パッケージ及びパッケージの製造方法、圧電振動子、発振器、電子機器、並びに電波時計
【課題】キャビティ内の真空度の向上を図ることができるパッケージ及びパッケージの製造方法、圧電振動子、発振器、電子機器、並びに電波時計を提供する。
【解決手段】キャビティC内には、加熱されることで活性化して、活性化するための活性化温度が異なる複数種類のゲッター材20,21が配置されていることを特徴とする。
【解決手段】キャビティC内には、加熱されることで活性化して、活性化するための活性化温度が異なる複数種類のゲッター材20,21が配置されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージ及びパッケージの製造方法、圧電振動子、発振器、電子機器、並びに電波時計に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号等のタイミング源、リファレンス信号源等として水晶等を利用した圧電振動子(パッケージ)が用いられている。この種の圧電振動子は、様々なものが知られているが、その1つとして、表面実装型の圧電振動子が知られている。表面実装型の圧電振動子は、例えば互いに接合されたベース基板及びリッド基板と、両基板の間に形成されたキャビティと、キャビティ内に気密封止された状態で収納された圧電振動片(電子部品)とを備えている。
また、圧電振動子の製造工程において、ベース基板とリッド基板とを接合する際、リッド基板の下面(ベース基板との接合面)に接合膜を形成し、この接合膜を利用してベース基板とリッド基板とを陽極接合する技術が知られている。具体的には、両基板を重ね合わせた状態で両基板を加熱し、接合膜に電圧を印加する。すると、接合膜とベース基板との界面に電気化学的な反応が生じることで、両基板を強固に密着させることができる。
【0003】
ところで、上述した圧電振動子においては、リッド基板とベース基板とを陽極接合する際等に圧電振動子が加熱されることで、キャビティ内にアウトガス(例えば、酸素)が放出される。キャビティ内にアウトガスが存在すると、キャビティ内の真空度が低下し、等価抵抗値(実効抵抗値:Re)が高くなる。その結果、圧電振動子の駆動電圧が高くなり、エネルギー効率が低下するという問題がある。
【0004】
そこで、キャビティ内の真空度を高め、等価抵抗値を抑えるための方法として、例えばゲッタリングが知られている。ゲッタリングとは、キャビティ内に金属膜のゲッター材を配置し、このゲッター材を加熱して活性化させることで、ゲッター材の化学反応によって、キャビティ内に存在するアウトガスを吸着させるものである。例えば、特許文献1には、リッド基板におけるベース基板との対向面全域に、接合膜を形成し、この接合膜にマグネシウム等からなるゲッター材を含有させる構成が開示されている。この構成によれば、リッド基板とベース基板との接合時に、ゲッター材が含有された接合膜を電子ビーム等により加熱することで、接合膜が溶融してリッド基板とベース基板とが接合されるとともに、接合時にキャビティ内に放出されるアウトガスをゲッター材により吸着することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−86585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1の構成では、キャビティ内の真空度を十分に高めることができないという問題がある。すなわち、上述した特許文献1の構成では、接合膜にゲッター材が含有されている関係で、ゲッタリングを行うと同時に、接合膜からアウトガスも放出されることになる。そのため、ゲッタリングの終了直前や、ゲッタリング終了後から圧電振動子の温度が低下するまでの間に、接合膜から放出されるアウトガスを吸着することができない等の問題がある。
【0007】
これに対して、リッド基板とベース基板との接合前に、接合膜を予め高温に加熱し、接合膜からアウトガスを予め放出させた後、リッド基板とベース基板とを接合させることも考えられる。しかしながら、この方法ではリッド基板とベース基板との接合前にゲッター材が劣化するため、接合後のキャビティ内にアウトガスが存在した場合に、アウトガスを吸着することができないという問題がある。
【0008】
そこで本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、キャビティ内の真空度の向上を図ることができるパッケージ及びパッケージの製造方法、圧電振動子、発振器、電子機器、並びに電波時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明のパッケージは、互いに接合された複数の基板と、前記複数の基板の間に形成されたキャビティとを備え、前記キャビティ内に電子部品を封入可能なパッケージであって、前記キャビティ内には、加熱されることで活性化して、前記キャビティ内に存在する気体を吸着するゲッター材が配置され、前記ゲッター材は、活性化するための活性化温度が異なる複数種類の前記ゲッター材を有していることを特徴としている。
【0010】
この構成によれば、活性化温度の異なる複数種類のゲッター材をキャビティ内に配置することで、複数の温度域でゲッター材を活性化させてキャビティ内に存在するアウトガスを吸着させることができる。この場合、活性化温度の低いゲッター材で吸着し切れなかったアウトガスを、より活性化温度の高いゲッター材で吸着することができるので、キャビティ内の真空度を向上させることができる。これにより、駆動電圧が低いパッケージを提供することができる。
【0011】
また、前記ゲッター材は、第1の活性化温度で活性化する第1ゲッター材と、前記第1の活性化温度よりも高い第2の活性化温度で活性化する第2ゲッター材とを有し、前記各ゲッター材のうち、少なくとも前記第1ゲッター材は、加熱され活性化することで、その表面において前記キャビティ内の気体を吸着可能な非蒸発型ゲッター材からなることを特徴としている。
この構成によれば、少なくとも第1ゲッター材に非蒸発型ゲッターを採用することで、活性化時におけるキャビティ内でのゲッター材の飛散を防ぐことができる。また、非蒸発型ゲッター材は蒸発型ゲッター材に比べて比較的低い温度で活性化させることができるため、ゲッター材を高温に加熱することにより再びキャビティ内にアウトガスが放出されることを抑制することができる。
【0012】
また、前記第2ゲッター材には、レーザ光が照射されてなる照射痕が形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、第2ゲッター材にレーザ光を照射することで、レーザ光によって第2ゲッター材のみを局所的に加熱して、第2ゲッター材を活性化することができる。この場合、パッケージ全体の温度上昇を抑制することができるので、パッケージの温度上昇に伴うアウトガスの発生を防止し、キャビティ内に残存するアウトガスを効果的に吸着することができる。
【0013】
また、本発明のパッケージの製造方法は、互いに接合された複数の基板と、前記複数の基板の間に形成されたキャビティとを備え、前記キャビティ内に電子部品を封入可能なパッケージの製造方法であって、前記キャビティ内に配置されるように、活性化するための活性化温度が異なる複数種類のゲッター材を配置するゲッター材配置工程と、前記複数の基板を接合する接合工程と、前記ゲッター材を活性化させて、前記キャビティ内に存在する気体を吸着するゲッタリング工程とを有し、前記ゲッター材配置工程では、第1の活性化温度で活性化する第1ゲッター材と、前記第1の活性化温度よりも高い第2の活性化温度で活性化する第2ゲッター材とを配置し、前記ゲッタリング工程では、前記第1ゲッター材を前記第1の活性化温度以上に加熱することで、前記第1ゲッター材を活性化させる第1ゲッタリング工程と、前記第2ゲッター材を前記第2の活性化温度以上に加熱することで、前記第2ゲッター材を活性化させる第2ゲッタリング工程とを有していることを特徴としている。
この構成によれば、接合工程の終了後、まず第1ゲッタリング工程を行うことで、接合工程時にキャビティ内に放出されるアウトガスを第1ゲッター材によって吸着させることができる。
特に、第1ゲッタリング工程の終了後、第2ゲッタリング工程を行うことで、接合工程時に発生したアウトガスの残存ガスや、第1ゲッタリング工程時の加熱によって放出されるアウトガス等、第1ゲッタリング工程の終了後にキャビティ内に残存するアウトガスを吸着することができる。これにより、キャビティ内の真空度を向上させることができるので、エネルギー効率の高いパッケージを提供することができる。
【0014】
また、前記接合工程では、前記複数の基板間に形成された導電性を有する接合膜を、接合温度に加熱した状態で電圧を印加することで、前記複数の基板を陽極接合し、前記第1ゲッター材は、前記第1の活性化温度が前記接合温度よりも高い材料で形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、第1ゲッター材の第1の活性化温度が接合工程における接合温度よりも高く形成されているので、基板の接合前に第1ゲッター材が活性化してしまうことを防止し、その後の第1ゲッタリング工程においてキャビティ内に存在するアウトガスを効果的に吸着させることができる。
【0015】
また、前記第2ゲッタリング工程では、前記キャビティの外部から前記第2ゲッター材に向けて前記レーザ光を照射し、前記第2ゲッター材を前記第2の活性化温度以上に加熱することを特徴としている。
この構成によれば、レーザ光によって第2ゲッター材のみを局所的に加熱することで、パッケージ全体の温度上昇を抑制することができる。これにより、パッケージの温度上昇に伴うアウトガスの発生を防止し、キャビティ内に残存するアウトガスを効果的に吸着することができる。
【0016】
また、本発明の圧電振動子は、上記本発明のパッケージの前記キャビティ内に圧電振動片が気密封止されてなることを特徴としている。
この構成によれば、上記本発明のパッケージのキャビティ内に圧電振動片が気密封止されているので、エネルギー効率が高く、かつ安定した振動特性を有する圧電振動子を提供することができる。
【0017】
また、前記圧電振動片には、前記圧電振動片の質量を調整するための質量調整膜が形成され、前記質量調整膜は、レーザ光により除去されることで、前記圧電振動片の質量が調整可能に構成され、前記質量調整膜と前記各ゲッター材とは、前記レーザ光の照射方向において重ならない位置に配置されていることを特徴としている。
この構成によれば、レーザ光がゲッター材に遮られることないので、質量調整膜に対してレーザ光を効果的に照射することができる。また、上述したように第2ゲッター材をレーザ光により活性化させる場合には、レーザ光が質量調整膜に遮られることがないので、第2ゲッター材に対してレーザ光を効果的に照射することができる。
これにより、所望の質量調整膜を速やかに除去することができるとともに、ゲッター材を速やかに活性化させることができる。したがって、製造効率の向上を図ることができる。
【0018】
また、本発明の発振器は、上記本発明の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0019】
また、本発明の電子機器は、上記本発明の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0020】
また、本発明の電波時計は、上記本発明の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴としている。
本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、上述した圧電振動子を備えているので、高品質で信頼性の高い製品を提供することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のパッケージ及びパッケージの製造方法によれば、接合工程の終了後、まず第1ゲッタリング工程を行うことで、接合工程時にキャビティ内に放出されるアウトガスを第1ゲッター材によって吸着させることができる。
特に、第1ゲッタリング工程の終了後、第2ゲッタリング工程を行うことで、接合工程時に発生したアウトガスの残存ガスや、第1ゲッタリング工程時の加熱によって放出されるアウトガス等、第1ゲッタリング工程の終了後にキャビティ内に残存するアウトガスを吸着することができる。これにより、キャビティ内の真空度を向上させることができるので、エネルギー効率の高いパッケージを提供することができる。
また、本発明に係る圧電振動子によれば、上記本発明のパッケージのキャビティ内に圧電振動片が気密封止されているので、エネルギー効率が高く、かつ安定した振動特性を有する圧電振動子を提供することができる。
本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、上述した圧電振動子を備えているので、高品質で信頼性の高い製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態における圧電振動子の外観斜視図である。
【図2】図1に示す圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態で圧電振動片を上方から見た図である。
【図3】図2に示すA−A線に沿った圧電振動子の断面図である。
【図4】図1に示す圧電振動子の分解斜視図である。
【図5】図1に示す圧電振動子を構成する圧電振動片の上面図である。
【図6】図5に示す圧電振動片の下面図である。
【図7】図5に示す断面矢視C−C図である。
【図8】圧電振動子の製造方法を示すフローチャートである。
【図9】圧電振動子の製造方法を説明するための工程図であって、リッド基板の元となるリッド基板用ウエハの全体図である。
【図10】圧電振動子の製造方法を説明するための工程図であって、ベース基板の元となるベース基板用ウエハの全体図である。
【図11】圧電振動子の製造方法を説明するための工程図であって、ウエハ体の分解斜視図である。
【図12】圧電振動子の製造方法を説明するための工程図であって、図3に相当する圧電振動子の断面図である。
【図13】本発明の一実施形態を示す図であって、発振器の構成図である。
【図14】本発明の一実施形態を示す図であって、電子機器の構成図である。
【図15】本発明の一実施形態を示す図であって、電波時計の構成図である。
【図16】本発明の他の構成を示す圧電振動子の断面図である。
【図17】本発明の他の構成を示す圧電振動子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る実施形態を、図面に基づいて説明する。
(圧電振動子)
図1は実施形態におけるガラスパッケージタイプの圧電振動子の外観斜視図であり、図2は図1に示す圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態で圧電振動片を上方から見た図である。また、図3は図2のA−A線に沿う断面図であり、図4は圧電振動子の分解斜視図である。
