説明

セラミックス接合方法:反応拡散接合

セラミックスのような化合物材料の接合方法を提供する。この方法は、拡散接合と反応接合との組み合わせであり、反応拡散接合(Reaction Diffusion−Bonding:RDB)という。この方法は、二つ以上の化合物材料片が接合される表面の全体または一部を研磨、ラッピング、またはポリシングし、一つ以上の研磨、ラッピングまたはポリシングされた表面上に、熱処理時に化合物材料内へ組み込まれるか、化合物材料と固溶化されて化合物材料に変換できる接合剤薄膜を挿入、塗布、蒸着、メッキ及びコーティングのうちいずれか一つによって形成し、接合剤薄膜が形成された面を介して化合物材料の片を当接させた状態で熱処理することによって、接合界面に第2相の存在なしに直接接合界面を形成する。接合剤薄膜は、金属、金属有機物及び金属化合物からなる群から選択された物質からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料接合方法に係り、特にセラミックスのような化合物からなる材料の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高温抵抗性、高い硬度、高い化学耐性及び金属より低い密度のようなセラミックスの優秀な物性は、電子、自動車産業、宇宙、化学産業などの広範囲な分野で技術的なセラミックスを利用する理由である。しかし、産業製品は一体化した(monolithic)場合が非常に稀である。したがって、セラミックス接合問題が、デザイン過程での大きい問題となる。セラミックスを接合することには、少なくとも2つの理由がある。同じ物質からなる単一部品から複雑な構造を組立てるためであるか、または、相異なる物質を接合して多様な物質の物性がデザインに寄与可能にするためである。
【0003】
セラミックスを接合すれば、実用的または適当な形状が得られる。接合技術の最も重要な機能のうち一つは、複雑な多重要素の構造を経済的に製造する方法を提供することである。セラミックス−金属及びセラミックス−セラミックス接合のために多くの複雑な接合技術が開発されており、それらは二つのグループに大別できる。中間層(interlayer)を使用するか、または使用せずに接合することである。前者は、接着剤結合(adhesive bonding)、ロウ付け/ハンダ付け(brazing/soldering)、及びガラスフリット接合を含む。後者は、機械的締付け(mechanical fastening)、共焼結(co−sintering)、拡散溶接(diffusionwelding)(拡散接合(diffusionbonding)とも称する)、及び溶融及び摩擦溶接(fusionandfrictionwelding)を含む。
【0004】
しかし、金属ロウ付け、ガラスフリット接合、及び接着剤結合は、基本的にセラミックスシステムの熱的及び化学的安定性を減少させる。このような短所は、セラミックスとは完全に異なる物性を持つ追加的な物質(グルー(glue)またはハンダ)の存在から生じる。したがって、結合部位に深刻な脆弱点が発生する。それだけでなく、機械的締付けは、セラミックス部品が根本的に脆性であるために適しておらず、レーザーまたは電子線による溶融溶接は、固い物質には収容されない過度な局部的応力と、溶接途中に発生しうるセラミックスの熱分解に起因した非適合性とのために、セラミックスの接合に幅広く使用できない。
【0005】
共焼結工程も、弱い機械的強度のために接合される部品を取扱い難く、いくつかの制限されたシステムについてのみ成功的である。拡散接合工程で、塑性変形または接合面を横切る固体状態の拡散を通じて結合が生じる。理想的には、工程条件は、接合面で局部的に塑性変形を起こして接合面を密封し、かつ接合を生じるクリープ(creep)及び拡散を許容する。しかし、大部分のセラミックスは、容易に変形せずに極度の高温を除いては拡散過程が非常に遅くて、ほとんど成功できない。サファイアの拡散接合によって、単に〜25%の界面が接合されたことが報告された。
【0006】
合理的な経済的な限界内で、セラミックス部品間の満足すべき品質の接合を生産し、かつセラミックス物質の優秀な物性を維持する技術が現在のところは存在していない。優秀なセラミックス接合技術の不足は、広範囲な応用においてセラミックスの使用を制限するかまたは阻止する。高温応用のためのセラミックス接合に関する問題は特に深刻である。有害な化学的な相互作用を最小化するセラミックス物質の接合への革新的なアプローチが必要である。本発明は、セラミックス−セラミックス接合への非伝統的なアプローチを開発して適用することを追求する。機械的、化学的、熱的、及び光学的物性の低下なしにセラミックス結晶を接合するために、拡散接合と反応接合とを結合した新たな方法を開発した。
【0007】
一つの一体化したセラミックス部品を製造する例として、大面積の窓の応用のためにサファイア片を接合することがある。単結晶アルミニウム酸化物(サファイア−Al)は、優秀な光学的品質、高い強度及び腐食及び熱的衝撃に対する抵抗のために、可視光、近赤外線及び紫外線領域の窓物質として現在使われている。サファイアの高い熱伝導度は、スピネル、イットリア、ALON(アルミニウム・オキシナイトライド)のような他の使用可能な窓物質よりもはるかに優秀な熱的衝撃抵抗を提供する。そして、衝撃からの保護を効果的に提供する。サファイアを窓及び衝撃からの保護用途に使用する場合の最も大きい制限は、システムニーズに合う大面積で製造できないということである。現在のサファイア結晶成長過程を拡大して所望の窓サイズを製造することは非常に高コストであり、技術的にも危険である。そして高品質、均一な結晶を非常に大きい直径に成長させるためには根本的な限界がある。
【0008】
小さなサファイア片を接合して適当に強く、かつ光学的に透明であり、広い面積の窓を製造することが、このような限界を回避するために要求される。それだけでなく、簡単な形状のサファイア部品を接合することによって航空やエネルギーのような分野で要求される複雑な形状のサファイア部品を形成できる。従来の接着剤は、使用中に出くわす高温及び応力には耐えられないので、適した結合を達成する他の方法が研究されてきた。サファイア接合のために開発された技術は、フリット接合、ロウ付け及び拡散接合を含む。
【0009】
