説明

三次元構造体の製造方法及びこの製造方法によって製造された三次元構造体

【課題】本発明は三次元構造体の製造効率の低下を招くことなく、電極パッドをシリコン基板に形成可能な三次元構造体の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の三次元構造体の製造方法は、シリコン基板T、B、Hを用いて形成された三次元微細構造体の電極パッド16P3、16P4の形成領域16P3’、16P4’に金Auを堆積させる金属堆積工程と、シリコン基板T、B、Hを熱により酸化させて金Auの形成領域以外の表面にシリコンの酸化膜SiO2を形成する酸化膜形成工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン基板を用いて三次元微細構造体を構築する三次元構造体の製造方法及びこの製造方法によって製造された三次元構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、シリコン基板を用いて三次元微細構造体を構築する三次元構造体の製造方法、例えば、三次元構造体としての櫛歯型静電アクチュエータの製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
その特許文献1には、SOI基板を使用して三次元構造体としての微小可動体デバイスの電極を形成する際に、絶縁層をエッチングにより除去する技術が開示されている。
また、その特許文献1は、この絶縁層をエッチングにより除去する際の異物の混入により、単結晶シリコン基板とその上方に位置する単結晶シリコン層とが異物を介して電気的に短絡するとの問題点を提起すると共にその解決策を提案している。
【0004】
更に、この特許文献1には、その単結晶シリコンを熱酸化することにより、異方性エッチングの際の可動体及び構造体の側壁保護膜として機能させることも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4422624号(段落0010、0054ないし0057参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この従来のシリコン基板を用いて三次元微細構造体を構築する三次元構造体の製造方法は、エッチングにより熱酸化膜をフッ酸で除去した後、電極パッドを成膜形成するもので、電極パッドの形成の際にシリコン基板に形成した熱酸化膜を除去しなければならず、三次元構造体の製造効率の低下を招くという問題がある。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたもので、三次元構造体の製造効率の低下を招くことなく、電極パッドをシリコン基板に形成可能な三次元構造体の製造方法及びこの製造方法によって製造された三次元構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の三次元構造体の製造方法は、シリコン基板を用いて形成された三次元微細構造体の電極パッドの形成領域に熱酸化により絶縁領域が形成されるのを防止する熱酸化絶縁領域形成防止用金属を堆積させる金属堆積工程と、前記シリコン基板を熱により酸化させて前記熱酸化絶縁領域形成防止用金属の形成領域以外の表面にシリコン酸化膜を形成する酸化膜形成工程とを含み、前記熱酸化絶縁領域形成防止用金属が、金又は白金又は熱による酸化後も導電性を有する金属であることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の三次元構造体の製造方法は、シリコン基板を用いて形成された三次元微細構造体の電極パッドの形成領域に熱酸化により絶縁領域が形成されるのを防止する熱酸化絶縁領域形成防止用金属よりも融点の高い高融点金属を堆積させた後、前記熱酸化絶縁領域形成防止用金属を堆積させる金属堆積工程と、
前記シリコン基板を熱により酸化させて熱酸化絶縁領域形成防止用金属の形成領域以外の表面にシリコン酸化膜を形成する酸化膜形成工程とを含み、
前記熱酸化絶縁領域形成防止用金属が、金又は白金又は熱による酸化後も導電性を有する金属であることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の三次元構造体の製造方法は、前記酸化膜形成工程による前記シリコン酸化膜の形成後に、前記熱酸化絶縁領域形成防止用金属の形成領域の上に更に熱酸化絶縁領域形成防止用金属を堆積させる金属堆積工程を含むことを特徴とする。
