レーザ干渉測長装置の絶対位置測定方法、及びレーザ干渉測長装置
【課題】レーザ干渉測長装置に対する再帰反射体の絶対位置を精度良く測定できる絶対位置測定方法を提供する。
【解決手段】絶対位置測定方法は、予め設定された3つ以上の各位置に再帰反射体をそれぞれ位置付ける工程S1,S4と、回転機構を動作させ、前記各位置にそれぞれ位置付けられた再帰反射体に対して測定光を出射可能とする各姿勢に干渉計を設定する工程S2と、回転機構の動作量に基づいて前記各姿勢間での測定光の光軸の角度変化量を算出する工程S5と、干渉計から出力される信号に基づいて前記各姿勢間での前記光軸に沿う方向の再帰反射体の位置変化量を算出する工程S6と、前記各位置、角度変化量、及び位置変化量に基づいて、レーザ干渉測長装置の基準位置を算出する工程S7と、基準位置に対する再帰反射体の絶対座標を算出する工程S8とを備える。
【解決手段】絶対位置測定方法は、予め設定された3つ以上の各位置に再帰反射体をそれぞれ位置付ける工程S1,S4と、回転機構を動作させ、前記各位置にそれぞれ位置付けられた再帰反射体に対して測定光を出射可能とする各姿勢に干渉計を設定する工程S2と、回転機構の動作量に基づいて前記各姿勢間での測定光の光軸の角度変化量を算出する工程S5と、干渉計から出力される信号に基づいて前記各姿勢間での前記光軸に沿う方向の再帰反射体の位置変化量を算出する工程S6と、前記各位置、角度変化量、及び位置変化量に基づいて、レーザ干渉測長装置の基準位置を算出する工程S7と、基準位置に対する再帰反射体の絶対座標を算出する工程S8とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ干渉測長装置の絶対位置測定方法、及びレーザ干渉測長装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被測定物までの距離を測定する装置として、例えば、追尾式レーザ干渉計(レーザ干渉測長装置(以下、測長装置)が利用されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の測長装置は、以下に示す再帰反射体、光学系(干渉計)、2軸回転機構、及びコントローラを備える。
再帰反射体は、被測定物に取り付けられ、入射光を入射方向に沿う方向に反射させる。
干渉計は、測定光を出射するとともに、以下に示す信号をコントローラに出力する。
すなわち、干渉計は、再帰反射体にて反射された戻り光と参照用の参照光との干渉に基づく第1の信号をコントローラに出力する。また、干渉計は、測定光と再帰反射体による戻り光との光軸のずれ量に基づく第2の信号をコントローラに出力する。
2軸回転機構は、コントローラによる制御の下、干渉計の姿勢を変更することで、測定光の出射方向を変更する。
【0003】
コントローラは、干渉計からの第2の信号に基づいて、光軸のずれ量が0となるように、2軸回転機構の動作を制御し、再帰反射体を追尾する(測定光の出射方向を再帰反射体に向ける)。
ここで、再帰反射体を追尾するにあたって、すなわち、2軸回転機構の角度調整量を算出するにあたって、光軸のずれ量の他、測長装置の基準位置から再帰反射体までの距離が必要となる。
なお、コントローラが第1の信号に基づいて算出できるのは、戻り光と参照光との干渉による干渉縞の変化量、すなわち、再帰反射体における測定光の光軸に沿う方向の位置変化量(移動量)である。
【0004】
そして、特許文献1に記載の測長装置では、距離を測定する距離センサ等を別途追加することなく、以下に示す方法(絶対距離推定方法)により、測長装置の基準位置から再帰反射体までの距離を算出している。
特許文献1に記載の技術では、光軸のずれ量と、2軸回転機構の角度調整量と、測長装置の基準位置から再帰反射体までの距離との間に所定の関係があることに着目している。
そして、光軸のずれ量が既知の値となるまで2軸回転機構を動作させ、当該動作させた際の2軸回転機構の角度調整量と既知の値である光軸のずれ量とに基づいて、上記関係から測長装置の基準位置から再帰反射体までの距離を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−309677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の絶対距離推定方法では、光軸のずれ量を検出する位置検出器(例えば、受光素子)のダイナミックレンジが小さい場合には、測長装置の基準位置から再帰反射体までの距離が大きくなるにしたがって、算出される距離の精度が低下してしまう、という問題がある。
したがって、測長装置の基準位置から再帰反射体までの距離を精度良く測定できる、すなわち、測長装置(基準位置)に対する再帰反射体の絶対位置を精度良く測定できる技術が要望されている。
【0007】
本発明の目的は、レーザ干渉測長装置に対する再帰反射体の絶対位置を精度良く測定できる絶対位置測定方法、及びレーザ干渉測長装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の絶対位置測定方法は、入射光を反射させる再帰反射体と、測定光を出射するとともに前記再帰反射体による戻り光と参照用の参照光との干渉に基づく信号を出力する干渉計と、前記干渉計を回転させ前記測定光の出射方向を変更する回転機構とを備えたレーザ干渉測長装置の絶対位置測定方法であって、予め設定された3つ以上の各位置に前記再帰反射体をそれぞれ位置付ける反射体位置付け工程と、前記回転機構を動作させ、前記各位置にそれぞれ位置付けられた前記再帰反射体に対して前記測定光を出射可能とする各姿勢に前記干渉計を設定する干渉計回転工程と、前記回転機構の動作量に基づいて、前記各姿勢間での前記測定光の光軸の角度変化量を算出する角度変化量算出工程と、前記干渉計から出力される信号に基づいて、前記各姿勢間での前記光軸に沿う方向の前記再帰反射体の位置変化量を算出する位置変化量算出工程と、前記各位置、前記角度変化量、及び前記位置変化量に基づいて、前記レーザ干渉測長装置の基準位置を算出する基準位置算出工程と、前記基準位置に対する前記再帰反射体の絶対座標を算出する絶対座標算出工程とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の絶対位置測定方法では、測長装置に対する再帰反射体の絶対位置(絶対座標)を精度良く測定するために、以下に示すように測長装置の基準位置(空間座標)を把握した上で、当該基準位置に対する再帰反射体の絶対座標(絶対位置)を算出するものとしている。
先ず、基準位置と、再帰反射体を位置付ける位置として予め設定された2つの位置とを結ぶ三角形を考える。
この場合、(1)基準位置、(2)前記2つの位置、(3)前記2つの位置間の距離、(4)前記2つの位置のうち一方の位置と基準位置とを結ぶ直線と他方の位置と基準位置とを結ぶ直線とのなす角度、(5)前記一方の位置及び基準位置間の距離と前記他方の位置及び基準位置間の距離との差の間には、所定の関係式が成り立つ。
【0010】
ここで、上記(2)については、予め設定された既知のものである。上記(3)も同様である。
また、上記(4)について、前記一方の位置と基準位置とを結ぶ直線は、干渉計から再帰反射体に出射される測定光の光軸に相当する。前記他方の位置と基準位置とを結ぶ直線も同様である。
このため、上記(4)は、回転機構を動作させて、前記一方の位置に位置付けられた再帰反射体に測定光を出射可能とする姿勢から前記他方の位置に位置付けられた再帰反射体に測定光を出射可能とする姿勢に干渉計を回転させた際の回転機構の動作量に基づいて算出することができる(角度変化量算出工程)。
【0011】
また、上記(5)については、再帰反射体が前記一方の位置に位置付けられている場合に干渉計から出力される信号と、前記他方の位置に位置付けられている場合に干渉計から出力される信号とに基づいて、算出することができる(位置変化量算出工程)。
したがって、上述した関係式は、上記(1)の基準位置のみを変数とする関係式とすることができる。
【0012】
そして、上述した三角形については、再帰反射体を位置付ける位置として少なくとも3つ以上の各位置を設定しておけば、少なくとも3つの異なる三角形を想定することができる。
すなわち、少なくとも3つの異なる三角形に基づいて、上記(1)の基準位置のみを変数とする関係式を少なくとも3つ得ることができる。
したがって、3つの関係式を連立方程式として解けば、上記(1)の基準位置を算出することができる(基準位置算出工程)。
そして、基準位置が算出されれば、例えば、算出された基準位置を原点とした場合での前記各位置のいずれかの位置の空間座標を求めれば、基準位置に対する再帰反射体の絶対座標を算出できる(絶対座標算出工程)。
以上のように、本発明の絶対位置測定方法は、反射体位置付け工程、干渉計回転工程、角度変化量算出工程、位置変化量算出工程、基準位置算出工程、及び絶対座標算出工程を備えるので、測長装置(基準位置)に対する再帰反射体の絶対位置を測定できる。
また、従来のように測定光と戻り光との光軸のずれ量に基づいて再帰反射体の絶対位置を測定するものではないため、測長装置(基準位置)から再帰反射体までの距離が大きくなった場合であっても、当該距離を精度良く算出できる。
【0013】
本発明の絶対位置測定方法では、前記反射体位置付け工程、前記干渉計回転工程、前記角度変化量算出工程、前記位置変化量算出工程、及び前記基準位置算出工程を複数回、繰り返し実施する繰返実施工程と、前記繰返実施工程により算出される複数の前記基準位置を平均化して平均基準位置を算出する平均化工程とを備え、前記絶対座標算出工程は、前記平均基準位置に対する前記再帰反射体の絶対座標を算出することが好ましい。
【0014】
ところで、反射体位置付け工程において、予め設定された3つ以上の各位置に再帰反射体をそれぞれ位置付ける際、前記各位置に再帰反射体が精度良く位置決めされていない場合には、当該誤差に応じて、算出される基準位置の精度が低下してしまう。すなわち、基準位置に対する再帰反射体の絶対座標も同様である。
本発明では、反射体位置付け工程、干渉計回転工程、角度変化量算出工程、位置変化量算出工程、及び基準位置算出工程を複数回、繰り返し実施する(繰返実施工程)。
このことにより、繰返実施工程を実施することで複数の基準位置が算出されることとなり、複数の基準位置を平均化すれば(平均化工程)、測長装置の基準位置(平均基準位置)を精度良く算出できる。すなわち、基準位置に対する再帰反射体の絶対座標を精度良く算出できる。
【0015】
