを繰り出し、分離ローラ45で1枚ずつ分離して給紙路46に入れ、搬送ローラ47で搬送して複写機本体100内の給紙路48に導き、レジストローラ49に突き当てて止める。
または、給紙ローラ50を回転して手差しトレイ51上のシートを繰り出し、分離ローラ52で1枚ずつ分離して手差し給紙路53に入れ、同じくレジストローラ49に突き当てて止める。
そして、中間転写体10上の合成カラー画像にタイミングを合わせてレジストローラ49を回転し、中間転写体10と2次転写装置22との間にシートを送り込み、2次転写装置22で転写してシート上にカラー画像を記録する。
【0069】
画像転写後のシートは、2次転写装置22で搬送して定着装置25へと送り込み、定着装置25で熱と圧力とを加えて転写画像を定着して後、切換爪55で切り換えて排出ローラ56で排出し、排紙トレイ57上にスタックする。または、切換爪55で切り換えてシート反転装置28に入れ、そこで反転して再び転写位置へと導き、裏面にも画像を記録して後、排出ローラ56で排紙トレイ57上に排出する。
一方、画像転写後の中間転写体10は、中間転写体クリーニング装置17で、画像転写後に中間転写体10上に残留する残留トナーを除去し、タンデム画像形成装置20による再度の画像形成に備える。
ここで、レジストローラ49は一般的には接地されて使用されることが多いが,シートの紙粉除去のためにバイアスを印加することも可能である。
上述したタンデム画像形成装置20において、個々の画像形成手段18は、詳しくは、例えば図3に示すように、ドラム状の感光体40のまわりに、帯電装置60、現像装置61、1次転写装置62、感光体クリーニング装置63、除電装置64等を備えている。
【0070】
本発明のポリイミド樹脂成膜液を、前述した画像形成装置に搭載可能で均一で安定な電気特性を有するローラ及び無端ベルトに塗布する。
【0071】
本発明のローラを作製する方法について説明する。
ポリイミド樹脂成膜液を所定のキャリアー(支持体)上に流延し、次に、溶剤を乾燥除去することにより、膜形成を行うことができる。
ここで、キャリアーとしては、特に限定されるものではなく、一般的な溶液流延法に適用されるものを適宜利用することができ、例えば、SUS、Al等の金属製ローラ、導電性樹脂ローラ、ゴムローラ等が挙げられる。
但し、溶剤として例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、等の高沸点溶媒を使用する場合は、膜形成体(キャリアー)の性質に応じて選択する必要がある。
ポリイミド樹脂成膜液を、所定のキャリアー上に流延する方法は、特に限定されるものではない。例えば、ドクターナイフ、メイア・バー、ロール・コート等、従来公知の方法を適用できる。
ポリイミド樹脂成膜液の流延は、スプレー、ハケ、ロール、スピンコート、ディッピン具等を用いて塗布できる。1回の塗布で所望の膜厚が得られない場合は、繰り返し塗布することができる。
【0072】
本発明の無端ベルトを作製する方法について説明する。
本発明のポリイミド樹脂成膜液を用いてベルト基体を作製する代表的な方法として、遠心成型法がある。これは、溶剤に溶解した樹脂溶液を回転する円筒形状の成形型内部にスプレーやノズルからベルト素材としての原料溶液(以下塗布液ということがある。)を流し込んで、この成形型を高速回転させながらその遠心力により塗布液を拡げて均一な膜としてこの膜を固化させることにより無端状成形体を成形する方法(いわゆる遠心成形法)により無端ベルトを製造する方法である。
この方法によれば、塗布された塗布液は遠心力により拡げられるので、比較的均一な厚みの塗布層が得られる。
この遠心成形法は、筒状の成形型の内面に流動性の塗布液を塗布した後、膜厚を均一にするために高速の遠心力で回転して塗布液の凝集の表面エネルギーに打ち勝つ力で塗布膜を押し広げて膜の均一化を行うものである。
そして、その塗布液には原料ワニスを溶剤で希釈したものが成形型に塗布される。そのため、この塗布液は高速回転しているときは、型の内面に均一に塗布されているが、回転を止めたり、回転数を緩くするとだんだん成形型の底部に溜まってくる。したがって、この遠心成形法によれば、一定の均一な溶液膜になった状態を保ちつつ、溶剤を除去して固化させなければならない。
【0073】
上述した方法により作製された、本発明のポリイミド成膜液が表面に塗布されたローラ及び無端ベルトは、均一で安定な電気抵抗を有していることが確認された。
また、このような、抵抗均一性が充分に改良されたローラ、及び無端ベルトを搭載することにより、画像形成装置において濃度ムラが低減化され、効果的な高画質化が図られることが確かめられた。
【実施例】
【0074】
以下、本発明の具体的な実施例を挙げて説明するが、本発明は以下に示す例に限定されるものではない。
〔実施例1、2〕、〔比較例1、2〕:(請求項1に対応)
(カーボンブラック分散液成分)
分散剤 1.5重量部
カーボンブラック(Special Black4:デグサ社製) 10重量部
NMP溶媒 100重量部
【0075】
ここで、分散剤として以下のものを用いた。
実施例1:シリコーン変成ポリイミド(SMP3001:信越化学製:固形分40wt%)
実施例2:シリコーン変成ポリイミド(SMP3002:信越化学製:固形分40wt%)
比較例1:無添加
比較例2:直鎖アルキル(C10-C14)ベンゼンスルホン酸(ソフト王洗:日本油脂)
【0076】
各カーボンブラック分散液成分を、ジルコニア製ボール(1mmφ)と共に、硝子製攪拌ポットに入れ、15時間ボールミル攪拌を行った。
攪拌後、粒度分布測定装置(日機装社製ナノトラック)で下記項目の評価を行った。評価結果を下記〔表2〕に示す。
【0077】
(1)体積平均粒径Mv(μm):0.4μm以下が好ましく、0.3μm以下が最も好ましい。
(2)メジアン径D50(μm):0.35μm以下が好ましく、0.3μm以下が最も好ましい。
(3)最大粗大粒子径D100(μm):1.5μm以下が好ましく、1.0μm以下が最も好ましい。
(4)粒度分布幅の標準偏差sd:0.25μm以下が好ましく、0.20μm以下が最も好ましい。
【0078】
【表2】

