説明

ステージ装置、露光装置、洗浄方法及びデバイス製造方法

【課題】露光不良を抑制できる、ステージ装置、露光装置、洗浄方法及びデバイス製造方法を提供すること。
【解決手段】
基板ステージ2の基板保持部5は、液体供給装置7に接続可能な液体供給口3を備える。液体供給装置7は、液体供給口3を介して、チャック面5aに液体を供給することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステージ装置、露光装置、洗浄方法及びデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス等のマイクロデバイスの製造工程において、露光光で基板を露光する露光装置が使用される。露光装置のマスクと基板の少なくとも一方を保持する保持部が汚染されると、例えば基板に形成されるパターンに欠陥が生じる等、露光不良が発生し、その結果、不良デバイスが発生する可能性がある。そのため、例えば下記特許文献に開示されているような、露光装置内のマスクと基板の少なくとも一方を保持する保持部を洗浄する技術が案出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
米国特許第5559582号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
露光不良の発生を抑制するために、保持部を洗浄することは有効である。そのため、露光装置内の保持部を良好に洗浄する技術の案出が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様に従えば、内部に板状物体を支持する支持部が設けられる凹部を有する保持部を含み、板状物体と凹部の内側の面とで囲まれた空間を負圧にすることによって、板状物体を保持部で保持するステージ装置であって、凹部の内側の面に液体を供給する液体供給口を備えるステージ装置が提供される。
【0006】
本発明の第2の態様に従えば、第1の態様のステージ装置を備えた露光装置が提供される。
【0007】
本発明の第3の態様に従えば、第2の態様の露光装置において、液体供給口から液体を供給することを含む洗浄方法が提供される。
【0008】
本発明の第4の態様に従えば、第2の態様の露光装置において、基板を露光することと、露光された基板を現像することとを含むデバイス製造方法が提供される。
【0009】
本発明の第5の態様に従えば、内部に板状物体を支持する支持部が設けられる凹部を有する保持部を含み、板状物体と凹部の内側の面とで囲まれた空間を負圧にすることによって、板状物体を保持部で保持するステージ装置の洗浄方法であって、凹部の内側の面に液体を供給し、凹部の内側の面を洗浄する洗浄方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、露光不良の発生を抑制できる。また、本発明によれば、不良デバイスの発生を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。水平面内の所定方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれと直交する方向(すなわち鉛直方向)をZ軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係る露光装置EXの一例を示す図である。図1において、露光装置EXは、マスクMを保持して移動可能なマスクステージ1と、基板Pを保持して移動可能な基板ステージ2と、マスクステージ1に保持されているマスクMを露光光ELで照明する照明系ILと露光ELで照明されたマスクMのパターンの像を基板ステージ2に保持されている基板Pに投影する投影光学系PLと、を備えている。
【0012】
本実施形態において、露光装置EXは、マスクMと基板Pとを静止した状態でマスクMのパターンを一括露光し、基板Pを順次ステップ移動させるステップ・アンド・リピート方式である。
【0013】
マスクMは、基板Pに投影されるデバイスパターンが形成されたレチクルを含む。本実施形態において、マスクMは、例えばガラス板等の透明板にクロム等の遮光膜を用いて所定のパターンが形成された透過型マスクである。この透過型マスクは、遮光膜でパターンが形成されるバイナリーマスクに限られず、例えばハーフトーン型、あるいは空間周波数変調型などの位相シフトマスクも含む。
【0014】
照明系ILは、照明領域IRに配置されたマスクMの少なくとも一部を露光光ELで照明する。本実施形態においては、露光光ELとして、ArFエキシマレ−ザ光を用いる。
【0015】