本発明の絶対位置測定方法では、前記反射体位置付け工程は、前記再帰反射体を3つの前記各位置にのみそれぞれ位置付けることが好ましい。
本発明では、基準位置を算出できる最低限の数である3つの位置のみに再帰反射体を位置付けるため、短時間で基準位置に対する再帰反射体の絶対座標を算出できる。
【0016】
本発明のレーザ干渉測長装置は、入射光を反射させる再帰反射体と、測定光を出射するとともに前記再帰反射体による戻り光と参照用の参照光との干渉に基づく信号を出力する干渉計と、前記干渉計を回転させ前記測定光の出射方向を変更する回転機構とを備えたレーザ干渉測長装置であって、前記回転機構の動作により、予め設定された3つ以上の各位置にそれぞれ位置付けられた前記再帰反射体に対して前記測定光を出射可能とする各姿勢に前記干渉計が回転された際に、前記回転機構の動作量に基づいて、前記各姿勢間での前記測定光の光軸の角度変化量を算出する角度変化量算出手段と、前記干渉計から出力される信号に基づいて、前記各姿勢間での前記光軸に沿う方向の前記再帰反射体の位置変化量を算出する位置変化量算出手段と、前記各位置、前記角度変化量、及び前記位置変化量に基づいて、当該レーザ干渉測長装置の基準位置を算出する基準位置算出手段と、前記基準位置に対する前記再帰反射体の絶対座標を算出する絶対座標算出手段とを備えることを特徴とする。
本発明の測長装置は、上述した絶対位置測定方法を実施する装置であるため、上述した絶対位置測定方法と同様の作用及び効果を享受できる。
【0017】
本発明のレーザ干渉測長装置では、前記測定光及び前記戻り光の光軸のずれ量を検出するずれ量検出手段と、前記ずれ量が所定の範囲内となるように前記回転機構の動作を制御する追尾制御手段とを備えることが好ましい。
本発明では、測長装置は、上述したずれ量検出手段及び追尾制御手段を備えるため、上述した絶対位置測定方法を実施するにあたり、干渉計回転工程において、再帰反射体を追尾して、再帰反射体に対して測定光を出射可能とする姿勢に干渉計を容易に設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態における追尾式レーザ干渉測長装置を示すブロック図。
【図2】第1実施形態における干渉計の光学系を模式的に示す図。
【図3】第1実施形態における干渉計の光学系を模式的に示す図。
【図4】第1実施形態における絶対位置測定方法を説明するフローチャート。
【図5】第1実施形態における絶対位置測定方法を説明するための図。
【図6】第1実施形態における絶対位置測定方法を説明するための図。
【図7】第1実施形態における絶対位置測定方法を説明するための図。
【図8】第2実施形態における追尾式レーザ干渉測長装置を示すブロック図。
【図9】第2実施形態における絶対位置測定方法を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
〔追尾式レーザ干渉測長装置の構成〕
図1は、第1実施形態における追尾式レーザ干渉測長装置1(以下、測長装置1)を示すブロック図である。
測長装置1は、被測定物Wを追尾し、当該測長装置1(後述する基準位置P)から被測定物W(後述する再帰反射体10)までの距離を測定する装置である。
この測長装置1は、図1に示すように、再帰反射体10と、干渉計20と、2軸回転機構30と、制御装置40とを備える。
【0020】
〔再帰反射体の構成〕
再帰反射体10は、レトロリフレクタやキャッツアイ等で構成され、入射光を入射方向に沿って反射させる。
より具体的に、再帰反射体10は、入射光と反射光とが平行となるとともに、入射光と反射光とが再帰反射体10の中心に対して点対称となるように入射光を反射させる。したがって、再帰反射体10の中心から離れた位置に光が入射した場合には、入射光と反射光とがずれることとなる。
そして、再帰反射体10は、図1に示すように、被測定物Wに取り付けられる。
【0021】
〔干渉計の構成〕
図2及び図3は、干渉計20の光学系を模式的に示す図である。
干渉計20は、図1ないし図3に示すように、再帰反射体10までの距離を測定するための測長光学系21と、再帰反射体10を追尾するための追尾光学系22とを備える。
なお、各光学系21,22の構成については、公知であるので簡略に説明する。
【0022】
測長光学系21は、図2または図3に示すように、レーザ光源211と、スプリッタ212と、参照面としての平面鏡(図示略)と、PD(Photo Detector)を有する第1受光手段213とを備える。
追尾光学系22は、図2または図3に示すように、スプリッタ221と、4分割PD(Photo Diode)または二次元PSD(Position Sensitive Detector)を有するずれ量検出手段としての第2受光手段222とを備える。
【0023】
このような干渉計20では、レーザ光源211から出射されたレーザ光は、スプリッタ212にて参照用の参照光(図示略)と、測定光とに分割される。前記参照光は、前記平面鏡にて反射された後、スプリッタ212にて第1受光手段213側に反射される。
一方、測定光は、スプリッタ221を透過した後、再帰反射体10にて向けて出射され、再帰反射体10にて反射されて戻り光となった後、再度、干渉計20に入射する。この際、再帰反射体10が移動しているために、測定光が再帰反射体10の中心に対してはなれた位置に入射した場合(図3)には、測定光が入射方向に対してずれて反射されることとなり、測定光と戻り光とがずれることとなる。
【0024】
干渉計20に入射した戻り光は、一部がスプリッタ221にて反射され、第2受光手段222に受光される。この際、戻り光は、ずれ量に応じて第2受光手段222(4分割PD)の受光面の中心からずれて入射することとなる。第2受光手段222は、受光面が上下左右に4分割されており、各分割面に入射する戻り光の受光量に応じた4つの受光信号を制御装置40に出力する。すなわち、第2受光手段222は、戻り光のずれ量及び受光量に応じた第2受光信号を出力する。
【0025】
一方、スプリッタ221を透過した残りの戻り光は、スプリッタ212を透過した後、前記平面鏡にて反射された前記参照光との干渉光となり、第1受光手段213に受光される。戻り光と参照光との干渉光を受光した第1受光手段213は、干渉計20と再帰反射体10との距離の変位及び受光量に応じた第1受光信号を制御装置40に出力する。
【0026】
〔2軸回転機構の構成〕
2軸回転機構30は、制御装置40による制御の下、干渉計20からの測定光の出射方向を変更する機構である。
この2軸回転機構30は、図1に示すように、測定光の方位角θaを変更する第1回転機構31と、測定光の仰角θeを変更する第2回転機構32とを備える。
そして、各回転機構31,32には、図1に示すように、各回転機構31,32の所定位置からの回転角度、すなわち、測定光の方位角θa及び仰角θeを検出する角度検出センサ33が取り付けられている。
この角度検出センサ33は、検出した方位角θa及び仰角θeに応じた角度検出信号を制御装置40に出力する。
なお、各回転機構31,32の回転軸が交わる点は、基準位置P(図1)とされる。
【0027】
〔制御装置の構成〕
制御装置40は、CPU(Central Processing Unit)や、メモリ等を備え、メモリに記憶されたプログラムにしたがって、測長装置1全体を制御する。
なお、以下では、制御装置40において、再帰反射体10を追尾する機能、及び基準位置Pに対する再帰反射体10の絶対位置(絶対座標)を測定する機能を説明し、その他の機能については説明を省略する。
この制御装置40は、図1に示すように、追尾制御手段41と、角度変化量算出手段42と、位置変化量算出手段43と、基準位置算出手段44と、絶対座標算出手段45と、距離算出手段46と、メモリ47等を備える。
【0028】
追尾制御手段41は、距離算出手段46にて算出された基準位置Pから再帰反射体10までの距離と、第2受光手段222からの第2受光信号(戻り光のずれ量)とに基づいて、2軸回転機構30の角度調整量(方位角θa及び仰角θeの角度調整量)を算出する。
そして、追尾制御手段41は、算出した角度調整量にて2軸回転機構30を動作させ、再帰反射体10を追尾する(再帰反射体10の中心に測定光を出射可能とする姿勢に干渉計20を回転させる)。
【0029】
角度変化量算出手段42は、角度検出センサ33からの角度検出信号に基づいて、干渉計20から出射される測定光の光軸の角度変化量を算出する。
例えば、再帰反射体10がある位置から別の位置に移動したとする。
この場合に、角度変化量算出手段42は、角度検出信号に基づいて、前記ある位置に位置付けられた再帰反射体10の中心に出射される測定光の光軸と、前記別の位置に位置付けられた再帰反射体10の中心に出射される測定光の光軸とのなす角度を角度変化量として算出する。
【0030】
位置変化量算出手段43は、第1受光手段213からの第1受光信号に基づいて、前記ある位置に位置付けられた再帰反射体10と、前記別の位置に位置付けられた再帰反射体10との測定光の光軸に沿う方向の位置変化量を算出する。
ここで、再帰反射体10による戻り光と前記参照光との干渉により生じる干渉縞の変化量は、再帰反射体10における測定光の光軸に沿う方向の移動量(位置変化量)に相当する。
したがって、位置変化量算出手段43は、前記ある位置に位置付けられた再帰反射体10による戻り光と前記参照光との干渉による干渉縞(第1受光信号)と、前記別の位置に位置付けられた再帰反射体10による戻り光と前記参照光との干渉による干渉縞(第1受光信号)との変化量から位置変化量を算出する。
【0031】
基準位置算出手段44は、具体的には後述するが、再帰反射体10が位置付けられる予め設定された4つの位置P1〜P4、角度変化量、及び位置変化量に基づいて、基準位置Pを算出する。
絶対座標算出手段45は、具体的には後述するが、基準位置算出手段44にて算出された基準位置Pに基づいて、基準位置Pに対する4つの位置P1〜P4のいずれかの位置の絶対座標を算出する。
【0032】
距離算出手段46は、絶対座標算出手段45にて算出された絶対座標に基づいて、基準位置Pから前記いずれかの位置までの距離(基準距離)を算出する。
また、距離算出手段46は、算出した基準距離に対して、位置変化量算出手段43にて算出された位置変化量を適宜、加えていくことで、基準位置Pから再帰反射体10が位置付けられた任意の位置(位置P1〜P4以外)までの距離を算出する。
【0033】
メモリ47は、測長装置1全体を制御するためのプログラムや、上述した各手段41〜46にて用いられる情報の他、後述する式(1)に示す位置P1〜P4の空間座標等が記憶されている。
【0034】
