説明

ハイブリッド車両の内燃機関制御装置及び方法

【課題】 ハイブリッド車両においてノック発生時においても内燃機関を効率良く動作させる。
【解決手段】 ハイブリッドシステム10において、制御装置100のトルク算出部100bはモータジェネレータMG1のトルク反力からエンジン200のトルクを算出することが可能に構成されている。また、燃費率算出部100cは、係る算出されたエンジントルクと、燃料噴射量及びエンジン回転数とに基づいて、エンジン200における瞬間的な燃料消費率を算出することが可能に構成されている。動作線更新部100dは、この算出された燃料消費率に基づいて動作点学習処理を実行し、エンジン200の動作点を燃費率最小動作点に設定する。ノックが発生する場合には、点火時期遅角制御と吸気バルブの閉じ時期遅角制御とで、燃費率最小動作点に係る燃料消費率が小さい方の制御が選択され使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力源として、例えばVVT(Variable Valve Timing)などの可変動弁機構を備えた内燃機関及びモータジェネレータを備えるハイブリッド車両において内燃機関の動作状態を制御する、ハイブリッド車両の内燃機関制御装置及び方法の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術として、特許文献1に開示された車両の駆動力制御装置(以下、「従来の技術」と称する)がある。従来の技術によれば、ハイブリッド車において、予め設定された最適燃費線に基づいてエンジンの動作状態が制御されるため、目標となるエンジン回転数に応じて、燃料消費率が最小となるようなエンジントルクを求めることが可能であるとされている。
【0003】
尚、ハイブリッド車において、駆動パワー要求値に対し、予め記憶されたエンジン特性マップより最適効率点となる動作点を取得し、この動作点が維持されるようにスロットル開度を制御する技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、ハイブリッド車において、消費電力と蓄電状態とに基づいて、運転領域全体でエンジンの燃料消費率が最小となるように内燃機関及び電動機の動作状態を制御する技術も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
更に、ディーゼルエンジンにおいて、燃料の噴射量と走行距離から瞬間的な燃料消費率を算出する技術も提案されている(例えば、特許文献4又は5参照)。
【0006】
一方、内燃機関においてノック或いはノッキングが発生した場合に、ノック強度に応じて点火時期及びバルブタイミングの補正を行う技術も開示されている(例えば、特許文献6参照)。
【0007】
このようなノックに対応する技術としては、ノック強度に応じて点火時期又はバルブタイミングの遅角の優先度を設定する技術も開示されている(例えば、特許文献7参照)。
【0008】
更に、ノック非発生時はバルブタイミングをベースまで徐々に戻し、バルブタイミングが戻ってから点火時期を徐々に進角する技術も提案されている(例えば、特許文献8参照)。
【0009】
【特許文献1】特開2000−179371号公報
【特許文献2】特開平10−98803号公報
【特許文献3】特開2002−171604号公報
【特許文献4】特開平8−334052号公報
【特許文献5】特開平8−334051号公報
【特許文献6】特開平8−193530号公報
【特許文献7】特開平8−338295号公報
【特許文献8】特開2001−271664号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
内燃機関における最適燃費線は、例えば大気圧や湿度などの環境条件によって変化する。然るに、従来の技術においてはこのような変化が考慮されていない為、予め設定された最適燃費線に基づいて燃料消費率が最小となるように内燃機関を動作させても、効率が相対的に劣化し燃料が無駄に消費されることがある。これは内燃機関において発生するノックを上述した各種技術において低減させる際には顕著である。
【0011】
本発明は上述した問題点に鑑みてなされたものであり、ハイブリッド車両において、特にノックが生じた場合であっても内燃機関を効率良く動作させ得るハイブリッド車両の内燃機関制御装置及び方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するため、動力源としてモータジェネレータ及び少なくとも吸気弁の開閉特性が可変である内燃機関を備えるハイブリッド車両において、前記内燃機関を制御するハイブリッド車両の内燃機関制御装置であって、前記内燃機関のトルクを特定するトルク特定手段と、該特定されたトルク、前記内燃機関の回転数及び前記内燃機関における燃料噴射量に基づいて、前記内燃機関における瞬間的な燃料消費率を算出する燃料消費率算出手段と、該算出された燃料消費率に基づいて、前記トルク及び前記回転数を夫々第1軸及び第2軸とする座標平面上で予め設定された動作線の更新を行う動作線更新手段と、前記更新が行われた動作線に従って前記内燃機関の動作状態を制御する制御手段と、前記内燃機関においてノックが発生する場合に、(i)前記内燃機関の点火時期を変更する第1制御及び(ii)前記吸気弁の開閉特性を変更する第2制御のうち、前記算出された燃料消費率が相対的に小さい一方の制御を実行することにより前記ノックを低減するノック低減手段とを具備し、前記動作線更新手段は、前記ノックが発生する場合に、前記一方の制御に即して前記動作線の更新を行うことを特徴とする。
【0013】
本発明におけるモータジェネレータは、バッテリから供給される電気エネルギを機械エネルギに変換することによって、電動機として動作する機能と、機械エネルギを電気エネルギに変換することによって、例えばバッテリ等に電力を供給する発電機として動作する機能とを有する。尚、モータジェネレータは予め、主として電動機(モータ)として使用されるモータジェネレータと、主として発電機(ジェネレータ)として使用されるモータジェネレータの二種類搭載されていてもよい。このような内燃機関とモータジェネレータとを具備する本発明に係るハイブリッド車両においては、モータジェネレータによって適宜内燃機関の動力をアシストすることが可能な所謂パラレル方式の制御が好適に行われる。
【0014】
本発明における「内燃機関」とは、燃料の燃焼を動力に変換する機関を総称するが、好適にはガソリン、ディーゼル、LPG等を燃料とするエンジンなどを指す。
【0015】
また、本発明に係る内燃機関においては特に吸気弁の開閉特性が可変である。ここで、本発明に係る「開閉特性」とは、好適には開閉の時期(タイミング)を含んで規定される特性を表す。吸気弁(バルブ)の開閉時期は、一般に内燃機関におけるクランクシャフトの回転角或いはクランク位相に対応付けられて制御されている。従って、ここで述べられる「時期」とは、単なる時刻概念であると言うよりは、クランクシャフトの回転角或いはクランク位相を基準とする相対的な時刻概念である。従って、係る開閉時期を規定する表現として、「遅角」或いは「進角」なる単語を含む用語(例えば、「遅角量」、「遅角制御」など)が好適に使用される。例えば、「遅角制御」された状態とは、即ち、バルブの開く或いは閉じる時期が、クランクシャフトの回転に対応付けられて設定された基準となる位相に対し相対的に遅れるように制御された状態であり、例えば「遅角量」とは、その際の角度値である。また、「進角制御」された状態とは、その逆であって、バルブの開く或いは閉じる時期がクランクシャフトの回転角に対応付けられて設定された基準となる位相に対し相対的に進むように制御された状態を指す。このような開閉特性を可変とする手段としては、例えば、VVTなどの可変動弁機構が採用されてもよい。また、吸気弁の開閉特性が可変である限りにおいて、排気弁の開閉特性が可変であってもよい。更に、可変動弁機構の構成は、ヘリカルギア制御方式、ベーン制御方式、或いは電磁制御方式などの公知である制御方式が使用されてよい。
【0016】
内燃機関には予め動作線が設定されており、制御手段は、この動作線に従って内燃機関の動作状態を制御している。ここで、本発明における「動作線」とは、内燃機関のトルク及び内燃機関の回転数を夫々第1軸及び第2軸とする座標平面上で内燃機関の動作状態を規定する線であり、予め内燃機関の出力値に対応付けられて設定された複数の動作点によって規定される線を表す。制御手段は、より具体的には、動作線上で動作点を決定し、内燃機関を該決定された動作点によって規定される動作状態に制御している。
