説明

ロボット追従式画像検査装置

【課題】自動車用窓ガラスのプライマ塗布領域のような帯状の検査対象領域について、プライマ塗布状態等の検査対象を効率良く高精度で検査できるようにすることである。
【解決手段】検査対象物30上の帯状の検査対象領域を撮影して、この撮影した画像から検査する画像検査装置であって、撮影装置18および該撮影装置18が撮影する検査対象領域を照明する照明装置22を取付けたロボットハンド12と、該ロボットハンド12に取付けられた撮影装置18と照明装置22を検査対象領域上に設定された経路に沿って移動させるロボットハンド移動手段と、該ロボットハンド移動手段により前記撮影装置18が検査対象領域上の経路に沿って移動する際に該検査対象領域を連続撮影して画像を取得する画像取得手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ロボット追従式画像検査装置に関する。詳しくは、検査対象物の帯状の検査対象領域上に設定された経路をロボットハンドが移動し、その移動に追従して撮影装置が検査対象領域上を移動して検査対象領域を連続撮影し、撮影によって得られた画像を画像処理装置が処理することにより検査対象を検査するロボット追従式の画像検査装置及びロボット追従式の画像検査方法に関する。
この発明の利用分野としては、例えば、自動車用の固定窓ガラスの周辺部に帯状に塗布されるプライマの塗布状態の検査をあげることができる。
【背景技術】
【0002】
自動車用の固定窓用の窓ガラスを自動車の開口部に取付ける際には、窓ガラスの周辺部に接着剤を塗布するが、この接着剤塗布の前工程として、窓ガラスの周辺部に沿ってプライマを塗布することが行われている。
【0003】
このプライマの塗布には通常プライマ塗布用ロボットが用いられ、塗布具としては刷毛が利用される。しかし、刷毛に付着したプライマの乾燥による固化や刷毛の抜け等により、刷毛と窓ガラスとの接触を均一に維持することが難しくなることがある。また、窓ガラスの湾曲や窓ガラスのコーナー部での塗布方向の急激な変化等により、接触箇所の各部に均一にプライマを供給することが困難となることもある。
そのため、プライマの塗りむらやかすれが生じることがある。プライマの塗布においてかすれが生じると接着剤による窓ガラスと車体開口部との間の接着の接着不良につながり雨漏りの原因となることもあるので、プライマの塗布状態を検査することが必要となる。
【0004】
プライマの塗布状態を検査する方法として、特許文献1には、4台のCCDカメラによりプライマ塗布後のウインドガラスを撮影し、その画像をモニタに写して作業員がプライマの塗布状態を目視検査する手法が提案されている。しかしながら、作業員がモニタ上で目視検査するのでは作業員のへの負担が大きい。また、CCDカメラおよびモニタの解像度の制約により、表示精度に限界があるため、作業員の経験や熟練度により検査精度に差異が生じることもあり得る。
これに対して、特許文献2には、8台のデジタルカメラでプライマ塗布前およびプライマ塗布後のウインドガラスを撮影し、プライマ塗布前後の画像を情報処理装置で比較することにより、プライマの塗布状態を検査する手法が提案されている。
この特許文献2に記載の手法によれば、特許文献1に記載の方法に比べて、作業員の負担は軽減される。また、情報処理装置により定められた手法により画像処理を行ってプライマの塗布状態を検査するので検査精度を一定に保つことができる。
【特許文献1】特開平8−10683号公報
【特許文献2】特開2006−305426号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載された技術では、8台のカメラでウインドガラスのプライマ塗布範囲の全体をカバー(特許文献1の図3参照)する必要があるため、一台のカメラでカバーする範囲が広く、撮影された画像の解像度が低いという問題があった。そのためにプライマの塗布状態の検査精度が十分でなかった。
また、特許文献2に記載の技術では、カメラおよび撮影のための光源がプライマの塗布の障害とならないよう、カメラと光源用の蛍光灯はプライマ塗布ステーションの上部に設置されている(特許文献1の図2参照)。そのため、カメラとウインドガラスの距離が大きく、外部からの光が撮影画像に影響を与えやすい環境にある。特許文献2に記載の技術では、プライマ塗布前とプライマ塗布後の輝度の変化を利用してプライマの塗布状態の良否を判定しているため、たとえば、塗布前の画像撮影時と塗布後の画像撮影時で外部からの光の影響が異なる場合には塗布状態の良否の判定に影響がでてしまう。
このように、従来技術では、撮影画像の精度が低く、検査対象領域の照明を均一に保つことが困難なことから、プライマ塗布状態の良否判定の精度が十分とはいえなかった。また、カメラを8台使用する構成であるため、検査用の設備が複雑で高価なものとなるという問題もあった。
【0006】
本発明は上述の問題を解決するために提案するものであって、本発明が解決しようとする課題は、自動車用窓ガラスのプライマ塗布領域のような帯状の検査対象領域について、プライマ塗布状態等の検査対象を効率良く高精度で検査できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本願の発明者は、ロボット追従式画像検査という技術思想を創作した。そして、本発明は当該技術思想に基づき次の手段をとる。
まず、本発明の第1の発明は、検査対象物上の帯状の検査対象領域を撮影して、この撮影した画像から検査する画像検査装置であって、
撮影装置および該撮影装置が撮影する検査対象領域を照明する照明装置を取付けたロボットハンドと、該ロボットハンドに取付けられた撮影装置と照明装置を検査対象領域上に設定された経路に沿って移動させるロボットハンド移動手段と、該ロボットハンド移動手段により前記撮影装置が検査対象領域上の経路に沿って移動する際に該検査対象領域を連続撮影して画像を取得する画像取得手段とを備えることを特徴とするロボット追従式画像検査装置である。
ここで、連続撮影とは、前後の撮影画像の撮影範囲が一部重複する時間間隔で連続して画像の撮影をすることを云う。
この第1の発明によれば、ロボットハンドに取付けられた撮影装置によって検査対象物上の検査対象領域を至近距離で撮影するので一枚の画像でカバーする撮影範囲が狭いため、検査対象領域について高精度の画像を得ることができる。このとき撮影装置で撮影される検査対象領域は至近距離から照明装置で照明されているため、外部からの光の影響を受けにくく照明条件が一定した鮮明な画像を得ることができる。また、連続撮影した画像によって得られた画像は、帯状の検査対象領域全体を隙間無くカバーしている。よって、この連続撮影によって得られた高精度で鮮明な画像により、検査対象領域を高精度で検査をすることができる。
