ハイブリッド車両
【課題】低回転高トルクで、かつ高回転低トルクといった駆動特性を確実に実現できるとともに、パワーラインの構成を簡略化して車両スペースを十分に確保したり、車両重量を軽減したり、操舵角やホイールストローク(ホイールトラベル)を任意に設定したりできるハイブリッド車両を提供すること。
【解決手段】ハイブリッド車両1は、車両本体4と、車両本体4に搭載されたエンジン5と、エンジン5により駆動される発電機6と、エンジン5により駆動される油圧ポンプ7と、発電機6からの電気エネルギで駆動される電動モータと、油圧ポンプ7から圧油で駆動される油圧モータと、電動モータからの出力および油圧モータからの出力を合成する遊星歯車機構23と、遊星歯車機構23で直接的に駆動される走行用のホイールとを備えている。
【解決手段】ハイブリッド車両1は、車両本体4と、車両本体4に搭載されたエンジン5と、エンジン5により駆動される発電機6と、エンジン5により駆動される油圧ポンプ7と、発電機6からの電気エネルギで駆動される電動モータと、油圧ポンプ7から圧油で駆動される油圧モータと、電動モータからの出力および油圧モータからの出力を合成する遊星歯車機構23と、遊星歯車機構23で直接的に駆動される走行用のホイールとを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド車両と言われる中には、エンジン出力と電動モータ出力とを併用した機械・電気ハイブリッド型(特許文献1)、エンジン出力と油圧モータ出力とを併用した機械・油圧ハイブリッド型が知られている。
【0003】
前者の機械・電気ハイブリッド型はさらに、エンジン出力と電動モータ出力とを動力合成手段にて合成し、この動力合成手段からの出力で被駆動部を駆動するパラレル式と、エンジン出力でジェネレータを駆動し、ジェネレータからの電気エネルギで電動モータを駆動し、この電動モータの出力のみで被駆動部を駆動するシリーズ式とに大別される。
【0004】
また、後者の機械・油圧ハイブリッド型は、所謂HMT(Hydro Mechanical Transmission)を搭載した車両であり、エンジン出力と油圧モータ出力とを動力合成手段にて合成し、この動力合成手段からの出力で被駆動部を駆動するのである。なお、エンジンにより油圧ポンプを駆動し、油圧ポンプからの圧油で油圧モータを駆動し、この油圧ポンプの出力のみで被駆動部を駆動する車両も、HST(Hydrostatic Transmission)を搭載した車両としてよく知られている。
【0005】
【特許文献1】特開2000−226183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、機械・電気ハイブリッド型のパラレル式では、パワーラインとして機械的な駆動ラインが必要であるため、パワーラインの構成の自由度が低く、車両スペースにおけるパワーラインの専有面積が大きくなって場積をとり、また、駆動軸が操舵角やホイールストロークを制限するという問題がある。また、シリーズ式では、極めて高出力の電動モータが必要になるため、電動モータが大きくなってやはり場積をとるし、高価である。しかも、高回転高トルクを実現するのが困難であり、高速での連続登坂走行等を容易に行うためには、高出力の電動モータに加え、変速機や大型バッテリが必要になるなど、場積の問題がさらに顕著になるうえ、構造が複雑になって車両重量も大きくなる。
【0007】
一方、機械・油圧ハイブリッド型でも、機械的な駆動ラインが必要であることから、機械・電気ハイブリッド型のパラレル式と同様に、車両スペースが狭められるという問題がある。また、HSTを搭載した油圧駆動の車両では、高速走行が困難である。従って、大容量の油圧ポンプや油圧モータに加えて変速機等が必要となり、やはり場積の問題が顕著になるうえ、車両重量が大きくなる。
【0008】
本発明の目的は、低回転高トルクで、かつ高回転低トルクといった駆動特性を確実に実現できるとともに、パワーラインの構成を簡略化して車両スペースを十分に確保したり、車両重量を軽減したりできるハイブリッド車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に係るハイブリッド車両は、車両本体と、車両本体に搭載されたエンジンと、前記エンジンにより駆動される発電機と、前記エンジンにより駆動される油圧ポンプと、前記発電機からの電気エネルギで駆動される電動モータと、前記油圧ポンプから圧油で駆動される油圧モータと、前記電動モータからの出力および前記油圧モータからの出力を合成する動力合成手段と、前記動力合成手段で駆動される走行用の被駆動部とを