【0017】
尚、動作線は、好適には、これら予め設定された動作点を相互に繋げて得られる線である。この際、個々の出力値に対応する動作点間は適当に補間されていてもよい。また、動作線を規定する個々の動作点は、通常、対応関係にある内燃機関の出力値において燃料消費率(以下、適宜「燃費率」と称する)が最小となる、即ち効率が最大となるトルクと回転数との組み合わせを表す点として設定されている。
【0018】
ここで特に、燃料消費率が最小となる動作点(燃費率最小動作点)は、例えば、大気圧、湿度、或いは内燃機関の燃料性状などに応じて若干、或いは明らかに変化する。従って、従来の技術の如く、動作線が予め設定された固定な動作線である場合、内燃機関は、燃料消費率が最小とならない動作点で使用される可能性がある。
【0019】
そこで、本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置(以下、適宜「内燃機関制御装置」と称する)によれば、以下に説明する如く動作線の更新が可能となっている。即ち、本発明に係る内燃機関制御装置によれば、その動作時には、先ずトルク特定手段により内燃機関のトルクが特定される。更に、燃料消費率算出手段により、この特定されたトルク、内燃機関の回転数及び内燃機関の燃料噴射量に基づいて内燃機関の瞬間的な燃料消費率が算出される。
【0020】
本発明における「トルク特定手段」とは、例えば、直接的又は間接的に内燃機関のトルクを測定又は検出する態様を有していてもよいし、これら測定又は検出されたトルクを単に電気信号として数値的に取得する態様を有していてもよいし、或いは、直接的又は間接的に測定又は検出された、トルク又はトルクとの関連性を有する何らかの物理量、電気量、又は化学量からトルクを数値演算的に算出する態様を有していてもよく、最終的に内燃機関のトルクを特定可能である限りにおいてその態様は自由に決定されてよい趣旨である。尚、直接的又は間接的にトルクを測定又は検出する際には、例えば公知である接触式又は非接触式のトルクセンサが使用されてもよい。尚、ハイブリッド車両が、ハイブリッド車両に備わるモータジェネレータによって、内燃機関のトルクを所謂トルク反力と称される形で検出することが可能に構成されている場合には、トルクセンサ等を別個に設ける必要はなく極めて効率的である。
【0021】
本発明における「燃料消費率」とは、内燃機関における単位電力量(例えば、単位はkWh)当りの燃料噴射量を表す指標値である。内燃機関の出力(即ち、電力)は、内燃機関のトルクと回転数との積に比例する。尚、「瞬間的な」とは、予め定められた条件下において、固定又は可変である所定種類の周期毎に訪れる時刻に、或いは全く任意の時刻において燃料消費率を算出することが可能であることを表す趣旨である。
【0022】
本発明に係る動作線更新手段は、このようにして得られる瞬間的な燃料消費率に基づいて動作線を更新することが可能に構成されている。即ち、従来固定されていた動作線(動作点)を自由に設定し直すことが可能となっているのである。この際、動作線の更新は、算出された燃料消費率を反映する限りにおいてどのように行われてもよいが、例えば、動作線を規定する動作点の燃料消費率が小さくなるように更新されるのが好適である。尚、動作点は動作線を規定するものであるから、動作点を更新することによって動作線は更新される。但し、同様に瞬間的な燃料消費率に基づいて動作線が更新され、その結果として動作点が更新されてもよい。
【0023】
このように、本発明に係る内燃機関制御装置は、動作線を更新可能とすることによって、内燃機関を効率良く動作させることが可能となっているのである。
【0024】
尚、ここで述べられる「動作線の更新」とは、動作線を単に変更するのみに限らず、変更された動作線を随時記憶することも含む趣旨である。このように変更された動作線を記憶することにより、動作線を常に最適な形に維持することも容易にして可能である。尚、この際、動作線は、更新が行われた際の条件を示す何らかの情報と対応付けられる形で記憶されてもよい。また、このように動作線の変更を記憶しておく期間は何ら限定されない。例えば、ハイブリッド車両が一定期間不使用状態であれば記憶内容が消去されて、再び動作点が予め設定されていた初期値に戻ってもよい。この場合には、次回ハイブリッド車両が運転される際に、その時の状況に応じて動作線が更新されることとなる。一方、動作線はハイブリッド車両の使用環境、使用目的、又は使用頻度などに適応する形で常にアクティブに更新され続けてもよい。即ち、動作線の更新を何ら行わない場合と比較して、燃料の消費量を幾らかなりとも低減し得る(効率を改善し得る)限りにおいて、動作線の更新は一時的なものであっても永続的なものであってもよい。
【0025】
一方、内燃機関においては、頻繁にノック或いはノッキングと呼ばれる異常燃焼が発生する。ノックは、気筒内の圧縮比が過度に高くなることなどによって点火プラグがプレイグニッション温度に達し、点火プラグ自体が熱源となって、火花による正常着火以前に混合気が自発火する現象を指す。ノックの発生は内燃機関のピストンや点火プラグに悪影響を及ぼす可能性があるため、速やかに低減させるのが好ましい。
【0026】
本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置においては、ノック低減手段が、ノックが発生する場合に(i)前記内燃機関の点火時期を変更する第1制御又は(ii)前記吸気弁の開閉特性を変更する第2制御を実行することによりノックが低減されている。
【0027】
また、本発明における「低減」とは、何らノック対策を施さない場合と比較して幾らかなりともその影響が除去されることを指す概念である。
【0028】
第1制御においては、例えば、点火時期が遅角制御される。尚、「点火時期を変更する」と示される通り、点火時期は進角制御されても構わない。点火時期が遅角制御された場合、燃焼温度が低下し、燃焼室及び点火プラグの温度上昇が防止されるため、プレイグニッションの発生が抑制され、ノックは低減される。尚、ノックが終息した場合には、ノックが再発生しない範囲で徐々に点火時期が進角制御され、予め設定された最適点火時期に復帰するように第1制御が行われてもよい。
【0029】
第2制御においは、例えば可変動弁機構などが制御され、吸気弁の開閉時期が変更される。好適には、吸気弁の閉じ時期(クローズタイミング)が遅角制御される。吸気弁の閉じ時期が遅角制御された場合には、例えばピストンが圧縮工程に入った段階でも吸気弁は開いているため、圧縮効率(実圧縮比)と吸入空気量が低下し、ノックが低減される。
【0030】
これら第1制御及び第2制御においては、例えばノックセンサなどのノック検出手段によって検出される、ノックと何らかの関係を有する物理的、電気的、又は化学的な状態、より具体的にはノックによって生じる機械的振動の強度若しくは周波数又はそれらと置換し得る何らかの数値に応じた制御が行われる。例えば、ノック強度が比較的大きい場合、第1制御においては点火時期の遅角量が比較的大きく、また第2制御においては吸気弁のクローズタイミングの遅角量が比較的大きくなるように制御が行われる。
【0031】
尚、「ノックが発生する場合に」とは、典型的な意味合いとして「ノックが発生した場合に」、或いは「ノックが検出された場合に」のような過去の事実に基づいた条件判断を含み、更には、予めノックが発生することが実験的に、経験的に、或いはシミュレーションなどによって自明であるか、或いは予測、推測、又は推定可能である場合に、ノックの発生以前に、或いはノックの発生と同時にノック低減手段がいずれかの制御を実行することを含む趣旨である。
【0032】
また、このように内燃機関にノックが発生する場合であっても、本発明に係る動作線更新手段は動作線の更新を行うことが可能である。従って、ノックの低減がいずれの制御によってなされたとしても、何らこのような更新を行わない場合と比較して格段に効率良い状態に維持することが可能である。
【0033】
但し、第1制御に基づいてノックが低減される場合と、第2制御に基づいてノックが低減される場合とでは、更新された動作線によって規定される動作点の燃料消費率は相互に異なる場合が多い。従って、例えば、第1制御によってノックが低減されるよりも第2制御によってノックが低減される方が高効率であるような条件下で第1制御に基づいて動作線の更新が行われた場合には、真に効率良く動作線の更新が行われたことにはならない。
