説明

ナビゲーションシステムとナビゲーションプログラム

【課題】一時停止地点での通過時間も考慮した経路探索が可能となるナビゲーション技術を提供する。
【解決手段】自車位置を示す自車位置情報から得られた自車位置および経路探索部23で道路情報に基づき探索された出発地点と目的地点とを結ぶ経路とに基づいて自車の走行経路を案内する経路案内部24と、走行経路における一時停止地点の通過時間を測定する一時停止地点通過時間測定部34と、測定された通過時間を経路の対応する箇所に関係付けて記録する通過時間記録部35とを備え、経路探索部23は、探索される経路の一時停止地点に関係付けられた通過時間を考慮して経路探索を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の道路リンクの接続関係により道路ネットワークを表す道路情報に基づいて出発地から目的地までの経路を探索する経路探索機能を有するナビゲーション技術に関する。
【背景技術】
【0002】
よく通る道路上で発生した渋滞や混雑に対して適切に対処するため、車両の現在位置を検出する現在位置検出手段と、検出された現在位置に基づいて走行したルートを学習する走行ルート学習手段と、学習した走行ルート上で発生する渋滞情報を学習する渋滞情報学習手段と、渋滞発生箇所を回避するルートを探索する渋滞回避ルート探索手段と、車両外部から取得した渋滞情報と学習した渋滞情報とを比較し、比較結果に基づいて渋滞回避ルート探索手段を起動するか否かの選択情報を出力する制御手段とを備えた車両用ナビゲーション装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この渋滞情報学習手段は、走行ルート学習手段で学習したよく通る道路の道路リンクごとの通過時間を測定し、通過時間が所定時間以上かかるか否かにより渋滞/混雑を判断し、この情報を保存して走行毎の統計データを作成して、登録する。このように登録されたよく通る道路を走行している場合には、VICS等外部からの情報として渋滞情報を受信すると、よく通る道路の渋滞統計データと外部からの渋滞情報を比較し、渋滞統計データ以外の渋滞情報がなければ処理は終了し、よく通る道路の渋滞統計データ以外の渋滞情報があれば、ユーザが予期しない突発的渋滞であるのでこのことを音声案内や表示により通知し、渋滞回避ルートの探索を行うか否かの選択情報を音声案内や表示で出力する。この車両用ナビゲーション装置では、よく通る走行経路の渋滞状況は学習され登録され、その走行経路をそのまま通過するか回避するかの判断に利用されるが、渋滞回避経路の探索自体にはその学習された渋滞状況は利用されない。
【0003】
また、走行開始前に探索した経路上に通行一時停止状態が発生しているか否かが認識され、通行一時停止状態が発生しているときには、それを回避するための迂回路が探索される。ナビゲーション装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。このナビゲーション装置は、さらに交差点を通過するたびにその交差点に設置される交通信号の青信号点灯時間および赤信号点灯時間を学習する学習手段を備え、この学習手段で学習された交通信号の青信号点灯時間および赤信号点灯時間が通行一時停止状態の認識判定に利用される。このナビゲーション装置では、交差点で信号待ちの通行一時停止状態が発生しているときには、その信号待ちを回避するための迂回路が探索されるが、出発地点と目的地点とを結ぶ経路の探索には学習された交通信号の青信号点灯時間および赤信号点灯時間は利用されない。
【0004】
【特許文献1】特開2005−127942号公報(段落番号0004−0013、図4、図5)
【特許文献2】特開平11−325936号公報(段落番号0004−0008、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような従来のナビゲーション技術では、出発地点と目的地点とを結ぶ経路に一時停止地点が数多くある道路が含まれる場合、時間のかかる道路を回避した案内経路を探索することが困難であった。本発明の目的は、一時停止地点での通過時間も考慮した経路探索が可能となるナビゲーション技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るナビゲーションシステムの特徴構成は、道路情報に基づき出発地点と目的地点とを結ぶ経路を探索する経路探索手段と、自車位置を示す自車位置情報を取得する自車位置情報取得手段と、前記自車位置情報から得られた自車位置および前記経路探索手段で探索された経路に基づいて自車の走行経路を案内する経路案内手段と、前記走行経路における一時停止地点の通過時間を測定する一時停止地点通過時間測定手段と、前記測定された通過時間を前記経路の対応する箇所に関係付けて記録する通過時間記録手段とを備え、前記経路探索手段は、探索される経路の一時停止地点に関係付けられた通過時間を考慮して経路探索を行うことである。
【0007】
この特徴構成によれば、車両が実際に経路を走行している時に通過した一時停止地点の通過時間が一時停止地点通過時間測定手段によって測定され、この測定された通過時間は対応する箇所に関係付けて記録される。その通過時間が記録された一時停止地点を含む経路が経路探索の対象となる場合には、経路探索手段は、探索される経路の一時停止地点に関係付けられた通過時間を考慮して経路探索を行う。従って、このナビゲーションシステムでは、一時停止地点での通過時間を学習することで、正確に走行時間が短縮される経路が探索され、その環境問題や燃費を考慮した経路を案内することができる。
【0008】
交差点や踏切などの一時停止地点における通過時間は、交差する道路や交差する線路の交通量の影響を受けるため、時間帯、曜日、季節などの日時による変動が大きい。このような日時による渋滞変動を考慮するため、本発明による好適な形態の1つでは、記通過時間記録手段は前記一時停止地点毎の前記通過時間を日時情報と関連付けて記録しており、前記経路探索手段は、前記経路における一時停止地点の通過日時に応じた前記通過時間を利用するように構成されている。この特徴構成によれば、予め学習された、走行すべき日時帯に対応する一時停止地点の通過時間を用いて経路探索することができるので、一時停止時間が少なく、実際の走行時間が短くなる、より日時変動に影響されにくい正確な経路を案内することができる。
