説明

ナビゲーション装置、ナビゲーション方法およびナビゲーションプログラム

【課題】現在地周辺の状況を表示しつつ、現在地から離れた遠方の案内情報を分かり易い形態でユーザに提示することが可能なナビゲーション装置を提供すること。
【解決手段】移動体の前方を撮像した実写画像に案内オブジェクトを重畳表示して案内を行うナビゲーション装置であって、誘導経路上の現在地から目的地方向に所定の距離移動した地点を生成地点とした案内オブジェクトを生成する経路案内オブジェクト生成部と、案内オブジェクトの表示位置を前記生成地点から移動した現在地とし、前記実写画像に重畳して表示部に表示させる表示制御部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実風景に案内オブジェクトを重畳表示して誘導案内を行うナビゲーション装置、ナビゲーション方法およびナビゲーションプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の前方風景をビデオカメラ等で撮像した実写画像に車両の進路を示す矢印画像などの案内オブジェクトを重畳表示したり、フロントガラス越しの風景にヘッドアップディスプレイなどを用いて案内オブジェクトを重畳表示するナビゲーション装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなナビゲーション装置は、実風景と案内画面の対比が容易で、ユーザに対して直感的な経路誘導を行うことができる。そのため、前方を撮像した画像は、実風景との対応を良くするため車両近傍を撮像した画像が好ましい。しかし、このような車両近傍の画像、またはフロントガラス越しの風景に案内オブジェクトを重畳表示する誘導案内では、車両近傍以外の遠方の案内オブジェクトをユーザに分かりやすい形態で提示することが難しい。
【0004】
そこで、車両位置から撮像範囲外の案内地点まで連続性をもった経路案内情報を提示するため、画像中には存在しない遠方の道路に経路案内情報を重畳させた案内画像を別途作成し、車両前方を撮像した画像中の経路案内と関連付けて提示することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平7−63572号公報
【特許文献2】特開2007−292545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の構成では、遠方の案内情報が現在地周辺の案内情報とは異なる平面上に小さく描画されるため、ユーザは遠方の案内情報を一見して把握することが難しい。つまり、遠方の案内情報は、フロントガラス越しに見える位置や大きさと異なるため、実風景との対比の容易性が損なわれるという問題を有していた。
【0006】
本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、現在地周辺の状況を表示しつつ、現在地から離れた遠方の案内情報を分かり易い形態でユーザに提示することが可能なナビゲーション装置、ナビゲーション方法およびナビゲーションプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の局面は、移動体の前方を撮像した実写画像に案内オブジェクトを重畳表示して案内を行うナビゲーション装置に向けられている。本発明は、誘導経路上の現在地から目的地方向に所定の距離移動した地点を生成地点とした案内オブジェクトを生成する経路案内オブジェクト生成部と、案内オブジェクトの表示位置を前記生成地点から移動した現在地とし、前記実写画像に重畳して表示部に表示させる表示制御部を有する。
【0008】
この構成により、ユーザは現在地周辺の状況を確認しながら、遠方の地点からフロントガラス越しに見るのと同じ状態で遠方の案内情報を確認することが可能となる。
【0009】
また、入力を受付ける入力部へのユーザの入力に合わせて、誘導経路上の生成地点を算出する生成地点算出部を有し、経路案内オブジェクト生成部は、生成地点から所定範囲の案内オブジェクトを生成してもよい。
【0010】
また、案内オブジェクトは、誘導経路の道路形状、案内矢印、ランドマークアイコン、POIアイコン、交差点風景画像、または交差点名称看板のいずれか、または組合せであることが好ましい。
【0011】
また、案内オブジェクトは、誘導経路以外の道路形状を含む案内オブジェクトであってもよい。