〔絶対位置測定方法〕
次に、基準位置Pに対する4つの位置P1〜P4のいずれかの絶対位置(絶対座標)を測定する方法(絶対位置測定方法)について説明する。
図4は、絶対位置測定方法を説明するフローチャートである。
図5ないし図7は、絶対位置測定方法を説明するための図である。
なお、以下で説明する位置P1〜P4は、所定のXYZ直交座標系(基準位置Pが原点とは限らない直交座標系)において、空間座標が既知の値に設定されているものである。
以下では、説明の便宜上、位置P1〜P4の空間座標を以下の式(1)に示す空間座標とする。
また、位置P1〜P4は、全ての位置P1〜P4が同一平面上にあるものではない。
【0035】
[数1]
P1=(P1X,P1Y,P1Z)
P2=(P2X,P2Y,P2Z)
P3=(P3X,P3Y,P3Z)
P4=(P4X,P4Y,P4Z)・・・(1)
【0036】
先ず、作業者は、再帰反射体10を位置P1〜P4のいずれかの位置に位置付ける(ステップS1)。
本実施形態では、被測定物Wは、被測定物Wを移動させることで対象物を測定または加工する産業機械に設けられ、当該産業機械により駆動されるものである。
すなわち、作業者は、前記産業機械を動作させることで、再帰反射体10を位置P1〜P4のいずれかの位置に位置付ける。
ここで、前記産業機械としては、例えば、三次元測定機が挙げられ、被測定物Wとしては、例えば、対象物を測定するためのプローブが取り付けられた三次元測定機のスライダが挙げられる。
なお、ステップS1において、測長装置1も動作しているものとする。
そして、追尾制御手段41は、上述した処理により、2軸回転機構30の動作を制御し、再帰反射体10の中心に向けて測定光を出射可能な姿勢に干渉計20を回転させる(S2:干渉計回転工程)。
【0037】
次に、制御装置40は、ステップS1において再帰反射体10が位置P1〜P4のいずれかの位置に位置付けられた際に、第1受光手段213から出力される第1受光信号、及び角度検出センサ33から出力される角度検出信号を取得する。
そして、制御装置40は、第1受光信号に応じた情報と、角度検出信号に応じた情報とをメモリ47に記憶させる(ステップS3)。
なお、以下では、説明の便宜上、メモリ47に記憶させた情報として、再帰反射体10が位置P1に位置付けられた際に記憶させた情報を第1情報とし、位置P2に位置付けられた際に記憶させた情報を第2情報とし、位置P3に位置付けられた際に記憶させた情報を第3情報とし、位置P4に位置付けられた際に記憶させた情報を第4情報とする。
【0038】
そして、位置P1〜P4の全ての位置に再帰反射体10を位置付けるまで上述したステップS1〜S3を繰り返し実施する(ステップS4)。
なお、上述したステップS1,S4が本発明に係る反射体位置付け工程に相当する。
ステップS1〜S3を繰り返し実施することでメモリ47に第1〜第4情報を記憶させた後、角度変化量算出手段42は、メモリ47に記憶された第1〜第4情報に基づいて、角度変化量を算出する(ステップS5:角度変化量算出工程)。
具体的に、角度変化量算出手段42は、第1,第2情報に含まれる角度検出信号に応じた各情報(2軸回転機構30の動作量に相当)に基づいて、位置P1に位置付けられた再帰反射体10の中心に出射される測定光の光軸と、位置P2に位置付けられた再帰反射体10の中心に出射される測定光の光軸とのなす角度θ12(図5)を算出する。
また、同様の処理により、角度変化量算出手段42は、第2,第3情報に含まれる角度検出信号に応じた各情報に基づいて角度θ23(図6)、第3,第4情報に含まれる角度検出信号に応じた各情報に基づいて角度θ34(図7)を算出する。
そして、角度変化量算出手段42は、算出した角度θ12,θ23,θ34をメモリ47に記憶させる。
【0039】
ステップS5の後、位置変化量算出手段43は、メモリ47に記憶された第1〜第4情報に基づいて、位置変化量を算出する(ステップS6:位置変化量算出工程)。
具体的に、位置変化量算出手段43は、第1,第2情報に含まれる第1受光信号に応じた各情報に基づいて、位置P1に位置付けられた再帰反射体10と、位置P2に位置付けられた再帰反射体10との測定光の光軸に沿う方向の位置変化量ΔL12(図5)を算出する。
また、同様の処理により、位置変化量算出手段43は、第2,第3情報に含まれる第1受光信号に応じた各情報に基づいて位置変化量ΔL23(図6)、第3,第4情報に含まれる第1受光信号に応じた各情報に基づいて位置変化量ΔL34(図7)を算出する。
そして、位置変化量算出手段43は、算出した位置変化量ΔL12,ΔL23,ΔL34をメモリ47に記憶させる。
【0040】
ステップS6の後、基準位置算出手段44は、メモリ47に記憶された位置P1〜P4の空間座標(式(1))、角度θ12,θ23,θ34、及び位置変化量ΔL12,ΔL23,ΔL34に基づいて、前記所定のXYZ直交座標系での基準位置P(空間座標)を算出する(ステップS7:基準位置算出工程)。
なお、基準位置算出手段44にて基準位置Pを算出する原理は、以下の通りである。
【0041】
〔基準位置Pの算出原理〕
先ず、前記所定のXYZ直交座標系での基準位置Pの空間座標を(X,Y,Z)とし、図5に示すように、基準位置Pと位置P1,P2との位置関係に着目する。
そして、基準位置Pと位置P1,P2との各距離をL1,L2(図5)とすると、以下の式(2),(3)の関係が成り立つ。
なお、距離L2は、L1+ΔL12に相当するものである。
【0042】
[数2]
(X−P1x)2+(Y−P1Y)2+(Z−P1Z)2=L12・・・(2)
【0043】
[数3]
(X−P2x)2+(Y−P2Y)2+(Z−P2Z)2=(L1+ΔL12)2
・・・(3)
【0044】
ここで、式(2),(3)は、共に球の方程式であるため、式(2),(3)を連立方程式として解くことで、式(2)に示す球と、式(3)に示す球との複数の交点を含む平面12(図5)の方程式を得ることができる。
なお、平面12は、以下の式(4)で与えられる。
【0045】
[数4]
(−2P1x+2P2x)X+(−2P1Y+2P2Y)Y+(−2P1Z+2P2Z)Z
+P1x2+P1Y2+P1Z2−P2x2−P2Y2−P2Z2
=−2ΔL12・L1−ΔL122
・・・(4)
【0046】
また、図5に示すように、基準位置P、位置P1,P2で結ばれる三角形を考えた場合に、余弦定理から以下の式(5)が成り立つ。
式(5)中、LP12は、位置P1と位置P2との距離である。
なお、各位置P1,P2の空間座標は、上述したように既知の値に設定されているため、距離LP12も既知の値である。
【0047】
[数5]
LP122=(L1+ΔL12)2+L12−2L1(L1+ΔL12)cosθ12
・・・(5)
【0048】
そして、式(5)からL1を求め、L1を式(4)に代入することで、式(4)からL1を消去する。
なお、以下では、説明の便宜上、式(5)から求めたL1を式(4)に代入してL1を消去した数式を第1の数式と記載する。
【0049】
次に、図6に示すように、基準位置Pと位置P2,P3との位置関係に着目する。
そして、基準位置Pと位置P3との距離をL3(図6)とすると、式(1)〜(4)と同様の考え方から、平面23(図6)の方程式を得ることができる。
なお、距離L3は、L2+ΔL23に相当するものである。
そして、平面23は、以下の式(6)で与えられる。
【0050】
[数6]
(−2P2x+2P3x)X+(−2P2Y+2P3Y)Y+(−2P2Z+2P3Z)Z
+P2x2+P2Y2+P2Z2−P3x2−P3Y2−P3Z2
=−2ΔL23・L2−ΔL232
・・・(6)
【0051】
また、図6に示すように、基準位置P、位置P2,P3で結ばれる三角形を考えた場合に、余弦定理から以下の式(7)が成り立つ。
式(7)中、LP23は、位置P2と位置P3との距離である。
なお、距離LP23は、距離LP12と同様に、既知の値である。
【0052】
[数7]
LP232=(L2+ΔL23)2+L22−2L2(L2+ΔL23)cosθ23
・・・(7)
【0053】
そして、式(7)からL2を求め、L2を式(6)に代入することで、式(6)からL2を消去する。
なお、以下では、説明の便宜上、式(7)から求めたL2を式(6)に代入してL2を消去した数式を第2の数式と記載する。
【0054】
次に、図7に示すように、基準位置Pと位置P3,P4との位置関係に着目する。
そして、基準位置Pと位置P4との距離をL4(図7)とすると、式(1)〜(4)と同様の考え方から、平面34(図7)の方程式を得ることができる。
なお、距離L4は、L3+ΔL34に相当するものである。
そして、平面34は、以下の式(8)で与えられる。
【0055】
[数8]
(−2P3x+2P4x)X+(−2P3Y+2P4Y)Y+(−2P3Z+2P4Z)Z
+P3x2+P3Y2+P3Z2−P4x2−P4Y2−P4Z2
=−2ΔL34・L3−ΔL342
・・・(8)
【0056】
また、図7にしめすように、基準位置P、位置P3,P4で結ばれる三角形を考えた場合に、余弦定理から以下の式(9)が成り立つ。
式(9)中、LP34は、位置P3と位置P4との距離である。
なお、距離LP34は、距離LP12,LP23と同様に、既知の値である。
【0057】
[数9]
LP342=(L3+ΔL34)2+L32−2L3(L3+ΔL34)cosθ34
・・・(9)
【0058】
そして、式(9)からL3を求め、L3を式(8)に代入することで、式(8)からL3を消去する。
なお、以下では、説明の便宜上、式(9)から求めたL3を式(8)に代入してL3を消去した数式を第3の数式と記載する。
【0059】
平面12、平面23、及び平面34で表される3つの平面は、全て基準位置Pを通るものである。
そこで、基準位置算出手段44は、メモリ47に記憶された位置P1,P2の空間座標、角度θ12、及び位置変化量ΔL12と位置P1,P2の空間座標から得られる距離LP12とを第1の数式に代入して得られる数式と、位置P2,P3の空間座標、角度θ23、及び位置変化量ΔL23と位置P2,P3の空間座標から得られる距離LP23とを第2の数式に代入して得られる数式と、位置P3,P4の空間座標、角度θ34、及び位置変化量ΔL34と位置P3,P4の空間座標から得られる距離LP34とを第3の数式に代入して得られる数式との3つの数式を連立方程式として解くことで、X,Y,Zの値、すなわち、前記所定のXYZ直交座標系での基準位置P(空間座標)を算出する。
【0060】
