説明

乗用型芝刈り車両

【課題】乗用型芝刈り車両において、傾斜面上に車両がある場合の不都合に対して改良することである。
【解決手段】右左2個の主駆動輪12,14と、操向輪である右左2個のキャスタ輪22,24と、コントローラ44,46,48とを備える。少なくとも2個の主駆動輪12,14を、第1電動モータ16および第2電動モータ18により駆動する。コントローラ44,46,48は、切り替え手段である切り替えモジュールを備え、切り替えモジュールは、キャスタ輪22,24を操向用電動モータにより強制的に操向する強制操向モードと、操向用電動モータの動力発生を停止し、または操向用電動モータからキャスタ輪22,24への操向用の動力伝達を遮断してキャスタ輪22,24の自由操向を可能とする自由操向モードとの、いずれかのモードへの切り替えを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2個の主駆動輪と、操向輪であるキャスタ輪と、を備え、少なくとも2個の主駆動輪は、走行用動力源により駆動する乗用型芝刈り車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から芝刈り機を備える芝刈り車両において、人が車両の後側で操作するウォークビハインド式芝刈り車両と、人が乗車して運転する乗用型芝刈り車両とが知られている。また、乗用型芝刈り車両において、2個の主駆動輪と、操向輪であるキャスタ輪とを備え、2個の主駆動輪を電動モータ等の走行用動力源により駆動する乗用型芝刈り車両も考えられている。
【0003】
このような乗用型芝刈り車両は、人が乗車して運転しながら、芝刈り機により芝を所定の長さに調節するために利用する。旋回時には、車両の左右両側に設けた2個の電動モータ等の走行用動力源の回転速度を変えることにより、回転速度を高くする側の走行用動力源に対応する車輪が外側に位置するように旋回する。また、キャスタ輪は、その向きを自由に変えることができる自由操向を可能としており、主駆動輪の速度差に応じて決定される旋回方向にその向きを変える。
【0004】
また、特許文献1には、乗用型電動芝刈り車両において、前側の2個の操向輪と、後側の2個の駆動輪とを備え、2個の操向輪を2個の操向用の電動モータにより所定の向きに向けるようにすることが記載されている。
なお、本発明に関連する先行技術文献として、特許文献1の他に特許文献2から特許文献6がある。
【0005】
【特許文献1】米国特許第7017327号明細書
【特許文献2】国際公開第2006/086412号パンフレット
【特許文献3】米国特許第5794422号明細書
【特許文献4】米国特許第3732671号明細書
【特許文献5】国際公開第97/28681号パンフレット
【特許文献6】特表2006−507789号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来から考えられているキャスタ輪と主駆動輪とを備え、キャスタ輪を自由操向させる乗用型芝刈り車両の場合、傾斜面上において、不都合が生じる可能性がある。例えば、第1の不都合として、車両が傾斜面上を走行しながら旋回しようとする場合に、車両に作用する重力によりキャスタ輪に下側に向ける方向の力が作用して、運転者が旋回したい方向よりも、キャスタ輪が下側に向いてしまう可能性がある。このため、乗用型芝刈り車両を運転者が望む方向に精度よく進行させることができない可能性がある。これに対して、特許文献1に記載された電動型芝刈り車両の場合には、2個の操向輪を2個の操向用の電動モータにより所定の向きに向けるようにしている。ただし、常に2個の操向輪を駆動輪に連動させて操向する場合には、斜面走行時では考えられない高速旋回走行時にも2個の操向輪の向きを電動モータにより決定するため、操向輪操向用の電動モータが大型化しやすくなる。すなわち、従来から考えられている乗用型芝刈り車両の場合、斜面上の走行時において、電動モータ等の走行用動力源を大型化することなく運転者が望む方向に精度よく旋回させることが難しいという不都合がある。
【0007】
また、第2の不都合として、乗用型芝刈り車両の斜面上での停止時において、再度車両を発進させようとして、例えば機械式ブレーキであるパーキングブレーキおよびアクセルペダルの踏み込みにより作動する制動装置をいずれも解除した場合に、駆動用の電動モータ等の走行用動力源により車両が発進を開始する前に、短時間でも車両が斜面をずり下がり、運転者に違和感を生じさせる可能性がある。
【0008】
また、第3の不都合として、乗用型芝刈り車両の斜面上での登坂走行時に、2個の駆動輪で登坂しようとしても駆動力が不足して、駆動輪がスリップする可能性がある。駆動輪が芝上でスリップすると、芝をいためてしまうため、好ましくない。
【0009】
また、第4の不都合として、乗用型芝刈り車両の斜面上での降坂時に車両に作用するウェイトトランスファー(重量転移)により、運転者の望む速度よりも高い速度で車両が降坂する傾向となる可能性がある。この場合も、上記と同様に芝をいためてしまうため、好ましくない。
【0010】
また、特許文献1に記載された乗用型電動芝刈り車両の場合には、上記の第2の不都合から第4の不都合のいずれの不都合に対しても、何ら考慮されていない。このように従来から考えられている乗用型芝刈り車両の場合、傾斜面上に車両がある場合に不都合が生じる可能性がある。
【0011】
本発明の目的は、乗用型芝刈り車両において、傾斜面上に車両がある場合の不都合に対して改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のうち、第1の発明に係る乗用型芝刈り車両は、2個の主駆動輪と、操向輪であるキャスタ輪と、を備え、少なくとも2個の主駆動輪は、走行用動力源により駆動する乗用型芝刈り車両であって、切り替え手段を備え、切り替え手段は、キャスタ輪を操向用動力源により強制的に操向する強制操向モードと、操向用動力源の動力発生を停止し、または操向用動力源からキャスタ輪への操向用の動力伝達を遮断してキャスタ輪の自由操向を可能とする自由操向モードとの、いずれかのモードへの切り替えを行うことを特徴とする乗用型芝刈り車両である。
【0013】
また、好ましくは、切り替え手段は、運転者により操作する操向用操作部の操作量を検出する操作量検出部と、キャスタ輪の方向を検出するキャスタ輪方向検出部とからの検出信号がそれぞれ入力され、操作量検出部からの検出信号に対応するキャスタ輪の方向と、キャスタ輪方向検出部からの検出信号に対応するキャスタ輪の方向とが異なる場合に、自由操向モードから強制操向モードへ切り替える。
【0014】
また、より好ましくは、少なくとも強制操向モードにおいて、キャスタ輪は、キャスタ輪走行用の動力源により駆動されるものとする。
【0015】
また、本発明のうち、第2の発明に係る乗用型芝刈り車両は、2個の主駆動輪と、操向輪であるキャスタ輪と、を備え、少なくとも2個の主駆動輪は、走行用動力源により駆動する乗用型芝刈り車両であって、走行用動力源は電動モータであり、電動モータ制御手段を備え、電動モータ制御手段は、車両が傾斜面上で停止している場合に、電動モータの回転数が0でトルクを発生するように電動モータを制御することにより、車両のずり下がりを抑制することを特徴とする乗用型芝刈り車両である。
【0016】
また、好ましくは、電動モータ制御手段は、車両の傾斜面上でのずり下がりを抑制するために、電動モータの回転数が0で発生するトルクを、電動モータに印加する電圧をパラメータとして制御する。
【0017】
また、本発明のうち、第3の発明に係る乗用型芝刈り車両は、2個の主駆動輪と、操向輪であるキャスタ輪と、を備え、少なくとも2個の主駆動輪は、走行用動力源により駆動する乗用型芝刈り車両であって、走行用動力源は電動モータであり、制動部制御手段を備え、制動部制御手段は、車両の傾斜面での発進時において、制動用操作部をオフにした場合でも、電動モータのトルクが傾斜面の角度に対応する所定トルクを超えた場合にのみ、制動部による制動を解除するように、制動部の制動状態を制御することを特徴とする乗用型芝刈り車両である。
【0018】
また、本発明のうち、第4の発明に係る乗用型芝刈り車両は、2個の主駆動輪と、操向輪であるキャスタ輪と、を備え、少なくとも2個の主駆動輪は、走行用動力源により駆動する乗用型芝刈り車両であって、切り替え手段を備え、切り替え手段は、主駆動輪のスリップ率が所定値以上である場合に、主駆動輪のみを駆動する第1駆動モードから、主駆動輪とキャスタ輪との両方を駆動する第2駆動モードに切り替えることを特徴とする乗用型芝刈り車両である。
【0019】
また、好ましくは、切り替え手段は、主駆動輪のスリップ率が5%以上で15%以下である場合に、主駆動輪のみを駆動する第1駆動モードから、主駆動輪とキャスタ輪との両方を駆動する第2駆動モードに切り替えるものとする。また、より好ましくは、切り替え手段は、主駆動輪のスリップ率がほぼ10%である場合に、主駆動輪のみを駆動する第1駆動モードから、主駆動輪とキャスタ輪との両方を駆動する第2駆動モードに切り替えるものとする。
【0020】
また、好ましくは、主駆動輪のスリップ率が所定値未満(好ましくは5%未満)である場合には、キャスタ輪走行用の動力源の動力発生を停止し、またはキャスタ輪走行用の動力源からキャスタ輪への動力伝達を遮断する。
【0021】
また、上記の第4の発明に係る乗用型芝刈り車両において好ましくは、切り替え手段は、主駆動輪のみを駆動する第1駆動モードから、主駆動輪とキャスタ輪との両方を駆動する第2駆動モードに切り替わった後、主駆動輪を駆動するトルクが増大するのにしたがって、キャスタ輪を駆動するトルクであるアシストトルクが減少することにより、アシストトルクの大きさ、または主駆動輪を駆動するトルクに対するアシストトルクの割合が所定値未満となった場合に、第2駆動モードから第1駆動モードに切り替える。
【0022】
また、本発明のうち、第5の発明に係る乗用型芝刈り車両は、2個の主駆動輪と、操向輪であるキャスタ輪と、を備え、少なくとも2個の主駆動輪は、走行用動力源により駆動する乗用型芝刈り車両であって、速度制御手段を備え、速度制御手段は、車両の傾斜面降坂時において、車両のオーバーラン率が所定値以上である場合に、車両の速度を抑制するように主駆動輪走行用またはキャスタ輪走行用の走行用動力源を制御することを特徴とする乗用型芝刈り車両である。
【0023】
また、本発明のうち、第6の発明に係る乗用型芝刈り車両は、2個の主駆動輪と、操向輪であるキャスタ輪と、を備え、少なくとも2個の主駆動輪は、走行用動力源により駆動する乗用型芝刈り車両であって、切り替え手段を備え、切り替え手段は、車両の傾斜面降坂時には、主駆動輪のみを駆動する第1駆動モードから、主駆動輪とキャスタ輪との両方を駆動する第2駆動モードに切り替えることを特徴とする乗用型芝刈り車両である。
【0024】
また、上記の各発明において、好ましくは、芝刈り機駆動用電動モータに電力を供給する電力供給源は、内燃機関により駆動する発電機と、燃料電池と、二次電池またはキャパシタである蓄電部とのうち、少なくともいずれか1とする。
【0025】
