説明

キーレスエントリー機能を備えた携帯電話

【課題】キーレスエントリー機能が搭載された実用可能な携帯電話を提供する。
【解決手段】主電源を有する携帯電話において、記憶部をバックアップする補助電源を共用してキーレスエントリー部に電力を供給する。補助電源を消費するとバックアップができなくなる惧れがあるときは、主電源からキーレスエントリー部に電力を供給する。このとき、主電源オフであれば自動的にこれをオンし、キーレスエントリー終了で自動的にオフする。携帯電話の通常動作において主電源がオンされるとき、または主電源に充電を行ったとき、またはキーレスエントリー操作を行ったときに補助電源が消耗していればこれを報知し、補助電源の交換を促す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キーレスエントリー装置に関し、さらに詳しくは車両用のキーレスエントリーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特に車両用のキーにおいて、キーレスエントリーシステムが一般化し、さらにキーレスエントリーシステムにおいて、電子キーを操作しなくてもこれを保持して車両に近づくことで近距離無線通信によってエントリーコードが交換可能となり、電子キーをポケット等に入れたままドアの開錠ができるようにすることも普及している。さらに、キーレスエントリー機能を携帯電話と関連させることについても種々の提案がなされており、例えば特許文献1においては、携帯電話と車載機とが近距離通信を行うことによってドアロック機構の施錠および開錠を行うキーレスエントリーシステムが開示されている。また、特許文献2においては、キーレスエントリー機能をもつ携帯電話が遠隔地の管理サーバから送信されるエントリーコードを受信することで、携帯電話車両の開錠を行うことができるレンタカーシステムが提案されている。
【特許文献1】特開2006−60683号公報
【特許文献2】特開2003−58795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、携帯電話に合理的にキーレスエントリー機能を搭載するためには種々検討すべき問題がある。
【0004】
本発明の課題は、上記に鑑み、キーレスエントリー機能が搭載された実用可能な携帯電話を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、本発明は、主電源から給電される電話機能部と、主電源から給電される電話通信部と、主電源から給電される近距離通信部と、主電源から給電されるとともに前記電話機能部に必要なデータを記憶する記憶部と、この記憶部に給電する補助電源と、この補助電源から給電されるキーレスエントリー部を有する携帯電話を提供する。 携帯電話の主電源は頻繁に充電することを要するが、上記のように構成することにより、主電源が消耗していることによりキーレスエントリーができないような不都合がなくなる。また、キーレスエントリー部の電源消費は小さいので携帯電話の記憶部をバックアップするために設けられている補助電源を共用しても、本来のバックアップ機能を損なう懼れは小さい。
【0006】
本発明の具体的な特徴によれば、キーレスエントリー部はキーレスエントリーコードを記憶するキーレスエントリーコード記憶部とキーレスエントリー専用の通信を行うキーレスエントリー通信部を有するが、このキーレスエントリー部は、主電源によっても給電可能であるととともに、キーレスエントリー通信部に代えて前記近距離通信部によっても通信可能であるよう構成される。 さらに具体的には、このように構成した上で、補助電源が消耗しているときはキーレスエントリー通信部に代えて近距離通信部によってキーレスエントリー部の通信を行わせるようにする。 これによって、万一、これ以上キーレスエントリー部で補助電源の電力を消費したときは本来のバックアップが不可能となるような事態となってもキーレスエントリーを行うことができる。補助電源と主電源がともに消耗している可能性は小さいからである。
【0007】
本発明の他の具体的な特徴によれば、主電源がオンされるとき、または主電源に充電を行ったとき、またはキーレスエントリー操作を行ったときに補助電源が消耗しているときはこれを報知し、制御部を設けて補助電源の交換を促す。これによって、キーレスエントリーが必要なときに補助電源が消耗している事態を未然に防止する。
【0008】
