プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法
【課題】処理範囲を大面積化することができると共に、均一な処理を行うことができ、しかも処理対象に応じて容易に設計変更が可能なプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】一端側の開口からプラズマ生成用ガスGが流入すると共に他端側の開口から活性化されたプラズマ生成用ガスGが流出する複数の貫通孔2と、各貫通孔2内でそれぞれ放電を発生させるための一対の電極3,4とが設けられた平板状の絶縁基材1からなる反応器Rを具備する。上記一対の電極3、4は層状に形成されて上記貫通孔2におけるプラズマ生成用ガスGの流通方向で対向して両方とも絶縁基材1に埋設される。上記貫通孔2におけるプラズマ生成用ガスGの流通方向において下流側の電極3の周端部を上流側の電極4の周端部よりも外側に突出させる。
【解決手段】一端側の開口からプラズマ生成用ガスGが流入すると共に他端側の開口から活性化されたプラズマ生成用ガスGが流出する複数の貫通孔2と、各貫通孔2内でそれぞれ放電を発生させるための一対の電極3,4とが設けられた平板状の絶縁基材1からなる反応器Rを具備する。上記一対の電極3、4は層状に形成されて上記貫通孔2におけるプラズマ生成用ガスGの流通方向で対向して両方とも絶縁基材1に埋設される。上記貫通孔2におけるプラズマ生成用ガスGの流通方向において下流側の電極3の周端部を上流側の電極4の周端部よりも外側に突出させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理物の表面に存在する有機物等の異物のクリーニング、レジストの剥離やエッチング、有機フィルムの密着性の改善、金属酸化物の還元、成膜、めっき前処理、コーティング前処理、各種材料・部品の表面改質などの表面処理に利用されるプラズマ処理装置及びこれを用いたプラズマ処理方法に関するものであり、特に、精密な接合が要求される電子部品の表面のクリーニングに好適に応用されるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の電極を対向させて配置することによって電極間の空間を放電空間として形成し、放電空間にプラズマ生成用ガスを供給すると共に電極間に電圧を印加することによって、放電空間で放電を発生させてプラズマを生成し、放電空間からプラズマ或いはプラズマの活性種を噴き出して被処理物に吹き付けることによって、被処理物に表面改質などプラズマ処理を施すことが行われている(特許文献1参照)。
【0003】
このようなプラズマ処理においては、プラズマ或いはプラズマの活性種を一つの噴出口から吹き出すと共に、この吹き出し方向と直交する方向に向けて被処理物を搬送し、このように被処理物を搬送しながらプラズマ処理を施すものであるが、プラズマ或いはプラズマの活性種が噴き出される面積が小さいことから、被処理物に対して局所的にしかプラズマ処理を施すことができず、処理ムラが生じやすいものであり、また大面積の被処理物に対して処理を行う場合には被処理物を搬送しながら処理を行わなければならず、処理時間が長くなって処理効率が低下してしまうものである。
【0004】
一方、特許文献2等に開示されている技術では、平行に配置した複数の電極の表面に固体誘電体を配置した誘電体被覆電極を有する反応容器を用いることにより、プラズマ或いはプラズマの活性種が噴き出される領域の面積を大きくするようにしている。
【0005】
しかし、この特許文献2に記載されているような技術では、大面積の被処理物に対しても一度に表面処理を行うことができるが、この処理面積の全体に亘って均一なガス流でプラズマ或いはプラズマの活性種が噴き出されるようにすることは難しく、表面処理を均一に行うようにすることは困難であるという問題がある。さらに、このような大面積の処理を一度に行う場合には、大量のガスを消費することになりランニングコストが大幅に増加すると言う問題が生じる。
【0006】
また、大面積の処理が可能な処理装置を作製したとしても、処理対象である液晶パネル用ガラス等が更に大型化すれば、一度の処理にて表面処理を行うのは困難であり、更なる大面積の処理が可能となるように設計変更を繰り返していかなければならないが、従来はこのような設計変更は容易ではなく、多大な設備投資が必要なものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−335868号公報
【特許文献2】特開平4−358076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の点に鑑みて為されたものであり、処理範囲を大面積化することができると共に、少ないガス消費量(低ランニングコスト)で均一な処理を行うことができ、しかも処理対象に応じて容易に設計変更が可能なプラズマ処理装置及びこのようなプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るプラズマ処理装置は、プラズマ生成用ガスGを放電により活性化させ、この活性化されたプラズマ生成用ガスGを被処理物5に吹き付けるプラズマ処理装置において、一端側の開口からプラズマ生成用ガスGが流入すると共に他端側の開口から活性化されたプラズマ生成用ガスGが流出する複数の貫通孔2と、各貫通孔2内でそれぞれ放電を発生させるための電極3,4とが設けられた絶縁基材1からなる反応器Rを具備することを特徴とする。これにより、大気圧又はその近傍の圧力下で、各貫通孔2の内側に気体放電を発生し、この気体放電により生じる活性種を含む活性化されたプラズマ生成用ガスGのガス流を複数の貫通孔2から吹き出して被処理物5に供給することによって、大面積に亘って高効率で均一なプラズマを発生させることができて、少ないガス流量で大面積に亘る被処理物5の表面処理を均一に行うことができるものであり、また、絶縁基材1を適宜複数組み合わせて設けることで、被処理物5の変更に応じて容易に設計変更を行うことが可能なものである。
【0010】
上記の絶縁基材1は、平板状に形成し、また電極3,4は両方とも絶縁基材1に埋設するように形成するものであり、これにより貫通孔2及び電極3,4を微細加工して、より均一な処理が可能となるものである。
【0011】
また、一対の層状の電極3,4を貫通孔2におけるプラズマ生成用ガスの流通方向において対向させると共に、貫通孔2におけるプラズマ生成用ガスの流通方向において下流側の電極の周端部を上流側の電極の周端部よりも外側に突出させる。この場合、絶縁基材1の表面において電極3,4の周端間に対応する箇所での沿面放電31の発生を抑えることができ、開口8に対応する箇所以外での沿面放電31を少なくすることができてアークによる被処理物5の損傷をさらに少なくすることができるものである。
【0012】
また、電極3,4が貫通孔2に露出されるようにすると、放電性を高めることができる。
【0013】
また、電極3,4が貫通孔2に露出されないように形成しても良く、この場合は、誘電体バリア放電を貫通孔2に発生させることとなり、電極3,4が直接放電やプラズマに曝されることを防いで電極3,4の損耗を防止すると共に、放電を安定化させて、プラズマ発生密度を向上することが可能となる。
【0014】
また、貫通孔2内で電気力線がプラズマ生成用ガスGの流通方向と交差する方向に発生するように電極3,4を配設すると、プラズマ生成用ガスGの流通方向と交差する方向に放電を発生させて、プラズマ生成用ガスGの活性化を行うことができる。
【0015】
また、貫通孔2内で電気力線がプラズマ生成用ガスGの流通方向と平行な方向に発生するように電極3,4を配設しても良く、この場合はプラズマ生成用ガスGの流通方向と平行な方向の高密度のストリーマ放電を発生させることができて、プラズマ生成用ガスGの活性を更に向上し、更に高効率の表面処理を行うことが可能となる。
【0016】
また、隣り合う電極3,4の間隔は0.01〜5mmの範囲とすることが好ましく、これにより、気体放電(プラズマ)を安定に発生させることができる。
【0017】
また、貫通孔2の開口形状は直径0.01〜15mmの円形状とすることが好ましく、この場合、特にプラズマ生成用ガスGの流量を抑制しつつ、大面積の処理が可能となるものである。
【0018】
また、貫通孔2の開口形状を短手寸法0.01〜15mmのスリット状とすることも好ましく、この場合、特に貫通孔2の短手方向に沿って被処理物5を搬送しつつプラズマ処理を行うと、表面処理の均一性を更に向上することが可能となるものである。
【0019】
また、層状の電極3,4を絶縁基材1に形成すると共に貫通孔2に合致する位置において電極3,4に開口8を形成し、隣り合う開口8、8の間において電極3,4に欠損部分30が無いようにすることが好ましく、この場合、絶縁基材1の表面で沿面放電31の発生を少なくすることができ、沿面放電31からの被処理物5に対するアークショートが発生しにくくなり、従って、アークによる被処理物5の損傷を少なくすることができるものである。
【0020】
また、絶縁基材1はセラミックスにて形成されていることが好ましく、この場合、絶縁基材1に高い耐熱性と強度とを付与することができ、耐久性が高いものである。
【0021】
特に、絶縁基材1を高強度且つ安価なアルミナにて形成することが好ましい。
【0022】
また、休止区間を持つパルス状の電圧を電極3,4に印加する電源6を具備するようにすることが好ましく、この場合、複数の貫通孔2のそれぞれにおいて均一で安定した放電を高効率で発生させて処理効率を向上することができる。
【0023】
また、周波数が1Hz〜200kHzの電圧を電極3,4に印加する電源6を具備することが好ましく、これにより電極3,4間の放電を安定化させて表面処理効率を更に向上し、且つプラズマ生成用ガスの過度な温度上昇を抑制して被処理物5の熱的損傷を防止し、更に一部の貫通孔2への放電の集中を抑制して均一な処理を可能とすることができる。
【0024】
更に、デューティー比が0.01〜80%のパルス状の電圧を電極3,4に印加する電源6を具備することが好ましく、この場合、特に高効率で安定した放電を発生させることが可能となり、処理効率を更に向上させることができる。
【0025】
また、一対の電極3、4を中点接地するのが好ましく、この場合、活性化されたプラズマ生成用ガスGと被処理物5との間の電位差を小さくすることができ、活性化されたプラズマ生成用ガスGからの被処理物5に対するアークの発生を防止することができるものである。
【0026】
また、反応器Rに対して、希ガス、窒素、酸素、空気の少なくとも一つを含有するガス、またはこれらの二種以上の混合ガスを、プラズマ生成用ガスGとして供給するガス供給手段を具備することが好ましく、これにより、希ガスや窒素により被処理物5の表面改質などのプラズマ処理を行うことができ、酸素により有機物の除去などのプラズマ処理を行うことができ、空気により被処理物5の表面改質や有機物の除去などのプラズマ処理を行うことができ、希ガスと酸素の混合ガスにより被処理物5の表面改質や有機物の除去などのプラズマ処理を行うことができるものである。
【0027】
また、絶縁基材1を冷却する放熱器7を具備することが好ましく、これにより、絶縁基材1の熱変形による割れ等の破損の発生を防止し、また絶縁基材1の一部が過剰に加熱されることによる各貫通孔2ごとでのプラズマ発生の不均一化を防止して、均一な表面処理を維持することができるものである。
【0028】
また、二次電子が放出されやすい温度に絶縁基材1を温度調整するための温度調整手段を用いるのが好ましく、この場合、絶縁基材1から放出された二次電子によりプラズマ生成密度を増加させることができ、被処理物5の洗浄能力や改質能力などのプラズマ処理能力を向上させることができるものである。
【0029】
また、全ての貫通孔2に対してプラズマ生成用ガスGをほぼ均一な流速で供給するためのガス均一化手段を設けるのが好ましく、この場合、活性化されたプラズマ生成用ガスGを全ての貫通孔2からほぼ均一に吹き出すことができ、活性化されたプラズマ生成用ガスGの流速分布を少なくして均一なプラズマ処理を行うことができるものである。
【0030】
また、反応器Rを複数の絶縁基材1にて形成することも好ましく、これにより、絶縁基材1を適宜増減することで処理面積を容易に増減することができ、また絶縁基材1の配設位置を適宜変更して種々の形状の領域に対して表面処理を行うようにすることができ、或いは被処理物5との距離が異なる絶縁基材1を配設して、被処理物5に対して意図的に表面処理の度合いが高い部位や低い部位を同時に形成することができるようになり、しかも絶縁基材1の組み合わせを変更することで容易に設計変更が可能となるものである。
【0031】
また、上記のようなプラズマ処理装置に適用される反応器Rは、絶縁材料を成形した複数の開口を有する複数のシート材の間に、導電体材料を成形した導電体膜を、各シート材の開口が合致するように積層して、一体成形することにより、シート材にて絶縁基材1を、導電体膜にて電極3,4を、シート材の開口にて貫通孔2をそれぞれ形成して製造することができるするものであり、これにより、上記のようなプラズマ処理装置に適用される反応器Rを容易に形成することができ、且つ貫通孔2や電極3,4の微細成形を容易に行うことができるものである。
【0032】
また、本発明に係るプラズマ処理方法は、上記のようなプラズマ処理装置を用い、複数の各貫通孔2の一端側から他端側へプラズマ生成用ガスGを流通させると共に電極3,4に電圧を印加して各貫通孔2内で放電を発生させることにより、貫通孔2内でプラズマを発生させてプラズマ生成用ガスGを活性化させ、この活性化されたプラズマ生成用ガスGを各貫通孔2の他端側から被処理物5の表面に噴射することを特徴とするものである。これにより、大面積に亘って高効率でプラズマを発生させることができて、少ないガス流量で大面積に亘る被処理物5の表面処理を行うことができるものであり、また、絶縁基材1を適宜複数組み合わせて設けることで、被処理物5の変更に応じて容易に設計変更を行うことが可能なものである。
【0033】
上記の被処理物5は、フラットパネルディスプレイ用ガラス材、プリント配線基板又は樹脂フィルムであることが好ましく、これらの被処理物5に対して有機物等の異物のクリーニング、レジストの剥離やエッチング、有機フィルムの密着性の改善、金属酸化物の還元、成膜、水洗浄前処理、めっき前処理、コーティング前処理、その他の表面改質などの表面処理を行うことができ、またこれらの被処理物5の寸法変更等に応じて適宜容易に設計変更が可能なものである。
【発明の効果】
【0034】
上記のように本発明プラズマ処理装置及びこのプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法では、各貫通孔の内側に気体放電を発生し、この気体放電により生じる活性種を含む活性化されたプラズマ生成用ガスのガス流を複数の貫通孔から吹き出して被処理物に供給することによって、大面積に亘って高効率で均一なプラズマを発生させることができて、少ないガス流量で大面積に亘る被処理物の表面処理を均一に行うことができる。このように一度に表面処理が可能な処理面積を大面積化させると、大面積の被処理物に対しても一度に表面処理を施すことが可能となって、処理効率を向上することができるものである。また、特に被処理物を搬送しながら表面処理を施す場合などには、搬送中の被処理物が活性化されたプラズマ生成用ガスのガス流に曝露されている時間を長くすることができ、少ないガス量で効率的に表面処理することができるものであり、従って、ガスの流量を増加させることなく、被処理物と活性種との接触時間を増加させて表面処理の能力を高めることができ、ガスの消費量が増大しないものであり、表面処理のランニングコストが増加することなく経済的に不利にならないものである。
【0035】
更に、複数の絶縁基材を組み合わせて反応器を構成することが容易であり、かつ絶縁基材の数の増減や配置位置の変更等により、容易に設計変更が可能となって、種々の寸法や形状の被処理物に対するプラズマ処理に、容易に対処することができるものである。
【0036】
また、上記の反応器の製造方法では、上記のようなプラズマ処理装置に適用される反応器を容易に形成することができ、且つ貫通孔や電極の微細成形を容易に行うことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】絶縁基材の一例を示すものであり、(a)は平面図、(b)は(a)の断面図である。
【図2】絶縁基材の一例を示すものであり、(a)は平面図、(b)は(a)の断面図である。
【図3】本発明の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態の他例を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態の更に他例を示す断面図である。
【図6】本発明の参考例を示すものであり、(a)は断面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図7】電極間に印加される電圧波形の一例を示すグラフである。
【図8】電極間に印加される電圧波形の他例を示すグラフである。
【図9】電極間に印加される電圧波形の他例を示すグラフである。
【図10】(a)はプラズマ生成用ガスの流通方向と平行な方向に電極を並べて設けた場合の電気力線の方向を示す断面図、(b)はプラズマ生成用ガスの流通方向と交差する方向に電極を並べて設けた場合の電気力線の方向を示す断面図である。
【図11】(a)乃至(d)は、それぞれ複数の絶縁基材にて反応器を構成した例を示すものであり、(a)乃至(c)は平面図、(d)は側面図である。
【図12】本発明の実施の形態の一例を示し、(a)(b)は概略図である。
【図13】本発明の実施の形態の一例を示し、(a)(b)は図12のA−A′の部分に相当する断面図である。
【図14】本発明の実施の形態の一例を示し、(a)は概略図、(b)(c)は断面図である。
【図15】本発明の実施の形態の一例を示し、(a)(b)は一部の概略の断面図である。
【図16】本発明の実施の形態の一例を示し、(a)は概略の回路図、(b)はユニットA、Bに印加される電圧の波形を示すグラフである。
【図17】本発明の実施の形態の一例を示す概略の回路図である。
【図18】比較例1における装置構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【0039】
図1,2に本発明のプラズマ処理装置の一例を示す。このプラズマ処理装置は,板状の絶縁基材1に複数の貫通孔(スルーホール)2と、絶縁基材1内部に埋め込まれた複数(一対)の電極3,4とを備えた反応器Rを備えている。
【0040】
絶縁基材1は高融点の絶縁材料(誘電体材料)で形成されることが好ましく、例えば、石英ガラス、アルミナ、ジルコニア、ムライト、窒化アルミニウムなどのような、高耐熱性、高強度のガラス質材料やセラミックスなどで形成することが好ましいが、これらの材料に限定されるものではない。特に高強度で安価なアルミナ等で形成することが好ましい。また、チタニア、チタン酸バリウムなどの高誘電材料を用いることもできる。
【0041】