【0012】
また、入力部に対する所定の入力により、周辺表示モードと遠方表示モードのどちらの表示モードで案内オブジェクトを表示するかを検出するモード切替検出部を有し、表示制御部は、モード切替検出部の検出した表示モードで案内オブジェクトを表示部に表示させることが好ましい。
【0013】
表示制御部は、周辺表示モードと遠方表示モードで異なる表示形態の案内オブジェクトを表示部に重畳表示させてもよい。
【0014】
本発明の第2の局面は、フロントガラスに案内オブジェクトを表示して案内を行うナビゲーション装置に向けられている。本発明は、誘導経路上の現在地から目的地方向に所定の距離移動した地点を生成地点とした案内オブジェクトを生成する経路案内オブジェクト生成部と、案内オブジェクトの表示位置を生成地点から移動した現在地とし、フロントガラス越しの風景に重畳して表示させる表示制御部とを有する。
【0015】
この構成により、ユーザはフロントガラス越しに遠方の案内情報を確認することが可能となる。
【0016】
本発明の第3の局面は、移動体の前方を撮像した実写画像に案内オブジェクトを重畳表示して案内を行うナビゲーション方法に向けられている。本発明は、誘導経路上の現在地から目的地方向に所定の距離移動した地点を生成地点とした案内オブジェクトを生成する経路案内オブジェクト生成ステップと、案内オブジェクトの表示位置を生成地点から移動した現在地とし、移動体の前方を現在地から撮像した実写画像に重畳して表示部に表示させる表示制御ステップとを有する。
【0017】
本発明の第4の局面は、移動体の前方を撮像した実写画像に案内オブジェクトを重畳表示して案内を行うナビゲーション装置のコンピュータで実行されるナビゲーションプログラムに向けられている。本発明は、誘導経路上の現在地から目的地方向に所定の距離移動した地点を生成地点とした案内オブジェクトを生成する経路案内オブジェクト生成ステップと、案内オブジェクトの表示位置を生成地点から移動した現在地とし、移動体の前方を現在地から撮像した実写画像に重畳して表示部に表示させる表示制御ステップとを有する。
【発明の効果】
【0018】
以上のように本発明は、遠方の案内オブジェクトを現在地近傍に移動し実風景に重畳して表示することにより、ユーザは現在地周辺の状況を確認しながら、フロントガラス越しに見るのと同じ状態で遠方の案内情報を確認することが可能なナビゲーション装置、ナビゲーション方法、およびナビゲーションプログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態のナビゲーション装置について、図面を用いて説明する。
(実施の形態)
本発明の実施の形態に係るナビゲーション装置100の全体構成ブロックを図1に示す。ナビゲーション装置100は、撮像部101、測位部102、地図情報格納部103、入力部104、制御部105、経路探索部106、表示部107、経路案内オブジェクト生成部108、モード切替検出部109、生成地点算出部110を備える。
【0020】
本実施の形態では、移動体として車両を想定し、以後移動体を車両あるいは自車として説明する。なお、本発明は、移動体として車両に限定するものではない。
【0021】
撮像部101は、例えば、車両の前方風景を撮像するカメラである。カメラは、車両のフロントガラス背面、車両天井部等に設置される。なお、2台以上のカメラにより構成しても良い。2台以上のカメラにより構成するときは、合成した映像を使用することもできる。また、車車間通信等によって、他車両に搭載されているカメラの映像を用いてもよい。なお、車載用ではなく、歩行者用のナビゲーション装置の場合は、携帯電話、PHS等のポータブル機器に内臓するカメラを用いてもよい。
【0022】
測位部102は、ナビゲーション装置が設置される車両に取り付けられる、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機、車速センサ、ジャイロ(角速度)センサ、加速度センサ等の信号から現在位置や速度、方位を測位する機能を有する。GNSS受信機は、例えば、GPS受信機であり、複数の衛星からの電波を受信し、それを復調することで受信機の絶対位置を計測するものである。搬送波位相を使用する測位方式でも良い。なお、現在位置や速度、方位の測位には、GNSS受信機や各種センサを単独又は複合利用して行う。測位部102で測位された自車位置を基に後述する地図情報のリンクに対しマップマッチング処理を行うことができる。なお、車載ではなく、歩行者用のナビゲーションとして本発明を使用する場合は、携帯電話、PHS等のポータブル機器に内蔵するセンサを使用してもよい。
