説明

スクラブ洗浄装置

【課題】大面積極薄ウェハを洗浄するのに適したスクラブ洗浄装置を提供すること。
【解決手段】このスクラブ洗浄装置は、極薄ウェハ7の外周縁部が保持されてウェハを水平の状態で回転可能に支持する支持部材8と、支持部材を所定の回転数で回転させる駆動部と、ウェハ表面上に配置されかつウェハ表面に対して平行な回転軸を有するロールブラシ9と、ウェハ表面へ洗浄液10を供給する供給部を備え、ウェハ裏面側へ向け水流等の液体を噴射してウェハ表面の平面状態を維持させるウェハ平面維持手段としてのノズル11が設けられていることを特徴とする。そして、この装置によれば、ウェハ中心部に洗浄液が溜まり易いスクラブ洗浄中においても、ウェハ平面維持手段の作用によりウェハ表面の平面状態が維持されるため良好なスクラブ洗浄を安定して行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェハを摩擦洗浄するスクラブ洗浄装置に係り、特に、厚さ200μm以下の極薄ウェハを洗浄するのに適したスクラブ洗浄装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器や光学機器における近年の小型化、薄型化に伴い、これ等機器を構成する各素子の小型化、薄型化も求められており、特に、デジタルカメラやカメラ付携帯電話等の小型化、薄型化は顕著である。例えば、CCD(Charge Coupled Device)あるいはCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)から成る撮像デバイスと共に用いられる紫外光(UVと記す場合がある)−赤外光(IRと記す場合がある)カットフィルターに着目する。すなわち、CCDあるいはCMOSから成る撮像デバイスは可視波長域以外にも感度を有するため、可視画像と無関係な紫外光や近赤外光がCCDあるいはCMOSから成る撮像デバイスに入射すると画像ノイズとなる。この画像ノイズを防ぐため、可視波長域の光のみを透過し、紫外光と近赤外光を遮断する上記UV−IRカットフィルターをCCDやCMOSの直前に配置する必要がある。
【0003】
また、小型で薄型のデジタルカメラ、カメラ付携帯電話等のカメラモジュールに搭載されるUV−IRカットフィルターは、組込みスペースが狭いため薄くする必要がある。そして、上記UV−IRカットフィルターは基板と誘電体多層膜とで構成され、この誘電体多層膜自体の総膜厚は数μmに過ぎないため、組込みスペースに合わせてUV−IRカットフィルターを薄くするには基板を薄くする必要がある。
【0004】
従来、ダイシング加工して得られた素子サイズのCCD(CCDチップ)とUV−IRカットフィルター(素子サイズのフィルター)を貼り合わせてカメラモジュールに搭載させる構造体を個々に製造していたが、大面積極薄基板(ウェハ)を用いて得られたUV−IRカットフィルターのサイズと、CCDあるいはCMOSのウェハサイズが同じであれば、上記大面積極薄基板を用いて得られたUV−IRカットフィルター(すなわち、ウェハサイズのフィルター)とCCDあるいはCMOSのウェハとを貼り合わせた後、素子サイズに切断加工することで、複数の上記構造体が同時に得られ、製造プロセスの簡略化が可能となる。
【0005】
ところで、上記基板と誘電体多層膜とで構成されるUV−IRカットフィルターを製造する場合、良質な誘電体多層膜を基板上に形成するには基板の洗浄が必ず必要となる。また、光学機器等の小型化、薄型化により、1画素サイズが微細化したCCDあるいはCMOSから成る撮像デバイスに用いられるUV−IRカットフィルターも上記画素サイズに対応させて微細化する必要がある。そして、この微細化に伴いUV−IRカットフィルターの欠陥レベルも非常に小さくなるため、上記洗浄には物理的に汚染物質を取り除くスクラブ洗浄が有効となる。
【0006】
このスクラブ洗浄には、基板(ウェハ)表面に対するロールブラシの回転方向により2つの方式がある。その一つは、基板(ウェハ)を水平の状態に維持しながら回転させる機構と、基板(ウェハ)表面上に配置されかつ基板(ウェハ)表面に対して平行な回転軸を有するロールブラシによりスクラブ洗浄する方式(特許文献1参照)であり、もう一つは、基板(ウェハ)を水平の状態に維持しながら回転させる機構と、上記基板(ウェハ)表面上に配置されかつ基板(ウェハ)表面に対して垂直な回転軸を有するロールブラシによりスクラブ洗浄する方式(特許文献2参照)である。そして、いずれの方式のスクラブ洗浄方法でも、多孔質から成るロールブラシを用いてスクラブ洗浄するためには、洗浄水(洗浄液)を上記基板(ウェハ)表面に供給する必要がある。
【0007】
すなわち、図1(A)に示すように、基板(ウェハ)1を水平の状態に維持しながら回転させる機構と、基板(ウェハ)1表面上に配置されかつ基板(ウェハ)1表面に対して平行な回転軸を有するロールブラシ2によりスクラブ洗浄する方式では、図1(B)に示すように基板(ウェハ)1表面の上方側から洗浄水(洗浄液)3を供給する必要がある。しかし、スクラブ洗浄中は、基板(ウェハ)1の回転数が低速であるため、供給された洗浄液3が基板(ウェハ)1の中心部へ溜まってしまい、その重みで基板(ウェハ)1の中心部が下方側へ凹んでしまうことがある。そして、基板(ウェハ)1が上述した極薄基板(ウェハ)の場合、下方側への上記変形が顕著となって、ロールブラシ2と基板(ウェハ)1とが接触しない領域が発生し、ロールブラシ2による摩擦洗浄が不十分となる問題が存在した。
【0008】
また、図2(A)に示すように、基板(ウェハ)4を水平の状態に維持しながら回転させる機構と、基板(ウェハ)4表面上に配置されかつ基板(ウェハ)4表面に対して垂直な回転軸を有するロールブラシ5によりスクラブ洗浄する方式でも、図2(B)に示すように洗浄液(洗浄水)6を供給すると、スクラブ洗浄中は、基板(ウェハ)4の回転数が低速であるため、供給された洗浄液6が基板(ウェハ)4の中心部へ溜まってしまい、その重みで基板(ウェハ)4の中心部が下方側へ凹んでしまうことがある。そして、基板(ウェハ)4が極薄基板(ウェハ)の場合、下方側への変形が顕著となって、ロールブラシ5と基板(ウェハ)4とが接触しない領域が発生し、このスクラブ洗浄方式においてもロールブラシ5による摩擦洗浄が不十分となる問題が存在した。
