ハイブリッド駆動装置
【課題】回転軸線を中心とする半径方向に小型化することの可能なハイブリッド駆動装置を提供する。
【解決手段】プライマリプーリ33およびセカンダリプーリ40にベルト52を巻き掛けたベルト式無段変速機8と、セカンダリプーリ40から出力された動力が伝達される入力部材77と、入力部材77から動力が伝達され、かつ、相互に並列に配置された第1出力部材82および第2出力部材83とを有し、第1出力部材82と第2出力部材83との差動回転が許容される構成を有するデファレンシャル10と、デファレンシャル10に伝達する動力を出力する電動機9とを有するハイブリッド駆装置において、セカンダリプーリ40の回転軸線B1と同軸上に、デファレンシャル10の入力部材77および前記第1出力部材82および第2出力部材83が回転可能に配置されている。
【解決手段】プライマリプーリ33およびセカンダリプーリ40にベルト52を巻き掛けたベルト式無段変速機8と、セカンダリプーリ40から出力された動力が伝達される入力部材77と、入力部材77から動力が伝達され、かつ、相互に並列に配置された第1出力部材82および第2出力部材83とを有し、第1出力部材82と第2出力部材83との差動回転が許容される構成を有するデファレンシャル10と、デファレンシャル10に伝達する動力を出力する電動機9とを有するハイブリッド駆装置において、セカンダリプーリ40の回転軸線B1と同軸上に、デファレンシャル10の入力部材77および前記第1出力部材82および第2出力部材83が回転可能に配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンの動力をベルト式無段変速機を経由させてデファレンシャルに伝達するとともに、電動機の動力を前記デファレンシャルに伝達することの可能なハイブリッド駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンおよび電動機の動力が駆動輪に伝達されるように構成されたハイブリッド駆動装置が知られており、このようなハイブリッド駆動装置を車両に用いた技術の一例が、特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載されたハイブリッド車両においては、エンジンの動力がベルト式無段変速機を経由してデファレンシャルギヤに伝達され、ついで、駆動輪に伝達されるように構成されている。前記ベルト式無段変速機は、プライマリプーリおよびセカンダリプーリを有しており、そのプライマリプーリおよびセカンダリプーリにベルトが巻き掛けられている。そして、前記エンジンの動力が前記プライマリプーリに伝達されるように構成され、かつ、モータジェネレータの動力が前記プライマリプーリに伝達されるように構成されている。より具体的には、前記モータジェネレータのロータにはドライビングギヤが取り付けられており、前記プライマリプーリにはドリブンギヤが取り付けられており、前記ドライビングギヤと前記ドリブンギヤとが、第1中間ギヤおよび第2中間ギヤを介して動力伝達可能に連結されている。なお、エンジンおよび電動機を、ベルト式無段変速機のプライマリプーリに対して動力伝達可能に接続するとともに、前記ベルト式無段変速機のセカンダリプーリから出力された動力が差動装置に伝達されるように構成されたハイブリッド車両の駆動制御装置の一例が、特許文献2にも記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−307270号公報
【特許文献2】特開平11−270376号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1に記載されたハイブリッド駆動装置においては、モータジェネレータの回転軸と、第1中間軸および第2中間軸と、プライマリプーリと、セカンダリプーリと、デファレンシャルギヤとが、それぞれ異なる回転軸線上に配置されており、したがって、前記回転軸線を中心とする半径方向にハイブリッド駆動装置が大型化する恐れがあった。
【0005】
この発明は上記の事情を背景としてなされたものであり、エンジンの動力がベルト式無段変速機を経由してデファレンシャルに伝達され、かつ、電動機の動力がデファレンシャルに伝達されるように構成されたハイブリッド駆動装置において、回転軸線を中心とする半径方向に小型化することの可能なハイブリッド駆動装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、エンジンから出力された動力が入力されるプライマリシャフトと、このプライマリシャフトと平行に配置されたセカンダリシャフトと、前記プライマリシャフトおよび前記セカンダリシャフトに巻き掛けられた無端状のベルトとを有するベルト式無段変速機と、前記セカンダリシャフトから出力された動力が伝達される入力部材と、この入力部材から動力が伝達され、かつ、相互に並列に配置された第1出力部材および第2出力部材とを有し、この第1出力部材と第2出力部材との差動回転が可能であるデファレンシャルと、前記デファレンシャルに伝達する動力を出力する電動機とを有するハイブリッド駆装置において、前記セカンダリシャフトの回転軸線と同軸上に、前記デファレンシャルの入力部材および前記第1出力部材および第2出力部材が回転可能に配置されていることを特徴とするものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の構成に加えて、前記電動機のロータから出力された動力が、前記セカンダリシャフトを経由して前記デファレンシャルに伝達されるように構成されており、前記エンジンの出力軸の回転軸線と前記プライマリシャフトの回転軸線とが同軸上に配置されており、前記電動機のロータの回転軸線と前記セカンダリシャフトの回転軸線とが平行に配置されており、前記電動機のロータの回転軸線を、前記エンジンの出力軸の回転軸線および前記デファレンシャルの回転軸線よりも上方に配置するとともに、前記各回転軸線と垂直な平面内で、前記エンジン出力軸の回転軸線と前記デファレンシャルの回転軸線と前記ロータの回転軸線とを結ぶ直線により、鋭角三角形が形成されるように、前記平面内で3つの回転軸線が配置されていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2の構成に加えて、前記セカンダリシャフトの回転軸線に沿った方向で異なる位置に、前記セカンダリシャフトを回転可能に支持する第1の軸受および第2の軸受が配置されており、前記電動機のロータの動力を前記デファレンシャルの入力部材に伝達する伝動部材が、前記セカンダリシャフトの回転軸線と同軸上に、かつ、前記第1の軸受と第2の軸受との間に配置されているとともに、前記伝動部材が第1の軸受および第2の軸受により回転可能に支持されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項2または3の構成に加えて、前記セカンダリシャフトに設けられたセカンダリプーリが、前記回転軸線に沿った方向に動作可能な可動片と、前記回転軸線に沿った方向に動作不可能な固定片とを有しており、前記セカンダリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記固定片よりも前記可動片の方が前記エンジンに近い位置に配置されており、前記セカンダリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記電動機は前記伝動部材を隔てて前記エンジンの反対側に配置されていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項5の発明は、請求項2ないし4のいずれかの構成に加えて、前記セカンダリシャフトの回転軸線に沿った方向における前記可動片の位置を制御する動作機構が、前記セカンダリシャフトの回転軸線を取り囲んで設けられており、前記セカンダリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記動作機構の配置領域の一部と、前記伝動部材の配置領域の一部とが重なっていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項6の発明は、請求項2ないし5のいずれかの構成に加えて、前記電動機の回転軸線に沿った方向に分割され、かつ、結合により前記電動機を支持する第1ケーシングおよび第2ケーシングと、前記デファレンシャルが収容され、かつ、前記回転軸線に沿った方向で前記第2ケーシングとは異なる位置に配置され、かつ、前記第2ケーシングに結合される第3ケーシングと、前記電動機のロータと前記伝動部材との間の動力伝達経路に設けられた中間伝動部材とを有し、前記回転軸線に沿った方向で、前記第2ケーシングと第3ケーシングとにより前記中間伝動部材を挟み付けて支持するとともに、前記第2ケーシングに形成された軸孔の内径が、前記中間伝動部材の外径よりも大きく構成されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項7の発明は、請求項1の構成に加えて、前記エンジンの出力軸の回転軸線と前記プライマリシャフトの回転軸線とが同軸上に配置されており、前記電動機のロータの回転軸線と前記セカンダリシャフトの回転軸線とが平行に配置されており、前記電動機のロータの回転軸線を、前記エンジンの出力軸の回転軸線および前記デファレンシャルの回転軸線よりも上方に配置するとともに、前記電動機のロータから出力された動力が、前記プライマリシャフトおよび前記セカンダリシャフトを経由して前記デファレンシャルに伝達されるように構成されており、前記各回転軸線と垂直な平面内で、前記エンジンの出力軸の回転軸線と前記デファレンシャルの回転軸線と前記ロータの回転軸線とを結ぶ直線により、鋭角三角形が形成されるように、前記平面内で3つの回転軸線が配置されていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項8の発明は、請求項7の構成に加えて、前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で異なる位置に、前記プライマリシャフトを回転可能に支持する第1の軸受および第2の軸受が配置されており、前記電動機のロータの動力を前記プライマリシャフトに伝達する伝動部材が、前記プライマリシャフトの回転軸線と同軸上に、かつ、前記第1の軸受と第2の軸受との間に配置されているとともに、前記伝動部材が第1の軸受または第2の軸受により回転可能に支持されていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項9の発明は、請求項7または8の構成に加えて、前記プライマリシャフトに設けられたプライマリプーリが、前記回転軸線に沿った方向に動作可能な可動片と、前記回転軸線に沿った方向に動作不可能な固定片とを有しており、前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記固定片よりも前記可動片の方が前記エンジンに近い位置に配置されており、前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記電動機は前記伝動部材を隔てて前記エンジンの反対側に配置されていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項10の発明は、請求項9の構成に加えて、前記伝動部材は、前記プライマリシャフトにスプライン嵌合部を介して取り付けられた内筒部を有しており、前記第1の軸受または第2の軸受のうちの一方の軸受が、前記内筒部を介して前記プライマリシャフトを支持する構成を有しており、前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記スプライン嵌合部の形成された領域と、前記一方の軸受の配置領域とが重なっていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項11の発明は、請求項7ないし10のいずれかの構成に加えて、結合されて前記電動機を支持する第1支持部材および第2支持部材と、前記電動機のロータと前記伝動部材との間の動力伝達経路に設けられた中間伝動部材とを有し、前記回転軸線に沿った方向で、前記第2支持部材と第3支持部材とにより前記中間伝動部材が挟み付けて支持されていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項12の発明は、請求項1の構成に加えて、前記電動機のロータから出力された動力が、前記プライマリシャフトおよび前記セカンダリシャフトを経由して前記デファレンシャルに伝達されるように構成されており、前記ロータおよび前記プライマリシャフトが同軸上に配置されていることを特徴とするものである。
【0018】
請求項13の発明は、請求項12の構成に加えて、前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で異なる位置に、前記プライマリシャフトを回転可能に支持する第1の軸受および第2の軸受が配置されており、前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記第1の軸受と第2の軸受との間で、前記プライマリシャフトと前記ロータとが接続されているとともに、前記第1の軸受または第2の軸受のいずれか一方の軸受が、前記ロータを介して前記プライマリシャフトを支持していることを特徴とするものである。
【0019】
請求項14の発明は、請求項12または13の構成に加えて、前記プライマリシャフトに設けられたプライマリプーリが、前記回転軸線に沿った方向に動作可能な可動片と、前記回転軸線に沿った方向に動作不可能な固定片とを有しており、前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記固定片よりも前記可動片の方が前記エンジンに近い位置に配置されており、前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記固定片と前記エンジンとの間に前記電動機が配置されていることを特徴とするものである。
【0020】
請求項15の発明は、請求項13または14の構成に加えて、前記ロータは、前記プライマリシャフトにスプライン嵌合部を介して取り付けられた内筒部を有しており、前記第1の軸受または第2の軸受のうちの一方の軸受が、前記内筒部を介して前記プライマリシャフトを支持する構成を有しており、前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記スプライン嵌合部の形成された領域と、前記一方の軸受の配置領域とが重なっていることを特徴とするものである。
【0021】
請求項16の発明は、請求項12ないし15のいずれかの構成に加えて、結合されて前記電動機を支持する第1支持部材および第2支持部材を備えていることを特徴とするものである。
【0022】
請求項17の発明は、請求項3ないし6のいずれか、または、請求項8ないし11のいずれかの構成に加えて、前記伝動部材には、平行軸式の歯車伝動装置を構成する歯車が含まれることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0023】
請求項1の発明によれば、セカンダリシャフトの回転軸線と同軸上に、デファレンシャルの入力部材および第1出力部材および第2出力部材が回転可能に配置されている。したがって、前記セカンダリシャフトの回転軸線を中心とする半径方向で、前記セカンダリシャフトの配置領域と、前記デファレンシャルの配置領域とが重なり、前記セカンダリシャフトの回転軸線を中心とする半径方向にハイブリッド駆動装置が大型化することを抑制できる。
【0024】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得られる他に、前記電動機の動力が、前記セカンダリシャフトを経由してデファレンシャルに伝達される。より具体的には、前記電動機の動力が、前記プライマリシャフトを経由せずにセカンダリシャフトに伝達される。また、前記セカンダリシャフトの回転軸線と垂直な平面内で、前記エンジンおよび前記デファレンシャルおよび前記電動機の配置領域の回転軸線と前記ロータの回転軸線とを結ぶ直線により、鋭角三角形が形成されるため、その鋭角三角形の三辺の個々の長さをなるべく短くすることができ、前記セカンダリシャフトの回転軸線を中心とする半径方向にハイブリッド駆動装置が大型化することを、一層確実に抑制できる。
【0025】
請求項3の発明によれば、請求項2の発明と同様の効果を得られる他に、前記セカンダリシャフトを支持する第1軸受および第2軸受を、伝動部材を支持する軸受として共用できる。
【0026】
請求項4の発明によれば、請求項2または3の発明と同様の効果を得られる他に、前記セカンダリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記電動機の配置領域と、前記ベルト式無段変速機の配置領域とを重ならせることができ、前記セカンダリシャフトの回転軸線に沿った方向でハイブリッド駆動装置を小型化できる。
【0027】
請求項5の発明によれば、請求項2ないし4のいずれかの発明と同様の効果を得られる他、前記セカンダリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記動作機構の配置領域の一部と、前記伝動部材の配置領域の一部とが重なっているため、前記セカンダリシャフトの回転軸線に沿った方向で、ハイブリッド駆動装置を一層小型化できる。
【0028】
請求項6の発明によれば、請求項2ないし5のいずれかの発明と同様の効果を得られる他に、前記電動機を収容した第1ケーシングおよび第2ケーシングと、前記デファレンシャルおよび前記中間伝動部材を保持した第3ケーシングとを、結合(組み立て)または分解可能である。そして、前記第2ケーシングと前記第3ケーシングとを結合または分解する場合に、前記中間伝動部材が前記軸孔を通過する。したがって、前記電動機と前記中間伝動部材との間における動力伝達を遮断した状態で、前記電動機のロータを回転させることができる。
【0029】
請求項7の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得られる他に、前記電動機の動力が、前記プライマリシャフトおよび前記セカンダリシャフトを経由して前記デファレンシャルに伝達される。また、前記プライマリシャフトの回転軸線と垂直な平面内で、前記エンジンおよび前記デファレンシャルおよび前記電動機の配置領域の回転軸線と前記ロータの回転軸線とを結ぶ直線により、鋭角三角形が形成されるため、その鋭角三角形の三辺の個々の長さをなるべく短くすることができ、前記セカンダリシャフトの回転軸線を中心とする半径方向にハイブリッド駆動装置が大型化することを、一層確実に抑制できる。
【0030】
請求項8の発明によれば、請求項7の発明と同様の効果を得られる他に、前記プライマリシャフトを支持する第1軸受または第2軸受を、伝動部材を支持する軸受として共用できる。
【0031】
請求項9の発明によれば、請求項7または8の発明と同様の効果を得られる他に、前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記電動機の配置領域と、前記ベルト式無段変速機の配置領域とを重ならせることができ、前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向でハイブリッド駆動装置を小型化できる。
【0032】
請求項10の発明によれば、請求項7ないし9のいずれかの発明と同様の効果を得られる他、前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記スプライン嵌合部の形成された領域と、前記一方の軸受の配置領域とが重なっているため、前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で、ハイブリッド駆動装置を一層小型化できる。
【0033】
請求項11の発明によれば、請求項7ないし10のいずれかの発明と同様の効果を得られる他に、前記電動機を支持した第2支持部材と第3支持部材とを、結合(組み立て)または分解可能である。そして、前記第1支持部材および第2支持部材により電動機のロータを支持し、第3支持部材を取り外すと、中間伝動部材と電動機のロータとの間における動力伝達を遮断した状態で、前記電動機のロータを回転させることができる。
【0034】
請求項12の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得られる他に、前記電動機のロータから出力された動力が、前記プライマリシャフトおよび前記セカンダリシャフトを経由して前記デファレンシャルに伝達される。また、前記ロータおよび前記プライマリシャフトが同軸上に配置されているため、前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向でハイブリッド駆動装置が一層小型化される。
【0035】
請求項13の発明によれば、請求項12の発明と同様の効果を得られる他に、前記プライマリシャフトを支持する軸受を、ロータを支持する軸受として共用できる。
【0036】
請求項14の発明によれば、請求項12または13の発明と同様の効果を得られる他に、前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記固定片と前記エンジンとの間に前記電動機が配置されているため、前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で、ハイブリッド駆動装置が一層小型化される。
【0037】
請求項15の発明によれば、請求項13または14の発明と同様の効果を得られる他、前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記スプライン嵌合部の形成された領域と、前記一方の軸受の配置領域とが重なっているため、前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で、ハイブリッド駆動装置を一層小型化できる。
【0038】
請求項16の発明によれば、請求項12ないし15のいずれかの発明と同様の効果を得られる他に、第1支持部材と第2支持部材とを結合することにより、電動機を支持することができる。
【0039】
請求項17の発明によれば、請求項3ないし6のいずれか、または、請求項8ないし11のいずれかの発明と同様の効果を得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
この発明において、エンジンは、燃料を燃焼させて熱エネルギを発生させ、その熱エネルギを運動エネルギに変換して動力として出力する動力装置であって、このエンジンとしては内燃機関、例えば、ガソリンエンジン、LPGエンジン、メタノールエンジンなどを用いることが可能である。この発明において、電動機は、電気エネルギを運動エネルギに変換して動力として出力する動力装置であり、この電動機は、直流電動機、または交流電動機のいずれでもよい。また、電動機としては、電動機としての機能(力行機能)と発電機としての機能(回生機能)とを兼備したモータ・ジェネレータを用いることも可能である。つまり、この発明は動力の発生原理が異なる複数種類の動力源を有し、たとえば、ハイブリッド車に用いることが可能である。この発明において、ベルト式無段変速機は、プライマリプーリと、このプライマリプーリと平行に配置されたセカンダリプーリと、前記プライマリプーリおよび前記セカンダリプーリに巻き掛けられた無端状のベルトとを有する。ここで、ベルトは、圧縮力により動力伝達をおこなう構成の巻き掛け伝動部材、または、引っ張り力により動力伝達をおこなう巻き掛け伝動部材のいずれでもよい。そして、このベルト式無段変速機においては、入力回転数と出力回転数との比、すなわち変速比を無段階に(連続的に)変更可能である。