備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項2に係るハイブリッド車両は、請求項1に記載のハイブリッド車両において、前記動力合成手段は遊星歯車機構であることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項3に係るハイブリッド車両は、請求項1または請求項2に記載のハイブリッド車両において、前記被駆動部は前記動力合成手段にて直接的に駆動されるホイールであることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項4に係るハイブリッド車両は、請求項1または請求項2に記載のハイブリッド車両において、前記被駆動部は前記動力合成手段にて直接的に駆動されるディファレンシャル(差動装置)であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上において、請求項1の発明によれば、電動モータによる電気駆動と油圧モータによる油圧駆動とのハイブリッドとなる。従って、油圧モータが有する駆動特性と、電動モータが有する駆動特性との両方を兼ね備えたハイブリッド車両を提供できる。また、このようなハブリッド車両では、機械的な駆動ラインを不要にできるので、パワーラインの構成を簡略化して車両スペースを十分に確保したり、車両重量を軽減したり、操舵角やホイールストロークを任意に設定したりできる。
【0014】
請求項2の発明によれば、動力合成手段として遊星歯車機構を採用するため、動力損失を少なくして確実に合成できる。
請求項3の発明によれば、動力合成手段にてホイールを直接的に駆動するから、電動モータおよび油圧ポンプを、車両本体から独立させてホイールの近傍(例えばホイールの内側)に配置にでき、車両本体での車両スペースをより大きく確保できる。
請求項4の発明によれば、ディファレンシャルを駆動する電動モータおよび油圧モータとしては、それぞれ1機ずつ搭載すればよく、より低コストで、かつメンテナンス性も良好にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係るハイブリッド車両1を模式的に示すブロックである。図2は、ハイブリッド車両1の要部を模式的に示す断面図である。
【0016】
図1において、ハイブリッド車両1は、前輪2および後輪3が設けられた車両本体4を備えており、車両本体4にはエンジン5が搭載されている。エンジン5は、ガソリンエンジンでもよくディーゼルエンジンでもよい。エンジン5の出力軸には発電機6および油圧ポンプ7が直列に連結されている。なお、発電機6および油圧ポンプ7とを並列に駆動してもよく、駆動方式はエンジン5のPTO(Power Take-Off)の利用等をも勘案して種々可能である。
【0017】
発電機6にはインバータ8を介してバッテリ9が接続されている。インバータ8は、発電機で発電された電気エネルギをバッテリ9に充電させたり、充電量が十分である場合には、このバッテリ9の電気エネルギを図2に示す電動モータ10に供給したり、あるいは発電機6で発電された電気エネルギをそのまま電動モータ10に供給する。供給の切換や、電動モータ10への電気エネルギの供給量は、走行負荷等に応じてコントローラ11からの制御信号Mによって制御される。
【0018】
油圧ポンプ7は、例えば斜板式の可変容量型であり、斜板角度を変えることで圧油の吐出量を可変にできる。圧油の吐出量はやはり、走行負荷等に応じてコントローラ11からの制御信号Pによって制御される。油圧ポンプ7の圧油は、図2に示す油圧モータ12を駆動するのに用いられる。
【0019】
図1、図2において、各後輪3を構成するホイール13の内側には、車両本体4から独立したアクスルハウジング14が配置されている。アクスルハウジング14は、車両本体4に取り付けられたサスペンションシリンダ15およびロワアーム16により上下に揺動自在に支持されている。また、このアクスルハウジング14の開口側を覆うように電動モータ10のコイル17が固定され、コイル17の内側には、磁石を有するロータ18が回転自在に配置されている。
【0020】
また、アクスルハウジング14内には油圧モータ12が配置されている。油圧モータ12の出力軸にはサンギヤ19が取り付けられている。サンギヤ19の周囲には複数のプラネタリギヤ20が配置されている。プラネタリギヤ20の外側には、各プラネタリギヤ20をサンギヤ19との間で挟むように内歯式のリングギヤ21が配置されている。リングギヤ21の外周は、電動モータ10のロータ18に一体に固定されている。
【0021】