請求項4に記載の三次元構造体の製造方法は、前記酸化膜形成工程による前記シリコン酸化膜の形成後に、前記熱酸化絶縁領域形成防止用金属の形成領域の上に更に前記高融点金属を堆積させた後、前記熱酸化絶縁領域形成防止用金属を堆積させる金属堆積工程を含むことを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の三次元構造体の製造方法は、前記高融点金属がチタン、クロム、ニッケルのいずれかを含む金属であることを特徴とする。
請求項6に記載の三次元構造体の製造方法は、前記熱による酸化後も導電性を有する金属がアルミニウム、ニッケル、銅、銀のいずれかであることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の三次元構造体の製造方法は、シリコン基板を用いて形成された三次元微細構造体の電極パッドの形成領域に金又は白金よりも融点の高いチタン、クロム、ニッケルのいずれかを堆積させた後、金又は白金を堆積させる金属堆積工程と、前記シリコン基板を熱により酸化させて前記金又は白金の形成領域以外の表面にシリコン酸化膜を形成する酸化膜形成工程と、前記酸化膜形成工程による前記シリコン酸化膜の形成後に、前記金又は白金の形成領域の上に更に前記チタン、クロム、ニッケルのいずれかを堆積させた後、金又は白金を堆積させる金属堆積工程と、を含むことを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の三次元構造体は、請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の三次元構造体の製造方法によって製造されていることを特徴とする。
請求項9に記載の三次元構造体は、請求項4に記載の三次元構造体の製造方法によって製造された三次元構造体であって、電極パッドの形成領域の断面構造が、前記高融点金属の上に金又は白金が堆積された第1層と該第1層の上に前記高融点金属が堆積されかつ該高融点金属の上に金又は白金が堆積された第2層とからなり、前記高融点金属がチタン、クロム、ニッケルのいずれかを含む金属であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、シリコン基板を用いて形成された三次元微細構造体の電極パッドの形成領域に熱酸化により絶縁領域が形成されるのを防止する熱酸化絶縁領域形成防止用金属を堆積させた後、シリコン基板を熱により酸化させて熱酸化絶縁領域形成防止用金属の形成領域以外の表面にシリコン酸化膜を形成したので、三次元構造体の製造効率の低下を招くことなく、シリコン基板に電極パッドを形成できる。
なお、熱酸化絶縁領域形成防止用金属には、熱により酸化しにくい金又は白金又は熱による酸化後も導電性を有する金属(アルミニウム、ニッケル、銅又は銀)を用いることができる。
【0015】
特に、電極パッドの形成領域に熱酸化絶縁領域形成防止用金属よりも融点の高い高融点金属の堆積後に、シリコン基板を高温に加熱して熱により酸化させることにした場合であっても、その高融点金属の表面が熱酸化絶縁領域形成防止用金属により保護されているので、その高融点金属の熱による酸化が防止され、その高融点金属の導電性が確保されるという効果がある。
【0016】
更に、シリコン基板を熱により酸化させた後に、再度、電極パッドの形成領域に熱酸化絶縁領域形成防止用金属を堆積させる構成とすれば、ワイヤーボンディングの際に電極パッドと配線との密着力を高めることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は本発明に係る三次元構造体としてのMEMS走査型ミラーの実施例を示す説明図であって、(a)は平面図、(b)は(a)に示すA−A’線に沿う断面図、(c)は(a)に示すB−B’線に沿う断面図である。
【図2】図2は本発明によるMEMS走査型ミラーの製造方法の実施例を示す説明図であって、(a)は準備工程の説明図、(b)はシリコンからなるデバイス層への微細構造体の形成工程の説明図、(c)はシリコン基板としてのシリコンウエハの接合工程の説明図、(d)は最上層のデバイス層の形成工程の説明図、(e)はシリコン基板からなるハンドル層へのマスクの形成工程の説明図である。