そして、図4に戻って、絶対座標算出手段45は、ステップS7において基準位置算出手段44にて算出された基準位置Pの空間座標(X,Y,Z)に基づいて、基準位置Pに対する4つの位置P1〜P4のいずれかの位置の絶対座標を算出する(ステップS8:絶対座標算出工程)。
具体的に、絶対座標算出手段45は、基準位置Pの空間座標(X,Y,Z)を原点(0,0,0)とした時の位置P1〜P4のいずれかの位置の絶対座標を算出する。
以上のステップS1〜S8により、基準位置Pに対する位置P1〜P4のいずれかの絶対座標を測定できる。
【0061】
上述した第1実施形態によれば、以下の効果がある。
本実施形態では、絶対位置測定方法は、反射体位置付け工程S1,S4、干渉計回転工程S2、角度変化量算出工程S5、位置変化量算出工程S6、基準位置算出工程S7、及び絶対座標算出工程S8を備えるので、基準位置Pに対する再帰反射体10の絶対座標を測定できる。
また、従来のように測定光と戻り光との光軸のずれ量に基づいて再帰反射体10の絶対座標を測定するものではないため、基準位置Pから再帰反射体10までの距離が大きくなった場合であっても、前記絶対座標に基づいて、当該距離を精度良く算出できる。
また、測長装置1は、第2受光手段222及び追尾制御手段41を備えるため、絶対位置測定方法を実施するにあたり、干渉計回転工程S2において、再帰反射体10を追尾して、再帰反射体10に対して測定光を出射可能とする姿勢に干渉計20を容易に設定できる。
【0062】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。
図8は、第2実施形態における測長装置1を示すブロック図である。
なお、以下では、前記第1実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、その詳細な説明については省略する。
本実施形態では、前記第1実施形態に対して、絶対位置測定方法が異なるものである。そして、当該絶対位置測定方法を実現するために、前記第1実施形態に対して、図8に示すように、制御装置40に平均化手段48を追加している。
【0063】
図9は、第2実施形態における絶対位置測定方法を説明するフローチャートである。
前記第1実施形態の絶対位置測定方法では、4つの位置P1〜P4に再帰反射体10をそれぞれ位置付けて、基準位置Pに対する位置P1〜P4のいずれかの位置の絶対座標を算出していた。
これに対して、本実施形態では、4つの位置を一組とし、位置P1〜P4、位置P5〜P8、・・・位置P(4n−3)〜P(4n)のn(nは2以上)組の計4n個の位置に再帰反射体10を位置付けて、基準位置Pに対する位置P1〜P(4n)のいずれかの位置の絶対座標を算出する。
なお、各組の4つの位置は、当該4つの位置全てが同一平面上にあるものではない。
【0064】
具体的に、先ず、ステップS1〜S7により、1組目の4つの位置P1〜P4に再帰反射体10をそれぞれ位置付けて、基準位置Pを算出する。
そして、上記n組の計4n個の全ての位置に再帰反射体10を位置付けるまで、上記組を変更しながら(ステップS9)、ステップS1〜S7を繰り返し実施する(ステップS10:繰返実施工程)。
ステップS1〜S7をn回実施した後、平均化手段48は、ステップS1〜S7をn回実施することで得られたn個の基準位置P(空間座標)を平均化して平均基準位置を算出する(ステップS11:平均化工程)。
そして、絶対座標算出手段45は、ステップS11で算出された平均基準位置に基づいて、前記第1実施形態と同様に、位置P1〜P(4n)のいずれかの位置の絶対座標を算出する(ステップS8)。
【0065】
上述した第2実施形態によれば、前記第1実施形態と同様の効果の他、以下の効果がある。
本実施形態では、絶対位置測定方法は、反射体位置付け工程S1,S4、干渉計回転工程S2、角度変化量算出工程S5、位置変化量算出工程S6、及び基準位置算出工程S7を複数回、繰り返し実施する(繰返実施工程S10)。
このことにより、繰返実施工程S10を実施することで複数の基準位置Pが算出されることとなり、複数の基準位置Pを平均化すれば(平均化工程S11)、基準位置P(平均基準位置)を精度良く算出できる。すなわち、基準位置に対する再帰反射体10の絶対座標を精度良く算出できる。
【0066】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
本実施形態では、前記第1実施形態に対して、絶対位置測定方法が異なるものである。
具体的に、前記第1実施形態の絶対位置測定方法では、4つの位置P1〜P4に再帰反射体10をそれぞれ位置付けて、基準位置Pに対する位置P1〜P4のいずれかの位置の絶対座標を算出していた。
これに対して、本実施形態では、3つの位置P1〜P3にのみ再帰反射体10をそれぞれ位置付けて、基準位置Pに対する位置P1〜P3のいずれかの位置の絶対座標を算出するものである。
なお、3つの位置P1〜P3は、同一直線上にないものとする。
【0067】
上記相対位置の算出原理で説明したように、3つの平面(前記第1実施形態では、平面12、平面23、及び平面34)の数式が得られれば、基準位置Pを算出できるものである。
すなわち、3つの位置P1〜P3に再帰反射体10を位置付けた場合であっても、基準位置P、位置P1,P2で結ばれる三角形に着目した場合での平面12(図5)と、基準位置P、位置P2,P3で結ばれる三角形に着目した場合での平面23(図6)の他、基準位置P、位置P3,P1で結ばれる三角形に着目した場合での平面も得ることができる。
したがって、上記3つの平面の数式から、基準位置Pを算出できる。
【0068】
上述した第3実施形態によれば、前記第1実施形態と同様の効果の他、以下の効果がある。
本実施形態では、基準位置Pを算出できる最低限の数である3つの位置のみに再帰反射体10を位置付けるため、短時間で基準位置Pに対する再帰反射体10の絶対座標を算出できる。
【0069】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記各実施形態では、測長装置1は、第2受光手段222及び追尾制御手段41を備えた追尾式レーザ干渉測長装置で構成されていたが、これに限らず、追尾制御手段41を省略し、すなわち、自動的に再帰反射体10を追尾する機能を省略しても構わない。
前記各実施形態では、絶対位置測定方法を実施する際に、産業機械を駆動することで再帰反射体10を位置P1〜P4等に位置付けていたが、これに限らない。例えば、絶対位置測定方法を実施する際に、予め用意した複数の再帰反射体10を位置P1〜P4等にそれぞれ位置付けても構わない。
前記実施形態では、回転機構30は、2つの回転軸を中心として干渉計20を回転させていたが、これに限らない。例えば、回転機構としては、1つの回転軸のみを中心として干渉計20を回転させてもよく、3つの以上の回転軸を中心として干渉計20を回転させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、入射光を反射させる再帰反射体と、測定光を出射するとともに、再帰反射体による戻り光と参照用の参照光との干渉に基づく信号を出力する干渉計と、干渉計を回転させ測定光の出射方向を変更する回転機構とを備えたレーザ干渉測長装置に利用できる。
【符号の説明】
【0071】
1・・・レーザ干渉測長装置
10・・・再帰反射体
20・・・干渉計
30・・・回転機構
41・・・追尾制御手段
222・・・第2受光手段(ずれ量検出手段)
S1,S4・・・反射体位置付け工程
S2・・・干渉計回転工程
S5・・・角度変化量算出工程
S6・・・位置変化量算出工程
S7・・・基準位置算出工程
S8・・・絶対座標算出工程
S10・・・繰返実施工程
S11・・・平均化工程
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ干渉測長装置の絶対位置測定方法、及びレーザ干渉測長装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被測定物までの距離を測定する装置として、例えば、追尾式レーザ干渉計(レーザ干渉測長装置(以下、測長装置)が利用されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の測長装置は、以下に示す再帰反射体、光学系(干渉計)、2軸回転機構、及びコントローラを備える。
再帰反射体は、被測定物に取り付けられ、入射光を入射方向に沿う方向に反射させる。
干渉計は、測定光を出射するとともに、以下に示す信号をコントローラに出力する。
すなわち、干渉計は、再帰反射体にて反射された戻り光と参照用の参照光との干渉に基づく第1の信号をコントローラに出力する。また、干渉計は、測定光と再帰反射体による戻り光との光軸のずれ量に基づく第2の信号をコントローラに出力する。
2軸回転機構は、コントローラによる制御の下、干渉計の姿勢を変更することで、測定光の出射方向を変更する。
【0003】
コントローラは、干渉計からの第2の信号に基づいて、光軸のずれ量が0となるように、2軸回転機構の動作を制御し、再帰反射体を追尾する(測定光の出射方向を再帰反射体に向ける)。
ここで、再帰反射体を追尾するにあたって、すなわち、2軸回転機構の角度調整量を算出するにあたって、光軸のずれ量の他、測長装置の基準位置から再帰反射体までの距離が必要となる。
なお、コントローラが第1の信号に基づいて算出できるのは、戻り光と参照光との干渉による干渉縞の変化量、すなわち、再帰反射体における測定光の光軸に沿う方向の位置変化量(移動量)である。
【0004】
そして、特許文献1に記載の測長装置では、距離を測定する距離センサ等を別途追加することなく、以下に示す方法(絶対距離推定方法)により、測長装置の基準位置から再帰反射体までの距離を算出している。
特許文献1に記載の技術では、光軸のずれ量と、2軸回転機構の角度調整量と、測長装置の基準位置から再帰反射体までの距離との間に所定の関係があることに着目している。
そして、光軸のずれ量が既知の値となるまで2軸回転機構を動作させ、当該動作させた際の2軸回転機構の角度調整量と既知の値である光軸のずれ量とに基づいて、上記関係から測長装置の基準位置から再帰反射体までの距離を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−309677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の絶対距離推定方法では、光軸のずれ量を検出する位置検出器(例えば、受光素子)のダイナミックレンジが小さい場合には、測長装置の基準位置から再帰反射体までの距離が大きくなるにしたがって、算出される距離の精度が低下してしまう、という問題がある。
