説明

パターン検査方法及びその装置

【課題】
パターン検査装置において、膜厚の違いやパターン幅のばらつきなどから生じるパター
ンの明るさむらの影響を低減して、高感度なパターン検査を実現する。また、多種多様な
欠陥を顕在化でき,広範囲な工程への適用が可能なパターン検査装置を実現する
【解決手段】
同一パターンとなるように形成されたパターンの対応する領域の画像を比較して画像の
不一致部を欠陥と判定するパターン検査装置を、切替え可能な複数の異なる検出系と異な
る検出系の像を同時に取得可能な複数台のセンサとそれに応じた画像比較部とを備えて構
成した。
また,画像の特徴量から統計的なはずれ値を欠陥候補として検出する手段を備えて構成
し,ウェハ内の膜厚の違いに起因して画像間の同一パターンで明るさの違いが生じている
場合であっても、正しく欠陥を検出できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物に光もしくはレーザなどを照射し撮像して得られた対象物の画像を用いて微細パターンの欠陥や異物等を検出するパターン検査に係り、特に半導体ウェハ、TFT、ホトマスクなどに形成されたパターンの外観検査を行うのに好適なパターン検査装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
検査対象画像と参照画像とを比較して欠陥検出を行う従来の技術としては、特開平05−264467号公報に記載の方法が知られている。
【0003】
これは、繰り返しパターンが規則的に並んでいる検査対象試料をラインセンサで順次撮像し、繰り返しパターンピッチ分の時間遅れをおいた画像と比較し、その不一致部をパターン欠陥として検出するものである。このような従来の検査方法を半導体ウェハの外観検査を例に説明する。検査対象となる半導体ウェハには図2(a)に示すように同一パターンのチップが多数、規則的に並んでいる。各チップは図2(b)に示すようにメモリマット部601と周辺回路部602に大別することができる。メモリマット部601は小さな繰り返しパターン(セル)の集合であり、周辺回路部602は基本的にランダムパターンの集合である。一般的にはメモリマット部601はパターン密度が高く、明視野照明光学系で得られる画像は暗くなる。これに対し、周辺回路部602はパターン密度が低く、得られる画像は明るくなる。
【0004】
従来の外観検査では、周辺回路部602は隣接するチップの同じ位置、例えば図2の領域61と領域62等での画像を比較し、その輝度差がしきい値よりも大きい部分を欠陥として検出する。以下,このような検査をチップ比較と記載する。メモリマット部601は隣接するセルの画像を比較し、同様にその輝度差がしきい値よりも大きい部分を欠陥として検出する。以下,このような検査をセル比較と記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05−264467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
検査対象となる半導体ウェハではCMPなどの平坦化によりパターンに膜厚の微妙な違いが生じ、チップ間の画像には局所的に明るさの違いがある。従来方式のように、差分値が特定のしきい値TH以上となる部分を欠陥とするならば、このような膜厚の違いにより明るさが異なる領域も欠陥として検出されることになる。これは本来、欠陥として検出されるべきものではない。つまり虚報であるが,従来は虚報発生を避けるための1つの方法として、欠陥検出のためのしきい値を大きくしていた。しかし、これは感度を下げることになり、同程度以下の差分値の欠陥は検出できない。また、膜厚の違いによる明るさの違いは、図2に示した配列チップのうち、ウェハ内の特定チップ間でのみ生じる場合や、チップ内の特定のパターンでのみ生じる場合があるが、これらのローカルなエリアにしきい値を合わせてしまうと全体の検査感度を著しく低下させることになる。
【0007】
また,感度を阻害する要因として,パターンエッジの太さのばらつきがある。図10は,検査対象となる半導体パターンの模式図である。約200nmピッチでゲートがあり,その線幅のばらつきが約20nmある。図10の51はこのように線幅の微小なばらつきがある対象パターンの比較方向の輝度波形である。輝度値がばらついている。従来の比較検査では,このような輝度値のばらつきが隣接するセル,もしくは隣接するチップの画像にある場合,検査時のノイズとなる。
【0008】
一方,欠陥は,その材質,表面粗さ,サイズ,深さなど対象に依存したファクタと,照明条件など検出系に依存したファクタとの組合せにより顕在化が可能な場合がある。
【0009】
本発明は、このような従来検査技術の問題を解決して、同一パターンとなるように形成されたパターンの対応する領域の画像を比較して画像の不一致部を欠陥と判定するパターン検査装置において、膜厚の違いやパターンエッジの太さの違いなどから生じる比較画像間の明るさむらを低減し、高感度なパターン検査を実現するものである。
【0010】
また,特定のパターンに致命的な欠陥が起こりやすいとわかっている場合,周囲の明るさむらに影響されることなく,そのパターンのみの詳細な検査を実現するものである。
【0011】
更に、切替え可能な複数の検出条件で比較検査を行い,それらの結果を統合,もしくは,検出条件の異なる画像を統合して比較検査を行うことにより,より多様な欠陥に対応できる高感度なパターン検査を実現するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明では、同一パターンとなるように形成されたパターンの対応する領域の画像を比較して画像の不一致部を欠陥と判定するパターン検査装置において,膜厚の違いやパターンエッジの太さの違いなどから生じる比較画像間の明るさむらの影響を低減し,高感度なパターン検査を行えるようにした。
また,本発明では、パターン検査装置において、切替え可能な複数の検出条件で比較を行い,それらの結果を統合,もしくは,検出条件の異なる画像を統合して比較検査を行う構成とすることにより、多様な欠陥に対応できる高感度なパターン検査が行えるようにした。
【0013】
また,本発明では、同一パターンとなるように形成されたパターンの対応する領域の画像を比較して画像の不一致部を欠陥と判定するパターン検査装置を、切替え可能な複数の異なる検出系と異なる検出系の像を同時に取得可能な複数台のセンサとそれに応じた画像比較方式と欠陥分類方式を備えて構成した。これにより,最適な条件の選択が可能となり,多種の欠陥を検出できるようにした。
【0014】
