説明

ナビゲーション用交通情報案内装置

【課題】定常的に走行する地域において、交通情報の取り込みに手数を要することなく、利用者に必要な交通情報のみを案内するナビゲーション用交通情報案内装置とする。
【解決手段】右左折した交差点とその交差点における通過の態様の履歴を通過交差点履歴記憶部36に記憶し、右左折した交差点とその次に右左折した交差点とによる交差点通過順序の履歴を交差点通過順序履歴記憶部37に記憶する。車両走行時に交差点を右左折して通過したことを通過交差点検出部32で検出し、交差点通過順序履歴記憶部から次に右左折する交差点を検索し、両交差点間の走行経路を交差点間ルート演算部34で演算する。通過交差点対応案内情報作成部33では演算した走行経路上の交通情報を取り込んで案内情報を作成し、その案内情報を、通過交差点対応交通情報案内出力部38において、案内を行う情報の発生地点に所定の距離以内になったときに交通情報の案内を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用ナビゲーション装置において、誘導経路を走行していないときにおいても適切な交通情報を案内することができるようにしたナビゲーション用交通情報案内装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年は車両にナビゲーション装置を搭載することが広く普及し、各種高機能のナビゲーション装置が次々と市販され、更に高機能のナビゲーション装置の研究開発が進められている。このようなナビゲーション装置は、利用者が不案内な地点へ低コストで移動する事を支援するルート案内機能を備えている。
【0003】
車両等に搭載する一般のナビゲーション装置においては、地図を描画するための地図データ及び施設等を検索するための施設情報データを記録したCD−ROM、DVD−ROM、ハードディスク等の地図・情報データ記憶媒体と、この地図・情報データ記憶媒体のデータを取り込むデータ取込装置と、地図等を表示するモニタと、GPS受信機及び走行距離センサやジャイロ等を用いた自律航法装置を用い、車両の現在位置及び進行方向の方位を検出する車両位置検出装置を有し、車両の現在位置を含む地図データを地図・情報データ記憶媒体から取り込み、この地図データに基づいて車両位置の周囲の地図画像をモニタの画面に描画すると共に、車両位置マークをモニタ画面に重ね合わせて表示し、車両の移動に応じて地図画像をスクロール表示する、或いは地図画像を画面に固定し車両位置マークを移動させることにより、車両の現在位置を一目で分かるようにしている。
【0004】
CD−ROMやDVD−ROM、或いはハードディスク等の地図・情報データ記憶媒体に記憶されている地図データは、各種の縮尺レベルに応じて適当な大きさの経度幅及び緯度幅に区切られており、道路等は経度及び緯度で表現されたノードの座標集合として記憶されている。道路は2つ以上のノードの連結からなり、地図データは、道路リスト、ノードテーブル及び交差点構成ノードリスト等からなる道路レイヤ、及び地図画面上に道路、建築物、施設、公園及び河川等を表示するための背景レイヤ等の地図データと、市町村名などの行政区画名、道路名、交差点名及び施設の名前等の、文字や地図記号等を表示するための情報データなどから構成される。
【0005】
前記のような道路リンクおよびノードは、ある単位領域(パーセルやメッシュ)毎にまとめられている。ノードは前記のように地点の情報であり、地点の位置および高速ジャンクション・一般交差点などの地点の種別で構成される。それに対して道路リンクは道路の情報であり、道路の始点・終点の位置、道路の長さ・属性で構成される。一般的に道路リンクの始点および終点はノードとして表現されており、属性には、高速道路・一般道路などの道路の種別や幅員などが含まれる。図16には上記のようなデータを備えた、一般的な地図データベースの例を示している。道路リンクは、開始ノードと終了ノードの情報をノードと関連付けて記憶しているので、道路リンクの位置や方向は関連付けされたノードを参照することによって算出することが可能である。
【0006】
また、一般のナビゲーション装置においては、利用者が所望の目的地或いは経由地(以下「目的地」と称する)に向けて道路を間違うことなく容易に走行できるようにするための経路誘導機能を備えている。この経路誘導機能によれば、種々の手段により目的地を設定し、出発地から目的地まで、これらの地点を結ぶ経路の内、利用する道路の種別・走行距離・移動時間・料金など利用者が優先したい項目の各種の条件を加味して適切な経路を演算して提示するようになっている。また、利用者が選択した経路を誘導経路として記憶しておき、走行中、地図画像上に誘導経路を他の経路とは色を変えて太く描画して画面表示したり、車両が誘導経路上の進路を変更すべき交差点に一定距離以内に近づいたときに、交差点を拡大表示し、進路を変更すべき方向を示す矢印等を描画して画面表示したり、音声で右左折の誘導を行うことで、利用者に目的地までの道のりを案内する。
【0007】
上記のような車両用ナビゲーション装置は、VICS情報を入手して誘導経路上に渋滞の発生を検出すると、その迂回経路を提示する等、更に多くの機能を備えることによって、より便利なものとなっている。車両を利用する多くの人がナビゲーション装置の案内を必要とする時は、見知らぬ土地或いは地理や道路に不案内な場所に行かなければならない時であり、そのようなときにはナビゲーション装置は極めて有効な手段となる。しかしながら、日常の車両走行の多くは自宅と勤務先の往復、いつも行く商店或いは商店街とその近辺の買い物先の往復、親しい友人宅への往復、各種趣味の会の集合先への往復等であり、このように定常的に車両を利用する際には、多くの場合ナビゲーション装置による経路案内はあまり必要とされない。
【0008】
上述したように利用者が定常的に車両を利用する範囲においては、多くの場合、ナビゲーション装置による経路案内を必要としないものの、例えば自宅と勤務先への通勤ルートを走行する場合、或いは買い物でスーパー等の特定の地点へ向かう場合、或いはそれらの地点から帰宅する際等において、好ましいと思われている走行路に、時々混雑する交差点や道路が存在することがあり、そのような道路をできる限りさけて走行することが望まれる。
【0009】
その際には、従来のナビゲーション装置においても誘導経路の案内動作の有無に係わらず、現在の交通状況を外部から取得して利用者に提示することが行われており、このような目的の為に外部から提供される現在の交通情報として、VICSに代表されるFM多重・電波/光ビーコン、従来からあるAM帯を使用した道路交通情報放送がある。VICSから取得した交通情報はレベル分けされており、レベル1は渋滞等の情報を文字として表示する目的で利用され、レベル2は渋滞等の情報を画像として表示する目的で利用され、レベル3ではルート案内のルート決定や迂回探索、更には渋滞の状況を地図画面の道路に表示する目的で利用されている。
