説明

二流体ノズルユニットおよびそれを用いた基板処理装置

【課題】処理対象に応じた処理を施すことができる二流体ノズルユニットおよびそれをそなえた基板処理装置を提供する。
【解決手段】二流体ノズルユニット3は、DIWと窒素ガスとを混合させてDIWの液滴を形成する第1二流体ノズル9および第2二流体ノズル10と、これら第1および第2二流体ノズル9,10を一体保持するノズル保持部材11とを有している。第1二流体ノズル9からは小流量で窒素ガスが吐出されるようになっており、パターンへのダメージを抑制した処理をウエハWに施すことができる。また、第2二流体ノズルからは大流量で窒素ガスが吐出されるようになっており、パーティクル除去率の高い処理をウエハWに施すことができる。第1および第2二流体ノズル9,10から選択的にDIWの液滴を吐出させることにより、ウエハWの表面状態に応じた適切な処理を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、二流体ノズルユニットおよびそれを用いた基板処理装置に関する。処理対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程では、半導体ウエハ(以下、「ウエハ」という。)の表面の異物(パーティクル等)を除去するための洗浄処理が不可欠である。ウエハの表面を洗浄するための基板処理装置には、たとえば、処理液(洗浄液)と気体とを混合することにより処理液の液滴を形成し、この処理液の液滴をウエハの表面に供給して洗浄処理を行うものがある。
【0003】
具体的には、前記基板処理装置は、たとえば、ウエハを水平に保持して回転させるスピンチャックと、スピンチャックに保持されたウエハの表面に向けて処理液の液滴を噴射する二流体ノズルと、スピンチャックに保持されたウエハの上方で二流体ノズルを移動(スキャン)させるノズル移動機構とを備えている。二流体ノズルには、処理液を吐出する処理液吐出口と、気体を吐出する気体吐出口とが形成されている。
【0004】
二流体ノズルから噴射される処理液の液滴をウエハに衝突させることにより、ウエハの表面に付着している異物を、処理液の液滴の運動エネルギーにより、物理的に除去することができる。また、ウエハの上方で二流体ノズルをスキャンさせることにより、ウエハの表面の全域に処理液の液滴を供給することができる(たとえば、下記特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−270564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
処理液の液滴によってウエハの表面を物理的に洗浄する場合、その表面の状態に応じた流量で前記気体吐出口から気体を吐出させたいことがある。たとえばCVD膜が形成されたウエハのように、その表面にパターンが形成されていないウエハの場合、高いパーティクル除去率を得るために気体の流量を多くすることが好ましい。一方、パターンが表面に形成されているウエハの場合、パターンへのダメージを抑制するために、気体の流量を少なくすることが好ましい。
【0006】
気体の流量を少なくする場合には、小流量の気体で処理液の液滴を効率的に形成するために、気体吐出口の開口面積を小さくして気体の流速を高める必要がある。したがって、大流量に対応した二流体ノズルでは、小流量気体での効率的な液滴形成が困難になる。
一方、開口面積の小さい気体吐出口から大流量で気体を吐出させようとした場合、気体の圧力に損失が生じて所望の流量を得ることができないことがある。したがって、小流量に対応した二流体ノズルでは、十分なパーティクル除去性能を達成し難い。
【0007】
このように、一つの二流体ノズルでは、ほぼ一定流量の気体での液滴吐出しか行うことができず、ウエハの表面状態に応じた適切な処理を行うことができなかった。
同様の問題は、洗浄液によってウエハを洗浄する場合だけでなく、その他の処理液(たとえば薬液やリンス液、有機溶剤など)によってウエハの表面を処理する場合にも生じていた。
【0008】
この発明は、かかる背景のもとでなされたものであり、処理対象に応じた処理を施すことができる二流体ノズルユニットおよびそれをそなえた基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するための請求項1記載の発明は、処理液および気体が供給される第1ケーシング(26)、第1ケーシングに形成された処理液を吐出するための第1処理液吐出口(31)、および第1処理液吐出口を取り囲むように前記第1ケーシングに形成された気体を吐出するための環状の第1気体吐出口(32)を有し、第1ケーシング外で処理液と気体とを混合させて処理液の液滴を形成する第1二流体ノズル(9)と、処理液および気体が供給される第2ケーシング(26a)、第2ケーシングに形成された処理液を吐出するための第2処理液吐出口(31a)、および第2処理液吐出口を取り囲むように前記第2ケーシングに形成された気体を吐出するための環状の第2気体吐出口(32a)を有し、第2ケーシング外で処理液と気体とを混合させて処理液の液滴を形成する第2二流体ノズル(10)と、前記第1および第2二流体ノズルを一体的に保持するノズル保持部材(11)とを含み、第1および第2二流体ノズルの少なくとも一方から処理液の液滴を処理対象(W)に向けて吐出するようになっている、二流体ノズルユニット(3)である。
【0010】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
この発明によれば、処理液と気体とを混合させて処理液の液滴を形成する第1二流体ノズルおよび第2二流体ノズルと、これら第1および第2二流体ノズルを一体保持するノズル保持部材とを含む二流体ノズルユニットを設け、第1および第2二流体ノズルから処理対象に向けて選択的に処理液の液滴を吐出させることにより、前記液滴による処理対象への処理効果を変更することができる。たとえば、第1および第2二流体ノズルのいずれか一方から処理液の液滴を吐出させたり、第1および第2二流体ノズルの両方から処理液の液滴を吐出させたりすることにより、前記処理効果を変更することができる。これにより、処理対象の主面の状態に応じた前記液滴の供給を行い、処理対象に応じた適切な処理を処理対象に行うことができる。
【0011】
また、第1および第2二流体ノズルを一体保持する前記ノズル保持部材を設けることにより、各二流体ノズルに対応するノズル保持部材を個別に設けなくてもよいので、二流体ノズルユニットの構造を簡素化することができる。