【0008】
次に、本発明の第2の発明は、上記第1の発明に係るロボット追従式画像検査装置であって、
更に、前記画像取得手段により得られた画像を処理する画像処理手段を備え、該画像処理手段により検査対象の検査を行うことを特徴とする。
この第2の発明によれば、ロボット追従式画像検査装置が備える画像処理手段を用いることにより、連続撮影された画像を即時に処理して検査をすることができる。
【0009】
次に、本発明の第3の発明は、上記第2の発明に係るロボット追従式画像検査装置であって、
更に、前記ロボットハンドにはプライマ塗布用の刷毛が取付けられており、前記検査対象領域が該刷毛により塗布されたプライマ塗布域とされており、前記検査が該塗布されたプライマのかすれ検査であることを特徴とする。
この第3の発明によれば、ロボットハンドに取付けられた刷毛によってプライマが塗布された領域を、同じロボットハンドに取付けられた撮影装置によって塗布直後に撮影するため、プライマの塗布と塗布領域の撮影を同時並行で行うことができ、作業効率がよい。また、プライマの塗布直後に塗布領域の撮影を行うので、撮影時にはプライマが乾いておらず光の散乱が少ない。その結果、コントラストの高い画像を得ることができるので、画像の検査においてプライマ塗布域の判断が容易である。
【0010】
次に、本発明の第4の発明は、上記第3の発明に係るロボット追従式画像検査装置であって、
前記検査対象物が自動車用のガラス部材であることを特徴とする。
この第4の発明によれば、自動車用のガラス部材の周辺部に帯状に塗布されたプライマの塗布状態を効率よく高精度で検査することができる。
【0011】
次に、本発明の第5の発明は、上記第2の発明に係るロボット追従式画像検査装置であって、
更に、前記ロボットハンドにはシール塗布具が取付けられており、前記検査対象領域が該シール塗布具により塗布されたシール塗布域とされており、前記検査が該塗布されたシールの途切れと塗布位置の検査であることを特徴とする。
この第5の発明によれば、ロボットハンドに取付けられたシール塗布具によってシールが塗布された領域を、同じロボットハンドに取付けられた撮影装置によって塗布直後に撮影するため、シールの塗布と塗布領域の撮影を同時並行で行うことができ、作業効率がよい。
【0012】
次に、本発明の第6の発明は、上記第5の発明に係るロボット追従式画像検査装置であって
前記検査対象物が自動車用の金属部材であることを特徴とする。
この第6の発明によれば、自動車用の金属部材の周辺部に帯状に塗布されたシールの塗布状態を効率よく高精度で検査することができる。
【0013】
次に、本発明の第7の発明は、検査対象物上の帯状の検査対象領域を撮影して、この撮影した画像から検査する画像検査方法であって、
ロボットハンドに撮影装置および該撮影装置が撮影する領域を照明する照明装置が取付けられており、該ロボットハンドが該撮影装置および該照明装置と共に検査対象領域上に設定された経路に沿って移動する際に、該撮影装置が検査対象領域を連続撮影した画像を取得することを特徴とするロボット追従式画像検査方法である。
ここで、連続撮影とは、上記第1の発明の場合と同様に、前後の撮影画像の撮影範囲が一部重複する時間間隔で連続して画像の撮影をすることを云う。
この第7の発明は、上記第1の発明に対応する方法の発明である。
この第7の発明によれば、ロボットハンドに取付けられた撮影装置によって検査対象物上の検査対象領域を至近距離で撮影するので一枚の画像でカバーする撮影範囲が狭いため、検査対象領域について高精度の画像を得ることができる。このとき撮影装置で撮影される検査対象領域は至近距離から照明装置で照明されているため、外部からの光の影響を受けにくく照明条件が一定した鮮明な画像を得ることができる。また、連続撮影した画像によって得られた画像は、帯状の検査対象領域全体を隙間無くカバーしている。よって、この連続撮影によって得られた高精度で鮮明な画像により、検査対象領域を高精度で検査をすることができる。
【0014】
次に、本発明の第8の発明は、上記第7の発明に係るロボット追従式画像検査方法であって、
更に、前記画像を処理する画像処理装置を備え、該画像処理装置により検査対象の検査を行うことを特徴とする。
この第8の発明は、上記第2の発明に対応する方法の発明である。
この第8の発明によれば、ロボット追従式画像検査装置が備える画像処理手段を用いることにより、連続撮影された画像を即時に処理して検査をすることができる。
【0015】
次に、本発明の第9の発明は、上記第8の発明に係るロボット追従式画像検査方法であって、
更に、前記ロボットハンドにはプライマ塗布用の刷毛が取付けられており、前記検査対象領域が該刷毛により塗布されたプライマ塗布域とされており、前記検査が塗布されたプライマのかすれ検査であることを特徴とする。
この第9の発明は、上記第3の発明に対応する方法の発明である。
この第9の発明によれば、ロボットハンドに取付けられた刷毛によってプライマが塗布された領域を、同じロボットハンドに取付けられた撮影装置によって塗布直後に撮影するため、プライマの塗布と塗布領域の撮影を同時並行で行うことができ、作業効率がよい。また、プライマの塗布直後に塗布領域の撮影を行うので、撮影時にはプライマが乾いておらず光の散乱が少ない。その結果、コントラストの高い画像を得ることができるので、画像の検査においてプライマ塗布域の判断が容易である。
【0016】
次に、本発明の第10の発明は、上記第9の発明に係るロボット追従式画像検査方法であって、
前記検査対象物が自動車用のガラス部材であることを特徴とする。
この第10の発明は、上記第4の発明に対応する方法の発明である。
この第10の発明によれば、自動車用のガラス部材の周辺部に帯状に塗布されたプライマの塗布状態を効率よく高精度で検査することができる。
【0017】
次に、本発明の第11の発明は、上記第8の発明に係るロボット追従式画像検査方法であって、
更に、前記ロボットハンドにはシール塗布具が取付けられており、前記検査対象領域が該シール塗布具により塗布されたシール塗布域とされており、前記検査が該塗布されたシールの途切れと塗布位置の検査であることを特徴とする。
この第11の発明は、上記第5の発明に対応する方法の発明である。