米国特許第5,942,343号明細書には、比較的良好な光学的特性及び結合強度を提供できるサファイア接合方法が開示されている。この方法では、サファイア片の表面をMgO(マグネシア)蒸気でコーティングし、マグネシアがコーティングされた表面を互いに対向するように接触させた後、1500〜2000℃で水素を含有したガス雰囲気中で数時間にわたって熱処理する。しかし、この方法では、熱処理の間に、接合界面にコーティングされたMgOとサファイアとの間にMgAlスピネル相が形成されるため、依然としてサファイア間の直接的な接触結合が形成されないという問題点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
個々のセラミックス物質(単結晶、多結晶及び非晶質材料を含む)の片を結合させて、中間層の相の存在なしに直接結合された単一構造物を作る方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、個々のセラミックス物質(単結晶、多結晶及び非晶質材料を含む)の片を、接合界面での化学的反応を通じて中間層の相の存在なしに直接結合し、大きくて複雑な形状の単一構造物を作る方法を提供する。
【0012】
本発明の一態様によれば、二つ以上のセラミックス物質片の一部または全体表面を研磨、ラッピング、またはポリシングする。一つ以上の上記研磨、ラッピングまたはポリシングされた表面上に挿入、塗布、蒸着、メッキ及びコーティングのうちいずれか一つによって接合剤の薄膜を形成する。接合剤は接合界面で物質の移動を促進して塑性変形以外の方法を提供することによって、表面の粗度を滑らかにして拡散接合のために要求される緊密な接触表面を形成する。伝統的にセラミックスの拡散接合のための数多くの接合剤物質が提案されている。しかし、セラミックス物質間に存在する第2相の存在によって組立体の物性が低下するために、拡散接合によってセラミックス部品の組立体を製造することは単に部分的な成功であった。セラミックス接合に使われた接合剤の組成は、接合されるセラミックスの組成とは異なる。本発明の重要な特徴は、結合剤の慎重な選定にある。接合界面でのセラミックス物質の直接接合を達成するために、接合剤は母材であるセラミックス物質中への組み込みによって接合過程中に完全に消耗されて、接合完了後に残留する相を残さないように選定されなければならない。このような目的のための接合剤は、金属、金属有機物、金属化合物またはこれらの混合物または固溶体を含むが、これは、熱処理中にセラミックス物質及び/または雰囲気ガスとの化学的反応を通じてセラミックス物質との固溶体を形成できるか、またはセラミックス物質中へ組み込まれることが可能である。
【0013】
次いで、前記接合剤薄膜が形成された面とそうでない面、または接合剤薄膜が形成された二面を当接させる。次いで、外部から圧力を加えるか、大気あるいは真空、または不活性ガス、水素含有ガス、及び上記化合物材料を構成する非金属元素を含有するガスからなる群から選択されたいずれか一つの存在下で熱処理する。このようにして、接合剤の化学反応、接合剤の組み込み及び/または母材(接合されるセラミックス)との固溶体形成による消耗によって、接合界面に第2相の存在なしに直接接合界面を形成する。接合された組立体の物性を向上させるために、前述したガスのうちのいずれか一つの存在下で2次熱処理を実施してもよい。
【0014】
接合剤薄膜は、フォイルを挿入するか、スラリー形態で塗布するか、または薄膜工程を利用して、接合しようとする表面上に形成することができる。接合剤は、熱処理中に母材中へ組み込まれるか、または固溶化できる一つ以上の金属元素を含有し、金属、金属有機物、金属化合物またはこれらの混合物または固溶体の形態であってよい。金属元素は、Li、Be、B、C、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Se、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、Cs、Ba、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Bi、Po、Fr、Ra、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ac、Th、Pa、U、Np、Pu、Am及びCmからなる群から選択される。
【0015】
一方、比較的高温で一軸プレシングすることが、最終形状及び寸法に既に加工されて扁平な表面を持つ金属部品を拡散接合でバット(butt)結合するために広く使われている。拡散接合は、部品の局部的な溶融や外部の結合物質の導入を必要とせず、単純に構造的な連続体を形成するように相互−拡散によって界面が形成されるように原子スケールで接合表面を接近させる必要がある。このような結合は、通常、2ステップを経て生じる。接触面積の最初の形成と、結合された界面の成長による後続の接合形成である。最初の接触は、外部から印加された圧力によって接触表面の粗度の瞬時の塑性変形またはクリープで達成される。結合されたネック領域の後続の成長及び孤立された気空の縮少に対する駆動力は、外部から印加された圧力の収容及び界面形成によるシステムの総表面エネルギーの減少である。
【0016】
しかし、セラミックスの塑性は一般的に悪くて最初の接触と接触表面の一致を得るための粗度の変形は不可能である。それだけでなく、セラミックスの耐熱性は、可能な設備で収容できないほどの高温の製造温度を招く。このような点において、塑性変形以外に粗度の変形を増加させることを可能にする新たな方法が要求される。本発明では、0.001〜500μm、場合により1〜10μmの厚さを有して母材中へ組み込まれることが可能な金属元素を有する薄い接合剤薄膜を、接合しようとする表面上に形成する。コーティングされた表面を有する片を当接させた状態において接合剤の溶融温度(部分溶融も含む)以上で熱処理すれば、薄膜は接合の初期ステップでは液相を形成する。本発明で使われた溶融された接合剤は、接合表面の粗度を変形させながら、外部から印加された圧力により促進された固溶及び再析出過程によって接合面を形成する。印加された圧力の助成および母材を濡らすことによって、液相、換言すれば、溶融された接合剤は母材を溶かして粗度を滑らかにして緊密な接触面を形成する。
【0017】