【0034】
そこで、本発明に係るノック低減手段は、第1制御及び第2制御のうち、燃料消費率算出手段によって算出された燃料消費率が相対的に小さい一方の制御を実行することによりノックを低減させている。そして、動作線更新手段は、この一方の制御に即して動作線の更新を行う。従って、本発明に係る内燃機関制御装置によれば、ノックが発生する場合であっても内燃機関を常に効率良く動作させることが可能となっているのである。
【0035】
尚、ここで述べられる「一方の制御に即して動作線の更新を行う」とは、典型的には一方の制御が行われている条件下で動作線の更新を行うことを表すが、例えば、いずれの制御が行われるかが判明していることによって、予め係る制御が行われるものとして動作線の更新を行うことが可能である場合には、必ずしも係る制御が行われている条件下で動作線の更新が行われなくともよい趣旨である。
【0036】
尚、ここで、いずれの制御における燃料消費率が相対的に小さいかは、理想的には、その都度算出される燃料消費率に基づいて選択されるが、例えば、何らかの判断基準、例えば、実験的に、経験的に、或いはシミュレーションなどによって与えられる判断基準に従って、ある時点において行われた動作線の更新に際して選択されていた制御を他の時刻における動作線の更新時に適用してもよいと判断される場合には、必ずしもその都度燃料消費率の比較によって一方の制御が選択されなくともよい。
【0037】
尚、本発明に係る動作線更新手段は、内燃機関にノックが発生する場合に動作線の更新を行うことが可能である限りにおいて、ノック非発生時であっても、例えば内燃機関の環境条件や制御条件などの変化に応じて適宜動作線の更新を行ってもよい。尚、内燃機関の環境条件とは、例えば外気温、大気圧、又は湿度など、内燃機関の動作に幾らかなりとも影響を与え得る外界の条件である。また、内燃機関の制御条件とは、内燃機関の動作を制御するための条件であって、例えば、内燃機関の冷却水温、点火プラグの点火時期若しくはその遅角量、又は燃料性状などを指す。また、ノックの強度や周波数は、係る制御条件の一であってもよい。
【0038】
本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置の一の態様では、前記トルク特定手段は、前記モータジェネレータを介して得られる前記内燃機関のトルク反力に基づいて前記トルクを特定する。
【0039】
この態様によれば、内燃機関のトルクは、ハイブリッド車両に備わるモータジェネレータによってトルク反力として検出される。従って、トルク特定手段はこの検出されたトルクに基づいてトルクを特定すればよいのに加えて、既に述べたように、トルクセンサなどのトルク検出手段を別途設置する必要もなくなり、極めて効率的且つ経済的である。
【0040】
本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置の他の態様では、前記動作線更新手段は、前記動作線の更新の少なくとも一部として、(i)前記座標平面で前記内燃機関の一の出力値について前記トルクと前記回転数との相互関係を表してなる等出力線上において、前記内燃機関の動作点を前記予め設定された動作線上における前記一の出力値に対応する動作点から離散的又は連続的に変化させる第1処理、(ii)前記第1処理において前記動作点を離散的又は連続的に変化させた結果として得られる複数の動作点各々について前記燃料消費率算出手段により算出される燃料消費率各々を比較することにより前記燃料消費率が最小となる燃費率最小動作点を特定する第2処理及び(iii)前記一の出力値についての等出力線上において、前記一の出力値に対応する動作点を前記燃費率最小動作点に更新する第3処理を含んでなる学習処理を行い、前記一方の制御は、前記第1及び第2制御各々について前記第1及び第2処理が行われた際に算出された前記燃費率最小動作点各々に対応する燃料消費率各々の比較に基づいて決定される。
【0041】
この態様によれば、動作線更新手段は、動作線の更新の少なくとも一部として第1処理、第2処理、及び第3処理を含んでなる学習処理を行う。
【0042】
第1処理は、動作線が規定されている座標平面上において、内燃機関の等出力線上で動作点を変化させる処理である。ここで、「等出力線」とは、内燃機関の一の出力値について、トルクと回転数との相互関係を表した曲線であり、係る座標平面上で、内燃機関の出力値に応じて複数規定することができる。
【0043】
等出力線上で動作点を変化させる際には、例えばスロットルバルブの開度などが制御され一の出力値が維持される。動作線更新手段は、動作線上でこの一の出力値に対応する動作点から離散的又は連続的に動作点を変化させる。この際、動作点を離散的に変化させるか、連続的に変化させるかは逐次選択されてよい。また、離散的に変化させる際に、等出力線上で如何なる動作点を選択するのかも自由に決定されてよい。更に、等出力線上で動作点を変化させる範囲も自由に設定されてよい。或いは、動作点を変化させる範囲は、予め実験的に、経験的に、或いはシミュレーションなどによって決定されていてもよい。
【0044】
第2処理は、動作点を等出力線上で離散的又は連続的に変化させた結果としての動作点各々に対して燃料消費率算出手段が算出した燃料消費率を相互に比較し、燃料消費率が最小となる動作点(即ち、燃費率最小動作点)を特定する処理である。この際、燃料消費率算出段は、前述した、一の出力値に対応する動作点に対しても燃料消費率を算出している。この一の出力値に対応する動作点に対して算出された燃料消費率は、言わばリファレンスとしての燃料消費率となる。
【0045】
尚、第2処理においては、燃料消費率が算出された複数の動作点の中に、等出力線上で真に燃料消費率が最小となる動作点が含まれていなくてもよい。即ち、あくまで比較された動作点の中から燃費率最小動作点が特定されればよい。但し、燃料消費率が算出されていない動作点であっても、相前後する他の動作点の燃料消費率から経験的に、或いはシミュレーションなどによって燃料消費率が最小となる動作点を推定し得る場合には、係る動作点が燃費率最小動作点として特定されてもよい。
【0046】
第3処理においては、このようにして特定された動作点が、新たに一の出力値に対応する動作点、即ち動作線を規定する動作点として設定され、動作点が更新される。この更新された動作点は、次回学習処理が行われる際の「一の出力値に対応する動作点」となる。この動作点の更新によって、結果的に動作線は更新される。次回、この動作線について学習処理が行われる場合における「予め設定された動作線」とは、この更新された動作線となる。尚、第3処理に際して、一の出力値に対応する動作点のみが更新されてもよいし、この動作点の更新を反映して、他の出力値に対して適当に動作点が更新されてもよい。尚、このようにして更新された動作点は、例えば、学習処理が行われた際の環境条件や制御条件と対応付けられて記憶されていてもよい。
【0047】
この態様によれば、等出力線上で燃費率最小動作点が特定され、動作点が更新されるため、内燃機関の出力が変化することがない。内燃機関の出力が変化しなければ、ハイブリッド車両を運転する運転者に与える違和感は比較的小さくて済むと共に比較的正確に燃料消費率の算出を行うことが可能となり、比較的正確に動作点の更新を行うことが可能となる。
【0048】
尚、学習処理において、第1処理、第2処理及び第3処理は、夫々並列処理されてもよいし、順次行われてもよい。順次行われる際には、第1処理において変化させた動作点各々における燃料噴射量が然るべき記憶手段に一時的に記憶されていればよい。
【0049】
ここで特に、内燃機関にノックが発生する場合にノック低減手段によって実行される制御は、第1及び第2制御各々について第1及び第2処理が行われた際に算出された燃費率最小動作点各々に対応する燃料消費率各々の比較に基づいて決定される。従って、内燃機関の一の出力値において、第1及び第2制御のうちいずれの制御によってノックの低減を図るべきであるかを明確に決定することが可能となり、動作線の更新を的確に行うことが可能となるのである。
【0050】
本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置の他の態様では、前記一方の制御は、前記座標平面において前記内燃機関の回転数によって規定される複数の回転領域毎に決定される。
【0051】
