説明

グラフトパターン形成方法及び導電性パターン形成方法

【課題】基板との密着性に優れ、所望の領域に種々の機能性材料を付与することで、安価な装置を用いて簡易に機能性パターンを形成しうるグラフトパターンの形成方法、及び、基板との密着性と導電性に優れた導電性パターンを安価な装置を用いて簡易に形成しうる導電性パターン形成方法を提供する。
【解決手段】露光によりラジカルを発生しうる基材表面上に、ラジカル重合可能な不飽和化合物を接触させ、360nm〜700nmの波長のレーザにより像様露光して、該基材表面上に基材と直接結合したグラフトポリマーをパターン状に生成させることを特徴とするグラフトパターン形成方法である。ここで形成されたグラフトポリマー生成領域に導電性を付与することで導電性パターンを形成しうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフトパターン形成方法、及び、導電性パターン形成方法に関し、より詳細には、水分や様々な機能を有する物質を付与することができる高精細のグラフトパターンを形成しうるグラフトパターン形成方法、及び、それを利用した、薄層トランジスタの電極などに有用な、高精細で優れた導電性を有する導電性パターンを容易に形成しうる導電性パターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、固体表面に防汚性、親水性、その他種々の機能を設ける技術が注目され、なかでも、片末端のみが基材に直接結合してなるグラフトポリマーの機能を応用して固体表面の改質を図る技術について種々の検討がなされている。
なかでも、電子材料の小型化に伴い、高精細な電気配線を容易に形成する方法が求められている。
高精細で導電性に優れた微細配線は、真空成膜法などの気相法により形成されることが一般的であるが、この方法では、広い面積にわたって膜厚や膜質が均一な金属膜を成膜することが困難であり、信頼性の高い配線、電極などを形成しうる方法が切望されていた。さらに、大面積のパネルに気相法で金属膜を製膜する場合、巨大な真空成膜装置とガス供給設備などの付帯設備が必要となり、莫大な設備投資が必要になるといった問題も発生する。また、スパッタ装置、CVD装置などの真空成膜装置は、真空ポンプを駆動する電力、基板加熱を行なう電力、プラズマを発生させる電力等多くの電力を必要とするが、当然ながら装置の巨大化に伴いこれら製造装置の消費エネルギーが増大するといった問題も発生する。
【0003】
さらに、金属配線などを形成する際、従来は、真空成膜装置を用いて基板の全面に金属膜を成膜した後、その不要部分をエッチングにより除去することで、電気配線パターンを形成していたが、この手法では、配線の解像度が限定され、金属材料の無駄が発生するといった問題もあった。近年、環境への配慮から、製造工程における消費エネルギーの低減や、材料資源の有効利用が求められ、より簡易に所望の解像度の金属膜パターンを形成しうる方法が求められている。
【0004】
これに対して、例えば、無電解めっきの反応に必要な触媒層を予め基板上にパターン配置し、触媒層の存在する領域にのみ選択的に金属膜を形成する無電解めっき技術(例えば、特許文献1参照。)や、基板表面に金属酸化膜(例えばZnO)を形成した後、金属酸化膜をパターニングして、形成された金属酸化膜パターン上に選択的に金属膜パターンを形成する方法(例えば、特許文献2参照。)が提案されている。これらの方法では、所望のパターンで金属配線が形成できるが、前者では、ガラス基板などの表面が平滑な基板上に無電解めっきで金属膜パターンを形成した場合、基板とめっき被膜の密着性が非常に弱く、実用上問題のあるレベルであり、さらに、メッキ膜の膜厚を増加させることが困難であった。また、後者では、基板全面に形成された酸化亜鉛膜をパターン化する工程において、レジスト樹脂などの使用が必要であり、工程が煩雑で、且つ、酸化亜鉛の耐薬品性の低さに起因して、エッチングレートの微妙な調整が要求されるとともに、大面積基板上ではエッチング速度の面内均一性を向上させることが困難であった。
【0005】
また、これらの改良技術として、感光膜に触媒となる材料を担持させ、紫外線露光でパターン化された触媒層を形成し、その領域のみに酸化亜鉛膜を形成し、これを基点として無電解メッキにより金属パターンを形成する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。この方法によれば、解像度の高い酸化亜鉛膜パターンが形成されるという利点を有するが、感光膜などの特殊な材料を必要とし、また、金属膜の形成までに、2つの触媒層の形成を含む5工程を要し、工程が煩雑であった。
【0006】
これをうけて本願出願人は、赤外線レーザを操作することによりデジタルデータに基づき直接画像形成が可能な導電性パターン材料及びその形成方法について提案した(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、ここで用いられる画像形成成分は極性変換機能を応用しているために保存安定性についてなお改良の余地があった。さらに、解像度及び鮮鋭度についてさらに向上した高精細の導電性パターンが求められているのが実状であり、この点については、高解像度を達成するためにレーザ露光において、露光時間の短く、かつ、走査速度の速い露光方法による解決が検討されている。しかし、この方法で用いられる高出力赤外線レーザは、露光機のコストが高く実用するには大きな設備投資を必要としており、より安価で生産性の高い可視域の露光機に対する適性が求められていた。
【特許文献1】特開2000−147762公報
【特許文献2】特開2001−85358公報
【特許文献3】特開2003−213436公報
【特許文献4】特開2003−114525公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の前記従来における問題点を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明の目的は、基板との密着性に優れ、所望の領域に種々の機能性材料を付与することで、安価な装置を用いて簡易に機能性パターンを形成しうるグラフトパターンの形成方法を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、基板との密着性と導電性に優れた導電性パターンを安価な装置を用いて簡易に形成しうる導電性パターン形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、検討の結果、エネルギー付与によりラジカル重合を開始しうる基材表面に、ラジカル重合によりグラフトポリマーを生成することで上記問題点を解決しうることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明のグラフトパターン形成方法は、露光によりラジカルを発生しうる基材表面上に、ラジカル重合可能な不飽和化合物を接触させて、360nm〜700nmの波長のレーザにより像様露光し、該基材表面上に基材と直接結合したグラフトポリマーをパターン状に生成させることを特徴とする。
ここで、露光によりラジカルを発生しうる基材中には、トリアジン系の重合開始剤と、360nm〜700nmの波長に極大吸収を有する増感剤とを含有することが感度の観点から好ましい。
前記方法において、基材表面上へのラジカル重合可能な不飽和化合物の接触は、該ラジカル重合可能な不飽和化合物と360nm〜700nmの波長に極大吸収を有する増感剤を含有する層を接触させることにより実施されることが好ましい。
また、本発明の請求項4に係る導電性パターン形成方法は、前記本発明のグラフトパターン形成方法により形成されたパターン状のグラフトポリマーに導電性を付与することを特徴とする。
【0009】
前記像様露光には、可視領域、すなわち、360nm〜700nmの波長に極大吸収を有するレーザ走査露光を用いる。
また、導電層の形成にあたっては、導電性等の電気的特性の観点からは、グラフトポリマー生成領域に無電解メッキ触媒もしくはその前駆体を付与し、無電解メッキを行うことが好ましく、その際の無電解メッキは、トリアルカノールアミン、特に、トリエタノールアミンを含有する無電解メッキ浴を用いて行うことが好ましい態様である。
本発明においては、画像様の露光光源として、360nm〜700nmの可視光領域を選択したため、従来の赤外線領域、紫外線領域の走査露光により形成されたパターンよりも高解像度のパターン形成が可能となる。従って、このグラフトパターンを用いた導電性パターンは、より高解像度の配線を形成することが可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基板との密着性に優れ、所望の領域に種々の機能性材料を付与することで簡易に機能性パターンを形成しうるグラフトパターンの安価な装置を用いた形成方法を提供することができる。
また、本発明の別の態様によれば、基板との密着性と導電性に優れた導電性パターンを安価な装置を用いて簡易に形成しうる導電性パターン形成方法を提供することができる。
この導電性パターン形成方法により得られた導電性パターンは、従来得られたものよりも、さらに高解像度であり、且つ、密着性、導電性に優れるため、高解像度の配線を必要とする種々の装置に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のグラフトパターン形成方法は、(1)露光によりラジカルを発生しうる基材表面上に、ラジカル重合可能な不飽和化合物を接触させ、(2)360nm〜700nmの波長のレーザにより像様露光し、該基材表面上に基材と直接結合したグラフトポリマーをパターン状に生成させる方法である。
【0012】
まず、露光によりラジカルを発生しうる基材を準備する。この基材は、360nm〜700nmの波長のレーザ露光により、ラジカルを発生させることができれば、如何なる基材を用いてもよい。
露光によりラジカルを発生しうる基材としては、(a)ラジカル発生剤を含有する基材、(b)ラジカル発生部位を有する高分子化合物を含有する基材、及び(c)架橋剤とラジカル発生部位を有する高分子化合物とを含有する塗布液を支持体表面に塗布、乾燥し、架橋構造を形成させた被膜を表面に有する基材が挙げられる。
【0013】
本発明においては、ガラス基板などの表面全体に重合開始能を有する化合物を結合させた後、所望のパターン状に360nm〜700nmの波長のレーザで露光して、かかる化合物が有する重合開始部位をパターン状に活性化させて、そこを起点としてグラフトポリマーを生成させる態様が好ましく用いられる。
以下、この態様について述べる。
【0014】
この態様に適用しうる重合開始能を有する化合物としては、例えば、光開裂によりラジカル重合を開始しうる重合開始部位(Y)と基材結合部位(Q)とを有する化合物(以下、適宜「光開裂化合物(Q−Y)」と称する。)等が挙げられる。
ここで、光開裂によりラジカル重合を開始しうる重合開始部位(以下、単に「重合開始部位(Y)」と称する。)は、光により開裂しうる単結合を含む構造である。
この光により開裂する単結合としては、カルボニルのα開裂、β開裂反応、光フリー転位反応、フェナシルエステルの開裂反応、スルホンイミド開裂反応、スルホニルエステル開裂反応、N−ヒドロキシスルホニルエステル開裂反応、ベンジルイミド開裂反応、活性ハロゲン化合物の開裂反応、などを利用して開裂が可能な単結合が挙げられる。これらの反応により、光により開裂しうる単結合が切断される。この開裂しうる単結合としては、C−C結合、C−N結合、C−O結合、C−Cl結合、N−O結合、及びS−N結合等が挙げられる。
【0015】
また、これらの光により開裂しうる単結合を含む重合開始部位(Y)は、グラフトポリマー生成工程におけるグラフト重合の起点となることから、光により開裂しうる単結合が開裂すると、その開裂反応によりラジカルを発生させる機能を有する。このように、光により開裂しうる単結合を有し、かつ、ラジカルを発生可能な重合開始部位(Y)の構造としては、以下に挙げる基を含む構造が挙げられる。
即ち、芳香族ケトン基、フェナシルエステル基、スルホンイミド基、スルホニルエステル基、N−ヒドロキシスルホニルエステル基、ベンジルイミド基、トリクロロメチル基、ベンジルクロライド基、などである。