すなわち、サンギヤ19には油圧モータ12の駆動力が入力され、リングギヤ21には電動モータ10の駆動力が入力され、その合成された駆動力がプラネタリギヤ20のキャリア22に出力される。従って、このようなサンギヤ19、プラネタリギヤ20、およびリングギヤ21で構成される遊星歯車機構23は、本発明に係る動力合成手段として機能する。キャリア22には走行用の被駆動部であるホイール13が固定されており、合成された駆動力によりホイール13を直接的に駆動することが可能である。
【0022】
そして、本実施形態において、比較的大きな始動トルクが必要な場合には、リングギヤ21の回転を図示しないロック機構等でロックしておくとともに、油圧モータ12の駆動力でプラネタリギヤ20を回転させて後輪3を駆動し、回転反力をロック機構に保持させることも可能である。ロック機構へのロック、アンロックの制御信号Rはコントローラ11から出力される。なお、本実施形態のコントローラ11は、種々の制御信号Eによるエンジン5の運転制御も行っている。
【0023】
また、制動時には、電動モータ10を発電機として機能させたり、油圧モータ12を油圧ポンプとして機能させたりすることでエネルギ回生を行い、回生された電気エネルギをバッテリ9に充電し、回生された油圧でエンジンブレーキを効かすことも可能である。
【0024】
なお、図示および詳細な説明を省略するが、油圧モータ12とサンギヤ19との連結をクラッチを介して行うことで、このクラッチを運転状態に応じて連結、解除してもよいし、サンギヤ19の回転を強制的にロックする別のロック機構を設けて、やはり運転状態に応じてロック、アンロックさせてもよい。
【0025】
以上のような本発明によれば、電気駆動と油圧駆動とのハイブリッドであるから、発電機6と電動モータ10とを接続するのは電気配線25だけであり、油圧ポンプ7と油圧モータ12とを接続するのは油圧配管26だけである。従って、パワーラインとして従来のような機械的な駆動ラインを不要にでき、車両本体4内での車両スペースを大きく確保できる。しかも、機械的な駆動ラインが不要なことで、インバータ8やバッテリ9の配置の自由度を高くでき、広い荷室、低車高、低重心を実現できるとともに、操舵角やホイールストロークの制限を解除することができる。
【0026】
また、油圧駆動と電気駆動とを合成することにより、それぞれの駆動方式が有する駆動特性を確実に活用できるとともに、油圧モータ12や電動モータ10の後段側の変速機を省略でき、シリーズ式の機械・電気ハイブリッドの配置自由度を維持したまま、コンパクトな電動モータ10を採用できる。さらに、変速機を省略できること、およびコンパクトな電動モータ10の採用により、バッテリ9も小型化でき、車両重量を大幅に低減できる。
【0027】
〔第2実施形態〕
図3には、本発明の第2実施形態が示されている。本実施形態では、遊星歯車機構23において、リングギヤ21として内歯および外歯を備えたものが採用されている。また、リングギギヤ21は、外歯と噛み合う駆動ギヤ27によって駆動される。駆動ギヤ27は電動モータ10の出力軸に取り付けられている。この電動モータ10としては、アクスルハウジング14の開口を覆うような形状のコイルを有したものではなく、通常形式のDCモータ等を採用できる。他の構成は、第1実施形態と同じであり、このような本実施形態でも、本発明の目的を達成できる。
【0028】
〔第3実施形態〕
図4に示す第3実施形態では、車両本体4内に大きめの電動モータ10および油圧モータ12が一機ずつ搭載されており、これらの駆動力が動力合成手段である遊星歯車機構23で合成される。合成された駆動力は、キャリア出力軸から出力され、この駆動力によってリアアクスル28内に設けられたディファレンシャル29が直接的に駆動される。走行用の被駆動部であるディファレンシャル29を介して後輪3を駆動する構造は、一般的な車両と同じで公知であるため、ここでの詳細な説明は省略する。また、本実施形態の電動モータ10の形式や遊星歯車機構23の構造は、第2実施形態と同様である。
【0029】
このような本実施形態でも、リアアクスル28を備えている分、第1,第2実施形態に比べて車両スペースの場積や車両重量は大きくなるが、油圧駆動と電気駆動とのハイブリッドを採用することで、本発明の目的を十分に達成できる。また、電動モータ10および油圧モータ12が一機ずつ用いられているので、低コストであり、メンテナンスも容易である。
【0030】