この態様によれば、ノックを低減するために第1及び第2制御のうちいずれの制御を使用するべきかが、予め定められた、或いはその都度適当に決定される内燃機関の回転数範囲毎に決定されるので、学習処理に要する負荷を軽減することが可能となる。尚、この際、回転数範囲をどのように設定するかについては、予め実験的に、経験的に、或いはシミュレーションなどによって適当な基準が定められていてもよい。
【0052】
本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置の他の態様では、前記一方の制御は、前記座標平面において前記内燃機関のトルクによって規定される複数のトルク領域毎に決定される。
【0053】
この態様によれば、ノックを低減するために第1及び第2制御のうちいずれの制御を使用するべきかが、予め定められた、或いはその都度適当に決定される内燃機関のトルク範囲毎に決定されるので、学習処理に要する負荷を軽減することが可能となる。尚、この際、トルク範囲をどのように設定するかについては、予め実験的に、経験的に、或いはシミュレーションなどによって適当な基準が定められていてもよい。
【0054】
上述した課題を解決するため、本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御方法は、動力源としてモータジェネレータ及び少なくとも吸気弁の開閉特性が可変である内燃機関を備えるハイブリッド車両において、前記内燃機関を制御するハイブリッド車両の内燃機関制御方法であって、前記内燃機関のトルクを特定するトルク特定工程と、該特定されたトルク、前記内燃機関の回転数及び前記内燃機関における燃料噴射量に基づいて、前記内燃機関における瞬間的な燃料消費率を算出する燃料消費率算出工程と、該算出された燃料消費率に基づいて、前記トルク及び前記回転数を夫々第1軸及び第2軸とする座標平面上で予め設定された動作線の更新を行う動作線更新工程と、前記更新が行われた動作線に従って前記内燃機関の動作状態を制御する制御工程と、前記内燃機関においてノックが発生する場合に、(i)前記内燃機関の点火時期を変更する第1制御及び(ii)前記吸気弁の開閉特性を変更する第2制御のうち、前記算出された燃料消費率が相対的に小さい一方の制御を実行することにより前記ノックを低減するノック低減工程とを具備し、前記動作線更新工程においては、前記ノックが発生する場合に前記一方の制御に即して前記動作線の更新が行われる。
【0055】
本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御方法によれば、その動作時には、上述した本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置における動作を実現する各工程により、本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置と同様の効果を得ることが可能である。
【0056】
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態により明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
以下、図面を参照して本発明の好適な各種実施形態について説明する。
<1:第1実施形態>
<1−1:実施形態の構成>
<1−1−1:ハイブリッドシステムの構成>
始めに、図1を参照して、本発明の第1実施形態に係るハイブリッドシステム10の構成について説明する。ここに、図1は、ハイブリッドシステム10のブロック図である。
【0058】
図1において、ハイブリッドシステム10は、制御装置100、エンジン200、モータジェネレータMG1、モータジェネレータMG2、動力分割機構300、インバータ400、バッテリ500、及び車速センサ600を備え、ハイブリッド車両20を制御するシステムである。
【0059】
制御装置100は、動作状態制御部100a、トルク算出部100b、燃費率算出部100c、動作線更新部100d、記憶部100e及びノック制御部100fを備えると共に、ハイブリッドシステム10の動作全体を制御する、例えばECU(Engine Controlling Unit)等の制御ユニットであり、本発明に係る「ハイブリッド車両の内燃機関制御装置」の一例として機能する。
【0060】
動作状態制御部100aは、エンジン200、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2各々の動作状態を制御することが可能に構成された、本発明に係る「制御手段」の一例である。
【0061】
トルク算出部100bは、エンジン200のトルクを算出することが可能に構成された、本発明に係る「トルク特定手段」の一例である。
【0062】
燃費率算出部100cは、エンジン200の燃料消費率を算出することが可能に構成された、本発明に係る「燃料消費率算出手段」の一例である。
【0063】
動作線更新部100dは、記憶部100eに格納される制御プログラムに従って、本発明に係る「動作線の更新」の一例たる動作線学習処理を実行することが可能に構成された、本発明に係る「動作線更新手段」の一例である。尚、動作点学習処理については後述する。
【0064】
記憶部100eは、例えばROM(Read Only Memory)などで構成された不揮発性記憶領域と、RAM(Random Access Memory)などで構成された揮発性記憶領域を有する記憶媒体である。記憶部100eにおいて、不揮発性領域には、予め定められた各種制御プログラムや、後述する制御マップなどが格納されている。また、揮発性領域には、後述する動作点学習処理が行われた際の学習結果が適宜記憶される。
【0065】
ノック制御部100fは、エンジン200にノックが発生する場合に、該ノックを低減するための後述する第1制御及び第2制御を実行することが可能に構成された、本発明に係る「ノック低減手段」の一例である。
【0066】
エンジン200は、本発明に係る「内燃機関」の一例たるガソリンエンジンであり、ハイブリッド車両20の主たる動力源として機能する。尚、エンジン200の詳細な構成については後述する。
【0067】
モータジェネレータMG1は、本発明に係る「モータジェネレータ」の一例であり、バッテリ500を充電するための発電機として、或いはエンジン200の駆動力をアシストする電動機として機能するように構成されている。
【0068】
モータジェネレータMG2は、本発明に係る「モータジェネレータ」の他の一例であり、エンジン200の出力をアシストする電動機として、或いはバッテリ500を充電するための発電機として機能するように構成されている。
【0069】
尚、これらモータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2は、例えば同期電動発電機として構成され、外周面に複数個の永久磁石を有するロータと、回転磁界を形成する三相コイルが巻回されたステータとを備える。但し、他の形式のモータジェネレータであっても構わない。
【0070】
動力分割機構300は、図示せぬサンギア、プラネタリキャリア、ピニオンギア、及びリングギアを備えた遊星歯車機構である。これら各ギアのうち、内周にあるサンギアの回転軸はモータジェネレータMG1に連結されており、外周にあるリングギアの回転軸は、モータジェネレータMG2に連結されている。サンギアとリングギアの中間にあるプラネタリキャリアの回転軸はエンジン200に連結されており、エンジン200の回転は、このプラネタリキャリアと更にピニオンギアとによって、サンギア及びリングギアに伝達され、エンジン200の動力が2系統に分割されるように構成されている。ハイブリッド車両20において、リングギアの回転軸は、ハイブリッド車両20における伝達機構21に連結されており、この伝達機構21を介して車輪22に駆動力が伝達される。
【0071】
インバータ400は、バッテリ500から取り出した直流電力を交流電力に変換してモータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2に供給すると共に、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2によって発電された交流電力を直流電力に変換してバッテリ500に供給することが可能に構成されている。
【0072】
