説明

ナビゲーション装置、その制御方法及び制御プログラム

【課題】ナビゲーションの技術において、交差点での安全確認を効果的に支援しながら、ナビ画面とカメラ画面の双方を同時に確認可能とする。
【解決手段】条件判断手段12は、記憶手段2に記憶された道路地図データと、ナビゲーション手段10で得る航法情報と、に基いて、交差点まで所定距離内で、かつ、所定速度以下という切替条件の成立を判断して表示切替を決定する。条件判断手段12で前記表示切替が決定された場合に、合成表示手段14が、表示部3での表示を、ナビゲーション手段10からのナビ画面と、カメラ5からのカメラ画像と、を合成した合成表示画面に切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子技術の発達に伴い、車載用などのナビゲーション装置の普及がめざましい。ナビゲーション装置は、道路地図データをもとに、GPSなどで特定する自車の位置や方位を周辺地図上に表示したり、利用者が施設検索や地図スクロールなどで指定する目的地への経路を探索計算して設定し、画面表示や音声出力などで交差点での進行方向などの誘導案内を行うものである。
【0003】
このようなナビゲーション装置による支援があっても、見通しの悪い交差点へ進入する車両の運転は、一時停止や徐行をしながらの左右安全確認を要するなど、むずかしい運転操作のひとつである。これに対して、車両先端にカメラを設け、ナビゲーション装置の表示機能と組み合わせて、見通しの悪い交差点での安全確認を支援する安全確認装置の技術が提案されている(例えば特許文献1)。
【0004】
この種の安全確認装置は、ナビゲーション装置を搭載した車両において、側方確認用の車載カメラ(フロントノーズカメラ)を、例えば図5において斜線で示すような死角を撮影範囲として車両前端に設ける。そして、車両が交差点に近づいたことを検出すると、それまで地図や誘導情報などのナビ画面を表示していた表示モニタを、前記カメラからのカメラ画面に自動で切り替えるものである。
【0005】
これにより、車両が大きく交差点内に進入する前に、運転者は車両先端のカメラでスムーズに交差点内の状況を安全確認でき、不慮の事故を効果的に未然防止可能となる。
【特許文献1】特開2004−334808
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ナビ画面からカメラ画面へ自動で切り替わる場合、そのタイミングが運転者の意図に合わず、交差点で必要なナビ画面上の情報を確認できなかったり、特に不慣れな道では、カメラ画像のみの表示になって経路案内情報等が表示されなくなると道を誤りがちになるなどの問題があった。この点、表示の切り替えを手動操作とすることも考えられるが、それでは、操作の煩雑さに堪えない。
【0007】
本発明は、上記のような従来技術の課題を解決するもので、その目的は、ナビゲーションの技術において、交差点での安全確認を効果的に支援しながら、ナビ画面とカメラ画面の双方を同時に確認可能とすることである。
また、本発明の他の目的は、表示切替の条件を自由に設定可能とすることである。また、本発明の他の目的は、複数の画面領域の組合せを選択可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の一態様は、コンピュータにより運転を支援するナビゲーション装置において、交差点の位置を含む道路地図データの記憶手段と、画面表示用の表示部と、情報入力用の操作部と、自車の位置及び速度を含む航法情報を得るとともに、案内用のナビ画面を前記表示部に表示するナビゲーション手段と、車両先端部に設けた側方撮影用のカメラと、前記記憶手段に記憶された道路地図データと、前記ナビゲーション手段で得る前記航法情報と、に基いて、交差点まで所定距離内で、かつ、所定速度以下という切替条件の成立を判断して表示切替を決定する条件判断手段と、前記条件判断手段で前記表示切替が決定された場合に、前記表示部での表示を、前記ナビゲーション手段からの前記ナビ画面と、前記カメラからのカメラ画像と、を合成した合成表示画面に切り替える合成表示手段と、を有することを特徴とする。
【0009】
このように、交差点近くで所定速度以下になった場合に、ナビ画面とカメラ画像の双方を同時に表示画面に合成表示することにより、交差点での安全確認を効果的に支援しながら、不慣れな道や予期せぬタイミングでナビ画面が見られなくなる不都合が解消可能となる。
【0010】
本発明の他の態様は、さらに、前記切替条件における、交差点までの所定距離または所定速度の少なくとも一方の指定を前記操作部から受け付ける、切替条件受付手段を有することを特徴とする。
【0011】