【0079】
〔実施例3〜7〕:(請求項2に対応)
(カーボンブラック分散液成分)
分散剤 X重量部
カーボンブラック(Special Black4:デグサ社製) 10重量部
NMP溶媒 100重量部
但し、Xは、実施例3〜7において、それぞれ、0.1、0.125、1、2.5、3とする。
上記実施例2で用いた分散剤を用い、全く同様の方法でカーボンブラック分散液を作製し、同様の評価を行った。評価結果を下記〔表3〕に示す。
【0080】
【表3】

【0081】
〔実施例8〜12〕:(請求項3に対応)
上記実施例2で用いたカーボンブラック分散液成分を、攪拌時間を除いて全く同様の方法でボールミル攪拌を行った。
攪拌時間及び粒径の結果を下記〔表4〕に示す。
【0082】
【表4】

【0083】
〔実施例13、14〕:(請求項4、5に対応)
(カーボンブラック分散液成分)
分散剤 1.5重量部
カーボンブラック(Special Black4:デグサ社製) 10重量部
NMP溶媒 100重量部
なお、分散剤として以下のものを用いた。
実施例13
シリコーン変成ポリイミド(SMP3002:信越化学製:固形分40wt%)1.2重量部
ポリイミドワニス(UワニスS:宇部興産:固形分18wt%) 0.3重量部
実施例14
シリコーン変成ポリイミド(SMP3002:信越化学製:固形分40wt%)1.2重量部
ポリイミドワニス(UワニスA:宇部興産:固形分18wt%) 0.3重量部
これらを用いて、上記実施例2と同様にしてカーボンブラック分散液を作製した。
また、それぞれのカーボンブラック分散液を用いて成膜液を作製した。
(成膜液成分)
カーボンブラック分散液 20重量部
ポリイミドワニス(UワニスA:宇部興産:固形分18wt%) 40重量部
【0084】
比較のために、実施例2のカーボンブラック分散液を用いて同様に成膜液を作製した。
カーボンブラック分散液と成膜液の粒径の測定結果を下記〔表5〕に示した。
【0085】
【表5】

【0086】
〔実施例15、16〕:(請求項6に対応)
上記実施例2、14の成膜液を用いて、SUS製ローラ(10mmφ)上に、ディッピング塗工を施した後、所定の乾燥条件(1次乾燥温度:120℃、1次乾燥温度:350℃)で硬化し、10μmの膜厚のカーボン分散ポリイミド樹脂層を有するローラを作製した。
このローラの体積抵抗を各々10ヶ所測定し、平均抵抗とバラツキ(Logmax抵抗−Logmin抵抗)を算出した。
バラツキの許容範囲は、1桁以内が好ましく、0.5桁以内が最も好ましい。
算出結果を下記〔表6〕に示す。
【0087】
【表6】