本実施形態の圧電振動子1は、図1〜図4に示すように、ベース基板2とリッド基板3とで2層に積層された箱状に形成されており、内部のキャビティC(図2参照)内に圧電振動片4が収納された表面実装型の圧電振動子である。
なお、図2においては、リッド基板3側に形成されるゲッター材20,21を鎖線で図示している。また、図4においては、図面を見易くするために後述する励振電極13、引き出し電極16、マウント電極14及び重り金属膜17の図示を省略している。
【0024】
図5は圧電振動片の上面図であり、図6は下面図である。また、図7は図5のC−C線に沿う断面図である。
圧電振動片4は、図5〜図7に示すように、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。
この圧電振動片4は、平行に配置された一対の振動腕部10,11と、この一対の振動腕部10,11の基端側を一体的に固定する基部12と、一対の振動腕部10,11の外表面上に形成されて一対の振動腕部10,11を振動させる励振電極13と、この励振電極13に電気的に接続されたマウント電極14とを有している。
また、本実施形態の圧電振動片4は、一対の振動腕部10,11の両主面上に、この振動腕部10,11の長手方向に沿ってそれぞれ形成された溝部15を備えている。この溝部15は、振動腕部10,11の基端側から略中間付近まで形成されている。
【0025】
励振電極13は、一対の振動腕部10,11を互いが接近離間する方向に所定の共振周波数で振動させる電極であり、一対の振動腕部10,11の外表面に、それぞれ電気的に切り離された状態でパターニングされて形成されている。具体的には、図7に示すように、一方の励振電極13が、一方の振動腕部10の溝部15上と、他方の振動腕部11の両側面上とに主に形成され、他方の励振電極13が、一方の振動腕部10の両側面上と他方の振動腕部11の溝部15上とに主に形成されている。
【0026】
また、励振電極13は、図5,図6に示すように、基部12の両主面上において、それぞれ引き出し電極16を介してマウント電極14に電気的に接続されている。そして圧電振動片4は、このマウント電極14を介して電圧が印加されるようになっている。
なお、上述した励振電極13、マウント電極14及び引き出し電極16は、例えば、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)やチタン(Ti)等の導電性膜の被膜により形成されたものである。
【0027】
また、一対の振動腕部10,11の先端には、レーザ光により除去されることで、自身の振動状態を所定の周波数の範囲内で振動するように調整(周波数調整)を行うための重り金属膜(質量調整膜)17が被膜されている。なお、この重り金属膜17は、周波数を粗く調整する際に使用される粗調膜17aと、微小に調整する際に使用される微調膜17bとに分かれている。これら粗調膜17a及び微調膜17bを利用して周波数調整を行うことで、一対の振動腕部10,11の周波数をデバイスの公称周波数の範囲内に収めることができる。
【0028】
このように構成された圧電振動片4は、図3,図4に示すように、金等のバンプBを利用して、ベース基板2の上面にバンプ接合されている。より具体的には、後述する引き回し電極28上に形成された2つのバンプB上に、一対のマウント電極14がそれぞれ接触した状態でバンプ接合されている。これにより、圧電振動片4は、ベース基板2の上面から浮いた状態で支持されるとともに、マウント電極14と引き回し電極28とがそれぞれ電気的に接続された状態となっている。
【0029】
リッド基板3は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明の絶縁基板であり、図1,図3,図4に示すように、板状に形成されている。そして、リッド基板3の下面側(ベース基板2が接合される接合面側)には、圧電振動片4が収まる矩形状の凹部3a(図3,図4参照)が形成されている。この凹部3aは、両基板2、3が重ね合わされたときに、圧電振動片4を収容するキャビティCとなるキャビティ用の凹部である。そして、リッド基板3は、この凹部3aをベース基板2側に対向させた状態でベース基板2に対して陽極接合されている。
【0030】
ベース基板2は、リッド基板3と同様にガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明な絶縁基板であり、図1〜図4に示すように、リッド基板3に対して重ね合わせ可能な大きさで板状に形成されている。
このベース基板2には、このベース基板2を貫通する一対のスルーホール25が形成されている。スルーホール25は、ベース基板2の上面から下面に向かって漸次径が拡径するテーパー状に形成されている。この際、一対のスルーホール25は、キャビティC内に収まるように形成されている。より詳しく説明すると、マウントされた圧電振動片4の基部12側に一方のスルーホール25が位置し、振動腕部10,11の先端側に他方のスルーホール25が位置するように形成されている。なお、ベース基板2を厚さ方向に沿って真っ直ぐに貫通したスルーホール25を形成しても構わない。いずれにしても、スルーホール25はベース基板2を貫通していれば良い。
【0031】
そして、これら一対のスルーホール25には、これらスルーホール25を埋めるように形成された一対の貫通電極26が形成されている。これら貫通電極26は、焼成によってスルーホール25に対して一体的に固定された筒体23及び芯材部24によって形成されたものであり、スルーホール25を完全に塞いでキャビティC内の気密を維持しているとともに、後述する外部電極29と引き回し電極28とを導通させる役割を担っている。
【0032】
筒体23は、ペースト状のガラスフリットが焼成された円錐台形状のものであり、その中心に形成された貫通孔内には芯材部24が筒体23を貫通するように配されている。
芯材部24は、導電性を有する金属材料により円柱状に形成された導電性の芯材であり、この芯材部24を通して貫通電極26の電気導通性が確保されている。
【0033】
ベース基板2の上面側(リッド基板3が接合される接合面側)には、導電性材料(例えば、アルミニウム)により、陽極接合用の接合膜27と、一対の引き回し電極28とがパターニングされている。このうち接合膜27は、リッド基板3に形成された凹部3aの周囲を囲むようにベース基板2の周縁に沿って形成されている。
【0034】
また、一対の引き回し電極28は、一対の貫通電極26のうち、一方の貫通電極26と圧電振動片4の一方のマウント電極14とを電気的に接続するとともに、他方の貫通電極26と圧電振動片4の他方のマウント電極14とを電気的に接続するようにパターニングされている。より詳しく説明すると、図2,図4に示すように、一方の引き回し電極28は、圧電振動片4の基部12の真下に位置するように一方の貫通電極26の真上に形成されている。また、他方の引き回し電極28は、一方の引き回し電極28に隣接した位置から、振動腕部11に沿って先端側に引き回された後、他方の貫通電極26の真上に位置するように形成されている。
【0035】
そして、これら一対の引き回し電極28上にバンプBが形成されており、このバンプBを利用して圧電振動片4がマウントされている。これにより、圧電振動片4の一方のマウント電極14が、一方の引き回し電極28を介して一方の貫通電極26に導通し、他方のマウント電極14が、他方の引き回し電極28を介して他方の貫通電極26に導通するようになっている。
【0036】
また、ベース基板2の下面には、図1,図3,図4に示すように、一対の貫通電極26に対してそれぞれ電気的に接続される外部電極29が形成されている。つまり、一方の外部電極29は、一方の貫通電極26及び一方の引き回し電極28を介して圧電振動片4の一方の励振電極13に電気的に接続されている。また、他方の外部電極29は、他方の貫通電極26及び他方の引き回し電極28を介して、圧電振動片4の他方の励振電極13に電気的に接続されている。
【0037】
ここで、図2〜図4に示すように、凹部3aの内面におけるベース基板2との対向面には、キャビティC内に収納された複数種類(例えば、2種類)のゲッター材(第1ゲッター材20及び第2ゲッター材21)が形成されている。
第1ゲッター材20は、凹部3aの長手方向端部、(圧電振動片4の長手方向における先端よりも外側)に配置されている。具体的に、第1ゲッター材21は、圧電振動子1の平面視において凹部3aの短手方向に沿う全域に配置されるとともに、凹部3aの長手方向端部から圧電振動片4に向かって、振動腕部10,11とは重ならない位置まで延在している。
【0038】
一方、第2ゲッター材21は、圧電振動子1の外部からレーザ照射しうる位置に配置されている。なおリッド基板3における凹部3aの底面は非研磨面(擦りガラス状)であるため、リッド基板3の外側から(圧電振動子1の上面側から)レーザ照射することができない。そのため、ベース基板2の外側から(圧電振動子1の下面側から)レーザ照射することになる。そこで、圧電振動子1の平面視で外部電極29と重ならない位置に、第2ゲッター材21は配置されている。また、第2ゲッター材21が重り金属膜17へのレーザ照射を妨げないように、圧電振動子1の平面視で重り金属膜17と重ならない位置に、第2ゲッター材21は配置されている。そのため、本実施形態では、圧電振動片4の幅方向における一対の振動腕部10,11の両外側に、振動腕部10,11の長手方向に沿って第2ゲッター材21が一対配置されている。
【0039】
なお、各ゲッター材20,21は、加熱されることで活性化してキャビティC内に存在するアウトガスを吸着させるためのものであり、本実施形態では活性化させるための温度の異なる2種類のゲッター材20,21を採用している。具体的に、第2ゲッター材21の活性化温度(第2の活性化温度)は、第1ゲッター材20の活性化温度(第1の活性化温度)よりも高くなっており、第1ゲッター材20の活性化時に第2ゲッター材21は活性化しないようになっている。また、第1ゲッター材20は、活性化温度が接合膜27の後述する陽極接合時における接合温度(例えば、200〜300度程度)よりも高い材料により形成されている。
【0040】
ゲッター材20,21の材料としては、加熱して活性化させることで、その表面においてガス吸着性能が発現する、非蒸発型ゲッター材を用いることが好ましい。非蒸発ゲッター材としては、例えば、ジルコニウム(Zr)や、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、バナジウム(V)等の遷移金属、またはその合金・化合物としてZr−V−FeやZr−V、Zr−Al等を用いることが可能である。そして、上述した非蒸発型ゲッター材の中から、第2ゲッター材21の温度が第1ゲッター材20の温度よりも高くなるような組み合わせを適宜選択することが可能である。このような組み合わせとして、例えば第1ゲッター材20にZr−V−Fe(活性化温度が400度近辺)を、第2ゲッター材21にZr−Al(活性化温度が700度近辺)を採用することが好ましい。なお、第2ゲッター材21として、何れの非蒸発ゲッター材を採用した場合でも、レーザ光を照射することにより、その非蒸発型ゲッター材を局所的に極めて高温に加熱して活性化することができる。
【0041】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、ベース基板2に形成された外部電極29に対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片4の励振電極13に電流を流すことができ、一対の振動腕部10,11を接近・離間させる方向に所定の周波数で振動させることができる。そして、この一対の振動腕部10,11の振動を利用して、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として利用することができる。
【0042】
(圧電振動子の製造方法)
次に、上述した圧電振動子1を、図8に示すフローチャートを参照しながら、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50とを利用して一度に複数製造する製造方法について以下に説明する。なお、図9〜図12は、圧電振動子の製造方法を説明するための工程図である。なお、図10,11に示す破線Mは、後に行う切断工程で切断する切断線を図示している。
【0043】
初めに、圧電振動片作製工程を行って図5〜図7に示す圧電振動片4を作製する(S10)。また圧電振動片4を作製した後、共振周波数の粗調を行っておく。これは、重り金属膜17の粗調膜17aにレーザ光を照射して一部を蒸発させ、重量を変化させることで行う。なお、共振周波数をより高精度に調整する微調に関しては、マウント後に行う。これについては、後に説明する。
【0044】
次に、後にリッド基板3となるリッド基板用ウエハ50を、陽極接合を行う直前の状態まで作製する第1のウエハ作製工程を行う(S20)。まず、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、図9に示すように、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のリッド基板用ウエハ50を形成する(S21)。次いで、リッド基板用ウエハ50の接合面に、行列方向にキャビティC用の凹部3aを複数形成する凹部形成工程を行う(S22)。
続いて、リッド基板用ウエハ50の接合面に形成された複数の凹部3a内に、蒸着法等によりゲッター材20,21をそれぞれ成膜するゲッター材形成工程(ゲッター材配置工程)を行う(S23)。
この時点で、第1のウエハ作製工程(S20)が終了する。
【0045】
次に、図10に示すように、上述した第1のウエハ作成工程(S20)と同時、或いは前後のタイミングで、後にベース基板2となるベース基板用ウエハ40を、陽極接合を行う直前の状態まで作製する第2のウエハ作製工程を行う(S30)。まず、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のベース基板用ウエハ40を形成する(S31)。
次いで、ベース基板用ウエハ40を貫通する一対のスルーホール25を複数形成する貫通孔形成工程(S32)を行う。具体的には、後に両ウエハ40、50を重ね合わせたときに、リッド基板用ウエハ50に形成した凹部3a内に収まるように一対のスルーホール25を複数形成する。しかも、一方のスルーホール25が後にマウントする圧電振動片4の基部12側に位置し、他方のスルーホール25が振動腕部11の先端側に位置するように形成する。なお、スルーホール25を形成するには、サンドブラスト法や治具を利用したプレス加工等の方法を利用して形成すれば良い。
