パターン形成装置及びパターン形成方法、並びにデバイス製造方法
【課題】収縮したシート材に対しても、高精度な露光を可能にする。
【解決手段】制御装置により、シートSを仮保持したまま6つの補助シートホルダSH2,SH3が−Z方向に微小駆動され、それらの保持面がシートホルダSH1の保持面より僅かに下方(−Z側)に位置決めされ、これにより、シートSに幅方向(Y軸方向)及び長尺方向に関する適当なテンションが加えられ、シートSの中央部がシートホルダSH1の保持面上に固定される。すなわち、シートSの区画領域SAiにXY二次元方向のテンションが付与された状態で、シートSの区画領域SAiに対応する裏面部分が、シートホルダSH1の平坦状の保持面に倣わされる。そして、所定領域に長尺方向、幅方向に関するテンションが付与された状態で、シートSの所定領域に対応する裏面部分を平坦状の基準面に倣わせて平坦化する。そして、シートの所定領域にエネルギビームを照射してパターンを形成する。
【解決手段】制御装置により、シートSを仮保持したまま6つの補助シートホルダSH2,SH3が−Z方向に微小駆動され、それらの保持面がシートホルダSH1の保持面より僅かに下方(−Z側)に位置決めされ、これにより、シートSに幅方向(Y軸方向)及び長尺方向に関する適当なテンションが加えられ、シートSの中央部がシートホルダSH1の保持面上に固定される。すなわち、シートSの区画領域SAiにXY二次元方向のテンションが付与された状態で、シートSの区画領域SAiに対応する裏面部分が、シートホルダSH1の平坦状の保持面に倣わされる。そして、所定領域に長尺方向、幅方向に関するテンションが付与された状態で、シートSの所定領域に対応する裏面部分を平坦状の基準面に倣わせて平坦化する。そして、シートの所定領域にエネルギビームを照射してパターンを形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン形成装置及びパターン形成方法、並びにデバイス製造方法に係り、さらに詳しくは、走査露光により、長尺のシート材の表面の複数領域にパターンを形成するパターン形成装置及びパターン形成方法、並びに該パターン形成方法を用いて電子デバイスを製造するデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネルなどのフラットディスプレイパネルは、次第に大型化している。例えば、液晶ディスプレイパネルの場合、その製造に用いられるガラス基板(大型基板)は、複数画面分纏めて効率良く生産するために1辺の長さが3mを超えるような大型基板が用いられるようになっている。そのため、基板を保持するステージ装置は、基板が大型化するほど巨大化し、十数kgの基板を処理するステージ装置では、可動部の重量が10トン近く、装置全体の重量は100トンを超えるようになってきた。このため、近い将来には、基板がさらに大型化し、その製造、及び搬送が困難となるものと予想される上、ステージ装置がさらに大型化し、インフラ整備に巨額の投資が必要になることは確実である。
【0003】
一方、主としてプリント配線基板の製造分野などで採用されているが、ロールシート状の記録媒体を、被露光物体とする露光装置が知られている。かかる露光装置を、例えば液晶表示素子の製造に適用すれば、上述したガラス基板の大型化に伴う種々の課題から解放されるので、将来の液晶表示素子製造用の露光装置の1つの選択枝になるものと期待される。
【0004】
従来のシート状の記録媒体に対する露光装置としては、例えば特許文献1〜3に開示される露光装置が知られているが、これらの露光装置を液晶表示素子製造用にそのまま用いても、所望の精度の液晶表示素子を製造することは困難である。一例を挙げれば、液晶表示素子は露光によりパターンを複数層に渡って重ね合わせて製造するが、層間のプロセスを経ることで、加熱等によりシートが収縮するなどの現象が生じ、かかる現象に対処する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5652645号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0066715号明細書
【特許文献3】米国特許第6243160号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、長尺のシート材の所定領域に所定のパターンを形成するパターン形成装置であって、前記シート材の前記所定領域を含む部分に2次元のテンションを付与するテンション付与装置と;平坦状の基準面を有する基準面部材を含み、前記2次元のテンションが付与された前記シート材の前記所定領域に対応する裏面部分を前記基準面に吸着する吸着装置と;前記基準面に吸着された前記シート材の前記所定領域に前記パターンに対応するエネルギビームを照射する照射装置と;を備えるパターン形成装置が、提供される。
【0007】
これによれば、テンション付与装置により、シート材の所定領域を含む部分に2次元のテンションが付与され、吸着装置により、2次元のテンションが付与された前記シート材の前記所定領域に対応する裏面部分が平坦状の基準面に吸着される。そして、照射装置により、基準面に吸着されて平坦化された状態のシート材の前記所定領域にパターンに対応するエネルギビームが照射され、シート材が露光され、パターンが形成される。従って、プロセスの処理により例えば熱等が加えられ、収縮したシート材であっても、高精度な露光が可能になる。
【0008】
本発明の第2の態様によれば、長尺のシート材の表面の所定領域に所定のパターンを形成するパターン形成方法であって、前記シート材の前記所定領域を含む部分に2次元のテンションを付与することと;前記2次元のテンションが付与された前記シート材の前記所定領域に対応する裏面部分を平坦状の基準面に吸着することと;前記基準面に吸着された前記シート材の前記所定領域に前記パターンに対応するエネルギビームを照射することと;を含むパターン形成方法が、提供される。
【0009】
これによれば、プロセスの処理により例えば熱等が加えられ、収縮したシート材であっても、高精度な露光が可能になる。
【0010】
本発明の第3の態様によれば、本発明のパターン形成方法を用いて長尺のシート材上にパターンを形成することと;パターンが形成された前記シート材に処理を施すことと;を含むデバイス製造方法が、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一実施形態の露光装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】図1の露光装置が備えるマスクステージの概略構成及び照明領域の配置を示す平面図である。
【図3】図1の露光装置が備える投影光学系及びシート上の投影領域(露光領域)の配置を示す平面図である。
【図4】図4(A)及び図4(B)は、それぞれ、ステージの概略構成を示す側面図及び平面図である。
【図5】図5(A)は、補助シートホルダ及びホルダ駆動装置近傍のテーブルの断面図、図5(B)は図5(A)のB−B’線断面図である。
【図6】図1の露光装置が備えるシート搬送系及びステージ装置を示す平面図である。
【図7】図7(A)は、搬送ローラ部41,42の近傍を示す平面図、図7(B)は、搬送ローラ部41を示す側面図、図7(C)〜図7(G)は、シート搬送系の機能を説明するための図である。
【図8】シートS上の各区画領域に付設されたアライメントマークの配置の一例を示す図である。
【図9】図1の露光装置が備える主制御装置の入出力関係を示すブロック図である。
【図10】図1の露光装置におけるシートの露光のための動作の流れを説明するための図(その1)である。
【図11】補助シートホルダを用いたシートの仮保持を説明するための図である。
【図12】図1の露光装置におけるシートの露光のための動作の流れを説明するための図(その2)である。
【図13】図1の露光装置におけるシートの露光のための動作の流れを説明するための図(その3)である。
【図14】補助シートホルダを用いたシートの位置合わせを説明するための図である。
【図15】図1の露光装置におけるシートの露光のための動作の流れを説明するための図(その4)である。
【図16】図1の露光装置におけるシートの露光のための動作の流れを説明するための図(その5)である。
【図17】図1の露光装置におけるシートの露光のための動作の流れを説明するための図(その6)である。
【図18】図1の露光装置におけるシートの露光のための動作の流れを説明するための図(その7)である。
【図19】図1の露光装置におけるシートの露光のための動作の流れを説明するための図(その8)である。
【図20】図20(A)及び図20(B)は、変形例に係るシート搬送系を構成するクランパ部について説明するための図である。
【図21】変形例に係るアライメント系の配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を、図1〜図19に基づいて説明する。
【0013】
図1には、一実施形態の露光装置100の概略的な構成が示されている。露光装置100は、可撓性を有するシートあるいはフィルム(以下、シートと総称する)を、被露光物体とする、マルチレンズタイプの投影露光装置、いわゆるスキャナである。本実施形態では、一例として、約100μm厚のシートが用いられるものとする。
【0014】
露光装置100は、照明系IOP、マスクMを保持するマスクステージMST、マスクMに形成されたパターンの像をシートS上に投影する投影光学系PL、シートSを保持するシートステージ(以下、ステージと略述する)SSTを含むステージ装置SS、及びシートSを搬送するシート搬送系40、並びにこれらの制御系等を備えている。
【0015】
なお、本実施形態の露光装置100で用いられるシートSは、連続長尺シートである。シートSはロール状に巻かれ、ローラ401にセットされている。後述するように、シートSは、シート搬送系40(が備える搬送ローラ部41〜44)によってローラ401から引き出され、投影光学系PL直下の領域を通って、巻き取りローラ402によって巻き取られる。また、シートSの表面には、感光剤(レジスト)が塗布されているものとする。本実施形態では、一例として、シートSが、ローラ401から送り出され、巻き取りローラ402に巻き取られるものとしているが、これに限らず、露光の前の処理、例えばレジスト塗布を行うレジスト塗布装置から送り出され、露光の後の処理、例えば現像を行う現像装置に向けて送られるシートも、露光装置100によって露光を行うことは可能である。
【0016】
以下においては、投影光学系PLの物体面側及び像面側部分の光軸(ただし、両部分の中間の部分を除く)に平行な鉛直方向(図1における紙面内の上下方向)をZ軸方向、これに直交する面内でマスクMとシートSとが投影光学系PLに対して相対走査される走査方向(図1における紙面内の左右方向)をX軸方向、Z軸及びX軸に直交する方向をY軸方向とし、X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明する。
【0017】
照明系IOPは、複数、ここでは5つの照明系モジュール(以下、単に照明系と呼ぶ)IOP1〜IOP5を備えている。照明系IOP1〜IOP5のそれぞれは、紫外光を発する超高圧水銀ランプ(光源)と、光源からの紫外光を集光する楕円鏡、集光された紫外光の光路上に配置された波長選択フィルタ、オプティカルインテグレータ、視野絞り等を含む照明光学系(いずれも不図示)と、を備えている。波長選択フィルタを介して、紫外光から紫外域の輝線、例えばi線(波長365nm)(g線(波長436nm)、又はh線(波長405nm))等が照明光IL1〜IL5として抽出される。抽出された照明光IL1〜IL5は、それぞれ光軸AX1〜AX5に沿って、照明系IOP(IOP1〜IOP5)外に(マスクMに向けて)射出される(図2参照)。
【0018】
なお、光軸AX1,AX3,AX5は、図2に示されるように、XY平面(マスクMのパターン面)内において、Y軸方向に所定の間隔で配置されている。また、光軸AX2,AX4は、光軸AX1,AX3,AX5から+X側に所定距離隔てて、それぞれ光軸AX1,AX3の間及び光軸AX3,AX5の間に配置されている。すなわち、光軸AX1〜AX5は、XY平面内において千鳥状に配置されている。
【0019】
照明系IOP1〜IOP5は、照明光IL1〜IL5により、それぞれ、光軸AX1〜AX5を中心にマスクM上の照明領域IAM1〜IAM5を均一な照度で照明する。各照明領域は、照明光学系内の視野絞り(不図示)によって規定される等脚台形状を有する。なお、照明系IOP(IOP1〜IOP5)の構成の詳細については、例えば、米国特許第6,552,775号明細書等に開示されている。
【0020】
マスクステージMSTは、図1に示されるように、照明系IOPの下方(−Z側)に配置されている。マスクステージMST上には、矩形のパターン領域がそのパターン面(−Z側の面)に形成された矩形のマスクMが、例えば真空吸着により、固定されている。マスクステージMSTは、リニアモータ等を含むマスクステージ駆動系MSD(図1では不図示、図9参照)により、XY平面内で微小駆動可能であり、且つ走査方向(X軸方向)に所定のストロークで所定の走査速度で駆動可能である。
【0021】
マスクステージMSTのXY平面内での位置情報は、マスクステージ干渉計システム16(図9参照)の一部をそれぞれ構成するレーザ干渉計(以下、干渉計と略述する)16X,16Yにより、常時、例えば0.25〜1nm程度の分解能で計測される。マスクステージMSTの+X側面及び−Y側面には、それぞれ鏡面加工が施され、図2に示されるように、反射面15X,15Yが形成されている。干渉計16Xは、X軸に平行な光路に沿って複数の測長ビームを反射面15Xに照射し、それぞれの反射面15Xからの反射光を受光して、マスクステージMSTのX軸方向に関する位置(X位置)及びθz方向の回転を計測する。干渉計16Xの実質的な測長軸は、光軸AX3と直交するX軸に平行な軸である。干渉計16Yは、光軸AX1及びAX2とそれぞれ直交するY軸に平行な光路に沿って2つの測長ビームを反射面15Yに照射し、反射面15Yからの反射光を受光して、マスクステージMSTのY軸方向に関する位置(Y位置)を計測する。なお、上述の反射面15X,15Yの代わりに、平面鏡から成る移動鏡を、マスクステージMSTに固定しても良い。
【0022】
干渉計16X,16Yの計測情報は、主制御装置50に供給される(図9参照)。主制御装置50は、干渉計16X,16Yの計測情報(マスクステージMSTの位置情報)に基づいて、マスクステージ駆動系MSDを介してマスクステージMSTを制御する。
【0023】
投影光学系PLは、図1に示されるように、マスクステージMSTの下方(−Z側)に配置されている。本実施形態の投影光学系PLは、例えば図3に示されるように、光軸AX1〜AX5の配置に対応して千鳥状に配置された5つの投影光学系モジュール(以下、単に投影光学系と呼ぶ)PL1〜PL5を含む。図1では、投影光学系PL3,PL5及びPL4はそれぞれ投影光学系PL1及びPL2の紙面奥側に位置する。投影光学系PL1〜PL5のそれぞれとして、例えば、等倍正立像を像面上に形成する両側テレセントリックな反射屈折系が用いられている。
【0024】
上述の投影光学系PL1〜PL5(光軸AX1〜AX5)の配置により、投影光学系PL1〜PL5によってパターンの像が投影されるシートS上の投影領域IA1〜IA5は、照明領域IAM1〜IAM5と同様に、千鳥状に配置される。ここで、投影領域IA1〜IA5は、照明領域IAM1〜IAM5と同様の等脚台形状を有する。投影領域IA1〜IA5の配置と形状により、マスクM上の照明領域IAM1〜IAM5内のパターンの像(部分像)を、それぞれ投影光学系PL1〜PL5を介してシートS上の投影領域IA1〜IA5に投影しつつ、マスクM及びシートSを走査方向(X軸方向)に同期して駆動することにより、シートS上に投影されたパターンの部分像はマスクMに形成されたパターンに等しい1つの像(合成像)に合成される。従って、走査露光により、マスクMのパターンが投影光学系PL1〜PL5を介してシートS上(の1つのショット領域(区画領域)SAi内)に転写される。なお、走査露光の詳細については後述する。
【0025】
本実施形態では、投影光学系PL1〜PL5として等倍正立像を投影する光学系を採用したため、投影領域IA1〜IA5の形状及び配置(位置関係)は、それぞれ、照明領域IAM1〜IAM5の形状及び配置(位置関係)に等しい。本実施形態の投影光学系PLの構成の詳細については、例えば、米国特許第6,552,775号明細書等に開示されている。
【0026】
露光装置100は、投影光学系PL1〜PL5によってシートS上に投影される投影像の歪み(位置ずれ及び/又は形状誤差)を補正するレンズコントローラLC(図9参照)を備えている。レンズコントローラLCは、投影光学系PL1〜PL5をそれぞれ構成する光学素子群(レンズ群)の少なくとも一部を光軸AX1〜AX5に平行な方向及び光軸AX1〜AX5に垂直なXY平面に対する任意の傾斜方向に駆動する。これにより、シートS上の投影領域IA1〜IA5のそれぞれに投影されるパターンの部分像の歪み(シフト、回転、倍率(スケーリング)等)が補正される。なお、レンズコントローラLCは、上記の光学素子群の駆動に代えて、あるいは加えて、投影光学系PL1〜PL5それぞれの内部に形成された気密室内の気体の圧力を変更する、あるいは、これらとともに、照明光の波長を変更するなどしても良い。
【0027】
ステージ装置SSは、図1に示されるように、投影光学系PL(PL1〜PL5)の下方(−Z側)に配置されている。ステージ装置SSは、床面上に防振機構(不図示)によってほぼ水平に支持されたベース部材BS、ベース部材BS上でシートSを保持して移動するステージSST、ステージSSTを駆動するステージ駆動系SSD(図1では不図示、図9参照)、ステージSSTの位置情報を計測するステージ干渉計システム18(図9参照)等を含む。なお、図1では、ステージSST上に、シートSが吸着保持されている。
【0028】
ステージSSTは、図1に示されるように、底面に設けられた複数の非接触軸受(例えばエアベアリング(不図示))によりベース部材BS上に浮上支持されるステージ本体STと、ステージ本体ST上に配置されたZ・レベリング装置38(図4(A)参照)と、Z・レベリング装置38により3点支持されたテーブルTBと、を有している。
【0029】
Z・レベリング装置38は、図4(B)に示されるように、ステージ本体ST上の一直線上にない3点に配置された3つの例えばボイスコイルモータ等を含むZ駆動機構38a、38b、38cを含む。Z・レベリング装置38により、ステージ本体ST上で、テーブルTBをZ軸方向、θx方向、及びθy方向の3自由度方向に微小駆動することができる。
【0030】
ステージSST(ステージ本体ST)は、ステージ駆動系SSDによりベース部材BS上でX軸方向(走査方向)に走査駆動されるとともに、Y軸方向及びθz方向にも微小駆動される。ステージ駆動系SSDは、ステージSSTをY軸方向に微小駆動する微動装置(不図示)と、微動装置(不図示)を走査方向(X軸方向)に駆動する粗動装置30(図9参照)と、を含む。
【0031】