【0010】
特に前記レベル2やレベル3の情報によって、事故や規制情報の場合では地図上の対応する地点へ発生事象を示すマークを表示し、また交通状況の情報の場合は送信されるリンク旅行時間に従って、特定の交差点間の混雑状況を道路に沿った矢印線の色を変える等により利用者に交通情報の案内を行うことができるようになっている。
【0011】
したがって、このような機能を備えたナビゲーション装置を搭載している車両の利用者は、上記のように時々混雑するその交差点や道路に関する交通情報がVICS等で提供されているときには、走行中においても車両に搭載しているナビゲーション装置を立ち上げ、VICS等で交通情報を取り込むことによって、当該交差点や道路の現在の混雑状況を知ることができる。
【0012】
このように、ナビゲーション装置にとって、利用者を見知らぬ土地に確実且つ安全に誘導経路に沿って案内し、更に関連する各種施設情報を提供するような機能に加え、上記のように定常的に車両を利用する生活圏内において、交通情報を案内する機能も重要な機能であるといえる。
【0013】
なお、ナビゲーション装置に目的地を設定せずに走行しているときであっても渋滞情報を案内するために、車両の走行履歴データを用いて、走行中の車両の走行道路を予測し、その走行道路に関連する交通情報を受信して案内するようにした技術は、特開2000−266562号公報に開示されている。
【特許文献1】特開2000−266562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
利用者が自身の生活圏を走行する場合、利用者は通勤時間帯に混雑が予想される駅付近を避けたルートを通って目的地に向かう、或いは特定の時間帯に混雑する道路を避けるために前記混雑する道路を避けたルートを通って目的地に向かうといったように、目的地に最も早く到着するという要求を満足するルートを走行することが多い。
【0015】
更に、利用者が自身の運転技術に自信がないためカーブが多い道路を通りたくない、運転している車が大きいため狭い道路を通りたくない、燃費を向上させるため極力信号のない道路を通りたい、暗い道路は通りたくないというように、利用者は自身の様々な要求をできるだけ満足する生活圏のルートを通って目的地まで移動している。
【0016】
前述したように利用者の要求は、例えば生活圏の交通事情・通勤する時間帯・利用者の運転技量・所有している車の大きさ・走行するための経費等の影響を受けて様々に変化する。
【0017】
ところが、従来のナビゲーションシステムが算出するルートは、利用者が望む一般的な要求を満足するように算出されるため、利用者毎に異なる様々な要求を満足することはできない。仮にナビゲーションシステムが算出したルートを案内に利用したとしても、案内されるルートと利用者が実際に走行するルートが完全に一致しないことが多く、不適切な案内が行われる可能性が高いという問題があった。
【0018】
また、ナビゲーションシステムのルート案内を利用しない場合においても、前記のように利用者は走行する予定の道路の混み具合や規制の内容を 地図に表示された渋滞・混雑・規制等の交通情報から取得し、当該の道路を迂回する、或いは予定通り通過する等の判断を行うこととなる。ところが、ナビゲーションシステムが地図を表示するディスプレイの表示面積は非常に小さく、利用者が必要としている走行予定の道路全域の渋滞情報を一度に把握することができないことが多い。
【0019】
また、上記のように生活圏内で利用者が特定の施設へ移動する場合、利用者は走行中に表示されている地図画面上に多数の渋滞、交通事故の発生等の情報が表示されるときには、本来知る必要がない道路についてもそれらの交通情報が表示されてしまい、利用者が本来知りたい道路の混雑状況を把握することが困難になるという問題がある。更に、必要な渋滞情報を把握するために、地図の表示位置を移動する、或いは縮尺を変更する等の操作を繰り返し行うこととなるので、利用者に負担を強いてしまうばかりでなく 操作に気をとられることで安全運転の妨げになるという問題があった。
【0020】
また、生活圏を走行しているときに交通情報を音声で案内しようとすると、かなり遠方の交通情報や利用者が通常走行する圏外の交通情報など、利用者にとって不必要な交通情報が延々と案内されることとなり、利用者に不快感を与えることにもなる。
【0021】
また、従来のナビゲーション装置で交通情報を取り込む場合、通常のナビゲーション装置の地図表示画面から、地図等を使用した混雑情報案内の表示の有無を切り替える為に、利用者がリモコン等を操作して順次案内実施の機能を選択して最終的な渋滞情報案内表示を作動させる必要がある。そのため上記のような通勤や買い物のような、日々発生する車両走行では毎日上記のような操作を行う必要があり、その操作が煩わしいという問題がある。
【0022】
したがって本発明は、定常的に走行する地域において、交通情報の取り込みに手数を要することなく、また利用者にとって必要な交通情報のみを見やすく表示し、更に最適な音声案内を行うことができるナビゲーション用交通情報案内装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明に係るナビゲーション用交通情報案内装置は、車両走行時に右左折した交差点とその交差点における通過の態様の履歴を記憶する通過交差点履歴記憶手段と、前記右左折した交差点とその次に右左折した交差点とによる交差点通過順序の履歴を記憶する交差点通過順序履歴記憶手段とを有する交差点通過履歴記憶手段と、車両走行時に交差点を右左折して通過したことを検出する通過交差点検出手段と、前記通過交差点検出手段で交差点の通過を検出したとき、前記交差点通過順序履歴記憶手段から次に右左折する交差点を検索し、両交差点間の走行経路を演算する交差点間ルート演算手段と、前記交差点間ルート演算手段で演算した走行経路上の交通情報を取り込んで案内情報を作成する通過交差点対応案内情報作成手段と、前記通過交差点対応案内情報作成手段で作成した案内情報を、案内を行う情報の発生地点に所定の距離以内に近づいたときに出力する通過交差点対応交通情報案内出力手段とを備えたことを特徴とする。
【0024】
また、本発明に係る他のナビゲーション用交通情報案内装置は、前記ナビゲーション用交通情報案内装置において、前記交差点通過順序履歴記憶手段から検索した次に右左折する交差点について、前記通過交差点履歴記憶手段に記憶された当該交差点にて利用者が進行する方向、即ち交差点通過後に利用者が走行する道路を推定し、更に前記通過交差点対応案内情報作成手段は、該推定した道路についての交通情報も取り込んで案内情報を作成することを特徴とする。