【0046】
続いて、図8に示すように、貫通孔形成工程(S32)で形成されたスルーホール25内に貫通電極26を形成する貫通電極形成工程(S33)を行う。これにより、スルーホール25内において、芯材部24がベース基板用ウエハ40の両面(図3における上下面)に対して面一な状態で保持される。以上により、貫通電極26を形成することができる。
続いて、ベース基板用ウエハ40の上面に導電性材料をパターニングして、接合膜27(図10参照)を形成する接合膜形成工程(S34)を行うとともに、一対の貫通電極26にそれぞれ電気的に接続された引き回し電極28を複数形成する引き回し電極形成工程を行う(S35)。
この工程を行うことにより、一方の貫通電極26と一方の引き回し電極28とが導通するとともに、他方の貫通電極26と他方の引き回し電極28とが導通した状態となる。この時点で第2のウエハ作製工程(S30)が終了する。
【0047】
ところで、図8では、接合膜形成工程(S34)の後に、引き回し電極形成工程(S35)を行う工程順序としているが、これとは逆に、引き回し電極形成工程(S35)の後に、接合膜形成工程(S34)を行っても構わないし、両工程を同時に行っても構わない。いずれの工程順序であっても、同一の作用効果を奏することができる。よって、必要に応じて適宜、工程順序を変更して構わない。
【0048】
次に、作製した複数の圧電振動片4を、それぞれ引き回し電極28を介してベース基板用ウエハ40の上面にバンプ接合するマウント工程を行う(S40)。まず、一対の引き回し電極28上にそれぞれ金等のバンプBを形成する。そして、圧電振動片4の基部12をバンプB上に載置した後、バンプBを所定温度に加熱しながら圧電振動片4をバンプBに押し付ける。これにより、圧電振動片4は、バンプBに機械的に支持されるとともに、マウント電極14と引き回し電極28とが電気的に接続された状態となる。よって、この時点で圧電振動片4の一対の励振電極13は、一対の貫通電極26に対してそれぞれ導通した状態となる。特に、圧電振動片4は、バンプ接合されるので、ベース基板用ウエハ40の上面から浮いた状態で支持される。
【0049】
圧電振動片4のマウントが終了した後、ベース基板用ウエハ40に対してリッド基板用ウエハ50を重ね合わせる重ね合わせ工程を行う(S50)。具体的には、図示しない基準マーク等を指標としながら、両ウエハ40,50を正しい位置にアライメントする。これにより、マウントされた圧電振動片4及びゲッター材20,21が、ベース基板用ウエハ40に形成された凹部3aと両ウエハ40,50とで囲まれるキャビティC内に収容された状態となる。
【0050】
重ね合わせ工程(S50)後、重ね合わせた2枚のウエハ40、50を図示しない陽極接合装置に入れ、所定の温度(接合温度)まで加熱するとともに、所定の電圧を印加して陽極接合する接合工程を行う(S60)。具体的には、接合膜27とリッド基板用ウエハ50との間に所定の電圧を印加する。すると、接合膜27とリッド基板用ウエハ50との界面に電気化学的な反応が生じ、両者がそれぞれ強固に密着して陽極接合される。これにより、圧電振動片4をキャビティC内に封止することができ、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50とが接合した図11に示すウエハ体60を得ることができる。なお、図11においては、図面を見易くするために、ウエハ体60を分解した状態を図示しており、ベース基板用ウエハ40から接合膜27の図示を省略している。なお、陽極接合を行う際、ベース基板用ウエハ40に形成されたスルーホール25は、貫通電極26によって完全に塞がれているので、キャビティC内の気密がスルーホール25を通じて損なわれることがない。
【0051】
そして、上述した陽極接合が終了した後、ベース基板用ウエハ40の下面に導電性材料をパターニングして、一対の貫通電極26にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極29を複数形成する外部電極形成工程を行う(S70)。この工程により、外部電極29を利用してキャビティC内に封止された圧電振動片4を作動させることができる。
【0052】
ところで、上述した接合工程(S60)において、ウエハ体60を加熱すると、各キャビティC内にアウトガス(例えば、酸素)が放出される。キャビティC内にアウトガスが存在すると、キャビティC内の真空度が低下し、等価抵抗値(実効抵抗値:Re)が高くなる。その結果、圧電振動子1の駆動電圧が高くなり、エネルギー効率が低下する。
【0053】
そこで、本実施形態では、キャビティC内の真空度の向上を図るため、ウエハ体60の各キャビティC内に収容されたゲッター材20,21を活性化させてキャビティC内の真空度を調整するゲッタリング工程を行う(S80)。
ゲッタリング工程(S80)では、まず第1ゲッター材20によりキャビティC内のアウトガスを吸着する第1ゲッタリング工程(S81)を行う。具体的には、圧電振動子1を第1ゲッター材20の活性化温度まで加熱し、第1ゲッター材20を活性化させる。すると、活性化された第1ゲッター材20が、キャビティC内のアウトガスを吸着して金属酸化物が生成される。これにより、キャビティC内の酸素が消費されるので、真空度を向上させることができる。
【0054】
なお、ウエハ体60のキャビティC内には、上述した接合工程(S60)時に発生したアウトガスの残存ガスや、第1ゲッタリング工程(S81)時の加熱によって放出されるアウトガスが僅かながら残存する虞がある。
【0055】
そこで、第1ゲッタリング工程(S81)の終了後、第2ゲッター材21によりキャビティC内のアウトガスを吸着する第2ゲッタリング工程(S82)を行う。具体的には、図12に示すように、ベース基板用ウエハ40側からレーザ光Lを照射してゲッター材21を加熱することで、第2ゲッター材21が蒸発して活性化する。なお、この際用いるレーザとしては、後述する微調工程(S90)と同じYAGレーザ等を採用することが可能である。
このように、第2ゲッター材21にレーザ光Lを照射すると、第2ゲッター材21の表面が蒸発し、その蒸発した部分にはレーザ照射痕30が残る。そして、レーザ照射により蒸発した第2ゲッター材21は、キャビティC内を飛散してキャビティC内の酸素を吸着することで、金属酸化物が生成される。これにより、キャビティC内の酸素が消費されるので、真空度を一定レベル以上に向上させることができる。ここで、一定レベルとは、それ以上真空度を向上させても、実効抵抗値に大きな変動がない状態を意味する。これにより、適正な実効抵抗値を確保することができる。
【0056】
なお、圧電振動片4の振動腕部10,11の近傍でゲッタリングを行うと、ゲッタリングに伴う生成物が振動腕部10,11に付着して圧電振動片4の周波数が変動する虞もあるが、ゲッタリング工程(S80)において圧電振動片4の周波数が変動しても、後述する微調工程において圧電振動子1の周波数の微調整が可能である。
【0057】
ゲッタリング工程(S80)の終了後、ウエハ体60の状態で、キャビティC内に封止された個々の圧電振動子1の周波数を微調整して所定の範囲内に収める微調工程を行う(S90)。具体的に説明すると、外部電極29に電圧を印加して圧電振動片4を振動させる。そして、周波数を計測しながらベース基板用ウエハ40を通して外部からレーザ光を照射し、重り金属膜17の微調膜17bを蒸発させる。これにより、一対の振動腕部10,11の先端側の重量が変化するので、圧電振動片4の周波数を、公称周波数の所定範囲内に収まるように微調整することができる。また、上述した第2ゲッタリング工程(S80)と微調工程(S90)とにおいて、レーザ光の照射方向を同一方向とすることで、ウエハ体60の向きを変更することがないので、製造効率の向上を図ることができる。
【0058】
周波数の微調が終了した後、接合されたウエハ体60を図11に示す切断線Mに沿って切断して個片化する切断工程を行う(S100)。その結果、互いに陽極接合されたベース基板2とリッド基板3との間に形成されたキャビティC内に圧電振動片4が封止された、図1に示す表面実装型の圧電振動子1を一度に複数製造することができる。
なお、切断工程(S100)を行って個々の圧電振動子1に個片化した後に、微調工程(S90)を行う工程順序でも構わない。但し、上述したように、微調工程(S90)を先に行うことで、ウエハ体60の状態で微調を行うことができるので、複数の圧電振動子1をより効率よく微調することができる。よって、スループットの向上化を図ることができるので、より好ましい。
【0059】
その後、内部の電気特性検査を行う(S110)。すなわち、圧電振動片4の共振周波数、共振抵抗値、ドライブレベル特性(共振周波数及び共振抵抗値の励振電力依存性)等を測定してチェックする。また、絶縁抵抗特性等を併せてチェックする。そして、最後に圧電振動子1の外観検査を行って、寸法や品質等を最終的にチェックする。これをもって圧電振動子1の製造が終了する。
【0060】
このように、本実施形態では、キャビティCの内面に活性化温度の異なる2種類のゲッター材20,21を配置する構成とした。
この構成によれば、活性化温度の異なる複数種類のゲッター材20,21をキャビティC内に配置することで、複数の温度域でゲッター材20,21を活性化させてキャビティC内に存在するアウトガスを吸着させることができる。具体的には、接合工程(S60)の終了後、第1ゲッタリング工程(S81)を行うことで、接合工程(S60)時にキャビティC内に放出されるアウトガスを第1ゲッター材20によって吸着させることができる。
さらに、第1ゲッタリング工程(S81)の終了後、第2ゲッタリング工程(S82)を行うことで、第1ゲッタリング工程(S81)の終了後にキャビティC内に残存するアウトガスを吸着することができる。これにより、キャビティC内の真空度を向上させることができ、圧電振動子1の等価抵抗値を低下させることができる。その結果、駆動電圧が低く、エネルギー効率の高い圧電振動子1を提供することができる。また、安定した振動特性を得ることができ、圧電振動子1の高品質化を図ることができる。
【0061】
また、第1ゲッター材20に非蒸発型ゲッターを採用することで、第1ゲッタリング工程(S81)においてキャビティC内での第1ゲッター材20の飛散を防ぐことができる。また、非蒸発型ゲッター材は蒸発型ゲッター材に比べて比較的低い温度で活性化させることができるため、キャビティC内に再びアウトガスが放出されることを抑制することができる。
さらに、第1ゲッター材20は、活性化温度が接合工程(S60)における接合温度よりも高い材料により形成されることで、両基板用ウエハ40,50の接合前に第1ゲッター材20が劣化してしまうことを防止することができる。これにより、その後の第1ゲッタリング工程(S81)において第1ゲッター材20に所望の吸着性能を発揮させることができ、キャビティC内に存在するアウトガスを効果的に吸着させることができる。
【0062】
しかも、第2ゲッタリング工程(S82)において、第2ゲッター材21をレーザ照射により活性化させる構成とした。
この構成によれば、レーザ光Lによって第2ゲッター材21のみを局所的に加熱することで、圧電振動子1全体の温度上昇を抑制することができる。これにより、圧電振動子1の温度上昇に伴うアウトガスの発生を防止し、キャビティC内に残存するアウトガスを効果的に吸着することができる。
【0063】
また、重り金属膜17及び外部電極29と第2ゲッター材21とが平面視で重ならないように配置されているため、第2ゲッタリング工程(S82)において、レーザ光Lが重り金属膜17及び外部電極29に遮られることなく、第2ゲッター材21に対して効果的に照射することができる。この場合、第2ゲッター材21をリッド基板3の凹部3aの内面に配置することで、ベース基板用ウエハ40側から照射されるレーザ光Lが、第2ゲッター材21の表面に照射されることになる。したがって、第2ゲッター材21を速やかに活性化させて、製造効率の向上を図ることができる。
さらに、微調工程(S90)において、レーザ光がゲッター材20,21に遮られることもないので、重り金属膜17に対してもレーザ光を効果的に照射させることができ、製造効率の向上を図ることができる。
【0064】
(発振器)
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図13を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器100は、図13に示すように、圧電振動子1を、集積回路101に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器100は、コンデンサ等の電子部品102が実装された基板103を備えている。基板103には、発振器用の上述した集積回路101が実装されており、この集積回路101の近傍に、圧電振動子1の圧電振動片4が実装されている。これら電子部品102、集積回路101及び圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0065】
このように構成された発振器100において、圧電振動子1に電圧を印加すると、この圧電振動子1内の圧電振動片4が振動する。この振動は、圧電振動片4が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路101に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路101によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
また、集積回路101の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0066】
上述したように、本実施形態の発振器100によれば、高品質化された圧電振動子1を備えているので、発振器100自体も同様に高品質化することができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定した高精度な周波数信号を得ることができる。
【0067】
(電子機器)
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図14を参照して説明する。なお電子機器として、上述した圧電振動子1を有する携帯情報機器110を例にして説明する。始めに本実施形態の携帯情報機器110は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカ及びマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化及び軽量化されている。
【0068】
(携帯情報機器)