また、電極3,4は銅、タングステン、アルミニウム、真鍮、ステンレス鋼などの導電性の金属材料を用いて形成することができるが、特に銅、タングステン等で形成することが好ましい。
【0042】
上記の絶縁基材1と電極3,4の材質は、反応器Rの作製時やプラズマ処理時にかかる熱負荷による変形量の相違による破損を防止するために、線熱膨張率の差が小さいもの同士を適宜選択して用いることが好ましい。
【0043】
絶縁基材1及び貫通孔2の形状は適宜設計されるが、絶縁基材1は板状に形成することが好ましく、図示の絶縁基材1は平面視矩形状に形成されており、略同方向(絶縁基材1の厚み方向)に貫通する平面視円形状の貫通孔2が、複数個形成されている。各貫通孔2は、絶縁基材1の一面と他面でそれぞれ開口し、絶縁基材1の一面の開口がガス導入口2a、他面の開口がガス吹出口2bとして形成されている。
【0044】
この貫通孔2は、適宜の形状に形成することができ、例えば平面視円形状の複数の貫通孔2を二次元状に分散させて形成したり、長方形状(スリット状)の複数の貫通孔2を平行並列に配列させて形成したりすることができる。特に平面視円形状の貫通孔2を二次元状に分散させて形成すると、貫通孔2の径やピッチ等の工夫は必要であるが、プラズマ生成用ガスGの単位時間あたりの流量(流速)を抑制しつつ、広い面積にわたり活性化されたプラズマ生成用ガスGを均一に噴射させることができる。
【0045】
また、電極3,4は、電圧が印加された際に貫通孔2内において対となる電極3,4間で放電が発生するように形成されるものであり、例えば対となる電極3,4間に電源6を接続して、この電極3,4間に休止区間を持つパルス状の電圧が印加されるように形成される。対となる電極3,4のうちの一方は接地された接地電極として形成することができる。このとき貫通孔2内の対となる電極3,4間の空間は放電空間として形成される。
【0046】
電極3,4は、上記のように放電空間内で放電を発生させることができるように適宜の形状に形成することができるが、絶縁基材1の内部に埋設された状態で、電極3,4が貫通孔2の側方に配置されるように形成することが好ましい。
【0047】
図1,2に示す例では、絶縁基材1は一面が上方に、他面が下方に配置されており、平面視円形状の複数の貫通孔2が上下方向に貫通してガス導入口2aが上側、ガス吹出口2bが下側に開口するように形成されている。この複数の貫通孔2の開口は絶縁基材1の一面及び他面において二次元的に分散するように設けられており、図示の例では貫通孔2は平面視において平面正方格子状に配列するように設けられ、且つ隣り合う貫通孔2同士の間隔が略等間隔となるように形成されている。貫通孔2の配置の仕方はこのようなものには限られず、適宜のパターンに配置することができる。例えば貫通孔2を平面視において平面最密六方格子状(千鳥状)に配列するように設けると、貫通孔2をより密に且つ均一に配置することができ、被処理物5に対する表面処理を更に均一に行うことが可能となる。各貫通孔2の寸法や、各貫通孔2同士の間隔などは、貫通孔2内でプラズマ生成用ガスが放電により高効率で活性化され、また貫通孔2から噴出される活性化されたプラズマ生成用ガスGが均一に噴射されるように、適宜設定すれば良いが、特にその直径(内径)を0.01〜15mmの範囲に形成することが好ましく、また隣り合う貫通孔2同士の間隔は0.03〜60mmの範囲に形成することが好ましい。例えば小面積の被処理物5に対するプラズマ処理を行う場合には、貫通孔2の径が小さくなるように形成することが好ましい。
【0048】
また、図6に示す参考例では、絶縁基材1は一面が上方に、他面が下方に配置されており、平面視長方形状(スリット状)の複数の貫通孔2が上下方向に貫通してガス導入口2aが上側、ガス吹出口2bが下側に開口するように形成されている。この複数の貫通孔2の開口は絶縁基材1の一面及び他面において平行並列に配列するように設けられ、且つ隣り合う貫通孔2同士の間隔が略等間隔となるように形成されている。各貫通孔2の寸法や、各貫通孔2同士の間隔などは、貫通孔2内でプラズマ生成用ガスGが放電により高効率で活性化され、また貫通孔2から噴出される活性化されたプラズマ生成用ガスGが均一に噴射されるように、適宜設定すれば良いが、特にその幅寸法(短手方向の寸法)を0.01〜15mmの範囲に形成することが好ましく、また貫通孔2同士の間隔は0.01〜30mmの範囲に形成することが好ましい。この場合、貫通孔2のガス吹出口2bからは、貫通孔2の長手方向に沿って、活性化されたプラズマ生成用ガスGが連続的に噴射されることとなり、このため特に貫通孔2の短手方向に沿って被処理物5を搬送しつつプラズマ処理を行う場合には、表面処理の均一性を更に向上することが可能となる。
【0049】
また、図1,2に示す例では、対となる一方の電極4と他方の電極3とが絶縁基材1内に埋設されており、且つ一方の電極4が絶縁基材1の一面側(上側、ガス導入口2a側)に、他方の電極3が絶縁基材1の他面側(下側、ガス吹出口2b側)に配置されており、対となる電極3,4が貫通孔2内でのプラズマ生成用ガスGの流通方向と平行な方向に並んで配置されている。電極3,4間は間隔をあけて配置されており、この電極3,4間には絶縁基材1を構成する絶縁材料(誘電体材料)が介在するようになっている。このとき図示の例では各電極3,4は絶縁基材1の内部に連続的な層状に形成され、且つ各貫通孔2と合致する位置には開口8が形成され、この開口8の内面が貫通孔2を取り囲むように形成されることで、各電極3,4が貫通孔2を取り囲むように形成されている。すなわち、各電極3,4は各貫通孔2ごとに別個に形成されているものではなく、連続した層状の電極3,4に形成された複数の開口8の内面が、各貫通孔2内において放電を発生させる放電面として形成される。
【0050】
ここで、図1(b)に示す例では、各電極3,4の開口8の内径と貫通孔2の内径とが同一寸法に形成されて、開口8と貫通孔2の各内面が面一となり、各電極3,4がその開口8の内面において貫通孔2内に露出するように形成されている。この場合、電極3,4間に電圧が印加された際の放電性を高めることができ、プラズマ生成用ガスG中の活性種の密度を向上して表面処理効率を向上することができる。特にプラズマ生成用ガスG中に反応性ガスが含有されていない場合には、電極3,4が露出する場合でも放電時における電極3,4の損耗が少なく、このためこのように電極3,4を露出させることにより放電性を向上させることが好ましい。
【0051】
また図2に示す例では、各電極3,4の開口8の内径は貫通孔2の内径よりも大きくなるように形成されており、各電極3,4の開口8の内面はすべて絶縁基材1の内部に埋設されるようになっている。このとき、各電極3,4は貫通孔2内には露出しないように形成され、電極3,4間に電圧が印加された際には、貫通孔2内では誘電体バリア放電が発生する。この場合、各電極3,4の放電面が絶縁基材1を構成する絶縁材料(誘電材料)によって保護されることとなり、特にプラズマ生成用ガスG中に反応性ガスが含有されている場合でも電極3,4の損耗を防止することができる。また、電極3,4を露出させる場合では高電圧下においてアークが発生して放電が不安定になる場合があるが、電極3,4を絶縁材料(誘電材料)によって被覆することで、高電圧下におけるアーク放電の発生が抑制されて、安定した放電の維持が可能となる。絶縁基材1を構成する絶縁材料(誘電材料)による各電極3,4の被覆の厚みは適宜設定されるが、電極3,4の表面を十分に保護すると共に良好な放電性を維持するためには、その厚みが0.01〜3mmの範囲であることが好ましい。
【0052】
また上記の電極3,4の間隔(放電面の間隔)は気体放電(プラズマ)を安定に発生するために0.01〜5mmに設定するのが好ましい。
【0053】
上記のようにして貫通孔2におけるプラズマ生成用ガスGの流通方向と平行な方向に電極3,4を並べて設けると、図10(a)に示すように、電極3,4間の電位差によって貫通孔2内に発生する電気力線(図中の矢印)は、プラズマ生成用ガスGの流通方向と平行な方向となる。このとき、貫通孔2内の放電空間では、高密度のストリーマ放電を生成することができるため、この放電によって生成される活性種の密度を高めることができ、これによりプラズマ処理の効率を向上することが可能となる。特に図示の例では、電極3,4はその放電面が共に貫通孔2を全周に亘り取り囲むように形成されているため、電気力線は貫通孔2内の全周に亘って発生し、これに応じて放電が貫通孔2内の内周全体に沿って発生し、このため、より高効率にプラズマを発生させることが可能となる。
【0054】
また特に絶縁基材1のガス吹出口2b側に配置される電極3を接地電極として形成すると、被処理物5の表面処理の際に対となる電極3,4のうち被処理物5側に配置されるものが接地電極となることから、この電極3と被処理物5との間の電位差が大きくなることを抑制して電極3と被処理物5との間のアークの発生を防止することができ、被処理物5に放電による損傷が発生しないようにすることができるものである。
【0055】
上記のように層状に形成される電極3,4においては、開口8以外に欠損部分(抜けた部分)が無い方が好ましい。すなわち、図12(a)(b)はいずれも図2に示す絶縁基材1に設けた電極3,4の一例を示すが、この場合、欠損部分30が開口8の周辺に多数存在する図12(a)の電極3,4よりも、欠損部分30が開口8の周辺に存在しない図12(b)の電極3,4を用いるのが好ましい。
【0056】
図12(a)の電極3,4を用いて絶縁基材1を形成した場合、電極3,4間に電源6で電圧を印加すると、図13(a)に示すように、絶縁基材1の下面において開口8に対応する箇所と欠損部分30に対応する箇所の両方に沿面放電31が生じる。
【0057】
一方、図12(b)の電極3,4を用いて絶縁基板1を形成した場合では、電極3,4間に電源6で電圧を印加すると、図13(b)に示すように、絶縁基材1の下面において主に開口8に対応する箇所に沿面放電31が生じるだけであり、図13(a)のものに比べて、沿面放電31が少なくなる。
【0058】
そして、沿面放電31は被処理物(ワーク)5に最も近接した放電であって、沿面放電31が多いと、沿面放電31からの被処理物5に対するアークが生じやすくなるものであるが、図13(b)の絶縁基材1では図13(a)のものに比べて、沿面放電31が少なくなるので、被処理物5との間でアークが発生しにくくなり、従って、放電による被処理物5の損傷を少なくすることができるものである。
【0059】
また、上記のように層状に形成される一対の対向する電極3,4のうち、被処理物5に近い方に配置される電極3の周端部を遠い方に配置される電極4の周端部よりも外側に突出させる。すなわち、図14に示すように、対向する一対の電極3,4を設けた絶縁基材1を正射影投影した場合に、上側の電極4と下側の電極3(図14(a)に破線で示す)がほぼ相似形で、且つ上側の電極4が下側の電極3に包含されるような大きさのパターンに電極3,4を形成する。このように下側の電極3の面積を上側の電極4の面積よりも大きく形成すると、図14(b)(c)に示すように、上側の電極4の周端部よりも外側に、下側の電極3の周端部が突出して位置するものであり、これにより、貫通孔2における電極3,4間の電圧よりも、電極3,4の周端間での電圧を低くすることができ、この結果、絶縁基材1の下面において電極3,4の周端間に対応する箇所での沿面放電31の発生を抑えることができて開口8に対応する箇所以外での沿面放電31を少なくすることができ、アークによる被処理物5の損傷をさらに少なくすることができるものである。尚、図14(b)では貫通孔2の一部が図示省略されている。
【0060】
また、電極3,4は、上記のように形成するほか、適宜の形状に形成することができる。また、貫通孔2におけるプラズマ生成用ガスGの流通方向と交差する方向(例えば直交する方向)に複数の電極3,4を並べて設けることもできる。
【0061】
図6に示す例では、絶縁基材1中の同一の層内に、対となる二種の電極3,4が間隔をあけてパターン状に埋設されており、一方の電極4は各貫通孔2の一側に、他方の電極3は各貫通孔2の他側に配置されるようになっている。
【0062】
また、図示の例では、対となる一方の電極4と他方の電極3とが絶縁基材1内に埋設されており、且つ各電極3,4は絶縁基材1内の同一の層内に配置されており、対となる電極3,4が貫通孔2内でのプラズマ生成用ガスGの流通方向と交差する方向(直交する方向)に並んで配置されている。電極3,4間は間隔をあけて配置されており、この電極3,4間には絶縁基材1を構成する絶縁材料(誘電体材料)が介在するようになっている。
【0063】
図示の例では各電極3,4は絶縁基材1の内部に連続的な層状に形成されているが、このとき各電極3,4は貫通孔2の並び方向に沿った方向に長い給電部3a,4aから貫通孔2の長手方向に長い複数の電極部3b,4bを延設した櫛形状に形成されており、隣り合う貫通孔2の間には、各電極3,4の電極部3b,4bが交互に配置されるようになって、貫通孔2の一側には一方の電極3の電極部3bが、他側には他方の電極4の電極部4bがそれぞれ配置される。すなわち、各電極3,4は各貫通孔2ごとに別個に形成されているものではなく、連続した層状の電極3,4に形成された電極部3b,4bの端面が、各貫通孔2内において放電を発生させる放電面として形成される。
【0064】
また上記の電極3,4の間隔(放電面の間隔)は気体放電(プラズマ)を安定に発生するために0.01〜5mmに設定するのが好ましい。
【0065】
このように電極3,4を配設すると、図10(b)に示すように、電極3,4間の電位差によって貫通孔2内に発生する電気力線(図中の矢印)は、プラズマ生成用ガスGの流通方向と交差する方向となる。このとき、プラズマ生成用ガスGの流通方向と交差する方向に放電を発生させて、プラズマ生成用ガスGの活性化を行うことができるものである。
【0066】
ここで、図6に示す例では、各電極3,4の電極部3b,4bの対向する端面同士の間隔は、貫通孔2の開口の幅寸法よりも大きくなるように形成されており、各電極3,4の電極部3b,4bの端面はすべて絶縁基材1の内部に埋設されるようになっている。このとき、各電極3,4は貫通孔2内には露出しないように形成されている。この場合各電極3,4の放電面が絶縁基材1を構成する絶縁材料(誘電材料)によって保護されることとなり、図2に示す場合と同様に電極3,4の損耗を防止することができるものである。この場合も、絶縁基材1を構成する絶縁材料(誘電材料)による各電極3,4の被覆の厚みは0.01〜3mmの範囲であることが好ましい。
【0067】
また、図示はしていないが、各電極3,4の電極部3b,4bの対向する端面同士の間隔と貫通孔2の開口の幅寸法を同一寸法に形成して、電極部3b,4bの端面と貫通孔2の内面が面一となり、各電極3,4がその電極部3b,4bの端面において貫通孔2内に露出するように形成しても良い。この場合、図1(b)に示す場合と同様に、プラズマ生成用ガスG中の活性種の密度を向上して表面処理効率を向上することができる。
【0068】
また、図示はしていないが、図6に示すように貫通孔2をスリット状に形成する場合においても、図1,2に示すものと同様に、一方の電極4が絶縁基材1の一面側(上側、ガス導入口2a側)に、他方の電極3が絶縁基材1の他面側(下側、ガス吹出口2b側)に配置されるようにし、対となる電極3,4が絶縁基材1を構成する絶縁材料(誘電体材料)を介して、貫通孔2内でのプラズマ生成用ガスGの流通方向と平行な方向に間隔をあけて並んで配置されるようにすることができる。この場合は、例えば各電極3,4を絶縁基材1の内部に連続的な層状に形成し、且つ各貫通孔2と合致する位置に開口を形成し、この開口の内面が貫通孔2を取り囲むように形成することができる。この場合、電極3,4間の電位差によって貫通孔2内に発生する電気力線は、図10(a)に示すようにプラズマ生成用ガスGの流通方向と平行な方向となり、貫通孔2内の放電空間では、高密度のストリーマ放電を生成することができるため、この放電によって生成される活性種の密度を高めることができ、これによりプラズマ処理の効率を向上することが可能となる。
【0069】
上記のような構成を有する電極3,4が設けられた絶縁基材1から構成される反応器Rは、電極3,4及び貫通孔2の微細成形が容易であり、微細な貫通孔2を複数設けると共に各貫通孔2内で放電を発生させるための電極3,4を設けることで、二次元状に配置された各貫通孔2から活性化されたプラズマ生成用ガスGを噴射することができ、これにより処理面の大面積化とこの処理面における処理の均一化を図ることが可能となる。
【0070】
ここで、絶縁基材1に貫通孔2と電極3,4とが設けられた反応器Rを得るにあたっては、例えば絶縁材料の粉体にバインダー等を混合して成形したシート材を、導電体膜を介して積層することができる。
【0071】
シート材は、石英ガラス、アルミナ、ジルコニア、ムライト、窒化アルミニウムなどのようなセラミックスの粉体に、バインダー、或いは必要に応じて更に各種の添加剤を加えた混合材料をシート状に成形することで得ることができる。またこのシート材の厚みは、絶縁基材1の厚みや、電極3,4を二層に分けて形成する場合での電極3,4間の距離等に応じて適宜設定されるが、0.05〜5mmの範囲であることが好ましい。
【0072】
また導電体膜は、銅、タングステン、アルミニウム、真鍮、ステンレス鋼などの導電性の金属材料を絶縁基材上に印刷成形することで得ることができる。
【0073】
そして、例えばシート材に対する導電体膜の形成と、これに対する他のシート材の積層を行って、シート材の層間に導電体膜が設けられた積層体を形成した後、これを焼成することで一体成形して、絶縁基材1を得ることができる。貫通孔2は、この積層成形後に穿設しても良いが、シート材に予め貫通孔2に相当する箇所に開口が設けられたものを用い、積層成形時のこの開口を位置合わせして成形することで、積層成形と同時に貫通孔2を形成することが好ましい。
【0074】
このとき、図1(b),図2等に示すように一方の電極4が絶縁基材1の一面側(上側、ガス導入口2a側)に、他方の電極3が絶縁基材1の他面側(下側、ガス吹出口2b側)に配置されるように形成する場合には、例えばまず第1のシート材の一面に導電体膜を、一方の電極4(又は3)の所望のパターン形状に印刷成形し、この導電体膜の上面に更に第2のシート材を積層して配置し、次いでこの第2のシート材の一面に導電体膜を他方の電極3(又は4)の所望のパターン形状に印刷成形し、この導電体膜の上面に更に第3のシート材を積層して配置する。また、電極4の所望のパターン形状に導電体膜が印刷成形されたシート材と、電極3の所望のパターン形状に導電体膜が印刷成形されたシート材と、導電体膜が形成されていないシート材とを、両面の最外層にそれぞれシート材が配置されると共に各導電体膜がシート材の間に配置されるように積層して配置するようにしても良い。次いで、この積層体を焼成することで、反応器Rが作製される。
【0075】
また、図6に示すように対となる一方の電極4と他方の電極3とが絶縁基材1内の同一の層内に配置される場合には、例えばまず第1のシート材の一面に導電体膜を、一方の電極4及び他方の電極3の所望のパターン形状に印刷成形し、この導電体膜の上面に更に第2のシート材を積層して配置する。次いで、この積層体を焼成することで、反応器Rが作製される。