また、上記の各発明において、好ましくは、車両操向用の操作部は、ステアリングホイールと、ジョイスティックと、足踏み式ペダルと、操作レバーとのうちのいずれか1とするか、または、いずれか1を選択可能とする。
【0026】
また、上記の各発明において、好ましくは、キャスタ輪の操向用と走行用との駆動状態とを制御する操向走行制御部を備え、操向走行制御部は、キャスタ輪の所定の操向角度以上では、キャスタ輪走行用の動力源からキャスタ輪への動力伝達を遮断するか、またはキャスタ輪走行用の動力源の動力発生を停止して、キャスタ輪が自由走行状態になるように制御する。
【0027】
また、上記の各発明において、好ましくは、キャスタ輪は、左右2個を設け、少なくとも2個のキャスタ輪を操向用動力源により強制的に操向する強制操向モードにおいて、車両操向用の操作部の操作に応じて、2個のキャスタ輪を、互いに独立して操向用動力源により強制的に操向可能とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明のうち、第1の発明に係る乗用型芝刈り車両によれば、キャスタ輪を操向用動力源により強制的に操向する強制操向モードと、操向用動力源の動力発生を停止し、または操向用動力源からキャスタ輪への操向用の動力伝達を遮断してキャスタ輪の自由操向を可能とする自由操向モードとの、いずれかのモードへの切り替えを行う切り替え手段を備えるため、斜面走行時において、強制操向モードに切り替えることにより、運転者が望む方向よりもキャスタ輪を下側に向けるような不都合が生じることを防止できる。すなわち、乗用型電動芝刈り車両を運転者が望む方向に精度よく進行させることができる。しかも、高速走行時等必要がない場合には、切り替え手段により、自由走行モードに切り替えることができるため、操向用動力源の小型化を図りやすくなる。また、操向輪をキャスタ輪とすることにより、車両の旋回の自由度向上を図れる。例えば、旋回時の回転半径を十分に小さくする急旋回を行いやすくなる。
【0029】
また、第2の発明に係る乗用型芝刈り車両によれば、車両が傾斜面上で停止している場合に、電動モータの回転数が0でトルクを発生するように電動モータを制御することにより、車両のずり下がりを抑制する電動モータ制御手段を備えるため、車両が傾斜面上で停止している場合に、機械式ブレーキを解除した後、車両駆動用の電動モータにより車両が発進を開始する前でも、車両の傾斜面上でのずり下がりを抑制して、運転者に違和感を生じさせることを防止できる。
【0030】
また、第3の発明に係る乗用型芝刈り車両によれば、車両の傾斜面での発進時において、制動用操作部をオフにした場合でも、車両駆動用の電動モータのトルクが傾斜面の角度に対応する所定トルクを超えた場合にのみ、制動部による制動を解除するように、制動部の制動状態を制御する制動部制御手段を備えるため、車両が傾斜面上で停止している場合に、機械式ブレーキを解除した後、車両駆動用の電動モータにより車両が発進を開始する前でも、車両の傾斜面上でのずり下がりを抑制して、運転者に違和感を生じさせることを防止できる。
【0031】
また、第4の発明に係る乗用型芝刈り車両によれば、主駆動輪のスリップ率が所定値以上である場合に、主駆動輪のみを駆動する第1駆動モードから、主駆動輪とキャスタ輪との両方を駆動する第2駆動モードに切り替える切り替え手段を備えるため、車両が傾斜面上を登坂走行する場合に、主駆動輪が芝上を所定以上のスリップ率分スリップすると、主駆動輪とキャスタ輪との両方が駆動する。このため、駆動力が大きくなり、主駆動輪がスリップしなくなるため、主駆動輪が芝をいためるのを抑えることができる。
【0032】
また、第5の発明に係る乗用型芝刈り車両によれば、車両の傾斜面降坂時において、車両のオーバーラン率が所定値以上である場合に、車両の速度を抑制するように主駆動輪走行用またはキャスタ輪走行用の走行用動力源を制御する速度制御手段を備えるため、車両が傾斜面上を降坂走行する場合に、主駆動輪が路面との間でスリップしても、車両の速度が抑制されることにより、過度なスリップを防止して、主駆動輪が芝をいためるのを抑えることができる。
【0033】
また、第6の発明に係る乗用型芝刈り車両によれば、車両の傾斜面降坂時には、主駆動輪のみを駆動する第1駆動モードから、主駆動輪とキャスタ輪との両方を駆動する第2駆動モードに切り替える切り替え手段を備えるため、車両が傾斜面上を降坂走行する場合に、主駆動輪とキャスタ輪との傾斜面に対するグリップ力が大きくなるため、主駆動輪が過度にスリップするのを防止して、主駆動輪が芝をいためるのを抑えることができる。
【0034】
このように本発明のいずれの発明の場合も、乗用型芝刈り車両において、傾斜面上に車両がある場合の不都合に対して改良することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
[第1の発明の実施の形態]
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態を詳細に説明する。図1から図11は、第1の実施の形態を示す図である。図1は、本実施の形態の乗用型芝刈り車両である芝刈り車両10の構成を示す略図であり、図2は、図1の略A−A断面図である。なお、以下においては、芝刈り車両10として、左右後輪を主駆動輪とし、左右前輪を操向輪とした場合について説明するが、操向輪を1輪とした3輪走行型とすることもできる。
【0036】
また、芝刈り車両10の主駆動輪および操向輪の走行用の動力源として、電動モータを用いるものを説明するが、電動モータ以外の動力源、例えば、油圧モータ等を使用することもできる。また、芝刈り機の動力源として電動モータまたは油圧モータを用いるものとして説明するが、適当な動力伝達機構を介し、内燃機関を芝刈り機の動力源として用いてもよい。
【0037】
また、電動モータとしては、電力を供給して少なくとも主駆動輪に対し回転駆動力を出力する電気モータとしての機能を有し、また、少なくとも主駆動輪に対し制動がかけられるときに回生エネルギを回収する発電機としての機能をも有するものを用いるものとして説明するが、単に電気モータとしての機能を有するものを用いることもできる。また、回生エネルギ発生のための発電機を別途設けるものとしてもよい。また、以下では、電動モータの電力供給源を電源ユニットとし、電源ユニットへの電力供給源としてエンジンおよび発電機を用いる、いわゆるハイブリッド式乗用型芝刈り車両として説明する。ただし、乗用型芝刈り車両は、エンジンおよび発電機を搭載せず、電源ユニットのみを使用する構成とすることもできる。この場合、エンジン等の搭載スペースを削減でき、芝刈り車両の軽量化を図れる。また、エンジン等の搭載スペースを削減できる分、電源ユニットを大きくすることもできる。また、電源ユニットとしては、外部から充電電力の供給を受ける二次電池でもよく、燃料電池、太陽電池等のように自己発電機能を有するものでもよい。
【0038】
芝刈り車両10は、図1、図2に示すように、右左2個の主駆動輪(図示の場合は後輪)12,14を、2個の電動モータである、第1電動モータ(右車軸モータ)16および第2電動モータ(左車軸モータ)18(図2)により駆動可能としている。芝刈り車両10は、作業機である芝刈り機(モア)20を備え、また右左2個の主駆動輪12,14と、右左2個の操向輪である、キャスタ輪22,24とによって地面を走行する。作業者の座る運転席26付近には、芝刈り車両10の旋回、加速、減速を行うための、右左方向に2個離れて設けた2レバー式操作子であり、2本の操作部である操作レバー28を設けている。図1では、両操作レバー28のうち、1本の操作レバー28のみを図示している。また、図1、図2では図示を省略するが、運転席26付近には、芝刈り機20の操作を行うための別の操作部である起動スイッチや、芝刈り車両10の制動を行うためのブレーキペダルおよび停止状態を維持するための機械式ブレーキを構成するパーキングブレーキレバー等の操作部も設けている。
【0039】
芝刈り車両10は、車体を構成するメインフレーム30と、メインフレーム30に支持された内燃機関であるエンジン32と、エンジン32の出力軸に作動的に連結され、すなわち出力軸にその駆動軸を作動的に連結した発電機34と、発電機34から電力を供給され、その電力を蓄電する電源ユニット36(図2参照)とを備える。また、第1電動モータ16および第2電動モータ18は、電源ユニット36から供給される電力により駆動される。例えば、エンジン32は、出力軸の端部に発電機34を構成する駆動軸を連結するか、またはエンジン32の出力軸と発電機34の駆動軸とを共通の軸により一体に構成する。なお、エンジン32の出力軸の端部に駆動プーリを固定するとともに、この駆動プーリ、ベルト、発電機34の駆動軸に固定した従動プーリを介して、エンジン32により発電機34を駆動することもできる。
【0040】
また、メインフレーム30の後寄り(図1、図2の右寄り)部分に、右左(図2の上下)の主駆動輪12,14を支持し、メインフレーム30の前端部(図1、図2の左端部)の右左(図2の上下)に分かれた部分に、右左のキャスタ輪22,24を支持している。また、メインフレーム30の前後方向(図1、図2の左右方向)に関してキャスタ輪22,24と主駆動輪12,14との間に、芝刈り機20を設けている。芝刈り機20は、芝刈り機20駆動用の動力源(例えば、油圧モータまたは電動モータ)38と作動的に連結している。図示の例の場合には、動力源38と芝刈り機20との間を、自在継手および伝道軸により作動的に、すなわち動力の伝達を可能に連結している。芝刈り機20は、図示しない作業機昇降アクチュエータにより、高さ調節を可能としている。また、芝刈り機20に、刈り取った草を後方に排出するための排出ダクト40を接続している。排出ダクト40は、運転席26の後側に沿うように斜め上方に伸ばして、上部を運転席26の後側に設けた収草タンク42に接続している。排出ダクト40の中間部は、メインフレーム30を構成する横板部に設けた孔部を貫通するように、斜め上下方向に伸びている。
【0041】
また、図2に示すように、エンジン32および発電機34と電源ユニット36とは、メインフレーム30を構成する平板状の横板部の下側において、排出ダクト40を避けるように排出ダクト40の後側に支持している。
【0042】
また、電源ユニット36、第1電動モータ16、第2電動モータ18等の各構成要素の動作を総合的に制御するコントローラ44,46,48は、メインフレーム30の上面側あるいは底面側の適当な位置に配置している。コントローラ44,46,48は電気回路であるので、他の機構要素と比べて、分散配置を行うことが可能である。図1、図2の例では、メインフレーム30の上面側で運転席26の下側の位置と、メインフレーム30の底面側で、第1電動モータ16、第2電動モータ18に近い2つの位置との、合計3箇所に分散してコントローラ44,46,48を配置している。これらのコントローラ44,46,48は、適当な信号ケーブル等で相互に接続される。ここで、第1電動モータ16、第2電動モータ18に近い位置に配置されるコントローラ46,44には、第1電動モータ16、第2電動モータ18に用いられるインバータ回路等のドライバー回路が主に配置され、運転席26に近い位置に配置されるコントローラ48には、CPU等の制御論理回路が主に配置される。なお、コントローラ44,46,48は、いずれか1個または2個の位置に統合することもできる。