【0016】
このような重合開始部位(Y)は、露光により開裂して、ラジカルが発生すると、そのラジカル周辺に重合性化合物が存在する場合には、このラジカルがグラフト重合反応の起点として機能し、グラフトポリマーを生成することができる。
このため、表面に光開裂化合物(Q−Y)が導入された基材を用いてグラフトポリマーを生成させる場合には、エネルギー付与手段として、重合開始部位(Y)を開裂させうる波長での露光を用いることが必要である。
【0017】
また、基材結合部位(Q)としては、ガラスに代表される絶縁基板表面に存在する官能基(Z)と反応して結合しうる反応性基で構成され、その反応性基としては、具体的には、以下に示すような基材結合基が挙げられる。
【0018】
【化1】

【0019】
重合開始部位(Y)と、基材結合部位(基材結合基)(Q)と、は直接結合していてもよいし、連結基を介して結合していてもよい。この連結基としては、炭素、窒素、酸素、及びイオウからなる群より選択される原子を含む連結基が挙げられ、具体的には、例えば、飽和炭素基、芳香族基、エステル基、アミド基、ウレイド基、エーテル基、アミノ基、スルホンアミド基、等が挙げられる。また、この連結基は更に置換基を有していてもよく、その導入可能な置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、等が挙げられる。
【0020】
基材結合部位(Q)と、重合開始部位(Y)と、を有する化合物(Q−Y)の具体例〔例示化合物T1〜T5〕を、開裂部と共に以下に示すが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0021】
【化2】

【0022】
ここで、本発明において用いられる基板表面には、例えば、ガラス基板を用いた場合、その材質に起因して、例えば、水酸基等の官能基(Z)が、もともと存在している。そのため、ガラス基板上に光開裂化合物(Q−Y)を接触させ、基材表面に存在する官能基(Z)と、基材結合部位(Q)と、を結合させることで、基材表面に光開裂化合物(Q−Y)が容易に導入される。また、絶縁基板として樹脂基板を用いる場合は、基板表面にコロナ処理、グロー処理、プラズマ処理などの表面処理により、水酸基、カルボキシル基などを発生させ、その官能基(Z)を起点としてもよい。
【0023】
本発明において絶縁基板として用いられるガラス基板としては、例えば、ケイ素ガラス基板、無アルカリガラス基板、石英ガラス基板、ガラス基材表面にITO膜を形成してなる基板等が挙げられる。このようなガラス基板の厚みは、使用目的に応じて選択され、特に限定はないが、一般的には、10μm〜10cm程度である。
【0024】
光開裂化合物(Q−Y)を基材表面に存在する官能基(Z)に結合させる具体的な方法としては、光開裂化合物(Q−Y)を、トルエン、ヘキサン、アセトンなどの適切な溶媒に溶解又は分散し、その溶液又は分散液を基材表面に塗布する方法、又は、溶液又は分散液中に基材を浸漬する方法などを適用すればよい。これらの方法により、光開裂化合物(Q−Y)が導入された基材表面が得られる。
このとき、溶液中又は分散液の光開裂化合物(Q−Y)の濃度としては、0.01質量%〜30質量%が好ましく、特に0.1質量%〜15質量%であることが好ましい。接触させる場合の液温としては、0℃〜100℃が好ましい。接触時間としては、1秒〜50時間が好ましく、10秒〜10時間がより好ましい。
また、このとき、ラジカル発生能を有する前記化合物とともに、後述する増感剤を共存させてもよい。
【0025】
以上のようにして得られた、表面に光開裂化合物(Q−Y)が導入された基材にグラフトポリマーを生成させる場合には、その表面に重合性化合物を接触させ、パターン露光することで、露光部の重合開始部位(Y)を開裂させ、そこを起点としてグラフトポリマーを生成させる方法が用いられる。
また、以下の方法にてパターン状にグラフトポリマーを生成させることもできる。
まず、光開裂化合物(Q−Y)が導入された基材表面に、予め、グラフトポリマーを生成させたくない領域に沿ってパターン露光を行い、基材表面に結合している化合物(Q−Y)を光開裂させて重合開始能を失活させることで、基材表面に、重合開始可能領域と重合開始能失活領域とを形成する。そして、重合開始可能領域と重合開始能失活領域とが形成された基材表面に、重合性化合物を接触させた後、全面露光することで、重合開始可能領域にのみにグラフトポリマーが生成し、結果的に、パターン状にグラフトポリマーが生成される。
【0026】
上述のようにしてグラフトポリマーを生成させるには、本発明においては、重合性化合物を単体で、又は、溶媒に分散或いは溶解させた状態で光開裂化合物(Q−Y)が導入された基材表面に接触させることが必要である。この接触方法としては、基材を、重合性化合物含有の液状組成物中に浸漬することで行ってもよいが、取り扱い性や製造効率の観点からは、基材表面に、該重合性化合物をそのまま接触させるか、重合性化合物含有の液状組成物を塗布して塗膜を形成する方法、更には、その塗膜を乾燥して、基材表面に重合性化合物を含有する層(グラフトポリマー前駆体層)を形成することにより行うことが好ましい。
なかでも、該重合性化合物と360nm〜700nmの波長に極大吸収を有する増感剤を含有する液状組成物を塗布、乾燥してなる増感剤含有グラフトポリマー前駆体層を形成させることにより行うことが、グラフトポリマーパターン形成効率の観点からさらに好ましい。
【0027】
また、本発明において、グラフトポリマーを生成する方法は、前記方法に限定されず、以下に述べる他の態様も挙げることができる。
【0028】
すなわち、<1>露光によりラジカルを発生しうる固体を用い、その表面に、重合性不飽和二重結合を有する化合物を接触させ、パターン状に露光を行い、露光により基材表面に発生したラジカルを起点として、該化合物をグラフト重合して、画像様にグラフトポリマーを生成させる方法の他にも、例えば、<2>固体表面に水素引き抜き型のラジカル発生剤を接触させ、画像様に露光することで、活性点を発生する態様も挙げられ、この場合、重合性化合物を接触させると、活性点の発生とグラフトポリマーの生成が同時に進行する。
さらに、<3>光開裂によりラジカル重合を開始しうる光重合開始部位を共有結合により固体表面にパターン状に設け、それを基点としてグラフトポリマーを生成させる方法も好ましく挙げられ、このような固体表面を得るためには、光開裂によりラジカル重合を開始しうる光重合開始部位と基材結合部位とを有する化合物を基材に結合させ、その後、パターン露光を行い、露光領域の該光重合開始部位を失活させる方法や、光開裂によりラジカル重合を開始しうる重合開始部位と基材結合部位とを有する化合物を固体表面にパターン状に結合させる方法などが挙げられる。
【0029】
また、態様<1>で用いる露光によりラジカルを発生しうる基材あるいは絶縁層についても、例えば、(a)ラジカル発生剤を含有する基材、(b)側鎖にラジカル発生部位を有する高分子化合物を含有する基材、(c)架橋剤と側鎖にラジカル発生部位を有する高分子化合物とを含有する塗布液を支持体表面に塗布、乾燥し、被膜内に架橋構造を形成させてなる基材、などを用いることができる。
【0030】
この代表的な(a)基材に含有させる「露光によりラジカルを発生しうる化合物(以下、適宜、ラジカル発生剤と称する)」は低分子化合物でも、高分子化合物でもよく、一般に公知のものが使用される。
低分子のラジカル発生剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーズケトン、ベンゾイルベンゾエート、ベンゾイン類、α−アシロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド、トリクロロメチルトリアジンなどのトリアジン類、およびチオキサントン等の公知のラジカル発生剤を使用できる。また通常、光酸発生剤として用いられるスルホニウム塩やヨードニウム塩なども光照射によりラジカル発生剤として作用するため、本発明ではこれらを用いてもよい。
高分子ラジカル発生剤としては特開平9−77891号段落番号〔0012〕〜〔0030〕や、特開平10−45927号段落番号〔0020〕〜〔0073〕に記載の活性カルボニル基を側鎖に有する高分子化合物などを使用することができる。このような高分子ラジカル発生剤のうち、側鎖にラジカル発生部位を有する高分子化合物を含有するものが、前記(b)基材に相当する。
ラジカル発生剤の含有量は、基材の種類、所望のグラフトポリマーの生成量などを考慮して適宜、選択できるが、一般的には、低分子ラジカル発生剤の場合、0.1〜40質量%の範囲であり、高分子ラジカル発生剤の場合、1.0〜50質量%の範囲であることが好ましい。
【0031】
このようなラジカル発生剤が直接化学結合された基材、またはラジカル重合可能な不飽和化合物を含む層を塗布した基材中には、感度を高める目的で、ラジカル発生剤に加えて増感剤を含有させることもできる。
増感剤は、活性エネルギー線により励起状態となり、前記ラジカル発生剤と相互作用(例えば、エネルギー移動、電子移動等)することにより、ラジカルなどの有用基の発生を促進することが可能である。
【0032】
本発明に使用しうる増感剤としては、特に制限はなく、公知の増感剤の中から前記露光波長に合わせて、適宜選択することができる。
具体的には、例えば、公知の多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えば、インドカルボシアニン、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、アクリドン類(例えば、アクリドン、クロロアクリドン、N−メチルアクリドン、N−ブチルアクリドン、N−ブチル−クロロアクリドン等)、クマリン類(例えば、3−(2−ベンゾフロイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2−ベンゾフロイル)−7−(1−ピロリジニル)クマリン、3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2−メトキシベンゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(4−ジメチルアミノベンゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3,3'−カルボニルビス(5,7−ジ−n−プロポキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−(2−フロイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(4−ジエチルアミノシンナモイル)−7−ジエチルアミノクマリン、7−メトキシ−3−(3−ピリジルカルボニル)クマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジプロポキシクマリン等があげられ、他に特開平5−19475号、特開平7−271028号、特開2002−363206号、特開2002−363207号、特開2002−363208号、特開2002−363209号等の各公報に記載のクマリン化合物など)が挙げられる。
【0033】
光重合開始剤と増感剤との組合せとしては、例えば、特開2001−305734号公報に記載の電子移動型開始系[(1)電子供与型開始剤及び増感色素、(2)電子受容型開始剤及び増感色素、(3)電子供与型開始剤、増感色素及び電子受容型開始剤(三元開始系)]などの組合せが挙げられる。
より具体的には、トリアジン系の重合開始剤と、360nm〜700nmの波長に極大吸収を有する増感剤との組合せが好ましく挙げられる。
【0034】
その他の増感剤としては、塩基性核を有する増感剤、酸性核を有する増感剤、蛍光増白剤を有する増感剤などが挙げられる。これらについて順次説明する。
塩基性核を有する増感剤は、その分子内に塩基性核を有する色素であれば特に制限はなく、露光波長(例えば、可視光線、可視光レーザ等)に合わせて適宜選択することができる。