しかし、ここで説明したように、接合されたサンプルに接合剤の痕跡がないということは、セラミックス間の液状接合剤がセラミックスに変換されるか、熱処理中に部分的に蒸発するということを意味する。1500℃でAl(例えば、サファイアのための接合剤)の酸化反応のための平衡酸素分圧は約10−23atmである。一方、熱処理中の酸素分圧は、接合過程に使われたArガスの純度から4*10−5atmと評価される。したがって、液状Alは、熱処理中に液状に溶解された酸素ガスによって酸化されると見なされる。溶解状態で形成された酸化されたAl分子(Al)は、サファイア−溶解界面に移動してサファイア構造中へ組み込まれる。高解像度TEMイメージのうち接合界面で観察されたファセットは、接合過程の初期に一時的に存在するAlに富んだ液状の存在を示す強力な証拠である。このような過程は、Al溶解物が消費されるまで連続的に進む。結果的に、接合界面に第2相の存在なしに、セラミックス−セラミックス(サファイア−サファイア)の直接接合が達成される。
【発明の効果】
【0018】
したがって、本発明の実施例によれば、個々のセラミックス物質片は直接結合されて大面積の一体型構造を形成する。このような反応拡散−接合セラミックス構造は、個々の母材物質とほぼ同じ機械的、光学的、電気的及び電子的、電磁気的、熱的、化学的及び結晶学的特性を持って物質の構造的完全性を維持するので、実際的な分野の応用に適した特性を有する。本発明による反応接合方法は、従来の接合方法による短所及び問題点を克服するために利用でき、本発明によって接合されたセラミックス部品は、従来方法によって製造された部品と比べて優秀な熱的、機械的、化学的、電気的及び電子的、及び電磁気的特性といった多様な長所を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下では、添付された図面を参照しながら本発明をより詳細に説明する。しかし、本発明は、以下で開示される実施例に限定されるものではなく、相異なる多様な形態で具現化される。実施例は、単に本発明の開示を完全にし、当業者に発明の範囲を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は、特許請求の範囲によって定義される。
【0020】
特に、本発明の説明において結晶とは、純粋な結晶またはその固溶体または複合体のいずれかだけでなく、単結晶体及び多結晶体についても意味している。明細書の開示では、結晶の片と結晶の片とを接合する場合を中心に説明しているが、当業者ならば、結晶とその固溶体(または複合体)結晶あるいは固溶体(または複合体)結晶同士で接合するときにも本発明を利用することができる。また本発明は、非晶質材料と結晶質材料あるいは非晶質材料同士を接合するときにも利用することができる。
【実施例】
【0021】
図1は、本発明の実施例によるセラミックス接合方法のフローチャートである。
図1を参照すれば、工程10では、二つ以上の化合物材料(この物質は、化合物単結晶または多結晶、固溶体単結晶または多結晶、または非晶質材料であってよい)の片の一部または全面を研磨(ラッピングまたはポリシング)する。化合物材料の片のうち結晶は、製造された結晶またはその固溶体あるいは複合体結晶を所望の結晶学的方向で所望のサイズと形状に切断したものを使用できる。
【0022】
ステップ20では、接合しようとする片の表面の研磨(ラッピングまたはポリシング)された一つ以上の面上に接合剤薄膜を形成する。接合剤薄膜は金属、金属有機物、金属化合物または混合物や固溶体を含み、熱処理中にセラミックス物質及び/または雰囲気ガスとの化学的反応を通じてセラミックス物質及び固溶体を形成できるか、セラミックス物質中へ組み込まれうる金属元素を含有する。接合剤薄膜は、薄い薄膜(フォイル)の形態で作製して隣接する二つの物質片の間に挿入するか、金属、金属有機物、金属化合物またはこれらの混合物や固溶体を、nmサイズの微細な粉末を分散させたスラリー形態に調製して塗布するか、あるいはスピンコーティング法、ゾルゲル法、スパッタリング法、化学気相蒸着(Chemical Vapor Deposition:CVD)法、有機金属CVD(Metal Organic CVD:MOCVD)法、レーザーアブレーション法、パルスレーザー蒸着法、反応性真空蒸着法、メッキ(無電解メッキを含む)法からなる群から選択される方法を利用して、金属、金属有機物または金属化合物を結合しようとする表面上に蒸着法、メッキまたはコーティング法を施すことができる。
【0023】
熱処理時、化学反応によってセラミックス物質内へ変換されて組み込まれるか、化学的な反応を通じて固溶化される金属としては、Li、Be、B、C、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Se、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、Cs、Ba、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Bi、Po、Fr、Ra、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ac、Th、Pa、U、Np、Pu、Am、Cmなどが挙げられる。このような金属は、金属自体、これら金属の有機物、または化合物の形態で利用できる。そして、化合物は、金属元素のホウ化物、炭化物、窒化物、酸化物、フッ化物、シリサイド、リン化物、硫化物、塩化物、ゲルマニド、ヒ化物、セレン化物、臭化物、テルル化物、ヨウ化物または金属間化合物、そしてこれら間の固溶相化合物を含む。
【0024】