処理液としては、たとえば、薬液、リンス液、有機溶剤などを用いることができる。
請求項2記載の発明は、前記第1気体吐出口は第1流量で気体を吐出するためのものであり、前記第2気体吐出口は、前記第1流量よりも大流量である第2流量で気体を吐出するためのものである、請求項1記載の二流体ノズルユニットである。
【0012】
この発明によれば、第1気体吐出口からの気体の吐出流量と、第2気体吐出口からの気体の吐出流量とを異ならせることにより、第1二流体ノズルから吐出された処理液の液滴による処理効果と、第2二流体ノズルから吐出された処理液の液滴による処理効果とを異ならせることができる。これにより、第1および第2二流体ノズルのいずれから処理液の液滴を吐出させるかを選択することにより、処理対象に応じた処理を行うことができる。
【0013】
具体的には、第2流量よりも小流量である第1流量で気体を吐出する第1二流体ノズルから処理対象に処理液の液滴を供給することにより、第2二流体ノズルよりも処理対象へのダメージを抑制した処理を行うことができる。一方、第1流量よりも大流量である第2流量で気体を吐出する第2二流体ノズルから処理対象に処理液の液滴を供給することにより、第1二流体ノズルよりも高異物除去率で処理対象から異物を除去することができる。また、第1および第2二流体ノズルの両方から処理対象に処理液の液滴を供給することにより、第2二流体ノズルのみから処理液の液滴を供給した場合よりも、さらに高い異物除去率で処理対象から異物を除去することができる。
【0014】
請求項3記載の発明は、前記第1気体吐出口の開口面積は、前記第2気体吐出口の開口面積よりも小さくされている、請求項1または2記載の二流体ノズルユニットである。
この発明によれば、第1気体吐出口の開口面積を第2気体吐出口の開口面積よりも小さくすることにより、第1気体吐出口から吐出される気体の流速を、第2気体吐出口から吐出される気体の流速よりも高めることができる。これにより、第1二流体ノズルを用いることによって、第2二流体ノズルを用いた場合よりも効率的に処理液の液滴を形成することができる。
【0015】
請求項4記載の発明は、前記第1二流体ノズルは、前記第1気体吐出口が前記第2気体吐出口よりも前記処理対象に近づくように前記ノズル保持部材に保持されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の二流体ノズルユニットである。
この発明によれば、第1気体吐出口が第2気体吐出口よりも処理対象に近づくように第1二流体ノズルをノズル保持部材に保持させることにより、両気体吐出口から同流量で気体を吐出する場合には、第2二流体ノズルから吐出された処理液の液滴が処理対象に衝突する際の勢いを、第1二流体ノズルから吐出された処理液の液滴による前記勢いよりも弱めることができる。これにより、第2二流体ノズルから吐出された処理液の液滴による処理対象へのダメージを、第1二流体ノズルから吐出された処理液の液滴による前記ダメージよりも低減させることができる。逆に、ダメージがあまり問題にならないときには、第1二流体ノズルを用いることによって高い異物除去効率を得ることができる。
【0016】
また、第1気体吐出口の開口面積を第2気体吐出口の開口面積よりも小さくし、この第1気体吐出口からの気体吐出流量を第2気体吐出口からの気体吐出流量よりも少なくする場合には、低ダメージが要求される処理対象に対して、第1二流体ノズルを用いることが好ましい。この場合、第1二流体ノズルは、処理対象の近くで液滴を形成するので、小流量の気体吐出によって効率的に形成された液滴を、高密度で処理対象へと導くことができる。一方、高い異物除去効率が必要な処理対象に対しては、第2二流体ノズルの第2気体吐出口から大流量で気体を吐出させ、高速な液滴流を処理対象へと供給することが好ましい。
【0017】
請求項5記載の発明は、前記第1および第2二流体ノズルは、少なくとも一方の二流体ノズルから吐出された処理液の液滴が前記処理対象に対して斜めに入射するように前記ノズル保持部材に保持されており、各二流体ノズルから前記処理対象への処理液の液滴の供給位置が同一位置にされている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の二流体ノズルユニットである。
【0018】
この発明によれば、第1および第2二流体ノズルの少なくとも一方から吐出された処理液の液滴が処理対象に対して斜めに入射するように第1および第2二流体ノズルをノズル保持部材に保持させることにより、各二流体ノズルから処理対象への前記液滴の供給位置を同一位置にすることができる。これにより、処理対象の同一位置に対して、第1または第2二流体ノズルのいずれからでも液滴を供給できる。また、第1および第2二流体ノズルの両方から処理液の液滴を吐出させた場合に、処理対象の所定位置に処理液の液滴を集中的に供給することができる。
【0019】
また、二流体ノズルユニットを処理対象に対して移動させることにより、前記供給位置を移動させて処理対象の主面全域に処理液の液滴を供給する場合に、いずれか一方の二流体ノズルからの前記供給位置が処理対象の主面全域を通過するように二流体ノズルユニットの移動経路を設定することにより、他方の二流体ノズルからの前記供給位置も処理対象の主面全域を通過させることができる。これにより、いずれの二流体ノズルから処理液の液滴を吐出させるかに係わらず、一定の移動経路で二流体ノズルユニットを移動させればよいので、二流体ノズルユニットの移動経路の設定が容易である。
【0020】
請求項6記載の発明は、前記第1二流体ノズルは、第1二流体ノズルから吐出された処理液の液滴が前記処理対象に対して垂直に入射するように前記ノズル保持部材に保持されており、前記第2二流体ノズルは、第2二流体ノズルから吐出された処理液の液滴が前記処理対象に対して斜めに入射するように前記ノズル保持部材に保持されている、請求項5記載の二流体ノズルユニットである。
【0021】
この発明によれば、第1二流体ノズルから吐出された処理液の液滴が処理対象に対して垂直に入射するように第1二流体ノズルをノズル保持部材に保持させることにより、第1二流体ノズルから吐出された処理液の液滴による処理対象へのダメージを抑制することができる。
また、第2二流体ノズルから吐出された処理液の液滴が処理対象に対して斜めに入射するように第2二流体ノズルをノズル保持部材に保持させることにより、第2二流体ノズルから吐出された処理液の液滴による前記異物除去率を向上させることができる。