本発明においては、360〜700nmの波長のレーザ露光を行うため、増感剤の極大吸収波長は700nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましく、450nm以下であることが特に好ましい。
【0035】
前記塩基性核を有する色素としては、例えば、シアニン系色素、ヘミシアニン系色素、スチリル色素系、ストレプトシアニン系色素、などが挙げられる。前記各色素には、ビス型、トリス型、ポリマー型の色素、なども含まれるものである。また、これらの中でも、シアニン系色素、ヘミシアニン系色素、スチリル系色素が好ましく、シアニン系色素、ヘミシアニン系色素がより好ましい。
前記塩基性核を有する色素がシアニン系色素の場合は、メチン基の数は1個が好ましく、ヘミシアニン系色素の場合は、メチン基の数は5個以下が好ましい。また、スチリル系色素の場合で、アニリン母核を有している場合には、メチン鎖の数は4個以下が好ましい。
【0036】
塩基性核とは、例えば、ジェイムス(James)編「ザ・セオリー・オブ・ザ・フォトグラフィック・プロセス(The Theory of the Photographic Process)」第4版、マクミラン出版社、1977年、第8章「増感色素と減感色素」により定義され、米国特許第3,567,719号、第3,575,869号、第3,804,634号、第3,837,862号、第4,002,480号、第4,925,777号、特開平3−167546号などに記載されているものが挙げられる。
【0037】
前記塩基性核としては、例えば、ベンゾオキサゾール核、ベンゾチアゾール核及びインドレニン核などが好ましい。
また、前記塩基性核は、芳香族基が置換した塩基性核、又は3環以上縮環した塩基性核である場合が好ましい。
ここで、塩基性核の縮環数は、例えば、ベンゾオキサゾール核は2であり、ナフトオキサゾール核は3である。また、ベンゾオキサゾール核がフェニル基で置換されても、縮環数は2である。3環以上縮環した塩基性核としては3環以上縮環した多環式縮環型複素環塩基性核であればいかなるものでも良いが、好ましくは3環式縮環型複素環、及び4環式縮環型複素環が挙げられる。
【0038】
3環式縮環型複素環としては、例えば、ナフト[2,3−d]オキサゾール、ナフト[1,2−d]オキサゾール、ナフト[2,1−d]オキサゾール、ナフト[2,3−d]チアゾール、ナフト[1,2−d]チアゾール、ナフト[2,1−d]チアゾール、ナフト[2,3−d]イミダゾール、ナフト[1,2−d]イミダゾール、ナフト[2,1−d]イミダゾール、ナフト[2,3−d]セレナゾール、ナフト[1,2−d]セレナゾール、ナフト[2,1−d]セレナゾール、インドロ[5,6−d]オキサゾール、インドロ[6,5−d]オキサゾール、インドロ[2,3−d]オキサゾール、インドロ[5,6−d]チアゾール、インドロ[6,5−d]チアゾール、インドロ[2,3−d]チアゾール、ベンゾフロ[5,6−d]オキサゾール、ベンゾフロ[6,5−d]オキサゾール、ベンゾフロ[2,3−d]オキサゾール、ベンゾフロ[5,6−d]チアゾール、ベンゾフロ[6,5−d]チアゾール、ベンゾフロ[2,3−d]チアゾール、ベンゾチエノ[5,6−d]オキサゾール、ベンゾチエノ[6,5−d]オキサゾール、ベンゾチエノ[2,3−d]オキサゾール等が挙げられる。
【0039】
また、4環式縮環型複素環としては、例えば、アントラ[2,3−d]オキサゾール、アントラ[1,2−d]オキサゾール、アントラ[2,1−d]オキサゾール、アントラ[2,3−d]チアゾール、アントラ[1,2−d]チアゾール、フェナントロ[2,1−d]チアゾール、フェナントロ[2,3−d]イミダゾール、アントラ[1,2−d]イミダゾール、アントラ[2,1−d]イミダゾール、アントラ[2,3−d]セレナゾール、フェナントロ[1,2−d]セレナゾール、フェナントロ[2,1−d]セレナゾール、カルバゾロ[2,3−d]オキサゾール、カルバゾロ[3,2−d]オキサゾール、ジベンゾフロ[2,3−d]オキサゾール、ジベンゾフロ[3,2−d]オキサゾール、カルバゾロ[2,3−d]チアゾール、カルバゾロ[3,2−d]チアゾール、ジベンゾフロ[2,3−d]チアゾール、ジベンゾフロ[3,2−d]チアゾール、ベンゾフロ[5,6−d]オキサゾール、ジベンゾチエノ[2,3−d]オキサゾール、ジベンゾチエノ[3,2−d]オキサゾール、テトラヒドロカルバゾロ[6,7−d]オキサゾール、テトラヒドロカルバゾロ[7,6−d]オキサゾール、ジベンゾチエノ[2,3−d]チアゾール、ジベンゾチエノ[3,2−d]チアゾール、テトラヒドロカルバゾロ[6,7−d]チアゾール等が挙げられる。
【0040】
3環以上縮環した塩基性核として更に好ましくは、ナフト[2,3−d]オキサゾール、ナフト[1,2−d]オキサゾール、ナフト[2,1−d]オキサゾール、ナフト[2,3−d]チアゾール、ナフト[1,2−d]チアゾール、ナフト[2,1−d]チアゾール、インドロ[5,6−d]オキサゾール、インドロ[6,5−d]オキサゾール、インドロ[2,3−d]オキサゾール、インドロ[5,6−d]チアゾール、インドロ[2,3−d]チアゾール、ベンゾフロ[5,6−d]オキサゾール、ベンゾフロ[6,5−d]オキサゾール、ベンゾフロ[2,3−d]オキサゾール、ベンゾフロ[5,6−d]チアゾール、ベンゾフロ[2,3−d]チアゾール、ベンゾチエノ[5,6−d]オキサゾール、アントラ[2,3−d]オキサゾール、アントラ[1,2−d]オキサゾール、アントラ[2,3−d]チアゾール、アントラ[1,2−d]チアゾール、カルバゾロ[2,3−d]オキサゾール、カルバゾロ[3,2−d]オキサゾール、ジベンゾフロ[2,3−d]オキサゾール、ジベンゾフロ[3,2−d]オキサゾール、カルバゾロ[2,3−d]チアゾール、カルバゾロ[3,2−d]チアゾール、ジベンゾフロ[2,3−d]チアゾール、ジベンゾフロ[3,2−d]チアゾール、ジベンゾチエノ[2,3−d]オキサゾール、ジベンゾチエノ[3,2−d]オキサゾール、が挙げられ、特に好ましくは、ナフト[2,3−d]オキサゾール、ナフト[1,2−d]オキサゾール、ナフト[2,3−d]チアゾール、インドロ[5,6−d]オキサゾール、インドロ[6,5−d]オキサゾール、インドロ[5,6−d]チアゾール、ベンゾフロ[5,6−d]オキサゾール、ベンゾフロ[5,6−d]チアゾール、ベンゾフロ[2,3−d]チアゾール、ベンゾチエノ[5,6−d]オキサゾール、カルバゾロ[2,3−d]オキサゾール、カルバゾロ[3,2−d]オキサゾール、ジベンゾフロ[2,3−d]オキサゾール、ジベンゾフロ[3,2−d]オキサゾール、カルバゾロ[2,3−d]チアゾール、カルバゾロ[3,2−d]チアゾール、ジベンゾフロ[2,3−d]チアゾール、ジベンゾフロ[3,2−d]チアゾール、ジベンゾチエノ[2,3−d]オキサゾール、ジベンゾチエノ[3,2−d]オキサゾールである。
【0041】
また、前記塩基性核としては、下記に示す塩基性複素環が挙げられる。
【0042】
【化3】

【0043】
ここで、Rは、水素原子、脂肪族基、又は、芳香族基を表す。
【0044】
次に、酸性核を有する増感剤について説明する。この増感剤は、酸性核を有する色素であれば特に制限はなく、露光波長に合わせて適宜選択することができる。
具体的には、例えば、メロシアニン色素、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、オキソノール色素などが挙げられ、これらの中でも、メロシアニン色素、ロダシアニン色素が好ましく、メロシアニン色素がより好ましい。
【0045】
前記酸性核とは、例えば、ジェイムス(James)編「ザ・セオリー・オブ・ザ・フォトグラフィック・プロセス(The Theory of the Photographic Process)」第4版、マクミラン出版社、1977年、第8章「増感色素と減感色素」により定義され、米国特許第3,567,719号、第3,575,869号、第3,804,634号、第3,837,862号、第4,002,480号、第4,925,777号、特開平3−167546号などに記載されているものが挙げられる。
前記酸性核が、非環式であるとき、メチン結合の末端は、マロノニトリル、アルカンスルフォニルアセトニトリル、シアノメチルベンゾフラニルケトン、シアノメチルフェニルケトン、マロン酸エステル、及びアシルアミノメチル置換したケトン類等の活性メチレン化合物などの基であることが好ましい。
【0046】
前記酸性核を形成するために必要な原子群が環式であるとき、炭素、窒素、及びカルコゲン(典型的には酸素、硫黄、セレン、及びテルル)原子からなる5員又は6員の含窒素複素環が形成されることが好ましく、前記含窒素複素環としては、例えば、2−ピラゾリン−5−オン、ピラゾリジン−3、5−ジオン、イミダゾリン−5−オン、ヒダントイン、2−チオヒダントイン、4−チオヒダントイン、2−イミノオキサゾリジン−4−オン、2−オキサゾリン−5−オン、2−チオオキサゾリン−2、4−ジオン、イソオキサゾリン−5−オン、2−チアゾリン−4−オン、チアゾリジン−4−オン、チアゾリジン−2,4−ジオン、ローダニン、チアゾリジン−2,4−ジチオン、イソローダニン、インダン−1,3−ジオン、チオフェン−3−オン、チオフェン−3−オン−1,1−ジオキシド、インドリン−2−オン、インドリン−3−オン、2−オキソインダゾリニウム、3−オキソインダゾリニウム、5,7−ジオキソ−6,7−ジヒドロチアゾロ[3,2−a]ピリミジン、シクロヘキサン−1,3−ジオン、3,4−ジヒドロイソキノリン−4−オン、1,3−ジオキサン−4,6−ジオン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸、クロマン−2,4−ジオン、インダゾリン−2−オン、ピリド[1,2−a]ピリミジン−1,3−ジオン、ピラゾロ[1,5−b]キナゾロン、ピラゾロ[1,5−a]ベンゾイミダゾール、ピラゾロピリドン、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−2,4−ジオン、3−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾ[d]チオフェン−1,1−ジオキサイド、3−ジシアノメチン−2,3−ジヒドロベンゾ[d]チオフェン−1,1−ジオキサイドの核などが挙げられる。
【0047】
また、前記酸性核としては、下記に示す酸性複素環が挙げられる。
【0048】
【化4】

【0049】
ここで、Rは、水素原子、脂肪族基、又は、芳香族基を表す。
【0050】
次に、蛍光増白剤を有する増感剤について説明する。
「蛍光性白化剤」("fluorescent whitening agent")としても知られる前記蛍光増白剤は、紫外〜短波可視である300〜450nm付近の波長を有する光を吸収可能であり、かつ400〜500nm付近の波長を有する蛍光を発光可能な無色ないし弱く着色した化合物である。蛍光増白剤の物理的原理および化学性の記述は、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, Sixth Edition, Electronic Release, Wiley−VCH 1998 に示されている。基本的には、適する蛍光増白剤は炭素環式または複素環式核を含んでなるπ−電子系を含有する。
【0051】
本態様の増感剤としては、蛍光増白剤であれば特に制限はなく、前記光照射手段(例えば、可視光線や紫外光・可視光レーザ等)に合わせて適宜選択することができる。
蛍光増白剤としては、非イオン性核を有する化合物が好ましい。前記非イオン性核としては、例えば、スチルベン核、ジスチリルベンゼン核、ジスチリルビフェニル核、及びジビニルスチルベン核から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