【0023】
地図情報格納部103は、道路や交差点に関する地図データ、例えばリンクデータやノードデータ、交差点名称、ランドマークアイコン、交差点の風景画像等の地図情報が格納される記憶媒体である。記憶媒体としては、例えば、HDDやDVD、フラッシュメモリである。なお、これに限らず、図示しない通信手段(例えば、携帯電話)によって、地図情報が地図情報格納部103にセンター設備から適宜ダウンロードされる構成としてもよい。
【0024】
入力部104は、ユーザからの指示入力を受付けるもので、押圧式のスイッチを所定数並べた構成を採るものや、タッチパネル式のもの、リモコン、あるいは利用者の声を認識してナビゲーション装置への入力情報に変換するマイクロフォン、音声認識エンジン等で構成される。本実施の形態では、表示部107の表示面に重ねて設置され、表示面と同サイズのタッチパネルを入力部104と想定するが、その他の入力手段を使用しても良い。ユーザからの指示内容としては、目的地検索、経由地設定、目的地設定、経路探索条件設定、経路探索実行、縮尺変更(拡大/縮小)、案内オブジェクトの表示モードを切り替える設定等がある。
【0025】
制御部105は、ナビゲーション装置100全体の動作を制御する、CPUやMPUとROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等である。CPUやMPUは、ROMに格納されるプログラムを実行することによって、図1に示す各機能ブロックが相互連携し、実現される。また、CPUやMPUは、プログラムの実行中、RAMを作業領域として使用する。
【0026】
経路探索部106は、入力部104から入力された目的地に関する情報、及び測位部102から取得した自車の位置情報に基づいて、地図情報格納部103を参照して、目的地に至る誘導経路を探索する。探索された経路にはいくつかの案内対象地点(案内対象の交差点)が含まれる。
【0027】
表示制御部111は、撮像部101により撮像された実写画像に経路案内オブジェクト生成部108により生成された案内オブジェクトを重畳して表示部107に表示させる機能を有している。または、ヘッドアップディスプレイなどを用いてフロントガラス越しの風景に案内オブジェクトを重畳して表示させる。
【0028】
表示部107は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、ウィンドシールドディスプレイ、ヘッドアップディスプレイなどの表示デバイスである。なお、ウィンドシールドディスプレイやヘッドアップディスプレイとする場合は、運転手の視線方向に配置すれば、実写画像は画面には表示しなくて良い。実風景がディスプレイ越しに視認できるためである。すなわち、撮像部101を省略する構成も可能となる。
【0029】
経路案内オブジェクト生成部108は、経路探索部106によって探索された誘導経路に該当する道路に沿った形状の案内矢印を代表例とする案内オブジェクトを生成する機能を有している。通常は、現在地から誘導経路上を所定距離進んだ位置までの案内オブジェクトを生成するが、後述の生成地点算出部110によって現在地から移動した生成地点が算出された場合は、当該生成地点を起点として所定範囲の案内オブジェクトを生成する。
【0030】
ここで、案内オブジェクトの具体例を説明する。例えば、案内オブジェクトは、道路形状に一定の幅(道路幅相当)を持たせた案内矢印、交差点名称看板、ランドマークアイコン、POI(Point of Interest)アイコン、および交差点の風景画像などである。案内矢印の幅は、地図情報格納部103に格納されているリンクデータのリンク幅を参照すればよい。なお、案内矢印の形状は、矢印図形に限らず、先端の三角形を除いた折れ線図形とすることや任意の形状を取ることができる。特に、高さを有するものであってもよい。また、誘導経路の道路形状に一定の幅(道路幅相当)を持たせた案内矢印のみではなく、案内地点に至るまでの誘導経路以外の道路形状であってもよい。これにより、案内地点までに曲折可能な道路がいくつ存在するかなどの付加的な情報もユーザに伝えることができるからである。
【0031】