バッテリ500はモータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2を駆動するための電源として機能することが可能に構成された充電可能な蓄電池である。バッテリ500には、バッテリ500の残容量を検出するSOCセンサ510が設置されており、制御装置100と電気的に接続されている。
【0073】
車速センサ600は、ハイブリッド車両20の速度を検出するセンサであり、制御装置100と電気的に接続されている。
【0074】
<1−1−2:エンジンの詳細構成>
次に、図2を参照して、エンジン200の詳細な構成をその基本的な動作と共に説明する。ここに、図2は、エンジン200の半断面システム系統図である。
【0075】
図2において、エンジン200は、シリンダ201内において点火プラグ202により混合気を爆発させると共に、爆発力に応じて生じるピストン203の往復運動を、コネクションロッド204を介してクランクシャフト205の回転運動に変換することが可能に構成されている。以下に、エンジン200の要部構成を説明する。
【0076】
シリンダ201内における燃料の燃焼に際し、外部から吸入された空気は吸気管206を通過し、インジェクタ207から噴射された燃料と混合されて前述の混合気となる。インジェクタ207には、燃料(ガソリン)が燃料タンク223からフィルタ224を介して供給されており、インジェクタ207は、この供給される燃料を、制御装置100の制御に従って吸気管206内に噴射することが可能に構成されている。尚、燃料タンク223には、燃料残量を検出するための燃料センサ225が設置されている。
【0077】
シリンダ201内部と吸気管206とは、吸気バルブ208の開閉によって連通状態が制御されている。シリンダ201内部で燃焼した混合気は排気ガスとなり吸気バルブ208の開閉に連動して開閉する排気バルブ209を通過して排気管210を介して排気される。
【0078】
尚、本実施形態においては特に、吸気バルブ208及び排気バルブ209は夫々、その開閉特性が可変に構成されている。吸気バルブ208は、吸気用カムシャフト227に不図示の油圧系を介して固定された吸気用カム229のカムプロフィール(カムの形状)によって、その開閉特性が決定される。この油圧系は制御部100と電気的に接続されており、この油圧系が、制御部100から供給される制御信号に従ってカムを相対的に遅角又は進角させることによって、吸気バルブ208の開閉時期は可変となっている。また、排気バルブ209も同様に、排気用カムシャフト228に不図示の油圧系を介して固定された排気用カム230のカムプロフィールによってその開閉特性が決定される。この油圧系は制御部100と電気的に接続されており、この油圧系が、制御部100から供給される制御信号に従ってカムを相対的に遅角又は進角させることによって、排気バルブ209の開閉時期も可変となっている。尚、吸気バルブ208及び排気バルブ209は夫々、電磁式の可変動弁機構であってもよい。
【0079】
吸気管206上には、クリーナ211が配設されており、外部から吸入される空気が浄化される。クリーナ211の下流側(シリンダ側)には、エアフローメータ212が配設されている。エアフローメータ212は、ホットワイヤー式と称される形態を有しており、吸入された空気の質量流量を直接測定することが可能に構成されている。吸気管206には更に、吸入空気の温度を検出するための吸気温センサ213が設置されている。
【0080】
吸気管206におけるエアフローメータ212の下流側には、シリンダ201内部への吸入空気量を調節するスロットルバルブ214が配設されている。このスロットルバルブ214には、スロットルポジションセンサ215が電気的に接続されており、その開度が検出可能に構成されている。更に、スロットルバルブ214の周囲には、運転者によるアクセルペダル226の踏み込み量を検出するアクセルポジションセンサ216、及びスロットルバルブ214を駆動するスロットルバルブモータ217も配設されている。
【0081】
クランクシャフト205近傍には、クランクシャフト205の回転位置を検出するクランクポジションセンサ218が設置されている。クランクポジションセンサ218は、クランクシャフト205の位置を検出することが可能に構成されたセンサであり、制御部100は、クランクポジションセンサ218の出力信号に基づいてピストン203の位置及びエンジン200の回転数などを取得することが可能に構成されている。このピストン203の位置は、前述した点火プラグ202における点火時期の制御などに使用される。点火プラグ202における点火時期は、例えば、ピストン203の位置に対応付けられて予め設定される基本値に対し遅角又は進角制御される。
【0082】
また、シリンダ201を収容するシリンダブロックには、エンジン200のノック強度を測定することが可能なノックセンサ219が配設されており、係るシリンダブロック内のウォータージャケット内には、エンジン200の冷却水温度を検出するための水温センサ220が配設されている。
【0083】
排気管210には、三元触媒222が設置されている。三元触媒222は、エンジン200から排出されるCO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)、及びNOx(窒素酸化物)を夫々浄化することが可能な触媒である。排気管210における三元触媒222の上流側には、空燃比センサ221が配設されている。空燃比センサ221は、排気管210から排出される排気ガスから、エンジン200の空燃比を検出することが可能に構成されている。
【0084】
<1−2:実施形態の動作>
<1−2−1:ハイブリッドシステムの基本動作>
図1のハイブリッドシステム10においては、主として発電機として機能するモータジェネレータMG1と、主として電動機として機能するモータジェネレータMG2と、エンジン200とのそれぞれの駆動力配分が動作状態制御部100a及び動力分割機構300により制御されてハイブリッド車両20の走行状態が制御される。以下に、幾つかの状況に応じたハイブリッドシステム10の動作について説明する。
【0085】
<1−2−1−1:始動時>
例えば、ハイブリッド車両20の始動時においては、バッテリ500の電気エネルギを用いて駆動されるモータジェネレータMG1が電動機として機能する。この動力によって、エンジン200がクランキングされエンジン200が始動する。
【0086】
<1−2−1−2:発進時>
発進時には、バッテリ500の蓄電状態に応じて2種類の態様を採り得る。バッテリ500の蓄電状態は、SOCセンサ510の出力信号に基づいて動作状態制御部100aによって把握されている。例えば、通常の(即ち、SOCが良好な)発進時においては、モータジェネレータMG1によってバッテリ500を充電する必要は生じないため、エンジン200は暖機のためだけに始動し、ハイブリッド車両20は、モータジェネレータMG2による駆動力により発進する。一方、蓄電状態が良好ではない(即ち、SOCが低下している)場合、エンジン200の動力によりモータジェネレータMG1が発電機として機能し、バッテリ500が充電される。
【0087】
<1−2−1−3:軽負荷走行時>
例えば、低速走行や緩やかな坂を下っている場合には、比較的エンジン200の効率が悪い為、エンジン200は停止され、ハイブリッド車両20は、モータジェネレータMG2による駆動力のみで走行する。尚、この際、SOCが低下していれば、エンジン200はモータジェネレータMG1を駆動するために始動し、モータジェネレータMG1によりバッテリ500の充電が行われる。
【0088】
<1−2−1−4:通常走行時>
エンジン200の効率が比較的良好な運転領域においては、ハイブリッド車両20は主としてエンジン200の動力によって走行する。この際、エンジン200の動力は、動力分割機構300によって2系統に分割され、一方は、伝達機構21を介して車輪22に伝達され、他方は、モータジェネレータMG1を駆動して発電を行う。更に、この発電された電力により、モータジェネレータMG2が駆動され、モータジェネレータMG2によりエンジン200の動力がアシストされる。尚、この際、SOCが低下している場合には、エンジン200の出力を上昇させて、モータジェネレータMG1により発電された電力の一部がバッテリ500へ充電される。
【0089】
<1−2−1−5:制動時>
減速が行われる際には、車輪22から伝達される動力によってモータジェネレータMG2を回転させ、発電機として動作させる。これにより、車輪22の運動エネルギが電気エネルギに変換され、バッテリ500が充電される、所謂「回生」が行われる。