前記非イオン性核を有する化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、例えば、ピラゾリン類、トリアジン類、スチルベン類、ジスチリルベンゼン類、ジスチリルビフェニル類、ジビニルスチルベン類、トリアジニルアミノスチルベン類、スチルベニルトリアゾール類、スチルベニルナフトトリアゾール類、ビス−トリアゾールスチルベン類、ベンゾキサゾール類、ビスフェニルベンゾキサゾール類、スチルベニルベンゾキサゾール類、ビス−ベンゾキサゾール類、フラン類、ベンゾフラン類、ビス−ベンズイミダゾール類、ジフェニルピラゾリン類、ジフェニルオキサジアゾール類、ナフタルイミド類、キサンテン類、カルボスチリル類、ピレン類および1,3,5−トリアジニル−誘導体などが挙げられる。これらの中でも、スチリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基から選択される少なくとも1種を有するものが好ましく、更にジスチリルベンゼン類、ジスチリルビフェニル類、又はエテニル基、芳香環基、複素環基からなる2価の連結基で連結されたビスベンゾオキサゾール類、ビスベンゾチアゾール類、などが特に好ましい。
【0052】
また、前記蛍光増白剤は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、脂肪族基、芳香族基、複素環基、カルボキシル基、スルホ基、シアノ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、ヒドロキシ基、炭素数30以下のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基)、炭素数30以下のアルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、炭素数30以下のアシルアミノスルホニル基、炭素数30以下のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、ベンジルオキシ基、フェノキシエトキシ基、フェネチルオキシ基等)、炭素数30以下のアルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、メチルチオエチルチオエチル基等)、炭素数30以下のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、p−トリルオキシ基、1−ナフトキシ基、2−ナフトキシ基等)、ニトロ基、炭素数30以下のアルキル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、炭素数30以下のアシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等)、炭素数30以下のアシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等)、カルバモイル基(例えば、カルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、モルホリノカルボニル基、ピペリジノカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、モルホリノスルホニル基、ピペリジノスルホニル基等)、炭素数30以下のアリール基(例えば、フェニル基、4−クロロフェニル基、4−メチルフェニル基、α−ナフチル基等)、置換アミノ基(例えば、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アシルアミノ基等)、置換ウレイド基、置換ホスホノ基、などが挙げられる。
【0053】
前記のそれぞれの代表的な蛍光増白剤の例は、例えば大河原編「色素ハンドブック」、講談社、84〜145頁、432〜439頁に記載されているものを挙げることができる。
前記トリアジン類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、例えば、エチレンビスメラミン、プロピレン−1,3−ビスメラミン、N,N’−ジシクロヘキシルエチレンビスメラミン、N,N’−ジメチルエチレンビスメラミン、N,N’−ビス[4,6−ジ−(ジメチルアミノ)−1,3,5−トリアジニル]エチレンジアミン、N,N’−ビス(4,6−ジピペリジノ−1,3,5−トリアジニル)エチレンジアミン、N,N’−ビス[4,6−ジ−(ジメチルアミノ)−1,3,5−トリアジニル]−N,N’−ジメチルエチレンジアミン、などが挙げられる。代表的な蛍光増白剤の例を下記構造式(1)〜(7)に挙げる。
【0054】
【化5】

【0055】
【化6】

【0056】
これらの増感剤は、ラジカル発生剤に対して、5〜200質量%程度の量で含有させることが好ましい。
【0057】
(c)架橋剤と側鎖にラジカル発生部位を有する高分子化合物とを含有する塗布液を支持体表面に塗布、乾燥し、被膜内に架橋構造を形成させてなる基材
前記2つの対応では、基材自体にラジカル発生剤を含有させることが必要であったが、ラジカル発生能を有する層を、任意の支持体表面に形成することにより、「露光によりラジカルを発生しうる基材」を形成することも可能であり、このような方法として、(c)架橋剤と側鎖にラジカル発生部位を有する高分子化合物とを含有する塗布液を支持体表面に塗布、乾燥し、被膜内に架橋構造を形成させてなる基材を用いる方法が挙げられる。
(c)の態様においては、任意の支持体上に、側鎖に重合開始能を有する官能基及び架橋性基を有するポリマーを架橋反応により固定化してなる重合開始層を形成することで、「露光によりラジカルを発生しうる基材」とする。
これらのなかでも、最も好ましいのは、先に詳述した「エネルギー付与によりラジカルを発生しうる固体として、光開裂によりラジカル重合を開始しうる重合開始部位と基材結合部位とを有する化合物を表面に結合させてなる固体」を用いる態様である。
【0058】
(重合性化合物)
次に、本発明において用いられる重合性化合物について説明する。
本発明においてグラフトポリマーの生成に用いられる重合性化合物としては、モノマー、マクロモノマー、或いは重合性基を有する高分子化合物のいずれも用いることができる。これらの重合性化合物は公知のものを任意に使用することができる。
これらのうち、本発明において特に有用な重合性化合物としては、不飽和二重結合などの重合性基の他、機能性材料を吸着しうる官能基を有するものが好ましく、後述する導電性パターン形成方法においては、生成したグラフトポリマーに対し導電性素材を効率よく、容易に、高密度で、保持させるために、導電性素材と直接相互作用を形成しうる官能基、又は、導電性素材を効率よく保持するために用いる材料(例えば、メッキ触媒など)と相互作用を形成しうる官能基を有する重合性化合物を用いることが好ましい。
以下、導電性パターン形成方法に好適に用いられる導電性素材と直接相互作用を形成しうる官能基、及び、導電性素材を効率よく保持するために用いる材料と相互作用を形成しうる官能基を、総じて相互作用性基として説明する。
この相互作用性基としては、例えば、極性基が挙げられる。この極性基の中でも、親水性基が好ましく、より具体的には、アンモニウム、ホスホニウなどの正の荷電を有する官能基、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基などの負の荷電を有する官能基、その他にも、例えば、水酸基、アミド基、スルホンアミド基、アルコキシ基、シアノ基などの非イオン性基が挙げられる。
以下、グラフトポリマー生成工程において好適に用いられる相互作用性基を有する重合性化合物について具体的に説明する。
【0059】
本発明に用いうる相互作用性基を有する重合性化合物としてのモノマーは、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、イタコン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、スチレンスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−スルホエチル(メタ)アクリレート若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、アリルアミン若しくはそのハロゲン化水素酸塩、N−ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、ビニルチオフェン、スチレン、エチル(メタ)アクリル酸エステル、n-ブチル(メタ)アクリル酸エステルなど炭素数1〜24までのアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどを挙げることができる。
【0060】
本発明に用いうる相互作用性基を有する重合性化合物としてのマクロモノマーは、前記モノマーを用いて公知の方法にて作製することができる。本態様に用いられるマクロモノマーの製造方法は、例えば、平成1年9月20日にアイピーシー出版局発行の「マクロモノマーの化学と工業」(編集者 山下雄也)の第2章「マクロモノマーの合成」に各種の製法が提案されている。
このようなマクロモノマーの有用な重量平均分子量は、500〜50万の範囲であり、特に好ましい範囲は1000〜5万である。
【0061】
本発明に用いうる相互作用性基を有する重合性化合物としての高分子化合物とは、相互作用性基と、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基などのエチレン付加重合性不飽和基(重合性基)と、を導入したポリマーを指す。このポリマーは、少なくとも末端又は側鎖にエチレン付加重合性不飽和基を有するものであり、側鎖にエチレン付加重合性不飽和基を有するものがより好ましく、末端及び側鎖にエチレン付加重合性不飽和基を有するものが更に好ましい。
このような高分子化合物の有用な重量平均分子量は、500〜50万の範囲で、特に好ましい範囲は1000〜5万である。
【0062】
相互作用性基と重合性基とを有する高分子化合物の合成方法としては、i)相互作用性基を有するモノマーと重合性基を有するモノマーとを共重合する方法、ii)相互作用性基を有するモノマーと重合性基前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、iii)相互作用性基を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、重合性基を導入する方法が挙げられる。
好ましい合成方法は、合成適性の観点から、ii)相互作用性基を有するモノマーと重合性基前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により重合性基を導入する方法、iii)相互作用性基を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、重合性基を導入する方法である。
【0063】
上記i)及びii)の合成方法に用いられる相互作用性基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、イタコン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、より具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、アリルアミン若しくはそのハロゲン化水素酸塩、3−ビニルプロピオン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、ビニルスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン(下記構造)、スチレンスルホン酸ナトリウム、ビニル安息香酸等が挙げられ、一般的には、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基若しくはそれらの塩、水酸基、アミド基、ホスフィン基、イミダゾール基、ピリジン基、若しくはそれらの塩、及びエーテル基などの官能基を有するモノマーが使用できる。
【0064】
【化7】

【0065】
上記相互作用性基を有するモノマーと共重合する重合性基を有するモノマーとしては、アリル(メタ)アクリレート、2−アリルオキシエチルメタクリレートが挙げられる。
また、上記ii)の合成方法に用いられる重合性基前駆体を有するモノマーとしては、2−(3−クロロ−1−オキソプロポキシ)エチルメタクリレー卜や、特開2003−335814号公報に記載の化合物(i−1〜i−60)が使用することができ、これらの中でも、特に下記化合物(i−1)が好ましい。