【0009】
また、本発明に係るナビゲーションシステムにおける特徴構成として、前記経路探索手段は、探索された経路から算出された到着予想時間に、前記探索された経路における一時停止地点に関係付けられた通過時間を加算することで前記通過時間を考慮した経路探索を行うことも好適である。この特徴構成によれば、例えば従来から行われている、探索された経路の距離と法定車速とから算定される予想走行時間に、一時停止地点での通過時間を加算することで、一時停止地点での通過時間を加味した予想走行時間が容易に求めることができる。その結果、実際の走行時間に対応した経路探索が実現し、時間のかかる場所を回避した経路を案内することができる。
【0010】
一時停止地点での通過時間を加味した経路探索を簡単に実行するための具体的な形態の1つとして、前記経路探索手段の経路探索に用いられる経路はリンク及びリンク接続点としてのノードとから構成され、前記通過時間記録手段は前記通過時間に応じて算定されたコストを前記リンクの通過コストまたは前記ノードの通過コストに加算できるように記録することが提案される。この特徴構成によれば、一時停止地点の通過時間が測定されると、その通過時間に応じて算定されたコストが、従来から用いられている当該一時停止地点の属するノードまたはリンクの通過コストに対して、追加されるので、次回からこのノードまたはリンクを含む経路が探索された時には、一時停止地点での渋滞時間が加味された経路探索となる。
【0011】
一時停止地点における通過時間は、一時停止地点で車両が頻繁に停止(車速ゼロ)することやノロノロ走行(車速略ゼロ)によって特徴づけられる。従って、本発明の好適な形態の1つでは、前記一時停止地点通過時間測定手段は、前記一時停止地点の通過時間を、前記一時停止地点における車速がゼロまたは略ゼロの累積時間によって測定する。この特徴構成によって、一時停止地点の通過時間が車速を条件とした時間の測定だけで簡単に得ることができ、その測定時間を記録しておくことで、車両の頻繁な停止及びノロノロ走行に特徴付けられる一時停止地点における渋滞を加味した経路探索が可能となる。
【0012】
また、本発明に係るナビゲーションシステムにおける特徴構成として、前記一時停止地点通過時間測定手段は、前記一時停止地点の通過時間を、前記一時停止地点の所定領域を通過する時間と法定車速での通過時間との差に応じて測定することも好適である。この特徴構成では、一時停止地点で法定停止以外の停止がなかった時の通過時間として法定車速での通過時間走行時間と、実際の通過時間との差から一時停止地点の通過時間が測定される。したがって、通過するのに時間を要する一時停止地点をできるだけ回避する経路探索のために適している。もちろん、このような一時停止地点通過時間測定に代えて、前記一時停止地点の通過時間を、前記一時停止地点での最初の停車時点から交差点脱出時点までの時間によって測定してもよい。この場合、一時停止地点の実際の通過時間が得られることになり、好都合である。
【0013】
本発明によるナビゲーションシステムは、走行時に所定の一時停止地点に入ったことを認識する必要があるが、そのための最も簡単は方法として、前記自車位置と地図データとから一時停止地点を取得することが提案される。もちろん、地図データに含まれていない一時停止地点も存在する可能性があるので、カメラによる撮影画像から「止まれ」などの一時停止地点を示すイメージを画像認識することで車両が一時停止地点に入ったことを認識する方法も付加的に採用することが望ましい。当然、撮影画像の画像認識だけで一時停止地点を認識することも本発明の権利範囲内である。
【0014】
さらに、本発明は、上述したナビゲーションシステムの主要な機能を作り出すナビゲーションプログラムも権利対象としている。そのようなナビゲーションプログラムは、自車位置を示す自車位置情報を取得する機能と、前記自車位置、および道路情報に基づき出発地点と目的地点とを結ぶように探索された経路に基づいて自車の走行経路を案内する機能と、前記走行経路における一時停止地点の通過時間を測定する機能と、前記測定された通過時間を前記経路の対応する箇所に関係付けて記録する機能と、前記一時停止地点に関係付けられた前記通過時間を考慮して経路探索を行う機能とをコンピュータに実現させる。当然ながら、このようなナビゲーションプログラムも上述したナビゲーションシステムで述べた作用効果を得ることができ、さらにその好適な形態例として述べたいくつかの付加的技術をプログラムとして組み込むことも可能である。
【0015】
上述したナビゲーションシステムにおける各構成要素は、車両に搭載されるナビゲーション装置と、前記ナビゲーション装置との間で情報交換を行うサーバとに振り分けることも可能である。このような、いわゆるサーバ・クライアントシステムのような構成を採用すると、多数の車両に搭載されたナビゲーション装置から送られてくる一時停止地点の通過時間に関する情報を他の車両のナビゲーション装置での経路探索に利用できるという利点が得られる。例えば、そのような、車両に搭載されるナビゲーション装置と、前記ナビゲーション装置との間で情報交換を行うサーバとから構成される、本発明によるナビゲーションシステムでは、前記ナビゲーション装置が、道路情報に基づき出発地点および目的地点を結ぶ経路を探索する経路探索手段と、自車位置を示す自車位置情報を取得する自車位置情報取得手段と、前記自車位置情報から得られた自車位置および前記経路探索手段で探索された経路に基づいて自車の走行経路を案内する経路案内手段と、前記走行経路における一時停止地点の通過時間を測定する一時停止線通過時間測定手段と、前記測定された通過時間を前記経路の対応する箇所に関係付けて前記サーバに送信する通信手段とを備え、前記サーバが、各ナビゲーション装置から受信した前記経路の一時停止地点に関係付けられた通過時間を記録する通過時間記録手段を備え、前記経路探索手段は、前記サーバから送られてきた、探索される経路の一時停止地点に関係付けられた通過時間を考慮して経路探索を行う。