また,複数の同一パターンの情報を統合して参照パターンを生成し,被検査パターンと比較する手段を備えて構成した。これにより,パターン線幅の違いなどを起因とし,画像間の同一パターンで明るさの違いが生じている場合であっても、高感度に欠陥を検出できるようにした。
【0015】
また,複数の同一パターン各々から特徴量を抽出し、被検査パターンから抽出した特徴量と比較する手段を備えて構成した。これにより,パターン線幅の違いなどを起因とし,画像間の同一パターンで明るさの違いが生じている場合であっても、高感度に欠陥を検出できるようにした。
【0016】
また,複数の同一パターンと被検査パターンとを個々に比較して欠陥候補を抽出し,これらの個々の比較により抽出された欠陥候補を統合する手段を備えて構成し,パターン線幅の違いなどを起因として画像間の同一パターンで明るさの違いが生じている場合であっても、高感度に欠陥を検出できるようにした。
【0017】
また,画像の特徴量から統計的なはずれ値を欠陥候補として検出する手段を備えて構成した。これにより、検査対象が半導体ウェハで、ウェハ内の膜厚の違いに起因して画像間の同一パターンで明るさの違いが生じている場合であっても、正しく欠陥を検出できるようにした。
【0018】
更に,局所領域内で検出される統計的なはずれ値をより広い領域から収集,統合する手段と,統合したはずれ値から最終的なはずれ値を検出する手段と,過去の異なる比較結果と統合し,最終的なはずれ値を欠陥として検出する手段とを備えて構成した。これにより,ウェハ内の膜厚の違いにより強い明るさの違いが画像間の特定パターンで生じている場合であっても、抑制できるようにした。
【0019】
更に,被検査パターンの画像と,複数の比較パターンの画像から特定のパターンを検索し,検索して抽出された特定のパターンのみを検査する手段を備えて構成した。これにより,膜厚の違いなどにより強い明るさの違いが周囲で生じていても,致命的な欠陥を高感度に検出できるようにした。
【0020】
更に、本発明では、ウェハ上に多数形成されたチップのパターンの画像をチップ比較領域の画像とセル比較領域の画像とに分離してチップ比較とセル比較との画像処理を並列に実行することにより、ステージ移動による画像検出を1回で済ませることができる。さらに、チップ比較とセル比較とをそれぞれ並列に処理することと組合せて、スループットを向上させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、複数の光学条件に対応した画像の統合による比較,もしくは個々の画像による比較処理の統合により、高感度検査を実現するとともに,多様な欠陥の検出が可能となる。
【0022】
また、膜厚の違い、エッジの太さの違いなど様々な要因により発生するチップ間,もしくはセル間の明るさの違い(色むら)等によって生じる比較する画像間の明るさの違いを、複数の対応パターンの情報を統合して比較することにより、抑制することが可能となる。
【0023】
更に,統計的なはずれ値を欠陥として検出することにより,より高感度な検査が可能となる。
【0024】
また,特に致命的な欠陥の生じやすいパターンのみを高感度に検査することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】検査装置の構成の一例。
【図2】チップの構成と複数チップの情報収集の一例。
【図3】複数光学系の一例。
【図4】複数光学条件による検査・分類結果表示の一例。
【図5】複数光学条件による画像統合の効果の一例。
【図6】複数光学条件で検出した欠陥候補画像の統合による欠陥検出の手順の例。
【図7】複数光学条件画像の並列取得の構成の一例。
【図8】複数光学条件画像の統合による検査のフローの一例。
【図9】複数光学条件画像の統合画像と各条件の画像を用いた検査のフローの一例。
【図10】検査対象パターンの配線幅の違いよる明るさばらつきの一例
【図11】複数セルの統合による比較検査の一例。
【図12】複数セルからの参照データ生成の一例。
【図13】複数チップの情報を利用したはずれ値検出の処理手順の一例。
【図14】強い明るさむらと欠陥の一例。
【図15】広範囲からはずれ値を統合した欠陥検出フローの一例。
【図16】はずれ値統合及び複数ウェハ情報統合の一例。
【図17】特定パターン高感度検査の処理手順の一例。
【図18】ニュイサンス欠陥の生じやすいパターンの除外手順の一例。
【図19】特定パターン検索の処理手順例。
【図20】統計的はずれ値検出による検査結果の表示例。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施例を図1から図20により、詳細に説明する。
【0027】
本実施例に関するパターン検査装置は、パターンの光学像を撮像する撮像手段と、この撮像手段でパターンの光学像を撮像するための光学像の検出条件を複数種類記憶するための記憶手段と、この記憶手段に記憶した複数種類の検出条件を用いて撮像手段でパターンの光学像を順次検出して検出条件の異なる複数の画像を得、この検出条件の異なる複数の画像を処理して欠陥候補を抽出し分類する欠陥候補抽出分類手段とを備えたことを特徴とする。
【0028】
また、本実施例に関するパターン検査装置は、パターンの光学像を撮像する撮像手段と、この撮像手段で検査対象パターン及び検査対象パターンと本来同一形状になるように形成された複数の比較パターンを順次撮像して得た画像を記憶する記憶手段と、この記憶手段に記憶した複数の比較パターンの画像から特定のパターンを探索して抽出するパターン抽出手段と、このパターン抽出手段により抽出された特定のパターンの情報を用いて検査対象パターンの画像から欠陥候補を検出する欠陥候補検出手段と、この欠陥候補検出手段で検出した欠陥候補を分類する欠陥候補分類手段とを備えたことを特徴とする。
【0029】
実施例として、半導体ウェハを対象とした光学式外観検査装置における欠陥検査方法を例にとって説明する。図1は,光学式外観検査装置の構成の一例を示したものである。11は試料(半導体ウェハなどの被検査物)、12は試料11を搭載してXY平面内の移動及び回転とZ方向への移動が可能なステージ、13は検出部である。この検出部13は、試料11を照射する光源101、光源101から出射した光を集光するレンズ系1021と光路を変換するビームスプリッタ1022とを備える照明光学系102、照明光学系102で集光された照明光で試料11を照明するとともに資料11で反射して得られる光学像を結像させる対物レンズ103、結像された光学像を受光し、明るさに応じた画像信号に変換するイメージセンサ104,イメージセンサ104からの入力信号をデジタル信号に変換するAD変換部105で構成される。
【0030】