【0066】
【化8】

【0067】
更に、上記iii)の合成方法に用いられる相互作用性基を有するポリマー中の、カルボキシル基、アミノ基若しくはそれらの塩、水酸基、及びエポキシ基などの官能基との反応を利用して、重合性基を導入するために用いられる重合性基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートなどがある。
【0068】
上記ii)の合成方法における、相互作用性基を有するモノマーと重合性基前駆体を有するモノマーとを共重合させた後の、塩基などの処理により重合性基を導入する方法については、例えば、特開2003−335814号公報に記載の手法を用いることができる。
【0069】
これらの重合性化合物を含有する液状組成物を構成する溶剤は、主成分である重合性化合物を溶解或いは分散することが可能であれば特に制限はないが、水、水溶性溶剤などの水性溶剤が好ましく、これらの混合物や、溶剤に更に界面活性剤を添加してもよい。
使用できる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールモノメチルエーテルの如きアルコール系溶剤、酢酸の如き酸、アセトン、シクロヘキサノンの如きケトン系溶剤、ホルムアミド、ジメチルアセトアミドの如きアミド系溶剤、などが挙げられる。
【0070】
また、この液状組成物に対し、必要に応じて添加することのできる界面活性剤は、溶剤に溶解するものであればよく、そのような界面活性剤としては、例えば、n−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの如きアニオン性界面活性剤や、n−ドデシルトリメチルアンモニウムクロライドの如きカチオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル(市販品としては、例えば、エマルゲン910、花王(株)製など)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(市販品としては、例えば、商品名「ツイーン20」など)、ポリオキシエチレンラウリルエーテルの如き非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0071】
基板表面に重合性化合物含有の液状組成物を塗布して塗膜を形成する方法を用いた場合には、その塗布量としては、充分な塗布膜を得る観点からは、固形分換算で0.1〜10g/m2が好ましく、特に0.5〜5g/m2が好ましい。
また、得られるグラフトポリマーからなる膜(グラフトポリマー膜)は、膜厚が0.1〜2.0g/m2の範囲にあることが好ましく、0.3〜1.0g/m2が更に好ましく、最も好ましくは、0.5〜1.0g/m2の範囲である。
【0072】
(露光)
本工程において、グラフトポリマーを生成させるためのパターン露光、重合開始能を失活させるために行うパターン露光、更には、グラフトポリマーを生成させるために行う全面露光、マスクパターンを介した全面露光は、いずれも、前記したラジカル発生能を有する化合物及び増感剤に作用して、重合開始能を生起させるか、あるいは、重合開始部位(Y)において開裂を生じさせることのできる露光であり、具体的には、360nm〜700nmの波長のレーザを用いる。
【0073】
上記光源としては、例えば、陰極線(CRT)を用いた走査露光を挙げることができる。画像露光に用いる陰極線管には、必要に応じてスペクトル領域に発光を示す各種発光体が用いられる。例えば、赤色発光体、緑色発光体、青色発光体のいずれか1種または2種以上が混合されて用いられる。スペクトル領域は、上記の赤色、緑色及び青色に限定されず、黄色、橙色、紫色に発光する蛍光体も用いられる。
【0074】
また、本工程においては、パターン露光は種々のレーザビームを用いて行うことができる。例えば、パターン露光としては、ガスレーザ、発光ダイオード、半導体レーザなどのレーザ、半導体レーザ又は半導体レーザを励起光源に用いた固体レーザと非線形光学結晶を組み合わせた第二高調波発光光源(SHG)、等の単色高密度光を用いた走査露光方式を好ましく用いることができる。さらに、KrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザ、F2レーザ等も用いることができる。
【0075】
本発明により形成されるパターン解像度は露光条件に左右される。つまり、グラフトポリマーを生成させるためのパターン露光、又は、重合開始能を失活させるために行うパターン露光において、高精細のパターン露光を施すことにより、露光に応じた高精細パターンが形成される。高精細パターン形成のための露光方法としては、光学系を用いた光ビーム走査露光、マスクを用いた露光などが挙げられ、所望のパターンの解像度に応じた露光方法をとればよい。
高精細パターン露光としては、具体的には、i線ステッパー、g線ステッパー、KrFステッパー、ArFステッパーのようなステッパー露光などが挙げられる。
【0076】
以上のようにしてグラフトポリマーの生成が行われた基板は、溶剤浸漬や溶剤洗浄などの処理が行われ、残存するホモポリマーを除去して、精製する。具体的には、水やアセトンによる洗浄、乾燥などが挙げられる。ホモポリマーの除去性の観点からは、超音波などの手段をとってもよい。精製後の基材は、その表面に残存するホモポリマーが完全の除去され、基材と強固に結合したパターン状のグラフトポリマーのみが存在することになる。
以上のようにして、基材上にグラフトポリマーがパターン状に直接結合されたグラフトパターン材料を得ることができる。
【0077】
〔導電性パターン形成方法〕
本発明の第二の態様である導電性パターン形成方法においては、このようにして得られたグラフトパターン材料のグラフトポリマー生成領域に、導電性素材を付着させるなどの手段により、導電性を付与する工程が実施される。
【0078】
<導電性付与工程(導電性素材付着工程)>
本工程においては、パターン状に生成されたグラフトポリマーに導電性を付与して、パターン状の導電性発現層を形成する。具体的な方法としては、グラフトポリマーに導電性素材を付着させる方法、グラフトポリマーに導電性素材の前駆体を付着させた後、導電性素材を形成することで導電性素材を付着させる方法、等の手段による以下の4つの態様が挙げられる。
第1の態様としては、グラフトポリマーの相互作用性基(イオン性基)に対し導電性粒子を吸着させて導電性粒子吸着層を形成する方法である。
第2の態様としては、グラフトポリマーの相互作用性基に対し無電解メッキ触媒又はその前駆体を吸着させた後、無電解メッキを行い、メッキ膜を形成する方法である。
第3の態様としては、グラフトポリマーの相互作用性基に対し金属イオン又は金属塩を吸着させた後、該金属イオン又は金属塩中の金属イオンを還元させて金属微粒子分散膜を形成する方法である。
第4の態様としては、グラフトポリマーの相互作用性基に対し導電性モノマーを吸着させた後、重合反応を生起させて導電性ポリマー層を形成する方法である。
以下、上記第1〜第4の態様について説明する。
【0079】
(第1の態様:導電性粒子吸着層の形成)
導電性材料付着工程の第1の態様は、以下に説明する導電性粒子を、上記グラフトポリマーが有する相互作用性基、特に好ましくはイオン性基に対し、その極性に応じて、イオン的に吸着させて導電性粒子吸着層を形成する方法である。この方法により、導電性粒子吸着層からなる導電層が形成される。
ここで吸着させた導電性粒子はグラフトポリマーの相互作用性基と相互作用を形成して単分子膜状態や多層状態で固定されることで導電性粒子吸着層を形成するため、基板と導電性粒子吸着層との密着性に優れると共に、充分な導電性を発現できるという利点を有する。
【0080】
この第1の態様に適用し得る導電性粒子としては、導電性を有するものであれば特に制限はなく、公知の導電性材料からなる微粒子を任意に選択して用いることができる。例えば、Au、Ag、Pt、Cu、Rh、Pd、Al、Crなどの金属微粒子、In23、SnO2、ZnO、Cdo、TiO2、CdIn24、Cd2SnO2、Zn2SnO4、In23−ZnOなどの酸化物半導体微粒子、及びこれらに適合する不純物をドーパントさせた材料を用いた微粒子、MgInO、CaGaOなどのスピネル形化合物微粒子、TiN、ZrN、HfNなどの導電性窒化物微粒子、LaBなどの導電性ホウ化物微粒子、また、有機材料としては導電性高分子微粒子などが好適なものとして挙げられる。
これらの導電性粒子は1種のみならず、必要に応じて複数種を併用することができる。また、所望の導電性を得るため、予め複数の材料を混合して用いることもできる。
【0081】
−グラフトポリマーのイオン性基(相互作用性基)の極性と導電性粒子との関係−
本発明において得られるグラフトポリマーが、カルボキシル基、スルホン酸基、若しくはホスホン酸基などの如きアニオン性を有する相互作用性基を有する場合は、グラフトポリマーの相互作用性基は選択的に負の電荷を有するようになり、ここに正の電荷を有する(カチオン性の)導電性粒子を吸着させることができる。
【0082】
このようなカチオン性の導電性粒子としては、正電荷を有する金属(酸化物)微粒子などが挙げられる。表面に高密度で正荷電を有する微粒子は、例えば、米澤徹らの方法、即ち、T.Yonezawa,Chemistry Letters.,1999 page1061,T.Yonezawa,Langumuir 2000,vol16,5218及び米澤徹,Polymer preprints,Japan vol.49.2911(2000)に記載された方法にて作製することができる。米澤らは、金属−硫黄結合を利用し、正荷電を有する官能基で高密度に化学修飾された金属粒子表面が形成できることを示している。
【0083】
一方、得られるグラフトポリマーが特開平10−296895号公報に記載のアンモニウム基などの如きカチオン性基の相互作用性基を有する場合は、グラフトポリマーの相互作用性基は選択的に正の電荷を有するようになり、ここに負の電荷を有する導電性粒子を吸着させることができる。
負に帯電した導電性粒子としては、クエン酸還元で得られた金若しくは銀粒子を挙げることができる。
【0084】
本発明に用いられる導電性粒子の粒径は、相互作用性基に対する吸着性と、導電性発現の観点から、0.1nmから1000nmの範囲であることが好ましく、1nmから100nmの範囲であることが更に好ましい。
【0085】
導電性粒子をグラフトポリマーの相互作用性基に吸着させる方法としては、表面上に荷電を有する導電性粒子を溶解又は分散させた液を、グラフトポリマーの生成領域に塗布する方法、及び、これらの溶液又は分散液中に、グラフトポリマーが生成された基板を浸漬する方法などが挙げられる。
塗布、浸漬のいずれの場合にも、過剰量の導電性粒子を供給し、相互作用性基(イオン性基)との間に十分なイオン結合による導入がなされるために、溶液又は分散液とグラフトポリマー生成面との接触時間は、10秒から24時間程度であることが好ましく、1分から180分程度であることが更に好ましい。
また、これらの導電性粒子は、耐久性の点や導電性確保の観点から、グラフトポリマーの相互作用性基に吸着し得る最大量結合されることが好ましく、その場合、分散液の分散濃度は、0.001〜20質量%程度が好ましい。
【0086】
また、導電性材料付着工程の第1の態様では、このように、グラフトポリマーに導電性粒子が吸着した後、その基板ごと加熱することが好ましい。この加熱を行うことで、付着した導電性粒子間にて融着が起こり、導電性粒子間の密着性を向上させると共に、導電性をも上昇させることができる。
ここで、加熱工程における温度としては、50℃〜500℃が好ましく、更に好ましくは100℃〜300℃、特に好ましくは、150℃〜300℃である。
【0087】
(第2の態様:メッキ膜の形成)
導電性材料付着工程の第2の態様は、上記グラフトポリマーが有する相互作用性基に対し、グラフトポリマーの相互作用性基に対し無電解メッキ触媒又はその前駆体を吸着させた後、無電解メッキを行いメッキ膜を形成する方法である。この方法により、メッキ膜からなる導電性発現層が形成される。