【0041】
さらに、前記セカンダリプーリと、デファレンシャルの入力部材とが動力伝達可能に接続される。さらに、前記デファレンシャルにおいては、第1出力部材と第2出力部材との差動回転が可能となる構成を有している。ここで、差動回転とは、回転数に差が生じることである。この発明は、二輪駆動車または四輪駆動車に適用可能であり、二輪駆動車に用いる場合、第1出力部材と第2出力部材とが、左右の車輪に別々に動力伝達可能に連結される。これに対して、この発明を四輪駆動車に用いる場合、デファレンシャルはいわゆるセンターデファレンシャルとなり、前記第1出力部材と第2出力部材とが、前輪と後輪とに別々に動力伝達可能に連結される。
【0042】
この発明においては前記電動機の動力が、ベルト式無段変速機を経由してデファレンシャルに伝達されるように構成されている。具体的には、前記電動機のロータが、前記ベルト式無段変速機のプライマリシャフト、またはセカンダリシャフトに対して動力伝達可能に接続されている。すなわち、エンジンおよび電動機が、共に同じ車輪に伝達されるように動力伝達経路が構成されている。この電動機のロータの動力を前記デファレンシャルの入力部材に伝達する伝動部材は回転要素であり、その伝動部材を備えた伝動装置として、歯車伝動装置、巻き掛け伝動装置、トラクション伝動装置などを用いることが可能である。前記歯車伝動装置は、歯車同士の噛み合い力により動力伝達をおこなう装置であり、特に、平行軸式の歯車伝動装置を用いることが可能である。前記巻き掛け伝動装置には、プーリにベルトを巻き掛けた装置、スプロケットにチェーンを巻き掛けた装置が含まれる。前記トラクション伝動装置は、ローラ同士の間に作動油を介在させて、その作動油のせん断力で動力伝達をおこなうことの可能な装置である。
【0043】
そして、この発明において、伝動部材には、歯車、スプロケット、チェーン、ローラ、回転軸、プーリ、キャリヤ、コネクティングドラムなどの回転要素が含まれる。また、この発明において「伝動部材を軸受により支持する」とは、上記の歯車、プーリ、スプロケット、ローラなどの回転要素を、セカンダリプーリを介して間接的に回転可能に支持することである。さらにまた、上記の伝動装置として、前記電動機のロータの回転数を、前記デファレンシャルの入力部材の回転数で除して求められる変速比が、「1」よりも大きくなる構成の減速機能を有するものを用いることが可能である。さらにまた、上記の伝動装置としては、前記電動機のロータの回転数を、前記デファレンシャルの入力部材の回転数で除して求められる変速比が固定された構成の伝動装置、または前記変速比を変更可能な伝動装置を用いることができる。すなわち、前記伝動装置が変速機としての機能を有していてもよい。ここで、変速機としては常時噛み合い式変速機、選択歯車式変速機、遊星歯車式変速機などを用いることが可能である。
【0044】
さらに、この発明において動作機構は、回転軸線方向における可動片の位置を制御するアクチュエータであり、この動作機構としては、例えば、油圧制御式のアクチュエータを用いることが可能である。この発明においては、前記伝動部材および中間伝動部材を、相互に噛合された歯車列により構成することが可能である。また、この発明において、前記伝動部材および中間伝動部材を、相互に作動油を介在させて接触された複数のローラにより構成することが可能である。この発明において、第1ケーシングおよび第2ケーシングおよび第3ケーシングは、結合・分割可能に構成された中空部材もしくはカバーであり、ベルト式無段変速機およびモータ・ジェネレータおよびデファレンシャルなどを収容し、または回転要素を支持する固定構造物である。したがって、各ケーシングには、ケーシング自体の他に、ハウジングまたは板状部材またはブラケットまたは仕切り壁または隔壁などの構成が含まれる。さらに、この発明において、回転軸線に沿った方向で、2つの領域同士が少なくとも一部が重なっていればよい。
【0045】
また、この発明において、「第2ケーシングと第3ケーシングとにより中間伝動部材を挟み付けて支持する」とは、第2ケーシングと第3ケーシングとを接触させて固定した場合に、前記中間伝動部材である歯車またはローラが、第2ケーシングおよび第3ケーシングにより、直接または間接に回転可能に支持することである。さらに、この発明において、「第2ケーシングに形成された軸孔の内径が、中間伝動部材の外径よりも大きく構成されている」とは、軸孔の内径が、中間伝動部材である歯車の外径、または中間伝動部材であるローラの外径よりも大きいことである。つまり、回転軸線に沿った方向において、前記中間伝動部材が軸孔を通過可能に構成されている。この発明において、全ての回転軸線は略水平方向に配置されている。この発明において、第1支持部材および第2支持部材および第3支持部材は、結合・分割可能に構成されたケーシングまたは中空部材もしくはカバーであり、ベルト式無段変速機およびモータ・ジェネレータおよびデファレンシャルなどを収容し、または回転要素を支持する固定構造物である。したがって、各支持部材には、ケーシングまたはハウジングまたは板状部材またはブラケットまたは仕切り壁または隔壁などの構成が含まれる。これらの第1支持部材および第2支持部材は、結合(組み立て)・分解可能に構成されており、ボルト、ナットなどの固定機構により固定される。さらに、この発明において、回転要素同士がスプライン嵌合されており、これは回転要素同士を一体回転可能に連結する機構であり、セレーション結合であっても技術的意義は同じである。以下、ハイブリッド駆動装置の具体例を図面に基づいて説明する。
【0046】
(具体例1)
図1は、ハイブリッド駆動装置を車両1に用いた場合の概略を示すスケルトン図、図2ないし4は、図1に示された車両のパワートレーンの要部を示し、回転軸線に沿った方向における断面図である。ここで説明する車両1は、エンジンの動力が前輪に伝達されるように構成された、いわゆる、フロントエンジン・フロントドライブ形式の車両である。まず、車両1における第1駆動力源としてのエンジン2が設けられており、このエンジン2としては内燃機関、具体的にはガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジンなどが用いられる。このエンジン2は、燃料を燃焼させてその熱エネルギをクランクシャフト3の運動エネルギとして出力する動力装置である。このエンジン2の出力軸であるクランクシャフト3は、車両1の幅方向(左右方向)に配置されている。このクランクシャフト3の回転軸線A1は、略水平に配置されている。また前記エンジン2の出力側には、トランスアクスル4が設けられている。このトランスアクスル4は、ケーシング5の内部に、ダンパ機構6および前後進切換装置7およびベルト式無段変速機8およびモータ・ジェネレータ9およびデファレンシャル10を組み込んだユニットである。
【0047】
前記ケーシング5は、トランスアクスルハウジング11とトランスアクスルケース12とリヤカバー13とデフハウジング14とを有している。そして、前記トランスアクスルハウジング11およびトランスアクスルケース12およびリヤカバー13のうち、前記回転軸線A1に沿った方向で前記エンジン2に最も近い位置に前記トランスアクスルハウジング11が配置されており、前記エンジン2から最も離れた位置にリヤカバー13が配置され、トランスアクスルハウジング11とリヤカバー13との間に、トランスアクスルケース12が配置されている。さらに、前記回転軸線A1に沿った方向で、前記エンジン2の配置領域と、前記デフハウジング14の配置領域とが重なっている。そして、前記トランスアクスルハウジング11が前記エンジン2の外壁に固定されている。また、前記トランスアクスルハウジング11とトランスアクスルケース12とが図示しない固定部材、例えば、ボルトおよびナットにより締め付け固定されている。また、トランスアクスルケース12とリヤカバー13とが、図示しない固定部材、例えばボルトまたはナットなどにより締め付け固定されている。さらに、前記トランスアクスルハウジング11とデフケース14とが、図示しない固定部材、例えばボルトまたはナットなどにより締め付け固定されている。上記のトランスアクスルハウジング11およびトランスアクスルケース12およびリヤカバー13およびデフハウジング14は、何れも金属材料、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鋳鉄などにより構成されている。
【0048】
前記ダンパ機構6はエンジントルクの変動を吸収もしくは減衰するトーショナルダンパであり、このダンパ機構6は、前記トランスアクスルハウジング11内に配置されている。また、前記トランスアクスルハウジング11およびトランスアクスルケース12およびリヤカバー13の内部に亘ってインプットシャフト15が配置されており、このインプットシャフト15は前記回転軸線A1を中心として回転可能である。そして、前記クランクシャフト3と前記インプットシャフト15との間の動力伝達経路に、前記ダンパ機構6が設けられている。具体的には、前記クランクシャフト3にはフライホイール16が取り付けられており、前記ダンパ機構6の外周側を構成するプレートが、前記フライホイール16の外周に連結されている。また、前記ダンパ機構6の内周側にはトルクリミッタ17を介してハブ18が取り付けられており、そのハブ18が前記インプットシャフト15にスプライン嵌合されている。さらに前記トランスアクスルハウジング11内には壁部19が形成されており、その壁部19の軸孔に前記インプットシャフト15が配置されている。そして、前記回転軸線A1に沿った方向で、前記壁部19とエンジン2との間に前記ダンパ機構6およびトルクリミッタ17およびハブ17などが配置されている。
【0049】
前記前後進切換装置7は、前記インプットシャフト15の回転方向に対して、前記ベルト式無段変速機8のプライマリシャフト20の回転方向を正逆に変更する装置であり、この前後進切換装置8は、前記リヤカバー13および前記トランスアクスルケース12の内部に亘って配置されている。この前後進切換装置7は、ダブルピニオン型の遊星歯車機構を有している。この遊星歯車機構は、前記インプットシャフト15と一体回転するサンギヤ21と、このサンギヤ21の外周側に、サンギヤ21と同軸上に配置されたリングギヤ22と、前記サンギヤ21に噛み合わされたピニオンギヤ23と、このピニオンギヤ23およびリングギヤ22に噛み合わされたピニオンギヤ24と、2個のピニオンギヤ23,24を自転可能に、かつ、公転可能な状態で保持したキャリヤ25とを有している。そして、このキャリヤ25と、ベルト式無段変速機8のプライマリシャフト20とが一体回転するように連結されている。
【0050】
また、前後進切換装置7は、前進クラッチ26および後退ブレーキ27を有している。この前進クラッチ26は、前記インプットシャフト20と前記キャリヤ25とを選択的に連結・解放するものであり、摩擦クラッチ、電磁クラッチ、噛み合いクラッチなどを用いることが可能である。この具体例では、前進クラッチ26として、油圧制御式の摩擦クラッチを用いた場合を説明する。つぎに、前記後退ブレーキ27について説明する。この後退ブレーキ27は、前記リングギヤ22に制動力を与えてそのリングギヤ22を選択的に固定するものであり、摩擦ブレーキ、電磁ブレーキなどを用いることが可能である。この具体例では、後退ブレーキ27として油圧制御式の摩擦ブレーキを用いた場合を説明する。
【0051】
上記のように構成された前後進切換装置7において、前記クラッチ用油圧室(図示せず)の油圧が上昇すると、前進クラッチ26の伝達トルクが高められて、前記インプットシャフト20と前記キャリヤ25とが一体回転可能となる。すなわち前進クラッチ26が係合される。これに対して、前記クラッチ用油圧室の油圧が低下された場合は、前進クラッチ26の伝達トルクが低下し、前記インプットシャフト20と前記キャリヤ25との間における動力伝達が遮断される。すなわち前進クラッチ26が解放される。一方、前記ブレーキ用油圧室(図示せず)の油圧が上昇すると、前記後退ブレーキ27が係合されて、前記リングギヤ22に与えられる制動力が高められ、そのリングギヤ22が固定される。これに対して、前記ブレーキ用油圧室の油圧が低下された場合は、前記後退ブレーキ27が解放されて前記リングギヤ22に与えられる制動力が低下し、前記リングギヤ22が回転可能となる。
【0052】
つぎに、前記ベルト式無段変速機8の配置位置および構成を説明する。このベルト式無段変速機8は、前記トランスアクスルハウジング11および前記トランスアクスルケース12の内部に亘って配置されている。また、前記ベルト式無段変速機8は、前記プライマリシャフト20の他に、セカンダリシャフト28を有しており、前記プライマリシャフト20は前記回転軸線A1を中心として回転可能に構成されている。また、セカンダリシャフト28は回転軸線B1を中心として回転可能に構成されている。そして、前記回転軸線A1と回転軸線B1とは相互に平行である。また、図5は、回転軸線A1,B1と垂直な平面方向に沿った概念図である。この図5に示すように、前記回転軸線A1よりも前記回転軸線B1の方が、車両1の高さ方向で下方に配置されている。また、前記回転軸線A1,B1は共に車両1の幅方向または左右方向に沿って配置されており、車両1の前後方向で、回転軸線A1よりも後方に回転軸線B1が配置されている。
【0053】
さらに、前記プライマリシャフト20は、前記回転軸線A1に沿った方向で、前記前後進切換装置7と前記ダンパ機構6との間に配置されている。そして、前記プライマリシャフト20は2個の軸受29,30により回転可能に支持されており、2個の軸受29,30は回転軸線A1に沿った方向で異なる位置に配置されている。さらに、前記トランスアクスルハウジング11の内面に連続する壁部31と、前記トランスアクスルケース12の内面に連続する壁部32とが設けられている。前記壁部31と壁部32とは回転軸線A1に沿った方向で異なる位置に配置されており、前記軸受29の外輪が壁部31で保持され、軸受30の外輪が壁部32で保持されている。
【0054】
また、前記プライマリシャフト20と一体回転するプライマリプーリ33が設けられている。図2に示すように、前記プライマリプーリ33は、前記プライマリシャフト20の外周に、半径方向に突出するように連続して形成された固定片34と、前記プライマリシャフト20の外周に取り付けられ、かつ、前記プライマリシャフト20に対して回転軸線A1に沿った方向に移動できるように構成された可動片35とを有している。この可動片35は環状体に外向きのフランジ部を形成したものである。そして、前記固定片34と前記可動片35との間にV字形状の溝36が形成されている。さらに、前記回転軸線A1に沿った方向で、2個の軸受29,30の間に前記プライマリプーリ33が配置されている。また、前記回転軸線A1に沿った方向で、前記壁部31と固定片34との間に前記可動片35が配置されている。
【0055】
つぎに、前記プライマリプーリ33の溝36の幅を制御する油圧サーボ機構37について説明すると、この油圧サーボ機構37は、前記プライマリシャフト20と一体回転するプライマリシリンダ38と、そのプライマリシリンダ38と前記可動片35との間に形成されたプライマリ油圧室39とを有している。そして、前記プライマリシャフト20および可動片35には油路(図示せず)が形成されており、その油路を経由してプライマリ油圧室39にオイルが供給され、またはプライマリ油圧室39のオイルが油路を経由して排出されるように構成されている。そして、前記プライマリ油圧室39の油圧に基づいて、前記可動片37に対して、前記回転軸線A1に沿った方向の推力が与えられる。具体的には、前記プライマリ油圧室39の油圧が高められた場合は、前記可動片37を前記固定片34に近づける向きの推力が増加し、前記プライマリプーリ33の溝36の幅を狭めることが可能である。これに対して、前記プライマリ油圧室39の油圧が低下された場合は、前記可動片35を前記固定片34に近づける向きの推力が低下し、前記プライマリプーリ33の溝36の幅を広げることが可能である。さらに、前記プライマリ油圧室39の油圧が略一定である場合は、前記可動片35を前記固定片34に近づける向きの推力が略一定に制御される。
【0056】
一方、前記セカンダリシャフト28には、そのセカンダリシャフト28と一体回転するセカンダリプーリ40が設けられている。図2に示すように、前記セカンダリプーリ40は、前記セカンダリシャフト28の外周に、半径方向に突出するように連続して形成された固定片41と、前記セカンダリシャフト28の外周に取り付けられ、かつ、前記セカンダリシャフト28に対して前記回転軸線B1に沿った方向に移動できるように構成された可動片42とを有している。そして、前記固定片41と前記可動片42との間にV字形状の溝43が形成されている。
【0057】
また、前記セカンダリシャフト28は、2個の軸受44,45により回転可能に支持されている。2個の軸受44,45は、前記回転軸線B1に沿った方向で異なる位置に配置されており。一方の軸受45の外輪は前記トランスアクスルハウジング11により支持されており、他方の軸受44の外輪は前記トランスアクスルケース12により支持されている。そして、前記回転軸線B1に沿った方向で、2個の軸受44,45の間に前記セカンダリプーリ33が配置されている。また、前記回転軸線B1に沿った方向で、前記軸受45の配置領域と前記フライホイール16の配置領域とが一部で重なっている。さらに、前記回転軸線B1に沿った方向で、前記プライマリプーリ33の配置領域と前記セカンダリプーリ40の配置領域とが一部で重なっている。さらに、前記回転軸線B1に沿った方向で、前記壁部19の配置領域と前記セカンダリプーリ40の配置領域とが異なっている。
【0058】
つぎに、前記セカンダリプーリ40の溝43の幅を制御する油圧サーボ機構46について説明すると、この油圧サーボ機構46は、前記セカンダリシャフト28と一体回転するセカンダリシリンダ47と、このセカンダリシリンダ47と前記可動片42との間に形成されたセカンダリ油圧室48とを有している。また、セカンダリ油圧室48内には、圧縮コイルばね49が設けられている。前記セカンダリシリンダ47は環状に構成されており、この前記セカンダリシリンダ47は、略一定の外径を有する円筒部50と、その円筒部50に連続され、かつ、外径が拡大するように傾斜されたテーパ部51とを有している。
【0059】
このように、前記セカンダリ油圧室48の油圧、および圧縮コイルばね49の押圧力に基づいて、前記可動片42に対して、前記回転軸線B1に沿った方向の推力が与えられる構成となっている。そして、前記セカンダリ油圧室48の油圧が高められた場合は、前記可動片42を前記固定片41に近づける向きの推力が増加し、前記セカンダリプーリ40の溝43の幅を狭めることが可能である。これに対して、前記セカンダリ油圧室48の油圧が低下した場合は、前記可動片42を前記固定片41に近づける向きの推力が低下する。さらに、前記セカンダリ油圧室48の油圧が略一定に制御された場合は、前記可動片42を前記固定片14に近づける向きの推力が略一定となる。上記のように構成されたプライマリプーリ33およびセカンダリプーリ40に、無端状のベルト52が巻き掛けられている。この具体例1では、ベルト52が、環状のキャリヤと、このキャリヤの円周方向に積層された多数のブロック(エレメント)とを有しており、圧縮力により動力伝達がおこなわれるように構成されている。
【0060】
さらに前記セカンダリシャフト28の外周には、このセカンダリシャフト28と一体回転する環状部材53が取り付けられている。具体的に説明すると、前記セカンダリシャフト28には全周に亘って半径方向の段部54が形成されており、ロックナット55の締め付けにより、前記段部54とロックナット55との間に、前記環状部材53および前記セカンダリシリンダ47の内周端が挟み付けられている。このようにして、前記回転軸線B1に沿った方向で、前記環状部材53が位置決め固定されている。前記環状部材53には外向きのフランジ部56が形成されており、その外向きのフランジ部56の外周端から回転軸線B1に沿った方向に延ばされた円筒部57が設けられている。この円筒部57の内径は、前記セカンダリシリンダ47の円筒部50の外径よりも大きく構成されているとともに、前記回転軸線B1に沿った方向における円筒部57の内側に、前記セカンダリシリンダ47の一部が配置されている。つまり、前記回転軸線B1に沿った方向で、前記円筒部57の配置領域の一部と、前記セカンダリシリンダ47の配置領域の一部とが重なっている。そして、前記環状部材53の円筒部57の外周にドリブンギヤ58が形成されている。このドリブンギヤ58の外径は、前記軸受44,45の外径よりも大きく構成されている。前記回転軸線B1に沿った方向において、前記壁部19の配置領域と前記ドリブンギヤ58の配置領域とが一部で重なっている。また、回転軸線B1を中心とする半径方向で、前記壁部19の配置領域と前記ドリブンギヤ58の配置領域とが一部で重なっている。なお、前記ドリブンギヤ58と前記壁部19とが非接触であることは勿論である。
【0061】
つぎに、前記トランスアクスルケース12およびトランスアクスルハウジング11の内部に亘って設けられているモータ・ジェネレータ9の構成を、図3に基づいて説明する。このモータ・ジェネレータ9は、前記デファレンシャル10に伝達する動力を発生する動力装置であり、モータ・ジェネレータ9としては、例えば3相交流型のものを用いることが可能である。このモータ・ジェネレータ9は、インバータ(図示せず)を介して電力装置(図示せず)に接続されている。この電力装置は、モータ・ジェネレータ9に電力を供給する装置である。上記電力装置としては、例えば、蓄電装置または燃料電池などを用いることが可能である。前記蓄電装置としては二次電池、例えばバッテリまたはキャパシタを用いることができる。前記モータ・ジェネレータ9は回転不可能に固定されたステータ59と、回転軸線D1を中心とする半径方向で、前記ステータ59の内側に設けられたロータ60とを有している。また、前記ステータ59は、積層された多数の電磁鋼板59Aに電磁コイル59Bを巻き付けて構成されており、そのステータ59は、前記トランスアクスルケース12およびトランスアクスルハウジング11により挟み付けられて、前記回転軸線D1に沿った方向および半径方向に位置決め固定されている。前記ロータ60は、軸部61と、この軸部61に接合されたホルダ60Bと、このホルダ60Bに取り付けられ、かつ、厚さ方向に積層された多数の電磁鋼板60Aとを有している。このように構成されたモータ・ジェネレータ9は、正方向と逆方向との間で、回転方向の切り換えが可能である。
【0062】
さらに前記軸部60は、2個の軸受62,63により回転可能に保持されている。2個の軸受62,63は、前記回転軸線D1に沿った方向で異なる位置に配置されている。そして、一方の軸受62の内輪がロータ60に固定され、その軸受62の外輪が、前記トランスアクスルケース12の凹部により保持されている。また、他方の軸受63の内輪がロータ60に固定され、その軸受63の外輪が、前記トランスアクスルハウジング11の凹部により保持されている。このようにして、前記ロータ60は、2個の軸受62,63を介在させて、前記トランスアクスルケース12および前記トランスアクスルハウジング11により、前記回転軸線D1に沿った方向、および前記回転軸線D1を中心とする半径方向に位置決め固定されている。このようにして、前記ステータ59を構成する電磁鋼板59Aと、ロータ60を構成する電磁鋼板60Aとの隙間量、具体的には半径方向の隙間量が決定され、かつ、前記回転軸線D1に沿った方向における電磁鋼板59Aと電磁鋼板60Aとのオーバーラップ量が決定されている。そして、前記回転軸線D1に沿った方向で、前記モータ・ジェネレータ9の配置領域と、前記セカンダリプーリ40の配置領域とが重なっている。
【0063】