【図3】図3は本発明に係るMEMS走査型ミラーの製造方法の実施例を示す説明図であって、(a)は図2(e)に示す最上層のデバイス層への微細構造体と電極パッドの形成領域とを同時に形成すると共にハンドル層へ空洞を形成する工程の説明図、(b)は電極パッドの形成領域を露呈させかつマスク部材により残余の領域を遮蔽して電極パッドの形成領域に金よりも融点の高い金属を堆積させた後、金をその金属の上に堆積させる工程の説明図、(c)は(b)に示すシリコンの表面に熱による酸化膜を形成する工程の説明図、(d)は熱による酸化膜形成後の三次元微細構造体の電極パッドの形成領域とミラー面とを露呈させかつ残余の領域をマスク部材により遮蔽して電極パッドの形成領域とミラー面とに、堆積された金よりも融点の高い金属を堆積させた後、更に金を堆積させる工程の説明図である。
【図4】図4は熱による酸化膜の形成状態の説明図であって、(a)は図3(b)に示す三次元構造体の側面部分の部分拡大図、(b)は図3(c)に示す三次元構造体の側面部分に形成された熱による酸化膜を示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0018】
以下に、図面を参照しつつ、本発明に係る三次元構造体及びその製造方法を説明する。
(三次元構造体の一例)
図1は、本発明に係る三次元構造体としての1つの段差付き静電櫛歯アクチュエータを有するMEMS走査型ミラーの模式図を示している。
【0019】
このMEMS走査型ミラーは、図1(a)〜図1(c)に示すように、3層構造を呈しており、最上層のデバイス層T、最下層のハンドル層H及びこれらの間に存在するデバイス層Bからなる。
【0020】
デバイス層T、デバイス層Bはn型又はp型にドープされた導電性のシリコンからなる。ハンドル層Hには絶縁性若しくは導電性シリコンが用いられる。これらの各層の間は、絶縁層Iによって電気的に絶縁されている。絶縁層Iは、ハンドル層Hがシリコンの場合、シリコン酸化物であることが好ましい。
【0021】
そのハンドル層Hには空洞HOが形成されている。各デバイス層T、デバイス層Bに形成される静電櫛歯アクチュエータの三次元微細構造体はその空洞HOの上方に位置する。この各デバイス層T、デバイス層Bに形成される静電櫛歯アクチュエータの微細構成要素については、各層を示す符号T、Bに添字を付して説明する。
【0022】
デバイス層Bに形成される静電櫛歯アクチュエータの三次元微細構造体はミラー板10B、可動櫛歯11B、軸13B、ばね14B及び枠15Bである。これらの各三次元微細構造体の全ては一体とされ、電気的に等電位とされる。
【0023】
ミラー板10Bには、一方向に伸びる一対の軸13Bが形成されている。その一対の軸13Bは、ばね14Bを介して枠15Bに連結されている。軸13Bの途中には、可動櫛歯11Bが形成されている。なお、ミラー板10Bの表面には、金Au又は白金Pt等による膜が形成されていてもよい。
【0024】
デバイス層Tには、三次元微細構造体として、右固定櫛歯12T1、左固定櫛歯12T2、右土台16T1及び左土台16T2、パッド形成領域用土台16T3、16T4、電極パッド16P1、16P2、16P3、16P4がそれぞれ形成されている。
【0025】
右固定櫛歯12T1、左固定櫛歯12T2は、それぞれ右土台16T1、左土台16T2に一体に形成され、電気的にはこれらと同電位とされる。右土台16T1、左土台16T2の電位は、互いに独立に設定可能である。
【0026】
パッド形成領域用土台16T3、16T4と右土台16T1、左土台16T2とは溝413によって区切られ、パッド形成領域用土台16T3、16T4、右土台16T1、左土台16T2はそれぞれ電気的に絶縁されている。
【0027】
この実施例では、電極パッド16P1は右土台16T1の電極パッド形成領域に形成され、電極パッド16P2は、左土台16T2の電極パッド形成領域に形成されている。電極パッド16P3は、パッド形成領域用土台16T3の電極パッド形成領域に形成され、電極パッド16P4は、パッド形成領域用土台16T4のパッド形成領域に形成されている。
その電極パッド16P3、16P4は、枠15Bに電気的に接続されている。
【0028】