【0043】
第1電動モータ16および第2電動モータ18は、回転軸の駆動により、2個の主駆動輪12,14をそれぞれ駆動する。2個の電動モータ16,18は、DCブラシレスモータ等で、正逆両方向に回転駆動することを可能としている。また、2個の電動モータ16,18の回転数を制御可能としている。
【0044】
また、芝刈り機20は、鉛直方向の軸を中心に回転駆動する1個または複数の芝刈用ブレードを備える。なお、芝刈り機20は、芝刈り用ブレードではなく、水平方向の軸を中心に回転駆動する回転軸を有するシリンダにらせん状の刃を配置し、芝等を挟み取って刈り取る芝刈り用リール型のものを用いることもできる。
【0045】
図3は、コントローラ44,46,48を含む芝刈り車両10の基本構成を示している。コントローラ44,46,48は、例えば、CPUを含む制御回路であり、第1電動モータ用駆動回路(右車軸モータ用ドライバー)50と、第2電動モータ用駆動回路(左車軸モータ用ドライバー)52と、第1電動モータ16用の電力回生ユニット54および第2電動モータ18用の電力回生ユニット56とを含む。例えば、第1電動モータ用駆動回路50は、CPUからの制御信号により、第1電動モータ16を駆動する。第1電動モータ18からは、コントローラ44,46,48に、回転数、回転方向、電流値等を表す信号をフィードバックする。また、第1電動モータ16に対応して、右側の主駆動輪12(図2)を制動するための電動で作動するブレーキユニット58を設けており、コントローラ44,46,48から制御信号を送るようにしている。
【0046】
また、第2電動モータ用駆動回路52は、CPUからの制御信号により、第2電動モータ18を駆動する。第2電動モータ18からも、コントローラ44,46,48に、回転数、回転方向、電流値等を表す信号をフィードバックする。また、第2電動モータ18に対応して、左側の主駆動輪14(図2)を制動するための電動で作動するブレーキユニット60を設けており、コントローラ44,46,48から制御信号を送るようにしている。
【0047】
また、主駆動輪12,14(図2)の制動に対応して、第1電動モータ16および第2電動モータ18が発電機の役目を果たし、発電された電力が電力回生ユニット54,56を介して電源ユニット36に蓄電される。電源ユニット36に対応して、電源ユニット36の充電状態を監視するための充電監視システムを設けている。なお、第1電動モータ用駆動回路50と電力回生ユニット54とは、インバータを含む回路により両方の機能を持たせることができる。同様に、第2電動モータ用駆動回路52と電力回生ユニット56とは、インバータを含む回路により両方の機能を持たせることができる。
【0048】
なお、電源ユニット36は、電気エネルギを蓄え、必要に応じて、電動モータ16,18等の負荷に電力を供給する機能を有する2次電池であり、鉛蓄電池、リチウムイオン組電池、ニッケル水素組電池、キャパシタ等を用いることができる。
【0049】
なお、電源ユニット36は、エンジン32と発電機34とからの電力供給系統とは別に、外部電源から充電電力の供給を受けることができる。図3において「AC110V又はその他の供給ユニット」とあるのは、いわゆるプラグインの方法で外部電源からの充電電力供給を受ける系統を示している。これによって、芝刈り車両10が作動していないときに、外部電源により電源ユニット36を十分に充電でき、芝刈り作業のときには、エンジン32を作動させることなく、電源ユニット36の電力のみで芝刈り車両10を作動させることができる。
【0050】
芝刈り機関係の動力源38は、例えば、電源ユニット36に接続され、芝刈り機20の芝刈り用ブレードを回転駆動させる機能を有する。動力源38の作動は、運転席26の近くに設けられる芝刈り機起動スイッチ(モア起動スイッチ)62(図3参照)のオン・オフによって制御される。すなわち、コントローラ44,46,48が芝刈り機起動スイッチ62のオン・オフ状態を検出し、その検出によって、動力源38駆動用のドライバーの作動を制御して、動力源38を作動させ、あるいは停止させる。
【0051】
また、図3には、2レバー式の操作レバー28と、ステアリングホイール(ハンドル)式またはモノレバー式のステアリング操作部64とが示されているが、これは説明の便宜上併記したもので、実際の芝刈り車両10には、いずれか一方が備えられる。図1、図2の例では、2レバー式の操作レバー28を図示している。
【0052】
操作レバー28は、2本のレバーによって左右の主駆動輪12,14の回転数を調整する機能を有する。例えば、運転席26の左側に左の主駆動輪14の回転数を調整する操作レバー28が配置され、運転席26の右側に右の主駆動輪12の回転数を調整する操作レバー28が配置される。各操作レバー28は、運転席26に対して前後方向に移動することができる。各操作レバー28の操作量は、操作量検出部である、操作量センサを用いてコントローラ44,46,48に伝送され、左右の主駆動輪12,14に接続される電動モータ16,18の作動が制御される。また、後述のように、電動モータ16,18の作動に対応して、キャスタ輪22,24(図2)操向用の電動モータの作動も制御される。
【0053】
図3に戻り、コントローラ44,46,48は、キャスタ輪22,24(図2)の操向用電動モータ駆動手段に対応する、操向用駆動回路(ステアリング用ドライバー)66を含む。操向用駆動回路66からの制御信号は、前側の右左のキャスタ輪22,24を操向するための操向用動力源である、右左のステアリングアクチュエータ68,70に入力し、それぞれのステアリングアクチュエータ68,70を駆動する。本実施の形態では、右左のステアリングアクチュエータ68,70を、それぞれ操向用電動モータとする。
【0054】
図4は、1個のキャスタ輪22(24の場合も同様)と、キャスタ輪22に対応する操向用駆動装置72とを示す断面図である。操向用駆動装置72は、支持フレーム74と、支持フレーム74に対し、キャスタ輪22を水平方向の回転軸を回転可能に支持する下側支持部76と、メインフレーム30に対し、支持フレーム74を、操向軸である、鉛直方向の支持軸78を中心に360度以下の所定角度まで回転可能に支持する上側支持部80とを備える。メインフレーム30の上側に操向用電動モータ82のケースを固定しており、操向用電動モータ82の回転軸を鉛直方向に配置している。操向用電動モータ82の回転軸の下端部に小歯車84を設けるとともに、小歯車84と、支持軸78の上部に固定した大歯車86とを噛合させている。これにより、図3に示した操向用駆動回路66からの制御信号により、操向用電動モータ82が駆動すると、小歯車84と大歯車86とから成る歯車機構を介して、支持フレーム74が支持軸78中心に所定の角度回転し、キャスタ輪22が所定の方向に操向される。なお、操向用電動モータ82の代わりに、操向用の油圧モータ等の油圧アクチュエータを使用することもできる。
【0055】
なお、図4では、キャスタ輪22にキャスタ輪22走行用の電動モータ88を作動的に連結し、電動モータ88の回転軸の回転を遊星歯車機構により減速してキャスタ輪22に伝達するような図示をしている。このような図示の例の場合には、右左の主駆動輪12,14(図2)駆動用の電動モータ16,18(図2)の駆動に対応して、キャスタ輪22,24駆動用の電動モータ88を強制的に駆動する。また、この場合には、電動モータ88に通電用のケーブル(図示せず)の一端を接続し、メインフレーム30に固定されたコントローラ44,46,48等に、ケーブルの他端を接続する。また、この場合、キャスタ輪22,24の操向角度を所定角度に制限するための図示しないストッパを、メインフレーム30と支持フレーム74との間等に設ける。これにより、電動モータ88に接続したケーブルが過度にねじられることを阻止する。なお、図4では遊星歯車機構を2段階に減速する構成としているが、1段階だけ減速する構成でも、3段階以上に減速する構成であってもよい。また、遊星歯車機構を設けず、電動モータ88の回転軸を直接キャスタ輪に固定して、回転軸の回転をキャスタ輪に直接伝達する構成とすることもできる。
【0056】
なお、本実施の形態においては、このように、キャスタ輪22,24走行用の電動モータ88を設ける場合に限定するものではなく、キャスタ輪22,24を水平方向の軸を中心に自由回転させる構成とすることもできる。
【0057】
また、図5は、キャスタ輪22,24の操向用駆動装置72の別例を示す、図4のB部に対応する断面図である。図5に示すように、操向用駆動装置72は、操向用電動モータ82をその回転軸を水平方向に向くように配置して、回転軸の先端側に設けたウォーム軸90のウォームと、支持軸78に固定したウォームホイール92とを噛合させることもできる。
【0058】
また、図4に戻り、支持軸78の上部とメインフレーム30との間に、支持軸78の回転角度を検出し、キャスタ輪22,24の操向方向を検出するための、キャスタ輪方向検出部である、図示しない回転角度検出装置を設けている。回転角度検出装置は、支持軸78に固定したエンコーダを含む。エンコーダは、例えば、支持軸78の円周方向にN極とS極とを交互に変化させた磁極特性を有するものとする。また、エンコーダに対向して、メインフレーム30に回転角度センサ(図示せず)を固定して、回転角度センサからの検出信号を、上記のコントローラ44,46,48に入力する。なお、回転角度検出装置は、操向用電動モータ82の回転軸の先端部に固定したエンコーダと、メインフレーム30に固定した回転角度センサとから構成することもできる。
【0059】
図6は、別例の回転角度検出装置94を示す略斜視図である。図6に示すように、回転角度検出装置94は、エンコーダ96と、回転角度センサ98とにより構成している。エンコーダ96は、支持軸78に固定した、円周方向片半部にN極を円周方向他半部にS極を設けた円板状とし、回転角度センサ98は、メインフレーム30(図4等参照)に固定した、90度位相が異なる2個所位置に設けたホール素子により構成している。このような回転角度検出装置94によれば、エンコーダ96の回転に伴い、2個のホール素子からの信号に基づく出力電圧が互いに位相が90度ずれた波形となるため、2個のホール素子からの信号を用いて、支持軸78の回転角度が検出可能となる。なお、エンコーダ96の着磁方向は、図6に示すような円板の表裏方向に着磁する場合に限定するものではなく、円板の外周面に径方向に着磁することもできる。この場合には、回転角度センサ98を構成するホール素子をエンコーダ96の径方向に対向させる。また、2個以上のホール素子を1個のパッケージに設けて、1個のパッケージをエンコーダ96に対向させることで回転角度検出装置を構成することもできる。
【0060】
