説明

デバイスの製造方法、表示装置の製造方法、表示装置および電子機器

【課題】簡易な工程で製造歩留まりを向上させることが可能なデバイスの製造方法および表示装置の製造方法等を提供する。
【解決手段】基板11上にデバイス(TFT層12)を形成する工程は、薄膜を形成する工程(工程S11)と、薄膜上にフォトレジスト膜を形成する工程(工程S12)と、露光マスクM1を用いてフォトレジスト膜に対して露光を行う露光工程(工程S13)と、露光がなされたフォトレジスト膜をエッチングする工程(工程S15)とを含んでいる。露光工程では、フォトレジスト膜に対する露光を複数回連続して行う(工程S131,S132)。これにより、製造工程の増加を抑えつつ、異物の混入等に起因した薄膜パターンにおけるエッチング不良を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)等のデバイスの製造方法および表示装置の製造方法、ならびにそのようなデバイスを備えた表示装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置に用いられるアレイ基板では、ガラス基板等からなる基板上に、スイッチング素子としてのTFT、容量素子、配線(走査線,信号線など)および電極(画素電極など)等の各種のデバイス(素子)が形成されている。
【0003】
これらのデバイスは、一般に、一連のフォトリソグラフィ工程、すなわち、成膜、フォトレジスト塗布、露光、現像、エッチングおよびフォトレジスト剥離からなる工程を複数回にわたって行うことにより形成される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−119030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このようなフォトリソグラフィ工程において、フォトレジスト膜を露光する前に、例えばフォトレジスト膜上あるいはフォトマスク(露光マスク)上に異物(パーティクル)が存在すると、エッチングの際に所望のパターンを形成することができなくなる。このため、エッチング不良が発生し、配線上の断線、あるいは短絡(ショート)を引き起こす原因となる。その結果、場合によっては、点状欠陥または線状欠陥となり、製造歩留まりが低下してしまうことになる。
【0006】
そこで、上記特許文献1では、上記した一連のフォトリソグラフィ工程を2回行う(2回のパターニングによって2回エッチングを行う)手法が提案されている。この手法により、上記した異物の混入等に起因したエッチング不良(短絡不良等)の発生を低減することが可能となっている。
【0007】
ところが、この手法では一連のフォトリソグラフィ工程を2回行っていることから、製造工程が増加し、タクトタイムおよび製造コストが増加してしまうという問題があった。これらのことから、簡易な工程で製造歩留まりを向上させることが可能な製造方法、および製造不良を低減することが可能な表示装置等の実現が望まれる。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、簡易な工程で製造歩留まりを向上させることが可能なデバイスの製造方法および表示装置の製造方法を提供することである。
【0009】
また、本発明の第2の目的は、製造不良を低減することが可能な表示装置および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のデバイスの製造方法は、基板上にデバイスを形成する工程を含み、このデバイスを形成する工程が、薄膜を形成する工程と、この薄膜上にフォトレジスト膜を形成する工程と、露光マスクを用いてフォトレジスト膜に対して露光を行う露光工程と、露光がなされたフォトレジスト膜をエッチングする工程とを含むようにしたものである。上記露光工程では、フォトレジスト膜に対する露光を複数回連続して行う。
【0011】
本発明の表示装置の製造方法は、基板上に、デバイスおよび表示層を形成する工程を含み、このデバイスを形成する工程が、上記薄膜を形成する工程と、上記フォトレジスト膜を形成する工程と、上記露光工程と、上記フォトレジスト膜をエッチングする工程とを含むようにしたものである。
【0012】
