説明

ハイブリッド車両の制御装置及び制御方法

【課題】蓄電器が要求された出力を出せないために発電出力の増加が求められる場合であっても、要求出力に対する内燃機関の追従性を担保できるハイブリッド車両の制御装置を提供する。
【解決手段】内燃機関及び当該内燃機関の運転により発電する発電機を有する発電部と、車両の駆動源である電動機に電力供給する蓄電部と、蓄電部及び発電機の少なくとも一方からの電力供給により駆動する駆動部とを備えた車両の制御装置は、AP開度及び電動部の状態に応じて、駆動部に要求された出力を導出した後、駆動部に要求された出力に対応する出力を発電部が出力できず、かつ、駆動部に要求された出力と発電部の出力の差分である蓄電部必要出力を蓄電部が出力できないと判断したとき、駆動部に要求された出力と蓄電部が可能な出力の差分である補正発電部出力、及び蓄電部必要出力と蓄電器が可能な出力の差分である蓄電部出力制限量に応じた、内燃機関の燃焼制御に係るパラメータを導出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されている電池制御装置は、充放電電力の大きさに応じて充放電制限を制御する。電池制御装置は、複数の電池セルを直列に接続したバッテリにおいて、セル電圧が第1過放電比較電圧以下であるかどうかを判断する第1判断手段と、セル電圧が第1過放電比較電圧より低い第2過放電比較電圧以下であるかどうかを判断する第2判断手段と、セル電圧が第2過放電比較電圧以下である場合にバッテリの放電電力を制限する第2放電制限手段とを備える。第2放電制限手段は、セル電圧が第1過放電比較電圧から第2過放電比較電圧に達するまでの時間に応じて、放電電力の制限を制御する。これにより、放電電力の大きさに合わせた制限を行うことができる。つまり、放電電力が大きく、急激にセル電圧が低減する場合や、反対に放電電力が小さくセル電圧の変化が緩やかな場合に対して、過放電が生じたり過度の放電制限を生じたりするのを抑制することができる。
【0003】
特許文献1には、上記説明した電池制御装置が例えばシリーズハイブリッド車輌に搭載されると説明されている。図13は、特許文献1に示されるシリーズハイブリッド車輌の概略構成を示すブロック図である。図13に示すように、シリーズハイブリッド車輌のパワートレインは、エンジン1と、エンジン1に直結されたエンジン1のパワーを電力に変換する発電モータ2と、発電モータ2で生成された電力またはハイブリット車輌の走行により生じる電力を蓄電するバッテリ6を備える。また、バッテリ6に蓄えられた電力を用いて駆動される駆動モータ3を備え、駆動モータ3のトルクをファイナルギア4を介してタイヤ5に伝達する。なお、エンジン1は、最良燃料比で出力できる回転速度で運転される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−166368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記説明した電池制御装置を搭載するシリーズハイブリッド車輌は、放電電力の制限制御により、状況によってはドライバビリィティの低下が懸念される。図14は、放電電力が制限されているときの(a)駆動モータ3の出力、(b)エンジン1の出力及び(c)バッテリ6の出力の時間経過を示すグラフである。図14(a)には、要求駆動力に応じた駆動モータ3の要求出力が点線で表されている。当該要求駆動力に応じてバッテリ6の出力は増加するが、当該出力は、放電電力の制限制御により、図14(c)に一点鎖線で示される放電電力制限値で頭打ちとなる。一方、エンジン1は、バッテリ6の出力を補うために発電モータ2を駆動する。但し、エンジン1の出力は、放電電力の制限制御が行われているか否かにかかわらず、その特性に応じて増加していく。その結果、図14(a)に実線で示すように、バッテリ6の出力が放電電力制限値に抑えられている間の駆動モータ3の実出力は、点線で示されている要求出力を満たさない。
【0006】
図14(a)〜図14(c)は、電池制御装置による放電電力の制限制御によってバッテリ6の出力が抑えられた例を示すが、バッテリ6の残容量(SOC:State of Charge)や劣化状態、温度等によってもバッテリ6の出力が制限され得る。例えば温度に関して、一般的に、二次電池の出力は温度が高い或いは低いと低下する。したがって、高温時或いは低温時のバッテリ6の出力可能な放電電力は通常よりも低く、上記例の場合と同様に、駆動モータ3の実出力が要求出力を満たさない場合があり得る。
【0007】