また、図5に示すように、前記モータ・ジェネレータ9のロータ60の回転軸線D1は、前記2本の回転軸線A1,B1よりも上方に配置され、かつ、車両1の前後方向で、回転軸線A1よりも後方に、かつ、回転軸線B1よりも前方に配置されている。そして、回転軸線A1と回転軸線B1とを結ぶ直線E1と、回転軸線A1と回転軸線D1とを結ぶ直線F1と、回転軸線D1と回転軸線B1とを結ぶ直線G1とにより、鋭角三角形が構成されている。つまり、直線E1と直線F1とのなす内角α1、直線E1と直線G1とのなす内角α2、直線Fと直線G1とのなす内角α3が、全て鋭角となっている。また、前記ロータ60の回転角度および回転数を検出するレゾルバ91が設けられている。このレゾルバ91は、前記トランスアクスルケース12に取り付けられたステータ92と、前記軸部61に取り付けられたステータ93とを有しており、このレゾルバ91から検出信号が出力される。
【0064】
つぎに、前記ロータ60と前記ドリブンギヤ58との間の動力伝達経路の構成を説明する。まず、前記軸部61にはドライブギヤ64が設けられており、前記回転軸線D1と平行な回転軸線C1を中心として回転可能なアイドラ軸65が設けられている。このアイドラ軸65は、2個の軸受66,67により回転可能に保持されている。一方の軸受66の外輪は、前記トランスアクスルハウジング11の内面に連続した壁部94の凹部により保持されており、他方の軸受67の外輪は、前記デフハウジング14の凹部により支持されている。上記のアイドラ軸65にはアイドラギヤ68が形成されており、そのアイドラギヤ68が、前記ドライブギヤ64およびドリブンギヤ58に噛合されている。前記回転軸線B1に沿った方向において、前記ドライブギヤ64およびアイドラギヤ68およびドリブンギヤ58は同一の配置領域内に配置されている。
【0065】
このようにして、前記ドライブギヤ64およびアイドラギヤ68およびドリブンギヤ58により、前記モータ・ジェネレータ9のロータ60と前記セカンダリシャフト28との間を動力伝達可能に接続する伝動装置、具体的には、平行軸式の歯車伝動装置69が構成されている。そして、前記回転軸線B1に沿った方向で、前記エンジン2と前記モータ・ジェネレータ9との間に、前記歯車伝動装置69が配置されている。また、この歯車伝動装置69は、前記モータ・ジェネレータ9のトルクを前記セカンダリシャフト28に伝達する場合において、前記ロータ60の回転数と、前記セカンダリシャフト28の回転数との比、すなわち変速比が「1」よりも大きくなるなるように、ドライブギヤ64およびアイドラギヤ68およびドリブンギヤ58の歯数が構成されている。さらに、前記トランスアクスルハウジング11と前記デフケース14とを接触させて固定した状態で、前記回転軸線C1に沿った方向で、前記軸受67と前記アイドラギヤ68との間に軸孔70が形成されている。この軸孔70は前記回転軸線C1と垂直な平面内で略円形に構成されている。この軸孔70は、前記トランスアクスルハウジング11に設けられており、その軸孔70の内径よりも前記アイドラギヤ68の外径の方が小さく構成されている。
【0066】
つぎに、前記セカンダリシャフト28から前記デファレンシャル10に至る動力伝達経路に設けられた終減速機の構成を、図4に基づいて説明する。この具体例1では、終減速機71が前記デフハウジング14の内部に配置されており、その終減速機71が遊星歯車機構により構成されている。具体的に説明すると、前記セカンダリシャフト28と一体回転するように連結されたサンギヤ72と、このサンギヤ72に噛合された大径ピニオンギヤ73と、大径ピニオンギヤ73と同軸上に連結され、かつ、大径ピニオンギヤ73と一体回転する小径ピニオンギヤ74と、小径ピニオンギヤ74が噛合され、かつ、サンギヤ72と同軸上に配置されたリングギヤ75と、前記大径ピニオンギヤ73および小径ピニオンギヤ74を自転可能かつ公転可能に保持するキャリヤ76とを有している。前記リングギヤ75は前記デフハウジング14に対して回転不可能に取り付けられている。このように、前記終減速機71を構成する遊星歯車機構は、いわゆるステップドピニオン型の遊星歯車機構であり、入力回転数を出力回転数で除して求められる変速比が、「1」よりも大きくなる減速機能を有している。
【0067】
前記デファレンシャル10は前記デフハウジング14内に設けられており、このデファレンシャル10は、前記回転軸線B1を中心として回転可能に設けられたデフケース77と、このデフケース77に取り付けられたピニオンシャフト78と、ピニオンシャフト78に回転可能に取り付けられた2個のピニオンギヤ79と、2個のピニオンギヤ79に噛合された2個のサイドギヤ80,81と、2個のサイドギヤ80,81にそれぞれ連結されたアクスルシャフト82,83とを有している。前記デフケース77が軸受84により回転可能に支持されており、前記キャリヤ76が軸受85により回転可能に支持されている。一方のアクスルシャフト82は、前記セカンダリシャフト28内に配置されており、そのセカンダリシャフト28とアクスルシャフト82とが相対回転可能に構成されている。さらに、図2に示すように、前記セカンダリシャフト28内にはアクスルシャフト82を保持する軸受86が取り付けられている。このように構成されたデファレンシャル10においては、前記アクスルシャフト82,83が何れも回転軸線B1を中心として回転可能である。そして、一方のアクスルシャフト82にはドライブシャフト87を介在させて車輪(左前輪)88が取り付けられており、他方のアクスルシャフト83にはドライブシャフト89を介在させて車輪(右前輪)90が取り付けられている。このように、具体例1においては、各回転軸線同士が非同軸上に、かつ、相互に平行に配置されている。
【0068】
つぎに、ハイブリッド駆動装置の作用および制御を説明する。例えば、車速およびアクセル開度、エンジン回転数、レゾルバ91の検出信号などの信号が電子制御装置に入力され、入力信号および予め記憶されているデータまたはマップなどに基づいて、車両1における要求駆動力が、前記電子制御装置で求められる。この要求駆動力に基づいて、目標エンジン出力およびモータ・ジェネレータ9の目標出力が制御される。まず、前記エンジン2が運転された場合、前記クランクシャフト3のトルクが前記インプットシャフト15に伝達される。この場合、エンジントルクの変動が前記ダンパ機構6により減衰される。
【0069】
つぎに、前後進切換装置7の制御を説明する。まず、前進ポジションが選択された場合は、前進クラッチ26が係合され、かつ、前記後退ブレーキ27が解放される。すると、前記インプットシャフト15のトルクにより、前記キャリヤ25および前記サンギヤ21が一体回転し、前記インプットシャフト15のトルクがキャリヤ25を経由して前記プライマリシャフト20に伝達される。つまり、前記サンギヤ21が入力要素となり、かつ、前記キャリヤ25が出力要素となる。このようにして、前記インプットシャフト15のトルクが、前記ベルト式無段変速機8のプライマリシャフト20に伝達される。
【0070】
ここで、前記ベルト式無段変速機8の変速比の制御を説明する。前記のように、要求駆動力に基づいて、目標エンジン出力が求められ、その目標エンジン出力を最適燃費で達成するように、目標エンジン回転数および目標エンジントルクが求められる。そして、実エンジン回転数を目標エンジン回転数に近づけるように、前記ベルト式無段変速機8の変速比が制御される。具体的には、プライマリ油圧室39の油圧を制御することにより、前記プライマリプーリ33の溝36の幅が調整される。その結果、前記プライマリプーリ33におけるベルト52の巻き掛け半径が変化し、前記プライマリシャフト20の回転数と、前記セカンダリシャフト28の回転数との比、すなわち変速比が無段階(連続的)に制御される。さらに、前記セカンダリ油圧室48の油圧を制御することにより、前記セカンダリプーリ40の溝43の幅が変化する。このようにして、前記ベルト52に対する前記セカンダリプーリ40の挟圧力(言い換えれば挟持力)が制御され、伝達トルクが制御される。この具体例1では、前記プライマリシャフト20のトルクがベルト52を構成するエレメント同士の圧縮力に変換され、その圧縮力が前記セカンダリプーリ40に伝達されて、前記セカンダリシャフト28を回転させようとするトルクが発生する。
【0071】
さらに、前記セカンダリシャフト28にトルクが伝達された場合、そのトルクが前記終減速機71の入力要素であるサンギヤ72に伝達される。このサンギヤ72に伝達されたトルクは、前記大径ピニオンギヤ73および小径ピニオンギヤ74に伝達されて、固定されている前記リングギヤ75が反力要素となり、前記キャリヤ76からトルクが出力される。この終減速機71においては、前記サンギヤ72の回転数よりもキャリヤ76の回転数の方が低くなる。すなわち、終減速機71の変速比が「1」よりも大きくなり、入力トルクに対して出力トルクが増幅される。そして、前記キャリヤ76から出力されたトルクは、前記デファレンシャル10のデフケース77に伝達されて、そのデフケース77のトルクが、前記ピニオンシャフト78およびピニオンギヤ79を経由して、前記2個のサイドギヤ80,81にそれぞれ伝達される。そして、前記サイドギヤ80のトルクが前記アクスルシャフト82および前記ドライブシャフト87を経由して前記車輪88に伝達されるとともに、前記サイドギヤ81のトルクが前記アクスルシャフト83および前記ドライブシャフト89を経由して車輪90に伝達されて、駆動力が発生する。また、前記デファレンシャル10においては、2個のサイドギヤ80,81が前記ピニオンギヤ79に噛合されているため、前記車両1が旋回走行する場合などにおいて、前記車輪88と前記車輪90との差動回転が許容される。すなわち、前記車輪88の回転数と、前記車輪90の回転数に差が生じることが許容される。
【0072】
さらに、前記前進ポジションが選択されている場合において、前記要求駆動力に基づいて、前記モータ・ジェネレータ9の目標出力も求められている。そして、前記エンジントルクの不足分を、前記モータ・ジェネレータ9のトルクで補うことが可能である。この場合、前記モータ・ジェネレータ9に電力が供給されて電動機として駆動され、このモータ・ジェネレータ9から出力されたトルクが、前記歯車伝動装置69を経由して前記セカンダリシャフト28に伝達される。このようにして、前記エンジン2の動力と前記モータ・ジェネレータ9の動力とを、前記セカンダリシャフト28で合成し、そのトルクを車輪88,90に伝達することができる。
【0073】
前記モータ・ジェネレータ9のトルクを前記セカンダリシャフト28に伝達する場合、前記歯車伝動装置69の変速比は「1」よりも大きいため、前記モータ・ジェネレータ9のトルクが増幅されて前記セカンダリシャフト28に伝達される。また、この具体例1においては、前記要求駆動力に基づいて、前記エンジン2を停止させ、かつ、前記モータ・ジェネレータ9を電動機として駆動する制御(電気自動車モード)を選択することも可能である。この電気自動車モードが選択された場合、前記モータ・ジェネレータ9から出力されたトルクが前記車輪88,90に伝達されて、駆動力が発生する。また、電気自動車モードが選択された場合、前記前進クラッチ26および前記後退ブレーキ27は共に解放される。したがって、前記モータ・ジェネレータ9の動力の一部が、前記ベルト式無段変速機8を経由して前記インプットシャフト15に伝達されることを回避できる。
【0074】
つぎに、後退ポジションが選択された場合について説明する。この場合は、前後進切換装置7において、前進クラッチ26が解放され、かつ、前記後退ブレーキ27が係合される。すなわち、前記リングギヤ22が固定される。そして、前記エンジントルクが前記インプットシャフト15に伝達された場合、前記リングギヤ22が反力要素となり、前記キャリヤ25が前記サンギヤ21とは逆方向に回転される。このキャリヤ25のトルクは、前進ポジションが選択された場合と同様の経路を経由して車輪88,90に伝達されて駆動力が発生する。なお、この後退ポジションが選択された場合も、前記モータ・ジェネレータ9を電動機として駆動させ、そのトルクを前記セカンダリシャフト28に伝達する制御を実行可能である。なお、後退ポジションが選択された場合におけるモータ・ジェネレータ9の回転方向は、前進ポジションが選択された場合とは逆方向に制御される。さらに、この後退ポジションが選択された場合も、前述と同様にして電気自動車モードを選択することが可能である。
【0075】
また、この具体例1においては、前記セカンダリシャフト28および前記デファレンシャル10のアクスルシャフト82,83が、共通の回転軸線B1を中心として同軸上に配置されている。このため、前記プライマリシャフト20の回転軸線A1および前記モータ・ジェネレータ9のロータ60の回転軸線D1と合わせて3本の回転軸線となっている。したがって、前記車両1の前後方向および高さ方向の何れにおいても、ハイブリッド駆動装置の占有スペースを狭めることができ、車載性が向上する。さらに、図5に示すように前記回転軸線A1,B1,D1を結ぶ直線C1,E1,F1により鋭角三角形が形成されるように、前記モータ・ジェネレータ9の配置位置が構成されている。具体的には、前記回転軸線A1,B1よりも回転軸線D1の方が上方に配置され、かつ、車両1の前後方向で、前記回転軸線A1および回転軸線B1の間に、前記回転軸線D1が配置されている。したがって、車両1の前後方向におけるハイブリッド駆動装置の占有スペースが一層狭められており、かつ体格の増加が抑えられている。さらに、回転要素の本数増加を抑制でき、大重量化、製造コストの上昇を抑制できる。
【0076】
さらにこの具体例1では、前記ドリブンギヤ58が形成された環状部材53が前記セカンダリシャフト28の外周に取り付けられており、そのセカンダリシャフト28が前記軸受44,45により支持されている。すなわち、前記環状部材53および前記セカンダリシャフト28を支持する軸受が共用化されている。したがって、回転要素を支持する軸受の個数を減らすことができ、ハイブリッド駆動装置の製造コストの上昇を抑制できる。さらには、前記回転軸線B1に沿った方向に軸受が多数直列に配置されることを回避でき、回転軸線に沿った方向に全長が増加することを抑制できる。さらに、ハイブリッド駆動装置が組み立てられた状態では、前記軸受44はトランスアクスルケース12に保持され、前記軸受45はトランスアクスルハウジング11に保持される構成となっているとともに、その軸受44と軸受45との間に、前記セカンダリプーリ40およびドリブンギヤ58が設けられている。このため、前記ハイブリッド駆動装置を組み立てる工程で、前記セカンダリシャフト28の外周に前記環状部材53を取り付けてロックナット55で締め付け、かつ、前記セカンダリシャフト28の外周に前記軸受44,45を取り付けてアッセンブリ(ユニット)を構成し、前記トランスアクスルハウジング11および前記トランスアクスルケース12により前記アッセンブリを挟み付けるようにして、ハイブリッド駆動装置を組み立てることができる。したがって、前記ドリブンギヤ58が前記トランスアクスルハウジング1の一部に接触することを回避できる。
【0077】
さらに、具体例1では、前記回転軸線B1に沿った方向で、前記可動片42と前記エンジン2との間に前記セカンダリシリンダ47および前記環状部材53が配置されており、その環状部材53の円筒部57が、セカンダリシリンダ47の円筒部50の半径方向の外側に配置されている。つまり、前記回転軸線B1に沿った方向で、前記セカンダリシリンダ47の配置領域の一部と、前記環状部材53の配置領域の一部とが重なっている。したがって、前記回転軸線B1に沿った方向における部品の配置スペースが狭められ、回転軸線方向におけるハイブリッド駆動装置の全長を短くできる。また、前記回転軸線B1に沿った方向で、前記ドリブンギヤ58およびアイドラギヤ68およびドライブギヤ64の配置領域が略同じに構成されている。さらに、前記回転軸線B1に沿った方向で、前記プライマリプーリ33およびセカンダリプーリ40およびモータ・ジェネレータ9の配置領域が重なっている。したがって、前記回転軸線B1に沿った方向における部品の配置スペースが狭められ、回転軸線方向におけるハイブリッド駆動装置の全長を一層短くできる。さらに、前記回転軸線B1と回転軸線D1との距離が同じであり、かつ、前記伝動装置69の変速比(減速比)を一定であるとすれば、前記ドリブンギヤ58の外径を大きくすることにより、前記アイドラギヤ68の外径を小さくすることが可能であり、アイドラシャフト65をコンパクトに配置することができる。
【0078】
また、この具体例1においては、車両1の発進時に、前述した電気自動車モードを選択し、ついで、前記前進クラッチ26のトルク容量を徐々に増加させ、かつ、エンジントルクを前記インプットシャフト20に伝達する制御をおこなうこともできる。このような制御をフリクションスタート制御と称する。このフリクションスタート制御をおこなうことにより、流体伝動装置などの発進クラッチを専用に設けずに済む。また、前記モータ・ジェネレータ9の動力のみでは駆動力が不足する場合、または前記モータ・ジェネレータ9に供給する電力が低い場合は、前記フリクションスタート制御をおこなうことにより、駆動力不足を補うことができる。さらに、前記のように流体伝動装置を設けずに済み、かつ、前記回転軸線B1に沿った方向において、前記壁部19および前記ダンパ機構6と、前記ドリブンギヤ58とが、その配置領域の一部が重なっているため、全長が増加することを抑制でき、車載性が向上する。
【0079】
さらにこの具体例1においては、前記アイドラシャフト65が軸受66,67により支持されており、一方の軸受67がデフハウジング14により支持されている。さらに、前記軸孔70の内径は前記アイドラギヤ68の外径よりも大きく構成されている。このため、ハイブリッド駆動装置が組み立てられている状態から、前記デフハウジング14と前記トランスアクスルハウジング11とを分解して、前記回転軸線C1に沿った方向に離脱させると、前記デフハウジング14に保持されたアイドラシャフト65のアイドラギヤ68が、前記軸孔70を通過して前記トランスアクスルハウジング11の外部に取り出される。このようにして、前記モータ・ジェネレータ9と前記ドリブンギヤ58との間における動力伝達を遮断することが可能であり、その状態で前記モータ・ジェネレータ9の機能および特性を検査する場合に、その検査制度の低下を抑制できる。
【0080】
ここで、前記モータ・ジェネレータ9の機能および特性検査としては、逆起電電圧測定、レゾルバ91の原点調整、レゾルバ91の原点ズレ量測定、前記モータ・ジェネレータ9の最大出力および効率測定、前記モータ・ジェネレータ9の無負荷状態での引き摺りトルクの測定などが挙げられる。また、前記モータ・ジェネレータ9の無負荷状態とは、力行制御または回生制御の何れもおこなっていない状態、つまり、ロータ60が空転可能な状態を指す。このように、モータ・ジェネレータ9の機能および特性を検査もしくは測定する場合、ロータ60を回転または空転させることとなるが、前記ロータ60と共に前記ベルト式無段変速機8の回転要素が引きずられて回転することを回避できる。また、前記ベルト式無段変速機8に潤滑油が供給されていない状態、すなわち、無潤滑状態で、ベルト式無段変速機8の回転要素が回転されて、焼き付くことを防止できる。
【0081】
この具体例1は、請求項1ないし6に相当するものであり、この具体例1に示された構成と、請求項1ないし6の発明における構成との対応関係を説明すると、エンジン2が、この発明のエンジンに相当し、プライマリプーリ33が、この発明のプライマリプーリに相当し、セカンダリプーリ40が、この発明のセカンダリプーリに相当し、ベルト52が、この発明のベルトに相当し、ベルト式無段変速機8が、この発明のベルト式無段変速機に相当し、デフケース77が、この発明における入力部材に相当し、サイドギヤ80およびアクスルシャフト82が、この発明における第1出力部材に相当し、サイドギヤ81およびアクスルシャフト83が、この発明における第2出力部材に相当し、デファレンシャル10が、この発明におけるデファレンシャルに相当し、モータ・ジェネレータ9が、この発明における電動機に相当し、回転軸線B1が、この発明における「セカンダリプーリの回転軸線」および「デファレンシャルの回転軸線」に相当し、クランクシャフト3およびフライホイール16が、この発明における「エンジンの出力軸」に相当し、回転軸線A1が、この発明における「エンジンの出力軸の回転軸線」および「プライマリプーリの回転軸線」に相当し、ロータ60が、この発明における電動機のロータに相当する。
【0082】
また、回転軸線D1が、この発明における電動機のロータの回転軸線に相当し、直線C1,E1,F1が、この発明における「直線」に相当し、軸受44が、この発明における第1の軸受に相当し、軸受45が、この発明における第2の軸受に相当し、前記環状部材53およびドリブンギヤ58が、この発明における伝動部材に相当し、可動片42が、この発明における「セカンダリプーリの可動片」に相当し、固定片41が、この発明における「セカンダリプーリの固定片」に相当し、油圧サーボ機構46が、この発明における動作機構に相当し、トランスアクスルケース12が、この発明における第1ケーシングに相当し、トランスアクスルハウジング11が、この発明における第2ケーシングに相当し、デフハウジング14が、この発明における第3ケーシングに相当し、アイドラシャフト61およびアイドラギヤ68が、この発明の中間伝動部材に相当し、前記軸孔70が、この発明における軸孔に相当する。
【0083】
(具体例2)
つぎに、ハイブリッド駆動装置の具体例2を、図6ないし図10に基づいて説明する。図6は、ハイブリッド駆動装置を有する車両のパワートレーンを示すスケルトン図、図7は、ハイブリッド駆動装置における回転軸線の位置関係を示す模式図、図8ないし図10は、ハイブリッド駆動装置の要部を示す断面図である。この具体例2において、具体例1と同様の構成部分については具体例1と同じ符号を付してある。すなわち、この具体例2においても、前記具体例1と同様に、ベルト式無段変速機8のセカンダリシャフト28と、デファレンシャル10とが、同一の回転軸線B1を中心として回転可能に構成されている。また、この具体例2と具体例1とを比較すると、前記ベルト式無段変速機8に対する前記モータ・ジェネレータ9の接続箇所が異なる。この具体例2では、前記モータ・ジェネレータ9と、前記ベルト式無段変速機8のプライマリシャフト15とが動力伝達可能に接続されている。
【0084】
具体的に説明すると、前記プライマリシャフト20の外周に、前記環状部材53の内筒部53Aがスプライン嵌合部53Bを介して取り付けられている。つまり、前記プライマリシャフト20と環状部材53とが一体回転可能に構成されており、その環状部材53の外周にドリブンギヤ58が形成されている。そして、前記モータ・ジェネレータ9のロータ60と、前記ドリブンギヤ58とが、前記ドライブギヤ64およびアイドラギヤ68により動力伝達可能に接続されている。前記環状部材53は、前記軸線A1に沿った方向で、前記ダンパ機構6と前記固定片34との間に配置されている。その環状部材53の内筒部53Aの外周に、前記軸受30の内輪が圧入固定されており、前記軸受30の外輪が前記壁部19により支持されている。また、前記ロータ60の軸部は軸受62,63により支持されており、一方の軸受62の外輪は前記トランスアクスルケース12により支持されている。これに対して、前記ケーシング5の内部には支持壁95が設けられており、この支持壁95が前記トランスアクスルケース12に対して、図示しない固定機構、例えばボルト、ナットなどを用いて固定されている。この支持壁95は、前記トランスアクスルハウジング11内に配置されている。そして、前記軸受63の外輪は前記支持壁95により支持されている。このようにして、前記ロータ60が回転軸線D1を中心として回転可能に支持されている。
【0085】
また、前記アイドラギヤ68が形成されたアイドラ軸65は、前記トランスアクスルハウジング11内に配置されており、このアイドラ軸65は軸受66,67により回転可能に支持されている。さらに、前記ケーシング5内には、前記回転軸線A1に沿った方向で、前記ダンパ機構6が配置された空間と、前記ベルト式無段変速機8が配置された空間とを仕切る壁部19が設けられている。この壁部19は前記トランスアクスルハウジング11に連続して設けられている。そして、軸受66の外輪は前記支持壁95により支持され、前記軸受67の外輪は前記壁部19により支持されている。つまり、前記アイドラ軸65が前記回転軸線C1を中心として回転可能に支持されている。このようにして、前記モータ・ジェネレータ9のロータ60と、前記プライマリシャフト20とが、伝動装置、具体的には平行軸式の歯車伝動装置69により動力伝達可能に接続されている。