マスクステ−ジ1は、マスクMの裏面Mb(パターン形成面)とXY平面とがほぼ平行となるように、マスクMを保持する。マスクステ−ジ1は、マスクMを保持した状態で、X軸、Y軸、及びθZ方向の3つの方向に移動可能である。X軸方向、及びY軸方向におけるマスクステージ1の位置情報は、レーザ干渉計を含む干渉計システム(不図示)で計測される。また、マスクステージ1に保持されたマスクMの裏面Mbの位置情報が、フォーカス・レベリング検出システム(不図示)に検出される。
【0016】
投影光学系PLは、投影領域PRに配置された基板Pの少なくとも一部に、マスクMのパタ−ンの像を所定の投影倍率で投影する。本実施形態の投影光学系PLは、その投影倍率が例えば1/4、1/5または1/8等の縮小系である。なお、投影光学系PLは、等倍系及び拡大系のいずれでもよい。本実施形態においては、投影光学系PLの光軸AXは、Z軸とほぼ平行である。
【0017】
基板ステ−ジ2は、基板Pの表面Pa(露光面)とXY平面とがほぼ平行となるように、基板Pを保持する。基板ステ−ジ2は、基板Pを保持した状態で、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6つの方向に移動可能である。
【0018】
X軸方向、及びY軸方向における基板ステ−ジ2の位置情報は、レ−ザ干渉計を含む干渉計システム(不図示)で計測される。また、基板ステ−ジ2に保持された基板Pの表面Paの位置情報が、フォ−カス・レベリング検出システム(不図示)に検出される。
【0019】
本実施形態において、基板Pは、デバイスを製造するための円形の基板であり、感光材(フォトレジスト)Rgの膜を含む。
【0020】
次に、図2および図3を参照しながら、本実施形態に係る基板ステージ2に関して説明する。
【0021】
図2は、基板ステージ2の一部を示す側断面図である。図3は、本実施形態に係る基板ステージ2を上方(+Z側)から見た平面図である。図2は、図3のA−Bに沿った断面図である。
【0022】
基板ステージ2は、ステージ本体STと、基板Pを保持する基板保持部5と、ステージ表面2aとを含む。なお、図2においては、基板保持部5に基板Pが保持されている。
【0023】
本実施形態において、ステージ本体STは、図2に示すように、XY平面において、矩形であり、図3に示すようにZ軸方向に厚さを有するプレート状の部材である。基板保持部5は、図3に示すように、XY平面において、ステージ本体STの表面2aにほぼ中央に形成された円形部分である。また、本実施形態において、基板保持部5は、基板Pの表面PaとXY平面とがほぼ平行となるように、基板Pを脱着可能に保持できる。ステージ本体STは、セラミックスを含む。
【0024】
本実施形態において、基板保持部5は、第1リム部R1と、第1リム部R1に囲まれた上面(チャック面)5aと、チャック面5aに設けられた複数の第1ピン部材P1と、チャック面5aに設けられた液体供給口3と、チャック面5aに設けられた液体回収口4とを含む。基板保持部5は、第1リム部R1とチャック面5aで凹部が形成されている。凹部の内側(内部)には、チャック面5aが設けられている。
【0025】
なお、図3においては、第1ピン部材P1を図示していない。
【0026】
第1リム部R1は、図3に示すように、円形の環状である。第1リム部R1は、裏面Pbと接触(支持)する接触面R1aと、チャック面5aの周囲に設けられた内側側面R1bと、外側側面R1cとを含む。内側側面R1bは、チャック面5aの外縁に沿って環状に形成され、Z軸方向とほぼ平行にチャック面5aから接触面R1aまで延びている。外側側面R1cは、円形の環状に形成され、Z軸方向とほぼ平行に、表面2aから接触面R1aまで延びている。チャック面5aには、裏面Pbを支持する複数の第1ピン部材P1が配置されている。チャック面5aは、XY平面とほぼ平行に延びている。すなわち、チャック面5aで規定される面は、平坦である。第1ピン部材P1には、第1ピン部材P1の表面P1aを含む。第1ピン部材P1は、基板の裏面Pbと接触(支持)する部分を含む。本実施形態において、基板保持部5の外縁は、第1リム部R1の外側側面R1cで画定される。
【0027】
基板保持部5は、チャック面5aに設けられた4個の液体供給口3を含む。液体供給口3は、円形のチャック面5aの中心を囲むように、チャック面5aの中心近傍に、円環状に配置されている。液体供給口3のそれぞれは、ステージ本体STの内部に設けられ、Z軸方向とほぼ平行に延びる液体供給流路3aと連通する。液体供給流路3aは、図2に示すように、制御装置Coにより制御可能な液体供給装置7に接続可能である。本実施形態において、基板保持部5は、制御装置Coを含む。なお、液体供給口3は4個に限られず、1個でもよい。
【0028】