上記説明した放電電力の制限制御が行われても、バッテリ6が高温時或いは低温時であっても、バッテリ6の容量に余裕があれば、想定される最悪の環境下でも十分なドライバビリィティが得られる。しかし、容量の大きいバッテリはコストが高く重いため、単にバッテリの容量を増す方法は好ましくない。
【0008】
また、図14(c)に示すように、バッテリ6の実出力が要求出力を満たさないとき、エンジン1によって駆動される発電モータ2の発電電力により要求出力に満たない分の出力を補うことができれば、ドライバビリティの低下は防止できる。しかし、最も燃費の良い一定の回転数でエンジン1が定点運転される場合、要求出力への追従性が良くない。このため、上記例で問題となっているドライバビリティの低下を解決できない。
【0009】
本発明の目的は、蓄電器が要求された出力を出せないために発電出力の増加が求められる場合であっても、要求出力に対する内燃機関の追従性を担保できるハイブリッド車両の制御装置及び制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、請求項1に記載の発明のハイブリッド車両の制御装置は、内燃機関(例えば、実施の形態での内燃機関109)及び当該内燃機関の運転によって発電する発電機(例えば、実施の形態での発電機111)を有する発電部(例えば、実施の形態での発電部123)と、ハイブリッド車両の駆動源である電動機に電力を供給する蓄電器(例えば、実施の形態での蓄電器101)を有する蓄電部(例えば、実施の形態での蓄電部121)と、前記蓄電部及び前記発電機の少なくとも一方からの電力供給によって駆動する前記電動機(例えば、実施の形態での電動機107)を有する駆動部(例えば、実施の形態での駆動部125)と、を備えた前記ハイブリッド車両の制御装置(例えば、実施の形態でのマネジメントECU119)であって、前記ハイブリッド車両におけるアクセル操作に応じたアクセルペダル開度及び前記電動機の状態に応じて、前記駆動部に要求された出力を導出する駆動部必要出力導出部(例えば、実施の形態での要求駆動力算出部201及び駆動部必要出力算出部203)と、前記発電部の特性に基づいて、前記駆動部に要求された出力に対応する出力を前記発電部が出力できるか否かを判断する発電部出力可能判断部(例えば、実施の形態での発電部出力可能判断部205)と、前記発電部が前記駆動部に要求された出力に対応する出力を出力できないと判断されたとき、前記蓄電器に関する情報に基づいて、前記駆動部に要求された出力と前記発電部の出力の差分である蓄電部必要出力を前記蓄電部が出力できるか否かを判断する蓄電部出力可能判断部(例えば、実施の形態での蓄電部必要出力算出部207及び蓄電部出力可能判断部209)と、前記蓄電部が前記蓄電部必要出力を出力できないと判断されたとき、前記駆動部に要求された出力と前記蓄電部が可能な出力の差分である補正発電部出力、及び前記蓄電部必要出力と前記蓄電器が可能な出力の差分である蓄電部出力制限量に応じた、前記内燃機関の燃焼制御に係るパラメータを導出する燃焼制御値導出部(例えば、実施の形態での補正発電部出力算出部211及び燃焼制御値導出部213)と、前記補正発電部出力及び前記蓄電部出力制限量に応じた、前記内燃機関の目標運転点を導出する内燃機関運転点導出部(例えば、実施の形態での内燃機関運転点導出部215)と、を備えたことを特徴としている。
【0011】
さらに、請求項2に記載の発明のハイブリッド車両の制御装置では、前記燃焼制御値導出部は、前記補正発電部出力に応じた前記内燃機関の燃焼制御に係る基本パラメータに、前記蓄電部出力制限量に応じた補正係数を乗算することによって、前記内燃機関の燃焼制御に係るパラメータを導出することを特徴としている。
【0012】
さらに、請求項3に記載の発明のハイブリッド車両の制御装置では、前記内燃機関の燃焼制御は、EGR制御、アトキンソン制御、若しくは空燃比調整制御、又はこれら制御の組み合わせであることを特徴としている。
【0013】
さらに、請求項4に記載の発明のハイブリッド車両の制御装置では、前記内燃機関の燃焼制御がEGR制御であるとき、前記内燃機関の燃焼制御に係るパラメータは、EGRの導入量を示し、前記補正係数は、前記蓄電部出力制限量が多いほど小さいことを特徴としている。
【0014】
さらに、請求項5に記載の発明のハイブリッド車両の制御装置では、前記内燃機関の燃焼制御がアトキンソン制御であるとき、前記内燃機関の燃焼制御に係るパラメータは、前記内燃機関における吸気バルブの遅閉の程度を示し、前記補正係数は、前記蓄電部出力制限量が多いほど小さいことを特徴としている。
【0015】