したがって、測長装置の基準位置から再帰反射体までの距離を精度良く測定できる、すなわち、測長装置(基準位置)に対する再帰反射体の絶対位置を精度良く測定できる技術が要望されている。
【0007】
本発明の目的は、レーザ干渉測長装置に対する再帰反射体の絶対位置を精度良く測定できる絶対位置測定方法、及びレーザ干渉測長装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の絶対位置測定方法は、入射光を反射させる再帰反射体と、測定光を出射するとともに前記再帰反射体による戻り光と参照用の参照光との干渉に基づく信号を出力する干渉計と、前記干渉計を回転させ前記測定光の出射方向を変更する回転機構とを備えたレーザ干渉測長装置の絶対位置測定方法であって、予め設定された3つ以上の各位置に前記再帰反射体をそれぞれ位置付ける反射体位置付け工程と、前記回転機構を動作させ、前記各位置にそれぞれ位置付けられた前記再帰反射体に対して前記測定光を出射可能とする各姿勢に前記干渉計を設定する干渉計回転工程と、前記回転機構の動作量に基づいて、前記各姿勢間での前記測定光の光軸の角度変化量を算出する角度変化量算出工程と、前記干渉計から出力される信号に基づいて、前記各姿勢間での前記光軸に沿う方向の前記再帰反射体の位置変化量を算出する位置変化量算出工程と、前記各位置、前記角度変化量、及び前記位置変化量に基づいて、前記レーザ干渉測長装置の基準位置を算出する基準位置算出工程と、前記基準位置に対する前記再帰反射体の絶対座標を算出する絶対座標算出工程とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の絶対位置測定方法では、測長装置に対する再帰反射体の絶対位置(絶対座標)を精度良く測定するために、以下に示すように測長装置の基準位置(空間座標)を把握した上で、当該基準位置に対する再帰反射体の絶対座標(絶対位置)を算出するものとしている。
先ず、基準位置と、再帰反射体を位置付ける位置として予め設定された2つの位置とを結ぶ三角形を考える。
この場合、(1)基準位置、(2)前記2つの位置、(3)前記2つの位置間の距離、(4)前記2つの位置のうち一方の位置と基準位置とを結ぶ直線と他方の位置と基準位置とを結ぶ直線とのなす角度、(5)前記一方の位置及び基準位置間の距離と前記他方の位置及び基準位置間の距離との差の間には、所定の関係式が成り立つ。
【0010】
ここで、上記(2)については、予め設定された既知のものである。上記(3)も同様である。
また、上記(4)について、前記一方の位置と基準位置とを結ぶ直線は、干渉計から再帰反射体に出射される測定光の光軸に相当する。前記他方の位置と基準位置とを結ぶ直線も同様である。
このため、上記(4)は、回転機構を動作させて、前記一方の位置に位置付けられた再帰反射体に測定光を出射可能とする姿勢から前記他方の位置に位置付けられた再帰反射体に測定光を出射可能とする姿勢に干渉計を回転させた際の回転機構の動作量に基づいて算出することができる(角度変化量算出工程)。
【0011】
また、上記(5)については、再帰反射体が前記一方の位置に位置付けられている場合に干渉計から出力される信号と、前記他方の位置に位置付けられている場合に干渉計から出力される信号とに基づいて、算出することができる(位置変化量算出工程)。
したがって、上述した関係式は、上記(1)の基準位置のみを変数とする関係式とすることができる。
【0012】
そして、上述した三角形については、再帰反射体を位置付ける位置として少なくとも3つ以上の各位置を設定しておけば、少なくとも3つの異なる三角形を想定することができる。
すなわち、少なくとも3つの異なる三角形に基づいて、上記(1)の基準位置のみを変数とする関係式を少なくとも3つ得ることができる。
したがって、3つの関係式を連立方程式として解けば、上記(1)の基準位置を算出することができる(基準位置算出工程)。
そして、基準位置が算出されれば、例えば、算出された基準位置を原点とした場合での前記各位置のいずれかの位置の空間座標を求めれば、基準位置に対する再帰反射体の絶対座標を算出できる(絶対座標算出工程)。
以上のように、本発明の絶対位置測定方法は、反射体位置付け工程、干渉計回転工程、角度変化量算出工程、位置変化量算出工程、基準位置算出工程、及び絶対座標算出工程を備えるので、測長装置(基準位置)に対する再帰反射体の絶対位置を測定できる。
また、従来のように測定光と戻り光との光軸のずれ量に基づいて再帰反射体の絶対位置を測定するものではないため、測長装置(基準位置)から再帰反射体までの距離が大きくなった場合であっても、当該距離を精度良く算出できる。
【0013】
本発明の絶対位置測定方法では、前記反射体位置付け工程、前記干渉計回転工程、前記角度変化量算出工程、前記位置変化量算出工程、及び前記基準位置算出工程を複数回、繰り返し実施する繰返実施工程と、前記繰返実施工程により算出される複数の前記基準位置を平均化して平均基準位置を算出する平均化工程とを備え、前記絶対座標算出工程は、前記平均基準位置に対する前記再帰反射体の絶対座標を算出することが好ましい。
【0014】
ところで、反射体位置付け工程において、予め設定された3つ以上の各位置に再帰反射体をそれぞれ位置付ける際、前記各位置に再帰反射体が精度良く位置決めされていない場合には、当該誤差に応じて、算出される基準位置の精度が低下してしまう。すなわち、基準位置に対する再帰反射体の絶対座標も同様である。
本発明では、反射体位置付け工程、干渉計回転工程、角度変化量算出工程、位置変化量算出工程、及び基準位置算出工程を複数回、繰り返し実施する(繰返実施工程)。
このことにより、繰返実施工程を実施することで複数の基準位置が算出されることとなり、複数の基準位置を平均化すれば(平均化工程)、測長装置の基準位置(平均基準位置)を精度良く算出できる。すなわち、基準位置に対する再帰反射体の絶対座標を精度良く算出できる。
【0015】
本発明の絶対位置測定方法では、前記反射体位置付け工程は、前記再帰反射体を3つの前記各位置にのみそれぞれ位置付けることが好ましい。
本発明では、基準位置を算出できる最低限の数である3つの位置のみに再帰反射体を位置付けるため、短時間で基準位置に対する再帰反射体の絶対座標を算出できる。
【0016】
本発明のレーザ干渉測長装置は、入射光を反射させる再帰反射体と、測定光を出射するとともに前記再帰反射体による戻り光と参照用の参照光との干渉に基づく信号を出力する干渉計と、前記干渉計を回転させ前記測定光の出射方向を変更する回転機構とを備えたレーザ干渉測長装置であって、前記回転機構の動作により、予め設定された3つ以上の各位置にそれぞれ位置付けられた前記再帰反射体に対して前記測定光を出射可能とする各姿勢に前記干渉計が回転された際に、前記回転機構の動作量に基づいて、前記各姿勢間での前記測定光の光軸の角度変化量を算出する角度変化量算出手段と、前記干渉計から出力される信号に基づいて、前記各姿勢間での前記光軸に沿う方向の前記再帰反射体の位置変化量を算出する位置変化量算出手段と、前記各位置、前記角度変化量、及び前記位置変化量に基づいて、当該レーザ干渉測長装置の基準位置を算出する基準位置算出手段と、前記基準位置に対する前記再帰反射体の絶対座標を算出する絶対座標算出手段とを備えることを特徴とする。
本発明の測長装置は、上述した絶対位置測定方法を実施する装置であるため、上述した絶対位置測定方法と同様の作用及び効果を享受できる。
【0017】
本発明のレーザ干渉測長装置では、前記測定光及び前記戻り光の光軸のずれ量を検出するずれ量検出手段と、前記ずれ量が所定の範囲内となるように前記回転機構の動作を制御する追尾制御手段とを備えることが好ましい。
本発明では、測長装置は、上述したずれ量検出手段及び追尾制御手段を備えるため、上述した絶対位置測定方法を実施するにあたり、干渉計回転工程において、再帰反射体を追尾して、再帰反射体に対して測定光を出射可能とする姿勢に干渉計を容易に設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態における追尾式レーザ干渉測長装置を示すブロック図。
【図2】第1実施形態における干渉計の光学系を模式的に示す図。
【図3】第1実施形態における干渉計の光学系を模式的に示す図。
【図4】第1実施形態における絶対位置測定方法を説明するフローチャート。
【図5】第1実施形態における絶対位置測定方法を説明するための図。
【図6】第1実施形態における絶対位置測定方法を説明するための図。
【図7】第1実施形態における絶対位置測定方法を説明するための図。
【図8】第2実施形態における追尾式レーザ干渉測長装置を示すブロック図。
【図9】第2実施形態における絶対位置測定方法を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
〔追尾式レーザ干渉測長装置の構成〕
図1は、第1実施形態における追尾式レーザ干渉測長装置1(以下、測長装置1)を示すブロック図である。
測長装置1は、被測定物Wを追尾し、当該測長装置1(後述する基準位置P)から被測定物W(後述する再帰反射体10)までの距離を測定する装置である。
この測長装置1は、図1に示すように、再帰反射体10と、干渉計20と、2軸回転機構30と、制御装置40とを備える。
【0020】
〔再帰反射体の構成〕
再帰反射体10は、レトロリフレクタやキャッツアイ等で構成され、入射光を入射方向に沿って反射させる。
より具体的に、再帰反射体10は、入射光と反射光とが平行となるとともに、入射光と反射光とが再帰反射体10の中心に対して点対称となるように入射光を反射させる。したがって、再帰反射体10の中心から離れた位置に光が入射した場合には、入射光と反射光とがずれることとなる。
そして、再帰反射体10は、図1に示すように、被測定物Wに取り付けられる。
【0021】
〔干渉計の構成〕
図2及び図3は、干渉計20の光学系を模式的に示す図である。
干渉計20は、図1ないし図3に示すように、再帰反射体10までの距離を測定するための測長光学系21と、再帰反射体10を追尾するための追尾光学系22とを備える。
なお、各光学系21,22の構成については、公知であるので簡略に説明する。
【0022】
測長光学系21は、図2または図3に示すように、レーザ光源211と、スプリッタ212と、参照面としての平面鏡(図示略)と、PD(Photo Detector)を有する第1受光手段213とを備える。