本実施形態では、液体供給装置7は、純水を供給する。なお、液体供給装置7から供給される液体は、純水に限らず、酸系洗浄液、アルカリ系洗浄液、中性系洗浄液、有機溶剤の少なくとも一つを用いることができる。例えば、アルカリ系洗浄液として、水酸化テトラメチルアンモニウムを用いる。
【0029】
また、基板保持部5は、チャック面5aに設けられた4個の液体回収口4を含む。液体回収口4は、第1リム部R1の近傍に4個設けられている。チャック面5aの中心の周囲に設けられて4個の液体供給口3のそれぞれに対し、液体回収口4が放射状にそれぞれが配置されている。液体回収口4のそれぞれは、ステージ本体STの内部に設けられ、Z軸方向とほぼ平行に延びる液体回収流路4aと連通する。液体回収流路4aは、図2に示すように、制御装置Coにより制御可能な液体回収装置8に接続可能である。なお、液体回収口4は4個に限られず、1個であってもよい。なお、図3のA−Bにおいて、液体供給4と液体回収口3の間に新たに液体回収口を設けても構わない。
【0030】
また、基板保持部5は、チャック面5aに設けられた4個の第1吸引口9を含む。第1吸引口9のそれぞれは、ステージ本体STの内部に設けられ、Z軸方向とほぼ平行に延びる吸引流路9aと連通する。吸引流路9aは、図2に示すように、吸引ポンプを含む真空システム91と接続可能である。なお、第1吸引口9は4個に限られず、1個であってもよい。
【0031】
なお、図2において、液体供給口3、液体回収口4及び第1吸引口9のZ軸方向の位置は同一である。
【0032】
次に、図2を参照しながら、基板Pが基板保持部5に保持された状態に関して説明する。
【0033】
基板保持部5に基板Pが載置された状態において、図2に示すように、基板Pの裏面Pbと、凹部(第1リム部R1とチャック面5a)とで囲まれた第1空間S1が形成される。基板Pの裏面Pbとチャック面5aとの間には、ギャップが形成される。基板保持部5に保持される基板Pの裏面Pbに対して、第1リム部R1とチャック面5aが凹状に形成されている。第1リム部R1とチャック面5aで形成される凹部は、基板Pの裏面Pbに対する凹部である。基板Pの裏面Pbとチャック面5aは、ギャップを介して対向している。基板Pの裏面Pbと、内側側面R1bと、チャック面5aは、第1空間S1に面している。液体供給口3は、第1空間S1に面している。また、液体回収口4は、第1空間S1に面している。上述したように、第1吸引口9は、吸引流路9aを介して、真空システム91に接続可能である。したがって、真空システム91は、第1空間S1の気体を、第1吸引口を介して吸引(排気)することが可能である。すなわち、真空システム91を動作させることによって、基板保持部5の第1リム部R1と第1ピン部材P1上に基板Pが保持される。基板Pの裏面Pbが第1ピン部材P1上に保持(支持)されている。真空システム91による吸引動作を停止することにより、基板保持部5から基板Pを外すことが可能になる。
【0034】
次に、上述の構成を有する露光装置EXの動作の一例について説明する。
【0035】
まず、露光前の基板Pは、所定の搬送装置を用いて、基板ステージ2の基板保持部5にロ−ドされる。
【0036】
次に、基板保持部5と基板Pの裏面Pbとで囲まれた第1空間S1の気体を、第1吸引口9を介して真空システム91により吸引し、第1空間S1を負圧にすることにより、基板Pは、基板保持部5に吸着保持される。
【0037】
照明系ILより露光光ELが射出される。照明系ILより射出された露光光ELは、マスクMを照明する。マスクMを介した露光光ELは、投影光学系PLを介して、基板Pに照射される。これにより、マスクMのパタ−ンの像が基板Pの表面Paに投影され、基板Pは露光光ELで露光される。
【0038】
基板Pの露光が終了した後に、所定の搬送装置を用いて、露光後の基板Pを基板ステージ2の基板保持部5からアンロ−ドされる。以上により、基板Pの露光処理が終了する。
【0039】
ところで、基板Pの交換処理及び基板Pの露光処理を含む露光シーケンスにおいて、異物(汚染物、パーティクル)が基板保持部5のチャック面5aおよび第1ピン部材の表面P1aに付着する可能性がある。
【0040】
例えば、第1ピン部材P1の表面P1aの内基板Pと接触する部分に異物が付着すると、基板保持部5に保持した基板Pの平坦度が低下する可能性がある。また、例えば、チャック面5aに付着した異物が再度浮遊し、露光装置EXが汚染される可能性がある。その結果、露光不良が発生する可能性がある。
【0041】
次に、図4を参照しながら、チャック面1aおよび表面P1aの洗浄(洗浄方法)に関して説明する。図4は、図3のA−Bに沿った断面図である。なお、図4においては、第1吸引口9、吸引流路9a及び真空システム91は図示していない。