粗動装置30は、図4(B)及び図6に示されるように、ステージSSTのY軸方向の一側と他側にそれぞれ設けられた一対のリニアモータ301,302を含む。一方のリニアモータ301は、ベース部材BSの−Y側に配置されたX軸方向に延びる固定子311と、固定子311にその長手方向に沿って移動可能に取り付けられた可動子321とを含む。他方のリニアモータ302は、ベース部材BSの+Y側に配置されたX軸方向に延びる固定子312と、固定子312にその長手方向に沿って移動可能に取り付けられた可動子322とを含む。固定子311、312のそれぞれは、X軸方向に沿って配列された複数の磁石(又はコイル)を有し、可動子321、322のそれぞれは、コイル(又は磁石)を有する。可動子321,322は、それらをY軸方向に微小駆動する微動装置(不図示)を介して、それぞれステージ本体STの−Y側面及び+Y側面に固定されている。なお、リニアモータ301,302に異なる推力を発生させることにより、ステージ本体STをθz方向に微小駆動することができる。なお、粗動装置30及び微動装置に代えて、例えば米国特許第5,196,745号明細書などに開示されているローレンツ電磁力駆動方式の平面モータ、可変磁気抵抗駆動方式の平面モータ、磁気浮上型の平面モータ等により、ステージSSTをベース部材BS上面(ガイド面)に沿って2次元駆動するステージ駆動系を構成しても良い。
【0032】
テーブルTBは、上述の粗動装置30、微動装置(不図示)、及びZ・レベリング装置38を含むステージ駆動系SSD(図9参照)によって、ベース部材BS上でX軸方向,Y軸方向,Z軸方向,θx方向,θy方向,及びθz方向の6自由度方向に駆動される。
【0033】
テーブルTBの上面の中央部には、図4(A)及び図4(B)に示されるように、シートSを吸着保持するシートホルダSH1が設けられている。シートホルダSH1は、XY平面にほぼ平行であり且つシートS上に配列される区画領域より幾分大きな矩形状の保持面を有し、その保持面上にシートSを平坦に保持する。ここでは、シートSを吸着保持するため、シートホルダSH1として、ピンの配列間隔(ピッチ)が十分細かく、ピンの高さが低い、例えば200μm程度のピンチャックホルダが採用されている。
【0034】
また、テーブルTBの上面には、シートS上に配列される区画領域の周囲の裏面を吸着保持する6つの補助シートホルダSH2,SH3が設けられている。具体的には、シートホルダSH1の±Y側に、X軸方向に細長い各2つの補助シートホルダSH2が、X軸方向に関して所定の距離を隔てて配置されている。また、シートホルダSH1の±X側に、Y軸方向に細長い各1つの補助シートホルダSH3が配置されている。補助シートホルダSH2,SH3のそれぞれは矩形状の保持面を有し、その保持面をテーブルTB内に設けられたホルダ駆動装置によりそれぞれ長手方向と直交する方向及びZ軸方向に微小駆動可能に構成されている。
【0035】
図5(A)には、テーブルTBの内部に設けられたホルダ駆動装置60の構成が平面図にて示され、図5(B)には、図5(A)のB−B’線断面図が示されている。ここでは、一例として、テーブルTBの+Y側端部かつ+X側端部に位置する補助シートホルダSH2を駆動するホルダ駆動装置60が示されている。
【0036】
ホルダ駆動装置60は、テーブルTBに形成された中空部の内部に設置された四節リンク機構の一種である平行リンク機構61と、平行リンク機構61(の駆動節)を駆動する駆動機構63と、を含み、補助シートホルダSH2をY軸方向に駆動するY駆動部と、補助シートホルダSH2がその上面に固定された長方形のベース601をテーブルTBの底面上で支持するとともに、Z軸方向に微小駆動する例えば駆動素子、ボイスコイルモータ等によって構成されるZ駆動部(不図示)とを含む。ベース601の一端部(−X端部)に、平行リンク機構61の固定リンクの反対側に位置するリンク(以下、便宜上、平行移動リンクと呼ぶ)が一体的に設けられている。
【0037】
これをさらに詳述すると、平行リンク機構61は、テーブルTBの中空部の+X側の壁に固定された一対のリンク支持部材663,664にそれぞれの一端が接続され、それぞれの他端が上述の平行移動リンクの一端部665と他端部666にそれぞれ接続された一対の揺動リンク644,645を含む。この場合、リンク支持部材663,664がテーブルTBに固定されているので、固定リンクを構成する。その固定リンクと、揺動リンク644,645と、平行移動リンクとは、隣接するリンク同士で、回転対偶を構成している。
【0038】
駆動機構63は、一端がテーブルTBの中空部の側壁の一部に固定されたアクチュエータ62と、アクチュエータ62に一端(駆動点680)が圧接し、中間部の支持点682がテーブルTBの底壁に固定された固定具661に回動可能に支持されたL字状のてこリンク641と、てこリンク641の他端(作用点683)に一端が接続され、他端が上述の平行移動リンクの一部に固定された取り付け部材667に接続された可動リンク642と、を含む。てこリンク641と可動リンク642とは、回転対偶を構成し、可動リンク642と取り付け部材667とは回転対偶を構成している。また、取り付け部材667は、ばね部材(引っ張りばね)643を介してテーブルTBの中空部の−Y側の側壁の一部に固定された取り付け部材662に接続されている。この場合、取り付け部材667とばね部材(引っ張りばね)643とは、回転対偶を構成し、ばね部材(引っ張りばね)643と取り付け部材662とは、回転対偶を構成している。
【0039】
このようにして構成されたY駆動部では、ばね部材(引っ張りばね)643により、てこリンク641の一端(駆動点680)がアクチュエータ62に常時押し付けられている。そして、アクチュエータ62が、ばね部材643の押し付け力に抗して、てこリンク641の一端(駆動点680)を図5(A)中の白抜き矢印で示される方向(+X方向)に駆動することにより、可動リンク642を介して、取り付け部材667が黒塗り矢印で示される方向(+Y方向)に駆動される。すなわち、ベース601と一体で補助シートホルダSH2が+Y方向に駆動される。この場合、補助シートホルダSH2の移動量は、アクチュエータ62の発生する力によって定まる。また、上述の如く、ベース601の下方に配置されたZ駆動部によって補助シートホルダSH2が、ベース601とともに、Z軸方向に駆動されるのであるが、以下では、ベース601により補助シートホルダSH2がZ軸方向に駆動されるものとする。すなわち、ベース601がZ駆動部であるものとする。
【0040】
テーブルTBの+X側端部かつ−Y側端部に設置された補助シートホルダSH2の駆動装置も、X軸に関して対称ではあるが、上述のホルダ駆動装置60と同様に構成されている。また、テーブルTBの±X側に設置された一対の補助シートホルダSH3の駆動装置も、上述のホルダ駆動装置60とその向きが異なる(±90°回転した向きで配置されている)が、同様に構成されている。
【0041】
てこリンク641の力点681と支持点682との間の長さと、支持点682と作用点683との間の長さは、例えば1対3である。そのため、ホルダ駆動装置60(駆動機構63)のアクチュエータ62により駆動点680にててこリンク641の一端を+X方向に10μm駆動すると、てこリンク641の屈曲部(力点681)が−Y方向に10μm駆動され、それにより、てこリンク641の他端(作用点683)が+Y方向に30μm駆動される。従って、ホルダ駆動装置60(駆動機構63)により、補助シートホルダSH2を+Y方向に30μm駆動することができる。また、テーブルTB上にY軸方向に離間して配置された一対の補助シートホルダSH2によりシートSのY軸方向の両端部を保持し、互いに反対向き(離れる方向)に補助シートホルダSH2を駆動することにより、シートSを最大60μm引き伸ばすことができる。同様に、2つの補助シートホルダSH3をX軸方向に30μm駆動することができる。従って、2つの補助シートホルダSH3によりシートSの区画領域のX軸方向の両側の区画領域外の部分の裏面を保持し、互いに反対向き(離れる方向)に2つの補助シートホルダSH3を駆動することにより、シートSをX軸方向に最大60μm引き伸ばすことができる。
【0042】
テーブルTBの−X側端部かつ+Y側、−Y側に設置された補助シートホルダSH2の駆動装置も、Y軸に関して対称ではあるが、上述のホルダ駆動装置60と同様に構成されている。
【0043】
補助シートホルダSH2,SH3は、後述するように、シートSをシートホルダSH1に平坦に保持する際に補助的に使用される。なお、ベース601上の+Y端部には、直方体の位置決め部材602が補助シートホルダSH2に接して固定されている。位置決め部材602は、補助シートホルダSH2の保持面にシートSを吸着保持する際に、シートSの+Y端(又は−Y端)を押さえてシートSをY軸方向に位置決めする役割を持っている。
【0044】
また、テーブルTBの+X側面及び−Y側面には、図4(B)に示されるように、それぞれ、鏡面加工が施され、反射面17X及び17Yが形成されている。これらの反射面17X,17Yは、後述するステージ干渉計システムによるステージSSTの位置計測に用いられる。なお、上述の反射面17Yの代わりに、平面鏡から成る移動鏡を、テーブルTBに固定しても良い。また、反射面17Xの代わりに、レトロリフレクタ又は平面鏡から成る移動鏡を、テーブルTBに固定しても良い。
【0045】
ステージ干渉計システム18(図9参照)は、図6に示されるように、干渉計18X1,18X2,18Y1,18Y2を含み、ステージSST(テーブルTB)のXY平面内での位置情報(θz方向の回転情報を含む)を、常時、例えば0.25〜1nm程度の分解能で計測する。
【0046】
干渉計18X1,18X2及び18Y1,18Y2は、それぞれテーブルTBの反射面17X及び17Yに対向し得るように、投影光学系PLの+X側及び−Y側に配置されている。
【0047】
干渉計18X1,18X2は、テーブルTBの反射面17Xに、X軸と平行な測長ビームをそれぞれ照射し、反射面17Xからの反射光を受光して、ステージSSTのX位置をそれぞれ計測する。干渉計18Y1,18Y2は、Y軸と平行な2つの測長ビームを反射面17Yにそれぞれ照射し、反射面17Yからの反射光を受光して、ステージSSTのY位置をそれぞれ計測する。ここで、干渉計18Y2の2つの測長ビームの一方は、光軸AX1,AX3,AX5と直交するY軸に平行な光路に沿って、他方は、光軸AX2,AX4と直交するY軸に平行な光路に沿って、反射面17Yに照射される。また、干渉計18Y1の2つの測長ビームは、後述するアライメント系AL11、AL12それぞれの検出中心を通るY軸に平行な2つの光路にそれぞれ沿って、反射面17Yに照射される。
【0048】
ステージ干渉計システム18(干渉計18X1,18X2,18Y1,18Y2)の計測情報は、主制御装置50に供給される(図9参照)。なお、ステージSSTが、べース部材BS上にあるとき、そのX位置を問わず、必ず、干渉計18Y1,18Y2の少なくとも一方の測長ビームが、ステージSSTの反射面17Yに照射される。従って、主制御装置50は、ステージSSTのX位置に応じて、干渉計18Y1,18Y2のいずれかの計測情報を使用する。また、主制御装置50は、18X1,18X2の計測情報に基づいて、ステージSSTのθz方向の回転を計測する。
【0049】
なお、干渉計18X1,18X2,18Y1,18Y2のそれぞれとして、Z軸方向に離間する複数の測長ビームを反射面に照射する多軸干渉計を用いることも可能である。この場合、主制御装置50は、ステージSST(テーブルTB)のXY平面内の位置情報(回転情報(ヨーイング量(θz方向の回転量θz)を含む)だけでなく、XY平面に対する傾斜情報(ピッチング量(θx方向の回転量θx)及びローリング量(θy方向の回転量θy))も取得可能となる。
【0050】
シート搬送系40は、図1及び図6示されるように、投影光学系PLを挟んでX軸方向に配列された4つの搬送ローラ部41〜44を備えている。
【0051】
搬送ローラ部41,42,43,44のそれぞれは、例えば図7(A)〜図7(G)に示されるように、上下に位置する一対の圧接ローラと駆動ローラとを含む。下側に位置する駆動ローラ412,422,432,442は、その上端がステージSSTの上面(シートホルダSH1の保持面)より幾分上方(+Z側)に位置するように、その両端が、不図示の支持部材によって回転可能に支持されている(図1参照)。駆動ローラ412,422,432,442は、回転モータ(不図示)によって回転駆動される。上側に位置する圧接ローラ411、421,431,441は、ばね機構(不図示)により、上方(+Z側)から対応する駆動ローラに押し付けられている。
【0052】
ただし、図7(B)に、搬送ローラ部41を取り上げて示されるように、圧接ローラ411は、長手方向の両端部以外の部分の直径が両端部より小さい段付きの円柱状のローラであり、駆動ローラ412は、一定の径を有する円柱状のローラである。
【0053】
搬送ローラ部41,42,43,44のそれぞれでは、代表的に搬送ローラ部41を取り上げて図7(B)に示されるように、圧接ローラ(411)と駆動ローラ(412)とによりシートSを挟持するが、その際シートSの表面のパターンが形成される区画領域に圧接ローラ(411)は接触しない。搬送ローラ部41,42,43,44のそれぞれでは、圧接ローラ(411)と駆動ローラ(412)とによりシートSを挟持可能な第1の状態と、ばね機構による押し付け力に抗して、圧接ローラ(411)を駆動ローラ(412)から離し、シートSの挟持を解除可能な第2の状態とが設定可能である。搬送ローラ部41,42,43,44のそれぞれにおける第1状態と第2の状態との切り替えが、主制御装置50によって行われる。なお、少なくとも一部の駆動ローラを、圧接ローラ411と同様に段付きの円柱状に形成しても良い。
【0054】
駆動ローラ412,422,432,442は、ローラ401、402とともに、主制御装置50によって、その回転、停止が制御される。シートSは、代表的に搬送ローラ部41を取り上げて図7(B)に示されるように、搬送ローラ部の第1の状態で、駆動ローラ(412)がY軸と平行な軸回りに回転(同時に圧接ローラ411が逆向きに回転)すると、その回転方向に送り出される。
【0055】
シート搬送系40では、図7(C)に示されるように、搬送ローラ部41の各ローラ411、412が矢印方向に回転されることで、ローラ401からシートSが白抜き矢印で示される−X方向に引き出され、搬送ローラ部42に向けて送り出される。ここで、搬送ローラ部42の各ローラ421,422の回転が所定のタイミングで止められると、所定の長さ(搬送ローラ部42,43間の離間距離程度)のシートSが、搬送ローラ部41,42間にループ状に撓められる。また、シート搬送系40では、図7(D)に示されるように、搬送ローラ部41の各ローラ411,412の回転が止められた状態で搬送ローラ部42の各ローラ421,422(及び搬送ローラ部43の各ローラ431,432)が矢印方向に回転されることにより、ループ上に撓んだシートSが、投影光学系PLの直下の領域に向けて白抜き矢印で示される−X方向に送り出される。
【0056】
シート搬送系40では、上と同様に、搬送ローラ部43,44の各ローラの回転、停止により、シートSが投影光学系PLの直下の領域から引き出される。すなわち、図7(E)に示されるように、搬送ローラ部44の各ローラ441,442の回転が止められた状態で搬送ローラ部43の各ローラ431,432が矢印の方向に回転されると、シートSが、投影光学系PLの直下の領域から引き出され、引き出されたシートSが搬送ローラ部43,44間にループ状に撓められる。そして、図7(F)に示されるように、搬送ローラ部43の各ローラ431,432の回転が止められた状態で搬送ローラ部44の各ローラ441,442が矢印の方向に回転されることにより、ループ上に撓んだシートSが、搬送ローラ部44の−X側に送り出され、巻き取りローラ402に巻き取られる。
【0057】
また、シート搬送系40では、図7(G)に示されるように、搬送ローラ部41,42の各ローラの回転が止められた状態で搬送ローラ部43の各ローラがシートSの送り方向に回転されることで、あるいは逆に搬送ローラ部43,44の各ローラの回転が止められた状態で搬送ローラ部42の各ローラが逆回転されることで、シートSが搬送ローラ部42,43間でX軸方向に関して所定のテンションが与えられ、張られる。このようにして張られたシートSが、シートステージSST上のシートホルダSH1に吸着保持されるようになっている。
【0058】
シート搬送系40は、さらに、シートSの送り量を計測する計測装置(不図示)、例えば、駆動ローラ412,422,432,442それぞれの回転量を計測するロータリーエンコーダ等を備えている。
【0059】
なお、露光工程中におけるシート搬送系40によるシートSの搬送、ステージSST上へのシートSの保持等の詳細は後述する。
【0060】
さらに、本実施形態の露光装置100には、シートS上の各区画領域に付設されたアライメントマークを検出するための複数、ここでは12個のオフアクシス方式のアライメント系AL1〜AL12が設けられている。アライメント系AL1〜AL6は、図6に示されるように、投影光学系PLの+X側の位置に、シートS上の各区画領域外部の+Y側端部の領域に対向して、X軸に沿って配列されている。また、アライメント系AL7〜AL12は、図6に示されるように、投影領域IA3の光軸と直交するX軸に関して、アライメント系AL1〜AL6に対して対称に配置されている。アライメント系AL7〜AL12は、シートS上の各区画領域外部の−Y側端部の領域に対向し得る。
【0061】
本実施形態では、一例として、図8に示されるように、シートS上の各区画領域SAiのY軸方向の両外側の領域には、各6つ、合計12個のアライメントマークAMが形成されており、これら12個のアライメントマークAMを個別にかつ同時に検出するためにアライメント系AL1〜AL12が設けられている。従って、これに限らず、アライメント系がX軸方向に移動可能であれば、アライメント系AL1〜AL6の代わりに、少なくとも1つ、アライメント系AL7〜AL12の代わりに、少なくとも各1つのアライメント系を備えていれば良い。
【0062】
アライメント系AL1〜AL12としては、一例として画像処理方式のFIA(Field Image Alignment)系が採用されている。アライメント系AL1〜AL12の検出結果(指標マークと検出対象マークとの画像情報)は、アライメント信号処理系(不図示)を介して主制御装置50に送られる。なお、FIA系に限らず、コヒーレントな検出光を対象マークに照射し、その対象マークから発生する散乱光又は回折光を検出し、あるいはその対象マークから発生する2つの回折光(例えば同次数)を干渉させて検出するアライメントセンサを、単独であるいは適宜組み合わせて、用いることも可能である。
【0063】
図9には、露光装置100の制御系を中心的に構成し、構成各部を統括制御する主制御装置50の入出力関係を示すブロック図が示されている。
【0064】