【0022】
請求項7記載の発明は、処理対象の基板(W)を保持して回転させるための基板回転手段(2)と、前記基板回転手段によって回転されている基板の主面に、処理液の液滴を供給するための請求項1〜6のいずれか一項に記載の二流体ノズルユニットと、前記第1二流体ノズルに処理液を供給するための第1処理液供給手段(13)と、前記第2二流体ノズルに処理液を供給するための第2処理液供給手段(17)と、前記第1二流体ノズルに気体を供給するための第1気体供給手段(14)と、前記第2二流体ノズルに気体を供給するための第2気体供給手段(18)と、前記二流体ノズルユニットを前記基板の主面に沿って移動させるためのノズル移動手段(21)と、前記第1および第2処理液供給手段ならびに第1および第2気体供給手段を制御して、第1および第2二流体ノズルの少なくとも一方から前記基板回転手段に保持された基板に向けて処理液の液滴を吐出させるための制御手段(34)とを含む、基板処理装置(1)である。
【0023】
この発明によれば、第1処理液供給手段および第1気体供給手段からそれぞれ処理液および気体を第1二流体ノズルの第1ケーシングに供給して、第1二流体ノズルから処理液および気体を吐出させることにより、処理液および気体を第1ケーシング外で混合させて処理液の液滴を形成することができる。また、第2処理液供給手段および第2気体供給手段からそれぞれ処理液および気体を第2二流体ノズルの第2ケーシングに供給して、第2二流体ノズルから処理液および気体を吐出させることにより、処理液および気体を第2ケーシング外で混合させて処理液の液滴を形成することができる。
【0024】
そして、この第1および第2二流体ノズルの少なくとも一方から、基板回転手段によって保持され回転されている基板の主面に処理液の液滴を供給しつつ、前記二流体ノズルユニットをノズル移動手段によって前記主面に沿って移動させることにより、前記主面の全域に処理液の液滴を供給して処理液による処理を施すことができる。
前述のように、第1および第2二流体ノズルから選択的に処理液の液滴を吐出させることにより、前記液滴による処理対象への処理効果を変更することができる。したがって、処理対象である基板の主面の状態に応じた液滴供給を行い、処理対象に応じた適切な処理を基板に施すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下では、この発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置1の構成を説明するための図解図である。この基板処理装置1は、処理対象の基板としての半導体ウエハW(以下、単に「ウエハW」という。)に処理液(薬液、リンス液、有機溶剤など)による処理を施すための枚葉式の処理装置であり、ウエハWを水平に保持して回転させるスピンチャック2と、スピンチャック2に保持されたウエハWの表面(上面)に処理液の液滴を供給するための二流体ノズルユニット3と、スピンチャック2に保持されたウエハWの表面に処理液を供給する処理液ノズル4とを備えている。
【0026】
スピンチャック2は、鉛直な方向に延びる回転軸5と、回転軸5の上端に水平に取り付けられた円板状のスピンベース6とを有している。スピンチャック2は、スピンベース6の上面周縁部に立設された複数本のチャックピン7によって、ウエハWをほぼ水平に保持することができるようになっている。
すなわち、複数本のチャックピン7は、スピンベース6の上面周縁部において、ウエハWの外周形状に対応する円周上で適当な間隔をあけて配置されており、ウエハWの裏面(下面)周縁部を支持しつつ、ウエハWの周面の異なる位置に当接することにより、互いに協働してウエハWを挟持し、このウエハWをほぼ水平に保持することができる。
【0027】
また、回転軸5には、モータなどの駆動源を含むチャック回転駆動機構8が結合されている。複数本のチャックピン7でウエハWを保持しつつ、チャック回転駆動機構8から回転軸5に駆動力を入力することにより、ウエハWの表面の中心を通る鉛直な軸線まわりにウエハWを回転させることができる。
なお、スピンチャック2としては、このような構成のものに限らず、たとえば、ウエハWの裏面を真空吸着することによりウエハWをほぼ水平な姿勢で保持し、さらにその状態でほぼ鉛直な軸線まわりに回転することにより、その保持したウエハWを回転させることができる真空吸着式のもの(バキュームチャック)が採用されてもよい。
【0028】
二流体ノズルユニット3は、スピンチャック2に保持されたウエハWの表面に処理液の液滴を供給する第1二流体ノズル9および第2二流体ノズル10と、第1および第2二流体ノズル9,10を一体保持するノズル保持部材11とを有する。第1および第2二流体ノズル9,10は、各二流体ノズル9,10のケーシング外で処理液と気体とを混合させて処理液の液滴を形成する外部混合型の二流体ノズルであり、それぞれほぼ同一の構成を備えている。ノズル保持部材11は、第1および第2二流体ノズル9,10の吐出口がウエハW側(下方)となるように、ほぼ水平に延びるアーム12の先端に取り付けられている。
【0029】
第1二流体ノズル9には、第1DIW供給管13および第1窒素ガス供給管14が接続されている。第1DIW供給管13からは所定の流量(たとえば、100〜150mL/min)でリンス液(処理液)としてのDIW(脱イオン化された水)が第1二流体ノズル9に供給されるようになっている。第1窒素ガス供給管14からは所定の小流量(たとえば、40L/min未満、好ましくは5〜40L/min。具体的には、たとえば15L/min)で窒素ガスが第1二流体ノズル9に供給されるようになっている。
【0030】
第1DIW供給管13および第1窒素ガス供給管14には、それぞれ、第1DIWバルブ15および第1窒素ガスバルブ16が介装されており、各バルブ15,16を開閉することにより、第1二流体ノズル9へのDIWおよび窒素ガスの供給を制御することができる。
一方、第2二流体ノズル10には、第2DIW供給管17および第2窒素ガス供給管18が接続されている。第2DIW供給管17からは所定の流量(たとえば、100〜150mL/min)でDIWが第2二流体ノズル10に供給されるようになっている。第2窒素ガス供給管18からは所定の大流量(たとえば、50L/min以上、好ましくは50〜150L/min。具体的には、たとえば80L/min)で窒素ガスが第2二流体ノズル10に供給されるようになっている。