このようなナビゲーションシステムも上述した全ての作用効果を同様に得ることができ、さらに、他の車両のナビゲーション装置で得られた一時停止地点の通過時間も経路探索に利用できるという利点も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明によるナビゲーションシステムがスタンドアローンタイプのナビゲーション装置として適用された実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係るナビゲーション装置1の概略構成を示すブロック図である。また、図2は、このナビゲーション装置1が搭載された自車両Cを示す図である。このナビゲーション装置1は、複数の道路リンクの接続関係により道路ネットワークを表す道路情報に基づいて出発地から目的地までの経路を探索し、当該経路に沿って走行するための案内を使用者(自車両Cの運転者)に対して行う。このナビゲーション装置1は、走行経路における交差点や踏み切りなどの一時停止地点の通過時間を測定して記録する機能、記録されている一時停止地点の通過時間を考慮して経路探索を行う機能を備えている。
【0017】
図1に示すナビゲーション装置1の各機能部、具体的には、画像情報取得部12、自車位置情報取得部13、操作入力評価部21、マップマッチング処理部22、経路探索部23、経路案内部24、画像認識部31、外部情報受信部32、一時停止地点検知部33、一時停止地点通過時間測定部34、及び通過時間記録部35は、互いに共通の或いはそれぞれ独立のCPU等の演算処理装置を中核部材として、入力されたデータに対して種々の処理を行うための機能部がハードウェア又はソフトウェア(プログラム)或いはその両方により構成されている。そして、これらの各機能部は、データバス等を通じてデータ交換可能なように構成されている。また、このデータバスにはデータ格納部40もデータ伝送可能に接続されている。データ格納部40は、追記データベース41と地図データベース42と地物データベース43を含んでおり、例えば、ハードディスクドライブや半導体メモリなどの書き換え可能な記録メディアのみで、あるいはDVD−ROMなどの読み取りのみの記録メディアとの組み合わせで構成されている。以下、本実施形態に係るナビゲーション装置1の各部の構成について詳細に説明する。
【0018】
1.データベースモジュール
1−1.追記データベース
追記データベース41は、一時停止地点通過時間測定部33によって測定された走行経路における一時停止地点の通過時間を、対応する一時停止地点が属する道路リンクや交差点ノードに関係付けて、通過時間記録部35によって検索抽出可能に記録されるデータ記録エリアを提供するものである。つまり、これは、一時停止地点通過時間の学習データベースである。記録される通過時間は、時間そのものでもよいが、ここでは何らかの無単位の評価値(これは経路探索に用いられるので以後通過コストと称する)に置き換えられたものとする。
【0019】
1−2.地図データベース
地図データベース42は、所定の区画毎に分けられた地図情報Mが記憶されたデータベースである。図3は、地図データベース42に記憶されている地図情報Mの構成の例を示す図である。この図に示すように、地図情報Mは、複数の道路リンクkの接続関係により道路ネットワークを表す道路情報Rを含んでいる。道路ネットワークは、道路リンクkと、2つの道路リンクkの接続点にあたる交差点ノードnとにより構成される。交差点ノードnは現実の道路における交差点に対応し、道路リンクkは、各交差点間を結ぶ道路に対応している。各交差点ノードnは、緯度及び経度で表現された地図上の位置(座標)の情報を有している。各道路リンクkは、リンク属性情報として、基本リンクコスト、道路長、道路種別、道路幅、レーン数、リンク形状を表現するための形状補間点等の情報を有している。ここで、基本リンクコストは、道路長や道路種別等の道路属性に応じて各道路リンクに予め設定されたリンクコストであり、経路探索の際に用いられる情報である。また、道路種別は、例えば、高速道路、国道、県道、一般道、細街路、導入路等のように、道路を複数の種別に区分した際の道路種別の情報である。交差点ノードnは、ノード属性情報として、ノードコスト、通行規制、信号の有無等の情報を有している。なお、図3においては、一つの区画の道路情報Rのみを図示し、他の区画の道路情報Rは省略して示している。基本リンクコスト、ノードコスト、及び通過コストに関しては後で詳細に説明する。
【0020】
この道路情報Rは、後述するマップマッチングや、出発地から目的地までの経路探索、目的地までの経路案内等のために用いられる。また、図示は省略するが、地図情報Mには、このような道路情報Rの他に、地図の表示に必要な各種の情報を有する描画情報、交差点の詳細情報から成る交差点情報等が含まれている。また、この描画情報には、道路形状、建物、河川等を表示するために必要な背景情報、市町村名や道路名等を表示するために必要な文字情報などが含まれている。
【0021】
1−3.地物データベース
地物データベース43は、道路の路面に設けられた地物の情報、すなわち地物情報Fを記憶するデータベースである。図4は、地物データベース43に記憶されている道路標示の地物情報Fの例を示す図である。本実施形態において地物データベース43に地物情報Fが記憶される地物は、少なくとも、道路の路面に設けられた停止線と、当該停止線に隣接して設けられた所定の文字列とを含んでいる。地物データベース43は、その他にも、例えば、横断歩道、停止線、最高速度等を表す速度標示、ゼブラゾーン、道路に沿って車線を分ける区画線(実線、破線、二重線等の各種区画線を含む。)、各車線の進行方向を指定する進行方向別通行区分標示(矢印標示、例えば、直進矢印、右折矢印等を含む)等に係る地物情報Fを含んでいても良い。なお、地物情報Fが記憶される地物としては、このような道路標示のほか、信号機、標識、陸橋、トンネル等の各種の地物も含めることができる。また、地物情報Fは、その内容として各地物の位置情報と、それに関連付けられた地物属性情報とを有している。ここで、位置情報は、道路情報Rを構成するリンクk又はノードn等と関連付けられた各地物の代表点の地図上の位置(座標)、及び各地物の向きの情報を有している。また、地物属性情報は、各地物の地物種別を表す種別情報、或いは、地物の形状、大きさ、色彩等の地物形態情報等を含んでいる。ここで、地物種別は、具体的には、「横断歩道」、「停止線」、「速度標示(30km/時)」等のような、基本的に同じ形態を有する地物の種別を表す情報である。また、地物情報Fは一時停止地点の検知に利用されるが、必要の場合、一時停止地点の確認には画像認識部31による道路上の実際の一時停止線などの画像認識処理を利用することも可能である。