また、本実施の形態において交差点名称、ランドマークアイコン、交差点の風景画像などは、地図情報格納部103に格納されている地図データから画像化するものとする。なお、これらの画像データそのものを地図情報格納部103に予め記憶させておいても良いし、図示しない通信手段を用いてセンターから画像データをダウンロードする、あるいは他端末との通信によって取得しても良い。
【0032】
モード切替検出部109は、ユーザの入力部104への所定の入力を検出し、案内オブジェクトの表示モードを切り替えを検出する。表示モードには通常の周辺表示モードと遠方表示モードがある。
【0033】
生成地点算出部110は、前述の遠方表示モードの際、ユーザの入力に応じて、案内オブジェクトを生成するときの生成地点となる誘導経路上の地点を算出する。周辺表示モードの場合、生成地点は現在地とする。
【0034】
以上のように構成されたナビゲーション装置について、図2を用いてその動作を説明する。
【0035】
まず、制御部105は、目的地が設定されたか否かを判定する(ステップS101)。ステップS101において、目的地が設定されなかった場合、制御部105は、ステップS101に処理を戻す。一方、ステップS101において、目的地が設定された場合、経路探索部106は、測位部102で取得した位置情報に基づいて、地図情報格納部103を参照して、目的地に至る誘導経路を探索する(ステップS102)。目的地に至る誘導経路が探索されると、制御部105は、案内を開始する(ステップS103)。
【0036】
次いで、制御部105は、経路案内に伴う種々のパラメータの初期化を行う。具体的には撮像部101の撮像方向、撮像範囲を定めるパラメータであるカメラ位置、カメラ姿勢(水平角、仰角)、焦点距離、及び画像サイズに基づいて、3Dオブジェクト描画のための仮想カメラの視野空間を算出する。また、案内オブジェクトの表示モードの初期値を周辺表示モードにセットする(ステップS104)。
【0037】
次に、ステップS105では、自車が目的地へ到達したかどうかを判定する。具体的には測位部102で取得した位置情報と目的地との距離が所定距離以内にあるかどうかを判断する。ここで目的地へ到達したと判断された場合、経路案内を終了する。そうでない場合は次ステップS106へ移行する。
【0038】
ステップS106では、案内オブジェクトの表示モードを判断する。案内オブジェクトの表示モードには周辺表示モードと遠方表示モードの2種類ある。両者の切り替えは、ユーザの入力操作がトリガーとなるが、具体的な入力方法は後述する。案内オブジェクトの表示モードが周辺表示モードである場合、現在地を生成地点とした案内オブジェクトを生成する。一方、遠方表示モードであった場合は、ステップS107へ移行し、生成地点を算出する。
【0039】
ここで、周辺表示モードから遠方表示モードへ移行し、遠方の案内オブジェクトを確認するためのユーザ操作の第一の例を図3aに示す。ユーザが同図のように入力部104のタッチパネルのうち、案内矢印Aに相当する部分のいずれかの場所(図3aでは、場所Ps)に指で触れると、モード切替検出部109はこれを検出し、遠方表示モードへと移行する。案内矢印Aの描画範囲外を触れたときは、モード切替検出部109はモード移行しないようにすることが好ましい。さらに、ユーザが遠方の経路を確認するためには、案内矢印Aの描画範囲を指で触れた状態のまま、同図のように手前方向の場所Peまで指をスライドさせる。この画面上の2点PsおよびPeにそれぞれ対応するワールド座標上の2地点から移動量が算出され、案内オブジェクトを生成するときの生成地点が決定される。生成地点を算出する手順は後述する。
【0040】
ここで、ユーザがタッチパネルから指を離すと、案内オブジェクトの表示は移動先から現在地へ再び戻り、モード切替検出部109は表示モードを周辺表示モードへと切り替える。一方、さらに遠方を確認したい場合は指を離さず、同図のフックFまでスライドさせる。フックFに触れるとタッチパネルから指を離してもモード切替は行われない。この後、再び案内矢印Aの範囲のいずれかに触れ、手前方向にスライドさせれば、現在地ではなく今の表示位置を起点とし、新たな生成地点を算出し、さらに移動した案内オブジェクトの表示を行うことができる。
【0041】