この第11の発明によれば、ロボットハンドに取付けられたシール塗布具によってシールが塗布された領域を、同じロボットハンドに取付けられた撮影装置によって塗布直後に撮影するため、シールの塗布と塗布領域の撮影を同時並行で行うことができ、作業効率がよい。
【0018】
次に、本発明の第12の発明は、上記第11の発明に係るロボット追従式画像検査方法であって、
前記検査対象物が自動車用の金属部材であることを特徴とする。
この第12の発明は、上記第6の発明に対応する方法の発明である。
この第12の発明によれば、自動車用の金属部材の周辺部に帯状に塗布されたシールの塗布状態を効率よく高精度で検査することができる。
【0019】
次に、本発明の第13の発明は、検査対象物上の帯状の検査対象領域を撮影して、この撮影した画像から検査対象を検査するためのコンピュータプログラムであって、
コンピュータを、撮影装置および該撮影装置が撮影する領域を照明する照明装置を取付けたロボットハンドが検査対象物の検査対象領域上を移動する際に撮影装置により連続撮影された検査対象領域の画像を取得する手段と、該画像を処理して検査対象の検査を行う画像処理手段を備えた画像処理装置として機能させることを特徴とするコンピュータプログラムである。
この第13の発明によれば、コンピュータが取得した画像は、ロボットハンドに取付けられた撮影装置によって検査対象物上の検査対象領域を至近距離で撮影した画像であるため、一枚の画像でカバーする撮影範囲が狭く高精度である。また、撮影装置で撮影される検査対象領域は至近距離から照明装置で照明されているため、外部からの光の影響を受けにくく照明条件が一定しており、画像が鮮明である。また、画像は連続撮影されているため、得られた画像は、帯状の検査対象領域全体を隙間無くカバーしている。よって、この連続撮影によって得られた高精度で鮮明な画像をコンピュータに処理させ検査させることにより、検査対象を高精度で検査をすることができる。
【0020】
次に、本発明の第14の発明は、上記第13の発明に係るコンピュータプログラムであって、
前記ロボットハンドにはプライマ塗布用の刷毛が取付けられており、前記検査対象物はガラス部材であり、前記検査対象領域は前記刷毛によりプライマが塗布された領域であり、前記検査はプライマの塗布状態の検査であって、
前記コンピュータに、前記画像上で検査エリアを決定して細分化する手段と、細分化されたエリア内でのプライマが塗布された面積割合を計算する手段と、該面積割合からプライマの塗布状態の良否を判定する手段を実行させることを特徴とする。
この第14の発明によれば、ロボットハンドに取付けられた刷毛によってプライマが塗布された領域を、同じロボットハンドに取付けられた撮影装置によって塗布直後に撮影するため、プライマの塗布と塗布領域の撮影を同時並行で行うことができ、作業効率がよい。また、プライマの塗布直後に塗布領域の撮影を行うので、撮影時にはプライマが乾いておらず光の散乱が少ない。その結果、コントラストの高い画像を得ることができるので、画像の検査においてプライマ塗布域の判断が容易である。
また、この第14の発明によれば、ガラス部材の周辺部に帯状に塗布されたプライマの塗布状態を効率よく高精度で検査することができる。
【0021】
次に、本発明の第15の発明は、上記第13の発明に係るコンピュータプログラムであって、
前記ロボットハンドにはシール塗布具が取付けられており、前記検査対象物は金属部材であり、前記検査対象領域は前記シール塗布具によりシールが塗布された領域であり、前記検査はシールの塗布状態の検査であって、
前記コンピュータに、前記画像上で検査エリアを決定して細分化する手段と、細分化されたエリア内でシールが塗布された幅を計測する手段と、その幅からシールの塗布状態の良否を判定する手段を実行させることを特徴とする。
この第15の発明によれば、ロボットハンドに取付けられたシール塗布具によってシールが塗布された領域を、同じロボットハンドに取付けられた撮影装置によって塗布直後に撮影するため、シールの塗布と塗布領域の撮影を同時並行で行うことができ、作業効率がよい。
また、この第15の発明によれば、金属部材の周辺部に帯状に塗布されたシールの塗布状態を効率よく高精度で検査することができる。
【発明の効果】
【0022】
上記本発明の各発明によれば、次の効果が得られる。
まず、上述した第1の発明によれば、連続撮影により得られた、帯状の検査対象領域全体を隙間無くカバーした高精度で鮮明な画像により、検査対象領域を高精度で検査をすることができる。
次に上述の第2の発明によれば、ロボット追従式画像検査装置が備える画像処理手段を用いることにより、連続撮影された画像を即時に処理して検査をすることができる。
次に上述の第3の発明によれば、プライマの塗布と塗布領域の撮影を同時並行で行うことができ、作業効率がよい。また、プライマの塗布直後に塗布領域の撮影を行うので、撮影時にはプライマが乾いておらず光の散乱が少なくコントラストの高い画像を得ることができるので、画像の検査においてプライマ塗布域の判断が容易である。
次に上述の第4の発明によれば、自動車用のガラス部材の周辺部に帯状に塗布されたプライマの塗布状態を効率よく高精度で検査することができる。
次に上述の第5の発明によれば、ロボットハンドに取付けられたシール塗布具によってシールが塗布された領域を、同じロボットハンドに取付けられた撮影装置によって塗布直後に撮影するため、シールの塗布と塗布領域の撮影を同時並行で行うことができ、作業効率がよい。
次に上述の第6の発明によれば、自動車用の金属部材の周辺部に帯状に塗布されたシールの塗布状態を効率よく高精度で検査することができる。
上述の第7〜第12の発明は、上述の第1〜第6の発明に対応する方法の発明であって、発明の効果はそれぞれ第1〜第6の発明と同様であるため、効果についての記載は省略する。
次に上述の第13の発明によれば、取得された画像は高精度で鮮明であり、帯状の検査対象領域全体を隙間無くカバーしているため、検査対象領域を高精度で検査をすることができる。
次に上述の第14の発明によれば、プライマの塗布と塗布領域の撮影を同時並行で行うことができ、作業効率がよい。また、プライマの塗布直後に塗布領域の撮影を行うので、撮影時にはプライマが乾いておらず、光の反射が少なくコントラストの高い画像を得ることができるので、画像の検査においてプライマ塗布域の判断が容易である。また、ガラス部材の周辺部に帯状に塗布されたプライマの塗布状態を効率よく高精度で検査することができる。