また、この実施例では、各電極パッド16P1〜16P4は、金Au又は白金Ptよりも融点の高い金属としてのチタンTiの上に金Au又は白金Ptが堆積された第1層とこの第1層の上にチタンTiが堆積されかつこのチタンTiの上に金Au又は白金Ptが堆積された第2層とからなる構成とされている。この成膜工程については、後に詳述する。
【0029】
デバイス層Bには、その表面が優れた鏡面を有するシリコン基板としてのシリコンウエハが用いられ得る。このデバイス層Bとハンドル層Hとを絶縁層Iを介して接合した材料がMEMS走査型ミラーの作製用に提供され得る。
【0030】
デバイス層B、絶縁層I、ハンドル層Hがあらかじめ一体化されたシリコン基板としてのSOIウエハを用いても良い。SOIウエハのデバイス層Bの表面は、優れた鏡面状態に仕上げることができる。
【0031】
いずれの材料を用いてMEMS走査型ミラーを作製する場合でも、デバイス層Bの優れた鏡面をそのまま用いることにより、鏡面性の良好なミラー板10Bを実現することができる。
【0032】
このMEMS走査型ミラーでは、図1(a)、図1(b)に示すようにデバイス層Tで定義される最上面TOPSよりも下にミラー板10Bの表面10BSが位置している。
【0033】
可動櫛歯11Bは右固定櫛歯12T1、左固定櫛歯12T2に対して段差をもって交差指状に位置している。可動櫛歯11Bと固定櫛歯12T1、12T2間に電圧が印加されると、静電エネルギーが上昇し、可動櫛歯11B、すなわち、ミラー板10BにX−X’軸回転方向のトルクが発生する。
【0034】
このMEMS走査型ミラーの駆動方法は、従来のMEMS走査型ミラーの駆動方法と同じである。ミラー板10Bの回転は、図1(a)に示すX−X’軸に生じる。
好ましくは、デバイス層B全体は接地(符号GNDで示す)され、固定櫛歯12T1、12T2にそれぞれ電圧V1、V2を印加することにより、MEMS走査型ミラー(デバイス)が駆動される。
【0035】
例えば、DC駆動の場合、左右固定櫛歯12T1、12T2のいずれか一方へのDC電圧の印加又は両固定櫛歯12T1、12T2への異なるDC電圧の印加によりミラー板10Bを回転させることができる。また、共振駆動の場合、例えば、周期的電圧を左右固定櫛歯12T1、12T2のいずれか一方又は両固定櫛歯12T1、12T2に印加する。
【0036】
(三次元構造体の製造方法)
この図1に示す1つの段差付き静電櫛歯アクチュエータを有するMEMS走査型ミラーの製造方法の一例を図2ないし図4を参照しつつ説明する。この図2、図3に示す模式図は、図1のA−A’線に沿う断面に対応している。
【0037】
1.準備工程
図2(a)はMEMS走査型ミラーの各三次元微細構造体を形成する前のシリコン基板としてのウエハMMの図1のA−A’線に相当する断面図を示している。
【0038】
ウエハMMは、デバイス層Bとハンドル層Hとが絶縁層Iを介して一体に形成されている。デバイス層Bの表面BSは加工前にあらかじめ鏡面仕上げされている。
デバイス層B、ハンドル層Hはシリコンであり、絶縁層Iはシリコン酸化膜である。ここでは、ハンドル層Hの表面HSにもシリコン酸化膜(絶縁層I)が形成されている。
【0039】
ウエハMMには、市販のSOI(Silicon-on-Insulator)ウエハを用いることができる。シリコン酸化膜(絶縁層I)には、後加工において利用する第1アラインメントマーク(図示を略す)を形成する。
【0040】
この第1アラインメントマークは、シリコン酸化膜(絶縁層I)上にあらかじめ感光性レジストを用いてアライメントパターンを形成した後、フッ化水素、緩衝フッ化水素により感光性レジストで覆われていない部分のシリコン酸化膜をエッチングにより除去することにより形成できる。感光性レジストは、エッチング後、例えば、アセトン洗浄により除去できる。
【0041】
2.デバイス層BへのMEMS走査ミラーの下層三次元微細構造体の形成工程
デバイス層Bに、ミラー板10B、可動櫛歯11B、軸13B、ばね14B、枠15Bに対応する下層三次元微細構造体10B’、11B’、13B’、14B’、15B’を形成する。図2(b)にはその下層三次元微細構造体10B’、11B’、15B’が示されている。
【0042】
この加工は、第1アラインメントマークを用いて、あらかじめ、デバイス層Bの表面に感光性レジストでこの構造体に対応するパタ−ンを形成した後、DRIE(Deep Reactive Ion Etching)法を用いて行うことができる。なお、図2(b)はDRIE後に感光性レジストを除去した状態を示している。