このように、メッキ膜は、グラフトポリマーの相互作用性基に吸着している触媒や前駆体に対し無電解メッキされて形成されることから、メッキ膜とグラフトポリマーとが強固に結合しており、その結果、基板とメッキ膜との密着性に優れると共に、メッキ条件により導電性を調整することができるという利点を有する。
【0088】
まず、この第2の態様における無電解メッキ触媒又はその前駆体の付与方法について説明する。
本態様において用いられる無電解メッキ触媒とは、主に0価金属であり、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられる。本発明においては、特に、Pd、Agがその取り扱い性の良さ、触媒能の高さから好ましい。0価金属を相互作用性領域に固定する手法としては、例えば、グラフトポリマーの相互作用性基と相互作用するように荷電を調節した金属コロイドを、グラフトポリマー表面に供する手法が用いられる。一般に、金属コロイドは、荷電を持った界面活性剤又は荷電を持った保護剤が存在する溶液中において、金属イオンを還元することにより作製することができる。金属コロイドの荷電は、ここで使用される界面活性剤又は保護剤により調節することができ、このように荷電を調節した金属コロイドを、グラフトポリマーが有する相互作用性基と相互作用させることで、グラフトポリマーに金属コロイド(無電解メッキ触媒)を付着させることができる。
【0089】
本態様において用いられる無電解メッキ触媒前駆体とは、化学反応により無電解メッキ触媒となりうるものであれば、特に制限なく使用することができる。主には上記無電解メッキ触媒で用いた0価金属の金属イオンが用いられる。無電解メッキ触媒前駆体である金属イオンは、還元反応により無電解メッキ触媒である0価金属になる。無電解メッキ触媒前駆体である金属イオンはグラフトポリマーの生成領域に付与した後、無電解メッキ浴への浸漬前に、別途還元反応により0価金属に変化させて無電解メッキ触媒としてもよいし、無電解メッキ触媒前駆体のまま無電解メッキ浴に浸漬し、無電解メッキ浴中の還元剤により金属(無電解メッキ触媒)に変化させてもよい。
【0090】
実際には、無電解メッキ前駆体である金属イオンは、金属塩の状態でグラフトポリマーに付与する。使用される金属塩としては、適切な溶媒に溶解して金属イオンと塩基(陰イオン)とに解離されるものであれば特に制限はなく、M(NO3)n、MCln、M2/n(SO4)、M3/n(PO4)(Mは、n価の金属原子を表す)などが挙げられる。金属イオンとしては、上記の金属塩が解離したものを好適に用いることができる。具体例としては、例えば、Agイオン、Cuイオン、Alイオン、Niイオン、Coイオン、Feイオン、Pdイオンが挙げられ、Agイオン、Pdイオンが触媒能の点で好ましい。
【0091】
無電解メッキ触媒である金属コロイド、或いは、無電解メッキ前駆体である金属塩をグラフトポリマーに付与する方法としては、金属コロイドを適当な分散媒に分散、或いは、金属塩を適切な溶媒で溶解し、解離した金属イオンを含む溶液を調製し、その溶液をグラフトポリマーの生成領域に塗布するか、或いは、その溶液中にグラフトポリマーが生成した基板を浸漬すればよい。金属イオンを含有する溶液を接触させることで、グラフトポリマーが有する相互作用性基に、イオン−イオン相互作用、又は、双極子−イオン相互作用を利用して金属イオンを付着させること、或いは、相互作用性領域に金属イオンを含浸させることができる。このような付着又は含浸を充分に行なわせるという観点からは、接触させる溶液中の金属イオン濃度、或いは金属塩濃度は0.01〜50質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。また、接触時間としては、1分〜24時間程度であることが好ましく、5分〜1時間程度であることがより好ましい。
【0092】
次に、この第2の態様における無電解メッキ方法について説明する。
無電解メッキ触媒又はその前駆体が付与された基板に対して、無電解メッキを行うことで、無電解メッキ膜が形成される。
無電解メッキとは、メッキとして析出させたい金属イオンを溶かした溶液を用いて、化学反応によって金属を析出させる操作のことをいう。
本工程における無電解メッキは、例えば、無電解メッキ触媒が付与された基板を、水洗して余分な無電解メッキ触媒(金属)を除去した後、無電解メッキ浴に浸漬して行なう。使用される無電解メッキ浴としては、一般的に知られている無電解メッキ浴を使用することができる。
また、無電解メッキ触媒前駆体が付与された基板を、無電解メッキ触媒前駆体がグラフトポリマーに付着又は含浸した状態で無電解メッキ浴に浸漬する場合には、基板を水洗して余分な前駆体(金属塩など)を除去した後、無電解メッキ浴中へ浸漬される。この場合には、無電解メッキ浴中において、前駆体の還元とこれに引き続き無電解メッキが行われる。ここで使用される無電解メッキ浴としても、上記同様、一般的に知られている無電解メッキ浴を使用することができる。
【0093】
一般的な無電解メッキ浴の組成としては、1.メッキ用の金属イオン、2.還元剤、3.金属イオンの安定性を向上させる添加剤(安定剤)が主に含まれている。このメッキ浴には、これらに加えて、メッキ浴の安定剤など公知の添加物が含まれていてもよい。
【0094】
無電解メッキ浴に用いられる金属の種類としては、銅、すず、鉛、ニッケル、金、パラジウム、ロジウムが知られており、中でも、導電性の観点からは、銅、金が特に好ましい。
また、上記金属に合わせて最適な還元剤、添加物がある。
例えば、銅の無電解メッキの浴は、銅塩としては、銅イオンを提供しうるものであれば特に限定されず使用することができる。例えば、硫酸銅(CuSO4)、塩化銅(CuCl2)、硝酸銅(Cu(NO32)、水酸化銅(Cu(OH)2)、酸化銅(CuO)、塩化第1銅(CuCl)等がある。浴中に存在する銅イオンの量は一般に0.005M〜0.1M、好ましくは0.01M〜0.07Mである。還元剤としては、銅イオンを金属銅に還元できるものならば、特に限定されないが、ホルムアルデヒド及びその誘導体、並びにパラホルムアルデヒドのような重合体、あるいはその誘導体や前駆体が好適である。還元剤の量は、ホルムアルデヒドに換算して0.05M以上、好ましくは0.05M〜0.3Mの範囲内である。
【0095】
pH調整剤は、pHを変化させうるものなら特に限定されず使用することができ、目的に応じて、pHを上昇させる化合物、下降させる化合物を適宜選択して用いる。pH調整剤としては、具体的には、例えば、NaOH、KOH、HCl、H2SO4、HF等が挙げられる。
無電解メッキ浴のpHは一般に12.0〜13.4(25℃)、望ましくは12.4〜13.0(25℃)の範囲内である。添加剤として、銅イオンの安定剤であるEDTA、ロッシェル塩、トリアルカノールアミンなどが含まれているが、ガラス基板とメッキ膜の密着性の点からトリアルカノールアミンが好ましい。これら安定剤の添加量は、銅イオンの1.2倍〜30倍、好ましくは1.5倍〜20倍である。また、浴中に存在する安定剤の絶対量は、0.006〜2.4M、特に0.012〜1.6Mの範囲内であることが望ましい。
【0096】
安定化剤として用いられるトリアルカノールアミンとしては、トリメタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリプロパノールアミン等が挙げられるが、ガラス基板とメッキ膜の密着性の点からトリエタノールアミンが特に好ましい。
また、浴の安定化やめっき皮膜の平滑性を向上させるための添加剤としてポチエチレングリコール、フェロシアン化カリウム、ビピリジン等が挙げられる。浴中に存在するこれら添加剤の濃度は0.001〜1M、特に0.01〜0.3Mの範囲内であることが好ましい。
【0097】
CoNiPの無電解メッキに使用されるメッキ浴には、その金属塩として硫酸コバルト、硫酸ニッケル、還元剤として次亜リン酸ナトリウム、錯化剤としてマロン酸ナトリウム、りんご酸ナトリウム、こはく酸ナトリウムが含まれている。また、パラジウムの無電解メッキ浴は、金属イオンとして(Pd(NH34)Cl2、還元剤としてNH3、H2NNH2、安定化剤としてEDTAが含まれている。これらのメッキ浴には、上記成分以外の成分が入っていてもよい。
【0098】
このようにして形成される無電解メッキ膜の膜厚は、メッキ浴の金属塩又は金属イオン濃度、メッキ浴への浸漬時間、或いは、メッキ浴の温度などにより制御することができるが、導電性の観点からは、0.5μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。また、メッキ浴への浸漬時間としては、1分〜3時間程度であることが好ましく、1分〜1時間程度であることがより好ましい。
【0099】
以上のようにして得られる無電解メッキ膜は、SEMによる断面観察により、グラフトポリマー膜中に無電解メッキ触媒やメッキ金属の微粒子がぎっしりと分散しており、更にその上に比較的大きな粒子が析出していることが確認された。界面はグラフトポリマーと微粒子とのハイブリッド状態であるため、基板表面の平均粗さ(Rz)が3μm以下であっても、基板(有機成分)と無機物(無電解メッキ触媒又はメッキ金属)との密着性が良好であった。
【0100】
また、導電性材料付着工程の第2の態様では、無電解メッキ終了後、電気メッキを行うこともできる。即ち、電気メッキは、前述の無電解メッキにより得られた無電解メッキ膜を電極として行う。これにより基板との密着性に優れた無電解メッキ膜をベースとして、そこに新たに任意の厚みをもつメッキ膜を容易に形成することができる。この工程を付加することにより、導電性膜を目的に応じた厚みに形成することができる。
本態様における電気メッキの方法としては、従来公知の方法を用いることができる。なお、電気メッキに用いられる金属としては、銅、クロム、鉛、ニッケル、金、銀、すず、亜鉛などが挙げられ、導電性の観点から、銅、金、銀が好ましく、銅がより好ましい。
【0101】
電気メッキにより得られるメッキ膜の膜厚については、用途に応じて異なるものであり、メッキ浴中に含まれる金属濃度、浸漬時間、或いは、電流密度などを調整することでコントロールすることができる。なお、本発明により得られる表面導電性材料をプリント配線板を作製する際に用いる場合には、メッキ膜の膜厚は、導電性の観点から、0.3μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。
【0102】
(第3の態様:金属微粒子分散膜の形成)
導電性材料付着工程の第3の態様は、以下に説明する金属イオン又は金属塩を、上記グラフトポリマーが有する相互作用性基、特に好ましくはイオン性基に対し、その極性に応じて、イオン的に吸着させた後、該金属イオン又は金属塩中の金属イオンを還元させて金属単体を析出させて金属微粒子分散膜を形成する方法である。なお、金属単体の析出態様によって、金属微粒子分散膜は金属薄膜になる場合もある。この方法により、金属微粒子分散膜からなる導電性発現層が形成される。
ここで、金属微粒子分散膜を形成する、析出された金属微粒子は、グラフトポリマーの相互作用性基と相互作用を形成し、吸着しているため、基板と金属微粒子分散膜との密着性に優れると共に、充分な導電性を発現できるという利点を有する。
【0103】
(金属イオン及び金属塩)
まず、本態様において用いられる金属イオン及び金属塩について説明する。
本発明において、金属塩としては、グラフトポリマーの生成領域に付与するために、適切な溶媒に溶解して、金属イオンと塩基(陰イオン)に解離されるものであれば特に制限はなく、M(NO3n、MCln、M2/n(SO4)、M3/n(PO4)(Mは、n価の金属原子を表す)などが挙げられる。金属イオンとしては、上記の金属塩が解離したものを好適に用いることができる。具体例としては、例えば、Ag、Cu、Al、Ni、Co、Fe、Pdが挙げられ、中でも、Ag、Cuが好ましい。
金属塩や金属イオンは1種のみならず、必要に応じて複数種を併用することができる。また、所望の導電性を得るため、予め複数の材料を混合して用いることもできる。
【0104】
(金属イオン及び金属塩の付与方法)