本発明のデバイスの製造方法および表示装置の製造方法では、基板上にデバイスを形成する際に、薄膜上のフォトレジスト膜に対して複数回の露光がなされたのち、フォトレジスト膜に対するエッチングが行われる。これにより、フォトレジスト膜に対する露光量が増加する(フォトレジスト膜における感光量が増加する)ため、例えば異物の混入等に起因した薄膜パターンにおけるエッチング不良(例えば、導電パターン間の短絡不良等)の発生が低減される。また、このような複数回の露光が連続して行われることにより、例えば一連のフォトリソグラフィ工程全体(フォトレジスト膜の形成、露光、エッチングおよびフォトレジスト膜の剥離等)を複数回連続して行う場合と比べ、製造工程が少なくて済む(製造工程の増加が抑えられる)。
【0013】
本発明の表示装置は、基板上に、薄膜を含む複数のデバイスと表示層とを備え、複数のデバイスのうちの互いに離隔して隣接する一対のデバイス同士において、少なくとも一方の側の薄膜に、他方側への張り出し部が設けられているものである。
【0014】
本発明の電子機器は、上記本発明の表示装置を備えたものである。
【0015】
本発明の表示装置および電子機器では、複数のデバイスのうちの互いに離隔して隣接する一対のデバイス同士において、少なくとも一方の側の薄膜に、他方側への張り出し部が設けられている。これにより、例えばデバイスを製造する際に異物等が混入したとしても、上記一対のデバイスにおける薄膜パターンにおけるエッチング不良(例えば、導電パターン間の短絡不良等)の発生が回避されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明のデバイスの製造方法および表示装置の製造方法によれば、基板上にデバイスを形成する際に、薄膜上のフォトレジスト膜に対する露光を複数回連続して行うようにしたので、製造工程の増加を抑えつつ、異物の混入等に起因した薄膜パターンにおけるエッチング不良を低減することができる。よって、簡易な工程で製造歩留まりを向上させることが可能となる。
【0017】
本発明の表示装置および電子機器によれば、複数のデバイスのうちの互いに離隔して隣接する一対のデバイス同士において、少なくとも一方の側の薄膜に他方側への張り出し部を設けるようにしたので、一対のデバイスにおける薄膜パターンでのエッチング不良の発生を回避することができる。よって、製造不良を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る表示装置の構成例を表す図である。
【図2】第1の実施の形態に係るTFT層の製造方法における主要な工程例を表す流れ図である。
【図3】図2に示した第1および第2の露光工程において用いられる露光マスクの一例を表す平面図である。
【図4】図2に示した製造方法により得られるTFT層の構成例を表す平面図である。
【図5】比較例1に係るTFT層の製造方法における主要な工程を表す流れ図である。
【図6】比較例1に係るTFT層において発生し得る異物の混入に起因した製造不良について説明するための模式平面図である。
【図7】比較例2に係るTFT層の製造方法における主要な工程を表す流れ図である。
【図8】異物が混入した場合に製造されるTFT層の構成例を表す模式平面図である。
【図9】第2の実施の形態に係るTFT層の製造方法における主要な工程例を表す流れ図である。
【図10】図9に示した第2の露光工程において用いられる露光マスクの一例を表す平面図である。
【図11】図9に示した製造方法により得られるTFT層の構成例を表す平面図である。
【図12】図2に示した製造方法により得られるTFT層の他の構成例を表す平面図である。
【図13】実施の形態の表示装置の適用例1の外観を表す斜視図である。
【図14】適用例2の外観を表す斜視図である。
【図15】(A)は適用例3の表側から見た外観を表す斜視図であり、(B)は裏側から見た外観を表す斜視図である。
【図16】適用例4の外観を表す斜視図である。
【図17】適用例5の外観を表す斜視図である。
【図18】(A)は適用例6の開いた状態の正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態の正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。

1.第1の実施の形態(第1,第2の露光工程において共通の露光マスクを用いる例)
2.第2の実施の形態(第1,第2の露光工程において異なる露光マスクを用いる例)
3.適用例(表示装置の電子機器への適用例)
4.変形例
【0020】
<第1の実施の形態>