【0086】
さらに、具体例2においても、回転軸線A1,B1,D1同士が相互に平行に配置されている。また、図7に示すように、回転軸線と垂直な平面内で、前記回転軸線A1と回転軸線D1とを結ぶ直線F1上に前記回転軸線C1が配置されている。すなわち、車両1の前後方向において、回転軸線A1よりも後方に、かつ、回転軸線D1よりも前方に前記回転軸線C1が配置されている。なお、図7におけるこれ以外の構成は、図5で説明した構成と同じである。また、具体例2において、前記モータ・ジェネレータ9および前記ベルト式無段変速機8前記歯車伝動装置69および前記前後進切換装置7および前記ダンパ機構6は、前記各回転軸線に沿った方向における位置関係が具体例1で説明した構成と同じである。このように、具体例2においては、各回転軸線同士が非同軸上に、かつ、相互に平行に配置されている。
【0087】
そして、この具体例2においても具体例1と同様にして、前記エンジン2または前記モータ・ジェネレータ9のうち、少なくとも一方の動力を車輪88,90に伝達する制御を実行可能である。また、この実施例2においては、前記モータ・ジェネレータ9が電動機として駆動されると、そのモータ・ジェネレータ9のトルクが前記歯車伝動装置69を経由して、前記ベルト式無段変速機8のプライマリシャフト20に伝達される。この具体例2においても、具体例1と同様の構成部分については、具体例1と同様の作用効果を得られる。また、この具体例2においては、前記プライマリシャフト20を支持する軸受30が前記環状部材53を支持する機能を兼備している。このため、回転要素を支持する軸受の数を減らすことができ、回転軸線に沿った方向でハイブリッド駆動装置の全長が増加することを抑制できる。また、前記回転軸線A1に沿った方向で、前記軸受29と軸受30との間に前記環状部材53が取り付けられる構成となっている。このため、ハイブリッド駆動装置の組み立て工程において、前記トランスアクスルケース12内にベルト式無段変速機8を設けかつ、プライマリシャフト20に環状部材53および軸受30を取り付けて、スナップリング(図示せず)をプライマリシャフト20に取り付けて、前記環状部材53および軸受30の位置決め固定をおこなったユニット(アッセンブリ)を構成し、ついで、トランスアクスルハウジング11をトランスアクスルケース12に固定するという作業をおこなうことができる。
【0088】
さらに、具体例2においては、前記プライマリシャフト20の回転軸線A1に沿った方向で、前記固定片34を隔てて前記エンジン2の配置位置とは反対側に前記可動片35が配置されている。また、前記回転軸線A1に沿った方向で、前記固定片34と前記エンジン2との間に前記歯車伝動装置69が配置されている。さらには、前記回転軸線A1に沿った方向で、前記ベルト式無段変速機8の配置領域と、前記モータ・ジェネレータ9の配置領域とが重なっている。これらの構成により、回転軸線A1に沿った方向におけるスペースを有効に利用できる。さらに、前記回転軸線A1に沿った方向で、前記環状部材53の内筒部53Aに軸受30が圧入された領域と、前記スプライン嵌合部53Cの形成領域とが重なっている。したがって、回転軸線に沿った方向でハイブリッド駆動装置の全長が増加することを抑制できる。また、前記環状部材53は前記プライマリシャフト20に対してスプライン嵌合されているため、前記プライマリプーリ33の変形による荷重が前記環状部材53には伝達されにくい。このため、前記ドリブンギヤ58の変形・偏心を抑制でき、歯車伝動装置69を構成する各ギヤ同士の噛み合い部分におけるギヤノイズの悪化、各ギヤ同士の強度の低下を低減できる。
【0089】
さらに、この具体例2では、前記アイドラ軸65が、前記支持壁95と前記トランスアクスルハウジング11とにより挟まれて支持されている。このため、前記トランスアクスルハウジング11と前記トランスアクスルケース12とを分解すれば、前記ドライブギヤ64と前記アイドラギヤ68との噛合が解除される。つまり、前記モータ・ジェネレータ9と前記プライマリシャフト20との間の動力伝達が遮断される。したがって、具体例1と同様に前記モータ・ジェネレータ9の機能および特性を検査する場合に、具体例1と同様の効果を得られる。さらに、前記モータ・ジェネレータ9が、プライマリシャフト20およびセカンダリシャフト28とは異なる軸上に配置されているため、モータ・ジェネレータ9の外径を大きくすることができる。したがって、モータ・ジェネレータ9の最大トルクを高くすることができ、電気自動車モードが選択された場合に発生する駆動力が向上する。
【0090】
この具体例2は、請求項1、請求項7ないし請求項11の発明に相当するものであり、この具体例2の構成と、この発明の構成との対応関係を説明すると、前記軸受29および軸受30が、この発明における第1の軸受および第2の軸受に相当し、可動片35が、この発明における可動片に相当し、固定片34が、この発明における固定片に相当し、回転軸線A1が、この発明におけるプライマリシャフトの回転軸線に相当し、油圧サーボ機構47が、この発明における動作機構に相当し、トランスアクスルケース12が、この発明における第1支持部材に相当し、支持壁95が、この発明における第2支持部材に相当し、トランスアクスルハウジング11が、この発明における第3支持部材に相当する。この具体例2において、その他の構成とこの発明の構成との対応関係は、具体例1とこの発明の構成との対応関係と同じである。
【0091】
(具体例3)
つぎに、ハイブリッド駆動装置の具体例3を、図11ないし図13に基づいて説明する。この具体例3においても、前記デファレンシャル10がセカンダリシャフトと同軸に配置されている構成は、具体例と同じである。また、具体例3において、前記モータ・ジェネレータ9が、前記プライマリシャフト20に対して動力伝達可能に接続されている構成は、具体例2と共通している。この具体例3と具体例2とを比較すると、前記モータ・ジェネレータ9のロータ60が、前記プライマリシャフト20と同軸上に配置されている構成が異なる。まず、モータ・ジェネレータ9は、前記回転軸線A1に沿った方向で、前記固定片34と前記ダンパ機構6との間に配置されている。また、前記モータ・ジェネレータ9のロータ60の構造を具体的に説明する。このロータ60のホルダ60Bは、内筒部60Cと、その内筒部60Cに連続する外向きフランジ60Dと、その外向きフランジ60Dの外周端に連続して形成された外筒部60Eとを有している。そして、前記プライマリシャフト28の外周面に形成された外歯(図示せず)と、前記内筒部60Cの内周に形成された内歯(図示せず)とが噛み合わされて、スプライン嵌合部97を形成している。このようにして、前記プライマリシャフト28とロータ60とが一体回転するように、かつ、共通の回転軸線A1を中心として回転可能に連結されている。
【0092】
一方、前記トランスアクスルハウジング11に設けられた壁部19は、前記回転軸線A1に沿った方向で、前記ステータ59の側方から、前記ロータ60に近づくように屈曲して構成されている。さらに、前記回転軸線A1に沿った方向で、前記壁部19の一部の配置領域と、前記モータ・ジェネレータ9の配置領域とが重なっている。そして、前記回転軸線A1を中心とする半径方向で、前記壁部19の一部が前記内筒部60Cと外筒部60Eとの間に配置されている。さらに、前記壁部19に形成された凹部により、前記軸受30の外輪が支持され、前記軸受30の内輪が前記内筒部60Cの外周に嵌合固定されている。このようにして、前記回転軸線A1に沿った方向で、前記スプライン嵌合部97の配置領域と、前記軸受30の配置領域とが重なっている。また、前記トランスアクスルハウジング11には、図13に示すように、前記壁部19に連続する円筒部98が形成されており、その円筒部98の内周に前記ステータ59が取り付けられている。そして、前記トランスアクスルハウジング11と前記トランスアクスルケース12とを結合固定することにより、前記ステータ59が半径方向および回転軸線A1に沿った方向に位置決め固定されている。
【0093】
なお、この具体例3において、前記セカンダリシャフト28およびセカンダリプーリ40の構造は、前記具体例2と同じである。また、前記デファレンシャル10の構造は、図10を用いて説明した具体例2の場合と同じである。この具体例3において、具体例1および具体例2と同様の構成部分については、具体例1および具体例2と同じ作用効果を得られる。また、具体例3においては、前記モータ・ジェネレータ9のロータ60と、前記プライマリシャフト20とが同軸上に配置されているため、ハイブリッド駆動装置が回転軸線A1を中心とする半径方向に大型化することを抑制できる。この具体例3においても、具体例1で説明した場合と同様に、エンジン2またはモータ・ジェネレータ9のうちの少なくとも一方を駆動させ、そのトルクを前記車輪88,90に伝達する制御を実行可能である。この具体例3は、請求項1の発明、請求項12ないし17のいずれかに対応しており、前記軸受29,30が、この発明における第1の軸受および第2の軸受に相当し、内筒部60Cが、この発明における「ロータの内筒部」に相当し、スプライン嵌合部97が、この発明のスプライン嵌合部に相当し、前記トランスアクスルケース12が、この発明の第1支持部材に相当し、トランスアクスルハウジング1が、この発明の第2支持部材に相当する。この具体例3で説明した構成と、この発明の他の構成との対応関係は、具体例1および具体例2と、この発明の構成との対応関係と同じである。
【0094】
上記の各具体例では、エンジンからベルト式無段変速機に至る動力伝達経路に、前後進切換装置が配置されているが、この発明は、ベルト式無段変速機から車輪に至る動力伝達経路に、前後進切換装置が配置されている車両にも適用可能である。さらに、前後進切換装置を構成する遊星歯車機構として、シングルピニオン式の遊星歯車機構を用いることも可能である。さらに、前後進切換装置として、平行軸歯車機構および噛み合いクラッチ機構を用いることも可能である。また、上記の具体例はいずれも、二輪駆動車であり、全ての回転軸線が車両の幅方向(左右方向)に配置されているが、この発明を四輪駆動車に用いて、エンジンおよびモータ・ジェネレータの動力を、デファレンシャル(センターデファレンシャル)を経由させて前進および後輪に分配するように構成することも可能である。この場合、全ての回転軸線が車両の前後方向に配置される。さらに、車両としては、乗用車、運搬車などが挙げられる。さらにまた、各具体例で用いられている軸受は、ラジアル軸受およびスラスト軸受としての機能を兼備している。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】この発明におけるハイブリッド駆動装置の具体例1に相当する車両のパワートレーンを示すスケルトン図である。
【図2】図1に示されたハイブリッド駆動装置の要部であり、プライマリプーリおよびセカンダリプーリの構成を示す断面図である。
【図3】図1に示されたハイブリッド駆動装置の要部であり、モータ・ジェネレータおよびセカンダリプーリの構成を示す断面図である。
【図4】図1に示されたハイブリッド駆動装置の要部であり、終減速機およびデファレンシャルの構成を示す断面図である。
【図5】図1に示されたハイブリッド駆動装置において、各回転軸線同士の位置関係を示す概念図である。
【図6】この発明におけるハイブリッド駆動装置の具体例2に相当する車両のパワートレーンを示すスケルトン図である。
【図7】図6に示されたハイブリッド駆動装置において、各回転軸線同士の位置関係を示す概念図である。
【図8】図6に示されたハイブリッド駆動装置の要部であり、プライマリプーリおよびモータ・ジェネレータの構成を示す断面図である。
【図9】図6に示されたハイブリッド駆動装置の要部であり、プライマリシャフトおよびセカンダリプーリの構成を示す断面図である。
【図10】図6に示されたハイブリッド駆動装置の要部であり、終減速機およびデファレンシャルの構成を示す断面図である。
【図11】この発明におけるハイブリッド駆動装置の具体例3に相当する車両のパワートレーンを示すスケルトン図である。
【図12】図11に示されたハイブリッド駆動装置の要部であり、プライマリプーリおよびモータ・ジェネレータの構成を示す断面図である。
【図13】図11に示されたハイブリッド駆動装置の要部であり、プライマリプーリおよびセカンダリプーリの構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0096】
2…エンジン、 3…クランクシャフト、 8…ベルト式無段変速機、 9…モータ・ジェネレータ、 10…デファレンシャル、 11…トランスアクスルハウジング、 12…トランスアクスルケース、 14…デフハウジング、 16…フライホイール、 29,30,44,45…軸受、33…プライマリプーリ、 34,41…固定片、 35,42…可動片、 37,47…油圧サーボ機構、 40…セカンダリプーリ、 52…ベルト、 53…環状部材、 53A…内筒部、 53B,97…スプライン嵌合部、 58…ドリブンギヤ、 60…ロータ、 60C…内筒部、 61…アイドラシャフト、 68…アイドラギヤ、 69…歯車伝動装置、 70…軸孔、 77…デフケース、 80,81…サイドギヤ、 82,83…アクスルシャフト、 95…支持壁、 A1,B1,C1,D1…回転軸線、 C1,E1,F1…直線。
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンの動力をベルト式無段変速機を経由させてデファレンシャルに伝達するとともに、電動機の動力を前記デファレンシャルに伝達することの可能なハイブリッド駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンおよび電動機の動力が駆動輪に伝達されるように構成されたハイブリッド駆動装置が知られており、このようなハイブリッド駆動装置を車両に用いた技術の一例が、特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載されたハイブリッド車両においては、エンジンの動力がベルト式無段変速機を経由してデファレンシャルギヤに伝達され、ついで、駆動輪に伝達されるように構成されている。前記ベルト式無段変速機は、プライマリプーリおよびセカンダリプーリを有しており、そのプライマリプーリおよびセカンダリプーリにベルトが巻き掛けられている。そして、前記エンジンの動力が前記プライマリプーリに伝達されるように構成され、かつ、モータジェネレータの動力が前記プライマリプーリに伝達されるように構成されている。より具体的には、前記モータジェネレータのロータにはドライビングギヤが取り付けられており、前記プライマリプーリにはドリブンギヤが取り付けられており、前記ドライビングギヤと前記ドリブンギヤとが、第1中間ギヤおよび第2中間ギヤを介して動力伝達可能に連結されている。なお、エンジンおよび電動機を、ベルト式無段変速機のプライマリプーリに対して動力伝達可能に接続するとともに、前記ベルト式無段変速機のセカンダリプーリから出力された動力が差動装置に伝達されるように構成されたハイブリッド車両の駆動制御装置の一例が、特許文献2にも記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−307270号公報
【特許文献2】特開平11−270376号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1に記載されたハイブリッド駆動装置においては、モータジェネレータの回転軸と、第1中間軸および第2中間軸と、プライマリプーリと、セカンダリプーリと、デファレンシャルギヤとが、それぞれ異なる回転軸線上に配置されており、したがって、前記回転軸線を中心とする半径方向にハイブリッド駆動装置が大型化する恐れがあった。
【0005】
この発明は上記の事情を背景としてなされたものであり、エンジンの動力がベルト式無段変速機を経由してデファレンシャルに伝達され、かつ、電動機の動力がデファレンシャルに伝達されるように構成されたハイブリッド駆動装置において、回転軸線を中心とする半径方向に小型化することの可能なハイブリッド駆動装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、エンジンから出力された動力が入力されるプライマリシャフトと、このプライマリシャフトと平行に配置されたセカンダリシャフトと、前記プライマリシャフトおよび前記セカンダリシャフトに巻き掛けられた無端状のベルトとを有するベルト式無段変速機と、前記セカンダリシャフトから出力された動力が伝達される入力部材と、この入力部材から動力が伝達され、かつ、相互に並列に配置された第1出力部材および第2出力部材とを有し、この第1出力部材と第2出力部材との差動回転が可能であるデファレンシャルと、前記デファレンシャルに伝達する動力を出力する電動機とを有するハイブリッド駆装置において、前記セカンダリシャフトの回転軸線と同軸上に、前記デファレンシャルの入力部材および前記第1出力部材および第2出力部材が回転可能に配置されていることを特徴とするものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の構成に加えて、前記電動機のロータから出力された動力が、前記セカンダリシャフトを経由して前記デファレンシャルに伝達されるように構成されており、前記エンジンの出力軸の回転軸線と前記プライマリシャフトの回転軸線とが同軸上に配置されており、前記電動機のロータの回転軸線と前記セカンダリシャフトの回転軸線とが平行に配置されており、前記電動機のロータの回転軸線を、前記エンジンの出力軸の回転軸線および前記デファレンシャルの回転軸線よりも上方に配置するとともに、前記各回転軸線と垂直な平面内で、前記エンジン出力軸の回転軸線と前記デファレンシャルの回転軸線と前記ロータの回転軸線とを結ぶ直線により、鋭角三角形が形成されるように、前記平面内で3つの回転軸線が配置されていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2の構成に加えて、前記セカンダリシャフトの回転軸線に沿った方向で異なる位置に、前記セカンダリシャフトを回転可能に支持する第1の軸受および第2の軸受が配置されており、前記電動機のロータの動力を前記デファレンシャルの入力部材に伝達する伝動部材が、前記セカンダリシャフトの回転軸線と同軸上に、かつ、前記第1の軸受と第2の軸受との間に配置されているとともに、前記伝動部材が第1の軸受および第2の軸受により回転可能に支持されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項2または3の構成に加えて、前記セカンダリシャフトに設けられたセカンダリプーリが、前記回転軸線に沿った方向に動作可能な可動片と、前記回転軸線に沿った方向に動作不可能な固定片とを有しており、前記セカンダリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記固定片よりも前記可動片の方が前記エンジンに近い位置に配置されており、前記セカンダリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記電動機は前記伝動部材を隔てて前記エンジンの反対側に配置されていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項5の発明は、請求項2ないし4のいずれかの構成に加えて、前記セカンダリシャフトの回転軸線に沿った方向における前記可動片の位置を制御する動作機構が、前記セカンダリシャフトの回転軸線を取り囲んで設けられており、前記セカンダリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記動作機構の配置領域の一部と、前記伝動部材の配置領域の一部とが重なっていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項6の発明は、請求項2ないし5のいずれかの構成に加えて、前記電動機の回転軸線に沿った方向に分割され、かつ、結合により前記電動機を支持する第1ケーシングおよび第2ケーシングと、前記デファレンシャルが収容され、かつ、前記回転軸線に沿った方向で前記第2ケーシングとは異なる位置に配置され、かつ、前記第2ケーシングに結合される第3ケーシングと、前記電動機のロータと前記伝動部材との間の動力伝達経路に設けられた中間伝動部材とを有し、前記回転軸線に沿った方向で、前記第2ケーシングと第3ケーシングとにより前記中間伝動部材を挟み付けて支持するとともに、前記第2ケーシングに形成された軸孔の内径が、前記中間伝動部材の外径よりも大きく構成されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項7の発明は、請求項1の構成に加えて、前記エンジンの出力軸の回転軸線と前記プライマリシャフトの回転軸線とが同軸上に配置されており、前記電動機のロータの回転軸線と前記セカンダリシャフトの回転軸線とが平行に配置されており、前記電動機のロータの回転軸線を、前記エンジンの出力軸の回転軸線および前記デファレンシャルの回転軸線よりも上方に配置するとともに、前記電動機のロータから出力された動力が、前記プライマリシャフトおよび前記セカンダリシャフトを経由して前記デファレンシャルに伝達されるように構成されており、前記各回転軸線と垂直な平面内で、前記エンジンの出力軸の回転軸線と前記デファレンシャルの回転軸線と前記ロータの回転軸線とを結ぶ直線により、鋭角三角形が形成されるように、前記平面内で3つの回転軸線が配置されていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項8の発明は、請求項7の構成に加えて、前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で異なる位置に、前記プライマリシャフトを回転可能に支持する第1の軸受および第2の軸受が配置されており、前記電動機のロータの動力を前記プライマリシャフトに伝達する伝動部材が、前記プライマリシャフトの回転軸線と同軸上に、かつ、前記第1の軸受と第2の軸受との間に配置されているとともに、前記伝動部材が第1の軸受または第2の軸受により回転可能に支持されていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項9の発明は、請求項7または8の構成に加えて、前記プライマリシャフトに設けられたプライマリプーリが、前記回転軸線に沿った方向に動作可能な可動片と、前記回転軸線に沿った方向に動作不可能な固定片とを有しており、前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記固定片よりも前記可動片の方が前記エンジンに近い位置に配置されており、前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記電動機は前記伝動部材を隔てて前記エンジンの反対側に配置されていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項10の発明は、請求項9の構成に加えて、前記伝動部材は、前記プライマリシャフトにスプライン嵌合部を介して取り付けられた内筒部を有しており、前記第1の軸受または第2の軸受のうちの一方の軸受が、前記内筒部を介して前記プライマリシャフトを支持する構成を有しており、前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記スプライン嵌合部の形成された領域と、前記一方の軸受の配置領域とが重なっていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項11の発明は、請求項7ないし10のいずれかの構成に加えて、結合されて前記電動機を支持する第1支持部材および第2支持部材と、前記電動機のロータと前記伝動部材との間の動力伝達経路に設けられた中間伝動部材とを有し、前記回転軸線に沿った方向で、前記第2支持部材と第3支持部材とにより前記中間伝動部材が挟み付けて支持されていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項12の発明は、請求項1の構成に加えて、前記電動機のロータから出力された動力が、前記プライマリシャフトおよび前記セカンダリシャフトを経由して前記デファレンシャルに伝達されるように構成されており、前記ロータおよび前記プライマリシャフトが同軸上に配置されていることを特徴とするものである。