金属イオン又は金属塩をグラフトポリマーに付与する際、(1)グラフトポリマーがイオン性基を有する場合には、そのイオン性基に金属イオンを吸着させる方法を用いる。この場合、上記の金属塩を適切な溶媒で溶解し、解離した金属イオンを含むその溶液を、グラフトポリマーの生成領域に塗布するか、或いは、その溶液中にグラフトポリマーが生成した基材を浸漬すればよい。金属イオンを含有する溶液を接触させることで、前記イオン性基には、金属イオンがイオン的に吸着することができる。これら吸着を充分に行なわせるという観点からは、接触させる溶液の金属イオン濃度は1〜50質量%の範囲であることが好ましく、10〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。また、接触時間としては、10秒から24時間程度であることが好ましく、1分から180分程度であることが更に好ましい。
【0105】
金属イオン又は金属塩をグラフトポリマーに付与する際、(2)グラフトポリマーがポリビニルピロリドンなどのように金属塩に対し親和性の高い場合は、上記の金属塩を微粒子状にして直接付着させる、又は、金属塩が分散し得る適切な溶媒を用いて分散液を調製し、その分散液を、グラフトポリマーの生成領域に塗布するか、或いは、その溶液中にグラフトポリマーが生成した基材を浸漬すればよい。
グラフトポリマーが相互作用性基として親水性基を有する場合には、グラフトポリマー膜は高い保水性を有するため、その高い保水性を利用して、金属塩が分散した分散液をグラフトポリマー膜中に含浸させることが好ましい。分散液の含浸を充分に行なわせるという観点からは、接触させる分散液の金属塩濃度は1〜50質量%の範囲であることが好ましく、10〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。また、接触時間としては、10秒から24時間程度であることが好ましく、1分から180分程度であることが更に好ましい。
【0106】
金属イオン又は金属塩をグラフトポリマーに付与する際、(3)グラフトポリマーが親水性基を有する場合、金属塩が分散している分散液、又は、金属塩が溶解した溶液をグラフトポリマーの生成領域に塗布するか、或いは、その分散液や溶液中にグラフトポリマーが生成した基材を浸漬すればよい。
かかる方法においても、上述と同様に、グラフトポリマー膜が有する高い保水性を利用して、分散液又は溶液をそのグラフトポリマー膜中に含浸させることができる。分散液又は溶液の含浸を充分に行なわせるという観点からは、接触させる分散液の金属イオン濃度、或いは金属塩濃度は1〜50質量%の範囲であることが好ましく、10〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。また、接触時間としては、10秒から24時間程度であることが好ましく、1分から180分程度であることが更に好ましい。
特に、この(3)の方法によれば、グラフトポリマーの有する相互作用性基の特性に関わらず、所望の金属イオン又は金属塩を付与させることができる。
【0107】
(還元剤)
続いて、グラフトポリマー(膜)に吸着又は含浸して存在する金属塩、或いは、金属イオンを還元しるために用いられる還元剤について説明する。
本発明において用いられる還元剤は、金属イオンを還元し、金属単体を析出させる物性を有するものであれば特に制限はなく、例えば、次亜リン酸塩、テトラヒドロホウ素酸塩、ヒドラジンなどが挙げられる。
これらの還元剤は、用いる金属塩、金属イオンとの関係で適宜選択することができるが、例えば、金属イオン、金属塩を供給する金属塩水溶液として、硝酸銀水溶液などを用いた場合にはテトラヒドロホウ素酸ナトリウムが、二塩化パラジウム水溶液を用いた場合には、ヒドラジンが、好適なものとして挙げられる。
【0108】
上記還元剤の添加方法としては、例えば、グラフトポリマーが生成した基材表面に金属イオンや金属塩を付与させた後、水洗して余分な金属塩、金属イオンを除去した後、該表面を備えた基材をイオン交換水などの水中に浸漬し、そこに還元剤を添加する方法や、該基材表面上に所定の濃度の還元剤水溶液を直接塗布或いは滴下する方法等が挙げられる。また、還元剤の添加量としては、金属イオンに対して、等量以上の過剰量用いるのが好ましく、10倍当量以上であることが更に好ましい。
【0109】
ここで、第3の態様におけるグラフトポリマーの相互作用性基と金属イオン又は金属塩との関係について説明する。
グラフトポリマーの相互作用性基が、負の電荷を有する極性基や、カルボキシル基、スルホン酸基、若しくはホスホン酸基などの如きアニオン性のイオン性基である場合は、グラフトポリマー膜が選択的に負の電荷を有するようになることから、ここに正の電荷を有する金属イオンを吸着させ、その吸着した金属イオンを還元させることで金属単体を析出される。
また、グラフトポリマーの相互作用性基が、特開平10−296895号公報に記載のアンモニウム基などの如きカチオン性基のイオン性基である場合は、グラフトポリマー膜が選択的に正の電荷を有するようになり、金属イオンはそのままの形状では吸着しない。そのため、相互作用性基のイオン性基に起因する親水性を利用して、グラフトポリマー膜に、金属塩が分散した分散液、又は、金属塩が溶解した溶液を含浸させ、その含浸させた溶液の中の金属イオン又は金属塩中の金属イオンを還元させることで金属単体を析出させる。
以上のように、金属単体が析出することで、金属微粒子分散膜が形成される。
【0110】
金属微粒子分散膜中の析出された金属単体(金属微粒子)の存在は、表面の金属光沢により目視でも確認することができるが、透過型電子顕微鏡、或いは、AFM(原子間力顕微鏡)を用いて表面を観察することで、その構造(形態)を確認することができる。また、金属パターンの膜厚は、常法、例えば、切断面を電子顕微鏡で観察するなどの方法により、容易に行なうことができる。
このように、金属単体が析出した状態を上記の顕微鏡で観察すると、グラフトポリマー膜中にぎっしりと金属微粒子が分散していること確認される。この時、析出された金属微粒子の大きさとしては、粒径1μm〜1nm程度である。
【0111】
金属微粒子分散膜において、金属微粒子が密に分散していて外見上金属薄膜を形成しているような場合には、そのまま用いてもよいが、効率のよい導電性の確保という観点からは、金属微粒子分散膜を更に加熱処理することが好ましい。
加熱処理工程における加熱温度としては、100℃以上が好ましく、更には150℃以上が好ましく、特に好ましくは200℃程度である。加熱温度は、処理効率や基材の寸法安定性などを考慮すれば400℃以下であることが好ましい。また、加熱時間に関しては、10分以上が好ましく、更には30分〜60分間程度が好ましい。
加熱処理による作用機構は明確ではないが、一部の近接する金属微粒子同士が互いに融着することで導電性が向上するものと考えている。
【0112】
(第4の態様:導電性ポリマー層の形成)
導電性材料付着工程の第4の態様は、以下に説明する導電性モノマーを、上記グラフトポリマーが有する相互作用性基、特に好ましくはイオン性基に対し、イオン的に吸着させた後、そのまま重合反応を生起させて導電性ポリマー層を形成する方法である。この方法により、導電性ポリマー層からなる導電性発現層が形成される。
ここで、導電性ポリマー層は、グラフトポリマーの相互作用性基とイオン的に吸着した導電性モノマーを重合させてなるため、基板との密着性や耐久性に優れると共に、モノマーの供給速度などの重合反応条件を調整することで、膜厚や導電性の制御を行うことができるという利点を有する。
【0113】
このような導電性ポリマー層を形成する方法には特に制限はないが、均一な薄膜を形成し得るという観点からは、以下に述べるような方法を用いることが好ましい。
まず、グラフトポリマーが生成された基板を、過硫酸カリウムや、硫酸鉄(III)などの重合触媒や重合開始能を有する化合物を含有する溶液に浸漬し、この液を撹拌しながら導電性ポリマーを形成し得るモノマー、例えば、3,4−エチレンジオキシチオフェンなどを徐々に滴下する。このようにすると、該重合触媒や重合開始能を付与されたグラフトポリマー中の相互作用性基(イオン性基)と導電性ポリマーを形成し得るモノマーとが相互作用により強固に吸着すると共に、モノマー同士の重合反応が進行し、基材上のグラフトポリマーの生成領域に導電性ポリマーの極めて薄い膜が形成される。これにより、均一で、かつ、薄い導電性ポリマー層が得られる。
【0114】
この方法に適用し得る導電性ポリマーとしては、10-6s・cm-1以上、好ましくは、10-1s・cm-1以上の導電性を有する高分子化合物であれば、いずれのものも使用することができるが、具体的には、例えば、置換及び非置換の導電性ポリアニリン、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリピロール、ポリセレノフェン、ポリイソチアナフテン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアセチレン、ポリピリジルビニレン、ポリアジン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、また、目的に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、所望の導電性を達成できる範囲であれば、導電性を有しない他のポリマーとの混合物として用いることもできるし、これらのモノマーと導電性を有しない他のモノマーとのコポリマーなども用いることができる。
【0115】
本発明においては、導電性モノマー自体がグラフトポリマーの相互作用性基と静電気的に、或いは、極性的に相互作用を形成することで強固に吸着するため、それらが重合して形成された導電性ポリマー層は、グラフトポリマーの生成領域との間に強固な相互作用を形成しているため、薄膜であっても、擦りや引っ掻きに対しても充分な強度を有するものとなる。
更に、導電性ポリマーとグラフトポリマーの相互作用性基とが、陽イオンと陰イオンの関係で吸着するような素材を選択することで、相互作用性基が導電性ポリマーのカウンターアニオンとして吸着することになり、一種のドープ剤として機能するため、導電性ポリマー層(導電性発現層)の導電性を一層向上させることができるという効果を得ることもできる。具体的には、例えば、相互作用性基を有する重合性化合物としてスチレンスルホン酸を、導電性ポリマーの素材としてチオフェンを、それぞれ選択すると、両者の相互作用により、グラフトポリマーの生成領域と導電性ポリマー層との界面にはカウンターアニオンとしてスルホン酸基(スルホ基)を有するポリチオフェンが存在し、これが導電性ポリマーのドープ剤として機能することになる。
【0116】
グラフトポリマーの生成領域表面に形成された導電性ポリマー層の膜厚には特に制限はないが、0.01μm〜10μmの範囲であることが好ましく、0.1μm〜5μmの範囲であることがより好ましい。導電性ポリマー層の膜厚がこの範囲内であれば、充分な導電性と透明性とを達成することができる。0.01μm以下であると導電性が不充分となる懸念があるため好ましくない。
以上説明した、4つの態様により、本発明の導電性パターン形成方法が実施され、基板上に密着性と解像度に優れた導電性領域(導電性パターン)が形成される。
この導電性パターンは、電子材料の配線や電極として好適に用いることができ、薄層トランジスタなどへの応用に好適である
【実施例】
【0117】
(合成例1:重合性基を有する親水性ポリマーPの合成)
ポリアクリル酸(平均分子量25,000)18gをDMAc(ジメチルアセトアミド)300gに溶解し、そこに、ハイドロキノン0.41gと2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート19.4gとジブチルチンジラウレート0.25gを添加し、65℃で4時間反応させた。得られたポリマーの酸価は7.02meq/gであった。1mol/lの水酸化ナトリウム水溶液でカルボキシル基を中和し、酢酸エチルに加えポリマーを沈殿させ、よく洗浄し、重合性基を有する親水性ポリマーPを得た。
【0118】
〔実施例1〕
(光開裂化合物結合工程)