追尾光学系22は、図2または図3に示すように、スプリッタ221と、4分割PD(Photo Diode)または二次元PSD(Position Sensitive Detector)を有するずれ量検出手段としての第2受光手段222とを備える。
【0023】
このような干渉計20では、レーザ光源211から出射されたレーザ光は、スプリッタ212にて参照用の参照光(図示略)と、測定光とに分割される。前記参照光は、前記平面鏡にて反射された後、スプリッタ212にて第1受光手段213側に反射される。
一方、測定光は、スプリッタ221を透過した後、再帰反射体10にて向けて出射され、再帰反射体10にて反射されて戻り光となった後、再度、干渉計20に入射する。この際、再帰反射体10が移動しているために、測定光が再帰反射体10の中心に対してはなれた位置に入射した場合(図3)には、測定光が入射方向に対してずれて反射されることとなり、測定光と戻り光とがずれることとなる。
【0024】
干渉計20に入射した戻り光は、一部がスプリッタ221にて反射され、第2受光手段222に受光される。この際、戻り光は、ずれ量に応じて第2受光手段222(4分割PD)の受光面の中心からずれて入射することとなる。第2受光手段222は、受光面が上下左右に4分割されており、各分割面に入射する戻り光の受光量に応じた4つの受光信号を制御装置40に出力する。すなわち、第2受光手段222は、戻り光のずれ量及び受光量に応じた第2受光信号を出力する。
【0025】
一方、スプリッタ221を透過した残りの戻り光は、スプリッタ212を透過した後、前記平面鏡にて反射された前記参照光との干渉光となり、第1受光手段213に受光される。戻り光と参照光との干渉光を受光した第1受光手段213は、干渉計20と再帰反射体10との距離の変位及び受光量に応じた第1受光信号を制御装置40に出力する。
【0026】
〔2軸回転機構の構成〕
2軸回転機構30は、制御装置40による制御の下、干渉計20からの測定光の出射方向を変更する機構である。
この2軸回転機構30は、図1に示すように、測定光の方位角θaを変更する第1回転機構31と、測定光の仰角θeを変更する第2回転機構32とを備える。
そして、各回転機構31,32には、図1に示すように、各回転機構31,32の所定位置からの回転角度、すなわち、測定光の方位角θa及び仰角θeを検出する角度検出センサ33が取り付けられている。
この角度検出センサ33は、検出した方位角θa及び仰角θeに応じた角度検出信号を制御装置40に出力する。
なお、各回転機構31,32の回転軸が交わる点は、基準位置P(図1)とされる。
【0027】
〔制御装置の構成〕
制御装置40は、CPU(Central Processing Unit)や、メモリ等を備え、メモリに記憶されたプログラムにしたがって、測長装置1全体を制御する。
なお、以下では、制御装置40において、再帰反射体10を追尾する機能、及び基準位置Pに対する再帰反射体10の絶対位置(絶対座標)を測定する機能を説明し、その他の機能については説明を省略する。
この制御装置40は、図1に示すように、追尾制御手段41と、角度変化量算出手段42と、位置変化量算出手段43と、基準位置算出手段44と、絶対座標算出手段45と、距離算出手段46と、メモリ47等を備える。
【0028】
追尾制御手段41は、距離算出手段46にて算出された基準位置Pから再帰反射体10までの距離と、第2受光手段222からの第2受光信号(戻り光のずれ量)とに基づいて、2軸回転機構30の角度調整量(方位角θa及び仰角θeの角度調整量)を算出する。
そして、追尾制御手段41は、算出した角度調整量にて2軸回転機構30を動作させ、再帰反射体10を追尾する(再帰反射体10の中心に測定光を出射可能とする姿勢に干渉計20を回転させる)。
【0029】
角度変化量算出手段42は、角度検出センサ33からの角度検出信号に基づいて、干渉計20から出射される測定光の光軸の角度変化量を算出する。
例えば、再帰反射体10がある位置から別の位置に移動したとする。
この場合に、角度変化量算出手段42は、角度検出信号に基づいて、前記ある位置に位置付けられた再帰反射体10の中心に出射される測定光の光軸と、前記別の位置に位置付けられた再帰反射体10の中心に出射される測定光の光軸とのなす角度を角度変化量として算出する。
【0030】
位置変化量算出手段43は、第1受光手段213からの第1受光信号に基づいて、前記ある位置に位置付けられた再帰反射体10と、前記別の位置に位置付けられた再帰反射体10との測定光の光軸に沿う方向の位置変化量を算出する。
ここで、再帰反射体10による戻り光と前記参照光との干渉により生じる干渉縞の変化量は、再帰反射体10における測定光の光軸に沿う方向の移動量(位置変化量)に相当する。
したがって、位置変化量算出手段43は、前記ある位置に位置付けられた再帰反射体10による戻り光と前記参照光との干渉による干渉縞(第1受光信号)と、前記別の位置に位置付けられた再帰反射体10による戻り光と前記参照光との干渉による干渉縞(第1受光信号)との変化量から位置変化量を算出する。
【0031】
基準位置算出手段44は、具体的には後述するが、再帰反射体10が位置付けられる予め設定された4つの位置P1〜P4、角度変化量、及び位置変化量に基づいて、基準位置Pを算出する。
絶対座標算出手段45は、具体的には後述するが、基準位置算出手段44にて算出された基準位置Pに基づいて、基準位置Pに対する4つの位置P1〜P4のいずれかの位置の絶対座標を算出する。
【0032】
距離算出手段46は、絶対座標算出手段45にて算出された絶対座標に基づいて、基準位置Pから前記いずれかの位置までの距離(基準距離)を算出する。
また、距離算出手段46は、算出した基準距離に対して、位置変化量算出手段43にて算出された位置変化量を適宜、加えていくことで、基準位置Pから再帰反射体10が位置付けられた任意の位置(位置P1〜P4以外)までの距離を算出する。
【0033】
メモリ47は、測長装置1全体を制御するためのプログラムや、上述した各手段41〜46にて用いられる情報の他、後述する式(1)に示す位置P1〜P4の空間座標等が記憶されている。
【0034】
〔絶対位置測定方法〕
次に、基準位置Pに対する4つの位置P1〜P4のいずれかの絶対位置(絶対座標)を測定する方法(絶対位置測定方法)について説明する。
図4は、絶対位置測定方法を説明するフローチャートである。
図5ないし図7は、絶対位置測定方法を説明するための図である。
なお、以下で説明する位置P1〜P4は、所定のXYZ直交座標系(基準位置Pが原点とは限らない直交座標系)において、空間座標が既知の値に設定されているものである。
以下では、説明の便宜上、位置P1〜P4の空間座標を以下の式(1)に示す空間座標とする。
また、位置P1〜P4は、全ての位置P1〜P4が同一平面上にあるものではない。
【0035】
[数1]
P1=(P1X,P1Y,P1Z)
P2=(P2X,P2Y,P2Z)
P3=(P3X,P3Y,P3Z)
P4=(P4X,P4Y,P4Z)・・・(1)
【0036】
先ず、作業者は、再帰反射体10を位置P1〜P4のいずれかの位置に位置付ける(ステップS1)。
本実施形態では、被測定物Wは、被測定物Wを移動させることで対象物を測定または加工する産業機械に設けられ、当該産業機械により駆動されるものである。
すなわち、作業者は、前記産業機械を動作させることで、再帰反射体10を位置P1〜P4のいずれかの位置に位置付ける。
ここで、前記産業機械としては、例えば、三次元測定機が挙げられ、被測定物Wとしては、例えば、対象物を測定するためのプローブが取り付けられた三次元測定機のスライダが挙げられる。
なお、ステップS1において、測長装置1も動作しているものとする。
そして、追尾制御手段41は、上述した処理により、2軸回転機構30の動作を制御し、再帰反射体10の中心に向けて測定光を出射可能な姿勢に干渉計20を回転させる(S2:干渉計回転工程)。
【0037】
次に、制御装置40は、ステップS1において再帰反射体10が位置P1〜P4のいずれかの位置に位置付けられた際に、第1受光手段213から出力される第1受光信号、及び角度検出センサ33から出力される角度検出信号を取得する。
そして、制御装置40は、第1受光信号に応じた情報と、角度検出信号に応じた情報とをメモリ47に記憶させる(ステップS3)。
なお、以下では、説明の便宜上、メモリ47に記憶させた情報として、再帰反射体10が位置P1に位置付けられた際に記憶させた情報を第1情報とし、位置P2に位置付けられた際に記憶させた情報を第2情報とし、位置P3に位置付けられた際に記憶させた情報を第3情報とし、位置P4に位置付けられた際に記憶させた情報を第4情報とする。
【0038】
そして、位置P1〜P4の全ての位置に再帰反射体10を位置付けるまで上述したステップS1〜S3を繰り返し実施する(ステップS4)。
なお、上述したステップS1,S4が本発明に係る反射体位置付け工程に相当する。
ステップS1〜S3を繰り返し実施することでメモリ47に第1〜第4情報を記憶させた後、角度変化量算出手段42は、メモリ47に記憶された第1〜第4情報に基づいて、角度変化量を算出する(ステップS5:角度変化量算出工程)。
具体的に、角度変化量算出手段42は、第1,第2情報に含まれる角度検出信号に応じた各情報(2軸回転機構30の動作量に相当)に基づいて、位置P1に位置付けられた再帰反射体10の中心に出射される測定光の光軸と、位置P2に位置付けられた再帰反射体10の中心に出射される測定光の光軸とのなす角度θ12(図5)を算出する。
また、同様の処理により、角度変化量算出手段42は、第2,第3情報に含まれる角度検出信号に応じた各情報に基づいて角度θ23(図6)、第3,第4情報に含まれる角度検出信号に応じた各情報に基づいて角度θ34(図7)を算出する。
そして、角度変化量算出手段42は、算出した角度θ12,θ23,θ34をメモリ47に記憶させる。
【0039】
ステップS5の後、位置変化量算出手段43は、メモリ47に記憶された第1〜第4情報に基づいて、位置変化量を算出する(ステップS6:位置変化量算出工程)。
具体的に、位置変化量算出手段43は、第1,第2情報に含まれる第1受光信号に応じた各情報に基づいて、位置P1に位置付けられた再帰反射体10と、位置P2に位置付けられた再帰反射体10との測定光の光軸に沿う方向の位置変化量ΔL12(図5)を算出する。
また、同様の処理により、位置変化量算出手段43は、第2,第3情報に含まれる第1受光信号に応じた各情報に基づいて位置変化量ΔL23(図6)、第3,第4情報に含まれる第1受光信号に応じた各情報に基づいて位置変化量ΔL34(図7)を算出する。