次に上述の第15の発明によれば、シールの塗布と塗布領域の撮影を同時並行で行うことができ、作業効率がよい。また、金属部材の周辺部に帯状に塗布されたシールの塗布状態を効率よく高精度で検査することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。第一実施例は自動車用の固定窓ガラスの周辺部に塗布されるプライマの塗布状態のかすれ検査に関する例である。
はじめに第一実施例におけるロボット追従式の画像撮影方式について説明する。図1に本発明の第一実施例であるロボット追従式画像検査装置(図示せず)を構成するロボットハンド12を示す。ロボットハンド12の先端にはプライマ塗布用の刷毛14が取付けられており、刷毛14の上部には撮影装置18と照明装置22が取付けられている。
ロボットハンド12の向きは進行方向に追随する構造となっているため、撮影装置18および照明装置22は常にロボットハンド12の進行方向後方に位置することとなる。そして、撮影装置18の撮影領域は刷毛14の進行方向後方のプライマが塗布される領域に設定されており、当該領域を照明装置22が照らす構成となっている。
【0024】
ロボットハンド12はロボット制御装置(図示せず)に制御されて、ティーチングにより設定された検査対象物30のプライマ塗布領域上の経路を移動する。第一実施例では、検査対象物30は自動車用の固定窓ガラスである。ロボットハンド12がプライマ塗布領域沿いに進行するのにあわせて、プライマ供給装置(図示せず)から刷毛14によりプライマが供給され、刷毛14によりプライマがプライマ塗布領域に塗られていく。そして、プライマが塗布された直後の領域が撮影装置18の撮影視野に入り、撮影装置18によりプライマ塗布直後のプライマ塗布域32を撮影することが可能となる。
【0025】
これにより、ロボットハンド12のプライマ塗布領域上の移動に合わせて、撮影装置18によりプライマ塗布域32の撮影範囲が重複する時間間隔で、プライマ塗布域32を連続撮影することで、プライマ塗布領域全体をカバーする画像が得られる。
また、ロボットハンド12に取付けられた撮影装置18によって検査対象物30上のプライマ塗布域32を至近距離で撮影するので一枚の画像でカバーする撮影範囲が狭いため、プライマ塗布域32について高精度の画像を得ることができる。このとき撮影装置18で撮影されるプライマ塗布域32は至近距離から照明装置で照明されているため、外部からの光の影響を受けにくく照明条件が一定した鮮明な画像を得ることができる。そして、プライマ塗布直後にプライマ塗布域32を撮影できるため、撮影時にはプライマが乾いておらずコントラストの高い画像を得ることができる。
また、プライマの塗布とプライマ塗布域32の撮影を同時に実施するため、効率よく検査用の画像を得ることができる。なお、プライマを塗布する工程と、プライマ塗布域32の撮影をする工程を別工程とすることもできる。
【0026】
次に、ロボット追従式画像検査装置10における全体的な制御について説明する。図2にロボット追従式画像検査装置10の全体構成を示す。シーケンサ24はロボット追従式画像検査装置10の全体の制御を行う。画像処理装置16は撮影装置18により撮影された画像を取込んで即時に検査しその結果をシーケンサ24に報告する。照明用電源20は照明装置22の電源でありシーケンサ24からの指示により照明装置22の点灯・消灯を制御する。
録画装置26は撮影装置18で撮影された画像を画像処理装置16経由でビデオデータとして受け取り、連続撮影された画像を動画データとして保存する。これにより、プライマ塗布検査時の検査用データをコンパクト化して履歴データとして残すことが可能であり、トレーサビリティ管理に役立てることができる。
なお、録画装置26は省略した構成とすることもできる。
【0027】
図3は撮影装置18により連続撮影される画像の連続する駒の撮影視野34を示す。図3に示すとおり、前後の駒で撮影視野34が重複するため、プライマ塗布領域全体を隙間無くカバーした画像を得ることができる。
図4は撮影装置18により撮影した撮影画像36の一駒である。これは、画像検査のテスト用に準備した検査対象物30を撮影したものであり、検査対象領域上に予め設定されたかすれ42の発生部分が写っており、画像の上部には刷毛14が写っている。図4(A)は塗布領域が直線部の画像であり、図4(B)は塗布領域がコーナー部の画像である。塗布領域が直線であるかコーナーであるかにより後述する画像処理に差異が生ずる。
【0028】
図5はシーケンサ24、ロボットハンド12を制御するロボット制御部、画像処理装置16および録画装置26の間での、制御およびデータの流れを時間の流れに沿って示したものである。
シーケンサ24からロボット制御部にサイクルスタート指令が送られると、ロボット制御部がロボットを起動して、ティーチングにより設定された検査対象物30のプライマ塗布領域上の経路の始点である塗布開始位置へロボットハンド12移動させる。ロボット制御部はロボットハンド12が塗布開始位置へ到着するとその旨をシーケンサ24に通知すると共に、ロボットハンド12をプライマ塗布領域上を移動させながらプライマの塗布を開始する。
シーケンサ24はロボット制御部から塗布開始位置到着の通知を受けると、画像処理装置16に画像処理スタート指令を送るとともに、録画装置26にも画像処理スタート指令を送る。画像処理装置16は画像処理スタート指令を受け取ると、撮影装置18により一定時間間隔でプライマ塗布域32の撮影を開始するとともに、撮影した画像をビデオデータに変換して録画装置26に送り出す。録画装置26は、画像処理スタート指令を受け取ると、画像処理装置16から送られてくるビデオデータの記録を開始する。
なお、ロボットハンド12の移動速度と撮影装置18による撮影時間の間隔は連続する撮影画像の撮影範囲が重複し、その範囲の移動が一定距離以下になるように調整されている。実施例においては撮影時間の間隔は約40ミリ秒であり、撮影範囲は80%程度重複している。
【0029】
プライマの塗布が開始されると、ロボット制御部はロボットハンド12の位置およびロボットハンド12が直線部を塗布しているかコーナー部を塗布しているかを区別する情報を逐次シーケンサ24に通知する。シーケンサ24はロボット制御部から受け取った直線部/コーナー部を区別する情報に対応して画像処理装置16に直線指令またはコーナー指令を送る。
画像処理装置16は撮影装置18が撮影した画像を取込み、シーケンサ24から受けた処理指令に対応して直線処理ロジックまたはコーナー処理ロジックにより画像処理を行い、かすれ検査をして、判定結果のOK/NGの区分をシーケンサ24に通知する。画像処理に要する時間は撮影時間間隔以下であり、画像処理はリアルタイムで行われる。