【0031】
第2DIW供給管17および第2窒素ガス供給管18には、それぞれ、第2DIWバルブ19および第2窒素ガスバルブ20が介装されており、各バルブ19,20を開閉することにより、第2二流体ノズル10へのDIWおよび窒素ガスの供給を制御することができる。
また、二流体ノズルユニット3には、アーム12を介して二流体ノズル移動機構21が結合されている。この二流体ノズル移動機構21によって、スピンチャック2の外方に設けられた鉛直な揺動軸まわりにアーム12を水平揺動させることができるようになっている。これにより、アーム12の先端に取り付けられた二流体ノズルユニット3を、スピンチャック2に保持されたウエハWの上方に配置したり、スピンチャック2の上方から退避させたりすることができる。
【0032】
また、二流体ノズル移動機構21によって二流体ノズルユニット3を水平移動させることにより、各二流体ノズル9,10からウエハWの表面への前記液滴の供給位置を、スピンチャック2に保持されたウエハWの表面の中心部から周縁部に至る範囲でスキャン(移動)させることができる。
処理液ノズル4は、たとえば、連続流の状態で処理液を吐出するストレートノズルであり、その吐出口をウエハW側(下方)に向けた状態で、ほぼ水平に延びるアーム22の先端に取り付けられている。処理液ノズル4には、DIW供給管23が接続されており、DIW供給管23からDIWが処理液ノズル4に供給されるようになっている。DIW供給管23には、DIWバルブ24が介装されており、このDIWバルブ24を開閉することにより、処理液ノズル4へのDIWの供給を制御することができる。
【0033】
また、処理液ノズル4には、アーム22を介して処理液ノズル移動機構25が結合されている。この処理液ノズル移動機構25によって、スピンチャック2の外方に設けられた鉛直な揺動軸まわりにアーム22を水平揺動させることができるようになっている。これにより、アーム22の先端に取り付けられた処理液ノズル4を、スピンチャック2に保持されたウエハWの上方に配置したり、スピンチャック2の上方から退避させたりすることができる。
【0034】
図2は、二流体ノズルユニット3を含む前記基板処理装置1の要部を図解的に示す図である。
第1および第2二流体ノズル9,10は、前述のように、その吐出口がウエハW側となるようにノズル保持部材11に保持されている。第1二流体ノズル9は、その中心軸線L1がほぼ鉛直となるようにノズル保持部材11に保持されており、第1二流体ノズル9から吐出された処理液の液滴は、二流体ノズルユニット3の下方に配置されたウエハWの表面にほぼ垂直に入射するようになっている。一方、第2二流体ノズル10は、その中心軸線L2が傾けられた状態でノズル保持部材11に保持されており、水平方向を基準とした第2二流体ノズル10の中心軸線L2の傾斜角度は、たとえば0〜80度(好ましくは30度)にされている。第2二流体ノズル10から吐出された処理液の液滴は、前記傾斜角度でウエハWの表面に入射するようになっている。第1および第2二流体ノズル9,10は、各二流体ノズル9,10から吐出された処理液の液滴がウエハWの表面の同一位置に供給されるようにノズル保持部材11に保持されている。
【0035】
また、第1二流体ノズル9は、その先端(下端)が第2二流体ノズル10の先端(下端)よりもウエハWに近づくようにノズル保持部材11に保持されている。具体的には、第1二流体ノズル9の中心軸線L1に沿う、第1二流体ノズル9の先端からウエハWまでの距離X1は、たとえば3〜20mm(好ましくは6mm)にされており、第2二流体ノズル10の中心軸線L2に沿う、第2二流体ノズル10の先端からウエハWまでの距離X2は、たとえば5〜20mm(好ましくは10mm)にされている。
【0036】
図3は、第1および第2二流体ノズル9,10の構造を図解的に示す図である。図3(a)は、第1および第2二流体ノズル9,10の縦断面を示し、図3(b)は、スピンチャック2側から見た第1および第2二流体ノズル9,10の底面を示している。また、図3(b)において、ハッチングが施された範囲は、後述の第1処理液吐出口31、第1気体吐出口32、第2処理液吐出口31aおよび第2気体吐出口32aを示している。
【0037】
以下では、第1二流体ノズル9の構造について説明するが、第2二流体ノズル10は第1二流体ノズル9とほぼ同じ構造を有している。また、括弧内に、第2二流体ノズル10に対応する構成の名称を示す。
第1二流体ノズル9は、ほぼ円柱状の外形を有しており、ケーシングを構成する外筒26(外筒26a)と、外筒26(外筒26a)の内部に嵌め込まれた内筒27(内筒27a)とを含む。内筒27(内筒27a)および外筒26(外筒26a)は、それぞれ共通の中心軸線L1(中心軸線L2)上に同軸配置されており、互いに連結されている。
【0038】
内筒27(内筒27a)の内部空間は、第1DIW供給管13(第2DIW供給管17)からのDIWが流通する直線状の処理液流路28となっている。また、内筒27(内筒27a)と外筒26(外筒26a)との間には、第1窒素ガス供給管14(第2窒素ガス供給管18)からの窒素ガスが流通する円筒状の気体流路29が形成されている。
処理液流路28は、内筒27(内筒27a)の上端で処理液導入口30として開口しており、この処理液導入口30を介して、第1DIW供給管13(第2DIW供給管17)からのDIWが処理液流路28内に導入されるようになっている。また、処理液流路28は、内筒27(内筒27a)の下端で、中心軸線L1(中心軸線L2)上に中心を有する円状の第1処理液吐出口31(第2処理液吐出口31a)として開口している。処理液流路28に導入されたDIWは、この第1処理液吐出口31(第2処理液吐出口31a)から吐出されるようになっている。
【0039】
気体流路29は、中心軸線L1(中心軸線L2)と共通の中心軸線を有する円筒状の間隙であり、内筒27(内筒27a)および外筒26(外筒26a)の上端部で閉塞され、内筒27(内筒27a)および外筒26(外筒26a)の下端で、中心軸線L1(中心軸線L2)上に中心を有し、第1処理液吐出口31(第2処理液吐出口31a)を取り囲む円環状の第1気体吐出口32(第2気体吐出口32a)として開口している。気体流路29の下端部は、気体流路29の長さ方向における中間部よりも流路面積が小さくされ、下方に向かって小径となっている。
【0040】