そして、位置変化量算出手段43は、算出した位置変化量ΔL12,ΔL23,ΔL34をメモリ47に記憶させる。
【0040】
ステップS6の後、基準位置算出手段44は、メモリ47に記憶された位置P1〜P4の空間座標(式(1))、角度θ12,θ23,θ34、及び位置変化量ΔL12,ΔL23,ΔL34に基づいて、前記所定のXYZ直交座標系での基準位置P(空間座標)を算出する(ステップS7:基準位置算出工程)。
なお、基準位置算出手段44にて基準位置Pを算出する原理は、以下の通りである。
【0041】
〔基準位置Pの算出原理〕
先ず、前記所定のXYZ直交座標系での基準位置Pの空間座標を(X,Y,Z)とし、図5に示すように、基準位置Pと位置P1,P2との位置関係に着目する。
そして、基準位置Pと位置P1,P2との各距離をL1,L2(図5)とすると、以下の式(2),(3)の関係が成り立つ。
なお、距離L2は、L1+ΔL12に相当するものである。
【0042】
[数2]
(X−P1x)2+(Y−P1Y)2+(Z−P1Z)2=L12・・・(2)
【0043】
[数3]
(X−P2x)2+(Y−P2Y)2+(Z−P2Z)2=(L1+ΔL12)2
・・・(3)
【0044】
ここで、式(2),(3)は、共に球の方程式であるため、式(2),(3)を連立方程式として解くことで、式(2)に示す球と、式(3)に示す球との複数の交点を含む平面12(図5)の方程式を得ることができる。
なお、平面12は、以下の式(4)で与えられる。
【0045】
[数4]
(−2P1x+2P2x)X+(−2P1Y+2P2Y)Y+(−2P1Z+2P2Z)Z
+P1x2+P1Y2+P1Z2−P2x2−P2Y2−P2Z2
=−2ΔL12・L1−ΔL122
・・・(4)
【0046】
また、図5に示すように、基準位置P、位置P1,P2で結ばれる三角形を考えた場合に、余弦定理から以下の式(5)が成り立つ。
式(5)中、LP12は、位置P1と位置P2との距離である。
なお、各位置P1,P2の空間座標は、上述したように既知の値に設定されているため、距離LP12も既知の値である。
【0047】
[数5]
LP122=(L1+ΔL12)2+L12−2L1(L1+ΔL12)cosθ12
・・・(5)
【0048】
そして、式(5)からL1を求め、L1を式(4)に代入することで、式(4)からL1を消去する。
なお、以下では、説明の便宜上、式(5)から求めたL1を式(4)に代入してL1を消去した数式を第1の数式と記載する。
【0049】
次に、図6に示すように、基準位置Pと位置P2,P3との位置関係に着目する。
そして、基準位置Pと位置P3との距離をL3(図6)とすると、式(1)〜(4)と同様の考え方から、平面23(図6)の方程式を得ることができる。
なお、距離L3は、L2+ΔL23に相当するものである。
そして、平面23は、以下の式(6)で与えられる。
【0050】
[数6]
(−2P2x+2P3x)X+(−2P2Y+2P3Y)Y+(−2P2Z+2P3Z)Z
+P2x2+P2Y2+P2Z2−P3x2−P3Y2−P3Z2
=−2ΔL23・L2−ΔL232
・・・(6)
【0051】
また、図6に示すように、基準位置P、位置P2,P3で結ばれる三角形を考えた場合に、余弦定理から以下の式(7)が成り立つ。
式(7)中、LP23は、位置P2と位置P3との距離である。
なお、距離LP23は、距離LP12と同様に、既知の値である。
【0052】
[数7]
LP232=(L2+ΔL23)2+L22−2L2(L2+ΔL23)cosθ23
・・・(7)
【0053】
そして、式(7)からL2を求め、L2を式(6)に代入することで、式(6)からL2を消去する。
なお、以下では、説明の便宜上、式(7)から求めたL2を式(6)に代入してL2を消去した数式を第2の数式と記載する。
【0054】
次に、図7に示すように、基準位置Pと位置P3,P4との位置関係に着目する。
そして、基準位置Pと位置P4との距離をL4(図7)とすると、式(1)〜(4)と同様の考え方から、平面34(図7)の方程式を得ることができる。
なお、距離L4は、L3+ΔL34に相当するものである。
そして、平面34は、以下の式(8)で与えられる。
【0055】
[数8]
(−2P3x+2P4x)X+(−2P3Y+2P4Y)Y+(−2P3Z+2P4Z)Z
+P3x2+P3Y2+P3Z2−P4x2−P4Y2−P4Z2
=−2ΔL34・L3−ΔL342
・・・(8)
【0056】
また、図7にしめすように、基準位置P、位置P3,P4で結ばれる三角形を考えた場合に、余弦定理から以下の式(9)が成り立つ。
式(9)中、LP34は、位置P3と位置P4との距離である。
なお、距離LP34は、距離LP12,LP23と同様に、既知の値である。
【0057】
[数9]
LP342=(L3+ΔL34)2+L32−2L3(L3+ΔL34)cosθ34
・・・(9)
【0058】
そして、式(9)からL3を求め、L3を式(8)に代入することで、式(8)からL3を消去する。
なお、以下では、説明の便宜上、式(9)から求めたL3を式(8)に代入してL3を消去した数式を第3の数式と記載する。
【0059】
平面12、平面23、及び平面34で表される3つの平面は、全て基準位置Pを通るものである。
そこで、基準位置算出手段44は、メモリ47に記憶された位置P1,P2の空間座標、角度θ12、及び位置変化量ΔL12と位置P1,P2の空間座標から得られる距離LP12とを第1の数式に代入して得られる数式と、位置P2,P3の空間座標、角度θ23、及び位置変化量ΔL23と位置P2,P3の空間座標から得られる距離LP23とを第2の数式に代入して得られる数式と、位置P3,P4の空間座標、角度θ34、及び位置変化量ΔL34と位置P3,P4の空間座標から得られる距離LP34とを第3の数式に代入して得られる数式との3つの数式を連立方程式として解くことで、X,Y,Zの値、すなわち、前記所定のXYZ直交座標系での基準位置P(空間座標)を算出する。
【0060】
そして、図4に戻って、絶対座標算出手段45は、ステップS7において基準位置算出手段44にて算出された基準位置Pの空間座標(X,Y,Z)に基づいて、基準位置Pに対する4つの位置P1〜P4のいずれかの位置の絶対座標を算出する(ステップS8:絶対座標算出工程)。
具体的に、絶対座標算出手段45は、基準位置Pの空間座標(X,Y,Z)を原点(0,0,0)とした時の位置P1〜P4のいずれかの位置の絶対座標を算出する。
以上のステップS1〜S8により、基準位置Pに対する位置P1〜P4のいずれかの絶対座標を測定できる。
【0061】
上述した第1実施形態によれば、以下の効果がある。
本実施形態では、絶対位置測定方法は、反射体位置付け工程S1,S4、干渉計回転工程S2、角度変化量算出工程S5、位置変化量算出工程S6、基準位置算出工程S7、及び絶対座標算出工程S8を備えるので、基準位置Pに対する再帰反射体10の絶対座標を測定できる。
また、従来のように測定光と戻り光との光軸のずれ量に基づいて再帰反射体10の絶対座標を測定するものではないため、基準位置Pから再帰反射体10までの距離が大きくなった場合であっても、前記絶対座標に基づいて、当該距離を精度良く算出できる。
また、測長装置1は、第2受光手段222及び追尾制御手段41を備えるため、絶対位置測定方法を実施するにあたり、干渉計回転工程S2において、再帰反射体10を追尾して、再帰反射体10に対して測定光を出射可能とする姿勢に干渉計20を容易に設定できる。
【0062】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。
図8は、第2実施形態における測長装置1を示すブロック図である。
なお、以下では、前記第1実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、その詳細な説明については省略する。
本実施形態では、前記第1実施形態に対して、絶対位置測定方法が異なるものである。そして、当該絶対位置測定方法を実現するために、前記第1実施形態に対して、図8に示すように、制御装置40に平均化手段48を追加している。
【0063】
図9は、第2実施形態における絶対位置測定方法を説明するフローチャートである。
前記第1実施形態の絶対位置測定方法では、4つの位置P1〜P4に再帰反射体10をそれぞれ位置付けて、基準位置Pに対する位置P1〜P4のいずれかの位置の絶対座標を算出していた。
これに対して、本実施形態では、4つの位置を一組とし、位置P1〜P4、位置P5〜P8、・・・位置P(4n−3)〜P(4n)のn(nは2以上)組の計4n個の位置に再帰反射体10を位置付けて、基準位置Pに対する位置P1〜P(4n)のいずれかの位置の絶対座標を算出する。
なお、各組の4つの位置は、当該4つの位置全てが同一平面上にあるものではない。
【0064】
具体的に、先ず、ステップS1〜S7により、1組目の4つの位置P1〜P4に再帰反射体10をそれぞれ位置付けて、基準位置Pを算出する。
そして、上記n組の計4n個の全ての位置に再帰反射体10を位置付けるまで、上記組を変更しながら(ステップS9)、ステップS1〜S7を繰り返し実施する(ステップS10:繰返実施工程)。
ステップS1〜S7をn回実施した後、平均化手段48は、ステップS1〜S7をn回実施することで得られたn個の基準位置P(空間座標)を平均化して平均基準位置を算出する(ステップS11:平均化工程)。
そして、絶対座標算出手段45は、ステップS11で算出された平均基準位置に基づいて、前記第1実施形態と同様に、位置P1〜P(4n)のいずれかの位置の絶対座標を算出する(ステップS8)。
【0065】
上述した第2実施形態によれば、前記第1実施形態と同様の効果の他、以下の効果がある。
本実施形態では、絶対位置測定方法は、反射体位置付け工程S1,S4、干渉計回転工程S2、角度変化量算出工程S5、位置変化量算出工程S6、及び基準位置算出工程S7を複数回、繰り返し実施する(繰返実施工程S10)。
このことにより、繰返実施工程S10を実施することで複数の基準位置Pが算出されることとなり、複数の基準位置Pを平均化すれば(平均化工程S11)、基準位置P(平均基準位置)を精度良く算出できる。すなわち、基準位置に対する再帰反射体10の絶対座標を精度良く算出できる。
【0066】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
本実施形態では、前記第1実施形態に対して、絶対位置測定方法が異なるものである。
