説明

ヘテロ接合電界効果トランジスタ、その製造方法

【課題】ゲート電極下の電子の走行方向が基板表面に略平行であるようにデバイス構造を改良しながらも各種弊害を解消したヘテロ接合電界効果トランジスタを提供する。
【解決手段】n型導電層は選択的にイオン注入されているシリコン(Si)などのn型不純物をアニール処理で活性化することにより形成されており、n型導電層は、イオンが200keV以上の加速エネルギーで注入されており、p型窒化物半導体層より深く、かつドレイン電極114と導通する半導体層にまで注入イオンが達する選択的イオン注入によって形成されており、n型導電層とn型不純物が注入されていないチャネル領域との接続部115に注入されているn型不純物濃度が1×1018cm−3以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリアであるゲート電極下の電子の走行方向が基板表面に略平行である窒化物半導体電界効果トランジスタであるヘテロ接合電界効果トランジスタ、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化物半導体FET構造において、従来、動作電圧・耐圧を高くするためゲート−ドレイン間距離(Lgd)を広げる方法が取られていた。例えば、カネコらは、ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(Japanese Journal of Applied Physics, Vol.43, No.7A,pp.L831-L833)にて、高電圧動作が可能なAlGaN/GaNヘテロ接合FETについて報告している。
【0003】
彼らは、Si(111)基板上に、AlN層、GaN/AlN超格子層、膜厚1μmのGaN層、AlGaN層を積層後ソース電極、ドレイン電極としてTi/Alを積層し650度10分の熱処理を行った。
【0004】
さらに、SiOx膜を積層後、ゲート形成部を開口しNi/Auからなるゲート電極を形成、SiNx保護膜を積層後、メッキ部を開口し最後に電極部に金メッキ部を形成することで作製した。
【0005】
この構造で、ソース電極、ドレイン電極間距離は16μmとなっている。このように、ソース電極、ドレイン電極間距離を大きくすることで、破壊耐圧として350V以上が可能となり高耐圧FETを得ることが出来た。
【0006】
しかしながら、上記技術のように、ソース電極−ドレイン電極間距離(Lsd)を大きくしても表面(SiN膜との界面)の影響で電界分布が不均一になるため、結局ゲート電極のドレイン端に電界が集中することになり、GaNの物性値から期待されるほど高耐圧化できないという問題があった。
【0007】
一方で、所望の耐圧を得るためには従来技術のように、例えば、Lsdを15μm以上の大きな値にする必要がありチップサイズが大きくなってしまうという問題があった。そこで、窒化物半導体FET構造において、動作電圧・耐圧を高く維持したまま、上記の課題を解決するために、縦型のトランジスタ構造が提案されている。
【0008】
例えば、カネチカらは、ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(Japanese Journal of Applied Physics, Vol.46, No.21,2007,pp.L503-L505)にて、電子が基板に対して縦に走行するアパーチャーを備えた、縦型AlGaN/GaNヘテロ接合FETについて報告している。
【0009】
図14はカネチカらにより報告された電界効果トランジスタの断面構造図である。図示するように、n−GaN基板1001上にSiを添加したn−GaN層1002、Mgを添加したp−GaN層1003、AlN層1004、i−GaN層1005を積層後、SiOをマスクにアパーチャー部のMgを添加したp−GaN層1003、AlN層1004、i−GaN層1005およびn−GaN層1002の一部をドライエッチングにより除去し、SiOマスクを除去した後、Siを添加したn−GaN層1006、i−AlGaN層1007を再成長する。
【0010】
つぎに、オーミック・コンタクト領域にSiイオンを注入し活性化アニールを行った後、オーミック電極1008を形成。つぎに、SiO膜1009を成膜した後、n−poly Siからなるゲート電極1010を形成し、活性化アニールを行うことで作製された。
【0011】
このように、アパーチャー部を介して基板裏面に向け縦に電流を流す構造とすることで、表面の影響を受けないことから電界分布が均一となり、GaNの絶縁破壊耐圧の物性値(3MV/cm)まで高耐圧化が期待できる。
【0012】
現在、上述のようなヘテロ接合電界効果トランジスタとして各種の提案がある(例えば、特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2000−174285号公報
【特許文献2】特開2006−269939号公報
【特許文献3】特開2008−235613号公報
【特許文献4】特開2008−270310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上述の技術にも課題があった。上記縦型構造のように半導体の一部を除去し、再成長により実際に電子が走行する上層を成膜すると、再成長界面の不純物が取りきれないこと、再成長された半導体の結晶性が元の半導体結晶より悪いこと、電流コラプスが大きくなること、電子の移動度が低下すること、という問題があった。
【0015】
また、再成長したGaN層にはSiを添加してn型にする必要があり、理想的に結晶が再成長されても移動度は低くなるという問題もある。移動度が低いことに起因して、オン抵抗の低減も困難になるという問題もあった。
【0016】
上記の窒化物半導体電界効果トランジスタの課題を解決するためには、電子をキャリアとするのであるが、ゲート電極下の電子の走行方向が基板表面に略平行であるよう、デバイス構造を改良する必要がある。
【0017】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、ゲート電極下の電子の走行方向が基板表面に略平行であるようにデバイス構造を改良しながらも各種弊害を解消したヘテロ接合電界効果トランジスタ、その製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の第一のヘテロ接合電界効果トランジスタは、キャリアであるゲート電極下の電子の走行方向が基板表面に略平行である窒化物半導体電界効果トランジスタであり、ゲート絶縁膜を介するなどしてゲート電極と接する第一半導体層と、ドレイン電極と導通する第二半導体層またはドレイン電極とが、p型窒化物半導体層を挟んで相対しており、p型窒化物半導体層とソース電極またはゲート電極との間に、少なくともキャリア走行層とキャリア走行層より電子親和力の小さい第三半導体層とが位置しており、少なくとも半導体層のヘテロ接合界面の一つにおいて二次元電子ガスが形成されており、これをチャネルとするヘテロ接合電界効果トランジスタであって、ゲート電極に対してソース電極の反対側に、ゲート絶縁膜を介するなどしてゲート電極と接する第一半導体層と、ドレイン電極と導通された半導体層の間で導通経路を形成するn型導電層と、を備えており、そのn型導電層は選択的にイオン注入されているn型不純物をアニール処理で活性化することにより形成されており、n型導電層は、イオンが200keV以上の加速エネルギーで注入されており、p型窒化物半導体層より深く、かつ第二半導体層にまで注入イオンが達する選択的イオン注入によって形成されており、n型導電層とn型不純物が注入されていないチャネル領域との接続部に注入されているn型不純物濃度が1×1018cm−3以下であること、を特徴とする。
【0019】
本発明の第二のヘテロ接合電界効果トランジスタは、キャリアであるゲート電極下の電子の走行方向が基板表面に略平行である窒化物半導体電界効果トランジスタであり、ゲート絶縁膜を介するなどしてゲート電極と接する第一半導体層と、ドレイン電極と導通する第二半導体層またはドレイン電極とが、p型窒化物半導体層を挟んで相対しており、p型窒化物半導体層とソース電極またはゲート電極との間に、少なくともキャリア走行層とキャリア走行層より電子親和力の小さい第三半導体層とが位置しており、少なくとも半導体層のヘテロ接合界面の一つにおいて二次元電子ガスが形成されており、これをチャネルとするヘテロ接合電界効果トランジスタであって、ゲート電極に対してソース電極の反対側に、ゲート絶縁膜を介するなどしてゲート電極と接する第一半導体層と、ドレイン電極と導通された半導体層の間で導通経路を形成するn型導電層と、を備えており、そのn型導電層は選択的にイオン注入されているn型不純物をアニール処理で活性化することにより形成されており、n型導電層は、イオンが200keV以上の加速エネルギーで注入されており、p型窒化物半導体層より深く、かつ第二半導体層にまで注入イオンが達する選択的イオン注入によって形成されており、n型導電層とn型不純物が注入されていないチャネル領域との接続部において、注入されているn型不純物濃度が1×1020cm−3以上であるか、または、イオン化されているn型不純物濃度が1×1019cm−3以上であること、を特徴とする。
【0020】
本発明の第三のヘテロ接合電界効果トランジスタは、キャリアであるゲート電極下の電子の走行方向が基板表面に略平行である窒化物半導体電界効果トランジスタであり、ゲート絶縁膜を介するなどしてゲート電極と接する第一半導体層と、ドレイン電極と導通する第二半導体層またはドレイン電極とが、p型窒化物半導体層を挟んで相対しており、p型窒化物半導体層とソース電極またはゲート電極との間に、少なくともキャリア走行層とキャリア走行層より電子親和力の小さい第三半導体層とが位置しており、少なくとも半導体層のヘテロ接合界面の一つにおいて二次元電子ガスが形成されており、これをチャネルとするヘテロ接合電界効果トランジスタであって、ゲート電極に対してソース電極の反対側に、ゲート絶縁膜を介するなどしてゲート電極と接する第一半導体層と、ドレイン電極と導通された半導体層の間で導通経路を形成するn型導電層と、を備えており、そのn型導電層は選択的にイオン注入されているn型不純物をアニール処理で活性化することにより形成されており、n型導電層は、イオンが10keV以上200keV未満の第一の加速エネルギーで加速して注入されており、半導体へテロ界面より深く注入イオンが達する第一のイオン注入と、併せて、イオンが200keV以上の第二の加速エネルギーで注入されており、p型窒化物半導体層より深く、かつ第二半導体層にまで注入イオンが達する第二のイオン注入によって選択的に形成されており、n型導電層とn型不純物が注入されていないチャネル領域との接続部は、第二のイオン注入は施されておらず、第一のイオン注入だけが施されているが、しかし、接続部において、注入されているn型不純物濃度が1×1020cm−3以上であるか、または、イオン化されているn型不純物濃度が1×1019cm−3以上であること、を特徴とする。
【0021】
本発明の第四のヘテロ接合電界効果トランジスタは、キャリアであるゲート電極下の電子の走行方向が基板表面に略平行である窒化物半導体電界効果トランジスタであり、ゲート絶縁膜を介するなどしてゲート電極と接する第一半導体層と、ドレイン電極と導通する第二半導体層またはドレイン電極とが、p型窒化物半導体層を挟んで相対しており、p型窒化物半導体層とソース電極またはゲート電極との間に、少なくともキャリア走行層とキャリア走行層より電子親和力の小さい第三半導体層とが位置しており、少なくとも半導体層のヘテロ接合界面の一つにおいて二次元電子ガスが形成されており、これをチャネルとするヘテロ接合電界効果トランジスタであって、ゲート電極に対してソース電極の反対側に、ゲート絶縁膜を介するなどしてゲート電極と接する第一半導体層と、ドレイン電極と導通された半導体層の間で導通経路を形成するn型導電層と、を備えており、そのn型導電層は選択的にイオン注入されているn型不純物をアニール処理で活性化することにより形成されており、そのn型導電層は、イオン注入領域と側面および底面が接するトレンチ構造を有しており、n型導電層は、注入イオンの投影飛程Di(μm)がトレンチ深さDt(μm)より長くなるような加速エネルギーのイオン注入で形成されており(Di>Dt)、かつ、p型窒化物半導体層より深く第二半導体層にまで注入イオンが達しており、n型導電層とn型不純物が注入されていないチャネル領域との接続部に注入されているn型不純物濃度が1×1018cm−3以下であること、を特徴とする。
【0022】