さらに、請求項6に記載の発明のハイブリッド車両の制御装置では、前記内燃機関の燃焼制御が空燃比調整制御であるとき、前記内燃機関の燃焼制御に係るパラメータは、前記蓄電部出力制限量が所定値未満であれば前記内燃機関のリーン運転の許可を示し、前記蓄電部出力制限量が前記所定値以上であれば前記内燃機関のリーン運転の禁止を示すことを特徴としている。
【0016】
さらに、請求項7に記載の発明のハイブリッド車両の制御装置では、前記内燃機関運転点導出部は、前記蓄電部出力制限量が多いほど高い回転数の目標運転点を導出することを特徴としている。
【0017】
さらに、請求項8に記載の発明のハイブリッド車両の制御方法では、内燃機関及び当該内燃機関の運転によって発電する発電機を有する発電部と、ハイブリッド車両の駆動源である電動機に電力を供給する蓄電器を有する蓄電部と、前記蓄電部及び前記発電機の少なくとも一方からの電力供給によって駆動する前記電動機を有する駆動部と、を備えた前記ハイブリッド車両の制御方法であって、前記ハイブリッド車両におけるアクセル操作に応じたアクセルペダル開度及び前記電動機の状態に応じて、前記駆動部に要求された出力を導出し、前記発電部の特性に基づいて、前記駆動部に要求された出力に対応する出力を前記発電部が出力できるか否かを判断し、前記発電部が前記駆動部に要求された出力に対応する出力を出力できないと判断したとき、前記蓄電器に関する情報に基づいて、前記駆動部に要求された出力と前記発電部の出力の差分である蓄電部必要出力を前記蓄電部が出力できるか否かを判断し、前記蓄電部が前記蓄電部必要出力を出力できないと判断したとき、前記駆動部に要求された出力と前記蓄電部が可能な出力の差分である補正発電部出力、及び前記蓄電部必要出力と前記蓄電器が可能な出力の差分である蓄電部出力制限量に応じた、前記内燃機関の燃焼制御に係るパラメータを導出し、前記補正発電部出力及び前記蓄電部出力制限量に応じた、前記内燃機関の目標運転点を導出することを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
請求項1〜7に記載の発明のハイブリッド車両の制御装置及び請求項8に記載のハイブリッド車両の制御方法によれば、蓄電器が要求された出力を出せないために発電出力の増加が求められる場合であっても、要求出力に対する内燃機関の追従性を担保できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】シリーズ方式のHEVの内部構成を示すブロック図
【図2】EGR制御等が行われる内燃機関109の内部構成の概念図
【図3】マネジメントECU119の内部構成を示すブロック図
【図4】蓄電部121、発電部123及び駆動部125の入出力関係及び効率を示す図
【図5】第1実施例のマネジメントECU119による内燃機関109の制御方法を示すフローチャート
【図6】第1実施例のマネジメントECU119による内燃機関109の制御方法を示すフローチャート
【図7】出力−目標NEグラフを示す図
【図8】内燃機関109の熱効率に関する特性を示すグラフを示す図
【図9】燃焼制御値導出部213による目標EGR値の導出工程を示す概念図
【図10】補正発電部出力−目標NEグラフを示す図
【図11】内燃機関109の熱効率に関する特性を示すグラフを示す図
【図12】燃焼制御値導出部213による目標INV値の導出工程を示す概念図
【図13】特許文献1に示されるシリーズハイブリッド車輌の概略構成を示すブロック図
【図14】放電電力が制限されているときの(a)駆動モータ3の出力、(b)エンジン1の出力及び(c)バッテリ6の出力の時間経過を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0021】
HEV(Hybrid Electrical Vehicle:ハイブリッド電気自動車)は、電動機及び内燃機関を備え、車両の走行状態に応じて電動機及び/又は内燃機関の駆動力によって走行する。HEVには、大きく分けてシリーズ方式とパラレル方式の2種類がある。シリーズ方式のHEVは、電動機の動力によって走行する。内燃機関は発電のためだけに用いられ、内燃機関の動力によって発電機で発電された電力は蓄電器に充電されるか、電動機に供給される。一方、パラレル方式のHEVは、電動機及び内燃機関のいずれか一方又は双方の動力によって走行する。
【0022】
上記両方式を複合したシリーズ/パラレル方式のHEVも知られている。当該方式では、車両の走行状態に応じてクラッチを切断又は締結する(断接する)ことによって、駆動力の伝達系統をシリーズ方式及びパラレル方式のいずれかの構成に切り替える。特に低速走行時にはクラッチを切断してシリーズ方式の構成とし、特に中高速走行時にはクラッチを締結してパラレル方式の構成とする。
【0023】