このような回転角度検出装置を含んで構成する操向用駆動装置72(図4)は、右左両側の2個のキャスタ輪22,24に対応して、それぞれ設ける。また、それぞれの回転角度検出装置からの検出信号は、上記の図3に示したコントローラ44,46,48に入力する。なお、図3では、右左のステアリングアクチュエータ68,70に対応する図として、リニアアクチュエータのような図示をしているが、このように、ステアリングアクチュエータ68,70として、電動プランジャ等の電動アクチュエータ、油圧アクチュエータ等のリニアアクチュエータ、またはリニアモータ等を用いることもできる。
【0061】
また、図3に示すように、芝刈り車両10は、エンジン32を始動させるためのスターターとスターター補助リレーとを備える。コントローラ44,46,48からの始動指令信号をスターター補助リレーに入力することにより、スターターを始動させて、エンジン32を始動させる。スターターへは電源ユニット36から電力を供給する。
【0062】
また、芝刈り機20(図1、図2参照)の昇降位置を表す芝刈り機昇降位置検出センサ100からの信号を、コントローラ44,46,48に入力し、コントローラ44,46,48により芝刈り機20の昇降位置を調節可能としている。また、運転者が運転席に乗車したか否かを検出するシートスイッチ102を設けて、シートスイッチ102からの信号をコントローラ44,46,48に入力する。シートスイッチ102からの信号に応じて、コントローラ44,46,48は、運転者が運転席に乗車していない場合には、芝刈り機20および芝刈り車両10の運転を停止するように、芝刈り機20および芝刈り車両10を制御する。
【0063】
また、芝刈り車両10に傾斜センサ104を設けて、芝刈り車両10が位置する地面の傾斜角度を検出可能としている。傾斜センサ104からの検出信号もコントローラ44,46,48に入力する。また、ブレーキペダルセンサ106により、ブレーキペダルの踏み込み量を検出可能とし、ブレーキペダルセンサ106からの検出信号もコントローラ44,46,48に入力する。また、パーキングブレーキセンサ108により、パーキングブレーキレバーの作動状態、すなわち、オンまたはオフを検出可能とし、パーキングブレーキセンサ108からの検出信号もコントローラ44,46,48に入力する。さらに、各種の走行モード等のモードを表示するための表示部と、各種のモード実現または機能を発揮させるためのモード機能スイッチとをまとめて配置した操作/表示部110を設けるとともに、操作/表示部110に各種の異常を表示するようにしている。操作/表示部110を構成するモード機能スイッチからの信号はコントローラ44,46,48に入力し、コントローラ44,46,48からの信号により表示部で所定の状態(例えば異常)を表示するようにしている。
【0064】
また、芝刈り車両10の旋回や加速を行うための右左の操作レバー28の操作量を検出する操作量センサからの信号に応じて、主駆動輪12,14(図2)に対応する2個の電動モータ16,18と、右左のステアリングアクチュエータ68、70(図3)に対応する、操向用電動モータ82(図4、図5)とが作動するようにしている。例えば、図7(a)(b)(c)に、旋回走行する場合の3形態を模式的に示している。右左の操作レバー28(図1、図3)を前後に操作することにより、主駆動輪12,14に対応する電動モータ16,18が駆動し、旋回、加速、減速等を行える。操作レバー28は上下に直立した位置で開放状態、すなわちニュートラル状態となる。電動モータ16,18はこの状態で停止する。これに対して、操作レバー28を前に倒すことにより、対応する電動モータ16,18が前進方向に正回転し、操作レバー28を後に倒すことにより、対応する電動モータ16,18が後進方向に逆回転する。また、操作レバー28の倒し量が増大するのにしたがって、電動モータ16,18の回転数が増大する。例えば、右の操作レバー28を前に倒すことにより、右側の主駆動輪12に対応する電動モータ16が正回転し、右の操作レバー28を後に倒すことにより、右の主駆動輪12に対応する電動モータ16が逆回転する。また、両方の操作レバー28を同じ分だけ前に倒すと、芝刈り車両10は直進する。この場合には、前側の2個のキャスタ輪22,24は、主駆動輪12,14と平行な方向に向いた状態となる。
【0065】
これに対して、図7(a)に示すように、芝刈り車両10を左方向に緩旋回、すなわち、大きな曲率半径で左方向に旋回させる場合には、両方の操作レバー28を前に倒すが、右側の操作レバー28を左側の操作レバー28よりも大きく倒す。このように操作レバー28の倒し量が右側と左側とで差がある場合には、2個のキャスタ輪22,24にそれぞれ対応する2個の操向用電動モータ82(図4、図5)が、キャスタ輪22,24を所定の方向に向けるように駆動する。
【0066】
図7(a)に示す例の場合には、コントローラ44,46,48は、右左車輪速度モジュールと、旋回中心取得モジュールと、キャスタ輪操向角度取得モジュールとを有する。右左車輪速度取得モジュールは、操作レバー28の倒し量に応じて右左の主駆動輪12,14の走行速度を求めて取得する。また、旋回中心取得モジュールは、取得された右左の主駆動輪12,14の走行速度に対応する旋回中心Oの位置を求めて取得する。また、キャスタ輪操向角度取得モジュールは、取得された旋回中心Oの位置に対応する2個のキャスタ輪22,24のそれぞれの操向角度を求めて取得する。そして、第1電動モータ用駆動回路50と第2電動モータ用駆動回路52と操向用駆動回路66(図3)とは、取得された右左車輪速度に応じて右左の主駆動輪12,14を、第1電動モータ16および第2電動モータ18により走行駆動する。また、取得された操向角度に応じて右左のキャスタ輪22,24を、2個の操向用電動モータ82により操向する。すなわち、2個のキャスタ輪22,24は、取得された旋回中心Oを有するそれぞれの円の接線方向に向くように操向する。
【0067】
また、図7(b)は、芝刈り車両10を左方向に信地旋回、すなわち、旋回中心Oを左側の主駆動輪14の設置位置に位置させた状態で左方向に旋回させる例を示している。この場合には、右側の操作レバー28を前に倒すが、左側の操作レバー28は直立状態のニュートラル位置に位置させる、すなわち開放状態とする。この場合、右左車輪速度取得モジュールは、操作レバー28の倒し量に応じて右側の主駆動輪12の走行速度を求めて取得する。また、旋回中心取得モジュールは、取得された右左の主駆動輪12,14の走行速度に対応する旋回中心Oの位置を、左側の主駆動輪14設置位置として、求めて取得する。また、キャスタ輪操向角度取得モジュールは、取得された旋回中心Oの位置に対応する2個のキャスタ輪22,24のそれぞれの操向角度を求めて取得する。そして、第1電動モータ用駆動回路50と操向用駆動回路66(図3)とは、取得された右側の主駆動輪12の速度に応じて右側の主駆動輪12を第1電動モータ16により走行駆動し、取得された操向角度に応じて右左のキャスタ輪22,24を2個の操向用電動モータ82により操向する。この場合も、2個のキャスタ輪22,24は、取得された旋回中心Oを有するそれぞれの円の接線方向に向くように操向する。また、この場合には、左側の主駆動輪14の速度は0である。
【0068】
また、図7(c)は、芝刈り車両10を左方向に超信地旋回(スピン)、すなわち、旋回中心Oを右左の主駆動輪12,14の設置位置同士の間の中央位置に位置させた状態で左方向に旋回させる例を示している。この場合には、右側の操作レバー28を前に倒すが、左側の操作レバー28を同じ分だけ後に倒す。この場合、右左車輪速度取得モジュールは、操作レバー28の倒し量に応じて右左の主駆動輪12,14の走行速度を求めて取得する。右左の主駆動輪12,14は、同じ速度で逆方向に回転する。また、旋回中心取得モジュールは、取得された右左の主駆動輪12,14の走行速度に対応する旋回中心Oの位置を、右左の主駆動輪12,14の設置位置同士の間の中央位置として、求めて取得する。また、キャスタ輪操向角度取得モジュールは、取得された旋回中心Oの位置に対応する2個のキャスタ輪22,24のそれぞれの操向角度を求めて取得する。そして、第1電動モータ用駆動回路50と第2電動モータ用駆動回路52と操向用駆動回路66(図3)とは、取得された右左の主駆動輪12,14の速度に応じて第1電動モータ16および第2電動モータ18により走行駆動し、取得された操向角度に応じて右左のキャスタ輪22,24を2個の操向用電動モータ82により操向する。この場合も、2個のキャスタ輪22,24は、取得された旋回中心Oを有する円の接線方向に向くように操向する。なお、図7においては、芝刈り車両10を左方向に旋回させる場合について説明したが、右方向に旋回させる場合も右左が逆になるだけで同様である。
【0069】
なお、キャスタ輪22,24を操向用電動モータ82により操向するとともに、キャスタ輪走行用の電動モータ88(図4参照)により駆動する場合には、次のようにして、キャスタ輪22,24の操向角度と速度とを求めることができる。図8は、右左の主駆動輪12,14の速度が与えられたときに、旋回中心位置を求める様子を説明する図である。図8(a)は、図7(a)に対応する図で、主駆動輪12,14の配置と、これから求めようとする旋回中心位置Oとが示されている。ここで、主駆動輪12が旋回に対しての外側車輪でその対地速度がVoとして示され、主駆動輪14が内側車輪でその対地速度がViとして示されている。また、主駆動輪12,14の車軸上で、主駆動輪12,14のちょうど中間位置における対地速度VMは、平均走行速度に対応するものであり、VM=(Vo+Vi)/2で与えられる。なお、平均走行速度を求めて取得する機能は、コントローラ44,46,48(図3)が有する旋回中心取得モジュールによって実行する。ただし、特にこの部分のみを取り出して利用することもある。すなわち、コントローラ44,46,48の1つの機能として、平均走行速度取得モジュールとして実行することもできる。
【0070】
また、主駆動輪12,14の間の間隔である主駆動輪トレッドは2Tで示され、主駆動輪12,14の半径はrrで示されている。したがって、主駆動輪12の車軸周りの回転数Noは、Vo/rr、主駆動輪14の車軸周りの回転数Niは、Vi/rrで与えられる。
【0071】
図8(b)は、上記の記号を用いて、旋回中心位置Oを求める計算過程を示す図である。ここで、旋回中心位置Oは、主駆動輪12,14の車軸上で、主駆動輪12,14のちょうど中間位置からの距離Rで表すものとする。図8(b)に示されるように、旋回中心位置は、R=T×{(No+Ni)/(No−Ni)}で表わすことができる。したがって、芝刈り車両10の構成によってTが定まれば、主駆動輪12,14の速度Vo,Viに対応する回転数No,Niから旋回中心位置Rを求めることができる。
【0072】
次に、右左の主駆動輪12,14速度と旋回中心O位置とに基づいて、キャスタ輪の速度を求め取得する。この機能は、コントローラ44,46,48が有するキャスタ輪速度取得モジュールによって実行する。
【0073】