ここで、光源101として、図1に示した例では、ランプを用いた場合を示しているが、レーザを用いても良い。また、光源101から発した光の波長としては短波長であっても良く、また、広帯域の波長の光(白色光)であってもよい。短波長の光を用いる場合、検出する画像の分解能を上げる(微細な欠陥を検出する)ために、紫外領域の波長の光(Ultra Violet Light:UV光)を用いることもできる。レーザを光源として用いる場合、それが単波長のレーザである場合には、図示していない可干渉性を低減する手段を照明光学系102の内部又は光源101と照明光学系102との間に備える必要がある。
【0031】
また、イメージセンサ104に複数の1次元イメージセンサを2次元に配列して構成した時間遅延積分型のイメージセンサ(Time Delay Integration Image Sensor:TDIイメージセンサ)を採用し、ステージ12の移動と同期して各1次元イメージセンサが検出した信号を次段の1次元イメージセンサに転送して加算することにより、比較的高速で高感度に検出することが可能になる。このTDIイメージセンサとして複数の出力タップを備えた並列出力タイプのセンサを用いることにより、センサからの出力を並列に処理することができ、より高速な検出が可能になる
また、光源101としてUV光を発射するものを採用した場合、イメージセンサ104には、裏面照射型のセンサを用いると表面照射型のセンサを用いた場合と比べて検出効率を高くすることができる。
【0032】
14は画像編集部で,検出部13で検出された画像のデジタル信号に対してシェーディング補正、暗レベル補正等の画像補正を行う前処理部106、補正された画像のデジタル信号を格納しておく画像メモリ107で構成される。
【0033】
15は、試料であるウェハ内の欠陥候補を算出する画像比較処理部であって,画像編集部14の画像メモリ107に記憶された対応する領域の画像を比較し,統計処理によりはずれ値を抽出し,欠陥とする。まず、画像メモリ107に記憶された被検査領域の画像(以下,検出画像と記載)と対応する領域の画像(以下,参照画像と記載)のデジタル信号を読み出し、位置ずれ検出部108で位置を合わせるための補正量を算出し、統計処理部109で算出された位置の補正量を用いて、検出画像と参照画像の位置合せを行い,対応
する画素の特徴量を用いて統計的はずれ値となる画素を欠陥候補として出力する。パラメータ設定部110は、差分値から欠陥候補を抽出する際のしきい値などの画像処理パラメータを設定し、統計処理部109に与える。そして欠陥分類部111にて,各欠陥候補の特徴量から真の欠陥を抽出し,分類を行う。
【0034】
16は全体制御部で、各種制御を行うCPU(全体制御部16に内臓)を備え,ユーザからの検査パラメータ(画像比較で用いられるしきい値など)の変更を受け付けたり、検出された欠陥情報を表示したりする表示手段と入力手段を持つユーザインターフェース部112、検出された欠陥候補の特徴量や画像などを記憶する記憶装置113と接続されている。114は全体制御部16からの制御指令に基づいてステージ12を駆動するメカニカルコントローラである。尚、画像比較処理部15、検出部13等も全体制御部16からの指令により駆動される。
【0035】
検査対象となる半導体ウェハ11は、図2に示すように同一パターンのチップが多数、規則的に並んでいる。全体制御部16では試料である半導体ウェハ11をステージ12により連続的に移動させ、これに同期して、順次、チップの像を検出部13より取り込み、検出画像に対し,規則的に配列されたチップの同じ位置、例えば図2の検出画像の領域63に対し,領域61,62,64,65のデジタル画像信号を参照画像として上記手順で比較し、統計的にはずれ値となる画素を欠陥候補として検出する。
【0036】
ここで、本実施例の検査装置の検出部13では、切替え可能な複数の検出系を持つ。図3に検出部13の詳細を示す。
図3に示した構成においては、光源101として紫外光(ultraviolet light:UV光,deep ultra violet light:DUV光 など)のパルスレーザを発射するパルスレーザ光源を用いた場合を示している。
【0037】
2310は擬似連続化光学系であって,光源101から発射したパルスレーザの1パルス分のレーザをトータルの光量を変えずに複数パルスに分解することにより光源101から発射したパルスレーザの尖頭値を低減すると共にパルス数を増やすことで擬似的に連続化される。これにより、光量が時間的に平均化またはほぼ平準化される。擬似連続化光学系2310を通過した光(レーザ)は,光路分岐光学系23に入射する。ここで,光源101としては、可視光レーザであっても良く,またランプでも良い。ただし,これらの場合には、疑似連続化光学系2310は必要がない。
【0038】
光路分岐光学系23に入射した光は、可干渉性低減手段2302を透過した後ビームスプリッタ2301で2つの光路2601と2602とに分岐される。光路2601に分岐された光は、ビーム形成光学系201に入射し,ビーム形成光学系201でビーム径の調整や照度分布の調整が行われる。ビーム形成光学系201から出射した光は,ミラー202で折り曲げられて干渉性低減光学系203に入射し,干渉性低減光学系203で時間的・空間的な干渉性が低減される。干渉性低減光学系203から射出した光は変形照明光学系20に入射して対物レンズ103の瞳位置での照度分布が所望の分布となるように調整される。変形照明光学系20から出射した光のうちS偏光成分は、偏光ビームスプリッタ27で対物レンズ103側に反射し,光変調ユニット21および対物レンズ103を介してウェハ11を照射する。以下では,上記に説明した光路に沿って進み対物レンズ103を透過した光でウェハ11を照明することを明視野照明と呼ぶ。
【0039】
このように、光路2601の側に分岐された光を,変形照明光学系20を用いて対物レンズ103の瞳位置における照明光の照度分布を複数種に変化させることにより,様々なプロセスで処理されたウェハに対応可能な照明を行うことができる。この変形照明光学系20として、例えば,光軸断面で光の透過率を変えたフィルタでも良く,光軸を中心に点対称に配置した4光束又は8光束を形成する光学素子でも良く、更に、ビームを揺動できる
素子を用いてビーム位置を変化させても良い。ビームを揺動できる素子とは,例えばガルバノミラーや半導体共振ミラーである。変形照明光学系20では、これらを切替えて用いることが可能な構成になっている。
【0040】