以下説明する実施形態では、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置が、シリーズ方式のHEVに搭載されている。シリーズ方式のHEVは、電動機、内燃機関及び発電機を備え、主に蓄電器を電源として駆動する電動機の動力を利用して走行する。内燃機関は発電のためだけに用いられ、内燃機関の動力によって発電機で発電された電力は電動機に供給されるか、蓄電器に充電される。
【0024】
シリーズ方式のHEVは、「EV走行」又は「シリーズ走行」を行う。「EV走行」では、HEVは、蓄電器からの電源供給によって駆動する電動機の駆動力によって走行する。このとき内燃機関は駆動されない。また、「シリーズ走行」では、HEVは、蓄電器及び発電機の双方からの電力の供給や発電機のみからの電力の供給等によって駆動する電動機の駆動力によって走行する。このとき、内燃機関は発電機における発電のために駆動される。なお、当該HEVがシリーズ走行を行う際、内燃機関によって駆動される発電機の発電出力では要求駆動力を満たせないときに、蓄電器も電動機に電力を供給する。すなわち、要求駆動力に対する発電機の出力の不足分を蓄電器の出力が補う。
【0025】
図1は、シリーズ方式のHEVの内部構成を示すブロック図である。図1に示すように、シリーズ方式のHEVは、蓄電器(BATT)101と、コンバータ(CONV)103と、第1インバータ(第1INV)105と、電動機(Mot)107と、内燃機関(ENG)109と、発電機(GEN)111と、第2インバータ(第2INV)113と、ギアボックス(以下、単に「ギア」という。)115と、マネジメントECU(MG ECU)119とを備える。
【0026】
蓄電器101は、直列に接続された複数の蓄電セルを有し、例えば100〜200Vの高電圧を供給する。蓄電セルは、例えば、リチウムイオン電池やニッケル水素電池である。コンバータ103は、蓄電器101の直流出力電圧を直流のまま昇圧又は降圧する。第1インバータ105は、直流電圧を交流電圧に変換して3相電流を電動機107に供給する。また、第1インバータ105は、電動機107の回生動作時に入力される交流電圧を直流電圧に変換して蓄電器101に充電する。
【0027】
電動機107は、HEVが走行するための動力を発生する。電動機107で発生したトルクは、ギア115を介して駆動軸151に伝達される。なお、電動機107の回転子はギア115に直結されている。また、電動機107は、回生ブレーキ時には発電機として動作し、電動機107で発電された電力は蓄電器101に充電される。内燃機関109は、HEVがシリーズ走行する際に発電機111を駆動するために用いられる。内燃機関109は、発電機111の回転子に直結されている。なお、内燃機関109は、EGR(Exhaust Gas Recirculation:排気再循環)制御、負荷に応じて吸気バルブの閉タイミングを遅らせるアトキンソン制御、又は空燃比調整制御等の技術を利用する。なお、内燃機関109に対するこれらの制御はマネジメントECU119が行う。
【0028】
図2は、EGR制御等が行われる内燃機関109の内部構成の概念図である。図2に示すように、内燃機関109には、内燃機関109における排気系と吸気系とを連通するEGR通路161bと、EGR量を調整するEGR弁161aとが設けられている。内燃機関109では、EGR通路161bに設けられたEGRバルブ161aの開度を調整することにより、再循環させる排気ガスの量が制御される。また、アトキンソン制御が行われる内燃機関109では、負荷に応じて吸気バルブ163の閉タイミングを通常よりも遅らせる制御が行われる。吸気バルブ163を閉じるタイミングを通常より遅くすることによって吸入空気量が少なくなり、スロットルバルブ165で吸気管167を絞る必要がないため、ポンピングロスを低減でき、燃費を向上できる。さらに、空燃比調整制御が行われる内燃機関109では、燃料噴射弁169が噴射する燃料の量を調整することにより、理論空燃比よりも混合気を薄くするリーン運転、理論空燃比と同等のストイキ運転、又は理論空燃比よりも混合気を薄くするリッチ運転のいずれかが行われる。
【0029】
発電機111は、内燃機関109の動力によって駆動され、電力を発生する。発電機111が発電した電力は、蓄電器101に充電されるか、電動機107に供給される。第2インバータ113は、発電機111が発生した交流電圧を直流電圧に変換する。第2インバータ113によって変換された電力は、蓄電器101に充電されるか、第1インバータ105を介して電動機107に供給される。
【0030】
ギア115は、例えば5速相当の1段の固定ギアである。したがって、ギア115は、電動機107からの駆動力を、特定の変速比での回転数及びトルクに変換して、駆動軸151に伝達する。