【0042】
本実施形態では、露光後の基板Pと露光前の基板Pと交換する間の基板ステージ2に基板Pが載置されてない状態で、チャック面5aおよび表面P1aの洗浄を実行する。本実施形態の制御装置Coは、チャック面5aおよび表面P1aの異物を取り除くために、液体供給装置7を動作させて、4個の液体供給口3からチャック面5aに液体を供給する。また、ほぼ同時に、本実施形態においては、液体回収装置8を動作させて、4個の液体回収口4から液体を回収する。これにより、図4に示すように、チャック面5aにおいて、液体供給口3と液体回収口4との間には、液浸空間LSが形成される。また、液浸空間LSは、表面P1aに付着した異物を取り込むことが可能である。すなわち、チャック面5aおよび表面P1aにおいて、液体供給口3と液体回収口4との間の異物は、液浸空間LSに取り込まれ、液体とともに、液体回収口4から回収される。
【0043】
チャック面5aは第1リム部R1に囲まれており、液体供給口3から液体供給と並行して液体回収口4から液体を回収しているので、第1リム部R1(基板保持部5)の外側へ液体を漏らすことなく、チャック面5aの洗浄を実行することができる。
【0044】
本実施形態では、露光後の基板Pと露光前の基板Pと交換する間の基板ステージ2に基板Pが載置されてない状態で、液体供給装置7を動作させて、液体供給口3から液体を供給し、液体回収装置8を動作させて、液体回収口4から液体を回収する。したがって、露光前の基板Pは、異物が取り除かれたチャック面5aおよび表面P1aに載置される。したがって、チャック面5aおよび表面P1aに起因する露光不良の発生を抑制することができる。したがって、露光不良の発生を抑制でき、不良デバイスの発生を抑制することができる。
【0045】
以上、説明したように、本実施形態では、チャック面5aに液体供給口3を設けたので、チャック面5aに液体を供給することができる。したがって、チャック面5aおよび表面P1aを含む基板保持部5に付着した異物を取り除くことができる。したがって、チャック面5aおよび表面P1aを含む基板保持部5の異物に起因する露光不良の発生を抑制することができる。したがって、露光不良の発生を抑制でき、不良デバイスの発生を抑制することができる。
【0046】
なお、上述の実施形態では、チャック面5aの中心近傍に液体供給口3を設け、第1リム部R1の近傍に液体回収口4を配置したが、液体供給口3および液体回収口4の配置はこれに限れられない。例えば、チャック面5aの中心近傍に液体回収口4を設け、第1リム部R1の近傍に液体供給口3を配置しても構わない。
【0047】
なお、本実施形態では、液体供給口3をチャック面5aに設けたが、設ける場所はこれに限られない。液体供給口3は、第1空間S1に面する場所に設けることできる。例えば、液体供給口3を内側側面R1bに設けても構わない。また、例えば、液体供給口3を第1ピン部材P1に設けても構わない。
【0048】
なお、本実施形態では、液体回収口4をチャック面5aに設けたが、設ける場所はこれに限られない。例えば、液体回収口4を内側側面R1bに設けても構わない。
【0049】
なお、第1吸引口9に液体を流入する流入抑制機構を設けても構わない。例えば、上述の実施形態では、図2において、液体供給口3、液体回収口4および第1吸引口9のZ軸方向の位置が同一であったがこれに限らず、液体供給口3および液体回収口4のZ軸方向の位置より、第1吸引口9のZ軸方向の位置を+Z軸方向に設け、第1吸引口9に液体が流入するのを抑制しても構わない。第1吸引口9のZ軸方向の位置は、第1ピン部材P1の基板Pと接触する部分よりも−Z軸方向に設けることが望ましい。この場合、液体供給装置7及び/又は液体回収装置8を動作させて、チャック面5a上で形成する液浸空間LSの界面のZ軸方向の位置を調整し、液体が第1吸引口9に入るのを抑制するのが望ましい。
【0050】
なお、基板保持部5のチャック面5aで規定される面は、平坦であったが、これに限られない。例えば、図5に示すように、チャック面5aの中心のZ軸方向の位置が、第1リム部R1の近傍のZ軸方向の位置よりも高くても構わない。図5は、図3のA−Bに沿った断面図である。図5においては、第1ピン部材P1、第1吸引口9、吸引流路9a及び真空システム91を図示していない。チャック面5aの形状は、+Z軸方向に凸状である。この場合、液体供給口3のZ軸方向の位置が、液体回収口4のZ軸方向の位置よりも低くなる。したがって、液体供給口3から供給する液体を、効率良く液体を液体回収口4で回収できる。すなわち、チャック面5aの形状を調整することにより、チャック面5a上の液体の流れを調整(ガイド)することが可能である。また、基板保持部5の液体の流れを調整(ガイド)する機構は、チャック面5aの形状に限られない。例えば、液体供給口3と液体回収口4とを結ぶ溝をチャック面5aに設け、液体供給口3から供給する液体の流れを調整(ガイド)しても構わない。