一方、ビームスプリッタ2301で光路2602に分岐された光は、干渉性低減光学系203を透過した後、偏光暗視野照明光学系24に入ってパーシャルミラー2401で更に2光路に分岐される。分岐された光の一方は光学素子2403及び2405を透過して偏光暗視野照明光学系25に入り、他方は、全反射ミラー2402で反射して光学素子2403及び2405を透過して偏光暗視野照明光学系25に入る。偏光暗視野照明光学系25に入ったそれぞれの光は、光学素子2501,または2502を透過してミラー2503または2504で反射されて,それぞれウェハ11の表面を斜め方向から照射する。以下では、上記に説明した光路に沿って進んできたそれぞれの光でウェハ11の表面を斜め方向から照明することを暗視野照明と呼ぶ。
【0041】
光路2601および2602を通ってウェハ11に照射されたそれぞれの光による反射光のうち、対物レンズ103で集光された光は、光変調ユニット21、偏光ビームスプリッタ27、光変調ユニット22を透過してイメージセンサ104の検出面上に結像される。この結像した光学像はイメージセンサ104で検出され、イメージセンサ104の検出信号は検出信号はA/D変換器105でデジタル信号に変換されて検出部13から出力される。ここで、イメージセンサ104からは、複数の検出信号が並列に出力され、A/D変換器105で並列に出力された複数の検出信号をA/D変換して並列に出力する。
【0042】
ここで、光変調ユニット21は,光路2601の側に分岐された光による照明光およびウェハ11からの反射光の光量や位相を制御するためのものである。例えば,ウェハ11から反射される0次回折光と高次回折光の光量比を調整することで,イメージセンサ104で検出される回路パターン信号のコントラストを向上させる。または,偏光微分干渉により回路パターンのコントラストを向上させる。ここで,前記0次回折光と高次回折光の光量比を調整するためには,光変調ユニット21に1/2波長板と1/4波長板を備え,これらを組み合わせて光の振動方向を変化させることにより実現できる。また偏光微分干渉は,光変調ユニット21に複屈折プリズムを備え,これを用いることにより実現できる。ノマルスキー型のプリズムを1個用いた偏光微分干渉光学系による物理的な現象は,一般的な微分干渉顕微鏡と同様である。光変調ユニット21においては、上記した1/2波長板と1/4波長板との組合せと、複屈折プリズムとが図示しない手段により切替え可能に装備されている。
【0043】
また、上記した光変調ユニット22を対物レンズ103の瞳位置と共役な位置に設置することにより,瞳位置での光学的な変調を行うことが可能になる。例えば,石英等の透明基板の中央部に誘電体膜を蒸着した構成の物を設置し,該誘電体膜部分の透過率を変えることによってイメージセンサ104で検出される光を変調する。なお,誘電体膜の代わりに金属等で遮光したユニットを用いても良い。これらも切替え可能である。
【0044】
以上説明したような光変調ユニットや変形照明,暗視野照明を明視野照明と同時照射等の機能を有することにより,検出したい欠陥の種類などに応じて最適な光学系を選択し,最適な検査が可能となるが,より多種の欠陥を検出する場合,1枚の半導体ウェハ11に対し,複数の光学条件で検査を行うことが有効である。この場合,複数の光学条件で時系列に,(1)光学条件の選択,(2)イメージセンサ104による画像の取得,(3)画像比較処理部15による欠陥候補の抽出,(4)欠陥の検出・分類を繰返し行い,これらの結果を結果表示の一例である図4の1101に示すように光学条件ごとに個別に表示することも可能であるし,1102のように各光学条件で行った検出結果の論理積や論理和をとることにより、結果を合成して表示することも可能である。
【0045】
検出結果は検出の有無をマップにそのまま表示しても良いが、1101及び1102に示すように,分類結果をマップに表示することにより,ユーザはターゲットとする欠陥がどの条件で最もよく検出できるか一目でわかる。また,1つのマップに光学条件毎に色分けして表示することにより,どの条件から検出された欠陥であるかが一目でわかる。
【0046】
また,本例による検査装置の構成では,複数の光学条件で検出される結果を単に統合,表示するのではなく,(1)複数の光学条件で撮像した画像を統合して,統合した画像で(2)画像比較処理部15による欠陥候補の抽出,(3)欠陥の検出・分類を行い,欠陥の検出感度を向上させることも可能である。画像の統合の効果を図5に示す。図5(a)の31と(c)の32とは異なる光学条件A,Bで取得した画像の欠陥信号である。図5(b)の33は光学条件Aで取得した(a)の画像信号を隣接セルと比較した場合の差の信号である。欠陥信号を含む画像は検査画像として用いられると共に参照画像としても用いられるので,欠陥信号は比較する画像との差異として符号が反転して2箇所にでるが,33,34の欠陥信号は微弱である。これに対し図5(e)の35は光学条件A,Bで個々に取得した画像を合成した後,隣接セルと比較した場合の差の信号である。このように異なる光学条件の画像を合成して処理することにより,欠陥を強調でき,より高感度な検査が実現可能となる。
【0047】
画像合成の実現方法の一例を図6に示す。まず,先に記載したように異なる光学条件で(801),時系列に検査を行って欠陥候補を抽出し(802),欠陥候補を含む局所領域の画像と対応する参照画像を切出して(欠陥画像と記載)記憶装置113に保持する(803)。そして全条件による欠陥画像がそろった時点で(804),座標が一致する各条件の欠陥画像を抽出し(805),抽出した欠陥画像を合成して合成欠陥画像を作成し(806),作成した合成欠陥画像を合成参照画像と再度比較処理を行い(807),欠陥を検出し(808),表示する(809)。ここで,欠陥候補を抽出する段階(802)では虚報を含む高感度な検査を行っておき,合成画像による再検査(808)で虚報の除去を行うことにより,微小欠陥の高感度検査が実現可能となる。
【0048】
画像合成による検査の別の形態として,異なる光学条件の画像を同時に取得することもできる。図7は2つの光学条件の画像を同時に取得可能な検出部の構成の例として,図3に示した構成を簡略化して示したものである。
【0049】
図7に示した構成において、光源101から発射した光は、照明成形光学系102を通ってビームスプリッタ27に入射する。ランプの場合は、例えば、水銀ランプやキセノンランプを用いることができ、また、レーザ発振器の場合は、固体YAGレーザ(波長1024nm)を非線形光学結晶等で波長変換し,基本波の第3高調波や第4高調波を発生するものや,波長248nm等のエキシマレーザやイオンレーザでも良く,Electron−Beam−Gas−Emission−Lamp等の多波長(例えば波長は,351nm,248nm,193nm,172nm,157nm,147nm,126nm,121nm等)の光を出力する光源を用いることができる。また、照明成形光学系102はウェハ11に照射する照明光の性質を調整する光学系であり、リレーレンズや開口絞りや波長選択フィルタ等で構成されている。