【0009】
そこで、この問題を回避して上述の極薄基板(ウェハ)の良好なスクラブ洗浄を可能にさせるため、特許文献3においては、セラミックチャック(多孔質セラミック板)に基板(ウェハ)を吸引して固定し、スクラブ洗浄を行う方法が提案されている。しかし、光が透過するUV−IRカットフィルター等の光学部品は、基板両面に光学薄膜を成膜する場合が多いことから基板両面の洗浄度を向上させる必要があり、基板(ウェハ)の裏面側をセラミックチャック等の他の部品と接触させることは問題となっていた。
【0010】
尚、図1中、符号aは基板(ウェハ)1を回転させる機構の回転方向を示し、符号bはロールブラシ2の回転方向を示している。また、図2中、符号aも基板(ウェハ)4を回転させる機構の回転方向を示し、符号cはロールブラシ5の回転方向を示し、および、符号d1、d2はロールブラシ5の揺動方向を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−298767号公報(段落0004と図1参照)
【特許文献2】特開平08−71511号公報(段落0012参照)
【特許文献3】特開2003−100684号公報(段落0022参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、極薄基板(ウェハ)をスクラブ洗浄する場合においても、基板(ウェハ)の裏面側を他の部品と接触させることなく基板(ウェハ)を水平の状態に維持することができるスクラブ洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで、上記課題を解決するため、スクラブ洗浄中の基板(ウェハ)裏面側へ向け、水等の液体あるいは気体を連続的に噴き付けて基板(ウェハ)を浮上させる実験を試みたところ、基板(ウェハ)の回転数が低速であるにも拘わらず基板(ウェハ)を水平の状態に維持できることを見出すに至った。本発明はこのような技術的発見に基づき完成されたものである。
【0014】
すなわち、請求項1に係る発明は、
ウェハ外周縁部が保持されてウェハを水平の状態で回転可能に支持する支持部材と、上記支持部材を所定の回転数で回転させる駆動部と、上記ウェハ表面上に配置されかつウェハ表面に対して平行または垂直な回転軸を有するロールブラシと、上記ウェハ表面へ洗浄液を供給する供給部を備え、洗浄液とロールブラシによりウェハ表面を摩擦洗浄するスクラブ洗浄装置において、
上記ウェハの裏面側へ向け流体を噴射してウェハ表面の平面状態を維持させるウェハ平面維持手段が設けられていることを特徴とする。
【0015】
また、請求項2に係る発明は、
請求項1に記載の発明に係るスクラブ洗浄装置において、
ウェハ裏面側の少なくとも1箇所以上に液体を噴き付ける液体噴射部材により上記ウェハ平面維持手段が構成されていることを特徴とし、
請求項3に係る発明は、
請求項1に記載の発明に係るスクラブ洗浄装置において、
ウェハ裏面側の少なくとも1箇所以上に気体を噴き付ける気体噴射部材により上記ウェハ平面維持手段が構成されていることを特徴とする。
【0016】
また、請求項4に係る発明は、
請求項1に記載の発明に係るスクラブ洗浄装置において、
上記ウェハが、ガラス、石英、セラミックス、結晶材料から選択された直径200mm以上で厚さ200μm以下の極薄ウェハであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るスクラブ洗浄装置は、ウェハ外周縁部が保持されてウェハを水平の状態で回転可能に支持する支持部材と、上記支持部材を所定の回転数で回転させる駆動部と、上記ウェハ表面上に配置されかつウェハ表面に対して平行または垂直な回転軸を有するロールブラシと、上記ウェハ表面へ洗浄液を供給する供給部を備え、上記ウェハの裏面側へ向け流体を噴射してウェハ表面の平面状態を維持させるウェハ平面維持手段が設けられていることを特徴としている。
【0018】
そして、本発明に係るスクラブ洗浄装置によれば、ウェハの中心部に洗浄液が溜まり易いスクラブ洗浄中においても、上記ウェハ平面維持手段の作用によりウェハ表面の平面状態が維持されるため、ロールブラシとウェハとの非接触領域の発生が抑制されて良好なスクラブ洗浄を安定して行うことができ、しかも、ウェハの裏面側へ向け流体を噴射させるウェハ平面維持手段が装置本体に付設された構造に過ぎないため、改良されたスクラブ洗浄装置を安価に提供できる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1(A)は洗浄するウェハ表面に対して平行な回転軸を有するロールブラシが用いられた従来例に係るスクラブ洗浄装置の概略構成説明図、図1(B)はこの装置の欠点を示す説明図。
【図2】図2(A)は洗浄するウェハ表面に対して垂直な回転軸を有するロールブラシが用いられた従来例に係るスクラブ洗浄装置の概略構成説明図、図2(B)はこの装置の欠点を示す説明図。
【図3】図3(A)はウェハ平面維持手段(液体噴射方式)が設けられかつウェハ表面に対して平行な回転軸を有するロールブラシが用いられた本発明に係るスクラブ洗浄装置の概略構成断面図、図3(B)はこのスクラブ洗浄装置における概略構成平面図。
【図4】図4(A)はウェハ平面維持手段(液体噴射方式)が設けられかつウェハ表面に対して垂直な回転軸を有するロールブラシが用いられた本発明に係るスクラブ洗浄装置の概略構成断面図、図4(B)はこのスクラブ洗浄装置における概略構成平面図。
【図5】図5(A)はウェハ平面維持手段(気体噴射方式)が設けられかつウェハ表面に対して平行な回転軸を有するロールブラシが用いられた本発明に係るスクラブ洗浄装置の概略構成断面図、図5(B)はこのスクラブ洗浄装置における概略構成平面図。
【図6】図6(A)はウェハ平面維持手段(気体噴射方式)が設けられかつウェハ表面に対して垂直な回転軸を有するロールブラシが用いられた本発明に係るスクラブ洗浄装置の概略構成断面図、図6(B)はこのスクラブ洗浄装置における概略構成平面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