【0018】
請求項13の発明は、請求項12の構成に加えて、前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で異なる位置に、前記プライマリシャフトを回転可能に支持する第1の軸受および第2の軸受が配置されており、前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記第1の軸受と第2の軸受との間で、前記プライマリシャフトと前記ロータとが接続されているとともに、前記第1の軸受または第2の軸受のいずれか一方の軸受が、前記ロータを介して前記プライマリシャフトを支持していることを特徴とするものである。
【0019】
請求項14の発明は、請求項12または13の構成に加えて、前記プライマリシャフトに設けられたプライマリプーリが、前記回転軸線に沿った方向に動作可能な可動片と、前記回転軸線に沿った方向に動作不可能な固定片とを有しており、前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記固定片よりも前記可動片の方が前記エンジンに近い位置に配置されており、前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記固定片と前記エンジンとの間に前記電動機が配置されていることを特徴とするものである。
【0020】
請求項15の発明は、請求項13または14の構成に加えて、前記ロータは、前記プライマリシャフトにスプライン嵌合部を介して取り付けられた内筒部を有しており、前記第1の軸受または第2の軸受のうちの一方の軸受が、前記内筒部を介して前記プライマリシャフトを支持する構成を有しており、前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記スプライン嵌合部の形成された領域と、前記一方の軸受の配置領域とが重なっていることを特徴とするものである。
【0021】
請求項16の発明は、請求項12ないし15のいずれかの構成に加えて、結合されて前記電動機を支持する第1支持部材および第2支持部材を備えていることを特徴とするものである。
【0022】
請求項17の発明は、請求項3ないし6のいずれか、または、請求項8ないし11のいずれかの構成に加えて、前記伝動部材には、平行軸式の歯車伝動装置を構成する歯車が含まれることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0023】
請求項1の発明によれば、セカンダリシャフトの回転軸線と同軸上に、デファレンシャルの入力部材および第1出力部材および第2出力部材が回転可能に配置されている。したがって、前記セカンダリシャフトの回転軸線を中心とする半径方向で、前記セカンダリシャフトの配置領域と、前記デファレンシャルの配置領域とが重なり、前記セカンダリシャフトの回転軸線を中心とする半径方向にハイブリッド駆動装置が大型化することを抑制できる。
【0024】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得られる他に、前記電動機の動力が、前記セカンダリシャフトを経由してデファレンシャルに伝達される。より具体的には、前記電動機の動力が、前記プライマリシャフトを経由せずにセカンダリシャフトに伝達される。また、前記セカンダリシャフトの回転軸線と垂直な平面内で、前記エンジンおよび前記デファレンシャルおよび前記電動機の配置領域の回転軸線と前記ロータの回転軸線とを結ぶ直線により、鋭角三角形が形成されるため、その鋭角三角形の三辺の個々の長さをなるべく短くすることができ、前記セカンダリシャフトの回転軸線を中心とする半径方向にハイブリッド駆動装置が大型化することを、一層確実に抑制できる。
【0025】
請求項3の発明によれば、請求項2の発明と同様の効果を得られる他に、前記セカンダリシャフトを支持する第1軸受および第2軸受を、伝動部材を支持する軸受として共用できる。
【0026】
請求項4の発明によれば、請求項2または3の発明と同様の効果を得られる他に、前記セカンダリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記電動機の配置領域と、前記ベルト式無段変速機の配置領域とを重ならせることができ、前記セカンダリシャフトの回転軸線に沿った方向でハイブリッド駆動装置を小型化できる。
【0027】
請求項5の発明によれば、請求項2ないし4のいずれかの発明と同様の効果を得られる他、前記セカンダリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記動作機構の配置領域の一部と、前記伝動部材の配置領域の一部とが重なっているため、前記セカンダリシャフトの回転軸線に沿った方向で、ハイブリッド駆動装置を一層小型化できる。
【0028】
請求項6の発明によれば、請求項2ないし5のいずれかの発明と同様の効果を得られる他に、前記電動機を収容した第1ケーシングおよび第2ケーシングと、前記デファレンシャルおよび前記中間伝動部材を保持した第3ケーシングとを、結合(組み立て)または分解可能である。そして、前記第2ケーシングと前記第3ケーシングとを結合または分解する場合に、前記中間伝動部材が前記軸孔を通過する。したがって、前記電動機と前記中間伝動部材との間における動力伝達を遮断した状態で、前記電動機のロータを回転させることができる。
【0029】
請求項7の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得られる他に、前記電動機の動力が、前記プライマリシャフトおよび前記セカンダリシャフトを経由して前記デファレンシャルに伝達される。また、前記プライマリシャフトの回転軸線と垂直な平面内で、前記エンジンおよび前記デファレンシャルおよび前記電動機の配置領域の回転軸線と前記ロータの回転軸線とを結ぶ直線により、鋭角三角形が形成されるため、その鋭角三角形の三辺の個々の長さをなるべく短くすることができ、前記セカンダリシャフトの回転軸線を中心とする半径方向にハイブリッド駆動装置が大型化することを、一層確実に抑制できる。
【0030】
請求項8の発明によれば、請求項7の発明と同様の効果を得られる他に、前記プライマリシャフトを支持する第1軸受または第2軸受を、伝動部材を支持する軸受として共用できる。
【0031】
請求項9の発明によれば、請求項7または8の発明と同様の効果を得られる他に、前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記電動機の配置領域と、前記ベルト式無段変速機の配置領域とを重ならせることができ、前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向でハイブリッド駆動装置を小型化できる。
【0032】
請求項10の発明によれば、請求項7ないし9のいずれかの発明と同様の効果を得られる他、前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記スプライン嵌合部の形成された領域と、前記一方の軸受の配置領域とが重なっているため、前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で、ハイブリッド駆動装置を一層小型化できる。
【0033】
請求項11の発明によれば、請求項7ないし10のいずれかの発明と同様の効果を得られる他に、前記電動機を支持した第2支持部材と第3支持部材とを、結合(組み立て)または分解可能である。そして、前記第1支持部材および第2支持部材により電動機のロータを支持し、第3支持部材を取り外すと、中間伝動部材と電動機のロータとの間における動力伝達を遮断した状態で、前記電動機のロータを回転させることができる。
【0034】
請求項12の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得られる他に、前記電動機のロータから出力された動力が、前記プライマリシャフトおよび前記セカンダリシャフトを経由して前記デファレンシャルに伝達される。また、前記ロータおよび前記プライマリシャフトが同軸上に配置されているため、前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向でハイブリッド駆動装置が一層小型化される。
【0035】
請求項13の発明によれば、請求項12の発明と同様の効果を得られる他に、前記プライマリシャフトを支持する軸受を、ロータを支持する軸受として共用できる。
【0036】
請求項14の発明によれば、請求項12または13の発明と同様の効果を得られる他に、前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記固定片と前記エンジンとの間に前記電動機が配置されているため、前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で、ハイブリッド駆動装置が一層小型化される。
【0037】
請求項15の発明によれば、請求項13または14の発明と同様の効果を得られる他、前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記スプライン嵌合部の形成された領域と、前記一方の軸受の配置領域とが重なっているため、前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で、ハイブリッド駆動装置を一層小型化できる。
【0038】
請求項16の発明によれば、請求項12ないし15のいずれかの発明と同様の効果を得られる他に、第1支持部材と第2支持部材とを結合することにより、電動機を支持することができる。
【0039】
請求項17の発明によれば、請求項3ないし6のいずれか、または、請求項8ないし11のいずれかの発明と同様の効果を得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
この発明において、エンジンは、燃料を燃焼させて熱エネルギを発生させ、その熱エネルギを運動エネルギに変換して動力として出力する動力装置であって、このエンジンとしては内燃機関、例えば、ガソリンエンジン、LPGエンジン、メタノールエンジンなどを用いることが可能である。この発明において、電動機は、電気エネルギを運動エネルギに変換して動力として出力する動力装置であり、この電動機は、直流電動機、または交流電動機のいずれでもよい。また、電動機としては、電動機としての機能(力行機能)と発電機としての機能(回生機能)とを兼備したモータ・ジェネレータを用いることも可能である。つまり、この発明は動力の発生原理が異なる複数種類の動力源を有し、たとえば、ハイブリッド車に用いることが可能である。この発明において、ベルト式無段変速機は、プライマリプーリと、このプライマリプーリと平行に配置されたセカンダリプーリと、前記プライマリプーリおよび前記セカンダリプーリに巻き掛けられた無端状のベルトとを有する。ここで、ベルトは、圧縮力により動力伝達をおこなう構成の巻き掛け伝動部材、または、引っ張り力により動力伝達をおこなう巻き掛け伝動部材のいずれでもよい。そして、このベルト式無段変速機においては、入力回転数と出力回転数との比、すなわち変速比を無段階に(連続的に)変更可能である。
【0041】
さらに、前記セカンダリプーリと、デファレンシャルの入力部材とが動力伝達可能に接続される。さらに、前記デファレンシャルにおいては、第1出力部材と第2出力部材との差動回転が可能となる構成を有している。ここで、差動回転とは、回転数に差が生じることである。この発明は、二輪駆動車または四輪駆動車に適用可能であり、二輪駆動車に用いる場合、第1出力部材と第2出力部材とが、左右の車輪に別々に動力伝達可能に連結される。これに対して、この発明を四輪駆動車に用いる場合、デファレンシャルはいわゆるセンターデファレンシャルとなり、前記第1出力部材と第2出力部材とが、前輪と後輪とに別々に動力伝達可能に連結される。
【0042】
この発明においては前記電動機の動力が、ベルト式無段変速機を経由してデファレンシャルに伝達されるように構成されている。具体的には、前記電動機のロータが、前記ベルト式無段変速機のプライマリシャフト、またはセカンダリシャフトに対して動力伝達可能に接続されている。すなわち、エンジンおよび電動機が、共に同じ車輪に伝達されるように動力伝達経路が構成されている。この電動機のロータの動力を前記デファレンシャルの入力部材に伝達する伝動部材は回転要素であり、その伝動部材を備えた伝動装置として、歯車伝動装置、巻き掛け伝動装置、トラクション伝動装置などを用いることが可能である。前記歯車伝動装置は、歯車同士の噛み合い力により動力伝達をおこなう装置であり、特に、平行軸式の歯車伝動装置を用いることが可能である。前記巻き掛け伝動装置には、プーリにベルトを巻き掛けた装置、スプロケットにチェーンを巻き掛けた装置が含まれる。前記トラクション伝動装置は、ローラ同士の間に作動油を介在させて、その作動油のせん断力で動力伝達をおこなうことの可能な装置である。
【0043】
そして、この発明において、伝動部材には、歯車、スプロケット、チェーン、ローラ、回転軸、プーリ、キャリヤ、コネクティングドラムなどの回転要素が含まれる。また、この発明において「伝動部材を軸受により支持する」とは、上記の歯車、プーリ、スプロケット、ローラなどの回転要素を、セカンダリプーリを介して間接的に回転可能に支持することである。さらにまた、上記の伝動装置として、前記電動機のロータの回転数を、前記デファレンシャルの入力部材の回転数で除して求められる変速比が、「1」よりも大きくなる構成の減速機能を有するものを用いることが可能である。さらにまた、上記の伝動装置としては、前記電動機のロータの回転数を、前記デファレンシャルの入力部材の回転数で除して求められる変速比が固定された構成の伝動装置、または前記変速比を変更可能な伝動装置を用いることができる。すなわち、前記伝動装置が変速機としての機能を有していてもよい。ここで、変速機としては常時噛み合い式変速機、選択歯車式変速機、遊星歯車式変速機などを用いることが可能である。
【0044】
さらに、この発明において動作機構は、回転軸線方向における可動片の位置を制御するアクチュエータであり、この動作機構としては、例えば、油圧制御式のアクチュエータを用いることが可能である。この発明においては、前記伝動部材および中間伝動部材を、相互に噛合された歯車列により構成することが可能である。また、この発明において、前記伝動部材および中間伝動部材を、相互に作動油を介在させて接触された複数のローラにより構成することが可能である。この発明において、第1ケーシングおよび第2ケーシングおよび第3ケーシングは、結合・分割可能に構成された中空部材もしくはカバーであり、ベルト式無段変速機およびモータ・ジェネレータおよびデファレンシャルなどを収容し、または回転要素を支持する固定構造物である。したがって、各ケーシングには、ケーシング自体の他に、ハウジングまたは板状部材またはブラケットまたは仕切り壁または隔壁などの構成が含まれる。さらに、この発明において、回転軸線に沿った方向で、2つの領域同士が少なくとも一部が重なっていればよい。
【0045】
また、この発明において、「第2ケーシングと第3ケーシングとにより中間伝動部材を挟み付けて支持する」とは、第2ケーシングと第3ケーシングとを接触させて固定した場合に、前記中間伝動部材である歯車またはローラが、第2ケーシングおよび第3ケーシングにより、直接または間接に回転可能に支持することである。さらに、この発明において、「第2ケーシングに形成された軸孔の内径が、中間伝動部材の外径よりも大きく構成されている」とは、軸孔の内径が、中間伝動部材である歯車の外径、または中間伝動部材であるローラの外径よりも大きいことである。つまり、回転軸線に沿った方向において、前記中間伝動部材が軸孔を通過可能に構成されている。この発明において、全ての回転軸線は略水平方向に配置されている。この発明において、第1支持部材および第2支持部材および第3支持部材は、結合・分割可能に構成されたケーシングまたは中空部材もしくはカバーであり、ベルト式無段変速機およびモータ・ジェネレータおよびデファレンシャルなどを収容し、または回転要素を支持する固定構造物である。したがって、各支持部材には、ケーシングまたはハウジングまたは板状部材またはブラケットまたは仕切り壁または隔壁などの構成が含まれる。これらの第1支持部材および第2支持部材は、結合(組み立て)・分解可能に構成されており、ボルト、ナットなどの固定機構により固定される。さらに、この発明において、回転要素同士がスプライン嵌合されており、これは回転要素同士を一体回転可能に連結する機構であり、セレーション結合であっても技術的意義は同じである。以下、ハイブリッド駆動装置の具体例を図面に基づいて説明する。
【0046】
(具体例1)
図1は、ハイブリッド駆動装置を車両1に用いた場合の概略を示すスケルトン図、図2ないし4は、図1に示された車両のパワートレーンの要部を示し、回転軸線に沿った方向における断面図である。ここで説明する車両1は、エンジンの動力が前輪に伝達されるように構成された、いわゆる、フロントエンジン・フロントドライブ形式の車両である。まず、車両1における第1駆動力源としてのエンジン2が設けられており、このエンジン2としては内燃機関、具体的にはガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジンなどが用いられる。このエンジン2は、燃料を燃焼させてその熱エネルギをクランクシャフト3の運動エネルギとして出力する動力装置である。このエンジン2の出力軸であるクランクシャフト3は、車両1の幅方向(左右方向)に配置されている。このクランクシャフト3の回転軸線A1は、略水平に配置されている。また前記エンジン2の出力側には、トランスアクスル4が設けられている。このトランスアクスル4は、ケーシング5の内部に、ダンパ機構6および前後進切換装置7およびベルト式無段変速機8およびモータ・ジェネレータ9およびデファレンシャル10を組み込んだユニットである。
【0047】
前記ケーシング5は、トランスアクスルハウジング11とトランスアクスルケース12とリヤカバー13とデフハウジング14とを有している。そして、前記トランスアクスルハウジング11およびトランスアクスルケース12およびリヤカバー13のうち、前記回転軸線A1に沿った方向で前記エンジン2に最も近い位置に前記トランスアクスルハウジング11が配置されており、前記エンジン2から最も離れた位置にリヤカバー13が配置され、トランスアクスルハウジング11とリヤカバー13との間に、トランスアクスルケース12が配置されている。さらに、前記回転軸線A1に沿った方向で、前記エンジン2の配置領域と、前記デフハウジング14の配置領域とが重なっている。そして、前記トランスアクスルハウジング11が前記エンジン2の外壁に固定されている。また、前記トランスアクスルハウジング11とトランスアクスルケース12とが図示しない固定部材、例えば、ボルトおよびナットにより締め付け固定されている。また、トランスアクスルケース12とリヤカバー13とが、図示しない固定部材、例えばボルトまたはナットなどにより締め付け固定されている。さらに、前記トランスアクスルハウジング11とデフケース14とが、図示しない固定部材、例えばボルトまたはナットなどにより締め付け固定されている。上記のトランスアクスルハウジング11およびトランスアクスルケース12およびリヤカバー13およびデフハウジング14は、何れも金属材料、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鋳鉄などにより構成されている。
【0048】
前記ダンパ機構6はエンジントルクの変動を吸収もしくは減衰するトーショナルダンパであり、このダンパ機構6は、前記トランスアクスルハウジング11内に配置されている。また、前記トランスアクスルハウジング11およびトランスアクスルケース12およびリヤカバー13の内部に亘ってインプットシャフト15が配置されており、このインプットシャフト15は前記回転軸線A1を中心として回転可能である。そして、前記クランクシャフト3と前記インプットシャフト15との間の動力伝達経路に、前記ダンパ機構6が設けられている。具体的には、前記クランクシャフト3にはフライホイール16が取り付けられており、前記ダンパ機構6の外周側を構成するプレートが、前記フライホイール16の外周に連結されている。また、前記ダンパ機構6の内周側にはトルクリミッタ17を介してハブ18が取り付けられており、そのハブ18が前記インプットシャフト15にスプライン嵌合されている。さらに前記トランスアクスルハウジング11内には壁部19が形成されており、その壁部19の軸孔に前記インプットシャフト15が配置されている。そして、前記回転軸線A1に沿った方向で、前記壁部19とエンジン2との間に前記ダンパ機構6およびトルクリミッタ17およびハブ17などが配置されている。
【0049】
前記前後進切換装置7は、前記インプットシャフト15の回転方向に対して、前記ベルト式無段変速機8のプライマリシャフト20の回転方向を正逆に変更する装置であり、この前後進切換装置8は、前記リヤカバー13および前記トランスアクスルケース12の内部に亘って配置されている。この前後進切換装置7は、ダブルピニオン型の遊星歯車機構を有している。この遊星歯車機構は、前記インプットシャフト15と一体回転するサンギヤ21と、このサンギヤ21の外周側に、サンギヤ21と同軸上に配置されたリングギヤ22と、前記サンギヤ21に噛み合わされたピニオンギヤ23と、このピニオンギヤ23およびリングギヤ22に噛み合わされたピニオンギヤ24と、2個のピニオンギヤ23,24を自転可能に、かつ、公転可能な状態で保持したキャリヤ25とを有している。そして、このキャリヤ25と、ベルト式無段変速機8のプライマリシャフト20とが一体回転するように連結されている。
【0050】
また、前後進切換装置7は、前進クラッチ26および後退ブレーキ27を有している。この前進クラッチ26は、前記インプットシャフト20と前記キャリヤ25とを選択的に連結・解放するものであり、摩擦クラッチ、電磁クラッチ、噛み合いクラッチなどを用いることが可能である。この具体例では、前進クラッチ26として、油圧制御式の摩擦クラッチを用いた場合を説明する。つぎに、前記後退ブレーキ27について説明する。この後退ブレーキ27は、前記リングギヤ22に制動力を与えてそのリングギヤ22を選択的に固定するものであり、摩擦ブレーキ、電磁ブレーキなどを用いることが可能である。この具体例では、後退ブレーキ27として油圧制御式の摩擦ブレーキを用いた場合を説明する。
【0051】
上記のように構成された前後進切換装置7において、前記クラッチ用油圧室(図示せず)の油圧が上昇すると、前進クラッチ26の伝達トルクが高められて、前記インプットシャフト20と前記キャリヤ25とが一体回転可能となる。すなわち前進クラッチ26が係合される。これに対して、前記クラッチ用油圧室の油圧が低下された場合は、前進クラッチ26の伝達トルクが低下し、前記インプットシャフト20と前記キャリヤ25との間における動力伝達が遮断される。すなわち前進クラッチ26が解放される。一方、前記ブレーキ用油圧室(図示せず)の油圧が上昇すると、前記後退ブレーキ27が係合されて、前記リングギヤ22に与えられる制動力が高められ、そのリングギヤ22が固定される。これに対して、前記ブレーキ用油圧室の油圧が低下された場合は、前記後退ブレーキ27が解放されて前記リングギヤ22に与えられる制動力が低下し、前記リングギヤ22が回転可能となる。