次に、本実施形態の露光装置100において、ステージSSTを用いたシートSの露光のための動作の流れについて、図10〜図18に基づいて説明する。また、以後の動作説明は、多数の図面を用いて行うが、図面毎に同一の部材に符号が付されていたり、付されていなかったりしている。すなわち、図面毎に、記載している符号が異なっているが、それら図面は符号の有無に関わらず、同一構成である。これまでに説明に用いた、各図面についても同様である。
【0065】
図10には、シートS上に配列された複数の区画領域のうち、最初の(i−1)個の区画領域SA1〜SAi−1に対する露光が既に終了し、次の区画領域SAiに対する露光のための処理が開始される直前の状態が示されている。図10の状態では、区画領域SAiに対する露光の際にシートSの移動のために使用されるステージSSTがベース部材BS上の+X端部の位置(待機位置)にて待機している。
【0066】
なお、マスクMのマスクステージMST上へのロード及びマスクアライメント(マスクの位置合わせ)は、通常、シートS上の最初の区画領域SA1に対する露光開始前に行われるので、図10の状態では、当然にマスクMのロード及びマスクアライメントは終了している。また、マスクステージMSTは、区画領域SAiに対する露光のための走査開始位置(加速開始位置)へ移動しているものとする。
【0067】
a. まず、次のa1.〜a4.の手順に従って、区画領域SAiを含むシートSの中央部がステージSST上に保持される。
a1. 具体的には、主制御装置50は、例えば先に図7(C)を用いて説明したように、シート搬送系40の搬送ローラ部42の各ローラの回転を止めた上で搬送ローラ部41の各ローラを回転させるなどしてシートSをローラ401から引き出す。あるいは、主制御装置50は、搬送ローラ部43,41の各ローラの回転を止めた上で搬送ローラ部42を逆回転させて、シートSを投影光学系PLの直下の領域から引き戻す。いずれにしても、所定の長さのシートSが、搬送ローラ部41,42間にループ状に撓められる。所定の長さは、搬送ローラ部42,43間の離間距離程度の長さである。
【0068】
a2. 次に、主制御装置50は、ステージ干渉計システム18(18X1,18X2,18Y1,18Y2)からのステージSSTの位置情報に基づいて、シート搬送系40を制御し、シートS上の区画領域SAiをステージSSTのシートホルダSH1(の保持面)上に位置決めする。ここで、先に図7(G)を用いて説明したように、主制御装置50は、搬送ローラ部41,42,44の各ローラの回転を止めた状態で搬送ローラ部43の各ローラを回転させて、あるいは搬送ローラ部41,43,44の各ローラの回転を止めた状態で搬送ローラ部42の各ローラを逆回転させて、シートSを搬送ローラ部42,43間でX軸方向に関して所定のテンションを与えて、張る。主制御装置50は、さらに、ステージSSTを微小駆動して、シートホルダSH1(の保持面)をシートS上の区画領域SAiに位置合わせする。なお、この状態では、シートSとステージSSTのシートホルダSH1(の保持面)との間には僅かな空間が設けられている。
【0069】
待機位置においてステージSSTとシートSとが位置合わせされた状態では、アライメント系AL1〜AL12それぞれの検出視野内に、区画領域SAiに付設されたアライメントマークAMが位置決めされる。
【0070】
a3. 位置合わせ後、主制御装置50は、ステージ駆動系SSD(Z・レベリング装置38)を介してステージSSTのテーブルTBを水平に保ちつつ、テーブルTB上の合計6つの補助シートホルダSH2,SH3をそれぞれのホルダ駆動装置60(ベース601)を介して+Z方向に微小駆動し、4つの補助シートホルダSH2を用いて区画領域Siの±Y側に対応する部分のシートSの裏面を吸着保持するとともに、2つの補助シートホルダSH3を用いて区画領域Siの±X側に対応する部分のシートSの裏面を吸着保持する。
【0071】
具体的には、主制御装置50は、図11に示されるように、テーブルTB上の+Y側の端部、−Y側の端部にそれぞれ配置された各2つの補助シートホルダSH2を白抜き矢印で示される方向(+Y方向又は−Y方向)に微小駆動して、テーブルTB上でY軸方向に離間する各対の補助シートホルダSH2の離間距離を拡げる。そして、主制御装置50は、各補助シートホルダSH2をベース601を介して+Z方向に駆動して、シートSのY軸方向の両側の端部の裏面を4つの補助シートホルダSH2の保持面に接触させる。接触後、主制御装置50は、+Y側の2つの補助シートホルダSH2を黒塗り矢印で示される−Y方向に微小駆動して、位置決め部材602をシートSの+Y端に押し当てるとともに、−Y側の2つの補助シートホルダSH2を黒塗りで示される+Y方向に微小駆動して、位置決め部材602をシートSの−Y端に押し当てて、シートSを位置決めする。位置決め後、主制御装置50は、シートSの区画領域SAiのY軸方向の両側の部分の裏面を4つの補助シートホルダSH2に吸着保持するとともに、シートSの区画領域SAiのX軸方向両側の部分の裏面を補助シートホルダSH3に吸着保持する。図12には、このようにして、シートSが、補助シートホルダSH2、SH3により仮保持された状態が示されている。
【0072】
a4. シートSの仮保持後、主制御装置50は、シートSを仮保持したまま、各補助シートホルダSH2,SH3をベース601を介して−Z方向に微小駆動して、区画領域SAiを含むシートSの中央部の裏面をシートホルダSH1の保持面上に接触させる。そして、主制御装置50は、各補助シートホルダSH2,SH3の保持面をシートホルダSH1の保持面より僅かに下方(−Z側)に位置決めする。これにより、シートSにY軸方向及びX軸方向に関する適当なテンションが加わり、シートSの中央部がシートホルダSH1の保持面上に固定される。この状態にて、主制御装置50は、図12に示されるように、シートSをシートホルダSH1に吸着保持する。これにより、区画領域SAiを含むシートSの中央部が、ステージSST上に、XY平面に平行に且つ平坦に保持される。
【0073】
b. 次に、シートSに対するアライメント計測が、次のb1.〜b5.の手順で行われる。
【0074】
b1. 前述の通り、待機位置にステージSSTが位置決めされた状態では、アライメント系AL1〜AL12のそれぞれの検出視野内に区画領域SAiに付設されたアライメントマークが位置決めされている。そこで、主制御装置50は、図13示されるように、シートS上の区画領域SAiに付設されたアライメントマークをアライメント系AL1〜AL12を用いて検出する(指標中心からのアライメントマークの位置を計測する)。そして、主制御装置50は、アライメントマークの検出結果と、その検出時のステージ干渉計システム18からのステージSSTの位置情報と、に基づき、XY座標系上における12個のアライメントマークの位置座標を求める。
【0075】
b2. 次に、主制御装置50は、上で求めた12個のアライメントマークの位置座標に基づき、シートS上のパターンが形成された区画領域SAiのY軸方向及びX軸方向に関する収縮量が、所定範囲内に収まっているか否かを判断する。
b3. そして、この結果、例えば区画領域SAi内部の少なくとも一部に所定範囲を超える収縮があると判断した場合には、シートホルダSH1によるシートSの吸着保持を解除し、各補助シートホルダSH2、SH3をベース601を介して+Z方向に駆動して、シートSの裏面をシートホルダSH1の保持面から離す。
【0076】
ここで、例えばシートS上の区画領域SAi内部の−X端部がY軸方向に関して所定範囲を超えて収縮し、さらに区画領域SAiがX軸方向に関して所定範囲を超えて収縮していると判断した場合には、図14に示されるように、テーブルTB上の−X側の2つの補助シートホルダSH2を互いに離れる方向(図14中に白抜き矢印で示される方向)に駆動して、シートSの区画領域SAiの−X側端部にY軸方向に関するテンションをさらに付与するとともに、2つの補助シートホルダSH3を互いに離れる方向(黒塗り矢印で示される方向)に駆動して、シートSの区画領域SAiにX軸方向に関するテンションをさらに付与してパターンの歪みを補正(調整)する。
【0077】
調整後、主制御装置50は、各補助シートホルダSH2,SH3をベース601を介して−Z方向に駆動して、シートSの裏面をシートホルダSH1の保持面に接触させ、再度、吸着保持する。
b4. そして、主制御装置50は、シートS上の区画領域SAiに付設されたアライメントマークをアライメント系AL1〜AL12を用いて検出し、その検出結果と、その検出時のステージ干渉計システム18からのステージSSTの位置情報と、に基づき、XY座標系上における12個のアライメントマークの位置座標を再度求める。
b5. そして、主制御装置50は、12個のアライメントマークの位置座標の全部又は一部を用いて、最小二乗法を用いた所定の演算を行って、シートS上の区画領域SAi内に形成済みのパターンの歪み、すなわちXYシフト、回転、XYスケーリング、直交度を求める。
【0078】
ここで、上記b2.の判断の結果、区画領域SAiのY軸方向及びX軸方向に関する収縮量が、所定範囲内に収まっていると判断した場合には、主制御装置50は、b3.及びb4.の処理をスキップして、b5.の処理を行う。
【0079】
その後、主制御装置50は、シートSに対してX軸方向に関して所定のテンションを与えるために用いられたシート搬送系の40の所定の搬送ローラ部によるシートSの拘束(固定)を解除する。
【0080】
なお、検出すべきアライメントマークの数より、アライメント系の数が少ない場合には、シートSを保持したステージSSTをX軸方向にステップ移動させつつ、アライメント計測を行う必要がある。この際、主制御装置50は、ステージSSTの動きに合わせて、シート搬送系40の各駆動ローラの回転、停止を制御する。
【0081】
c.次いで、シートS上の区画領域SAiに対する走査露光が行われる。
c1. 具体的には、主制御装置50は、アライメント計測の結果、特にXYシフトに基づいて、シートSを保持したステージSSTを、露光のための走査開始位置(加速開始位置)に移動して、マスクMを保持したマスクステージMSTに対して位置合わせを行う。ここで、本実施形態では、ステージSSTの加速開始位置は、前述の待機位置と同じ位置(又はその近傍)に設定されているので、XY平面内のステージSSTの位置の微調整が行われる。
【0082】
c2. 次に、主制御装置50は、ステージSSTの走査方向(−X方向)の加速を開始する。これにより、ステージSSTの−X方向の移動が開始され、その移動の途中、具体的には、ステージSSTの加速終了の前に、図15に示されるように、干渉計18Y2からの測長ビームが反射面17Yに当たり始めるので、その直後に、主制御装置50は、ステージSSTのY位置を計測するレーザ渉計を干渉計18Y1から干渉計18Y2に切り換える。
【0083】
c3. そして、両ステージSST,MSTの加速が終了し、両ステージSST,MSTが等速同期状態に達すると、照明光IL2,IL4によってマスクM上のパターン領域が照明され始め、露光が開始される。そして、両ステージSST,MSTによる等速同期移動の進行により、図16に示されるように、照明光IL1〜IL5によってそれぞれマスクM上の照明領域IAM1〜IAM5(図2参照)が照明され、照明領域IAM1〜IAM5内のパターンの部分像がそれぞれ投影光学系PL1〜PL5(図3参照)を介してステージSST上に保持されたシートS上の投影領域IA1〜IA5に投影される。
【0084】
マスクMのパターン領域の全域が照明光IL1〜IL5により照明されると、すなわち照明領域IAM1〜IAM5をマスクMのパターン領域が通り過ぎると、区画領域SAiに対する走査露光が終了する。これにより、区画領域SAi内に、マスクMのパターンが転写される。すなわち、シートS表面に形成されたレジスト層に、マスクMのパターンの潜像が形成される。
【0085】
走査露光中、主制御装置50は、ステージSSTのテーブルTBを水平に保ちつつZ軸方向に駆動して、テーブルTB(シートホルダSH1)上に保持されたシートSの表面を投影光学系PLの焦点位置(焦点深度内)に位置決めする。また、走査露光中、主制御装置50は、アライメント計測の結果に基づいて、ステージSSTとマスクステージMSTとの同期駆動(相対位置及び相対速度)を制御して、シートS上に投影されるパターンの全体像の歪みを補正する。さらに、主制御装置50は、レンズコントローラLCを介して投影光学系PL1〜PL5のそれぞれを構成する光学素子群(レンズ群)を駆動制御して、シートS上の投影領域IA1〜IA5のそれぞれに投影されるパターンの部分像の歪みを補正する。これにより、既に区画領域SAi内に形成されたパターンにマスクMのパターンの投影像が高精度に重ね合わされる。
【0086】
区画領域SAiに対する走査露光の終了後、両ステージSST,MSTが減速され、図17に示されるように、それぞれの走査終了位置(減速終了位置)に到達すると、停止する。なお、本実施形態では、ステージSSTの走査の際の減速終了位置は、ベース部材BSの−X端に一致するように定められている。
【0087】
なお走査露光中、主制御装置50は、シートSを保持したステージSSTを−X方向に駆動する際、先と同様に、ステージSSTの動きに合わせて、そのステージSSTの動きが、シートSに作用するテンションによって阻害されることがないように、シート搬送系40の各駆動ローラを、適宜、回転、停止する。
【0088】
d. 図17に示されるように、ステージSSTが減速終了位置であるベース部材BS正面の−X端に停止すると、主制御装置50は、シートホルダSH1と補助シートホルダSH2によるシートSの吸着保持を解除して、ステージSSTからシートSを放す。さらに、主制御装置50は、ステージSSTのテーブルTBを下方(−Z方向)に退避させる。これにより、シートSは、ステージSSTのシートホルダSH1との間に僅かな空間を挟んで、搬送ローラ部42,43間に張られた状態になる。
【0089】
e. シートSを放した後、主制御装置50は、図18に示されるように、シートステージSSTを、黒塗り矢印で示されるように、+X方向に駆動して、ベース部材BS上の+X端の前述の待機位置に戻す。ここで、シートステージSSTのX位置に応じて、そのY位置を計測する干渉計が干渉計18Y2から干渉計18Y1に切り換えられる。また、主制御装置50は、マスクステージMSTを走査開始位置(加速開始位置)へ高速度で戻し駆動する。また、ステージ駆動と並行して、主制御装置50は、図18に示されるように、シートSを白抜き矢印で示されるように、+X方向に引き戻す。
【0090】
f. 上述のステージSST及びマスクステージMSTの戻し駆動と、シートSの引き戻しとが完了すると、図19に示されるように、ステージSSTが待機位置にて待機し、待機中のステージSST上に次の区画領域SAi+1を含むシートSの中央部が位置合わせされる。この状態は、シートSが1区画領域分送られたことを除いて、図10に示される状態と同じである。
【0091】
その後、主制御装置50は、先と同様に、区画領域SAi+1に対する露光を開始する。以降同様に、主制御装置50は、上述のa.〜f.の手順を繰り返し、シートS上の全ての区画領域を露光する。
【0092】
以上詳細に説明したように、主制御装置50により、シート搬送系40の搬送ローラ部41,42,44の各ローラの回転を止めた状態で搬送ローラ部43の各ローラが回転され(あるいは搬送ローラ部41,43,44の各ローラの回転を止めた状態で搬送ローラ部42の各ローラが逆回転され、)シートSが搬送ローラ部42,43間でX軸方向に関して所定のテンションを与えられ、張られる。そして、合計6つの補助シートホルダSH2、SH3により、シートSが仮保持された後、主制御装置50により、シートSを仮保持したまま6つの補助シートホルダSH2,SH3が−Z方向に微小駆動されて、区画領域SAiを含むシートSの中央部の裏面がシートホルダSH1の保持面上に接触される。そして、主制御装置50により、6つの補助シートホルダSH2,SH3の保持面がシートホルダSH1の保持面より僅かに下方(−Z側)に位置決めされ、これにより、シートSに幅方向(Y軸方向)及び長尺方向に関する適当なテンションが加えられた状態で、シートSの中央部がシートホルダSH1の保持面上に固定される。すなわち、シートSの区画領域SAiにXY二次元方向のテンションが付与された状態で、シートSの区画領域SAiに対応する裏面部分が、シートホルダSH1の平坦状の保持面に吸着される。そして、照明系IOPにより、シートホルダSH1の保持面に吸着され、平坦化された状態のシートSの区画領域SAiにマスクMのパターンを介した照明光IL1〜IL5が照射され、シートSが走査露光され、パターンが形成される。従って、プロセスの処理により例えば熱等が加えられ、収縮したシートSであっても、高精度な露光が可能になる。従って、装置の大型化を招くことなく、フレキシブルな大画面のディスプレイなどの電子デバイスの製造に貢献することが可能になる。
【0093】
なお、上記実施形態では、シート搬送系40の搬送ローラ部により、シートSにX軸方向に関する所定のテンションが付与された状態で、さらに区画領域SAiを含むシートSの中央部の裏面がシートホルダSH1の保持面に吸着される際に、2つの補助シートホルダSH3の保持面がシートホルダSH1の保持面より僅かに下方(−Z側)に位置決めされることで、シートSにX軸方向に関するさらなるテンションが付与される場合について説明した。しかし、これに限らず、シートSを吸着保持した2つの補助シートホルダSH3の−Z方向及び互いに離れる方向の移動のみで、シートSにX軸方向に関するテンションを付与することとしても良いし、あるいは補助シートホルダSH3を設けることなく、シート搬送系40の構成部分によるシートの拘束によってシートSにX軸方向に関するテンションを付与することとしても良い。この場合において、シート搬送系40の内部に図20(A)及び図20(B)に示されるようなクランパ部45をさらに設けても良い。
【0094】
クランパ部45は、例えば図20(A)に示されるように、搬送ローラ部42の−X側に設置される。クランパ部45は、シートSを上下から挟持する第1の状態と、その挟持を解除する第2の状態とを設定可能な一対のクランパ部材451、452を含む。
【0095】
上側に位置するクランパ部材451は、シートSの幅より幾分長い長さでY軸方向に沿って配置された円筒状のローラ46aと、該ローラ46aの両端を回転自在に支持する一対のアーム部材46b、とを含む。一対のアーム部材46bは、Y軸に平行な回転軸を中心として回動可能に不図示の支持部材に支持されている。また、一対のアーム部材46bはその回動端部に、ローラ46aが取り付けられている。従って、クランパ部材451は、図20(B)に示されるように、一対のアーム部材46bの回転軸を中心として時計回りに回転することで、ローラ46aが、シートSの表面に接触し、この反対に一対のアーム部材46bの回転軸を中心として反時計回りに回転することで、ローラ46がシートSから離れる。
【0096】
下側に位置するクランパ部材452は、クランパ部材451と、上下対称であるが同様に構成されている。クランパ部45の状態切り替えは、主制御装置50によって行われる。
【0097】