【0076】
上記のような反応器Rはプラズマ生成用ガスGの流路上に、プラズマ生成用ガスGがガス導入口2aから貫通孔2に流入してガス吹出口2bから流出するように配設される。
【0077】
図3に示すものでは、反応器Rとして図2に示す平面形状と断面形状を有するものを用い、反応器Rの絶縁基材1にはその一面側(ガス導入口2aが開口する側)に、ガス貯留室(ガスリザーバ)11が設けられており、このとき貫通孔2がガス貯留室11内に連通するように形成されている。図示のガス貯留室11は、一端側(図示では上端側)にガス貯留室11へのプラズマ生成用ガスGの流入口10が設けられており、他端側(図示では下端側)にはガス貯留室11からのプラズマ生成用ガスGの流出口9が設けられている。そして、絶縁基材1は、ガス貯留室11の流出口9が設けられている他端側に添設されている。このとき流出口9はガス貯留室11に複数個設けられると共に各流出口9は絶縁基材1の複数の各貫通孔2と合致する位置に設けられており、これにより、ガス貯留室11内と貫通孔2とは、流出口9を介して連通するように形成されている。
【0078】
ガス貯留室11は全ての貫通孔2に対してプラズマ生成用ガスGをほぼ均一な流速で供給するためのガス均一化手段を設けられるものである。すなわち、プラズマ生成用ガスGは、流入口10からガス貯留室11に流入することにより圧力が緩和されて降下するものであり、これにより、全ての貫通孔2に対してプラズマ生成用ガスGをほぼ均一な流速で供給することができ、この結果、全ての貫通孔2から吹き出される活性化されたプラズマ生成用ガスGを絶縁基材1の全面に亘ってほぼ均一にすることができ、活性化されたプラズマ生成用ガスGの流速分布を少なくして均一なプラズマ処理を行うことができる。
【0079】
また、ガス貯留室11には、放熱器7としての機能を具備させることもでき、これにより、絶縁基材1と放熱器7とを密着して形成することができる。図示の例では、ガス貯留室11を構成する隔壁のうち、流出口9が形成されている端部側の隔壁(端部隔壁)と、ガス貯留室11の一端と他端の間の側部を構成する、前記端部隔壁と一体に形成された隔壁(側部隔壁)によって、放熱器7が形成されており、側部隔壁には、外面に外方に突出する放熱フィン7bを設け、また端部隔壁にはガス貯留室11の内面において、流出口9が形成されていない部分に内方に突出する吸熱フィン7aが形成されている。
【0080】
このような放熱器7を設けると、プラズマ生成用ガスGの熱は吸熱フィン7aによって吸収されて、端部隔壁と側部隔壁を伝達して放熱フィン7bにより装置外部に放散される。これにより、プラズマ生成用ガスGの温度上昇を抑制して、それに伴って絶縁基材1の温度上昇を抑制することができる。
【0081】
上記の放熱器7は、放熱フィン7bが設けられた空冷式のものであるが、放熱器7として水冷式のものを設けても良い。図4〜6に示す例では、端部隔壁における、各流出口9の間の部位に、冷却水が流通する通水路7cが設けられており、この通水路7cに冷却水が流通することで、絶縁基材1を冷却するようにしている。ここで、図4は図2に示す平面視形状と断面形状を有する反応器Rに放熱器7を設けたものを、図5は図1(a)(b)に示す反応器Rに放熱器7を設けたものを、それぞれ示している。このようにすると、絶縁基材1に密着して配置されている端部隔壁が冷却されることで、絶縁基材1が効率良く冷却され、絶縁基材1の温度上昇を抑制することができる。
【0082】
上記の冷却水は、二次電子が放出されやすい温度に絶縁基材1を温度調整するための温度調整手段として用いることができる。すなわち、活性化されたプラズマ生成用ガスGに含まれる電子やイオンが絶縁基材1に作用することによって、絶縁基材1から二次電子が放出されるが、この二次電子が放出されやすい絶縁基材1の温度は高いほど好ましいが、熱膨張による絶縁基材1の損傷を考慮すると、絶縁基材1の温度は100℃程度に抑えるのが適当である。そこで、上記の冷却水により絶縁基材1を40〜100℃に温度調整するのが好ましい。このように室温よりも高い温度の冷却水を用いることによって、使用開始時において絶縁基材1の表面温度を室温よりも上昇させることができ、このために室温の場合よりも絶縁基材1から二次電子が放出されやすくなり、絶縁基材1から放出された二次電子によりプラズマ生成密度を増加させることができ、被処理物5の洗浄能力や改質能力などのプラズマ処理能力を向上させることができるものである。冷却水の温度は上記の効果が発生しやすく、且つ取り扱い性や省エネルギー等を考慮して、50〜80℃の温度にするのがより好ましい。
【0083】
上記のガス貯留室11及び放熱器7は、熱伝導性の高い材質にて形成することが好ましく、例えば銅、ステンレス、アルミニウム、窒化アルミニウム(AlN)等にて形成することができる。ガス貯留室11及び放熱器7を窒化アルミニウム等の絶縁物で形成することによって、電極3,4間に印加する高周波の電圧の影響を受けにくくなり、これにより、電極3,4間に投入される電力の損失がほとんど無くなって効率的な放電を行うことができ、しかも、高熱伝導であるために冷却効率を高くすることができるものである。
【0084】
また、放熱器7により絶縁基材1の温度上昇を抑制すると、絶縁基材1が熱変形を生じて割れ等の破損が発生することを防止することができる。また絶縁基材1の一部が過剰に加熱されると、加熱された部分においてプラズマ発生密度が高くなるなど、各貫通孔2内におけるプラズマ発生が不均一になるおそれがあるが、絶縁基材1の温度上昇を抑制することでこのような各貫通孔2ごとでのプラズマ発生の不均一化を防止し、均一な表面処理を維持することができるものである。
【0085】
また、絶縁基材1を温度調節する手段として放熱器7に電気ヒーターを内蔵することにより、上記の冷却水による温度調節と同等の効果を得ることもできる。この場合は放熱器7に熱電対等の温度測定手段を設置することにより、放熱器7の温度調節をすることが好ましい。
【0086】
さらに、放熱器7としてペルチェ素子を設置することもできる。
【0087】
絶縁基材1と放熱器7との接合は、熱伝導性が良好で、プラズマ生成用ガスGのリークを防ぐことができる方式を採用するのが好ましく、例えば、熱伝導性グリス、熱伝導性両面テープ、接着樹脂含浸接合材により接着したり、絶縁基材1と放熱器7との接合面を鏡面研磨し、これらを圧着により接合することもできる。
【0088】
また、絶縁基材1と放熱器7を一体として形成することも好ましい。このように成形することにより、放電空間からの発熱を放熱器7により効率よく吸収させることができ、しかも、プラズマ生成用ガスGのリークも防止できるため、絶縁基材1の温度分布を均一にし、放電を安定化することができる。
【0089】
上記のように構成されるプラズマ処理装置によって被処理物5の表面処理を行うにあたっては、プラズマ生成用ガスGを流入口10からガス貯留室11に供給し、このプラズマ生成用ガスGを流出口9及びガス導入口2aを介して絶縁基材1の各貫通孔2内に流入させ、この貫通孔2内の放電空間において電極3,4間の放電によりプラズマ生成用ガスGを活性化させた後に、ガス吹出口2bから吹き出させる。
【0090】
上記のプラズマ生成用ガスGとしては、希ガス、窒素、酸素、空気をそれぞれ単独で用いたりあるいは複数種を混合したりして用いることができる。空気としては、好ましくは水分を殆ど含まない乾燥空気を用いることができる。希ガスとしては、ヘリウム、アルゴン、ネオン、クリプトンなどを使用することができるが、放電の安定性や経済性を考慮するとアルゴンを用いることが好ましい。また、希ガスや窒素に酸素、空気等の反応ガスを混合して使用することもできる。反応ガスの種類は処理の内容によって任意に選択することができる。例えば、被処理物5の表面に存在する有機物のクリーニング、レジストの剥離、有機フィルムのエッチング、LCDの表面クリーニング、ガラス板の表面クリーニングなどを行う場合には、酸素、空気、CO2、N2Oなどの酸化性ガスを用いるのが好ましい。また、反応ガスとしてCF4、SF6、NF3などのフッ素系ガスも適宜用いることができ、シリコンやレジストなどのエッチング、アッシングを行う場合にはこのフッ素系ガスを用いるのが効果的である。また、金属酸化物の還元を行う場合は、水素、アンモニアなどの還元性ガスを用いることができる。
【0091】
上記のようなプラズマ生成用ガスGをガス貯留室11を介して反応器Rの貫通孔2に供給するためには、ガスボンベ、ガス配管、混合器、圧力弁等で構成される適宜のガス供給手段(図示せず)を設けることができる。例えばプラズマ生成用ガスG内に含有される各ガス成分が封入された各ガスボンベをガス配管にてガス貯留室11の流出口9に接続するようにし、このとき、各ガスボンベから供給されるガス成分を混合器にて所定の割合で混合し、圧力弁により所望の圧力で流出口9に導出されるようにする。
【0092】
このようなプラズマ生成用ガスGは、貫通孔2内の放電空間において電極3,4間の放電により活性化されるものであるが、このとき電源6により電極3,4間に高電圧を印加されることにより、放電空間には電界が発生し、この電界の発生により大気圧下あるいはその近傍の圧力下で放電空間に気体放電が発生すると共にこの気体放電によりプラズマ生成用ガスGが活性化(プラズマ化)されて放電空間に活性種(イオンやラジカル等)が生成されるものである。
【0093】
このとき、プラズマ生成用ガスGは、圧力損失の影響を受けずに、単位時間当たりに所定の流量を供給できる圧力で貫通孔2に供給されるのが好ましく、ガス貯留室11内の圧力が大気圧あるいはその近傍の圧力(好ましくは100〜300kPa)となるように供給されることが好ましい。
【0094】
また、ガス導入口2aから貫通孔2内に導入されたプラズマ生成用ガスGを活性化させるために電源6から電極3,4間に印加される電圧は、交番波形(交流波形)、パルス波形、或いはこれらの波形を重畳させた波形など、適宜の波形のものとすることができるが、特に、休止区間を持つパルス状の波形の電圧を印加することが好ましい。この場合、貫通孔2内における安定した高効率な放電発生を可能とすることができ、このとき、複数の各貫通孔2内において放電が発生されていないものが発生することを防止して、各貫通孔2での均一な放電を維持することを可能とすることができる。放電の均一化が維持されるのは、一部の貫通孔2内で偶発的に放電が発生しなくなっても、休止区間において各貫通孔2内における放電状態が一旦キャンセルされ、休止区間の終了により再び電圧が印加された際に均一な放電状態に復帰するためであると、考えられる。
【0095】
図7,8,9は、休止区間を持つパルス状の電圧を印加する場合の電圧の波形の例を示すものであり、図7に示す例は休止区間を介して交番する矩形波、図8に示す例は一定の周期で、立ち上がり、減衰、休止を繰り返す振動波パルス、図9は矩形波と同様に一波長内に正のパルス電圧出力、休止、負のパルス電圧出力、休止を1サイクルとして繰り返す対称パルスである。図9の対称パルス波形では、放電形態は矩形波に近い状態を得ることができ、また低い電圧でスイッチングを行い、昇圧にはトランスを用いることができるため、電源6の構成は矩形波用のものに比べて簡略化することが可能である。このとき、放電空間で気体放電を連続的に生成するのに必要な電極3,4間の電圧は貫通孔2の内径や対となる電極3,4間隔によって異なるので適宜設定すればよいが、例えば、0.05〜30kVに設定することができる。
【0096】
また、電源6としてパルス状波形電源を用いた場合などでは、電極3,4間に印加される電圧波形の繰り返し周波数は1Hz〜200kHzに設定するのが好ましい。この周波数が1Hz未満であれば、放電空間での放電を安定化させることができなくなり、表面処理を効率よく行うことができなくなる恐れがある。また周波数が200kHzを超えると、放電空間での気体放電(プラズマ)の温度上昇が著しくなり、さらに一部の貫通孔2に放電が集中しやすくなるため、複数の貫通孔2内において均一に放電を発生させることが困難となる。
【0097】
また、電源6としてパルス状波形電源を用いる場合に、特に高効率で安定した放電を発生させるためには、電圧波形のデューティー比が0.01〜80%となるようにすることが好ましい。ここで、図7に示すような矩形状のパルス波におけるデューティー比は、一つのパルスの立ち上がりから立ち下がりまでの幅を一つのパルスの立上がりから休止区間を経て次のパルスの立ち上がりまでの幅で割ったものである。また、図8、9に示すような振動波パルスの場合は、パルスの一回目の立ち上がりと、二回目のパルスの立ち下がり波形の間の幅を、一回目のパルスの立上がりから減衰振動部および休止区間までを含む期間で割ったものである。
【0098】
また、本発明において電極3,4を中点接地するのが好ましく、これにより、両電極3,4とも接地に対して浮いた状態で電圧を印加することができる。従って、被処理物5と活性化されたプラズマ生成用ガス(プラズマジェット)Gとの電位差が小さくなってアークの発生を防止することができ、アークによる被処理物5の損傷を防ぐことができるものである。すなわち、例えば、図15(a)に示すように、上側の電極4を電源6に接続して13kVに、下側の電極3を接地して0kVとして電極3,4間の電位差Vpを13kVにした場合、活性化されたプラズマ生成用ガスGと被処理物5との間に少なくとも数kVの電位差が生じ、これによるアークArが発生する。一方、図15(b)に示すように、中点接地を用いた場合は、上側の電極4の電位を+6.5kVに、下側の電極3の電位を−6.5kVにして電極3,4間の電位差Vpを13kVにすることができ、活性化されたプラズマ生成用ガスGと被処理物5との間の電位差がほとんど0Vになるものである。つまり、中点接地を用いない場合に比べて、中点接地を用いた場合は電極3,4間に同じ電位差が生じるにもかかわらず、活性化されたプラズマ生成用ガスGと被処理物5との間の電位差を小さくすることができ、活性化されたプラズマ生成用ガスGからの被処理物5に対するアークの発生を防止することができるものである。
【0099】
この後、活性種を含むプラズマ生成用ガスGはガス吹出口2bから連続的に吹き出されるものであり、ガス吹出口2bの下側に被処理物5を配置すると共に活性種を含むプラズマ生成用ガスGのガス流をガス吹出口2bから被処理物5の表面の一部又は全部に吹き付けて供給することによって、被処理物5の表面処理を行うことができる。
【0100】
ここで、ガス吹出口2bの下側に被処理物5を配置するにあたり、ローラー、ベルトコンベア等の搬送装置で被処理物5を搬送するようにすることができる。このとき、搬送装置で複数の被処理物5をガス吹出口2bの下側に順次搬送することによって、複数の被処理物5を連続的に表面処理することもできる。
【0101】
また、ガス吹出口2bと被処理物5の表面との間の距離は、プラズマ生成用ガスGのガス流の流速、プラズマ生成用ガスGの種類、被処理物5や表面処理の内容等によって適宜設定可能であるが、例えば、1〜30mmに設定することができる。
【0102】
上記のようにして被処理物5に対する表面処理を行うと、各貫通孔2の内側に気体放電を発生し、この気体放電により生じる活性種を含む活性化されたプラズマ生成用ガスGのガス流を複数の貫通孔2から吹き出して被処理物5に供給することによって、大面積に亘って高効率で均一なプラズマを発生させることができて、少ないガス流量で大面積に亘る被処理物5の表面処理を均一に行うことができる。
【0103】
このように一度に表面処理が可能な処理面積を大面積化させると、大面積の被処理物5に対しても一度に表面処理を施すことが可能となって、処理効率が向上する。また、被処理物5を搬送しながら表面処理を施す場合などには、搬送中の被処理物5が活性化されたプラズマ生成用ガスGのガス流に曝露されている時間を長くすることができ、少ないガス量で効率的に表面処理することができるものであり、従って、ガスの流量を増加させることなく、被処理物5と活性種との接触時間を増加させて表面処理の能力を高めることができ、ガスの消費量が増大しないものであり、表面処理のランニングコストが増加することなく経済的に不利にならないものである。
【0104】
また、上記の実施形態では絶縁基材1を平面視矩形状に形成したことで処理面を矩形状に形成しているが、絶縁基材1の大きさ、形状や貫通孔2の配列を適宜変更することで、被処理物5に応じて処理面積を適宜調節したり、処理面を任意形状としたりすることもできる。
【0105】
更に、複数の絶縁基材1を組み合わせて反応器Rを構成すると、処理面積の更なる大型化や、処理面の形状の変更も可能となる。
【0106】
例えば、図11(a)に示すように複数の絶縁基材1を一列に並べて配置して反応器Rを構成し、あるいは図11(b)に示すように複数の絶縁基材1を複数行複数列に並べて配置して反応器Rを構成することで、処理面積の大型化を図ることができる。
【0107】
また、複数の絶縁基材1を適宜のパターン状に配置して反応器Rを構成すると、絶縁基材1の配列形状に相当する形状の処理面に対する表面処理を行うことができ、例えば被処理物5の表面の特定の形状の領域にのみ部分的に表面処理を施すことも可能となる。例えば図11(c)に示すように絶縁基材1をL字状に配列して反応器Rを構成し、これにより、被処理物5のL字状の領域にのみ表面処理を施すことができるものである。
【0108】
更に、図11(d)に示すように、複数の絶縁基材1を配設すると共に、このとき被処理物5との距離が異なる絶縁基材1を配設して反応器Rを構成することもできる。この場合、被処理物5と絶縁基材1との間の距離が長い部位では表面処理の度合いが、他の部位と比較して相対的に低くなり、またこの距離が短い部位では表面処理の度合いが、他の部位と比較して相対的に高くなるものであり、これにより、被処理物5に対して意図的に表面処理の度合いが高い部位や低い部位を同時に形成することができるようになる。
【0109】
しかも、上記のように複数の絶縁基材1を組み合わせて反応器Rを構成すると、絶縁基材1の増減や配置位置の変更等を行うことで、処理面積の変更、処理面の形状の変更、処理強度の変更等の、種々の設計変更を容易に行うことができるものである。
【0110】
尚、上記のように複数の絶縁基材1を組み合わせる場合には、放熱器7及びガス貯留室11は、各絶縁基材1ごとに設けても良く、また複数の絶縁基材1に対して同時にプラズマ生成用ガスGを供給し、或いは各絶縁基材1の放熱を同時に行うための、一つの放熱器7及びガス貯留室11を設けても良い。
【0111】
上記のように複数の絶縁基材1を組み合わせて反応器Rを形成した場合、各絶縁基材1には同じ電源6から給電するのが好ましい。例えば、図16(a)に示すように、一枚の絶縁基材1A及び電源6AからなるユニットAと一枚の絶縁基材1B及び電源6BとからなるユニットBとを備えて反応器Rを形成した場合、ユニットAの絶縁基材1Aには電源6Aから給電して電極3,4間に印加し、ユニットBの絶縁基材1Bには電源6Bから給電して電極3,4間に印加するが、ユニットAの電源6Aで発生させる高周波の電圧と、ユニットBの電源6Bで発生させる高周波の電圧との同期を同一にするのは難しく、図16(b)に示すように、多少位相のずれが生じることがあり、この結果、電源6Aで発生した電圧と電源6Bで発生した電圧とが干渉し合って、所望の波形の電圧を給電することができない恐れがある。