【0052】
つぎに、前記ベルト式無段変速機8の配置位置および構成を説明する。このベルト式無段変速機8は、前記トランスアクスルハウジング11および前記トランスアクスルケース12の内部に亘って配置されている。また、前記ベルト式無段変速機8は、前記プライマリシャフト20の他に、セカンダリシャフト28を有しており、前記プライマリシャフト20は前記回転軸線A1を中心として回転可能に構成されている。また、セカンダリシャフト28は回転軸線B1を中心として回転可能に構成されている。そして、前記回転軸線A1と回転軸線B1とは相互に平行である。また、図5は、回転軸線A1,B1と垂直な平面方向に沿った概念図である。この図5に示すように、前記回転軸線A1よりも前記回転軸線B1の方が、車両1の高さ方向で下方に配置されている。また、前記回転軸線A1,B1は共に車両1の幅方向または左右方向に沿って配置されており、車両1の前後方向で、回転軸線A1よりも後方に回転軸線B1が配置されている。
【0053】
さらに、前記プライマリシャフト20は、前記回転軸線A1に沿った方向で、前記前後進切換装置7と前記ダンパ機構6との間に配置されている。そして、前記プライマリシャフト20は2個の軸受29,30により回転可能に支持されており、2個の軸受29,30は回転軸線A1に沿った方向で異なる位置に配置されている。さらに、前記トランスアクスルハウジング11の内面に連続する壁部31と、前記トランスアクスルケース12の内面に連続する壁部32とが設けられている。前記壁部31と壁部32とは回転軸線A1に沿った方向で異なる位置に配置されており、前記軸受29の外輪が壁部31で保持され、軸受30の外輪が壁部32で保持されている。
【0054】
また、前記プライマリシャフト20と一体回転するプライマリプーリ33が設けられている。図2に示すように、前記プライマリプーリ33は、前記プライマリシャフト20の外周に、半径方向に突出するように連続して形成された固定片34と、前記プライマリシャフト20の外周に取り付けられ、かつ、前記プライマリシャフト20に対して回転軸線A1に沿った方向に移動できるように構成された可動片35とを有している。この可動片35は環状体に外向きのフランジ部を形成したものである。そして、前記固定片34と前記可動片35との間にV字形状の溝36が形成されている。さらに、前記回転軸線A1に沿った方向で、2個の軸受29,30の間に前記プライマリプーリ33が配置されている。また、前記回転軸線A1に沿った方向で、前記壁部31と固定片34との間に前記可動片35が配置されている。
【0055】
つぎに、前記プライマリプーリ33の溝36の幅を制御する油圧サーボ機構37について説明すると、この油圧サーボ機構37は、前記プライマリシャフト20と一体回転するプライマリシリンダ38と、そのプライマリシリンダ38と前記可動片35との間に形成されたプライマリ油圧室39とを有している。そして、前記プライマリシャフト20および可動片35には油路(図示せず)が形成されており、その油路を経由してプライマリ油圧室39にオイルが供給され、またはプライマリ油圧室39のオイルが油路を経由して排出されるように構成されている。そして、前記プライマリ油圧室39の油圧に基づいて、前記可動片37に対して、前記回転軸線A1に沿った方向の推力が与えられる。具体的には、前記プライマリ油圧室39の油圧が高められた場合は、前記可動片37を前記固定片34に近づける向きの推力が増加し、前記プライマリプーリ33の溝36の幅を狭めることが可能である。これに対して、前記プライマリ油圧室39の油圧が低下された場合は、前記可動片35を前記固定片34に近づける向きの推力が低下し、前記プライマリプーリ33の溝36の幅を広げることが可能である。さらに、前記プライマリ油圧室39の油圧が略一定である場合は、前記可動片35を前記固定片34に近づける向きの推力が略一定に制御される。
【0056】
一方、前記セカンダリシャフト28には、そのセカンダリシャフト28と一体回転するセカンダリプーリ40が設けられている。図2に示すように、前記セカンダリプーリ40は、前記セカンダリシャフト28の外周に、半径方向に突出するように連続して形成された固定片41と、前記セカンダリシャフト28の外周に取り付けられ、かつ、前記セカンダリシャフト28に対して前記回転軸線B1に沿った方向に移動できるように構成された可動片42とを有している。そして、前記固定片41と前記可動片42との間にV字形状の溝43が形成されている。
【0057】
また、前記セカンダリシャフト28は、2個の軸受44,45により回転可能に支持されている。2個の軸受44,45は、前記回転軸線B1に沿った方向で異なる位置に配置されており。一方の軸受45の外輪は前記トランスアクスルハウジング11により支持されており、他方の軸受44の外輪は前記トランスアクスルケース12により支持されている。そして、前記回転軸線B1に沿った方向で、2個の軸受44,45の間に前記セカンダリプーリ33が配置されている。また、前記回転軸線B1に沿った方向で、前記軸受45の配置領域と前記フライホイール16の配置領域とが一部で重なっている。さらに、前記回転軸線B1に沿った方向で、前記プライマリプーリ33の配置領域と前記セカンダリプーリ40の配置領域とが一部で重なっている。さらに、前記回転軸線B1に沿った方向で、前記壁部19の配置領域と前記セカンダリプーリ40の配置領域とが異なっている。
【0058】
つぎに、前記セカンダリプーリ40の溝43の幅を制御する油圧サーボ機構46について説明すると、この油圧サーボ機構46は、前記セカンダリシャフト28と一体回転するセカンダリシリンダ47と、このセカンダリシリンダ47と前記可動片42との間に形成されたセカンダリ油圧室48とを有している。また、セカンダリ油圧室48内には、圧縮コイルばね49が設けられている。前記セカンダリシリンダ47は環状に構成されており、この前記セカンダリシリンダ47は、略一定の外径を有する円筒部50と、その円筒部50に連続され、かつ、外径が拡大するように傾斜されたテーパ部51とを有している。
【0059】
このように、前記セカンダリ油圧室48の油圧、および圧縮コイルばね49の押圧力に基づいて、前記可動片42に対して、前記回転軸線B1に沿った方向の推力が与えられる構成となっている。そして、前記セカンダリ油圧室48の油圧が高められた場合は、前記可動片42を前記固定片41に近づける向きの推力が増加し、前記セカンダリプーリ40の溝43の幅を狭めることが可能である。これに対して、前記セカンダリ油圧室48の油圧が低下した場合は、前記可動片42を前記固定片41に近づける向きの推力が低下する。さらに、前記セカンダリ油圧室48の油圧が略一定に制御された場合は、前記可動片42を前記固定片14に近づける向きの推力が略一定となる。上記のように構成されたプライマリプーリ33およびセカンダリプーリ40に、無端状のベルト52が巻き掛けられている。この具体例1では、ベルト52が、環状のキャリヤと、このキャリヤの円周方向に積層された多数のブロック(エレメント)とを有しており、圧縮力により動力伝達がおこなわれるように構成されている。
【0060】
さらに前記セカンダリシャフト28の外周には、このセカンダリシャフト28と一体回転する環状部材53が取り付けられている。具体的に説明すると、前記セカンダリシャフト28には全周に亘って半径方向の段部54が形成されており、ロックナット55の締め付けにより、前記段部54とロックナット55との間に、前記環状部材53および前記セカンダリシリンダ47の内周端が挟み付けられている。このようにして、前記回転軸線B1に沿った方向で、前記環状部材53が位置決め固定されている。前記環状部材53には外向きのフランジ部56が形成されており、その外向きのフランジ部56の外周端から回転軸線B1に沿った方向に延ばされた円筒部57が設けられている。この円筒部57の内径は、前記セカンダリシリンダ47の円筒部50の外径よりも大きく構成されているとともに、前記回転軸線B1に沿った方向における円筒部57の内側に、前記セカンダリシリンダ47の一部が配置されている。つまり、前記回転軸線B1に沿った方向で、前記円筒部57の配置領域の一部と、前記セカンダリシリンダ47の配置領域の一部とが重なっている。そして、前記環状部材53の円筒部57の外周にドリブンギヤ58が形成されている。このドリブンギヤ58の外径は、前記軸受44,45の外径よりも大きく構成されている。前記回転軸線B1に沿った方向において、前記壁部19の配置領域と前記ドリブンギヤ58の配置領域とが一部で重なっている。また、回転軸線B1を中心とする半径方向で、前記壁部19の配置領域と前記ドリブンギヤ58の配置領域とが一部で重なっている。なお、前記ドリブンギヤ58と前記壁部19とが非接触であることは勿論である。
【0061】
つぎに、前記トランスアクスルケース12およびトランスアクスルハウジング11の内部に亘って設けられているモータ・ジェネレータ9の構成を、図3に基づいて説明する。このモータ・ジェネレータ9は、前記デファレンシャル10に伝達する動力を発生する動力装置であり、モータ・ジェネレータ9としては、例えば3相交流型のものを用いることが可能である。このモータ・ジェネレータ9は、インバータ(図示せず)を介して電力装置(図示せず)に接続されている。この電力装置は、モータ・ジェネレータ9に電力を供給する装置である。上記電力装置としては、例えば、蓄電装置または燃料電池などを用いることが可能である。前記蓄電装置としては二次電池、例えばバッテリまたはキャパシタを用いることができる。前記モータ・ジェネレータ9は回転不可能に固定されたステータ59と、回転軸線D1を中心とする半径方向で、前記ステータ59の内側に設けられたロータ60とを有している。また、前記ステータ59は、積層された多数の電磁鋼板59Aに電磁コイル59Bを巻き付けて構成されており、そのステータ59は、前記トランスアクスルケース12およびトランスアクスルハウジング11により挟み付けられて、前記回転軸線D1に沿った方向および半径方向に位置決め固定されている。前記ロータ60は、軸部61と、この軸部61に接合されたホルダ60Bと、このホルダ60Bに取り付けられ、かつ、厚さ方向に積層された多数の電磁鋼板60Aとを有している。このように構成されたモータ・ジェネレータ9は、正方向と逆方向との間で、回転方向の切り換えが可能である。
【0062】
さらに前記軸部60は、2個の軸受62,63により回転可能に保持されている。2個の軸受62,63は、前記回転軸線D1に沿った方向で異なる位置に配置されている。そして、一方の軸受62の内輪がロータ60に固定され、その軸受62の外輪が、前記トランスアクスルケース12の凹部により保持されている。また、他方の軸受63の内輪がロータ60に固定され、その軸受63の外輪が、前記トランスアクスルハウジング11の凹部により保持されている。このようにして、前記ロータ60は、2個の軸受62,63を介在させて、前記トランスアクスルケース12および前記トランスアクスルハウジング11により、前記回転軸線D1に沿った方向、および前記回転軸線D1を中心とする半径方向に位置決め固定されている。このようにして、前記ステータ59を構成する電磁鋼板59Aと、ロータ60を構成する電磁鋼板60Aとの隙間量、具体的には半径方向の隙間量が決定され、かつ、前記回転軸線D1に沿った方向における電磁鋼板59Aと電磁鋼板60Aとのオーバーラップ量が決定されている。そして、前記回転軸線D1に沿った方向で、前記モータ・ジェネレータ9の配置領域と、前記セカンダリプーリ40の配置領域とが重なっている。
【0063】
また、図5に示すように、前記モータ・ジェネレータ9のロータ60の回転軸線D1は、前記2本の回転軸線A1,B1よりも上方に配置され、かつ、車両1の前後方向で、回転軸線A1よりも後方に、かつ、回転軸線B1よりも前方に配置されている。そして、回転軸線A1と回転軸線B1とを結ぶ直線E1と、回転軸線A1と回転軸線D1とを結ぶ直線F1と、回転軸線D1と回転軸線B1とを結ぶ直線G1とにより、鋭角三角形が構成されている。つまり、直線E1と直線F1とのなす内角α1、直線E1と直線G1とのなす内角α2、直線Fと直線G1とのなす内角α3が、全て鋭角となっている。また、前記ロータ60の回転角度および回転数を検出するレゾルバ91が設けられている。このレゾルバ91は、前記トランスアクスルケース12に取り付けられたステータ92と、前記軸部61に取り付けられたステータ93とを有しており、このレゾルバ91から検出信号が出力される。
【0064】
つぎに、前記ロータ60と前記ドリブンギヤ58との間の動力伝達経路の構成を説明する。まず、前記軸部61にはドライブギヤ64が設けられており、前記回転軸線D1と平行な回転軸線C1を中心として回転可能なアイドラ軸65が設けられている。このアイドラ軸65は、2個の軸受66,67により回転可能に保持されている。一方の軸受66の外輪は、前記トランスアクスルハウジング11の内面に連続した壁部94の凹部により保持されており、他方の軸受67の外輪は、前記デフハウジング14の凹部により支持されている。上記のアイドラ軸65にはアイドラギヤ68が形成されており、そのアイドラギヤ68が、前記ドライブギヤ64およびドリブンギヤ58に噛合されている。前記回転軸線B1に沿った方向において、前記ドライブギヤ64およびアイドラギヤ68およびドリブンギヤ58は同一の配置領域内に配置されている。
【0065】
このようにして、前記ドライブギヤ64およびアイドラギヤ68およびドリブンギヤ58により、前記モータ・ジェネレータ9のロータ60と前記セカンダリシャフト28との間を動力伝達可能に接続する伝動装置、具体的には、平行軸式の歯車伝動装置69が構成されている。そして、前記回転軸線B1に沿った方向で、前記エンジン2と前記モータ・ジェネレータ9との間に、前記歯車伝動装置69が配置されている。また、この歯車伝動装置69は、前記モータ・ジェネレータ9のトルクを前記セカンダリシャフト28に伝達する場合において、前記ロータ60の回転数と、前記セカンダリシャフト28の回転数との比、すなわち変速比が「1」よりも大きくなるなるように、ドライブギヤ64およびアイドラギヤ68およびドリブンギヤ58の歯数が構成されている。さらに、前記トランスアクスルハウジング11と前記デフケース14とを接触させて固定した状態で、前記回転軸線C1に沿った方向で、前記軸受67と前記アイドラギヤ68との間に軸孔70が形成されている。この軸孔70は前記回転軸線C1と垂直な平面内で略円形に構成されている。この軸孔70は、前記トランスアクスルハウジング11に設けられており、その軸孔70の内径よりも前記アイドラギヤ68の外径の方が小さく構成されている。
【0066】
つぎに、前記セカンダリシャフト28から前記デファレンシャル10に至る動力伝達経路に設けられた終減速機の構成を、図4に基づいて説明する。この具体例1では、終減速機71が前記デフハウジング14の内部に配置されており、その終減速機71が遊星歯車機構により構成されている。具体的に説明すると、前記セカンダリシャフト28と一体回転するように連結されたサンギヤ72と、このサンギヤ72に噛合された大径ピニオンギヤ73と、大径ピニオンギヤ73と同軸上に連結され、かつ、大径ピニオンギヤ73と一体回転する小径ピニオンギヤ74と、小径ピニオンギヤ74が噛合され、かつ、サンギヤ72と同軸上に配置されたリングギヤ75と、前記大径ピニオンギヤ73および小径ピニオンギヤ74を自転可能かつ公転可能に保持するキャリヤ76とを有している。前記リングギヤ75は前記デフハウジング14に対して回転不可能に取り付けられている。このように、前記終減速機71を構成する遊星歯車機構は、いわゆるステップドピニオン型の遊星歯車機構であり、入力回転数を出力回転数で除して求められる変速比が、「1」よりも大きくなる減速機能を有している。
【0067】
前記デファレンシャル10は前記デフハウジング14内に設けられており、このデファレンシャル10は、前記回転軸線B1を中心として回転可能に設けられたデフケース77と、このデフケース77に取り付けられたピニオンシャフト78と、ピニオンシャフト78に回転可能に取り付けられた2個のピニオンギヤ79と、2個のピニオンギヤ79に噛合された2個のサイドギヤ80,81と、2個のサイドギヤ80,81にそれぞれ連結されたアクスルシャフト82,83とを有している。前記デフケース77が軸受84により回転可能に支持されており、前記キャリヤ76が軸受85により回転可能に支持されている。一方のアクスルシャフト82は、前記セカンダリシャフト28内に配置されており、そのセカンダリシャフト28とアクスルシャフト82とが相対回転可能に構成されている。さらに、図2に示すように、前記セカンダリシャフト28内にはアクスルシャフト82を保持する軸受86が取り付けられている。このように構成されたデファレンシャル10においては、前記アクスルシャフト82,83が何れも回転軸線B1を中心として回転可能である。そして、一方のアクスルシャフト82にはドライブシャフト87を介在させて車輪(左前輪)88が取り付けられており、他方のアクスルシャフト83にはドライブシャフト89を介在させて車輪(右前輪)90が取り付けられている。このように、具体例1においては、各回転軸線同士が非同軸上に、かつ、相互に平行に配置されている。
【0068】
つぎに、ハイブリッド駆動装置の作用および制御を説明する。例えば、車速およびアクセル開度、エンジン回転数、レゾルバ91の検出信号などの信号が電子制御装置に入力され、入力信号および予め記憶されているデータまたはマップなどに基づいて、車両1における要求駆動力が、前記電子制御装置で求められる。この要求駆動力に基づいて、目標エンジン出力およびモータ・ジェネレータ9の目標出力が制御される。まず、前記エンジン2が運転された場合、前記クランクシャフト3のトルクが前記インプットシャフト15に伝達される。この場合、エンジントルクの変動が前記ダンパ機構6により減衰される。
【0069】
つぎに、前後進切換装置7の制御を説明する。まず、前進ポジションが選択された場合は、前進クラッチ26が係合され、かつ、前記後退ブレーキ27が解放される。すると、前記インプットシャフト15のトルクにより、前記キャリヤ25および前記サンギヤ21が一体回転し、前記インプットシャフト15のトルクがキャリヤ25を経由して前記プライマリシャフト20に伝達される。つまり、前記サンギヤ21が入力要素となり、かつ、前記キャリヤ25が出力要素となる。このようにして、前記インプットシャフト15のトルクが、前記ベルト式無段変速機8のプライマリシャフト20に伝達される。
【0070】
ここで、前記ベルト式無段変速機8の変速比の制御を説明する。前記のように、要求駆動力に基づいて、目標エンジン出力が求められ、その目標エンジン出力を最適燃費で達成するように、目標エンジン回転数および目標エンジントルクが求められる。そして、実エンジン回転数を目標エンジン回転数に近づけるように、前記ベルト式無段変速機8の変速比が制御される。具体的には、プライマリ油圧室39の油圧を制御することにより、前記プライマリプーリ33の溝36の幅が調整される。その結果、前記プライマリプーリ33におけるベルト52の巻き掛け半径が変化し、前記プライマリシャフト20の回転数と、前記セカンダリシャフト28の回転数との比、すなわち変速比が無段階(連続的)に制御される。さらに、前記セカンダリ油圧室48の油圧を制御することにより、前記セカンダリプーリ40の溝43の幅が変化する。このようにして、前記ベルト52に対する前記セカンダリプーリ40の挟圧力(言い換えれば挟持力)が制御され、伝達トルクが制御される。この具体例1では、前記プライマリシャフト20のトルクがベルト52を構成するエレメント同士の圧縮力に変換され、その圧縮力が前記セカンダリプーリ40に伝達されて、前記セカンダリシャフト28を回転させようとするトルクが発生する。
【0071】
さらに、前記セカンダリシャフト28にトルクが伝達された場合、そのトルクが前記終減速機71の入力要素であるサンギヤ72に伝達される。このサンギヤ72に伝達されたトルクは、前記大径ピニオンギヤ73および小径ピニオンギヤ74に伝達されて、固定されている前記リングギヤ75が反力要素となり、前記キャリヤ76からトルクが出力される。この終減速機71においては、前記サンギヤ72の回転数よりもキャリヤ76の回転数の方が低くなる。すなわち、終減速機71の変速比が「1」よりも大きくなり、入力トルクに対して出力トルクが増幅される。そして、前記キャリヤ76から出力されたトルクは、前記デファレンシャル10のデフケース77に伝達されて、そのデフケース77のトルクが、前記ピニオンシャフト78およびピニオンギヤ79を経由して、前記2個のサイドギヤ80,81にそれぞれ伝達される。そして、前記サイドギヤ80のトルクが前記アクスルシャフト82および前記ドライブシャフト87を経由して前記車輪88に伝達されるとともに、前記サイドギヤ81のトルクが前記アクスルシャフト83および前記ドライブシャフト89を経由して車輪90に伝達されて、駆動力が発生する。また、前記デファレンシャル10においては、2個のサイドギヤ80,81が前記ピニオンギヤ79に噛合されているため、前記車両1が旋回走行する場合などにおいて、前記車輪88と前記車輪90との差動回転が許容される。すなわち、前記車輪88の回転数と、前記車輪90の回転数に差が生じることが許容される。
【0072】
さらに、前記前進ポジションが選択されている場合において、前記要求駆動力に基づいて、前記モータ・ジェネレータ9の目標出力も求められている。そして、前記エンジントルクの不足分を、前記モータ・ジェネレータ9のトルクで補うことが可能である。この場合、前記モータ・ジェネレータ9に電力が供給されて電動機として駆動され、このモータ・ジェネレータ9から出力されたトルクが、前記歯車伝動装置69を経由して前記セカンダリシャフト28に伝達される。このようにして、前記エンジン2の動力と前記モータ・ジェネレータ9の動力とを、前記セカンダリシャフト28で合成し、そのトルクを車輪88,90に伝達することができる。
【0073】
前記モータ・ジェネレータ9のトルクを前記セカンダリシャフト28に伝達する場合、前記歯車伝動装置69の変速比は「1」よりも大きいため、前記モータ・ジェネレータ9のトルクが増幅されて前記セカンダリシャフト28に伝達される。また、この具体例1においては、前記要求駆動力に基づいて、前記エンジン2を停止させ、かつ、前記モータ・ジェネレータ9を電動機として駆動する制御(電気自動車モード)を選択することも可能である。この電気自動車モードが選択された場合、前記モータ・ジェネレータ9から出力されたトルクが前記車輪88,90に伝達されて、駆動力が発生する。また、電気自動車モードが選択された場合、前記前進クラッチ26および前記後退ブレーキ27は共に解放される。したがって、前記モータ・ジェネレータ9の動力の一部が、前記ベルト式無段変速機8を経由して前記インプットシャフト15に伝達されることを回避できる。
【0074】
つぎに、後退ポジションが選択された場合について説明する。この場合は、前後進切換装置7において、前進クラッチ26が解放され、かつ、前記後退ブレーキ27が係合される。すなわち、前記リングギヤ22が固定される。そして、前記エンジントルクが前記インプットシャフト15に伝達された場合、前記リングギヤ22が反力要素となり、前記キャリヤ25が前記サンギヤ21とは逆方向に回転される。このキャリヤ25のトルクは、前進ポジションが選択された場合と同様の経路を経由して車輪88,90に伝達されて駆動力が発生する。なお、この後退ポジションが選択された場合も、前記モータ・ジェネレータ9を電動機として駆動させ、そのトルクを前記セカンダリシャフト28に伝達する制御を実行可能である。なお、後退ポジションが選択された場合におけるモータ・ジェネレータ9の回転方向は、前進ポジションが選択された場合とは逆方向に制御される。さらに、この後退ポジションが選択された場合も、前述と同様にして電気自動車モードを選択することが可能である。