[表示装置1の構成]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る表示装置(表示装置1)の概略構成を模式的に表したものであり、図1(B)は平面構成(上面構成)を、図1(A)は、図1(B)におけるII−II線に沿った矢視断面構成を、それぞれ示している。この表示装置1は、基板11、TFT層12、表示層13および透明基板14をこの順に積層したものである。具体的には、基板11における表示領域10A上には、TFT層12、表示層13および透明基板14が積層される一方、基板11における額縁領域(非表示領域)10B上には、これらのTFT層12、表示層13および透明基板14は積層されていない。
【0021】
基板11は、例えば、ガラス,石英,シリコン,ガリウム砒素等の無機材料あるいは、ポリイミド,ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリエチレンナフタレート(PEN),ポリメチルメタクリレート(PMMA),ポリカーボネート(PC),ポリエーテルスルホン(PES),ポリエチルエーテルケトン(PEEK),芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)等のプラスチック材料等からなる。この基板11は、ウェハなどの剛性の基板であってもよく、薄層ガラスやフィルムなどの可撓性基板(フレキシブル基板)であってもよい。
【0022】
TFT層12は、薄膜(金属膜等の導電膜や、絶縁膜など)を含む複数のデバイスを含む層である。このデバイスしては、画素を選択するためのスイッチング素子としてのTFTの他、容量素子(保持容量素子など)、配線(走査線,信号線など)および電極(画素電極など)等が挙げられる。すなわち、TFT層12に含まれるデバイスは、TFT、容量素子、配線および電極のうちの少なくとも1つである。ここで、上記したTFTは、チャネル層として無機半導体層を用いた無機TFTあるいは、有機半導体層を用いた有機TFTのどちらにより構成されていてもよい。
【0023】
表示層13は、例えば画素電極と共通電極との間に電気泳動粒子を有するものである。すなわち、表示装置1は、電気泳動現象を利用して画像(例えば文字情報等)を表示する電気泳動型ディスプレイ(いわゆる電子ペーパーディスプレイ)である。画素電極はTFT層12に画素ごとに設けられ、共通電極は透明基板14の一面に亘り設けられている。
【0024】
透明基板14は、例えば、基板10と同様の材料を用いて構成されている。なお、この透明基板14上に、更に表示層13への水分の浸入を防止する防湿膜および外光の表示面への映り込みを防止するための光学機能膜を設けるようにしてもよい。
【0025】
なお、水分や有機ガスによるTFT層12および表示層13の劣化を防止するため、基板11とTFT層12との間にバリア層を設けてもよい。このようなバリア層は、例えばAlOx1-X(ただし、X=0.01〜0.2)または窒化シリコン(Si34)からなる。
【0026】
[表示装置1の製造方法]
この表示装置1は、例えば次のようにして製造することができる。すなわち、まず、基板11上(具体的には、基板11の表示領域10A上)に、以下詳述するフォトリソグラフィ技術を用いて、前述した各種のデバイスを含むTFT層12を形成する。
【0027】
次いで、TFT層12上に、例えば同様にフォトリソグラフィ技術を用いて、表示層13を形成する。そののち、この表示層13上に透明基板14を貼り合わせる。以上により、図1(A),(B)に示した表示装置1が完成する。
【0028】
(TFT層12の製造方法)
ここで、図2は、本実施の形態のTFT層12の製造方法(デバイスの形成工程)における主要な工程例を、流れ図で表わしたものである。
【0029】
このTFT層12を製造(形成)する際には、まず、基板11上に、例えばスパッタ法やCVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)法を用いて、薄膜(ここでは一例として、導電膜としての金属膜)を成膜する(工程S11)。次いで、この金属膜上に、フォトレジスト膜を形成(塗布)する(工程S12)。
【0030】
続いて、所定の露光パターン(遮光パターン)を有する露光マスク(フォトマスク)を用いて、フォトレジスト膜に対して露光を行う(露光工程S13)。この露光工程S13では、フォトレジスト膜に対する露光を複数回(ここでは2回)連続して行う。具体的には、本実施の形態では、露光工程S13が、例えば図3に示した露光マスクM1を用いて露光を行う第1の露光工程S131と、同じく露光マスクM1を用いて露光を行う第2の露光工程S132とからなる。すなわち、本実施の形態では、露光工程S13における複数回の露光(第1,第2の露光工程S131,132)の各々において、共通の露光マスクM1を用いている。