次いで、図1を参照すれば、工程30では、薄膜が形成された面と形成されていない面、または薄膜が形成された面同士を対向させて母材の片を所望の構造物形態で組立てた後、大気あるいは真空、または不活性ガス、水素含有ガス、及び化合物材料を構成する非金属元素を含有したガス中で高温熱処理する。この時、加圧するか、または加圧していない状態で熱処理することができる。熱処理は、薄膜の溶融温度(部分溶融も含む)ないし蒸発温度の間の温度で約1分ないし10時間にわたって実施する。印加される圧力は、0〜100MPaであり、0〜10MPaであってもよい。熱処理方法は、輻射加熱、誘導加熱、マイクロ波加熱、超音波加熱などを含む。セラミックス物質の研磨(ラッピングまたはポリシング)された面上に形成された接合剤薄膜は、熱処理中に界面での物質の移動を促進する一時的な中間層として機能し、母材及び/または雰囲気ガス中の非金属元素との化学的反応を通じてセラミックス物質中へ組み込まれるか、固溶体を形成する。最後に、界面から接合剤が消費されるまでこのような過程を進めて、均一な機械的、化学的、光学的、電気的及び電子的、及び電磁気的物性及び母材化合物とほぼ同じ熱膨張係数を有する一体化した接合セラミックス部品を得ることができる。したがって、機械及び構造的に完全性を有する大きい一体型のセラミックス物質構造物を形成することができる。その理由は、界面が強いセラミックス結合を有するためである。接合界面は、第2相なしに、換言すれば、第2相の材料量が測定限界以下で存在して直接接合界面を形成する。しかし、第2相が存在するとしても、非常に薄い接合剤薄膜を形成するために、その形態は均一な第2相の膜ではなく、析出あるいは偏析の形態である。
【0025】
接合過程中に接合剤の相変異を完成するために、適切なガス雰囲気の制御も重要であるが、接合剤薄膜の厚さ制御が最も重要である。母材間にある接合剤薄膜の相転移は、ガスの拡散及び化学反応を伴う過程であるため、接合剤薄膜の厚さが厚ければ厚いほど完全な相転移にはさらに長い時間がかかる。そして、界面に未反応の中間層接合剤が残留する場合がある。一方、厚さが薄すぎれば所望の接合強度を得ることが難しい。したがって、接合剤薄膜の厚さは適切に決定しなければならない。金属接合剤薄膜の厚さは0.001〜500μmであり、0.1〜10μmであってもよく、接合される面の粗度及び母材セラミックス物質と接合剤との間の反応特性の双方によって違う。
【0026】
一方、接合のための熱処理は、電場を印加しながら実施することができる。セラミックス物質は共有結合またはイオン結合によって化合物を形成しており、その大部分はイオン結合となっている。外部から電場を印加すれば、物質を構成している陽イオン及び陰イオンは、印加された電場によってそれぞれ逆方向に静電気的な力を受け、その結果、固体内でイオンが電場によって移動する現象が生じる。この現象を、材料の接合を促進させるために利用することができる。例えば、接合させようとする二つの材料を接触させた後に熱処理する時、それぞれの表面に電圧を印加すると、正電圧が印加された側から接合界面側に陽イオンが移動し、負電圧が印加された側から接合界面側に陰イオンが移動する。このような静電気力の作用の結果、接合界面への陽イオン及び陰イオンの供給が母材から行われ、これによって接合界面部位でこれらが再結合して分子を形成し、空いている隙間を埋め込むことによって、二つの片の接合が促進される。熱処理する間、電場を印加する場合には、接合させようとする材料の電気伝導度及び厚さなどを考慮しなければならない。0ないし5KVの電圧を印加でき、電圧は0ないし0.5KVであってもよい。
【0027】
接合剤薄膜が母材よりも溶融温度が高いか、または高温熱処理時に熱分解または相転移などを伴うために、本発明の実施例による接合工程を適用することが難しい場合、これらを母材よりも低い温度で溶融できる相にあらかじめ変更するか、またはこれらの熱分解あるいは相転移をあらかじめ起こすために、接合熱処理前に熱処理するステップをさらに実施してもよい。このような追加的な熱処理は、大気や真空、または不活性ガス、水素含有ガス、または還元誘導雰囲気下で、薄膜の溶融温度よりも低い温度で実施する。
【0028】
次いで、選択的な工程として、工程40では、接合界面の特性向上のために、母材物質の非金属元素を含有するガス中で、追加的な熱処理を実施することも可能である。例えば、MgOやサファイア接合の場合には、酸素雰囲気下で熱処理を実施できる。追加で実施する熱処理は、接合界面に残存する接合剤薄膜(金属または酸化物)の反応及び拡散などを誘導する。追加的な熱処理は、500〜2000℃で5分〜10時間にわたって実施する。
【0029】
本発明に関するさらに詳細な内容は、次の具体的な実験例を通じて説明するが、そこに記載されていない内容は、当業者ならば十分に技術的に類推できるものであるため、説明を省略する。また、次の実験例は本発明を制限するものではない。以下は、本発明によるサファイア単結晶の反応拡散接合(reaction diffusion−bonding)構造物の製造方法の実験例であり、それ以外にも多様な変形実施例が可能である。例えば、他の組成、そして他の結晶構造の単結晶または多結晶、そして非晶質材料の間についても接合させることができる。
【0030】
<実験例1>(サファイア接合−1)
サファイア(White Sapphire)を所望の結晶学的方位、大きさ及び形状に切断した後、その断面を6μmのダイアモンド研磨材から1μmのダイアモンド研磨材まで使用して順次研磨した。本実験では、サファイアを5mm厚さのディスク型に切断した。表面研磨されたサファイア上に、真空蒸着器を使用して、純粋なAl(99.99%)を2〜4μmの厚さで蒸着させた。
【0031】
蒸着された面同士を対向させた後、真空焼結炉または高温加圧焼結炉で熱処理した。熱処理は、Ar雰囲気、0〜30MPaの圧力下、1000〜1850℃で30分〜2時間にわたって実施した。昇温速度は、1500℃までは分当り10℃とし、1500℃以上では分当り5℃とした。この時、熱処理は、Ar雰囲気の代りに、真空状態下、水素、あるいは酸素が含まれたガスの存在下で実施してもよい。また必要に応じて、透光度を高めるために酸素を含有した雰囲気下で、2次熱処理を1000〜2000℃で30分〜10時間にわたって実施してもよい。
【0032】
図2Aは、接合剤としてAlを使用して接合させたサファイア結晶の写真である。この接合させたサファイア結晶は、図示するように、良質の均一な透光度及び優れた接合強度(約300MPa)を示す。
【0033】
図2Bは、図2Aのサファイア結晶接合界面を走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)で拡大して観察した写真である。図2Bに示すように、接合界面にはいかなる種類の第2相(すなわち、金属または酸化物相)も観察されていない。前述したように熱処理途中に接合剤の溶融、溶融された接合剤での母材の濡れ、溶解及び再析出過程によって接合された界面の粗度の平滑化、溶融された接合剤の酸化、及び酸化された分子の母材物質への組み込みといった一連の過程を通じて、蒸着されたAl薄膜がサファイア結晶に完全に変換された。その結果、図2Cに示すように、接合されたサファイア結晶(実線)は、同じ厚さのサファイア単結晶(点線)の透光度に準じる高い透光特性を示している。