【0075】
また、この具体例1においては、前記セカンダリシャフト28および前記デファレンシャル10のアクスルシャフト82,83が、共通の回転軸線B1を中心として同軸上に配置されている。このため、前記プライマリシャフト20の回転軸線A1および前記モータ・ジェネレータ9のロータ60の回転軸線D1と合わせて3本の回転軸線となっている。したがって、前記車両1の前後方向および高さ方向の何れにおいても、ハイブリッド駆動装置の占有スペースを狭めることができ、車載性が向上する。さらに、図5に示すように前記回転軸線A1,B1,D1を結ぶ直線C1,E1,F1により鋭角三角形が形成されるように、前記モータ・ジェネレータ9の配置位置が構成されている。具体的には、前記回転軸線A1,B1よりも回転軸線D1の方が上方に配置され、かつ、車両1の前後方向で、前記回転軸線A1および回転軸線B1の間に、前記回転軸線D1が配置されている。したがって、車両1の前後方向におけるハイブリッド駆動装置の占有スペースが一層狭められており、かつ体格の増加が抑えられている。さらに、回転要素の本数増加を抑制でき、大重量化、製造コストの上昇を抑制できる。
【0076】
さらにこの具体例1では、前記ドリブンギヤ58が形成された環状部材53が前記セカンダリシャフト28の外周に取り付けられており、そのセカンダリシャフト28が前記軸受44,45により支持されている。すなわち、前記環状部材53および前記セカンダリシャフト28を支持する軸受が共用化されている。したがって、回転要素を支持する軸受の個数を減らすことができ、ハイブリッド駆動装置の製造コストの上昇を抑制できる。さらには、前記回転軸線B1に沿った方向に軸受が多数直列に配置されることを回避でき、回転軸線に沿った方向に全長が増加することを抑制できる。さらに、ハイブリッド駆動装置が組み立てられた状態では、前記軸受44はトランスアクスルケース12に保持され、前記軸受45はトランスアクスルハウジング11に保持される構成となっているとともに、その軸受44と軸受45との間に、前記セカンダリプーリ40およびドリブンギヤ58が設けられている。このため、前記ハイブリッド駆動装置を組み立てる工程で、前記セカンダリシャフト28の外周に前記環状部材53を取り付けてロックナット55で締め付け、かつ、前記セカンダリシャフト28の外周に前記軸受44,45を取り付けてアッセンブリ(ユニット)を構成し、前記トランスアクスルハウジング11および前記トランスアクスルケース12により前記アッセンブリを挟み付けるようにして、ハイブリッド駆動装置を組み立てることができる。したがって、前記ドリブンギヤ58が前記トランスアクスルハウジング1の一部に接触することを回避できる。
【0077】
さらに、具体例1では、前記回転軸線B1に沿った方向で、前記可動片42と前記エンジン2との間に前記セカンダリシリンダ47および前記環状部材53が配置されており、その環状部材53の円筒部57が、セカンダリシリンダ47の円筒部50の半径方向の外側に配置されている。つまり、前記回転軸線B1に沿った方向で、前記セカンダリシリンダ47の配置領域の一部と、前記環状部材53の配置領域の一部とが重なっている。したがって、前記回転軸線B1に沿った方向における部品の配置スペースが狭められ、回転軸線方向におけるハイブリッド駆動装置の全長を短くできる。また、前記回転軸線B1に沿った方向で、前記ドリブンギヤ58およびアイドラギヤ68およびドライブギヤ64の配置領域が略同じに構成されている。さらに、前記回転軸線B1に沿った方向で、前記プライマリプーリ33およびセカンダリプーリ40およびモータ・ジェネレータ9の配置領域が重なっている。したがって、前記回転軸線B1に沿った方向における部品の配置スペースが狭められ、回転軸線方向におけるハイブリッド駆動装置の全長を一層短くできる。さらに、前記回転軸線B1と回転軸線D1との距離が同じであり、かつ、前記伝動装置69の変速比(減速比)を一定であるとすれば、前記ドリブンギヤ58の外径を大きくすることにより、前記アイドラギヤ68の外径を小さくすることが可能であり、アイドラシャフト65をコンパクトに配置することができる。
【0078】
また、この具体例1においては、車両1の発進時に、前述した電気自動車モードを選択し、ついで、前記前進クラッチ26のトルク容量を徐々に増加させ、かつ、エンジントルクを前記インプットシャフト20に伝達する制御をおこなうこともできる。このような制御をフリクションスタート制御と称する。このフリクションスタート制御をおこなうことにより、流体伝動装置などの発進クラッチを専用に設けずに済む。また、前記モータ・ジェネレータ9の動力のみでは駆動力が不足する場合、または前記モータ・ジェネレータ9に供給する電力が低い場合は、前記フリクションスタート制御をおこなうことにより、駆動力不足を補うことができる。さらに、前記のように流体伝動装置を設けずに済み、かつ、前記回転軸線B1に沿った方向において、前記壁部19および前記ダンパ機構6と、前記ドリブンギヤ58とが、その配置領域の一部が重なっているため、全長が増加することを抑制でき、車載性が向上する。
【0079】
さらにこの具体例1においては、前記アイドラシャフト65が軸受66,67により支持されており、一方の軸受67がデフハウジング14により支持されている。さらに、前記軸孔70の内径は前記アイドラギヤ68の外径よりも大きく構成されている。このため、ハイブリッド駆動装置が組み立てられている状態から、前記デフハウジング14と前記トランスアクスルハウジング11とを分解して、前記回転軸線C1に沿った方向に離脱させると、前記デフハウジング14に保持されたアイドラシャフト65のアイドラギヤ68が、前記軸孔70を通過して前記トランスアクスルハウジング11の外部に取り出される。このようにして、前記モータ・ジェネレータ9と前記ドリブンギヤ58との間における動力伝達を遮断することが可能であり、その状態で前記モータ・ジェネレータ9の機能および特性を検査する場合に、その検査制度の低下を抑制できる。
【0080】
ここで、前記モータ・ジェネレータ9の機能および特性検査としては、逆起電電圧測定、レゾルバ91の原点調整、レゾルバ91の原点ズレ量測定、前記モータ・ジェネレータ9の最大出力および効率測定、前記モータ・ジェネレータ9の無負荷状態での引き摺りトルクの測定などが挙げられる。また、前記モータ・ジェネレータ9の無負荷状態とは、力行制御または回生制御の何れもおこなっていない状態、つまり、ロータ60が空転可能な状態を指す。このように、モータ・ジェネレータ9の機能および特性を検査もしくは測定する場合、ロータ60を回転または空転させることとなるが、前記ロータ60と共に前記ベルト式無段変速機8の回転要素が引きずられて回転することを回避できる。また、前記ベルト式無段変速機8に潤滑油が供給されていない状態、すなわち、無潤滑状態で、ベルト式無段変速機8の回転要素が回転されて、焼き付くことを防止できる。
【0081】
この具体例1は、請求項1ないし6に相当するものであり、この具体例1に示された構成と、請求項1ないし6の発明における構成との対応関係を説明すると、エンジン2が、この発明のエンジンに相当し、プライマリプーリ33が、この発明のプライマリプーリに相当し、セカンダリプーリ40が、この発明のセカンダリプーリに相当し、ベルト52が、この発明のベルトに相当し、ベルト式無段変速機8が、この発明のベルト式無段変速機に相当し、デフケース77が、この発明における入力部材に相当し、サイドギヤ80およびアクスルシャフト82が、この発明における第1出力部材に相当し、サイドギヤ81およびアクスルシャフト83が、この発明における第2出力部材に相当し、デファレンシャル10が、この発明におけるデファレンシャルに相当し、モータ・ジェネレータ9が、この発明における電動機に相当し、回転軸線B1が、この発明における「セカンダリプーリの回転軸線」および「デファレンシャルの回転軸線」に相当し、クランクシャフト3およびフライホイール16が、この発明における「エンジンの出力軸」に相当し、回転軸線A1が、この発明における「エンジンの出力軸の回転軸線」および「プライマリプーリの回転軸線」に相当し、ロータ60が、この発明における電動機のロータに相当する。
【0082】
また、回転軸線D1が、この発明における電動機のロータの回転軸線に相当し、直線C1,E1,F1が、この発明における「直線」に相当し、軸受44が、この発明における第1の軸受に相当し、軸受45が、この発明における第2の軸受に相当し、前記環状部材53およびドリブンギヤ58が、この発明における伝動部材に相当し、可動片42が、この発明における「セカンダリプーリの可動片」に相当し、固定片41が、この発明における「セカンダリプーリの固定片」に相当し、油圧サーボ機構46が、この発明における動作機構に相当し、トランスアクスルケース12が、この発明における第1ケーシングに相当し、トランスアクスルハウジング11が、この発明における第2ケーシングに相当し、デフハウジング14が、この発明における第3ケーシングに相当し、アイドラシャフト61およびアイドラギヤ68が、この発明の中間伝動部材に相当し、前記軸孔70が、この発明における軸孔に相当する。
【0083】
(具体例2)
つぎに、ハイブリッド駆動装置の具体例2を、図6ないし図10に基づいて説明する。図6は、ハイブリッド駆動装置を有する車両のパワートレーンを示すスケルトン図、図7は、ハイブリッド駆動装置における回転軸線の位置関係を示す模式図、図8ないし図10は、ハイブリッド駆動装置の要部を示す断面図である。この具体例2において、具体例1と同様の構成部分については具体例1と同じ符号を付してある。すなわち、この具体例2においても、前記具体例1と同様に、ベルト式無段変速機8のセカンダリシャフト28と、デファレンシャル10とが、同一の回転軸線B1を中心として回転可能に構成されている。また、この具体例2と具体例1とを比較すると、前記ベルト式無段変速機8に対する前記モータ・ジェネレータ9の接続箇所が異なる。この具体例2では、前記モータ・ジェネレータ9と、前記ベルト式無段変速機8のプライマリシャフト15とが動力伝達可能に接続されている。
【0084】
具体的に説明すると、前記プライマリシャフト20の外周に、前記環状部材53の内筒部53Aがスプライン嵌合部53Bを介して取り付けられている。つまり、前記プライマリシャフト20と環状部材53とが一体回転可能に構成されており、その環状部材53の外周にドリブンギヤ58が形成されている。そして、前記モータ・ジェネレータ9のロータ60と、前記ドリブンギヤ58とが、前記ドライブギヤ64およびアイドラギヤ68により動力伝達可能に接続されている。前記環状部材53は、前記軸線A1に沿った方向で、前記ダンパ機構6と前記固定片34との間に配置されている。その環状部材53の内筒部53Aの外周に、前記軸受30の内輪が圧入固定されており、前記軸受30の外輪が前記壁部19により支持されている。また、前記ロータ60の軸部は軸受62,63により支持されており、一方の軸受62の外輪は前記トランスアクスルケース12により支持されている。これに対して、前記ケーシング5の内部には支持壁95が設けられており、この支持壁95が前記トランスアクスルケース12に対して、図示しない固定機構、例えばボルト、ナットなどを用いて固定されている。この支持壁95は、前記トランスアクスルハウジング11内に配置されている。そして、前記軸受63の外輪は前記支持壁95により支持されている。このようにして、前記ロータ60が回転軸線D1を中心として回転可能に支持されている。
【0085】
また、前記アイドラギヤ68が形成されたアイドラ軸65は、前記トランスアクスルハウジング11内に配置されており、このアイドラ軸65は軸受66,67により回転可能に支持されている。さらに、前記ケーシング5内には、前記回転軸線A1に沿った方向で、前記ダンパ機構6が配置された空間と、前記ベルト式無段変速機8が配置された空間とを仕切る壁部19が設けられている。この壁部19は前記トランスアクスルハウジング11に連続して設けられている。そして、軸受66の外輪は前記支持壁95により支持され、前記軸受67の外輪は前記壁部19により支持されている。つまり、前記アイドラ軸65が前記回転軸線C1を中心として回転可能に支持されている。このようにして、前記モータ・ジェネレータ9のロータ60と、前記プライマリシャフト20とが、伝動装置、具体的には平行軸式の歯車伝動装置69により動力伝達可能に接続されている。
【0086】
さらに、具体例2においても、回転軸線A1,B1,D1同士が相互に平行に配置されている。また、図7に示すように、回転軸線と垂直な平面内で、前記回転軸線A1と回転軸線D1とを結ぶ直線F1上に前記回転軸線C1が配置されている。すなわち、車両1の前後方向において、回転軸線A1よりも後方に、かつ、回転軸線D1よりも前方に前記回転軸線C1が配置されている。なお、図7におけるこれ以外の構成は、図5で説明した構成と同じである。また、具体例2において、前記モータ・ジェネレータ9および前記ベルト式無段変速機8前記歯車伝動装置69および前記前後進切換装置7および前記ダンパ機構6は、前記各回転軸線に沿った方向における位置関係が具体例1で説明した構成と同じである。このように、具体例2においては、各回転軸線同士が非同軸上に、かつ、相互に平行に配置されている。
【0087】
そして、この具体例2においても具体例1と同様にして、前記エンジン2または前記モータ・ジェネレータ9のうち、少なくとも一方の動力を車輪88,90に伝達する制御を実行可能である。また、この実施例2においては、前記モータ・ジェネレータ9が電動機として駆動されると、そのモータ・ジェネレータ9のトルクが前記歯車伝動装置69を経由して、前記ベルト式無段変速機8のプライマリシャフト20に伝達される。この具体例2においても、具体例1と同様の構成部分については、具体例1と同様の作用効果を得られる。また、この具体例2においては、前記プライマリシャフト20を支持する軸受30が前記環状部材53を支持する機能を兼備している。このため、回転要素を支持する軸受の数を減らすことができ、回転軸線に沿った方向でハイブリッド駆動装置の全長が増加することを抑制できる。また、前記回転軸線A1に沿った方向で、前記軸受29と軸受30との間に前記環状部材53が取り付けられる構成となっている。このため、ハイブリッド駆動装置の組み立て工程において、前記トランスアクスルケース12内にベルト式無段変速機8を設けかつ、プライマリシャフト20に環状部材53および軸受30を取り付けて、スナップリング(図示せず)をプライマリシャフト20に取り付けて、前記環状部材53および軸受30の位置決め固定をおこなったユニット(アッセンブリ)を構成し、ついで、トランスアクスルハウジング11をトランスアクスルケース12に固定するという作業をおこなうことができる。
【0088】
さらに、具体例2においては、前記プライマリシャフト20の回転軸線A1に沿った方向で、前記固定片34を隔てて前記エンジン2の配置位置とは反対側に前記可動片35が配置されている。また、前記回転軸線A1に沿った方向で、前記固定片34と前記エンジン2との間に前記歯車伝動装置69が配置されている。さらには、前記回転軸線A1に沿った方向で、前記ベルト式無段変速機8の配置領域と、前記モータ・ジェネレータ9の配置領域とが重なっている。これらの構成により、回転軸線A1に沿った方向におけるスペースを有効に利用できる。さらに、前記回転軸線A1に沿った方向で、前記環状部材53の内筒部53Aに軸受30が圧入された領域と、前記スプライン嵌合部53Cの形成領域とが重なっている。したがって、回転軸線に沿った方向でハイブリッド駆動装置の全長が増加することを抑制できる。また、前記環状部材53は前記プライマリシャフト20に対してスプライン嵌合されているため、前記プライマリプーリ33の変形による荷重が前記環状部材53には伝達されにくい。このため、前記ドリブンギヤ58の変形・偏心を抑制でき、歯車伝動装置69を構成する各ギヤ同士の噛み合い部分におけるギヤノイズの悪化、各ギヤ同士の強度の低下を低減できる。
【0089】
さらに、この具体例2では、前記アイドラ軸65が、前記支持壁95と前記トランスアクスルハウジング11とにより挟まれて支持されている。このため、前記トランスアクスルハウジング11と前記トランスアクスルケース12とを分解すれば、前記ドライブギヤ64と前記アイドラギヤ68との噛合が解除される。つまり、前記モータ・ジェネレータ9と前記プライマリシャフト20との間の動力伝達が遮断される。したがって、具体例1と同様に前記モータ・ジェネレータ9の機能および特性を検査する場合に、具体例1と同様の効果を得られる。さらに、前記モータ・ジェネレータ9が、プライマリシャフト20およびセカンダリシャフト28とは異なる軸上に配置されているため、モータ・ジェネレータ9の外径を大きくすることができる。したがって、モータ・ジェネレータ9の最大トルクを高くすることができ、電気自動車モードが選択された場合に発生する駆動力が向上する。
【0090】
この具体例2は、請求項1、請求項7ないし請求項11の発明に相当するものであり、この具体例2の構成と、この発明の構成との対応関係を説明すると、前記軸受29および軸受30が、この発明における第1の軸受および第2の軸受に相当し、可動片35が、この発明における可動片に相当し、固定片34が、この発明における固定片に相当し、回転軸線A1が、この発明におけるプライマリシャフトの回転軸線に相当し、油圧サーボ機構47が、この発明における動作機構に相当し、トランスアクスルケース12が、この発明における第1支持部材に相当し、支持壁95が、この発明における第2支持部材に相当し、トランスアクスルハウジング11が、この発明における第3支持部材に相当する。この具体例2において、その他の構成とこの発明の構成との対応関係は、具体例1とこの発明の構成との対応関係と同じである。
【0091】
(具体例3)
つぎに、ハイブリッド駆動装置の具体例3を、図11ないし図13に基づいて説明する。この具体例3においても、前記デファレンシャル10がセカンダリシャフトと同軸に配置されている構成は、具体例と同じである。また、具体例3において、前記モータ・ジェネレータ9が、前記プライマリシャフト20に対して動力伝達可能に接続されている構成は、具体例2と共通している。この具体例3と具体例2とを比較すると、前記モータ・ジェネレータ9のロータ60が、前記プライマリシャフト20と同軸上に配置されている構成が異なる。まず、モータ・ジェネレータ9は、前記回転軸線A1に沿った方向で、前記固定片34と前記ダンパ機構6との間に配置されている。また、前記モータ・ジェネレータ9のロータ60の構造を具体的に説明する。このロータ60のホルダ60Bは、内筒部60Cと、その内筒部60Cに連続する外向きフランジ60Dと、その外向きフランジ60Dの外周端に連続して形成された外筒部60Eとを有している。そして、前記プライマリシャフト28の外周面に形成された外歯(図示せず)と、前記内筒部60Cの内周に形成された内歯(図示せず)とが噛み合わされて、スプライン嵌合部97を形成している。このようにして、前記プライマリシャフト28とロータ60とが一体回転するように、かつ、共通の回転軸線A1を中心として回転可能に連結されている。
【0092】
一方、前記トランスアクスルハウジング11に設けられた壁部19は、前記回転軸線A1に沿った方向で、前記ステータ59の側方から、前記ロータ60に近づくように屈曲して構成されている。さらに、前記回転軸線A1に沿った方向で、前記壁部19の一部の配置領域と、前記モータ・ジェネレータ9の配置領域とが重なっている。そして、前記回転軸線A1を中心とする半径方向で、前記壁部19の一部が前記内筒部60Cと外筒部60Eとの間に配置されている。さらに、前記壁部19に形成された凹部により、前記軸受30の外輪が支持され、前記軸受30の内輪が前記内筒部60Cの外周に嵌合固定されている。このようにして、前記回転軸線A1に沿った方向で、前記スプライン嵌合部97の配置領域と、前記軸受30の配置領域とが重なっている。また、前記トランスアクスルハウジング11には、図13に示すように、前記壁部19に連続する円筒部98が形成されており、その円筒部98の内周に前記ステータ59が取り付けられている。そして、前記トランスアクスルハウジング11と前記トランスアクスルケース12とを結合固定することにより、前記ステータ59が半径方向および回転軸線A1に沿った方向に位置決め固定されている。
【0093】
なお、この具体例3において、前記セカンダリシャフト28およびセカンダリプーリ40の構造は、前記具体例2と同じである。また、前記デファレンシャル10の構造は、図10を用いて説明した具体例2の場合と同じである。この具体例3において、具体例1および具体例2と同様の構成部分については、具体例1および具体例2と同じ作用効果を得られる。また、具体例3においては、前記モータ・ジェネレータ9のロータ60と、前記プライマリシャフト20とが同軸上に配置されているため、ハイブリッド駆動装置が回転軸線A1を中心とする半径方向に大型化することを抑制できる。この具体例3においても、具体例1で説明した場合と同様に、エンジン2またはモータ・ジェネレータ9のうちの少なくとも一方を駆動させ、そのトルクを前記車輪88,90に伝達する制御を実行可能である。この具体例3は、請求項1の発明、請求項12ないし17のいずれかに対応しており、前記軸受29,30が、この発明における第1の軸受および第2の軸受に相当し、内筒部60Cが、この発明における「ロータの内筒部」に相当し、スプライン嵌合部97が、この発明のスプライン嵌合部に相当し、前記トランスアクスルケース12が、この発明の第1支持部材に相当し、トランスアクスルハウジング1が、この発明の第2支持部材に相当する。この具体例3で説明した構成と、この発明の他の構成との対応関係は、具体例1および具体例2と、この発明の構成との対応関係と同じである。
【0094】
上記の各具体例では、エンジンからベルト式無段変速機に至る動力伝達経路に、前後進切換装置が配置されているが、この発明は、ベルト式無段変速機から車輪に至る動力伝達経路に、前後進切換装置が配置されている車両にも適用可能である。さらに、前後進切換装置を構成する遊星歯車機構として、シングルピニオン式の遊星歯車機構を用いることも可能である。さらに、前後進切換装置として、平行軸歯車機構および噛み合いクラッチ機構を用いることも可能である。また、上記の具体例はいずれも、二輪駆動車であり、全ての回転軸線が車両の幅方向(左右方向)に配置されているが、この発明を四輪駆動車に用いて、エンジンおよびモータ・ジェネレータの動力を、デファレンシャル(センターデファレンシャル)を経由させて前進および後輪に分配するように構成することも可能である。この場合、全ての回転軸線が車両の前後方向に配置される。さらに、車両としては、乗用車、運搬車などが挙げられる。さらにまた、各具体例で用いられている軸受は、ラジアル軸受およびスラスト軸受としての機能を兼備している。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】この発明におけるハイブリッド駆動装置の具体例1に相当する車両のパワートレーンを示すスケルトン図である。
【図2】図1に示されたハイブリッド駆動装置の要部であり、プライマリプーリおよびセカンダリプーリの構成を示す断面図である。
【図3】図1に示されたハイブリッド駆動装置の要部であり、モータ・ジェネレータおよびセカンダリプーリの構成を示す断面図である。
【図4】図1に示されたハイブリッド駆動装置の要部であり、終減速機およびデファレンシャルの構成を示す断面図である。
【図5】図1に示されたハイブリッド駆動装置において、各回転軸線同士の位置関係を示す概念図である。
【図6】この発明におけるハイブリッド駆動装置の具体例2に相当する車両のパワートレーンを示すスケルトン図である。
【図7】図6に示されたハイブリッド駆動装置において、各回転軸線同士の位置関係を示す概念図である。