【0025】
また、本発明に係る他のナビゲーション用交通情報案内装置は、前記ナビゲーション用交通情報案内装置において、前記交差点間ルート演算手段では、前記交差点通過順序履歴記憶手段から検索した次に右左折する交差点の、更にその次に右左折する交差点を前記交差点通過順序履歴記憶手段から検索し、得られたその次に右左折する交差点迄のルートも演算し、前記通過交差点対応案内情報作成手段では前記次に右左折する交差点とその次に右左折する交差点迄のルートについての交通情報も取り込んで案内情報を作成することを特徴とする。
【0026】
また、本発明に係る他のナビゲーション用交通情報案内装置は、前記ナビゲーション用交通情報案内装置において、前記交差点通過順序履歴記憶手段には、交差点間を通過した回数を更新して記憶し、前記交差点間ルート演算手段は、前記次に右左折する交差点からその次に右左折する交差点へのルートを、前記交差点通過順序履歴記憶手段から最も通過回数の多い交差点間を選択して、両交差点間の走行経路を演算し、前記通過交差点対応案内情報作成手段では、前記最も通過回数の多い交差点間について演算した走行経路の交通情報も取り込んで案内情報も作成することを特徴とする。
【0027】
また、本発明に係る他のナビゲーション用交通情報案内装置は、前記ナビゲーション用交通情報案内装置において、前記通過交差点対応交通情報案内出力手段は、案内を行う情報の発生地点に第1の所定の距離以内に近づいたときに画面に当該交通情報を表示し、第2の所定の距離以内に近づいたときに音声で当該交通情報を案内することを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、利用者が右左折したことのある交差点を結ぶルート上の渋滞や混雑等の交通情報を案内するので、利用者はナビゲーションシステムに目的地を設定するような操作を行う必要がなくなるとともに、冗長な交通情報の案内をすることがなくなり、特に利用者が運転者であるとき運転に対する注意力が散漫になることが少なくなる。また、同じ交差点を右左折する場合でも、交差点への進入道路や交差点が異なると別の交差点通過履歴として記憶することができるので、例えば通勤時の行きと帰りとで異なる案内を実行することも可能になる。
【0029】
更に本発明は、利用者が通過したことがある交差点間のルート上の交通情報のみを地図上に表示するので、地図に冗長な交通情報を表示せずに済み地図が見やすくなり、また音声で交通情報を出力するときには、無用な音声案内による利用者への不快感をなくすことができる。更に、走行したことのある道路を記憶するのではなく、交差点とその通過順序を記憶するため、記憶するために必要なメモリが少なくて済む、等の効果を奏する。
【0030】
また、上記のような本発明は、例えば前記先行技術として提示した従来技術としての特許文献に記載のような、出発地から目的地までの経路を推定し、その経路上の渋滞などの交通情報を案内する技術とは下記のような点で大きく相違し、本発明特有の作用効果を奏する。即ち、前記従来技術においては、目的地・出発地から目的地までに利用者が走行したルート・出発地点・出発時刻などを経路データとして記憶し、次回以降走行時に、自車の走行パターンと類似する経路を記憶した経路データから抽出し、抽出した経路上の交通情報などを案内する。
【0031】
それに対して本発明による交通案内装置は、目的地の位置に関わらず利用者が右左折したことがある交差点間の道路や交差点に接続した道路の渋滞などの交通情報を案内するものであり、むしろ車両が定常的に利用される生活圏内の走行時に、目的地を設定せずに走行するときに有効な技術である。また、本発明による交通情報案内装置は利用者が右左折した交差点の履歴を記憶し、交差点を右左折後に次に右左折する可能性のある交差点、更にはその次に右左折する可能性の高い交差点までの道路上の交通情報を案内することができる。
【0032】
この点を図13の走行例によって比較する。同図中の実線及び太い破線は利用者が走行した走行経路を示している。また、実線の楕円は前記従来技術の案内対象道路を示し、破線の楕円は本発明の案内対象道路を示している。同図に示したように自車が道路上を走行した際に前記従来技術によって推定された経路が太い実線で示した経路であったとした場合、実線の楕円の範囲に含まれる、即ち、推定した経路上にある渋滞2や3が案内され、渋滞1は案内されない。逆に、太い破線で示した経路が推定されたとした場合、渋滞1のみが案内されることとなる。
【0033】
それに対して本発明においては、右左折したことがある交差点までの道路及び右左折したことがある交差点に接続した道路も案内対象とするので、破線の楕円の範囲に含まれる道路と交差点に接続した道路上の渋滞1、2、3の全てが案内対象になる。このように本発明は、利用者が走行したことがある自車位置周辺の道路の状況を案内するものであり、利用者が通過した事のある道路を案内の対象とすることによって、利用者が目的地に到着するまでに走行する道路の選択肢を広げることができる。更に、本発明における交通案内のための処理は、右左折したことがある交差点を通過した時点で開始されるので、目的地の位置に関わらず常に利用者がよく利用する道路が案内対象となる。
【0034】
また、通常の生活圏の車両走行時には、例えば会社の帰りにスーパーに立ち寄るなど、同じ道路を部分的に利用するが、全体の経路は全く異なる場合がある。図14はある利用者の走行経路を示した図であり、太線の実線で示した矢印は利用者がスーパーや会社に移動するために利用している経路を示している。このような通常の走行の態様において、利用者がたまたま早く帰ることができたので、帰りにスーパーに寄ろうと考え、会社から破線のような道路を通ってスーパーに向かった場合、本発明による交通案内装置は既に交差点1、2を記憶しているので、破線の経路でスーパーまで向かったことがないとしても、案内することが可能となる。
【0035】
このように、本発明による交通案内装置は交差点と交差点を結ぶ道路を案内対象としているので、利用者がある目的地に向かっている途中に目的地を変更したような場合でも、随時利用者の運転状況に合わせた案内が可能となる。その点前記従来技術のように経路や目的地を推定するシステムの場合、勤務が終わった後は自宅に戻ると推定し、全く不要な案内を行ってしまう可能性が高い。
【0036】
また、前記のように本発明では利用者が走行したことがある必要最小限の範囲における道路上に発生した渋滞などの交通情報のみを地図上に表示し、また音声案内をすることが可能であるので、利用者は錯綜した地図画面を見ることなく目的地にできるだけスムーズに到着できる道路を容易に選択することが可能になり、また不必要な音声案内を聞くこともなくなる。