まず、本発明に係るスクラブ洗浄装置は、ウェハ外周縁部が保持されてウェハを水平の状態で回転可能に支持する支持部材と、上記支持部材を所定の回転数で回転させる駆動部と、上記ウェハ表面上に配置されかつウェハ表面に対して平行または垂直な回転軸を有するロールブラシと、上記ウェハ表面へ洗浄液を供給する供給部を備え、洗浄液とロールブラシによりウェハ表面を摩擦洗浄するスクラブ洗浄装置において、
上記ウェハの裏面側へ向け流体を噴射してウェハ表面の平面状態を維持させるウェハ平面維持手段が設けられていることを特徴とするものである。
【0021】
尚、上記ウェハの裏面側へ向け流体を噴射してウェハ表面の平面状態を維持させるウェハ平面維持手段の構成としては、ウェハ裏面側の少なくとも1箇所以上に液体を噴き付ける液体噴射部材(液体噴射方式)、あるいは、ウェハ裏面側の少なくとも1箇所以上に気体を噴き付ける気体噴射部材(気体噴射方式)が例示される。
【0022】
そして、上記ウェハ平面維持手段が設けられた本発明に係るスクラブ洗浄装置によれば、ウェハの中心部に洗浄液が溜まり易いスクラブ洗浄中においても、ウェハ平面維持手段の作用によりウェハ表面の平面状態が維持されるため、ロールブラシとウェハとの非接触領域の発生が抑制されて良好なスクラブ洗浄を安定して行うことができ、特に、両面に光学薄膜が成膜される極薄ウェハのスクラブ洗浄に適している。しかも、このスクラブ洗浄装置は、ウェハの裏面側へ向け流体を噴射させる上記ウェハ平面維持手段が装置本体に付設された構造に過ぎないため、装置の製造コストも安価である利点を有している。
【0023】
以下、ウェハ平面維持手段(液体噴射方式)が組み込まれた本発明に係るスクラブ洗浄装置の一例を示すと、図3(A)〜(B)に示すように上述した大面積極薄ウェハのような極薄ウェハ7の外周縁部が保持されてウェハ7を水平の状態で矢印a方向へ回転可能に支持する支持部材8と、上記支持部材8を所定の回転数で回転させるモーター等の駆動部(図示せず)と、上記ウェハ7表面上に配置されかつウェハ7表面に対して平行な回転軸を有するロールブラシ9と、上記ウェハ7表面へ洗浄液10を供給する供給部を備え、かつ、上記ロールブラシ9が接触する部位のウェハ7裏面側へ向け水流等の液体を噴射してウェハ7表面の平面状態を維持させるウェハ平面維持手段(液体噴射方式)としての5個のノズル(液体噴射部材)11が設けられていることを特徴としている。
【0024】
尚、極薄ウェハ7の一部分に上記ノズル(液体噴射部材)11から強い水流を与えてしまうと極薄ウェハ7の被噴射付近のみが盛り上がり、ロールブラシ9の抵抗が極薄ウェハ7の上記被噴射付近に集中して極薄ウェハ7が割れてしまうことがあるため、極薄ウェハ7の平面状態が保たれるように水量等の液体量を調整することが必要である。また、水流等の液体は広範囲に分散されるように、太いノズル11を用いて複数本の水流等により極薄ウェハ7の平面状態が保たれるようにすることが望ましい。
【0025】
また、図4(A)〜(B)は、方式の異なるロールブラシが用いられかつウェハ平面維持手段(液体噴射方式)が組み込まれた本発明に係るスクラブ洗浄装置の変形例を示している。すなわち、この変形例に係るスクラブ洗浄装置は、図4(A)〜(B)に示すように極薄ウェハ12の外周縁部が保持されてウェハ12を水平の状態で矢印a方向へ回転可能に支持する支持部材13と、上記支持部材13を所定の回転数で回転させる駆動部(図示せず)と、上記ウェハ12表面上に配置されかつウェハ12表面に対して垂直な回転軸を有するロールブラシ14と、上記ウェハ12表面へ洗浄液15を供給する供給部を備え、かつ、上記ロールブラシ14が接触する部位のウェハ12裏面側へ向け水流等の液体を噴射してウェハ12表面の平面状態を維持させるウェハ平面維持手段(液体噴射方式)としての3個のノズル(液体噴射部材)16が設けられていることを特徴としている。
【0026】
尚、上記ロールブラシ14は、図4(B)に示すように回転軸eを有するブラシ保持材50に保持されて矢印d1−d2の方向へ揺動するように構成されている。そして、矢印d1−d2の方向へ揺動するロールブラシ14の軌跡方向に沿って上記3個のノズル(液体噴射部材)16が配置されており、ロールブラシ14が接触する部位のウェハ12裏面側へ向け適量の水流等を噴射してウェハ12表面の平面状態が保持されるようになっている。
【0027】
次に、図5(A)〜(B)は、ウェハ平面維持手段(気体噴射方式)が組み込まれた本発明に係るスクラブ洗浄装置の変形例を示している。すなわち、このスクラブ洗浄装置は、図5(A)〜(B)に示すように極薄ウェハ21の外周縁部が保持されてウェハ21を水平の状態で矢印a方向へ回転可能に支持する支持部材24と、上記支持部材24を所定の回転数で回転させる駆動部(図示せず)と、上記ウェハ21表面上に配置されかつウェハ21表面に対して平行な回転軸を有するロールブラシ22と、上記ウェハ21表面へ洗浄液23を供給する供給部を備え、かつ、多数の穴の開いた板若しくは多孔質板からウェハ21の裏側略全面へ向け適量の気体を噴射してウェハ21表面の平面状態を維持させるウェハ平面維持手段(気体噴射方式)としての気体噴射部材25が設けられていることを特徴としている。
【0028】
尚、変形例に係るこのスクラブ洗浄装置によれば、スクラブ洗浄中、上記気体噴射部材25からウェハ21裏面側へ向けて気体が常に噴き付けられていることから、スクラブ洗浄中におけるウェハ21の低回転時に上記洗浄液23がウェハ21裏面に伝わり難いため、洗浄液23の乾燥に起因する乾燥シミの発生を低減できる利点を有している。但し、気体噴射部材25からの気体流量が多過ぎると、ウェハ21が上記支持部材24から外れてしまう可能性があるため注意を要する。
【0029】