【0051】
なお、基板ステージ2に多孔質部材を用いても構わない。例えば、上述の実施形態では、ステージ本体STにセラミックスを用いたが、多孔質セラミックを用いても構わない。ステージ本体STを多孔質部材とし、チャック面5aを多孔質部材とする。多孔質部材に液体供給装置7を接続し、多孔質部材に液体を供給することで、多孔質の孔から液体を供給することができる。また、多孔質部材に液体回収装置8を接続し、多孔質部材内部を負圧にすることで、多孔質の孔から液体を回収することができる。チャック面5aの所望の場所で、液体の供給と回収を行うことができる。
【0052】
さらに、多孔質部材をチャック面5aの一部に用いても構わない。例えば、チャック面5aの第1リム部R1の近傍に円形の環状で配置し、液体を回収しても構わない。また、第1ピン部材P1を多孔質部材とし、表面P1aから液体を供給しても構わない。なお、多孔質構造は、網の目状のメッシュ構造を含む。
【0053】
なお、上述の実施形態での第1ピン部材P1には、例えば、Z軸方向に厚みを備えるプレート部材のうち、所定部分だけを研磨し、第1ピン部材P1を成形したものを用いることが可能である。したがって、第1ピン部材P1に多孔質部材を用いる場合、Z軸方向に厚みを備える多孔質部材のうち、所定部分だけを研磨したものを用いることが可能である。
【0054】
なお、上述の実施形態では、4個の液体供給口3から同時にチャック面5aに液体を供給したが、4個の液体供給口3のすべてからチャック面5aに液体を供給しなくても構わない。例えば、チャック面5aの+X側に液体を供給する場合、チャック面5aの中心の+X側に配置された1個の液体供給口3のみからチャック面5aに液体を供給してもよい。複数の液体供給口3のうちの少なくとも一つを適宜選択することで、チャック面5aに効率良く液体を供給することができる。また、液体供給口3と同様に、複数の液体回収口4の少なくとも一つを適宜選択することができる。
【0055】
なお、上述の実施形態では、液体供給口3からチャック面5aに供給した液体を液体回収口4により回収したが、液体を回収する(取り除く)方法はこれに限られない。例えば、チャック面5aに乾燥空気を導入し、液体を気化することで、チャック面5aから液体を取り除いても構わない。
【0056】
なお、液体を供給することと、液体を回収することとのタイミングを異ならせても構わない。例えば、液体供給装置7を動作させて、チャック面5aに液体を供給する。この際、液体回収口4に開閉自在の蓋を設ける。チャック面5aへ液体を供給している間、蓋を閉める。所定の期間経過した後に、蓋を開け、液体回収装置8を動作させても構わない。液体の供給と液体の回収のタイミングを異ならせることで、チャック面5aに所定のサイズの液浸空間LSを形成することが可能である。例えば、チャック面5aに第1ピン部材P1を覆うサイズの液浸空間LSを形成することができる。したがって、第1ピン部材P1の内基板Pと接触する部分を含めて、第1ピン部材P1に付着した異物を均一に洗浄することが可能となる。したがって液浸空間LSのサイズを調整することで、異物を効率良く回収することが可能である。
【0057】
なお、上述の実施形態では、基板Pが載置されていない状態で、チャック面5aに液体を供給したが、液体を供給するタイミングはこれに限られない。基板Pが載置された状態でも構わない。
【0058】
なお、上述の実施形態では、基板Pが載置されていない状態で、チャック面5aに供給された液体を回収したが、液体を回収するタイミングはこれに限られない。例えば、基板Pが載置され、基板Pの裏面Pbと、凹部(第1リム部R1とチャック面5a)とで囲まれた第1空間S1を負圧にした状態で、液体回収口4から液体を回収しても構わない。また、デバイスを製造するための円形の基板Pとは異なる円形の部材と、凹部(第1リム部R1とチャック面5a)とで囲まれる空間を負圧にしても構わない。
【0059】
なお、上述の実施形態では、液体供給口3は、液体供給装置7に接続可能であったが、液体供給口3を、液体供給装置7と共に、液体回収装置8に接続可能にしても構わない。
【0060】
なお、上述の実施形態では、液体供給装置7と液体回収装置8を同一の制御装置Coに接続したが、液体供給装置7と液体回収装置8とを異なる制御装置に接続しても構わない。
【0061】
なお、液体供給装置7、及び液体回収装置8は、露光装置EXが備えていてもよいし、それらの少なくとも1つは、露光装置EXが設置される工場などの設備であってもよい。また、真空システム91は、露光装置EXが備えていてもよいし、露光装置EXが設置される工場などの設備であってもよい。