本発明の第五のヘテロ接合電界効果トランジスタは、キャリアであるゲート電極下の電子の走行方向が基板表面に略平行である窒化物半導体電界効果トランジスタであり、ゲート絶縁膜を介するなどしてゲート電極と接する第一半導体層と、ドレイン電極と導通する第二半導体層またはドレイン電極とが、p型窒化物半導体層を挟んで相対しており、p型窒化物半導体層とソース電極またはゲート電極との間に、少なくともキャリア走行層とキャリア走行層より電子親和力の小さい第三半導体層とが位置しており、少なくとも半導体層のヘテロ接合界面の一つにおいて二次元電子ガスが形成されており、これをチャネルとするヘテロ接合電界効果トランジスタであって、ゲート電極に対してソース電極の反対側に、ゲート絶縁膜を介するなどしてゲート電極と接する第一半導体層と、ドレイン電極と導通された半導体層の間で導通経路を形成するn型導電層と、を備えており、そのn型導電層は選択的にイオン注入されているn型不純物をアニール処理で活性化することにより形成されており、そのn型導電層は、イオン注入領域と側面および底面が接するトレンチ構造を有しており、n型導電層は、注入イオンの投影飛程Di(μm)がトレンチ深さDt(μm)より長くなるような加速エネルギーのイオン注入で形成されており(Di>Dt)、かつ、p型窒化物半導体層より深く第二半導体層にまで注入イオンが達しており、n型導電層とn型不純物が注入されていないチャネル領域との接続部において、注入されているn型不純物濃度が1×1020cm−3以上であるか、または、イオン化されているn型不純物濃度が1×1019cm−3以上であること、を特徴とする。
【0023】
本発明の第六のヘテロ接合電界効果トランジスタは、キャリアであるゲート電極下の電子の走行方向が基板表面に略平行である窒化物半導体電界効果トランジスタであり、ゲート絶縁膜を介するなどしてゲート電極と接する第一半導体層と、ドレイン電極と導通する第二半導体層またはドレイン電極とが、p型窒化物半導体層を挟んで相対しており、p型窒化物半導体層とソース電極またはゲート電極との間に、少なくともキャリア走行層とキャリア走行層より電子親和力の小さい第三半導体層とが位置しており、少なくとも半導体層のヘテロ接合界面の一つにおいて二次元電子ガスが形成されており、これをチャネルとするヘテロ接合電界効果トランジスタであって、ゲート電極に対してソース電極の反対側に、ゲート絶縁膜を介するなどしてゲート電極と接する第一半導体層と、ドレイン電極と導通された半導体層の間で導通経路を形成するn型導電層と、を備えており、そのn型導電層は選択的にイオン注入されているn型不純物をアニール処理で活性化することにより形成されており、そのn型導電層は、イオン注入領域と側面および底面が接するトレンチ構造を有しており、n型導電層は、イオンが第一の加速エネルギーで加速して注入されており、半導体へテロ界面より深く注入イオンが達する第一のイオン注入と、併せて、イオンが第二の加速エネルギーで注入されており、p型窒化物半導体層より深く、かつ第二半導体層にまで注入イオンが達する第二のイオン注入によって選択的に形成されており、第一および第二のイオン注入領域は、互いにオーバーラップした領域を有しており、n型導電層とn型不純物が注入されていないチャネル領域との接続部において、注入されているn型不純物濃度が1×1020cm−3以上であるか、または、イオン化されているn型不純物濃度が1×1019cm−3以上であり、接続部とイオン注入領域を介してドレイン電極と導通された半導体層との間にn導通経路が形成されていること、を特徴とする。
【0024】
本発明の第一のヘテロ接合電界効果トランジスタの製造方法は、キャリアであるゲート電極下の電子の走行方向が基板表面に略平行である窒化物半導体電界効果トランジスタであり、ゲート絶縁膜を介するなどしてゲート電極と接する第一半導体層と、ドレイン電極と導通する第二半導体層またはドレイン電極とが、p型窒化物半導体層を挟んで相対しており、p型窒化物半導体層とソース電極またはゲート電極との間に、少なくともキャリア走行層とキャリア走行層より電子親和力の小さい第三半導体層とが位置しており、少なくとも半導体層のヘテロ接合界面の一つにおいて二次元電子ガスが形成されており、これをチャネルとするヘテロ接合電界効果トランジスタの製造方法であって、ゲート電極に対してソース電極の反対側に、ゲート絶縁膜を介するなどしてゲート電極と接する第一半導体層と、ドレイン電極と導通された半導体層の間で導通経路を形成するn型導電層と、を形成し、そのn型導電層は選択的にイオン注入されたn型不純物をアニール処理で活性化することにより形成し、n型導電層は、イオンを200keV以上の加速エネルギーで注入し、p型窒化物半導体層より深く、かつ第二半導体層にまで注入イオンが達する選択的イオン注入によって形成し、n型導電層とn型不純物が注入されないチャネル領域との接続部に注入されたn型不純物濃度を1×1018cm−3以下とする、を特徴とする。
【0025】
本発明の第二のヘテロ接合電界効果トランジスタの製造方法は、キャリアであるゲート電極下の電子の走行方向が基板表面に略平行である窒化物半導体電界効果トランジスタであり、ゲート絶縁膜を介するなどしてゲート電極と接する第一半導体層と、ドレイン電極と導通する第二半導体層またはドレイン電極とが、p型窒化物半導体層を挟んで相対しており、p型窒化物半導体層とソース電極またはゲート電極との間に、少なくともキャリア走行層とキャリア走行層より電子親和力の小さい第三半導体層とが位置しており、少なくとも半導体層のヘテロ接合界面の一つにおいて二次元電子ガスが形成されており、これをチャネルとするヘテロ接合電界効果トランジスタの製造方法であって、ゲート電極に対してソース電極の反対側に、ゲート絶縁膜を介するなどしてゲート電極と接する第一半導体層と、ドレイン電極と導通された半導体層の間で導通経路を形成するn型導電層と、を形成し、そのn型導電層は選択的にイオン注入されたn型不純物をアニール処理で活性化することにより形成し、n型導電層は、イオンを200keV以上の加速エネルギーで注入し、p型窒化物半導体層より深く、かつ第二半導体層にまで注入イオンが達する選択的イオン注入によって形成し、n型導電層とn型不純物が注入されないチャネル領域との接続部において、注入するn型不純物濃度を1×1020cm−3以上とするか、または、イオン化するn型不純物濃度を1×1019cm−3以上とすること、を特徴とする。
【0026】
本発明の第三のヘテロ接合電界効果トランジスタの製造方法は、キャリアであるゲート電極下の電子の走行方向が基板表面に略平行である窒化物半導体電界効果トランジスタであり、ゲート絶縁膜を介するなどしてゲート電極と接する第一半導体層と、ドレイン電極と導通する第二半導体層またはドレイン電極とが、p型窒化物半導体層を挟んで相対しており、p型窒化物半導体層とソース電極またはゲート電極との間に、少なくともキャリア走行層とキャリア走行層より電子親和力の小さい第三半導体層とが位置しており、少なくとも半導体層のヘテロ接合界面の一つにおいて二次元電子ガスが形成されており、これをチャネルとするヘテロ接合電界効果トランジスタの製造方法であって、ゲート電極に対してソース電極の反対側に、ゲート絶縁膜を介するなどしてゲート電極と接する第一半導体層と、ドレイン電極と導通された半導体層の間で導通経路を形成するn型導電層と、を形成し、そのn型導電層は選択的にイオン注入されたn型不純物をアニール処理で活性化することにより形成し、n型導電層は、イオンを10keV以上200keV未満の第一の加速エネルギーで加速して注入し、半導体へテロ界面より深く注入イオンが達する第一のイオン注入と、併せて、イオンを200keV以上の第二の加速エネルギーで注入し、p型窒化物半導体層より深く、かつ第二半導体層にまで注入イオンが達する第二のイオン注入によって選択的に形成し、n型導電層とn型不純物が注入されないチャネル領域との接続部は、第二のイオン注入は施さず、第一のイオン注入だけを施すが、しかし、接続部において、注入するn型不純物濃度を1×1020cm−3以上とするか、または、イオン化するn型不純物濃度を1×1019cm−3以上とすること、を特徴とする。
【0027】
本発明の第四のヘテロ接合電界効果トランジスタの製造方法は、キャリアであるゲート電極下の電子の走行方向が基板表面に略平行である窒化物半導体電界効果トランジスタであり、ゲート絶縁膜を介するなどしてゲート電極と接する第一半導体層と、ドレイン電極と導通する第二半導体層またはドレイン電極とが、p型窒化物半導体層を挟んで相対しており、p型窒化物半導体層とソース電極またはゲート電極との間に、少なくともキャリア走行層とキャリア走行層より電子親和力の小さい第三半導体層とが位置しており、少なくとも半導体層のヘテロ接合界面の一つにおいて二次元電子ガスが形成されており、これをチャネルとするヘテロ接合電界効果トランジスタの製造方法であって、ゲート電極に対してソース電極の反対側に、ゲート絶縁膜を介するなどしてゲート電極と接する第一半導体層と、ドレイン電極と導通された半導体層の間で導通経路を形成するn型導電層と、を形成し、そのn型導電層は選択的にイオン注入されたn型不純物をアニール処理で活性化することにより形成し、そのn型導電層は、イオン注入領域と側面および底面が接するトレンチ構造を形成し、n型導電層は、注入イオンの投影飛程Di(μm)がトレンチ深さDt(μm)より長くなるような加速エネルギーのイオン注入で形成し(Di>Dt)、かつ、p型窒化物半導体層より深く第二半導体層にまで注入イオンを達せさせ、n型導電層とn型不純物が注入されないチャネル領域との接続部に注入するn型不純物濃度を1×1018cm−3以下とすること、を特徴とする。
【0028】
本発明の第五のヘテロ接合電界効果トランジスタの製造方法は、キャリアであるゲート電極下の電子の走行方向が基板表面に略平行である窒化物半導体電界効果トランジスタであり、ゲート絶縁膜を介するなどしてゲート電極と接する第一半導体層と、ドレイン電極と導通する第二半導体層またはドレイン電極とが、p型窒化物半導体層を挟んで相対しており、p型窒化物半導体層とソース電極またはゲート電極との間に、少なくともキャリア走行層とキャリア走行層より電子親和力の小さい第三半導体層とが位置しており、少なくとも半導体層のヘテロ接合界面の一つにおいて二次元電子ガスが形成されており、これをチャネルとするヘテロ接合電界効果トランジスタの製造方法であって、ゲート電極に対してソース電極の反対側に、ゲート絶縁膜を介するなどしてゲート電極と接する第一半導体層と、ドレイン電極と導通された半導体層の間で導通経路を形成するn型導電層と、を形成し、そのn型導電層は選択的にイオン注入されたn型不純物をアニール処理で活性化することにより形成し、そのn型導電層は、イオン注入領域と側面および底面が接するトレンチ構造を形成し、n型導電層は、注入イオンの投影飛程Di(μm)がトレンチ深さDt(μm)より長くなるような加速エネルギーのイオン注入で形成し(Di>Dt)、かつ、p型窒化物半導体層より深く第二半導体層にまで注入イオンを達せさせ、n型導電層とn型不純物が注入されないチャネル領域との接続部において、注入するn型不純物濃度を1×1020cm−3以上とするか、または、イオン化するn型不純物濃度を1×1019cm−3以上とすること、を特徴とする。
【0029】
本発明の第六のヘテロ接合電界効果トランジスタの製造方法は、キャリアであるゲート電極下の電子の走行方向が基板表面に略平行である窒化物半導体電界効果トランジスタであり、ゲート絶縁膜を介するなどしてゲート電極と接する第一半導体層と、ドレイン電極と導通する第二半導体層またはドレイン電極とが、p型窒化物半導体層を挟んで相対しており、p型窒化物半導体層とソース電極またはゲート電極との間に、少なくともキャリア走行層とキャリア走行層より電子親和力の小さい第三半導体層とが位置しており、少なくとも半導体層のヘテロ接合界面の一つにおいて二次元電子ガスが形成されており、これをチャネルとするヘテロ接合電界効果トランジスタの製造方法であって、ゲート電極に対してソース電極の反対側に、ゲート絶縁膜を介するなどしてゲート電極と接する第一半導体層と、ドレイン電極と導通された半導体層の間で導通経路を形成するn型導電層と、を形成し、そのn型導電層は選択的にイオン注入されたn型不純物をアニール処理で活性化することにより形成し、そのn型導電層は、イオン注入領域と側面および底面が接するトレンチ構造を形成し、n型導電層は、イオンを第一の加速エネルギーで加速して注入し、半導体へテロ界面より深く注入イオンが達する第一のイオン注入と、併せて、イオンを第二の加速エネルギーで注入し、p型窒化物半導体層より深く、かつ第二半導体層にまで注入イオンが達する第二のイオン注入によって選択的に形成し、第一および第二のイオン注入領域は互いにオーバーラップさせ、n型導電層とn型不純物が注入されないチャネル領域との接続部において、注入するn型不純物濃度を1×1020cm−3以上とするか、または、イオン化するn型不純物濃度を1×1019cm−3以上とし、接続部とイオン注入領域を介してドレイン電極と導通された半導体層との間にn導通経路を形成すること、を特徴とする。
【0030】
また、本発明の各種の構成要素は、必ずしも個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等でもよい。
【0031】
また、本発明の製造方法は、複数の製造工程を順番に記載してあるが、その記載の順番は複数の製造工程を実行する順番を限定するものではない。このため、本発明の製造方法を実施するときには、その複数の製造工程の順番は内容的に支障しない範囲で変更することができる。
【0032】
さらに、本発明の製造方法は、複数の製造工程が個々に相違するタイミングで実行されることに限定されない。このため、ある製造工程の実行中に他の製造工程が発生すること、ある製造工程の実行タイミングと他の製造工程の実行タイミングとの一部ないし全部が重複していること、等でもよい。