【0050】
ビームスプリッタ27で反射された光は、対物レンズ103を通してウェハ11に照射される。該照射光によるウェハ11からの反射光は対物レンズ103で集光され、透過率と反射率を調整したミラー91によって、該集光した光の一部は反射して光学系92に入射し、残りの光は透過して光学系93に入射する。ここで、対物レンズ103は、明視野照明と暗視野照明を切替え、または、同時に照射可能なレンズである。
【0051】
ここで、本例の構成ではイメージセンサ部を2セット持つ。光学系92、93は、入射した光に対して光変調を行い、イメージセンサ部104−1、104−2にそれぞれ集光する機能を有し、リレーレンズや光変調フィルタ94,95で構成されている。光変調フィルタ94と95はそれぞれ違った光学フィルタであり、例えば、光変調フィルタ94は光軸中心の光のみを透過するフィルタであり、光変調フィルタ95は光軸中心から離れた光のみを透過するフィルタである。また、別の例として、光変調フィルタ94は波長400nm〜500nmの光のみを透過するフィルタであり、光変調フィルタ95は波長400nm以下の光のみを透過するフィルタでも良い。前者の組み合わせは、ウェハ11からの反射光の内、0次光成分と高次回折光成分を別々に検出したいときに用いる。また、後者の組み合わせは、多波長で照明した場合に、波長別の画像を得る時に用いる。なお、ここでは、2種類の光変調フィルタの例を説明したが、上述した2種類に限らず、光変調フィルタ94と光変調フィルタ95によって得られる光学成分(波長、空間周波数、偏光方向等)が違っていれば良い。イメージセンサ部104−1、104−2は、入射した光を光電変換し、A/D変換する機能を有し、変換されたデジタル信号は画像編集部14に出力される。
【0052】
このように2つのイメージセンサにより同時に取得された画像について先に記載したように時系列に比較処理を行い,抽出された欠陥候補の切出し画像(欠陥画像)を合成して,再比較することにより最終的に欠陥を検出する。これにより,画像取得時間は1つの光学条件の場合と同等になる。また,更なる高速化を図るため,画像比較処理部を2セットの構成とし,異なる光学条件の画像による欠陥候補の抽出を並列に処理することもできる。
【0053】
以上の例は全て光学条件毎に欠陥候補を抽出し,その欠陥画像を合成して再比較を行い,最終的に欠陥を検出するものであるが,別の例として,画像を合成してから欠陥検出処理を行う例を図8に示す。この例では,2つのイメージセンサ部より同じタイミングで取得される各々の画像を,画像編集部14で補正し,画像合成部1001であらかじめ合成する。そして合成された画像を画像比較処理部15で処理し,欠陥を検出,分類し,結果を全体制御部16へ転送し,表示する。
【0054】
図9は画像を合成してから欠陥検出処理を行う別の例であるが,画像合成部1001で合成した画像に加え,個々の光学条件で撮像したオリジナルの画像も画像比較処理部15へ入力する。そして,オリジナル画像及び,合成画像から個々に抽出される欠陥候補の特徴量を統合して最終的に欠陥を検出,分類し,結果を全体制御部16へ転送し,表示する。当然,合成画像を使わず,個々のオリジナル画像のみを画像比較処理分15へ入力することも可能である。
【0055】
以上のように,本発明の各実施例で説明した検査装置によれば,複数の光学条件で取得した画像から欠陥を検出し,結果を統合,もしくは各条件の画像の統合から欠陥を検出,もしくは各条件の画像から検出した欠陥情報の統合により,多種の欠陥検出を高感度に実現する。
【0056】
ユーザにとって重要な欠陥は各種あり,各欠陥とも被検査対象となる試料の品種,材質,表面粗さ,サイズ,深さ,パターン密度,パターンの方向など対象に依存したファクタと,照明条件など光学系に依存したファクタとの組合せにより顕在化が可能な場合があり,本発明の通り,複数の光学条件を選択し,取得した画像から得られる情報を統合することにより,各種の欠陥を幅広く検出することが可能となる。
【0057】
次に各光学条件で検出した画像から欠陥を検出し,分類する画像比較処理部15の処理について説明する。まず検査対象となる半導体パターンの一例の模式図を図10に示す。(a)に示すように半導体パターンには約200nmピッチでゲートがあり,(b)に示すようにその線幅のばらつきが約20nmある。図10(c)の51は,このような線幅の微小なばらつきがある対象パターンの比較方向の輝度波形であり,輝度値がばらついていることを示している。
【0058】
図11はこのような輝度値のばらつきがある画像からセル比較により欠陥を検出する例を示す。セル比較は,図2(b)の小さな繰り返しパターン(セル)の集合からなるメモリマット部601について,隣接するセルの画像同士を比較し、その輝度差がしきい値よりも大きい部分を欠陥として検出するものである。図11(a)の1301は欠陥信号であるが,明るさがばらついているため,従来のようにセルピッチ分離れた画素と比較を行うと,差が小さくなり(1301(C)),一方,正常画素同士の差が大きくなる(1301(D))場合がある。これに対して正常画素を欠陥として検出しないようなしきい値を設定すると欠陥を見逃すことになる。このため,本方式では,対応する複数のセルから参照パターンを生成する。まず,対象画素fに対して,近隣セルの対応画素を1つ以上の特定数収集する。図12は近隣6セル分の対応画素の輝度値を収集する例である。そして,その輝度平均値を算出し(式1),参照画像gとする。ここで,f(i)は隣接セルの対応画素の輝度値,Nは収集画素数である。
【0059】
【数1】


図11(b)の1302は(a)の1301の欠陥信号から算出した参照信号である。図11(c)の1303は隣接セルと比較した場合の差を明るさで示した差画像,図11(d)の1304は本方式による参照セルとの差画像である。このように,本方式で比較を行うことにより,欠陥の安定検出と線幅の違いなどを起因とする明るさむらの影響を低減することが可能となる。チップ間の比較の場合も同様である。従来のチップ比較は,基本的にランダムパターンである周辺回路部(図2の602)について,隣接するチップ間の比較,例えば図2(a)において63が被検査領域の場合,領域62,もしくは領域64の画像と比較をし,画像間の輝度差がしきい値よりも大きい部分を欠陥として検出していたが,本方式では1つ以上の対応する複数の領域,例えば61,62,64,65などから式1の通り,参照パターンを算出する。
【0060】