【0022】
2.入出力モジュール
表示制御部25を介してカーナビゲーションに関する種々の情報を表示するモニタ26としては、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイなどのパネル形のものが適している。このモニタ26には、入力デバイス10としてのタッチパネルや操作スイッチ等が装備されている。これらの入力デバイス10を通じて入力された操作コマンドは操作入力評価部21を介してナビゲーション装置1における関係する各機能部に送られる。また、音声による情報報知のためにオーディオ制御部27を介して送られてきたオーディオ信号を音声として鳴らすスピーカ28も備えられている。
【0023】
3.画像情報入力モジュール
画像情報取得部12は、車載カメラ11により自車両Cが走行している道路の路面を撮影した撮影画像を取得する。ここでは、車載カメラ11は、図2に示すような自車両Cの後方の路面を撮像するバックカメラであるが、フロントカメラやサイドカメラを備えることも可能である。画像情報取得部12は、そのような車載カメラ11によって得られた撮影画像を所定の時間間隔で取り込む。ここで取得された画像情報Gは、画像認識部23においては前述した地物属性情報の確認等の目的のために利用される。
【0024】
4.自車位置情報取得モジュール
自車位置情報取得部13は、自車両Cの現在位置を表す自車位置情報を取得する自車位置情報取得手段として機能する。ここでは、自車位置情報取得部13は、GPS受信機14、方位センサ15、及び距離センサ16と接続されている。ここで、GPS受信機14は、GPS衛星からのGPS信号を受信する装置である。このGPS信号は、通常1秒おきに受信され、自車位置情報取得部13へ出力される。自車位置情報取得部13では、GPS受信機14で受信されたGPS衛星からの信号を解析し、自車両Cの現在位置(緯度及び経度)、進行方位、移動速度等の情報を取得することができる。方位センサ15は、自車両Cの進行方位又はその進行方位の変化を検出するセンサである。この方位センサ15は、例えば、ジャイロセンサ、地磁気センサ、ハンドルの回転部に取り付けた光学的な回転センサや回転型の抵抗ボリューム、車輪部に取り付ける角度センサ等により構成される。そして、方位センサ15は、その検出結果を自車位置情報取得部13へ出力する。距離センサ16は、自車両Cの車速や移動距離を検出するセンサである。この距離センサ16は、例えば、車両のドライブシャフトやホイール等が一定量回転する毎にパルス信号を出力する車速パルスセンサ、自車両Cの加速度を検知するヨー・Gセンサ及び検知された加速度を積分する回路等により構成される。そして、距離センサ16は、その検出結果としての車速及び移動距離の情報を自車位置情報取得部13へ出力する。
【0025】
そして、自車位置情報取得部13は、これらのGPS受信機14、方位センサ15及び距離センサ16からの出力に基づいて、公知の方法により自車両Cの位置を特定する演算を行う。このようにして取得される自車位置情報Pは、各センサ14〜16の検出精度等に起因する誤差を含んだ情報となっている。従って、マップマッチング処理部22により、自車位置情報に示される自車両Cの位置を地図情報Mに示される道路上とする補正を通じて誤差をキャンセルする。また、撮影画像及び地物情報Fを用いて自車位置情報に示される自車両Cの進行方向の位置を補正することも可能である。
【0026】
5.画像認識モジュール
画像認識部31は、画像情報取得部12で取得された撮影画像に対する画像認識処理を行う画像認識手段として機能する。すなわち、画像認識部31は、カメラ11により自車両Cの周辺を撮影した撮影画像に含まれる一時停止線などの地物の画像認識処理を行う。この際、画像認識部31は、地物データベース43に記憶されている地物情報Fを用いて画像認識処理を行う。具体的には、画像認識部31は、自車位置情報Pに基づいてカメラ11による撮像領域に含まれることになる地物を対象地物とし、当該対象地物の地物情報Fを地物データベース43から取得する。そして、画像認識部31は、画像情報取得部12で取得された撮像画像に対して二値化処理やエッジ検出処理等を行い、当該撮影画像に含まれている地物(道路標示)の輪郭情報を抽出する。その後、画像認識部31は、抽出された地物の輪郭情報と、地物データベース43から取得した対象地物の地物情報Fに含まれる形態情報とを比較し、それらが一致するか否かを判定する。地物の輪郭情報と対象地物の地物情報Fに含まれる形態情報とが一致する場合には、対象地物の画像認識に成功したと判定し、その画像認識結果を必要とする各機能部に出力する。
【0027】
6.外部情報受信モジュール
外部情報受信部32は、自車両Cの位置の特定に用いることができる特定情報を、自車両Cの外部から受信する情報受信手段として機能する。このような特定情報としては、例えば、VICS(登録商標)(Vehicle Information and Communication System:道路交通情報通信システム)からの情報、具体的には道路の各レーン上に設けられた発信器からの光ビーコンや電波ビーコンからの情報がある。これらの情報に、当該発信器が設置されている交差点や一時停止線などを特定することができる情報が含まれている場合、この外部情報受信部32により受信した情報は、一時停止地点検知部33に送られ、一時停止地点の検知確認に用いられる。
【0028】
7.一時停止地点通過時間学習モジュール