このように、画面切替の条件として交差点までの距離や速度をユーザが指定可能とすることにより、好みや目的などの個別具体的事情に適合した快適な使い勝手が容易に実現可能となる。
【0012】
本発明の他の態様は、さらに、前記切り替えにおける前記合成表示画面の構成について、前記操作部から指定を受け付ける画面構成受付手段を有することを特徴とする。
【0013】
このように、交差点で切り替える合成表示画面の構成を、ユーザが指定可能とすることにより、好みや状況などの個別具体的事情に適合した快適な使い勝手が容易に実現可能となる。
【0014】
なお、方法及びプログラムにおいても、上記各態様に準ずる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、ナビゲーションの技術において、交差点での安全確認を効果的に支援しながら、ナビ画面とカメラ画面の双方を同時に確認可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための最良の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、背景技術や課題での説明と共通の前提事項は適宜省略する。
【0017】
〔1.構成〕
本実施形態におけるナビゲーション装置(以下「本装置」と呼ぶ)は、指定される目的地への経路案内など、コンピュータによる運転支援を行うもので、本装置の構成を図1に示す。なお、一般的なナビゲーション、例えば、施設検索や目的地の指定受付、自車位置推定などの航法計算、経路探索、誘導案内出力などに関する構成と処理については、従来と共通であるから詳細は省略する。
【0018】
図1に示す本装置の構成のうち、1は、コンピュータのCPUなどの制御部であり、2は、交差点の位置を含む道路地図データの記憶手段で、例えばDVD−ROMやHDDなどのディスク装置を用いる。また、3は、液晶パネルなど画面表示用の表示部であり、4は、スイッチやリモコンユニットなど情報入力用の操作部である。また、5は、車両先端部に設けた側方撮影用のカメラで、実際には、右用及び左用のCCDビデオカメラである。
【0019】
また、GPS受信機6と、ジャイロセンサ7と、車速検出器8は、航法用のセンサ群である。その他、本装置は、動作用のメモリ9と、VICS受信機10と、入出力用ユーザインタフェース11と、を有する。
【0020】
また、制御部1は、組込等の制御プログラムにより、図1に示す各手段10〜15を実現し、これら各手段は、以下のような本発明及び本実施形態の各機能作用を実現実行する処理手段である。なお、このうちナビゲーション手段10は、センサ群6,7,8により、自車の位置及び速度を含む航法情報を得るとともに、案内用のナビ画面を表示部3に表示するナビゲーション手段である。
【0021】
〔2.作用〕
上記のように構成された本装置における表示画面の切り替え処理における動作手順を、図2のフローチャートに例示する。この動作手順は、実際には、制御部1の制御プログラム内に存在し、車両の走行に従い周期的に(例えば、1メートル走行毎)実行されるものである。
【0022】
この手順では、条件判断手段12が、ナビゲーション手段10で把握している前記航法情報のうち、車両の現在位置座標と進行方位と車両速度(ここでは「車両情報」と総称する)と(ステップS01)、記憶手段2の道路地図データから読み出す進行方向の交差点の情報と(ステップS02)、に基き、交差点までの距離が所定の距離設定値(例えば、3メートル)以内まで接近していて(ステップS03)、かつ、そのときの車両速度が所定の速度設定値(例えば、10km/h)以下か(ステップS04)、という切替条件の成立を判断することにより、表示切替を決定する(ステップS03,S04。条件判断処理)。
【0023】
このような切替条件における、交差点までの所定距離(例えば何メートルにするか)または所定速度(例えば時速何キロにするか)の少なくとも一方について、切替条件受付手段13が、操作部4からの指定を予め受け付け、上記のような各設定値としておく(切替条件受付処理)。
【0024】
そして、表示切替が決定された場合に、合成表示手段14が、表示部3での表示を、ナビゲーション手段10からのナビ画面と、カメラ5からのカメラ画像と、を合成した合成表示画面に切り替える(合成表示処理)。
【0025】
ここで、フロントノーズカメラで撮影されたカメラ画像は、カメラ画像処理部51にてA/D変換、画像サイズ変換等の処理を経て、映像メモリ52のカメラ画像レイヤに格納される。カメラ画像は動画映像なので、一般的なビデオ信号(例えば30フレーム/秒)であれば、その情報量に対応して連続的な処理を行う。また、カメラ画像として必要な部分だけを切り出し、その部分だけをカメラ画像レイヤに格納する処理を付け加えても良い。