なお,図2において,(式1)に示すように参照パターンの画像を平均値などから1つ生成するのではなく,63と61,63と62,・・・,63と65といったように1対1の比較を複数領域で行い,全ての比較結果を統計的に処理し,欠陥を検出することも本方式の発明の範囲である。
【0061】
このような複数のデータを用いて欠陥を検出する画像比較処理部15の処理について,チップ間の比較を例にとって図13に示す。まず(a)で,ステージの移動に同期してメモリ107に連続して入力され,記憶された複数チップの部分画像(図2の61,62,63,64,65)を順次読み出し,位置ずれ検出部108において複数領域を用いた比較を行うための対応領域の位置ずれ量を算出し,1501に示すように各領域の位置合わせを行う(配列整列)。これは,ステージの振動やステージ上にセットされたウェハの傾きにより、対応するチップは、取得画像内で全く同じ箇所での信号とはならないからである。位置ずれ量の算出には画像間の正規化相互相関、画像間の濃淡差の総和、画像間の濃淡差の二乗和などを用いる各種手法があり,いずれでもよい。
【0062】
次に図13(b)に示すように,比較部109において,統計的なはずれ値を欠陥として検出する。ここでは検査対象チップを63とする。まず,先に記載した通り,複数の対応チップの画像61,62,64,65を統合し(1502),統合参照画像を生成する。ここで,参照画像と検査対象チップの画像63を比較することもできるが,画像63からノイズを除去することもできる。方法は,単なるガウシアンフィルタや移動平均などの平滑化フィルタでも構わないし,FFTやウェーブレット処理などにより特定の周波数のノイズを落とすものでも構わない(1503)。そして,合成して生成した統合参照画像とノイズを除去した検査対象チップの画像(検出画像)の各画素からN個の特徴量を求め(1504),N次元特徴空間を形成する(1507)。
【0063】
特徴量の例を挙げると,検出画像,参照画像各々の輝度値や両者の輝度平均値,コントラスト,近傍画素での標準偏差,検出画像と参照画像の輝度差分,近傍画素との輝度の増減,2次微分値などである。他にも各画素の特徴を表すものなら何でもよい。また特徴空間はN個のうち,欠陥の判別に有効な特徴量を選択して形成しても構わない。そして特徴空間上でクラスタリングを行い,統計的にはずれ値となる画素を欠陥候補として抽出する(1508)。一方,本発明では複数のチップの画像から参照画像を合成せず,個々に欠陥対象チップと比較することも可能である。つまり,検査対象チップ63について,63とチップ61の各画素から特徴量演算(1505),63とチップ62,63とチップ65,63とチップ65についても同様に特徴量演算を順次行い,それらの結果から特徴空間を形成する。そして,はずれ値をチップ63の欠陥とする。また,チップ間の比較ではなく,61〜65のチップの画像各々で特徴量を演算し(1506),特徴空間を形成し,はずれ値を欠陥とすることも可能である。
【0064】
ここで,はずれ値を検出するためのしきい値(例えば,特徴空間内ではずれ値と判定するための,正常な画素の分布からの距離など)は,その空間を形成する画素の明るさの平均値や標準偏差といった統計的データから決定する。
【0065】
以上説明した複数のデータを用い,統計的にはずれ値となる画素を欠陥として検出する方式はセル比較にも適用可能である。ここで,図2(b)に示すような被検査対象チップに周辺回路部とメモリマット部が混在している場合,通常,周辺回路部はチップ比較(ダイ比較),メモリマット部はセル比較を行うことになる。本発明による検査では周辺回路部とメモリマット部の画像を同じタイミングで取得,すなわち,ステージ移動による画像検出は1回で行い,チップ比較とセル比較を並列に行う。これは、図1の画像比較処理部1
5を、チップ比較用の画像比較処理回路部とセル比較用の画像比較処理回路部とで構成し、チップ比較とセル比較とをそれぞれ専用の画像比較処理回路部で処理することにより実現できる。その結果として,被検査対象チップ全体の検査をチップ比較で行った場合と,チップ比較とセル比較を混合して行った場合の処理時間は同等となる。なお,セル比較を行うエリア,チップ比較を行うエリアは,ユーザがチップの画像を見ながら手入力で設定することも可能であるし,設計データ,CADデータを入力として自動で設定することも可能である。また、検出器として複数の出力タップを備えた並列出力タイプのTDIイメージセンサを用いてセル比較の並列処理及びチップ比較の並列処理をそれぞれ実行することにより、チップ比較とセル比較との並列処理と組合せてより高速な画像処理を実現できる。
【0066】
以上のように部分画像内での統計的はずれ値を欠陥候補として抽出するが,これだけでは非欠陥(虚報)が含まれている可能性がある。図14の(a)は参照画像,(b)は検出画像であるが,背景部分1801で強い明るさむらが生じており,更に一部のパターン1802は周囲の同様のパターンに対して,強い明るさむらが生じ明暗が反転している。一方(c)と(d)の画像では,パターンの反転は起きていないが,欠陥1803がある。このような局所画像では(b)の明暗反転パターン1802,(d)の欠陥1803ともにはずれ値として検出されるが,(b)の周辺領域には同様の反転パターンが多数発生している可能性が高い。そこで本方式ではこれらの局所領域でのはずれ値を更に広い領域から収集してはずれ値の情報を統合し,最終的なはずれ値を欠陥として検出する。
【0067】
図15はその処理の一例を示す。まずチップ比較(ダイ比較),もしくはセル比較,もしくはチップ比較(ダイ比較)とセル比較との並列混合比較により局所領域内のはずれ値として抽出された欠陥候補から特徴量を抽出する(1601)。このとき,画素毎の特徴量に加え,欠陥の面積や形状,背景のテクスチャなど欠陥の特徴量を算出する。これらの欠陥候補は図2の63のようにチップ内の局所領域から抽出されたものである。そこで,欠陥候補をより広い,例えば,図16(b)の1701に示すような1列分のチップや更にはウェハ内の全チップなどから収集し(1602),画素毎の特徴量に加え,欠陥の特徴量,更にウェハ内での座標やチップ内での座標なども特徴量として,特徴空間を再形成する(1603)。次に対象ウェハの工程や品種などに応じて,1つ以上の複数の最適特徴量を選択し,空間の線形空間などを行うことにより,欠陥と虚報をより識別しやすいように最適化する(1604)。更にチップ内での発生密度や繰り返し性などを加味して統計的はずれ値を検出する(1605)。これを最終的な欠陥とし,欠陥種に応じて分類を行う(1606)。これにより,局所的には識別が難しい欠陥と虚報を高精度に識別する。
【0068】