【0034】
このような結果は、接合剤薄膜としてAlだけでなく、Al合金、Mg、Cr、Ti、Fe、V、Si、Ca、Co、Cu、Ag、Bi、Cd、Ce、Ga、Hf、K、La、Mn、Na、Nb、Nd、Ni、Pb、Sc、Sm、Sn、Sr、Ta、U、Y、Zn、Zr、Li及びこれらの合金を使用した場合にも得られる。
【0035】
<実験例2>(サファイア接合−2)
実験例2は、実験例1と同じ条件で実験した。但し、研磨面にAl薄膜を蒸着して接合する代わりに、厚さが約18μmであるAl薄膜を2枚の研磨面の間に挿入した。真空焼結炉または高温加圧焼結炉で熱処理した。熱処理は、Ar雰囲気、0〜30MPaの圧力下、600〜1850℃で30分〜2時間にわたって実施した。残りの過程は実験例1と同一であった。
【0036】
図3は、実験例2によってAl薄膜を使用して接合させたサファイア結晶の写真である。図3を参照すれば、接合されたサファイア結晶は、高い結合力及び均一な特性を有する。
【0037】
<実験例3>(Alセラミック接合)
アルミナ(Al)粉末(AKP−50、住友化学社製)を高温加圧焼結炉において1400℃で焼結することによって多結晶アルミナの片を準備し、接合しようという表面上に接合剤としてAlを蒸着させた。
【0038】
接合される表面を対向させた後、実験例1と同じ条件下で熱処理を行った。熱処理はAr雰囲気、0〜30MPaの圧力下、1000〜1850℃で30分〜2時間にわたって実施した。残りの過程は実験例1と同一であった。熱処理は、Ar以外にも、大気あるいは真空状態下、水素、あるいは酸素が含まれたガスの存在下で実施してもよい。
【0039】
図4Aは、実験例3によって接合させたAlセラミックスの写真である。図4Bは、図4Aの接合されたAlセラミックスの接合界面をSEMで拡大して観察した写真である。図示するように、接合されたAlセラミックス界面にはいかなる種類の第2相もなく、高い結合力及び均一な特性を有する。これは、前述したように、蒸着されたAlが、熱処理途中に生じる一連の過程を経由しながら、Al結晶に変換したためである。
【0040】
アルミナの接合のための接合剤は、Al、Mg、Cr、Ti、Fe、V、Si、Ca、Co、Cu、Ag、Bi、Cd、Ce、Ga、Hf、K、La、Mn、Na、Nb、Nd、Ni、Pb、Sc、Sm、Sn、Sr、Ta、U、Y、Zn、Zr、Li及びこれらの合金からなる群から選択できる。
【0041】
<実験例4>(単結晶MgOの接合)
2つの片のMgO単結晶を5mm厚さの長方形に切断し、その片の断面を6μmダイアモンド研磨材から1μmダイアモンド研磨材まで使用して順次研磨した。次いで、表面研磨されたMgO単結晶の表面に真空蒸着器を使用して、純粋なMg(99.99%)を2〜5μmの厚さで蒸着させた。
【0042】
一面にMg薄膜が蒸着されたMgO単結晶の片と、Mgが蒸着されていないMgO単結晶片とを対向させた後、真空焼結炉または高温加圧焼結炉で熱処理した。熱処理は、Ar雰囲気、0〜30MPaの圧力下、500〜1850℃で30分〜2時間にわたって実施した。残りの過程は実験例1と同一であった。
【0043】
2次熱処理を500〜2000℃で5分〜10時間にわたって実施したとき、透光度を高められることが分かった。高い透光性のMgO単結晶の反応接合面の形成にあたって熱処理条件は非常に重要な役割を果たす。その理由は、蒸着されたMg薄膜層の相変化及び拡散そして酸化及び組み込みまたは固溶化が、熱処理条件に非常に敏感に変化するためである。
【0044】
図5Aは、実験例4によってMg蒸着膜を使用して接合させたMgO単結晶の写真である。そして、図5Bは、図5AのMgO接合界面をSEMで拡大して観察した写真である。図示するように、Mg薄膜を蒸着した場合、界面にはいかなる種類の第2相もなく、高い結合力及び均一な特性を有するMgO単結晶が得られる。
【0045】
接合剤のための金属元素はMgだけでなく、Mg合金、Li、Be、Na、Al、K、Ca、Ti、Zn、Cs、Ba、B、Cu、Ga、Ge、Se、Rb、Sr、Ag、In、Sn、Sb、Te、La、Tl、Pb、Bi、Ce、Si、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Y、Yb、Sc、V、Er、Zr、Nb及びこれらの合金からなる群から選択される金属元素についても同じ結果が得られる。
【0046】
<実験例5>(多結晶ZnSの接合)
二つのディスク型のZnS多結晶の断面を研磨した後、表面研磨されたZnS多結晶の表面に真空蒸着器を使用して、純粋なZn(99.99%)を2〜5μmの厚さで蒸着させた。
【0047】
Znが蒸着された面同士が対向するように、二つのZnS多結晶片を接合させた状態で、真空焼結炉または高温加圧焼結炉を利用して熱処理した。熱処理は、Ar雰囲気、0〜10MPaの圧力下、500〜1000℃で30分〜2時間にわたって実施した。昇温速度は分当り10℃とした。
【0048】
図6は、実験例5によってZn蒸着膜を使用して接合させたZnS物質の写真である。図示するように、Znを蒸着した場合、界面にはいかなる種類の第2相もなく、高い結合力及び均一な特性を有する、接合されたZnS結晶が観察できる。前述したように熱処理途中に接合剤の溶融、溶融された接合剤での母材の濡れ、溶解及び再析出過程によって接合された界面の粗度の平滑化、溶融された接合剤の硫化、及び硫化された分子の母材物質への組み込みといった一連の過程を通じて、蒸着されたZn薄膜がZnSに完全に変換された。
【0049】
ZnSの接合には、Zn以外にもLi、Be、Na、Mg、Al、K、Ca、Ti、Cs、Ba、B、Cu、Ga、Ge、Se、Rb、Sr、Ag、In、Sn、Sb、Te、La、Tl、Pb、Bi、Ce、Si、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Y、Zr及びこれらの合金からなる群から選択される金属元素を使用することができる。
【0050】
<実験例6>(非晶質ソーダライムガラスの接合)
長方形のソーダライムガラス断面に真空蒸着器を使用して、純粋なAl(99.99%)を2〜5μmの厚さで蒸着させた。さらにAl薄膜のない長方形のソーダライムガラスの片も準備した。
【0051】