本発明の他の具体的な特徴によれば、キーレスエントリー操作を行ったとき主電源がオフであるときはキーレスエントリー操作に応じてこれをオンする制御部を有する。これは、特に、キーレスエントリー操作を行ったときに補助電源が消耗していて主電源によってキーレスエントリーを行う必要があるときに有用である。 また、上記のようにしてキーレスエントリー操作に応じて前記主電源がオンされたときはキーレスエントリーの終了に伴って主電源をオフするよう構成すると合理的である。
【0009】
なお、本発明において主電源がオンされるときに補助電源が消耗しているときはこれを報知する構成、または主電源に充電を行ったときに補助電源が消耗しているときはこれを報知する構成は、キーレスエントリー部によって補助電源の電力を消費しない場合においても有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本発明の実施の形態に係るキーレスエントリーシステムの実施例を示すブロック図である。実施例は複数の携帯電話を含むシステムを構成しており、図1では、第1携帯電話1および第2携帯電話2を図示している。また、図1において第2携帯電話2内部の構成は簡略化して図示しているが、その内容は、基本的には第1携帯電話1と同一である。なお、図1では簡単のために2つの携帯電話のみ図示しているが、第三およびそれ以上の不特定多数の同様の構成の携帯電話が含まれていてよい。本発明の実施の形態に係るキーレスエントリーシステムは、さらに車両3および駐車場4を含む。
【0011】
第1携帯電話1は、携帯電話全体を制御するコンピュータからなる第1携帯制御部6を有し、電話操作部8の操作に応じて、第1電話機能部10などを制御する。この第1携帯制御部6の機能は記憶部12に格納されたソフトウエアによって実行される。記憶部12は、また第1携帯電話1全体の制御に必要な種々のデータを一時的に格納する。第1携帯制御部6は、さらに表示部14を制御し、電話操作部8の操作と連携するGUI表示を行うとともに制御結果の表示を行う。
【0012】
GPS部16は、GPSシステムに基づいて衛星または最寄の放送局より第1携帯電話1の絶対位置情報である緯度、経度、および高度の情報を得て第1携帯制御部6に送る。この絶対位置情報は、第1携帯制御部6の制御により地図とともに表示部14に表示され、ナビゲーション情報として提供される。
【0013】
第1携帯電話1は、第1電話機能部10および第1電話通信部18により通常の通話を含む電話回線を介した無線通信を行うことができる。第1携帯電話1には、これと別に無線LANなどによる第1携帯近距離通信部20が備えられており、近距離通信圏内に存在する他の携帯電話等との無線通信が可能となっている。 この第1携帯近距離通信部20は法規制上問題のない規格に基づくものであって、通信圏は限られるが電話回線などのように料金が発生しないものである。
【0014】
第1携帯近距離通信部20は、後述するエントリーコードの交信の他、上記のGPS部16において取得した絶対位置情報を他の機器のGPS部に送信すると共に、他の機器がそのGPS部で取得した絶対位置情報を受信することができる。これにより、表示部14において自分の位置だけでなく他の機器の位置についても同一の地図上で表示することが可能となり、両者の相対関係を地図上で確認できる。その詳細については、同一出願人による特許願2007−28393などに記載されている。後述するように、この機能によれば、例えば広大な駐車場4に止めてある車両3と第1携帯電話1を持つ自分の現在位置の関係がわかり、車両3に到達するのが容易となる。 また、第1携帯電話1は、カメラ部22を有し、撮影した画像を記憶部12に記憶することが可能であるとともに、第1電話通信部18によって画像を他の携帯電話に送信することができる。
【0015】
第1携帯電話1は、充電式の主電源24によって給電されていると共に、記憶部12はさらにリチウム電池などからなる補助電源26によりバックアップされている。これによって、主電源24の放電や交換の際に記憶部12に記憶されている情報が揮発するのを防ぐ。 第1携帯電話1はさらに、キーレスエントリー通信部28、およびこれと協働するキーレスエントリーコード記憶部30を有している。これらは、補助電源26により給電されており、基本的には主電源24の充電状態およびそのオン・オフに係らず機能する。キーレスエントリー通信部28の消費電力は、第1近距離通信部20に比べ微弱なので、このように記憶部12の補助電源26を共用する。
【0016】