また、図3bは、周辺表示モードから遠方表示モードへ移行し、遠方の案内オブジェクトを確認するためのユーザ操作の第二の例を示す。この例では、表示部107の右下にリールRが用意されている。ユーザがリールRの近傍を指で触れるとモード切替検出部109はこれを検出し、案内オブジェクトの表示モードを周辺表示モードから遠方表示モードへと移行させる。ここで、ユーザがリールRを図の様に指で回転させると、回転量に応じて移動量が算出される。周辺表示モードへ移行するためには図3a同様、タッチパネルから指を離せば良い。
【0042】
図2へ戻り、ステップS107を説明する。ここでは、遠方表示モードで表示する案内オブジェクトの生成地点を算出する。まず、生成地点を算出するには、第1の例、または第二の例における移動量の算出が必要である。
【0043】
そこで、まず画面上の座標から描画するワールド座標を算出する方法について説明する。
【0044】
図4aの上側の長方形は表示部107の画面(単位:Pixel)を表している。一方、図4aの下側の長方形は撮像部101の撮像素子から焦点距離Fだけ離れた位置の受光範囲(ウィンドウと称することにする。単位:mm)を表している。当然のことながら、表示部107に出力される映像は撮像部101の撮像素子が受光した範囲の映像である。従って、同図の一点Pd(Pdx、Pdy)に対応するウィンドウ上の点Pw(Pwx、Pwy)の座標は、画面の原点を左上、縦横のサイズをDx、Dyとし、さらにウィンドウの原点を中央、縦横のサイズをWx、Wyとすれば明らかに、次式の関係が成り立つ。
【0045】
Pwx=(Wx/Dx)×Pdx − Wx/2
Pwy=−((Wy/Dy)×Pdy − Wy/2)
となる。ここで、画面とウィンドウでY軸の向きが逆に設定していることに注意されたい。次に、点Pwをワールド座標へ変換する。これは平行移動、回転などのアフィン変換によって達成される。座標軸として東西をX軸[m]、南北をY軸[m]、高さをZ軸[m]とし、既知のパラメータとして焦点距離をF[m]、取り付け高さH[m]、地面に対するカメラの設置角γ[度]、北を0とするカメラの方向θ[度](図4c参照)とする。まず、図4b上図のように、ワールド座標の原点にウィンドウを配し、次の手順で点Pwに対し平行移動および回転を施す。
・ Y軸方向に焦点距離Fの長さだけ平行移動
・ X軸を中心にγだけ回転
・ Z軸方向にHの長さだけ平行移動
・ Z軸を中心にθだけ回転
・ カメラの視点位置P0へ平行移動
上記の平行移動および回転の処理は、例えばOpenGLなどの3Dグラフィクスライブラリを使用すれば容易に求めることができる。このような処理を経て、ワールド座標での点Pw’(Pwx’,Pwy’,Pwz’)を算出することができる。上記の処理を施した後のウィンドウ及び点Pwの様子は図4b下図を参照されたい。次に、図4b下図における視点位置P0とPw’を結ぶ直線と地面(X−Y平面)との交点P(Px,Py,Pz)は、以下の式によって算出される。
【0046】
Px=−H×Pwx’/(Pwz’−H)[m]
Py=−H×Pwz’/(Pwz’−H)[m]
Pz=0[m]
いま、図3aにおいてユーザが点Psから点Peへ指をスライドさせたとする。簡単のため、図2のステップS107からループを経て再びステップS107へフローが戻ってくるまでの時間内にこのスライドが行われたとする。この時、点Ps、点Peに対応するワールド座標をそれぞれPs’(Psx’、Psy’)、Pe’(Pex’、Pey’)とすれば、移動量(Lx,Ly)は、次式により求まる。
【0047】
Lx=Pex’−Psx’
Ly=Pey’−Psy’
ここで、図3bのようなインターフェイスから移動量を求める場合、同図のリールRが360度回転した際の移動量を予め設定しておけば、同図PsからPeへユーザが指を移動させた時の回転角に応じた移動量を容易に算出することができる。移動方向は仮想カメラの視点位置直下のリンクデータの方向と同一であることが望ましいが、単純に仮想カメラの方向と常に同一であっても良い。
【0048】
以上、表示部107の画面上の位置をワールド座標系に変換して移動量を算出する手順を説明したが、処理を簡単にするため、表示部107の画面上の移動距離を単に誘導経路上の移動距離に変換し生成地点を算出してもよい。
【0049】
図2へ戻り、ステップS108では、案内オブジェクトの表示位置を算出する。具体的には、先に算出された生成地点に基づき、仮想カメラの位置を移動量だげ移動させて表示部107へ出力すれば、案内オブジェクトがスライドと同じ方向、同じ量だけ手前に寄って来るように見せることができる。
【0050】