一方,本方式による検査装置の例では記憶装置113により,過去の検査結果を蓄積しており,これらを利用してより高精度に欠陥と虚報を識別することが可能である(図16(a)の1702)。例えば,過去の検出結果における欠陥について,その後の検査で致命的な欠陥であるか,非致命的な欠陥であるかが既知な場合には,それらを欠陥の画像,特徴量とともに致命/非致命の情報も併せて保持する。この情報も,最終的な欠陥の検出や分類のためのしきい値や判別ルールに反映させる。また,検出した欠陥の特徴量を,致命/非致命が既知な過去の検査における欠陥の特徴量と比較することにより,欠陥と虚報を識別することも可能である。
【0069】
本方式では更に,欠陥が発生しやすいパターンがあらかじめわかっている場合,それらを高感度に検出することが可能である。図17の63は検査対象チップの一部の検出画像,62,64は左右のチップの対応する場所の参照画像である。ここで,チップ63の41,42,43は本来,同一に形成されるはずの2×2に配列された4つ穴パターンである。41は4つの穴のうち,左側2つの穴パターンが埋め込み不良により画像上では明るさが42,43と異なっている。これに対し,左に隣接するチップの画像62では,膜厚の違いを起因とする明るさむらにより穴パターン全体が画像63の穴パターンに比べ暗くなっている。このため,62と63を比較すると,全ての穴パターンの差異が大きくなってしまい,穴パターン42,43も欠陥として検出されることになる。一方,右に隣接するチップの画像64では,下地に明るさむらが生じており,63と64を比較すると,欠陥部の差異よりも下地の差異が大きくなり,欠陥を見逃す可能性がある。このように比較画像間の一部で明るさむらが生じていると,その影響を受け,実欠陥のみを高感度に検出するのは難しい。
【0070】
本発明による比較検査では,41のような致命性のある欠陥が発生しやすいなど,特に詳細に検査したいパターンがあらかじめわかっている場合に,随所で明るさむらが生じていても,その影響を受けることなく,特定のパターンを高感度に検査することが可能である。そのフローと手順を図17に示す。まず,ユーザは特に高感度に検査を行う必要のあるパターンを検出画像から指定する(401)。44は矩形で指定した例である。本発明では,指定されたパターンをテンプレートとして設定し,記憶する(402)。ここで,テンプレートの設定は複数でも構わない。そして,検査画像が入力されると,画像比較処理部15では,まず検出画像内(例えば画像63)でテンプレートと類似のパターンを探索する(403)。更に周辺の複数個のチップの対応する位置の画像(例えば画像62,64・・・)内でテンプレートと類似のパターンを探索する(404)。次にこれらのパターンの特徴量を演算する(405)。特徴量はパターン内の明るさ平均や明るさの分散値,コントラスト平均値など複数個のパターンの特徴を表すものであれば何でもよい。そして,統計的はずれ値を欠陥として検出する(406)。このように,複数の同じパターン同士のみの特徴量からはずれ値を検出することにより,その周辺で大きな明るさの変動があってもその影響を受けずにユーザが所望する欠陥を高感度に検出することが可能となる。
【0071】
更に本発明による比較検査では,比較画像間では差異が大きく,欠陥として検出されるものであっても致命性がなく検出する必要のないもの(以下,ニュイサンスと記載する)を検査の対象からはずすことも可能である。そのフローを図18に示すが,図17と同様の手順となる。まず,ユーザはあらかじめニュイサンスが発生しやすいとわかっているパターンを検出画像から指定する(701)。本発明では,指定されたパターンをテンプレートとして設定し,記憶する(702)。ここで,テンプレートの設定は複数でも構わない。そして,画像比較処理部15では,テンプレートと類似のパターンを検出画像から探索し(703),入力された画像のうち,抽出されたパターン領域を除外し(704),欠陥検出処理を行う(705)。更に,検出された欠陥に対応する参照画像とテンプレートを比較し(706),これらが同じパターンであった場合,その欠陥をニュイサンス欠陥と判断し,除外する(707)。このようにあらかじめ検査対象領域から除外することにより,致命性のある欠陥の検出への影響を低減し,ニュイサンス欠陥を検出しないようにする。
【0072】
図19は,設定したテンプレートと類似するパターンをより高精度,かつ高速に探索する例である。ユーザは対象パターンを指定(2001)した後,指定したパターンが図19(a)のように一定間隔で繰返して存在する場合,その繰返しピッチをレイアウト情報として入力する(2002)。これにより探索する領域を限定する。次に図19(b)のように検査対象ウェハのチップ配列から,探索するチップを指定する(2003)。更に画像内の探索範囲を図19(a)のように指定する(2004)。探索は,まず検出画像内でテンプレートと同じパターンを探索し,対象パターンを見つけたら,その座標から設定した範囲内のパターンピッチ分離れた領域の近辺を探索していく(2005)。次に,設定した参照チップの画像において,先に抽出されたパターンと同じ座標の近辺を探索し,パターンを抽出する(2006)。なお,CAD情報などがある場合には,レイアウト情報をユーザが指定するのではなく,CAD情報から入力することも可能である。また,過去の検査情報から指定したパターンの位置が既知の場合には,その周辺に限定して指定されたパターンを探索することも可能である。
【0073】
本発明では,以上に説明した,指定したパターンを高感度に検査することと指定したパターンをマスクして検査することを同時に行うことが可能である。
【0074】
以上が本発明による欠陥検出処理の流れであるが,これらの中間結果や検出結果はGUI112にグラフィカル表示される。その例を図20に示す。従来の検査では結果は,図16(b)の1701のようにウェハマップとして示されることが多いが,本方式ではそれに加え,図20の1901のようにN次元特徴空間も表示する。そして,空間内にプロットされた点を指定すると,その部分の画像や特徴量が表示される。ユーザはこれらの情報を確認後,はずれ値が虚報であった場合には,特徴量の加減や選択しなおすことができる。本発明では,1902にように選択に応じて,保存されている特徴量からはずれ値を再検出するので,ユーザはその出方の変化を即時確認できる。また,ユーザは特徴空間上のはずれ値を確認しながら,1903のように最終的な検出のためのしきい値を調整することもできる。以上説明したように特徴量の選択は,基本的には最初はデフォルト値を用い,欠陥と虚報の検出結果をチェックしながらユーザがチューニングするが,あらかじめユーザがいくつかの欠陥候補について欠陥か虚報かの判定結果を教示することにより,教示された欠陥候補の分離度が最も高くなるような特徴量を自動で選択することもできる。