【0037】
更に、前記従来技術においては目的地・出発地・出発地から目的地まで走行した経路などを記憶するため、最低1度は目的地を設定しなければならず、またこのシステムの利用の有無の確認等の操作を行うのに対して、本発明においては利用者は一切操作を行う必要がなく、自動的に作動させることができる。また、前記従来技術においては経路自体を記憶するのに対し、本発明では交差点を記憶するため記憶容量が少なくて済む。更に、前記従来技術では自車の走行データから走行中の経路を推定するまでに多くの計算を要するが、本発明においては通過した交差点を記憶した交差点のデータから検索するのみで済む。
【0038】
また、前記従来技術では、走行した経路データを利用して目的地を推定する方式であるので、推定した経路が利用者の行きたい場所でない場合、冗長な案内をしてしまう可能性があり、また、走行データを利用して利用者が走行する経路を推定するので、走行を開始してすぐに精度の高い経路を推定することが難しいという問題もある。それに対して本発明による交通情報案内装置は利用者が走行したことがある交差点を通過した直後から案内を開始することができるという効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明は定常的に走行する地域において、交通情報の取り込みに手数を要することなく、また利用者にとって必要な交通情報のみを出力するという目的を、車両走行時に右左折した交差点とその交差点における通過の態様の履歴を記憶する通過交差点履歴記憶手段と、前記右左折した交差点とその次に右左折した交差点とによる交差点通過順序の履歴を記憶する交差点通過順序履歴記憶手段とを有する交差点通過履歴記憶手段と、車両走行時に交差点を右左折して通過したことを検出する通過交差点検出手段と、前記通過交差点検出手段で交差点の通過を検出したとき、前記交差点通過順序履歴記憶手段から次に右左折する交差点を検索し、両交差点間の走行経路を演算する交差点間ルート演算手段と、前記交差点間ルート演算手段で演算した走行経路上の交通情報を取り込んで案内情報を作成する通過交差点対応案内情報作成手段と、前記通過交差点対応案内情報作成手段で作成した案内情報を、案内を行う情報の発生地点に所定の距離以内に近づいたときに交通情報の案内出力を行う通過交差点対応交通情報案内出力手段とを備えることによって実現した。
【実施例1】
【0040】
本発明の実施例を図面に沿って説明する。図1は本発明によるナビゲーション用交通情報案内装置の主要機能を示す機能ブロックとそれらの相互関係を示す機能ブロック図であり、図2〜図7に示す作動フローにしたがって作動させることにより本発明を実施することができる。なお、同図において、各機能を行う機能部は、各々各機能を行う手段ということもできる。
【0041】
図1の機能ブロック図においては、従来のナビゲーション装置と同様に、システム制御部10に各種の所定の機能を総合的に行うためのソフトウェアを記録したROM、そのソフトウェアを処理するためのCPU及びRAM等を備え、これと接続した各機能部の制御を行っている。図示のナビゲーション装置においては、このシステム制御部10に車両位置検出部13が接続し、GPS受信器11の位置データを入力し、更に必要に応じて車速センサや角度センサによる走行距離・方位検出部12からの車両の移動データを入力することによって、車両の現在位置を正確に検出している。また、地図データに基づいて、地図上における現在位置も検出する。
【0042】
また、VICS受信器等を備えたVICS情報入力部14を備え、ビーコン、FM放送等からVICS等の交通情報を取り込んでいる。本発明においては特にこの交通情報を取り込むことにより、後述するように自車の走行方向前方に存在する渋滞を、通過交差点に関連して検出できるようにしている。
【0043】
指示信号入力部17においては、このナビゲーション装置での利用者によるリモコン15等の指示信号を入力している。更に必要に応じて利用者の音声を認識する処理によって利用者の指示信号を入力する音声認識部16の信号も、この指示信号入力部17に入力している。
【0044】
またデータ取込部19においては、CD−ROM、DVD−ROM、或いはハードディスク等の地図・情報データ記録媒体18から必要な地図データ、施設情報等を取り込み、更にそのデータ記録媒体がハードディスクのように容易にデータの書き込みができるような場合には、外部から取り込んだデータや、他の機能部で処理したデータを後に読み取って利用することができるように、そのデータ記録媒体にデータ入力もできるようにしている。地図表示部20ではこれらのデータにより地図の表示処理を行い、画像出力部22から画像表示部21に地図を表示している。また、この地図表示部20においては、前記のような交通情報を地図に重ねて表示し、必要に応じて誘導経路等、各種データや情報を重ねて表示する。
【0045】
誘導経路演算部25においては、車両位置検出部13で検出した車両の現在地を取り込み、画面に表示されるカーソルの操作による地図のスクロールにより、或いは住所を入力することにより、更には電話番号を入力する等の種々の手法により設定された目的地を取り込み、最短所要時間、最短距離、一般道路優先等の種々の条件において最適の誘導経路を演算して提示する。誘導経路案内部26は前記のようにして演算された誘導経路を、画像出力部22から表示部21の地図画面上に重ねて表示し、更に右左折交差点を拡大表示し、また音声出力部24からスピーカー23に出力して音声案内も行う。
【0046】
システム制御部10には更に本発明を実施する主要機能部である交通情報案内処理部30を接続し、その中に通過交差点対応案内処理部31、交差点通過履歴記憶部35、通過交差点対応交通情報案内出力部38を備えている。通過交差点対応案内処理部31における通過交差点検出部32は、自車両が交差点を通過したことを検出するものであり、車両位置検出部13と地図データとの比較により検出することができる。当部位において、自車が通過する交差点や分岐地点において、その地点の通過を監視し、交差点や分岐地点に入る前に走行していた道路リンク(進入リンク)と、出た時に走行している道路リンク(脱出リンク)の方向や道路種別を比較し、当該地点で右左折したことを判断する。
【0047】
例えば図8に示すように、自車が交差点を右折した場合、即ち、自車が位置P1から位置P2まで走行した場合、通過交差点検出部32は車両位置検出部13から、自車がノードN1を通過したという通知を受ける。通過交差点検出部32は通過したノードN1の属性が交差点であり、且つ、ノードN1を通過する前に走行した道路リンクL1の方向とノードN1を通過後に走行した道路リンクL2の方向に角度Dの差があるので、通過交差点検出部は自車が交差点を右左折(図中では右折)したと判断し、その旨のデータを交差点通過履歴記憶部35に出力する。