図9と図10とは、図8で求められた旋回中心位置Oを用いて、キャスタ輪22,24の速度を求める様子を示す図である。以下では、図8の符号を用いて説明する。図9(a)は、図7(a)、図8(a)に対応する図で、主駆動輪12,14の配置と、キャスタ輪22,24の配置と旋回中心位置Oとが示されている。ここで、これから求めようとするキャスタ輪22,24の速度について、旋回中心位置Oから見て外側のキャスタ輪22の対地速度がVFo、内側のキャスタ輪24の対地速度がVFiで示されている。
【0074】
また、キャスタ輪22,24の間の間隔であるキャスタ輪トレッドは2t、主駆動輪12,14の中間位置とキャスタ輪22,24の中間位置との間の距離であるホイールベース長さはW、キャスタ輪22,24の半径はrfで示されている。したがって、キャスタ輪22の車軸周りの回転数NFoは、VFo/rf、キャスタ輪24の車軸周りの回転数NFiは、VFi/rfで与えられる。
【0075】
また、キャスタ輪22,24の旋回中心O周りの操向角度は次のようにして求める。すなわち、各キャスタ輪22,24の車軸方向は、各キャスタ輪22,24の接地位置と旋回中心位置Oとを結ぶ直線の方向となる。したがって、この直線の方向と、主駆動輪12,14の車軸方向との間の角度が、各キャスタ輪22,24の操向角度となり、図9(a)では、それぞれθo,θiで示されている。また、各キャスタ輪22,24の接地位置と旋回中心位置Oとの間の距離は、それぞれRo,Riで示されている。
【0076】
図9(b)は、上記の記号を用いて、各キャスタ輪22,24の操向角度θo,θiを求める計算過程を示す図である。ここでは、上記の図8で説明したようにして求められたRと、ホイールベース長Wと、キャスタ輪トレッドの1/2であるtとから、各キャスタ輪22,24の旋回半径に相当するRo,Riを求め、これとRとの関係から、操向角度θo,θiが求められる様子が示されている。ここで、Ro,Riは、各キャスタ輪22,24の接地位置と旋回中心位置Oとの間の距離で与えられる。
【0077】
図10は、主駆動輪12,14の平均走行速度VMに応じたキャスタ輪22,24の速度VFo,VFiを求める過程を示す図である。芝刈り車両10の各構成要素は、旋回中心位置Oの周りに同じ角速度で旋回するので、旋回中心位置Oからの距離に比例して、対地速度が異なってくる。したがって、キャスタ輪22の速度VFoと、主駆動輪12,14の平均走行速度VMとの比は、旋回中心位置Oからキャスタ輪22の接地位置までの距離Roと、旋回中心位置Oから主駆動輪12,14の中間位置までの距離Rとの比となる。図8からRが求められており、図9(b)においてRoは求められているので、キャスタ輪22の速度VFo及びこれに対応する回転数NFoが図10で示されるように求められる。
【0078】
図10では、旋回中心位置Oを示すRを右左の主駆動輪12,14の回転数No,Niで書き換えているので、結局、キャスタ輪22の回転数NFoは、右左の主駆動輪12,14の回転数No,Niと、芝刈り車両10の構成によって定まるホイールベース長W,主駆動輪トレッド2T,キャスタ輪トレッド2t,主駆動輪半径rr,キャスタ輪半径rfとから求めることができる。キャスタ輪24の回転数NFiも同様に、右左の主駆動輪12,14の回転数No,Niと、芝刈り車両10の構成によって定まるW,T,t,rr,rfとから求めることができる。
【0079】
図8から図10で説明したように、右左の主駆動輪12,14の速度あるいは回転数が与えられれば、芝刈り車両10の構成によって定まるW,T,t,rr,rfを用いて、旋回中心位置Rと、キャスタ輪22,24の速度あるいは回転数と、キャスタ輪22,24の操向角度θo,θiとを求めることができる。したがって、予め分かっているW,T,t,rr,rfと、図8から図10で説明した計算式とをコントローラ44,46,48が有する記憶部に記憶させておき、右左の主駆動輪12,14の回転数を適用することで、旋回中心位置を取得し、キャスタ輪22,24の速度および操向角度を取得する工程を容易に実行できる。
【0080】
さらに、本実施の形態の場合には、コントローラ44,46,48は、切り替え手段である切り替えモジュールを備える。切り替えモジュールは、2個のキャスタ輪22,24を2個の操向用電動モータ82(図4、図5参照)により強制的に操向する強制操向モードと、2個の操向用電動モータ82の動力発生を停止してキャスタ輪22,24の自由操向を可能とする自由操向モードとのいずれかのモードへの切り替えを可能としている。具体的には、自由操向モードを実現するために、操向用電動モータ82への電力供給を停止して、操向用電動モータ82の駆動を停止する。また、切り替えモジュールは、運転者により操作する右左の操作レバー28の操作量を検出する操作量センサと、キャスタ輪22,24の操向方向を検出する回転角度検出装置94(図6等参照)とからの検出信号がそれぞれ入力され、操作量検出部からの検出信号に対応するキャスタ輪22,24の方向と、回転角度検出装置94からの検出信号に対応するキャスタ輪22,24の方向とが異なる場合に、自由操向モードから強制操向モードへ切り替える。
【0081】
このような切り替えモジュールを備える本実施の形態の乗用型芝刈り車両である芝刈り車両10は、次のようにして操向用電動モータ82を、停止状態から駆動状態に切り替える。図11は、操向用電動モータ82の駆動を切り替える方法を示すフローチャートである。まず、図11のステップS1において、操向用電動モータ82の駆動を停止する(オフする)、すなわち自由操向モードの状態で、ステップS2において、回転角度検出装置94を構成するエンコーダ96(図6等参照)等により、キャスタ輪22,24のそれぞれの現在の操向角度αを検出する。
【0082】
次いで、ステップS3において、切り替えモジュールは、右左の操作レバー28の操作位置、すなわち、倒れ位置に対応するキャスタ輪22,24の目標操向角度βを求めて、取得し、ステップS4において、取得された目標操向角度βと、現在のキャスタ輪22,24の検出された操向角度αとを比較する。そして、目標操向角度βと検出された操向角度αとが一致している場合には、操向用電動モータ82を停止した状態とし、目標操向角度βと検出された操向角度αとが不一致である場合には、操向用電動モータ82に通電して、操向用電動モータ82を駆動し(オンし)、停止状態から駆動状態に切り替える。すなわち、自由操向モードから強制操向モードに切り替える。そして、目標操向角度βと検出された操向角度αとが一致するように、操向用電動モータ82を制御する。
【0083】
なお、このような目標操向角度βの取得と操向角度αの検出とは、右左のキャスタ輪22,24のそれぞれで行い、それぞれで比較した結果に応じて、それぞれのキャスタ輪22,24に対応する操向用電動モータ82を停止状態から駆動状態に切り替えるか否かを判定する。すなわち、本実施の形態では、右左2個のキャスタ輪22,24を操向用電動モータ82により強制的に操向する強制操向モードにおいて、操作レバー28の操作に応じて、2個のキャスタ輪22,24を、互いに独立して操向用電動モータ82により強制的に操向可能としている。また、切り替え手段の切り替えは、運転者がスイッチ等の操作部を操作することにより、手動で切り替えることを可能としている。
【0084】
このような本実施の形態によれば、キャスタ輪22,24を操向用電動モータ82により強制的に操向する強制操向モードと、操向用電動モータ82の動力発生を停止してキャスタ輪22,24の自由操向を可能とする自由操向モードとの、いずれかのモードへの切り替えを行う切り替えモジュールを備える。このため、斜面走行時において、目標操向角度βと検出された操向角度αとが不一致である場合に、切り替えモジュールが強制操向モードに切り替えることにより、運転者が望む方向よりもキャスタ輪22,24を下側に向けるような不都合が生じることを防止できる。すなわち、芝刈り車両10を運転者が望む方向に精度よく進行させることができる。しかも、高速走行時等必要がない場合には、運転者が手動で操作部を操作して、自由走行モードに切り替えることができるため、操向用電動モータ82にかかる負荷を小さくして、操向用電動モータ82の小型化を図りやすくなる。また、操向輪をキャスタ輪22,24としているため、芝刈り車両10の旋回の自由度向上を図れる。例えば、旋回時の回転半径を十分に小さくする、超信地旋回等の急旋回を行いやすくなる。
【0085】
また、本実施の形態で、強制操向モードにおいて、キャスタ輪22,24を走行用の電動モータ88(図4等参照)により駆動するように構成する場合には、斜面走行時において、目標操向角度βと検出された操向角度αとが不一致である場合に、強制操向モードに切り替えることにより、運転者が望む方向よりもキャスタ輪22,24を下側に向けるような不都合が生じることを、より有効に防止できる。なお、自由操向モードから強制操向モードへの切り替えを行うか否かは、目標操向角度βと操向角度αとがずれた場合でも、許容割合、例えば5%等の許容範囲を超えてずれた場合にのみ、切り替えを行うようにすることもできる。
【0086】
なお、本実施の形態では、自由操向モードを実現するために、操向用電動モータ82への電力供給を停止して、操向用電動モータ82の駆動、すなわち動力発生を停止するようにしているが、自由操向モードを実現するために、2個の操向用電動モータ82から2個のキャスタ輪22,24への操向用の動力伝達を遮断することもできる。例えば、操向用電動モータ82とキャスタ輪22,24の駆動部との間の動力伝達部にクラッチ機構を設けて、クラッチ機構を断接することにより、操向用の動力伝達の遮断または接続を可能とすることもできる。
【0087】
また、本実施の形態では、右左の操作レバー28により、芝刈り車両10の加速、減速、旋回のいずれも行えるようにしているが、図3に示したように、ステアリングホイール等のステアリング操作部64等により旋回するように構成することもできる。この場合には、例えば、ステアリングホイールの回転角度を検出する回転角度センサからの検出信号を、コントローラ44,46,48に入力する。また、運転席26(図1)の下側に、前進アクセルペダルと後進アクセルペダルとを備え、いずれかのアクセルペダルの踏み込みにより前進側、または後進側へ車両を加速させる。前進アクセルペダルの踏み込み量を検出する前進側踏み込み量検出センサと、後進アクセルペダルの踏み込み量を検出する後進側踏み込み量検出センサとからの検出信号は、コントローラ44,46,48に入力する。また、両踏み込み量検出センサからの検出信号に応じて、主駆動輪12,14駆動用の電動モータ16,18を正転方向または逆転方向に回転駆動させる。また、ステアリングホイールの回転角度検出センサからの検出信号に応じて、キャスタ輪22,24操向用の電動モータ82(図4、図5)を駆動し、2個のキャスタ輪22,24を旋回方向に応じた所定の方向に操向する。
【0088】
また、図3において、2個のキャスタ輪22,24を、走行用の電動モータ88(図4等参照)により駆動する場合には、2個のキャスタ輪22,24駆動用として、第1電動モータ用駆動回路50と、第2電動モータ用駆動回路52と、第1電動モータ16用の電力回生ユニット54および第2電動モータ18用の電力回生ユニット56とに対応する構成と、第1電動モータ16および第2電動モータ18およびそれぞれの電動モータ16,18に対応するブレーキユニット58、60に対応する構成とを、それぞれ設ける。