シート搬送系40では、図20(B)に示されるように、クランパ部45の一対のクランパ部材451、452が第1の状態に設定され、一対のクランパ部材451、452によりシートSが拘束(固定)され、且つ搬送ローラ部41,42の各ローラの回転が止められた状態で搬送ローラ部43の各ローラがシートSの送り方向に回転されることで、シートSのクランパ部45と搬送ローラ部43との間の部分にX軸方向に関して所定のテンションが与えられる。
【0098】
ここで、主制御装置50は、図20(A)に示されるように、シートSの表面のパターンが形成される区画領域部分にはローラ46aが接触しないように、すなわちクランパ部45の一対のクランパ部材451、452のローラ46aをシートSの隣接する区画領域SAの間の領域に接触させて、シートSを拘束(固定)する。
【0099】
なお、上記実施形態の露光装置100では、Y軸方向に離れて、X軸方向に沿ってそれぞれ配列されたアライメント系AL1〜AL12を用いて、シートSに対するアライメント計測を行った。しかし、これに限らず、例えばアライメントマークをシートS上の区画領域SAiの周囲に所定間隔で配置し、このアライメントマークの配置に対応してアライメント系AL’を、図21に示されるように、区画領域SAiの周囲部に対応する配置とし、全てのアライメントマークを同時に検出することとしても良い。この場合、このアライメントマークの位置の計測結果に基づいて、区画領域SAiが、X軸方向に関して縮んでいることが分かった場合、主制御装置50は、シートSを吸着保持した2つの補助シートホルダSH3を、互いに離れる方向に駆動して、シートSにX軸方向のテンションを与えて、区画領域のX軸方向のスケーリング誤差を調整しても良い。また、補助シートホルダSH3を、シートホルダSH1をX軸方向に挟んで複数対配置し、アライメントマークの位置の計測結果に基づいて、各対の補助シートホルダSH3を個別に用いて、区画領域内部のY位置に応じて異なるX軸方向のスケーリング誤差を調整するようにしても良い。
【0100】
なお、上記実施形態では、既に複数の区画領域のそれぞれにパターンが形成されたシートSを露光対象として、露光装置100により、第2層以降の露光を行う場合について例示したが、これに限らず、未露光のシートSを露光対象として、露光装置100により、第1層の露光を行うことも勿論可能である。
【0101】
また、上記実施形態では、ステージSST及びマスクステージMSTを−X方向に走査駆動してシートSに対する走査露光(マイナススキャン露光と呼ぶ)を行う場合について説明したが、これに加えて、ステージSST及びマスクステージMSTを+X方向に走査駆動してシートSに対する走査露光(プラススキャン露光)が可能な構成を採用して、マイナススキャン露光とプラススキャン露光とを交互に繰り返して、シートS上の複数の区画領域SAk-1、SAk、SAk+1、……を、露光することとしても良い。このようにすると、マスクステージMST及びステージSSTの巻き戻しが不要となる。この場合、ベース部材BS上の−X端にてシートSをステージSST上に保持するために、搬送ローラ部43,44の+X側に追加のクランパを配置することが望ましい。また、投影光学系PLの−X側にもアライメント系を配置すると良い。
【0102】
また、上記実施形態では、1つのステージSSTのみを用いる構成を採用したが、2つあるいはそれ以上のステージを用いてシートの露光対象の区画領域の裏面を順番に吸着保持する構成を採用することも可能である。この場合には、ステージは、ベース部材上で走査露光区間を含む閉じた経路を周回するようステージ装置SSを構成すると良い。これにより、1つの区画領域に対する露光が終了後、使用したステージを走査露光区間外に退避させ、直ちに別のステージを用いて次の区画領域に対する露光を開始することができる。また、複数のステージを用いて複数のシートを並行して露光する構成を採用することも可能である。
【0103】
なお、上記実施形態の露光装置では、ステージ(テーブル)の上面に、Z軸方向に微小駆動可能な補助シートホルダを設けたが、これに代えて、あるいはこれとともに、シートホルダをZ軸方向に微小駆動可能に構成することもできる。これにより、シートを仮保持した補助シートホルダとシートホルダとをZ軸方向に相対的に駆動して、ステージ(シートホルダ)上にシートを着脱することも可能となる。また、上記実施形態では、シート搬送系40が備える搬送ローラ部をZ軸方向に昇降可能に構成することもできる。これにより、シートを張る搬送ローラ部を昇降させて、ステージ(シートホルダ)上にシートを着脱することも可能となる。
【0104】
また、上記実施形態では、ステージSSTが、中心を通るY軸に関して非対称である場合を例示したが、これに限らず、中心を通るX軸及びY軸に関して対称なステージを用いても良いことは勿論である。この場合には、走査露光の終了直後に干渉計18Y2によるステージの位置計測が出来なくなるので、そのY位置を計測するための計測装置を設けることが望ましい。
【0105】
また、上記実施形態では、ステージSSTの位置計測系として干渉計システム18を採用したが、これに代えてエンコーダ(又は複数のエンコーダから構成されるエンコーダシステム)を採用しても良い。あるいは、干渉計システム18とエンコーダとを併用しても良い。また、マスクステージの位置計測系として干渉計システムを採用したが、これに代えてエンコーダ(又は複数のエンコーダから構成されるエンコーダシステム)を採用しても良い。あるいは、干渉計システムとエンコーダとを併用しても良い。
【0106】
また、上記実施形態の露光装置100では、等倍マルチレンズタイプの投影光学系が用いられたが、これに限らず、例えば米国特許出願公開第2008/0165334号明細書等に開示されている拡大マルチレンズタイプの投影光学系を用いることも可能である。また、投影光学系は、マルチレンズタイプに限られないことは勿論である。また、投影光学系は、等倍系、拡大系に限らず、縮小系であっても良いし、反射屈折系に限らず、屈折系、反射系でも良く、その投影像は正立像、倒立像のいずれでも良い。
【0107】
また、露光装置100の光源として、g線(波長436nm)、h線(波長405nm)、i線(波長365nm)等の輝線を発する超高圧水銀ランプのみならず、固体レーザ(例えばYAGレーザの3倍高調波:波長355nm)、KrFエキシマレーザ(248nm)、ArFエキシマレーザ(193nm)、F2レーザ(157nm)を用いることもできる。
【0108】
また、上記各実施形態では、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)が形成された光透過型マスクを用い、該マスクのパターンを投影光学系を介してシート上に投影する場合について例示した。しかし、これに限らず、マスクに代えて、所定方向へ進行する光の振幅(強度)、位相あるいは偏光の状態を空間的に変調する素子である空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)、例えば反射型の空間光変調器、すなわち非発光型画像表示素子、例えばDMD(Digital Micro-mirror Device)、反射型液晶表示素子、電気泳動ディスプレイ(EPD:Electro Phonetic Display)、電子ペーパー(または電子インク)、光回折型ライトバルブ(Grating Light Valve)等を用いて、パターンの電子データに基づいて、透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する電子マスク(可変成形マスク、アクティブマスク、あるいはイメージジェネレータとも呼ばれる)を用いても良い。かかる電子マスクについては例えば米国特許第6,778,257号明細書に開示されている。また、透過型液晶表示素子(LCD:Liquid Crystal Display)、エレクトロクロミックディスプレイ(ECD)等の透過型空間光変調器を用いる電子マスクを用いても良い。例えば、DMD等の電子マスクを用いる場合、シート材上に形成すべきパターンに対応するエネルギビームが電子マスクから投影光学系を介してシート材上に投射され、そのパターンに対応する像がシート材上に形成される。この場合において、投影光学系を用いない場合には、電子マスクにより、上記パターンに対応するエネルギビームがシート上に照射され、そのシート上にパターンが形成される。
【0109】
露光装置の用途としては液晶表示素子用の露光装置に限定されることなく、例えば、有機EL表示素子としてのフレキシブルディスプレイ、及び電子ペーパー、並びにプリント配線基板などを製造するための露光装置にも広く適用できる。
【0110】
また、シート上にパターンを形成する装置は、前述の露光装置(リソグラフィシステム)に限られず、例えばインクジェット方式にてシート上にパターンを形成する装置にも本発明を応用することができる。この場合、上述の複数の投影光学系PL1〜PL5をY軸方向に沿って配列する代わりに、複数(もしくは大型の1つの)インクジェット用ヘッドをY軸方向に沿って配置すると良い。
【0111】
《デバイス製造方法》
上記各実施形態の露光装置を用いてシート上に所定のパターンを形成することによって、電子デバイス、一例として液晶表示素子を製造することができる。
【0112】
[パターン形成工程]
まず、上記各実施形態の露光装置により、シート上に形成すべきパターンに対応する像が投影光学系を介してレジストが塗布されたシート上に順次形成する、いわゆる光リソグラフィ工程が実行される。この光リソグラフィ工程によって、シート上には多数の電極等を含む所定パターンが形成される。その後、露光されたシートは、現像工程、エッチング工程、レジスト剥離工程等の各工程を経ることによって、シート上に所定のパターンが形成される。
【0113】
[カラーフィルタ形成工程]
次に、R(Red)、G(Green)、B(Blue)に対応した3つのドットの組がマトリックス状に多数配列されたカラーフィルタ、又はR、G、Bの3本のストライプのフィルタの組が複数水平走査線方向に配列されたカラーフィルタを形成する。
【0114】
[セル組み立て工程]
カラーフィルタ形成工程の後に、パターン形成工程にて得られた所定パターンを有するシート、及びカラーフィルタ形成工程にて得られたカラーフィルタ等を用いて液晶セルを組み立てる、セル組み立て工程が実行される。セル組み立て工程では、例えば、パターン形成工程にて得られた所定パターンを有するシートとカラーフィルタ形成工程にて得られたカラーフィルタとの間に液晶を注入して、液晶パネル(液晶セル)を製造する。
【0115】
[モジュール組立工程]
その後、組み立てられた液晶セルの表示動作を行わせる電気回路、バックライト等の各部品を取り付けて液晶表示素子として完成させる。従って、このマイクロデバイスの製造方法のパターン形成工程においては、所望の線幅のパターン像を所望の位置に精度良く形成することができ、結果的に液晶表示素子を歩留り良く製造することができる。
【0116】
また、上記各実施形態における露光装置及び露光方法は、フレキシブルディスプレイをはじめとするフレキシブルな電子デバイス(マイクロデバイス)を製造するのに適している。例えば、前述した第1の実施形態において、シートの長尺方向に関して、ローラ401と露光装置100との間にシートSの表面にレジストを塗布するレジスト塗布装置等、露光装置100と巻き取りローラ402との間にパターンが形成されたシートSを現像する現像装置を配置し、電子デバイスを製造する製造ラインを構築することも可能である。
【0117】
なお、一般には上述の実施形態の露光装置及び露光方法を用いて、シートSにパターンを形成することと、パターンが形成されたシートSをそのパターンに基づいて処理することとを経て、少なくともシートSの一部を含む電子デバイスを製造することができる。ここで、形成されたパターンに基づいてシートSを処理することには、その形成されたパターンに基づいてシートSを現像すること、エッチングすること、又は印刷すること等が適宜適用可能である。また、印刷することとして、その形成されたパターンに基づいて、例えば導電性インク等の所定材料をシートSに塗布すること等が適用可能である。なお、この印刷することとして、機能性材料(例えば、紫外線の照射によって材料の撥水性、親水性又は疎水性等の性質が変化するもの)の層をシートSに予め形成し、この機能性材料の層に露光パターンを形成し、この形成した露光パターンに対応して導電性インク等の材料をシートSに塗布すること等が適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明の露光装置及び露光方法は、長尺シート上にパターンを形成するのに適している。また、本発明のデバイス製造方法は、電子デバイス(マイクロデバイス)を製造するのに適している。
【符号の説明】
【0119】
40…シート搬送系、41,42,43,44…搬送ローラ部、412,422,432,442…駆動ローラ、45…クランパ部、451、452…クランパ部材、50…主制御装置、60…ホルダ駆動装置、601…ベース、61…平行リンク機構、63…駆動機構、100…露光装置、S…シート、SH2…補助シートホルダ、SH3…補助シートホルダ、SH1…シートホルダ、TB…テーブル、IOP(IOP1〜IOP5)…照明系、PL(PL1〜PL5)…投影光学系、IL1〜IL5…照明光、AL1〜AL12…アライメント系、AM…アライメントマーク、LC…レンズコントローラ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン形成装置及びパターン形成方法、並びにデバイス製造方法に係り、さらに詳しくは、走査露光により、長尺のシート材の表面の複数領域にパターンを形成するパターン形成装置及びパターン形成方法、並びに該パターン形成方法を用いて電子デバイスを製造するデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネルなどのフラットディスプレイパネルは、次第に大型化している。例えば、液晶ディスプレイパネルの場合、その製造に用いられるガラス基板(大型基板)は、複数画面分纏めて効率良く生産するために1辺の長さが3mを超えるような大型基板が用いられるようになっている。そのため、基板を保持するステージ装置は、基板が大型化するほど巨大化し、十数kgの基板を処理するステージ装置では、可動部の重量が10トン近く、装置全体の重量は100トンを超えるようになってきた。このため、近い将来には、基板がさらに大型化し、その製造、及び搬送が困難となるものと予想される上、ステージ装置がさらに大型化し、インフラ整備に巨額の投資が必要になることは確実である。
【0003】
一方、主としてプリント配線基板の製造分野などで採用されているが、ロールシート状の記録媒体を、被露光物体とする露光装置が知られている。かかる露光装置を、例えば液晶表示素子の製造に適用すれば、上述したガラス基板の大型化に伴う種々の課題から解放されるので、将来の液晶表示素子製造用の露光装置の1つの選択枝になるものと期待される。
【0004】
従来のシート状の記録媒体に対する露光装置としては、例えば特許文献1〜3に開示される露光装置が知られているが、これらの露光装置を液晶表示素子製造用にそのまま用いても、所望の精度の液晶表示素子を製造することは困難である。一例を挙げれば、液晶表示素子は露光によりパターンを複数層に渡って重ね合わせて製造するが、層間のプロセスを経ることで、加熱等によりシートが収縮するなどの現象が生じ、かかる現象に対処する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5652645号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0066715号明細書
【特許文献3】米国特許第6243160号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、長尺のシート材の所定領域に所定のパターンを形成するパターン形成装置であって、前記シート材の前記所定領域を含む部分に2次元のテンションを付与するテンション付与装置と;平坦状の基準面を有する基準面部材を含み、前記2次元のテンションが付与された前記シート材の前記所定領域に対応する裏面部分を前記基準面に吸着する吸着装置と;前記基準面に吸着された前記シート材の前記所定領域に前記パターンに対応するエネルギビームを照射する照射装置と;を備えるパターン形成装置が、提供される。
【0007】
これによれば、テンション付与装置により、シート材の所定領域を含む部分に2次元のテンションが付与され、吸着装置により、2次元のテンションが付与された前記シート材の前記所定領域に対応する裏面部分が平坦状の基準面に吸着される。そして、照射装置により、基準面に吸着されて平坦化された状態のシート材の前記所定領域にパターンに対応するエネルギビームが照射され、シート材が露光され、パターンが形成される。従って、プロセスの処理により例えば熱等が加えられ、収縮したシート材であっても、高精度な露光が可能になる。
【0008】
本発明の第2の態様によれば、長尺のシート材の表面の所定領域に所定のパターンを形成するパターン形成方法であって、前記シート材の前記所定領域を含む部分に2次元のテンションを付与することと;前記2次元のテンションが付与された前記シート材の前記所定領域に対応する裏面部分を平坦状の基準面に吸着することと;前記基準面に吸着された前記シート材の前記所定領域に前記パターンに対応するエネルギビームを照射することと;を含むパターン形成方法が、提供される。
【0009】
これによれば、プロセスの処理により例えば熱等が加えられ、収縮したシート材であっても、高精度な露光が可能になる。
【0010】
本発明の第3の態様によれば、本発明のパターン形成方法を用いて長尺のシート材上にパターンを形成することと;パターンが形成された前記シート材に処理を施すことと;を含むデバイス製造方法が、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一実施形態の露光装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】図1の露光装置が備えるマスクステージの概略構成及び照明領域の配置を示す平面図である。
【図3】図1の露光装置が備える投影光学系及びシート上の投影領域(露光領域)の配置を示す平面図である。
【図4】図4(A)及び図4(B)は、それぞれ、ステージの概略構成を示す側面図及び平面図である。
【図5】図5(A)は、補助シートホルダ及びホルダ駆動装置近傍のテーブルの断面図、図5(B)は図5(A)のB−B’線断面図である。
【図6】図1の露光装置が備えるシート搬送系及びステージ装置を示す平面図である。
【図7】図7(A)は、搬送ローラ部41,42の近傍を示す平面図、図7(B)は、搬送ローラ部41を示す側面図、図7(C)〜図7(G)は、シート搬送系の機能を説明するための図である。
【図8】シートS上の各区画領域に付設されたアライメントマークの配置の一例を示す図である。
【図9】図1の露光装置が備える主制御装置の入出力関係を示すブロック図である。
【図10】図1の露光装置におけるシートの露光のための動作の流れを説明するための図(その1)である。
【図11】補助シートホルダを用いたシートの仮保持を説明するための図である。