【0026】
また、映像メモリ52は、図3に示すように、複数のレイヤから構成されており、例えば、カメラレイヤ1、カメラレイヤ2はカメラ画像を構成し、一方、交差点情報レイヤ、周辺詳細地図と、地図のレイヤは、ナビ画面を構成する。これらは、夫々の機能や処理の出力結果(画像)であり、これら各レイヤから必要な部分(画像の一部または全部)を組み合わせることにより、最終的に表示される画像が表示部3の表示モニタに出力(表示)される。
【0027】
また、上記のような切替条件(前方交差点までの距離とその時の車両速度)を満足した場合、合成表示手段14は、複数の画面構成の中から運転者などのユーザが事前に設定した画面選択設定値にしたがい、画面構成を構成1(ステップS06)、構成2(ステップS07)又は構成3(ステップS08)に切り替える。
【0028】
すなわち、このような切り替えにおける合成表示画面の構成については、画面構成受付手段15が、操作部4から、複数の候補のどれにするかなどの指定を受け付ける(画面構成受付処理)。この組み合わせ例を、図4に示す。
【0029】
この図において、構成1は、カメラレイヤ1(車両左側側方の映像)とカメラレイヤ2(車両右側側方の映像)と交差点情報レイヤを組み合わせた例である。構成2は、画面上部には周辺詳細地図レイヤ、画面左下にはカメラレイヤ1(車両左側側方の映像)、画面右下にはカメラレイヤ2(車両右側側方の映像)を組み合わせた例である。構成3は、地図レイヤと交差点情報レイヤを組み合わせた例であり、合成表示画面は構成1及び2である。
【0030】
以上のような手順によれば、通常走行中は地図情報を基本とした構成3を表示し、見通しの悪い交差点に低速で接近する時には構成1(または構成2)を表示し、交差点を一時停止することなく通過するようなときには構成3を継続して表示する動作を実現することができる。したがって、不慣れな道路を走行中に見通しの悪い交差点での停止中でも地図情報とカメラ画像を同時に表示することが可能となり、運転者への負担を軽減することが可能となる。
【0031】
〔3.効果〕
以上のように、本実施形態では、交差点近くで所定速度以下になった場合に、ナビ画面とカメラ画像の双方を同時に表示画面に合成表示することにより、交差点での安全確認を効果的に支援しながら、不慣れな道や予期せぬタイミングでナビ画面が見られなくなる不都合が解消可能となる。
【0032】
また、本実施形態では、上記のように、画面切替の条件として交差点までの距離や速度をユーザが指定可能とすることにより、好みや目的などの個別具体的事情に適合した快適な使い勝手が容易に実現可能となる。
【0033】
また、本実施形態では、上記のように、交差点で切り替える合成表示画面の構成を、ユーザが指定可能とすることにより、好みや状況などの個別具体的事情に適合した快適な使い勝手が容易に実現可能となる。
【0034】
〔4.他の実施形態〕
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下に例示するもの及びそれ以外の他の実施形態も含むものである。例えば、例えば、上記実施形態は、主にナビゲーション装置を念頭において説明したが、そのようなナビゲーション装置に対応する方法やコンピュータプログラムとしても把握可能であり、例えば、既存のナビゲーション装置のために有償無償でダウンロード提供する更新用等のプログラムも、本発明の一態様である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態の構成を示す機能ブロック図。
【図2】本発明の実施形態における画面構成切り替え処理の手順を例示するフローチャート。
【図3】本発明の実施形態における各レイヤを示す概念図。
【図4】本発明の実施形態におけるナビ画面とカメラ画像を合成した表示画面の構成例を示す図。
【図5】従来及び本発明の実施形態におけるフロントノーズカメラの撮影範囲を例示する概念図。
【符号の説明】
【0036】
1…制御部
2…記憶手段
3…表示部
4…操作部
5…カメラ
6…GPS受信機
7…ジャイロセンサ
8…車速検出器
9…メモリ
10…ナビゲーション手段
11…ユーザインタフェース
12…条件判断手段
13…切替条件受付手段
14…合成表示手段
15…画面構成受付手段
51…カメラ画像処理部
52…映像メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータにより運転を支援するナビゲーション装置において、
交差点の位置を含む道路地図データの記憶手段と、
画面表示用の表示部と、情報入力用の操作部と、
自車の位置及び速度を含む航法情報を得るとともに、案内用のナビ画面を前記表示部に表示するナビゲーション手段と、