【0089】
[第2の発明の実施の形態]
図12は、本発明の第2の実施の形態において、上記の図4に対応する略断面図を示している。本実施の形態の場合には、上記の第1の実施の形態において、少なくともキャスタ輪22,24を操向用電動モータ82により強制的に操向する強制操向モードにおいて、2個のキャスタ輪22,24を、走行用の動力源である電動モータ88により駆動するように構成している。また、キャスタ輪22,24を支持する支持ハウジング112は、上側支持部114により、鉛直方向の軸を中心に360度を超えて自由に回転可能に支持している。すなわち、上側支持部114は、メインフレーム30に対し軸受により鉛直方向の軸周りに回転可能に支持した筒部116と、筒部116に固定した大歯車86および支持ハウジング112とを備える。また、メインフレーム30上にコントローラ44,46,48(図3参照)からの制御信号を受け取るスリップリング118を支持するとともに、スリップリング118の下側に導出したケーブル120を、支持ハウジング112の内側を通じてキャスタ輪22,24走行用の電動モータ88に接続している。
【0090】
これにより、キャスタ輪22,24の鉛直方向の軸を中心とする回転にかかわらず、ケーブル120のねじれをより有効に防止できる。本実施の形態の場合には、キャスタ輪22,24の操向に対する角度を所定の角度に規制するためのストッパを設ける必要がない。その他の構成および作用については、上記の第1の実施の形態と同様であるため、同等部分には同一符号を付して重複する図示および説明を省略する。
【0091】
[第3の発明の実施の形態]
図13は、本発明の第3の実施の形態を示している。本実施の形態の場合、キャスタ輪22,24走行用の電動モータ88を、キャスタ輪22,24の上側に外れた部分に配置している。すなわち、電動モータ88は、メインフレーム30に対し鉛直方向の軸を中心に回転可能に支持した筒部116に大歯車86とともに固定している。そして、電動モータ88の回転軸の回転を、複数の平歯車を備える歯車機構122を介してキャスタ輪22,24に伝達するように構成している。歯車機構122を構成する複数の平歯車も、電動モータ88および大歯車86とともに、鉛直方向の軸であり、キャスタ輪22,24の旋回軸である、操向軸123を中心とする回転に伴って回転するようにしている。また、大歯車86には、キャスタ輪22,24旋回用の図示しない電動モータの回転軸に固定した小歯車を噛合させている。なお、図13では、操向軸123とキャスタ輪22,24とのタイヤ中心が一致していることを示している。このような構成とすることで、操向に対する抵抗(操向抵抗)を低減できる。その他の構成および作用については、上記の図1から図11に示した第1の実施の形態、または、上記の図9に示した第2の実施の形態と同様であるため、同等部分には同一符号を付して重複する図示および説明を省略する。
【0092】
[第4の発明の実施の形態]
図14は、本発明の第4の実施の形態を示している。本実施の形態の場合、上記の図13に示した第3の実施の形態において、キャスタ輪22,24走行用の電動モータ88を、歯車機構122に関して、図14の右左方向で逆に取り付けている。その他の構成および作用は、上記の図13に示した第3の実施の形態と同様である。なお、図14でも、図13と同様に、操向軸123とキャスタ輪22,24とのタイヤ中心が一致していることを示している。
【0093】
[第5の発明の実施の形態]
図15から図16は、本発明の第5の実施の形態を示している。図15は、図4に対応する断面図で、図16は図15の右側から左側に見た、一部を断面で示す図である。本実施の形態の場合、上記の図13に示した第3の実施の形態において、キャスタ輪22,24走行用の電動モータ88を、鉛直方向の軸を中心として90度回転させた位置に設けるとともに、電動モータ88の回転軸にかさ歯車機構により、上側回転軸124を作動的に連結している。そして、上側回転軸124と、キャスタ輪22,24に固定した下側回転軸126との間に中間回転軸128を配置し、上側回転軸124に固定した駆動側歯車130と、中間回転軸128に固定した従動側歯車132との間にチェーン134を掛け渡している。そして、中間回転軸128と下側回転軸126とを、平歯車機構136により作動的に連結している。この結果、電動モータ88の回転軸とキャスタ輪22,24に固定した下側回転軸126とは、作動的に連結される。また、図15においては、図13,図14と同様に、操向軸123とキャスタ輪22,24のタイヤ中心とが一致していることを示しているが、図16においては、操向軸123とキャスタ輪22,24のタイヤ中心との間にオフセットが設けられていることを示している。このオフセットは、キャスタトレイル137と呼ばれるもので、キャスタトレイル137を設けることで、操向が自由回転の状態において、主駆動輪の走行に対応して、操向角度が定まりやすくなる。その他の構成および作用は、上記の図13に示した第3の実施の形態と同様である。
【0094】
[第6の発明の実施の形態]
図17は、本発明の第6の実施の形態を示している。本実施の形態の場合、上記の図15から図16に示した第5の実施の形態において、キャスタ輪22,24走行用の電動モータ88のケースを、メインフレーム30に対し鉛直方向に固定している。そして、電動モータ88のケースの下側周囲に、支持ハウジング112の上部を大歯車86とともに、鉛直方向の軸を中心とする回転可能に支持している。また、電動モータ88の回転軸と、上側回転軸124とを、かさ歯車機構により作動的に連結している。さらに、下側回転軸126の一端部(図17の右端部)周囲に、一方向クラッチ138を介して平歯車機構136を構成する平歯車を支持している。これにより、電動モータ88の回転数が車速、すなわち、キャスタ輪22,24の回転速度に関して所定割合以下に低くなる、すなわち、キャスタ輪22,24に固定した平歯車の回転速度がキャスタ輪22,24の回転速度に対して遅くなる傾向となる場合には、電動モータ88から下側回転軸126への動力の伝達を遮断して、電動モータ88がキャスタ輪22,24の回転に対して抵抗となることを抑制するようにしている。その他の構成および作用は、上記の図15から図16に示した第5の実施の形態と同様である。
【0095】
[第7の発明の実施の形態]
図18は、本発明の第7の実施の形態に使用する主駆動輪12,14駆動用の第1電動モータ16および第2電動モータ18(図2等参照)の特性線図を示している。なお、芝刈り車両の基本構成は上記の図1から図11に示した第1の実施の形態と同様であるため、以下の説明において同等部分には同一符号を付して説明する。本実施の形態の場合、上記の第1の実施の形態において、コントローラ44,46,48は、電動モータ制御手段である電動モータ制御モジュールを備える。電動モータ制御モジュールは、芝刈り車両10が傾斜面上で停止している場合に、電動モータ16,18の回転数が0近傍でトルク、すなわち起動トルク(始動トルク)を発生するように、電動モータ16,18を制御して、車両のずり下がりを阻止する等抑制するようにしている。すなわち、上記の第1の実施の形態において、傾斜面上に車両が位置する場合、パーキングブレーキを解除して、ブレーキペダルを踏み込まない状態では、芝刈り車両10が自重により傾斜面に沿ってずり下がる傾向となる。
【0096】
これに対して、本実施の形態では、電動モータ16,18をDCブラシレスモータとするとともに、芝刈り車両10が位置する傾斜面の傾斜角度を傾斜センサ104(図3参照)により検出し、検出された傾斜角度に応じて、起動トルクが水平面上に位置する場合に比べて大きくなるように制御する。すなわち、図18は、電動モータ16,18がDCブラシレスモータである場合の、実線aで電動モータ16,18の回転数とトルクとの関係を、実線bで電動モータ16,18の電流とトルクとの関係を表している。また、実線cで電動モータ16,18の出力とトルクとの関係を、実線dで電動モータ16,18の効率とトルクとの関係を表している。また、回転数が0でのリップルを考慮した平均起動トルクT0(Nm)は、次式で求められる。
【0097】
0=(Vs/Ra)×Kt−Td ・・・(1)
【0098】
ここで、Vsは電動モータ16,18に印加される電圧(V)であり、Raは巻線抵抗(Ω)である。また、Ktはトルク定数(Nm/A)で、Tdは無負荷損失(Nm)である。ここで、無負荷損失が相対的に十分に小さいと、起動トルクT0は、電圧に比例することになる。したがって、電動モータ16,18に印加される電圧の大きさを制御することにより、電動モータ16,18の起動トルクを制御できる。具体的には、電動モータ16,18に印加される電圧を大きくするため、例えば、電動モータ16,18に接続された可変抵抗を小さくすることにより、起動トルクを図14の点Xよりも右側に移動させ、すなわち起動トルクを増大させることができる。
【0099】
本実施の形態は、このように、電動モータ制御モジュールは、芝刈り車両10の傾斜面上でのずり下がりを阻止する等抑制するために、傾斜センサ104からの検出信号が表す傾斜面の傾斜角度に応じて、電動モータ16,18の回転数が0近傍で発生する起動トルクを、電動モータ16,18に印加する電圧をパラメータとして制御する。すなわち、電動モータ制御モジュールは、傾斜面の傾斜角度に応じて傾斜面下降方向に芝刈り車両10に作用する力に対して、これと釣り合うように、電動モータ16,18の起動トルクを発生させるように、電動モータ16,18に印加される電圧を制御する。なお、芝刈り車両10に車速センサを設けて、操作レバー28等の操作部による芝刈り車両10の速度指令が0である場合に、車速センサにより検出される車速が0となるように、電動モータ16,18の起動トルクを制御することもできる。
【0100】
このような本実施の形態によれば、芝刈り車両10が傾斜面上で停止している場合に、電動モータ16,18の回転数が0近傍でトルクを発生するように電動モータ16,18を制御することにより、芝刈り車両10のずり下がりを抑制する電動モータ制御モジュールを備える。このため、芝刈り車両10が傾斜面上で停止している場合に、機械式ブレーキであるパーキングブレーキおよびアクセルペダルの踏み込みにより作動する制動装置をいずれも解除した後、車両駆動用の電動モータ16,18により芝刈り車両10が発進を開始する前でも、芝刈り車両10の傾斜面上でのずり下がりを抑制して、運転者に違和感を生じさせることを防止できる。その他の構成および作用は、上記の図1から図11に示した第1の実施の形態と同様である。なお、図18では、DCブラシレスモータの特性線図を示しており、本実施の形態では、DCブラシレスモータである車両駆動用の電動モータ16,18を制御するようにしているが、電動モータ16,18をACモータとして、ACモータの特性線図を用いて、電動モータ16,18を同様に制御し、芝刈り車両10の傾斜面上でのずり下がりを抑制することもできる。