次に、本実施形態の携帯情報機器110の構成について説明する。この携帯情報機器110は、図14に示すように、圧電振動子1と、電力を供給するための電源部111とを備えている。電源部111は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部111には、各種制御を行う制御部112と、時刻等のカウントを行う計時部113と、外部との通信を行う通信部114と、各種情報を表示する表示部115と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部116とが並列に接続されている。そして、電源部111によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0069】
制御部112は、各機能部を制御して音声データの送信及び受信、現在時刻の計測や表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部112は、予めプログラムが書き込まれたROMと、このROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、このCPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0070】
計時部113は、発振回路、レジスタ回路、カウンタ回路及びインターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子1とを備えている。圧電振動子1に電圧を印加すると圧電振動片4が振動し、この振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部112と信号の送受信が行われ、表示部115に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0071】
通信部114は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部117、音声処理部118、切替部119、増幅部120、音声入出力部121、電話番号入力部122、着信音発生部123及び呼制御メモリ部124を備えている。
無線部117は、音声データ等の各種データを、アンテナ125を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部118は、無線部117又は増幅部120から入力された音声信号を符号化及び複号化する。増幅部120は、音声処理部118又は音声入出力部121から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部121は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0072】
また、着信音発生部123は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部119は、着信時に限って、音声処理部118に接続されている増幅部120を着信音発生部123に切り替えることによって、着信音発生部123において生成された着信音が増幅部120を介して音声入出力部121に出力される。
なお、呼制御メモリ部124は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部122は、例えば、0から9の番号キー及びその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0073】
電圧検出部116は、電源部111によって制御部112等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部112に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部114を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部116から電圧降下の通知を受けた制御部112は、無線部117、音声処理部118、切替部119及び着信音発生部123の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部117の動作停止は、必須となる。さらに、表示部115に、通信部114が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0074】
すなわち、電圧検出部116と制御部112とによって、通信部114の動作を禁止し、その旨を表示部115に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部115の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしても良い。
なお、通信部114の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部126を備えることで、通信部114の機能をより確実に停止することができる。
【0075】
上述したように、本実施形態の携帯情報機器110によれば、高品質化された圧電振動子1を備えているので、携帯情報機器自体も同様に高品質化することができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定した高精度な時計情報を表示することができる。
【0076】
(電波時計)
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、図15を参照して説明する。
本実施形態の電波時計130は、図15に示すように、フィルタ部131に電気的に接続された圧電振動子1を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、上述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0077】
以下、電波時計130の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ132は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ133によって増幅され、複数の圧電振動子1を有するフィルタ部131によって濾波、同調される。 本実施形態における圧電振動子1は、上述した搬送周波数と同一の40kHz及び60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部138、139をそれぞれ備えている。
【0078】
さらに、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路134により検波復調される。続いて、波形整形回路135を介してタイムコードが取り出され、CPU136でカウントされる。CPU136では、現在の年、積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC137に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部138、139は、上述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0079】
なお、上述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計130を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子1を必要とする。
【0080】
上述したように、本実施形態の電波時計130によれば、高品質化された圧電振動子1を備えているので、電波時計自体も同様に高品質化することができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定して高精度に時刻をカウントすることができる。
【0081】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
ゲッター材20,21の配置位置は適宜設計変更が可能である。例えば、上述した実施形態では、ゲッター材20,21を共にリッド基板3に形成した構成としたが、ベース基板2側に形成しても構わない。具体的には、図16に示すように、ベース基板2の上面において、圧電振動片4の長手方向における外側に第1ゲッター材20を配置し、圧電振動片4の幅方向における両外側に第2ゲッター材21を配置する構成にしてもよい。また、図17に示すように、キャビティC内におけるベース基板2との対向面全域に第1ゲッター材20を配置する構成にしてもよい。
これらの場合であっても、同様の作用効果を奏することができる。
【0082】
なお、本発明は、上述したガラスパッケージタイプの圧電振動子1に限られず、セラミックパッケージタイプの圧電振動子に本発明を適用することも可能である。また、キャビティC内に封入される電子部品は圧電振動片4に限られない。
また、上述した実施形態では、第1ゲッター材20及び第2ゲッター材21の材料として、ともに非蒸発型ゲッター材を採用する場合について説明したが、これに限らず第2ゲッター材21に蒸発型ゲッター材を採用することも可能である。蒸発型ゲッター材とは、レーザ照射により蒸発して活性化することで、ガス吸着性能が発現する物質のことであり、例えば、アルミ(Al)や、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、サマリウム(Sm)、Ba−Al−Ni合金等を採用することが可能である。
【0083】
また、上述した実施形態では、圧電振動片4の一例として振動腕部10,11の両面に溝部15が形成された溝付きの圧電振動片4を例に挙げて説明したが、溝部15がないタイプの圧電振動片でも構わない。但し、溝部15を形成することで、一対の励振電極13に所定の電圧を印加させたときに、一対の励振電極13間における電界効率を上げることができるので、振動損失をより抑えて振動特性をさらに向上することができる。つまり、CI値(Crystal Impedance)をさらに低くすることができ、圧電振動片4のさらなる高性能化を図ることができる。この点において、溝部15を形成する方が好ましい。
【0084】
また、上述した実施形態では、ベース基板2とリッド基板3とを接合膜27を介して陽極接合したが、陽極接合に限定されるものではない。但し、陽極接合することで、両基板2、3を強固に接合できるので好ましい。
また、上述した実施形態では、圧電振動片4をバンプ接合したが、バンプ接合に限定されるものではない。例えば、導電性接着剤により圧電振動片4を接合しても構わない。但し、バンプ接合することで、圧電振動片4をベース基板2上から浮かすことができ、振動に必要な最低限の振動ギャップを自然と確保することができる。よって、この点において、バンプ接合することが好ましい。
【符号の説明】
【0085】
1…圧電振動子(パッケージ) 4…圧電振動片(電子部品) 17…重り金属膜(質量調整膜) 20…第1ゲッター材 21…第2ゲッター材 27…接合膜 30…レーザ照射痕(照射痕) C…キャビティ
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージ及びパッケージの製造方法、圧電振動子、発振器、電子機器、並びに電波時計に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号等のタイミング源、リファレンス信号源等として水晶等を利用した圧電振動子(パッケージ)が用いられている。この種の圧電振動子は、様々なものが知られているが、その1つとして、表面実装型の圧電振動子が知られている。表面実装型の圧電振動子は、例えば互いに接合されたベース基板及びリッド基板と、両基板の間に形成されたキャビティと、キャビティ内に気密封止された状態で収納された圧電振動片(電子部品)とを備えている。
また、圧電振動子の製造工程において、ベース基板とリッド基板とを接合する際、リッド基板の下面(ベース基板との接合面)に接合膜を形成し、この接合膜を利用してベース基板とリッド基板とを陽極接合する技術が知られている。具体的には、両基板を重ね合わせた状態で両基板を加熱し、接合膜に電圧を印加する。すると、接合膜とベース基板との界面に電気化学的な反応が生じることで、両基板を強固に密着させることができる。
【0003】
ところで、上述した圧電振動子においては、リッド基板とベース基板とを陽極接合する際等に圧電振動子が加熱されることで、キャビティ内にアウトガス(例えば、酸素)が放出される。キャビティ内にアウトガスが存在すると、キャビティ内の真空度が低下し、等価抵抗値(実効抵抗値:Re)が高くなる。その結果、圧電振動子の駆動電圧が高くなり、エネルギー効率が低下するという問題がある。
【0004】
そこで、キャビティ内の真空度を高め、等価抵抗値を抑えるための方法として、例えばゲッタリングが知られている。ゲッタリングとは、キャビティ内に金属膜のゲッター材を配置し、このゲッター材を加熱して活性化させることで、ゲッター材の化学反応によって、キャビティ内に存在するアウトガスを吸着させるものである。例えば、特許文献1には、リッド基板におけるベース基板との対向面全域に、接合膜を形成し、この接合膜にマグネシウム等からなるゲッター材を含有させる構成が開示されている。この構成によれば、リッド基板とベース基板との接合時に、ゲッター材が含有された接合膜を電子ビーム等により加熱することで、接合膜が溶融してリッド基板とベース基板とが接合されるとともに、接合時にキャビティ内に放出されるアウトガスをゲッター材により吸着することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−86585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1の構成では、キャビティ内の真空度を十分に高めることができないという問題がある。すなわち、上述した特許文献1の構成では、接合膜にゲッター材が含有されている関係で、ゲッタリングを行うと同時に、接合膜からアウトガスも放出されることになる。そのため、ゲッタリングの終了直前や、ゲッタリング終了後から圧電振動子の温度が低下するまでの間に、接合膜から放出されるアウトガスを吸着することができない等の問題がある。
【0007】
これに対して、リッド基板とベース基板との接合前に、接合膜を予め高温に加熱し、接合膜からアウトガスを予め放出させた後、リッド基板とベース基板とを接合させることも考えられる。しかしながら、この方法ではリッド基板とベース基板との接合前にゲッター材が劣化するため、接合後のキャビティ内にアウトガスが存在した場合に、アウトガスを吸着することができないという問題がある。
【0008】