ガラス基板(日本板硝子)に、UVオゾンクリーナー(UV42、日本レーザー電子社製)を用いて5分間UVオゾン処理を行った。その基板表面に、脱水トルエンに溶かして1.0質量%の溶液とした化合物T1(前記例示化合物T1)をスピンコートした。スピンコーターは、まず300rpmで5秒間、その後1000rpmで20秒間回転させた。化合物T1をスピンコートしたガラス基板を100℃で2分間乾燥し、表面をトルエン、アセトン、水で順に洗浄してエアーガンで乾燥した。次に、この基板に下記化合物S1の1.0質量%のトルエン溶液を、スピンコーターを使用し,300rpmで5秒間、その後1000rpmで20秒間回転させることによりS1をコートして基板A1を得た。
【0119】
【化9】

【0120】
(グラフトポリマー生成工程)
前記合成例1で得られた親水性ポリマーP 0.25gを水1.91g、ジメチルアセトアミド(DMAc)0.09gおよびアセトニトリル1gの混合溶媒に溶かしてグラフト形成層用塗布液とした。そのグラフト形成層用塗布液を基板A1表面にスピンコートした。スピンコーターは、まず300rpmで5秒間、その後1000rpmで20秒間回転させた。グラフト形成層用塗布液塗布後の基板A1は、80℃で5分間乾燥した。
【0121】
(露光)
グラフト形成層用塗布液塗布後の基板A1を、405nmの発信波長を有するレーザ露光機で所定のパターンに従って露光した。露光後、基板表面をワイパー(ベンコット、小津産業社製)で軽くこすりながら水で洗浄し,次にアセトンで洗浄した。
以上のようにして、グラフトポリマーが表面にパターン状に形成されたガラス基板B1を形成した。
【0122】
得られたパターンをAFM(ナノピクス1000,セイコーインスツルメンツ社製,DFMカンチレバー使用)で観察した。その結果、ガラス基板B1の表面に線幅10μm、空隙幅10μmが交互に存在するパターンが形成されていることが確認された。
【0123】
(導電性素材の付与)
(無電解メッキ)
得られた基板B1を硝酸銀(和光純薬製)0.1%水溶液に5分間浸漬し、水で洗浄してエアーガンで乾燥した。その後下記組成の無電解メッキ浴(pH:12.7)に20分間浸漬して無電解メッキを行った。無電解メッキ後、水で洗浄してエアーガンで乾燥した。
【0124】
<無電解メッキ浴の組成>
水 300g
硫酸銅(II)五水和物 4.5g
トリエタノールアミン 8.04g
ポリエチレングリコール(平均分子量1000) 0.03g
水酸化ナトリウム 2.7g
ホルムアルデヒド液(36.0〜38.0%) 5.4g
【0125】
この表面を電子顕微鏡で観察したところ線幅10μm、空隙幅10μmが交互に存在する導電性パターン1が形成されていることが確認された。
【0126】
〔実施例2〕
実施例1で作製した、表面にグラフトポリマーが形成されたガラス基板B1を硝酸銀(和光純薬製)0.1%水溶液に5分間浸漬し、水で洗浄してエアーガンで乾燥した。その後、下記組成の無電解メッキ浴(pH:12.4)に20分間浸漬して無電解メッキを行った。無電解メッキ後、水で洗浄してエアーガンで乾燥した。
【0127】
<無電解メッキ浴の組成>
水 200g
硫酸銅(II)五水和物 2.9g
(+)−酒石酸ナトリウムカリウム四水和物 21.3g
水酸化ナトリウム 1.65g
ホルムアルデヒド液(36.0〜38.0%) 5.5ml
全体が250mlになるように水を添加
【0128】
この表面を電子顕微鏡で観察したところ、線幅10μm、空隙幅10μmが交互に存在する導電性パターン2が形成されていることが確認された。
【0129】
〔実施例3〕
(光開裂化合物結合工程)
ガラス基板(日本板硝子)に、UVオゾンクリーナー(UV42、日本レーザー電子社製)を用いて5分間UVオゾン処理を行い、その基板表面に、脱水エチルメチルケトン(2−ブタノン)に溶かして5.0質量%の溶液とした下記化合物T5(前記例示化合物T5)をスピンコートした。スピンコーターは、まず300rpmで5秒間、その後1000rpmで20秒間回転させた。その後、化合物T5をスピンコートしたガラス基板を100℃で10分間加熱し、表面をエチルメチルケトン、水で順に洗浄してエアーガンで乾燥し、基板A2を得た。
【0130】
【化10】

【0131】
(グラフトポリマー生成工程)
前記合成例1で得られた親水性ポリマーP 0.25gを水1.91g、ジメチルアセトアミド(DMAc)0.09gおよびアセトニトリル1gの混合溶媒に溶かし、更に増感剤であるS2(下記構造) 0.02gを加え、溶解させてグラフト形成層用塗布液とした。そのグラフト形成層用塗布液を基板A2表面にスピンコートした。スピンコーターは、まず300rpmで5秒間、その後1000rpmで20秒間回転させた。グラフト形成層用塗布液塗布後の基板A2は、80℃で5分間乾燥した。
【0132】
【化11】

【0133】
(露光)
グラフト形成層用塗布液塗布後の基板A2を、405nmの発信波長を有するレーザ露光機で所定のパターンに従って露光した。露光後、基板表面をワイパー(ベンコット、小津産業社製)で軽くこすりながら水で洗浄し、次にアセトンで洗浄した。
以上のようにして、グラフトポリマーが表面にパターン状に形成されたガラス基板B2を形成した。
【0134】
得られたパターンをAFM(ナノピクス1000,セイコーインスツルメンツ社製,DFMカンチレバー使用)で観察した。その結果、ガラス基板B2の表面に線幅10μm、空隙幅10μmが交互に存在するパターンが形成されていることが確認された。
【0135】
〔実施例4〕
(光開裂化合物結合工程)
ガラス基板(日本板硝子)に、UVオゾンクリーナー(UV42、日本レーザー電子社製)を用いて5分間UVオゾン処理を行った。その基板表面に、脱水トルエンに溶かして1.0質量%の溶液とした化合物T1(前記例示化合物T1)をスピンコートした。スピンコーターは、まず300rpmで5秒間、その後1000rpmで20秒間回転させた。化合物T1をスピンコートしたガラス基板を100℃で2分間乾燥し、表面をトルエン、アセトン、水で順に洗浄してエアーガンで乾燥した。次に、この基板に前記化合物S1の1.0質量%のトルエン溶液を、スピンコーターを使用し、300rpmで5秒間、その後1000rpmで20秒間回転させることによりS1をコートし、実施例1と同様の基板A1を得た。
【0136】
(グラフトポリマー生成工程)
前記合成例1で得られた親水性ポリマーP 0.25gを水1.91g、ジメチルアセトアミド(DMAc)0.09gおよびアセトニトリル1gの混合溶媒に溶かし、更に増感剤である前記S2 0.02gを加え、溶解させてグラフト形成層用塗布液とした。そのグラフト形成層用塗布液を基板A1表面にスピンコートした。スピンコーターは、まず300rpmで5秒間、その後1000rpmで20秒間回転させた。グラフト形成層用塗布液塗布後の基板A1は、80℃で5分間乾燥した。
【0137】
(露光)
グラフト形成層用塗布液塗布後の基板A1を、405nmの発信波長を有するレーザ露光機で所定のパターンに従って露光した。露光後、基板表面をワイパー(ベンコット、小津産業社製)で軽くこすりながら水で洗浄し、次にアセトンで洗浄した。
以上のようにして、グラフトポリマーが表面にパターン状に形成されたガラス基板B3を形成した。
【0138】
得られたパターンをAFM(ナノピクス1000,セイコーインスツルメンツ社製,DFMカンチレバー使用)で観察した。その結果、ガラス基板B3の表面に線幅10μm、空隙幅10μmが交互に存在するパターンが形成されていることが確認された。
【0139】
〔実施例5〕
実施例3で作製した、表面にグラフトポリマーが形成されたガラス基板B2を硝酸銀(和光純薬製)1.0%水溶液に1分間浸漬し、水で洗浄してエアーガンで乾燥した。その後、下記組成の市販無電解メッキ浴ATSアドカッパーIW(pH:12.7)に90分間浸漬して無電解メッキを行った。無電解メッキ後、水で洗浄してエアーガンで乾燥した。
【0140】
<無電解メッキ浴の組成>
水 258g
ATSアドカッパーIW−A 15mL
ATSアドカッパーIW−M 24mL
ATSアドカッパーIW−C 3mL
【0141】
この表面を電子顕微鏡で観察したところ、線幅10μm、空隙幅10μmが交互に存在する導電性パターン3が形成されていることが確認された。
【0142】
〔実施例6〕
実施例3で作製した、表面にグラフトポリマーが形成されたガラス基板B2を硝酸銀(和光純薬製)1.0%水溶液に1分間浸漬し、水で洗浄してエアーガンで乾燥した。その後、下記組成の無電解メッキ浴(pH:12.4)に20分間浸漬して無電解メッキを行った。無電解メッキ後、水で洗浄してエアーガンで乾燥した。
【0143】
<無電解メッキ浴の組成>
水 300g
硫酸銅(II)五水和物 3.0g
EDTA−4H二水和物 8.9g
ポリエチレングリコール(平均分子量1000) 0.03g
2,2’−ビピリジル 0.3mg
エチレンジアミン 0.12g
テトラメチルアンモニウムヒドロキシド五水和物 2.5g
ホルムアルデヒド液(36.0〜38.0%) 1.6g
【0144】
この表面を電子顕微鏡で観察したところ線幅10μm、空隙幅10μmが交互に存在する導電性パターン4が形成されていることが確認された。
【0145】
<導電性の評価>
上記により得られた導電性パターン1乃至4について、導電膜が形成された部分の表面導電性をロレスタ−FP(LORESTA−FP:三菱化学(株)製)を用いて四探針法により測定した。結果は以下の通りである。
<導電膜密着性の評価>
導電性パターン1〜3と同様にして10(mm)×200(mm)の領域に導電性領域(導電膜)を形成し、JIS 5400に順じて碁盤目テープ法により膜密着性を評価した。カットした碁盤目に対するテープの引き剥がしテストを行った。100個の碁盤目のうち基板側に残った碁盤の数を以下に示す。
【0146】
<評価結果>
(実施例1)
導電性パターン1の導電性:50μΩ・cm
剥離試験の結果:100(剥離が見られない)
(実施例2)
導電性パターン2の導電性:40μΩ・cm
剥離試験の結果:100(剥離が見られない)
(実施例5)
導電性パターン3の導電性:10μΩ・cm
剥離試験の結果:100(剥離が見られない)
(実施例6)
導電性パターン4の導電性:7μΩ・cm
剥離試験の結果:100(剥離が見られない)
【0147】
以上の結果より、本発明の方法によれば高解像度のグラフトポリマーパターンを容易に得られることがわかる。さらに、本発明の方法により得られたグラフトパターンに導電性物質を付与することで得られる導電性パターンは高解像度であり、形成された導電性領域は導電性を有し、且つ、基板との密着性に優れることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光によりラジカルを発生しうる基材表面上に、ラジカル重合可能な不飽和化合物を接触させ、360nm〜700nmの波長のレーザにより像様露光して、該基材表面上に基材と直接結合したグラフトポリマーをパターン状に生成させることを特徴とするグラフトパターン形成方法。
【請求項2】
前記露光によりラジカルを発生しうる基材中に、トリアジン系の重合開始剤と、360nm〜700nmの波長に極大吸収を有する増感剤とを含有することを特徴とする請求項1に記載のグラフトパターン形成方法。
【請求項3】
前記基材表面上へのラジカル重合可能な不飽和化合物の接触が、該ラジカル重合可能な不飽和化合物と360nm〜700nmの波長に極大吸収を有する増感剤を含有する層を接触させることにより実施されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のグラフトパターン形成方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のグラフトパターン形成方法により形成されたパターン状のグラフトポリマーに、導電性を付与することを特徴とする導電性パターン形成方法。

【公開番号】特開2006−350307(P2006−350307A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−131834(P2006−131834)
【出願日】平成18年5月10日(2006.5.10)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】