このナビゲーション装置1には、交差点や踏切などの一時停止地点における自車両Cの通過時間を学習する機能部として、一時停止地点検知部33、一時停止地点通過時間測定部34、及び通過時間記録部35が備えられている。一時停止地点検知部33は、自車位置情報取得部13から得られる自車位置と地図データベース42から読み出される地図データに含まれている道路情報の1つである一時停止地点とから自車両Cが一時停止地点を走行中であることを検知する一時停止地点検知手段として機能する。なお、この一時停止地点の走行検知は、外部情報受信部32により受信した情報や画像認識部31による地物確認情報などによってアシストされる。
【0029】
一時停止地点通過時間測定部34は、一時停止地点検知部33によって検知された一時停止地点の通過時間を測定する一時停止地点通過時間測定手段として機能する。なお、ここでいう一時停止地点とは、交差点や一時停止線を一端とし、その交差点や一時停止線の手前に設定された位置を他端とする長さ領域を意味している。また、渋滞が発生している場合は、その交差点や一時停止線から延びている渋滞列の最終端(交差点や一時停止線の手前で車両が最初に停止または停止に近い速度に減速した箇所)から交差点や一時停止線までの長さ領域を一時停止地点とみなしてもよい。つまり、交差点や踏切などによって車両の連続的な流れが遮断される領域における車両の通過時間を一時停止地点の通過時間と定義される。この実施の形態では、一時停止地点通過時間測定部34は、以下に説明する複数の測定モードを備えており、自由に選択して利用できるが、その内の少なくとも1つだけを実装するだけでもよい。
【0030】
第1の測定モードは、検知された一時停止地点の通過時間を、当該一時停止地点における車速がゼロまたは略ゼロ(約5Km/h)の累積時間によって測定するモードである。この第1の測定モードでは測定された通過時間は、一時停止や渋滞による停止によって車両が停止状態またはほぼ停止状態になっている時間を表している。
第2の測定モードは、検知された一時停止地点の通過時間を、当該一時停止地点での最初の停車時点から交差点脱出時点までの時間によって測定するモードである。この第2の測定モードでの測定通過時間は、一時停止地点を通過するのに要した正味の通過時間を表している。
第3の測定モードは、検知された一時停止地点の通過時間を、当該一時停止地点における上述のように定義される所定領域を通過する時間と法定車速での通過時間との差に応じて測定するモードである。この第3の測定モードでの測定通過時間は一時停止地点を通過したことによる遅れ時間を表している。
【0031】
通過時間記録部35は、一時停止地点通過時間測定部34によって測定された走行経路における一時停止地点の通過時間をその一時停止地点が属している経路の対応する箇所(例えば交差点ノードや道路リンク)に関係付けて、追記データベース41に記録する通過時間記録手段として機能する。この実施形態では、さらに、通過時間記録部35は、一時停止地点で測定された通過時間を、日時情報と関連付けて追記データベース41に記録する。日時情報には、年月日と時刻だけでなく、平日、祝日、休日、祭りやコンサートなどのイベントの有無、季節、天候といった特定の日時と関係付けられる種々の情報も含まれている。従って、この日時情報を検索条件とすることにより、時間帯別、季節別、イベント有無別などの一時停止地点の渋滞状況(通過時間の長短)を予測するためのデータが得られ、適切な経路探索に利用することができる。また、この実施形態では、通過時間記録部35は、一時停止地点通過時間測定部34によって測定された通過時間を、後で詳しく説明される経路探索部23による最適経路探索において利用しやすくするために、通過時間を、道路リンクの属性情報として設定されているリンクコストや交差点ノードの属性情報として設定されているノードコストなどと同様な評価値に変換して得られる通過コストを、対応する道路リンクまたは交差点ノードに関係付けられるように追記データベース41に記録するように構成されている。ここで、地図データベース42における道路リンクの属性情報や交差点ノードの属性情報が追記・書き換え可能な場合、通過コストを直接そこに記録する構成を採用してもよい。
【0032】
8.カーナビゲーションモジュール
このナビゲーション装置1は、基本的なナビゲーション機能を実現するためのナビゲーション用演算処理部として、表示制御部25、マップマッチング処理部22、経路探索部23、経路案内部24、及び検索処理部22を備えている。ここで、表示処理部17は、モニタ26の表示画面に自車位置や目的地等の周辺の地図表示や当該地図上への自車位置表示等を行うための演算処理を行う処理部である。マップマッチング処理部22は、自車位置情報取得部13により取得された自車位置情報に示される自車位置が、地図データベース43に記憶された道路情報Rに含まれる道路上となるように、自車位置情報を補正するマップマッチング処理を行うための処理部である。経路探索部23は、例えば自車位置等の出発地からモニタ26により入力された目的地までの案内経路を探索するための演算処理を行う処理部である。経路案内部24は、経路探索部23により探索された出発地から目的地までの経路に従って、モニタ26の表示画面による案内表示やスピーカ28による音声案内等により、運転者に対して適切な経路案内を行うための演算処理を行う処理部である。
【0033】
経路探索部23は、複数の道路リンクkの接続関係により道路ネットワークを表す道路情報Rに基づいて出発地から目的地までの経路を探索する経路探索手段として機能する。本実施形態においては、経路探索部23は、前述したように学習して記録された、一時停止地点の通過時間(通過コスト)を考慮した経路探索機能を備えている。この実施形態での経路探索では、経路の全体での経路コストの合計が最小となるように経路探索が行われるが、経路コストには、基本リンクコストとノードコストと前述した通過コストが含まれている。ここで、基本リンクコストは、各道路リンクkに対応する実際の道路を通行するために要する時間及び通行し易さ等を数値化した情報であり、各道路リンクkの道路長(道路リンク長)及び道路属性に応じて設定される。道路属性としては、例えば、制限速度、道路種別、レーン数等に応じた値が設定されている。この場合、基本リンクコストは、道路長が短いほど小さく、制限速度が高いほど小さく、道路種別やレーン数に示される道路の規模が大きいほど小さく設定される。ノードコストは、各交差点ノードnに対応する実際の交差点を通行するために要する時間及び通行し易さ等を数値化した情報であり、当該交差点での進行方向(右折、左折、直進等)、信号の有無等に応じた値が設定されている。この場合、ノードコストは、進行方向に関して直進、左折、右折の順に大きく(左側通行の場合)、信号がある交差点は信号がない交差点よりも大きく設定されると好適である。したがって、この経路探索により、出発地から目的地まで比較的短時間で快適に到達可能な経路を探索することができる。