一面に蒸着膜が形成されたソーダライムガラス片と、蒸着膜のないソーダライムガラス片とを対向させた後、真空焼結炉または高温加圧焼結炉で熱処理した。熱処理は、Ar雰囲気、0〜10MPaの圧力下、400〜700℃で30分〜2時間にわたって実施した。必要に応じて、熱処理は、大気あるいは真空状態下、または不活性ガス、水素、あるいはソーダライムガラスを構成する非金属元素を含むガスの存在下で実施してもよい。透光特性の向上のために、2次熱処理を400〜700℃で5分〜10時間にわたって実施することができる。
【0052】
図7Aは、実験例6によってAl蒸着膜を使用して接合させたソーダライムガラス構造物の写真である。図7Bは、図7Aのソーダライムガラス構造物の接合界面をSEMで拡大して観察した写真である。図示するように、Alを蒸着した場合、接合されたソーダライムガラスの界面には、いかなる種類の第2相もなく、高い結合力及び均一な品質を有する。これは、前述したように蒸着されたAlが、熱処理途中に実験例1と類似した一連の過程を経由して、ソーダライムガラスに変換されたためである。
【0053】
ソーダライムガラスを接合するために、Alだけでなく、Li、Be、Na、Mg、K、Ca、Ti、Zn、Cs、Ba、B、Cu、Ga、Ge、Se、Rb、Sr、Ag、In、Sn、Sb、Te、La、Tl、Pb、Bi、Ce、Si、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Y、Zr、Nb及びこれらの合金からなる群から選択される金属元素を使用することができる。
【0054】
<実験例7>(AlNセラミックスの接合)
アルミニウムナイトライド(AlN)を接合するために、高温加圧焼結によって製造されたAlNセラミックスの片を2つ準備した。次いで、一つのAlN片の表面を研磨した後、表面研磨されたAlNの片の表面に、真空蒸着器を使用して、純粋なAl(99.99%)を2〜4μmの厚さで蒸着させた。
【0055】
Alが蒸着された面と蒸着されていない面とを対向させた後、真空焼結炉または高温加圧焼結炉で熱処理した。熱処理は、窒素雰囲気、0〜30MPaの圧力下、1000〜1850℃で30分〜2時間にわたって、0〜0.5KVの電圧を印加しながら実施した。昇温速度は、1500℃までは分当り10℃とし、1500℃以上では分当り5℃とした。この時、必要に応じて、熱処理の雰囲気は、真空、または不活性ガス、水素、あるいは酸素が含まれたガスとしてもよい。また必要に応じて、窒素を含有した雰囲気下で、2次熱処理を1000〜2000℃で30分〜10時間にわたって実施することができる。
【0056】
図8は、このような実験例によってAl蒸着膜を使用して接合させたAlNセラミックスのSEM写真であり、高い結合力が形成されたことを示しており、界面にはいかなる種類の第2相もない。これは、前述したように、熱処理途中に接合剤の溶融、溶融された接合剤での母材の濡れ、溶解及び再析出過程によって接合された界面の粗度の平滑化、溶融された接合剤の酸化、及び酸化された分子の母材物質への組み込みといった一連の過程を通じて、蒸着されたAl薄膜がAlNに完全に変換されたためである。
【0057】
AlNの接合のために、Al以外にも、Li、Be、Na、Mg、K、Ca、Ti、Zn、Cs、Ba、B、Cu、Ga、Ge、Se、Rb、Sr、Ag、In、Sn、Sb、Te、La、Tl、Pb、Bi、Ce、Si、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Y、Zr、Nb、Mo及びこれらの合金からなる群から選択される金属元素を使用することができる。
【0058】
<実験例8>(Siセラミックスの接合)
シリコンナイトライド(Si)を接合するために、高温加圧焼結によって製造されたSiセラミックスの片を2つ準備した。次いで、各Siの片の表面を研磨した後、表面研磨されたSiの片の表面に真空蒸着器を使用して、純粋なSi(99.99%)を2〜4μmの厚さで蒸着させた。残りの過程は、実験例7と同一であった。
【0059】
図9は、実験例8によってSi蒸着膜を使用して接合させたSiセラミックスの写真であり、高い結合力が形成されたことを示しており、Siセラミックスの界面にはいかなる種類の第2相もない。これは、前述したように、あらゆる蒸着されたSiが、Siに完全に変換されたことを意味している。
【0060】
多結晶Siを接合するために、Siだけでなく、Li、Be、Na、Mg、Al、K、Ca、Ti、Zn、Cs、Ba、B、Cu、Ga、Ge、Se、Rb、Sr、Ag、In、Sn、Sb、Te、La、Tl、Pb、Bi、Ce、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Y、Zr、Nb、Mo、Sc、V、Tc、Ru、Rh、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Tl、Po、Fr、Ra、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ac、Th、Pa、U、Np、Pu及びこれらの合金からなる群から選択される金属元素を使用することができる。
【0061】
<実験例9>(SiCセラミックスの接合)
シリコンカーバイド(SiC)を接合するために、高温加圧焼結によって製造されたSiCセラミックスの片を準備し、一つのSiC表面を研磨した後、その上にSiとCとを蒸着させた。二つの片を対向させて0〜30MPaの圧力を加えながら1600〜1800℃、メタン(CH)雰囲気下で2時間にわたって熱処理した。
【0062】
具体的には、多結晶SiCの片の表面を6μmダイアモンド研磨材から1μmダイアモンド研磨材まで使用して順次研磨した後、1つの表面研磨された多結晶SiC片の表面に真空蒸着器を使用して、純粋なSiを2〜4μmの厚さで蒸着させた。残りの過程は実験例7と同一であり、熱処理はメタン(CH)の存在下で実施した。
【0063】
図10は、実験例9によってSi蒸着膜を使用して接合させたSiCセラミックスのSEM写真であり、第2相がなく、高い結合力(約400MPa)を示している。これは、蒸着されたSiが、熱処理途中に前述したものと類似した一連の過程を経て、いずれもSiCに変換されたためである。
【0064】