【0090】
<1−2−2:実施形態におけるエンジンの基本制御動作>
次に、エンジン200の基本的な制御動作について説明する。
【0091】
動作状態制御部100aは、エンジン200に要求される出力であるエンジン要求出力を一定の周期で繰り返し演算している。動作状態制御部100aは、スロットルポジションセンサ215及び車速センサ600の出力信号に基づいてアクセル開度と車速とを取得し、記憶部100eの不揮発性領域に記録されたマップを参照してアクセル開度及び車速に対応した出力軸トルク(伝達機構21に出力されるべきトルク)を求める。また、動作状態制御部100aはSOCセンサ510の出力信号に基づいて要求発電量を求める。そして、要求発電量と各種の補機類(A/Cやパワーステアリングなど)の要求量とを参照して出力軸トルクを補正することにより、エンジン要求出力を求める。なお、エンジン要求出力の演算方法は公知のハイブリッド車両で実行されている通りでよく、その細部は必要に応じて種々変更してよい。
【0092】
<1−2−3:動作点学習処理>
<1−2−3−1:動作線及び動作点>
次に、図3を参照して、本発明の動作点学習処理に係る動作線及び動作点について説明する。ここに、図3は、制御マップ30の模式図である。
【0093】
図3において、制御マップ30は、縦軸(即ち、本発明に係る「第1軸」の一例)にエンジン200のトルクTe、横軸(即ち、本発明に係る「第2軸」の一例)にエンジン200の回転数Neを表してなる座標平面であり、本発明に係る「座標平面」の一例である。制御マップ30は、予め制御装置100の記憶部100eにおける不揮発性領域に格納されている。
【0094】
制御マップ30上には、様々なパラメータに対するエンジントルクTeとエンジン回転数Neとの関係を表すことが可能である。このうち、等出力線Pi(i=1,2,・・・,9)はエンジン200の出力値を一定とした場合の、エンジントルクTeとエンジン回転数Neとの関係線である。尚、本実施形態中においては、等出力線Piに対応するエンジン200の出力を適宜「出力Pi」と称することとする。また、図3においては、説明の簡略化のため、等出力線は9本しか描かれていないが、実際にはより細かく設定することが可能である。
【0095】
動作状態制御部100aは、エンジン200を動作させる際、エンジン200が、その都度求められる要求出力値に対応する等出力線上で予め設定されている動作点によって表されるエンジントルクTe及びエンジン回転数Neの組み合わせとなるように動作状態を決定する。動作線は、これら動作点を繋げたものとして規定される。
【0096】
図3において、動作線Qは、初期値として設定された動作線であり、等出力線Piに対応する動作点Qi(i=1,2,・・・,9)によって規定されている。夫々の等出力線上において、動作点Qiは、予め燃料消費率が最小となる(即ち、最も効率が高い)点に設定されており、例えば、工場出荷時などにおいて、標準的な環境条件で最適化されている。
【0097】
しかしながら、ハイブリッド車両20の使用条件は、画一的なものとなり得ないから、このように予め設定された動作点でエンジン200を動作させる場合には、エンジン200の燃費率は必ずしも最小とはならない。これは、制御マップ30上で燃費率が等しい領域を表した等燃費率線Sの分布が、エンジン200の環境条件や制御条件に応じて変化してしまうことによる。等燃費率線Sの分布が変化した結果、例えば、夫々の等出力線Piにおける動作点は、動作点Ri(i=1,2,・・・,9)へと変化する。その結果、エンジン200を効率良く動作させ得る動作線は動作線Rへと変化する。
【0098】
このような、燃費率が最小となる動作点が諸条件に応じて変化してしまう事態に対応するために、本実施形態に係るハイブリッドシステム10においては、動作線更新部100dによって動作点学習処理が行われる。この動作点学習処理により、ハイブリッドシステム10は、常に効率良くエンジン200を動作させることが可能となっている。
【0099】
<1−2−3−2:動作点学習処理の概要>
本実施形態に係る動作点学習処理は、以下(1)〜(3)の工程を備える。
【0100】
(1)等出力線Pi上でエンジン200の動作点を変化させる工程(即ち、本発明に係る「第1処理」の一例)。
【0101】
(2)変化させた動作点各々における燃費率を算出する工程(即ち、本発明に係る「第2処理」の一例)。
【0102】
(3)最も燃費率が小さい動作点(燃費率最小動作点)を確定して当該等出力線Pi上の動作点として再設定(即ち、更新)する工程(即ち、本発明に係る「第3処理」の一例)。
【0103】
本実施形態において、動作状態制御部100aは、制御マップ30を記憶部100eの不揮発性領域から揮発性領域へとコピーし、このコピーされた制御マップ30を使用してエンジン200の制御を行っている。動作点学習処理は、この揮発性領域上で適宜制御マップ30を書き換える処理である。上記(1)〜(3)の工程が行われることにより、一の等出力線Pi上においてエンジン200を動作させる際の動作点が、燃費率最小動作点に更新される。従って、エンジン200は比較的効率の良い状態を、或いは最も効率の良い状態を維持し続けることが可能となる。尚、本実施形態においては、一旦動作点学習処理が行われれば、エンジン200においてバッテリ500がリセットされるまで動作点の更新結果は保存される。但し、動作点学習処理の効力が及ぶ時間範囲は上述のものに限定されない。例えば、運転者の要求に応じて、或いはエンジン200が停止する毎に、動作線はリセットされ初期状態(記憶部100eの不揮発性領域に格納される制御マップ30によって規定される状態)に復帰してもよい。
【0104】
<1−2−3−3:動作点学習処理の詳細>
次に、図4を参照して、本実施形態に係る動作点学習処理の詳細について説明する。ここに図4は、動作点学習処理のフローチャートである。
【0105】
図4において、例えばハイブリッド車両20の通常走行中に、動作線更新部100dは、エンジン200の動作点を現在の等出力線Pi上で比較対象の一となる動作点に設定する(ステップA11)。これに応じて、エンジン200の制御状態は、動作状態制御部100aにより、この設定された動作点によって規定される動作状態に制御される。ここで、「比較対象の一となる動作点」とは、動作点学習処理を行うための燃費率の比較対象となる動作点のうちの一つを指す。動作点学習処理が開始されて最初に訪れるステップA11においては、その時点で等出力線Pi上で動作点として設定されている動作点(即ち、前回の動作点学習処理による更新値又は初期値Qi)が動作点として設定される。
【0106】
次に、燃費率算出部100cが、設定された動作点におけるエンジン200の燃費率を算出する(ステップA12)。燃費率は、エンジン200の単位電力量当りの燃料噴射量である。従って、インジェクタ207の燃料噴射量を、エンジン200の出力値(kW)から算出される電力量(kWh)で除算したものと等価である。
【0107】
燃料噴射量は、動作状態制御部100aが、エンジン200の回転数及び負荷率から記憶部100eの不揮発性領域に格納される基本噴射量マップに基づいて決定する基本噴射量に対して更に様々な補正を行った結果として得られる。燃費率算出部100cは、この燃料噴射量を動作状態制御部100aから取得する。
【0108】
一方、トルク算出部100bは、モータジェネレータMG1を介して検出されるエンジン200のトルク反力からエンジン200のトルクを算出する。燃費率算出部100cは、この算出されたトルクを取得すると共に、クランクポジションセンサ218の出力値に基づいて算出されるエンジン200の回転数を動作状態制御部100aから取得して、これらの値からエンジン200の出力を算出する。
【0109】
燃費率算出部100cは、このエンジン200における燃料噴射量とエンジン200の出力とに基づいて、現在設定されている動作点における燃費率を算出する。
【0110】
一の動作点について燃費率が算出されると、動作線更新部100dは、燃費率最小動作点が確定したか否かを判別する(ステップA13)。
【0111】
この判別は、予め実験的、経験的、或いはシミュレーションなどにより与えられてなる判断基準に基づいてなされる。例えば、等出力線上で一定の方向に動作点を動かした際に、燃費率が徐々に小さくなり、ある動作点を境に徐々に大きくなっている場合には、図3における等燃費率線Sの形状から言っても、係る動作点を燃費率最小動作点と考えてよい。
【0112】