具体的に、前記第1実施形態の絶対位置測定方法では、4つの位置P1〜P4に再帰反射体10をそれぞれ位置付けて、基準位置Pに対する位置P1〜P4のいずれかの位置の絶対座標を算出していた。
これに対して、本実施形態では、3つの位置P1〜P3にのみ再帰反射体10をそれぞれ位置付けて、基準位置Pに対する位置P1〜P3のいずれかの位置の絶対座標を算出するものである。
なお、3つの位置P1〜P3は、同一直線上にないものとする。
【0067】
上記相対位置の算出原理で説明したように、3つの平面(前記第1実施形態では、平面12、平面23、及び平面34)の数式が得られれば、基準位置Pを算出できるものである。
すなわち、3つの位置P1〜P3に再帰反射体10を位置付けた場合であっても、基準位置P、位置P1,P2で結ばれる三角形に着目した場合での平面12(図5)と、基準位置P、位置P2,P3で結ばれる三角形に着目した場合での平面23(図6)の他、基準位置P、位置P3,P1で結ばれる三角形に着目した場合での平面も得ることができる。
したがって、上記3つの平面の数式から、基準位置Pを算出できる。
【0068】
上述した第3実施形態によれば、前記第1実施形態と同様の効果の他、以下の効果がある。
本実施形態では、基準位置Pを算出できる最低限の数である3つの位置のみに再帰反射体10を位置付けるため、短時間で基準位置Pに対する再帰反射体10の絶対座標を算出できる。
【0069】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記各実施形態では、測長装置1は、第2受光手段222及び追尾制御手段41を備えた追尾式レーザ干渉測長装置で構成されていたが、これに限らず、追尾制御手段41を省略し、すなわち、自動的に再帰反射体10を追尾する機能を省略しても構わない。
前記各実施形態では、絶対位置測定方法を実施する際に、産業機械を駆動することで再帰反射体10を位置P1〜P4等に位置付けていたが、これに限らない。例えば、絶対位置測定方法を実施する際に、予め用意した複数の再帰反射体10を位置P1〜P4等にそれぞれ位置付けても構わない。
前記実施形態では、回転機構30は、2つの回転軸を中心として干渉計20を回転させていたが、これに限らない。例えば、回転機構としては、1つの回転軸のみを中心として干渉計20を回転させてもよく、3つの以上の回転軸を中心として干渉計20を回転させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、入射光を反射させる再帰反射体と、測定光を出射するとともに、再帰反射体による戻り光と参照用の参照光との干渉に基づく信号を出力する干渉計と、干渉計を回転させ測定光の出射方向を変更する回転機構とを備えたレーザ干渉測長装置に利用できる。
【符号の説明】
【0071】
1・・・レーザ干渉測長装置
10・・・再帰反射体
20・・・干渉計
30・・・回転機構
41・・・追尾制御手段
222・・・第2受光手段(ずれ量検出手段)
S1,S4・・・反射体位置付け工程
S2・・・干渉計回転工程
S5・・・角度変化量算出工程
S6・・・位置変化量算出工程
S7・・・基準位置算出工程
S8・・・絶対座標算出工程
S10・・・繰返実施工程
S11・・・平均化工程
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光を反射させる再帰反射体と、測定光を出射するとともに前記再帰反射体による戻り光と参照用の参照光との干渉に基づく信号を出力する干渉計と、前記干渉計を回転させ前記測定光の出射方向を変更する回転機構とを備えたレーザ干渉測長装置の絶対位置測定方法であって、
予め設定された3つ以上の各位置に前記再帰反射体をそれぞれ位置付ける反射体位置付け工程と、
前記回転機構を動作させ、前記各位置にそれぞれ位置付けられた前記再帰反射体に対して前記測定光を出射可能とする各姿勢に前記干渉計を設定する干渉計回転工程と、
前記回転機構の動作量に基づいて、前記各姿勢間での前記測定光の光軸の角度変化量を算出する角度変化量算出工程と、
前記干渉計から出力される信号に基づいて、前記各姿勢間での前記光軸に沿う方向の前記再帰反射体の位置変化量を算出する位置変化量算出工程と、
前記各位置、前記角度変化量、及び前記位置変化量に基づいて、前記レーザ干渉測長装置の基準位置を算出する基準位置算出工程と、
前記基準位置に対する前記再帰反射体の絶対座標を算出する絶対座標算出工程とを備える
ことを特徴とする絶対位置測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の絶対位置測定方法において、
前記反射体位置付け工程、前記干渉計回転工程、前記角度変化量算出工程、前記位置変化量算出工程、及び前記基準位置算出工程を複数回、繰り返し実施する繰返実施工程と、
前記繰返実施工程により算出される複数の前記基準位置を平均化して平均基準位置を算出する平均化工程とを備え、
前記絶対座標算出工程は、
前記平均基準位置に対する前記再帰反射体の絶対座標を算出する
ことを特徴とする絶対位置測定方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の絶対位置測定方法において、
前記反射体位置付け工程は、
前記再帰反射体を3つの前記各位置にのみそれぞれ位置付ける
ことを特徴とする絶対位置測定方法。
【請求項4】
入射光を反射させる再帰反射体と、測定光を出射するとともに前記再帰反射体による戻り光と参照用の参照光との干渉に基づく信号を出力する干渉計と、前記干渉計を回転させ前記測定光の出射方向を変更する回転機構とを備えたレーザ干渉測長装置であって、
前記回転機構の動作により、予め設定された3つ以上の各位置にそれぞれ位置付けられた前記再帰反射体に対して前記測定光を出射可能とする各姿勢に前記干渉計が回転された際に、前記回転機構の動作量に基づいて、前記各姿勢間での前記測定光の光軸の角度変化量を算出する角度変化量算出手段と、
前記干渉計から出力される信号に基づいて、前記各姿勢間での前記光軸に沿う方向の前記再帰反射体の位置変化量を算出する位置変化量算出手段と、
前記各位置、前記角度変化量、及び前記位置変化量に基づいて、当該レーザ干渉測長装置の基準位置を算出する基準位置算出手段と、
前記基準位置に対する前記再帰反射体の絶対座標を算出する絶対座標算出手段とを備える
ことを特徴とするレーザ干渉測長装置。
【請求項5】
請求項4に記載のレーザ干渉測長装置において、
前記測定光及び前記戻り光の光軸のずれ量を検出するずれ量検出手段と、
前記ずれ量が所定の範囲内となるように前記回転機構の動作を制御する追尾制御手段とを備える
ことを特徴とするレーザ干渉測長装置。
【請求項1】
入射光を反射させる再帰反射体と、測定光を出射するとともに前記再帰反射体による戻り光と参照用の参照光との干渉に基づく信号を出力する干渉計と、前記干渉計を回転させ前記測定光の出射方向を変更する回転機構とを備えたレーザ干渉測長装置の絶対位置測定方法であって、
予め設定された3つ以上の各位置に前記再帰反射体をそれぞれ位置付ける反射体位置付け工程と、
前記回転機構を動作させ、前記各位置にそれぞれ位置付けられた前記再帰反射体に対して前記測定光を出射可能とする各姿勢に前記干渉計を設定する干渉計回転工程と、
前記回転機構の動作量に基づいて、前記各姿勢間での前記測定光の光軸の角度変化量を算出する角度変化量算出工程と、
前記干渉計から出力される信号に基づいて、前記各姿勢間での前記光軸に沿う方向の前記再帰反射体の位置変化量を算出する位置変化量算出工程と、
前記各位置、前記角度変化量、及び前記位置変化量に基づいて、前記レーザ干渉測長装置の基準位置を算出する基準位置算出工程と、
前記基準位置に対する前記再帰反射体の絶対座標を算出する絶対座標算出工程とを備える
ことを特徴とする絶対位置測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の絶対位置測定方法において、
前記反射体位置付け工程、前記干渉計回転工程、前記角度変化量算出工程、前記位置変化量算出工程、及び前記基準位置算出工程を複数回、繰り返し実施する繰返実施工程と、
前記繰返実施工程により算出される複数の前記基準位置を平均化して平均基準位置を算出する平均化工程とを備え、
前記絶対座標算出工程は、
前記平均基準位置に対する前記再帰反射体の絶対座標を算出する
ことを特徴とする絶対位置測定方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の絶対位置測定方法において、
前記反射体位置付け工程は、
前記再帰反射体を3つの前記各位置にのみそれぞれ位置付ける
ことを特徴とする絶対位置測定方法。
【請求項4】
入射光を反射させる再帰反射体と、測定光を出射するとともに前記再帰反射体による戻り光と参照用の参照光との干渉に基づく信号を出力する干渉計と、前記干渉計を回転させ前記測定光の出射方向を変更する回転機構とを備えたレーザ干渉測長装置であって、
前記回転機構の動作により、予め設定された3つ以上の各位置にそれぞれ位置付けられた前記再帰反射体に対して前記測定光を出射可能とする各姿勢に前記干渉計が回転された際に、前記回転機構の動作量に基づいて、前記各姿勢間での前記測定光の光軸の角度変化量を算出する角度変化量算出手段と、
前記干渉計から出力される信号に基づいて、前記各姿勢間での前記光軸に沿う方向の前記再帰反射体の位置変化量を算出する位置変化量算出手段と、
前記各位置、前記角度変化量、及び前記位置変化量に基づいて、当該レーザ干渉測長装置の基準位置を算出する基準位置算出手段と、
前記基準位置に対する前記再帰反射体の絶対座標を算出する絶対座標算出手段とを備える
ことを特徴とするレーザ干渉測長装置。
【請求項5】
請求項4に記載のレーザ干渉測長装置において、
前記測定光及び前記戻り光の光軸のずれ量を検出するずれ量検出手段と、
前記ずれ量が所定の範囲内となるように前記回転機構の動作を制御する追尾制御手段とを備える
ことを特徴とするレーザ干渉測長装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2012−132820(P2012−132820A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286029(P2010−286029)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】
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