【発明の効果】
【0033】
本発明のヘテロ接合電界効果トランジスタでは、二次元電子ガス利用による良好な高周波特性と低いオン抵抗を維持できる。また、一般に、耐圧はソース電極直下のp-型電子障壁層を介した電流経路の耐圧と電子伝導層を介した電流経路の耐圧によって決まる。
【0034】
まず、ソース電極直下のp-型電子障壁層を介した電流経路の耐圧はパンチスルーを抑制する電界緩和層とp-型電子障壁層に依存し、高耐圧化を図れるが、さらにこの基本構造に加えて、電界緩和層を設ければ、Al組成比が基板側から表面側へ徐々に低くなるように変化していることから、ピエゾ(piezo)効果および自発分極効果により伝導帯が(荷電子帯も)p-型ドープしたように真空準位に向かって凸になるように曲がるため、さらにパンチスルーしにくくでき、更なる高耐圧化が図れる。
【0035】
また、電子伝導層を介した絶縁破壊電圧は基本的にはドリフト層(電界緩和層を設けた場合にはドリフト層と電界緩和層と)で決まるが、表面(界面)の影響が無いため電界分布が均一となり、絶縁破壊耐圧のバルク値(3MV/cm)まで高耐圧化が期待でき、小さなチップサイズでも高耐圧化が実現できる。さらに、ゲート電極を介してソース電極の反対側の庇長が長くなるようにしたことから、ゲート電極近傍の電界集中も緩和することができる。
【0036】
本発明の構造では、電子伝導接続領域(チャネル・ドレイン接続領域)の形成方法としては、イオン注入されたシリコン(Si)などのn型不純物をアニール処理で活性化することにより形成する。
【0037】
活性化アニール処理は、アニールに供されるエピタキシャル多層膜試料全体を被覆するアニール保護膜(スルー膜)が形成された後に、1100℃以上1300℃未満の範囲内の温度下で実行される。
【0038】
かくして形成されたn型導電層とn型不純物が注入されないチャネル領域との接続部における接続抵抗は、前述したように現在に至るまで課題であったが、本発明では、ほぼゼロまたはデバイス動作に支障のない低いレベルに低減できるよう選択されたイオン注入条件を活用する。その条件は、実施の形態の章で後述するように、本発明に至るまでの実験的検討によって明らかになったものである。その条件とは、次の二条件のいずれかである。
【0039】
第一には、n型導電層とn型不純物が注入されないチャネル領域との接続部に注入されたn型不純物濃度が1×1018cm−3以下であることである。そもそもこの注入条件では、n型導電層とn型不純物が注入されないチャネル領域との接続部において、注入されたn型不純物濃度の絶対量が少なく、接続抵抗がほとんど増大することがない。
【0040】
第二には、n型導電層とn型不純物が注入されないチャネル領域との接続部において、注入されたn型不純物濃度が1×1020cm−3以上であるか、または、デバイス動作温度(通常室温:5℃以上35℃以下)においてイオン化したn型不純物濃度が1×1019cm−3以上であることである。
【0041】
2DEG-n型導電層の該接続部のn型導電層において、イオン化不純物濃度が少なくとも1019cm−3以上(望ましくは3×1019cm−3以上)に達すると、不純物原子の原子間隔が縮まることによって、半導体中において伝導帯の電子状態に縮退が生じ、伝導帯下端エネルギーレベルがフェルミ・レベルより低下する。
【0042】
かくなるメカニズムを用いることによって、本発明者は実験によって該ポテンシャル障壁を含めて接続部の伝導帯ポテンシャルが低減され、接続抵抗がほぼゼロまたはデバイス動作に支障のない低いレベルになることを見いだした。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の形態のヘテロ接合電界効果トランジスタの内部構造を示す模式的な縦断面図である。
【図2】技術背景を示すデバイス構造図である。
【図3】他の実施の形態のヘテロ接合電界効果トランジスタの内部構造を示す模式的な縦断面図である。
【図4】さらに他の実施の形態のヘテロ接合電界効果トランジスタの内部構造を示す模式的な縦断面図である。
【図5】さらに他の実施の形態のヘテロ接合電界効果トランジスタの内部構造を示す模式的な縦断面図である。
【図6】イオン注入条件検討用のエピタキシャル多層膜構造を示す模式的な縦断面図である。
【図7】イオン注入条件検討用エピタキシャル多層膜構造のバンド・ダイヤグラムである。
【図8】TLM評価用TEGの構造を示し、(a)は2DEG領域用、(b)はn領域用、(c)は2DEG−n接続抵抗評価用、を示す模式的な縦断面図である。
【図9】注入イオン分布のドーズ量依存性を示す特性図である。
【図10】2DEG-n+/−接続抵抗増加率を示す特性図である。
【図11】HEMT構造における伝導帯下端エネルギーのドーズ量依存性を示す特性図である。
【図12】横方向バンド図からの考察を示す特性図である。
【図13】二段注入の効果を示すバンド図である。
【図14】一従来例の電界効果トランジスタの内部構造を示す模式的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明の実施の一形態を図面を参照して以下に説明する。ただし、本実施の形態に関して前述した一従来例と同一の部分は、同一の名称を使用して詳細な説明は省略する。
【0045】
本実施の形態のヘテロ接合電界効果トランジスタは、図1に示すように、キャリアであるゲート電極112下の電子の走行方向が基板101表面に略平行である窒化物半導体電界効果トランジスタである。
【0046】
ゲート絶縁膜111を介するなどしてゲート電極112と接する半導体層と、ドレイン電極114と導通する半導体層またはドレイン電極114とが、p型窒化物半導体層であるp型電子障壁層105を挟んで相対している。
【0047】
p型電子障壁層105とソース電極109またはゲート電極112との間に、少なくともキャリア走行層とキャリア走行層より電子親和力の小さい第三半導体層とが位置している。
【0048】
本実施の形態のヘテロ接合電界効果トランジスタは、少なくとも半導体層のヘテロ接合界面(106/107界面)の一つにおいて二次元電子ガスが形成されており、これをチャネルとする。
【0049】
ただし、本実施の形態のヘテロ接合電界効果トランジスタは、ゲート電極112に対してソース電極109の反対側に、ゲート絶縁膜111を介するなどしてゲート電極112と接する半導体層と、ドレイン電極114と導通された半導体層の間で導通経路を形成するn型導電層と、を備えている。そのn型導電層は選択的にイオン注入されているシリコン(Si)などのn型不純物をアニール処理で活性化することにより形成されている。
【0050】
さらに、n型導電層は、イオンが200keV以上の加速エネルギーで注入されており、p型窒化物半導体層より深く、かつドレイン電極114と導通する半導体層にまで注入イオンが達する選択的イオン注入によって形成されている。n型導電層とn型不純物が注入されていないチャネル領域との接続部115に注入されているn型不純物濃度が1×1018cm−3以下である。
【0051】
より具体的には、図2に示すように、本実施の形態のヘテロ接合電界効果トランジスタでは、ゲート電極112がショットキー接合の場合、ゲート電極112と接する、またはゲートがMIS構造の場合、ゲート絶縁膜111を介してゲート電極112と接する半導体層である電子供給層107と、ドレイン電極114と接する半導体層である高濃度のn型コレクター層102またはドレイン電極114を、p型電子障壁層105を挟んで相対する位置に配置する。
【0052】
そして、ゲート電極112に対してソース電極109の反対側に、上記ゲート電極112と接する電子供給層107と、またはゲートがMIS構造の場合、ゲート絶縁膜111を介してゲート電極112と接する電子供給層107と、ドレイン電極114と接するn型コレクター層102間で電子を流すための電子伝導領域(チャネル・ドレイン接続領域)108を備えることが必要となってくる。
【0053】
電子伝導領域(チャネル・ドレイン接続領域)108の形成方法としては、該当する領域の半導体層を一旦除去してトレンチ構造を形成してから、電子伝導領域(チャネル・ドレイン接続領域)108にアモルファスまたは多結晶の珪素を積層後、熱処理により珪素が半導体中に拡散した領域を備える、または、電子伝導領域(チャネル・ドレイン接続領域)108に直接または隣接して金属を配する、または、電子伝導領域(チャネル・ドレイン接続領域)108に金属を積層後、熱処理により金属と半導体が相互反応した領域を備えるなどの方法があるが、これらの方法では、トレンチ構造はその底面が、少なくともチャネルを形成している半導体ヘテロ接合面(106/107界面)より深くなるよう形成する必要がある。
【0054】
実際にトレンチ構造をドライエッチングなどの方法で形成すると、そのエッチング・ダメージによって、ヘテロ接合界面(106/107界面)は、トレンチ構造付近においては原子配列が乱れ、トレンチ構造付近においては、ヘテロ接合界面(106/107界面)のチャネルとしての特性が劣化してしまい、素子のオン抵抗やアクセス抵抗が増大、またはその値が大きくばらつく場合があることがわかった。
【0055】
上記のダメージの問題を解決するには、電子伝導領域(チャネル・ドレイン接続領域)108の形成方法としては、半導体ヘテロ接合界面(106/107界面)に至るまでの深いトレンチ構造を形成しないことは有効な解決の手段の一つである。
【0056】
そして電子伝導領域(チャネル・ドレイン接続領域)108は、不純物を加速器によるイオン打ち込みの手段で注入し、熱処理によって不純物を活性化させることで形成することが有効であり、本実施の形態のデバイスの基本構造を形成している(図2)。
【0057】
上記イオン注入の手段によって電子伝導領域(チャネル・ドレイン接続領域)108を形成する方法は、本縦型トランジスタの特性の向上または安定化に寄与するだけでなく、製造工程の単純化、工程数の削減にもつながり、さらには、素子面積の縮小(すなわち素子密度の向上)という縦型構造のメリットをも引き出すものであり、今後の活用が望まれる。
【0058】
しかし、本発明者は通常の注入条件によるイオン注入では、28Siなどのイオン注入によって形成されたn型導電層からなる電子伝導領域108は、半導体ヘテロ接合界面2DEG領域(106/107界面)との接続部115においてデバイス動作上無視できぬ大きさの不要な接続抵抗成分をもち、この接続抵抗が、素子のオン抵抗やアクセス抵抗を増大させることを後述するように実験的に明らかにした。
【0059】
さらに、注入用トレンチ溝を形成しない平面構造のデバイス構造では、イオン注入の手段によって形成されるn型導電層からなる電子伝導領域(チャネル・ドレイン接続領域)108の深さは、一般に従来の横型デバイスの場合に比較してかなり深いことが必要である。
【0060】
従って、注入イオンの加速エネルギーは従来(通常100keV前後)よりも大きく、典型的には200keV以上の必要があり、これもn型導電層と半導体ヘテロ接合界面(106/107界面)2DEG領域との接続部115における原子配列をより乱す方向に働き、接続部115における接続抵抗を増大させる、またはその値をばらつかせる原因となる危険性がある。
【0061】
そこで、本実施の形態の電界効果トランジスタは、図1に示すように、GaN系半導体をガリウム面またはアルミ面成長でエピタキシャル成長させるための基板101上に、第一のGaN系半導体からなる高濃度のn型コレクター層102、第二のGaN系半導体からなるドリフト層103、オプションであるが第三のGaN系半導体からなり負の分極電荷が生成される電界緩和層104、第四のGaN系半導体からなるp型電子障壁層105、第五のGaN系半導体層からなる電子走行層106、第六のGaN系半導体層からなる電子供給層107を形成する。
【0062】
電子供給層107の上部に電極とのコンタクトを安定にするなどの目的のためにキャップ層116を形成してもよい。その後、ゲート電極112を介してソース電極109の反対側に相当する部分に第一および第二のイオン注入によってn型導電層からなる電子伝導領域108A,108Bを形成する(図3)。
【0063】
第一のイオン注入を施した後、イオン注入用トレンチ117(図4)を形成し、その後、第二のイオン注入を施してもよい。ソース電極109を形成した後、第一の絶縁膜110をマスクに電子供給層107の一部を除去しリセス構造を形成する。
【0064】
つぎにゲート絶縁膜111を成膜し、リセス領域を埋め込み、かつソース側庇長よりもゲート電極112を介してソース電極109の反対側の庇長が長くなるようにゲート電極112を形成した後、保護膜113を形成する。
【0065】
基板101を所望の厚さにした後、ドレイン電極114を形成することで電界効果トランジスタが作成される。基板101がサファイヤやSiCに代表されるように絶縁性が高く、かつ、かなり厚みの有る場合には、基板101を貫通してドレイン電極114を形成することが一般に難しい。
【0066】
そのような場合には、デバイスのおもて面からトレンチ溝(通称:ドレインメサ)をドリフト層103に達するまで堀り込み、その底面にドレイン電極114を形成する方法がデバイス・プロセス上容易である。
【0067】