【0112】
そこで、本発明では図17に示すように、複数の絶縁基材1に対して同じ高周波電源等の電源6から給電するのが好ましい。図17に示す例では、一つの電源6に対して複数個のトランス32a、32b、32cを並列に電気的に接続すると共に各トランス32a、32b、32cのそれぞれに複数枚の絶縁基材1を並列に電気的に接続したものである。そして、この反応器Rでは各絶縁基材1に給電する電圧の位相が互いにずれないようにすることができ、各絶縁基材1に給電する電圧の干渉し合うのを防止して所望の波形の電圧を給電することができるものである。
【0113】
また、本発明では、特に貫通孔2におけるプラズマ生成用ガスGの流通方向と平行な方向に複数の電極3,4を並べて設けると、放電空間に高密度のストリーマ放電を発生させることにより、放電発生のための印加電力を増加させることなく、ガス流中の活性種の密度を増加させて表面処理の能力を高めることができる。これにより、活性種を含むプラズマ生成用ガスGのガス流を被処理物5に供給する時間を長くせずに表面処理の能力を高めているので、一つの被処理物5の表面処理にかかる時間が長くならないようにすることができ、生産性が低下しないようにすることができるものである。
【0114】
またこのように被処理物5に吹き付けられるプラズマ生成用ガスG中の活性種の密度が増加されて表面処理の能力が高められているために、ガス吹出口2bと被処理物5の表面との間の距離を短くする必要がなくなるものであり、これにより放電場からの被処理物5へのアークの発生が抑制されて、アークによる被処理物5の損傷が防止される。またこのようにアークの発生を抑制することができることから、ガス吹出口2bと被処理物5との間に放電発生防止用の金属メッシュ等を介在させる必要がなく、このような金属メッシュ等によりプラズマ生成用ガスGのガス流が遮られることによる表面処理能力の低下を防止することができる。更には、電極3,4等の金属が腐食して酸化物(錆)が飛散し被処理物5を汚すという問題も発生しないものである。
【0115】
本発明は、種々の被処理物5に対する表面処理に適用することができるが、特に液晶用ガラス材、プラズマディスプレイ用ガラス材、有機エレクトロルミネッセンス表示装置用ガラス材等の、種々のフラットパネルディスプレイ用ガラス材や、プリント配線基板、ポリイミドフィルム等の各種樹脂フィルムなどの表面処理に適用することができる。これらの被処理物5、特に液晶用ガラス材等のフラットパネルディスプレイ用ガラス材は、順次大型化が進展しており、このため大面積の均一な処理が可能であり、且つ処理面積等の設計変更が容易な本発明に係るプラズマ処理装置やプラズマ処理方法を、好適に適用することができる。このようなガラス材に対する表面処理を行う場合には、このガラス材に、ITO(インジウム・チン・オキサイド)からなる透明電極や、TFT(薄膜トランジスタ)液晶を設けたもの、或いはCF(カラーフィルタ)を設けたものなども、表面処理に供することができる。また、樹脂フィルムに対して表面処理を施す場合には、いわゆるロール・トゥ・ロール方式で搬送されている樹脂フィルムに対して、連続的に表面処理を施すことができる。
【0116】
また、本発明は、以下の構成のプラズマ処理装置を含む:
複数のスルーホール(貫通孔2)を有する一対の電極板(電極3、4);
複数のスルーホールを有する絶縁板(絶縁基材1)、前記絶縁板は、前記電極板のスルーホールの位置が絶縁板のスルーホールの位置に一致するように前記一対の電極板間に配置される;
前記一対の電極板のスルーホールと前記絶縁板のスルーホールによって形成される複数の放電空間内にプラズマ生成用ガスGを供給するガス供給手段;
前記電極板間に電圧を印加して前記放電空間内に同時に前記ガスのプラズマを生成するための電圧印加手段(電源6)。
【0117】
さらに、本発明は、以下の構成のプラズマ処理装置を含む:
一対の電極3、4と、前記電極3、4間に配置される絶縁板(絶縁基材1)を含む筒状容器(ガス貯留室11)と、
前記筒状容器の一端からプラズマ生成用ガスGを供給するガス供給手段と、
前記電極3、4間に電圧を印加して前記筒状容器内に前記ガスのプラズマを生成する電圧印加手段を具備し、
前記筒状容器の他端から放出される前記プラズマで被処理物を表面処理するプラズマ処理装置であって、
しかるに、前記電極3、4は複数のスルーホール(貫通孔2)を有する一対の電極板でなり、前記絶縁板は複数のスルーホールを有し、前記筒状容器内には、前記一対の電極板のスルーホールと前記絶縁板のスルーホールによって形成される複数の放電空間が設けられ、前記電極3、4間に電圧を印加して前記放電空間に同時に生成された複数のプラズマが前記筒状容器の他端から放出される。
【実施例】
【0118】
以下本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0119】
(実施例1)
第1のシート材(厚み0.4mm)の一面に導電体膜を印刷成形し、この導電体膜の上面に更に第2のシート材(厚み1.4mm)を積層して配置し、この第2のシート材の一面には導電体膜を印刷成形し、この導電体膜の上面には第3のシート材(厚み1.4mm)を積層して配置した。
【0120】
このとき、第1〜第3のシート材は、アルミナ粉末を含む混合材料をシート状に成形することで形成し、また各シート材には、直径1mmの開口を形成して、この各開口の位置が合致するように積層した。
【0121】
また導電体膜は、タングステン層を印刷成形することで形成し、上記シート材の開口よりも大きい直径3mmの開口8がシート材の開口を囲むように配されたパターン状に形成した。
【0122】
このように形成された積層体を加熱焼成することで、図2に示す平面視形状と断面形状を有する反応器Rを作製した。
【0123】
このとき、絶縁基材1は直径1mmの55個の貫通孔2を具備すると共に厚み3.2mmに形成され、またこれら55個の各貫通孔2は平面視45×22mmの範囲の領域にわたり、隣り合う貫通孔2同士の間隔が4.5mmとなるように配置されるようにした。
【0124】
また、電極3,4は厚み30μmの上下二層のタングステン導電体層にて形成され、各貫通孔2の周囲を電極3,4の開口8が取り囲むように設置されるようにした。また上下一対の電極3,4の間隔(放電面の間隔)は1.4mmとした。またこの電極3,4の開口8は直径3mmに形成され、貫通孔2の内面には露出させず、電極3,4の開口8と、貫通孔2の内面との間には、絶縁基材1を構成する絶縁材料(誘電材料)による厚み1mmの絶縁被覆を形成されるようにした。また上部の電極4は電源6に接続し、下部の電極3は接地した。
【0125】
この絶縁基材1の上部には、図4に示すような銅製の放熱器7が設けられたガス貯留室11を設置し、プラズマ生成用ガスGはガス貯留室11の上部の流入口10から導入され、絶縁基材1の貫通孔2へ流入するように形成した。放熱器7に設けられた通水路7cには冷却水を循環させ、絶縁基材1の過度の加熱を防止するようにした。
【0126】
(参考例1)
第1のシート材(厚み0.7mm)の一面に導電体膜を印刷成形し、この導電体膜の上面に更に第2のシート材(厚み1.5mm)を積層して配置した。
【0127】
このとき、第1,第2のシート材は、実施例1の場合と同様の含アルミナ混合材料をシート状に成形することで形成し、また各シート材には、平面視の幅1mm、長さ22mmのスリット状の開口を複数形成して、この各開口の位置が合致するように積層した。
【0128】
また導電体膜は、実施例1と同様のタングステン導電体層を印刷成形することで形成し、図6(b)に示すような櫛形のパターン状に形成した。
【0129】
このように形成された積層体を加熱焼成することで、図6に示す構成を有する反応器Rを作製した。
【0130】
このとき、絶縁基材1は平面視の幅1mm、長さ22mmのスリット状の11個の貫通孔2を具備すると共に厚み2.2mmに形成され、またこれら各貫通孔2は平面視45×22mmの範囲の領域にわたり、隣り合う貫通孔2同士の間隔が3.5mmとなるように配置されるようにした。
【0131】
また、電極3,4は絶縁基材1内の同一層内に厚み100μmに形成され、各貫通孔2の一側に一方の電極4が、他側に他方の電極4が配置されるようにした。また一対の電極3,4の間隔(放電面の間隔)は2mmとなるようにした。このため、この電極3,4は貫通孔2の内面には露出せず、電極3,4の端縁(放電面)と、貫通孔2の内面との間には、絶縁基材1を構成する絶縁材料(誘電材料)による厚み0.5mmの絶縁被覆を形成されるようにした。また一方の電極4は電源6に接続し、他方の電極3は接地した。
【0132】
この絶縁基材1の上部には、図6に示すような窒化アルミニウム製の放熱器7が設けられたガス貯留室11を設置し、プラズマ生成用ガスGはガス貯留室11の上部の流入口10から導入され、絶縁基材1の貫通孔2へ流入するように形成した。放熱器7に設けられた通水路7cには冷却水を循環させ、絶縁基材1の過度の加熱を防止するようにした。
【0133】
(実施例2)
電極3,4の開口8の内径と貫通孔2の内径とを共に1mmの寸法に形成して、開口8の内面を貫通孔2の内面で露出するように形成した(図5参照)。これ以外は実施例1と同様にしてプラズマ処理装置を形成した。
【0134】
(比較例1)
図18に断面を示す矩形筒状の反応容器21を装備したプラズマ処理装置を使用した。反応容器21は肉厚1mmの石英ガラス製であり、また、反応容器21内の空間に形成される放電発生部22の狭小側の内寸(反応容器21の両端のガス導入口22aとガス吹出口22bのスリット幅と同じであり、放電スリット幅という)は1mmとした。さらに、反応容器21の幅広側は45mmとした。電極23,24はその下面がガス吹出口22bから5mm上流側に位置するようにした。
【0135】
一対の電極23,24は銅製でその表面に金メッキ処理を行った。電極23,24は反応容器21の幅広側に反応容器21を挟みこむように設置した。電極23,24の内部の冷却水循環路27には冷却水を循環させ、電極23,24を冷却した。図面における左側の電極23は電源6に接続し、右側の電極24は接地した。
【0136】
(評価1)
上記のようなプラズマ処理装置を用いて、大気圧下で窒素10リットル/分、酸素0.02リットル/分のプラズマ生成用ガスGを装置に導入し、電源6により電極3,4(23,24)間に図7に示す休止区間を有するパルス状波形を有する6kHz、13kV、デューティー比50%の電圧を印加し、活性種を含むプラズマ生成用ガスGのガス流を、100mm/sで搬送された被処理物5の表面に吹き付ける(噴射する)ことにより表面処理を行った。被処理物5としては液晶用の素ガラスを用い、ガス吹出口2b(22b)と被処理物5との距離は5mmとした。液晶用素ガラスにおける処理前の水接触角は68°である。
【0137】
実施例1、参考例1及び比較例1について表面処理後の被処理物5の水接触角を測定した。これらの結果を表1に示す。
【0138】
【表1】
表1に示すように実施例1及び参考例1では水接触角が大きく低下し、特に実施例1では水接触角の低下が著しいことがわかる。これに対し、比較例1では水接触角がほとんど変化しなかった。よって、実施例1,参考例1は比較例1よりも表面処理能力が高いと言える。
【0139】
(評価2)
実施例1及び比較例1について、電極3,4(23,24)間に印加する電圧の波形を、図8に示す休止区間を有するパルス状波形を有する6kHz、13kV、デューティー比5%の電圧に変更した以外は、評価1と同様にして被処理物5の表面処理を行った。
【0140】
このとき、被処理物5の水接触角が10°以下となるまで繰り返し表面処理を行った。
【0141】
実施例1,参考例1及び比較例1について、被処理物5の水接触角が10°以下になるまでに要した処理回数を表2に示す。
【0142】
【表2】
表2に示すように実施例1,参考例1では1回の処理により水接触角が10°以下となったが、比較例1では水接触角が10°以下になるまで7回の処理を要し、実施例1,参考例1では比較例1よりも迅速な表面処理が可能であるといえる。
【0143】
(評価3)
実施例2について、大気圧下で窒素10リットル/分、酸素0.02リットル/分のプラズマ生成用ガスGを装置に導入し、電源6により電極3,4(23,24)間に図7に示す休止区間を有するパルス状波形を有する6kHz、デューティー比50%の電圧を印加し、活性種を含むプラズマ生成用ガスGのガス流を、100mm/sで搬送された被処理物5の表面に吹き付ける(噴射する)ことにより表面処理を行った。このとき印加電圧を8kV、9kV、10kVと変化させて、それぞれの場合について、表面処理を行った。被処理物5としては液晶用の素ガラスを用い、ガス吹出口2bと被処理物5との距離は5mmとした。液晶用素ガラスにおける処理前の水接触角は68°である。
【0144】
処理後の被処理物5の水接触角の測定結果を、表3に示す。
【0145】
【表3】
表3に示すように、実施例2においても、処理後の被処理物5の水接触角の低減量が大きく、処理効率が高いものであり、また印加電圧を上昇させることにより、水接触角を更に低減することができた。但し、印加電圧を10kVとすると、放電が安定しなくなり、表面処理を行うことができなくなった。
【0146】
(評価4)
実施例1について、大気圧下で窒素10リットル/分、乾燥空気0.1リットル/分のプラズマ生成用ガスGを装置に導入し、中点接地型電源6A、6Bにより電極3,4間に図9に示す休止区間を有するパルス状波形を有する12kHz、デューティー比30%の電圧を印加し、活性種を含むプラズマ生成用ガスGのガス流を、50mm/sで搬送された被処理物5の表面に吹き付ける(噴射する)ことにより表面処理を行った。被処理物5としてはプリント基板用の樹脂フィルムを用い、ガス吹出口2bと被処理物5との距離は5mmとした。被処理物5はプラズマ処理後に、その表面にめっき処理を行い、その付着強度を測定した。その測定結果を表4に示す。
【0147】
【表4】
表4に示すように、実施例1におけるプラズマ処理は、被処理物5のメッキの付着強度が大きく増加させ、表面処理効率が高いものであり、めっきの信頼性を向上させることができた。
【符号の説明】
【0148】
R 反応器
1 絶縁基材
2 貫通孔
3 電極
4 電極
5 被処理物
30 欠損部分
G プラズマ生成用ガス
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理物の表面に存在する有機物等の異物のクリーニング、レジストの剥離やエッチング、有機フィルムの密着性の改善、金属酸化物の還元、成膜、めっき前処理、コーティング前処理、各種材料・部品の表面改質などの表面処理に利用されるプラズマ処理装置及びこれを用いたプラズマ処理方法に関するものであり、特に、精密な接合が要求される電子部品の表面のクリーニングに好適に応用されるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の電極を対向させて配置することによって電極間の空間を放電空間として形成し、放電空間にプラズマ生成用ガスを供給すると共に電極間に電圧を印加することによって、放電空間で放電を発生させてプラズマを生成し、放電空間からプラズマ或いはプラズマの活性種を噴き出して被処理物に吹き付けることによって、被処理物に表面改質などプラズマ処理を施すことが行われている(特許文献1参照)。
【0003】
このようなプラズマ処理においては、プラズマ或いはプラズマの活性種を一つの噴出口から吹き出すと共に、この吹き出し方向と直交する方向に向けて被処理物を搬送し、このように被処理物を搬送しながらプラズマ処理を施すものであるが、プラズマ或いはプラズマの活性種が噴き出される面積が小さいことから、被処理物に対して局所的にしかプラズマ処理を施すことができず、処理ムラが生じやすいものであり、また大面積の被処理物に対して処理を行う場合には被処理物を搬送しながら処理を行わなければならず、処理時間が長くなって処理効率が低下してしまうものである。
【0004】
一方、特許文献2等に開示されている技術では、平行に配置した複数の電極の表面に固体誘電体を配置した誘電体被覆電極を有する反応容器を用いることにより、プラズマ或いはプラズマの活性種が噴き出される領域の面積を大きくするようにしている。
【0005】
しかし、この特許文献2に記載されているような技術では、大面積の被処理物に対しても一度に表面処理を行うことができるが、この処理面積の全体に亘って均一なガス流でプラズマ或いはプラズマの活性種が噴き出されるようにすることは難しく、表面処理を均一に行うようにすることは困難であるという問題がある。さらに、このような大面積の処理を一度に行う場合には、大量のガスを消費することになりランニングコストが大幅に増加すると言う問題が生じる。
【0006】
また、大面積の処理が可能な処理装置を作製したとしても、処理対象である液晶パネル用ガラス等が更に大型化すれば、一度の処理にて表面処理を行うのは困難であり、更なる大面積の処理が可能となるように設計変更を繰り返していかなければならないが、従来はこのような設計変更は容易ではなく、多大な設備投資が必要なものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−335868号公報
【特許文献2】特開平4−358076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の点に鑑みて為されたものであり、処理範囲を大面積化することができると共に、少ないガス消費量(低ランニングコスト)で均一な処理を行うことができ、しかも処理対象に応じて容易に設計変更が可能なプラズマ処理装置及びこのようなプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るプラズマ処理装置は、プラズマ生成用ガスGを放電により活性化させ、この活性化されたプラズマ生成用ガスGを被処理物5に吹き付けるプラズマ処理装置において、一端側の開口からプラズマ生成用ガスGが流入すると共に他端側の開口から活性化されたプラズマ生成用ガスGが流出する複数の貫通孔2と、各貫通孔2内でそれぞれ放電を発生させるための電極3,4とが設けられた絶縁基材1からなる反応器Rを具備することを特徴とする。これにより、大気圧又はその近傍の圧力下で、各貫通孔2の内側に気体放電を発生し、この気体放電により生じる活性種を含む活性化されたプラズマ生成用ガスGのガス流を複数の貫通孔2から吹き出して被処理物5に供給することによって、大面積に亘って高効率で均一なプラズマを発生させることができて、少ないガス流量で大面積に亘る被処理物5の表面処理を均一に行うことができるものであり、また、絶縁基材1を適宜複数組み合わせて設けることで、被処理物5の変更に応じて容易に設計変更を行うことが可能なものである。
【0010】
上記の絶縁基材1は、平板状に形成し、また電極3,4は両方とも絶縁基材1に埋設するように形成するものであり、これにより貫通孔2及び電極3,4を微細加工して、より均一な処理が可能となるものである。
【0011】