従って、ステップA13に係る判別は、明確に何らかの閾値と比較して大小関係を判別すると言うよりも、燃費率の算出値の前後関係から判断されるべきものであり、一の動作点学習処理毎に態様は異なるものである。但し、動作点学習処理の開始後最初に訪れるステップA13に係る処理では、比較対象は存在しないので、条件分岐は「NO」となる。
【0113】
燃費率最小動作点が確定しない場合には(ステップA13:NO)、動作線更新部100dは、処理をステップA11に戻し、燃費率最小動作点が確定するまでステップA11からステップA13に係る処理を繰り返す。
【0114】
この際、ステップA11において設定される動作点は、例えば、等出力線上における離散的な、即ち、適当に距離の離れた動作点であってもよいし、連続的な、即ち極めて近接した動作点であってもよい。これら動作点をどのように変化させるかについては、例えば予め実験的に、経験的に、或いはシミュレーションなどによりその手法が与えられていてもよいし、その都度、動作線更新部100dが動作点学習処理の進捗に鑑みて決定してもよい。
【0115】
このような過程を繰り返した結果、燃費率最小動作点が確定されると(ステップA13:YES)、動作線更新部100dは動作点を更新する(ステップA14)。この際、揮発性領域にコピーされた制御マップ30において、この動作点学習処理が行われた等出力線上における動作点が書き換わり、動作線がそれに応じて変化する。動作点が更新されると、動作点学習処理は終了する。
【0116】
このように、ハイブリッドシステム10においては、動作線更新部100dが動作点学習処理を行うことによって、ハイブリッド車両20が走行中であってもエンジン200の動作点を燃費率が最小となる点に設定することが可能であり、エンジン200を効率良く動作させることが容易にして可能となっているのである。
【0117】
<1−2−3−4:ノック制御部の動作>
エンジン200において発生したノックは、ノックセンサ219によって検出される。ノックセンサ219は、圧電素子などによって、エンジン200の振動に応じた信号を出力することが可能なセンサである。ノック制御部100fは、ノックセンサ219から出力されるノック検出用の信号に基づいて、ノック強度(シリンダブロックのブロック振動の強度)及びノック周波数などに応じたノック制御を行っている。本実施形態において、ノック制御部100fは、第1制御又は第2制御を実行することによって、ノックを低減している。
【0118】
ノック制御部100fが実行する第1制御とは、点火プラグ202の点火時期を遅角する制御である。点火時期を遅角することによって、シリンダ201内の燃焼温度は低下し、混合気のプレイグニッションが防止され、ノックが低減される。
【0119】
また、ノック制御部100fが実行する第2制御とは、吸気バルブ208のクローズタイミングを遅角する制御である。この場合には、ノック制御部100fは、前述した油圧系に対して遅角用の信号を供給し、吸気用カム229の動作を遅角側に制御して吸気バルブ208のクローズタイミングを遅らせる。これによって、実圧縮比及び吸入空気量(吸気量)が低下し、ノックが低減される。
【0120】
一方で、ノックが生じた場合には、等出力線Pi上において燃費率最小動作点の位置が変化するため、エンジン200の動作線を更新する必要がある。ここで、図5を参照してノック発生に関する動作点(燃費率最小動作点)の変化について説明する。ここに、図5は、ノック制御部100fによるノック制御時における制御マップ30の模式図である。尚、同図において、図3と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0121】
図5において、等出力線P1における燃費率最小動作点が動作点R1に設定されている。
【0122】
ここで、ノック制御時においては、第1制御及び第2制御のいずれの制御も、エンジン200のトルクTeを減少させる側に作用する制御であるから、動作点はR1nとして示すように、動作点R1よりも低トルク側に遷移する。この際、いずれの制御を行ったとしても、燃料消費率が最小となる動作点の位置は等しい(即ち、どちらも動作点R1nが燃費率最小動作点となる)場合が多い。
【0123】
しかしながら、動作点R1nにおける燃料消費率を比べると、第1制御と第2制御とでは相互に異なる。従って、等出力線P1上で動作点学習処理を実行することによって動作点及び動作線の更新は行う際には、第1及び第2制御のうち、真に効率の良い制御を選択する必要が生じる。そこで、本実施形態では特に、ノックが発生した場合には、動作線更新部100dが、以下に説明するようにノック制御時の動作点学習処理を行っている。
【0124】
<1−2−3−5:ノック制御時の動作点学習処理>
次に、図6を参照して、ノック制御時の動作点学習処理の詳細について説明する。ここに、図6は、ノック制御時の動作点学習処理のフローチャートである。尚、同図において、図4と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0125】
図6において、動作線更新部100dは、最初にノック制御部100fを制御して、第1制御によるノックの低減を行う(ステップB11)。動作線更新部100dは、第1制御でノックの低減が図られている状況下で、既に説明した動作点の設定(ステップA11)、燃費率の算出(ステップA12)、及び燃費率最小動作点が確定したか否かの判別(ステップA13)からなるループ処理を実行する。
【0126】
燃費率最小動作点が確定した場合には(ステップA13:YES)、確定した燃費率最小動作点に対応する燃費率を記憶部100eの揮発性領域に一時的に格納する(ステップB12)。この段階で、第1制御、即ち、点火時期遅角制御によるノック制御状況下における燃費率最小動作点が確定する。
【0127】
次に、動作線更新部100dは、ノック制御部100fを制御して、第2制御によるノックの低減を行う(ステップB13)。動作線更新部100dは、第2制御でノックの低減が図られている状況下で、既に説明した動作点の設定(ステップA11)、燃費率の算出(ステップA12)、及び燃費率最小動作点が確定したか否かの判別(ステップA13)からなるループ処理を実行する。
【0128】
燃費率最小動作点が確定した場合には(ステップA13:YES)、確定した燃費率最小動作点に対応する燃費率を記憶部100eの揮発性領域に一時的に格納する(ステップB14)。この段階で、第2制御、即ち、吸気バルブのクローズタイミング遅角制御によるノック制御状況下における燃費率最小動作点が確定する。
【0129】
動作線更新部100dは、第1制御及び第2制御各々に対応する燃費率最小動作点各々についての燃費率を記憶部100fから取得し、夫々の燃費率を相互に比較する(ステップB15)。この比較の結果、より小さい燃費率である燃費率最小動作点が、新たな動作点となり動作点が更新される(ステップA14)。また、それに伴って動作線が更新される。動作線が更新されると、動作線更新部100dは、記憶部100eの揮発性領域に更新情報を記憶する(ステップB16)。尚、更新情報とは、ノック制御時の動作点学習処理が実行された出力(即ち、出力P1)について、より小さな燃料消費率を与えた制御を特定するための情報である。
【0130】
更新情報の記憶が終了すると、ノック制御時の動作点学習処理が終了する。このように、本実施形態においては、等出力線Piに対し、第1制御及び第2制御のうち常に効率の良い方の制御によってノックを低減することが可能となっている。従って、ノックが発生しても動作線を効率良く更新することが可能となっているのである。
【0131】
尚、更新情報を記憶することによって、前回いずれの制御によってノックが低減されたのかが参照可能となり、次回同じ等出力線上でノックの低減が行われる際には、速やかに効率の良い方の制御を実行することも可能である。
【0132】
<第2実施形態>
第1実施形態においては、等出力線Pi毎に、即ち、エンジン200の出力値毎にノック制御時の動作点学習処理が実行されるが、エンジン200が使用される状況によっては、このようにエンジン200の出力値毎にノック制御時の動作点学習処理を実行することが困難である。そのような場合に有効な本発明の第2実施形態について図7及び図8を参照して説明する。ここに、図7及び図8は、夫々相互に異なる制御マップ31及び32の模式図である。尚、これらの図において、夫々図3と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を省略することとする。