または、もともとの基板101の厚みが厚く、ドレイン電極114に到達する電子伝導領域108を形成しにくい場合には、「スマートカット」(特願2008-519736「第III族窒化物エンハンスメント型デバイス」、インターナショナル・レクティファイアー・コーポレーション、USA)と呼ばれる方法で、基板またはバッファ層部分でウエハから基板部分をカットかつ除去し、ウエハの残りの上層部分の裏面にさらに"SopSiC"(V.Hoel et al., First microwave power performance of AlGaN/GaN HEMTs on SopSiC composite substrate, Electronics Letters, Vol. 44, Issue 3, pp. 238 - 239, January 2008.)と呼ばれるウエハの貼り付け技術を用いて、新たな薄めの基板を貼り合わせる方法を活用すれば、ドレイン電極114やそれに到達する電子伝導領域108もより形成しやすくなる。
【0068】
本実施の形態の構造では、ソースから入った電子はi−GaNチャネル層中を水平方向に流れた後、イオン注入により形成したn型伝導領域を介してn−GaNドリフト層103内を垂直方向に流れ、ドレイン電極114に到達する。チャネル電流はデバイス表面側に設置したゲート電極112の電位により制御する。
【0069】
p−GaN層はチャネル−ドレイン間の漏洩電流をブロックするためのバリア層として機能する。このような素子のドレイン耐圧は主にn−GaNドリフト層103の厚さで決まる。
【0070】
このため、チップ面積の増加なしに耐圧改善ができるという長所がある。ドレイン電極114を裏面に形成する場合は、ドレイン電極114によるチップ面積増加がない。ドレインメサを形成して表側に電極をとる場合にも、横型FETのようにデバイス真性領域にドレイン電極114を形成する必要がないため、チップ面積の増加が抑制される。
【0071】
また、n−GaNドリフト層103内で電界集中が発生しにくいため、破壊耐圧(BV)改善が容易である。さらに、二次元電子ガス(2DEG)として半導体ヘテロ接合界面(106/107界面)に生成する2DEGを用いているため、チャネルの電子移動度が高いこともオン抵抗(Ron)改善に寄与する。以上のような原理により、縦型ヘテロ接合FETではオン抵抗対破壊耐圧(Ron−BV)トレードオフの改善が期待できる。
【0072】
本実施の形態の基板101としては、例えば、GaN、InN、AlNおよび上記3種のGaN系半導体の混合物等がある。基板101にはn型不純物として、例えば、Si、S、Se、Oなどを添加することが好ましい。
【0073】
また、第一のGaN系半導体であるn型コレクター層102としては、例えば、GaN、InN、AlNおよび上記3種のGaN系半導体の混合物等がある。ただし、基板101が十分に低抵抗であれば省略することができる。また、第一のGaN系半導体中にはn型不純物として、例えば、Si、S、Se、Oなどを高濃度に添加することが好ましい。
【0074】
また、第二のGaN系半導体からなるドリフト層103としては、例えば、GaN、InN、AlNおよび上記3種のGaN系半導体の混合物等がある。また、第二のGaN系半導体中にはn型不純物として、例えば、Si、S、Se、Oなどを添加することが好ましい。
【0075】
また、第三のGaN系半導体からなる電界緩和層104としては、例えば、GaN、InN、AlNおよび上記3種のGaN系半導体の混合物等がある。ただし、第三のGaN系半導体は負の分極電荷が生成される組成である。
【0076】
このため、Ga面がソース電極109側、N面が基板101側である場合、基板101側からソース電極109側にかけて、Al組成比を低くする、またはIn組成比を高くする、またはAl組成比を低くし、かつ、In組成比を高くする必要がある。また、第三のGaN系半導体中にはn型不純物として、例えば、Si、S、Se、Oなどを添加することが好ましい。
【0077】
また、第四のGaN系半導体からなるp型電子障壁層105としては、例えば、GaN、InN、AlNおよび上記3種のGaN系半導体の混合物等がある。また、第四のGaN系半導体中にはp型不純物として、例えば、Be、C、Mgなどを高濃度に添加することが好ましい。
【0078】
また、第五のGaN系半導体からなる電子走行層106としては、例えば、GaN、InN、AlNおよび上記3種のGaN系半導体の混合物等がある。また、第五のGaN系半導体中にn型不純物として、例えば、Si、S、Se、Oなど、p型不純物として、例えば、Be、C、Mgなどを添加することも可能である。ただし、第五のGaN系半導体中の不純物濃度が高くなるとクーロン散乱の影響により電子の移動度が低下するため、不純物濃度は1×1017cm−3以下が望ましい。
【0079】
また、第六のGaN系半導体からなる電子供給層107としては、例えば、GaN、InN、AlNおよび上記3種のGaN系半導体の混合物等がある。ただし、本実施の形態の実施の形態では第五のGaN系半導体より電子親和力は小さい物質または組成である。また、第六のGaN系半導体中にn型不純物として、例えば、Si、S、Se、Oなど、p型不純物として、例えば、Be、C、Mgなどを添加することも可能である。
【0080】
また、第七のGaN系半導体であるキャップ層116としては、電子供給層107の材料より電子親和力(バンドギャップの小さい)の大きいGaN系材料であれば、キャップ層として有効である。
【0081】
また、第一の絶縁膜110としてはSi、Mg、Hf、Al、Ti、Taのいずれか1以上とO、Nのいずれか1以上からなる物質がある。
【0082】
また、ゲート絶縁膜111としてはSi、Mg、Hf、Al、Ti、Taのいずれか1以上とO、Nのいずれか1以上からなる物質がある。
【0083】
また、保護膜113してはSi、Mg、Hf、Al、Ti、Taのいずれか1以上とO、Nのいずれか1以上からなる物質、または有機材料がある。
【0084】
本実施の形態の縦型トランジスタのイオン注入条件を決定するのは、縦型構造を形成するエピタキシャル層の膜厚であるので、つぎにエピタキシャル層の膜厚について考察する。まず、GaN電子走行層106については、バイアス条件によっては、その裏のp型電子障壁層105から空乏層が進入してくる。それに伴って、チャネルのキャリアが枯渇する恐れがある。それを避けるため、GaN電子走行層106の厚さは0.1μm以上が必要である。
【0085】
また、本実施の形態の構造では、素子のドレイン耐圧は主にn−GaNのドリフト層103の厚さで決まる。コレクターにおいて1000V以上のアバランシェ耐圧(これがコレクター耐圧となる)を実現するには、概算では、n−GaNドリフト層103の不純物濃度を1×1016cm−3程度以下とし、膜厚を約4μm以上に設定する必要がある。
【0086】
さらに、p−GaNからなるp型電子障壁層105とn−ドリフト層103におけるパンチスルー耐圧が、上記のドリフト層103におけるアバランシェ耐圧を超えるようにするためには、p型電子障壁層105の(不純物濃度×膜厚)積を1.8×1013cm−2以上にする必要がある。
【0087】
現状の技術ではp型のイオン化不純物濃度を1E18/cm以上にはしにくいので、p−GaNからなるp型電子障壁層105の厚さは、これから概算すると少なくとも0.018μm以上必要であることになる。
【0088】
以上で考察したように、GaN電子走行層106、p−GaNからなるp型電子障壁層105、およびn−型のドリフト層103だけをとって考察してみても、本実施の形態のような縦型構造のトランジスタでは、横型構造のトランジスタに比較してエピタキシャル層厚がかなり厚くなることが分かる。
【0089】
従って、注入用のトレンチ溝を形成しない構造を採用する場合には、n型の電子伝導領域108の形成のためのイオン注入としては、少なくともGaN電子走行層106およびp−GaNからなるp型電子障壁層105の厚さの和以上の深さにまで注入イオンが到達する必要があり、200keV以上の比較的高い加速エネルギーによる深部イオン注入による電子伝導領域108Bが必要である。
【0090】
また、チャネルとn型の電子伝導領域108との接続部115を低抵抗に確保するために、10keV以上200keV未満の比較的低い加速エネルギーによる表面イオン注入による電子伝導領域108Aを併用することが望ましいことが理解される。
【0091】
つぎに、イオン注入の条件を最適化について記述する。イオン注入の好適な条件を選択するための検討に供した多層エピタキシャル膜は、代表的な構造であって、AlGaN/GaNヘテロ接合構造を有している。図6は、この素子のエピ構造を概略的に示す図であり、図7は、図6に示したエピ構造のバンド構造の計算結果を示すグラフである。
【0092】
キャリア統計に関しては、2DEGには二次元量子統計を、バルク電子と正孔にはフェルミ・ディラク(Fermi-Dirac)統計を採用した。不純物(ドナー、アクセプタ)は完全イオン化を仮定した。分極効果に関してはアンバチャー(Ambacher)のモデルを採用し、分極電荷は固定電荷として導入した。
【0093】
解析に用いた物性定数を表1に示した。図7のグラフの横軸は、エピ構造の深さ(Depth)を示し、当該グラフの左側の縦軸は、伝導帯下端エネルギー(Energy)を示し、当該グラフの右側の縦軸は、キャリア濃度(Carrier Concentration)を示している。グラフの実線は、深さ方向の伝導帯下端エネルギーの分布を表し、グラフの破線は、深さ方向のキャリア濃度分布を表している。
【0094】
ガリウム(Ga)−面やアルミ(Al)−面成長のAlGaN/GaNヘテロ接合界面(106/107界面)には、窒化物半導体材料の特徴である分極効果が生ずるので、GaAs系のAlGaAs/GaAsヘテロ接合界面(106/107界面)と比較して約五倍の1013cm−2オーダーの高いシート電荷濃度Nsのキャリアを構成する電子が蓄積され得る。
【0095】
このようなAlGaN/GaNヘテロ接合構造を有するHEMTデバイスは、高い電流値、高い出力電力、低いオン抵抗やアクセス抵抗などの優れた特性を実現することが可能である。
【0096】
上記のHEMT構造にイオン注入して選択的にn型導電層を形成するための様々なドーパント種が報告されている。中でも最も有効なものはSi(原子量:28)である。AlGaN層(電子供給層107)の層厚は通常0.015〜0.045μmであり、AlGaN層中のAl組成としては0.15〜0.20が通常用いられる。
【0097】
このプロファイルのAlGaN/GaNヘテロ接合型のHEMT構造にSi(原子量:28)をイオン注入する場合には、通常、スルー膜を介したスルー注入によりイオン注入が行われる。
【0098】
ここで、20〜130keVの範囲内の加速エネルギーと、1×1014〜3×1015cm−2の範囲内のドーズ量とがデバイスに応用されている通常の値である。イオン注入後は、ドーピングされたイオンを活性化するために、1200℃付近の温度での活性化アニールを実行することが好ましい。
【0099】
Al0.15Ga0.85N(0.045μm厚)/GaNヘテロ接合型のエピ構造(エピタキシャル構造)上に、膜厚0.08μmの窒化膜(SiN膜)をスルー膜として堆積し、このスルー膜を介して、加速エネルギー100keV、ドーズ量1×1015cm−2でSiをイオン注入した。
【0100】
その後、1200℃で3分間活性化アニールを実行した。この結果得られた構造上にTi/Al/Nb/Au多層膜のメタライズのオーミック電極を形成した。この結果得られた素子の電気特性をホール測定法やTLM(Transmission Line Model)法を使用して測定した。
【0101】
TLM法による測定対象として、図8(a),(b),(c)に示す3種類の構造を用意した。図8(a)の構造は、基板上にバッファ膜(図示せず)を介して形成された電子走行層(GaN層)と、電子走行層にヘテロ接合する電子供給層(AlGaN層)と、この電子供給層の上面とオーミック接触するソース電極およびドレイン電極とを有する構造である。
【0102】
図8(b)の構造は、基板上にバッファ膜(図示せず)を介して形成された電子走行層(GaN層)と、電子走行層の上面にヘテロ接合する電子供給層(AlGaN層)と、この電子供給層の上面とオーミック接触するソース電極とドレイン電極とを有する構造である。イオン注入により、電子供給層の上面からヘテロ接合界面(106/107界面)を超える深さにまで高濃度のn型不純物注入領域が形成されている。
【0103】
図8(c)の構造は、基板上にバッファ膜(図示せず)を介して形成された電子走行層(GaN層)と、電子走行層の上面にヘテロ接合するAlGaN層と、このAlGaN層の上面とオーミック接触するソース電極およびドレイン電極とを有する構造である。
【0104】
ゲート電極(図示せず)の両側において、それぞれ、電子供給層の上面からヘテロ接合界面を超える深さにまで高濃度のn型不純物注入領域がイオン注入により形成されている。
【0105】
図8(a)の構造は、イオン注入がなされない領域での二次元電子ガス層のオーミック・コンタクト抵抗Rc(2DEG)とシート抵抗Rsh(2DEG)を求めるための構造である。
【0106】