【図12】図1の露光装置におけるシートの露光のための動作の流れを説明するための図(その2)である。
【図13】図1の露光装置におけるシートの露光のための動作の流れを説明するための図(その3)である。
【図14】補助シートホルダを用いたシートの位置合わせを説明するための図である。
【図15】図1の露光装置におけるシートの露光のための動作の流れを説明するための図(その4)である。
【図16】図1の露光装置におけるシートの露光のための動作の流れを説明するための図(その5)である。
【図17】図1の露光装置におけるシートの露光のための動作の流れを説明するための図(その6)である。
【図18】図1の露光装置におけるシートの露光のための動作の流れを説明するための図(その7)である。
【図19】図1の露光装置におけるシートの露光のための動作の流れを説明するための図(その8)である。
【図20】図20(A)及び図20(B)は、変形例に係るシート搬送系を構成するクランパ部について説明するための図である。
【図21】変形例に係るアライメント系の配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を、図1〜図19に基づいて説明する。
【0013】
図1には、一実施形態の露光装置100の概略的な構成が示されている。露光装置100は、可撓性を有するシートあるいはフィルム(以下、シートと総称する)を、被露光物体とする、マルチレンズタイプの投影露光装置、いわゆるスキャナである。本実施形態では、一例として、約100μm厚のシートが用いられるものとする。
【0014】
露光装置100は、照明系IOP、マスクMを保持するマスクステージMST、マスクMに形成されたパターンの像をシートS上に投影する投影光学系PL、シートSを保持するシートステージ(以下、ステージと略述する)SSTを含むステージ装置SS、及びシートSを搬送するシート搬送系40、並びにこれらの制御系等を備えている。
【0015】
なお、本実施形態の露光装置100で用いられるシートSは、連続長尺シートである。シートSはロール状に巻かれ、ローラ401にセットされている。後述するように、シートSは、シート搬送系40(が備える搬送ローラ部41〜44)によってローラ401から引き出され、投影光学系PL直下の領域を通って、巻き取りローラ402によって巻き取られる。また、シートSの表面には、感光剤(レジスト)が塗布されているものとする。本実施形態では、一例として、シートSが、ローラ401から送り出され、巻き取りローラ402に巻き取られるものとしているが、これに限らず、露光の前の処理、例えばレジスト塗布を行うレジスト塗布装置から送り出され、露光の後の処理、例えば現像を行う現像装置に向けて送られるシートも、露光装置100によって露光を行うことは可能である。
【0016】
以下においては、投影光学系PLの物体面側及び像面側部分の光軸(ただし、両部分の中間の部分を除く)に平行な鉛直方向(図1における紙面内の上下方向)をZ軸方向、これに直交する面内でマスクMとシートSとが投影光学系PLに対して相対走査される走査方向(図1における紙面内の左右方向)をX軸方向、Z軸及びX軸に直交する方向をY軸方向とし、X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明する。
【0017】
照明系IOPは、複数、ここでは5つの照明系モジュール(以下、単に照明系と呼ぶ)IOP1〜IOP5を備えている。照明系IOP1〜IOP5のそれぞれは、紫外光を発する超高圧水銀ランプ(光源)と、光源からの紫外光を集光する楕円鏡、集光された紫外光の光路上に配置された波長選択フィルタ、オプティカルインテグレータ、視野絞り等を含む照明光学系(いずれも不図示)と、を備えている。波長選択フィルタを介して、紫外光から紫外域の輝線、例えばi線(波長365nm)(g線(波長436nm)、又はh線(波長405nm))等が照明光IL1〜IL5として抽出される。抽出された照明光IL1〜IL5は、それぞれ光軸AX1〜AX5に沿って、照明系IOP(IOP1〜IOP5)外に(マスクMに向けて)射出される(図2参照)。
【0018】
なお、光軸AX1,AX3,AX5は、図2に示されるように、XY平面(マスクMのパターン面)内において、Y軸方向に所定の間隔で配置されている。また、光軸AX2,AX4は、光軸AX1,AX3,AX5から+X側に所定距離隔てて、それぞれ光軸AX1,AX3の間及び光軸AX3,AX5の間に配置されている。すなわち、光軸AX1〜AX5は、XY平面内において千鳥状に配置されている。
【0019】
照明系IOP1〜IOP5は、照明光IL1〜IL5により、それぞれ、光軸AX1〜AX5を中心にマスクM上の照明領域IAM1〜IAM5を均一な照度で照明する。各照明領域は、照明光学系内の視野絞り(不図示)によって規定される等脚台形状を有する。なお、照明系IOP(IOP1〜IOP5)の構成の詳細については、例えば、米国特許第6,552,775号明細書等に開示されている。
【0020】
マスクステージMSTは、図1に示されるように、照明系IOPの下方(−Z側)に配置されている。マスクステージMST上には、矩形のパターン領域がそのパターン面(−Z側の面)に形成された矩形のマスクMが、例えば真空吸着により、固定されている。マスクステージMSTは、リニアモータ等を含むマスクステージ駆動系MSD(図1では不図示、図9参照)により、XY平面内で微小駆動可能であり、且つ走査方向(X軸方向)に所定のストロークで所定の走査速度で駆動可能である。
【0021】
マスクステージMSTのXY平面内での位置情報は、マスクステージ干渉計システム16(図9参照)の一部をそれぞれ構成するレーザ干渉計(以下、干渉計と略述する)16X,16Yにより、常時、例えば0.25〜1nm程度の分解能で計測される。マスクステージMSTの+X側面及び−Y側面には、それぞれ鏡面加工が施され、図2に示されるように、反射面15X,15Yが形成されている。干渉計16Xは、X軸に平行な光路に沿って複数の測長ビームを反射面15Xに照射し、それぞれの反射面15Xからの反射光を受光して、マスクステージMSTのX軸方向に関する位置(X位置)及びθz方向の回転を計測する。干渉計16Xの実質的な測長軸は、光軸AX3と直交するX軸に平行な軸である。干渉計16Yは、光軸AX1及びAX2とそれぞれ直交するY軸に平行な光路に沿って2つの測長ビームを反射面15Yに照射し、反射面15Yからの反射光を受光して、マスクステージMSTのY軸方向に関する位置(Y位置)を計測する。なお、上述の反射面15X,15Yの代わりに、平面鏡から成る移動鏡を、マスクステージMSTに固定しても良い。
【0022】
干渉計16X,16Yの計測情報は、主制御装置50に供給される(図9参照)。主制御装置50は、干渉計16X,16Yの計測情報(マスクステージMSTの位置情報)に基づいて、マスクステージ駆動系MSDを介してマスクステージMSTを制御する。
【0023】
投影光学系PLは、図1に示されるように、マスクステージMSTの下方(−Z側)に配置されている。本実施形態の投影光学系PLは、例えば図3に示されるように、光軸AX1〜AX5の配置に対応して千鳥状に配置された5つの投影光学系モジュール(以下、単に投影光学系と呼ぶ)PL1〜PL5を含む。図1では、投影光学系PL3,PL5及びPL4はそれぞれ投影光学系PL1及びPL2の紙面奥側に位置する。投影光学系PL1〜PL5のそれぞれとして、例えば、等倍正立像を像面上に形成する両側テレセントリックな反射屈折系が用いられている。
【0024】
上述の投影光学系PL1〜PL5(光軸AX1〜AX5)の配置により、投影光学系PL1〜PL5によってパターンの像が投影されるシートS上の投影領域IA1〜IA5は、照明領域IAM1〜IAM5と同様に、千鳥状に配置される。ここで、投影領域IA1〜IA5は、照明領域IAM1〜IAM5と同様の等脚台形状を有する。投影領域IA1〜IA5の配置と形状により、マスクM上の照明領域IAM1〜IAM5内のパターンの像(部分像)を、それぞれ投影光学系PL1〜PL5を介してシートS上の投影領域IA1〜IA5に投影しつつ、マスクM及びシートSを走査方向(X軸方向)に同期して駆動することにより、シートS上に投影されたパターンの部分像はマスクMに形成されたパターンに等しい1つの像(合成像)に合成される。従って、走査露光により、マスクMのパターンが投影光学系PL1〜PL5を介してシートS上(の1つのショット領域(区画領域)SAi内)に転写される。なお、走査露光の詳細については後述する。
【0025】
本実施形態では、投影光学系PL1〜PL5として等倍正立像を投影する光学系を採用したため、投影領域IA1〜IA5の形状及び配置(位置関係)は、それぞれ、照明領域IAM1〜IAM5の形状及び配置(位置関係)に等しい。本実施形態の投影光学系PLの構成の詳細については、例えば、米国特許第6,552,775号明細書等に開示されている。
【0026】
露光装置100は、投影光学系PL1〜PL5によってシートS上に投影される投影像の歪み(位置ずれ及び/又は形状誤差)を補正するレンズコントローラLC(図9参照)を備えている。レンズコントローラLCは、投影光学系PL1〜PL5をそれぞれ構成する光学素子群(レンズ群)の少なくとも一部を光軸AX1〜AX5に平行な方向及び光軸AX1〜AX5に垂直なXY平面に対する任意の傾斜方向に駆動する。これにより、シートS上の投影領域IA1〜IA5のそれぞれに投影されるパターンの部分像の歪み(シフト、回転、倍率(スケーリング)等)が補正される。なお、レンズコントローラLCは、上記の光学素子群の駆動に代えて、あるいは加えて、投影光学系PL1〜PL5それぞれの内部に形成された気密室内の気体の圧力を変更する、あるいは、これらとともに、照明光の波長を変更するなどしても良い。
【0027】
ステージ装置SSは、図1に示されるように、投影光学系PL(PL1〜PL5)の下方(−Z側)に配置されている。ステージ装置SSは、床面上に防振機構(不図示)によってほぼ水平に支持されたベース部材BS、ベース部材BS上でシートSを保持して移動するステージSST、ステージSSTを駆動するステージ駆動系SSD(図1では不図示、図9参照)、ステージSSTの位置情報を計測するステージ干渉計システム18(図9参照)等を含む。なお、図1では、ステージSST上に、シートSが吸着保持されている。
【0028】
ステージSSTは、図1に示されるように、底面に設けられた複数の非接触軸受(例えばエアベアリング(不図示))によりベース部材BS上に浮上支持されるステージ本体STと、ステージ本体ST上に配置されたZ・レベリング装置38(図4(A)参照)と、Z・レベリング装置38により3点支持されたテーブルTBと、を有している。
【0029】
Z・レベリング装置38は、図4(B)に示されるように、ステージ本体ST上の一直線上にない3点に配置された3つの例えばボイスコイルモータ等を含むZ駆動機構38a、38b、38cを含む。Z・レベリング装置38により、ステージ本体ST上で、テーブルTBをZ軸方向、θx方向、及びθy方向の3自由度方向に微小駆動することができる。
【0030】
ステージSST(ステージ本体ST)は、ステージ駆動系SSDによりベース部材BS上でX軸方向(走査方向)に走査駆動されるとともに、Y軸方向及びθz方向にも微小駆動される。ステージ駆動系SSDは、ステージSSTをY軸方向に微小駆動する微動装置(不図示)と、微動装置(不図示)を走査方向(X軸方向)に駆動する粗動装置30(図9参照)と、を含む。
【0031】
粗動装置30は、図4(B)及び図6に示されるように、ステージSSTのY軸方向の一側と他側にそれぞれ設けられた一対のリニアモータ301,302を含む。一方のリニアモータ301は、ベース部材BSの−Y側に配置されたX軸方向に延びる固定子311と、固定子311にその長手方向に沿って移動可能に取り付けられた可動子321とを含む。他方のリニアモータ302は、ベース部材BSの+Y側に配置されたX軸方向に延びる固定子312と、固定子312にその長手方向に沿って移動可能に取り付けられた可動子322とを含む。固定子311、312のそれぞれは、X軸方向に沿って配列された複数の磁石(又はコイル)を有し、可動子321、322のそれぞれは、コイル(又は磁石)を有する。可動子321,322は、それらをY軸方向に微小駆動する微動装置(不図示)を介して、それぞれステージ本体STの−Y側面及び+Y側面に固定されている。なお、リニアモータ301,302に異なる推力を発生させることにより、ステージ本体STをθz方向に微小駆動することができる。なお、粗動装置30及び微動装置に代えて、例えば米国特許第5,196,745号明細書などに開示されているローレンツ電磁力駆動方式の平面モータ、可変磁気抵抗駆動方式の平面モータ、磁気浮上型の平面モータ等により、ステージSSTをベース部材BS上面(ガイド面)に沿って2次元駆動するステージ駆動系を構成しても良い。
【0032】
テーブルTBは、上述の粗動装置30、微動装置(不図示)、及びZ・レベリング装置38を含むステージ駆動系SSD(図9参照)によって、ベース部材BS上でX軸方向,Y軸方向,Z軸方向,θx方向,θy方向,及びθz方向の6自由度方向に駆動される。
【0033】
テーブルTBの上面の中央部には、図4(A)及び図4(B)に示されるように、シートSを吸着保持するシートホルダSH1が設けられている。シートホルダSH1は、XY平面にほぼ平行であり且つシートS上に配列される区画領域より幾分大きな矩形状の保持面を有し、その保持面上にシートSを平坦に保持する。ここでは、シートSを吸着保持するため、シートホルダSH1として、ピンの配列間隔(ピッチ)が十分細かく、ピンの高さが低い、例えば200μm程度のピンチャックホルダが採用されている。
【0034】
また、テーブルTBの上面には、シートS上に配列される区画領域の周囲の裏面を吸着保持する6つの補助シートホルダSH2,SH3が設けられている。具体的には、シートホルダSH1の±Y側に、X軸方向に細長い各2つの補助シートホルダSH2が、X軸方向に関して所定の距離を隔てて配置されている。また、シートホルダSH1の±X側に、Y軸方向に細長い各1つの補助シートホルダSH3が配置されている。補助シートホルダSH2,SH3のそれぞれは矩形状の保持面を有し、その保持面をテーブルTB内に設けられたホルダ駆動装置によりそれぞれ長手方向と直交する方向及びZ軸方向に微小駆動可能に構成されている。
【0035】
図5(A)には、テーブルTBの内部に設けられたホルダ駆動装置60の構成が平面図にて示され、図5(B)には、図5(A)のB−B’線断面図が示されている。ここでは、一例として、テーブルTBの+Y側端部かつ+X側端部に位置する補助シートホルダSH2を駆動するホルダ駆動装置60が示されている。
【0036】
ホルダ駆動装置60は、テーブルTBに形成された中空部の内部に設置された四節リンク機構の一種である平行リンク機構61と、平行リンク機構61(の駆動節)を駆動する駆動機構63と、を含み、補助シートホルダSH2をY軸方向に駆動するY駆動部と、補助シートホルダSH2がその上面に固定された長方形のベース601をテーブルTBの底面上で支持するとともに、Z軸方向に微小駆動する例えば駆動素子、ボイスコイルモータ等によって構成されるZ駆動部(不図示)とを含む。ベース601の一端部(−X端部)に、平行リンク機構61の固定リンクの反対側に位置するリンク(以下、便宜上、平行移動リンクと呼ぶ)が一体的に設けられている。
【0037】
これをさらに詳述すると、平行リンク機構61は、テーブルTBの中空部の+X側の壁に固定された一対のリンク支持部材663,664にそれぞれの一端が接続され、それぞれの他端が上述の平行移動リンクの一端部665と他端部666にそれぞれ接続された一対の揺動リンク644,645を含む。この場合、リンク支持部材663,664がテーブルTBに固定されているので、固定リンクを構成する。その固定リンクと、揺動リンク644,645と、平行移動リンクとは、隣接するリンク同士で、回転対偶を構成している。
【0038】
駆動機構63は、一端がテーブルTBの中空部の側壁の一部に固定されたアクチュエータ62と、アクチュエータ62に一端(駆動点680)が圧接し、中間部の支持点682がテーブルTBの底壁に固定された固定具661に回動可能に支持されたL字状のてこリンク641と、てこリンク641の他端(作用点683)に一端が接続され、他端が上述の平行移動リンクの一部に固定された取り付け部材667に接続された可動リンク642と、を含む。てこリンク641と可動リンク642とは、回転対偶を構成し、可動リンク642と取り付け部材667とは回転対偶を構成している。また、取り付け部材667は、ばね部材(引っ張りばね)643を介してテーブルTBの中空部の−Y側の側壁の一部に固定された取り付け部材662に接続されている。この場合、取り付け部材667とばね部材(引っ張りばね)643とは、回転対偶を構成し、ばね部材(引っ張りばね)643と取り付け部材662とは、回転対偶を構成している。
【0039】
このようにして構成されたY駆動部では、ばね部材(引っ張りばね)643により、てこリンク641の一端(駆動点680)がアクチュエータ62に常時押し付けられている。そして、アクチュエータ62が、ばね部材643の押し付け力に抗して、てこリンク641の一端(駆動点680)を図5(A)中の白抜き矢印で示される方向(+X方向)に駆動することにより、可動リンク642を介して、取り付け部材667が黒塗り矢印で示される方向(+Y方向)に駆動される。すなわち、ベース601と一体で補助シートホルダSH2が+Y方向に駆動される。この場合、補助シートホルダSH2の移動量は、アクチュエータ62の発生する力によって定まる。また、上述の如く、ベース601の下方に配置されたZ駆動部によって補助シートホルダSH2が、ベース601とともに、Z軸方向に駆動されるのであるが、以下では、ベース601により補助シートホルダSH2がZ軸方向に駆動されるものとする。すなわち、ベース601がZ駆動部であるものとする。
【0040】
テーブルTBの+X側端部かつ−Y側端部に設置された補助シートホルダSH2の駆動装置も、X軸に関して対称ではあるが、上述のホルダ駆動装置60と同様に構成されている。また、テーブルTBの±X側に設置された一対の補助シートホルダSH3の駆動装置も、上述のホルダ駆動装置60とその向きが異なる(±90°回転した向きで配置されている)が、同様に構成されている。
【0041】
てこリンク641の力点681と支持点682との間の長さと、支持点682と作用点683との間の長さは、例えば1対3である。そのため、ホルダ駆動装置60(駆動機構63)のアクチュエータ62により駆動点680にててこリンク641の一端を+X方向に10μm駆動すると、てこリンク641の屈曲部(力点681)が−Y方向に10μm駆動され、それにより、てこリンク641の他端(作用点683)が+Y方向に30μm駆動される。従って、ホルダ駆動装置60(駆動機構63)により、補助シートホルダSH2を+Y方向に30μm駆動することができる。また、テーブルTB上にY軸方向に離間して配置された一対の補助シートホルダSH2によりシートSのY軸方向の両端部を保持し、互いに反対向き(離れる方向)に補助シートホルダSH2を駆動することにより、シートSを最大60μm引き伸ばすことができる。同様に、2つの補助シートホルダSH3をX軸方向に30μm駆動することができる。従って、2つの補助シートホルダSH3によりシートSの区画領域のX軸方向の両側の区画領域外の部分の裏面を保持し、互いに反対向き(離れる方向)に2つの補助シートホルダSH3を駆動することにより、シートSをX軸方向に最大60μm引き伸ばすことができる。