次に、ステップS109では、経路案内オブジェクト生成部108が案内オブジェクトの生成を行う。具体的には、ステップS107で算出された生成地点から見た形状で案内オブジェクトの生成とワールド座標への配置を行う。ステップS109の案内オブジェクト生成の具体的なフローを図5aを用いて説明する。
【0051】
まず、ステップS201では制御変数Countを初期化する。
【0052】
次に、ステップS202では、制御変数Countが4より大きければフローを終了、そうでなけれればステップS203へ進む。
【0053】
ステップS203では、制御変数Countの値によってフローを分岐させる。
【0054】
制御変数Countの値が0の場合、ステップS204へ移る。ここでは、仮想カメラの視野範囲内のランドマークアイコンの画像データが地図情報格納部103から読み出される。
【0055】
制御変数Countの値が1の場合、ステップS205へ移る。ここでは、仮想カメラの視野範囲内の交差点風景画像データが地図情報格納部103から読み出される。
【0056】
制御変数Countの値が2の場合、ステップS206へ移る。ここでは、仮想カメラの視野範囲内のリンクデータが地図情報格納部103から読み出される。その後、ステップS207では、読み出したリンクデータに基づき、案内矢印と交差点の接続道路の生成処理が行われる。ステップS207の詳細は後述する。
【0057】
制御変数Countの値が3の場合、ステップS208へ移る。ここでは、前方風景画像を撮像部101から取得する。その後、ステップS209で、現在の案内オブジェクトの表示モードが遠方表示モードであるかを判定する。遠方表示モードであれば、ステップS210において、前方風景画像にスモーク加工を施す。この目的とするところは、ユーザが遠方表示モードと通常の周辺表示モードを一見して見分けることができるようにするためである。
【0058】
制御変数Countの値が4の場合、ステップS211へ移る。ここでは、仮想カメラの視野範囲内の交差点名称データが地図情報格納部103から読み出される。その後ステップS212において交差点名称データから交差点看板画像を生成する。具体的には、例えば交差点名称をシステムの既存フォントデータで描画して画像化する。
【0059】
次に、ステップS213では各フローで生成された画像をポリゴンとしてワールド座標上に配置する。通常地図データに格納されている位置データは緯度経度であることから、これをメートルに変換して配置する。前方風景画像は、他の案内オブジェクト同様、例えば、自車位置の10m先に視野範囲一杯の大きさで配置してやればよい。また、この時、リンクデータおよび測位部102から得られる自車の位置から算出される交差点までの残距離を、交差点ノードと同一座標の所定高さに配置するのが望ましい。
【0060】
次に、ステップS214では制御変数Countをインクリメントする。
【0061】
図5bは、ステップS207の案内矢印生成処理の詳細を表す。ステップS301では、ステップS206で読みだしたリンクデータから案内矢印と交差点の接続道路のポリゴンの頂点座標を算出する。先述のとおり、道路幅はリンクデータの車線幅を参照すれば良い。また、緯度経度からワールド座標へ変換を施す。
【0062】
次に、ステップS302では、現在の案内オブジェクト表示モードが遠方表示モードであるかを判定する。周辺表示モードの場合、交差点の接続道路を表示しないので、ステップS303で案内矢印のみに対して所定のポリゴン色1を設定する。
【0063】
遠方表示モードの場合、ステップS304へ移る。ここでは、案内矢印の色を所定色のポリゴン色2に設定する。案内オブジェクトの表示モードによって案内矢印の色を変える目的は、先述の前方風景のスモーク加工と同様、ユーザが遠方表示モードと周辺表示モードを一見して見分けられるようにするためである。
【0064】
次に、ステップS305では、交差点接続道路の色を所定色であるポリゴン色3に設定する。
【0065】
以上のような処理により、案内オブジェクトが生成される。
【0066】
図2のステップS110へ説明を戻す。ここでは案内オブジェクトおよび前方風景映像を表示部107へ出力する。具体的には、ステップS109でワールド座標へ配置された案内オブジェクトおよび前方風景映像を透視変換して表示部107へ出力する。ワールド座標から画面への透視変換は3Dグラフィクスライブラリを使用して描画APIを呼びだせば、仮想カメラのパラメータ等から各案内オブジェクトの画面上での座標が自動で算出される。