図8(b)の構造は、イオン注入された領域でのオーミック・コンタクト抵抗Rc(n)とシート抵抗Rsh(n)とを求めるための構造である。図8(c)の構造は、n型不純物注入領域と、これら不純物注入領域の二次元電子ガス層のチャネルとの接続部における接続抵抗Rbを評価するための構造である。
【0107】
図8(c)の構造のシート抵抗は、図11の構造のシート抵抗Rsh(2DEG)と等しい。これに対し、図8(c)の構造で評価された見かけのコンタクト抵抗Rc†は、図8(c)の構造での接続部のマージンΔLを考慮して次式(1)で表される。
【0108】
Rc†=Rb+Rc(n)+Rsh(n)・ΔL (1)
【0109】
ここで、Rc(n)、Rsh(n)は、図8(b)から求められ、ΔLも既知であるので、この式より、n型不純物注入領域とチャネルとの接続部における接続抵抗Rbを求めることができる。
【0110】
評価した結果、n型不純物注入領域でのコンタクト抵抗はRc=0.47Ωmm、シート抵抗は408Ω/□(ohm/square)という特性が得られた。ここで問題になるのは、n型不純物注入領域とチャネルとの接続抵抗である。
【0111】
28Siドーズ量が1E11cm−2すなわち半導体ヘテロ接合界面(106/107界面)における28Si不純物濃度が1E16cm−3の場合には、接続抵抗はほとんど無視できる値であるのだが、その接続抵抗値と比較して、ドーズ量1×1015cm−2での接続抵抗の測定結果は116倍という大きい値であった。この接続抵抗は、コンタクト抵抗として、デバイスのアクセス抵抗やオン抵抗を増加させるので、この接続抵抗を低減させることが急務である。
【0112】
そこで、チャネルとn型不純物注入領域との接続抵抗のドーズ量依存性を調べた。ドーズ量に応じてn型不純物注入領域の伝導帯ポテンシャルが大きく変化し、その結果、接続抵抗が低減する可能性があるからである。
【0113】
図6の試料に対して、加速エネルギー100keV、および1×1011(1E+11)〜3×1016(3E+16)cm−2の範囲内で変化させたドーズ量でイオン注入した。ここで、スルーSiN膜の厚みは一定(0.08μm)とした。
【0114】
図9は試料の深さ方向におけるイオン分布のドーズ量依存性を示すグラフである。図10は、半導体へテロ界面における不純物の濃度に対して、ドーズ量が1E11cm−2、すなわちヘテロ接合界面(106/107界面)の不純物濃度で約1E16cm−3に相当の場合の接続抵抗を基準にした場合の接続抵抗Rbの値(増加率)をプロットしたグラフである。
【0115】
半導体へテロ接合界面におけるSi不純物濃度が1×1018(1E18)cm−3以下の領域では、接続抵抗Rbは大変低くゼロに近い。そもそもこの領域の注入量では、ヘテロ接合界面(106/107界面)に到達した注入イオンが少ないので、ヘテロ接合界面(106/107界面)がイオン注入前の状態に近い状態で保持されていると考えられる。
【0116】
従って、この注入量領域では、コンタクト抵抗やシート抵抗に対するイオン注入の効果がそもそも小さい。イオン化不純物濃度がおよそ1×1018cm−3のポイントでは、接続抵抗(増加率)が最も高くなった。
【0117】
この理由は、イオン注入によって半導体ヘテロ接合界面チャネル部の原子配列が損傷を受け、その部分のポテンシャルが上昇して電気伝導に対する障壁となるためであると考えられる。
【0118】
一方、イオン化不純物濃度が1×1019cm−3を超え1×1020cm−3までの領域ではイオン化不純物濃度の増加に従って抵抗値は減少してゆき、イオン化不純物濃度が6×1019(6E19)cm−3のポイントで接続抵抗Rbの増加率は極小値17をとることが分かった。
【0119】
この値は、デバイス応用において、問題にならないレベルの値と考えてよい。また、この値を与えるドーズ量1×1016(1E16)cm−2(スルー膜を介して導入された値であり、実効ドーズ量は9.2×1015(9.2E15)cm−2)は、チャネルとn型不純物注入領域との接続抵抗を低減するための最適な、またはほぼ最適なドーズ量である。
【0120】
なお、Si不純物濃度が3×1021(3E21)cm−3以上の場合には、接続抵抗が増加する傾向にあるが、このドーズ量以上ではGaN系材料におけるSiの固溶限界がみえてくるものと考えられる。
【0121】
イオン化不純物濃度が1×1019cm−3を超え1×1020cm−3までの領域でイオン化不純物濃度の増加に従って抵抗値は減少してゆくことが実験的に明らかになったが、つぎに、いかなるメカニズムでこのイオン注入条件で接続抵抗Rbが低減したのかを考察する。
【0122】
シュレーディンガー方程式とポアソン方程式を連立させてセルフ・コンシステントな解を数値計算で求め、量子力学的効果を取り込んだ定量的な一次元バンド構造を求めた。
【0123】
キャリア統計に関しては、2DEGには二次元量子統計を、バルク電子と正孔にはフェルミ・ディラク(Fermi−Dirac)統計を採用した。不純物(ドナー、アクセプタ)は完全イオン化を仮定した。
【0124】
分極効果に関してはアンバチャー(Ambacher)のモデルを採用し、分極電荷は固定電荷として導入した。解析に用いた物性定数を表1に示した。図11は、実効ドーズ量Nに対応した試料の伝導帯下端エネルギーを深さ方向でプロットしたものである。
【0125】
図9に示されているように、9.2×1013(9.2E13)cm−2、9.2×1014(9.2E14)cm−2、9.2×1015(9.2E15)cm−2と実効ドーズ量を段階的に増やした場合における値がプロットされている。
【0126】
その際、深さ方向zに関する注入イオンの分布P(z)を、モンテカルロ計算を用いて統計力学的に求め、イオンの活性化率ηには、実際に試料を室温でホール測定して得た実験値を用いた。この結果得られたイオン化したドナー濃度の深さ方向の分布D(z)は、次式(2)の通りである。
【0127】
D(z)= η・N・P(z) (2)
【0128】
図11のグラフに示されるように、実効ドーズ量が9.2×1013(9.2E13)cm−2のときには、オーミック・コンタクト部でも、AlGaN電子供給層107でも、AlGaN/GaNヘテロ接合部でも電子伝導帯ポテンシャルが十分下がりきっていない。
【0129】
これに対応してコンタクト抵抗Rc(n)、シート抵抗Rsh(n)、接続抵抗Rbの実験値には軒並み高い値が得られた。半導体へテロ界面において最適なSiイオン濃度1E21cm−3を与える、実効ドーズ量が9.2×1015(9.2E15)cm−2の場合には、オーミック・コンタクト部でも、AlGaN電子供給層107でも、AlGaN/GaNヘテロ接合部でもポテンシャルはフェルミ・レベルより十分低減している。
【0130】
これに対応して、コンタクト抵抗Rc(n)、シート抵抗Rsh(n)、接続抵抗Rbには十分に低い値を実験で得た。半導体へテロ接合界面におけるSi不純物濃度が1×1018(1E18)cm−3以下の領域では、接続抵抗Rbは大変低くゼロに近い。
【0131】
そもそもこの領域の注入量では、ヘテロ接合界面(106/107界面)に到達した注入イオンが少ないので、ヘテロ接合界面(106/107界面)がイオン注入前の状態に近い状態で保持される。一方、イオン化不純物濃度が1×1019cm−3を超える場合の接続抵抗の低減は、AlGaN/GaNヘテロ接合部の伝導帯ポテンシャルがフェルミ・レベルより十分に低減することによってもたらされていると考えられる。
【0132】
これを「横方向」のバンド構造で説明するための図が図12である。図12には、2種類のポテンシャルPi,Pdが示されている。図11を参照すると、半導体ヘテロ接合により生成された二次元電子ガス層(ヘテロ接合による2DEG)付近のn型不純物注入領域に十分な量のイオン化したドナーが存在すると、そうでない場合のポテンシャルPiと比較して、その箇所のポテンシャルPdが下がる。
【0133】
これに伴い、接続部の障壁高さが低減し、接続抵抗が下がるものと推察される。室温において二次元電子ガス層付近のn型不純物注入領域の伝導帯ポテンシャルが十分に低減するためには、「室温におけるイオン化ドナー不純物濃度が1×1019(1E19)cm−3以上」であることが必要と考えられる。
【0134】
従って、接続抵抗の低減には、上記のようにドーズ量自体を増やすことも有効であるし、活性化アニール温度を上げて、注入したイオンの活性化率を上げることも有効である。
【0135】
さらに、活性化率向上という観点からは、イオン注入時に基板101温度を上昇させた状態においてイオン注入する「昇温イオン注入」も有効である。以上は、デバイスの動作温度が通常の室温(5℃以上35℃以下)である場合について記述した。
【0136】
デバイスの動作温度が、室温からかなりかけ離れる場合(例えば、自動車のエンジンルームでデバイスが動作する場合)では、イオン化不純物濃度が1×1019cm−3を超える場合に上記接続抵抗が低減するためには、「そのデバイスの動作温度において、イオン化ドナー不純物濃度が1×1019cm−3以上」であることが必要であり、さらには「そのデバイスの動作温度において、イオン化ドナー不純物濃度が3×1019cm−3以上」であることが望ましい。
【0137】
上記の発明の構造においては、トレンチ溝を形成しないので、半導体ヘテロ接合における二次元電子ガス(DEG)チャネルが、トレンチ溝形成のためにダメージを受けることがないメリットがある。
【0138】
しかし、その分、200keV以上の高い加速エネルギーによるイオン注入を施す必要がある。注入するドーパントとして典型的なシリコン(Si)を例にとれば、加速エネルギーが200keV以上になると、注入イオン種としては、一価ではなく二価のイオンを生成して用いる必要があり、プロセス費用が増大するきらいがある。
【0139】
さらに、加速エネルギーが増大するに従って、注入に供せられる試料の表面の荒れも増加する。そのため、イオン注入における加速エネルギーをできるだけ低減したいというニーズが生ずる。
【0140】
そこで、イオン注入の加速エネルギーを低減するためのトレンチを形成する方法がある。この発明の構造において、トレンチ溝は、その深さの分だけ注入イオンが到達すべき投影飛程を低減する効果を有する。
【0141】
トレンチ溝は、深い場合には、ドリフト層103に達するまでの深さを有することができるため、イオン注入時の加速エネルギー低減の度合いは極めて大きくなり得る。そして確かに、トレンチ溝と半導体へテロ接合チャネルとの接触部が存在する場合には、その接続部は、トレンチの形成過程においてダメージを受け、その部分の接続抵抗は増大する。
【0142】
しかし、n型導電層と上記n型不純物が注入されないチャネル領域との接続部が、トレンチ溝と半導体へテロ接合チャネルとの上記接触部と、ある程度の距離を有するようにイオン注入の領域を選択すれば、n型導電層と、上記n型不純物が注入されないチャネル領域との接続部は、トレンチ形成ダメージが原因となる接続抵抗増加の影響をほとんど受けなくなる。
【0143】
さらに上記n型導電層は、注入イオンの投影飛程118BであるDi(μm)が、上記トレンチ深さDt(μm)より長くなるような加速エネルギーのイオン注入で形成されるようにすれば(Di>Dt)、該接続部と、イオン注入領域を介して、ドレイン電極114と導通された半導体層との間にn導通経路を形成することができる。
【0144】
さらに、トレンチ構造と併せて二段イオン注入を活用することによって、デバイス深部までのイオン注入による導電層形成を容易にするとともに、上記n型導電層と上記n型不純物が注入されないチャネル領域との接続部における接続抵抗の低減を確実にすることができ、該接続部と、イオン注入領域を介して、ドレイン電極114と導通された半導体層との間のn導通経路を容易かつ確実に形成することが出来る。
【0145】
(実施例)
本実施の形態の一実施例を示す。本実施例の電界効果トランジスタは、基板101として(0001)面(Ga面)のn型GaN基板、第一のGaN系半導体からなる高濃度のn型コレクター層102としてGaN層(1×1018cm−3のSiを添加、膜厚0.5μm)、第二のGaN系半導体からなるドリフト層103としてGaN層(1×1017cm−3のSiを添加、膜厚1.0μm)、第三のGaN系半導体からなる電界緩和層104としてAlGaN層(Al組成比は、例えば、基板101側が0.3、表面側が0となるよう段階的に変化、膜厚は、例えば、0.3μm)を省略、第四のGaN系半導体からなるp型電子障壁層105としてGaN層(1×1018cm−3のMgを添加、膜厚0.2μm)、第五のGaN系半導体層からなる電子走行層106としてGaN層(膜厚0.1μm)、第六の半導体層からなる電子供給層107としてAlGaN層(Al組成比0.20、膜厚0.02μm)、第七の半導体層からなるキャップ層116としてGaN層(0.002μm)、ソース電極109、ドレイン電極114としてTi/Al(Ti層の膜厚0.01μm、Al層の膜厚0.2μm)、第一の絶縁膜110としてSiON膜(膜厚0.08μm)、リセスとして第七、第六のGaN系半導体からなる115、電子供給層107のうち0.025μmを除去、ゲート絶縁膜111としてAl膜(膜厚0.01μm)、ゲート電極112としてNi/Au(Ni層の膜厚0.015μm、Au層の膜厚0.4μm)、保護膜113としてSiON膜(膜厚0.08μm)を用いることにより作製される。