なお、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、数量などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、数量などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0031】
例えば、前記各実施形態では、油圧駆動と電気駆動との合成した駆動力によって最終的に後輪3を駆動するホイール式のハブリッド車両1について例示したが、本発明のハイブリッド車両としては、クローラ式や多軸の車両であってもよい。また、駆動する対象としては、最終的に車輪やクローラでなくともよく、任意の種類の作業機等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、建設車両、土木車両、農業車両、運搬車両、走行車両等の作業車両に好適に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施形態に係るハイブリッド車両を模式的に示すブロック図。
【図2】第1実施形態の要部を模式的に示す断面図。
【図3】第2実施形態を模式的に示す断面図。
【図4】第3実施形態を模式的に示すブロック図。
【符号の説明】
【0034】
1…ハイブリッド車両、2…エンジン、4…車両本体、6…発電機、7…油圧ポンプ、10…電動モータ、12…油圧モータ、13…被駆動部であるホイール、23…動力合成手段である遊星歯車機構、29…被駆動部であるディファレンシャル。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド車両と言われる中には、エンジン出力と電動モータ出力とを併用した機械・電気ハイブリッド型(特許文献1)、エンジン出力と油圧モータ出力とを併用した機械・油圧ハイブリッド型が知られている。
【0003】
前者の機械・電気ハイブリッド型はさらに、エンジン出力と電動モータ出力とを動力合成手段にて合成し、この動力合成手段からの出力で被駆動部を駆動するパラレル式と、エンジン出力でジェネレータを駆動し、ジェネレータからの電気エネルギで電動モータを駆動し、この電動モータの出力のみで被駆動部を駆動するシリーズ式とに大別される。
【0004】
また、後者の機械・油圧ハイブリッド型は、所謂HMT(Hydro Mechanical Transmission)を搭載した車両であり、エンジン出力と油圧モータ出力とを動力合成手段にて合成し、この動力合成手段からの出力で被駆動部を駆動するのである。なお、エンジンにより油圧ポンプを駆動し、油圧ポンプからの圧油で油圧モータを駆動し、この油圧ポンプの出力のみで被駆動部を駆動する車両も、HST(Hydrostatic Transmission)を搭載した車両としてよく知られている。
【0005】
【特許文献1】特開2000−226183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、機械・電気ハイブリッド型のパラレル式では、パワーラインとして機械的な駆動ラインが必要であるため、パワーラインの構成の自由度が低く、車両スペースにおけるパワーラインの専有面積が大きくなって場積をとり、また、駆動軸が操舵角やホイールストロークを制限するという問題がある。また、シリーズ式では、極めて高出力の電動モータが必要になるため、電動モータが大きくなってやはり場積をとるし、高価である。しかも、高回転高トルクを実現するのが困難であり、高速での連続登坂走行等を容易に行うためには、高出力の電動モータに加え、変速機や大型バッテリが必要になるなど、場積の問題がさらに顕著になるうえ、構造が複雑になって車両重量も大きくなる。
【0007】
一方、機械・油圧ハイブリッド型でも、機械的な駆動ラインが必要であることから、機械・電気ハイブリッド型のパラレル式と同様に、車両スペースが狭められるという問題がある。また、HSTを搭載した油圧駆動の車両では、高速走行が困難である。従って、大容量の油圧ポンプや油圧モータに加えて変速機等が必要となり、やはり場積の問題が顕著になるうえ、車両重量が大きくなる。
【0008】