【0042】
テーブルTBの−X側端部かつ+Y側、−Y側に設置された補助シートホルダSH2の駆動装置も、Y軸に関して対称ではあるが、上述のホルダ駆動装置60と同様に構成されている。
【0043】
補助シートホルダSH2,SH3は、後述するように、シートSをシートホルダSH1に平坦に保持する際に補助的に使用される。なお、ベース601上の+Y端部には、直方体の位置決め部材602が補助シートホルダSH2に接して固定されている。位置決め部材602は、補助シートホルダSH2の保持面にシートSを吸着保持する際に、シートSの+Y端(又は−Y端)を押さえてシートSをY軸方向に位置決めする役割を持っている。
【0044】
また、テーブルTBの+X側面及び−Y側面には、図4(B)に示されるように、それぞれ、鏡面加工が施され、反射面17X及び17Yが形成されている。これらの反射面17X,17Yは、後述するステージ干渉計システムによるステージSSTの位置計測に用いられる。なお、上述の反射面17Yの代わりに、平面鏡から成る移動鏡を、テーブルTBに固定しても良い。また、反射面17Xの代わりに、レトロリフレクタ又は平面鏡から成る移動鏡を、テーブルTBに固定しても良い。
【0045】
ステージ干渉計システム18(図9参照)は、図6に示されるように、干渉計18X1,18X2,18Y1,18Y2を含み、ステージSST(テーブルTB)のXY平面内での位置情報(θz方向の回転情報を含む)を、常時、例えば0.25〜1nm程度の分解能で計測する。
【0046】
干渉計18X1,18X2及び18Y1,18Y2は、それぞれテーブルTBの反射面17X及び17Yに対向し得るように、投影光学系PLの+X側及び−Y側に配置されている。
【0047】
干渉計18X1,18X2は、テーブルTBの反射面17Xに、X軸と平行な測長ビームをそれぞれ照射し、反射面17Xからの反射光を受光して、ステージSSTのX位置をそれぞれ計測する。干渉計18Y1,18Y2は、Y軸と平行な2つの測長ビームを反射面17Yにそれぞれ照射し、反射面17Yからの反射光を受光して、ステージSSTのY位置をそれぞれ計測する。ここで、干渉計18Y2の2つの測長ビームの一方は、光軸AX1,AX3,AX5と直交するY軸に平行な光路に沿って、他方は、光軸AX2,AX4と直交するY軸に平行な光路に沿って、反射面17Yに照射される。また、干渉計18Y1の2つの測長ビームは、後述するアライメント系AL11、AL12それぞれの検出中心を通るY軸に平行な2つの光路にそれぞれ沿って、反射面17Yに照射される。
【0048】
ステージ干渉計システム18(干渉計18X1,18X2,18Y1,18Y2)の計測情報は、主制御装置50に供給される(図9参照)。なお、ステージSSTが、べース部材BS上にあるとき、そのX位置を問わず、必ず、干渉計18Y1,18Y2の少なくとも一方の測長ビームが、ステージSSTの反射面17Yに照射される。従って、主制御装置50は、ステージSSTのX位置に応じて、干渉計18Y1,18Y2のいずれかの計測情報を使用する。また、主制御装置50は、18X1,18X2の計測情報に基づいて、ステージSSTのθz方向の回転を計測する。
【0049】
なお、干渉計18X1,18X2,18Y1,18Y2のそれぞれとして、Z軸方向に離間する複数の測長ビームを反射面に照射する多軸干渉計を用いることも可能である。この場合、主制御装置50は、ステージSST(テーブルTB)のXY平面内の位置情報(回転情報(ヨーイング量(θz方向の回転量θz)を含む)だけでなく、XY平面に対する傾斜情報(ピッチング量(θx方向の回転量θx)及びローリング量(θy方向の回転量θy))も取得可能となる。
【0050】
シート搬送系40は、図1及び図6示されるように、投影光学系PLを挟んでX軸方向に配列された4つの搬送ローラ部41〜44を備えている。
【0051】
搬送ローラ部41,42,43,44のそれぞれは、例えば図7(A)〜図7(G)に示されるように、上下に位置する一対の圧接ローラと駆動ローラとを含む。下側に位置する駆動ローラ412,422,432,442は、その上端がステージSSTの上面(シートホルダSH1の保持面)より幾分上方(+Z側)に位置するように、その両端が、不図示の支持部材によって回転可能に支持されている(図1参照)。駆動ローラ412,422,432,442は、回転モータ(不図示)によって回転駆動される。上側に位置する圧接ローラ411、421,431,441は、ばね機構(不図示)により、上方(+Z側)から対応する駆動ローラに押し付けられている。
【0052】
ただし、図7(B)に、搬送ローラ部41を取り上げて示されるように、圧接ローラ411は、長手方向の両端部以外の部分の直径が両端部より小さい段付きの円柱状のローラであり、駆動ローラ412は、一定の径を有する円柱状のローラである。
【0053】
搬送ローラ部41,42,43,44のそれぞれでは、代表的に搬送ローラ部41を取り上げて図7(B)に示されるように、圧接ローラ(411)と駆動ローラ(412)とによりシートSを挟持するが、その際シートSの表面のパターンが形成される区画領域に圧接ローラ(411)は接触しない。搬送ローラ部41,42,43,44のそれぞれでは、圧接ローラ(411)と駆動ローラ(412)とによりシートSを挟持可能な第1の状態と、ばね機構による押し付け力に抗して、圧接ローラ(411)を駆動ローラ(412)から離し、シートSの挟持を解除可能な第2の状態とが設定可能である。搬送ローラ部41,42,43,44のそれぞれにおける第1状態と第2の状態との切り替えが、主制御装置50によって行われる。なお、少なくとも一部の駆動ローラを、圧接ローラ411と同様に段付きの円柱状に形成しても良い。
【0054】
駆動ローラ412,422,432,442は、ローラ401、402とともに、主制御装置50によって、その回転、停止が制御される。シートSは、代表的に搬送ローラ部41を取り上げて図7(B)に示されるように、搬送ローラ部の第1の状態で、駆動ローラ(412)がY軸と平行な軸回りに回転(同時に圧接ローラ411が逆向きに回転)すると、その回転方向に送り出される。
【0055】
シート搬送系40では、図7(C)に示されるように、搬送ローラ部41の各ローラ411、412が矢印方向に回転されることで、ローラ401からシートSが白抜き矢印で示される−X方向に引き出され、搬送ローラ部42に向けて送り出される。ここで、搬送ローラ部42の各ローラ421,422の回転が所定のタイミングで止められると、所定の長さ(搬送ローラ部42,43間の離間距離程度)のシートSが、搬送ローラ部41,42間にループ状に撓められる。また、シート搬送系40では、図7(D)に示されるように、搬送ローラ部41の各ローラ411,412の回転が止められた状態で搬送ローラ部42の各ローラ421,422(及び搬送ローラ部43の各ローラ431,432)が矢印方向に回転されることにより、ループ上に撓んだシートSが、投影光学系PLの直下の領域に向けて白抜き矢印で示される−X方向に送り出される。
【0056】
シート搬送系40では、上と同様に、搬送ローラ部43,44の各ローラの回転、停止により、シートSが投影光学系PLの直下の領域から引き出される。すなわち、図7(E)に示されるように、搬送ローラ部44の各ローラ441,442の回転が止められた状態で搬送ローラ部43の各ローラ431,432が矢印の方向に回転されると、シートSが、投影光学系PLの直下の領域から引き出され、引き出されたシートSが搬送ローラ部43,44間にループ状に撓められる。そして、図7(F)に示されるように、搬送ローラ部43の各ローラ431,432の回転が止められた状態で搬送ローラ部44の各ローラ441,442が矢印の方向に回転されることにより、ループ上に撓んだシートSが、搬送ローラ部44の−X側に送り出され、巻き取りローラ402に巻き取られる。
【0057】
また、シート搬送系40では、図7(G)に示されるように、搬送ローラ部41,42の各ローラの回転が止められた状態で搬送ローラ部43の各ローラがシートSの送り方向に回転されることで、あるいは逆に搬送ローラ部43,44の各ローラの回転が止められた状態で搬送ローラ部42の各ローラが逆回転されることで、シートSが搬送ローラ部42,43間でX軸方向に関して所定のテンションが与えられ、張られる。このようにして張られたシートSが、シートステージSST上のシートホルダSH1に吸着保持されるようになっている。
【0058】
シート搬送系40は、さらに、シートSの送り量を計測する計測装置(不図示)、例えば、駆動ローラ412,422,432,442それぞれの回転量を計測するロータリーエンコーダ等を備えている。
【0059】
なお、露光工程中におけるシート搬送系40によるシートSの搬送、ステージSST上へのシートSの保持等の詳細は後述する。
【0060】
さらに、本実施形態の露光装置100には、シートS上の各区画領域に付設されたアライメントマークを検出するための複数、ここでは12個のオフアクシス方式のアライメント系AL1〜AL12が設けられている。アライメント系AL1〜AL6は、図6に示されるように、投影光学系PLの+X側の位置に、シートS上の各区画領域外部の+Y側端部の領域に対向して、X軸に沿って配列されている。また、アライメント系AL7〜AL12は、図6に示されるように、投影領域IA3の光軸と直交するX軸に関して、アライメント系AL1〜AL6に対して対称に配置されている。アライメント系AL7〜AL12は、シートS上の各区画領域外部の−Y側端部の領域に対向し得る。
【0061】
本実施形態では、一例として、図8に示されるように、シートS上の各区画領域SAiのY軸方向の両外側の領域には、各6つ、合計12個のアライメントマークAMが形成されており、これら12個のアライメントマークAMを個別にかつ同時に検出するためにアライメント系AL1〜AL12が設けられている。従って、これに限らず、アライメント系がX軸方向に移動可能であれば、アライメント系AL1〜AL6の代わりに、少なくとも1つ、アライメント系AL7〜AL12の代わりに、少なくとも各1つのアライメント系を備えていれば良い。
【0062】
アライメント系AL1〜AL12としては、一例として画像処理方式のFIA(Field Image Alignment)系が採用されている。アライメント系AL1〜AL12の検出結果(指標マークと検出対象マークとの画像情報)は、アライメント信号処理系(不図示)を介して主制御装置50に送られる。なお、FIA系に限らず、コヒーレントな検出光を対象マークに照射し、その対象マークから発生する散乱光又は回折光を検出し、あるいはその対象マークから発生する2つの回折光(例えば同次数)を干渉させて検出するアライメントセンサを、単独であるいは適宜組み合わせて、用いることも可能である。
【0063】
図9には、露光装置100の制御系を中心的に構成し、構成各部を統括制御する主制御装置50の入出力関係を示すブロック図が示されている。
【0064】
次に、本実施形態の露光装置100において、ステージSSTを用いたシートSの露光のための動作の流れについて、図10〜図18に基づいて説明する。また、以後の動作説明は、多数の図面を用いて行うが、図面毎に同一の部材に符号が付されていたり、付されていなかったりしている。すなわち、図面毎に、記載している符号が異なっているが、それら図面は符号の有無に関わらず、同一構成である。これまでに説明に用いた、各図面についても同様である。
【0065】
図10には、シートS上に配列された複数の区画領域のうち、最初の(i−1)個の区画領域SA1〜SAi−1に対する露光が既に終了し、次の区画領域SAiに対する露光のための処理が開始される直前の状態が示されている。図10の状態では、区画領域SAiに対する露光の際にシートSの移動のために使用されるステージSSTがベース部材BS上の+X端部の位置(待機位置)にて待機している。
【0066】
なお、マスクMのマスクステージMST上へのロード及びマスクアライメント(マスクの位置合わせ)は、通常、シートS上の最初の区画領域SA1に対する露光開始前に行われるので、図10の状態では、当然にマスクMのロード及びマスクアライメントは終了している。また、マスクステージMSTは、区画領域SAiに対する露光のための走査開始位置(加速開始位置)へ移動しているものとする。
【0067】
a. まず、次のa1.〜a4.の手順に従って、区画領域SAiを含むシートSの中央部がステージSST上に保持される。
a1. 具体的には、主制御装置50は、例えば先に図7(C)を用いて説明したように、シート搬送系40の搬送ローラ部42の各ローラの回転を止めた上で搬送ローラ部41の各ローラを回転させるなどしてシートSをローラ401から引き出す。あるいは、主制御装置50は、搬送ローラ部43,41の各ローラの回転を止めた上で搬送ローラ部42を逆回転させて、シートSを投影光学系PLの直下の領域から引き戻す。いずれにしても、所定の長さのシートSが、搬送ローラ部41,42間にループ状に撓められる。所定の長さは、搬送ローラ部42,43間の離間距離程度の長さである。
【0068】
a2. 次に、主制御装置50は、ステージ干渉計システム18(18X1,18X2,18Y1,18Y2)からのステージSSTの位置情報に基づいて、シート搬送系40を制御し、シートS上の区画領域SAiをステージSSTのシートホルダSH1(の保持面)上に位置決めする。ここで、先に図7(G)を用いて説明したように、主制御装置50は、搬送ローラ部41,42,44の各ローラの回転を止めた状態で搬送ローラ部43の各ローラを回転させて、あるいは搬送ローラ部41,43,44の各ローラの回転を止めた状態で搬送ローラ部42の各ローラを逆回転させて、シートSを搬送ローラ部42,43間でX軸方向に関して所定のテンションを与えて、張る。主制御装置50は、さらに、ステージSSTを微小駆動して、シートホルダSH1(の保持面)をシートS上の区画領域SAiに位置合わせする。なお、この状態では、シートSとステージSSTのシートホルダSH1(の保持面)との間には僅かな空間が設けられている。
【0069】
待機位置においてステージSSTとシートSとが位置合わせされた状態では、アライメント系AL1〜AL12それぞれの検出視野内に、区画領域SAiに付設されたアライメントマークAMが位置決めされる。
【0070】
a3. 位置合わせ後、主制御装置50は、ステージ駆動系SSD(Z・レベリング装置38)を介してステージSSTのテーブルTBを水平に保ちつつ、テーブルTB上の合計6つの補助シートホルダSH2,SH3をそれぞれのホルダ駆動装置60(ベース601)を介して+Z方向に微小駆動し、4つの補助シートホルダSH2を用いて区画領域Siの±Y側に対応する部分のシートSの裏面を吸着保持するとともに、2つの補助シートホルダSH3を用いて区画領域Siの±X側に対応する部分のシートSの裏面を吸着保持する。
【0071】
具体的には、主制御装置50は、図11に示されるように、テーブルTB上の+Y側の端部、−Y側の端部にそれぞれ配置された各2つの補助シートホルダSH2を白抜き矢印で示される方向(+Y方向又は−Y方向)に微小駆動して、テーブルTB上でY軸方向に離間する各対の補助シートホルダSH2の離間距離を拡げる。そして、主制御装置50は、各補助シートホルダSH2をベース601を介して+Z方向に駆動して、シートSのY軸方向の両側の端部の裏面を4つの補助シートホルダSH2の保持面に接触させる。接触後、主制御装置50は、+Y側の2つの補助シートホルダSH2を黒塗り矢印で示される−Y方向に微小駆動して、位置決め部材602をシートSの+Y端に押し当てるとともに、−Y側の2つの補助シートホルダSH2を黒塗りで示される+Y方向に微小駆動して、位置決め部材602をシートSの−Y端に押し当てて、シートSを位置決めする。位置決め後、主制御装置50は、シートSの区画領域SAiのY軸方向の両側の部分の裏面を4つの補助シートホルダSH2に吸着保持するとともに、シートSの区画領域SAiのX軸方向両側の部分の裏面を補助シートホルダSH3に吸着保持する。図12には、このようにして、シートSが、補助シートホルダSH2、SH3により仮保持された状態が示されている。
【0072】
a4. シートSの仮保持後、主制御装置50は、シートSを仮保持したまま、各補助シートホルダSH2,SH3をベース601を介して−Z方向に微小駆動して、区画領域SAiを含むシートSの中央部の裏面をシートホルダSH1の保持面上に接触させる。そして、主制御装置50は、各補助シートホルダSH2,SH3の保持面をシートホルダSH1の保持面より僅かに下方(−Z側)に位置決めする。これにより、シートSにY軸方向及びX軸方向に関する適当なテンションが加わり、シートSの中央部がシートホルダSH1の保持面上に固定される。この状態にて、主制御装置50は、図12に示されるように、シートSをシートホルダSH1に吸着保持する。これにより、区画領域SAiを含むシートSの中央部が、ステージSST上に、XY平面に平行に且つ平坦に保持される。
【0073】
b. 次に、シートSに対するアライメント計測が、次のb1.〜b5.の手順で行われる。
【0074】
b1. 前述の通り、待機位置にステージSSTが位置決めされた状態では、アライメント系AL1〜AL12のそれぞれの検出視野内に区画領域SAiに付設されたアライメントマークが位置決めされている。そこで、主制御装置50は、図13示されるように、シートS上の区画領域SAiに付設されたアライメントマークをアライメント系AL1〜AL12を用いて検出する(指標中心からのアライメントマークの位置を計測する)。そして、主制御装置50は、アライメントマークの検出結果と、その検出時のステージ干渉計システム18からのステージSSTの位置情報と、に基づき、XY座標系上における12個のアライメントマークの位置座標を求める。
【0075】
b2. 次に、主制御装置50は、上で求めた12個のアライメントマークの位置座標に基づき、シートS上のパターンが形成された区画領域SAiのY軸方向及びX軸方向に関する収縮量が、所定範囲内に収まっているか否かを判断する。
b3. そして、この結果、例えば区画領域SAi内部の少なくとも一部に所定範囲を超える収縮があると判断した場合には、シートホルダSH1によるシートSの吸着保持を解除し、各補助シートホルダSH2、SH3をベース601を介して+Z方向に駆動して、シートSの裏面をシートホルダSH1の保持面から離す。
【0076】
ここで、例えばシートS上の区画領域SAi内部の−X端部がY軸方向に関して所定範囲を超えて収縮し、さらに区画領域SAiがX軸方向に関して所定範囲を超えて収縮していると判断した場合には、図14に示されるように、テーブルTB上の−X側の2つの補助シートホルダSH2を互いに離れる方向(図14中に白抜き矢印で示される方向)に駆動して、シートSの区画領域SAiの−X側端部にY軸方向に関するテンションをさらに付与するとともに、2つの補助シートホルダSH3を互いに離れる方向(黒塗り矢印で示される方向)に駆動して、シートSの区画領域SAiにX軸方向に関するテンションをさらに付与してパターンの歪みを補正(調整)する。