また、外筒26(外筒26a)の中間部には、気体流路29に連通する気体導入口33が形成されている。気体導入口33には、外筒26(外筒26a)を貫通した状態で第1窒素ガス供給管14(第2窒素ガス供給管18)が接続されており、第1窒素ガス供給管14(第2窒素ガス供給管18)の内部空間と気体流路29とは連通されている。第1窒素ガス供給管14(第2窒素ガス供給管18)からの窒素ガスは、この気体導入口33を介して気体流路29に導入され、第1気体吐出口32(第2気体吐出口32a)から吐出されるようになっている。
【0041】
第1気体吐出口32の開口面積は、第2気体吐出口32aの開口面積よりも小さくされている。具体的には、たとえば、第1気体吐出口32の幅a1(=(外径−内径)/2)が0.1mm以下にされ、第2気体吐出口32aの幅b1(=(外径−内径)/2)が0.1mmを超える値にされている。以下に、第1気体吐出口32の幅a1および第1処理液吐出口31の直径c1、または第2気体吐出口32aの幅b1および第2処理液吐出口31aの直径d1の具体的な数値を例示する。
【0042】
(例1)第1気体吐出口32の幅a1=0.3mm、第1処理液吐出口31の直径c1=2.6mm
(例2)第1気体吐出口32の幅a1=0.2mm、第1処理液吐出口31の直径c1=2.4mm
(例3)第2気体吐出口32aの幅b1=0.5mm、第2処理液吐出口31aの直径d1=3.1mm
第1処理液吐出口31(第2処理液吐出口31a)からDIWを吐出させつつ、第1気体吐出口32(第2気体吐出口32a)から窒素ガスを吐出させることにより、第1二流体ノズル9(第2二流体ノズル10)の近傍でDIWに窒素ガスを衝突させてDIWの液滴を形成することができる。そして、このDIWの液滴は、噴流となってウエハWの表面に衝突する。これにより、ウエハWの表面に付着しているパーティクルなどの異物がDIWの液滴の運動エネルギーによって物理的に除去される。
【0043】
図4は、前記基板処理装置1の電気的構成を説明するためのブロック図である。この基板処理装置1は、制御装置34を備えている。制御装置34は、チャック回転駆動機構8、二流体ノズル移動機構21および処理液ノズル移動機構25の動作を制御する。また、制御装置34は、第1DIWバルブ15、第1窒素ガスバルブ16、第2DIWバルブ19、第2窒素ガスバルブ20およびDIWバルブ24の開閉を制御する。
【0044】
図5は、前記基板処理装置1によるウエハWの処理の一例について説明するための図である。以下では、その表面にパターンが形成されたウエハWを処理する場合について説明する。
処理対象のウエハWは、図示しない搬送ロボットによって搬送されてきて、搬送ロボットからスピンチャック2へと受け渡される。ウエハWがスピンチャック2に受け渡されると、制御装置34は、チャック回転駆動機構8を制御して、スピンチャック2に保持されたウエハWを所定の回転速度(たとえば、500〜1500rpm)で回転させる。また、制御装置34は、処理液ノズル移動機構25を制御して、処理液ノズル4を水平移動させることにより、回転されているウエハWの表面の回転中心に、処理液ノズル4を対向させる。
【0045】
その後、制御装置34は、第1DIWバルブ15、第1窒素ガスバルブ16、第2DIWバルブ19および第2窒素ガスバルブ20を閉じるとともに、DIWバルブ24を開いて、処理液ノズル4からDIWを吐出させる。これにより、図5(a)に示すように、前記回転中心を含む範囲にDIWが供給される。ウエハWの表面に供給されたDIWは、ウエハWの回転による遠心力を受けてウエハWの表面全域に行き渡る。これにより、ウエハWの表面全域にプリウェット処理が施される。
【0046】
DIWの供給が所定のプリウェット処理時間(たとえば、5〜60sec)に亘って行われると、制御装置34は、チャック回転駆動機構8を制御して、スピンチャック2に保持されたウエハWの回転速度を所定の回転速度(たとえば、500〜2500rpm)に変更させる。そして、制御装置34は、処理液ノズル移動機構25を制御して、処理液ノズル4からDIWを吐出させつつ処理液ノズル4を水平移動させることにより、処理液ノズル4からウエハWの表面へのDIWの供給位置を、前記回転中心から離れた位置に移動させる。具体的には、たとえば、前記回転中心から直線距離で75mm離れた位置に前記供給位置を移動させる。
【0047】
その後、制御装置34は、二流体ノズル移動機構21を制御して、二流体ノズルユニット3と処理液ノズル4とが干渉しないウエハWの上方に二流体ノズルユニット3を配置させる。そして、制御装置34は、第1DIWバルブ15および第1窒素ガスバルブ16を開いて、図5(b)に示すように、第1二流体ノズル9からDIWおよび窒素ガスを吐出させる。吐出されたDIWは、窒素ガスと混合されてDIWの液滴となり、ウエハWの表面に衝突する。これにより、第1二流体ノズル9からのDIWの液滴と、処理液ノズル4からのカバーリンス液としてのDIW(液滴と同種の液体)とが回転されているウエハWの表面に同時に供給される。
【0048】
また、制御装置34は、第1二流体ノズル9からウエハWの表面にDIWの液滴を供給しつつ、二流体ノズル移動機構21を制御して、二流体ノズルユニット3を水平移動させることにより、ウエハWの表面へのDIWの液滴の供給位置を、ウエハWの表面の中心部から周縁部に至る範囲でスキャンさせる。これにより、ウエハWの表面全域にDIWの液滴が均一に供給され、パーティクルなどの異物がウエハWの表面から物理的に除去される(液滴処理)。
【0049】
ウエハWの表面に供給されたDIWの液滴は、第1処理液吐出口31から吐出されたDIWと、第1気体吐出口32から前記所定の小流量で吐出された窒素ガスとが混合されて形成されたものである。したがって、ウエハWの表面に形成されたパターンへのダメージを抑制しつつ、ウエハWの表面から異物を良好に除去することができる。また、第1二流体ノズル9の先端はウエハWの表面に近接されている(前記距離X1が3〜20mmにされている)ので、生成された液滴が効率的にウエハW表面に到達し、ウエハW表面における液滴密度を高く維持することができる。これにより、十分な異物除去性能を確保できる。さらに、第1気体吐出口32の開口面積は小さくされている(幅a1が0.1以下mmにされている)ので、窒素ガスの吐出流量が前記所定の小流量であっても、窒素ガスの流速を高めてDIWの液滴を効率的に形成することができる。これにより、多数の液滴を基板Wに到達させることができ、必要な異物除去性能を確保できる。