【0062】
なお、液体供給装置7および液体回収装置8を制御するのは、制御装置Coに限られない。例えば、露光装置EXが備えている、制御装置Coとは異なる制御装置でも構わない。また、露光装置EXが設置される工場などが備えている制御装置でも構わない。
【0063】
上述の実施形態の基板保持部5は、基板Pを減圧吸着方式で、基板ステージ2に保持しているが、例えば、静電吸着方式で、あるいは減圧吸着と静電吸着を併用して、基板Pを基板ステージ2に保持してもよい。
【0064】
本実施形態では、基板保持部5のチャック面5aに液体供給口3を設け、チャック面5aを洗浄したが、液体供給口3を設ける場所はこれに限られない。例えば、マスクMを保持する保持部に液体供給口を設けても構わない。
【0065】
なお、上述の実施形態では、基板保持部5のチャック面5aに液体を供給し、チャック面5aを洗浄したが、他の洗浄方法と組み合わせても構わない。例えば、基板ステージ2に振動発生装置を設け、チャック面5aに形成する液浸空間LSに振動を与えても構わない。液浸空間LSに振動を与えるので、チャック面5aより効率よく異物を回収することができる。振動発生装置は、超音波(例えば、1〜9MHz程度)を液浸空間LSに与えることが可能である。
【0066】
なお、上述の実施形態では、チャック面5aに液体供給口3を設け、チャック面5aに液体を供給し、チャック面5aの洗浄を実行し、異物が取り除かれたチャック面5aを含む基板保持部5に基板Pを保持し、基板Pの露光処理を実行したが、行う処理は、露光処理に限られない。異物が取り除かれたチャック面5aに板状の部材を保持し、所定の処理を行うことで、処理不良の発生を抑制することができる。
【0067】
なお、上述の各実施形態の基板Pとしては、半導体デバイス製造用の半導体ウエハのみならず、ディスプレイデバイス用のガラス基板、薄膜磁気ヘッド用のセラミックウエハ、あるいは露光装置で用いられるマスクまたはレチクルの原版(合成石英、シリコンウエハ)等が適用される。
【0068】
なお、露光装置EXとしては、ステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置を用いたが、これに限らない。例えば、マスクMと基板Pとを同期移動してマスクMのパターンを走査露光するステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置(スキャニングステッパ)のにも適用することができる。
【0069】
さらに、ステップ・アンド・リピート方式の露光において、第1パターンと基板Pとをほぼ静止した状態で、投影光学系を用いて第1パターンの縮小像を基板P上に転写した後、第2パターンと基板Pとをほぼ静止した状態で、投影光学系を用いて第2パターンの縮小像を第1パターンと部分的に重ねて基板P上に一括露光してもよい(スティッチ方式の一括露光装置)。また、スティッチ方式の露光装置としては、基板P上で少なくとも2つのパターンを部分的に重ねて転写し、基板Pを順次移動させるステップ・アンド・スティッチ方式の露光装置にも適用できる。
【0070】
また、例えば対応米国特許第6611316号明細書に開示されているように、2つのマスクのパターンを、投影光学系を介して基板上で合成し、1回の走査露光によって基板上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置などにも本発明を適用することができる。また、プロキシミティ方式の露光装置、ミラープロジェクション・アライナーなどにも本発明を適用することができる。
【0071】
また、本発明は、米国特許第6341007号明細書、米国特許第6208407号明細書、米国特許第6262796号明細書等に開示されているような複数の基板ステージを備えたツインステージ型の露光装置にも適用できる。
【0072】
更に、例えば対応米国特許第6897963号明細書等に開示されているように、基板を保持する基板ステージと基準マークが形成された基準部材及び/又は各種の光電センサを搭載した計測ステージとを備えた露光装置にも本発明を適用することができる。
【0073】
更に、例えば対応米国特許出願公開第2005/0219488号明細書、欧州特許出願公開第1713115号明細書、米国特許出願公開第2007/0273856号明細書等に開示されているように、液体を介して露光光で基板を露光する液浸露光装置にも適用できる。
【0074】