また、図6(A)〜(B)は、方式の異なるロールブラシが用いられかつウェハ平面維持手段(気体噴射方式)が組み込まれた本発明に係るスクラブ洗浄装置の変形例を示している。すなわち、この変形例に係るスクラブ洗浄装置は、図6(A)〜(B)に示すように極薄ウェハ26の外周縁部が保持されてウェハ26を水平の状態で矢印a方向へ回転可能に支持する支持部材27と、上記支持部材27を所定の回転数で回転させる駆動部(図示せず)と、上記ウェハ26表面上に配置されかつウェハ26表面に対して垂直な回転軸を有するロールブラシ28と、上記ウェハ26表面へ洗浄液29を供給する供給部を備え、かつ、多数の穴の開いた板若しくは多孔質板からウェハ26の裏側略全面へ向け適量の気体を噴射してウェハ26表面の平面状態を維持させるウェハ平面維持手段(気体噴射方式)としての気体噴射部材30が設けられていることを特徴としている。
【0030】
尚、上記ロールブラシ28は、図6(B)に示すように回転軸eを有するブラシ保持材51に保持されて矢印d1−d2の方向へ揺動するように構成されており、気体噴射部材30からウェハ26の裏側略全面へ向け適量の気体が噴き付けられてウェハ26表面の平面状態が保持されるようになっている。
【0031】
次に、本発明の実施例について具体的に説明する。
【0032】
実施例における極薄ウェハには、直径200mmの「ショット社製 D263ガラス」を、厚さ300μm、厚さ200μm、および、厚さ100μmにそれぞれ研磨加工して得られた3種類を用い、かつ、3種類の極薄ウェハは両面光学研磨が施されている。
【0033】
また、極薄ウェハ表面に対し平行な回転軸を有するロールブラシには、直径約50mmで長さ250mmのPVAスポンジ(ベルクリン:登録商標)を用い、また、極薄ウェハ表面に対し垂直な回転軸を有するロールブラシには、直径約50mmで長さ50mmのPVAスポンジ(ベルクリン:登録商標)を用いた。
【0034】
また、スクラブ洗浄中における極薄ウェハの回転数は50rpm、ロールブラシの回転数は200rpmとし、かつ、洗浄液として極薄ウェハの上部から毎分1L(リットル)の超純水を極薄ウェハの中心部付近に注入(供給)した。
【0035】
更に、極薄ウェハの裏面側へ向けて液体噴射部材若しくは気体液体噴射部材から超純水若しくは窒素ガスを噴射させ、スクラブ洗浄中に極薄ウェハの平面状態が保たれるように噴射量を調節した。
【0036】
そして、スクラブ洗浄を60秒間行った後、ロールブラシを極薄ウェハから離し、極薄ウェハの上部から注入(供給)していた洗浄液の注入(供給)を止め、かつ、極薄ウェハの回転数を1500rpmにしてスピン乾燥を行った。
【0037】
ここで、UV−IRカットフィルター等の光学部品のように光学薄膜を基板両面に成膜する場合、ウェハの表面と裏面(上下)を入れ換えて、表面と同様に、裏面のスクラブ洗浄を行う必要がある。
【0038】
尚、ロールブラシが極薄ウェハに接触しているか否かの確認は、水平方向から観察することに加えて洗浄効果の有無でも確認している。すなわち、ロールブラシが極薄ウェハに接触してスクラブ洗浄が良好に行なわれていれば、極薄ウェハ表面の汚染層が取り除かれて純水の接触角が極端に小さくなることが分かっており、スクラブ洗浄前における極薄ウェハの接触角はどれも30度以上であることから、極薄ウェハの洗浄効果の有無については接触角測定装置を用いて行うこととした。
【実施例1】
【0039】
ウェハ平面維持手段(液体噴射方式)として5個のノズル(液体噴射部材)11が組み込まれた図3(A)〜(B)に示す本発明のスクラブ洗浄装置を用いたスクラブ洗浄について説明する。
(スクラブ洗浄対象が厚さ300μmウェハの場合)
はじめに、直径200mmで厚さ300μmのガラスウェハ7を支持部材8にセットした。そして、ウェハ7の回転数を50rpm、ロールブラシ9の回転数を200rpmにした後、ウェハ7の上部から毎分1L(リットル)の超純水をウェハ7の中心部付近に注入しながら、ロールブラシ9をウェハ7表面に接触させた。このとき、ウェハ7の状態を水平方向から観察するとウェハ7はほぼ平面状態を保っており、ロールブラシ9全体がウェハ7に接触していることが確認された。
【0040】
次に、ロールブラシ9をウェハ7表面から離した後、ウェハ7上部から注入していた超純水の注入を止め、ウェハ7の回転数を1500rpmに上げて120秒間スピン乾燥を行った。
【0041】
そして、上記支持部材8から取り外したウェハ7の中心から半径方向に約20mmおきに接触角の測定を行った結果、すべての測定点において接触角は測定限界5度以下であった。
【0042】
この結果から、スクラブ洗浄対象が厚さ300μmのウェハの場合は、ウェハ平面維持手段(液体噴射方式)としてノズル(液体噴射部材)を操作しなくともウェハ7は平面状態を保っており、ウェハ7全面がスクラブ洗浄できたことを示している。
(スクラブ洗浄対象が厚さ200μm極薄ウェハの場合)
次に、直径200mmで厚さ200μmのガラスウェハ7を支持部材8にセットした。そして、極薄ウェハ7の回転数を50rpm、ロールブラシ9の回転数を200rpmにした後、極薄ウェハ7の上部から毎分1L(リットル)の超純水を極薄ウェハ7の中心部付近に注入しながら、ロールブラシ9を極薄ウェハ7表面に接触させた。このとき、極薄ウェハ7の状態を水平方向から観察すると極薄ウェハ7の中心部が約2mmへこんでおり、極薄ウェハ7の中心部にロールブラシ9が接触していないことが確認された。
【0043】
次に、ロールブラシ9を極薄ウェハ7表面から離した後、極薄ウェハ7上部から注入していた超純水の注入を止め、極薄ウェハ7の回転数を1500rpmに上げて120秒間スピン乾燥を行った。
【0044】
そして、上記支持部材8から取り外した極薄ウェハ7の中心から半径方向に約20mmおきに接触角の測定を行った結果、中心部から60mm以内の測定点において接触角が30度以上であり、これより周辺部の測定点において接触角は測定限界5度以下であった。従って、極薄ウェハ7の中心部付近はスクラブ洗浄がされていないことが確認できた。
【0045】
そこで、極薄ウェハ7の回転数を50rpm、ロールブラシ9の回転数を200rpmにし、極薄ウェハ7の上部から毎分1L(リットル)の超純水を極薄ウェハ7の中心部付近に注入しながら、ロールブラシ9を極薄ウェハ7表面に接触させた後、水平方向から観察しながら、極薄ウェハ7全体がロールブラシ9に接触するように、ウェハ平面維持手段(液体噴射方式)として5個のノズル(液体噴射部材)から水量を調節して同様にスクラブ洗浄を行った。
【0046】