【0077】
調整後、主制御装置50は、各補助シートホルダSH2,SH3をベース601を介して−Z方向に駆動して、シートSの裏面をシートホルダSH1の保持面に接触させ、再度、吸着保持する。
b4. そして、主制御装置50は、シートS上の区画領域SAiに付設されたアライメントマークをアライメント系AL1〜AL12を用いて検出し、その検出結果と、その検出時のステージ干渉計システム18からのステージSSTの位置情報と、に基づき、XY座標系上における12個のアライメントマークの位置座標を再度求める。
b5. そして、主制御装置50は、12個のアライメントマークの位置座標の全部又は一部を用いて、最小二乗法を用いた所定の演算を行って、シートS上の区画領域SAi内に形成済みのパターンの歪み、すなわちXYシフト、回転、XYスケーリング、直交度を求める。
【0078】
ここで、上記b2.の判断の結果、区画領域SAiのY軸方向及びX軸方向に関する収縮量が、所定範囲内に収まっていると判断した場合には、主制御装置50は、b3.及びb4.の処理をスキップして、b5.の処理を行う。
【0079】
その後、主制御装置50は、シートSに対してX軸方向に関して所定のテンションを与えるために用いられたシート搬送系の40の所定の搬送ローラ部によるシートSの拘束(固定)を解除する。
【0080】
なお、検出すべきアライメントマークの数より、アライメント系の数が少ない場合には、シートSを保持したステージSSTをX軸方向にステップ移動させつつ、アライメント計測を行う必要がある。この際、主制御装置50は、ステージSSTの動きに合わせて、シート搬送系40の各駆動ローラの回転、停止を制御する。
【0081】
c.次いで、シートS上の区画領域SAiに対する走査露光が行われる。
c1. 具体的には、主制御装置50は、アライメント計測の結果、特にXYシフトに基づいて、シートSを保持したステージSSTを、露光のための走査開始位置(加速開始位置)に移動して、マスクMを保持したマスクステージMSTに対して位置合わせを行う。ここで、本実施形態では、ステージSSTの加速開始位置は、前述の待機位置と同じ位置(又はその近傍)に設定されているので、XY平面内のステージSSTの位置の微調整が行われる。
【0082】
c2. 次に、主制御装置50は、ステージSSTの走査方向(−X方向)の加速を開始する。これにより、ステージSSTの−X方向の移動が開始され、その移動の途中、具体的には、ステージSSTの加速終了の前に、図15に示されるように、干渉計18Y2からの測長ビームが反射面17Yに当たり始めるので、その直後に、主制御装置50は、ステージSSTのY位置を計測するレーザ渉計を干渉計18Y1から干渉計18Y2に切り換える。
【0083】
c3. そして、両ステージSST,MSTの加速が終了し、両ステージSST,MSTが等速同期状態に達すると、照明光IL2,IL4によってマスクM上のパターン領域が照明され始め、露光が開始される。そして、両ステージSST,MSTによる等速同期移動の進行により、図16に示されるように、照明光IL1〜IL5によってそれぞれマスクM上の照明領域IAM1〜IAM5(図2参照)が照明され、照明領域IAM1〜IAM5内のパターンの部分像がそれぞれ投影光学系PL1〜PL5(図3参照)を介してステージSST上に保持されたシートS上の投影領域IA1〜IA5に投影される。
【0084】
マスクMのパターン領域の全域が照明光IL1〜IL5により照明されると、すなわち照明領域IAM1〜IAM5をマスクMのパターン領域が通り過ぎると、区画領域SAiに対する走査露光が終了する。これにより、区画領域SAi内に、マスクMのパターンが転写される。すなわち、シートS表面に形成されたレジスト層に、マスクMのパターンの潜像が形成される。
【0085】
走査露光中、主制御装置50は、ステージSSTのテーブルTBを水平に保ちつつZ軸方向に駆動して、テーブルTB(シートホルダSH1)上に保持されたシートSの表面を投影光学系PLの焦点位置(焦点深度内)に位置決めする。また、走査露光中、主制御装置50は、アライメント計測の結果に基づいて、ステージSSTとマスクステージMSTとの同期駆動(相対位置及び相対速度)を制御して、シートS上に投影されるパターンの全体像の歪みを補正する。さらに、主制御装置50は、レンズコントローラLCを介して投影光学系PL1〜PL5のそれぞれを構成する光学素子群(レンズ群)を駆動制御して、シートS上の投影領域IA1〜IA5のそれぞれに投影されるパターンの部分像の歪みを補正する。これにより、既に区画領域SAi内に形成されたパターンにマスクMのパターンの投影像が高精度に重ね合わされる。
【0086】
区画領域SAiに対する走査露光の終了後、両ステージSST,MSTが減速され、図17に示されるように、それぞれの走査終了位置(減速終了位置)に到達すると、停止する。なお、本実施形態では、ステージSSTの走査の際の減速終了位置は、ベース部材BSの−X端に一致するように定められている。
【0087】
なお走査露光中、主制御装置50は、シートSを保持したステージSSTを−X方向に駆動する際、先と同様に、ステージSSTの動きに合わせて、そのステージSSTの動きが、シートSに作用するテンションによって阻害されることがないように、シート搬送系40の各駆動ローラを、適宜、回転、停止する。
【0088】
d. 図17に示されるように、ステージSSTが減速終了位置であるベース部材BS正面の−X端に停止すると、主制御装置50は、シートホルダSH1と補助シートホルダSH2によるシートSの吸着保持を解除して、ステージSSTからシートSを放す。さらに、主制御装置50は、ステージSSTのテーブルTBを下方(−Z方向)に退避させる。これにより、シートSは、ステージSSTのシートホルダSH1との間に僅かな空間を挟んで、搬送ローラ部42,43間に張られた状態になる。
【0089】
e. シートSを放した後、主制御装置50は、図18に示されるように、シートステージSSTを、黒塗り矢印で示されるように、+X方向に駆動して、ベース部材BS上の+X端の前述の待機位置に戻す。ここで、シートステージSSTのX位置に応じて、そのY位置を計測する干渉計が干渉計18Y2から干渉計18Y1に切り換えられる。また、主制御装置50は、マスクステージMSTを走査開始位置(加速開始位置)へ高速度で戻し駆動する。また、ステージ駆動と並行して、主制御装置50は、図18に示されるように、シートSを白抜き矢印で示されるように、+X方向に引き戻す。
【0090】
f. 上述のステージSST及びマスクステージMSTの戻し駆動と、シートSの引き戻しとが完了すると、図19に示されるように、ステージSSTが待機位置にて待機し、待機中のステージSST上に次の区画領域SAi+1を含むシートSの中央部が位置合わせされる。この状態は、シートSが1区画領域分送られたことを除いて、図10に示される状態と同じである。
【0091】
その後、主制御装置50は、先と同様に、区画領域SAi+1に対する露光を開始する。以降同様に、主制御装置50は、上述のa.〜f.の手順を繰り返し、シートS上の全ての区画領域を露光する。
【0092】
以上詳細に説明したように、主制御装置50により、シート搬送系40の搬送ローラ部41,42,44の各ローラの回転を止めた状態で搬送ローラ部43の各ローラが回転され(あるいは搬送ローラ部41,43,44の各ローラの回転を止めた状態で搬送ローラ部42の各ローラが逆回転され、)シートSが搬送ローラ部42,43間でX軸方向に関して所定のテンションを与えられ、張られる。そして、合計6つの補助シートホルダSH2、SH3により、シートSが仮保持された後、主制御装置50により、シートSを仮保持したまま6つの補助シートホルダSH2,SH3が−Z方向に微小駆動されて、区画領域SAiを含むシートSの中央部の裏面がシートホルダSH1の保持面上に接触される。そして、主制御装置50により、6つの補助シートホルダSH2,SH3の保持面がシートホルダSH1の保持面より僅かに下方(−Z側)に位置決めされ、これにより、シートSに幅方向(Y軸方向)及び長尺方向に関する適当なテンションが加えられた状態で、シートSの中央部がシートホルダSH1の保持面上に固定される。すなわち、シートSの区画領域SAiにXY二次元方向のテンションが付与された状態で、シートSの区画領域SAiに対応する裏面部分が、シートホルダSH1の平坦状の保持面に吸着される。そして、照明系IOPにより、シートホルダSH1の保持面に吸着され、平坦化された状態のシートSの区画領域SAiにマスクMのパターンを介した照明光IL1〜IL5が照射され、シートSが走査露光され、パターンが形成される。従って、プロセスの処理により例えば熱等が加えられ、収縮したシートSであっても、高精度な露光が可能になる。従って、装置の大型化を招くことなく、フレキシブルな大画面のディスプレイなどの電子デバイスの製造に貢献することが可能になる。
【0093】
なお、上記実施形態では、シート搬送系40の搬送ローラ部により、シートSにX軸方向に関する所定のテンションが付与された状態で、さらに区画領域SAiを含むシートSの中央部の裏面がシートホルダSH1の保持面に吸着される際に、2つの補助シートホルダSH3の保持面がシートホルダSH1の保持面より僅かに下方(−Z側)に位置決めされることで、シートSにX軸方向に関するさらなるテンションが付与される場合について説明した。しかし、これに限らず、シートSを吸着保持した2つの補助シートホルダSH3の−Z方向及び互いに離れる方向の移動のみで、シートSにX軸方向に関するテンションを付与することとしても良いし、あるいは補助シートホルダSH3を設けることなく、シート搬送系40の構成部分によるシートの拘束によってシートSにX軸方向に関するテンションを付与することとしても良い。この場合において、シート搬送系40の内部に図20(A)及び図20(B)に示されるようなクランパ部45をさらに設けても良い。
【0094】
クランパ部45は、例えば図20(A)に示されるように、搬送ローラ部42の−X側に設置される。クランパ部45は、シートSを上下から挟持する第1の状態と、その挟持を解除する第2の状態とを設定可能な一対のクランパ部材451、452を含む。
【0095】
上側に位置するクランパ部材451は、シートSの幅より幾分長い長さでY軸方向に沿って配置された円筒状のローラ46aと、該ローラ46aの両端を回転自在に支持する一対のアーム部材46b、とを含む。一対のアーム部材46bは、Y軸に平行な回転軸を中心として回動可能に不図示の支持部材に支持されている。また、一対のアーム部材46bはその回動端部に、ローラ46aが取り付けられている。従って、クランパ部材451は、図20(B)に示されるように、一対のアーム部材46bの回転軸を中心として時計回りに回転することで、ローラ46aが、シートSの表面に接触し、この反対に一対のアーム部材46bの回転軸を中心として反時計回りに回転することで、ローラ46がシートSから離れる。
【0096】
下側に位置するクランパ部材452は、クランパ部材451と、上下対称であるが同様に構成されている。クランパ部45の状態切り替えは、主制御装置50によって行われる。
【0097】
シート搬送系40では、図20(B)に示されるように、クランパ部45の一対のクランパ部材451、452が第1の状態に設定され、一対のクランパ部材451、452によりシートSが拘束(固定)され、且つ搬送ローラ部41,42の各ローラの回転が止められた状態で搬送ローラ部43の各ローラがシートSの送り方向に回転されることで、シートSのクランパ部45と搬送ローラ部43との間の部分にX軸方向に関して所定のテンションが与えられる。
【0098】
ここで、主制御装置50は、図20(A)に示されるように、シートSの表面のパターンが形成される区画領域部分にはローラ46aが接触しないように、すなわちクランパ部45の一対のクランパ部材451、452のローラ46aをシートSの隣接する区画領域SAの間の領域に接触させて、シートSを拘束(固定)する。
【0099】
なお、上記実施形態の露光装置100では、Y軸方向に離れて、X軸方向に沿ってそれぞれ配列されたアライメント系AL1〜AL12を用いて、シートSに対するアライメント計測を行った。しかし、これに限らず、例えばアライメントマークをシートS上の区画領域SAiの周囲に所定間隔で配置し、このアライメントマークの配置に対応してアライメント系AL’を、図21に示されるように、区画領域SAiの周囲部に対応する配置とし、全てのアライメントマークを同時に検出することとしても良い。この場合、このアライメントマークの位置の計測結果に基づいて、区画領域SAiが、X軸方向に関して縮んでいることが分かった場合、主制御装置50は、シートSを吸着保持した2つの補助シートホルダSH3を、互いに離れる方向に駆動して、シートSにX軸方向のテンションを与えて、区画領域のX軸方向のスケーリング誤差を調整しても良い。また、補助シートホルダSH3を、シートホルダSH1をX軸方向に挟んで複数対配置し、アライメントマークの位置の計測結果に基づいて、各対の補助シートホルダSH3を個別に用いて、区画領域内部のY位置に応じて異なるX軸方向のスケーリング誤差を調整するようにしても良い。
【0100】
なお、上記実施形態では、既に複数の区画領域のそれぞれにパターンが形成されたシートSを露光対象として、露光装置100により、第2層以降の露光を行う場合について例示したが、これに限らず、未露光のシートSを露光対象として、露光装置100により、第1層の露光を行うことも勿論可能である。
【0101】
また、上記実施形態では、ステージSST及びマスクステージMSTを−X方向に走査駆動してシートSに対する走査露光(マイナススキャン露光と呼ぶ)を行う場合について説明したが、これに加えて、ステージSST及びマスクステージMSTを+X方向に走査駆動してシートSに対する走査露光(プラススキャン露光)が可能な構成を採用して、マイナススキャン露光とプラススキャン露光とを交互に繰り返して、シートS上の複数の区画領域SAk-1、SAk、SAk+1、……を、露光することとしても良い。このようにすると、マスクステージMST及びステージSSTの巻き戻しが不要となる。この場合、ベース部材BS上の−X端にてシートSをステージSST上に保持するために、搬送ローラ部43,44の+X側に追加のクランパを配置することが望ましい。また、投影光学系PLの−X側にもアライメント系を配置すると良い。
【0102】
また、上記実施形態では、1つのステージSSTのみを用いる構成を採用したが、2つあるいはそれ以上のステージを用いてシートの露光対象の区画領域の裏面を順番に吸着保持する構成を採用することも可能である。この場合には、ステージは、ベース部材上で走査露光区間を含む閉じた経路を周回するようステージ装置SSを構成すると良い。これにより、1つの区画領域に対する露光が終了後、使用したステージを走査露光区間外に退避させ、直ちに別のステージを用いて次の区画領域に対する露光を開始することができる。また、複数のステージを用いて複数のシートを並行して露光する構成を採用することも可能である。
【0103】
なお、上記実施形態の露光装置では、ステージ(テーブル)の上面に、Z軸方向に微小駆動可能な補助シートホルダを設けたが、これに代えて、あるいはこれとともに、シートホルダをZ軸方向に微小駆動可能に構成することもできる。これにより、シートを仮保持した補助シートホルダとシートホルダとをZ軸方向に相対的に駆動して、ステージ(シートホルダ)上にシートを着脱することも可能となる。また、上記実施形態では、シート搬送系40が備える搬送ローラ部をZ軸方向に昇降可能に構成することもできる。これにより、シートを張る搬送ローラ部を昇降させて、ステージ(シートホルダ)上にシートを着脱することも可能となる。
【0104】
また、上記実施形態では、ステージSSTが、中心を通るY軸に関して非対称である場合を例示したが、これに限らず、中心を通るX軸及びY軸に関して対称なステージを用いても良いことは勿論である。この場合には、走査露光の終了直後に干渉計18Y2によるステージの位置計測が出来なくなるので、そのY位置を計測するための計測装置を設けることが望ましい。
【0105】
また、上記実施形態では、ステージSSTの位置計測系として干渉計システム18を採用したが、これに代えてエンコーダ(又は複数のエンコーダから構成されるエンコーダシステム)を採用しても良い。あるいは、干渉計システム18とエンコーダとを併用しても良い。また、マスクステージの位置計測系として干渉計システムを採用したが、これに代えてエンコーダ(又は複数のエンコーダから構成されるエンコーダシステム)を採用しても良い。あるいは、干渉計システムとエンコーダとを併用しても良い。
【0106】
また、上記実施形態の露光装置100では、等倍マルチレンズタイプの投影光学系が用いられたが、これに限らず、例えば米国特許出願公開第2008/0165334号明細書等に開示されている拡大マルチレンズタイプの投影光学系を用いることも可能である。また、投影光学系は、マルチレンズタイプに限られないことは勿論である。また、投影光学系は、等倍系、拡大系に限らず、縮小系であっても良いし、反射屈折系に限らず、屈折系、反射系でも良く、その投影像は正立像、倒立像のいずれでも良い。
【0107】
また、露光装置100の光源として、g線(波長436nm)、h線(波長405nm)、i線(波長365nm)等の輝線を発する超高圧水銀ランプのみならず、固体レーザ(例えばYAGレーザの3倍高調波:波長355nm)、KrFエキシマレーザ(248nm)、ArFエキシマレーザ(193nm)、F2レーザ(157nm)を用いることもできる。
【0108】
また、上記各実施形態では、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)が形成された光透過型マスクを用い、該マスクのパターンを投影光学系を介してシート上に投影する場合について例示した。しかし、これに限らず、マスクに代えて、所定方向へ進行する光の振幅(強度)、位相あるいは偏光の状態を空間的に変調する素子である空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)、例えば反射型の空間光変調器、すなわち非発光型画像表示素子、例えばDMD(Digital Micro-mirror Device)、反射型液晶表示素子、電気泳動ディスプレイ(EPD:Electro Phonetic Display)、電子ペーパー(または電子インク)、光回折型ライトバルブ(Grating Light Valve)等を用いて、パターンの電子データに基づいて、透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する電子マスク(可変成形マスク、アクティブマスク、あるいはイメージジェネレータとも呼ばれる)を用いても良い。かかる電子マスクについては例えば米国特許第6,778,257号明細書に開示されている。また、透過型液晶表示素子(LCD:Liquid Crystal Display)、エレクトロクロミックディスプレイ(ECD)等の透過型空間光変調器を用いる電子マスクを用いても良い。例えば、DMD等の電子マスクを用いる場合、シート材上に形成すべきパターンに対応するエネルギビームが電子マスクから投影光学系を介してシート材上に投射され、そのパターンに対応する像がシート材上に形成される。この場合において、投影光学系を用いない場合には、電子マスクにより、上記パターンに対応するエネルギビームがシート上に照射され、そのシート上にパターンが形成される。