【0048】
ノードN1の属性が交差点又は分岐でない場合、或いは、道路リンクL1の方向と道路リンクL2の方向に一定以上の角度の差がない場合、通過交差点検出部32は自車が交差点を右左折していないと判断し、自車の交差点や分岐地点の通過の監視を継続する。通過交差点検出部32は、上記のように自車が交差点を通過したことを検出すると、進入リンク・脱出リンク・通過ノードなどの通過した交差点の情報を記憶するように交差点通過履歴記憶部35に指示する。
【0049】
通過交差点対応案内処理部31における通過交差点対応案内情報作成部33は、利用者が右左折したことがある交差点間、或いはその先の交差点を通過した後の道路における交通情報の案内を、後述のように実施する。また、交差点間ルート演算部34では、2つの交差点が確定したとき、その間を通過するルートを演算する。この演算は、前記誘導経路演算部25の処理機能を用いて行うこともできる。
【0050】
交差点通過履歴記憶部35には、通過した、特に右左折した交差点について、その交差点へ進入した道路と脱出した道路の情報を含む通過した交差点の情報の履歴を記憶する通過交差点履歴記憶部36と、通過した、特に右左折した交差点の通過順序に関する履歴を記憶する交差点通過順序履歴記憶部37とを備えている。通過交差点履歴記憶部36は、車両が走行して交差点や分岐路で右左折を行ったとき、自身が記憶している交差点の情報から同じ交差点の通過履歴を検索し、同じ交差点の通過履歴が存在しない場合、新たな通過交差点履歴として記憶する。この記憶手段として、HDDを用いたナビゲーション装置の場合には、これに記憶しても良い。
【0051】
通過交差点履歴記憶部36における記憶に際しては、例えば前記図8に示した交差点を通過した場合には、例えば図15(a)に示すように記録される。即ち、通過交差点履歴は交差点ノード・進入リンク・脱出リンクから成る。通過交差点IDの#1は図8に示した交差点ノードN1の交差点を通過した際に記録される通過交差点履歴である。図示の記録例においては、進入リンクL1からこの交差点に進入したとき、脱出リンクがL2とL20の道路を通ったことが記録され、これらのデータに対して#1と、#2の交差点IDが付されている。
【0052】
交差点通過履歴記憶部35は、前記のように通過した交差点とその通過の態様の記憶を行った後に、交差点通過順序履歴記憶部37に、交差点を通過した順序を記憶する。例えば図9に示したように自車が走行した場合、通過交差点検出部32は交差点1、2、3という順序で、交差点通過履歴記憶部35に右左折した交差点の記憶指示を行う。即ち、通過交差点検出部32は、自車が交差点1を通過した際に前記のように通過交差点履歴記憶部36に交差点1の履歴データを記憶するように指示する。更に通過交差点検出部32は、交差点2を通過した際に交差点通過順序履歴記憶部37に交差点2の履歴データを記憶するように指示する。
【0053】
交差点通過順序履歴記憶部37はその後、交差点の通過順序を交差点の通過順序履歴として記憶する。その例を図15(b)に示す。同図において、開始交差点ID・終了交差点IDは同図の通過交差点のIDを示し、通過回数は自車が同じ通過順序で交差点を通過した回数を示す。前記図9の例においては、自車が交差点1を通過した後に交差点2を通過したことから、交差点通過順序履歴記憶部37は交差点1(通過交差点ID♯1)を開始交差点、交差点2を終了交差点(通過交差点ID♯2)として通過順序S1を記憶する。過去に通過したことのない交差点を通過した場合、通過回数を1として新たに記憶する。過去に交差点1から交差点2の順序で走行した履歴がある場合、記憶している通過回数を1回増やす。
【0054】
交通情報案内処理部30における、通過交差点対応交通情報案内出力部38においては、前記のように通過交差点対応案内情報作成部33で作成した案内情報を、適切な地点で画面に表示、或いは音声で出力するために、自車位置を案内出力地点監視部39で監視し、その適切な地点において画面表示或いは音声出力を行う。
【0055】
上記のような機能ブロックからなるナビゲーション用交通情報案内装置においては、例えば図2及び図3の交差点通過履歴記憶処理、図4〜図6の通過交差点対応交通情報案内処理1〜3、図7の自車周辺交通情報案内出力処理の作動フローにしたがって作動させることができる。
【0056】
図2、及び同図のステップS20の処理を示す図3の例においては、図2の交差点通過履歴記憶処理に際して、このナビゲーション装置を搭載した車両が走行すると(ステップS11)、逐次現在位置を検出し(ステップS12)、車両の交差点通過の有無を判別する(ステップS13)。この作動は図1の通過交差点検出部32が車両位置検出部13、GPS11や走行距離・方位検出部12によって特定した現在位置と、地図・情報データ記録媒体18の地図データをデータ取込部19から取り込み、地図データにおける道路と現在位置をマッチングして、道路データの交差点ノードに車両が到達した後の離脱の有無を判別することにより、交差点通過の有無を判別することができる。ステップS13で未だ交差点を通過していないと判別したときには、前記ステップS11に戻って車両の走行と現在位置の検出を継続する。
【0057】
通過交差点検出部32がステップS13で交差点を通過したと判別したときには、交差点に入る前の道路リンク(進入リンク)を検出し(ステップS14)、更に交差点から出た後の道路リンク(脱出リンク)を検出する(ステップS15)。次いで図示の実施例においては進入リンクと脱出リンクの道路種別の相異を判別し(ステップS16)、進入リンクの道路の道路種別が異なると判別したときにはステップS18に進んで当該交差点を右左折したものと判別している。多くの場合は交差点で道路種別が異なるときには右左折しており、前記ステップS16の判別は次に判別する進入リンクと脱出リンクの角度の差は所定以上であるか否かの判別(ステップS17)より右左折の有無を容易に判別することができるので、前記ステップS16の判別を行っている。但し、この判別は次のステップで正確に且つ容易に判別できるときには削除することもできる。
【0058】
ステップS16の判別で進入リンクと脱出リンクの道路種別が同じであると判別したときには、次いで進入リンクと脱出リンクの角度の差は所定以上か否かを判別する(ステップS17)。ここで例えば前記図8で説明したように、進入道路リンクL1と脱出道路リンクL2が角度Dであるときには、両リンクの相互間で角度差が所定以上あると判別し、ノードN1の交差点で右左折したことを検出することができる。ここで進入リンクと脱出リンクの角度の差が所定以上ではないと判別した時には、この交差点を右左折せずに進んだものと判別し、ステップS11に戻って前記作動を繰り返す。