そして、上記支持部材8から取り外した極薄ウェハ7の中心から半径方向に約20mmおきに接触角の測定を行った結果、すべての測定点において接触角は測定限界5度以下であった。
【0047】
この結果から、スクラブ洗浄対象が厚さ200μmの極薄ウェハの場合は、ウェハ平面維持手段(液体噴射方式)としてノズル(液体噴射部材)を操作して極薄ウェハ7の平面状態を保つことで、初めて極薄ウェハ7全面がスクラブ洗浄できたことを示している。
(スクラブ洗浄対象が厚さ100μm極薄ウェハの場合)
次に、直径200mmで厚さ100μmのガラスウェハ7を支持部材8にセットした。そして、極薄ウェハ7の回転数を50rpm、ロールブラシ9の回転数を200rpmにした後、極薄ウェハ7の上部から毎分1L(リットル)の超純水を極薄ウェハ7の中心部付近に注入しながら、ロールブラシ9を極薄ウェハ7表面に接触させた。このとき、極薄ウェハ7の状態を水平方向から観察すると極薄ウェハ7の中心部が約5mmへこんでおり、極薄ウェハ7の中心部にロールブラシ9が接触していないことが確認された。
【0048】
次に、ロールブラシ9を極薄ウェハ7表面から離した後、極薄ウェハ7上部から注入していた超純水の注入を止め、極薄ウェハ7の回転数を1500rpmに上げて120秒間スピン乾燥を行った。
【0049】
そして、上記支持部材8から取り外した極薄ウェハ7の中心から半径方向に約20mmおきに接触角の測定を行った結果、中心部から80mm以内の測定点において接触角が30度以上であり、これより周辺部の測定点において接触角は測定限界5度以下であった。従って、極薄ウェハ7の中心部付近はスクラブ洗浄がされていないことが確認できた。
【0050】
そこで、極薄ウェハ7の回転数を50rpm、ロールブラシ9の回転数を200rpmにし、極薄ウェハ7の上部から毎分1L(リットル)の超純水を極薄ウェハ7の中心部付近に注入しながら、ロールブラシ9を極薄ウェハ7表面に接触させた後、水平方向から観察しながら、極薄ウェハ7全体がロールブラシ9に接触するように、ウェハ平面維持手段(液体噴射方式)として5個のノズル(液体噴射部材)から水量を調節して同様にスクラブ洗浄を行った。
【0051】
そして、上記支持部材8から取り外した極薄ウェハ7の中心から半径方向に約20mmおきに接触角の測定を行った結果、すべての測定点において接触角は測定限界5度以下であった。
【0052】
この結果から、スクラブ洗浄対象が厚さ100μmの極薄ウェハの場合は、厚さ200μmの極薄ウェハの場合と同様、ウェハ平面維持手段(液体噴射方式)としてノズル(液体噴射部材)を操作して極薄ウェハ7の平面状態を保つことで、初めて極薄ウェハ7全面がスクラブ洗浄できたことを示している。
【実施例2】
【0053】
ウェハ平面維持手段(液体噴射方式)として3個のノズル(液体噴射部材)16が組み込まれた図4(A)〜(B)に示す本発明のスクラブ洗浄装置を用いたスクラブ洗浄について説明する。
(スクラブ洗浄対象が厚さ300μmウェハの場合)
はじめに、直径200mmで厚さ300μmのガラスウェハ12を支持部材13にセットした。そして、ウェハ12の回転数を50rpm、ロールブラシ14の回転数を200rpmにした後、ウェハ12上部から毎分1L(リットル)の超純水をウェハ12の中心部付近に注入しながらロールブラシ14をウェハ12表面に接触させ、かつ、ロールブラシ14が保持されるブラシ保持材50を回動してロールブラシ14を揺動させた。このとき、ウェハ12の状態を水平方向から観察すると、ウェハ12はほぼ平面状態を保っており、揺動するロールブラシ14がどの位置に移動してもウェハ12に接触していることが確認された。
【0054】
次に、ロールブラシ14をウェハ12表面から離した後、ウェハ12上部から注入していた超純水の注入を止め、ウェハ12の回転数を1500rpmに上げて120秒間スピン乾燥を行った。
【0055】
そして、上記支持部材13から取り外したウェハ12の中心から半径方向に約20mmおきに接触角の測定を行った結果、すべての測定点において接触角は測定限界5度以下であった。
【0056】
この結果から、スクラブ洗浄対象が厚さ300μmのウェハの場合は、ウェハ平面維持手段(液体噴射方式)としてノズル(液体噴射部材)を操作しなくともウェハ12は平面状態を保っており、ウェハ12全面がスクラブ洗浄できたことを示している。
(スクラブ洗浄対象が厚さ200μm極薄ウェハの場合)
次に、直径200mmで厚さ200μmのガラスウェハ12を支持部材13にセットした。そして、極薄ウェハ12の回転数を50rpm、ロールブラシ14の回転数を200rpmにした後、極薄ウェハ12の上部から毎分1L(リットル)の超純水を極薄ウェハ12の中心部付近に注入しながらロールブラシ14をウェハ12表面に接触させ、かつ、ロールブラシ14が保持されるブラシ保持材50を回動してロールブラシ14を揺動させた。このとき、極薄ウェハ12の状態を水平方向から観察すると、極薄ウェハ12の中心部が約2mmへこんでおり、極薄ウェハ12の中心部にロールブラシ14が移動してきたときに接触していないことが確認された。
【0057】
次に、ロールブラシ14を極薄ウェハ12表面から離した後、極薄ウェハ12上部から注入していた超純水の注入を止め、極薄ウェハ12の回転数を1500rpmに上げて120秒間スピン乾燥を行った。
【0058】
そして、上記支持部材13から取り外した極薄ウェハ12の中心から半径方向に約20mmおきに接触角の測定を行った結果、中心部から60mm以内の測定点において接触角が30度以上であり、これより周辺部の測定点において接触角は測定限界5度以下であった。従って、極薄ウェハ12の中心部付近はスクラブ洗浄がされていないことが確認できた。
【0059】
そこで、極薄ウェハ12の回転数を50rpm、ロールブラシ14の回転数を200rpmにし、極薄ウェハ12の上部から毎分1L(リットル)の超純水を極薄ウェハ12の中心部付近に注入しながらロールブラシ14を揺動させて極薄ウェハ12表面に接触させた後、水平方向から観察しながら、揺動するロールブラシ14がどの位置に移動してもウェハ12に接触するようにウェハ平面維持手段(液体噴射方式)として3個のノズル(液体噴射部材)から水量を調節して同様にスクラブ洗浄を行った。