【0101】
なお、図示は省略するが、本実施の形態において、電動モータ制御モジュールを備えず、その代わりに、コントローラ44,46,48は、制動部制御手段である制動部制御モジュールを備え、制動部制御モジュールは、芝刈り車両10の傾斜面での発進時において、制動用操作部である、パーキングブレーキレバーをオフにした場合でも、電動モータ16,18のトルクが傾斜面の角度に対応する所定トルクを超えた場合にのみ、制動部であるパーキングブレーキによる制動を解除するように、パーキングブレーキの制動状態を制御する構成とすることもできる。この場合、傾斜面の角度は、傾斜センサ104(図3参照)により検出する。このような構成によっても、芝刈り車両10が傾斜面上で停止している場合に、パーキングブレーキを解除した後、車両駆動用の電動モータ16,18により芝刈り車両10が発進を開始する前でも、芝刈り車両10の傾斜面上でのずり下がりを抑制して、運転者に違和感を生じさせることを防止できる。この場合、例えば、パーキングブレーキを構成するブレーキシューに連結するブレーキレバーは、コントローラ44,46,48からの制御信号を受けるリニアアクチュエータまたはリニアモータ等の電動アクチュエータにより押し引きする構成とすることができる。
【0102】
[第8の発明の実施の形態]
図19は、本発明の第8の実施の形態の主駆動輪12,14とキャスタ輪22,24との速度を表す模式図を示している。なお、芝刈り車両の基本構成は上記の図1から図11に示した第1の実施の形態と同様であるため、以下の説明において同等部分には同一符号を付して説明する。本実施の形態の場合、上記の図1から図11に示した第1の実施の形態において、コントローラ44,46,48は切り替え手段である切り替えモジュールを備える。また、切り替えモジュールは、主駆動輪12,14のスリップ率が所定値である5%以上で、好ましくは、5%以上で15%以下、より好ましくはほぼ10%である場合に、主駆動輪12,14のみを駆動する第1駆動モードから、主駆動輪12,14とキャスタ輪22,24との両方を駆動する第2駆動モードに切り替えるものとしている。
【0103】
例えば、主駆動輪12,14のスリップ率が5%未満である場合には、主駆動輪12,14のみを駆動する第1駆動モードが実現されるように、キャスタ輪22,24走行用の電動モータ88(図4等参照)への電力供給を停止し、電動モータ88の動力発生を停止する。「スリップ率」は、主駆動輪12,14駆動用の電動モータ16,18の回転数から得られる主駆動輪12,14の目標移動速度V0と、キャスタ輪22,24走行用の電動モータ88の回転数から得られるキャスタ輪22,24の移動速度V1とを比較して、移動速度V1よりも目標移動速度V0が大きい場合にスリップしていると判定し、スリップ率、すなわち、{(V0−V1)/V0}×100(%)を求める。また、主駆動輪12,14およびキャスタ輪22,24にそれぞれ固定されたエンコーダ140,142を含む回転速度検出装置からの検出信号から、主駆動輪12,14の目標移動速度V0とキャスタ輪22,24の移動速度V1とを求め、スリップ率を求めることもできる。そして、第1駆動モードから第2駆動モードに切り替える場合には、キャスタ輪22,24駆動用の電動モータ88への電力供給を開始し、キャスタ輪22,24と主駆動輪12,14とを、電動モータ16,18,88により走行駆動する。
【0104】
このような本実施の形態によれば、主駆動輪12,14のスリップ率が5%以上である場合に、主駆動輪12,14のみを駆動する第1駆動モードから、主駆動輪12,14とキャスタ輪22,24との両方を駆動する第2駆動モードに切り替える切り替えモジュールを備える。このため、芝刈り車両10が傾斜面上を登坂走行する場合に、主駆動輪12,14が芝上を所定以上のスリップ率分スリップすると、主駆動輪12,14とキャスタ輪22,24との両方が駆動する。このため、駆動力が大きくなり、主駆動輪12,14が芝上でスリップしなくなるため、主駆動輪12,14が芝をいためるのを抑えることができる。その他の構成および作用は、上記の図1から図11に示した第1の実施の形態と同様であるため、同等部分に関する説明および図示は省略する。なお、キャスタ輪22,24を走行駆動するための構成は、上記の図12から図16に示した第2の実施の形態から第6の実施の形態の構成を適用することもできる。
【0105】
なお、本実施の形態では、第1駆動モードを実現するために、キャスタ輪22,24走行用の電動モータ88への電力供給を停止して、電動モータ88の動力発生を停止するようにしているが、第1駆動モードを実現するために、キャスタ輪22,24に対応する2個の電動モータ88から2個のキャスタ輪22,24への動力伝達を遮断することもできる。例えば、電動モータ88とキャスタ輪22,24の駆動部との間の動力伝達部にクラッチ機構を設けて、クラッチ機構を断接することにより、動力伝達の遮断または接続を可能とすることもできる。また、本実施の形態において、切り替えモジュールは、主駆動輪12,14のみを駆動する第1駆動モードから、主駆動輪12,14とキャスタ輪22,24との両方を駆動する第2駆動モードに切り替わった後、主駆動輪12,14を駆動するトルクが増大するのにしたがって、キャスタ輪22,24を駆動するトルクであるアシストトルクが減少することにより、アシストトルクの大きさ、または主駆動輪12,14を駆動するトルクに対するアシストトルクの割合が所定値未満となった場合に、第2駆動モードから第1駆動モードに切り替える構成とすることもできる。
【0106】
[第9の発明の実施の形態]
また、図示は省略するが、第9の発明の実施の形態として、上記の図19に示した第8の実施の形態において、コントローラ44,46,48(図3参照)は、速度制御手段である速度制御モジュールを備え、速度制御モジュールは、芝刈り車両10の傾斜面降坂時において、芝刈り車両10のオーバーラン率が所定値以上である場合に、芝刈り車両10の速度を抑制するように主駆動輪12,14走行用の動力源を制御する構成とすることもできる。ここで、「オーバーラン率」は、芝刈り車両10の傾斜面降板時において、主駆動輪12,14が地面に対して遅く回転する状態となる場合の、キャスタ輪22,24の移動速度に対して主駆動輪12,14の目標移動速度が低くなる割合をいう。例えば、主駆動輪12,14駆動用の電動モータ16,18の回転数から得られる主駆動輪12,14の目標移動速度V0と、キャスタ輪22,24走行用の電動モータ88(図4等参照)の回転数から得られるキャスタ輪22,24の移動速度V1とを比較して、目標移動速度V0よりも移動速度V1が高い場合にオーバーランしていると判定し、オーバーラン率を、{(V1−V0)/V0}×100(%)として求める。また、主駆動輪12,14およびキャスタ輪22,24にそれぞれ固定されたエンコーダ140,142(図19参照)を含む回転速度検出装置からの検出信号から、主駆動輪12,14の目標移動速度V0とキャスタ輪22,24の移動速度V1とを求め、オーバーラン率を求めることもできる。
【0107】
そして、速度制御手段は、オーバーラン率が所定値以上である場合には、芝刈り車両10の速度を抑制するように主駆動輪12,14走行用の電動モータ16,18を制御して、電動モータ16,18の回転速度を低くする。
【0108】
このような本実施の形態によれば、芝刈り車両10の傾斜面降坂時において、芝刈り車両10のオーバーラン率が所定値以上である場合に、芝刈り車両10の速度を抑制するように主駆動輪12,14走行用の電動モータ16,18を制御する速度制御モジュールを備える。このため、芝刈り車両10が傾斜面上を降坂走行する場合に、主駆動輪12,14が路面との間でスリップしても、芝刈り車両10の速度が抑制されることにより、過度なスリップを防止して、主駆動輪12,14が芝をいためるのを抑えることができる。なお、芝刈り車両10の速度を抑制するために、主駆動輪12,14走行用の電動モータ16,18とともに、または独立して、キャスタ輪22,24走行用の電動モータ等走行用動力源を制御することもできる。
【0109】
[第10の発明の実施の形態]
また、同様に図示は省略するが、第10の発明の実施の形態として、上記の第9の実施の形態において、コントローラ44,46,48(図3参照)は、切り替え手段である切り替えモジュールを備え、切り替えモジュールは、芝刈り車両10の傾斜面降坂時において、主駆動輪12,14(図19等参照)のみを駆動する第1駆動モードから、主駆動輪12,14とキャスタ輪22,24(図19等参照)との両方を駆動する第2駆動モードに切り替える構成とすることもできる。例えば、芝刈り車両10が傾斜面降板時であるか否かは、傾斜センサ104(図3参照)等により検出された傾斜面の傾斜角度、主駆動輪12,14駆動用の電動モータ16,18の回転方向等により判定する。そして、芝刈り車両10が傾斜面降板時であることが判定されたならば、上記の図19に示した第8の実施の形態と同様に、切り替えモジュールは、主駆動輪12、14のみを駆動する第1駆動モードから、主駆動輪12,14とキャスタ輪22,24との両方を駆動する第2駆動モードに切り替える。
【0110】
このような本実施の形態によれば、芝刈り車両10の傾斜面降坂時には、主駆動輪12,14のみを駆動する第1駆動モードから、主駆動輪12,14とキャスタ輪22,24との両方を駆動する第2駆動モードに切り替える切り替えモジュールを備える。このため、芝刈り車両10が傾斜面上を降坂走行する場合に、主駆動輪12,14とキャスタ輪22,24との傾斜面に対するグリップ力が大きくなるため、主駆動輪12,14が過度にスリップするのを防止して、主駆動輪12,14が芝をいためるのを抑えることができる。その他の構成および作用は、上記の図18に示した第8の実施の形態と同様であるため、重複する説明は省略する。
【0111】
なお、図示は省略するが、上記の各実施の形態において、芝刈り機20(図1、図2参照)駆動用の動力源を電動モータとし、電動モータに電力を供給する電力供給源を、内燃機関であるエンジン32により駆動する発電機34(図1、図2、図3参照)と、図示しない燃料電池と、二次電池またはキャパシタである蓄電部とのうち、少なくともいずれか1とすることもできる。また、車両操向用の操作部は、上記で説明したような、操作レバー28またはステアリングホイール等のステアリング操作部64に限定するものではなく、例えば、ステアリングホイールと、ジョイスティックと、足踏み式ペダルと、操作レバー28とのうちのいずれか1とするか、または、いずれか1を選択可能とすることもできる。また、芝刈り機20駆動用の動力源として、内燃機関または油圧モータを用いることもできる。
【0112】