【0034】
この実施形態では、経路探索部23で経路探索のために利用する道路情報Rには、道路リンクkにリンクコスト、交差点ノードnにノードコストが設定されており、さらに道路リンクkまたは交差点ノードnに通過コストが付加的に設定されている。
【0035】
次に、経路探索部23により実行される経路探索について、具体例を用いて説明する。図5は、この具体例の説明に用いる道路情報Rの一例を示す図である。この図において、丸で囲まれたa〜hは、それぞれ交差点ノードnを示し、各交差点ノードn間を結ぶ直線は、それぞれ道路リンクkを示している。また、「CL=×××」は各道路リンクkのリンクコストの値を示し、「CN=××」は各交差点ノードnのノードコストの値を示している。さらに、「CT=×××」は、一時停止地点の通過コストの値を示している。なお、「L=×××」は各道路リンクkの道路長(道路リンク長)を示している。この図に示す例では、出発地aから目的地hまでの経路として、「a−b−e−h」、「a−c−f−h」、及び「a−d−g−h」の3つの経路が存在する。
【0036】
このような条件下において、経路探索部23は、以下のようにして経路探索を行い、最適な探索経路を決定する。すなわち、経路探索部23は、上記出発地aから目的地hまでの3つの経路のそれぞれについて、経路の全体でのリンクコストとノードコストと通過コストとの合計を演算し、その合計コストが最小となる経路を最適探索経路として決定する。本例の場合、経路「a−b−e−h」の合計コストは、以下の式(1)で求められる。
合計コスト=300+50+20+500+0+10+300=1180・・・(1)
同様に、経路「a−c−f−h」の合計コストは、以下の式(2)で求められる。
合計コスト=200+100+60+400+100+50+300=1210・・・(2)
また、経路「a−d−g−h」の合計コストは、以下の式(3)で求められる。
合計コスト=200+0+0+400+50+0+400=1050・・・(3)
したがって、経路探索部23は、合計コストが最も小さい経路「a−d−g−h」を、最適探索経路として決定する。
【0037】
経路探索部23によって最適な経路が探索され、これがユーザによって承認されると、この経路がこれからの走行経路として案内される。経路案内部24は、この案内経路をモニタ26を通じて可視的に報知するとともにスピーカ28を通じて可聴的に報知する経路案内手段として機能する。
【0038】
次に、上述した一時停止地点通過時間学習モジュールにおける第1の測定モードでの一時停止地点通過時間の学習過程の一例を図6のフローチャートを用いて説明する。
一時停止地点通過時間学習モジュールにおける学習機能は、自車両Cが一時停止地点に進入したことが検知されると当該一時停止地点における通過時間の学習動作が開始される(#01)。自車両Cが一時停止地点に進入すると、その旨の報知が音声にて行われる(#02)。
【0039】
まず、自車両Cが処理対象となっている一時停止地点を通過したかどうかがチェックされる(#11)。まだ通過していない場合(#11No分岐)、さらに車速が5Km/h未満かどうかがチェックされる(#12)。車速が5Km/h未満であれば(#12Yes分岐)、時間カウンターをスタートさせ(#13)、時間カウンターの稼動中を示すC#フラグに「1」をセットする(#14)。車速が5Km/h未満でなければ(#12No分岐)、C#フラグの内容がチェックされる(#15)。C#フラグの内容が「1」でなければ(#15No分岐)、そのままステップ#11に戻る。C#フラグの内容が「1」であれば(#15Yes分岐)、時間カウンターをストップさせ(#16)、カウント値を一時記憶する(#17)。この一時記憶されたカウント値は、自車両Cが一時停止地点で少なくとも停止または停止に近い状態(ここでは車速5Km/h未満)にある時間間隔の1つを示す。さらに、C#フラグをリセットして(#18)、ステップ#11に戻る。
【0040】
ステップ#11のチェックで、自車両Cが一時停止地点を通過した場合(#11Yes分岐)、さらにC#フラグの内容がチェックされる(#31)。C#フラグの内容が「1」であれば(#31Yes分岐)、時間カウンターをストップさせ(#32)、カウント値を一時記憶し(#33)、C#フラグをリセットする(#34)。次いで、一時記憶されている全てのカウント値を積算する(#51)。C#フラグの内容が「1」でなければ(#31No分岐)、直接ステップ#51へジャンプして、一時記憶されている全てのカウント値を積算する(#51)。さらに積算されたカウント値から通過時間を算出する(#52)。この第1測定モードで算出された通過時間は、一時停止地点を通過する際に車両が停止状態またはほぼ停止状態になっている時間を示している。
【0041】
さらに算定された通過時間から経路探索に適した評価値としての通過コストを算出する(#53)。続いて、日時情報を取得し(#54)、この日時情報とともに通過時間または通過コストあるいはその両方をデータベース4に記録する(#55)。この一連の処理が、自車両Cが一時停止地点に進入するたびに、実行される。
【0042】
次に、上述した一時停止地点通過時間学習モジュールにおける第2の測定モードでの一時停止地点通過時間の学習過程の一例を図7のフローチャートを用いて説明する。このフローチャートでは、図6のフローチャートと実質的に同じ処理には同じステップ番号を付与し、その詳しい説明は省略する。