【0031】
マネジメントECU119は、内燃機関109及び電動機107の各制御等を行う。また、マネジメントECU119は、第1インバータ105及び第2インバータ113をそれぞれ構成するスイッチング素子をスイッチング制御する。さらに、マネジメントECU119は、図1に点線で示すように、蓄電器101の温度を示す情報、電動機107の回転数及びトルクを示す各情報、発電機111の回転数及びトルクを示す各情報、並びに、HEVの運転者のアクセル操作に応じたアクセルペダル開度(AP開度)を示す情報を取得する。これらの情報は、各パラメータを検出するセンサ(図示せず)からマネジメントECU119に送られる。
【0032】
図3は、マネジメントECU119の内部構成を示すブロック図である。図3に示すように、マネジメントECU119は、要求駆動力算出部201と、駆動部必要出力算出部203と、発電部出力可能判断部205と、蓄電部必要出力算出部207と、蓄電部出力可能判断部209と、補正発電部出力算出部211と、燃焼制御値導出部213と、内燃機関運転点導出部215とを有する。なお、図3中の実線の矢印は値データを示し、点線は指示内容を含む制御データを示す。
【0033】
以下、シリーズ走行中のHEVにおけるマネジメントECU119の各構成要素の動作、及び、マネジメントECU119による内燃機関109の制御方法について説明する。なお、以下の説明では、図4に示すように、コンバータ103及び蓄電器101をまとめて「蓄電部121」と呼ぶ。また、内燃機関109、発電機111及び第2インバータ113をまとめて「発電部123」と呼ぶ。さらに、第1インバータ105及び電動機107をまとめて「駆動部125」と呼ぶ。なお、各部間のエネルギー伝達損失は無いものとする。
【0034】
(第1実施例)
図5及び図6は、第1実施例のマネジメントECU119による内燃機関109の制御方法を示すフローチャートである。図5及び図6に示すように、要求駆動力算出部201は、AP開度、並びに、電動機107の回転数(モータ回転数NE)及びトルク(モータトルクTr)に基づいて、電動機107に要求された出力(以下「要求駆動力」という)Prを算出する(ステップS101)。駆動部必要出力算出部203は、要求駆動力Pr及び駆動部効率mに基づいて、以下に示す式(1)より、駆動部125に要求された出力(以下「駆動部必要出力」という)Mrを算出する(ステップS103)。
Mr=Pr/m …(1)
【0035】
発電部出力可能判断部205は、内燃機関109及び発電機111の各特性に基づいて、発電部123が駆動部必要出力Mrを出力できるか否かを判断し(ステップS105)、発電部123が駆動部必要出力Mrを出力できるときはステップS107に進み、出力できないときはステップS109に進む。ステップS107では、内燃機関運転点導出部215は、図7に示す出力−目標NEグラフ及び図8に示す内燃機関109の熱効率に関する特性を示すグラフに基づくマップを用いて、駆動部必要出力Mrに応じた内燃機関109の目標運転点を導出する。
【0036】
一方、ステップS109では、蓄電部必要出力算出部207は、駆動部必要出力Mr及び発電部123の実際の出力(以下「実発電部出力」という)Gcに基づいて、以下に示す式(2)より、蓄電部121に求められる出力(以下「蓄電部必要出力」という)Brを算出する。
Br=Mr−Gc …(2)
【0037】
ステップS109の後、蓄電部出力可能判断部209は、蓄電器101の温度、内部抵抗、端子間電圧、入出力電流及び残容量(SOC:State of Charge)等の情報を検出する(ステップS111)。次に、蓄電部出力可能判断部209は、ステップS109で取得したこれらの情報の内、少なくともいずれか1つの情報に基づいて、蓄電部121が蓄電部必要出力Brを出力できる状態であるか否かを判断する(ステップS113)。なお、マネジメントECU119は、蓄電部121に過電流が流れないよう、蓄電部121の出力を所定値以下に制限する。また、蓄電器101のSOCが所定レベル未満のとき、又は、蓄電器101の温度が所定値未満のとき、マネジメントECU119は、蓄電器101が過放電しないよう蓄電部121の出力を制御する。このように、蓄電部121の出力は、蓄電器101の状態等に応じて制限される。
【0038】
ステップS113で蓄電部121が蓄電部必要出力Brを出力できると判断されたときはステップS115に進み、蓄電部必要出力Brを出力できないと判断されたときはステップS117に進む。ステップS115では、内燃機関運転点導出部215は、図7に示す出力−目標NEグラフ及び図8に示す内燃機関109の熱効率に関する特性を示すグラフに基づくマップを用いて、実発電部出力Gcに応じた内燃機関109の目標運転点を導出する。