この機能のため、第1携帯制御部6は、主電源24の電源がオフであっても、また主電源24の充電が通常の携帯電話機能のためには不充分と判断される状態であっても、キーレスエントリー操作のための電話操作部8の操作またはキーレスエントリー通信部28によって受信される車両3におけるエントリー操作を検出するための最低限の機能を行うよう低速省電力モードにて起動されている。 また、キーレスエントリーコード記憶部30は第1携帯制御部6にも接続されており、キーレスエントリーコード記憶部30に記憶されているエントリーコードに基づく車両3の施錠・開錠は、キーレスエントリー通信部28だけでなく第1携帯近距離通信部20によっても可能となっている。しかしながら、後述のように、基本的には、キーレスエントリー通信部28によって車両3の施錠・開錠が行われる。
【0017】
図1の実施例は、上記のように、キーレスエントリー通信部28が第1携帯制御部6の制御を受ける形となっているが、変形の実施例として、キーレスエントリー通信部を完全に第1携帯制御部6とは無関係に構成することも可能である。この場合、キーレスエントリー操作を検出するための専用操作部を設けることが必要である。なお、このようなキーレスエントリー操作部として電話操作部8の一部の操作キーを兼用し、この操作キーの操作をキーレスエントリー通信部28が直接検出できるよう構成してもよい。
【0018】
第2携帯電話2は、既に述べたように第1携帯電話1と同様の構成を持つものであり、重複を避けるため必要のない限り説明は省略する。また、既に述べたように、図1において、第2携帯電話2における構成は、第2携帯制御部32、第2電話通信部34および第2携帯近距離通信部36を除き、図示を省略している。 また、図1において、第1携帯電話1と第2携帯電話2が直接通信を行っているごとく図示しているが、周知のように携帯電話は通信回線のインフラストラクチャー通信によるものであり、実際には第1電話通信部18と第2電話通信部34とは、基地局を介して通信している。 一方、図1において、第1携帯電話1と第2携帯電話2とは、第1携帯近距離通信部20と第2携帯近距離通信部36によって直接のアドホック通信が可能である。
【0019】
車両3は、車両全体を制御するコンピュータからなる車両制御部38を有し、車両操作部40の操作に応じて、車両機能部42などを制御する。この車両制御部38の機能は記憶部44に格納されたソフトウエアによって実行される。記憶部44は、また車両3の制御に必要な種々のデータを一時的に格納する。
【0020】
GPS部46は、第1携帯電話1におけるGPS部16と同様のもので、GPSシステムに基づいて衛星または最寄の放送局より車両3の絶対位置情報である緯度、経度、および高度の情報を得て車両制御部38に送る。この絶対位置情報は、車両制御部38の制御により地図とともに表示され、カーナビゲーションが行われる。 車両3においても、無線LANなどによる車両近距離通信部48が備えられており、近距離通信圏内に存在する第1携帯近距離通信部20などとの無線通信が可能となっている。当然ながら、この車両近距離通信部48は第1携帯近距離通信部20と同一規格に基づくものであって、通信圏は限られるが電話回線などのように料金が発生しない。
【0021】
車両3は、さらにキーレスエントリー通信部50を有しており、第1携帯電話1のキーレスエントリー通信部28との間でエントリーコードの交信を行う。そしてキーレスエントリーコード記憶部30からキーレスエントリー通信部28を通じて送信されたエントリーコードがキーレスエントリー通信部50で受信され、これが正しいものであることがキーレスエントリーコード管理部52で認証されると、その結果が車両制御部38に通知される。これによって車両制御部38はドアロック部54に施錠・開錠の指示を行う。 さらに、第1携帯電話1の保持者が車両操作部40でエンジン始動操作を行った場合もキーレスエントリー通信部間の通信によりエンジンロックが解除されて始動が可能となる。つまり、この場合、第1携帯電話1の保持者は車両3の運転席にいるから、キーレスエントリー通信部28とキーレスエントリー通信部50の間の交信が可能となっている。そして、エンジン始動操作に応じて両者間の通信が行われ、キーレスエントリーコード記憶部30のエントリーコードが正しいものであることがキーレスエントリーコード管理部52で認証されると、その結果が車両制御部38に通知される。これに応じて、車両制御部38はエンジンロック部56のロックを解除してエンジン始動を可能とする。
【0022】