一時停止地点通過時間の学習過程が始まると、まず車速が5Km/h未満かどうかがチェックされる(#21)。車速が5Km/h未満であれば(#21Yes分岐)、さらにタイマーの稼動中を示すT#フラグの内容がチェックされる(#22)。T#フラグの内容が「1」でなければ(#22No分岐)、タイマーをスタートさせ(#13)、T#フラグに「1」をセットする(#24)。続いて、 まず、自車両Cが処理対象となっている一時停止地点を通過したかどうかがチェックされる(#25)。なお、ステップ#21のチェックで車速が5Km/h未満でない場合(#21No分岐)、及びステップ#22のチェックでT#フラグの内容が「1」の場合(#22Yes分岐)、直接ステップ#25にジャンプして自車両Cが一時停止地点を通過したかどうかがチェックされる。まだ通過していない場合(#25No分岐)、ステップ#21に戻る。
【0043】
ステップ#25のチェックで、自車両Cが一時停止地点を通過した場合(#25Yes分岐)、さらにT#フラグの内容がチェックされる(#41)。T#フラグの内容が「1」であれば(#41Yes分岐)、タイマーをストップさせ(#43)、C#フラグをリセットし(#44)、タイマー値を読み出される(#44)。次いで、読み出されたタイマー値から通過時間を算出する(#45)。また、T#フラグの内容が「1」でなければ(#41No分岐)、自車両Cがこの一時停止地点で少なくとも停止または停止に近い状態(ここでは車速5Km/h未満)に陥らなかったことになるので、通過時間はゼロとされる。この第2測定モードで算出された通過時間は、一時停止地点の正味の通過時間を示している。
【0044】
次に、上述した一時停止地点通過時間学習モジュールにおける第3の測定モードでの一時停止地点通過時間の学習過程の一例を図8のフローチャートを用いて説明する。第3の測定モードは一時停止地点への進入時点から脱出時点までの時間と法定速度での通過時間との差を求めるもので、先に述べた、停止または停止に近い状態に陥った時点から脱出時点までの時間を測定する第2の測定モードにかなり類似している。従って、この図8のフローチャートでは、図7のフローチャートと実質的に同じ処理には同じステップ番号を付与し、その相異するところのみを説明する。
【0045】
この第3の測定モードでは、一時停止地点において停止または停止に近い状態に陥った時点を考慮しないので、図7のフローチャートにおけるステップ#21は省略され、一時停止地点に入った時点で直ちにタイマーがスタートする(#23)。タイマーの動作は自車両Cが一時停止地点を通過するまで続行し、自車両Cが一時停止地点を通過した時点でストップし(#42)、そのタイマー値が読み出され(#44)、読み出されたタイマー値から経過時間が算出される(#45)。さらに、この一時停止地点を法定速度で走行した場合の通過時間が標準通過時間として算出される(#47)。次いで、経過時間と標準通過時間との差がここで測定される通過時間として算出される(#47)。従って、この第3測定モードで算出された通過時間は、一時停止地点を通過したことによる遅れ時間を示している。
【0046】
〔その他の実施形態〕
(1)
上述した実施形態では、本発明によるナビゲーションシステムは、一時停止地点における通過時間を考慮するナビゲーション技術を完結させているナビゲーション装置1が各車両に搭載される、スタンドアローンタイプとして実現されている。これに代えて、本発明によるナビゲーションシステムを、図9で模式的に示すようなサーバ・クライアントタイプで実現することができる。ここでは、各車両に搭載されたナビゲーション装置1は、一時停止地点通過時間測定部34によって測定された一時停止地点通過時間を当該一時停止地点に対応する経路、つまりノードまたはリンクの識別情報と関係づけたフォーマットで通過時間送信部51を介してナビゲーションサーバ100にデータ伝送する。ナビゲーションサーバ100では、多くの車両に搭載されているナビゲーション装置1から随時送られてきた一時停止地点通過時間は通過時間受信部101を介して通過時間データベース102に格納される。その際、通過時間データベース102に格納された、同一箇所の一時停止地点通過時間が複数あれば、統計処理部103によって平均演算等の統計演算を通じて統計的通過時間に変換される。多数の車両が一時停止地点を通過する毎に測定され送信され、ナビゲーションサーバ100の通過時間データベース102に格納されている各一時停止地点の通過時間(場合によっては統計的通過時間)は、適時または要求に応じて、通過時間送信部104から各車両に搭載されている車載ナビゲーション装置1に送信される。車載ナビゲーション装置1では、ナビゲーションサーバ100から送られてきた一時停止地点の通過時間(場合によっては統計的通過時間)は通過時間受信部52を介して通過時間記録部35に与えられる。通過時間記録部35は、受け取った通過時間(場合によっては統計的通過時間)を、対応する経路、経路つまりノードまたはリンクに関係付けて、データベース4に格納する。このようなクライアント・サーバタイプのナビゲーションシステムでは、上述した全ての作用効果を同様に得ることができるだけでなく、自車両が通過していなくても他の車両のナビゲーション装置1で測定された一時停止地点の通過時間もナビゲーションサーバ100から取得することができ、これを経路探索に利用できるという、スタンドアローンタイプのナビゲーションシステムにない利点も得られる。
【0047】
(2)
上述した実施形態では、経路探索において通過時間を考慮するため、通過コストを算定する方法を採用したが、この方法に限定されるわけではない。例えば、前記経路探索部23が、探索された経路から、従来のように、経路長さと標準車速とから算出された到着予想時間に、この探索された経路における一時停止地点に関係付けられた本発明による通過時間を加算し、その加算結果の到着予想時間で最適経路を選ぶようにしてもよい。具体的には、指定された出発地から目的地までの経路を複数探索し、探索された各経路の走行時間を算出する。さらに、各経路の走行時間に一時停止通過時間を加算し、その合計時間を対応する経路とともにモニタ26に表示する。あるいは、その合計時間が最も短い経路を案内すべき経路として自動選択してもよい。
【0048】
(3)