そこで本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、キャビティ内の真空度の向上を図ることができるパッケージ及びパッケージの製造方法、圧電振動子、発振器、電子機器、並びに電波時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明のパッケージは、互いに接合された複数の基板と、前記複数の基板の間に形成されたキャビティとを備え、前記キャビティ内に電子部品を封入可能なパッケージであって、前記キャビティ内には、加熱されることで活性化して、前記キャビティ内に存在する気体を吸着するゲッター材が配置され、前記ゲッター材は、活性化するための活性化温度が異なる複数種類の前記ゲッター材を有していることを特徴としている。
【0010】
この構成によれば、活性化温度の異なる複数種類のゲッター材をキャビティ内に配置することで、複数の温度域でゲッター材を活性化させてキャビティ内に存在するアウトガスを吸着させることができる。この場合、活性化温度の低いゲッター材で吸着し切れなかったアウトガスを、より活性化温度の高いゲッター材で吸着することができるので、キャビティ内の真空度を向上させることができる。これにより、駆動電圧が低いパッケージを提供することができる。
【0011】
また、前記ゲッター材は、第1の活性化温度で活性化する第1ゲッター材と、前記第1の活性化温度よりも高い第2の活性化温度で活性化する第2ゲッター材とを有し、前記各ゲッター材のうち、少なくとも前記第1ゲッター材は、加熱され活性化することで、その表面において前記キャビティ内の気体を吸着可能な非蒸発型ゲッター材からなることを特徴としている。
この構成によれば、少なくとも第1ゲッター材に非蒸発型ゲッターを採用することで、活性化時におけるキャビティ内でのゲッター材の飛散を防ぐことができる。また、非蒸発型ゲッター材は蒸発型ゲッター材に比べて比較的低い温度で活性化させることができるため、ゲッター材を高温に加熱することにより再びキャビティ内にアウトガスが放出されることを抑制することができる。
【0012】
また、前記第2ゲッター材には、レーザ光が照射されてなる照射痕が形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、第2ゲッター材にレーザ光を照射することで、レーザ光によって第2ゲッター材のみを局所的に加熱して、第2ゲッター材を活性化することができる。この場合、パッケージ全体の温度上昇を抑制することができるので、パッケージの温度上昇に伴うアウトガスの発生を防止し、キャビティ内に残存するアウトガスを効果的に吸着することができる。
【0013】
また、本発明のパッケージの製造方法は、互いに接合された複数の基板と、前記複数の基板の間に形成されたキャビティとを備え、前記キャビティ内に電子部品を封入可能なパッケージの製造方法であって、前記キャビティ内に配置されるように、活性化するための活性化温度が異なる複数種類のゲッター材を配置するゲッター材配置工程と、前記複数の基板を接合する接合工程と、前記ゲッター材を活性化させて、前記キャビティ内に存在する気体を吸着するゲッタリング工程とを有し、前記ゲッター材配置工程では、第1の活性化温度で活性化する第1ゲッター材と、前記第1の活性化温度よりも高い第2の活性化温度で活性化する第2ゲッター材とを配置し、前記ゲッタリング工程では、前記第1ゲッター材を前記第1の活性化温度以上に加熱することで、前記第1ゲッター材を活性化させる第1ゲッタリング工程と、前記第2ゲッター材を前記第2の活性化温度以上に加熱することで、前記第2ゲッター材を活性化させる第2ゲッタリング工程とを有していることを特徴としている。
この構成によれば、接合工程の終了後、まず第1ゲッタリング工程を行うことで、接合工程時にキャビティ内に放出されるアウトガスを第1ゲッター材によって吸着させることができる。
特に、第1ゲッタリング工程の終了後、第2ゲッタリング工程を行うことで、接合工程時に発生したアウトガスの残存ガスや、第1ゲッタリング工程時の加熱によって放出されるアウトガス等、第1ゲッタリング工程の終了後にキャビティ内に残存するアウトガスを吸着することができる。これにより、キャビティ内の真空度を向上させることができるので、エネルギー効率の高いパッケージを提供することができる。
【0014】
また、前記接合工程では、前記複数の基板間に形成された導電性を有する接合膜を、接合温度に加熱した状態で電圧を印加することで、前記複数の基板を陽極接合し、前記第1ゲッター材は、前記第1の活性化温度が前記接合温度よりも高い材料で形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、第1ゲッター材の第1の活性化温度が接合工程における接合温度よりも高く形成されているので、基板の接合前に第1ゲッター材が活性化してしまうことを防止し、その後の第1ゲッタリング工程においてキャビティ内に存在するアウトガスを効果的に吸着させることができる。
【0015】
また、前記第2ゲッタリング工程では、前記キャビティの外部から前記第2ゲッター材に向けて前記レーザ光を照射し、前記第2ゲッター材を前記第2の活性化温度以上に加熱することを特徴としている。
この構成によれば、レーザ光によって第2ゲッター材のみを局所的に加熱することで、パッケージ全体の温度上昇を抑制することができる。これにより、パッケージの温度上昇に伴うアウトガスの発生を防止し、キャビティ内に残存するアウトガスを効果的に吸着することができる。
【0016】
また、本発明の圧電振動子は、上記本発明のパッケージの前記キャビティ内に圧電振動片が気密封止されてなることを特徴としている。
この構成によれば、上記本発明のパッケージのキャビティ内に圧電振動片が気密封止されているので、エネルギー効率が高く、かつ安定した振動特性を有する圧電振動子を提供することができる。
【0017】
また、前記圧電振動片には、前記圧電振動片の質量を調整するための質量調整膜が形成され、前記質量調整膜は、レーザ光により除去されることで、前記圧電振動片の質量が調整可能に構成され、前記質量調整膜と前記各ゲッター材とは、前記レーザ光の照射方向において重ならない位置に配置されていることを特徴としている。
この構成によれば、レーザ光がゲッター材に遮られることないので、質量調整膜に対してレーザ光を効果的に照射することができる。また、上述したように第2ゲッター材をレーザ光により活性化させる場合には、レーザ光が質量調整膜に遮られることがないので、第2ゲッター材に対してレーザ光を効果的に照射することができる。
これにより、所望の質量調整膜を速やかに除去することができるとともに、ゲッター材を速やかに活性化させることができる。したがって、製造効率の向上を図ることができる。
【0018】
また、本発明の発振器は、上記本発明の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0019】
また、本発明の電子機器は、上記本発明の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0020】
また、本発明の電波時計は、上記本発明の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴としている。
本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、上述した圧電振動子を備えているので、高品質で信頼性の高い製品を提供することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のパッケージ及びパッケージの製造方法によれば、接合工程の終了後、まず第1ゲッタリング工程を行うことで、接合工程時にキャビティ内に放出されるアウトガスを第1ゲッター材によって吸着させることができる。
特に、第1ゲッタリング工程の終了後、第2ゲッタリング工程を行うことで、接合工程時に発生したアウトガスの残存ガスや、第1ゲッタリング工程時の加熱によって放出されるアウトガス等、第1ゲッタリング工程の終了後にキャビティ内に残存するアウトガスを吸着することができる。これにより、キャビティ内の真空度を向上させることができるので、エネルギー効率の高いパッケージを提供することができる。
また、本発明に係る圧電振動子によれば、上記本発明のパッケージのキャビティ内に圧電振動片が気密封止されているので、エネルギー効率が高く、かつ安定した振動特性を有する圧電振動子を提供することができる。
本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、上述した圧電振動子を備えているので、高品質で信頼性の高い製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態における圧電振動子の外観斜視図である。
【図2】図1に示す圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態で圧電振動片を上方から見た図である。
【図3】図2に示すA−A線に沿った圧電振動子の断面図である。
【図4】図1に示す圧電振動子の分解斜視図である。
【図5】図1に示す圧電振動子を構成する圧電振動片の上面図である。
【図6】図5に示す圧電振動片の下面図である。
【図7】図5に示す断面矢視C−C図である。
【図8】圧電振動子の製造方法を示すフローチャートである。
【図9】圧電振動子の製造方法を説明するための工程図であって、リッド基板の元となるリッド基板用ウエハの全体図である。
【図10】圧電振動子の製造方法を説明するための工程図であって、ベース基板の元となるベース基板用ウエハの全体図である。
【図11】圧電振動子の製造方法を説明するための工程図であって、ウエハ体の分解斜視図である。
【図12】圧電振動子の製造方法を説明するための工程図であって、図3に相当する圧電振動子の断面図である。
【図13】本発明の一実施形態を示す図であって、発振器の構成図である。
【図14】本発明の一実施形態を示す図であって、電子機器の構成図である。
【図15】本発明の一実施形態を示す図であって、電波時計の構成図である。
【図16】本発明の他の構成を示す圧電振動子の断面図である。
【図17】本発明の他の構成を示す圧電振動子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る実施形態を、図面に基づいて説明する。
(圧電振動子)
図1は実施形態におけるガラスパッケージタイプの圧電振動子の外観斜視図であり、図2は図1に示す圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態で圧電振動片を上方から見た図である。また、図3は図2のA−A線に沿う断面図であり、図4は圧電振動子の分解斜視図である。
本実施形態の圧電振動子1は、図1〜図4に示すように、ベース基板2とリッド基板3とで2層に積層された箱状に形成されており、内部のキャビティC(図2参照)内に圧電振動片4が収納された表面実装型の圧電振動子である。
なお、図2においては、リッド基板3側に形成されるゲッター材20,21を鎖線で図示している。また、図4においては、図面を見易くするために後述する励振電極13、引き出し電極16、マウント電極14及び重り金属膜17の図示を省略している。
【0024】
図5は圧電振動片の上面図であり、図6は下面図である。また、図7は図5のC−C線に沿う断面図である。
圧電振動片4は、図5〜図7に示すように、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。
この圧電振動片4は、平行に配置された一対の振動腕部10,11と、この一対の振動腕部10,11の基端側を一体的に固定する基部12と、一対の振動腕部10,11の外表面上に形成されて一対の振動腕部10,11を振動させる励振電極13と、この励振電極13に電気的に接続されたマウント電極14とを有している。
また、本実施形態の圧電振動片4は、一対の振動腕部10,11の両主面上に、この振動腕部10,11の長手方向に沿ってそれぞれ形成された溝部15を備えている。この溝部15は、振動腕部10,11の基端側から略中間付近まで形成されている。
【0025】
励振電極13は、一対の振動腕部10,11を互いが接近離間する方向に所定の共振周波数で振動させる電極であり、一対の振動腕部10,11の外表面に、それぞれ電気的に切り離された状態でパターニングされて形成されている。具体的には、図7に示すように、一方の励振電極13が、一方の振動腕部10の溝部15上と、他方の振動腕部11の両側面上とに主に形成され、他方の励振電極13が、一方の振動腕部10の両側面上と他方の振動腕部11の溝部15上とに主に形成されている。
【0026】
また、励振電極13は、図5,図6に示すように、基部12の両主面上において、それぞれ引き出し電極16を介してマウント電極14に電気的に接続されている。そして圧電振動片4は、このマウント電極14を介して電圧が印加されるようになっている。
なお、上述した励振電極13、マウント電極14及び引き出し電極16は、例えば、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)やチタン(Ti)等の導電性膜の被膜により形成されたものである。
【0027】
また、一対の振動腕部10,11の先端には、レーザ光により除去されることで、自身の振動状態を所定の周波数の範囲内で振動するように調整(周波数調整)を行うための重り金属膜(質量調整膜)17が被膜されている。なお、この重り金属膜17は、周波数を粗く調整する際に使用される粗調膜17aと、微小に調整する際に使用される微調膜17bとに分かれている。これら粗調膜17a及び微調膜17bを利用して周波数調整を行うことで、一対の振動腕部10,11の周波数をデバイスの公称周波数の範囲内に収めることができる。
【0028】
このように構成された圧電振動片4は、図3,図4に示すように、金等のバンプBを利用して、ベース基板2の上面にバンプ接合されている。より具体的には、後述する引き回し電極28上に形成された2つのバンプB上に、一対のマウント電極14がそれぞれ接触した状態でバンプ接合されている。これにより、圧電振動片4は、ベース基板2の上面から浮いた状態で支持されるとともに、マウント電極14と引き回し電極28とがそれぞれ電気的に接続された状態となっている。
【0029】
リッド基板3は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明の絶縁基板であり、図1,図3,図4に示すように、板状に形成されている。そして、リッド基板3の下面側(ベース基板2が接合される接合面側)には、圧電振動片4が収まる矩形状の凹部3a(図3,図4参照)が形成されている。この凹部3aは、両基板2、3が重ね合わされたときに、圧電振動片4を収容するキャビティCとなるキャビティ用の凹部である。そして、リッド基板3は、この凹部3aをベース基板2側に対向させた状態でベース基板2に対して陽極接合されている。