なお、前述のように、第1携帯電話1のキーレスエントリーコード記憶部30におけるエントリーコードは、第1携帯制御部6を経由して第1携帯近距離通信部20から車両3の車両近距離通信部48に送信できる。これは、補助電源26が消耗している場合などに有効である。この場合、車両制御部38は、車両近距離通信部48が受信したエントリーコードをキーレスエントリーコード管理部52に送り、これが正しかどうか認証させる。そして、その結果に基づき、車両制御部38はドアロック部54に施錠・開錠の指示を行う。 上記の場合、エンジン始動操作を行ったときも、キーレスエントリーコード記憶部30のエントリーコードが第1携帯制御部6を経由して第1携帯近距離通信部20から車両3の車両近距離通信部48に送信される。そしてエントリーコードが正しいものであることがキーレスエントリーコード管理部52で認証されると、その結果が車両制御部38に通知される。これに応じて、車両制御部38はエンジンロック部56のロックを解除してエンジン始動を可能とする。
【0023】
以上は、第1携帯電話1の所有者自身が車両3の所有者でもある場合として説明したが、次に、第2携帯電話2の所有者が車両3を所有しているとともに、第1携帯電話1が運転代行業者の所有物である場合について説明する。なお、既に述べたように、図1では図示が省略されているが、第2携帯電話2は第1携帯電話1と同様のものであって、キーレスエントリーコード記憶部、キーレスエントリー通信部他のすべての構成を備えている。 上記のような状況は、例えば、車両3の所有者が飲酒状態となり、運転代行業者に車両3の回送および自宅までの代行運転を依頼する場合などに生じる。このようなとき、車両3の所有者である第2携帯電話2の所有者は、電話回線を通じて第2電話通信部34から運転代行業者の第1電話通信部18に車両3の臨時エントリーコードを送信する。これによって、第1携帯電話のキーレスエントリーコード記憶部30には受信した臨時エントリーコードが記憶され、以下、上記に説明したのと同様にして第1携帯電話1による車両3のドアロック開錠およびエンジンロック解除が可能になる。従って、運転代行業者は、車両保有者のいる宴会場などに車両3を回送するとともに、車両保有者を拾ってその自宅まで車両3を代行運転することができる。なお、臨時エントリーコードは依頼した代行運転限りのものであって、それ以降は無効となる。臨時エントリーコードの送信等の詳細については後述する。
【0024】
駐車場4は、駐車場全体を制御するコンピュータからなる駐車場制御部58を有し、記憶部60に格納されたソフトウエアによって制御を実行する。記憶部60は、また駐車場4の制御に必要な種々のデータを一時的に格納する。 駐車場4は、さらに駐車場内の異なる場所に設置された駐車場第1近距離通信部62および駐車場第2近距離通信部64を有する。なお、駐車場4には、駐車場内の通信圏を確保するため、必要に応じて第3およびそれ以上の数の近距離通信部が設けられる。図1では簡単のため二つの近距離通信部を図示している。
【0025】
これら駐車場内の複数の近距離通信部は、通信圏をそれぞれ分担して確保するとともに、第1携帯近距離通信部20がいずれの近距離通信部と交信可能かを検知することによって第1携帯電話1が駐車場4のどこにあるかを駐車場制御部58が判定する。さらに第1携帯近距離通信部の電波を例えば駐車場第1近距離通信部62および第2携帯近距離通信部64が同時に受信することによって、三角点通信に基づき駐車場制御部58は第1携帯電話の位置をより正確に割り出すことができる。これによって第1携帯電話1が駐車場4の構内など衛星電波の圏外にあってGPS16が機能しなくても、第1携帯電話1の位置を検出することが可能となる。なお、駐車場制御部58が割り出した第1携帯電話1の位置は、最も近い駐車場近距離通信部から第1携帯近距離通信部20に伝えられる。 同様にして車両3の駐車位置についても、車両3のGPS部46が機能しないときは、車両近距離通信部48と周射場第2近距離通信部64などとの交信により駐車場制御部が検知し、第1携帯近距離通信部20に送信される。
【0026】
上記のようにして、第1携帯電話1は自身のGPS部16によって自身の