【0043】
3.デバイス層Bへのシリコンウエハ接合工程
デバイス層Bに、図2(c)に示すように、シリコン酸化膜(絶縁層I)が表面に形成されたシリコンウエハ52が接合される。この接合はデバイス層Bの最上面とシリコンウエハ52の表面とを接触させ、例えば、1000℃から1100℃に加熱処理することにより行われる。
【0044】
4.シリコンウエハのグラインディング及びラッピング工程
図2(c)に示すシリコンウエハ52をグラインディング及びラッピングすることにより、シリコンウエハ52の厚みを減少させ、図2(d)に示すように、所定の厚さを有する上層のデバイス層Tを形成する。
【0045】
従来のMEMS走査型ミラーでは、貼り合せウエハの最上面にグラインディング、ラッピング、研磨加工を施して得られる表面がミラーに供せられる。
研磨後の表面状態は鏡面性能(ミラー性能)を決定するため、従来の加工に許容される表面精度が厳しく要求される。
【0046】
また、従来の加工が施されるシリコンウエハの下部に貼り合せられたシリコンウエハの下部、とりわけ、ミラー板に相当する部分の下に空洞が形成されている場合、ウエハ面内の加工の均一性が劣化し、優れた鏡面性をもつミラー板を歩留りよく得ることが困難である。
【0047】
これに対して、この実施例よれば、ミラー板はデバイスの最上面ではなく、あらかじめ鏡面加工されたウエハの表面に形成されるので、鏡面仕上げのための研磨加工を省略できる。
【0048】
5.ハンドル層Hへのマスクの形成工程
ハンドル層Hに空洞HOを形成するエッチング工程で用いるマスク51を形成するために、図2(e)に示すように、ハンドル層Hの表面HSのシリコン酸化膜(絶縁層I)の一部を除去する。
【0049】
マスク51の形成には、第1アラインメントマークを用い、シリコン酸化膜(絶縁層I)上に予め感光性レジストでパタン形成した後、フッ化水素、緩衝フッ化水素により感光性レジストで覆われていない部分のシリコン酸化膜をエッチングにより除去することにより、マスク51が得られる。
【0050】
なお、エッチング後に感光性レジストは、アセトン洗浄等により除去される。なお、DRIE時に用いるこのマスク51は、少なくともミラー板10B、可動櫛歯11Bに対応する構造体の下の部分が開口となるように形成する。
【0051】
6.デバイス層TにMEMS走査ミラーの三次元微細構造体と電極パッドP3、P4の形成領域とを形成し、かつ、デバイス層Bに三次元微細構造体を形成し、しかも、ハンドル層Hに空洞HOを同時に形成する工程
【0052】
図3(a)ないし図3(d)は、デバイス層TにMEMS走査ミラーの三次元微細構造体と電極パッドP3、P4の形成領域とを形成し、かつ、デバイス層Bに三次元微細構造体を形成し、しかも、ハンドル層Hに空洞HOを同時に形成する工程を説明するための工程図である。
【0053】
デバイス層Tには、図3(a)に示すように、三次元微細構造体としての右固定櫛歯12T1、左固定櫛歯12T2、右土台16T1、左土台16T2が形成される。
同時に、パッド形成領域用土台16T3、16T4を形成するための溝413が形成されると共に、パッド形成領域用土台16T3、16T4に電極パッド16P3、16P4の形成領域16P3’、16P4’が形成される。また、同時にハンドル層Hに空洞HOが形成される。
【0054】
ついで、マスク部材414がデバイス層Tの表面にセットされる。このマスク部材414には、電極パッド16P3、16P4の形成領域16P3’、16P4’に対応する開口414’と電極パッド16P1、16P2の形成領域に対応する開口(図示を略す)とが形成されている。
【0055】
このマスク部材414は、電極パッド16P1〜16P4の形成領域を露呈させかつ残余の領域を遮蔽する機能を有する。
ついで、例えば、真空蒸着法により、図3(b)に示すように、電極パッド16P3、16P4の形成領域16P3’、16P4’に熱酸化により絶縁領域が形成されるのを防止する熱酸化絶縁領域形成防止用金属よりも融点の高い高融点金属としてのチタンTiを蒸着した後、このチタンTiの上に熱酸化により絶縁領域が形成されるのを防止する熱酸化絶縁領域形成防止用金属としての金Auを蒸着する。同時に、電極パッド16P1、16P2の形成領域にもチタンTiを蒸着した後、このチタンTiの上に金Auを蒸着する。