【0031】
ここで、この露光マスクM1は、例えば図3に示したように、露光の際の光を遮断させる領域(遮光領域)である遮光部81と、露光の際の光を透過させる領域(透光領域)である透光部82とを有している。具体的には、ここでは露光マスクM1は、後述するゲート電極121、画素電極122および一対の配線123a,123bの各形成パターンに対応する遮光部81(遮光パターン)を含んでおり、他の領域は透光部82となっている。なお、ここでは、後述する配線123a,123b間の距離が、距離d11となっており、後述するゲート電極121と画素電極122との間の距離が、距離d12となっている。これらの距離d11,d12は、隣接する遮光部81間に位置する透光部82の距離に相当するものである。
【0032】
次いで、上記のようにして露光がなされたフォトレジスト膜を現像し(工程S14)、その後、エッチング(ウェットエッチングやドライエッチング等)を行う(工程S15)。そして、エッチング後に金属膜上に残存するフォトレジスト膜を剥離する(工程S16)。以上により、例えば図4に示したような、ゲート電極121、画素電極122および配線123a,123b等のデバイスを含むTFT層12が形成される。
【0033】
[表示装置1の作用・効果]
次に、本実施の形態の表示装置1の作用および効果について、比較例(比較例1,2)と比較しつつ詳細に説明する。
【0034】
(比較例1)
まず、図5に示した比較例1に係るTFT層(TFT層102)の製造方法では、図2に示した本実施の形態のTFT層12の製造方法において、露光工程S13の代わりに露光工程S103が設けられている。この露光工程S103では、フォトレジスト膜に対して複数回の連続した露光がなされる露光工程S13とは異なり、露光マスクM1を用いて、フォトレジスト膜に対する露光が1回のみ行われる。
【0035】
このため、例えば図6に模式的に示したように、露光工程S103の際に異物(パーティクル)101が混入している場合には、TFT層102において以下のようなエッチング不良が発生し、製造歩留まりが低下してしまう場合がある。具体的には、フォトリソグラフィ工程においてフォトレジスト膜を露光する前に、例えばフォトレジスト膜上あるいは露光マスクM1上(ここではフォトレジスト膜上)に異物101が存在すると、エッチングの際に所望のパターンを形成することができなくなる。これは、異物101の存在によって、フォトレジスト膜が所望の膜厚よりも大きくなってしまうことから、感光不足が生じて現像液に溶解せず、パターン不良となってしまうというものである。このようなパターン不良(エッチング不良)が発生すると、配線上の断線、あるいは短絡(ショート)を引き起こす原因となる。その結果、場合によっては、点状欠陥または線状欠陥となり、製造歩留まりが低下してしまうのである。
【0036】
(比較例2)
一方、図7に示した比較例2に係るTFT層(TFT層202)の製造方法(形成工程)では、上記した一連のフォトリソグラフィ工程が2回行われる(2回のパターニングによって2回エッチングが行われる)ようになっている。具体的には、このTFT層202の形成工程は、金属膜の成膜工程(工程S11)と、1回目のフォトレジスト工程(工程S201)と、2回目のフォトレジスト工程(工程S202)とからなる。工程S201は、フォトレジスト膜の塗布工程(工程S121)と、露光マスクM1を用いた第1の露光工程S131と、現像工程(工程S141)と、エッチング工程(工程S151)と、レジスト膜の剥離工程(工程S161)とからなる。同様に、工程S202は、フォトレジスト膜の塗布工程(工程S122)と、露光マスクM1を用いた第2の露光工程S132と、現像工程(工程S142)と、エッチング工程(工程S152)と、レジスト膜の剥離工程(工程S162)とからなる。
【0037】
この比較例2の手法では、一連のフォトリソグラフィ工程が2回行われることから、パターニング不良の発生する可能性が低減し、パターニング不良に起因するエッチング不良が低減される。
【0038】
しかしながら、この比較例2の手法では、上記したように一連のフォトリソグラフィ工程が2回行われることから、製造工程が増加し、タクトタイムおよび製造コストが増加してしまう。また、2回のパターニングおよび2回のエッチングによる方法では、異物101が取り除かれない限りは、また同じような感光不足が再度発生するおそれが高い。このため、エッチング不良が解消されない可能性もあると共に、場合によっては断線等による更なるエッチング不良が発生するおそれもある。