【0067】
最後に、本実施の形態の以上のような処理によって表示部107へ出力される画像の例を示す。
【0068】
図6はユーザが入力部104上で指をスライドさせることにより表示モードが遠方表示モードに切り替わり、前方風景は動かず、案内矢印が手前に寄ってくる様子を表した例である。遠方表示モードと周辺表示モードとの違いをユーザが一見して分かるよう、前方風景画像にスモーク加工を施し、案内矢印の色を周辺表示モードと異なる色で描画する。これにより、案内対象地点での曲折方向を事前に把握することができる。
【0069】
図7は、図6の案内矢印の表示に加えて、ランドマークアイコンが手前に寄って来る様子を示している。これにより、案内対象地点をユーザが特定するための目印を事前に把握しておくことができる。
【0070】
図8は、図6の案内矢印の表示に加えて、交差点名称看板が手前に寄ってくる様子を表している。これにより、案内対象地点の交差点名称を事前に把握することができる。
【0071】
図9は、図6の案内矢印の表示に加えて、交差点接続道路が手前に寄ってくる様子を表している。接続道路と案内矢印に対して異なる色で配色することで、ユーザは経路とその他の道路を一見して見分け、かつ交差点形状を容易に把握することができる。
【0072】
図10は、図6の案内矢印の表示に加えて、交差点の風景画像が手前に寄ってくる様子を表している。案内対象地点に到達するまでに通過する交差点の風景を見ることにより、ユーザは走行イメージを容易に把握し、安心することができる。 このような本発明の実施の形態のナビゲーション装置によれば、ユーザが入力部104上で指をスライドすることで、前方風景画像は動かさないまま、遠方の案内オブジェクト(案内矢印、交差点名称看板、ランドマーク、交差点風景映像、交差点接続道路など)がスライド量に応じた距離だけ手前に寄ってくる。これにより、ユーザは、信号待ちで止まっている時などに操作をすれば、前方風景画像により現在地周辺の様子に注意を払いながら、遠方の案内オブジェクトをフロントガラス越しに見るのと同じ状態で確認することができる。
【0073】
本発明は、上述した実施の形態を実現するソフトウェアのプログラム(実施の形態では図に示すフロー図に対応したプログラム)が装置に供給され、その装置のコンピュータが、供給されたプログラムを読出して、実行することによっても達成させる場合を含む。したがって、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラム自体も本発明を実現するものである。つまり、本発明は、本発明の機能処理を実現させるためのプログラムも含む。
【0074】
また、上記実施の形態で説明した構成は、単に具体例を示すものであり、本願発明の技術的範囲を制限するものではない。本願の効果を奏する範囲において、任意の構成を採用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上のように、本発明にかかるナビゲーション装置は、実写画像に経路案内オブジェクトを重畳表示するナビゲーション装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施の形態におけるナビゲーション装置のブロック図
【図2】本発明の実施の形態におけるナビゲーション装置の全体動作を示すフローチャート
【図3a】本発明の実施の形態における表示モード切替のユーザ入力例1を示す図
【図3b】本発明の実施の形態における表示モード切替のユーザ入力例2を示す図
【図4a】本発明の実施の形態における画面座標とウィンドウ座標の定義を示す図
【図4b】本発明の実施の形態におけるウィンドウ座標からワールド座標の変換を示す図
【図4c】本発明の実施の形態におけるカメラ方位θの定義を示す図
【図5a】案内オブジェクトを生成する手順を示すフローチャート
【図5b】案内矢印生成処理の手順を示すフローチャート
【図6】本発明の実施の形態における遠方表示モードでの案内矢印および前方風景の表示例を示す図
【図7】本発明の実施の形態における遠方表示モードでのランドマークアイコンの表示例を示す図
【図8】本発明の実施の形態における遠方表示モードでの交差点名称看板の表示例を示す図
【図9】本発明の実施の形態における遠方表示モードでの交差点接続道路の表示例を示す図