また、一対の層状の電極3,4を貫通孔2におけるプラズマ生成用ガスの流通方向において対向させると共に、貫通孔2におけるプラズマ生成用ガスの流通方向において下流側の電極の周端部を上流側の電極の周端部よりも外側に突出させる。この場合、絶縁基材1の表面において電極3,4の周端間に対応する箇所での沿面放電31の発生を抑えることができ、開口8に対応する箇所以外での沿面放電31を少なくすることができてアークによる被処理物5の損傷をさらに少なくすることができるものである。
【0012】
また、電極3,4が貫通孔2に露出されるようにすると、放電性を高めることができる。
【0013】
また、電極3,4が貫通孔2に露出されないように形成しても良く、この場合は、誘電体バリア放電を貫通孔2に発生させることとなり、電極3,4が直接放電やプラズマに曝されることを防いで電極3,4の損耗を防止すると共に、放電を安定化させて、プラズマ発生密度を向上することが可能となる。
【0014】
また、貫通孔2内で電気力線がプラズマ生成用ガスGの流通方向と交差する方向に発生するように電極3,4を配設すると、プラズマ生成用ガスGの流通方向と交差する方向に放電を発生させて、プラズマ生成用ガスGの活性化を行うことができる。
【0015】
また、貫通孔2内で電気力線がプラズマ生成用ガスGの流通方向と平行な方向に発生するように電極3,4を配設しても良く、この場合はプラズマ生成用ガスGの流通方向と平行な方向の高密度のストリーマ放電を発生させることができて、プラズマ生成用ガスGの活性を更に向上し、更に高効率の表面処理を行うことが可能となる。
【0016】
また、隣り合う電極3,4の間隔は0.01〜5mmの範囲とすることが好ましく、これにより、気体放電(プラズマ)を安定に発生させることができる。
【0017】
また、貫通孔2の開口形状は直径0.01〜15mmの円形状とすることが好ましく、この場合、特にプラズマ生成用ガスGの流量を抑制しつつ、大面積の処理が可能となるものである。
【0018】
また、貫通孔2の開口形状を短手寸法0.01〜15mmのスリット状とすることも好ましく、この場合、特に貫通孔2の短手方向に沿って被処理物5を搬送しつつプラズマ処理を行うと、表面処理の均一性を更に向上することが可能となるものである。
【0019】
また、層状の電極3,4を絶縁基材1に形成すると共に貫通孔2に合致する位置において電極3,4に開口8を形成し、隣り合う開口8、8の間において電極3,4に欠損部分30が無いようにすることが好ましく、この場合、絶縁基材1の表面で沿面放電31の発生を少なくすることができ、沿面放電31からの被処理物5に対するアークショートが発生しにくくなり、従って、アークによる被処理物5の損傷を少なくすることができるものである。
【0020】
また、絶縁基材1はセラミックスにて形成されていることが好ましく、この場合、絶縁基材1に高い耐熱性と強度とを付与することができ、耐久性が高いものである。
【0021】
特に、絶縁基材1を高強度且つ安価なアルミナにて形成することが好ましい。
【0022】
また、休止区間を持つパルス状の電圧を電極3,4に印加する電源6を具備するようにすることが好ましく、この場合、複数の貫通孔2のそれぞれにおいて均一で安定した放電を高効率で発生させて処理効率を向上することができる。
【0023】
また、周波数が1Hz〜200kHzの電圧を電極3,4に印加する電源6を具備することが好ましく、これにより電極3,4間の放電を安定化させて表面処理効率を更に向上し、且つプラズマ生成用ガスの過度な温度上昇を抑制して被処理物5の熱的損傷を防止し、更に一部の貫通孔2への放電の集中を抑制して均一な処理を可能とすることができる。
【0024】
更に、デューティー比が0.01〜80%のパルス状の電圧を電極3,4に印加する電源6を具備することが好ましく、この場合、特に高効率で安定した放電を発生させることが可能となり、処理効率を更に向上させることができる。
【0025】
また、一対の電極3、4を中点接地するのが好ましく、この場合、活性化されたプラズマ生成用ガスGと被処理物5との間の電位差を小さくすることができ、活性化されたプラズマ生成用ガスGからの被処理物5に対するアークの発生を防止することができるものである。
【0026】
また、反応器Rに対して、希ガス、窒素、酸素、空気の少なくとも一つを含有するガス、またはこれらの二種以上の混合ガスを、プラズマ生成用ガスGとして供給するガス供給手段を具備することが好ましく、これにより、希ガスや窒素により被処理物5の表面改質などのプラズマ処理を行うことができ、酸素により有機物の除去などのプラズマ処理を行うことができ、空気により被処理物5の表面改質や有機物の除去などのプラズマ処理を行うことができ、希ガスと酸素の混合ガスにより被処理物5の表面改質や有機物の除去などのプラズマ処理を行うことができるものである。
【0027】
また、絶縁基材1を冷却する放熱器7を具備することが好ましく、これにより、絶縁基材1の熱変形による割れ等の破損の発生を防止し、また絶縁基材1の一部が過剰に加熱されることによる各貫通孔2ごとでのプラズマ発生の不均一化を防止して、均一な表面処理を維持することができるものである。
【0028】
また、二次電子が放出されやすい温度に絶縁基材1を温度調整するための温度調整手段を用いるのが好ましく、この場合、絶縁基材1から放出された二次電子によりプラズマ生成密度を増加させることができ、被処理物5の洗浄能力や改質能力などのプラズマ処理能力を向上させることができるものである。
【0029】
また、全ての貫通孔2に対してプラズマ生成用ガスGをほぼ均一な流速で供給するためのガス均一化手段を設けるのが好ましく、この場合、活性化されたプラズマ生成用ガスGを全ての貫通孔2からほぼ均一に吹き出すことができ、活性化されたプラズマ生成用ガスGの流速分布を少なくして均一なプラズマ処理を行うことができるものである。
【0030】
また、反応器Rを複数の絶縁基材1にて形成することも好ましく、これにより、絶縁基材1を適宜増減することで処理面積を容易に増減することができ、また絶縁基材1の配設位置を適宜変更して種々の形状の領域に対して表面処理を行うようにすることができ、或いは被処理物5との距離が異なる絶縁基材1を配設して、被処理物5に対して意図的に表面処理の度合いが高い部位や低い部位を同時に形成することができるようになり、しかも絶縁基材1の組み合わせを変更することで容易に設計変更が可能となるものである。
【0031】
また、上記のようなプラズマ処理装置に適用される反応器Rは、絶縁材料を成形した複数の開口を有する複数のシート材の間に、導電体材料を成形した導電体膜を、各シート材の開口が合致するように積層して、一体成形することにより、シート材にて絶縁基材1を、導電体膜にて電極3,4を、シート材の開口にて貫通孔2をそれぞれ形成して製造することができるするものであり、これにより、上記のようなプラズマ処理装置に適用される反応器Rを容易に形成することができ、且つ貫通孔2や電極3,4の微細成形を容易に行うことができるものである。
【0032】
また、本発明に係るプラズマ処理方法は、上記のようなプラズマ処理装置を用い、複数の各貫通孔2の一端側から他端側へプラズマ生成用ガスGを流通させると共に電極3,4に電圧を印加して各貫通孔2内で放電を発生させることにより、貫通孔2内でプラズマを発生させてプラズマ生成用ガスGを活性化させ、この活性化されたプラズマ生成用ガスGを各貫通孔2の他端側から被処理物5の表面に噴射することを特徴とするものである。これにより、大面積に亘って高効率でプラズマを発生させることができて、少ないガス流量で大面積に亘る被処理物5の表面処理を行うことができるものであり、また、絶縁基材1を適宜複数組み合わせて設けることで、被処理物5の変更に応じて容易に設計変更を行うことが可能なものである。
【0033】
上記の被処理物5は、フラットパネルディスプレイ用ガラス材、プリント配線基板又は樹脂フィルムであることが好ましく、これらの被処理物5に対して有機物等の異物のクリーニング、レジストの剥離やエッチング、有機フィルムの密着性の改善、金属酸化物の還元、成膜、水洗浄前処理、めっき前処理、コーティング前処理、その他の表面改質などの表面処理を行うことができ、またこれらの被処理物5の寸法変更等に応じて適宜容易に設計変更が可能なものである。
【発明の効果】
【0034】
上記のように本発明プラズマ処理装置及びこのプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法では、各貫通孔の内側に気体放電を発生し、この気体放電により生じる活性種を含む活性化されたプラズマ生成用ガスのガス流を複数の貫通孔から吹き出して被処理物に供給することによって、大面積に亘って高効率で均一なプラズマを発生させることができて、少ないガス流量で大面積に亘る被処理物の表面処理を均一に行うことができる。このように一度に表面処理が可能な処理面積を大面積化させると、大面積の被処理物に対しても一度に表面処理を施すことが可能となって、処理効率を向上することができるものである。また、特に被処理物を搬送しながら表面処理を施す場合などには、搬送中の被処理物が活性化されたプラズマ生成用ガスのガス流に曝露されている時間を長くすることができ、少ないガス量で効率的に表面処理することができるものであり、従って、ガスの流量を増加させることなく、被処理物と活性種との接触時間を増加させて表面処理の能力を高めることができ、ガスの消費量が増大しないものであり、表面処理のランニングコストが増加することなく経済的に不利にならないものである。
【0035】
更に、複数の絶縁基材を組み合わせて反応器を構成することが容易であり、かつ絶縁基材の数の増減や配置位置の変更等により、容易に設計変更が可能となって、種々の寸法や形状の被処理物に対するプラズマ処理に、容易に対処することができるものである。
【0036】
また、上記の反応器の製造方法では、上記のようなプラズマ処理装置に適用される反応器を容易に形成することができ、且つ貫通孔や電極の微細成形を容易に行うことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】絶縁基材の一例を示すものであり、(a)は平面図、(b)は(a)の断面図である。
【図2】絶縁基材の一例を示すものであり、(a)は平面図、(b)は(a)の断面図である。
【図3】本発明の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態の他例を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態の更に他例を示す断面図である。
【図6】本発明の参考例を示すものであり、(a)は断面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図7】電極間に印加される電圧波形の一例を示すグラフである。
【図8】電極間に印加される電圧波形の他例を示すグラフである。
【図9】電極間に印加される電圧波形の他例を示すグラフである。
【図10】(a)はプラズマ生成用ガスの流通方向と平行な方向に電極を並べて設けた場合の電気力線の方向を示す断面図、(b)はプラズマ生成用ガスの流通方向と交差する方向に電極を並べて設けた場合の電気力線の方向を示す断面図である。
【図11】(a)乃至(d)は、それぞれ複数の絶縁基材にて反応器を構成した例を示すものであり、(a)乃至(c)は平面図、(d)は側面図である。
【図12】本発明の実施の形態の一例を示し、(a)(b)は概略図である。
【図13】本発明の実施の形態の一例を示し、(a)(b)は図12のA−A′の部分に相当する断面図である。
【図14】本発明の実施の形態の一例を示し、(a)は概略図、(b)(c)は断面図である。
【図15】本発明の実施の形態の一例を示し、(a)(b)は一部の概略の断面図である。
【図16】本発明の実施の形態の一例を示し、(a)は概略の回路図、(b)はユニットA、Bに印加される電圧の波形を示すグラフである。
【図17】本発明の実施の形態の一例を示す概略の回路図である。
【図18】比較例1における装置構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【0039】
図1,2に本発明のプラズマ処理装置の一例を示す。このプラズマ処理装置は,板状の絶縁基材1に複数の貫通孔(スルーホール)2と、絶縁基材1内部に埋め込まれた複数(一対)の電極3,4とを備えた反応器Rを備えている。
【0040】
絶縁基材1は高融点の絶縁材料(誘電体材料)で形成されることが好ましく、例えば、石英ガラス、アルミナ、ジルコニア、ムライト、窒化アルミニウムなどのような、高耐熱性、高強度のガラス質材料やセラミックスなどで形成することが好ましいが、これらの材料に限定されるものではない。特に高強度で安価なアルミナ等で形成することが好ましい。また、チタニア、チタン酸バリウムなどの高誘電材料を用いることもできる。
【0041】
また、電極3,4は銅、タングステン、アルミニウム、真鍮、ステンレス鋼などの導電性の金属材料を用いて形成することができるが、特に銅、タングステン等で形成することが好ましい。
【0042】
上記の絶縁基材1と電極3,4の材質は、反応器Rの作製時やプラズマ処理時にかかる熱負荷による変形量の相違による破損を防止するために、線熱膨張率の差が小さいもの同士を適宜選択して用いることが好ましい。
【0043】
絶縁基材1及び貫通孔2の形状は適宜設計されるが、絶縁基材1は板状に形成することが好ましく、図示の絶縁基材1は平面視矩形状に形成されており、略同方向(絶縁基材1の厚み方向)に貫通する平面視円形状の貫通孔2が、複数個形成されている。各貫通孔2は、絶縁基材1の一面と他面でそれぞれ開口し、絶縁基材1の一面の開口がガス導入口2a、他面の開口がガス吹出口2bとして形成されている。
【0044】
この貫通孔2は、適宜の形状に形成することができ、例えば平面視円形状の複数の貫通孔2を二次元状に分散させて形成したり、長方形状(スリット状)の複数の貫通孔2を平行並列に配列させて形成したりすることができる。特に平面視円形状の貫通孔2を二次元状に分散させて形成すると、貫通孔2の径やピッチ等の工夫は必要であるが、プラズマ生成用ガスGの単位時間あたりの流量(流速)を抑制しつつ、広い面積にわたり活性化されたプラズマ生成用ガスGを均一に噴射させることができる。
【0045】
また、電極3,4は、電圧が印加された際に貫通孔2内において対となる電極3,4間で放電が発生するように形成されるものであり、例えば対となる電極3,4間に電源6を接続して、この電極3,4間に休止区間を持つパルス状の電圧が印加されるように形成される。対となる電極3,4のうちの一方は接地された接地電極として形成することができる。このとき貫通孔2内の対となる電極3,4間の空間は放電空間として形成される。
【0046】
電極3,4は、上記のように放電空間内で放電を発生させることができるように適宜の形状に形成することができるが、絶縁基材1の内部に埋設された状態で、電極3,4が貫通孔2の側方に配置されるように形成することが好ましい。
【0047】
図1,2に示す例では、絶縁基材1は一面が上方に、他面が下方に配置されており、平面視円形状の複数の貫通孔2が上下方向に貫通してガス導入口2aが上側、ガス吹出口2bが下側に開口するように形成されている。この複数の貫通孔2の開口は絶縁基材1の一面及び他面において二次元的に分散するように設けられており、図示の例では貫通孔2は平面視において平面正方格子状に配列するように設けられ、且つ隣り合う貫通孔2同士の間隔が略等間隔となるように形成されている。貫通孔2の配置の仕方はこのようなものには限られず、適宜のパターンに配置することができる。例えば貫通孔2を平面視において平面最密六方格子状(千鳥状)に配列するように設けると、貫通孔2をより密に且つ均一に配置することができ、被処理物5に対する表面処理を更に均一に行うことが可能となる。各貫通孔2の寸法や、各貫通孔2同士の間隔などは、貫通孔2内でプラズマ生成用ガスが放電により高効率で活性化され、また貫通孔2から噴出される活性化されたプラズマ生成用ガスGが均一に噴射されるように、適宜設定すれば良いが、特にその直径(内径)を0.01〜15mmの範囲に形成することが好ましく、また隣り合う貫通孔2同士の間隔は0.03〜60mmの範囲に形成することが好ましい。例えば小面積の被処理物5に対するプラズマ処理を行う場合には、貫通孔2の径が小さくなるように形成することが好ましい。
【0048】
また、図6に示す参考例では、絶縁基材1は一面が上方に、他面が下方に配置されており、平面視長方形状(スリット状)の複数の貫通孔2が上下方向に貫通してガス導入口2aが上側、ガス吹出口2bが下側に開口するように形成されている。この複数の貫通孔2の開口は絶縁基材1の一面及び他面において平行並列に配列するように設けられ、且つ隣り合う貫通孔2同士の間隔が略等間隔となるように形成されている。各貫通孔2の寸法や、各貫通孔2同士の間隔などは、貫通孔2内でプラズマ生成用ガスGが放電により高効率で活性化され、また貫通孔2から噴出される活性化されたプラズマ生成用ガスGが均一に噴射されるように、適宜設定すれば良いが、特にその幅寸法(短手方向の寸法)を0.01〜15mmの範囲に形成することが好ましく、また貫通孔2同士の間隔は0.01〜30mmの範囲に形成することが好ましい。この場合、貫通孔2のガス吹出口2bからは、貫通孔2の長手方向に沿って、活性化されたプラズマ生成用ガスGが連続的に噴射されることとなり、このため特に貫通孔2の短手方向に沿って被処理物5を搬送しつつプラズマ処理を行う場合には、表面処理の均一性を更に向上することが可能となる。
【0049】
また、図1,2に示す例では、対となる一方の電極4と他方の電極3とが絶縁基材1内に埋設されており、且つ一方の電極4が絶縁基材1の一面側(上側、ガス導入口2a側)に、他方の電極3が絶縁基材1の他面側(下側、ガス吹出口2b側)に配置されており、対となる電極3,4が貫通孔2内でのプラズマ生成用ガスGの流通方向と平行な方向に並んで配置されている。電極3,4間は間隔をあけて配置されており、この電極3,4間には絶縁基材1を構成する絶縁材料(誘電体材料)が介在するようになっている。このとき図示の例では各電極3,4は絶縁基材1の内部に連続的な層状に形成され、且つ各貫通孔2と合致する位置には開口8が形成され、この開口8の内面が貫通孔2を取り囲むように形成されることで、各電極3,4が貫通孔2を取り囲むように形成されている。すなわち、各電極3,4は各貫通孔2ごとに別個に形成されているものではなく、連続した層状の電極3,4に形成された複数の開口8の内面が、各貫通孔2内において放電を発生させる放電面として形成される。
【0050】
ここで、図1(b)に示す例では、各電極3,4の開口8の内径と貫通孔2の内径とが同一寸法に形成されて、開口8と貫通孔2の各内面が面一となり、各電極3,4がその開口8の内面において貫通孔2内に露出するように形成されている。この場合、電極3,4間に電圧が印加された際の放電性を高めることができ、プラズマ生成用ガスG中の活性種の密度を向上して表面処理効率を向上することができる。特にプラズマ生成用ガスG中に反応性ガスが含有されていない場合には、電極3,4が露出する場合でも放電時における電極3,4の損耗が少なく、このためこのように電極3,4を露出させることにより放電性を向上させることが好ましい。