【0060】
そして、上記支持部材13から取り外した極薄ウェハ12の中心から半径方向に約20mmおきに接触角の測定を行った結果、すべての測定点において接触角は測定限界5度以下であった。
【0061】
この結果から、スクラブ洗浄対象が厚さ200μmの極薄ウェハの場合、ウェハ平面維持手段(液体噴射方式)としてノズル(液体噴射部材)を操作して極薄ウェハ12の平面状態を保つことで、初めて極薄ウェハ12全面がスクラブ洗浄できたことを示している。
(スクラブ洗浄対象が厚さ100μm極薄ウェハの場合)
最後に、直径200mmで厚さ100μmのガラスウェハ12を支持部材13にセットした。そして、極薄ウェハ12の回転数を50rpm、ロールブラシ14の回転数を200rpmにした後、極薄ウェハ12の上部から毎分1L(リットル)の超純水を極薄ウェハ12の中心部付近に注入しながらロールブラシ14をウェハ12表面に接触させ、かつ、ロールブラシ14が保持されるブラシ保持材50を回動してロールブラシ14を揺動させた。このとき、極薄ウェハ12の状態を水平方向から観察すると、極薄ウェハ12の中心部が約5mmへこんでおり、極薄ウェハ12の中心部にロールブラシ14が移動してきたときに接触していないことが確認された。
【0062】
次に、ロールブラシ14を極薄ウェハ12表面から離した後、極薄ウェハ12上部から注入していた超純水の注入を止め、極薄ウェハ12の回転数を1500rpmに上げて120秒間スピン乾燥を行った。
【0063】
そして、上記支持部材13から取り外した極薄ウェハ12の中心から半径方向に約20mmおきに接触角の測定を行った結果、中心部から80mm以内の測定点において接触角が30度以上であり、これより周辺部の測定点において接触角は測定限界5度以下であった。従って、極薄ウェハ12の中心部付近はスクラブ洗浄がされていないことが確認できた。
【0064】
そこで、極薄ウェハ12の回転数を50rpm、ロールブラシ14の回転数を200rpmにし、極薄ウェハ12の上部から毎分1L(リットル)の超純水を極薄ウェハ12の中心部付近に注入しながらロールブラシ14を揺動させて極薄ウェハ12表面に接触させた後、水平方向から観察しながら、揺動するロールブラシ14がどの位置に移動してもウェハ12に接触するように、ウェハ平面維持手段(液体噴射方式)として3個のノズル(液体噴射部材)から水量を調節し、同様にスクラブ洗浄を行った。
【0065】
そして、上記支持部材13から取り外した極薄ウェハ12の中心から半径方向に約20mmおきに接触角の測定を行った結果、すべての測定点において接触角は測定限界5度以下であった。
【0066】
この結果から、スクラブ洗浄対象が厚さ100μmの極薄ウェハの場合は、厚さ200μmの極薄ウェハの場合と同様、ウェハ平面維持手段(液体噴射方式)としてノズル(液体噴射部材)を操作して極薄ウェハ12の平面状態を保つことで、初めて極薄ウェハ12全面がスクラブ洗浄できたことを示している。
【実施例3】
【0067】
ウェハ平面維持手段(気体噴射方式)としての気体噴射部材25が組み込まれた図5(A)〜(B)に示す本発明に係るスクラブ洗浄装置を用いたスクラブ洗浄について説明する。
(スクラブ洗浄対象が厚さ300μmウェハの場合)
はじめに、直径200mmで厚さ300μmのガラスウェハ21を支持部材24にセットした。そして、ウェハ21の回転数を50rpm、ロールブラシ22の回転数を200rpmにした後、ウェハ21の上部から毎分1L(リットル)の超純水をウェハ21の中心部付近に注入しながら、ロールブラシ22をウェハ21表面に接触させた。このとき、ウェハ21の状態を水平方向から観察するとウェハ21はほぼ平面状態を保っており、ロールブラシ22全体がウェハ21に接触していることが確認された。
【0068】
次に、ロールブラシ22をウェハ21表面から離した後、ウェハ21上部から注入していた超純水の注入を止め、ウェハ21の回転数を1500rpmに上げて120秒間スピン乾燥を行った。
【0069】
そして、上記支持部材24から取り外したウェハ21の中心から半径方向に約20mmおきに接触角の測定を行った結果、すべての測定点において接触角は測定限界5度以下であった。
【0070】
この結果から、スクラブ洗浄対象が厚さ300μmのウェハの場合は、ウェハ平面維持手段(気体噴射方式)としての気体噴射部材25を操作しなくともウェハ21は平面状態を保っており、ウェハ21全面がスクラブ洗浄できたことを示している。
(スクラブ洗浄対象が厚さ200μm極薄ウェハの場合)
次に、直径200mmで厚さ200μmのガラスウェハ21を支持部材24にセットした。そして、極薄ウェハ21の回転数を50rpm、ロールブラシ22の回転数を200rpmにした後、極薄ウェハ21の上部から毎分1L(リットル)の超純水を極薄ウェハ21の中心部付近に注入しながら、ロールブラシ22を極薄ウェハ21表面に接触させた。このとき、極薄ウェハ21の状態を水平方向から観察すると、極薄ウェハ21の中心部が約2mmへこんでおり、極薄ウェハ21の中心部にロールブラシ22が接触していないことが確認された。
【0071】
次に、ロールブラシ22を極薄ウェハ21表面から離した後、極薄ウェハ21上部から注入していた超純水の注入を止め、極薄ウェハ21の回転数を1500rpmに上げて120秒間スピン乾燥を行った。
【0072】
そして、上記支持部材24から取り外した極薄ウェハ21の中心から半径方向に約20mmおきに接触角の測定を行った結果、中心部から60mm以内の測定点において接触角が30度以上であり、これより周辺部の測定点において接触角は測定限界5度以下であった。従って、極薄ウェハ21の中心部付近はスクラブ洗浄がされていないことが確認できた。
【0073】
そこで、極薄ウェハ21の回転数を50rpm、ロールブラシ22の回転数を200rpmにし、極薄ウェハ21の上部から毎分1L(リットル)の超純水を極薄ウェハ21の中心部付近に注入しながらロールブラシ22を極薄ウェハ21表面に接触させた後、水平方向から観察しながらウェハ平面維持手段(気体噴射方式)としての気体噴射部材25から窒素ガスを噴出させると共に、極薄ウェハ21全体がロールブラシ22に接触するように窒素ガス流量を調節し、同様にスクラブ洗浄を行った。