【0039】
(本実施の形態の製造方法)
これに対して本実施の形態では、図2に示したように、基板11上にTFT層12(デバイス)を形成する際に、薄膜(ここでは金属膜)上のフォトレジスト膜に対して複数回(ここでは2回)の露光がなされたのち、フォトレジスト膜に対するエッチングが行われる。
【0040】
これにより、露光が複数回行われる(第1,第2の露光工程S131,S132)ことから、まず、フォトレジスト膜に対する露光量が比較例1と比べて増加する。すなわち、感光不足によるエッチング不良部を十分に感光させることができる。このため、例えば図8に示したように、TFT層12において、異物101の混入等に起因した、薄膜パターンにおけるエッチング不良(ここでは、金属パターン間の短絡不良等)の発生が低減される。
【0041】
また、本実施の形態では、このような複数回の露光(第1,第2の露光工程S131,S132)が連続して行われることにより、比較例2と比べて以下の利点が得られる。すなわち、一連のフォトリソグラフィ工程全体が複数回連続して行われる比較例2と比べ、製造工程が少なくて済む(比較例1と比べた製造工程の増加が最小限に抑えられる)。
【0042】
以上のように本実施の形態では、基板11上にTFT層12(デバイス)を形成する際に、薄膜(金属膜)上のフォトレジスト膜に対する露光を複数回連続して行うようにしたので、製造工程の増加を抑えつつ、異物101の混入等に起因した薄膜パターンにおけるエッチング不良を低減することができる。すなわち、例えば表示層13において高密度に画素を配置し、各配線間や各電極間、配線−電極間などのマージン(距離)が狭くなった場合であっても、これらの間の短絡不良等の発生を抑えることができる。よって、簡易な工程で製造歩留まりを向上させることが可能となる。
【0043】
また、基板11が可撓性基板である場合には、製造工程において異物が混入し易い環境にあることが多いため、特に本実施の形態の手法を採用した際の利点が大きいと言える。
【0044】
<第2の実施の形態>
続いて、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、上記第1の実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0045】
[表示装置1の製造方法]
図9は、本実施の形態のTFT層(TFT層12A)の製造方法(形成工程)における主要な工程例を流れ図で表わしたものである。なお、他の層(表示層13および透明基板14)の製造方法(形成工程)については第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0046】
(TFT層12Aの製造方法)
このTFT層12Aを製造(形成)する際には、前述した露光工程S13において、露光マスクM1(第1の露光マスク)に加え、以下説明する露光マスクM2(第2の露光マスク)を用いるようになっている。具体的には、第1の露光工程(工程S131)では、第1の実施の形態で説明した露光マスクM1を用いる一方、第2の露光工程(工程S132)では、露光マスクM2を用いる。ここで、露光マスクM1は、エッチング後に本来の所望の薄膜パターン(ここでは金属パターン)を得るための露光マスクである。一方、露光マスクM2は、薄膜パターンにおけるエッチング不良(短絡不良等)の発生を低減させるための専用の露光マスク(トレンチマスク)である。このように、本実施の形態の露光工程S13では、1回目の露光である第1の露光工程S131と、2回目以降(ここでは2回目)の露光である第2の露光工程S132とで、互いに異なるマスクパターン(遮光パターン)を有する露光マスクを用いる。
【0047】
このような露光マスクM2では、例えば図10(A)に示したように、露光マスクM1と比べ、隣接する遮光部81間に位置する透光部82の距離が相対的に短くなっている。すなわち、この例では、露光マスクM2における配線123a,123b間の距離d21が、露光マスクM1における距離d11よりも短く(狭く)となっている(d21<d11)。また、露光マスクM2におけるゲート電極121と画素電極122との間の距離d22が、露光マスクM1における距離d12よりも短くなっている(d22<d12)。
【0048】