画像処理装置16はモニタ表示機能を備えており、モニタ上に現在の検査位置、処理中の画像及びその画像における判定結果のOK/OGの区分を表示する。また、検査開始からの判定結果がNGの累積回数を表示することができるため、かすれの発生の検出の有無を簡単に確認することができる。
シーケンサ24はロボット制御部から通知されたプライマの塗布位置、画像処理装置16から送付された判定結果のOK/NGの区分の情報を対応づけて、シーケンサ24の外部モニタにプライマ塗布領域を表示して、NGの発生した位置を色違いで表示させることもできる。
【0030】
ロボットハンド12がプライマ塗布領域の終点に到達すると、ロボット制御部はシーケンサ24に塗布終了位置到着を通知し、プライマの塗布を終了させる。シーケンサ24は塗布終了位置到着の通知を受けると、画像処理装置16および録画装置26に画像処理終了指令を送る。画像処理装置16は画像処理終了指令を受けると、画像処理を終了し、録画装置26へのビデオデータの送付を終了する。録画装置26は、画像処理終了指令を受け取るとビデオデータの記録を終了する。
【0031】
次に、図6に基づいて、かすれ検査の方法について説明する。上述の通り、前後の画像で撮影範囲が重複するので、各画像では撮影範囲が移動する幅だけ検査をすれば、プライマ塗布領域全体についてもれなく検査できることとなる。そこで、撮影範囲の移動する距離をカバーできる長さを決めて、これを検査長さとしている。
そして、撮影視野の固定位置に判定ガイド44と呼ぶ区画を設定し、これを基準としてプライマを塗布する幅と検査長さからなる長方形の領域である検査エリア46を設定している。プライマ塗布域32が直線のときはプライマ塗布域32の左端が判定ガイド44に掛かる位置を基準として、図6(A)に示すように水平方向の検査エリア46を設定する。また、プライマ塗布域32がコーナー部のときは、プライマ塗布域32の左端が判定ガイド44を横切る線を基準として図6(B)に示すように傾いた検査エリア46を設定する。なお、塗布幅、検査長さは任意に設定が可能である。
次に検査エリア46をプライマの塗布幅の方向で10等分した細分エリア48を求め、各細分エリア48における塗布面積の割合を求める。
かすれ検査では、細分エリア48内での塗布面積が80%以下のエリアが3個以上の場合は塗布面積不良でNG、または細分エリア48内で塗布面積が95%以下のエリアが3個以上連続する場合は途切れの発生懸念でNGと判定している。面積、個数等の判定基準は任意に設定が可能である。図7に判定結果の例を示す。図7(A)は塗布面積検査の例、図7(B)は途切れ検査の例である。
【0032】
図8に画像処理装置16で実行されるプライマ塗布状態の検査をするプログラムの処理フローを示す。シーケンサ24から画像処理装置16に画像処理スタート指令が送られると、検査処理が開始される。処理が開始されると、S100により、画像処理装置16がシーケンサ24から直線処理指令を受けているか否かを検査する。直線処理指令を受けていれば、直線部の処理を行うS110に進む。直線処理指令を受けていなければコーナー処理指令を受けているのでコーナー処理を行うS120に進む。
S110の撮影画像取得では、撮影装置18により撮影された撮影画像36を画像処理装置16を通じて取得する。
次にS112の判定ガイド設定で、S110で取得した画像上の所定の位置に判定ガイド44を設定する。
次にS114の直線部検査エリア抽出で、検査エリア46の位置を求める。検査エリア46は水平長さがプライマの塗布予定幅、垂直長さが検査長さの長方形であり、垂直方向の中央位置は判定ガイド44の垂直方向の中央位置と一致するように定めているので、左右方向の位置が決まれば検査エリア46の位置が決定する。そこで、プライマ塗布域32の左端の接線を求め、この接線が判定ガイド44を横切る位置を検査エリア46の左端として、検査エリア46の位置を決定する。検査エリア46の位置が決定したら、撮影画像36からその範囲の画像データを抽出する。
次にS116のかすれ判定処理で、S114で抽出した画像データについてかすれの有無の判定を行う。判定方法の詳細は前の段落で詳述したので詳細な説明は省略する。
次にS118の直線部判定結果報告で、かすれ判定処理の結果のOK/NGの区分を画像処理装置16に通知する。
次にS130で終了判定を行う。S130の終了判定は直線処理指令の場合とコーナー処理指令の場合の共通の処理としている。まず画像処理装置16がシーケンサ24から画像処理終了指令を受けているか否かを検査する。終了指令を受けていれば検査処理を終了する。終了指令を受けていなければS100に戻って次の撮影画像36の処理を行う。そして、終了指令が来るまでS100以降の検査処理を繰り返す。
【0033】
S120の撮影画像取得では、撮影装置18により撮影された撮影画像36を画像処理装置16を通じて取得する。
次にS122の判定ガイド設定で、S120で取得した画像上の所定の位置に判定ガイド44を設定する。
次にS124のコーナー部検査エリア抽出で、検査エリア46の位置を求める。検査エリア46は一辺の長さをプライマの塗布予定幅とし他辺の長さを検査長さとする長方形であり、撮影されたプライマ塗布域32の傾斜に合わせて傾斜した領域としている。そこで、判定ガイド44の幅方向の中央部でプライマ塗布域32の接線を求め、この接線を検査エリア46の左辺とし、辺の中央が判定ガイド44の幅方向の中央に来るように検査エリア46の位置を決定する。検査エリア46の位置が決定したら、撮影画像36からその範囲の画像データを抽出する。
次にS126のかすれ判定処理で、S124で抽出した画像データについてかすれの有無の判定を行う。判定方法の詳細は前の段落で詳述しているので詳細な説明は省略する。
次にS128のコーナー部判定結果報告で、かすれ判定処理の結果のOK/NGの区分を画像処理装置16に通知する。判定結果報告後はS130で終了判定を行う。S130での処理内容は上述の通りである。
なお、上述の処理フローは第一実施例における画像の検査処理の基本的な流れを説明したものである。
【0034】
この第一実施例によれば、自動車用の固定窓ガラスにプライマを塗布しながら、同時並行でプライマ塗布域の画像を撮影し、リアルタイムで画像処理を行うことで、プライマの塗布状態を迅速に高精度で検査することができる。また、固定窓ガラスに湾曲がある場合にはロボットハンド12がガラスの湾曲面に沿って傾斜し、ロボットハンド12の軸は常にプライマ塗布領域に垂直に保たれるため、ロボットハンド12に取付けられた撮影装置18とプライマ塗布領域の角度も一定に保たれる。よって、固定窓ガラスの湾曲により撮影画像36の画質が低下することはなく、プライマ塗布状態の検査精度は固定窓ガラスの湾曲の影響を受けない。