本発明の目的は、低回転高トルクで、かつ高回転低トルクといった駆動特性を確実に実現できるとともに、パワーラインの構成を簡略化して車両スペースを十分に確保したり、車両重量を軽減したりできるハイブリッド車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に係るハイブリッド車両は、車両本体と、車両本体に搭載されたエンジンと、前記エンジンにより駆動される発電機と、前記エンジンにより駆動される油圧ポンプと、前記発電機からの電気エネルギで駆動される電動モータと、前記油圧ポンプから圧油で駆動される油圧モータと、前記電動モータからの出力および前記油圧モータからの出力を合成する動力合成手段と、前記動力合成手段で駆動される走行用の被駆動部とを備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項2に係るハイブリッド車両は、請求項1に記載のハイブリッド車両において、前記動力合成手段は遊星歯車機構であることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項3に係るハイブリッド車両は、請求項1または請求項2に記載のハイブリッド車両において、前記被駆動部は前記動力合成手段にて直接的に駆動されるホイールであることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項4に係るハイブリッド車両は、請求項1または請求項2に記載のハイブリッド車両において、前記被駆動部は前記動力合成手段にて直接的に駆動されるディファレンシャル(差動装置)であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上において、請求項1の発明によれば、電動モータによる電気駆動と油圧モータによる油圧駆動とのハイブリッドとなる。従って、油圧モータが有する駆動特性と、電動モータが有する駆動特性との両方を兼ね備えたハイブリッド車両を提供できる。また、このようなハブリッド車両では、機械的な駆動ラインを不要にできるので、パワーラインの構成を簡略化して車両スペースを十分に確保したり、車両重量を軽減したり、操舵角やホイールストロークを任意に設定したりできる。
【0014】
請求項2の発明によれば、動力合成手段として遊星歯車機構を採用するため、動力損失を少なくして確実に合成できる。
請求項3の発明によれば、動力合成手段にてホイールを直接的に駆動するから、電動モータおよび油圧ポンプを、車両本体から独立させてホイールの近傍(例えばホイールの内側)に配置にでき、車両本体での車両スペースをより大きく確保できる。
請求項4の発明によれば、ディファレンシャルを駆動する電動モータおよび油圧モータとしては、それぞれ1機ずつ搭載すればよく、より低コストで、かつメンテナンス性も良好にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係るハイブリッド車両1を模式的に示すブロックである。図2は、ハイブリッド車両1の要部を模式的に示す断面図である。
【0016】
図1において、ハイブリッド車両1は、前輪2および後輪3が設けられた車両本体4を備えており、車両本体4にはエンジン5が搭載されている。エンジン5は、ガソリンエンジンでもよくディーゼルエンジンでもよい。エンジン5の出力軸には発電機6および油圧ポンプ7が直列に連結されている。なお、発電機6および油圧ポンプ7とを並列に駆動してもよく、駆動方式はエンジン5のPTO(Power Take-Off)の利用等をも勘案して種々可能である。
【0017】
発電機6にはインバータ8を介してバッテリ9が接続されている。インバータ8は、発電機で発電された電気エネルギをバッテリ9に充電させたり、充電量が十分である場合には、このバッテリ9の電気エネルギを図2に示す電動モータ10に供給したり、あるいは発電機6で発電された電気エネルギをそのまま電動モータ10に供給する。供給の切換や、電動モータ10への電気エネルギの供給量は、走行負荷等に応じてコントローラ11からの制御信号Mによって制御される。
【0018】
油圧ポンプ7は、例えば斜板式の可変容量型であり、斜板角度を変えることで圧油の吐出量を可変にできる。圧油の吐出量はやはり、走行負荷等に応じてコントローラ11からの制御信号Pによって制御される。油圧ポンプ7の圧油は、図2に示す油圧モータ12を駆動するのに用いられる。
【0019】
図1、図2において、各後輪3を構成するホイール13の内側には、車両本体4から独立したアクスルハウジング14が配置されている。アクスルハウジング14は、車両本体4に取り付けられたサスペンションシリンダ15およびロワアーム16により上下に揺動自在に支持されている。また、このアクスルハウジング14の開口側を覆うように電動モータ10のコイル17が固定され、コイル17の内側には、磁石を有するロータ18が回転自在に配置されている。
【0020】
また、アクスルハウジング14内には油圧モータ12が配置されている。油圧モータ12の出力軸にはサンギヤ19が取り付けられている。サンギヤ19の周囲には複数のプラネタリギヤ20が配置されている。プラネタリギヤ20の外側には、各プラネタリギヤ20をサンギヤ19との間で挟むように内歯式のリングギヤ21が配置されている。リングギヤ21の外周は、電動モータ10のロータ18に一体に固定されている。