【0050】
DIWの液滴の供給が所定の液滴処理時間(たとえば、5〜60sec)に亘って行われると、制御装置34は、チャック回転駆動機構8を制御して、スピンチャック2に保持されたウエハWの回転速度を所定の回転速度(たとえば、500〜1500rpm)に変更させる。そして、制御装置34は、第1DIWバルブ15および第1窒素ガスバルブ16を閉じて、第1二流体ノズル9からのDIWおよび窒素ガスの吐出を停止させる。その後、制御装置34は、二流体ノズル移動機構21を制御して、二流体ノズルユニット3をウエハWの上方から退避させる。
【0051】
二流体ノズルユニット3がウエハWの上方から退避させられると、制御装置34は、処理液ノズル移動機構25を制御して、処理液ノズル4からDIWを吐出させつつ処理液ノズル4を水平移動させることにより、図5(c)に示すように、再び処理液ノズル4を前記回転中心に対向させる。これにより、処理液ノズル4から前記回転中心を含む範囲にDIWが供給され、ウエハWの表面全域にリンス処理が施される。
【0052】
DIWの供給が所定のリンス処理時間(たとえば、5〜60sec)に亘って行われると、制御装置34は、DIWバルブ24を閉じて、処理液ノズル4からのDIWの吐出を停止させる。その後、制御装置34は、処理液ノズル移動機構25を制御して、処理液ノズル4をウエハWの上方から退避させる。そして、制御装置34は、図5(d)に示すように、チャック回転駆動機構8を制御して、スピンチャック2に保持されたウエハWの回転速度を所定の高回転速度(たとえば、2500〜4000rpm)に変更させる。これにより、ウエハWの表面に付着しているDIWが、ウエハWの回転による遠心力を受けてウエハWの周囲に振り切られ、ウエハWの表面が乾燥する(スピンドライ処理)。
【0053】
スピンドライ処理が所定のスピンドライ処理時間(たとえば、20〜60sec)に亘って行われると、制御装置34は、チャック回転駆動機構8を制御して、ウエハWの回転を停止させる。そして、図示しない搬送ロボットによって、スピンチャック2から処理後のウエハWが搬送されていく。
図6は、前記基板処理装置1によるウエハWの処理の他例について説明するための図である。以下では、その表面にパターンが形成されていないウエハWを処理する場合について説明する。
【0054】
処理対象のウエハWは、図示しない搬送ロボットによって搬送されてきて、搬送ロボットからスピンチャック2へと受け渡される。ウエハWがスピンチャック2に受け渡されると、制御装置34は、チャック回転駆動機構8を制御して、スピンチャック2に保持されたウエハWを所定の回転速度(たとえば、500〜1500rpm)で回転させる。また、制御装置34は、処理液ノズル移動機構25を制御して、処理液ノズル4を水平移動させることにより、回転されているウエハWの表面の回転中心に、処理液ノズル4を対向させる。
【0055】
その後、制御装置34は、第1DIWバルブ15、第1窒素ガスバルブ16、第2DIWバルブ19および第2窒素ガスバルブ20を閉じるとともに、DIWバルブ24を開いて、処理液ノズル4からDIWを吐出させる。これにより、図6(a)に示すように、前記回転中心を含む範囲にDIWが供給される。ウエハWの表面に供給されたDIWは、ウエハWの回転による遠心力を受けてウエハWの表面全域に行き渡る。これにより、ウエハWの表面全域にプリウェット処理が施される。
【0056】
DIWの供給が所定のプリウェット処理時間(たとえば、5〜60sec)に亘って行われると、制御装置34は、チャック回転駆動機構8を制御して、スピンチャック2に保持されたウエハWの回転速度を所定の回転速度(たとえば、500〜2500rpm)に変更させる。そして、制御装置34は、処理液ノズル移動機構25を制御して、処理液ノズル4からDIWを吐出させつつ処理液ノズル4を水平移動させることにより、処理液ノズル4からウエハWの表面へのDIWの供給位置を、前記回転中心から離れた位置に移動させる。具体的には、たとえば、前記回転中心から直線距離で75mm離れた位置に前記供給位置を移動させる。
【0057】
その後、制御装置34は、二流体ノズル移動機構21を制御して、二流体ノズルユニット3と処理液ノズル4とが干渉しないウエハWの上方に二流体ノズルユニット3を配置させる。そして、制御装置34は、第2DIWバルブ19および第2窒素ガスバルブ20を開いて、図6(b)に示すように、第2二流体ノズル10からDIWおよび窒素ガスを吐出させる。吐出されたDIWは、窒素ガスと混合されてDIWの液滴となり、ウエハWの表面に衝突する。これにより、第2二流体ノズル10からのDIWの液滴と、処理液ノズル4からのカバーリンス液としてのDIW(液滴と同種の液体)とが回転されているウエハWの表面に同時に供給される。
【0058】
また、制御装置34は、第2二流体ノズル10からウエハWの表面にDIWの液滴を供給しつつ、二流体ノズル移動機構21を制御して、二流体ノズルユニット3を水平移動させることにより、ウエハWの表面へのDIWの液滴の供給位置を、ウエハWの表面の中心部から周縁部に至る範囲でスキャンさせる。これにより、ウエハWの表面全域にDIWの液滴が均一に供給され、パーティクルなどの異物がウエハWの表面から物理的に除去される(液滴処理)。
【0059】
ウエハWの表面に供給されたDIWの液滴は、第2処理液吐出口31aから吐出されたDIWと、第2気体吐出口32aから前記所定の大流量で吐出された窒素ガスとが混合されて形成されたものである。したがって、高パーティクル除去率でウエハWの表面からパーティクル等を除去することができる。また、第2二流体ノズル10から吐出されたDIWの液滴はウエハWの表面に対して傾斜した方向から入射するようにされているので、第1二流体ノズル10と同一位置への処理が可能であり、かつ、パーティクル除去率がより高められている。
【0060】
さらに、第2二流体ノズル10からウエハWの表面へのDIWの液滴の供給位置は、第1二流体ノズル9からの前記供給位置と同一位置にされているので、第1二流体ノズル9からウエハWの表面にDIWの液滴を供給する場合と同じ移動経路で二流体ノズルユニット3を移動させることにより、第2二流体ノズル10から吐出されたDIWの液滴をウエハWの表面全域に供給することができる。すなわち、いずれの二流体ノズル9,10からウエハWの表面にDIWの液滴を供給する場合であっても、一定の移動経路で二流体ノズルユニット3を移動させることによりウエハWの表面全域にDIWの液滴を供給することができる。