経路探索において通過時間を考慮するための最も簡単な方法は、関係付けられている通過時間または通過コストが所定閾値以上であるノードまたはリンクは、経路探索の対象から外すことである。また、それによって目的地に達する経路がなくなる場合には、その閾値を次第に下げながら経路探索を繰り返し行うことで、最終的に案内すべき経路を見つけ出すようにするとよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施形態に係るナビゲーションシステムの概略構成を示すブロック図
【図2】ナビゲーションシステムが搭載された自車両を示す図
【図3】地図データベースに記憶されている地図情報の構成の例を示す図
【図4】地物データベースに記憶されている道路標示の地物情報の例を示す図
【図5】複数の経路探索機能の相違を説明するための道路情報の一例を示す図
【図6】一時停止地点通過時間学習モジュールにおける第1の測定モード経路探索処理の手順を示すフローチャート
【図7】一時停止地点通過時間学習モジュールにおける第2の測定モード経路探索処理の手順を示すフローチャート
【図8】一時停止地点通過時間学習モジュールにおける第3の測定モード経路探索処理の手順を示すフローチャート
【図9】クライアント・サーバタイプのナビゲーションシステムの概略構成を示すブロック図
【符号の説明】
【0050】
1:ナビゲーション装置
13:自車位置情報取得部(自車位置情報取得手段)
23:経路探索部(経路探索手段)
24:経路案内部(経路案内手段)
32:一時停止地点検知部
33:一時停止地点通過時間測定部(一時停止地点通過時間測定手段)
34:通過時間記録部(通過時間記録手段)
41:追記データベース
42:地図データベース
CL:リンクコスト
CN:ノードコスト
CT:通過コスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路情報に基づき出発地点と目的地点とを結ぶ経路を探索する経路探索手段と、自車位置を示す自車位置情報を取得する自車位置情報取得手段と、前記自車位置情報から得られた自車位置および前記経路探索手段で探索された経路に基づいて自車の走行経路を案内する経路案内手段と、前記走行経路における一時停止地点の通過時間を測定する一時停止地点通過時間測定手段と、前記測定された通過時間を前記経路の対応する箇所に関係付けて記録する通過時間記録手段とを備え、
前記経路探索手段は、探索される経路の一時停止地点に関係付けられた通過時間を考慮して経路探索を行うナビゲーションシステム。
【請求項2】
前記通過時間記録手段は前記一時停止地点毎の前記通過時間を日時情報と関連付けて記録しており、前記経路探索手段は、前記経路における一時停止地点の通過日時に応じた前記通過時間を利用する請求項1に記載のナビゲーションシステム。
【請求項3】
前記経路探索手段は、探索された経路から算出された到着予想時間に、前記探索された経路における一時停止地点に関係付けられた通過時間を加算することで前記通過時間を考慮した経路探索を行う請求項1または2に記載のナビゲーションシステム。
【請求項4】
前記経路探索手段の経路探索に用いられる経路はリンク及びリンク接続点としてのノードとから構成され、前記通過時間記録手段は前記通過時間に応じて算定されたコストを前記リンクの通過コストまたは前記ノードの通過コストに加算できるように記録する請求項1または2に記載のナビゲーションシステム。
【請求項5】
前記一時停止地点通過時間測定手段は、前記一時停止地点の通過時間を、前記一時停止地点における車速がゼロまたは略ゼロの累積時間によって測定する請求項1から4のいずれか一項に記載のナビゲーションシステム。
【請求項6】
前記一時停止地点通過時間測定手段は、前記一時停止地点の通過時間を、前記一時停止地点の所定領域を通過する時間と法定車速での通過時間との差に応じて測定する請求項1から4のいずれか一項に記載のナビゲーションシステム。
【請求項7】
前記一時停止地点過時間測定手段は、前記一時停止地点の通過時間を、前記一時停止地点での最初の停車時点から交差点脱出時点までの時間によって測定する請求項1から4のいずれか一項に記載のナビゲーションシステム。
【請求項8】
前記一時停止地点は、前記自車位置と地図データとから取得される請求項1から7のいずれか一項に記載のナビゲーションシステム。
【請求項9】
自車位置を示す自車位置情報を取得する機能と、前記自車位置、および道路情報に基づき出発地点と目的地点とを結ぶように探索された経路に基づいて自車の走行経路を案内する機能と、前記走行経路における一時停止地点の通過時間を測定する機能と、前記測定された通過時間を前記経路の対応する箇所に関係付けて記録する機能と、前記一時停止地点に関係付けられた前記通過時間を考慮して経路探索を行う機能とをコンピュータに実現するナビゲーションプログラム。
【請求項10】
車両に搭載されるナビゲーション装置と、前記ナビゲーション装置との間で情報交換を行うサーバとから構成され、
前記ナビゲーション装置が、道路情報に基づき出発地点および目的地点を結ぶ経路を探索する経路探索手段と、自車位置を示す自車位置情報を取得する自車位置情報取得手段と、前記自車位置情報から得られた自車位置および前記経路探索手段で探索された経路に基づいて自車の走行経路を案内する経路案内手段と、前記走行経路における一時停止地点の通過時間を測定する一時停止線通過時間測定手段と、前記測定された通過時間を前記経路の対応する箇所に関係付けて前記サーバに送信する通信手段とを備え、
前記サーバが、各ナビゲーション装置から受信した前記経路の一時停止地点に関係付けられた通過時間を記録する通過時間記録手段を備え、
前記経路探索手段は、前記サーバから送られてきた、探索される経路の一時停止地点に関係付けられた通過時間を考慮して経路探索を行うナビゲーションシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−117220(P2010−117220A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−289897(P2008−289897)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】