【図10】本発明の実施の形態における遠方表示モードでの交差点風景画像の表示例を示す図
【符号の説明】
【0077】
100 ナビゲーション装置
101 撮像部
102 測位部
103 地図情報格納部
104 入力部
105 制御部
106 経路探索部
107 表示部
108 経路案内オブジェクト生成部
109 モード切替検出部
110 生成地点算出部
111 表示制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の前方を撮像した実写画像に案内オブジェクトを重畳表示して案内を行うナビゲーション装置であって、
誘導経路上の現在地から目的地方向に所定の距離移動した地点を生成地点とした案内オブジェクトを生成する経路案内オブジェクト生成部と、
前記案内オブジェクトの表示位置を前記生成地点から移動した現在地とし、前記実写画像に重畳して表示部に表示させる表示制御部を有するナビゲーション装置。
【請求項2】
入力を受付ける入力部へのユーザの入力に合わせて、前記誘導経路上の生成地点を算出する生成地点算出部を有し、
前記経路案内オブジェクト生成部は、前記生成地点から所定範囲の案内オブジェクトを生成することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記案内オブジェクトは、誘導経路の道路形状、案内矢印、ランドマークアイコン、POIアイコン、交差点風景画像、または交差点名称看板のいずれか、または組合せであることを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記案内オブジェクトは、誘導経路以外の道路形状を含む案内オブジェクトであることを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
入力部に対する所定の入力により、周辺表示モードと遠方表示モードのどちらの表示モードで案内オブジェクトを表示するかを検出するモード切替検出部を有し、
前記表示制御部は、前記モード切替検出部の検出した表示モードで案内オブジェクトを表示部に表示させることを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
前記表示制御部は、周辺表示モードと遠方表示モードで異なる表示形態の案内オブジェクトを表示部に重畳表示させることを特徴とする請求項5に記載のナビゲーション装置。
【請求項7】
移動体のフロントガラスに案内オブジェクトを表示して案内を行うナビゲーション装置であって、
誘導経路上の現在地から目的地方向に所定の距離移動した地点を生成地点とした案内オブジェクトを生成する経路案内オブジェクト生成部と、
前記案内オブジェクトの表示位置を前記生成地点から移動した現在地とし、フロントガラス越しの風景に重畳して表示させる表示制御部と、
を有するナビゲーション装置。
【請求項8】
移動体の前方を撮像した実写画像に案内オブジェクトを重畳表示して案内を行うナビゲーション方法であって、
誘導経路上の現在地から目的地方向に所定の距離移動した地点を生成地点とした案内オブジェクトを生成する経路案内オブジェクト生成ステップと、
前記案内オブジェクトの表示位置を前記生成地点から移動した現在地とし、移動体の前方を現在地から撮像した実写画像に重畳して表示部に表示させる表示制御ステップと、
を有するナビゲーション方法。
【請求項9】
移動体の前方を撮像した実写画像に案内オブジェクトを重畳表示して案内を行うナビゲーション装置のコンピュータで実行されるナビゲーションプログラムであって、
誘導経路上の現在地から目的地方向に所定の距離移動した地点を生成地点とした案内オブジェクトを生成する経路案内オブジェクト生成ステップと、
前記案内オブジェクトの表示位置を前記生成地点から移動した現在地とし、移動体の前方を現在地から撮像した実写画像に重畳して表示部に表示させる表示制御ステップと、
を有するナビゲーション装置のコンピュータで実行されるナビゲーションプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−236844(P2009−236844A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86071(P2008−86071)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】