【0039】
一方、ステップS117では、補正発電部出力算出部211は、駆動部必要出力Mrと蓄電部121が可能な出力(以下「蓄電部可能出力」という)Bpの差分(駆動部必要出力Mr−蓄電部可能出力Bp)を補正発電部出力Gaとして算出する。次に、燃焼制御値導出部213は、蓄電部必要出力Brと蓄電部可能出力Bpの差分(蓄電部必要出力Br−蓄電部可能出力Bp)を蓄電部出力制限量Blとして算出する(ステップS119)。
【0040】
次に、燃焼制御値導出部213は、発電機111の回転数NEg、補正発電部出力Ga及び蓄電部出力制限量Blに応じて、内燃機関109の目標燃焼制御値として、EGRの導入量である目標EGR値を導出する(ステップS121)。なお、目標EGR値の導出は、所定の条件が成立したときに限って行われる。所定の条件とは、空燃比フィードバック制御(Air-Fuel Ratio feedback control)が動作中であること、エンジン水温が所定値以上であること、燃料カット中でないこと、及びエンジン始動モード中でないことである。
【0041】
図9は、燃焼制御値導出部213による目標EGR値の導出工程を示す概念図である。図9に示すように、燃焼制御値導出部213は、基本EGRマップを用いて、補正発電部出力Gaに応じた目標EGR基本値EGRsを導出する。なお、当該工程時、発電機111の回転数NEgに応じて異なる基本EGRマップが用いられる。また、燃焼制御値導出部213は、補正係数マップを用いて、蓄電部出力制限量Blに応じた補正係数を導出する。なお、図9に示すように、補正係数は、蓄電部出力制限量Blが多いほど小さい。燃焼制御値導出部213は、目標EGR基本値EGRsに補正係数を乗算することによって目標EGR値を導出する。
【0042】
次に、内燃機関運転点導出部215は、図10に示す補正発電部出力−目標NEグラフ及び図11に示す内燃機関109の熱効率に関する特性を示すグラフに基づくマップを用いて、補正発電部出力Ga及び蓄電部出力制限量Blに応じた内燃機関109の目標運転点を導出する(ステップS123)。なお、図10に示すように、補正発電部出力Gaに対する内燃機関109の目標回転数は、蓄電部出力制限量Blに応じて異なる。また、図11に示すように、同じ目標回転数であっても、内燃機関109の目標運転点は蓄電部出力制限量Blに応じて異なる。
【0043】
マネジメントECU119は、このようにして導出した目標運転点で内燃機関109を運転し、かつ、目標EGR値を導出した場合は当該目標EGR値に応じたEGRを行うよう内燃機関109を制御する。
【0044】
以上説明したように、本実施例によれば、HEVがシリーズ走行時、蓄電器101が要求された出力を出せないために発電部123の出力増加が求められる場合は、蓄電部出力制限量Blに応じた量のEGRを行い、かつ、EGR量に応じた運転点で内燃機関109が駆動される。EGRを行うと内燃機関109の出力応答性が上がるため、発電部123への要求出力に対する発電部123の追従性を担保できる。したがって、蓄電器101の出力制限又は出力低下により生じ得るドライバビリティの低下を防止できる。
【0045】
(第2実施例)
第2実施例では、図6に示したフローチャートのステップS121において、燃焼制御値導出部213が、内燃機関109の目標燃焼制御値として目標INV(In-Valve close timing)値を導出する。なお、INV値は、内燃機関109における吸気バルブの遅閉の程度を示す。マネジメントECU119は、目標INV値に応じたアトキンソン制御を内燃機関109に対して行う。この点以外は第1実施例と同様である。
【0046】
なお、目標INV値の導出は、所定の条件が成立したときに限って行われる。所定の条件とは、空燃比フィードバック制御が動作中であること、エンジン水温が所定値以上であること、及びエンジン始動モード中でないことである。
【0047】
図12は、燃焼制御値導出部213による目標INV値の導出工程を示す概念図である。図12に示すように、燃焼制御値導出部213は、基本INVマップを用いて、補正発電部出力Gaに応じた目標INV基本値INVsを導出する。なお、当該工程時、発電機111の回転数NEgに応じて異なる基本INVマップが用いられる。また、燃焼制御値導出部213は、補正係数マップを用いて、蓄電部出力制限量Blに応じた補正係数を導出する。なお、図12に示すように、補正係数は、蓄電部出力制限量Blが多いほど小さい。燃焼制御値導出部213は、目標INV基本値INVsに補正係数を乗算することによって目標INV値を導出する。