【0030】
ベース基板2は、リッド基板3と同様にガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明な絶縁基板であり、図1〜図4に示すように、リッド基板3に対して重ね合わせ可能な大きさで板状に形成されている。
このベース基板2には、このベース基板2を貫通する一対のスルーホール25が形成されている。スルーホール25は、ベース基板2の上面から下面に向かって漸次径が拡径するテーパー状に形成されている。この際、一対のスルーホール25は、キャビティC内に収まるように形成されている。より詳しく説明すると、マウントされた圧電振動片4の基部12側に一方のスルーホール25が位置し、振動腕部10,11の先端側に他方のスルーホール25が位置するように形成されている。なお、ベース基板2を厚さ方向に沿って真っ直ぐに貫通したスルーホール25を形成しても構わない。いずれにしても、スルーホール25はベース基板2を貫通していれば良い。
【0031】
そして、これら一対のスルーホール25には、これらスルーホール25を埋めるように形成された一対の貫通電極26が形成されている。これら貫通電極26は、焼成によってスルーホール25に対して一体的に固定された筒体23及び芯材部24によって形成されたものであり、スルーホール25を完全に塞いでキャビティC内の気密を維持しているとともに、後述する外部電極29と引き回し電極28とを導通させる役割を担っている。
【0032】
筒体23は、ペースト状のガラスフリットが焼成された円錐台形状のものであり、その中心に形成された貫通孔内には芯材部24が筒体23を貫通するように配されている。
芯材部24は、導電性を有する金属材料により円柱状に形成された導電性の芯材であり、この芯材部24を通して貫通電極26の電気導通性が確保されている。
【0033】
ベース基板2の上面側(リッド基板3が接合される接合面側)には、導電性材料(例えば、アルミニウム)により、陽極接合用の接合膜27と、一対の引き回し電極28とがパターニングされている。このうち接合膜27は、リッド基板3に形成された凹部3aの周囲を囲むようにベース基板2の周縁に沿って形成されている。
【0034】
また、一対の引き回し電極28は、一対の貫通電極26のうち、一方の貫通電極26と圧電振動片4の一方のマウント電極14とを電気的に接続するとともに、他方の貫通電極26と圧電振動片4の他方のマウント電極14とを電気的に接続するようにパターニングされている。より詳しく説明すると、図2,図4に示すように、一方の引き回し電極28は、圧電振動片4の基部12の真下に位置するように一方の貫通電極26の真上に形成されている。また、他方の引き回し電極28は、一方の引き回し電極28に隣接した位置から、振動腕部11に沿って先端側に引き回された後、他方の貫通電極26の真上に位置するように形成されている。
【0035】
そして、これら一対の引き回し電極28上にバンプBが形成されており、このバンプBを利用して圧電振動片4がマウントされている。これにより、圧電振動片4の一方のマウント電極14が、一方の引き回し電極28を介して一方の貫通電極26に導通し、他方のマウント電極14が、他方の引き回し電極28を介して他方の貫通電極26に導通するようになっている。
【0036】
また、ベース基板2の下面には、図1,図3,図4に示すように、一対の貫通電極26に対してそれぞれ電気的に接続される外部電極29が形成されている。つまり、一方の外部電極29は、一方の貫通電極26及び一方の引き回し電極28を介して圧電振動片4の一方の励振電極13に電気的に接続されている。また、他方の外部電極29は、他方の貫通電極26及び他方の引き回し電極28を介して、圧電振動片4の他方の励振電極13に電気的に接続されている。
【0037】
ここで、図2〜図4に示すように、凹部3aの内面におけるベース基板2との対向面には、キャビティC内に収納された複数種類(例えば、2種類)のゲッター材(第1ゲッター材20及び第2ゲッター材21)が形成されている。
第1ゲッター材20は、凹部3aの長手方向端部、(圧電振動片4の長手方向における先端よりも外側)に配置されている。具体的に、第1ゲッター材21は、圧電振動子1の平面視において凹部3aの短手方向に沿う全域に配置されるとともに、凹部3aの長手方向端部から圧電振動片4に向かって、振動腕部10,11とは重ならない位置まで延在している。
【0038】
一方、第2ゲッター材21は、圧電振動子1の外部からレーザ照射しうる位置に配置されている。なおリッド基板3における凹部3aの底面は非研磨面(擦りガラス状)であるため、リッド基板3の外側から(圧電振動子1の上面側から)レーザ照射することができない。そのため、ベース基板2の外側から(圧電振動子1の下面側から)レーザ照射することになる。そこで、圧電振動子1の平面視で外部電極29と重ならない位置に、第2ゲッター材21は配置されている。また、第2ゲッター材21が重り金属膜17へのレーザ照射を妨げないように、圧電振動子1の平面視で重り金属膜17と重ならない位置に、第2ゲッター材21は配置されている。そのため、本実施形態では、圧電振動片4の幅方向における一対の振動腕部10,11の両外側に、振動腕部10,11の長手方向に沿って第2ゲッター材21が一対配置されている。
【0039】
なお、各ゲッター材20,21は、加熱されることで活性化してキャビティC内に存在するアウトガスを吸着させるためのものであり、本実施形態では活性化させるための温度の異なる2種類のゲッター材20,21を採用している。具体的に、第2ゲッター材21の活性化温度(第2の活性化温度)は、第1ゲッター材20の活性化温度(第1の活性化温度)よりも高くなっており、第1ゲッター材20の活性化時に第2ゲッター材21は活性化しないようになっている。また、第1ゲッター材20は、活性化温度が接合膜27の後述する陽極接合時における接合温度(例えば、200〜300度程度)よりも高い材料により形成されている。
【0040】
ゲッター材20,21の材料としては、加熱して活性化させることで、その表面においてガス吸着性能が発現する、非蒸発型ゲッター材を用いることが好ましい。非蒸発ゲッター材としては、例えば、ジルコニウム(Zr)や、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、バナジウム(V)等の遷移金属、またはその合金・化合物としてZr−V−FeやZr−V、Zr−Al等を用いることが可能である。そして、上述した非蒸発型ゲッター材の中から、第2ゲッター材21の温度が第1ゲッター材20の温度よりも高くなるような組み合わせを適宜選択することが可能である。このような組み合わせとして、例えば第1ゲッター材20にZr−V−Fe(活性化温度が400度近辺)を、第2ゲッター材21にZr−Al(活性化温度が700度近辺)を採用することが好ましい。なお、第2ゲッター材21として、何れの非蒸発ゲッター材を採用した場合でも、レーザ光を照射することにより、その非蒸発型ゲッター材を局所的に極めて高温に加熱して活性化することができる。
【0041】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、ベース基板2に形成された外部電極29に対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片4の励振電極13に電流を流すことができ、一対の振動腕部10,11を接近・離間させる方向に所定の周波数で振動させることができる。そして、この一対の振動腕部10,11の振動を利用して、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として利用することができる。
【0042】
(圧電振動子の製造方法)
次に、上述した圧電振動子1を、図8に示すフローチャートを参照しながら、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50とを利用して一度に複数製造する製造方法について以下に説明する。なお、図9〜図12は、圧電振動子の製造方法を説明するための工程図である。なお、図10,11に示す破線Mは、後に行う切断工程で切断する切断線を図示している。
【0043】
初めに、圧電振動片作製工程を行って図5〜図7に示す圧電振動片4を作製する(S10)。また圧電振動片4を作製した後、共振周波数の粗調を行っておく。これは、重り金属膜17の粗調膜17aにレーザ光を照射して一部を蒸発させ、重量を変化させることで行う。なお、共振周波数をより高精度に調整する微調に関しては、マウント後に行う。これについては、後に説明する。
【0044】
次に、後にリッド基板3となるリッド基板用ウエハ50を、陽極接合を行う直前の状態まで作製する第1のウエハ作製工程を行う(S20)。まず、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、図9に示すように、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のリッド基板用ウエハ50を形成する(S21)。次いで、リッド基板用ウエハ50の接合面に、行列方向にキャビティC用の凹部3aを複数形成する凹部形成工程を行う(S22)。
続いて、リッド基板用ウエハ50の接合面に形成された複数の凹部3a内に、蒸着法等によりゲッター材20,21をそれぞれ成膜するゲッター材形成工程(ゲッター材配置工程)を行う(S23)。
この時点で、第1のウエハ作製工程(S20)が終了する。
【0045】
次に、図10に示すように、上述した第1のウエハ作成工程(S20)と同時、或いは前後のタイミングで、後にベース基板2となるベース基板用ウエハ40を、陽極接合を行う直前の状態まで作製する第2のウエハ作製工程を行う(S30)。まず、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のベース基板用ウエハ40を形成する(S31)。
次いで、ベース基板用ウエハ40を貫通する一対のスルーホール25を複数形成する貫通孔形成工程(S32)を行う。具体的には、後に両ウエハ40、50を重ね合わせたときに、リッド基板用ウエハ50に形成した凹部3a内に収まるように一対のスルーホール25を複数形成する。しかも、一方のスルーホール25が後にマウントする圧電振動片4の基部12側に位置し、他方のスルーホール25が振動腕部11の先端側に位置するように形成する。なお、スルーホール25を形成するには、サンドブラスト法や治具を利用したプレス加工等の方法を利用して形成すれば良い。
【0046】
続いて、図8に示すように、貫通孔形成工程(S32)で形成されたスルーホール25内に貫通電極26を形成する貫通電極形成工程(S33)を行う。これにより、スルーホール25内において、芯材部24がベース基板用ウエハ40の両面(図3における上下面)に対して面一な状態で保持される。以上により、貫通電極26を形成することができる。
続いて、ベース基板用ウエハ40の上面に導電性材料をパターニングして、接合膜27(図10参照)を形成する接合膜形成工程(S34)を行うとともに、一対の貫通電極26にそれぞれ電気的に接続された引き回し電極28を複数形成する引き回し電極形成工程を行う(S35)。
この工程を行うことにより、一方の貫通電極26と一方の引き回し電極28とが導通するとともに、他方の貫通電極26と他方の引き回し電極28とが導通した状態となる。この時点で第2のウエハ作製工程(S30)が終了する。
【0047】
ところで、図8では、接合膜形成工程(S34)の後に、引き回し電極形成工程(S35)を行う工程順序としているが、これとは逆に、引き回し電極形成工程(S35)の後に、接合膜形成工程(S34)を行っても構わないし、両工程を同時に行っても構わない。いずれの工程順序であっても、同一の作用効果を奏することができる。よって、必要に応じて適宜、工程順序を変更して構わない。
【0048】
次に、作製した複数の圧電振動片4を、それぞれ引き回し電極28を介してベース基板用ウエハ40の上面にバンプ接合するマウント工程を行う(S40)。まず、一対の引き回し電極28上にそれぞれ金等のバンプBを形成する。そして、圧電振動片4の基部12をバンプB上に載置した後、バンプBを所定温度に加熱しながら圧電振動片4をバンプBに押し付ける。これにより、圧電振動片4は、バンプBに機械的に支持されるとともに、マウント電極14と引き回し電極28とが電気的に接続された状態となる。よって、この時点で圧電振動片4の一対の励振電極13は、一対の貫通電極26に対してそれぞれ導通した状態となる。特に、圧電振動片4は、バンプ接合されるので、ベース基板用ウエハ40の上面から浮いた状態で支持される。
【0049】
圧電振動片4のマウントが終了した後、ベース基板用ウエハ40に対してリッド基板用ウエハ50を重ね合わせる重ね合わせ工程を行う(S50)。具体的には、図示しない基準マーク等を指標としながら、両ウエハ40,50を正しい位置にアライメントする。これにより、マウントされた圧電振動片4及びゲッター材20,21が、ベース基板用ウエハ40に形成された凹部3aと両ウエハ40,50とで囲まれるキャビティC内に収容された状態となる。
【0050】
重ね合わせ工程(S50)後、重ね合わせた2枚のウエハ40、50を図示しない陽極接合装置に入れ、所定の温度(接合温度)まで加熱するとともに、所定の電圧を印加して陽極接合する接合工程を行う(S60)。具体的には、接合膜27とリッド基板用ウエハ50との間に所定の電圧を印加する。すると、接合膜27とリッド基板用ウエハ50との界面に電気化学的な反応が生じ、両者がそれぞれ強固に密着して陽極接合される。これにより、圧電振動片4をキャビティC内に封止することができ、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50とが接合した図11に示すウエハ体60を得ることができる。なお、図11においては、図面を見易くするために、ウエハ体60を分解した状態を図示しており、ベース基板用ウエハ40から接合膜27の図示を省略している。なお、陽極接合を行う際、ベース基板用ウエハ40に形成されたスルーホール25は、貫通電極26によって完全に塞がれているので、キャビティC内の気密がスルーホール25を通じて損なわれることがない。
【0051】
そして、上述した陽極接合が終了した後、ベース基板用ウエハ40の下面に導電性材料をパターニングして、一対の貫通電極26にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極29を複数形成する外部電極形成工程を行う(S70)。この工程により、外部電極29を利用してキャビティC内に封止された圧電振動片4を作動させることができる。
【0052】
ところで、上述した接合工程(S60)において、ウエハ体60を加熱すると、各キャビティC内にアウトガス(例えば、酸素)が放出される。キャビティC内にアウトガスが存在すると、キャビティC内の真空度が低下し、等価抵抗値(実効抵抗値:Re)が高くなる。その結果、圧電振動子1の駆動電圧が高くなり、エネルギー効率が低下する。