SiCを接合するために、Si多結晶の場合と同様に、Siだけでなく、C、Li、Be、Na、Mg、Al、K、Ca、Ti、Zn、Cs、Ba、B、Cu、Ga、Ge、Se、Rb、Sr、Ag、In、Sn、Sb、Te、La、Tl、Pb、Bi、Ce、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Y、Zr、Nb、Mo、Sc、V、Tc、Ru、Rh、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Tl、Po、Fr、Ra、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ac、Th、Pa、U、Np、Pu及びこれらの合金からなる群から選択される金属元素を使用することができる。
【0065】
<実験例10>(非晶質石英ガラスの接合)
石英ガラスの接合のために、長方形の石英ガラスの片を2つ準備した。真空蒸着器を使用して純粋なSiを2〜5μmの厚さで蒸着させた。
【0066】
Siが蒸着された面とSiが蒸着されていない面とを対向させ、真空焼結炉または高温加圧焼結炉で熱処理して片を製造した。熱処理は、酸素雰囲気、0〜10MPaの圧力下、800〜1500℃で30分〜2時間にわたって、0〜0.5KVの電圧を印加しながら実施した。この時、必要に応じて、熱処理は、大気あるいは真空状態下、または不活性ガス、水素が含有されたガスの存在下で実施してもよい。また、必要に応じて、特性の向上のために、石英ガラスを構成する非金属元素を含むガス雰囲気中で、2次熱処理を500〜1500℃で5分〜10時間にわたって実施することができる。
【0067】
図11は、実験例10によってSi蒸着膜を使用して接合させた石英ガラスのSEM写真であり、接合界面には第2相がないことが分かる。これは、蒸着されたSiが、熱処理途中に前述した一連の過程を経て、いずれも石英ガラスに変換されたためである。
【0068】
石英ガラスを接合するために、ソーダライムガラスの場合と同様に、Si以外にも、Li、Be、Na、Mg、Al、K、Ca、Ti、Zn、Cs、Ba、B、Cu、Ga、Ge、Se、Rb、Sr、Ag、In、Sn、Sb、Te、La、Tl、Pb、Bi、Ce、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Y、Zr、Nb及びこれらの合金からなる群から選択される金属元素を使用することができる。
【0069】
本発明の実施例による化合物材料の接合方法は、既存のセラミックス物質の接合における問題点である低い接合強度、透光度、化学的及び熱的安定性の低下といった物性の低下(これは、いずれも母材(化合物材料)及び第2相(中間層上)の特性差に起因する)を解決することができる。したがって、反応拡散接合技術によって、従来技術では製造できなかった一体化したセラミックス部品を大量かつ容易に、そして低コストで製造することができる。
【0070】
以上、本発明を望ましい実施例を例に挙げて詳細に説明したが、本発明は、前述の実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当業者によって様々な多くの変形が可能であるということは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上説明したように、本発明の実施例によるセラミックス物質の接合方法は、従来の接合方法の短所なしに、大面積の複雑な形状の一体化したセラミックス部品の製造方法を提供する。換言すれば、反応拡散接合方法は、従来方法により接合されたセラミックス部品での低い接合強度、特に高温での熱的、化学的、光学的、電気及び電子的特性の低下の問題を解決することができる。本発明によれば、セラミックス結晶、その複合体あるいは固溶体結晶、または非晶質材料の接合構造物を低コストで量産することができる。
【0072】
それだけでなく、本発明の実施例によるセラミックス物質の接合方法は、セラミックス物質の接合が要求される多様な応用分野に適用できる。特に、この方法は、セラミックス静電チャック、ヒーター及びジグのように、部品の純度及び化学的安定性が極めて重要な、半導体製造のためのセラミックス部品を製造する際に有効である。大面積のインゴットが現在使用できない大面積ウェーハの製造は、本発明が適用可能な他の例の一つである。大面積インゴットは、ウェーハ用に使用できる小面積のインゴットを接合することによって製造することができる。それだけでなく、本発明によって、小さな天然産の結晶片を接合して非常に大きい宝石類の結晶を作製することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施例によるセラミックス物質の接合方法のフローチャートである。
【図2A】本発明の実施例に従ってAl接合剤を使用して接合させたサファイア結晶の写真である。
【図2B】図2Aの反応拡散−接合されたサファイア結晶の接合界面のSEM写真である。
【図2C】図2Aの接合されたサファイア結晶の接合界面の透光度を測定したグラフである。
【図3】本発明の実施例に従ってAlフォイル接合剤を使用して接合させたサファイア結晶の写真である。
【図4A】本発明の実施例に従ってAl接合剤を使用して接合させたアルミナセラミックスの写真である。
【図4B】図4Aの接合されたアルミナセラミックスの接合界面のSEM写真である。
【図5A】本発明の実施例に従ってMg接合剤を使用して接合させたMgO単結晶の写真である。
【図5B】図5Aの接合されたMgO単結晶の接合界面のSEM写真である。
【図6】本発明の実施例に従ってZn接合剤を使用して接合させたZnS多結晶の写真である。
【図7A】本発明の実施例に従ってAl接合剤を使用して接合させたソーダ−ライムガラスの写真である。
【図7B】図7Aの接合されたソーダ−ライムガラスの接合界面のSEM写真である。
【図8】本発明の実施例に従ってAl接合剤を使用して接合させたAlNセラミックスの接合界面のSEM写真である。
【図9】本発明の実施例に従ってSi接合剤を使用して接合させたSiセラミックスの接合界面のSEM写真である。
【図10】本発明の実施例に従ってSi接合剤を使用して接合させたSiCセラミックスの接合界面のSEM写真である。
【図11】本発明の実施例に従ってSi接合剤を使用して接合させた石英ガラスの接合界面のSEM写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つ以上の化合物材料片が接合される表面の全体または一部を研磨、ラッピング、またはポリシングし、