さらに、上記の各実施の形態において、コントローラ44,46,48は、キャスタ輪22,24の操向用と走行用との駆動状態とを制御する操向走行制御部を有し、操向走行制御部は、キャスタ輪22,24の操向軸を中心とする任意の所定の操向角度以上では、キャスタ輪22,24走行用の駆動源であるキャスタ輪22,24走行用の電動モータ88(図4等参照)からキャスタ輪22,24への動力伝達を遮断するか、または電動モータ88の動力発生を停止して、キャスタ輪22,24が自由走行状態になるように制御する構成とすることもできる。このような構成によれば、例えばスピンターン時等の比較的牽引力を必要としない場合に、電動モータ88を駆動させずに済むため、電動モータ88の小型化を図りやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態における芝刈り車両の構成を示す略図である。
【図2】図1の略A−A断面図である。
【図3】第1の実施の形態の芝刈り車両におけるコントローラを含む基本構成を示す図である。
【図4】第1の実施の形態において、1個のキャスタ輪と、操向用駆動装置とを示す断面図である。
【図5】第1の実施の形態において、操向用駆動装置の別例を示す、図4のB部に対応する断面図である。
【図6】第1の実施の形態において、キャスタ輪支持部に設ける回転角度検出装置の別例を示す略斜視図である。
【図7】第1の実施の形態において、旋回形態の3例を示す模式図である。
【図8】第1の実施の形態において、右左の主駆動輪の速度が与えられたときに、旋回中心位置を求める様子を示す図である。
【図9】第1の実施の形態において、旋回中心位置を用いて、キャスタ輪の操向角度等を求める様子を示す図である。
【図10】第1の実施の形態において、旋回中心位置を用いて、キャスタ輪の速度等を求める様子を示す図である。
【図11】第1の形態において、切り替え手段により自由操向モードから強制操向モードへ切り替える方法を示すフローチャートである。
【図12】本発明に係る第2の実施の形態を示す、図4に対応する略断面図である。
【図13】同第3の実施の形態を示す、図4に対応する断面図である。
【図14】同第4の実施の形態を示す、図4に対応する断面図である。
【図15】同第5の実施の形態を示す、図4に対応する断面図である。
【図16】第5の実施の形態において、図15の右側から左側に見た、一部を断面で示す図である。
【図17】本発明に係る第6の実施の形態を示す、図4に対応する断面図である。
【図18】同第7の実施の形態で使用する、主駆動輪駆動用の電動モータの特性線図である。
【図19】同第8の実施の形態において、主駆動輪とキャスタ輪との速度を表す模式図である。
【符号の説明】
【0114】
10 芝刈り車両、12,14 主駆動輪、16 第1電動モータ、18 第2電動モータ、20 芝刈り機、22,24 キャスタ輪、26 運転席、28 操作レバー、30 メインフレーム、32 エンジン、34 発電機、36 電源ユニット、38 動力源、40 排出ダクト、42 収草タンク、44,46,48 コントローラ、 50 第1油圧モータ用駆動回路、52 第2電動モータ用駆動回路、54,56 電力回生ユニット、58,60 ブレーキユニット、62 モア起動スイッチ、64 ステアリング操作部、66 操向用駆動回路、68,70 ステアリングアクチュエータ、72 操向用駆動装置、74 支持フレーム、76 下側支持部、78 支持軸、80 上側支持部、82 操向用電動モータ、84 小歯車、86 大歯車、88 電動モータ、90 ウォーム軸、92 ウォームホイール、94 回転角度検出装置、96 エンコーダ、98 回転角度センサ、100 芝刈り機昇降位置検出センサ、102 シートスイッチ、104 傾斜センサ、106 ブレーキペダルセンサ、108 パーキングブレーキセンサ、110 操作/表示部、112 支持ハウジング、114 上側支持部、116 筒部、118 スリップリング、120 ケーブル、122 歯車機構、123 操向軸、124 上側回転軸、126 下側回転軸、128 中間回転軸、130 駆動側歯車、132 従動側歯車、134 チェーン、136 平歯車機構、137 キャスタトレイル、138 一方向クラッチ、140 エンコーダ、142 エンコーダ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2個の主駆動輪と、
操向輪であるキャスタ輪と、を備え、
少なくとも2個の主駆動輪は、走行用動力源により駆動する乗用型芝刈り車両であって、
切り替え手段を備え、
切り替え手段は、キャスタ輪を操向用動力源により強制的に操向する強制操向モードと、操向用動力源の動力発生を停止し、または操向用動力源からキャスタ輪への操向用の動力伝達を遮断してキャスタ輪の自由操向を可能とする自由操向モードとの、いずれかのモードへの切り替えを行うことを特徴とする乗用型芝刈り車両。
【請求項2】
請求項1に記載の乗用型芝刈り車両において、
切り替え手段は、運転者により操作する操向用操作部の操作量を検出する操作量検出部と、キャスタ輪の方向を検出するキャスタ輪方向検出部とからの検出信号がそれぞれ入力され、操作量検出部からの検出信号に対応するキャスタ輪の方向と、キャスタ輪方向検出部からの検出信号に対応するキャスタ輪の方向とが異なる場合に、自由操向モードから強制操向モードへ切り替えることを特徴とする乗用型芝刈り車両。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の乗用型芝刈り車両において、
少なくとも強制操向モードにおいて、キャスタ輪は、キャスタ輪走行用の動力源により駆動されることを特徴とする乗用型芝刈り車両。
【請求項4】
2個の主駆動輪と、
操向輪であるキャスタ輪と、を備え、
少なくとも2個の主駆動輪は、走行用動力源により駆動する乗用型芝刈り車両であって、
走行用動力源は電動モータであり、
電動モータ制御手段を備え、
電動モータ制御手段は、車両が傾斜面上で停止している場合に、電動モータの回転数が0でトルクを発生するように電動モータを制御することにより、車両のずり下がりを抑制することを特徴とする乗用型芝刈り車両。
【請求項5】
請求項4に記載の乗用型芝刈り車両において、
電動モータ制御手段は、車両の傾斜面上でのずり下がりを抑制するために、電動モータの回転数が0で発生するトルクを、電動モータに印加する電圧をパラメータとして制御することを特徴とする乗用型芝刈り車両。
【請求項6】
2個の主駆動輪と、
操向輪であるキャスタ輪と、を備え、
少なくとも2個の主駆動輪は、走行用動力源により駆動する乗用型芝刈り車両であって、
走行用動力源は電動モータであり、
制動部制御手段を備え、
制動部制御手段は、車両の傾斜面での発進時において、制動用操作部をオフにした場合でも、電動モータのトルクが傾斜面の角度に対応する所定トルクを超えた場合にのみ、制動部による制動を解除するように、制動部の制動状態を制御することを特徴とする乗用型芝刈り車両。
【請求項7】
2個の主駆動輪と、
操向輪であるキャスタ輪と、を備え、
少なくとも2個の主駆動輪は、走行用動力源により駆動する乗用型芝刈り車両であって、
切り替え手段を備え、
切り替え手段は、主駆動輪のスリップ率が所定値以上である場合に、主駆動輪のみを駆動する第1駆動モードから、主駆動輪とキャスタ輪との両方を駆動する第2駆動モードに切り替えることを特徴とする乗用型芝刈り車両。
【請求項8】
請求項7に記載の乗用型芝刈り車両において、
主駆動輪のスリップ率が所定値未満である場合には、キャスタ輪走行用の動力源の動力発生を停止し、またはキャスタ輪走行用の動力源からキャスタ輪への動力伝達を遮断することを特徴とする乗用型芝刈り車両。
【請求項9】
請求項7に記載の乗用型芝刈り車両において、
切り替え手段は、主駆動輪のみを駆動する第1駆動モードから、主駆動輪とキャスタ輪との両方を駆動する第2駆動モードに切り替わった後、主駆動輪を駆動するトルクが増大するのにしたがって、キャスタ輪を駆動するトルクであるアシストトルクが減少することにより、アシストトルクの大きさ、または主駆動輪を駆動するトルクに対するアシストトルクの割合が所定値未満となった場合に、第2駆動モードから第1駆動モードに切り替えることを特徴とする乗用型芝刈り車両。
【請求項10】
2個の主駆動輪と、
操向輪であるキャスタ輪と、を備え、
少なくとも2個の主駆動輪は、走行用動力源により駆動する乗用型芝刈り車両であって、
速度制御手段を備え、
速度制御手段は、車両の傾斜面降坂時において、車両のオーバーラン率が所定値以上である場合に、車両の速度を抑制するように主駆動輪走行用またはキャスタ輪走行用の走行用動力源を制御することを特徴とする乗用型芝刈り車両。
【請求項11】
2個の主駆動輪と、
操向輪であるキャスタ輪と、を備え、
少なくとも2個の主駆動輪は、走行用動力源により駆動する乗用型芝刈り車両であって、
切り替え手段を備え、
切り替え手段は、車両の傾斜面降坂時には、主駆動輪のみを駆動する第1駆動モードから、主駆動輪とキャスタ輪との両方を駆動する第2駆動モードに切り替えることを特徴とする乗用型芝刈り車両。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか1に記載の乗用型芝刈り車両において、
芝刈り機駆動用電動モータに電力を供給する電力供給源は、内燃機関により駆動する発電機と、燃料電池と、二次電池またはキャパシタである蓄電部とのうち、少なくともいずれか1であることを特徴とする乗用型芝刈り車両。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか1に記載の乗用型芝刈り車両において、
車両操向用の操作部は、ステアリングホイールと、ジョイスティックと、足踏み式ペダルと、操作レバーとのうちのいずれか1であるか、または、いずれか1を選択可能としていることを特徴とする乗用型芝刈り車両。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか1に記載の乗用型芝刈り車両において、
キャスタ輪の操向用と走行用との駆動状態とを制御する操向走行制御部を備え、
操向走行制御部は、キャスタ輪の所定の操向角度以上では、キャスタ輪走行用の動力源からキャスタ輪への動力伝達を遮断するか、またはキャスタ輪走行用の動力源の動力発生を停止して、キャスタ輪が自由走行状態になるように制御することを特徴とする乗用型芝刈り車両。
【請求項15】
請求項1から請求項14のいずれか1に記載の乗用型芝刈り車両において、
キャスタ輪は、左右2個を設けており、
少なくとも2個のキャスタ輪を操向用動力源により強制的に操向する強制操向モードにおいて、車両操向用の操作部の操作に応じて、2個のキャスタ輪を、互いに独立して操向用動力源により強制的に操向可能としていることを特徴とする乗用型芝刈り車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−168871(P2008−168871A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−6221(P2007−6221)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【出願人】(000125853)株式会社 神崎高級工機製作所 (210)
【Fターム(参考)】