【図8】図6に示されたハイブリッド駆動装置の要部であり、プライマリプーリおよびモータ・ジェネレータの構成を示す断面図である。
【図9】図6に示されたハイブリッド駆動装置の要部であり、プライマリシャフトおよびセカンダリプーリの構成を示す断面図である。
【図10】図6に示されたハイブリッド駆動装置の要部であり、終減速機およびデファレンシャルの構成を示す断面図である。
【図11】この発明におけるハイブリッド駆動装置の具体例3に相当する車両のパワートレーンを示すスケルトン図である。
【図12】図11に示されたハイブリッド駆動装置の要部であり、プライマリプーリおよびモータ・ジェネレータの構成を示す断面図である。
【図13】図11に示されたハイブリッド駆動装置の要部であり、プライマリプーリおよびセカンダリプーリの構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0096】
2…エンジン、 3…クランクシャフト、 8…ベルト式無段変速機、 9…モータ・ジェネレータ、 10…デファレンシャル、 11…トランスアクスルハウジング、 12…トランスアクスルケース、 14…デフハウジング、 16…フライホイール、 29,30,44,45…軸受、33…プライマリプーリ、 34,41…固定片、 35,42…可動片、 37,47…油圧サーボ機構、 40…セカンダリプーリ、 52…ベルト、 53…環状部材、 53A…内筒部、 53B,97…スプライン嵌合部、 58…ドリブンギヤ、 60…ロータ、 60C…内筒部、 61…アイドラシャフト、 68…アイドラギヤ、 69…歯車伝動装置、 70…軸孔、 77…デフケース、 80,81…サイドギヤ、 82,83…アクスルシャフト、 95…支持壁、 A1,B1,C1,D1…回転軸線、 C1,E1,F1…直線。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンから出力された動力が入力されるプライマリシャフトと、このプライマリシャフトと平行に配置されたセカンダリシャフトと、前記プライマリシャフトおよび前記セカンダリシャフトに巻き掛けられた無端状のベルトとを有するベルト式無段変速機と、
前記セカンダリシャフトから出力された動力が伝達される入力部材と、この入力部材から動力が伝達され、かつ、相互に並列に配置された第1出力部材および第2出力部材とを有し、この第1出力部材と第2出力部材との差動回転が可能であるデファレンシャルと、
前記デファレンシャルに伝達する動力を出力する電動機と
を有するハイブリッド駆動装置において、
前記セカンダリシャフトの回転軸線と同軸上に、前記デファレンシャルの入力部材および前記第1出力部材および第2出力部材が回転可能に配置されていることを特徴とするハイブリッド駆動装置。
【請求項2】
前記電動機のロータから出力された動力が、前記セカンダリシャフトを経由して前記デファレンシャルに伝達されるように構成されており、
前記エンジンの出力軸の回転軸線と前記プライマリシャフトの回転軸線とが同軸上に配置されており、前記電動機のロータの回転軸線と前記セカンダリシャフトの回転軸線とが平行に配置されており、前記電動機のロータの回転軸線を、前記エンジンの出力軸の回転軸線および前記デファレンシャルの回転軸線よりも上方に配置するとともに、
前記各回転軸線と垂直な平面内で、前記エンジン出力軸の回転軸線と前記デファレンシャルの回転軸線と前記ロータの回転軸線とを結ぶ直線により、鋭角三角形が形成されるように、前記平面内で3つの回転軸線が配置されていることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項3】
前記セカンダリシャフトの回転軸線に沿った方向で異なる位置に、前記セカンダリシャフトを回転可能に支持する第1の軸受および第2の軸受が配置されており、
前記電動機のロータの動力を前記デファレンシャルの入力部材に伝達する伝動部材が、前記セカンダリシャフトの回転軸線と同軸上に、かつ、前記第1の軸受と第2の軸受との間に配置されているとともに、前記伝動部材が第1の軸受および第2の軸受により回転可能に支持されていることを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項4】
前記セカンダリシャフトに設けられたセカンダリプーリが、前記回転軸線に沿った方向に動作可能な可動片と、前記回転軸線に沿った方向に動作不可能な固定片とを有しており、前記セカンダリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記固定片よりも前記可動片の方が前記エンジンに近い位置に配置されており、前記セカンダリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記電動機は前記伝動部材を隔てて前記エンジンの反対側に配置されていることを特徴とする請求項2または3に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項5】
前記セカンダリシャフトの回転軸線に沿った方向における前記可動片の位置を制御する動作機構が、前記セカンダリシャフトの回転軸線を取り囲んで設けられており、前記セカンダリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記動作機構の配置領域の一部と、前記伝動部材の配置領域の一部とが重なっていることを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項6】
前記電動機の回転軸線に沿った方向に分割され、かつ、結合により前記電動機を支持する第1ケーシングおよび第2ケーシングと、前記デファレンシャルが収容され、かつ、前記回転軸線に沿った方向で前記第2ケーシングとは異なる位置に配置され、かつ、前記第2ケーシングに結合される第3ケーシングと、前記電動機のロータと前記伝動部材との間の動力伝達経路に設けられた中間伝動部材とを有し、前記回転軸線に沿った方向で、前記第2ケーシングと第3ケーシングとにより前記中間伝動部材を挟み付けて支持するとともに、前記第2ケーシングに形成された軸孔の内径が、前記中間伝動部材の外径よりも大きく構成されていることを特徴とする請求項2ないし5のいずれかに記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項7】
前記エンジンの出力軸の回転軸線と前記プライマリシャフトの回転軸線とが同軸上に配置されており、前記電動機のロータの回転軸線と前記セカンダリシャフトの回転軸線とが平行に配置されており、前記電動機のロータの回転軸線を、前記エンジンの出力軸の回転軸線および前記デファレンシャルの回転軸線よりも上方に配置するとともに、
前記電動機のロータから出力された動力が、前記プライマリシャフトおよび前記セカンダリシャフトを経由して前記デファレンシャルに伝達されるように構成されており、
前記各回転軸線と垂直な平面内で、前記エンジンの出力軸の回転軸線と前記デファレンシャルの回転軸線と前記ロータの回転軸線とを結ぶ直線により、鋭角三角形が形成されるように、前記平面内で3つの回転軸線が配置されていることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項8】
前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で異なる位置に、前記プライマリシャフトを回転可能に支持する第1の軸受および第2の軸受が配置されており、
前記電動機のロータの動力を前記プライマリシャフトに伝達する伝動部材が、前記プライマリシャフトの回転軸線と同軸上に、かつ、前記第1の軸受と第2の軸受との間に配置されているとともに、前記伝動部材が第1の軸受または第2の軸受により回転可能に支持されていることを特徴とする請求項7に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項9】
前記プライマリシャフトに設けられたプライマリプーリが、前記回転軸線に沿った方向に動作可能な可動片と、前記回転軸線に沿った方向に動作不可能な固定片とを有しており、前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記固定片よりも前記可動片の方が前記エンジンに近い位置に配置されており、前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記電動機は前記伝動部材を隔てて前記エンジンの反対側に配置されていることを特徴とする請求項7または8に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項10】
前記伝動部材は、前記プライマリシャフトにスプライン嵌合部を介して取り付けられた内筒部を有しており、前記第1の軸受または第2の軸受のうちの一方の軸受が、前記内筒部を介して前記プライマリシャフトを支持する構成を有しており、前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記スプライン嵌合部の形成された領域と、前記一方の軸受の配置領域とが重なっていることを特徴とする請求項9に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項11】
結合されて前記電動機を支持する第1支持部材および第2支持部材と、前記電動機のロータと前記伝動部材との間の動力伝達経路に設けられた中間伝動部材とを有し、前記回転軸線に沿った方向で、前記第2支持部材と第3支持部材とにより前記中間伝動部材が挟み付けて支持されていることを特徴とする請求項7ないし10のいずれかに記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項12】
前記電動機のロータから出力された動力が、前記プライマリシャフトおよび前記セカンダリシャフトを経由して前記デファレンシャルに伝達されるように構成されており、
前記ロータおよび前記プライマリシャフトが同軸上に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項13】
前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で異なる位置に、前記プライマリシャフトを回転可能に支持する第1の軸受および第2の軸受が配置されており、
前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記第1の軸受と第2の軸受との間で、前記プライマリシャフトと前記ロータとが接続されているとともに、前記第1の軸受または第2の軸受のいずれか一方の軸受が、前記ロータを介して前記プライマリシャフトを支持していることを特徴とする請求項12に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項14】
前記プライマリシャフトに設けられたプライマリプーリが、前記回転軸線に沿った方向に動作可能な可動片と、前記回転軸線に沿った方向に動作不可能な固定片とを有しており、前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記固定片よりも前記可動片の方が前記エンジンに近い位置に配置されており、前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記固定片と前記エンジンとの間に前記電動機が配置されていることを特徴とする請求項12または13に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項15】
前記ロータは、前記プライマリシャフトにスプライン嵌合部を介して取り付けられた内筒部を有しており、前記第1の軸受または第2の軸受のうちの一方の軸受が、前記内筒部を介して前記プライマリシャフトを支持する構成を有しており、前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記スプライン嵌合部の形成された領域と、前記一方の軸受の配置領域とが重なっていることを特徴とする請求項13または14に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項16】
結合されて前記電動機を支持する第1支持部材および第2支持部材を備えていることを特徴とする請求項12ないし15のいずれかに記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項17】
前記伝動部材には、平行軸式の歯車伝動装置を構成する歯車が含まれることを特徴とする請求項3ないし6のいずれか、または、請求項8ないし11のいずれかに記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項1】
エンジンから出力された動力が入力されるプライマリシャフトと、このプライマリシャフトと平行に配置されたセカンダリシャフトと、前記プライマリシャフトおよび前記セカンダリシャフトに巻き掛けられた無端状のベルトとを有するベルト式無段変速機と、
前記セカンダリシャフトから出力された動力が伝達される入力部材と、この入力部材から動力が伝達され、かつ、相互に並列に配置された第1出力部材および第2出力部材とを有し、この第1出力部材と第2出力部材との差動回転が可能であるデファレンシャルと、
前記デファレンシャルに伝達する動力を出力する電動機と
を有するハイブリッド駆動装置において、
前記セカンダリシャフトの回転軸線と同軸上に、前記デファレンシャルの入力部材および前記第1出力部材および第2出力部材が回転可能に配置されていることを特徴とするハイブリッド駆動装置。
【請求項2】
前記電動機のロータから出力された動力が、前記セカンダリシャフトを経由して前記デファレンシャルに伝達されるように構成されており、
前記エンジンの出力軸の回転軸線と前記プライマリシャフトの回転軸線とが同軸上に配置されており、前記電動機のロータの回転軸線と前記セカンダリシャフトの回転軸線とが平行に配置されており、前記電動機のロータの回転軸線を、前記エンジンの出力軸の回転軸線および前記デファレンシャルの回転軸線よりも上方に配置するとともに、
前記各回転軸線と垂直な平面内で、前記エンジン出力軸の回転軸線と前記デファレンシャルの回転軸線と前記ロータの回転軸線とを結ぶ直線により、鋭角三角形が形成されるように、前記平面内で3つの回転軸線が配置されていることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項3】
前記セカンダリシャフトの回転軸線に沿った方向で異なる位置に、前記セカンダリシャフトを回転可能に支持する第1の軸受および第2の軸受が配置されており、
前記電動機のロータの動力を前記デファレンシャルの入力部材に伝達する伝動部材が、前記セカンダリシャフトの回転軸線と同軸上に、かつ、前記第1の軸受と第2の軸受との間に配置されているとともに、前記伝動部材が第1の軸受および第2の軸受により回転可能に支持されていることを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項4】
前記セカンダリシャフトに設けられたセカンダリプーリが、前記回転軸線に沿った方向に動作可能な可動片と、前記回転軸線に沿った方向に動作不可能な固定片とを有しており、前記セカンダリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記固定片よりも前記可動片の方が前記エンジンに近い位置に配置されており、前記セカンダリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記電動機は前記伝動部材を隔てて前記エンジンの反対側に配置されていることを特徴とする請求項2または3に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項5】
前記セカンダリシャフトの回転軸線に沿った方向における前記可動片の位置を制御する動作機構が、前記セカンダリシャフトの回転軸線を取り囲んで設けられており、前記セカンダリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記動作機構の配置領域の一部と、前記伝動部材の配置領域の一部とが重なっていることを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項6】
前記電動機の回転軸線に沿った方向に分割され、かつ、結合により前記電動機を支持する第1ケーシングおよび第2ケーシングと、前記デファレンシャルが収容され、かつ、前記回転軸線に沿った方向で前記第2ケーシングとは異なる位置に配置され、かつ、前記第2ケーシングに結合される第3ケーシングと、前記電動機のロータと前記伝動部材との間の動力伝達経路に設けられた中間伝動部材とを有し、前記回転軸線に沿った方向で、前記第2ケーシングと第3ケーシングとにより前記中間伝動部材を挟み付けて支持するとともに、前記第2ケーシングに形成された軸孔の内径が、前記中間伝動部材の外径よりも大きく構成されていることを特徴とする請求項2ないし5のいずれかに記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項7】
前記エンジンの出力軸の回転軸線と前記プライマリシャフトの回転軸線とが同軸上に配置されており、前記電動機のロータの回転軸線と前記セカンダリシャフトの回転軸線とが平行に配置されており、前記電動機のロータの回転軸線を、前記エンジンの出力軸の回転軸線および前記デファレンシャルの回転軸線よりも上方に配置するとともに、
前記電動機のロータから出力された動力が、前記プライマリシャフトおよび前記セカンダリシャフトを経由して前記デファレンシャルに伝達されるように構成されており、
前記各回転軸線と垂直な平面内で、前記エンジンの出力軸の回転軸線と前記デファレンシャルの回転軸線と前記ロータの回転軸線とを結ぶ直線により、鋭角三角形が形成されるように、前記平面内で3つの回転軸線が配置されていることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項8】
前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で異なる位置に、前記プライマリシャフトを回転可能に支持する第1の軸受および第2の軸受が配置されており、
前記電動機のロータの動力を前記プライマリシャフトに伝達する伝動部材が、前記プライマリシャフトの回転軸線と同軸上に、かつ、前記第1の軸受と第2の軸受との間に配置されているとともに、前記伝動部材が第1の軸受または第2の軸受により回転可能に支持されていることを特徴とする請求項7に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項9】
前記プライマリシャフトに設けられたプライマリプーリが、前記回転軸線に沿った方向に動作可能な可動片と、前記回転軸線に沿った方向に動作不可能な固定片とを有しており、前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記固定片よりも前記可動片の方が前記エンジンに近い位置に配置されており、前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記電動機は前記伝動部材を隔てて前記エンジンの反対側に配置されていることを特徴とする請求項7または8に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項10】
前記伝動部材は、前記プライマリシャフトにスプライン嵌合部を介して取り付けられた内筒部を有しており、前記第1の軸受または第2の軸受のうちの一方の軸受が、前記内筒部を介して前記プライマリシャフトを支持する構成を有しており、前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記スプライン嵌合部の形成された領域と、前記一方の軸受の配置領域とが重なっていることを特徴とする請求項9に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項11】
結合されて前記電動機を支持する第1支持部材および第2支持部材と、前記電動機のロータと前記伝動部材との間の動力伝達経路に設けられた中間伝動部材とを有し、前記回転軸線に沿った方向で、前記第2支持部材と第3支持部材とにより前記中間伝動部材が挟み付けて支持されていることを特徴とする請求項7ないし10のいずれかに記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項12】
前記電動機のロータから出力された動力が、前記プライマリシャフトおよび前記セカンダリシャフトを経由して前記デファレンシャルに伝達されるように構成されており、
前記ロータおよび前記プライマリシャフトが同軸上に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項13】
前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で異なる位置に、前記プライマリシャフトを回転可能に支持する第1の軸受および第2の軸受が配置されており、
前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記第1の軸受と第2の軸受との間で、前記プライマリシャフトと前記ロータとが接続されているとともに、前記第1の軸受または第2の軸受のいずれか一方の軸受が、前記ロータを介して前記プライマリシャフトを支持していることを特徴とする請求項12に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項14】
前記プライマリシャフトに設けられたプライマリプーリが、前記回転軸線に沿った方向に動作可能な可動片と、前記回転軸線に沿った方向に動作不可能な固定片とを有しており、前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記固定片よりも前記可動片の方が前記エンジンに近い位置に配置されており、前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記固定片と前記エンジンとの間に前記電動機が配置されていることを特徴とする請求項12または13に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項15】
前記ロータは、前記プライマリシャフトにスプライン嵌合部を介して取り付けられた内筒部を有しており、前記第1の軸受または第2の軸受のうちの一方の軸受が、前記内筒部を介して前記プライマリシャフトを支持する構成を有しており、前記プライマリシャフトの回転軸線に沿った方向で、前記スプライン嵌合部の形成された領域と、前記一方の軸受の配置領域とが重なっていることを特徴とする請求項13または14に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項16】
結合されて前記電動機を支持する第1支持部材および第2支持部材を備えていることを特徴とする請求項12ないし15のいずれかに記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項17】
前記伝動部材には、平行軸式の歯車伝動装置を構成する歯車が含まれることを特徴とする請求項3ないし6のいずれか、または、請求項8ないし11のいずれかに記載のハイブリッド駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−1126(P2009−1126A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−163160(P2007−163160)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]