車両先端部に設けた側方撮影用のカメラと、
前記記憶手段に記憶された道路地図データと、前記ナビゲーション手段で得る前記航法情報と、に基いて、交差点まで所定距離内で、かつ、所定速度以下という切替条件の成立を判断して表示切替を決定する条件判断手段と、
前記条件判断手段で前記表示切替が決定された場合に、前記表示部での表示を、前記ナビゲーション手段からの前記ナビ画面と、前記カメラからのカメラ画像と、を合成した合成表示画面に切り替える合成表示手段と、
を有することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
前記切替条件における、交差点までの所定距離または所定速度の少なくとも一方の指定を前記操作部から受け付ける、切替条件受付手段を有する
ことを特徴とする請求項1記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記切り替えにおける前記合成表示画面の構成について、前記操作部から指定を受け付ける画面構成受付手段を有する
ことを特徴とする請求項1又は2記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
交差点の位置を含む道路地図データの記憶手段と、画面表示用の表示部と、情報入力用の操作部と、車両先端部に設けた側方撮影用のカメラと、を有し、コンピュータにより運転を支援するナビゲーション装置の制御方法において、
自車の位置及び速度を含む航法情報を得るとともに、案内用のナビ画面を前記表示部に表示するナビゲーション処理と、
前記記憶手段に記憶された道路地図データと、前記ナビゲーション処理で得る前記航法情報と、に基いて、交差点まで所定距離内で、かつ、所定速度以下という切替条件の成立を判断して表示切替を決定する条件判断処理と、
前記条件判断処理で前記表示切替が決定された場合に、前記表示部での表示を、前記ナビゲーション手段からの前記ナビ画面と、前記カメラからのカメラ画像と、を合成した合成表示画面に切り替える合成表示処理と、
を含むことを特徴とするナビゲーション装置の制御方法。
【請求項5】
前記切替条件における、交差点までの所定距離または所定速度の少なくとも一方の指定を前記操作部から受け付ける、切替条件受付処理を含む
ことを特徴とする請求項4記載のナビゲーション装置の制御方法。
【請求項6】
前記切り替えにおける前記合成表示画面の構成について、前記操作部から指定を受け付ける画面構成受付処理を含む
ことを特徴とする請求項4又は5記載のナビゲーション装置の制御方法。
【請求項7】
交差点の位置を含む道路地図データの記憶手段と、画面表示用の表示部と、情報入力用の操作部と、車両先端部に設けた側方撮影用のカメラと、を有し、コンピュータにより運転を支援するナビゲーション装置の制御プログラムにおいて、
そのプログラムは前記コンピュータの制御部を制御することにより、ナビゲーション手段と、条件判断手段と、合成表示手段と、を実現するとともに、
前記ナビゲーション手段に、自車の位置及び速度を含む航法情報を得るとともに、案内用のナビ画面を前記表示部に表示する、ナビゲーション処理を行わせ、
前記条件判断手段に、前記記憶手段に記憶された道路地図データと、前記ナビゲーション処理で得る前記航法情報と、に基いて、交差点まで所定距離内で、かつ、所定速度以下という切替条件の成立を判断して表示切替を決定する、条件判断処理を行わせ、
前記合成表示手段に、前記条件判断処理で前記表示切替が決定された場合に、前記表示部での表示を、前記ナビゲーション手段からの前記ナビ画面と、前記カメラからのカメラ画像と、を合成した合成表示画面に切り替える合成表示処理を行わせる
ことを特徴とするナビゲーション装置の制御プログラム。
【請求項8】
前記切替条件における、交差点までの所定距離または所定速度の少なくとも一方の指定を前記操作部から受け付ける、切替条件受付処理を前記制御部に行わせる
ことを特徴とする請求項7記載のナビゲーション装置の制御プログラム。
【請求項9】
前記切り替えにおける前記合成表示画面の構成について、前記操作部から指定を受け付ける画面構成受付処理を前記制御部に行わせる
ことを特徴とする請求項7又は8記載のナビゲーション装置の制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−82780(P2008−82780A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−261157(P2006−261157)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】