【0048】
以上説明したように、本実施例によれば、HEVがシリーズ走行時、蓄電器101が要求された出力を出せないために発電部123の出力増加が求められる場合は、蓄電部出力制限量Blに応じた内燃機関109の吸気バルブを遅閉するタイミング制御を行い、かつ、当該遅閉じ量に応じた運転点で内燃機関109が駆動される。内燃機関109の吸気バルブの遅閉じ量を減らすことによって内燃機関109の出力応答性が上がるため、発電部123への要求出力に対する発電部123の追従性を担保できる。したがって、蓄電器101の出力制限又は出力低下により生じ得るドライバビリティの低下を防止できる。
【0049】
(第3実施例)
第3実施例では、図6に示したフローチャートのステップS121において、燃焼制御値導出部213が、内燃機関109の目標燃焼制御値としてリーン運転判断値を導出する。なお、リーン運転判断値は、内燃機関109において理論空燃比よりも混合気を薄くするリーン運転を許可するか禁止するかを示す。燃焼制御値導出部213は、蓄電部出力制限量Blが所定値未満であればリーン運転を許可し、所定値以上であればリーン運転を禁止するリーン運転判断値を導出する。マネジメントECU119は、リーン運転判断値がリーン運転の許可を示す場合は、リーン運転するよう内燃機関109を制御し、リーン運転判断値がリーン運転の禁止を示す場合は、ストイキ運転又はリッチ運転するよう内燃機関109を制御する。この点以外は第1実施例と同様である。
【0050】
なお、リーン運転判断値の導出は、所定の条件が成立したときに限って行われる。所定の条件とは、空燃比フィードバック制御が動作中であること、エンジン水温が所定値以上であること、エンジン始動モード中でない、及びリーン運転可能な負荷範囲が成立していることである。
【0051】
以上説明したように、本実施例によれば、HEVがシリーズ走行時、蓄電器101が要求された出力を出せないために発電部123の出力増加が求められる場合は、蓄電部出力制限量Blに応じて内燃機関109のリーン運転を許可又は禁止する制御を行う。リーン運転のときと比較して、ストイキ運転又はリッチ運転することによって内燃機関109の出力応答性が上がるため、発電部123への要求出力に対する発電部123の追従性を担保できる。したがって、蓄電器101の出力制限又は出力低下により生じ得るドライバビリティの低下を防止できる。
【0052】
なお、上記実施形態では、第1実施例でEGR制御、第2実施例でアトキンソン制御、第3実施例で空燃比調整制御の各パラメータを制御しているが、これらの実施例を組み合わせたパラメータを制御しても良い。
【0053】
また、上記実施形態では、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置がシリーズ方式のHEVに含まれた例について説明したが、パラレル方式のHEV又はシリーズ/パラレル方式のHEVに含まれていても良い。
【符号の説明】
【0054】
101 蓄電器(BATT)
103 コンバータ(CONV)
105 第1インバータ(第1INV)
107 電動機(Mot)
109 内燃機関(ENG)
111 発電機(GEN)
113 第2インバータ(第2INV)
115 ギアボックス
119 マネジメントECU(MG ECU)
121 蓄電部
123 発電部
125 駆動部
201 要求駆動力算出部
203 駆動部必要出力算出部
205 発電部出力可能判断部
207 蓄電部必要出力算出部
209 蓄電部出力可能判断部
211 補正発電部出力算出部
213 燃焼制御値導出部
215 内燃機関運転点導出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関及び当該内燃機関の運転によって発電する発電機を有する発電部と、
ハイブリッド車両の駆動源である電動機に電力を供給する蓄電器を有する蓄電部と、
前記蓄電部及び前記発電機の少なくとも一方からの電力供給によって駆動する前記電動機を有する駆動部と、を備えた前記ハイブリッド車両の制御装置であって、
前記ハイブリッド車両におけるアクセル操作に応じたアクセルペダル開度及び前記電動機の状態に応じて、前記駆動部に要求された出力を導出する駆動部必要出力導出部と、
前記発電部の特性に基づいて、前記駆動部に要求された出力に対応する出力を前記発電部が出力できるか否かを判断する発電部出力可能判断部と、
前記発電部が前記駆動部に要求された出力に対応する出力を出力できないと判断されたとき、前記蓄電器に関する情報に基づいて、前記駆動部に要求された出力と前記発電部の出力の差分である蓄電部必要出力を前記蓄電部が出力できるか否かを判断する蓄電部出力可能判断部と、