【0146】
なお、本実施例の電子伝導領域108は、0.08μmのスルー膜(SiN)を介して該当領域に28Siイオン注入を行い、1200℃3分の活性化アニールを施すことで形成した。イオン注入条件が請求項に対応して互いに異なる次の六種類の試料を作製した。
【0147】
第一の試料は、図1および図2の構造を有するもので、加速エネルギー350keVでドーズ量1E14cm−2のイオン注入を行った。注入不純物はドリフト層103まで達し、p−バリア層で1E19cm−3の濃度を有する。
【0148】
さらに2DEGにおける不純物濃度は1E18cm−3となり、半導体ヘテロ接合界面(106/107界面)とn型導電層との接続部115における接続抵抗は十分低く抑制された。
【0149】
第二の試料は、図1および図2の構造を有するもので、加速エネルギー300keVでドーズ量1E16cm−2のイオン注入を行った。注入不純物はドリフト層103まで達し、p−バリア層で3E20cm−3の濃度を有する。
【0150】
さらに2DEGにおける不純物濃度は1E20cm−3となり、半導体ヘテロ接合界面(106/107界面)とn型導電層との接続部115における接続抵抗は十分低く抑制された。
【0151】
第三の試料は、図3の構造を有するもので、第一のイオン注入(加速エネルギー:100keV、ドーズ量:1E16cm−2)および第二のイオン注入(加速エネルギー:300keV、ドーズ量:3E15cm−2)を行った。
【0152】
第一のイオン注入(加速エネルギー:100keV、ドーズ量:1E16cm−2)は、半導体ヘテロ接合界面(106/107界面)とn型導電層との接続部115にて、イオン化ドナー濃度が1E19cm−3以上という条件を満たすもので、n型導電層と半導体ヘテロ接合界面(106/107界面)2DEGチャネルとの接続抵抗が十分低くなる条件である。
【0153】
第二のイオン注入(加速エネルギー:300keV、ドーズ量:3E15cm−2)は、注入イオンがドリフト層103まで達し、上記接続部115と、イオン注入領域を介して、ドレイン電極114と導通された半導体層との間のn導通経路を形成した。
【0154】
第四の試料は、図4の構造を有するもので、0.1μmの深さのトレンチを形成した後、加速エネルギー350keVでドーズ量1E14cm−2のイオン注入を行った。注入不純物はドリフト層103まで達し、p−バリア層で1E19cm−3の濃度を有する。
【0155】
さらに2DEGにおける不純物濃度は1E18cm−3となり、半導体ヘテロ接合界面(106/107界面)とn型導電層との接続部115における接続抵抗は十分低く抑制された。
【0156】
第五の試料は、図4の構造を有するもので、0.15μmの深さのトレンチを形成した後、加速エネルギー180keVでドーズ量3E15cm−2のイオン注入を行った。注入不純物はドリフト層103まで達し、p−バリア層で1E20cm−3の濃度を有する。
【0157】
さらに2DEGにおける不純物濃度は1E20cm−3となり、半導体ヘテロ接合界面(106/107界面)とn型導電層との接続部115における接続抵抗は十分低く抑制された。また、加速エネルギーも200keV未満で済んだ。
【0158】
第六の試料は、図5の構造を有するもので、第一のイオン注入(加速エネルギー:100keV、ドーズ量:1E16cm−2)を行った後、0.15μmのトレンチを形成し、その後第二のイオン注入(加速エネルギー:180keV、ドーズ量:3E15cm−2)を行った。
【0159】
注入不純物はドリフト層103まで達し、p−バリア層で1E20cm−3の濃度を有する。さらに2DEGにおける不純物濃度は5E20cm−3となり、半導体ヘテロ接合界面(106/107界面)とn型導電層との接続部115における接続抵抗は、第五の試料よりも十分低く抑制された。
【0160】
また、加速エネルギーも200keV未満で済んだ。加えて、素子のアイソレーションまたは素子の絶縁分離のためには、本実施例では14Nイオンのイオン注入を用いた。
【0161】
スルー膜としては0.06μmのシリコン窒化膜(SiN)を用い、14Nイオンを加速エネルギー30keV、ドーズ量2E14cm−2で所望の領域に選択的に注入した。
【0162】
このような構造とすることで、二次元電子ガス利用による、低オン抵抗と良好な高周波特性を維持できる。また、ソース電極109直下のp型電子障壁層105を介した電流経路の耐圧は電界緩和層104とp型電子障壁層105に依存する。
【0163】
本構造においてさらに電界緩和層104を設け、Al組成比が基板101側から表面側へ徐々に低くなるように変化させれば、ピエゾ(piezo)効果および自発分極効果により伝導帯が(荷電子帯も)p型ドープしたように真空準位に向かって凸になるように曲がるため、さらにパンチスルーしにくくでき更なる高耐圧化が図れる。
【0164】
また、電子伝導領域108を介した電流経路の耐圧は、ドリフト層103(電界緩和層104を設けた場合、ドリフト層103と電界緩和層104)、で決まるが、表面(界面)の影響が無いため電界分布が均一となり、絶縁破壊耐圧のバルク値(3MV/cm)まで高耐圧化が期待でき、小さなチップサイズでも高耐圧化が実現できた。
【0165】
さらに、ゲート電極112を介してソース電極109の反対側の庇長が長くなるようにしたことから、ゲート電極112近傍の電界集中も緩和することができる。ここで第三の試料を例に採り、イオン注入による電子伝導領域108の形成について、半導体の電子状態の観点から考察する。解析に用いた物性定数を表1に示す。
【0166】
【表1】

【0167】
図13は、本実施例のデバイスの電子伝導領域108の上下に沿った一次元の伝導帯エネルギーレベルを示したものであり、イオン注入をしていない状態、加速エネルギー:300keVかつドーズ量:3E15cm−2の深部イオン注入(第二のイオン注入)を行った後、活性化アニール(1200℃3分)を行った場合、および、深部イオン注入(第二のイオン注入)に併せて加速エネルギー:100keVかつドーズ量:1E16cm−2の表面層イオン注入(第一のイオン注入)を行い、活性化アニール(1200℃3分)を行った場合、の三水準をグラフ化している。
【0168】
注入イオンの分布は、モンテカルロ計算で求め、注入イオンの活性化率は、実際にホール測定して得た実験値を用い、一次元の伝導帯ポテンシャルは量子力学的な効果を取り込み、上記で得たイオン化したドナー濃度分布を考慮に入れて、シュレーディンガ−(Schrodinger)方程式とポアソン(Poisson)方程式を連立させて自己無撞着(セルフ・コンシステント)な解を得ることで求めた。
【0169】
キャリア統計に関しては、二次元電子ガス(2DEG)には二次元量子統計を、バルク電子と正孔にはフェルミ・ディラク(Fermi-Dirac)統計を採用した。不純物(ドナー、アクセプタ)は完全イオン化を仮定した。分極効果に関してはアンバチャー(Ambacher)のモデルを採用し、分極電荷は固定電荷として導入した。解析に用いた物性定数を表1に示した。
【0170】
まず、イオン注入を行わなかった場合には、p型電子障壁層105のGaN層(1×1018cm−3のMgを添加、膜厚0.2μm)の伝導帯ポテンシャルは十分に高く、耐圧を維持する障壁層として機能していることが分かる。ところで、本エピ構造で電子伝導領域108を形成するには、比較的深部までのイオン注入が必要である。
【0171】
しかし、加速エネルギーを高くして、加速エネルギー:300keVのイオン注入でドリフト層103にまで達するイオン注入が達成されており、さらに、ドーズ量を多くし、ドーズ量:3E15cm−2の注入を行うことにより、活性化アニール後p型電子障壁層105のアクセプタは注入ドナーによって十分に補償されて、そのポテンシャルはフェルミ・レベル以下にまで低減できていることが分かる。
【0172】
しかし、それでも、半導体ヘテロ接合近辺から表面にかけてのデバイス表層部の注入ドナー濃度は十分ではなく、その領域のポテンシャルはまだ十分には低減出来ていない。
【0173】
つぎに、深部イオン注入(第二のイオン注入)に併せて加速エネルギー:100keVかつドーズ量:1E16cm−2の表面層イオン注入(第一のイオン注入)を行い、活性化アニール(1200℃3分)を行った場合には、グラフから分かる通り、半導体ヘテロ接合近辺から表面にかけてのデバイス表層部の伝導帯ポテンシャルも十分に低減出来ており、2DEG−n型導電層接続部の接続抵抗の低減という課題が果たせていることを、電子状態の観点からも証明している。
【0174】
なお、本実施例では基板101として(0001)面(Ga面)のn型GaN基板を用いたが、GaN、InN、AlNおよび上記3種のGaN系半導体の混合物等の基板を用いることができる。
【0175】
ただし、基板101上に形成する半導体層と格子定数が大きく異なると、転移が発生し結晶性が劣化することから、用いる基板101の組成は基板101上に形成する半導体層と格子定数が同じまたは近い値の組成であることが好ましい。また、使用する面も面(N面)でも良いが、ピエゾ効果も向きが逆になるなど設計上注意を要する。
【0176】
同様に、本実施例では高濃度のn型コレクター層102としてGaN層を用いたが、高濃度n型コレクター層としては、AlGaN層やInGaN層など、GaN、InN、AlNおよび上記三種のGaN系半導体の混合物等を用いることができる。
【0177】
また、不純物としてSiを添加したがn型不純物として、例えば、Si、S、Se、Oなど添加することができる。濃度は所望の値とできるが、低抵抗化するために、1×1018cm−3以上の高濃度に添加することが好ましい。
【0178】
同様に、本実施例ではドリフト層103としてGaN層を用いたが、ドリフト層103としてはAlGaN層やInGaN層など、GaN、InN、AlNおよび上記3種のGaN系半導体の混合物等を用いることができる。
【0179】
また、不純物としてSiを添加したがn型不純物として、例えば、Si、S、Se、Oなど添加することができる。濃度は所望の値とできるが、電界を緩和するために、1×1018cm−3以下の濃度で添加することが好ましい。特に、耐圧を優先するときには1×1017cm−3以下の濃度で添加することが好ましい。
【0180】
同様に、本実施例では電界緩和層104としてAlGaN層(Al組成比は基板101側が0.3、表面側が0となるよう段階的に変化、膜厚0.3μm)を紹介したが、電界緩和層104としてはAlGaN層やInGaN層など、GaN、InN、AlNおよび上記3種のGaN系半導体の混合物等を用いることができる。
【0181】
ただし、電界緩和層104は、電界緩和効果を高めるため、負の分極電荷が生成される組成である必要があり、Ga面がソース電極109側、N面が基板101側である場合、基板101側からソース電極109側にかけて、Al組成比を低くする、またはIn組成比を高くする、またはAl組成比を低くし、かつ、In組成比を高くする必要がある。
【0182】
また、不純物としてSiを添加したがn型不純物として、例えば、Si、S、Se、Oなど添加することができる。濃度は所望の値とできるが、電界を緩和するために、1×1018cm−3以下の濃度で添加することが好ましい。特に、耐圧を優先するときには1×1017cm−3以下の濃度で添加することが好ましい。
【0183】
同様に、本実施例ではp型電子障壁層105としてGaN層(1×1019cm−3のMgを添加、膜厚0.3μm)を用いたが、p型電子障壁層105としてはAlGaN層やInGaN層など、GaN、InN、AlNおよび上記3種のGaN系半導体の混合物等を用いることができる。
【0184】
また、不純物としてMgを添加したがp型不純物として、例えば、Be、C、Mgなどを添加することができる。濃度は所望の値とできるが、電子に対する障壁を高電圧まで維持するために、1×1018cm−3以上の高濃度で添加することが好ましい。
【0185】
同様に、本実施例では電子走行層106としてGaN層を用いたが、電子走行層としてはAlGaN層やInGaN層など、GaN、InN、AlNおよび上記3種のGaN系半導体の混合物等を用いることができる。
【0186】
また、本実施例では電子走行層106中に不純物は添加していないが、n型不純物として、例えば、Si、S、Se、Oなど、p型不純物として、例えば、Be、Cなどを添加することも可能である。ただし、電子走行層中の不純物濃度が高くなるとクーロン散乱の影響により移動度が低下するため、不純物濃度は1×1017cm−3以下が望ましい。
【0187】
同様に、本実施例では電子供給層107としてAlGaN層を用いたが、電子供給層107としてはAlGaN層やInGaN層など、GaN、InN、AlNおよび上記3種のGaN系半導体の混合物等を用いることができる。
【0188】
ただし、本電子供給層107は電子走行層106より電子親和力は小さい物質または組成である必要がある。また、本実施例では、ピエゾ効果および自発分極効果にて電子を供給しているため、電子供給層107中に不純物は添加していないが、n型不純物として、例えば、Si、S、Se、Oなど、p型不純物として、例えば、Be、C、Mgなどを添加することも可能である。
【0189】