【0088】
〔実施例17〕:(請求項7に対応)
実施例14の成膜液を用いて、前述した遠心成型法により無端ベルトを作製した。
但し、乾燥条件は実施例15、16と同じとする。
この無端ベルトの膜厚は78μm、外径は360mmφである。
実施例15、16と同様に平均抵抗とバラツキ(Logmax抵抗−Logmin抵抗)を算出した。
無端ベルトのバラツキの許容範囲は実施例15、16と同様である。
算出結果を下記〔表7〕に示す。
【0089】
【表7】

【0090】
〔実施例18〕:(請求項8に対応)
上記実施例17で作製した無端ベルトを、図3に示した画像形成装置に装着し、形成するハーフトーン画像濃度がほぼ0.8になるように調整した。
得られたハーフトーン画像について、斑点状の濃度ムラであるボソツキ画像の発生の度合いを評価した。
得られたハーフトーン画像について、斑点状の濃度ムラであるぼそつき画像の発生の度合いを評価した。
◎:非常に良好
○:良好
△:実使用上問題なし
×:非常に悪い
上記実施例17で作製した無端ベルトを評価したところ、◎:非常に良好の結果が得られ、本発明の無端ベルトを搭載した画像形成装置は、濃度ムラや画質の評価において、実用上充分に優れたものであるとの結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】タンデム型の電子写真装置の一例の要部の概略図を示す。
【図2】タンデム型の電子写真装置の他の一例の要部の概略図を示す。
【図3】タンデム型の間接転写方式の電子写真装置の概略構成図を示す。
【符号の説明】
【0092】
1 感光体
2 転写装置
3 シート搬送ベルト
4 中間転写体
5 2次転写装置
6 給紙装置
7 定着装置
8 感光体クリーニング装置
9 中間転写体クリーニング装置
10 無端ベルト状の中間転写体
14 第1の支持ローラ
15 第2の支持ローラ
16 第3の支持ローラ
17 中間転写体クリーニング装置
18 画像形成手段
20 タンデム画像形成装置
21 露光装置
22 2次転写装置
23 ローラ
24 2次転写ベルト
25 定着装置
26 定着ベルト
27 加圧ローラ
28 シート反転装置
100 複写装置本体
200 給紙テーブル
300 スキャナ
400 原稿自動搬送装置(ADF)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、シリコーン変成ポリイミドによる表面処理を施したカーボンブラック、及び分散媒を含有していることを特徴とするカーボンブラック分散液。
【請求項2】
前記シリコーン変成ポリイミドの添加量が、前記カーボンブラック100重量部に対して0.5重量部以上10重量部以下であることを特徴とする請求項1に記載のカーボンブラック分散液。
【請求項3】
前記カーボンブラックが、シリコーン変成ポリイミド及びポリイミドワニスによって表面処理を施されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のカーボンブラック分散液。
【請求項4】
カーボンブラックを分散させた分散媒にシリコーン変成ポリイミドを添加し、攪拌する工程を有し、
前記攪拌時間が10時間以上80時間以下であることを特徴とするカーボンブラック分散液の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載のカーボンブラックがシリコーン変成ポリイミド及びポリイミドワニスによる表面処理を施したものであり、かつ少なくともポリイミドワニスが、別途添加されており、
前記表面処理に用いたポリイミドワニスと、前記別途添加されるポリイミドワニスとが同一材料であることを特徴とするポリイミド樹脂成膜液。
【請求項6】
請求項5に記載されたポリイミド樹脂成膜液に対し、イミド化処理を施すことにより得られるポリイミド樹脂よりなる樹脂層が、少なくとも表面に成膜されていることを特徴とするローラ。
【請求項7】
請求項5に記載されたポリイミド樹脂成膜液に対し、イミド化処理を施すことにより得られるポリイミド樹脂よりなる樹脂層が、少なくとも表面に成膜されていることを特徴とする無端ベルト。
【請求項8】
少なくとも、像担持体に静電潜像を形成する帯電装置と、
前記像担持体上に、所望の色に応じた現像剤を用いてトナー像を形成する現像装置と、
前記トナー像を無端状に走行する中間転写体上に順次重ね合わせて一時転写し、当該中間転写体上の一時転写画像を転写材に一括して二次転写する中間転写装置と、
前記転写材上のトナー像を加熱または加圧してトナー像を前記転写材上に定着する定着装置とを有する画像形成装置であって、
前記帯電装置、前記現像装置、前記中間転写装置、及び前記定着装置のそれぞれを構成するローラ、無端ベルトの少なくとも一つが、請求項5に記載されたポリイミド樹脂成膜液に対しイミド化処理を施すことにより得られたポリイミド樹脂よりなる樹脂層を少なくとも表面に成膜されているものであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−204531(P2007−204531A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−22478(P2006−22478)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】