【0133】
図7において、制御マップ31には、エンジン回転数Neに応じて複数の範囲が設定されている。即ち、エンジン回転数がゼロ以上であってNe1未満である範囲A、同じくNe1以上であってNe2未満である範囲B、以下、Ne2以上Ne3未満である範囲C、Ne3以上である範囲Dの4つの範囲である。
【0134】
夫々の範囲には、例えば、範囲Aにおいては第1制御、範囲Cにおいては第2制御といったように、予め第1制御及び第2制御のうちノック制御を実行する際に実行するべき制御が設定されている。この際、例えば、現在の動作線が動作線Rであるとすると、等出力線P5においてノック制御を行う際には、動作点R5が範囲Bに属しているから、範囲Bに対し予め設定された制御によってノックが制御される。このように、行われるべき制御が予め設定されていることによって、エンジン200の出力値毎に逐次燃費率の比較を行わずに済み、制御部100に掛かる負荷が著しく軽減される。但し、この場合には、このような設定の信頼性を担保する必要がある。従って、例えば、一の範囲については、係る一の範囲内における少なくとも一の出力値に対し、ノック制御時の動作点学習処理が実行され、燃費率の比較に基づいた制御方法の選択が行われる。
【0135】
また、この一の出力に対して設定された制御方法を適用する範囲(即ち、例えば、範囲Bの大きさなど)は、予め実験的に、経験的に、或いはシミュレーションなどの手法によって、最適となるように決定されている。
【0136】
また、図8における制御マップ32のように範囲を設定してもよい。図8においては、エンジン回転数NeではなくエンジントルクTeに応じて複数の範囲が設定されている。即ち、エンジントルクがゼロ以上Te1未満である範囲E、同じくTe1以上Te2未満である範囲F、そしてTe2以上Te3未満である範囲Gである。
【0137】
このようにエンジントルクTeに応じて範囲設定を行った場合にも、エンジン回転数Neに応じて範囲設定を行った場合と同様制御部100の負荷を軽減することが可能である。
【0138】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うハイブリッド車両の内燃機関制御装置及び方法もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】本発明の第1実施形態に係るハイブリッドシステムのブロック図である。
【図2】図1のハイブリッドシステムにおけるエンジンの半断面システム系統図である。
【図3】図1のハイブリッドシステムにおける制御マップの模式図である。
【図4】図1のハイブリッドシステムにおける動作点学習処理のフローチャートである。
【図5】図1のハイブリッドシステムにおけるノック制御時の制御マップの模式図である。
【図6】図1のハイブリッドシステムにおけるノック制御時の動作点学習処理のフローチャートである。
【図7】本発明の第2実施形態に係る制御マップの模式図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る制御マップの他の模式図である。
【符号の説明】
【0140】
10…ハイブリッドシステム、11…ハイブリッドシステム、20…ハイブリッド車両、21…伝達機構、22…車輪、30…制御マップ、100…制御装置、200…エンジン、MG1…モータジェネレータ、MG2…モータジェネレータ、300…動力分割機構、400…インバータ、500…バッテリ、510…SOCセンサ、600…車速センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源としてモータジェネレータ及び少なくとも吸気弁の開閉特性が可変である内燃機関を備えるハイブリッド車両において、前記内燃機関を制御するハイブリッド車両の内燃機関制御装置であって、
前記内燃機関のトルクを特定するトルク特定手段と、
該特定されたトルク、前記内燃機関の回転数及び前記内燃機関における燃料噴射量に基づいて、前記内燃機関における瞬間的な燃料消費率を算出する燃料消費率算出手段と、
該算出された燃料消費率に基づいて、前記トルク及び前記回転数を夫々第1軸及び第2軸とする座標平面上で予め設定された動作線の更新を行う動作線更新手段と、
前記更新が行われた動作線に従って前記内燃機関の動作状態を制御する制御手段と、
前記内燃機関においてノックが発生する場合に、(i)前記内燃機関の点火時期を変更する第1制御及び(ii)前記吸気弁の開閉特性を変更する第2制御のうち、前記算出された燃料消費率が相対的に小さい一方の制御を実行することにより前記ノックを低減するノック低減手段と
を具備し、
前記動作線更新手段は、前記ノックが発生する場合に、前記一方の制御に即して前記動作線の更新を行う
ことを特徴とするハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項2】
前記トルク特定手段は、前記モータジェネレータを介して得られる前記内燃機関のトルク反力に基づいて前記トルクを特定する
ことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項3】
前記動作線更新手段は、前記動作線の更新の少なくとも一部として、(i)前記座標平面で前記内燃機関の一の出力値について前記トルクと前記回転数との相互関係を表してなる等出力線上において、前記内燃機関の動作点を前記予め設定された動作線上における前記一の出力値に対応する動作点から離散的又は連続的に変化させる第1処理、(ii)前記第1処理において前記動作点を離散的又は連続的に変化させた結果として得られる複数の動作点各々について前記燃料消費率算出手段により算出される燃料消費率各々を比較することにより前記燃料消費率が最小となる燃費率最小動作点を特定する第2処理及び(iii)前記一の出力値についての等出力線上において、前記一の出力値に対応する動作点を前記燃費率最小動作点に更新する第3処理を含んでなる学習処理を行い、
前記一方の制御は、前記第1及び第2制御各々について前記第1及び第2処理が行われた際に算出された前記燃費率最小動作点各々に対応する燃料消費率各々の比較に基づいて決定される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項4】
前記一方の制御は、前記座標平面において前記内燃機関の回転数によって規定される複数の回転領域毎に決定される
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項5】
前記一方の制御は、前記座標平面において前記内燃機関のトルクによって規定される複数のトルク領域毎に決定される
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項6】
動力源としてモータジェネレータ及び少なくとも吸気弁の開閉特性が可変である内燃機関を備えるハイブリッド車両において、前記内燃機関を制御するハイブリッド車両の内燃機関制御方法であって、
前記内燃機関のトルクを特定するトルク特定工程と、
該特定されたトルク、前記内燃機関の回転数及び前記内燃機関における燃料噴射量に基づいて、前記内燃機関における瞬間的な燃料消費率を算出する燃料消費率算出工程と、
該算出された燃料消費率に基づいて、前記トルク及び前記回転数を夫々第1軸及び第2軸とする座標平面上で予め設定された動作線の更新を行う動作線更新工程と、
前記更新が行われた動作線に従って前記内燃機関の動作状態を制御する制御工程と、
前記内燃機関においてノックが発生する場合に、(i)前記内燃機関の点火時期を変更する第1制御及び(ii)前記吸気弁の開閉特性を変更する第2制御のうち、前記算出された燃料消費率が相対的に小さい一方の制御を実行することにより前記ノックを低減するノック低減工程と
を具備し、
前記動作線更新工程においては、前記ノックが発生する場合に前記一方の制御に即して前記動作線の更新が行われる
ことを特徴とするハイブリッド車両の内燃機関制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−170053(P2006−170053A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−362947(P2004−362947)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】