露光装置EXの種類としては、基板Pに半導体素子パターンを露光する半導体素子製造用の露光装置に限られず、液晶表示素子製造用又はディスプレイ製造用の露光装置や、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD)、マイクロマシン、MEMS、DNAチップ、あるいはレチクル又はマスクなどを製造するための露光装置などにも広く適用できる。
【0075】
また、上述の各実施形態では、露光光ELとしてArFエキシマレーザ光を発生する光源装置として、ArFエキシマレーザを用いてもよいが、例えば、米国特許第7023610号明細書に開示されているように、DFB半導体レーザ又はファイバーレーザなどの固体レーザ光源、ファイバーアンプなどを有する光増幅部、及び波長変換部などを含み、波長193nmのパルス光を出力する高調波発生装置を用いてもよい。さらに、上記実施形態では、前述の各照明領域と、投影領域がそれぞれ矩形状であるものとしたが、他の形状、例えば円弧状などでもよい。
【0076】
なお、上述の各実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスクを用いたが、このマスクに代えて、反射型マスクでも構わない。また、例えば米国特許第6778257号明細書に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する可変成形マスク(電子マスク、アクティブマスク、あるいはイメージジェネレータとも呼ばれる)を用いてもよい。可変成形マスクは、例えば非発光型画像表示素子(空間光変調器)の一種であるDMD(Digital Micro-mirror Device)等を含む。また、非発光型画像表示素子を備える可変成形マスクに代えて、自発光型画像表示素子を含むパターン形成装置を備えるようにしても良い。自発光型画像表示素子としては、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)、無機ELディスプレイ、有機ELディスプレイ(OLED:Organic Light Emitting Diode)、LEDディスプレイ、LDディスプレイ、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)、プラズマディスプレイ(PDP:Plasma Display Panel)等が挙げられる。
【0077】
上述の各実施形態においては、投影光学系PLを備えた露光装置を例に挙げて説明してきたが、投影光学系PLを用いない露光装置及び露光方法に本発明を適用することができる。
【0078】
また、例えば国際公開第2001/035168号パンフレットに開示されているように、干渉縞を基板P上に形成することによって、基板P上にライン・アンド・スペースパターンを露光する露光装置(リソグラフィシステム)にも本発明を適用することができる。
【0079】
以上のように、本願実施形態の露光装置EXは、本願請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
【0080】
半導体デバイス等のマイクロデバイスは、図6に示すように、マイクロデバイスの機能・性能設計を行うステップ201、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ202、デバイスの基材である基板を製造するステップ203、上述の実施形態に従って、マスクのパターンを用いて露光光で基板を露光すること、及び露光された基板を現像することを含む基板処理(露光処理)を含む基板処理ステップ204、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程などの加工プロセスを含む)205、検査ステップ206等を経て製造される。
【0081】
なお、上述の各実施形態の要件は、適宜組み合わせることができる。また、法令で許容される限りにおいて、上述の各実施形態及び変形例で引用した露光装置などに関する全ての公開公報及び米国特許の開示を援用して本文の記載の一部とする
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本実施形態に係る露光装置EXを示す概略構成図である。
【図2】本実施形態に係る基板ステージ2の一部の一例を示す側断面図である。
【図3】本実施形態に係る基板ステージ2の一例を示す平面図である。
【図4】本実施形態に係る基板ステージ2の一部の一例を示す側断面図である。
【図5】本実施形態に係る基板ステージ2の一部の一例を示す側断面図である。
【図6】マイクロデバイスの製造工程の一例を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0083】
2---基板ステージ、3---液体供給口、4---液体回収口、5---基板保持部、7---液体供給装置、8---液体回収装置