【0074】
そして、上記支持部材24から取り外した極薄ウェハ21の中心から半径方向に約20mmおきに接触角の測定を行った結果、すべての測定点において接触角は測定限界5度以下であった。
【0075】
この結果から、スクラブ洗浄対象が厚さ200μmの極薄ウェハの場合は、ウェハ平面維持手段(気体噴射方式)としての気体噴射部材25を操作して極薄ウェハ21の平面状態を保つことで、初めて極薄ウェハ21全面がスクラブ洗浄できたことを示している。
(スクラブ洗浄対象が厚さ100μm極薄ウェハの場合)
最後に、直径200mmで厚さ100μmのガラスウェハ21を支持部材24にセットした。そして、極薄ウェハ21の回転数を50rpm、ロールブラシ22の回転数を200rpmにした後、極薄ウェハ21の上部から毎分1L(リットル)の超純水を極薄ウェハ21の中心部付近に注入しながらロールブラシ22を極薄ウェハ21表面に接触させた。このとき、極薄ウェハ21の状態を水平方向から観察すると、極薄ウェハ21の中心部が約5mmへこんでおり、極薄ウェハ21の中心部にロールブラシ22が接触していないことが確認された。
【0076】
次に、ロールブラシ22を極薄ウェハ21表面から離した後、極薄ウェハ21上部から注入していた超純水の注入を止め、極薄ウェハ21の回転数を1500rpmに上げて120秒間スピン乾燥を行った。
【0077】
そして、上記支持部材24から取り外した極薄ウェハ21の中心から半径方向に約20mmおきに接触角の測定を行った結果、中心部から80mm以内の測定点において接触角が30度以上であり、これより周辺部の測定点において接触角は測定限界5度以下であった。従って、極薄ウェハ21の中心部付近はスクラブ洗浄がされていないことが確認できた。
【0078】
そこで、極薄ウェハ21の回転数を50rpm、ロールブラシ22の回転数を200rpmにし、極薄ウェハ21の上部から毎分1L(リットル)の超純水を極薄ウェハ21の中心部付近に注入しながらロールブラシ22を極薄ウェハ21表面に接触させた後、水平方向から観察しながらウェハ平面維持手段(気体噴射方式)としての気体噴射部材25から窒素ガスを噴出させると共に、極薄ウェハ21全体がロールブラシ22に接触するように窒素ガス流量を調節し、同様にスクラブ洗浄を行った。
【0079】
そして、上記支持部材24から取り外した極薄ウェハ21の中心から半径方向に約20mmおきに接触角の測定を行った結果、すべての測定点において接触角は測定限界5度以下であった。
【0080】
この結果から、スクラブ洗浄対象が厚さ100μmの極薄ウェハの場合は、厚さ200μmの極薄ウェハの場合と同様、ウェハ平面維持手段(気体噴射方式)としての気体噴射部材25を操作して極薄ウェハ21の平面状態を保つことで、初めて極薄ウェハ21全面がスクラブ洗浄できたことを示している。
【実施例4】
【0081】
ウェハ平面維持手段(気体噴射方式)としての気体噴射部材30が組み込まれた図6(A)〜(B)に示す本発明に係るスクラブ洗浄装置を用いたスクラブ洗浄について説明する。
(スクラブ洗浄対象が厚さ300μmウェハの場合)
はじめに、直径200mmで厚さ300μmのガラスウェハ26を支持部材27にセットした。そして、ウェハ26の回転数を50rpm、ロールブラシ28の回転数を200rpmにした後、ウェハ26上部から毎分1L(リットル)の超純水をウェハ26の中心部付近に注入しながらロールブラシ28をウェハ26表面に接触させ、かつ、ロールブラシ28が保持されるブラシ保持材51を回動してロールブラシ28を揺動させた。このとき、ウェハ26の状態を水平方向から観察すると、ウェハ26はほぼ平面状態を保っており、揺動するロールブラシ28がどの位置に移動してもウェハ26に接触していることが確認された。
【0082】
次に、ロールブラシ28をウェハ26表面から離した後、ウェハ26上部から注入していた超純水の注入を止め、ウェハ26の回転数を1500rpmに上げて120秒間スピン乾燥を行った。
【0083】
そして、上記支持部材27から取り外したウェハ26の中心から半径方向に約20mmおきに接触角の測定を行った結果、すべての測定点において接触角は測定限界5度以下であった。
【0084】
この結果から、スクラブ洗浄対象が厚さ300μmのウェハの場合は、ウェハ平面維持手段(気体噴射方式)としての気体噴射部材30を操作しなくともウェハ26は平面状態を保っており、ウェハ26面がスクラブ洗浄できたことを示している。
(スクラブ洗浄対象が厚さ200μm極薄ウェハの場合)
次に、直径200mmで厚さ200μmのガラスウェハ26を支持部材27にセットした。そして、極薄ウェハ26の回転数を50rpm、ロールブラシ28の回転数を200rpmにした後、極薄ウェハ26の上部から毎分1L(リットル)の超純水を極薄ウェハ26の中心部付近に注入しながらロールブラシ28をウェハ26表面に接触させ、かつ、ロールブラシ28が保持されるブラシ保持材51を回動してロールブラシ28を揺動させた。このとき、極薄ウェハ26の状態を水平方向から観察すると、極薄ウェハ26の中心部が約2mmへこんでおり、極薄ウェハ26の中心部にロールブラシ28が移動してきたときに接触していないことが確認された。
【0085】
次に、ロールブラシ28を極薄ウェハ26表面から離した後、極薄ウェハ26上部から注入していた超純水の注入を止め、極薄ウェハ26の回転数を1500rpmに上げて120秒間スピン乾燥を行った。
【0086】
そして、上記支持部材27から取り外した極薄ウェハ26の中心から半径方向に約20mmおきに接触角の測定を行った結果、中心部から60mm以内の測定点において接触角が30度以上であり、これより周辺部の測定点において接触角は測定限界5度以下であった。従って、極薄ウェハ26の中心部付近はスクラブ洗浄がされていないことが確認できた。
【0087】