一つ以上の前記研磨、ラッピングまたはポリシングされた表面上に、前記化合物材料内へ組み込まれるか、前記化合物材料と固溶されて前記化合物材料に変換できる接合剤薄膜を挿入、塗布、蒸着、メッキ及びコーティングのうちいずれか一つによって形成し、
前記接合剤薄膜が形成された面を介して前記化合物材料の片を当接させた状態で熱処理することによって、接合界面に第2相の存在なしに直接接合界面を形成し、
前記接合剤薄膜は、金属、金属有機物及び金属化合物からなる群から選択された物質からなる、セラミックスを含む化合物材料の接合方法。
【請求項2】
前記熱処理ステップ中に、前記接合剤薄膜が、母材及び/または周囲雰囲気ガスとの化学反応により前記化合物材料内へ組み込まれることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記直接接合界面を形成した後、大気あるいは真空、または不活性ガス、水素含有ガス、及び前記化合物材料を構成する非金属元素を含有するガスからなる群から選択されたいずれか一つの存在下で、2次熱処理するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記2次熱処理が、常温と前記化合物材料の溶融温度との間で1分〜10時間にわたって実施されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記接合剤薄膜を形成した後、大気あるいは真空、または不活性ガス、水素含有ガス、及び前記化合物材料を構成する非金属元素を含有するガスからなる群から選択されるいずれか一つの存在下で、前記接合剤薄膜の溶融温度以下で熱処理するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記直接接合界面を形成するための熱処理中に、接合される前記化合物材料の片に電場を印加することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記直接接合界面を形成するための熱処理中に、接合される前記化合物材料の片に圧力を加えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記直接接合界面を形成するための熱処理が、0〜100MPaの範囲内の圧力下で実施されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記直接接合界面を形成するための熱処理が、大気あるいは真空、または不活性ガス、水素含有ガス、及び前記化合物材料を構成する非金属元素を含有するガスからなる群から選択されるいずれか一つの存在下で実施されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記直接接合界面を形成するための熱処理は、前記接合剤薄膜の溶融温度と蒸発温度との間の温度で約1分ないし10時間にわたって実施され、ここで溶融温度は、部分溶融温度を意味してもよいことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記接合剤薄膜の厚さは、約0.001〜500μm程度に形成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記直接接合界面を形成するための熱処理が、
前記接合剤薄膜の溶融温度(部分溶融温度も含む)よりも高い高温で加熱し、前記化合物材料の片間の界面上に薄い液状膜を形成して、前記化合物材料の片の界面間の物質移動を容易にし、
前記接合剤薄膜を、母材及び/または熱処理雰囲気ガスから供給される前記母材を構成する非金属元素と化学的に反応させて前記化合物材料中へ組み込むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
(a)二つ以上の単結晶または単結晶固溶体の片が接合される表面の全体または一部を研磨、ラッピングまたはポリシングし、
(b)一つ以上の前記研磨、ラッピングまたはポリシングされた表面上に、熱処理時に前記単結晶内へ固溶できる金属元素を含有し、0.001〜500μm程度の厚さを有する接合剤薄膜を挿入、塗布、蒸着、メッキ及びコーティングのうちいずれか一つによって形成し、
(c)前記接合剤薄膜が形成された面を介して前記単結晶の片を当接させ、
(d)大気あるいは真空、または不活性ガス、水素含有ガス、及び前記単結晶を構成する非金属元素を含有するガスからなる群から選択されるいずれか一つの存在下で、前記接合剤薄膜の溶融温度(部分溶融温度も含む)と蒸発温度との間の温度で約1分ないし10時間にわたって熱処理することによって、接合界面に第2相の存在なしに直接接合界面を形成する、化合物単結晶材料の接合方法。

【図1】
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【図3】
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【図6】
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【図2B】
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【図2C】
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【図4B】
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【図5B】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2006−527162(P2006−527162A)
【公表日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516909(P2006−516909)
【出願日】平成16年5月28日(2004.5.28)
【国際出願番号】PCT/KR2004/001265
【国際公開番号】WO2004/110958
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(505458393)
【Fターム(参考)】