位置がわかるととともに、車両3のGPS部46が検知した車両3の位置情報を第1携帯近距離通信部20で得ることができるので、代行運転業者が車両3の位置を知らなくても、両者の位置関係を表示部14に表示することで車両3に到達することができる。 さらに、GPS部が機能しない場合でも、駐車場制御部58から自身の位置および車両3の位置の情報を第1携帯近距離通信部20で受信できるので、同様にして、両者の位置関係を表示部14に表示し、容易に車両3に到達することができる。 なお、車両3の位置情報の伝達は、第1携帯電話のキーレスエントリーコード記憶部に自身のエントリーコードまたは車両の所有者から受信した臨時エントリーコードが記憶されていない限り、第1携帯近距離通信部20で受信できない。従って、無用の第三者に車両3の位置が伝達されることはない。
【0027】
図2は、図1の実施例における第1携帯制御部6の機能の基本フローチャートであり、第1携帯電話1への主電源24の装着、または主電源24への充電開始、または補助電源26の装着によってスタートする。フローがスタートすると、まずステップS2で補助電源26がOKかどうかをチェックする。「補助電源がOKでない」と判断すべきレベルは、補助電源26の消耗が進み、これ以上キーレスエントリー通信部への給電を行うと記憶部12およびキーレスエントリーコード記憶部のバックアップが保証できなくなる限界直前のレベルとする。つまり、キーレスエントリー通信部への給電を行わない限りはこのレベルでもバックアップそのものは当面可能なレベルとする。 ステップS2で補助電源がOKでなければステップS4に進み、主電源24の充電がOKかどうかのチェックをする。「主電源の充電がOKでない」と判断すべきレベルは、第1携帯制御部自体の最低限の動作は可能であるが通常の携帯電話動作を行うには充電不足なので携帯電話機能を強制停止させるべきレベルとする。ステップS4で主電源の充電がOKであればステップS6に進み、補助電源26の交換を促す警告表示を行う。そしてこの表示を継続しながらステップS8に進む。
【0028】
ステップS8では、補助電源26のこれ以上の消耗を防ぐため、予防的にキーレスエントリー通信部28の機能を停止し、通信を不可とする。これに対応し、ステップS10で第1携帯近距離通信部20によるキーレスエントリー通信を可能とする。第1携帯近距離通信部20によるキーレスエントリー通信は通常行わないが、上記のようにステップS2からステップS8に至った場合に限り、これを行うようにする。 これは、第1携帯近距離通信部20が主電源24によって給電されているためである。主電源24は通常の携帯電話機能への給電のため頻繁に充電を行う必要があるが、これを怠ると携帯電話1全体が機能しなくなり、これに伴って第1携帯近距離通信部20も機能しない。従って、仮に第1携帯近距離通信部20をキーレスエントリー機能に常用すると、頻繁に生じる可能性のある携帯電話1の電池切れによってキーレスエントリーをはじめとする車両3の操作ができなくなる。これは不便であるし、ある場合には危険でもある。従って、通常は、補助電源26により給電されていて主電源24の充電状態およびそのオン・オフに係らず機能するキーレスエントリー通信部28およびこれと協働するキーレスエントリーコード記憶部30によりキーレスエントリーを行う。 しかしながら、補助電源26も長年の使用により消耗することがあるので、その際の緊急手段として、ステップS2からステップS10へのフローが用意されている。これは、補助電源26が消耗したとき同時に主電源24も充電不足の状態となっている可能性は低いことを前提としている。
【0029】
ステップS10で第1携帯近距離通信部20によるキーレスエントリー通信が可能となると、ステップS12に進み、第1携帯制御部6としてのキーレスエントリー割込を可能とする。この割込は、電話操作部8によりキーレスエントリー操作を行った場合にかかるものである。また、車両3の車両操作部40の一部をなす車両外部のロック解除ボタンが操作されたことを車両制御部38が検出し、車両近距離通信部48から第1携帯近距離通信部20にこれが通知されたときにもこの割込がかかる。ステップS12はこれらの割込を可能とするものであるが、通常はこれらの操作に基づく第1携帯制御部6への割込は禁止されており、これらの操作に基づくキーレスエントリー機能は、キーレスエントリー通信部28によって実行される。
【0030】
次いで、ステップS14で携帯電話機能の初期処理を行い、フローを終了する。なお、ステップS2で補助電源26がOKであると判断されたときは、第1携帯電話制御部6がキーレスエントリー操作に応答する必要はないので、ステップS16に進み、キーレスエントリー通信部28による通常キーレスエントリー状態を確認してステップS14に至る。このステップS16は、第1携帯電話1への主電源24の装着、または主電源24への充電開始、または補助電源26の装着などの機会がある毎に、キーレスエントリー通信部28が正常に機能するかどうかのチェックを行うとともに、第1携帯制御部へのキーレスエントリー割込が可となっていた場合にこれを不可とするために設けられている。