【0021】
すなわち、サンギヤ19には油圧モータ12の駆動力が入力され、リングギヤ21には電動モータ10の駆動力が入力され、その合成された駆動力がプラネタリギヤ20のキャリア22に出力される。従って、このようなサンギヤ19、プラネタリギヤ20、およびリングギヤ21で構成される遊星歯車機構23は、本発明に係る動力合成手段として機能する。キャリア22には走行用の被駆動部であるホイール13が固定されており、合成された駆動力によりホイール13を直接的に駆動することが可能である。
【0022】
そして、本実施形態において、比較的大きな始動トルクが必要な場合には、リングギヤ21の回転を図示しないロック機構等でロックしておくとともに、油圧モータ12の駆動力でプラネタリギヤ20を回転させて後輪3を駆動し、回転反力をロック機構に保持させることも可能である。ロック機構へのロック、アンロックの制御信号Rはコントローラ11から出力される。なお、本実施形態のコントローラ11は、種々の制御信号Eによるエンジン5の運転制御も行っている。
【0023】
また、制動時には、電動モータ10を発電機として機能させたり、油圧モータ12を油圧ポンプとして機能させたりすることでエネルギ回生を行い、回生された電気エネルギをバッテリ9に充電し、回生された油圧でエンジンブレーキを効かすことも可能である。
【0024】
なお、図示および詳細な説明を省略するが、油圧モータ12とサンギヤ19との連結をクラッチを介して行うことで、このクラッチを運転状態に応じて連結、解除してもよいし、サンギヤ19の回転を強制的にロックする別のロック機構を設けて、やはり運転状態に応じてロック、アンロックさせてもよい。
【0025】
以上のような本発明によれば、電気駆動と油圧駆動とのハイブリッドであるから、発電機6と電動モータ10とを接続するのは電気配線25だけであり、油圧ポンプ7と油圧モータ12とを接続するのは油圧配管26だけである。従って、パワーラインとして従来のような機械的な駆動ラインを不要にでき、車両本体4内での車両スペースを大きく確保できる。しかも、機械的な駆動ラインが不要なことで、インバータ8やバッテリ9の配置の自由度を高くでき、広い荷室、低車高、低重心を実現できるとともに、操舵角やホイールストロークの制限を解除することができる。
【0026】
また、油圧駆動と電気駆動とを合成することにより、それぞれの駆動方式が有する駆動特性を確実に活用できるとともに、油圧モータ12や電動モータ10の後段側の変速機を省略でき、シリーズ式の機械・電気ハイブリッドの配置自由度を維持したまま、コンパクトな電動モータ10を採用できる。さらに、変速機を省略できること、およびコンパクトな電動モータ10の採用により、バッテリ9も小型化でき、車両重量を大幅に低減できる。
【0027】
〔第2実施形態〕
図3には、本発明の第2実施形態が示されている。本実施形態では、遊星歯車機構23において、リングギヤ21として内歯および外歯を備えたものが採用されている。また、リングギギヤ21は、外歯と噛み合う駆動ギヤ27によって駆動される。駆動ギヤ27は電動モータ10の出力軸に取り付けられている。この電動モータ10としては、アクスルハウジング14の開口を覆うような形状のコイルを有したものではなく、通常形式のDCモータ等を採用できる。他の構成は、第1実施形態と同じであり、このような本実施形態でも、本発明の目的を達成できる。
【0028】
〔第3実施形態〕
図4に示す第3実施形態では、車両本体4内に大きめの電動モータ10および油圧モータ12が一機ずつ搭載されており、これらの駆動力が動力合成手段である遊星歯車機構23で合成される。合成された駆動力は、キャリア出力軸から出力され、この駆動力によってリアアクスル28内に設けられたディファレンシャル29が直接的に駆動される。走行用の被駆動部であるディファレンシャル29を介して後輪3を駆動する構造は、一般的な車両と同じで公知であるため、ここでの詳細な説明は省略する。また、本実施形態の電動モータ10の形式や遊星歯車機構23の構造は、第2実施形態と同様である。
【0029】
このような本実施形態でも、リアアクスル28を備えている分、第1,第2実施形態に比べて車両スペースの場積や車両重量は大きくなるが、油圧駆動と電気駆動とのハイブリッドを採用することで、本発明の目的を十分に達成できる。また、電動モータ10および油圧モータ12が一機ずつ用いられているので、低コストであり、メンテナンスも容易である。
【0030】