【0075】
これまでに説明した本発明による画像比較処理部15の処理は、CPUによるソフト処理で実現するが、正規化相関演算や特徴空間の形成などコアとなる演算部分をLSIなどによるハード処理にすることも可能である。これにより、高速化が実現できる。また、CMPなど平坦化プロセス後のパターンの膜厚の微妙な違いや、照明光の短波長化により比較ダイ間に大きな明るさの違いがあっても、本発明により、20nm〜90nm欠陥の検出が可能となる。
【0076】
さらに、SiO2をはじめ、SiOF、BSG,SiOB、多孔質シリア膜、などの無機絶縁膜や、メチル基含有SiO2、MSQ,ポリイミド系膜、パレリン系膜、テフロン(登録商標)系膜、アモルファスカーボン膜などの有機絶縁膜といったlow k膜の検査において、屈折率分布の膜内ばらつきによる局所的な明るさの違いがあっても、本発明により、20nm〜90nm欠陥の検出が可能となる。
【0077】
以上、本発明の一実施例を半導体ウェハを対象とした光学式外観検査装置における比較検査画像を例にとって説明したが、電子線式パターン検査における比較画像にも適用可能である。また、検査対象は半導体ウェハに限られるわけではなく、画像の比較により欠陥検出が行われているものであれば、例えばTFT基板、ホトマスク、プリント板などでも適用可能である。
【符号の説明】
【0078】
11…試料、12…ステージ、13…検出部、12…ステージ,13…検出部,101…光源、102…照明光学系、103…対物レンズ、104…イメージセンサ、105…AD変換部、14…画像編集部、106…前処理部、107…画像メモリ、15…画像比較処理部、108…位置ずれ検出部、109…統計処理部、110…パラメータ設定部、111…欠陥分類部,16…全体制御部、112…ユーザインターフェース部、113…記憶装置、114…メカニカルコントローラ、600…チップ、602…周辺回路部、601…メモリマット部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に複数の繰り返しパターンを有する被検査対象物の表面に照明光を照射し、前記被検査対象物の表面から反射する光を検出して画像を得る検出工程と、
前記検出工程により得た前記画像のうち、前記被検査対象物の表面の任意の繰り返しパターン部の画像である対象画像に対して、前記任意の繰り返しパターン部の近隣から得た画像である近隣画像を収集する工程と、
前記収集する工程にて収集した前記近隣画像から参照画像を生成する工程と、
前記参照画像を生成する工程にて生成した前記参照画像と前記対象画像とを比較して、前記対象画像から欠陥候補を抽出する工程を有する欠陥検査方法。
【請求項2】
請求項1記載の欠陥検査方法であって、
前記参照画像を生成する工程において、複数個の前記近隣画像に基づき参照画像を生成することを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項3】
請求項1記載の欠陥検査方法であって、
前記欠陥候補を抽出する工程では、前記近隣画像と前記対象画像とを用いて特徴量を演算し、前記特徴量と前記対象画像とを比較して欠陥候補を抽出することを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項4】
請求項2記載の欠陥検査方法であって、
前記収集する工程では、前記対象画像と前記近隣画像との組合せを複数個収集し、
前記欠陥候補を抽出する工程では、前記複数個の組合せのそれぞれについて特徴量を演算し、得られた複数個の特徴量を用いて前記対象画像から欠陥候補を抽出することを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項5】
請求項2記載の欠陥検査方法であって、
前記参照画像を生成する工程では、前記複数個の前記近隣画像の輝度値の平均値を算出して参照画像を生成することを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項6】
表面に複数の繰り返しパターンを有する被検査対象物の表面に照明光を照射する照射部と、
前記被検査対象物の表面から反射する光を検出して画像を得る検出部と、
前記検出部により得た前記画像のうち、前記被検査対象物の表面の任意の繰り返しパターン部の画像である対象画像に対して、前記任意の繰り返しパターン部の近隣から得た画像である近隣画像を収集する近隣画像収集部と、
前記近隣画像収集部にて収集した前記近隣画像から参照画像を生成する参照画像生成部と、
前記参照画像生成部にて生成した前記参照画像と前記対象画像とを比較して、前記対象画像から欠陥候補を抽出する欠陥候補抽出部と、を有する欠陥検査装置。
【請求項7】
請求項6記載の欠陥検査装置であって、
前記参照画像生成部において、複数個の前記近隣画像に基づき参照画像を生成することを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項8】
請求項6記載の欠陥検査装置であって、
前記欠陥候補抽出部では、前記近隣画像と前記対象画像とを用いて特徴量を演算し、前記特徴量と前記対象画像とを比較して欠陥候補を抽出することを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項9】
請求項7記載の欠陥検査装置であって、
前記近隣画像収集部では、前記対象画像と前記近隣画像との組合せを複数個収集し、
前記欠陥候補抽出部では、前記複数個の組合せのそれぞれについて特徴量を演算し、得られた複数個の特徴量を用いて前記対象画像から欠陥候補を抽出することを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項10】
請求項7記載の欠陥検査装置であって、
前記参照画像生成部では、前記複数個の前記近隣画像の輝度値の平均値を算出して参照画像を生成することを特徴とする欠陥検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−151824(P2010−151824A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19874(P2010−19874)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【分割の表示】特願2005−178715(P2005−178715)の分割
【原出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】