【0061】
DIWの液滴の供給が所定の液滴処理時間(たとえば、5〜60sec)に亘って行われると、制御装置34は、チャック回転駆動機構8を制御して、スピンチャック2に保持されたウエハWの回転速度を所定の回転速度(たとえば、500〜1500rpm)に変更させる。そして、制御装置34は、第2DIWバルブ19および第2窒素ガスバルブ20を閉じて、第2二流体ノズル10からのDIWおよび窒素ガスの吐出を停止させる。その後、制御装置34は、二流体ノズル移動機構21を制御して、二流体ノズルユニット3をウエハWの上方から退避させる。
【0062】
二流体ノズルユニット3がウエハWの上方から退避させられると、制御装置34は、処理液ノズル移動機構25を制御して、処理液ノズル4からDIWを吐出させつつ処理液ノズル4を水平移動させることにより、図6(c)に示すように、再び処理液ノズル4を前記回転中心に対向させる。これにより、処理液ノズル4から前記回転中心を含む範囲にDIWが供給され、ウエハWの表面全域にリンス処理が施される。
【0063】
DIWの供給が所定のリンス処理時間(たとえば、5〜60sec)に亘って行われると、制御装置34は、DIWバルブ24を閉じて、処理液ノズル4からのDIWの吐出を停止させる。その後、制御装置34は、処理液ノズル移動機構25を制御して、処理液ノズル4をウエハWの上方から退避させる。そして、制御装置34は、図6(d)に示すように、チャック回転駆動機構8を制御して、スピンチャック2に保持されたウエハWの回転速度を所定の高回転速度(たとえば、2500〜4000rpm)に変更させる。これにより、ウエハWの表面に付着しているDIWが、ウエハWの回転による遠心力を受けてウエハWの周囲に振り切られ、ウエハWの表面が乾燥する(スピンドライ処理)。
【0064】
スピンドライ処理が所定のスピンドライ処理時間(たとえば、20〜60sec)に亘って行われると、制御装置34は、チャック回転駆動機構8を制御して、ウエハWの回転を停止させる。そして、図示しない搬送ロボットによって、スピンチャック2から処理後のウエハWが搬送されていく。
図7は、前記基板処理装置1を用いてウエハWを処理した場合における窒素ガスの吐出流量とパーティクル除去率との関係を示す図である。パーティクル除去率は、処理前後のウエハWの表面に付着しているパーティルの数をそれぞれ測定することにより求めた。第1二流体ノズル9は、第1処理液吐出口31および第1気体吐出口32が前記例1の寸法に設定されているものを用いた。第2二流体ノズル10は、第2処理液吐出口31aおよび第2気体吐出口32aが前記例3の寸法に設定されているものを用いた。
【0065】
図7に示すように、第2二流体ノズル10を用いて前記所定の大流量で吐出された窒素ガスとDIWとを混合させて形成されたDIWの液滴をウエハの表面に供給することにより、約80%以上の高パーティクル除去率を得ることができた。
また、第1二流体ノズル9を用いて前記所定の小流量で吐出された窒素ガスとDIWとを混合させて形成されたDIWの液滴をウエハの表面に供給することにより、パーティクル除去率を所定範囲内に維持しつつ、パターンのダメージを抑制することができた。
【0066】
以上のように本実施形態では、互いに処理効果の異なる第1および第2二流体ノズル9,10を設け、第1および第2二流体ノズル9,10から選択的にDIWの液滴を吐出させつつ、ノズル保持部材11によって第1および第2二流体ノズル9,10を一体移動させることにより、ウエハWの表面状態に応じたDIWの液滴を当該表面の全域に供給することができる。これにより、ウエハの表面全域に適切な処理を施すことができる。
【0067】
この発明は、以上の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。たとえば、前述のウエハWの処理では、第1二流体ノズル9または第2二流体ノズル10からDIWの液滴を吐出させる例について説明したが、制御装置34によって、第1および第2DIWバルブ15,19ならびに第1および第2窒素ガスバルブ16,20を開いて、第1および第2二流体ノズル9,10の両方からDIWの液滴をウエハWの表面に供給してもよい。この場合、第1および第2二流体ノズル9,10からウエハWの表面へのDIWの液滴の供給位置が同一位置となるようにされているので、ウエハWの表面にDIWの液滴を集中的に供給して、さらに高いパーティクル除去率でウエハWの表面から異物を除去することができる。
【0068】
また、前述の実施形態では、第1および第2二流体ノズル9,10ならびに処理液ノズル4から吐出される処理液としてリンス液(DIW)を例示したが、リンス液に限らず、薬液や有機溶剤などを処理液として用いてもよい(図1参照)。また、リンス液はDIWに限らず、その他のリンス液を用いてもよい。さらに、これらの処理液は加熱されていてもよい。この場合、たとえば、第1および第2DIW供給管13,17ならびにDIW供給管23のそれぞれに温調ユニット35を介装し(図1参照)、この温調ユニット35を制御装置34によって制御することにより(図3参照)、第1および第2二流体ノズル9,10ならびに処理液ノズル4から加熱された処理液(DIW)を吐出させてもよい。
【0069】
前記薬液としては、たとえば、SC1(アンモニアと過酸化水素水との混合液)、SC2(塩酸と過酸化水素水との混合液)、ポリマー除去液、DHF(希フッ酸)、王水(濃塩酸と濃硝酸との混合液)、硫酸、TMAH(テトラ・メチル・アンモニウム・ハイドロオキサイド:水酸化テトラメチルアンモニウム)などが挙げられる。
前記有機溶剤としては、たとえば、IPA(イソプロピルアルコール)、NMP(N−メチルピロリドン)、アセトン、シクロヘキサン、エチレンカーボネートなどが挙げられる。
【0070】
前記その他のリンス液としては、たとえば、オゾン水、アンモニア水、水素水などが挙げられる。
また、前述の実施形態では、第1および第2二流体ノズル9,10から吐出される気体として、窒素ガスを例示したが、窒素ガスに限らず、窒素ガスと水素ガスとの混合ガス、アルゴンガス、炭酸ガス、ヘリウムガス、酸素ガスなどを用いてもよい。また、これらの気体は加熱されていてもよい。この場合、たとえば、第1および第2窒素ガス供給管のそれぞれに温調ユニット36を介装し(図1参照)、この温調ユニット36を制御装置34によって制御することにより(図3参照)、第1および第2二流体ノズル9,10から加熱された気体(窒素ガス)を吐出させてもよい。