なお、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、数量などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、数量などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0031】
例えば、前記各実施形態では、油圧駆動と電気駆動との合成した駆動力によって最終的に後輪3を駆動するホイール式のハブリッド車両1について例示したが、本発明のハイブリッド車両としては、クローラ式や多軸の車両であってもよい。また、駆動する対象としては、最終的に車輪やクローラでなくともよく、任意の種類の作業機等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、建設車両、土木車両、農業車両、運搬車両、走行車両等の作業車両に好適に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施形態に係るハイブリッド車両を模式的に示すブロック図。
【図2】第1実施形態の要部を模式的に示す断面図。
【図3】第2実施形態を模式的に示す断面図。
【図4】第3実施形態を模式的に示すブロック図。
【符号の説明】
【0034】
1…ハイブリッド車両、2…エンジン、4…車両本体、6…発電機、7…油圧ポンプ、10…電動モータ、12…油圧モータ、13…被駆動部であるホイール、23…動力合成手段である遊星歯車機構、29…被駆動部であるディファレンシャル。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体と、
車両本体に搭載されたエンジンと、
前記エンジンにより駆動される発電機と、
前記エンジンにより駆動される油圧ポンプと、
前記発電機からの電気エネルギで駆動される電動モータと、
前記油圧ポンプから圧油で駆動される油圧モータと、
前記電動モータからの出力および前記油圧モータからの出力を合成する動力合成手段と、
前記動力合成手段で駆動される走行用の被駆動部とを備えている
ことを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド車両において、
前記動力合成手段は遊星歯車機構である
ことを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のハイブリッド車両において、
前記被駆動部は前記動力合成手段にて直接的に駆動されるホイールである
ことを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のハイブリッド車両において、
前記被駆動部は前記動力合成手段にて直接的に駆動されるディファレンシャルである
ことを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項1】
車両本体と、
車両本体に搭載されたエンジンと、
前記エンジンにより駆動される発電機と、
前記エンジンにより駆動される油圧ポンプと、
前記発電機からの電気エネルギで駆動される電動モータと、
前記油圧ポンプから圧油で駆動される油圧モータと、
前記電動モータからの出力および前記油圧モータからの出力を合成する動力合成手段と、
前記動力合成手段で駆動される走行用の被駆動部とを備えている
ことを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド車両において、
前記動力合成手段は遊星歯車機構である
ことを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のハイブリッド車両において、
前記被駆動部は前記動力合成手段にて直接的に駆動されるホイールである
ことを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のハイブリッド車両において、
前記被駆動部は前記動力合成手段にて直接的に駆動されるディファレンシャルである
ことを特徴とするハイブリッド車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2008−221921(P2008−221921A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−60033(P2007−60033)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】
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