【0035】
次に、本発明の第二実施例について説明する。第二実施例は自動車用の金属部材に塗布されるシールの塗布状態の検査に関する例である。
図9に第二実施例のロボットハンド52の構成を示す。第一実施例との違いは、撮影装置およびそれに対応する照明装置が各二台の構成となっている点である。この違いはプライマとシールの違いに起因する。
第一実施例のプライマの塗布は刷毛で塗っており、塗布幅を一定にするためには常にロボットハンド進行方向に刷毛が向いているようにする必要があった。そのために、プライマ塗布用のロボットハンドは進行方向に刷毛の一定の面が向く構成とされており、撮影装置は常にロボットハンドの進行方向後方に位置することとなった。よって、撮影装置一台でプライマ塗布直後のプライマ塗布域をもれなく撮影することができた。
一方、シールはロボットハンドの進行方向によって塗布幅が変わることはないこと、シール剤の配管、ホースはプライマと比べて太くて硬いため、ロボットハンド先端の回転の自由度が低いこと、シール塗布用の既存の装置のほとんどがロボットハンドの向きが進行方向に追随していないことから、シール塗布状態の検査では、ロボットハンドの先端の向きが固定されている装置への対応が必要となる。
ロボットハンドの向きが固定されていると、撮影装置が取付けられている方向へロボットハンドが進行する場合は撮影装置はロボットハンドの進行方向前方に位置することになるため、撮影範囲はシール塗布前の領域となってしまう。そこで、ロボットハンドがいずれの方向に進行する場合であっても、撮影装置の撮影視野にシール塗布後の領域が入るようにするため、撮影装置が二台必要となる。
なお、第二実施例は、検査対象物70の検査対象領域上に設定された経路に沿ってロボットハンド52がシールを塗布しながら移動し、ロボットハンド52に取付けられた撮影装置58A、58Bが、照明装置62A、62Bによって照明されたシール塗布域72を連続撮影するという構成を有しており、基本的な思想は第一実施例と共通である。
【0036】
図10に第二実施例のロボット追従式画像検査装置50の全体構成図を示す。シーケンサ64、画像処理装置56、照明用電源60および録画装置66の基本的な役割は第一実施例と同様である。
なお、全体的な制御において第一実施例との差異は概略次の通りである。ロボット制御部はシーケンサ64にロボットハンド52の進行方向が上下左右の四方向のいずれであるかを知らせ、シーケンサ64はその情報を画像処理装置56に知らせる。そこで画像処理装置56は、ロボットハンド52の進行方向情報に基づいて、次に述べる判定ガイドを選択し、撮影装置58A、58Bのいずれで撮影された画像のどの部分で画像検査を行うかを決定する。
【0037】
ここで、第二実施例における判定ガイドについて説明する。第二実施例では、二台の撮影装置58A、58Bの撮影視野75をほぼ一致させている。そして撮影装置視野75内に4つの判定ガイドを設けており、シール塗布域72がどの判定ガイド76に掛かる判定して撮影装置58A、58Bのいずれで撮影された画像のどの部分を検査するかを決めている。
図11でロボットハンド52の進行方向と判定ガイド76の選択方法について説明する。撮影装置視野75は前述の通り撮影装置58A,58Bでほぼ重なっている。シール塗布具54に対して撮影装置58Aは撮影視野75の右辺の外側に位置し、撮影装置58Bは撮影装置視野75の左辺の外側に位置している。
ロボットハンド52が図11で左方向に移動する場合は、判定ガイド76A1を選択する。判定ガイド76A1は撮影装置58Aの撮影視野75に設定され、撮影装置58Aがロボットハンド52の進行方向後方となったときに検査エリアを設定する基準となる。
ロボットハンド52が図11で下方向に移動する場合は、判定ガイド76A2を選択する。判定ガイド76A2は撮影装置58Aの撮影視野75に設定され、撮影装置58Aがロボットハンド52の進行方向左側となったときに検査エリアを設定する基準となる。
ロボットハンド52が図11で右方向に移動する場合は、判定ガイド76B1を選択する。判定ガイド76B1は撮影装置58Bの撮影視野75に設定され、撮影装置58Bがロボットハンド52の進行方向後方となったときに検査エリアを設定する基準となる。
ロボットハンド52が図11で上方向に移動する場合は、判定ガイド76B2を選択する。判定ガイド76B2は撮影装置58Bの撮影視野75に設定され、撮影装置58Bがロボットハンド52の進行方向後方となったときに検査エリアを設定する基準となる。
【0038】
図12にロボットハンド52によるシール塗布の進行方向によりどの判定ガイドが選択されるかを示す。ロボットハンド52は右回りでシール塗布域72を移動するものとする。シール塗布域72の斜線部は各視野の中でシールが塗布済みの領域を示す。撮影視野75Aでは、ロボットハンド52が図12で上方向に移動するので、判定ガイド76B2が選択される。撮影視野75Bでは、ロボットハンド52が図12の右方向へ移動するので、判定ガイド76B1が選択される。撮影視野75Cでは、ロボットハンド52が図12で下方向に移動するので、判定ガイド76A2が選択される。撮影視野75Dでは、ロボットハンド52が図12で左方向に移動するので、判定ガイド76A1が選択される。
【0039】
判定ガイドが選択されると、判定ガイドに掛かる位置でシール塗布域上に検査エリア78を設定する。第二実施例では第一実施例と同様、前後の画像の撮影範囲が重複しているので、検査エリア78の長さは、シール塗布方向に、撮影範囲の移動する距離をカバーできる長さとしている。また、検査エリア78の幅は検査対象物70の端が検査エリア78に含まれるように設定している。そして、シールの長さ方向で検査エリア78を細分した細分エリア80を設定する。
次に、各細分エリア80でシールの塗布幅を求める。細分エリア80のシールの幅が閾値以下のものが1つ以上有れば、その検査エリア78ではシールの途切れがあったものとしてNGの判定とする。図13(A)途切れ検査の判定例を示す。
続いてシールの塗布位置の検査を行う。シールの塗布位置は検査対象物70の端から一定距離内側に設定されている。ここで、検査対象物70の端の傾斜等によりシールの塗布位置がずれてしまうことがあるため、塗布位置の検査が必要となる。そこで、各細分エリア80で、検査対象物70の端とシールの端の距離を求めて、この距離が許容範囲外となるものが1つ以上あれば、シールの塗布位置がNGであると判定する。図13(B)に塗布位置検査の判定例を示す。なお、検査対象物70と背景71の明るさの差異が小さいときは、検査対象物70の背後に白い板を置く等により、検査対象物70の端の検出を容易にしている。