前記蓄電部が前記蓄電部必要出力を出力できないと判断されたとき、前記駆動部に要求された出力と前記蓄電部が可能な出力の差分である補正発電部出力、及び前記蓄電部必要出力と前記蓄電器が可能な出力の差分である蓄電部出力制限量に応じた、前記内燃機関の燃焼制御に係るパラメータを導出する燃焼制御値導出部と、
前記補正発電部出力及び前記蓄電部出力制限量に応じた、前記内燃機関の目標運転点を導出する内燃機関運転点導出部と、
を備えたことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置であって、
前記燃焼制御値導出部は、
前記補正発電部出力に応じた前記内燃機関の燃焼制御に係る基本パラメータに、前記蓄電部出力制限量に応じた補正係数を乗算することによって、前記内燃機関の燃焼制御に係るパラメータを導出することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のハイブリッド車両の制御装置であって、
前記内燃機関の燃焼制御は、EGR制御、アトキンソン制御、若しくは空燃比調整制御、又はこれら制御の組み合わせであることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載のハイブリッド車両の制御装置であって、
前記内燃機関の燃焼制御がEGR制御であるとき、
前記内燃機関の燃焼制御に係るパラメータは、EGRの導入量を示し、
前記補正係数は、前記蓄電部出力制限量が多いほど小さいことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】
請求項3に記載のハイブリッド車両の制御装置であって、
前記内燃機関の燃焼制御がアトキンソン制御であるとき、
前記内燃機関の燃焼制御に係るパラメータは、前記内燃機関における吸気バルブの遅閉の程度を示し、
前記補正係数は、前記蓄電部出力制限量が多いほど小さいことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項6】
請求項3に記載のハイブリッド車両の制御装置であって、
前記内燃機関の燃焼制御が空燃比調整制御であるとき、
前記内燃機関の燃焼制御に係るパラメータは、前記蓄電部出力制限量が所定値未満であれば前記内燃機関のリーン運転の許可を示し、前記蓄電部出力制限量が前記所定値以上であれば前記内燃機関のリーン運転の禁止を示すことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のハイブリッド車両の制御装置であって、
前記内燃機関運転点導出部は、前記蓄電部出力制限量が多いほど高い回転数の目標運転点を導出することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項8】
内燃機関及び当該内燃機関の運転によって発電する発電機を有する発電部と、
ハイブリッド車両の駆動源である電動機に電力を供給する蓄電器を有する蓄電部と、
前記蓄電部及び前記発電機の少なくとも一方からの電力供給によって駆動する前記電動機を有する駆動部と、を備えた前記ハイブリッド車両の制御方法であって、
前記ハイブリッド車両におけるアクセル操作に応じたアクセルペダル開度及び前記電動機の状態に応じて、前記駆動部に要求された出力を導出し、
前記発電部の特性に基づいて、前記駆動部に要求された出力に対応する出力を前記発電部が出力できるか否かを判断し、
前記発電部が前記駆動部に要求された出力に対応する出力を出力できないと判断したとき、前記蓄電器に関する情報に基づいて、前記駆動部に要求された出力と前記発電部の出力の差分である蓄電部必要出力を前記蓄電部が出力できるか否かを判断し、
前記蓄電部が前記蓄電部必要出力を出力できないと判断したとき、前記駆動部に要求された出力と前記蓄電部が可能な出力の差分である補正発電部出力、及び前記蓄電部必要出力と前記蓄電器が可能な出力の差分である蓄電部出力制限量に応じた、前記内燃機関の燃焼制御に係るパラメータを導出し、
前記補正発電部出力及び前記蓄電部出力制限量に応じた、前記内燃機関の目標運転点を導出することを特徴とするハイブリッド車両の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−86645(P2012−86645A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233989(P2010−233989)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】