【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に板状物体を支持する支持部が設けられる凹部を有する保持部を含み、前記板状物体と前記凹部の内側の面とで囲まれた空間を負圧にすることによって、前記板状物体を前記保持部で保持するステージ装置であって、
前記凹部の内側の面に液体を供給する液体供給口を備えるステージ装置。
【請求項2】
前記凹部の内側の面は、前記支持部で支持される前記板状物体の被支持面とギャップを介して対向する対向面を含み、前記対向面に対して凸状に前記支持部が形成され、前記対向面に前記液体供給口を備える請求項1に記載のステージ装置。
【請求項3】
前記対向面に前記液体を回収する液体回収口を備える請求項2に記載のステージ装置。
【請求項4】
前記液体供給口に対して、前記液体回収口は放射状に配置されている請求項3に記載のステージ装置。
【請求項5】
前記液体回収口は、第1回収口と第2回収口とを含み、前記第1回収口の液体の回収と前記第2回収口の液体の回収とを個別に調整する調整装置を備える請求項3又は請求項4に記載のステージ装置。
【請求項6】
前記対向面に前記液体をガイドするガイド機構を備える請求項2〜5のいずれか一項に記載のステージ装置。
【請求項7】
前記凹部の内側の面に、前記液体を回収する液体回収口を備える請求項1又は請求項2に記載のステージ装置。
【請求項8】
前記液体供給口に対して、前記液体回収口は放射状に配置されている請求項7に記載のステージ装置。
【請求項9】
前記液体回収口は、第1回収口と第2回収口とを含み、前記第1回収口の液体の回収と前記第2回収口の液体の回収とを個別に調整する調整装置を備える請求項7又は請求項8に記載のステージ装置。
【請求項10】
前記凹部の内側の面に、前記液体をガイドするガイド機構を備える請求項1〜〜9のいずれか一項に記載のステージ装置。
【請求項11】
前記液体供給口から、前記凹部の内側の面の少なくとも一部を洗浄するために洗浄液を供給する請求項1〜10のいずれか一項に記載のステージ装置。
【請求項12】
前記液体供給口は、第1供給口と第2供給口とを含み、前記第1供給口からの液体の供給と前記第2供給口からの液体の供給とを個別に調整する調整装置を備える請求項1〜11のいずれか一項に記載のステージ装置。
【請求項13】
前記保持部は、複数の孔を備える多孔質部材を含み、前記液体供給口は、前記多孔質部材の前記孔を含む請求項1〜12のいずれか一項に記載のステージ装置。
【請求項14】
マスクのパターンの像を基板に投影する投影光学系を含む露光装置であって、請求項1〜13のいずれか一項に記載のステージ装置を備えた、露光装置。
【請求項15】
前記液体に振動を与えるための振動発生装置を備える請求項14に記載の露光装置。
【請求項16】
前記板状物体は、前記マスクまたは前記基板を含む請求項14又は請求項15に記載の露光装置
【請求項17】
請求項14〜16のいずれか一項に記載の露光装置において、前記液体供給口から液体を供給すること、を含む洗浄方法。
【請求項18】
請求項14〜17のいずれか一項に記載の露光装置において、基板を露光することと、
前記露光された基板を現像することと、を含むデバイス製造方法。
【請求項19】
内部に板状物体を支持する支持部が設けられる凹部を有する保持部を含み、前記板状物体と前記凹部の内側の面とで囲まれた空間を負圧にすることによって、前記板状物体を前記保持部で保持するステージ装置の洗浄方法であって、
前記凹部の内側の面に液体を供給し、前記凹部の内側の面を洗浄する洗浄方法。
【請求項20】
前記板状物体と前記凹部の内側の面とで囲まれた空間を負圧にし、前記凹部の内側の面に供給される液体を回収することを含む請求項19に記載の洗浄方法。
【請求項21】
前記凹部の内側の面に設けられる液体供給口から、前記凹部の内側の面に液体を供給する請求項19又は請求項20に記載の洗浄方法。
【請求項22】
前記ステージ装置は、露光光で基板を露光する露光装置内で前記基板の保持に用いられる請求項19〜21のいずれか一項に記載の洗浄方法。
【請求項23】
前記ステージ装置は、マスクを介した露光光で基板を露光する露光装置内で前記マスクの保持に用いられる請求項19〜21のいずれか一項に記載の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−54846(P2011−54846A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−203985(P2009−203985)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】