【0051】
また図2に示す例では、各電極3,4の開口8の内径は貫通孔2の内径よりも大きくなるように形成されており、各電極3,4の開口8の内面はすべて絶縁基材1の内部に埋設されるようになっている。このとき、各電極3,4は貫通孔2内には露出しないように形成され、電極3,4間に電圧が印加された際には、貫通孔2内では誘電体バリア放電が発生する。この場合、各電極3,4の放電面が絶縁基材1を構成する絶縁材料(誘電材料)によって保護されることとなり、特にプラズマ生成用ガスG中に反応性ガスが含有されている場合でも電極3,4の損耗を防止することができる。また、電極3,4を露出させる場合では高電圧下においてアークが発生して放電が不安定になる場合があるが、電極3,4を絶縁材料(誘電材料)によって被覆することで、高電圧下におけるアーク放電の発生が抑制されて、安定した放電の維持が可能となる。絶縁基材1を構成する絶縁材料(誘電材料)による各電極3,4の被覆の厚みは適宜設定されるが、電極3,4の表面を十分に保護すると共に良好な放電性を維持するためには、その厚みが0.01〜3mmの範囲であることが好ましい。
【0052】
また上記の電極3,4の間隔(放電面の間隔)は気体放電(プラズマ)を安定に発生するために0.01〜5mmに設定するのが好ましい。
【0053】
上記のようにして貫通孔2におけるプラズマ生成用ガスGの流通方向と平行な方向に電極3,4を並べて設けると、図10(a)に示すように、電極3,4間の電位差によって貫通孔2内に発生する電気力線(図中の矢印)は、プラズマ生成用ガスGの流通方向と平行な方向となる。このとき、貫通孔2内の放電空間では、高密度のストリーマ放電を生成することができるため、この放電によって生成される活性種の密度を高めることができ、これによりプラズマ処理の効率を向上することが可能となる。特に図示の例では、電極3,4はその放電面が共に貫通孔2を全周に亘り取り囲むように形成されているため、電気力線は貫通孔2内の全周に亘って発生し、これに応じて放電が貫通孔2内の内周全体に沿って発生し、このため、より高効率にプラズマを発生させることが可能となる。
【0054】
また特に絶縁基材1のガス吹出口2b側に配置される電極3を接地電極として形成すると、被処理物5の表面処理の際に対となる電極3,4のうち被処理物5側に配置されるものが接地電極となることから、この電極3と被処理物5との間の電位差が大きくなることを抑制して電極3と被処理物5との間のアークの発生を防止することができ、被処理物5に放電による損傷が発生しないようにすることができるものである。
【0055】
上記のように層状に形成される電極3,4においては、開口8以外に欠損部分(抜けた部分)が無い方が好ましい。すなわち、図12(a)(b)はいずれも図2に示す絶縁基材1に設けた電極3,4の一例を示すが、この場合、欠損部分30が開口8の周辺に多数存在する図12(a)の電極3,4よりも、欠損部分30が開口8の周辺に存在しない図12(b)の電極3,4を用いるのが好ましい。
【0056】
図12(a)の電極3,4を用いて絶縁基材1を形成した場合、電極3,4間に電源6で電圧を印加すると、図13(a)に示すように、絶縁基材1の下面において開口8に対応する箇所と欠損部分30に対応する箇所の両方に沿面放電31が生じる。
【0057】
一方、図12(b)の電極3,4を用いて絶縁基板1を形成した場合では、電極3,4間に電源6で電圧を印加すると、図13(b)に示すように、絶縁基材1の下面において主に開口8に対応する箇所に沿面放電31が生じるだけであり、図13(a)のものに比べて、沿面放電31が少なくなる。
【0058】
そして、沿面放電31は被処理物(ワーク)5に最も近接した放電であって、沿面放電31が多いと、沿面放電31からの被処理物5に対するアークが生じやすくなるものであるが、図13(b)の絶縁基材1では図13(a)のものに比べて、沿面放電31が少なくなるので、被処理物5との間でアークが発生しにくくなり、従って、放電による被処理物5の損傷を少なくすることができるものである。
【0059】
また、上記のように層状に形成される一対の対向する電極3,4のうち、被処理物5に近い方に配置される電極3の周端部を遠い方に配置される電極4の周端部よりも外側に突出させる。すなわち、図14に示すように、対向する一対の電極3,4を設けた絶縁基材1を正射影投影した場合に、上側の電極4と下側の電極3(図14(a)に破線で示す)がほぼ相似形で、且つ上側の電極4が下側の電極3に包含されるような大きさのパターンに電極3,4を形成する。このように下側の電極3の面積を上側の電極4の面積よりも大きく形成すると、図14(b)(c)に示すように、上側の電極4の周端部よりも外側に、下側の電極3の周端部が突出して位置するものであり、これにより、貫通孔2における電極3,4間の電圧よりも、電極3,4の周端間での電圧を低くすることができ、この結果、絶縁基材1の下面において電極3,4の周端間に対応する箇所での沿面放電31の発生を抑えることができて開口8に対応する箇所以外での沿面放電31を少なくすることができ、アークによる被処理物5の損傷をさらに少なくすることができるものである。尚、図14(b)では貫通孔2の一部が図示省略されている。
【0060】
また、電極3,4は、上記のように形成するほか、適宜の形状に形成することができる。また、貫通孔2におけるプラズマ生成用ガスGの流通方向と交差する方向(例えば直交する方向)に複数の電極3,4を並べて設けることもできる。
【0061】
図6に示す例では、絶縁基材1中の同一の層内に、対となる二種の電極3,4が間隔をあけてパターン状に埋設されており、一方の電極4は各貫通孔2の一側に、他方の電極3は各貫通孔2の他側に配置されるようになっている。
【0062】
また、図示の例では、対となる一方の電極4と他方の電極3とが絶縁基材1内に埋設されており、且つ各電極3,4は絶縁基材1内の同一の層内に配置されており、対となる電極3,4が貫通孔2内でのプラズマ生成用ガスGの流通方向と交差する方向(直交する方向)に並んで配置されている。電極3,4間は間隔をあけて配置されており、この電極3,4間には絶縁基材1を構成する絶縁材料(誘電体材料)が介在するようになっている。
【0063】
図示の例では各電極3,4は絶縁基材1の内部に連続的な層状に形成されているが、このとき各電極3,4は貫通孔2の並び方向に沿った方向に長い給電部3a,4aから貫通孔2の長手方向に長い複数の電極部3b,4bを延設した櫛形状に形成されており、隣り合う貫通孔2の間には、各電極3,4の電極部3b,4bが交互に配置されるようになって、貫通孔2の一側には一方の電極3の電極部3bが、他側には他方の電極4の電極部4bがそれぞれ配置される。すなわち、各電極3,4は各貫通孔2ごとに別個に形成されているものではなく、連続した層状の電極3,4に形成された電極部3b,4bの端面が、各貫通孔2内において放電を発生させる放電面として形成される。
【0064】
また上記の電極3,4の間隔(放電面の間隔)は気体放電(プラズマ)を安定に発生するために0.01〜5mmに設定するのが好ましい。
【0065】
このように電極3,4を配設すると、図10(b)に示すように、電極3,4間の電位差によって貫通孔2内に発生する電気力線(図中の矢印)は、プラズマ生成用ガスGの流通方向と交差する方向となる。このとき、プラズマ生成用ガスGの流通方向と交差する方向に放電を発生させて、プラズマ生成用ガスGの活性化を行うことができるものである。
【0066】
ここで、図6に示す例では、各電極3,4の電極部3b,4bの対向する端面同士の間隔は、貫通孔2の開口の幅寸法よりも大きくなるように形成されており、各電極3,4の電極部3b,4bの端面はすべて絶縁基材1の内部に埋設されるようになっている。このとき、各電極3,4は貫通孔2内には露出しないように形成されている。この場合各電極3,4の放電面が絶縁基材1を構成する絶縁材料(誘電材料)によって保護されることとなり、図2に示す場合と同様に電極3,4の損耗を防止することができるものである。この場合も、絶縁基材1を構成する絶縁材料(誘電材料)による各電極3,4の被覆の厚みは0.01〜3mmの範囲であることが好ましい。
【0067】
また、図示はしていないが、各電極3,4の電極部3b,4bの対向する端面同士の間隔と貫通孔2の開口の幅寸法を同一寸法に形成して、電極部3b,4bの端面と貫通孔2の内面が面一となり、各電極3,4がその電極部3b,4bの端面において貫通孔2内に露出するように形成しても良い。この場合、図1(b)に示す場合と同様に、プラズマ生成用ガスG中の活性種の密度を向上して表面処理効率を向上することができる。
【0068】
また、図示はしていないが、図6に示すように貫通孔2をスリット状に形成する場合においても、図1,2に示すものと同様に、一方の電極4が絶縁基材1の一面側(上側、ガス導入口2a側)に、他方の電極3が絶縁基材1の他面側(下側、ガス吹出口2b側)に配置されるようにし、対となる電極3,4が絶縁基材1を構成する絶縁材料(誘電体材料)を介して、貫通孔2内でのプラズマ生成用ガスGの流通方向と平行な方向に間隔をあけて並んで配置されるようにすることができる。この場合は、例えば各電極3,4を絶縁基材1の内部に連続的な層状に形成し、且つ各貫通孔2と合致する位置に開口を形成し、この開口の内面が貫通孔2を取り囲むように形成することができる。この場合、電極3,4間の電位差によって貫通孔2内に発生する電気力線は、図10(a)に示すようにプラズマ生成用ガスGの流通方向と平行な方向となり、貫通孔2内の放電空間では、高密度のストリーマ放電を生成することができるため、この放電によって生成される活性種の密度を高めることができ、これによりプラズマ処理の効率を向上することが可能となる。
【0069】
上記のような構成を有する電極3,4が設けられた絶縁基材1から構成される反応器Rは、電極3,4及び貫通孔2の微細成形が容易であり、微細な貫通孔2を複数設けると共に各貫通孔2内で放電を発生させるための電極3,4を設けることで、二次元状に配置された各貫通孔2から活性化されたプラズマ生成用ガスGを噴射することができ、これにより処理面の大面積化とこの処理面における処理の均一化を図ることが可能となる。
【0070】
ここで、絶縁基材1に貫通孔2と電極3,4とが設けられた反応器Rを得るにあたっては、例えば絶縁材料の粉体にバインダー等を混合して成形したシート材を、導電体膜を介して積層することができる。
【0071】
シート材は、石英ガラス、アルミナ、ジルコニア、ムライト、窒化アルミニウムなどのようなセラミックスの粉体に、バインダー、或いは必要に応じて更に各種の添加剤を加えた混合材料をシート状に成形することで得ることができる。またこのシート材の厚みは、絶縁基材1の厚みや、電極3,4を二層に分けて形成する場合での電極3,4間の距離等に応じて適宜設定されるが、0.05〜5mmの範囲であることが好ましい。
【0072】
また導電体膜は、銅、タングステン、アルミニウム、真鍮、ステンレス鋼などの導電性の金属材料を絶縁基材上に印刷成形することで得ることができる。
【0073】
そして、例えばシート材に対する導電体膜の形成と、これに対する他のシート材の積層を行って、シート材の層間に導電体膜が設けられた積層体を形成した後、これを焼成することで一体成形して、絶縁基材1を得ることができる。貫通孔2は、この積層成形後に穿設しても良いが、シート材に予め貫通孔2に相当する箇所に開口が設けられたものを用い、積層成形時のこの開口を位置合わせして成形することで、積層成形と同時に貫通孔2を形成することが好ましい。
【0074】
このとき、図1(b),図2等に示すように一方の電極4が絶縁基材1の一面側(上側、ガス導入口2a側)に、他方の電極3が絶縁基材1の他面側(下側、ガス吹出口2b側)に配置されるように形成する場合には、例えばまず第1のシート材の一面に導電体膜を、一方の電極4(又は3)の所望のパターン形状に印刷成形し、この導電体膜の上面に更に第2のシート材を積層して配置し、次いでこの第2のシート材の一面に導電体膜を他方の電極3(又は4)の所望のパターン形状に印刷成形し、この導電体膜の上面に更に第3のシート材を積層して配置する。また、電極4の所望のパターン形状に導電体膜が印刷成形されたシート材と、電極3の所望のパターン形状に導電体膜が印刷成形されたシート材と、導電体膜が形成されていないシート材とを、両面の最外層にそれぞれシート材が配置されると共に各導電体膜がシート材の間に配置されるように積層して配置するようにしても良い。次いで、この積層体を焼成することで、反応器Rが作製される。
【0075】
また、図6に示すように対となる一方の電極4と他方の電極3とが絶縁基材1内の同一の層内に配置される場合には、例えばまず第1のシート材の一面に導電体膜を、一方の電極4及び他方の電極3の所望のパターン形状に印刷成形し、この導電体膜の上面に更に第2のシート材を積層して配置する。次いで、この積層体を焼成することで、反応器Rが作製される。
【0076】
上記のような反応器Rはプラズマ生成用ガスGの流路上に、プラズマ生成用ガスGがガス導入口2aから貫通孔2に流入してガス吹出口2bから流出するように配設される。
【0077】
図3に示すものでは、反応器Rとして図2に示す平面形状と断面形状を有するものを用い、反応器Rの絶縁基材1にはその一面側(ガス導入口2aが開口する側)に、ガス貯留室(ガスリザーバ)11が設けられており、このとき貫通孔2がガス貯留室11内に連通するように形成されている。図示のガス貯留室11は、一端側(図示では上端側)にガス貯留室11へのプラズマ生成用ガスGの流入口10が設けられており、他端側(図示では下端側)にはガス貯留室11からのプラズマ生成用ガスGの流出口9が設けられている。そして、絶縁基材1は、ガス貯留室11の流出口9が設けられている他端側に添設されている。このとき流出口9はガス貯留室11に複数個設けられると共に各流出口9は絶縁基材1の複数の各貫通孔2と合致する位置に設けられており、これにより、ガス貯留室11内と貫通孔2とは、流出口9を介して連通するように形成されている。
【0078】
ガス貯留室11は全ての貫通孔2に対してプラズマ生成用ガスGをほぼ均一な流速で供給するためのガス均一化手段を設けられるものである。すなわち、プラズマ生成用ガスGは、流入口10からガス貯留室11に流入することにより圧力が緩和されて降下するものであり、これにより、全ての貫通孔2に対してプラズマ生成用ガスGをほぼ均一な流速で供給することができ、この結果、全ての貫通孔2から吹き出される活性化されたプラズマ生成用ガスGを絶縁基材1の全面に亘ってほぼ均一にすることができ、活性化されたプラズマ生成用ガスGの流速分布を少なくして均一なプラズマ処理を行うことができる。
【0079】
また、ガス貯留室11には、放熱器7としての機能を具備させることもでき、これにより、絶縁基材1と放熱器7とを密着して形成することができる。図示の例では、ガス貯留室11を構成する隔壁のうち、流出口9が形成されている端部側の隔壁(端部隔壁)と、ガス貯留室11の一端と他端の間の側部を構成する、前記端部隔壁と一体に形成された隔壁(側部隔壁)によって、放熱器7が形成されており、側部隔壁には、外面に外方に突出する放熱フィン7bを設け、また端部隔壁にはガス貯留室11の内面において、流出口9が形成されていない部分に内方に突出する吸熱フィン7aが形成されている。
【0080】
このような放熱器7を設けると、プラズマ生成用ガスGの熱は吸熱フィン7aによって吸収されて、端部隔壁と側部隔壁を伝達して放熱フィン7bにより装置外部に放散される。これにより、プラズマ生成用ガスGの温度上昇を抑制して、それに伴って絶縁基材1の温度上昇を抑制することができる。
【0081】
上記の放熱器7は、放熱フィン7bが設けられた空冷式のものであるが、放熱器7として水冷式のものを設けても良い。図4〜6に示す例では、端部隔壁における、各流出口9の間の部位に、冷却水が流通する通水路7cが設けられており、この通水路7cに冷却水が流通することで、絶縁基材1を冷却するようにしている。ここで、図4は図2に示す平面視形状と断面形状を有する反応器Rに放熱器7を設けたものを、図5は図1(a)(b)に示す反応器Rに放熱器7を設けたものを、それぞれ示している。このようにすると、絶縁基材1に密着して配置されている端部隔壁が冷却されることで、絶縁基材1が効率良く冷却され、絶縁基材1の温度上昇を抑制することができる。
【0082】
上記の冷却水は、二次電子が放出されやすい温度に絶縁基材1を温度調整するための温度調整手段として用いることができる。すなわち、活性化されたプラズマ生成用ガスGに含まれる電子やイオンが絶縁基材1に作用することによって、絶縁基材1から二次電子が放出されるが、この二次電子が放出されやすい絶縁基材1の温度は高いほど好ましいが、熱膨張による絶縁基材1の損傷を考慮すると、絶縁基材1の温度は100℃程度に抑えるのが適当である。そこで、上記の冷却水により絶縁基材1を40〜100℃に温度調整するのが好ましい。このように室温よりも高い温度の冷却水を用いることによって、使用開始時において絶縁基材1の表面温度を室温よりも上昇させることができ、このために室温の場合よりも絶縁基材1から二次電子が放出されやすくなり、絶縁基材1から放出された二次電子によりプラズマ生成密度を増加させることができ、被処理物5の洗浄能力や改質能力などのプラズマ処理能力を向上させることができるものである。冷却水の温度は上記の効果が発生しやすく、且つ取り扱い性や省エネルギー等を考慮して、50〜80℃の温度にするのがより好ましい。
【0083】
上記のガス貯留室11及び放熱器7は、熱伝導性の高い材質にて形成することが好ましく、例えば銅、ステンレス、アルミニウム、窒化アルミニウム(AlN)等にて形成することができる。ガス貯留室11及び放熱器7を窒化アルミニウム等の絶縁物で形成することによって、電極3,4間に印加する高周波の電圧の影響を受けにくくなり、これにより、電極3,4間に投入される電力の損失がほとんど無くなって効率的な放電を行うことができ、しかも、高熱伝導であるために冷却効率を高くすることができるものである。
【0084】
また、放熱器7により絶縁基材1の温度上昇を抑制すると、絶縁基材1が熱変形を生じて割れ等の破損が発生することを防止することができる。また絶縁基材1の一部が過剰に加熱されると、加熱された部分においてプラズマ発生密度が高くなるなど、各貫通孔2内におけるプラズマ発生が不均一になるおそれがあるが、絶縁基材1の温度上昇を抑制することでこのような各貫通孔2ごとでのプラズマ発生の不均一化を防止し、均一な表面処理を維持することができるものである。
【0085】
また、絶縁基材1を温度調節する手段として放熱器7に電気ヒーターを内蔵することにより、上記の冷却水による温度調節と同等の効果を得ることもできる。この場合は放熱器7に熱電対等の温度測定手段を設置することにより、放熱器7の温度調節をすることが好ましい。
【0086】
さらに、放熱器7としてペルチェ素子を設置することもできる。
【0087】