【0040】
図14に第二実施例において画像処理装置56で実行されるシール塗布状態を検査するプログラムの処理フローを示す。シーケンサ64から画像処理装置56に画像処理スタート指令が送られると、検査処理が開始される。
処理が開始されると、まずS200の追従方向情報取得により、画像処理装置56がシーケンサ64から受け取っているロボットハンド52の進行方向に関する情報を得る。そして、ロボットハンド52の進行方向の情報から二台の撮影装置58A、58Bのうちいずれで撮影された撮影画像74で検査を行うかを判断する。
次にS202の撮影画像取得で、S200での判断結果に基づいて撮影画像74を画像処理装置56を通じて取得する。なお、撮影装置58A、58Bはロボットハンド52の進行方向にかかわらず作動して撮影を続けている。
次にS204の判定ガイド設定で、ロボットハンド52の進行方向の情報から前述の4つの判定ガイド76A1、76A2、76B1、76B2のいずれを使用するかを判断し、使用する判定ガイド76を選択して、S202で取得した撮影画像74上の所定の位置に判定ガイドを設定する。
次にS206の検査エリア抽出で、検査エリア78の位置を求める。検査エリア78は幅をシール塗布方向の変化を考慮して、シールおよび検査対象物70の端が検査エリア78に含まれる幅とし、長さは連続撮影の前後の画像間での撮影範囲の移動する距離をカバーする所定の長さとしている。図15に検査エリア78を設定した例を示す。検査エリア78の位置が決定したら、撮影画像74からその範囲の画像データを抽出する。
次にS208の途切れ判定処理で、S206で抽出した画像データについて途切れの有無の判定を行う。まず検査エリア78を長さ方向で細分した細分エリア80を設定する。そして細分エリア80の中で等間隔に6箇所でシールの幅を求めその平均値を細分エリア80における塗布幅とする。検査エリア78で細分エリア80における塗布幅が閾値以下のものが1つ以上あれば、その検査エリア78ではシールの途切れがあったものとしてNGの判定をする。
次にS210の塗布位置判定処理で、S206で抽出した画像データについて塗布位置のズレがないか判定を行う。まず検査エリア78を長さ方向で細分した細分エリア80を設定する。そして細分エリア80の中で等間隔に6箇所で検査対象物70の端とこれに近い側のシールの端との距離を求め、その平均値を細分エリア80における検査対象物70の端とシールの距離とする。検査エリア78で細分エリア80におけるこの距離が許容範囲外のものが1つ以上あれば、その検査エリア78ではシールの塗布位置のズレがあったものとしてNGの判定をする。
次にS212の判定結果報告で途切れ判定処理の結果および塗布位置判定処理の結果を総合し、共にOKの場合はOK、それ以外はNGとし、総合判定のOK/NGの区分を画像処理装置56に通知する。
次にS220で画像処理装置56がシーケンサ64から画像処理終了指令を受けているか否かを検査する。終了指令を受けていれば検査処理を終了する。終了指令を受けていなければS200に戻って次の画像の処理を行う。そして、終了指令が来るまでS200以降の検査処理を繰り返す。
なお、上述の処理フローは第二実施例における画像の検査処理の基本的な流れを説明したものである。
【0041】
この第二実施例によれば、自動車用の金属部材にシールを塗布しながら、同時並行でシール塗布域の画像を撮影し、リアルタイムで画像処理を行うことで、シールの塗布状態を迅速に高精度で検査することができる。この第二実施例の特徴は、ロボットハンドの向きが固定されたものであっても、二台の撮影装置をロボットハンドの両側に取付けることで、シールの塗布とシール塗布域の漏れのない撮影を同時並行で実施できる点にある。
なお、シールの塗布工程と塗布領域の撮影の工程をわけて、シール塗布後の塗布領域の撮影を行うことにすれば、撮影装置を一台の構成としても、シール塗布領域をもれなく撮影することができる。
【0042】
上記の実施例では、画像処理装置をロボット追従式画像検査装置に組み込んで画像の検査をリアルタイムで処理しているが、連続撮影した画像を記憶装置に記憶して、一括して通信回線で画像処理装置に送り、画像処理装置で検査した結果を通信回線で受け取る構成とすることもできる。
また、上記の実施例では、検査対象物としては自動車用の固定窓ガラスおよび金属部材の例を、検査対象領域としてはプライマ塗布領域およびシール塗布領域の例を示したが、本発明は、これらの例に限られず、検査対象物上の帯状の領域の検査に広く適用できるものである。
その他、本発明はその発明の思想の範囲で、各種の形態で実施できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】第一実施例のロボットハンドの構成を示す図である。
【図2】第一実施例のロボット追従式画像検査装置の全体構成を示す図である。
【図3】連続する駒の撮影範囲を示す図である。
【図4】連続撮影された写真の一駒である。
【図5】第一実施例のロボット追従式画像検査装置の動作フロー図である。
【図6】撮影画像に検査区画を設定した状態を示す図である。
【図7】かすれ判定方法についての説明図である。
【図8】第一実施例における画像検査のフロー図である。
【図9】第二実施例のロボットハンドの構成を示す図である。
【図10】第二実施例のロボット追従式画像検査装置の全体構成を示す図である。
【図11】カメラおよび検査範囲の選択方法を示す図である。
【図12】塗布方向とカメラおよび検査範囲の選択結果の一例を示す図である。
【図13】途切れおよび塗布位置のズレの検出方法についての説明図である。
【図14】第二実施例における画像検査のフロー図である。
【図15】第二実施例における検査エリアを設定する方法を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
10 ロボット追従式画像検査装置
12 ロボットハンド
14 刷毛
16 画像処理装置
18 撮影装置
20 照明用電源
22 照明装置
24 シーケンサ
26 録画装置
30 検査対象物
32 プライマ塗布域
34 撮影視野
36 撮影画像
38 照明装置影
40 背景
42 かすれ
44 判定ガイド
46 検査エリア
48 細分エリア
50 ロボット追従式画像検査装置
52 ロボットハンド
54 シール塗布具