あるいは、例えば図10(B)に示したように、露光マスクM2では、露光マスクM1における透光部82のうちの一部の領域のみが透光部82となっていると共に、その他の領域が遮光部81となっている。具体的には、この例では、薄膜パターンにおけるエッチング不良(短絡不良等)が発生するおそれが高いと予想される領域、すなわち、露光マスクM1における隣接する遮光部81間(ここではゲート電極121と画素電極122との間の領域)に、露光マスクM2における透光部82が選択的に設けられている。なお、この場合においても、露光マスクM2におけるゲート電極121と画素電極122との間の距離d32は、露光マスクM1における距離d12よりも短くなっている(d32<d12)。
【0049】
このような露光マスクM1,M2を用いた本実施の形態のTFT層12Aの製造方法(形成工程)では、例えば図11に示したように、一対の薄膜パターン同士において張り出し部(突出部)124a,124bが形成されることになる。換言すると、本実施の形態のTFT層12Aでは、複数のデバイスのうちの互いに離隔して隣接する一対のデバイス同士(ここでは、ゲート電極121および画素電極122同士)において、少なくとも一方の側の薄膜に、他方側への張り出し部が設けられている。具体的には、この例では、ゲート電極121および画素電極122同士において、双方側の薄膜にそれぞれ、張り出し部(張り出し部124a,124b)が設けられている。このような張り出し部124a,124b間の間隙(スリット)は、露光マスクM2を用いた第2の露光工程S132の際の露光に起因して形成されるものである。このようなTFT層12Aでは、例えばデバイスを製造する際に異物101等が混入したとしても、上記一対のデバイスにおける薄膜パターンにおけるエッチング不良(例えば、導電パターン間の短絡不良等)の発生が回避されている。よって、製造不良を低減することが可能となっている。
【0050】
以上のように本実施の形態では、第1の露光工程S131と第2の露光工程S132とで、互いに異なるマスクパターンを有する露光マスクM1,M2を用いるようにしたので、上記第1の実施の形態における効果に加え、以下の効果も得ることが可能である。
【0051】
すなわち、第1の実施の形態のように、第1,第2の露光工程S131,132の各々において共通の露光マスクM1を用いた場合、例えば第1の露光工程S131と比べて第2の露光工程S132における露光強度を相対的に大きくした際などには、場合によっては以下のことが懸念される。すなわち、例えば図12に示したように、第2の露光工程S132の際に、第1の露光工程S132によって形成されるべき本来の薄膜パターンに悪影響を及ぼす(本来の薄膜パターンを浸食する)おそれがある。具体的には、この例では、配線123a,123b間の距離d41が、本来の薄膜パターンにおける距離d11よりも長く(広く)となっている(d41>d11)。また、ゲート電極121と画素電極122との間の距離d42が、本来の露光パターンにおける距離d12よりも長くなっている(d42>d12)。これに対して本実施の形態では、露光マスクM2が、薄膜パターンにおけるエッチング不良(短絡不良等)の発生を低減させるための専用の露光マスクとなっているため、第2の露光工程S132の際に、本来の薄膜パターンに悪影響を及ぼすおそれがない。
【0052】
このことから、本実施の形態では、第2の露光工程S132において、第1の露光工程S131と比べて露光強度を相対的に大きくした場合には、上記した本来の薄膜パターンへの悪影響を回避しつつ、感光不足によるエッチング不良部をよりいっそう感光させることができる。よって、異物101の混入等に起因した薄膜パターンにおけるエッチング不良を更に低減することができ、製造歩留まりを更に向上させることが可能となる。
【0053】
<適用例>
続いて、図13〜図18を参照して、上記第1および第2の実施の形態で説明した表示装置1の適用例について説明する。各実施の形態の表示装置1は、テレビジョン装置,デジタルカメラ,ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置あるいはビデオカメラなどのあらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。言い換えると、この表示装置1は、外部から入力された映像信号あるいは内部で生成した映像信号を、画像あるいは映像として表示するあらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。
【0054】
(適用例1)