【0071】
また、前述実施形態では、ほぼ水平に保持され回転させられているウエハWの表面に処理液を供給して当該ウエハWを処理するものを取り上げたが、回転していない状態(非回転状態)のウエハWの表面に処理液を供給してウエハWを処理するものであってもよい。なお、前記非回転状態のウエハWとは、回転も移動もしていない状態(静止状態)のウエハWであってもよいし、回転せずに所定の方向に移動している状態(移動状態)のウエハWであってもよい。
【0072】
また、前述実施形態では、処理対象の基板として半導体ウエハWを取り上げたが、半導体ウエハWに限らず、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板などの他の種類の基板が処理対象とされてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の一実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するための図解図である。
【図2】二流体ノズルユニットを含む前記基板処理装置の要部を図解的に示す図である。
【図3】第1および第2二流体ノズルの構造を図解的に示す図である。
【図4】前記基板処理装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。
【図5】前記基板処理装置によるウエハの処理の一例について説明するための図である。
【図6】前記基板処理装置によるウエハの処理の他例について説明するための図である。
【図7】前記基板処理装置を用いてウエハを処理した場合における窒素ガスの吐出流量とパーティクル除去率との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0074】
1 基板処理装置
2 スピンチャック(基板回転手段)
3 二流体ノズルユニット
9 第1二流体ノズル
10 第2二流体ノズル
11 ノズル保持部材
13 第1DIW供給管(第1処理液供給手段)
14 第1窒素ガス供給管(第1気体供給手段)
17 第2DIW供給管(第2処理液供給手段)
18 第2窒素ガス供給管(第2気体供給手段)
21 二流体ノズル移動機構(ノズル移動手段)
26 外筒(第1ケーシング)
26a 外筒(第2ケーシング)
31 第1処理液吐出口
31a 第2処理液吐出口
32 第1気体吐出口
32a 第2気体吐出口
34 制御装置(制御手段)
W ウエハ(処理対象、基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液および気体が供給される第1ケーシング、第1ケーシングに形成された処理液を吐出するための第1処理液吐出口、および第1処理液吐出口を取り囲むように前記第1ケーシングに形成された気体を吐出するための環状の第1気体吐出口を有し、第1ケーシング外で処理液と気体とを混合させて処理液の液滴を形成する第1二流体ノズルと、
処理液および気体が供給される第2ケーシング、第2ケーシングに形成された処理液を吐出するための第2処理液吐出口、および第2処理液吐出口を取り囲むように前記第2ケーシングに形成された気体を吐出するための環状の第2気体吐出口を有し、第2ケーシング外で処理液と気体とを混合させて処理液の液滴を形成する第2二流体ノズルと、
前記第1および第2二流体ノズルを一体的に保持するノズル保持部材とを含み、
第1および第2二流体ノズルの少なくとも一方から処理液の液滴を処理対象に向けて吐出するようになっている、二流体ノズルユニット。
【請求項2】
前記第1気体吐出口は第1流量で気体を吐出するためのものであり、前記第2気体吐出口は、前記第1流量よりも大流量である第2流量で気体を吐出するためのものである、請求項1記載の二流体ノズルユニット。
【請求項3】
前記第1気体吐出口の開口面積は、前記第2気体吐出口の開口面積よりも小さくされている、請求項1または2記載の二流体ノズルユニット。
【請求項4】
前記第1二流体ノズルは、前記第1気体吐出口が前記第2気体吐出口よりも前記処理対象に近づくように前記ノズル保持部材に保持されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の二流体ノズルユニット。
【請求項5】
前記第1および第2二流体ノズルは、少なくとも一方の二流体ノズルから吐出された処理液の液滴が前記処理対象に対して斜めに入射するように前記ノズル保持部材に保持されており、各二流体ノズルから前記処理対象への処理液の液滴の供給位置が同一位置にされている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の二流体ノズルユニット。
【請求項6】
前記第1二流体ノズルは、第1二流体ノズルから吐出された処理液の液滴が前記処理対象に対して垂直に入射するように前記ノズル保持部材に保持されており、前記第2二流体ノズルは、第2二流体ノズルから吐出された処理液の液滴が前記処理対象に対して斜めに入射するように前記ノズル保持部材に保持されている、請求項5記載の二流体ノズルユニット。
【請求項7】
処理対象の基板を保持して回転させるための基板回転手段と、
前記基板回転手段によって回転されている基板の主面に、処理液の液滴を供給するための請求項1〜6のいずれか一項に記載の二流体ノズルユニットと、
前記第1二流体ノズルに処理液を供給するための第1処理液供給手段と、
前記第2二流体ノズルに処理液を供給するための第2処理液供給手段と、
前記第1二流体ノズルに気体を供給するための第1気体供給手段と、
前記第2二流体ノズルに気体を供給するための第2気体供給手段と、
前記二流体ノズルユニットを前記基板の主面に沿って移動させるためのノズル移動手段と、
前記第1および第2処理液供給手段ならびに第1および第2気体供給手段を制御して、第1および第2二流体ノズルの少なくとも一方から前記基板回転手段に保持された基板に向けて処理液の液滴を吐出させるための制御手段とを含む、基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−108830(P2008−108830A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−288823(P2006−288823)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】