【0059】
ステップS18で当該交差点を右左折したと判別したとき通過交差点検出部32は、交差点通過履歴記憶部35にそのときのデータを出力する。図1に示すように交差点通過履歴記憶部35には通過交差点履歴記憶部36と交差点通過順序履歴記憶部37とを備え、各々で図3に示すような交差点通過履歴記憶処理が順になされる。
【0060】
図3に示す交差点通過履歴記憶処理(図2のステップS20)においては、現在右左折した交差点の情報を入力する(ステップS21)。これらの情報は各記憶部に記憶するための情報であり、後に詳述する。次いで通過交差点履歴記憶部36により当該交差点の右左折履歴の有無を判別する。ここで、現在右左折した交差点のデータが存在しないと判別したときには、新しい交差点である、或いは以前通過したことのある交差点でも、進入リンクと脱出リンクとが一致していないときには新しい通過交差点データであると判別する。
【0061】
ステップS22で通過交差点履歴記憶部36に現在の右左折交差点履歴が存在しないと判別したときには、通過交差点履歴記憶部36に通過交差点IDを新設し、前記図15(a)に示すように、交差点ノード、進入リンク、脱出リンクのデータを記録する。なお、必要に応じてこのデータの中に角交差点を同じ態様で通過した回数のデータを記録しても良い。
【0062】
次いで図示実施例においては、通過交差点履歴記憶部36に記憶された交差点が複数存在するか否かを判別し(ステップS24)、複数存在しない、即ち車両が走行して最初の右左折交差点であったときには、交差点の通過順序履歴は存在しないのでここでの処理は終了し、図2に示すように車両の走行と現在位置の検出作動以降の作動を繰り返す。ステップS24において通過交差点履歴記憶部36に記憶された交差点が複数存在すると判別したときには、交差点通過順序履歴記憶部37に現在と同じ通過交差点順序は存在するか否かを判別する(ステップS25)。なお、交差点通過順序履歴記憶部には前記図15(b)に示すようなデータが記録されている。
【0063】
ステップS25で交差点通過順序履歴記憶部37に現在と同じ通過交差点順序が存在しないと判別したときには、交差点通過順序履歴記憶部37に通過順序IDを新設し、開始交差点ID、終了交差点ID、通過回数を記録する。なお、通過回数はこのデータの最初の記録であるので、1回として記録してこの処理を終了する(ステップS26)。また、ステップS25で交差点通過順序履歴記憶部37に現在と同じ通過交差点順序が存在すると判別したときには、その該当通過交差点順序IDのデータ部分に通過回数を1回加算し、この処理を終了する。この処理が終了すると(ステップS28)、図2のステップS20が終了し、図2に示した交差点通過履歴記憶処理が終了する。
【0064】
上記のような交差点通過履歴の記憶処理が車両の通常の走行時に常に行われ、データが蓄積されていく。このようなデータが蓄積されている状態で車両を走行するときには、例えば図4〜図6に示すようにして通過交差点対応の交通情報案内処理1〜3がなされる。図4に示す通過交差点対応交通情報案内処理1においては、最初に前記図2及び図3に示すような交差点通過履歴記憶処理がなされる(ステップS31)。即ち、前記図2に示すように、車両が走行し(ステップS11)、そのときの現在位置を検出し(ステップS12)、交差点を通過したとき(ステップS13)、交差点を右左折したか否かの判別処理を行い(ステップS14〜S18)、右左折したときにはそのときのデータを交差点通過履歴記憶部35に出力して(ステップS19)、図3に示すような通過交差点履歴記憶部36、及び交差点通過順序履歴記憶部37に図15(a)及び(b)に示すようなデータを記憶する。
【0065】
この状態は交差点を通過した直後であり、この交差点のノードが地図データからわかるので、その後の交差点間の交通情報の案内処理のために通過交差点履歴記憶部36から通過交差点の存在の有無の検索、即ち通過交差点に対応する通過交差点IDの検索を行う(ステップS32)。次いで、通過した交差点の履歴である通過交差点IDが、通過交差点履歴記憶部36内部の例えば図15(a)に示すような通過交差点履歴データに存在する旨を判別し(ステップS33)、その交差点を初めて走行したとき、或いは同じ進入リンクと脱出リンクからなる通過交差点IDが存在しないときには、ステップS31に戻って前記作動を繰り返す。
【0066】
ステップS33で通過交差点IDが存在すると判別したときには、前記図15(b)に示すようなデータを記憶している交差点通過順序履歴記憶部37から、現在の右左折交差点を通過した後に通過したことのある次の右左折交差点を全て検索する(ステップS34)。その後、現在右左折により通過した交差点から次に右左折した交差点迄のルートを計算する(ステップS35)。この作動は、図1の交差点間ルート演算部34において、交差点通過履歴記憶部35から前記のようにして検索されたデータにより行われる。なお、この交差点間ルート演算処理は、誘導経路演算部25において行うようにしても良い。
【0067】
その後上記のようにして演算した各交差点間ルート上の交通情報を、図1のVICS情報入力部14から取得する(ステップS36)。次いで、取得した交通情報の案内出力の指示を行う。ここでは未だ交通情報の案内出力の指示を行うのみであり、その指示に従ってどのようなタイミングで案内を行うかは、後述するように、図7に示す自車周辺案内出力処理によって、最も適切な時期に、適切な手法によって行うこととなる(ステップS38)。
【0068】
上記のような作動によって、例えば図10に示したような車両の走行時には、以下のようにして交通情報の案内が行われる。即ち、自車が図10の太線及び破線の矢印のように走行した結果を交差点通過履歴記憶部35が記憶していた場合、通過交差点対応案内処理部31は自車が交差点1を通過した後に右左折を行ったことがある交差点2及び3を、交差点通過履歴記憶部35から取得する。通過交差点対応案内処理部31は、交差点1から交差点2及び3までのルートを交差点間ルート演算部34から取得し、通過交差点対応案内情報作成部33で案内する交通情報を作成し、通過交差点対応交通情報案内出力部38からルート上の交通情報の案内を行うこととなる。このように、この実施例においては過去に通過したことのある交差点を通過した時に、当該交差点通過後に右左折を行った交差点を履歴から取得し、当該交差点から次に右左折を行った交差点までのルート上に発生している交通渋滞等を案内する。
【0069】