【0056】
ついで、マスク部材414を取り除いて、図3(c)に示すように、この三次元構造体を熱により酸化させる。
ここでは、この三次元構造体を空気中で1100度で酸化させた。
【0057】
これにより、この三次元構造体の表面全体に熱による酸化膜SiO2が形成される。金Auは化学的に安定しているので、酸化されない。チタンTiは金Auにより被覆されて保護されているので、熱による酸化が防止され、導電性を保っている。
なお、金Auは三次元構造体を空気中で1100度で酸化させる際に、その表面粗さが増加する。
【0058】
ついで、マスク部材415が、図3(d)に示すように、デバイス層Tの表面にセットされる。このマスク部材415には、電極パッド16P3、16P4の形成領域16P3’、16P4’に対応する開口415’と、ミラー板10Bに対応する形状の開口415”と、電極パッド16P1、16P2の形成領域に対応する開口(図示を略す)とが形成されている。
【0059】
ついで、例えば、真空蒸着法により、図3(d)に示すように、電極パッド16P3、16P4の形成領域16P3’、16P4’に堆積された金Auの上にチタンTiを蒸着した後、このチタンTiの上に再度金Auを蒸着する。同時に、電極パッド16P1、16P2の形成領域に堆積された金Auの上にもチタンTiを蒸着した後、このチタンTiの上に再度金Auを蒸着する。
【0060】
また、ミラー板10Bの表面にもチタンTiを蒸着した後、金Auを蒸着する。
このように、この実施例によれば、シリコン基板に、電極パッド16P1〜16P4を形成する際に、チタンTiを介して金Au又は白金Ptを蒸着することにしたので、シリコン基板に電極パッド16P1〜16P4の形成途中で熱処理によりシリコン基板を酸化させた場合でも、金Au又は白金Ptがシリコン基板から剥離することが防止される。
【0061】
また、図4(a)に示すように、ウエハMMの側面に凹凸箇所TB、BHがある場合であっても、熱酸化により、図4(b)に示すように、シリコン基板の側面の凹凸箇所TB、BHの表面にも熱による酸化膜が形成されるので、粒子がこの凹凸箇所TB、BHに付着していた場合でも、このMEMS走査型ミラーへの電圧印加時にこの粒子の存在に起因する短絡を防止でき、動作性能の向上を図ることができる。
【0062】
また、電極パッド16P1〜16P4の形成領域の断面構造を、チタンTiの上に金Au又は白金Ptが堆積された第1層と、この第1層の上にチタンTiが堆積されかつチタンTiの上に金Au又は白金Ptが堆積された第2層とからなる構造とし、熱処理により荒れた第1層の金Au又は白金Ptの上にチタンTiを介して金Au又は白金Ptを堆積させて、電極パッド16P1〜16P4の表面を清浄な面に修復することにしたので、電極パッド16P1〜16P4にワイヤーボンディングを行う際に金Au又は白金Ptの剥離を防止することができ、ワイヤーボンディング時の密着力を高めることができる。
【0063】
また、この実施例では、電極パッド16P1〜16P4の形成領域に高融点金属としてのチタンTi、熱酸化絶縁領域形成防止用金属としての金Au等を真空蒸着法により堆積させることにしたが、化学気相成長法(CVD)、スパッタリング法、メッキ等の方法を用いて、チタンTi、金Au等の金属を堆積させることもできる。
【0064】
また、この実施例では、チタンTiの上に金Au又は白金Ptを堆積させる構成としたが、金又は白金よりも融点の高い高融点金属としてのクロムCrやニッケルNiの上に熱酸化絶縁領域形成防止用金属としての金Au又は白金Ptを堆積させる構成とすることもできる。
【0065】
更に、金Au又は白金Ptに限らず、熱酸化絶縁領域形成防止用金属として熱による酸化後も導電性を呈する金属、例えば、アルミニウム、ニッケル、銅、銀のいずれかを電極パッドの形成領域に直接堆積、又は、チタンTi、クロムCr、ニッケルNiいずれかの上に堆積させる構成とすることもできる。
なお、これらの金Au、白金Pt又は熱による酸化後も導電性を呈する金属は、その他の金属と組み合わせても良い。
【0066】
また、この実施例では、マスク部材を用いているが、マスク部材は必須の必要性はなく、更に、三次元構造体の一例としてMEMS走査型ミラーを示したが、半導体集積回路にも適用可能である。