絶縁基材1と放熱器7との接合は、熱伝導性が良好で、プラズマ生成用ガスGのリークを防ぐことができる方式を採用するのが好ましく、例えば、熱伝導性グリス、熱伝導性両面テープ、接着樹脂含浸接合材により接着したり、絶縁基材1と放熱器7との接合面を鏡面研磨し、これらを圧着により接合することもできる。
【0088】
また、絶縁基材1と放熱器7を一体として形成することも好ましい。このように成形することにより、放電空間からの発熱を放熱器7により効率よく吸収させることができ、しかも、プラズマ生成用ガスGのリークも防止できるため、絶縁基材1の温度分布を均一にし、放電を安定化することができる。
【0089】
上記のように構成されるプラズマ処理装置によって被処理物5の表面処理を行うにあたっては、プラズマ生成用ガスGを流入口10からガス貯留室11に供給し、このプラズマ生成用ガスGを流出口9及びガス導入口2aを介して絶縁基材1の各貫通孔2内に流入させ、この貫通孔2内の放電空間において電極3,4間の放電によりプラズマ生成用ガスGを活性化させた後に、ガス吹出口2bから吹き出させる。
【0090】
上記のプラズマ生成用ガスGとしては、希ガス、窒素、酸素、空気をそれぞれ単独で用いたりあるいは複数種を混合したりして用いることができる。空気としては、好ましくは水分を殆ど含まない乾燥空気を用いることができる。希ガスとしては、ヘリウム、アルゴン、ネオン、クリプトンなどを使用することができるが、放電の安定性や経済性を考慮するとアルゴンを用いることが好ましい。また、希ガスや窒素に酸素、空気等の反応ガスを混合して使用することもできる。反応ガスの種類は処理の内容によって任意に選択することができる。例えば、被処理物5の表面に存在する有機物のクリーニング、レジストの剥離、有機フィルムのエッチング、LCDの表面クリーニング、ガラス板の表面クリーニングなどを行う場合には、酸素、空気、CO2、N2Oなどの酸化性ガスを用いるのが好ましい。また、反応ガスとしてCF4、SF6、NF3などのフッ素系ガスも適宜用いることができ、シリコンやレジストなどのエッチング、アッシングを行う場合にはこのフッ素系ガスを用いるのが効果的である。また、金属酸化物の還元を行う場合は、水素、アンモニアなどの還元性ガスを用いることができる。
【0091】
上記のようなプラズマ生成用ガスGをガス貯留室11を介して反応器Rの貫通孔2に供給するためには、ガスボンベ、ガス配管、混合器、圧力弁等で構成される適宜のガス供給手段(図示せず)を設けることができる。例えばプラズマ生成用ガスG内に含有される各ガス成分が封入された各ガスボンベをガス配管にてガス貯留室11の流出口9に接続するようにし、このとき、各ガスボンベから供給されるガス成分を混合器にて所定の割合で混合し、圧力弁により所望の圧力で流出口9に導出されるようにする。
【0092】
このようなプラズマ生成用ガスGは、貫通孔2内の放電空間において電極3,4間の放電により活性化されるものであるが、このとき電源6により電極3,4間に高電圧を印加されることにより、放電空間には電界が発生し、この電界の発生により大気圧下あるいはその近傍の圧力下で放電空間に気体放電が発生すると共にこの気体放電によりプラズマ生成用ガスGが活性化(プラズマ化)されて放電空間に活性種(イオンやラジカル等)が生成されるものである。
【0093】
このとき、プラズマ生成用ガスGは、圧力損失の影響を受けずに、単位時間当たりに所定の流量を供給できる圧力で貫通孔2に供給されるのが好ましく、ガス貯留室11内の圧力が大気圧あるいはその近傍の圧力(好ましくは100〜300kPa)となるように供給されることが好ましい。
【0094】
また、ガス導入口2aから貫通孔2内に導入されたプラズマ生成用ガスGを活性化させるために電源6から電極3,4間に印加される電圧は、交番波形(交流波形)、パルス波形、或いはこれらの波形を重畳させた波形など、適宜の波形のものとすることができるが、特に、休止区間を持つパルス状の波形の電圧を印加することが好ましい。この場合、貫通孔2内における安定した高効率な放電発生を可能とすることができ、このとき、複数の各貫通孔2内において放電が発生されていないものが発生することを防止して、各貫通孔2での均一な放電を維持することを可能とすることができる。放電の均一化が維持されるのは、一部の貫通孔2内で偶発的に放電が発生しなくなっても、休止区間において各貫通孔2内における放電状態が一旦キャンセルされ、休止区間の終了により再び電圧が印加された際に均一な放電状態に復帰するためであると、考えられる。
【0095】
図7,8,9は、休止区間を持つパルス状の電圧を印加する場合の電圧の波形の例を示すものであり、図7に示す例は休止区間を介して交番する矩形波、図8に示す例は一定の周期で、立ち上がり、減衰、休止を繰り返す振動波パルス、図9は矩形波と同様に一波長内に正のパルス電圧出力、休止、負のパルス電圧出力、休止を1サイクルとして繰り返す対称パルスである。図9の対称パルス波形では、放電形態は矩形波に近い状態を得ることができ、また低い電圧でスイッチングを行い、昇圧にはトランスを用いることができるため、電源6の構成は矩形波用のものに比べて簡略化することが可能である。このとき、放電空間で気体放電を連続的に生成するのに必要な電極3,4間の電圧は貫通孔2の内径や対となる電極3,4間隔によって異なるので適宜設定すればよいが、例えば、0.05〜30kVに設定することができる。
【0096】
また、電源6としてパルス状波形電源を用いた場合などでは、電極3,4間に印加される電圧波形の繰り返し周波数は1Hz〜200kHzに設定するのが好ましい。この周波数が1Hz未満であれば、放電空間での放電を安定化させることができなくなり、表面処理を効率よく行うことができなくなる恐れがある。また周波数が200kHzを超えると、放電空間での気体放電(プラズマ)の温度上昇が著しくなり、さらに一部の貫通孔2に放電が集中しやすくなるため、複数の貫通孔2内において均一に放電を発生させることが困難となる。
【0097】
また、電源6としてパルス状波形電源を用いる場合に、特に高効率で安定した放電を発生させるためには、電圧波形のデューティー比が0.01〜80%となるようにすることが好ましい。ここで、図7に示すような矩形状のパルス波におけるデューティー比は、一つのパルスの立ち上がりから立ち下がりまでの幅を一つのパルスの立上がりから休止区間を経て次のパルスの立ち上がりまでの幅で割ったものである。また、図8、9に示すような振動波パルスの場合は、パルスの一回目の立ち上がりと、二回目のパルスの立ち下がり波形の間の幅を、一回目のパルスの立上がりから減衰振動部および休止区間までを含む期間で割ったものである。
【0098】
また、本発明において電極3,4を中点接地するのが好ましく、これにより、両電極3,4とも接地に対して浮いた状態で電圧を印加することができる。従って、被処理物5と活性化されたプラズマ生成用ガス(プラズマジェット)Gとの電位差が小さくなってアークの発生を防止することができ、アークによる被処理物5の損傷を防ぐことができるものである。すなわち、例えば、図15(a)に示すように、上側の電極4を電源6に接続して13kVに、下側の電極3を接地して0kVとして電極3,4間の電位差Vpを13kVにした場合、活性化されたプラズマ生成用ガスGと被処理物5との間に少なくとも数kVの電位差が生じ、これによるアークArが発生する。一方、図15(b)に示すように、中点接地を用いた場合は、上側の電極4の電位を+6.5kVに、下側の電極3の電位を−6.5kVにして電極3,4間の電位差Vpを13kVにすることができ、活性化されたプラズマ生成用ガスGと被処理物5との間の電位差がほとんど0Vになるものである。つまり、中点接地を用いない場合に比べて、中点接地を用いた場合は電極3,4間に同じ電位差が生じるにもかかわらず、活性化されたプラズマ生成用ガスGと被処理物5との間の電位差を小さくすることができ、活性化されたプラズマ生成用ガスGからの被処理物5に対するアークの発生を防止することができるものである。
【0099】
この後、活性種を含むプラズマ生成用ガスGはガス吹出口2bから連続的に吹き出されるものであり、ガス吹出口2bの下側に被処理物5を配置すると共に活性種を含むプラズマ生成用ガスGのガス流をガス吹出口2bから被処理物5の表面の一部又は全部に吹き付けて供給することによって、被処理物5の表面処理を行うことができる。
【0100】
ここで、ガス吹出口2bの下側に被処理物5を配置するにあたり、ローラー、ベルトコンベア等の搬送装置で被処理物5を搬送するようにすることができる。このとき、搬送装置で複数の被処理物5をガス吹出口2bの下側に順次搬送することによって、複数の被処理物5を連続的に表面処理することもできる。
【0101】
また、ガス吹出口2bと被処理物5の表面との間の距離は、プラズマ生成用ガスGのガス流の流速、プラズマ生成用ガスGの種類、被処理物5や表面処理の内容等によって適宜設定可能であるが、例えば、1〜30mmに設定することができる。
【0102】
上記のようにして被処理物5に対する表面処理を行うと、各貫通孔2の内側に気体放電を発生し、この気体放電により生じる活性種を含む活性化されたプラズマ生成用ガスGのガス流を複数の貫通孔2から吹き出して被処理物5に供給することによって、大面積に亘って高効率で均一なプラズマを発生させることができて、少ないガス流量で大面積に亘る被処理物5の表面処理を均一に行うことができる。
【0103】
このように一度に表面処理が可能な処理面積を大面積化させると、大面積の被処理物5に対しても一度に表面処理を施すことが可能となって、処理効率が向上する。また、被処理物5を搬送しながら表面処理を施す場合などには、搬送中の被処理物5が活性化されたプラズマ生成用ガスGのガス流に曝露されている時間を長くすることができ、少ないガス量で効率的に表面処理することができるものであり、従って、ガスの流量を増加させることなく、被処理物5と活性種との接触時間を増加させて表面処理の能力を高めることができ、ガスの消費量が増大しないものであり、表面処理のランニングコストが増加することなく経済的に不利にならないものである。
【0104】
また、上記の実施形態では絶縁基材1を平面視矩形状に形成したことで処理面を矩形状に形成しているが、絶縁基材1の大きさ、形状や貫通孔2の配列を適宜変更することで、被処理物5に応じて処理面積を適宜調節したり、処理面を任意形状としたりすることもできる。
【0105】
更に、複数の絶縁基材1を組み合わせて反応器Rを構成すると、処理面積の更なる大型化や、処理面の形状の変更も可能となる。
【0106】
例えば、図11(a)に示すように複数の絶縁基材1を一列に並べて配置して反応器Rを構成し、あるいは図11(b)に示すように複数の絶縁基材1を複数行複数列に並べて配置して反応器Rを構成することで、処理面積の大型化を図ることができる。
【0107】
また、複数の絶縁基材1を適宜のパターン状に配置して反応器Rを構成すると、絶縁基材1の配列形状に相当する形状の処理面に対する表面処理を行うことができ、例えば被処理物5の表面の特定の形状の領域にのみ部分的に表面処理を施すことも可能となる。例えば図11(c)に示すように絶縁基材1をL字状に配列して反応器Rを構成し、これにより、被処理物5のL字状の領域にのみ表面処理を施すことができるものである。
【0108】
更に、図11(d)に示すように、複数の絶縁基材1を配設すると共に、このとき被処理物5との距離が異なる絶縁基材1を配設して反応器Rを構成することもできる。この場合、被処理物5と絶縁基材1との間の距離が長い部位では表面処理の度合いが、他の部位と比較して相対的に低くなり、またこの距離が短い部位では表面処理の度合いが、他の部位と比較して相対的に高くなるものであり、これにより、被処理物5に対して意図的に表面処理の度合いが高い部位や低い部位を同時に形成することができるようになる。
【0109】
しかも、上記のように複数の絶縁基材1を組み合わせて反応器Rを構成すると、絶縁基材1の増減や配置位置の変更等を行うことで、処理面積の変更、処理面の形状の変更、処理強度の変更等の、種々の設計変更を容易に行うことができるものである。
【0110】
尚、上記のように複数の絶縁基材1を組み合わせる場合には、放熱器7及びガス貯留室11は、各絶縁基材1ごとに設けても良く、また複数の絶縁基材1に対して同時にプラズマ生成用ガスGを供給し、或いは各絶縁基材1の放熱を同時に行うための、一つの放熱器7及びガス貯留室11を設けても良い。
【0111】
上記のように複数の絶縁基材1を組み合わせて反応器Rを形成した場合、各絶縁基材1には同じ電源6から給電するのが好ましい。例えば、図16(a)に示すように、一枚の絶縁基材1A及び電源6AからなるユニットAと一枚の絶縁基材1B及び電源6BとからなるユニットBとを備えて反応器Rを形成した場合、ユニットAの絶縁基材1Aには電源6Aから給電して電極3,4間に印加し、ユニットBの絶縁基材1Bには電源6Bから給電して電極3,4間に印加するが、ユニットAの電源6Aで発生させる高周波の電圧と、ユニットBの電源6Bで発生させる高周波の電圧との同期を同一にするのは難しく、図16(b)に示すように、多少位相のずれが生じることがあり、この結果、電源6Aで発生した電圧と電源6Bで発生した電圧とが干渉し合って、所望の波形の電圧を給電することができない恐れがある。
【0112】
そこで、本発明では図17に示すように、複数の絶縁基材1に対して同じ高周波電源等の電源6から給電するのが好ましい。図17に示す例では、一つの電源6に対して複数個のトランス32a、32b、32cを並列に電気的に接続すると共に各トランス32a、32b、32cのそれぞれに複数枚の絶縁基材1を並列に電気的に接続したものである。そして、この反応器Rでは各絶縁基材1に給電する電圧の位相が互いにずれないようにすることができ、各絶縁基材1に給電する電圧の干渉し合うのを防止して所望の波形の電圧を給電することができるものである。
【0113】
また、本発明では、特に貫通孔2におけるプラズマ生成用ガスGの流通方向と平行な方向に複数の電極3,4を並べて設けると、放電空間に高密度のストリーマ放電を発生させることにより、放電発生のための印加電力を増加させることなく、ガス流中の活性種の密度を増加させて表面処理の能力を高めることができる。これにより、活性種を含むプラズマ生成用ガスGのガス流を被処理物5に供給する時間を長くせずに表面処理の能力を高めているので、一つの被処理物5の表面処理にかかる時間が長くならないようにすることができ、生産性が低下しないようにすることができるものである。
【0114】
またこのように被処理物5に吹き付けられるプラズマ生成用ガスG中の活性種の密度が増加されて表面処理の能力が高められているために、ガス吹出口2bと被処理物5の表面との間の距離を短くする必要がなくなるものであり、これにより放電場からの被処理物5へのアークの発生が抑制されて、アークによる被処理物5の損傷が防止される。またこのようにアークの発生を抑制することができることから、ガス吹出口2bと被処理物5との間に放電発生防止用の金属メッシュ等を介在させる必要がなく、このような金属メッシュ等によりプラズマ生成用ガスGのガス流が遮られることによる表面処理能力の低下を防止することができる。更には、電極3,4等の金属が腐食して酸化物(錆)が飛散し被処理物5を汚すという問題も発生しないものである。
【0115】
本発明は、種々の被処理物5に対する表面処理に適用することができるが、特に液晶用ガラス材、プラズマディスプレイ用ガラス材、有機エレクトロルミネッセンス表示装置用ガラス材等の、種々のフラットパネルディスプレイ用ガラス材や、プリント配線基板、ポリイミドフィルム等の各種樹脂フィルムなどの表面処理に適用することができる。これらの被処理物5、特に液晶用ガラス材等のフラットパネルディスプレイ用ガラス材は、順次大型化が進展しており、このため大面積の均一な処理が可能であり、且つ処理面積等の設計変更が容易な本発明に係るプラズマ処理装置やプラズマ処理方法を、好適に適用することができる。このようなガラス材に対する表面処理を行う場合には、このガラス材に、ITO(インジウム・チン・オキサイド)からなる透明電極や、TFT(薄膜トランジスタ)液晶を設けたもの、或いはCF(カラーフィルタ)を設けたものなども、表面処理に供することができる。また、樹脂フィルムに対して表面処理を施す場合には、いわゆるロール・トゥ・ロール方式で搬送されている樹脂フィルムに対して、連続的に表面処理を施すことができる。
【0116】
また、本発明は、以下の構成のプラズマ処理装置を含む:
複数のスルーホール(貫通孔2)を有する一対の電極板(電極3、4);
複数のスルーホールを有する絶縁板(絶縁基材1)、前記絶縁板は、前記電極板のスルーホールの位置が絶縁板のスルーホールの位置に一致するように前記一対の電極板間に配置される;
前記一対の電極板のスルーホールと前記絶縁板のスルーホールによって形成される複数の放電空間内にプラズマ生成用ガスGを供給するガス供給手段;
前記電極板間に電圧を印加して前記放電空間内に同時に前記ガスのプラズマを生成するための電圧印加手段(電源6)。
【0117】
さらに、本発明は、以下の構成のプラズマ処理装置を含む:
一対の電極3、4と、前記電極3、4間に配置される絶縁板(絶縁基材1)を含む筒状容器(ガス貯留室11)と、
前記筒状容器の一端からプラズマ生成用ガスGを供給するガス供給手段と、
前記電極3、4間に電圧を印加して前記筒状容器内に前記ガスのプラズマを生成する電圧印加手段を具備し、
前記筒状容器の他端から放出される前記プラズマで被処理物を表面処理するプラズマ処理装置であって、
しかるに、前記電極3、4は複数のスルーホール(貫通孔2)を有する一対の電極板でなり、前記絶縁板は複数のスルーホールを有し、前記筒状容器内には、前記一対の電極板のスルーホールと前記絶縁板のスルーホールによって形成される複数の放電空間が設けられ、前記電極3、4間に電圧を印加して前記放電空間に同時に生成された複数のプラズマが前記筒状容器の他端から放出される。
【実施例】
【0118】
以下本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0119】
(実施例1)
第1のシート材(厚み0.4mm)の一面に導電体膜を印刷成形し、この導電体膜の上面に更に第2のシート材(厚み1.4mm)を積層して配置し、この第2のシート材の一面には導電体膜を印刷成形し、この導電体膜の上面には第3のシート材(厚み1.4mm)を積層して配置した。
【0120】
このとき、第1〜第3のシート材は、アルミナ粉末を含む混合材料をシート状に成形することで形成し、また各シート材には、直径1mmの開口を形成して、この各開口の位置が合致するように積層した。
【0121】
また導電体膜は、タングステン層を印刷成形することで形成し、上記シート材の開口よりも大きい直径3mmの開口8がシート材の開口を囲むように配されたパターン状に形成した。
【0122】
このように形成された積層体を加熱焼成することで、図2に示す平面視形状と断面形状を有する反応器Rを作製した。
【0123】
このとき、絶縁基材1は直径1mmの55個の貫通孔2を具備すると共に厚み3.2mmに形成され、またこれら55個の各貫通孔2は平面視45×22mmの範囲の領域にわたり、隣り合う貫通孔2同士の間隔が4.5mmとなるように配置されるようにした。
【0124】