更に本発明は、交差点間を結ぶルート上の交通情報の案内に加えて、右左折をしたことがある交差点に接続している道路の案内を行うようにすることもできる。その際の動作フローを図5に示している。図5に示す通過交差点対応交通情報案内処理2においては、最初前記図4のステップS31からステップS36の作動を行うことにより、現在右左折した交差点から以前に通過したことのある次の右左折交差点迄のルート計算とその間の交通情報取得を行った後(ステップS41)、次の交差点において現在の同一進入リンクからの脱出リンクを通過交差点履歴記憶部36から全て検索する(ステップS42)。
【0070】
その後次の交差点からの脱出リンクについて、以前走行したことのある脱出リンク、即ちこの交差点を通過後に走行したことのある道路の交通情報を取得する(ステップS43)。次いで、前記図4と同様に取得した交通情報の案内出力を通過交差点対応交通情報案内出力部38に指示し(ステップS44)、図7に示すような自車周辺案内出力処理を行う(ステップS45)。
【0071】
上記のような作動は例えば図10に示した交差点3についての拡大図である図11において、交差点3に接続している道路リンクL5が混雑、L7が渋滞している場合、前記のような交差点1から3の道路の案内に加えて、道路リンクL5及びL7の渋滞の案内を行うこととなる。このように交差点3から脱出する道路上の交通情報を案内することによって、利用者は道路リンクL5とL7を比較して、混雑していない道路を選択して走行することができるようになる。
【0072】
本発明は更に、ある交差点を右左折した後にかなり高い頻度で右左折する次の交差点と更にその次に右左折した交差点の間の道路について、交通情報の案内を行うようにすることもできる。その際の作動フローを図6に示している。図6に示す通過交差点対応交通情報案内処理3においては、最初前記図5の動作フローと同様に前記図4のステップS31からステップS36の作動を行うことにより、現在右左折した交差点から従来通過したことのある次の右左折交差点迄のルート計算とその間の交通情報取得を行った後(ステップS51)、次の交差点において現在の同一進入リンクからの脱出リンクを通過交差点履歴記憶部36から全て検索する(ステップS52)。
【0073】
次いで図6に示す例においては、あまりにも多数の交通情報が案内されるのを防ぐために、その脱出リンクの中で最も走行頻度の高いリンクを選択する(ステップS53)。その後、最も走行頻度の高いリンクの先の右左折交差点を、交差点通過順序履歴記憶部37から検索し(ステップS54)、次の交差点からその次の交差点までのルートを前記図4のステップS35と同様に計算する(ステップS55)。なお、上記実施例においては最も走行頻度の高いリンクを今回も走行するであろうと推定したものであるが、所定以上の頻度で次の交差点からその次の交差点に行くと判別したときのみ、次の交差点からその次の交差点までのルートを演算するように構成しても良い。
【0074】
その後、次の交差点からその次の交差点までの交通情報を取得する(ステップS56)。以降は前記図4及び図5と同様に取得した交通情報の案内出力を通過交差点対応交通情報案内出力部38に指示し(ステップS57)、図7に示す自車周辺案内出力処理を行ってこの一連の処理を終了する。なお、前記の例においては図6の通過交差点対応交通情報案内処理3を、ステップS51に示すように、図4のステップS31からステップS36までの処理を行った後に続く処理を行う態様で示したが、これを、図5のステップS43による次の交差点からの脱出リンクの交通情報を取得した後に、続けて行うように設定することもできる。
【0075】
上記のような作動は例えば図10に示した走行例において、次のようにして案内処理がなされる。即ち、この実施例においては毎日のように自車が同じ道路を走行している場合、ある交差点を右左折すると次に右左折する可能性の高い交差点からその次の右左折する交差点までの案内を行うものであり、例えば自車が図10の破線で示したコースを100回、太線で示したコースを3回通過していた場合、自車が交差点1を通過した後は交差点2を右折し交差点4まで高い確率で走行すると推測できるので、交差点1を図4の矢印で示したように左折した場合は、交差点1から交差点2と交差点2から交差点4までの道路上に発生した交通情報を案内対象とすることとなる。
【0076】
図4〜図6のようにして自車両の走行に関連の強い交通情報を取得した後、本発明においては利用者にとって適切なタイミングでそれらの取得した交通情報を案内する。そのための動作フローを図7に示している。図7に示す自車周辺の交通情報の案内出力処理に際しては、最初前記図4のステップS37、図5のステップS44、図6のステップS56で指示された交通情報案内出力指示発生の有無の判別を行う。この実施例においては前記図4〜図6の作動を全て行うこととして示しているが、本発明において例えば図4の作動のみを行うように設定したときには、図4のステップS37の後にこの処理が行われ、図4の処理に続いて図5の処理のみを行うように設定しているときには、図5のステップS44の後にこの処理が行われる。
【0077】
ステップS61においてそれらの各部で交通情報案内出力指示が無いときには交通情報が存在するまで先の作動を繰り返し、ここで交通情報案内出力指示があると判別したとき、案内出力地点監視部39は、現在地から案内出力指示された交通情報案内地点までの距離が第1の所定距離L1以内に近づいた事を常時監視する(ステップS62)。次いで、ステップS63で前記のようにして監視している状態で、現在地から案内出力指示された交通情報案内地点までの距離が第1の所定距離L1以内に近付いていないと判別したときにはステップS62により監視を継続し、例えば3km等の第1の所定距離L1以内に近づいたと判別したときには、地図画面上に該当する交差点情報を表示する(ステップS64)。
【0078】
その後、現在地から案内出力指示された交通情報案内地点までの距離が、例えば500m等の第2の所定距離L2(<L1)以内に近づいた事を監視する(ステップS66)。未だ第2の所定距離L2以内に近付いていないと判別したときにはステップS65に戻って監視を継続し、第2の所定距離L2以内に近づいたと判別したときには、その所定距離L2以内に近づいた交通情報を音声で案内出力する(ステップS67)。
【0079】
上記のような作動を行うので、従来のナビゲーションシステムが行っているのと同様の渋滞・混雑・規制などの交通情報の案内を、画面上では例えば自車から3km以内に近づいた自車の走行に関連の強い交通情報を画面に表示し、例えば500m以内になった交通情報は最も確実に利用者に伝えることができる音声によって案内を行う。なお、前記第1の所定距離L1及び第2の所定距離L2を同一距離に設定しても良い。図12に示す走行例においては、予測された走行経路に沿った渋滞1及び渋滞2のみを案内する。同様に地図に表示される渋滞も渋滞1及び渋滞2のみであり、渋滞3や4は表示されない。即ち、通過順序履歴に含まれる交差点間のルート及び通過交差点履歴の交差点の脱出リンク上の交通情報は地図上に表示され、渋滞などの事象に自車が接近すると案内されるが、それ以外の地点の交通情報は表示も案内も行われない。