【符号の説明】
【0067】
B、T…デバイス層(シリコン基板)
H…ハンドル層(シリコン基板)
16P3、16P4…電極パッド
16P3’、16P4’…形成領域
414…マスク部材
Au…金
SiO2…シリコン酸化膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板を用いて形成された三次元微細構造体の電極パッドの形成領域に熱酸化により絶縁領域が形成されるのを防止する熱酸化絶縁領域形成防止用金属を堆積させる金属堆積工程と、
前記シリコン基板を熱により酸化させて前記熱酸化絶縁領域形成防止用金属の形成領域以外の表面にシリコン酸化膜を形成する酸化膜形成工程とを含み、
前記熱酸化絶縁領域形成防止用金属が、金又は白金又は熱による酸化後も導電性を有する金属であることを特徴とする三次元構造体の製造方法。
【請求項2】
シリコン基板を用いて形成された三次元微細構造体の電極パッドの形成領域に熱酸化により絶縁領域が形成されるのを防止する熱酸化絶縁領域形成防止用金属よりも融点の高い高融点金属を堆積させた後、前記熱酸化絶縁領域形成防止用金属を堆積させる金属堆積工程と、
前記シリコン基板を熱により酸化させて熱酸化絶縁領域形成防止用金属の形成領域以外の表面にシリコン酸化膜を形成する酸化膜形成工程とを含み、
前記熱酸化絶縁領域形成防止用金属が、金又は白金又は熱による酸化後も導電性を有する金属であることを特徴とする三次元構造体の製造方法。
【請求項3】
前記酸化膜形成工程による前記シリコン酸化膜の形成後に、前記熱酸化絶縁領域形成防止用金属の形成領域の上に更に熱酸化絶縁領域形成防止用金属を堆積させる金属堆積工程を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の三次元構造体の製造方法。
【請求項4】
前記酸化膜形成工程による前記シリコン酸化膜の形成後に、前記熱酸化絶縁領域形成防止用金属の形成領域の上に更に前記高融点金属を堆積させた後、前記熱酸化絶縁領域形成防止用金属を堆積させる金属堆積工程を含むことを特徴とする請求項2に記載の三次元構造体の製造方法。
【請求項5】
前記高融点金属がチタン、クロム、ニッケルのいずれかを含む金属であることを特徴とする請求項2又は請求項4に記載の三次元構造体の製造方法。
【請求項6】
前記熱による酸化後も導電性を有する金属がアルミニウム、ニッケル、銅、銀のいずれかであることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の三次元構造体の製造方法。
【請求項7】
シリコン基板を用いて形成された三次元微細構造体の電極パッドの形成領域に金又は白金よりも融点の高いチタン、クロム、ニッケルのいずれかを堆積させた後、金又は白金を堆積させる金属堆積工程と、
前記シリコン基板を熱により酸化させて前記金又は白金の形成領域以外の表面にシリコン酸化膜を形成する酸化膜形成工程と、
前記酸化膜形成工程による前記シリコン酸化膜の形成後に、前記金又は白金の形成領域の上に更に前記チタン、クロム、ニッケルのいずれかを堆積させた後、金又は白金を堆積させる金属堆積工程と、
を含むことを特徴とする三次元構造体の製造方法。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の三次元構造体の製造方法によって製造された三次元構造体。
【請求項9】
請求項4に記載の三次元構造体の製造方法によって製造された三次元構造体であって、電極パッドの形成領域の断面構造が、前記高融点金属の上に金又は白金が堆積された第1層と該第1層の上に前記高融点金属が堆積されかつ該高融点金属の上に金又は白金が堆積された第2層とからなり、前記高融点金属がチタン、クロム、ニッケルのいずれかを含む金属であることを特徴とする三次元構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−825(P2013−825A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133064(P2011−133064)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000220343)株式会社トプコン (904)
【Fターム(参考)】