【0053】
そこで、本実施形態では、キャビティC内の真空度の向上を図るため、ウエハ体60の各キャビティC内に収容されたゲッター材20,21を活性化させてキャビティC内の真空度を調整するゲッタリング工程を行う(S80)。
ゲッタリング工程(S80)では、まず第1ゲッター材20によりキャビティC内のアウトガスを吸着する第1ゲッタリング工程(S81)を行う。具体的には、圧電振動子1を第1ゲッター材20の活性化温度まで加熱し、第1ゲッター材20を活性化させる。すると、活性化された第1ゲッター材20が、キャビティC内のアウトガスを吸着して金属酸化物が生成される。これにより、キャビティC内の酸素が消費されるので、真空度を向上させることができる。
【0054】
なお、ウエハ体60のキャビティC内には、上述した接合工程(S60)時に発生したアウトガスの残存ガスや、第1ゲッタリング工程(S81)時の加熱によって放出されるアウトガスが僅かながら残存する虞がある。
【0055】
そこで、第1ゲッタリング工程(S81)の終了後、第2ゲッター材21によりキャビティC内のアウトガスを吸着する第2ゲッタリング工程(S82)を行う。具体的には、図12に示すように、ベース基板用ウエハ40側からレーザ光Lを照射してゲッター材21を加熱することで、第2ゲッター材21が蒸発して活性化する。なお、この際用いるレーザとしては、後述する微調工程(S90)と同じYAGレーザ等を採用することが可能である。
このように、第2ゲッター材21にレーザ光Lを照射すると、第2ゲッター材21の表面が蒸発し、その蒸発した部分にはレーザ照射痕30が残る。そして、レーザ照射により蒸発した第2ゲッター材21は、キャビティC内を飛散してキャビティC内の酸素を吸着することで、金属酸化物が生成される。これにより、キャビティC内の酸素が消費されるので、真空度を一定レベル以上に向上させることができる。ここで、一定レベルとは、それ以上真空度を向上させても、実効抵抗値に大きな変動がない状態を意味する。これにより、適正な実効抵抗値を確保することができる。
【0056】
なお、圧電振動片4の振動腕部10,11の近傍でゲッタリングを行うと、ゲッタリングに伴う生成物が振動腕部10,11に付着して圧電振動片4の周波数が変動する虞もあるが、ゲッタリング工程(S80)において圧電振動片4の周波数が変動しても、後述する微調工程において圧電振動子1の周波数の微調整が可能である。
【0057】
ゲッタリング工程(S80)の終了後、ウエハ体60の状態で、キャビティC内に封止された個々の圧電振動子1の周波数を微調整して所定の範囲内に収める微調工程を行う(S90)。具体的に説明すると、外部電極29に電圧を印加して圧電振動片4を振動させる。そして、周波数を計測しながらベース基板用ウエハ40を通して外部からレーザ光を照射し、重り金属膜17の微調膜17bを蒸発させる。これにより、一対の振動腕部10,11の先端側の重量が変化するので、圧電振動片4の周波数を、公称周波数の所定範囲内に収まるように微調整することができる。また、上述した第2ゲッタリング工程(S80)と微調工程(S90)とにおいて、レーザ光の照射方向を同一方向とすることで、ウエハ体60の向きを変更することがないので、製造効率の向上を図ることができる。
【0058】
周波数の微調が終了した後、接合されたウエハ体60を図11に示す切断線Mに沿って切断して個片化する切断工程を行う(S100)。その結果、互いに陽極接合されたベース基板2とリッド基板3との間に形成されたキャビティC内に圧電振動片4が封止された、図1に示す表面実装型の圧電振動子1を一度に複数製造することができる。
なお、切断工程(S100)を行って個々の圧電振動子1に個片化した後に、微調工程(S90)を行う工程順序でも構わない。但し、上述したように、微調工程(S90)を先に行うことで、ウエハ体60の状態で微調を行うことができるので、複数の圧電振動子1をより効率よく微調することができる。よって、スループットの向上化を図ることができるので、より好ましい。
【0059】
その後、内部の電気特性検査を行う(S110)。すなわち、圧電振動片4の共振周波数、共振抵抗値、ドライブレベル特性(共振周波数及び共振抵抗値の励振電力依存性)等を測定してチェックする。また、絶縁抵抗特性等を併せてチェックする。そして、最後に圧電振動子1の外観検査を行って、寸法や品質等を最終的にチェックする。これをもって圧電振動子1の製造が終了する。
【0060】
このように、本実施形態では、キャビティCの内面に活性化温度の異なる2種類のゲッター材20,21を配置する構成とした。
この構成によれば、活性化温度の異なる複数種類のゲッター材20,21をキャビティC内に配置することで、複数の温度域でゲッター材20,21を活性化させてキャビティC内に存在するアウトガスを吸着させることができる。具体的には、接合工程(S60)の終了後、第1ゲッタリング工程(S81)を行うことで、接合工程(S60)時にキャビティC内に放出されるアウトガスを第1ゲッター材20によって吸着させることができる。
さらに、第1ゲッタリング工程(S81)の終了後、第2ゲッタリング工程(S82)を行うことで、第1ゲッタリング工程(S81)の終了後にキャビティC内に残存するアウトガスを吸着することができる。これにより、キャビティC内の真空度を向上させることができ、圧電振動子1の等価抵抗値を低下させることができる。その結果、駆動電圧が低く、エネルギー効率の高い圧電振動子1を提供することができる。また、安定した振動特性を得ることができ、圧電振動子1の高品質化を図ることができる。
【0061】
また、第1ゲッター材20に非蒸発型ゲッターを採用することで、第1ゲッタリング工程(S81)においてキャビティC内での第1ゲッター材20の飛散を防ぐことができる。また、非蒸発型ゲッター材は蒸発型ゲッター材に比べて比較的低い温度で活性化させることができるため、キャビティC内に再びアウトガスが放出されることを抑制することができる。
さらに、第1ゲッター材20は、活性化温度が接合工程(S60)における接合温度よりも高い材料により形成されることで、両基板用ウエハ40,50の接合前に第1ゲッター材20が劣化してしまうことを防止することができる。これにより、その後の第1ゲッタリング工程(S81)において第1ゲッター材20に所望の吸着性能を発揮させることができ、キャビティC内に存在するアウトガスを効果的に吸着させることができる。
【0062】
しかも、第2ゲッタリング工程(S82)において、第2ゲッター材21をレーザ照射により活性化させる構成とした。
この構成によれば、レーザ光Lによって第2ゲッター材21のみを局所的に加熱することで、圧電振動子1全体の温度上昇を抑制することができる。これにより、圧電振動子1の温度上昇に伴うアウトガスの発生を防止し、キャビティC内に残存するアウトガスを効果的に吸着することができる。
【0063】
また、重り金属膜17及び外部電極29と第2ゲッター材21とが平面視で重ならないように配置されているため、第2ゲッタリング工程(S82)において、レーザ光Lが重り金属膜17及び外部電極29に遮られることなく、第2ゲッター材21に対して効果的に照射することができる。この場合、第2ゲッター材21をリッド基板3の凹部3aの内面に配置することで、ベース基板用ウエハ40側から照射されるレーザ光Lが、第2ゲッター材21の表面に照射されることになる。したがって、第2ゲッター材21を速やかに活性化させて、製造効率の向上を図ることができる。
さらに、微調工程(S90)において、レーザ光がゲッター材20,21に遮られることもないので、重り金属膜17に対してもレーザ光を効果的に照射させることができ、製造効率の向上を図ることができる。
【0064】
(発振器)
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図13を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器100は、図13に示すように、圧電振動子1を、集積回路101に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器100は、コンデンサ等の電子部品102が実装された基板103を備えている。基板103には、発振器用の上述した集積回路101が実装されており、この集積回路101の近傍に、圧電振動子1の圧電振動片4が実装されている。これら電子部品102、集積回路101及び圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0065】
このように構成された発振器100において、圧電振動子1に電圧を印加すると、この圧電振動子1内の圧電振動片4が振動する。この振動は、圧電振動片4が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路101に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路101によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
また、集積回路101の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0066】
上述したように、本実施形態の発振器100によれば、高品質化された圧電振動子1を備えているので、発振器100自体も同様に高品質化することができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定した高精度な周波数信号を得ることができる。
【0067】
(電子機器)
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図14を参照して説明する。なお電子機器として、上述した圧電振動子1を有する携帯情報機器110を例にして説明する。始めに本実施形態の携帯情報機器110は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカ及びマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化及び軽量化されている。
【0068】
(携帯情報機器)
次に、本実施形態の携帯情報機器110の構成について説明する。この携帯情報機器110は、図14に示すように、圧電振動子1と、電力を供給するための電源部111とを備えている。電源部111は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部111には、各種制御を行う制御部112と、時刻等のカウントを行う計時部113と、外部との通信を行う通信部114と、各種情報を表示する表示部115と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部116とが並列に接続されている。そして、電源部111によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0069】
制御部112は、各機能部を制御して音声データの送信及び受信、現在時刻の計測や表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部112は、予めプログラムが書き込まれたROMと、このROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、このCPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0070】
計時部113は、発振回路、レジスタ回路、カウンタ回路及びインターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子1とを備えている。圧電振動子1に電圧を印加すると圧電振動片4が振動し、この振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部112と信号の送受信が行われ、表示部115に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0071】
通信部114は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部117、音声処理部118、切替部119、増幅部120、音声入出力部121、電話番号入力部122、着信音発生部123及び呼制御メモリ部124を備えている。
無線部117は、音声データ等の各種データを、アンテナ125を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部118は、無線部117又は増幅部120から入力された音声信号を符号化及び複号化する。増幅部120は、音声処理部118又は音声入出力部121から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部121は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0072】
また、着信音発生部123は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部119は、着信時に限って、音声処理部118に接続されている増幅部120を着信音発生部123に切り替えることによって、着信音発生部123において生成された着信音が増幅部120を介して音声入出力部121に出力される。
なお、呼制御メモリ部124は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部122は、例えば、0から9の番号キー及びその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0073】
電圧検出部116は、電源部111によって制御部112等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部112に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部114を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部116から電圧降下の通知を受けた制御部112は、無線部117、音声処理部118、切替部119及び着信音発生部123の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部117の動作停止は、必須となる。さらに、表示部115に、通信部114が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0074】