また、電極3,4は厚み30μmの上下二層のタングステン導電体層にて形成され、各貫通孔2の周囲を電極3,4の開口8が取り囲むように設置されるようにした。また上下一対の電極3,4の間隔(放電面の間隔)は1.4mmとした。またこの電極3,4の開口8は直径3mmに形成され、貫通孔2の内面には露出させず、電極3,4の開口8と、貫通孔2の内面との間には、絶縁基材1を構成する絶縁材料(誘電材料)による厚み1mmの絶縁被覆を形成されるようにした。また上部の電極4は電源6に接続し、下部の電極3は接地した。
【0125】
この絶縁基材1の上部には、図4に示すような銅製の放熱器7が設けられたガス貯留室11を設置し、プラズマ生成用ガスGはガス貯留室11の上部の流入口10から導入され、絶縁基材1の貫通孔2へ流入するように形成した。放熱器7に設けられた通水路7cには冷却水を循環させ、絶縁基材1の過度の加熱を防止するようにした。
【0126】
(参考例1)
第1のシート材(厚み0.7mm)の一面に導電体膜を印刷成形し、この導電体膜の上面に更に第2のシート材(厚み1.5mm)を積層して配置した。
【0127】
このとき、第1,第2のシート材は、実施例1の場合と同様の含アルミナ混合材料をシート状に成形することで形成し、また各シート材には、平面視の幅1mm、長さ22mmのスリット状の開口を複数形成して、この各開口の位置が合致するように積層した。
【0128】
また導電体膜は、実施例1と同様のタングステン導電体層を印刷成形することで形成し、図6(b)に示すような櫛形のパターン状に形成した。
【0129】
このように形成された積層体を加熱焼成することで、図6に示す構成を有する反応器Rを作製した。
【0130】
このとき、絶縁基材1は平面視の幅1mm、長さ22mmのスリット状の11個の貫通孔2を具備すると共に厚み2.2mmに形成され、またこれら各貫通孔2は平面視45×22mmの範囲の領域にわたり、隣り合う貫通孔2同士の間隔が3.5mmとなるように配置されるようにした。
【0131】
また、電極3,4は絶縁基材1内の同一層内に厚み100μmに形成され、各貫通孔2の一側に一方の電極4が、他側に他方の電極4が配置されるようにした。また一対の電極3,4の間隔(放電面の間隔)は2mmとなるようにした。このため、この電極3,4は貫通孔2の内面には露出せず、電極3,4の端縁(放電面)と、貫通孔2の内面との間には、絶縁基材1を構成する絶縁材料(誘電材料)による厚み0.5mmの絶縁被覆を形成されるようにした。また一方の電極4は電源6に接続し、他方の電極3は接地した。
【0132】
この絶縁基材1の上部には、図6に示すような窒化アルミニウム製の放熱器7が設けられたガス貯留室11を設置し、プラズマ生成用ガスGはガス貯留室11の上部の流入口10から導入され、絶縁基材1の貫通孔2へ流入するように形成した。放熱器7に設けられた通水路7cには冷却水を循環させ、絶縁基材1の過度の加熱を防止するようにした。
【0133】
(実施例2)
電極3,4の開口8の内径と貫通孔2の内径とを共に1mmの寸法に形成して、開口8の内面を貫通孔2の内面で露出するように形成した(図5参照)。これ以外は実施例1と同様にしてプラズマ処理装置を形成した。
【0134】
(比較例1)
図18に断面を示す矩形筒状の反応容器21を装備したプラズマ処理装置を使用した。反応容器21は肉厚1mmの石英ガラス製であり、また、反応容器21内の空間に形成される放電発生部22の狭小側の内寸(反応容器21の両端のガス導入口22aとガス吹出口22bのスリット幅と同じであり、放電スリット幅という)は1mmとした。さらに、反応容器21の幅広側は45mmとした。電極23,24はその下面がガス吹出口22bから5mm上流側に位置するようにした。
【0135】
一対の電極23,24は銅製でその表面に金メッキ処理を行った。電極23,24は反応容器21の幅広側に反応容器21を挟みこむように設置した。電極23,24の内部の冷却水循環路27には冷却水を循環させ、電極23,24を冷却した。図面における左側の電極23は電源6に接続し、右側の電極24は接地した。
【0136】
(評価1)
上記のようなプラズマ処理装置を用いて、大気圧下で窒素10リットル/分、酸素0.02リットル/分のプラズマ生成用ガスGを装置に導入し、電源6により電極3,4(23,24)間に図7に示す休止区間を有するパルス状波形を有する6kHz、13kV、デューティー比50%の電圧を印加し、活性種を含むプラズマ生成用ガスGのガス流を、100mm/sで搬送された被処理物5の表面に吹き付ける(噴射する)ことにより表面処理を行った。被処理物5としては液晶用の素ガラスを用い、ガス吹出口2b(22b)と被処理物5との距離は5mmとした。液晶用素ガラスにおける処理前の水接触角は68°である。
【0137】
実施例1、参考例1及び比較例1について表面処理後の被処理物5の水接触角を測定した。これらの結果を表1に示す。
【0138】
【表1】
表1に示すように実施例1及び参考例1では水接触角が大きく低下し、特に実施例1では水接触角の低下が著しいことがわかる。これに対し、比較例1では水接触角がほとんど変化しなかった。よって、実施例1,参考例1は比較例1よりも表面処理能力が高いと言える。
【0139】
(評価2)
実施例1及び比較例1について、電極3,4(23,24)間に印加する電圧の波形を、図8に示す休止区間を有するパルス状波形を有する6kHz、13kV、デューティー比5%の電圧に変更した以外は、評価1と同様にして被処理物5の表面処理を行った。
【0140】
このとき、被処理物5の水接触角が10°以下となるまで繰り返し表面処理を行った。
【0141】
実施例1,参考例1及び比較例1について、被処理物5の水接触角が10°以下になるまでに要した処理回数を表2に示す。
【0142】
【表2】
表2に示すように実施例1,参考例1では1回の処理により水接触角が10°以下となったが、比較例1では水接触角が10°以下になるまで7回の処理を要し、実施例1,参考例1では比較例1よりも迅速な表面処理が可能であるといえる。
【0143】
(評価3)
実施例2について、大気圧下で窒素10リットル/分、酸素0.02リットル/分のプラズマ生成用ガスGを装置に導入し、電源6により電極3,4(23,24)間に図7に示す休止区間を有するパルス状波形を有する6kHz、デューティー比50%の電圧を印加し、活性種を含むプラズマ生成用ガスGのガス流を、100mm/sで搬送された被処理物5の表面に吹き付ける(噴射する)ことにより表面処理を行った。このとき印加電圧を8kV、9kV、10kVと変化させて、それぞれの場合について、表面処理を行った。被処理物5としては液晶用の素ガラスを用い、ガス吹出口2bと被処理物5との距離は5mmとした。液晶用素ガラスにおける処理前の水接触角は68°である。
【0144】
処理後の被処理物5の水接触角の測定結果を、表3に示す。
【0145】
【表3】
表3に示すように、実施例2においても、処理後の被処理物5の水接触角の低減量が大きく、処理効率が高いものであり、また印加電圧を上昇させることにより、水接触角を更に低減することができた。但し、印加電圧を10kVとすると、放電が安定しなくなり、表面処理を行うことができなくなった。
【0146】
(評価4)
実施例1について、大気圧下で窒素10リットル/分、乾燥空気0.1リットル/分のプラズマ生成用ガスGを装置に導入し、中点接地型電源6A、6Bにより電極3,4間に図9に示す休止区間を有するパルス状波形を有する12kHz、デューティー比30%の電圧を印加し、活性種を含むプラズマ生成用ガスGのガス流を、50mm/sで搬送された被処理物5の表面に吹き付ける(噴射する)ことにより表面処理を行った。被処理物5としてはプリント基板用の樹脂フィルムを用い、ガス吹出口2bと被処理物5との距離は5mmとした。被処理物5はプラズマ処理後に、その表面にめっき処理を行い、その付着強度を測定した。その測定結果を表4に示す。
【0147】
【表4】
表4に示すように、実施例1におけるプラズマ処理は、被処理物5のメッキの付着強度が大きく増加させ、表面処理効率が高いものであり、めっきの信頼性を向上させることができた。
【符号の説明】
【0148】
R 反応器
1 絶縁基材
2 貫通孔
3 電極
4 電極
5 被処理物
30 欠損部分
G プラズマ生成用ガス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ生成用ガスを放電により活性化させ、この活性化されたプラズマ生成用ガスを被処理物に吹き付けるプラズマ処理装置において、一端側の開口からプラズマ生成用ガスが流入すると共に他端側の開口から活性化されたプラズマ生成用ガスが流出する複数の貫通孔と、各貫通孔内でそれぞれ放電を発生させるための一対の電極とが設けられた平板状の絶縁基材からなる反応器を具備し、上記一対の電極は層状に形成されて上記貫通孔におけるプラズマ生成用ガスの流通方向で対向して両方とも絶縁基材に埋設され、上記貫通孔におけるプラズマ生成用ガスの流通方向において下流側の電極の周端部を上流側の電極の周端部よりも外側に突出させて成ることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
電極が貫通孔内に露出されていることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
電極が貫通孔で露出されていないことを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
隣り合う電極の間隔が0.01〜5mmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
貫通孔の開口形状が直径0.01〜15mmの円形状であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
貫通孔の開口形状が短手寸法0.01〜15mmのスリット状であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
貫通孔に合致する位置において電極に開口を形成し、隣り合う開口の間において電極に欠損部分が無いことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
絶縁基材がセラミックスにて形成されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
絶縁基材がアルミナにて形成されていることを特徴とする請求項8に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
休止区間を持つパルス状の電圧を電極に印加する電源を具備することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
周波数が1Hz〜200kHzの電圧を電極に印加する電源を具備することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
デューティー比が0.01〜80%のパルス状の電圧を電極に印加する電源を具備することを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項13】
一対の電極を中点接地して成ることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項14】
反応器に対して、希ガス、窒素、酸素、空気の少なくとも一つを含有するガス、またはこれらの二種以上の混合ガスを、プラズマ生成用ガスとして供給するガス供給手段を具備することを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項15】
絶縁基材を冷却する放熱器を具備することを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項16】
二次電子が放出されやすい温度に絶縁基材を温度調整するための温度調整手段を用いて成ることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項17】
全ての貫通孔に対してプラズマ生成用ガスをほぼ均一な流速で供給するためのガス均一化手段を設けて成ることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項18】
反応器を複数の絶縁基材を組み合わせて形成して成ることを特徴とする請求項1乃至17のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項19】
請求項1乃至18のいずれかに記載のプラズマ処理装置を用い、複数の各貫通孔の一端側から他端側へプラズマ生成用ガスを流通させると共に電極に電圧を印加して各貫通孔内で放電を発生させることにより、貫通孔内でプラズマを発生させてプラズマ生成用ガスを活性化させ、この活性化されたプラズマ生成用ガスを各貫通孔の他端側から被処理物の表面に噴射することを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項20】
被処理物が、フラットパネルディスプレイ用ガラス材、プリント配線基板又は樹脂フィルムであることを特徴とする請求項19に記載のプラズマ処理方法。
【請求項1】
プラズマ生成用ガスを放電により活性化させ、この活性化されたプラズマ生成用ガスを被処理物に吹き付けるプラズマ処理装置において、一端側の開口からプラズマ生成用ガスが流入すると共に他端側の開口から活性化されたプラズマ生成用ガスが流出する複数の貫通孔と、各貫通孔内でそれぞれ放電を発生させるための一対の電極とが設けられた平板状の絶縁基材からなる反応器を具備し、上記一対の電極は層状に形成されて上記貫通孔におけるプラズマ生成用ガスの流通方向で対向して両方とも絶縁基材に埋設され、上記貫通孔におけるプラズマ生成用ガスの流通方向において下流側の電極の周端部を上流側の電極の周端部よりも外側に突出させて成ることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
電極が貫通孔内に露出されていることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
電極が貫通孔で露出されていないことを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
隣り合う電極の間隔が0.01〜5mmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
貫通孔の開口形状が直径0.01〜15mmの円形状であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
貫通孔の開口形状が短手寸法0.01〜15mmのスリット状であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
貫通孔に合致する位置において電極に開口を形成し、隣り合う開口の間において電極に欠損部分が無いことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
絶縁基材がセラミックスにて形成されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
絶縁基材がアルミナにて形成されていることを特徴とする請求項8に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
休止区間を持つパルス状の電圧を電極に印加する電源を具備することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
周波数が1Hz〜200kHzの電圧を電極に印加する電源を具備することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
デューティー比が0.01〜80%のパルス状の電圧を電極に印加する電源を具備することを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項13】
一対の電極を中点接地して成ることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項14】
反応器に対して、希ガス、窒素、酸素、空気の少なくとも一つを含有するガス、またはこれらの二種以上の混合ガスを、プラズマ生成用ガスとして供給するガス供給手段を具備することを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項15】
絶縁基材を冷却する放熱器を具備することを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項16】
二次電子が放出されやすい温度に絶縁基材を温度調整するための温度調整手段を用いて成ることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項17】
全ての貫通孔に対してプラズマ生成用ガスをほぼ均一な流速で供給するためのガス均一化手段を設けて成ることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項18】
反応器を複数の絶縁基材を組み合わせて形成して成ることを特徴とする請求項1乃至17のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項19】
請求項1乃至18のいずれかに記載のプラズマ処理装置を用い、複数の各貫通孔の一端側から他端側へプラズマ生成用ガスを流通させると共に電極に電圧を印加して各貫通孔内で放電を発生させることにより、貫通孔内でプラズマを発生させてプラズマ生成用ガスを活性化させ、この活性化されたプラズマ生成用ガスを各貫通孔の他端側から被処理物の表面に噴射することを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項20】
被処理物が、フラットパネルディスプレイ用ガラス材、プリント配線基板又は樹脂フィルムであることを特徴とする請求項19に記載のプラズマ処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2010−50106(P2010−50106A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266165(P2009−266165)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【分割の表示】特願2004−155209(P2004−155209)の分割
【原出願日】平成16年5月25日(2004.5.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【分割の表示】特願2004−155209(P2004−155209)の分割
【原出願日】平成16年5月25日(2004.5.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
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