【0109】
露光装置の用途としては液晶表示素子用の露光装置に限定されることなく、例えば、有機EL表示素子としてのフレキシブルディスプレイ、及び電子ペーパー、並びにプリント配線基板などを製造するための露光装置にも広く適用できる。
【0110】
また、シート上にパターンを形成する装置は、前述の露光装置(リソグラフィシステム)に限られず、例えばインクジェット方式にてシート上にパターンを形成する装置にも本発明を応用することができる。この場合、上述の複数の投影光学系PL1〜PL5をY軸方向に沿って配列する代わりに、複数(もしくは大型の1つの)インクジェット用ヘッドをY軸方向に沿って配置すると良い。
【0111】
《デバイス製造方法》
上記各実施形態の露光装置を用いてシート上に所定のパターンを形成することによって、電子デバイス、一例として液晶表示素子を製造することができる。
【0112】
[パターン形成工程]
まず、上記各実施形態の露光装置により、シート上に形成すべきパターンに対応する像が投影光学系を介してレジストが塗布されたシート上に順次形成する、いわゆる光リソグラフィ工程が実行される。この光リソグラフィ工程によって、シート上には多数の電極等を含む所定パターンが形成される。その後、露光されたシートは、現像工程、エッチング工程、レジスト剥離工程等の各工程を経ることによって、シート上に所定のパターンが形成される。
【0113】
[カラーフィルタ形成工程]
次に、R(Red)、G(Green)、B(Blue)に対応した3つのドットの組がマトリックス状に多数配列されたカラーフィルタ、又はR、G、Bの3本のストライプのフィルタの組が複数水平走査線方向に配列されたカラーフィルタを形成する。
【0114】
[セル組み立て工程]
カラーフィルタ形成工程の後に、パターン形成工程にて得られた所定パターンを有するシート、及びカラーフィルタ形成工程にて得られたカラーフィルタ等を用いて液晶セルを組み立てる、セル組み立て工程が実行される。セル組み立て工程では、例えば、パターン形成工程にて得られた所定パターンを有するシートとカラーフィルタ形成工程にて得られたカラーフィルタとの間に液晶を注入して、液晶パネル(液晶セル)を製造する。
【0115】
[モジュール組立工程]
その後、組み立てられた液晶セルの表示動作を行わせる電気回路、バックライト等の各部品を取り付けて液晶表示素子として完成させる。従って、このマイクロデバイスの製造方法のパターン形成工程においては、所望の線幅のパターン像を所望の位置に精度良く形成することができ、結果的に液晶表示素子を歩留り良く製造することができる。
【0116】
また、上記各実施形態における露光装置及び露光方法は、フレキシブルディスプレイをはじめとするフレキシブルな電子デバイス(マイクロデバイス)を製造するのに適している。例えば、前述した第1の実施形態において、シートの長尺方向に関して、ローラ401と露光装置100との間にシートSの表面にレジストを塗布するレジスト塗布装置等、露光装置100と巻き取りローラ402との間にパターンが形成されたシートSを現像する現像装置を配置し、電子デバイスを製造する製造ラインを構築することも可能である。
【0117】
なお、一般には上述の実施形態の露光装置及び露光方法を用いて、シートSにパターンを形成することと、パターンが形成されたシートSをそのパターンに基づいて処理することとを経て、少なくともシートSの一部を含む電子デバイスを製造することができる。ここで、形成されたパターンに基づいてシートSを処理することには、その形成されたパターンに基づいてシートSを現像すること、エッチングすること、又は印刷すること等が適宜適用可能である。また、印刷することとして、その形成されたパターンに基づいて、例えば導電性インク等の所定材料をシートSに塗布すること等が適用可能である。なお、この印刷することとして、機能性材料(例えば、紫外線の照射によって材料の撥水性、親水性又は疎水性等の性質が変化するもの)の層をシートSに予め形成し、この機能性材料の層に露光パターンを形成し、この形成した露光パターンに対応して導電性インク等の材料をシートSに塗布すること等が適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明の露光装置及び露光方法は、長尺シート上にパターンを形成するのに適している。また、本発明のデバイス製造方法は、電子デバイス(マイクロデバイス)を製造するのに適している。
【符号の説明】
【0119】
40…シート搬送系、41,42,43,44…搬送ローラ部、412,422,432,442…駆動ローラ、45…クランパ部、451、452…クランパ部材、50…主制御装置、60…ホルダ駆動装置、601…ベース、61…平行リンク機構、63…駆動機構、100…露光装置、S…シート、SH2…補助シートホルダ、SH3…補助シートホルダ、SH1…シートホルダ、TB…テーブル、IOP(IOP1〜IOP5)…照明系、PL(PL1〜PL5)…投影光学系、IL1〜IL5…照明光、AL1〜AL12…アライメント系、AM…アライメントマーク、LC…レンズコントローラ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺のシート材の所定領域に所定のパターンを形成するパターン形成装置であって、
前記シート材の前記所定領域を含む部分に2次元のテンションを付与するテンション付与装置と;
平坦状の基準面を有する基準面部材を含み、前記2次元のテンションが付与された前記シート材の前記所定領域に対応する裏面部分を前記基準面に吸着する吸着装置と;
前記基準面に吸着された前記シート材の前記所定領域に前記パターンに対応するエネルギビームを照射する照射装置と;
を備えるパターン形成装置。
【請求項2】
前記テンション付与装置は、前記シート材の前記所定領域外の裏面部分を吸着する複数の吸着保持部材を含み、
前記複数の吸着保持部材は、前記基準面部材の周囲に配置され、前記基準面部材と平行な2次元平面に沿って互いに相対的に移動可能に設けられている請求項1に記載のパターン形成装置。
【請求項3】
前記複数の吸着保持部材は、前記ステージ上の前記基準面部材を挟んで前記長尺方向に平行な第1軸に垂直な第2軸に平行な方向の一側と他側に少なくとも各1つ配置され、少なくとも前記第2軸に平行な方向に可動な少なくとも一対の第1吸着保持部材を含む請求項2に記載のパターン形成装置。
【請求項4】
前記テンション付与装置は、前記複数の吸着保持部材のうち、前記少なくとも一対の第1吸着保持部材を含む一部の複数の吸着保持部材を個別に駆動する駆動系を含み、
前記駆動系は、前記一部の複数の吸着保持部材を個別に対応して設けられた平行リンクと該平行リンクを駆動する駆動装置とを含む請求項3に記載のパターン形成装置。
【請求項5】
前記複数の吸着保持部材と前記基準面部材との少なくとも一方を、前記2次元平面に垂直な方向に駆動して、前記複数の吸着保持部材と前記基準面部材との前記2次元平面に垂直な方向に関する相対位置を変更可能な変更装置をさらに備える請求項2〜4のいずれか一項に記載のパターン形成装置。
【請求項6】
前記変更装置は、前記複数の吸着保持部材により前記所定領域外に対応する裏面部分がそれぞれ保持された前記シート材の前記所定領域に対応する裏面部分と前記基準面部材とを接触させるため、前記相対位置を変更する請求項5に記載のパターン形成装置。
【請求項7】
前記シート材の長尺方向に離れて配置され、前記シート材と接触して回動する少なくとも2つの駆動ローラを含み、前記シート材を前記長尺方向に送るシート送り装置をさらに備え、
前記テンション付与装置は、前記シート材の送り中に、該シート材の送り方向の下流側に位置する駆動ローラの回転を停止して、前記シート材に前記長尺方向のテンションを付与する請求項1〜6のいずれか一項に記載のパターン形成装置。
【請求項8】
前記駆動ローラによる前記シート材の送り中に、一対のクランプ部材により前記シート材を挟持して、前記シート材の送りを一時的に停止させるクランプ装置をさらに備える請求項7に記載のパターン形成装置。
【請求項9】
前記クランプ装置は、前記シート材の所定領域外の部分を挟持する請求項8に記載のパターン形成装置。
【請求項10】
前記シート送り装置は、前記シート材の表面側又は裏面側に接触する、前記駆動ローラを含む複数のローラを含み、前記シート材の表面側に位置するローラは、前記シート材の所定領域の前記長尺方向に直交する方向の両側の部分にのみ接触する請求項7〜9のいずれか一項に記載のパターン形成装置。
【請求項11】
前記シート材上の複数のマークを検出するマーク検出系と;
前記マーク検出系を用いて前記シート材上の前記所定領域に付設された複数の位置合わせマークの少なくとも一部を検出し、該検出結果に基づいて、前記テンション付与装置により前記シート材の所定領域を含む部分に付与される2次元のテンションを修正する制御装置と;をさらに備える請求項1〜10のいずれか一項に記載のパターン形成装置。
【請求項12】
前記パターンに対応するエネルギビームを前記シート材に投射して、前記シート材上に前記パターンの像を形成する投影光学系と;
前記投影光学系の光学特性を調整する調整装置と;をさらに備え、
前記制御装置は、前記マーク検出系を用いて前記シート材上の前記所定領域に付設された複数の位置合わせマークの少なくとも一部を検出し、該検出結果に基づいて、前記調整装置及び前記テンション付与装置の少なくとも一方を制御する請求項11に記載のパターン形成装置。
【請求項13】
長尺のシート材の表面の所定領域に所定のパターンを形成するパターン形成方法であって、
前記シート材の前記所定領域を含む部分に2次元のテンションを付与することと;
前記2次元のテンションが付与された前記シート材の前記所定領域に対応する裏面部分を平坦状の基準面に吸着することと;
前記基準面に吸着された前記シート材の前記所定領域に前記パターンに対応するエネルギビームを照射することと;
を含むパターン形成方法。
【請求項14】
前記シート材の長尺方向に離れて配置され、前記シート材と接触して回動する少なくとも2つの駆動ローラにより、前記シート材を前記長尺方向に送ることをさらに含み、
前記シート材に前記2次元のテンションを付与するに際し、前記シート材の送り中に、該シート材の送り方向の下流側に位置する駆動ローラの回転を停止して、前記シート材に前記長尺方向のテンションを付与する請求項13に記載のパターン形成方法。
【請求項15】
前記駆動ローラによる前記シート材の送り中に、一対のクランプ部材により前記シート材の所定領域外の部分を挟持して、前記シート材の送りを一時的に停止させることをさらに含む請求項14に記載のパターン形成方法。
【請求項16】
前記シート材上の前記所定領域に付設された複数の位置合わせマークの少なくとも一部を検出し、該検出結果に基づいて、前記2次元のテンションを修正することをさらに含む請求項13〜15のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項17】
前記パターンに対応するエネルギビームは、投影光学系を介して前記シート材に投射され、前記シート材上に前記パターンの像が形成され、
前記シート材上の前記所定領域に付設された複数の位置合わせマークの少なくとも一部を検出し、該検出結果に基づいて、前記投影光学系の光学特性と、前記2次元のテンションとの少なくとも1つを調整することをさらに含む請求項13〜15のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項18】
請求項13〜17のいずれか一項に記載のパターン形成方法を用いて長尺のシート材上にパターンを形成することと;
パターンが形成された前記シート材に処理を施すことと;
を含むデバイス製造方法。
【請求項1】
長尺のシート材の所定領域に所定のパターンを形成するパターン形成装置であって、
前記シート材の前記所定領域を含む部分に2次元のテンションを付与するテンション付与装置と;
平坦状の基準面を有する基準面部材を含み、前記2次元のテンションが付与された前記シート材の前記所定領域に対応する裏面部分を前記基準面に吸着する吸着装置と;
前記基準面に吸着された前記シート材の前記所定領域に前記パターンに対応するエネルギビームを照射する照射装置と;
を備えるパターン形成装置。
【請求項2】
前記テンション付与装置は、前記シート材の前記所定領域外の裏面部分を吸着する複数の吸着保持部材を含み、
前記複数の吸着保持部材は、前記基準面部材の周囲に配置され、前記基準面部材と平行な2次元平面に沿って互いに相対的に移動可能に設けられている請求項1に記載のパターン形成装置。
【請求項3】
前記複数の吸着保持部材は、前記ステージ上の前記基準面部材を挟んで前記長尺方向に平行な第1軸に垂直な第2軸に平行な方向の一側と他側に少なくとも各1つ配置され、少なくとも前記第2軸に平行な方向に可動な少なくとも一対の第1吸着保持部材を含む請求項2に記載のパターン形成装置。
【請求項4】
前記テンション付与装置は、前記複数の吸着保持部材のうち、前記少なくとも一対の第1吸着保持部材を含む一部の複数の吸着保持部材を個別に駆動する駆動系を含み、
前記駆動系は、前記一部の複数の吸着保持部材を個別に対応して設けられた平行リンクと該平行リンクを駆動する駆動装置とを含む請求項3に記載のパターン形成装置。
【請求項5】
前記複数の吸着保持部材と前記基準面部材との少なくとも一方を、前記2次元平面に垂直な方向に駆動して、前記複数の吸着保持部材と前記基準面部材との前記2次元平面に垂直な方向に関する相対位置を変更可能な変更装置をさらに備える請求項2〜4のいずれか一項に記載のパターン形成装置。
【請求項6】
前記変更装置は、前記複数の吸着保持部材により前記所定領域外に対応する裏面部分がそれぞれ保持された前記シート材の前記所定領域に対応する裏面部分と前記基準面部材とを接触させるため、前記相対位置を変更する請求項5に記載のパターン形成装置。
【請求項7】
前記シート材の長尺方向に離れて配置され、前記シート材と接触して回動する少なくとも2つの駆動ローラを含み、前記シート材を前記長尺方向に送るシート送り装置をさらに備え、
前記テンション付与装置は、前記シート材の送り中に、該シート材の送り方向の下流側に位置する駆動ローラの回転を停止して、前記シート材に前記長尺方向のテンションを付与する請求項1〜6のいずれか一項に記載のパターン形成装置。
【請求項8】
前記駆動ローラによる前記シート材の送り中に、一対のクランプ部材により前記シート材を挟持して、前記シート材の送りを一時的に停止させるクランプ装置をさらに備える請求項7に記載のパターン形成装置。
【請求項9】
前記クランプ装置は、前記シート材の所定領域外の部分を挟持する請求項8に記載のパターン形成装置。
【請求項10】
前記シート送り装置は、前記シート材の表面側又は裏面側に接触する、前記駆動ローラを含む複数のローラを含み、前記シート材の表面側に位置するローラは、前記シート材の所定領域の前記長尺方向に直交する方向の両側の部分にのみ接触する請求項7〜9のいずれか一項に記載のパターン形成装置。
【請求項11】
前記シート材上の複数のマークを検出するマーク検出系と;
前記マーク検出系を用いて前記シート材上の前記所定領域に付設された複数の位置合わせマークの少なくとも一部を検出し、該検出結果に基づいて、前記テンション付与装置により前記シート材の所定領域を含む部分に付与される2次元のテンションを修正する制御装置と;をさらに備える請求項1〜10のいずれか一項に記載のパターン形成装置。
【請求項12】
前記パターンに対応するエネルギビームを前記シート材に投射して、前記シート材上に前記パターンの像を形成する投影光学系と;
前記投影光学系の光学特性を調整する調整装置と;をさらに備え、
前記制御装置は、前記マーク検出系を用いて前記シート材上の前記所定領域に付設された複数の位置合わせマークの少なくとも一部を検出し、該検出結果に基づいて、前記調整装置及び前記テンション付与装置の少なくとも一方を制御する請求項11に記載のパターン形成装置。
【請求項13】
長尺のシート材の表面の所定領域に所定のパターンを形成するパターン形成方法であって、
前記シート材の前記所定領域を含む部分に2次元のテンションを付与することと;
前記2次元のテンションが付与された前記シート材の前記所定領域に対応する裏面部分を平坦状の基準面に吸着することと;
前記基準面に吸着された前記シート材の前記所定領域に前記パターンに対応するエネルギビームを照射することと;
を含むパターン形成方法。
【請求項14】
前記シート材の長尺方向に離れて配置され、前記シート材と接触して回動する少なくとも2つの駆動ローラにより、前記シート材を前記長尺方向に送ることをさらに含み、
前記シート材に前記2次元のテンションを付与するに際し、前記シート材の送り中に、該シート材の送り方向の下流側に位置する駆動ローラの回転を停止して、前記シート材に前記長尺方向のテンションを付与する請求項13に記載のパターン形成方法。
【請求項15】
前記駆動ローラによる前記シート材の送り中に、一対のクランプ部材により前記シート材の所定領域外の部分を挟持して、前記シート材の送りを一時的に停止させることをさらに含む請求項14に記載のパターン形成方法。
【請求項16】
前記シート材上の前記所定領域に付設された複数の位置合わせマークの少なくとも一部を検出し、該検出結果に基づいて、前記2次元のテンションを修正することをさらに含む請求項13〜15のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項17】
前記パターンに対応するエネルギビームは、投影光学系を介して前記シート材に投射され、前記シート材上に前記パターンの像が形成され、
前記シート材上の前記所定領域に付設された複数の位置合わせマークの少なくとも一部を検出し、該検出結果に基づいて、前記投影光学系の光学特性と、前記2次元のテンションとの少なくとも1つを調整することをさらに含む請求項13〜15のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項18】
請求項13〜17のいずれか一項に記載のパターン形成方法を用いて長尺のシート材上にパターンを形成することと;
パターンが形成された前記シート材に処理を施すことと;
を含むデバイス製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2011−22584(P2011−22584A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161296(P2010−161296)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]