【0031】
また、ステップS4で主電源24がOKでなければ、ステップS18に進み、充電中かどうかのチェックをする。そして充電中であれば携帯電話1が機能可能なので、ステップS6に移行し、充電器から供給される電力によりステップS6以下の動作を行う。このような動作は、例えば携帯電話1が車両中で充電されている場合などに可能である。 一方、ステップS18で充電中でなければ携帯電話1の機能は不可能なので、直ちにフローを終了する。例えば、消耗した補助電源26を誤装着したときに主電源24が充電されていないか、または、補助電源26が消耗しているときに充電されていない主電源24を装着したときなどがこの場合に相当する。当然ながら、第1携帯制御部6になんらの給電もなされていなければ、図2のフロー自体がスタートしない。
【0032】
図3は、図1の実施例の第1携帯制御部6におけるキーレスエントリー操作があったときの機能を示すフローチャートである。フローは、電話操作部8によりキーレスエントリー操作を行ったとき、または、車両3の車両操作部40の一部をなす車両外部のロック解除ボタンが操作されたこと等を車両制御部38が検出し、車両3のキーレスエントリー通信部50から第1携帯電話1のキーレスエントリー通信部28にこれが通知されたとき、または、車両3の車両操作部40の一部をなす車両外部のロック解除ボタンが操作されたこと等を車両制御部38が検出し、車両近距離通信部48から第1携帯近距離通信部20にこれが通知された場合のいずれかによりスタートする。 なお、車両操作部40によるエンジン始動操作が車両制御部38によって検出されたときにおいても、ロック解除ボタンの操作検出の場合と同様にして図3のフローがスタートする。
【0033】
フローがスタートすると、ステップS22で補助電源26がOKかどうかをチェックする。OKでなければステップS24に進み、主電源24の充電がOKかどうかのチェックをする。ステップS24で主電源の充電がOKであればステップS26に進み、補助電源26の交換を促す警告表示を行う。そしてこの表示を継続しながらステップS28に進む。 ステップS28では、キーレスエントリー通信部28の機能を停止し、通信を不可としてステップS30に進む。ステップS30では、主電源24がオンでなければステップS32でこれをオンにしてステップS32に進む。これは、主電源24がオフされていれば第1携帯近距離通信部20への通電がなくキーレスエントリーの実行ができないからである。一方、ステップS30で主電源が既にオンであれば、直接ステップS34に移行する。
【0034】
ステップS34では、第1携帯近距離通信部20による通信に基づいてドアロック部54の施錠・開錠やエンジンロックの解除などのキーレスエントリーを実行する。 次いで、ステップS36においてステップS32において主電源が自動ONされた履歴があるかどうかチェックし、履歴があればステップS38に進んで主電源を自動OFFしてフローを終了する。これは、キーレスエントリーの実行のために自動的にONした携帯電話の主電源を用済み後元に戻すためである。一方、ステップS36で主電源自動ONの履歴がなければキーレスエントリー操作の検出以前から携帯電話の主電源が元々ONであったことを意味するので、主電源のOFFは行わずにフローを終了する。
【0035】
なお、ステップS22で補助電源26がOKであると判断されたときは、第1携帯電話制御部6がキーレスエントリー操作に応答する必要はないので、ステップS40に進み、キーレスエントリー通信部28による通常キーレスエントリー状態を確認してフローを終了する。このステップS40は、キーレスエントリー操作の機会がある毎に、キーレスエントリー通信部28が正常に機能するかどうかのチェックを行うとともに、第1携帯制御部へのキーレスエントリー割込が可となっていた場合にこれを不可とするために設けられている。 また、ステップS24で主電源の充電がOKでなかったときは、補助電源によっても主電源によってもいずれもキーレスエントリーの実行ができないので、直ちにフローを終了する。
【0036】
図4は、図1の実施例において携帯電話の主電源がONされたときの第1携帯制御部6の機能を示すフローチャートである。フローがスタートすると、ステップS52で主電源の充電がOKかどうかをチェックする。充電がOKであればステップS54に進み、補助電源26がOKかどうかをチェックする。補助電源がOKでなければステップS56に進み、補助電源26の交換を促す警告表示を行う。そしてこの表示を継続しながらステップS58に進む。