そこで、極薄ウェハ26の回転数を50rpm、ロールブラシ28の回転数を200rpmにし、極薄ウェハ26の上部から毎分1L(リットル)の超純水を極薄ウェハ26の中心部付近に注入しながらロールブラシ28を揺動させて極薄ウェハ26面に接触させた後、水平方向から観察しながらウェハ平面維持手段(気体噴射方式)としての気体噴射部材30から窒素ガスを噴出させると共に、揺動するロールブラシ28がどの位置に移動してもウェハ26に接触するように窒素ガス流量を調節し同様にスクラブ洗浄を行った。
【0088】
そして、上記支持部材27から取り外した極薄ウェハ26の中心から半径方向に約20mmおきに接触角の測定を行った結果、すべての測定点において接触角は測定限界5度以下であった。
【0089】
この結果から、スクラブ洗浄対象が厚さ200μmの極薄ウェハの場合、ウェハ平面維持手段(気体噴射方式)としての気体噴射部材30を操作して極薄ウェハ26の平面状態を保つことで、初めて極薄ウェハ26全面がスクラブ洗浄できたことを示している。
(スクラブ洗浄対象が厚さ100μm極薄ウェハの場合)
最後に、直径200mmで厚さ100μmのガラスウェハ26を支持部材27にセットした。そして、極薄ウェハ26の回転数を50rpm、ロールブラシ28の回転数を200rpmにした後、極薄ウェハ26の上部から毎分1L(リットル)の超純水を極薄ウェハ26の中心部付近に注入しながらロールブラシ28をウェハ26表面に接触させ、かつ、ロールブラシ28が保持されるブラシ保持材51を回動してロールブラシ28を揺動させた。このとき、極薄ウェハ26の状態を水平方向から観察すると、極薄ウェハ26の中心部が約5mmへこんでおり、極薄ウェハ26の中心部にロールブラシ28が移動してきたときに接触していないことが確認された。
【0090】
次に、ロールブラシ28を極薄ウェハ26表面から離した後、極薄ウェハ26上部から注入していた超純水の注入を止め、極薄ウェハ26の回転数を1500rpmに上げて120秒間スピン乾燥を行った。
【0091】
そして、上記支持部材27から取り外した極薄ウェハ26の中心から半径方向に約20mmおきに接触角の測定を行った結果、中心部から80mm以内の測定点において接触角が30度以上であり、これより周辺部の測定点において接触角は測定限界5度以下であった。従って、極薄ウェハ26の中心部付近はスクラブ洗浄がされていないことが確認できた。
【0092】
そこで、極薄ウェハ26の回転数を50rpm、ロールブラシ28の回転数を200rpmにし、極薄ウェハ26の上部から毎分1L(リットル)の超純水を極薄ウェハ26の中心部付近に注入しながらロールブラシ28を揺動させて極薄ウェハ26面に接触させた後、水平方向から観察しながらウェハ平面維持手段(気体噴射方式)としての気体噴射部材30から窒素ガスを噴出させると共に、揺動するロールブラシ28がどの位置に移動してもウェハ26に接触するように窒素ガス流量を調節し同様にスクラブ洗浄を行った。
【0093】
そして、上記支持部材27から取り外した極薄ウェハ26の中心から半径方向に約20mmおきに接触角の測定を行った結果、すべての測定点において接触角は測定限界5度以下であった。
【0094】
この結果から、スクラブ洗浄対象が厚さ100μmの極薄ウェハの場合は、厚さ200μmの極薄ウェハの場合と同様、ウェハ平面維持手段(気体噴射方式)としての気体噴射部材30を操作して極薄ウェハ26の平面状態を保つことで、初めて極薄ウェハ26全面がスクラブ洗浄できたことを示している。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明に係るスクラブ洗浄装置によれば、ウェハの中心部に洗浄液が溜まり易いスクラブ洗浄中においても、ウェハ平面維持手段の作用によりウェハ表面の平面状態が維持されるため、ロールブラシとウェハとの非接触領域の発生が抑制されて良好なスクラブ洗浄を安定して行うことができる。このため、小型で薄型のデジタルカメラやカメラ付携帯電話等に搭載されるUV−IRカットフィルターの大面積極薄基板(ウェハ)のスクラブ洗浄に用いられる産業上の利用可能性を有している。
【符号の説明】
【0096】
1 ウェハ
2 ロールブラシ
3 洗浄液
4 ウェハ
5 ロールブラシ
6 洗浄液
7 ウェハ
8 支持部材
9 ロールブラシ
10 洗浄液
11 ノズル(液体噴射部材)
12 ウェハ
13 支持部材
14 ロールブラシ
15 洗浄液
16 ノズル(液体噴射部材)
21 ウェハ
22 ロールブラシ
23 洗浄液
24 支持部材
25 気体噴射部材
26 ウェハ
27 支持部材
28 ロールブラシ
29 洗浄液
30 気体噴射部材
50 ブラシ保持材
51 ブラシ保持材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハ外周縁部が保持されてウェハを水平の状態で回転可能に支持する支持部材と、上記支持部材を所定の回転数で回転させる駆動部と、上記ウェハ表面上に配置されかつウェハ表面に対して平行または垂直な回転軸を有するロールブラシと、上記ウェハ表面へ洗浄液を供給する供給部を備え、洗浄液とロールブラシによりウェハ表面を摩擦洗浄するスクラブ洗浄装置において、
上記ウェハの裏面側へ向け流体を噴射してウェハ表面の平面状態を維持させるウェハ平面維持手段が設けられていることを特徴とするスクラブ洗浄装置。
【請求項2】
ウェハ裏面側の少なくとも1箇所以上に液体を噴き付ける液体噴射部材により上記ウェハ平面維持手段が構成されていることを特徴とする請求項1に記載のスクラブ洗浄装置。
【請求項3】
ウェハ裏面側の少なくとも1箇所以上に気体を噴き付ける気体噴射部材により上記ウェハ平面維持手段が構成されていることを特徴とする請求項1に記載のスクラブ洗浄装置。
【請求項4】
上記ウェハが、ガラス、石英、セラミックス、結晶材料から選択された直径200mm以上で厚さ200μm以下の極薄ウェハであることを特徴とする請求項1に記載のスクラブ洗浄装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−278103(P2010−278103A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127307(P2009−127307)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】