同様に、本実施例ではキャップ層116としてGaN層を用いたが、電子供給層107の材料より電子親和力(バンドギャップの小さい)の大きいGaN系材料であれば、キャップ層として有効である。
【0190】
同様に、各層の膜厚に関しても、所望の厚さとすることができる。ただし、基板101の格子定数と大きく異なっている場合は、転位が発生する臨界膜厚以下とすることが好ましい。
【0191】
また、本実施例の電子伝導領域108は、該当領域をドライエッチングにて除去し、GaN層(8×1017cm−3のSiを添加)を再成長することで形成したが、p型電子障壁層105を無効化し電子が基板101方向に流れることができればよく、その方法は問わない。
【0192】
また、本実施例ではソース電極109、ドレイン電極114としてTi/Alを用いたが、ソース電極109は電子供給層107であるAlGaNと、ドレイン電極114は基板101と各々オーミック接触する金属であればよく、例えば、W、Mo、Si、Ti、Pt、Nb、Al、Au等の金属を用いることができ、複数の上記金属を積層した構造とすることもできる。
【0193】
同様に、本実施例ではゲート電極112としてNi/Auを用いたが、本実施例ではゲート電極112が半導体と直接接していないので、所望の金属とすることが出来る。ただし、ゲート絶縁膜111や保護膜113と反応しないことが望ましい。
【0194】
また、本実施例では、リセス構造作製の際、キャリア供給層のうち0.025μmを除去したが、リセスで除去する半導体厚は任意の厚さとすることが出来、キャリア供給層の厚さ以上まで除去することが可能である。
【0195】
ただし、除去する半導体厚が薄いとリセス構造による耐圧向上の効果、および電流コラプス低減の効果が少なくなり、除去する半導体厚が厚いと、ゲート下のキャリア減少および移動度低下や二次元電子ガスの消滅により抵抗が高くなるため、除去する半導体厚は、元々成膜された半導体厚の30%から90%が好ましい。
【0196】
また、本実施例では、ゲート電極112の庇がソース電極109側よりドレイン電極114側に長くなるように形成したが、ソース側の庇は本実施の形態の効果には関与しないため、ドレイン電極114側の庇と等しいか長くすることも可能である。
【0197】
ただし、ソース側の庇が長くなると、耐圧の向上や電流コラプス低減の効果に対しゲート容量の増大による、利得低下が大きくなるため、ドレイン電極114側の庇よりも短いことが好ましい。
【0198】
なお、本発明は本実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で各種の変形を許容する。また、当然ながら、上述した実施の形態および複数の変形例は、その内容が相反しない範囲で組み合わせることができる。また、上述した実施の形態および変形例では、各部の構造などを具体的に説明したが、その構造などは本願発明を満足する範囲で各種に変更することができる。
【符号の説明】
【0199】
101 GaN系半導体からなる基板
102 第一のGaN系半導体からなる高濃度n型コレクター層
103 第二のGaN系半導体からなるドリフト層
104 第三のGaN系半導体からなる電界緩和層
105 第四のGaN系半導体からなるp型電子障壁層
106 第五のGaN系半導体からなる電子走行層
107 第六のGaN系半導体からなる電子供給層
108 電子伝導領域
108A 第一のイオン注入(表層部イオン注入)による電子伝導領域
108B 第二のイオン注入(深部イオン注入)による電子伝導領域
109 ソース電極
110 第一の絶縁膜
111 ゲート絶縁膜
112 ゲート電極
113 保護膜
114 ドレイン電極
115 2DEG−n接続部
116 第七のGaN系半導体からなるキャップ層
117 イオン注入用トレンチ
118B イオンの投影飛程距離
1001 n−GaN基板
1002 n−GaN層
1003 p−GaN層
1004 AlN層
1005 i−GaN層
1006 n−GaN層
1007 i−AlGaN層
1008 オーミック電極
1009 SiO
1010 ゲート電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアであるゲート電極下の電子の走行方向が基板表面に略平行である窒化物半導体電界効果トランジスタであり、
ゲート絶縁膜を介するなどしてゲート電極と接する第一半導体層と、ドレイン電極と導通する第二半導体層または前記ドレイン電極とが、p型窒化物半導体層を挟んで相対しており、該p型窒化物半導体層とソース電極または前記ゲート電極との間に、少なくともキャリア走行層と前記キャリア走行層より電子親和力の小さい第三半導体層とが位置しており、少なくとも前記第三半導体層のヘテロ接合界面の一つにおいて二次元電子ガスが形成されており、これをチャネルとするヘテロ接合電界効果トランジスタであって、
前記ゲート電極に対して前記ソース電極の反対側に、前記ゲート絶縁膜を介するなどして前記第一半導体層と、前記第二半導体層の間で導通経路を形成するn型導電層と、を備えており、
そのn型導電層は選択的にイオン注入されているn型不純物をアニール処理で活性化することにより形成されており、
前記n型導電層は、イオンが200keV以上の加速エネルギーで注入されており、前記p型窒化物半導体層より深く、かつ前記第二半導体層にまで注入イオンが達する選択的イオン注入によって形成されており、
前記n型導電層と前記n型不純物が注入されていないチャネル領域との接続部に注入されているn型不純物濃度が1×1018cm−3以下であること、
を特徴とするヘテロ接合電界効果トランジスタ。
【請求項2】
キャリアであるゲート電極下の電子の走行方向が基板表面に略平行である窒化物半導体電界効果トランジスタであり、
ゲート絶縁膜を介するなどしてゲート電極と接する第一半導体層と、ドレイン電極と導通する第二半導体層または前記ドレイン電極とが、p型窒化物半導体層を挟んで相対しており、該p型窒化物半導体層とソース電極または前記ゲート電極との間に、少なくともキャリア走行層と前記キャリア走行層より電子親和力の小さい第三半導体層とが位置しており、少なくとも前記第三半導体層のヘテロ接合界面の一つにおいて二次元電子ガスが形成されており、これをチャネルとするヘテロ接合電界効果トランジスタであって、
前記ゲート電極に対して前記ソース電極の反対側に、前記ゲート絶縁膜を介するなどして前記第一半導体層と、前記第二半導体層の間で導通経路を形成するn型導電層と、を備えており、
そのn型導電層は選択的にイオン注入されているn型不純物をアニール処理で活性化することにより形成されており、
前記n型導電層は、イオンが200keV以上の加速エネルギーで注入されており、前記p型窒化物半導体層より深く、かつ前記第二半導体層にまで注入イオンが達する選択的イオン注入によって形成されており、
前記n型導電層と前記n型不純物が注入されていないチャネル領域との接続部において、注入されているn型不純物濃度が1×1020cm−3以上であるか、または、イオン化されているn型不純物濃度が1×1019cm−3以上であること、
を特徴とするヘテロ接合電界効果トランジスタ。
【請求項3】
前記n型導電層と前記n型不純物が注入されていないチャネル領域との接続部は、5℃以上35℃以下の温度条件下においてイオン化されているn型不純物濃度が1×1019cm−3以上であること、
を特徴とする請求項2に記載のヘテロ接合電界効果トランジスタ。
【請求項4】
キャリアであるゲート電極下の電子の走行方向が基板表面に略平行である窒化物半導体電界効果トランジスタであり、
ゲート絶縁膜を介するなどしてゲート電極と接する第一半導体層と、ドレイン電極と導通する第二半導体層または前記ドレイン電極とが、p型窒化物半導体層を挟んで相対しており、該p型窒化物半導体層とソース電極または前記ゲート電極との間に、少なくともキャリア走行層と前記キャリア走行層より電子親和力の小さい第三半導体層とが位置しており、少なくとも前記第三半導体層のヘテロ接合界面の一つにおいて二次元電子ガスが形成されており、これをチャネルとするヘテロ接合電界効果トランジスタであって、
前記ゲート電極に対して前記ソース電極の反対側に、前記ゲート絶縁膜を介するなどして前記第一半導体層と、前記第二半導体層の間で導通経路を形成するn型導電層と、を備えており、
そのn型導電層は選択的にイオン注入されているn型不純物をアニール処理で活性化することにより形成されており、
前記n型導電層は、イオンが10keV以上200keV未満の第一の加速エネルギーで加速して注入されており、前記半導体へテロ界面より深く注入イオンが達する第一のイオン注入と、併せて、イオンが200keV以上の第二の加速エネルギーで注入されており、前記p型窒化物半導体層より深く、かつ前記第二半導体層にまで注入イオンが達する第二のイオン注入によって選択的に形成されており、
前記n型導電層と前記n型不純物が注入されていないチャネル領域との接続部は、第二のイオン注入は施されておらず、第一のイオン注入だけが施されているが、しかし、該接続部において、注入されているn型不純物濃度が1×1020cm−3以上であるか、または、イオン化されているn型不純物濃度が1×1019cm−3以上であること、
を特徴とするヘテロ接合電界効果トランジスタ。
【請求項5】
前記n型導電層と前記n型不純物が注入されていないチャネル領域との接続部は、5℃以上35℃以下の温度条件下においてイオン化されているn型不純物濃度が1×1019cm−3以上であること、
を特徴とする請求項4に記載のヘテロ接合電界効果トランジスタ。
【請求項6】
キャリアであるゲート電極下の電子の走行方向が基板表面に略平行である窒化物半導体電界効果トランジスタであり、
ゲート絶縁膜を介するなどしてゲート電極と接する第一半導体層と、ドレイン電極と導通する第二半導体層または前記ドレイン電極とが、p型窒化物半導体層を挟んで相対しており、該p型窒化物半導体層とソース電極または前記ゲート電極との間に、少なくともキャリア走行層と前記キャリア走行層より電子親和力の小さい第三半導体層とが位置しており、少なくとも前記第三半導体層のヘテロ接合界面の一つにおいて二次元電子ガスが形成されており、これをチャネルとするヘテロ接合電界効果トランジスタであって、
前記ゲート電極に対して前記ソース電極の反対側に、前記ゲート絶縁膜を介するなどして前記第一半導体層と、前記第二半導体層の間で導通経路を形成するn型導電層と、を備えており、
そのn型導電層は選択的にイオン注入されているn型不純物をアニール処理で活性化することにより形成されており、
そのn型導電層は、イオン注入領域と側面および底面が接するトレンチ構造を有しており、
前記n型導電層は、注入イオンの投影飛程Di(μm)が前記トレンチ構造の深さDt(μm)より長くなるような加速エネルギーのイオン注入で形成されており(Di>Dt)、かつ、前記p型窒化物半導体層より深く前記第二半導体層にまで注入イオンが達しており、
前記n型導電層と前記n型不純物が注入されていないチャネル領域との接続部に注入されているn型不純物濃度が1×1018cm−3以下であること、
を特徴とするヘテロ接合電界効果トランジスタ。
【請求項7】
キャリアであるゲート電極下の電子の走行方向が基板表面に略平行である窒化物半導体電界効果トランジスタであり、
ゲート絶縁膜を介するなどしてゲート電極と接する第一半導体層と、ドレイン電極と導通する第二半導体層または前記ドレイン電極とが、p型窒化物半導体層を挟んで相対しており、該p型窒化物半導体層とソース電極または前記ゲート電極との間に、少なくともキャリア走行層と前記キャリア走行層より電子親和力の小さい第三半導体層とが位置しており、少なくとも前記第三半導体層のヘテロ接合界面の一つにおいて二次元電子ガスが形成されており、これをチャネルとするヘテロ接合電界効果トランジスタであって、
前記ゲート電極に対して前記ソース電極の反対側に、前記ゲート絶縁膜を介するなどして前記第一半導体層と、前記第二半導体層の間で導通経路を形成するn型導電層と、を備えており、
そのn型導電層は選択的にイオン注入されているn型不純物をアニール処理で活性化することにより形成されており、
そのn型導電層は、イオン注入領域と側面および底面が接するトレンチ構造を有しており、
前記n型導電層は、注入イオンの投影飛程Di(μm)が前記トレンチ構造の深さDt(μm)より長くなるような加速エネルギーのイオン注入で形成されており(Di>Dt)、かつ、前記p型窒化物半導体層より深く前記第二半導体層にまで注入イオンが達しており、
前記n型導電層と前記n型不純物が注入されていないチャネル領域との接続部において、注入されているn型不純物濃度が1×1020cm−3以上であるか、または、イオン化されているn型不純物濃度が1×1019cm−3以上であること、
を特徴とするヘテロ接合電界効果トランジスタ。
【請求項8】
前記n型導電層と前記n型不純物が注入されていないチャネル領域との接続部は、5℃以上35℃以下の温度条件下においてイオン化されているn型不純物濃度が1×1019cm−3以上であること、
を特徴とする請求項7に記載のヘテロ接合電界効果トランジスタ。
【請求項9】
キャリアであるゲート電極下の電子の走行方向が基板表面に略平行である窒化物半導体電界効果トランジスタであり、