【0037】
ステップS58では、補助電源26のこれ以上の消耗を防ぐため、予防的にキーレスエントリー通信部28の機能を停止し、通信を不可とする。これに対応し、ステップS60で第1携帯近距離通信部20によるキーレスエントリー通信を可能としてステップS62の通常携帯電話機能処理に移行する。そして通常電話機能処理が停止されるとフローを終了する。 なお、ステップS54で補助電源26がOKであると判断されたときは、第1携帯電話制御部6がキーレスエントリー操作に応答する必要はないので、直接ステップS62に移行する。また、ステップS52で主電源の充電がOKであることが検出されない場合は直ちにフローを終了する。 以上のようにして、携帯電話の主電源がONされるたびに補助電源がOKかどうかのチェックを行うことにより、補助電源によるキーレスエントリーができない事態を未然に察知する。また、万一補助電源がOKでない場合は、自動的にキーレスエントリーの機能をキーレスエントリー通信部から近距離通信部に切換え、補助電源がこれ以上消耗して記憶部12のバックアップができなくなることを防止する。
【0038】
図5は、図1の実施例において、事前に登録されている代行運転者への電話発呼操作が電話操作部8によって行われたときの第1携帯制御部6の機能を示すフローチャートである。フローがスタートすると、ステップS72で登録されている代行運転者の電話番号への発呼が行われ、ステップS74で回線が接続されたかどうかチェックする。 接続が確認されるとステップS76に進み、電話操作部8によってエントリーコードを送信するための操作が行われたかどうかチェックする。そして、この操作が行われたことが確認されるとステップS78に進み、認証を要求する信号を電話の音声信号に重畳して送信してステップS80に進む。ステップS80では、認証要求信号の送信後所定時間が経過したかどうかをチェックしており、未経過ならばステップS82に進んで、要求に従って音声信号に重畳して返信される認証信号が抽出できたかどうかチェックする。
【0039】
ステップS82で認証返信信号が音声
信号から抽出されるとステップS84に進んでこれを参照データと照合し、認証結果がOKかどうかチェックする。そして認証結果がOKならばステップS86に進む。一方、ステップS82で認証返信信号が抽出されない場合、またはステップS84で認証がOKでない場合はステップS80に戻り、以下、所定時間が経過するまでステップS80からステップS84を繰り返し、認証がOKとなるのを待つ。 認証がOKになるとステップS86では、臨時キーレスエントリーコードを読み出し、ステップS88でこれを音声信号に重畳して代行運転者の電話に送信する。そしてステップS90で送信後所定時間が経過したかどうかをチェックして、未経過ならばステップS92で臨時キーレスエントリーコードを受信した旨の確認信号が代行運転者の電話からの音声信号から抽出できたかどうかチェックする。そして、この抽出ができればステップS94に進むが、抽出ができない場合はステップS88に戻り、臨時キーレスエントリーコードを再度送信する。以下、所定時間が経過するまでステップS88からステップS92を繰り返し、受信確認信号の抽出を待つ。
【0040】
ステップS92で受信確認信号が抽出されると臨時キーレスエントリーコードが代行運転者に確実に伝達されたことになるのでステップS94に進み、回線切断操作がなされたかどうかチェックする。そして、回線が切断された場合はフローを終了する。一方ステップS94で回線の切断操作が検出されない場合はステップS76に戻り、以下ステップS76からステップS94を繰り返す。 なお、ステップS80またはステップS90で所定時間が経過したときはステップS94に進み、回線を切断してフローを終了する操作が行われたかどうかチェックする。ステップS94で回線切断が検出されない場合はステップS76に戻るので、エントリーコード送信操作からやり直すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施の形態に係るキーレスエントリーシステムの実施例を示すブロック図である。。
【図2】図1の実施例における携帯制御部の機能の基本フローチャートである。
【図3】図1の実施例の携帯制御部におけるキーレスエントリー操作があったときの機能を示すフローチャートである。