図13(A)および図13(B)はそれぞれ、表示装置1が適用される電子ブックの外観を表したものである。この電子ブックは、例えば、表示部210および非表示部220を有しており、この表示部210が表示装置1により構成されている。
【0055】
(適用例2)
図14は、表示装置1が適用されるテレビジョン装置の外観を表したものである。このテレビジョン装置は、例えば、フロントパネル310およびフィルターガラス320を含む映像表示画面部300を有しており、この映像表示画面部300が表示装置1により構成されている。
【0056】
(適用例3)
図15は、表示装置1が適用されるデジタルカメラの外観を表したものである。このデジタルカメラは、例えば、フラッシュ用の発光部410、表示部420、メニュースイッチ430およびシャッターボタン440を有しており、この表示部420が表示装置1により構成されている。
【0057】
(適用例4)
図16は、表示装置1が適用されるノート型パーソナルコンピュータの外観を表したものである。このノート型パーソナルコンピュータは、例えば、本体510,文字等の入力操作のためのキーボード520および画像を表示する表示部530を有しており、この表示部530が表示装置1により構成されている。
【0058】
(適用例5)
図17は、表示装置1が適用されるビデオカメラの外観を表したものである。このビデオカメラは、例えば、本体部610,この本体部610の前方側面に設けられた被写体撮影用のレンズ620,撮影時のスタート/ストップスイッチ630および表示部640を有している。そして、この表示部640が表示装置1により構成されている。
【0059】
(適用例6)
図18は、表示装置1が適用される携帯電話機の外観を表したものである。この携帯電話機は、例えば、上側筐体710と下側筐体720とを連結部(ヒンジ部)730で連結したものであり、ディスプレイ740,サブディスプレイ750,ピクチャーライト760およびカメラ770を有している。そして、これらのうちのディスプレイ740またはサブディスプレイ750が、表示装置1により構成されている。
【0060】
<変形例>
以上、実施の形態および適用例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。
【0061】
例えば、上記実施の形態等では、薄膜上のフォトレジスト膜に対する露光を2回連続して行う場合を例に挙げて説明したが、この場合には限られず、露光を3回以上連続して行うようにしてもよい。なお、その際には、例えば、1回目の露光をこれまで説明した第1の露光工程S131とし、2回目以降の露光をこれまで説明した第2の露光工程S132とすればよい。すなわち、3回目以降の露光においては、2回目の露光と同じ条件で(例えば露光マスクM1または露光マスクM2を用いて)露光を行うようにすればよい。ただし、3回目以降の各露光においても、2回目の露光と異なる条件で(例えば露光マスクM1,M2とは異なる別個の露光マスクを用いて)露光を行うようにしてもよい。
【0062】
また、上記実施の形態等では、TFT層12に含まれるデバイスとして、TFT、容量素子、配線および電極を例に挙げて説明したが、これには限られず、他のデバイスを形成する際に上記実施の形態等の手法を用いるようにしてもよい。また、上記実施の形態等では、デバイスに含まれる薄膜として主に導電膜(金属膜)を例に挙げて説明したが、これには限られず、例えばTFTに用いられる半導体膜等であってもよい。
【0063】
更に、上記実施の形態等では、表示層13が電気泳動粒子を用いて構成されている場合について説明したが、これには限られない。具体的には、表示層13が、液晶素子、有機EL(Electro Luminescence)素子あるいは無機EL素子等を用いて構成されていてもよい。
【0064】
加えて、上記実施の形態等において説明した各層の材料および厚み、または成膜方法および成膜条件等は限定されるものではなく、他の材料および厚みとしてもよく、または他の成膜方法および成膜条件としてもよい。また、上記実施の形態等では、表示装置1の構成を具体的に挙げて説明したが、全ての層を備える必要はなく、また、他の層を更に備えていてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1…表示装置、10A…表示領域、10B…額縁領域(非表示領域)、101…異物、11…基板、12,12A…TFT層、121…ゲート電極、122…画素電極、123a,123b…配線、124a,124b…張り出し部(突出部)、13…表示層、14…透明基板、81…遮光部、82…透光部、M1,M2…露光マスク、d11,d12,d21,d22,d32,d41,d42…距離。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にデバイスを形成する工程を含み、