すなわち、電圧検出部116と制御部112とによって、通信部114の動作を禁止し、その旨を表示部115に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部115の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしても良い。
なお、通信部114の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部126を備えることで、通信部114の機能をより確実に停止することができる。
【0075】
上述したように、本実施形態の携帯情報機器110によれば、高品質化された圧電振動子1を備えているので、携帯情報機器自体も同様に高品質化することができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定した高精度な時計情報を表示することができる。
【0076】
(電波時計)
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、図15を参照して説明する。
本実施形態の電波時計130は、図15に示すように、フィルタ部131に電気的に接続された圧電振動子1を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、上述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0077】
以下、電波時計130の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ132は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ133によって増幅され、複数の圧電振動子1を有するフィルタ部131によって濾波、同調される。 本実施形態における圧電振動子1は、上述した搬送周波数と同一の40kHz及び60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部138、139をそれぞれ備えている。
【0078】
さらに、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路134により検波復調される。続いて、波形整形回路135を介してタイムコードが取り出され、CPU136でカウントされる。CPU136では、現在の年、積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC137に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部138、139は、上述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0079】
なお、上述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計130を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子1を必要とする。
【0080】
上述したように、本実施形態の電波時計130によれば、高品質化された圧電振動子1を備えているので、電波時計自体も同様に高品質化することができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定して高精度に時刻をカウントすることができる。
【0081】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
ゲッター材20,21の配置位置は適宜設計変更が可能である。例えば、上述した実施形態では、ゲッター材20,21を共にリッド基板3に形成した構成としたが、ベース基板2側に形成しても構わない。具体的には、図16に示すように、ベース基板2の上面において、圧電振動片4の長手方向における外側に第1ゲッター材20を配置し、圧電振動片4の幅方向における両外側に第2ゲッター材21を配置する構成にしてもよい。また、図17に示すように、キャビティC内におけるベース基板2との対向面全域に第1ゲッター材20を配置する構成にしてもよい。
これらの場合であっても、同様の作用効果を奏することができる。
【0082】
なお、本発明は、上述したガラスパッケージタイプの圧電振動子1に限られず、セラミックパッケージタイプの圧電振動子に本発明を適用することも可能である。また、キャビティC内に封入される電子部品は圧電振動片4に限られない。
また、上述した実施形態では、第1ゲッター材20及び第2ゲッター材21の材料として、ともに非蒸発型ゲッター材を採用する場合について説明したが、これに限らず第2ゲッター材21に蒸発型ゲッター材を採用することも可能である。蒸発型ゲッター材とは、レーザ照射により蒸発して活性化することで、ガス吸着性能が発現する物質のことであり、例えば、アルミ(Al)や、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、サマリウム(Sm)、Ba−Al−Ni合金等を採用することが可能である。
【0083】
また、上述した実施形態では、圧電振動片4の一例として振動腕部10,11の両面に溝部15が形成された溝付きの圧電振動片4を例に挙げて説明したが、溝部15がないタイプの圧電振動片でも構わない。但し、溝部15を形成することで、一対の励振電極13に所定の電圧を印加させたときに、一対の励振電極13間における電界効率を上げることができるので、振動損失をより抑えて振動特性をさらに向上することができる。つまり、CI値(Crystal Impedance)をさらに低くすることができ、圧電振動片4のさらなる高性能化を図ることができる。この点において、溝部15を形成する方が好ましい。
【0084】
また、上述した実施形態では、ベース基板2とリッド基板3とを接合膜27を介して陽極接合したが、陽極接合に限定されるものではない。但し、陽極接合することで、両基板2、3を強固に接合できるので好ましい。
また、上述した実施形態では、圧電振動片4をバンプ接合したが、バンプ接合に限定されるものではない。例えば、導電性接着剤により圧電振動片4を接合しても構わない。但し、バンプ接合することで、圧電振動片4をベース基板2上から浮かすことができ、振動に必要な最低限の振動ギャップを自然と確保することができる。よって、この点において、バンプ接合することが好ましい。
【符号の説明】
【0085】
1…圧電振動子(パッケージ) 4…圧電振動片(電子部品) 17…重り金属膜(質量調整膜) 20…第1ゲッター材 21…第2ゲッター材 27…接合膜 30…レーザ照射痕(照射痕) C…キャビティ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接合された複数の基板と、前記複数の基板の間に形成されたキャビティとを備え、前記キャビティ内に電子部品を封入可能なパッケージであって、
前記キャビティ内には、加熱されることで活性化して、前記キャビティ内に存在する気体を吸着するゲッター材が配置され、前記ゲッター材は、活性化するための活性化温度が異なる複数種類の前記ゲッター材を有していることを特徴とするパッケージ。
【請求項2】
前記ゲッター材は、第1の活性化温度で活性化する第1ゲッター材と、
前記第1の活性化温度よりも高い第2の活性化温度で活性化する第2ゲッター材とを有し、
前記各ゲッター材のうち、少なくとも前記第1ゲッター材は、加熱され活性化することで、その表面において前記キャビティ内の気体を吸着可能な非蒸発型ゲッター材からなることを特徴とする請求項1記載のパッケージ。
【請求項3】
前記第2ゲッター材には、レーザ光が照射されてなる照射痕が形成されていることを特徴とする請求項2記載のパッケージ。
【請求項4】
互いに接合された複数の基板と、前記複数の基板の間に形成されたキャビティとを備え、前記キャビティ内に電子部品を封入可能なパッケージの製造方法であって、
前記キャビティ内に配置されるように、活性化するための活性化温度が異なる複数種類のゲッター材を配置するゲッター材配置工程と、
前記複数の基板を接合する接合工程と、
前記ゲッター材を活性化させて、前記キャビティ内に存在する気体を吸着するゲッタリング工程とを有し、
前記ゲッター材配置工程では、第1の活性化温度で活性化する第1ゲッター材と、
前記第1の活性化温度よりも高い第2の活性化温度で活性化する第2ゲッター材とを配置し、
前記ゲッタリング工程では、前記第1ゲッター材を前記第1の活性化温度以上に加熱することで、前記第1ゲッター材を活性化させる第1ゲッタリング工程と、
前記第2ゲッター材を前記第2の活性化温度以上に加熱することで、前記第2ゲッター材を活性化させる第2ゲッタリング工程とを有していることを特徴とするパッケージの製造方法。
【請求項5】
前記接合工程では、前記複数の基板間に形成された導電性を有する接合膜を、接合温度に加熱した状態で電圧を印加することで、前記複数の基板を陽極接合し、
前記第1ゲッター材は、前記第1の活性化温度が前記接合温度よりも高い材料で形成されていることを特徴とする請求項4記載のパッケージの製造方法。
【請求項6】
前記第2ゲッタリング工程では、前記キャビティの外部から前記第2ゲッター材に向けて前記レーザ光を照射し、前記第2ゲッター材を前記第2の活性化温度以上に加熱することを特徴とする請求項4または請求項5記載のパッケージの製造方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載のパッケージの前記キャビティ内に圧電振動片が気密封止されてなることを特徴とする圧電振動子。
【請求項8】
前記圧電振動片には、前記圧電振動片の質量を調整するための質量調整膜が形成され、前記質量調整膜は、レーザ光により除去されることで、前記圧電振動片の質量が調整可能に構成され、
前記質量調整膜と前記各ゲッター材とは、前記レーザ光の照射方向において重ならない位置に配置されていることを特徴とする請求項7記載の圧電振動子。
【請求項9】
請求項7または請求項8記載の前記圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項10】
請求項7または請求項8記載の前記圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項11】
請求項7または請求項8記載の前記圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。
【請求項1】
互いに接合された複数の基板と、前記複数の基板の間に形成されたキャビティとを備え、前記キャビティ内に電子部品を封入可能なパッケージであって、
前記キャビティ内には、加熱されることで活性化して、前記キャビティ内に存在する気体を吸着するゲッター材が配置され、前記ゲッター材は、活性化するための活性化温度が異なる複数種類の前記ゲッター材を有していることを特徴とするパッケージ。
【請求項2】
前記ゲッター材は、第1の活性化温度で活性化する第1ゲッター材と、
前記第1の活性化温度よりも高い第2の活性化温度で活性化する第2ゲッター材とを有し、
前記各ゲッター材のうち、少なくとも前記第1ゲッター材は、加熱され活性化することで、その表面において前記キャビティ内の気体を吸着可能な非蒸発型ゲッター材からなることを特徴とする請求項1記載のパッケージ。
【請求項3】
前記第2ゲッター材には、レーザ光が照射されてなる照射痕が形成されていることを特徴とする請求項2記載のパッケージ。
【請求項4】
互いに接合された複数の基板と、前記複数の基板の間に形成されたキャビティとを備え、前記キャビティ内に電子部品を封入可能なパッケージの製造方法であって、
前記キャビティ内に配置されるように、活性化するための活性化温度が異なる複数種類のゲッター材を配置するゲッター材配置工程と、
前記複数の基板を接合する接合工程と、
前記ゲッター材を活性化させて、前記キャビティ内に存在する気体を吸着するゲッタリング工程とを有し、
前記ゲッター材配置工程では、第1の活性化温度で活性化する第1ゲッター材と、
前記第1の活性化温度よりも高い第2の活性化温度で活性化する第2ゲッター材とを配置し、
前記ゲッタリング工程では、前記第1ゲッター材を前記第1の活性化温度以上に加熱することで、前記第1ゲッター材を活性化させる第1ゲッタリング工程と、
前記第2ゲッター材を前記第2の活性化温度以上に加熱することで、前記第2ゲッター材を活性化させる第2ゲッタリング工程とを有していることを特徴とするパッケージの製造方法。
【請求項5】
前記接合工程では、前記複数の基板間に形成された導電性を有する接合膜を、接合温度に加熱した状態で電圧を印加することで、前記複数の基板を陽極接合し、
前記第1ゲッター材は、前記第1の活性化温度が前記接合温度よりも高い材料で形成されていることを特徴とする請求項4記載のパッケージの製造方法。
【請求項6】
前記第2ゲッタリング工程では、前記キャビティの外部から前記第2ゲッター材に向けて前記レーザ光を照射し、前記第2ゲッター材を前記第2の活性化温度以上に加熱することを特徴とする請求項4または請求項5記載のパッケージの製造方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載のパッケージの前記キャビティ内に圧電振動片が気密封止されてなることを特徴とする圧電振動子。
【請求項8】
前記圧電振動片には、前記圧電振動片の質量を調整するための質量調整膜が形成され、前記質量調整膜は、レーザ光により除去されることで、前記圧電振動片の質量が調整可能に構成され、
前記質量調整膜と前記各ゲッター材とは、前記レーザ光の照射方向において重ならない位置に配置されていることを特徴とする請求項7記載の圧電振動子。
【請求項9】
請求項7または請求項8記載の前記圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項10】
請求項7または請求項8記載の前記圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項11】
請求項7または請求項8記載の前記圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図10】
【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−49666(P2011−49666A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194476(P2009−194476)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
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