【図4】図1の実施例において携帯電話の主電源がONされたときの携帯制御部の機能を示すフローチャートである。
【図5】図1の実施例において、代行運転者への電話発呼操作が行われたときの携帯制御部の機能を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0042】
24 主電源 10 電話機能部 20 近距離通信部 12 記憶部 26 補助電源 28、30 キーレスエントリー部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主電源と、前記主電源から給電される電話機能部と、前記主電源から給電される電話通信部と、前記主電源から給電される近距離通信部と、前記主電源から給電されるとともに前記電話機能部に必要なデータを記憶する記憶部と、前記記憶部に給電する補助電源と、前記補助電源から給電されるキーレスエントリー部を有することを特徴とする携帯電話。
【請求項2】
前記キーレスエントリー部はキーレスエントリーコードを記憶するキーレスエントリーコード記憶部とキーレスエントリー専用の通信を行うキーレスエントリー通信部を有することを特徴とする請求項1記載の携帯電話。
【請求項3】
前記キーレスエントリー部は、前記主電源によっても給電可能であるととともに、前記キーレスエントリー通信部に代えて前記近距離通信部によっても通信可能であることを特徴とする請求項2記載の携帯電話。
【請求項4】
前記補助電源が消耗しているときは前記キーレスエントリー通信部に代えて前記近距離通信部によってキーレスエントリー部の通信を行わせる制御部を有することを特徴とする請求項3記載の携帯電話。
【請求項5】
前記主電源がオンされるときに前記補助電源が消耗しているときはこれを報知する制御部を有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の携帯電話。
【請求項6】
前記主電源に充電を行ったときに前記補助電源が消耗しているときはこれを報知する制御部を有することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の携帯電話。
【請求項7】
キーレスエントリー操作を行ったときに前記補助電源が消耗しているときはこれを報知する制御部を有することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の携帯電話。
【請求項8】
キーレスエントリー操作を行ったときに前記主電源がオフであるときはキーレスエントリー操作に応じてこれをオンする制御部を有することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の携帯電話。
【請求項9】
前記制御部は、キーレスエントリー操作を行ったときに前記補助電源に不備があり且つ前記主電源がオフであるときにキーレスエントリー操作に応じて前記主電源をオンすることを特徴とする請求項8記載の携帯電話。
【請求項10】
前記制御部は、キーレスエントリー操作に応じて前記主電源がオンされたときはキーレスエントリーの終了に伴って前記主電源をオフすることを特徴とする請求項8または9記載の携帯電話。
【請求項11】
主電源と、前記主電源から給電される電話機能部と、前記主電源から給電される電話通信部と、前記主電源から給電される近距離通信部と、前記主電源から給電されるとともに前記電話機能部に必要なデータを記憶する記憶部と、前記記憶部に給電するし補助電源と、前記主電源がオンされるときに前記補助電源が消耗しているときはこれを報知する制御部とを有することを特徴とする携帯電話。
【請求項12】
主電源と、前記主電源から給電される電話機能部と、前記主電源から給電される電話通信部と、前記主電源から給電される近距離通信部と、前記主電源から給電されるとともに前記電話機能部に必要なデータを記憶する記憶部と、前記記憶部に給電するし補助電源と、前記主電源に充電を行ったときに前記補助電源が消耗しているときはこれを報知する制御部とを有することを特徴とする携帯電話。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−71698(P2009−71698A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−239664(P2007−239664)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】