前記デバイスを形成する工程は、
薄膜を形成する工程と、
前記薄膜上にフォトレジスト膜を形成する工程と、
露光マスクを用いて、前記フォトレジスト膜に対して露光を行う露光工程と、
前記露光がなされたフォトレジスト膜をエッチングする工程と
を含み、
前記露光工程では、前記フォトレジスト膜に対する露光を複数回連続して行う
デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記露光工程では、1回目の露光である第1の露光工程と、2回目以降の露光である第2の露光工程とで、互いに異なるマスクパターンを有する露光マスクを用いる
請求項1に記載のデバイスの製造方法。
【請求項3】
前記第2の露光工程の際に用いる第2の露光マスクでは、前記第1の露光工程の際に用いる第1の露光マスクと比べ、隣接する遮光部間に位置する透光部の距離が相対的に短くなっている
請求項2に記載のデバイスの製造方法。
【請求項4】
前記第2の露光工程の際に用いる第2の露光マスクでは、前記第1の露光工程の際に用いる第1の露光マスクにおける透光部のうちの一部の領域のみが透光部となっていると共に、その他の領域が遮光部となっている
請求項2に記載のデバイスの製造方法。
【請求項5】
前記一部の領域が、前記第1の露光マスクにおける隣接する遮光部間に位置する
請求項4に記載のデバイスの製造方法
【請求項6】
前記第2の露光工程では、前記第1の露光工程と比べて露光強度を相対的に大きくする
請求項2ないし請求項5のいずれか1項に記載のデバイスの製造方法。
【請求項7】
前記露光工程では、複数回の露光の各々において、共通の露光マスクを用いる
請求項1に記載のデバイスの製造方法。
【請求項8】
前記基板が、可撓性基板である
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のデバイスの製造方法。
【請求項9】
前記薄膜は、金属膜または半導体膜である
請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のデバイスの製造方法。
【請求項10】
前記デバイスは、薄膜トランジスタ、容量素子、配線および電極のうちの少なくとも1つである
請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のデバイスの製造方法。
【請求項11】
基板上に、デバイスおよび表示層を形成する工程を含み、
前記デバイスを形成する工程は、
薄膜を形成する工程と、
前記薄膜上にフォトレジスト膜を形成する工程と、
露光マスクを用いて、前記フォトレジスト膜に対して露光を行う露光工程と、
前記露光がなされたフォトレジスト膜をエッチングする工程と
を含み、
前記露光工程では、前記フォトレジスト膜に対する露光を複数回連続して行う
表示装置の製造方法。
【請求項12】
前記表示層が、電気泳動粒子、液晶素子、有機EL素子または無機EL素子を用いて構成されている
請求項11に記載の表示装置の製造方法。
【請求項13】
基板上に、薄膜を含む複数のデバイスと、表示層とを備え、
前記複数のデバイスのうちの互いに離隔して隣接する一対のデバイス同士において、少なくとも一方の側の前記薄膜に、他方側への張り出し部が設けられている
表示装置。
【請求項14】
前記一対のデバイス同士において、双方側の前記薄膜にそれぞれ、前記張り出し部が設けられている
請求項13に記載の表示装置。
【請求項15】
表示装置を備え、
前記表示装置は、
基板上に、薄膜を含む複数のデバイスと、表示層とを有し、
前記複数のデバイスのうちの互いに離隔して隣接する一対のデバイス同士において、少なくとも一方の側の前記薄膜に、他方側への張り出し部が設けられている
電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−222044(P2012−222044A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83832(P2011−83832)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】