56 画像処理装置
58A、58B 撮影装置
60 照明用電源
62A、62B 照明装置
64 シーケンサ
66 録画装置
70 検査対象物
71 背景
72 シール塗布域
74 撮影画像
75、75A、75B、75C、75D 撮影視野
76、76A1、76A2、76B1、76B2 判定ガイド
78 検査エリア
80 細分エリア


【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物上の帯状の検査対象領域を撮影して、この撮影した画像から検査する画像検査装置であって、
撮影装置および該撮影装置が撮影する検査対象領域を照明する照明装置を取付けたロボットハンドと、該ロボットハンドに取付けられた撮影装置と照明装置を検査対象領域上に設定された経路に沿って移動させるロボットハンド移動手段と、該ロボットハンド移動手段により前記撮影装置が検査対象領域上の経路に沿って移動する際に該検査対象領域を連続撮影して画像を取得する画像取得手段とを備えることを特徴とするロボット追従式画像検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載のロボット追従式画像検査装置であって、
更に、前記画像取得手段により得られた画像を処理する画像処理手段を備え、該画像処理手段により検査対象の検査を行うことを特徴とするロボット追従式画像検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載のロボット追従式画像検査装置であって、
更に、前記ロボットハンドにはプライマ塗布用の刷毛が取付けられており、前記検査対象領域が該刷毛により塗布されたプライマ塗布域とされており、前記検査が該塗布されたプライマのかすれ検査であることを特徴とするロボット追従式画像検査装置。
【請求項4】
請求項3に記載のロボット追従式画像検査装置であって、
前記検査対象物が自動車用のガラス部材であることを特徴とするロボット追従式画像検査装置。
【請求項5】
請求項2に記載のロボット追従式画像検査装置であって、
更に、前記ロボットハンドにはシール塗布具が取付けられており、前記検査対象領域が該シール塗布具により塗布されたシール塗布域とされており、前記検査が該塗布されたシールの途切れと塗布位置の検査であることを特徴とするロボット追従式画像検査装置。
【請求項6】
請求項5に記載のロボット追従式画像検査装置であって、
前記検査対象物が自動車用の金属部材であることを特徴とするロボット追従式画像検査装置。
【請求項7】
検査対象物上の帯状の検査対象領域を撮影して、この撮影した画像から検査する画像検査方法であって、
ロボットハンドに撮影装置および該撮影装置が撮影する領域を照明する照明装置が取付けられており、該ロボットハンドが該撮影装置および該照明装置と共に検査対象領域上に設定された経路に沿って移動する際に、該撮影装置が検査対象領域を連続撮影した画像を取得することを特徴とするロボット追従式画像検査方法。
【請求項8】
請求項7に記載のロボット追従式画像検査方法であって、
更に、前記画像を処理する画像処理装置を備え、該画像処理装置により検査対象の検査を行うことを特徴とするロボット追従式画像検査方法。
【請求項9】
請求項8に記載のロボット追従式画像検査方法であって、
更に、前記ロボットハンドにはプライマ塗布用の刷毛が取付けられており、前記検査対象領域が該刷毛により塗布されたプライマ塗布域とされており、前記検査が塗布されたプライマのかすれ検査であることを特徴とするロボット追従式画像検査方法。
【請求項10】
請求項9に記載のロボット追従式画像検査方法であって、
前記検査対象物が自動車用のガラス部材であることを特徴とするロボット追従式画像検査方法。
【請求項11】
請求項8に記載のロボット追従式画像検査方法であって、
更に、前記ロボットハンドにはシール塗布具が取付けられており、前記検査対象領域が該シール塗布具により塗布されたシール塗布域とされており、前記検査が該塗布されたシールの途切れと塗布位置の検査であることを特徴とするロボット追従式画像検査方法。
【請求項12】
請求項11に記載のロボット追従式画像検査方法であって、
前記検査対象物が自動車用の金属部材であることを特徴とするロボット追従式画像検査方法。
【請求項13】
検査対象物上の帯状の検査対象領域を撮影して、この撮影した画像から検査対象を検査するためのコンピュータプログラムであって、
コンピュータを、撮影装置および該撮影装置が撮影する領域を照明する照明装置を取付けたロボットハンドが検査対象物の検査対象領域上を移動する際に撮影装置により連続撮影された検査対象領域の画像を取得する手段と、該画像を処理して検査対象の検査を行う画像処理手段を備えた画像処理装置として機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項14】
請求項13に記載のコンピュータプログラムであって、
前記ロボットハンドにはプライマ塗布用の刷毛が取付けられており、前記検査対象物はガラス部材であり、前記検査対象領域は前記刷毛によりプライマが塗布された領域であり、前記検査はプライマの塗布状態の検査であって、
前記コンピュータに、前記画像上で検査エリアを決定して細分化する手段と、細分化されたエリア内でのプライマが塗布された面積割合を計算する手段と、該面積割合からプライマの塗布状態の良否を判定する手段を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項15】
請求項13に記載のコンピュータプログラムであって、
前記ロボットハンドにはシール塗布具が取付けられており、前記検査対象物は金属部材であり、前記検査対象領域は前記シール塗布具によりシールが塗布された領域であり、前記検査はシールの塗布状態の検査であって、
前記コンピュータに、前記画像上で検査エリアを決定して細分化する手段と、細分化されたエリア内でシールが塗布された幅を計測する手段と、その幅からシールの塗布状態の良否を判定する手段を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−36705(P2009−36705A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−202866(P2007−202866)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(000177058)三友工業株式会社 (27)
【Fターム(参考)】