【0080】
以上説明したように本発明は、右左折した交差点、及び、右左折した交差点の通過した順序を記憶することによって、利用者が通過したことのある交差点間の交通情報を案内する。案内を行う道路は利用者が普段利用している道路であるので、例え利用者が案内された道路を走行しない場合であっても、案内された情報からその付近の交通状況を推測することが可能になり、渋滞や混雑に巻き込まれる可能性を減らすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は車両に直接搭載されたナビゲーション装置の他、外部から車両に持ち込んで使用するナビゲーション装置等、種々のナビゲーション装置において交通情報案内装置として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施例の機能ブロック図である。
【図2】同実施例における交差点通過履歴記憶処理の作動フロー図である。
【図3】同作動フロー図における交差点通過履歴記憶処理の作動フロー図である。
【図4】同実施例における通過交差点対応交通情報案内処理の第1の作動フロー図である。
【図5】同実施例における通過交差点対応交通情報案内処理の第2の作動フロー図である。
【図6】同実施例における通過交差点対応交通情報案内処理の第3の作動フロー図である。
【図7】同実施例における自車周辺交通情報案内出力処理の作動フロー図である。
【図8】自車が交差点を右折したときの通過交差点検出部の作動を説明する図である。
【図9】自車の走行例と交差点通過履歴記憶部への記憶の態様を説明する図である。
【図10】自車の複数の走行例と交差点間案内部での案内の態様を説明する図である。
【図11】図10の交差点3部分の拡大詳細説明図である。
【図12】自車の複数の走行例と次の通過交差点からその次の通過交差点の走行履歴に基づいた渋滞案内の例を示す図である。
【図13】本発明における走行例と交通情報案内出力の態様を説明する図である。
【図14】本発明における走行例と交通情報案内出力の他の態様を説明する図である。
【図15】(a)は本発明における通過交差点履歴記憶部の記憶データ例であり、(b)は交差点通過順序履歴記憶部の記憶データ例である。
【図16】一般的な地図データベースの例を示す図である。
【符号の説明】
【0083】
11 GPS受信器
12 走行距離・方位検出部
13 現在位置検出部
14 交通情報取得部
15 リモコン
16 音声認識部
17 指示信号入力部
18 地図・情報データ記録媒体
19 データ取込部
20 地図表示部
21 画像表示部
22 画像出力部
23 スピーカー
24 音声出力部
25 誘導経路演算部
26 誘導経路案内部
30 交通情報案内処理部
31 通過交差点対応案内処理部
32 通過交差点検出部
33 通過交差点対応案内情報作成部
34 交差点間ルート演算部
35 交差点通過履歴記憶部
36 通過交差点履歴記憶部
37 交差点通過順序履歴記憶部
38 通過交差点対応交通情報案内出力部
39 案内出力地点監視部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両走行時に右左折した交差点とその交差点における通過の態様の履歴を記憶する通過交差点履歴記憶手段と、前記右左折した交差点とその次に右左折した交差点とによる交差点通過順序の履歴を記憶する交差点通過順序履歴記憶手段とを有する交差点通過履歴記憶手段と、
車両走行時に交差点を右左折して通過したことを検出する通過交差点検出手段と、
前記通過交差点検出手段で交差点の通過を検出したとき、前記交差点通過順序履歴記憶手段から次に右左折する交差点を検索し、両交差点間の走行経路を演算する交差点間ルート演算手段と、
前記交差点間ルート演算手段で演算した走行経路上の交通情報を取り込んで案内情報を作製する通過交差点対応案内情報作成手段と、
前記通過交差点対応案内情報作成手段で作製した案内情報を、案内を行う情報の発生地点に所定の距離以内になったときに交通情報の案内出力を行う通過交差点対応交通情報案内出力手段とを備えたことを特徴とするナビゲーション用交通情報案内装置。
【請求項2】
前記交差点通過順序履歴記憶手段で検索した次に右左折する交差点について、前記通過交差点履歴記憶手段により当該交差点通過後に利用者が走行する道路を推定し、前記通過交差点対応案内情報作成手段が、該推定した道路についての交通情報も取り込んで案内情報を作成することを特徴とする請求項1記載のナビゲーション用交通情報案内装置。
【請求項3】
前記交差点間ルート演算手段では、前記交差点通過順序履歴記憶手段で検索した次に右左折する交差点について、更にその次に右左折する交差点を前記交差点通過順序履歴記憶手段で検索し、得られたその次に右左折する交差点迄のルートも演算し、
前記通過交差点対応案内情報作成手段では前記次に右左折する交差点とその次に右左折する交差点迄のルートについての交通情報も取り込んで案内情報を作成することを特徴とする請求項1記載のナビゲーション装置用交通情報案内装置。
【請求項4】
前記交差点通過順序履歴記憶手段には、交差点間を通過した回数を更新して記憶し、
前記交差点間ルート演算手段は、前記次に右左折する交差点からその次に右左折する交差点へのルートを、前記交差点通過順序履歴記憶手段から最も通過回数の多い交差点通過順序の履歴を選択して、両交差点間の走行経路を演算し、
前記通過交差点対応案内情報作成手段では、前記最も通過回数の多い交差点通過順序の履歴を用いて演算した走行経路の交通情報も取り込んで案内情報も作成することを特徴とする請求項1記載のナビゲーション装置用交通情報案内装置。
【請求項5】
前記通過交差点対応交通情報案内出力手段は、案内を行う情報の発生地点に第1の所定の距離以内になったときに画面に当該交通情報を表示し、第2の所定の距離以内になったときに音声で当該交通情報を案内することを特徴とする請求項1記載のナビゲーション装置用交通情報案内装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−71814(P2007−71814A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−261740(P2005−261740)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】