ゲート絶縁膜を介するなどしてゲート電極と接する第一半導体層と、ドレイン電極と導通する第二半導体層または前記ドレイン電極とが、p型窒化物半導体層を挟んで相対しており、該p型窒化物半導体層とソース電極または前記ゲート電極との間に、少なくともキャリア走行層と前記キャリア走行層より電子親和力の小さい第三半導体層とが位置しており、少なくとも前記第三半導体層のヘテロ接合界面の一つにおいて二次元電子ガスが形成されており、これをチャネルとするヘテロ接合電界効果トランジスタであって、
前記ゲート電極に対して前記ソース電極の反対側に、前記ゲート絶縁膜を介するなどして前記第一半導体層と、前記第二半導体層の間で導通経路を形成するn型導電層と、を備えており、
そのn型導電層は選択的にイオン注入されているn型不純物をアニール処理で活性化することにより形成されており、
そのn型導電層は、イオン注入領域と側面および底面が接するトレンチ構造を有しており、
前記n型導電層は、イオンが第一の加速エネルギーで加速して注入されており、前記半導体へテロ界面より深く注入イオンが達する第一のイオン注入と、併せて、イオンが第二の加速エネルギーで注入されており、前記p型窒化物半導体層より深く、かつ前記第二半導体層にまで注入イオンが達する第二のイオン注入によって選択的に形成されており、
前記第一および第二のイオン注入領域は、互いにオーバーラップした領域を有しており、
前記n型導電層と前記n型不純物が注入されていないチャネル領域との接続部において、注入されているn型不純物濃度が1×1020cm−3以上であるか、または、イオン化されているn型不純物濃度が1×1019cm−3以上であり、
該接続部と前記イオン注入領域を介して前記ドレイン電極と導通された前記半導体層との間にn導通経路が形成されていること、
を特徴とするヘテロ接合電界効果トランジスタ。
【請求項10】
前記n型導電層と前記n型不純物が注入されていないチャネル領域との接続部は、5℃以上35℃以下の温度条件下においてイオン化されているn型不純物濃度が1×1019cm−3以上であること、
を特徴とする請求項9に記載のヘテロ接合電界効果トランジスタ。
【請求項11】
前記活性化アニール処理は、アニールに供されるエピタキシャル多層膜試料全体を被覆するアニール保護膜(スルー膜)が形成された後に、1100℃以上1300℃未満の範囲内の温度下で実行されること、
を特徴とする請求項1ないし10の何れか一項に記載のヘテロ接合電界効果トランジスタ。
【請求項12】
該p型窒化物半導体層の基板側に、基板側からソース電極側にかけて、Al組成比を低くする、またはIn組成比を高くする、またはAl組成比を低くし、かつ、In組成比を高くするよう組成変調したInxAlyGa1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)層が配されていること、
を特徴とする請求項1ないし11の何れか一項に記載のヘテロ接合電界効果トランジスタ。
【請求項13】
ゲート電極と半導体層との最近接部以外のゲート電極庇部が、ソース電極側よりもソース電極の反対側に長くなっていること、
を特徴とする請求項1ないし12の何れか一項に記載のヘテロ接合電界効果トランジスタ。
【請求項14】
キャリアであるゲート電極下の電子の走行方向が基板表面に略平行である窒化物半導体電界効果トランジスタであり、ゲート絶縁膜を介するなどしてゲート電極と接する第一半導体層と、ドレイン電極と導通する第二半導体層または前記ドレイン電極とが、p型窒化物半導体層を挟んで相対しており、該p型窒化物半導体層とソース電極または前記ゲート電極との間に、少なくともキャリア走行層と前記キャリア走行層より電子親和力の小さい第三半導体層とが位置しており、少なくとも前記第三半導体層のヘテロ接合界面の一つにおいて二次元電子ガスが形成されており、これをチャネルとするヘテロ接合電界効果トランジスタの製造方法であって、
前記ゲート電極に対して前記ソース電極の反対側に、前記ゲート絶縁膜を介するなどして前記第一半導体層と、前記第二半導体層の間で導通経路を形成するn型導電層と、を形成し、
そのn型導電層は選択的にイオン注入されたn型不純物をアニール処理で活性化することにより形成し、
前記n型導電層は、イオンを200keV以上の加速エネルギーで注入し、前記p型窒化物半導体層より深く、かつ前記第二半導体層にまで注入イオンが達する選択的イオン注入によって形成し、
前記n型導電層と前記n型不純物が注入されないチャネル領域との接続部に注入されたn型不純物濃度を1×1018cm−3以下とする、
を特徴とするヘテロ接合電界効果トランジスタの製造方法。
【請求項15】
キャリアであるゲート電極下の電子の走行方向が基板表面に略平行である窒化物半導体電界効果トランジスタであり、ゲート絶縁膜を介するなどしてゲート電極と接する第一半導体層と、ドレイン電極と導通する第二半導体層または前記ドレイン電極とが、p型窒化物半導体層を挟んで相対しており、該p型窒化物半導体層とソース電極または前記ゲート電極との間に、少なくともキャリア走行層と前記キャリア走行層より電子親和力の小さい第三半導体層とが位置しており、少なくとも前記第三半導体層のヘテロ接合界面の一つにおいて二次元電子ガスが形成されており、これをチャネルとするヘテロ接合電界効果トランジスタの製造方法であって、
前記ゲート電極に対して前記ソース電極の反対側に、前記ゲート絶縁膜を介するなどして前記第一半導体層と、前記第二半導体層の間で導通経路を形成するn型導電層と、を形成し、
そのn型導電層は選択的にイオン注入されたn型不純物をアニール処理で活性化することにより形成し、
前記n型導電層は、イオンを200keV以上の加速エネルギーで注入し、前記p型窒化物半導体層より深く、かつ前記第二半導体層にまで注入イオンが達する選択的イオン注入によって形成し、
前記n型導電層と前記n型不純物が注入されないチャネル領域との接続部において、注入するn型不純物濃度を1×1020cm−3以上とするか、または、イオン化するn型不純物濃度を1×1019cm−3以上とすること、
を特徴とするヘテロ接合電界効果トランジスタの製造方法。
【請求項16】
キャリアであるゲート電極下の電子の走行方向が基板表面に略平行である窒化物半導体電界効果トランジスタであり、ゲート絶縁膜を介するなどしてゲート電極と接する第一半導体層と、ドレイン電極と導通する第二半導体層または前記ドレイン電極とが、p型窒化物半導体層を挟んで相対しており、該p型窒化物半導体層とソース電極または前記ゲート電極との間に、少なくともキャリア走行層と前記キャリア走行層より電子親和力の小さい第三半導体層とが位置しており、少なくとも前記第三半導体層のヘテロ接合界面の一つにおいて二次元電子ガスが形成されており、これをチャネルとするヘテロ接合電界効果トランジスタの製造方法であって、
前記ゲート電極に対して前記ソース電極の反対側に、前記ゲート絶縁膜を介するなどして前記第一半導体層と、前記第二半導体層の間で導通経路を形成するn型導電層と、を形成し、
そのn型導電層は選択的にイオン注入されたn型不純物をアニール処理で活性化することにより形成し、
前記n型導電層は、イオンを10keV以上200keV未満の第一の加速エネルギーで加速して注入し、前記半導体へテロ界面より深く注入イオンが達する第一のイオン注入と、併せて、イオンを200keV以上の第二の加速エネルギーで注入し、前記p型窒化物半導体層より深く、かつ前記第二半導体層にまで注入イオンが達する第二のイオン注入によって選択的に形成し、
前記n型導電層と前記n型不純物が注入されないチャネル領域との接続部は、第二のイオン注入は施さず、第一のイオン注入だけを施すが、しかし、該接続部において、注入するn型不純物濃度を1×1020cm−3以上とするか、または、イオン化するn型不純物濃度を1×1019cm−3以上とすること、
を特徴とするヘテロ接合電界効果トランジスタの製造方法。
【請求項17】
キャリアであるゲート電極下の電子の走行方向が基板表面に略平行である窒化物半導体電界効果トランジスタであり、ゲート絶縁膜を介するなどしてゲート電極と接する第一半導体層と、ドレイン電極と導通する第二半導体層または前記ドレイン電極とが、p型窒化物半導体層を挟んで相対しており、該p型窒化物半導体層とソース電極または前記ゲート電極との間に、少なくともキャリア走行層と前記キャリア走行層より電子親和力の小さい第三半導体層とが位置しており、少なくとも前記第三半導体層のヘテロ接合界面の一つにおいて二次元電子ガスが形成されており、これをチャネルとするヘテロ接合電界効果トランジスタの製造方法であって、
前記ゲート電極に対して前記ソース電極の反対側に、前記ゲート絶縁膜を介するなどして前記第一半導体層と、前記第二半導体層の間で導通経路を形成するn型導電層と、を形成し、
そのn型導電層は選択的にイオン注入されたn型不純物をアニール処理で活性化することにより形成し、
そのn型導電層は、イオン注入領域と側面および底面が接するトレンチ構造を形成し、
前記n型導電層は、注入イオンの投影飛程Di(μm)が前記トレンチ構造の深さDt(μm)より長くなるような加速エネルギーのイオン注入で形成し(Di>Dt)、かつ、前記p型窒化物半導体層より深く前記第二半導体層にまで注入イオンを達せさせ、
前記n型導電層と前記n型不純物が注入されないチャネル領域との接続部に注入するn型不純物濃度を1×1018cm−3以下とすること、
を特徴とするヘテロ接合電界効果トランジスタの製造方法。
【請求項18】
キャリアであるゲート電極下の電子の走行方向が基板表面に略平行である窒化物半導体電界効果トランジスタであり、ゲート絶縁膜を介するなどしてゲート電極と接する第一半導体層と、ドレイン電極と導通する第二半導体層または前記ドレイン電極とが、p型窒化物半導体層を挟んで相対しており、該p型窒化物半導体層とソース電極または前記ゲート電極との間に、少なくともキャリア走行層と前記キャリア走行層より電子親和力の小さい第三半導体層とが位置しており、少なくとも前記第三半導体層のヘテロ接合界面の一つにおいて二次元電子ガスが形成されており、これをチャネルとするヘテロ接合電界効果トランジスタの製造方法であって、
前記ゲート電極に対して前記ソース電極の反対側に、前記ゲート絶縁膜を介するなどして前記第一半導体層と、前記第二半導体層の間で導通経路を形成するn型導電層と、を形成し、
そのn型導電層は選択的にイオン注入されたn型不純物をアニール処理で活性化することにより形成し、
そのn型導電層は、イオン注入領域と側面および底面が接するトレンチ構造を形成し、
前記n型導電層は、注入イオンの投影飛程Di(μm)が前記トレンチ構造の深さDt(μm)より長くなるような加速エネルギーのイオン注入で形成し(Di>Dt)、かつ、前記p型窒化物半導体層より深く前記第二半導体層にまで注入イオンを達せさせ、
前記n型導電層と前記n型不純物が注入されないチャネル領域との接続部において、注入するn型不純物濃度を1×1020cm−3以上とするか、または、イオン化するn型不純物濃度を1×1019cm−3以上とすること、
を特徴とするヘテロ接合電界効果トランジスタの製造方法。
【請求項19】
キャリアであるゲート電極下の電子の走行方向が基板表面に略平行である窒化物半導体電界効果トランジスタであり、
ゲート絶縁膜を介するなどしてゲート電極と接する第一半導体層と、ドレイン電極と導通する第二半導体層または前記ドレイン電極とが、p型窒化物半導体層を挟んで相対しており、該p型窒化物半導体層とソース電極または前記ゲート電極との間に、少なくともキャリア走行層と前記キャリア走行層より電子親和力の小さい第三半導体層とが位置しており、少なくとも前記第三半導体層のヘテロ接合界面の一つにおいて二次元電子ガスが形成されており、これをチャネルとするヘテロ接合電界効果トランジスタの製造方法であって、
前記ゲート電極に対して前記ソース電極の反対側に、前記ゲート絶縁膜を介するなどして前記第一半導体層と、前記第二半導体層の間で導通経路を形成するn型導電層と、を形成し、
そのn型導電層は選択的にイオン注入されたn型不純物をアニール処理で活性化することにより形成し、
そのn型導電層は、イオン注入領域と側面および底面が接するトレンチ構造を形成し、
前記n型導電層は、イオンを第一の加速エネルギーで加速して注入し、前記半導体へテロ界面より深く注入イオンが達する第一のイオン注入と、併せて、イオンを第二の加速エネルギーで注入し、前記p型窒化物半導体層より深く、かつ前記第二半導体層にまで注入イオンが達する第二のイオン注入によって選択的に形成し、
前記第一および第二のイオン注入領域は互いにオーバーラップさせ、
前記n型導電層と前記n型不純物が注入されないチャネル領域との接続部において、注入するn型不純物濃度を1×1020cm−3以上とするか、または、イオン化するn型不純物濃度を1×1019cm−3以上とし、
該接続部とイオン注入領域を介してドレイン電極と導通された半導体層との間にn導通経路を形成すること、
を特徴とするヘテロ接合電界効果トランジスタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−283048(P2010−283048A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133733(P2009−133733)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】